説明

有機蛍光性化合物とその製造方法、有機電界発光素子用発光剤、並びに有機電界発光素子

【課題】 紫外光や可視光への顕著な感受性、顕著な発光能を有する新規な有機蛍光性化合物を得る。
【解決手段】 本発明の有機発光性化合物は、図1の一般式1乃至一般式4のいずれかで表す2H−ピロン誘導体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性有機化合物である有機蛍光性化合物及びその製造方法に関するものであり、とりわけ、蛍光色素及び電界発光において有用な新規2H−ピラン−2−オン誘導体(以下、2H−ピロン誘導体という)からなる有機蛍光性化合物及びその製造方法に関するものである。
本発明は、上記有機蛍光性化合物を用いた有機電界発光素子用発光剤、並びにこの発光剤を備えた有機電界発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光性色素は、樹脂、染料、インクなど種々の材料の着色に利用されている。特に医薬の分野では、蛍光色素を使う蛍光測定が吸光度測定法より高感度のため細胞組織の染色に多用され、また近年の分離法の進歩により臨床診断用にも広く利用されている。蛍光測定法による高感度分析を可能にしたのはコンピューターをはじめ機器の進歩発展による効果も大きいことながら、多種多様の蛍光性有機化合物が見い出されたことも重要な要因の一つである。それぞれの分野で高感度分析を可能にするためには、より一層の高機能性蛍光試薬の開発が望まれている。現在まで多くの試薬が開発されているにも拘わらず未だ十分ではない。生体成分の分析には、その対象となる成分の吸収領域と異なること、試薬の分子吸光係数が多きいこと、化学修飾が容易なこと、溶解性に加工し易いこと、他の配合剤との相溶性に優れていること、安価に入手できること、そして安定であることが挙げられる。
【0003】
代表的な蛍光誘導体化試薬として4−ブロモメチル−7−メトキシクマリン([化7]参照)や4−ブロモメチル−6,7−ジメトキシクマリン等が挙げられるが、これらはいずれも一長一短があり、多種多様の材料からなる蛍光性有機化合物にあって、前述のような諸特性を常に発揮しうるような化合物は未だ見い出されていない。以上のように蛍光性色素として広く利用されている一方、近年その蛍光効率を利用して、薄膜発光素子等の電子機器分野への用途が開発されている。蛍光性色素については種々の構造及び発光色の色素が知られているが、特に電子機器分野等で要求される赤色に高輝度で発光し、さらに堅牢度の優れた化合物は少ない。これまで2−ピロン誘導体を主要構成部分としての蛍光性を利用した報告はない。もちろん前述の蛍光測定法や電界発光素子に利用されたこともない。
【0004】
ピラン誘導体の一種である縮合2−ピラン誘導体のクマリン誘導体が蛍光測定法の蛍光誘導体化試薬として用いられていることは広く知られている。例えば、下記[化7]に示すベンゾピラン系化合物を利用した蛍光測定法がある。
【0005】
【化7】

【0006】
種々の複素環系化合物が有機電界発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子:以下、有機EL素子という)の発光色素として用いられていることは広く知られている。例えば、下記[化8]に示すピラン構造を有する4H−ピラン系化合物が赤色系色素としてよく知られている。
【0007】
【化8】

【0008】
また、特許文献1には下記[化9]に示す4H−ピラン系化合物を使用して赤色蛍光が得られた例が開示されている。
【0009】
【化9】

【0010】
情報表示の分野においては、電界発光素子が次世代の表示素子として脚光を浴びている。現在、コンピューター端末機やテレビジョン受像器などの比較的大型の情報表示機器においては、主として、ブラウン管が用いられている。しかしながら、ブラウン管は体積、重量ともに大きく、動作電圧も高いので、汎用性機器や携帯性を重視する小型の機器には適さない。小型機器には、もっと薄く、軽量の平板状であって、動作電圧が低く、消費電力の小さいものが必要とされている。現在では、液晶素子が、動作電力が低く、消費電力の比較的小さい点が買われて、多方面で汎用されている。しかしながら、液晶素子を用いる情報表示機器は、見る角度によってコントラスが変わるので、ある角度の範囲で読み取らないと明瞭な表示が得られない上に、通常、バクライトを必要とするので、消費電力がそれほど小さくならないという問題がある。この問題を解決し表示素子として登場したのが有機電界素子、すなわち、有機EL素子である。
【0011】
有機電界素子は、通常、陽極と陰極との間に発光剤を含有する薄膜を介挿してなり、その陽極と陰極との間に直流電圧を印加して薄膜に正孔及び電子をそれぞれ注入し、それらを互いに再結合させる事によって発光剤の励起状態を作り出し、その励起状態が基底状態に戻るときに放出される蛍光や燐光などの発光を利用する発光素子である。有機電界素子は、適切なホスト発光剤を選択するとともに、そのホスト発光剤に組み合わせるゲスト発光剤を変更することにより、発光の色調を適宣に変えることができる特徴がある。また、ホスト発光剤とゲスト発光剤の組み合わせによっては、発光の輝度と寿命を大幅に向上できる可能性がある。そもそも、有機電界発光素子は自ら発光する素子なので、これを用いる情報表示機器は視野角依存性がないうえに、バックライトが不要なので、消費電力を小さくできる利点があり、原理的に優れた発光素子であると言われている。
【0012】
これまで、緑色域で発光する有機電界発光素子においては、ゲスト発光剤の配合による発光効率の改善が報告されているけれども、赤色域の発光においては、未だ効果的なゲスト発光剤は見い出されていない。依然として、完全な赤色発光とは程遠く、発光寿命が短く、耐久性においても信頼性においても不充分な状況にある。例えば、特許文献2及び特許文献3に開示された有機電界素子は、輝度が充分でないうえに、発光が完全な赤色ではなく、したがって、フルカラーを実現するうえでなお問題があると言わざれるを得ない。
【0013】
さらに、電界発光素子を安価に供給することは、単に、素子全体の構造を簡素化したり、製造の際の蒸着操作を容易にすることだけでなく、ゲスト発光剤によるドーピングを本質的に必要としない発光剤を見い出すことが肝要である。電界発光素子に用いる発光剤については、従来より諸種の提案がなされているけれども、上述のごとき諸条件を充足する化合物は未だ見い出されていない。
【0014】
蛍光材料は光により、より高いエネルギー状態に励起され、光としてエネルギーを放出することで元のエネルギー状態に戻る。このフォトルミネッセンス(PL)現象では、一般的に、発光波長特性は、励起光の波長より長波長化することが知られている。有機電界素子や発光ダイオードの場合、発光材料の選択や素子構造の設計等により発光波長特性をある程度調整することができる。しかし、これらの方法だけで青緑赤の三原色表示や白色表示等の要求を満たすことは難しい。そのため、PL現象により、青色発光する発光部材と緑色や赤色の成分を有する光を発光する蛍光材料を組み合わせることにより青緑赤の三原色表示や白色表示を実現しようと試みられている。
【0015】
波長変換特性は、蛍光部材中の蛍光材料に大きく依存し、特定の波長変換特性を得るためにはそれに適した蛍光材料の選択が不可欠である。例えば、特許文献4によると、クマリン系の色素を用いて比較的容易に高効率の変換が可能である。このように青色光から緑色光への変換に適した蛍光材料は容易に入手できる。これに対し青色光から赤色光への変換は、一般的な蛍光材料にとって波長のシフトが大きいので、高効率の変換は難しい。しかしながら、いまだ十分なものではないが青色光から赤色光への変換効率を高める試みが、特許文献4、特許文献5、特許文献6、それに特許文献7に開示されている。このように蛍光材料を用いて青色光を赤色光に高効率に変換する方法が開発される一方、赤色光や白色光等の赤色成分を含む発光色の発光素子の開発が急務である。
【0016】
OA機器用バックライト、時計用バックライト、各種デイスプレイ用バックライトなどの用途に発光素子を用いる場合、発光色としては白色が最も好ましい。ところが単一で白色発光を示すような発光素子は一般に知られていないため、白色以外の発光色をもつ発光素子において、発光層と蛍光層や補色発光層とを組み合わせ、白色発光を得る方法が試みられている。
【0017】
【特許文献1】特開2001−81090号公報
【特許文献2】特開平10−6042号公報
【特許文献3】米国特許第4769292号明細書
【特許文献4】特開平3−152897号公報
【特許文献5】特開平8−286033号公報
【特許文献6】特開平9−213478号公報
【特許文献7】特開平12−230172号公報
【特許文献8】特開2001−52869号公報
【特許文献9】特開2001−29485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上述の状況に鑑み、紫外光や可視光への顕著な感受性や顕著な発光能を有する新規な有機蛍光性化合物とその製造方法、その有機蛍光性化合物の蛍光試薬及び有機電界発光素子における諸用途、特に有機電界発光素子用発光剤、その発光剤を用いた有機電界発光素子を提供する。
また、本発明は、新規な有機蛍光性化合物を構成するピロン誘導体の、それぞれの位置の、それぞれの置換基による蛍光性の構造活性相関関係を明らかにし、それに基づく有機蛍光性化合物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る有機蛍光性化合物は、[化10]〜[化13]の一般式1、一般式2、一般式3、又は一般式4のいずれかで表される2H−ピロン誘導体からなることを特徴とする。
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

一般式1に示すAr(アリール基)は各種芳香族化合物を意味し、単環性のフェニル基、双環性のナフチル基、縮合多環性芳香族化合物、電子過剰芳香族複素環化合物、電子不足芳香族複素環化合物を表す。ピロン環上の3位の置換基R1は、電子吸引基を表す。ピロン環上の4位の置換基R2は、硫黄原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも1つを含む置換基を表す。ピロン環上の5位の置換基R3は、水素原子、各種アルキル基、フェニル基を表す。
一般式2で示すピロン環上の6位のフェニル基の4位の置換アミノ基の置換基Rは、アルキル基またはアリール基を表す。ピロン環上の3位の置換基R1は、電子吸引基を表す。ピロン環上の4位の置換基R2は、硫黄原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも1つを含む置換基を表す。
一般式3に示すピロン環上の6位のスチリル基の末端のフェニル基上の4位の置換基R3は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子の少なくとも1つを含む置換基である。ピロン環上の3位の置換基R1は、電子吸引基を表す。ピロン環上の4位の置換基R2は、硫黄原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも1つを含む置換基を表す。
一般式4で示すピロン環上の6位のフェニル基の4位の置換アミノ基の置換基Rは、アルキル基またはアリール基を表す。ピロン環上の3位の置換基R1は、電子吸引基を表す。ピロン環上の4位の置換基R2は、硫黄原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも1つを含む置換基を表す。
【0020】
前記アリール基は、アルキル基、またはヘテロ原子を有する置換基にすることができる。
前記電子吸引基は、シアノ基、各種エステル基、スルホニル基のいずれかにすることができる。
前記アルキルチオ基は、メチルチオ基またはエチルチオ基のいずれかにすることができる。
前記アルコキシ基は、ハイドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基のいずれかにすることができる。
【0021】
前記一般式1に示すアリール基を単環性のフェニル基で表したとき、その環上の置換基が、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲノ基のいずれかにすることができる。
【0022】
前記一般式1に示すアリール基は電子過剰芳香族複素環化合物とされ、この電子過剰芳香族複素環化合物はリル基、キノリル基、フタジル基のいずれかにすることができる。
前記一般式1に示すアリール基は電子不足芳香族複素環化合物とされ、この電子不足芳香族複素環化合物は、ピリジル基、キノリル基、フタジル基のいずれかにすることができる。
【0023】
ピロン環上の5位の置換基R3と6位のアリール基とが架橋され、多環性複素環化合物とされた構成とするもともできる。
この架橋は、メチレン基またはエチレン基により形成することができる。
この架橋は、硫黄原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも1つを含む置換基により形成することができる。
【0024】
上述の有機蛍光性化合物は、440nmから640nmに発光極大を有することを特徴とする。
【0025】
本発明に係る有機蛍光性化合物の製造方法は、上述のいずれかに記載の有機蛍光性化合の製造方法であって、[化14]の一般式5で表せる化合物に、請求項1に記載の一般式1のArに対応したArを有する[化15]の一般式6で表せる化合物を反応させる工程を経由することを特徴とする。
【化14】

置換基Xは、CN,COOMeである。置換基R1 は、CN,COOMe,COOEt,SO−Ph,SO−Ph−Meである。
【化15】

【0026】
本発明に係る有機蛍光性化合物の製造方法は、上述の一般式1、一般式2、一般式3、及び一般式4で表される2H−ピロン誘導体骨格の1位から6位の置換基、6位のアリール基上の置換基による蛍光の構造活性相関関係を明らかにすることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る有機電界発光素子は、上述のいずれかに記載の有機蛍光性化合物を用いて発光層が構成されていることを特徴とする。
【0028】
本発明に係る有機電界発光素子用発光剤は、上述のいずれかに記載の有機蛍光性化合物を用いてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る有機蛍光性化合物によれば、上述した一般式1、一般式2、一般式3、および一般式4のいずれかで表される2H−ピロン誘導体で構成することによって、固体状態もしくは溶液状態で強い蛍光を示す。この2H−ピロン誘導体は、ただ1種類の化合物で紫外領域から可視領域まで顕著な感受性、発光能を発揮することができ、三原色に必要な青、緑青の全領域に蛍光極大を有する。したがって、本発明の有機蛍光性化合物は、有機電界素子、蛍光誘導体化試薬、情報表示機器等を初めとする産業上有用な諸用途に適用することができる。
【0030】
本発明に係る有機蛍光性化合物の製造方法によれば、上述した一般式5で表される化合物に、上述した一般式6で表される化合物を反応される工程を経由することにより、本発明に係る2H−ピロン誘導体を製造することができる。
本発明は、上述した一般式1、一般式2、一般式3、及び一般式4で表される2H−ピロン誘導体骨格の1位から6位の置換基、6位のアリール基上の置換基による蛍光の構造活性相関関係を明らかにすることで、その構造活性相関関係に基いて本発明に係る新規な2H−ピロン誘導体を製造することができる。
【0031】
本発明に係る有機電界発光素子によれば、上述の一般式1、一般式2、一般式3、および一般式4のいずれかで表される2H−ピロン誘導体による有機蛍光性化合物で発光層を形成することにより、優れたカラー画像の得られる有機電界発光素子を提供することができる。
【0032】
本発明に係る有機電界発光素子用発光剤によれば、上述し2H−ピロン誘導体で構成されるので、一種類の化合物で三原色の発光を得ることができ、有機電界発光素子に適用して好適ならしめる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明者は、前述した課題を解決すべく鋭意研究し、検索した結果、6−置換、特に、6−アリール及び6−スチリール−2H−ピラン−2−オン誘導体に固体状態で強い蛍光を示す化合物を見い出した。これまでにも多くの2H−ピロン誘導体がそれぞれの目的に応じて合成されてきている。縮合ピラン誘導体の一種であるクマリン誘導体が蛍光試薬として様々な分野で活用されていることは周知の事実である。しかしながら単環性の2H−ピロン誘導体は蛍光性試薬として利用はされていない。有機電界素子の分野でクマリン誘導体との組み合わせで置換基の一部として利用され、しかもその6位の置換基はアルキル基である2H−ピロン誘導体が、前記特許文献8や特許文献9に開示されているに過ぎない。各種2H−ピラン−2−オン誘導体に有機電界素子として期待されながらも、この中に未だ有効な有機電界素子は見い出されていない。この点を解決したのが、一般式1、一般式2、一般式3、および一般式4で表されるピロン誘導体である。これらの2H−ピラン2−オン誘導体はいずれもケテンジチオアセタール誘導体に活性メチレンや活性メチル化合物を反応させることによって得られる。本発明の2H-ピロン誘導体は、ただ一種類の化合物で色の三原色、すなわち、紫外領域から可視領域まで顕著な発光能を発揮し、蛍光化試薬や有機発光素子において極めて有用である。これら2H-ピロン誘導体の特性として、固体状態で強い蛍光を示すばかりでなく、医薬の分野で、蛍光色素使用による臨床診断薬等に利用する場合、試薬の分子吸光係数が大きいことに加えて溶解性に加工しやすいことが必要である。このためには溶液中での発光が重要である。本発明の2H−ピロン誘導体の中にはエタノール等の極性溶媒中でも高い蛍光収率で発光を示す誘導体があり、蛍光誘導体化試薬として有用である。この発明は、新規な2H−ピラン誘導体の創製と、その構造活性相関関係の明確化と、それに産業上有用な諸特性、特に、有機電界素子として適用できる知見に基づくものである。
【0034】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0035】
本実施の形態は、前述した課題を図1の一般式1乃至4で表わせる2H−ピラン誘導体を提供することによって解決するものである。
【0036】
図1の一般式1に示すAr(アリール基)は各種芳香族化合物を意味し単環性のフェニル基、双環性のナフチル基、それに縮合多環性芳香族化合物であり、またフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピロール基、それにインドール基等の電子過剰芳香族複素環化合物やピリジル基、キノリル基、フタジル基等の電子不足芳香族複素環化合物も含んでいる。さらにこれらアリール基上にはアルキル基やメトキシ基やアミノ基等のヘテロ原子の置換基をも有している。特に、単環性のフェニル基の場合、その環上の置換基としてはアルキル基、メトキシ基やエトキシ基等のアルコキシ基、それにアミノ基、またクロロやブロモ等のハロゲノ基がある。さらにそれらの置換基の個数やそれの位置によってもそれぞれ違う誘導体とみなす。次にピロン環上の置換基R1は、シアノ基、各種エステル基、それにスルホニル基等の電子吸引基を意味している。ピロン環の4位の置換基R2はメチルチオ基やエチルチオ基等のアルキルチオ基、ハイドロキシ基やメトキシ基、それにエトキシ基等のアルコキシ基、さらに各種アミノ基である。このアミノ基はメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ピロリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ピペリジノ基等の環状アミノ基、それに各種芳香族アミノ基である。ピロン環上の5位の置換基R3は水素原子、各種アルキル基、それにフェニル基である。またこのピロン環上の5位の置換基R3と6位のアリール基とがメチレン基やエチル基で架橋した二環性や三環性ピロン誘導体も含む。さらに硫黄や酸素、それに窒素原子で架橋した多環性複素環化合物も含む。
図1の一般式2で示される6位のフェニル基の4位の置換アミノ基の置換基Rはメチル基をはじめ他のアルキル基、それにフェニル基や他のアリール基を意味する。ピロン環上の3位の置換基R1はシアノ基、エステル基、それにスルホニル基等の電子吸引基である。またピロン環上の4位の置換基R2は硫黄原子や酸素原子、窒素原子、それに水素原子からなる置換基である。
図1の一般式3で示されるピロン環上の6位のスチリル基の末端のフェニル基上の4位の置換基Rはメトキシ基等の酸素原子やハロゲン原子、窒素原子を含んでいる。ピロン環上の3位の置換基R1はシアノ基、エステル基、それにスルホニル基等の電子吸引基である。またピロン環上の4位の置換基R2は硫黄原子や酸素原子、窒素原子、それに水素原子からなる置換基である。
図1の一般式4で示される6位のフェニル基の4位の置換アミノ基の置換基Rはメチル基をはじめ他のアルキル基、それにフェニル基や他のアリール基を意味する。ピロン環上の3位の置換基R1はシアノ基、エステル基、それにスルホニル基等の電子吸引基である。またピロン環上の4位の置換基R2は硫黄原子や酸素原子、窒素原子、それに水素原子からなる置換基である。
【0037】
置換基R1の電子吸引基としては、シアノ基、各種エステル基、アセチル基、ベンゾイル基、スルフォニル基、スルフェニル基、各種アリール基などが挙げられる。
【0038】
この実施の形態による2H−ピロン誘導体の具体例としては、例えば、図2乃至図22に示した化学式1乃至化学式81で表わせる化合物が挙げられる。
【0039】
この実施の形態の4−メチルチオ−2H−ピロン誘導体は、一般式5([化16]参照)で表せるケテンジチオアセタール誘導体([化17]〜[化20]参照)と一般式6([化21]参照)で表される各種アセチル化合物との反応で得ることができる。ケテンジチオアセタールを利用する各種ピロン誘導体の合成法はすでに開示されている(Hetercycles,4,1493(1976); Chem.Pharm.Bull,32,3384(1984);J.Heterocycl.Chem.,24,1557(1987)が、本実施の形態の2H−ピロン誘導体の大部分は新規化合物で新たに合成されたものであり、また反応条件等も開示の方法に改良を加えた。特に、化学式12(図4)、化学式25(図6)、化学式26(図7)、それに化学式27(図7)で表される2H−ピロン誘導体は、橙色から赤色を示す赤色系有機電界素子として有用な化合物で、しかもこれらは最初の合成例のみならず、さまざまな2−ピロン系赤色有機電界素子の開発に道を開くものである。
【0040】
【化16】

R1 =CN,COOMe,COOEt,SO−Ph,SO−Ph−Me
X =CN,COOMe
【0041】
【化17】

【0042】
【化18】

【0043】
【化19】

【0044】
【化20】

【0045】
【化21】

【0046】
【化22】

【0047】
本実施の形態の2H−ピロン誘導体の合成は、[化22]に示すように、まずケテンジチオアセタールに苛性ソーダの存在下適当な溶剤中で[化21]の一般式6で表される各種アセチル化合物を反応させて4−メチルチオ−2H−ピロン誘導体の6位置換体(化学式1乃至化学式33:図2乃至図8参照)を合成する。2H−ピロン誘導体の3位の置換基は使用するケテンジチオアセタ-ルに依存する。最初の合成例となる化学式34乃至36化合物(図8、図9参照)の2H−ピロン誘導体は、[化19]及び[化20]で表されるケテンジチオアセタールに各種アセトフェノン誘導体を反応させて得られる。化学式1乃至化学式27(図2乃至図7参照)、及び化学式34乃至化学式36(図8乃至図9参照)の2H−ピロン誘導体は活性高く、容易に各種求核試薬類と反応する。メタノールやエタノールで処理すると化学式37や化学式38(図9参照)で表される2−ピロン誘導体が容易に得られる。さらに、これらの化合物に各種アミン化合物を反応させると化学式39乃至66(図9乃至図19参照)および化学式73(図20参照)で表される4−アミノ−2H−ピロン誘導体が容易に得られる。求核試薬として活性メチレン化合物類を使用すれば化学式74乃至81(図21、図22参照)の2H−ピロン誘導体が得られる。
【0048】
【化23】

【0049】
本実施の形態の4−メチルチオ−2H−ピロン誘導体とアミン誘導体や活性メチレン化合物との反応場合、別途の方法も示しておく。すなわち、[化23]に示すように、4−メチルチオ−2H−ピロン誘導体を過酸化水素水やメタクロロ過安息香酸等で処理して、一旦4−メチルスルルフェニル−2H−ピロン誘導体となし、これにアミン誘導体や活性メチレン化合物を反応させる。
【0050】
【化24】

【0051】
この実施の形態は、有機電界素子における当該2H−ピロン誘導体の発光剤としての用途を提供するものである。この実施の形態による2H−ピロン誘導体は可視領域にも発光能を有し、それは波長440nm乃至640nmに発光能を有している。すなわち、440nmから640nmに蛍光極大を有する2H−ピロン誘導体が得られる。特に、この実施の形態の2H−ピロン誘導体は、600nm乃至640nmに蛍光極大を有するので、赤色域の可視光を発光するための有機電界素子用発光剤として極めて有用である。
【0052】
図24に、図9の化学式39の2H−ピロン誘導体の蛍光スペクトル(固体)を示す。このときの条件は、スキャン範囲が400.0nm〜700nm、励起波長が273nm、バンド幅がEx:10.0nm、Em:10.0nmである。また、図25に、図22の化学式81の2H−ピロン誘導体の蛍光スペクトル(固体)を示す。このときの条件は、スキャン範囲が500.0nm〜800nm、励起波長が566.0nm、バンド幅がEx:10.0nm、Em:10.0nmである。横軸に蛍光波長、縦軸に蛍光強度(相対強度)をとる。図24から、化学式39の2H−ピロン誘導体の蛍光波長は445nmであることが認められる。また図25から、化学式81の2H−ピロン誘導体の発光波長は634nmであることが認められる。
【0053】
この実施の形態の2H-ピロン誘導体を有利に適用し得る有機電界素子は、本質的に、発光能を有する有機化合物を含んでなる電界素子であって、通常、正電圧を印加する陽極と、負電圧を印加する陰極と、陽極から正孔を注入して輸送する正孔注入/輸送層と、陰極から電子を注入して輸送する電子注入/輸送層と、正孔と電子を再結合させ発光を取り出す発光層とを含んでなる積層型有機EL素子が重要な適用対象となる。この実施の形態の2H-ピロン誘導体は、顕著な発光能を有するうえに、ガラス状態で安定な薄膜を形成するので、有機EL素子におけるホスト発光剤として極めて有用である。さらに、この実施の形態の2H−ピラン誘導体の多くは、正孔注入/輸送層用材、電子注入/輸送層用材、さらには、トリス(8−キノリノラート)アルミニウムなどの、8−キノリノール類を配位子とする金属錯体をはじめとする他のホスト発光剤に微量ドープしてその発光効率や発光スペクトルを改善するためのゲスト発光剤としても機能することから、斯かる材料の単独又は複数が不可欠の要素となる有機電界素子において、単独又は、例えば、ジシアノメチレン(DCM)類、クマリン類、ペリレン類、ルブレン類などの他の発光剤や正孔注入/輸送層用材及び/又は電子注入/輸送層用材と組み合わせて極めて有利に用いることができる。なお、積層型有機電界素子において、発光剤が正孔注入/輸送能又は電子注入/輸送能を兼備する場合には、それぞれ、正孔注入/輸送層又は電子注入/輸送層を省略することがあり、また、正孔注入/輸送層用材及び電子注入/輸送層用材の一方が他方の兼備する場合には、それぞれ、電子注入/輸送層又は正孔注入/輸送層を省略することがある。
【0054】
この実施の形態による有機電界素子用発光剤は、単層型及び積層型有機電界素子のいずれにも適用可能である。有機電界素子の動作は、本質的に、電子及び正孔を電極から注入する過程、電子及び正孔が固体中を移動する過程、電子及び正孔が再結合し、一重項又は三重項励起子を生成する過程、そして、その励起子が発光する過程からなり、これらの過程は単層型及び積層型有機電界素子のいずれにおいても本質的に異なるところがない。しかしながら、単層型有機電界素子においては、発光剤の分子構造を変えることによってのみ上記4過程の特性を改良し得るのに対して、積層型有機電界素子においては、各過程において要求される機能を複数の材料に分担させるとともに、それぞれの材料を独立して最適化することができることから、一般的には、単層型に構成するより積層型に構成する方が所期の性能を達成し易い。
【0055】
この実施の形態の2H−ピロン誘導体は、通常エタノール等の極性溶媒中では弱い蛍光しか示さないが、6位のフェニル基上の置換基によってはエタノ-ル等の溶媒中で強い蛍光を示す。クマリやダンシル誘導体と同様種々の蛍光誘導体化試薬として重要な性質である。
【0056】
なお、本実施の形態では、図1の一般式1、一般式2、一般式3および一般式4のいずれかで表される青色光の2H−ピロン誘導体に赤色変換蛍光部材を混合して、有機電界素子用赤色発光剤を構成することができる。
また、本実施の形態では、図1の一般式1、一般式2、一般式3および一般式4のいずれかで表される青色発光の2H−ピロン誘導体に白色変換蛍光部材を混合して、有機電界素子用白色発光剤を構成することができる。さらに、図1の一般式1、一般式2、一般式3および一般式4のいずれかで表される青色発光、緑色発光および赤色発光のそれぞれの2H−ピロン誘導体を混合して、有機電界素子用の白色発光剤を構成することができる。
【0057】
次に、この実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0058】
[実施例1] [3−シアノ−6−(2−メトキシフェニル)−4−メチルチオ−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び2−メトキシアセトフェノン0.75gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.4gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図2の化学式2で表わされるピラン誘導体の黄色針状結晶が0.79g得られた。
【0059】
常法にしたがって測定したところ、化学式2で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は209乃至211℃であった。重クロロホルム中で1H−核磁気共鳴スペクトル(以下、[1H−NMR]と略する)を測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.67((3H, s, SMe), 3.99(3H, s, OMe), 7.04(1H, d, J=8.5 Hz, 5’−H), 7.11(1H, dd, J=7.4, 8.2 Hz, 4’−H), 7.37(1H, s, 5−H), 7.52(1H, dd, J=8.2, 8.5 Hz, 5’−H), 8.00(1H, d, J=7.4 Hz, 3’−H)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0060】
[実施例2] [3−シアノ−6−(3−メトキシフェニル)−4−メチルチオ−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び3−メトキシアセトフェノン0.75gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.4gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図2の化学式3で表わされるピラン誘導体の黄色針状結晶が0.72g(収率53%)得られた。
【0061】
常法にしたがって測定したところ、化学式3で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は181乃至183℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.72((3H, s, SMe), 3.89(3H, s, OMe), 6.70(1H, d, J=8.5 Hz, 5−H), 7.09−7.13(1H, m, 5’−H), 7.38(1H, d, J=1.6 Hz, 2’−H), 7.43(2H, d, J=5.2 Hz, 4’, 6’−H)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0062】
[実施例3] [3−シアノ−6−(2,4−ジメトキシフェニル)−4−メチルチオ−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び2,4−メトキシアセトフェノン0.90gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図2の化学式5で表わされるピラン誘導体の黄色針状結晶が0.50g(収率33%)得られた。
【0063】
常法にしたがって測定したところ、化学式5で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は208乃至210℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.65((3H, s, SMe), 3.90(3H, s, OMe), 3.96(3H、s、OMe), 6.54(1H, d, J=8.8 Hz, 3’−H), 6.63(1H, dd, J=2.5, 8.8 Hz, 5’−H), 7.30(1H, s, 5−H), 8.01(1H, d, J=8.8 Hz, 6’−H)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0064】
[実施例4] [3−シアノ−6−(2,5−ジメトキシフェニル)−4−メチルチオ−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び2,5−メトキシアセトフェノン0.90gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図3の化学式6で表わされるピラン誘導体の黄色木葉状結晶が0.41g(収率27%)得られた。
【0065】
常法にしたがって測定したところ、化学式6で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は225乃至227℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.66((3H, s, SMe), 3.83(3H, s, OMe), 3.94(3H、s、OMe)、6.97(1H, d, J=9.1 Hz, 4’−H), 7.07(1H, dd, J=2.3, 9.1 Hz, 3’−H), 7.43(1H, s, 5−H), 7.49(1H, d, J=3.3 Hz, 6’−H)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0066】
[実施例5] [3−シアノ−4−メチルチオ−6−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び3,4,5−トリメトキシアセトフェノン1.05gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図3の化学式8で表わされるピラン誘導体の黄色針状結晶が0.93g(収率56%)得られた。
【0067】
常法にしたがって測定したところ、化学式8で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は208乃至210℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.73((3H, s, SMe), 3.94(9H, s, 3xOMe), 6.60(1H, s, 5−H), 7.04(2H, s, 2’, 6’−H)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0068】
[実施例6] [6−(2−クロロフェニル)−3−シアノ−4−メチルチオ−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び2−クロロアセトフェノン0.77gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図3の化学式10で表わされるピラン誘導体の黄色綿状結晶が0.91g(収率65%)得られた。
【0069】
常法にしたがって測定したところ、化学式10で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は179乃至181℃であった。固体状態で蛍光スペクトルを測定したところ、励起波長296nm、蛍光極大491nmを示した。さらに、重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.68((3H, s, SMe), 6.93(1H, s, 5−H), 7.43−7.56(3H, m, 4’, 5’, 6’−H), 7.75(1H, dd, J=1.9, 7.7 Hz, 3’−H)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0070】
[実施例7] [6−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−シアノ−4−メチルチオ−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び4−ジメチルアミノアセトフェノン0.82gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図4の化学式12で表わされるピラン誘導体の橙赤色綿状結晶が0.63g(収率43%)得られた。
【0071】
常法にしたがって測定したところ、化学式12で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は251乃至254℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.66((3H, s, SMe), 3.11(6H, s, NMe2), 6.47(1H, s, 5−H), 6.69(2H, d, J=9.0 Hz, 3’, 4’−H), 7.75(1H, d, J=9.0 Hz, 2’, 6’−H)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0072】
[実施例8] [3−シアノ−6−(4−シアノフェニル)−4−メチルチオ−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び4−シアノアセトフェノン0.73gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図4の化学式13で表わされるピラン誘導体の黄色針状結晶が0.88g(収率66%)得られた。
【0073】
常法にしたがって測定したところ、化学式13で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は251乃至254℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.52((3H, s, SMe), 7.40(1H, s, 5−H), 8.04(1H, d, J=8.7 Hz, 2’, 6’−H), 8.24(2H, d, J=8.7 Hz, 3’, 5’−H)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0074】
[実施例9] [6−(4−フェニルフェニル)−3−シアノ−4−メチルチオ−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び4−フェニルアセトフェノン0.98gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図4の化学式14で表わされるピラン誘導体の黄色木葉結晶が1.40g(収率88%)得られた。
【0075】
常法にしたがって測定したところ、化学式14で表わされる2H-ピロン誘導体の融点は273乃至275℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.75((3H, s, SMe), 6.76(1H, s, 5−H), 7.38−7.55(3H, m, 3’’, 4’’, 5’’−H), 7.65(2H, d, J=7.7 Hz, 2’’, 6’’−H), 7.75(2H, d, J=8.5 Hz, 3’, 5’−H), 7.96(2H, d, J=8.2 Hz, 2’, 6’−H)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0076】
[実施例10] [3−シアノ−4−メチルチオ−6−(1−ナフチル)−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び1−ナフチルアセチルナフタレン0.85gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図4の化学式15で表わされるピラン誘導体の黄色木葉状結晶が0.94g(収率63%)得られた。
【0077】
常法にしたがって測定したところ、化学式15で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は222乃至224℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.68(3H, s, SMe), 6.64(1H, s, 5−H), 7.54−7.72(3H, m, naphthyl−H), 7.75(1H, d, J=7.1 Hz,naphthyl−H), 7.95(1H, dd, J=2.2, 7.1 Hz, naphthyl−H), 8.05(1H, d, J=8.0 Hz, naphthyl−H), 8.15(1H, d, J=9.9 Hz, naphthyl−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0078】
[実施例11] [3−シアノ−4−メチルチオ−6−(2−ナフチル)−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び2−ナフチルアセチルナフタレン0.85gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図5の化学式16で表わされるピラン誘導体の黄色木葉状結晶が1.11g(収率75%)得られた。
【0079】
常法にしたがって測定したところ、化学式16で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は245乃至247℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.74((3H, s, SMe), 6.85(1H, s, 5−H), 7.34−7.65(2H, m naphthyl−H), 7.80−8.06(4H, m, naphthyl−H), 8.05(1H, d, J=9.3 Hz, 1’−H)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0080】
[実施例12] [6−(2−フリル)−3−シアノ−4−メチルチオ−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び1−ナフチルアセチルナフタレン0.55gとをジメチルスフォキシド2mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図5の化学式17で表わされるピラン誘導体の黄色木葉状結晶が0.35g(収率30%)得られた。
【0081】
常法にしたがって測定したところ、化学式17で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は200乃至202℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.70(3H, s, SMe), 6.65(1H, dd, J=0.8, 1.9 Hz, 5−H), 6.66(1H, s, 5−H), 7.26(1H, m, 4−H), 7.64(1H, dd, J=0.8, 1.9 Hz, 5−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0082】
[実施例13] [4−メチルチオ−6−(5−メチルフリ−2−イル)−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び4−メチル−2−アセチルフラン0.75gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、10%塩酸で酸性となし、析出する化合物を濃塩酸で処理する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図5の化学式18で表わされるピラン誘導体の黄色綿状結晶が0.42g(収率34%)得られた。
【0083】
常法にしたがって測定したところ、化学式18で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は205乃至207℃であった。エタノール中で紫外吸収スペクトルを測定したところ、波長404nmに吸収極大を示した。固体状態で蛍光スペクトルを測定したところ、励起波長298nm、蛍光極大521nmを示した。さらに、重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.44(3H, s, 5−Me), 2.69(3H, s, SMe), 6.26(1H, dd, J=3.5 Hz, 4’−H), 6.55(1H, s, 5−H), 7.16(1H, d, J=3.5 Hz, 3’−H).の位置にそれぞれピークが観察された。
【0084】
[実施例14] [6−(2−ベンゾチエニル)−3−シアノ−4−メチルチオ−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び1−ナフチルアセチルナフタレン0.88gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図5の化学式20で表わされるピラン誘導体の橙色木葉状結晶が1.26g(収率84%)得られた。
【0085】
常法にしたがって測定したところ、化学式20で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は287乃至289℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.73(3H, s, SMe), 6.58(1H, s, 5−H), 7.48(2H, m, aromatic−H), 7.88(2H, m, aromatic−H), 8.08(1H, s, 3−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0086】
[実施例15] [3−シアノ−6−(4−N,N−ジメチルアミノ)スチリル−4−メチルチオ−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物2.03g及び4−(4−N,N−ジメチルアミノ)−3−ブテ−2−オン1.89gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.8gする。析出する結晶を吸引虜取し、ジクロルメタンとメタノールの混合溶媒から再結晶すると、図6の化学式25で表わされるピラン誘導体の黒赤色木葉状結晶が0.998g(収率32%)得られた。
【0087】
常法にしたがって測定したところ、化学式25で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は280乃至284℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.65(3H, s, SMe), 3.10(6H, s, NMe2), 6.12(1H, s, 5−H), 6.44(1H, d, =CH), 6.72(2H, d, 37, 5’−H), 7.48(2H, d, 2’, 6’−H), 7.68(1H, d, =CH) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0088】
[実施例16] [3−シアノ−6−(4−N,N−ジエチルアミノ)スチリル−4−メチルチオ−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物2.03g及び4−(4−N,N−ジエチルアミノ)−3−ブテ−2−オン2.17gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.8gを加え、室温で1.5時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で10時間放置する。析出する油状物質を取り出し、これにメタノールを加えて結晶化させる。これを吸引濾取し、ジクロルメタンとメタノールの混合溶媒から再結晶すると、図7の化学式26で表わされるピラン誘導体の黒赤色木葉状結晶が0.892(収率26%)得られた。
【0089】
常法にしたがって測定したところ、化学式26で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は242乃至246℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が1.21(6H, t, J=7.1 Hz, N−CH2−CH3), 2.61(3H, s, SMe), 3.43(4H, q, J=7.1 Hz, N−CH2−), 6.07(1H, s, 5−H), 6.37(1H, d, J=15.7 Hz, =CH), 6.65(2H, d, J=9.1 Hz, 3’, 5’−H), 7.42(2H, d, J=9.1 Hz, 2’, 6’−H), 7.63(1H, d, J=15.7 Hz, =CH) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0090】
[実施例17] [3−シアノ4−メチルチオ−6−(4−N,N−ジフェニルアミノ)スチリル−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化17]の化学式82で表される化合物1.02g及び4−(4−N,N−ジフェニルアミノ)−3−ブテ−2−オン1.57gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で1.5時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取し、ジクロルメタンとメタノールの混合溶媒から再結晶すると、図7の化学式27で表わされるピラン誘導体の褐色木葉状結晶が0.62g(収率29%)得られた。
【0091】
常法にしたがって測定したところ、化学式27で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は210乃至216℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.62(3H, s, SMe), 6.18(1H, s, 5−H), 6.48(1H, d, J=15.1 Hz, =CH), 6,75−7.40(14H, m, Phenyl−H), 7.61(1H, d, J=15.1 Hz, =CH) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0092】
[実施例18] [4−メチルチオ−6−フェニル−3−(4−メチルフェニル)スルフォニル−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化19]の化学式84で表される化合物1.50g及びアセトフェノン0.65gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.8gを加え、室温で1.5時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取する。これをメタノール50mlに溶解し、この混合物に濃塩酸10mlを加え一時間加熱還流する。メタノールを留去後、析出する結晶を吸引虜取し、トルエンから再結晶すると、図8の化学式34で表わされるピラン誘導体の無色針状結晶が0.322g(収率17%)得られた。
【0093】
常法にしたがって測定したところ、化学式34で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は220乃至222℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.42(3H, s, 4−Me), 2.61(3H, s, SMe), 6.75(1H, s, 5−H), 7.31(1H, d, J=8.5 Hz, phenyl−H), 7.50(3H, m, phenyl−H), 7.80(2H, m, phenyl−H), 8.04(2H, d, J=8.5 Hz, phenyl−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0094】
[実施例19] [6−(4−メトキシフェニル)−4−メチルチオ−3−フェニルスルホニル−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化19]の化学式84で表される化合物1.50g及び4−メトキシアセトフェノン0.84gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.8gを加え、室温で1.5時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取する。これをメタノール50mlに溶解し、この混合物に濃塩酸10mlを加え一時間加熱還流する。メタノールを留去後、析出する結晶を吸引虜取し、トルエンから再結晶すると、図8の化学式35で表わされるピラン誘導体の淡黄色針状結晶が0.362g(収率19%)得られた。
【0095】
常法にしたがって測定したところ、化学式35で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は225乃至230℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.60(3H, s, SMe), 3.87(3H, s, OMe), 6.65(1H, s, 5−H), 6.96(1H, d, J=9.1 Hz, phenyl−H), 7.51−7.64(3H, m, phenyl−H), 7.77(2H, d, J=9.1 Hz, phenyl−H), 8.15(2H, m, phenyl−H). の位置にそれぞれピークが観察された。
【0096】
[実施例20] [6−(4−メトキシフェニル)−3−(4−メチルフェニルスルフォニル)−4−メチルチオ−2H−ピラン−2−オン]
ケテンジチオアセタールである[化19]の化学式84で表される化合物1.50g及び4−メトキシアセトフェノン0.84gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.8gを加え、室温で1.5時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、室温で1時間放置する。析出する結晶を吸引虜取する。これをメタノール50mlに溶解し、この混合物に濃塩酸10mlを加え一時間加熱還流する。メタノールを留去後、析出する結晶を吸引虜取し、トルエンから再結晶すると、図9の化学式36で表わされるピラン誘導体の淡黄色針状結晶が0.588g(収率29%)得られた。
【0097】
常法にしたがって測定したところ、化学式36で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は220乃至227℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.42(3H, s, 4−Me), 2.60(3H, s, SMe), 3.88(3H, s, OMe), 6.64(1H, s, 5−H), 6.97(1H, d, J=8.8 Hz, phenyl−H), 7.31(2H, d, J=8.5 Hz,, phenyl−H), 7.72(2H, d, J=8.8 Hz, phenyl−H), 8.04(2H, d, J=8.5 Hz, phenyl−H).の位置にそれぞれピークが観察された。
【0098】
[実施例21] [3−シアノ−6−フェニル−4−ピロリジノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図2の化学式1で表わされる化合物1.22gにピロリジン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図9の化学式40で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の白色針状晶が0.69g(収率52%)得られた。
【0099】
常法にしたがって測定したところ、化学式40で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は287乃至289℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が1.61(2H, m, −CH2−), 2.09(2H, m, −CH2−), 3.69(2H, m, −CH2−), 4.12(2H, m, −CH2−), 6.35(1H, s, 5−H), 7.42−7.52(3H, m, phenyl−H), 7.79(2H, m, phenyl−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0100】
[実施例22] [3−シアノ−4−ジメチルアミノ−6−(4−メトキシフェニル)−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図2の化学式4で表わされる化合物1.37gにジメチルアミイン(50%水溶液)4mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図10の化学式42で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の黄色針状晶が0.68g(収率50%)得られた。
【0101】
常法にしたがって測定したところ、化学式42で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は194乃至196℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.42(6H, s, −NMe2), 3.87(3H, s, OMe), 6.30(1H, s, 5H), 6.96(2H, d, J=8.8 Hz,3’,5’−H), 7.77(2H, dd, J=1.5, 8.8 Hz, 2’, 6’−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0102】
[実施例23] [3−シアノ−6−(4−メトキシフェニル)−4−ピロリジノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図2の化学式4で表わされる化合物1.37gにピロリジン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図10の化学式43で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の白色木葉状晶が0.77g(収率51%)得られた。
【0103】
常法にしたがって測定したところ、化学式43で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は259乃至260℃であった。重クロロホルム中で 1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.07(4H, m, pyrrolodinyl−3,4H), 2.09(2H, m, −CH2−), 3.65(2H, m, pyrrolidino−2H), 3.87(3H, s, OMe), 4.11(2H, m, pyrrolino−5H), 6.95(2H, d, J=9.1 Hz, 3’, 5’−H), 7.76(2H, dd, J=8.5 Hz, 2’, 6’−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0104】
[実施例24] [3−シアノ−6−(4−メトキシフェニル)−4−チオモルホリノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図2の化学式4で表わされる化合物1.37gにチオモルホリン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図10の化学式45で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の白色小葉状晶が0.85g(収率51%)得られた。
【0105】
常法にしたがって測定したところ、化学式45で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は218乃至220℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.85−2.89(4H, m, thiomorphlino−H), 3.88(3H, s, OMe), 4.10−4.14(4H, m, thiomorphlino−H), 6.33(1H, s, 5−H), 6.97(2H, d, J=8.8 Hz, 2’, 6’−H), 7.76(2H, dd, J=8.8 Hz, 3’, 5’−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0106】
[実施例25] [3−シアノ−4−(N−メチルピペラジン−)−6−(4−メトキシフェニル)−4−ピロリジノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図2の化学式4で表わされる化合物1.37gにN−メチルピペラジン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図11の化学式46で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の黄色小葉状晶が1.49g(収率85%)得られた。
【0107】
常法にしたがって測定したところ、化学式46で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は239乃至241℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.36(3H, s, NMe2), 2.58−2.62(4H, m, piperazino−H), 3.86−3.90(4H, m, piperazino−H), 3.87(3H, s, OMe), 6.34(1H, s, 5−H), 6.96(2H, d, J=8.8 Hz, 2’, 6’−H), 7.77(2H, dd, J=8.8 Hz, 3’,5’−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0108】
[実施例26] [3−シアノ−4−ジメチルアミノ−6−(3−メトキシフェニル)−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図2の化学式4で表わされる化合物1.37gにジメチルアミン(50%水溶液)4mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図11の化学式48で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の白色綿状晶が0.54g(収率40%)得られた。
【0109】
常法にしたがって測定したところ、化学式48で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は198乃至199℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.45(3H, s, NMe2), 3.87(3H, s, OMe), 6.41(1H, s, 5−H), 7.03−7.07(1H, m, 5’−H), 7.33−7.34(1H, m, 2’−H), 7.35−7.37(2H, m, 4’, 6’−H)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0110】
[実施例27] [3−シアノ−6−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−モルホリノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図3の化学式7で表わされる化合物1.52gにモルホリン2 mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図12の化学式49で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の白色木葉状晶が1.18g(収率69%)得られた。
【0111】
常法にしたがって測定したところ、化学式49で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は243乃至245℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.89(8H, m, morpholino−H), 3.963(3H, s, OMe), 6.32(1H, s, 5−H), 6.92(1H, d, J=8.5 Hz, 6’−H), 7.31(1H, d, J=2.2 Hz, 2’−H), 7.40 (1H, dd, J=2.2, 8.5 Hz, 5’−H)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0112】
[実施例28] [3−シアノ−6−(2,4−ジメトキシフェニル)−4−モルホリノ−2H−ピラン−2−オン]
図2の化学式5で表わされる化合物1.52gにモルホリン2 mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図12の化学式50で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の黄色綿状晶が1.37g(収率79%)得られた。
【0113】
常法にしたがって測定したところ、化学式50で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は223乃至225℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.87(3H, s, OMe), 3.88(8H, s, morpholino−H), 3.93(3H, s, OMe), 6.52(1H, d, J=2.2 Hz, 3’−H), 6.60(1H, dd, J=2.2, 8.8 Hz, 5’−H), 6.98(1H, s, 5−H), 7.95(1H, d, J=8.8 Hz, 6’−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0114】
[実施例29] [3−シアノ−6−(2,5−ジメトキシフェニル)−4−モルホリノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図3の化学式6で表わされる化合物1.52gにモルホリン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図13の化学式51で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の黄色小葉状晶が1.33g(収率78%)得られた。
【0115】
常法にしたがって測定したところ、化学式51で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は185乃至187℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.82(3H, s, OMe), 3.87(8H, s, morpholino−H), 3.91(3H, s, OMe), 6.95(1H, d, J=9.1 Hz, 4’−H), 7.04(1H, dd, J=3.0, 9.1 Hz, 4’−H), 7.10(1H, s, 5−H), 7.44(3H, d, J=3.0 Hz, 6’−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0116】
[実施例30] [3−シアノ−6−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−4−ピロリジノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図3の化学式8で表わされる化合物1.67gにピロリジン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図13の化学式52で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の白色綿状晶が1.00g(収率55%)得られた。
【0117】
常法にしたがって測定したところ、化学式52で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は222乃至224℃であった。重クロロホルム中で 1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.09(4H, m, pyrrolidino−H), 3.70(2H, m, pyrrolidino−H), 3.92(9H, s, 3xOMe), 4.13(2H, m, pyrrolidino−H), 6.24(1H, s, 5−H), 6.98(2H, s, 2’, 6’−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0118】
[実施例31] [3−シアノ−4−モロホリノ−6−(3,4,5-トリメトキシフェニル)−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図3の化学式8で表わされる化合物1.67gにピロリジン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図13の化学式53で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の白色木葉状晶が1.30g(収率70%)得られた。
【0119】
常法にしたがって測定したところ、化学式53で表わされる2H-ピロン誘導体の融点は222乃至224℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.89(8H, s, morphino−H), 3.99(9H, s, 3xOMe), 6.32(1H, s, 5−H), 6.98(2H, s, 2’, 6’−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0120】
[実施例32] [3−シアノ−4−ジメチルアミノ−6−(4−ジメチルアミノフェニル)−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図4の化学式12で表わされる化合物1.43gにジメチルアミン(50%水溶液)4mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図14の化学式54で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の黄色針状晶が0.91g(収率64%)得られた。
【0121】
常法にしたがって測定したところ、化学式54で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は265乃至267℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.06(6H, s, NMe2), 3.40(6H, s, NMe2), 6.20(1H, s, 5−H), 6.67(2H, d, J=9.1 Hz, 3’, 5’−H), 7.70(2H, d, J=9.1 Hz, 2’, 6’−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0122】
[実施例33] [3−シアノ−6−(4−ジメチルアミノフェニル)−4−ピロリジノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図4の化学式12で表わされる化合物1.43gにピロリジン2 mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図14の学式55で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の黄色針状晶が0.68g(収率44%)得られた。
【0123】
常法にしたがって測定したところ、化学式55で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は270乃至271℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.05(4H, s, pyrrolidino−H), 3.06(6H, s, NMe2), 3.65(2H, m, pyrrolidino−H), 4.08(2H, pyrrolidino−H), 6.13(1H, s, 5−H), 6.67(2H, d, J=9.1 Hz, 3’, 5’−H), 7.70(2H, d, J=9.1 Hz, 2’, 6’−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0124】
[実施例34] [3−シアノ−6−(4−ジメチルアミノフェニル)−4−チオモルホリノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図4の化学式12で表わされる化合物1.43gにチオモルホリン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図15の化学式57で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の橙色小葉状晶が0.99g(収率58%)得られた。
【0125】
常法にしたがって測定したところ、化学式57で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は275乃至277℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフト(ppm, TMS)が2.83−2.87(4H, m, thiomorpholino−H), 3.07(6H, NMe2), 4.07−4.11(4H, m, thiomorpholino−H), 6.22(1H, s, 5−H), 6.97(2H, d, J=9.3 Hz, 3’, 5’−H), 7.70(2H, d, J=9.3 Hz, 2’, 6’−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0126】
[実施例35] [3−シアノ−6−(4−ブロモフェニル)−4−ピロリジノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である[化17]の化学式82で表わされる化合物1.61gにピロリジン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図15の化学式58で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の黄色小葉状晶が0.93g(収率53%)得られた。
【0127】
常法にしたがって測定したところ、化学式58で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は282乃至284℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフト(ppm, TMS)が1.57(4H, m, pyrrolidino−H), 3.69(4H, m, pyrrolidino−H), 4.12(2H, m, pyrrolidino−H), 6.33(1H, s, 5−H), 7.62(4H, dd, J=8.8, 11.0 Hz, phenyl−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0128】
[実施例36] [6−(4−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ピロリジノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図3の化学式10で表わされる化合物1.39gにピロリジン2 mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図16の化学式59で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の黄色綿状晶が1.11g(収率73%)得られた。
【0129】
常法にしたがって測定したところ、化学式59で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は288乃至290℃であった。重クロロホルム中で1H−核磁気共鳴スペクトル(以下、[1H−NMR]と略する)を測定したところ、化学シフト(ppm, TMS)が2.12(4H, m, pyrrolidino−H), 3.72(2H, m, pyrrolidino−H), 4.16(2H, m, pyrrolidino−H), 7.46(2H, d, J=8.5 Hz, 2’, 6’−H), 7.76(2H, d, J=8.2 Hz, 3’, 5’−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0130】
[実施例37] [6−(2−クロロフェニル)−3−シアノ−4−モルホリノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図3の化学式10で表わされる化合物1.39gにモルホリン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図16の化学式60で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の白色小葉状晶が1.49g(収率93%)得られた。
【0131】
常法にしたがって測定したところ、化学式60で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は230乃至231℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.88(8H, m, morpholino−H), 6.22(1H, s, 5−H), 7.35−7.48(2H, m, 4’, 6’−H), 7.51(1H, dd, J=1.6, 7.7 Hz, 5’−H), 7.69(1H, dd, J=2.2, 6.2 Hz, 3’−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0132】
[実施例38] [3−シアノ−6−(4−フェニルフェニル)−4−ピロリジノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図4の化学式14で表わされる化合物1.60gにピロリジン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図17の化学式61で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の白色綿状晶が1.60g(収率44%)得られた。
【0133】
常法にしたがって測定したところ、化学式61で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は304乃至305℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.10(4H, m, pyrrolidino−H), 3.71(2H, m, pyrrolidino−H), 4.14(2H, m, pyrrolidino−H), 6.39(1H, s, 5−H), 7.42−7.49(3H, m, 3”, 4”, 5”−H), 7.61(2H, d, J=8.2 Hz, 2’, 6’−H), 7.67(2H, d, J=8.5 Hz, 3’, 5’−H), 7.87(2H, d, J=8.8 Hz, 2”, 6”−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0134】
[実施例39] [3−シアノ−6−(1−ナフチル)−4−ピロリジノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図4の化学式15で表わされる化合物1.47gにピロリジン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図17の化学式62で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の黄色小葉状晶が1.36g(収率86%)得られた。
【0135】
常法にしたがって測定したところ、化学式62で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は259乃至261℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.08(4H, m, pyrrolidino−H), 3.63(2H, m, pyrrolidino−H), 4.17(2H, m, pyrrolidino−H), 6.25(1H, s, 5−H), 7.48−7.60(3H, m, naphthyl−H), 7.67(1H, dd, J=1.4, 7.3 Hz, naphthyl−H), 7.91(1H, m, naphthyl−4−H), 7.99(1H, d, J=8.5 Hz, naphthyl−H), 8.14(1H, d, J=9.6 Hz, naphthyl−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0136】
[実施例40] [3−シアノ−4−モルホリノ−6−(1−ナフチル)−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図4の化学式15で表わされる化合物1.47gにモルホリン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図17の化学式63で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の白色プリズム状晶が1.46g(収率88%)得られた。
【0137】
常法にしたがって測定したところ、化学式63で表わされる2H-ピロン誘導体の融点は206乃至208℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.89(8H, m, morpholino−H), 6.33(1H, s, 5−H), 7.51(2H, m, naphthyl−H), 7.58(1H, m, naphthyl−H), 7.67(1H, m, naphthyl−H), 7.99(2H, m, naphthyl−H), 8.11(2H, d, J=6.3 Hz, naphthyl−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0138】
[実施例41] [3−シアノ−4−ピロリジノ−6−(2−チエニル)−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図5の化学式19で表わされる化合物1.09gにピロリジン2 mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図18の化学式64で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の黄色針状晶が0.57g(収率42%)得られた。
【0139】
常法にしたがって測定したところ、化学式64で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は283乃至285℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が2.08(4H, m, pyrrolidino−H), 3.66(2H, m, pyrrolidino−H), 4.11(2H, m, pyrrolidino−H), 6.18(1H, s, 5−H), 7.13(1H, dd, J=5.2, 4.9 Hz, thienyl−4−H), 7.51(1H, dd, J=5.2, 4.9 Hz, thienyl−5−H), 7.66(1H, dd, thienyl−3−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0140】
[実施例42] [3−シアノ−4−モルホリノ−6−(2−チエニル)−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図5の化学式19で表わされる化合物1.09gにピロリジン2mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図18の化学式65で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の黄色小葉状晶が0.69g(収率47%)得られた。
【0141】
常法にしたがって測定したところ、化学式65で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は249乃至250℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.88(8H, m, morpholino−H), 6.26(1H, s, 5−H), 7.16(1H, dd, J=4.9 Hz, thienyl−4−H), 7.56(1H, dd, J=4.9, 5.2 Hz, thienyl−5−H), 7.70(1H, dd, J=3.8 Hz, thienyl−3−H)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0142】
[実施例43] [3−シアノ−6−(2−ベンゾチエニル)−4−ピペリヂノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図5の化学式20で表わされる化合物1.61gにピペリジン2 mlを加えて150℃で10分間加熱する。冷後メタノ-ル2mlを加え結晶化させ、吸引濾取する。メタノールから再結晶すると、図19の化学式66で表わされる4−アミノ−2H−ピラン−2−オン誘導体の黄色小葉状晶が0.91g(収率53%)得られた。
【0143】
常法にしたがって測定したところ、化学式66で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は247乃至248℃であった重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が1.82(6H, m, piperidino−H), 3.83(4H, m, piperidino−H), 6.35(1H, s, 5−H), 7.41−7.46(2H, m, bennzothienyl−H), 7.81−7.86(2H, m, benzothienyl−H), 7.97(1H, s, bnezothienyl−3−H) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0144】
[実施例44] [4−メチルアミノ−3−メトキシカルボニル−6−フェニル−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図7の化学式28で表わされる化合物0.584gとメチルアミン40%水溶液2mlとを50mlのメタノールに加え、この溶液を3時間加熱環流した。反応後溶媒を留去し、残渣に10mlのメタノールを加え吸引濾取する。この生成物をメタノールで再結晶すると、図19の化学式67で表わされる無色針状晶が0.492g(収率95%)得られた。
【0145】
常法にしたがって測定したところ、化学式67で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は162乃至165℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.12(3H, d, J=4.9 Hz, NMe), 3.89(3H, s, OMe), 6.46(1H, s, 5−H), 7.40−7.52(3H, m, phenyl−H), 7.80−7.91(2H, m, phenyl−H), 10.00(1H, br s, NH)の位置にそれぞれピークが観測された。
【0146】
[実施例45] [4−ベンジルアミノ−3−メトキシカルボニル−6−フェニル−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図23の化学式87で表わされる化合物0.584gとベンジルアミン0.267gとを50mlのメタノールに加え、この溶液を30分加熱環流した。反応後溶媒を留去し、残渣に1mlのメタノールを加え吸引濾取する。この生成物をメタノールで再結晶すると、図19の化学式68で表わされる無色針状晶が0.502g(収率75%)得られた。
【0147】
常法にしたがって測定したところ、化学式68で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は197乃至198℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.90(3H, s, OMe), 4.64(2H, d, J=5.8 Hz, N−CH2−), 6.44(1H, s, 5−H), 7.32−7.52(8H, m, phenyl−H), 7.50−7.80(2H, m, phenyl−H), 10.44(1H, br s, NH)の位置にそれぞれピークが観測された。
【0148】
[実施例46] [4−ジメチルアミノ−3−メトキシカルボニル−6−フェニル−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図7の化学式28で表わされる化合物0.584gとジメチルアミン50%水溶液2mlとを50mlのメタノールに加え、この溶液を1時間加熱環流した。反応後溶媒を留去し、残渣を大量のメタノールで再結晶すると、図19の化学式69で表わされる無色針状晶が0.540g(収率98%) 得られた。
【0149】
常法にしたがって測定したところ、化学式69で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は140乃至145℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.11(6H, s, NMe2), 3.89(3H, s, OMe), 6.47(1H, s, 5−H), 7.40−7.52(3H, m, phenyl−H), 7.70−7.85(2H, m, phenyl−H)の位置にそれぞれのピークが観測された。
【0150】
[実施例47] [4−メチルアミノ−3−メトキシカルボニル−6−(4−メトキシフェニル)−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図7の化学式29で表わされる化合物0.644gとメチルアミン40%水溶液2mlとを50mlのメタノールに加え、この溶液を3時間加熱環流した。反応後溶媒を留去し、残渣を大量のメタノールで再結晶すると、図19の化学式70で表わされる無色針状晶が0.549g(収率95%)得られた。
【0151】
常法にしたがって測定したところ、化学式70で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は181乃至186℃であった。エタノール中で紫外吸収スペクトルを測定したところ、波長341nmに吸収極大を示した。また、固体状態で蛍光スペクトルを測定したところ、励起波長270nm、蛍光極大453nmを示した。さらに、重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.11(3H, d, J=5.2 Hz, NMe), 3.88(3H, s, OMe), 3.89(3H, s, OMe), 6.34(1H, s, 5−H), 6.97(2H, d, J=8.8 Hz, 3’, 5’−H), 7.85(2H, d, J=8.8 Hz, 2’, 6’−H), 9.96(1H, br s, NH) の位置にそれぞれピークが観察された。
【0152】
[実施例48] [4−ジメチルアミノ−3−メトキシカルボニル−6−(4−メトキシフェニル)−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図7の化学式29で表わされる化合物0.644gとジメチルアミン40%水溶液2mlとを50mlのメタノールに加え、この溶液を1時間加熱環流した。反応後溶媒を留去し、残渣を大量のメタノールで再結晶すると、図20の化学式71で表わされる無色針状晶が0.432g(収率72%)得られた。
【0153】
常法にしたがって測定したところ、化学式71で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は150乃至151℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.09(3H, s, NMe2), 3.85(3H, s, OMe), 3.88(3H, s, OMe), 6.36(1H, s, 5−H), 6.93(2H, d, J=9.1 Hz, 3’, 5’−H), 7.77(1H, d, J=9.1 Hz)の位置にそれぞれのピークが観測された。
【0154】
[実施例49] [3−メトキシカルボニル−6−(4−メトキシフェニル)−4−ピロリジノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図7の化学式29で表わされる化合物0.644gとピロリジン0.203gとを50mlのメタノールに加え、この溶液を3時間加熱環流した。反応後溶媒を留去し、残渣をメタノールで再結晶すると、図20の化学式72で表わされる無色針状晶が0.549g(収率72%)得られた。
【0155】
常法にしたがって測定したところ、化学式72で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は185乃至186℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が1.58(4H, m, pyrrolidino−H), 3.48(4H, m, pyrrolidino−H), 3.86(3H, s, OMe), 3.90(3H, s, OMe), 6.31(1H, s, 5−H), 6.95(2H, d, J=9.1 Hz, 3’, 5’−H), 7.77(2H, d, J=9.1 Hz, 2’, 6’−H)にそれぞれピークが観測された。
【0156】
[実施例50] [3−シアノ−6−(4−ジメチルアミノ)スチリル−4−モルホリノ−2H−ピラン−2−オン]
2−ピロン誘導体である図6の化学式24で表わされる化合物0.624gとモルホリン0.435gとを100mlのメタノールに加え、この溶液を40時間加熱環流した。反応後溶媒を留去し、残渣に10mlのメタノールを加え吸引濾取する。この生成物を大量のメタノールで再結晶すると図20の化学式73で表わされる赤色針状晶が0.210g(収率30%)得られた。
【0157】
常法にしたがって測定したところ、化学式73で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は245乃至255℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.07(6H, s, 2xNMe2), 3.82(8H, m, morpholino−H), 5.83(1H, s, 5−H), 6.34(1H, d, J=15.7 Hz, =CH), 6.67(2H, d, J=9.0 Hz, 3’, 5’−H), 7.40(2H, d, J=9.0 Hz, 2’, 6’−H), 7.54(1H, d, J=15.7 Hz, =CH)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0158】
[実施例51] [ジエチル 3-シアノ−6−フェニル−2−オキソ(2H)−ピラン−4−イルマロナート]
2H−ピロン誘導体である図2の化学式1で表される化合物1.22g及びジエチルマロナート1.60gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で1時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、10%塩酸で酸性とする。析出する結晶を吸引虜取し、エタノールから再結晶すると、図21の化学式75で表わされるピラン誘導体の白色針状結晶が1.48g(収率84%)得られた。
【0159】
常法にしたがって測定したところ、化学式75で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は146乃至148℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が1.34(6H, t, J=7.2 Hz, O−CH2−CH3), 4.29(4H, m, O−CH2−), 5.02(1H, s, −CH−), 7.17(1H, s, 5−H), 7.48−7.58(3H, m, phenyl−H), 7.88−7.92(2H, m, phenyl−H) の位置にそれぞれのピークが観測された。
【0160】
[実施例52] [ジメチル 3-シアノ−6−(4−メトキシフェニル)−2−オキソ(2H)−ピラン−4−イルマロナート]
2H−ピロン誘導体である図2の化学式4で表される化合物1.36g及びジメチルマロナート2.00gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で1時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、10%塩酸で酸性とする。析出する結晶を吸引虜取し、エタノールから再結晶すると、図21の化学式76で表わされるピラン誘導体の黄色針状結晶が1.42g(収率80%)得られた。
【0161】
常法にしたがって測定したところ、化学式76で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は180乃至183℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.86(6H, s, OMe), 3.90(3H, s, OMe), 5.03(1H, s, −CH−), 6.98(1H, s, 5−H), 7.13(2H, dd, J=0.9, 8.5 Hz, 3’, 5’−H), 7.87(2H, d, J=8.5 Hz, 2’, 6’−H) の位置にそれぞれのピークが観測された。
【0162】
[実施例53] [ジメチル 3-シアノ−6−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−2−オキソ(2H)−ピラン−4−イルマロナート]
2H−ピロン誘導体である図4の化学式12で表される化合物1.43g及びジメチルマロナート2.00gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で1時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、10%塩酸で中和する。析出する結晶を吸引虜取し、メタノールから再結晶すると、図21の化学式77で表わされるピラン誘導体の赤色針状結晶が1.44g(収率78%)得られた。
【0163】
常法にしたがって測定したところ、化学式77で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は187乃至190℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.12(6H, s, NMe2), 3.85(6H, s, OMe), 4.99(1H, s, −CH−), 6.69(2H, d, J=9.1 Hz, 3’, 5’−H), 6.90(1H, s, 5−H), 7.79(2H, d, J=9.1 Hz, 2’, 6’−H) の位置にそれぞれのピークが観測された。
【0164】
[実施例54] [ジエチル 3-シアノ−6−(4−N,N−ジメチルフェニル)−2−オキソ(2H)−ピラン−4−イルマロナート]
2H−ピロン誘導体である図4の化学式12で表される化合物1.36g及びジエチルマロナート1.60gとをジメチルスフォキシド20mlに溶解し、これに粉末の苛性ソーダ0.5gを加え、室温で1時間撹拌した。この反応混合物を水500mlに注ぎだし、10%塩酸で酸性とする。析出する結晶を吸引虜取し、エタノールから再結晶すると、図21の化学式78で表わされるピラン誘導体の橙赤色針状結晶が1.62g(収率81%)得られた。
【0165】
常法にしたがって測定したところ、化学式78で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は194乃至198℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が1.33(6H, t, J=7.2 Hz, O−CH2−CH3), 3.11(6H, s, NMe2), 4.30(4H, m, O−CH2−), 4.96(1H, s, −CH−), 6.69(2H, d, J=9.3 Hz, 3’, 5’−H), 6.91(1H, s, 5−H), 7.79(2H, d, J=9.3, Hz, 2’, 6’−H) の位置にそれぞれのピークが観測された。
【0166】
[実施例55] [ジメチル 3−シアノ−6−(4−ジメチルアミノ)スチリル−2−オキソ(2H)−ピラン−4−イルマロナート]
2−ピロン誘導体である図6の化学式25で表わされる化学物0.624gとジメチルマロナート0.66gとをジメチルスホキシド20mlに溶解し、この溶液の中に炭酸カリ0.55gを加え2時間室温で撹拌する。反応終了後、反応混合物を水300ml中に注ぎだし、10%塩酸で中和する。析出する沈殿物を吸引濾取する。乾燥後メタノールから再結晶すると図22の化学式81で表わされる黒赤色結晶が0.667g(収率84%)得られた。
【0167】
常法にしたがって測定したところ、化学式81で表わされる2H−ピロン誘導体の融点は200乃至202℃であった。重クロロホルム中で1H−NMRを測定したところ、化学シフトδ(ppm, TMS)が3.07(6H, s, NMe2), 3.04(3H, s, OMe), 4.95(1H, s, −CH−), 6.08(1H, s, 5−H), 6.45(1H, d, J=15.4 Hz, =CH), 6.67(2H, d, J=9.0 Hz, 3’, 5’−H), 7.44(2H, dd, J=2.2, 9.0 Hz, 2’, 6’−H), 7.63(1H, d, J=15.4 Hz, =CH)の位置にそれぞれピークが観察された。
【0168】
化学式1乃至化学式81(一部、実施例参照)の2H−ピロン誘導体の物性を表1乃至表4に纏めた。吸収極大の波長は、エタノールに溶解して測定したものであり、また、蛍光スペクトルは固体状態で島津UV3100PCを用いて測定した。なお、対照には、前述の[化24]で表わせる公知のトリス(8−キノリノール)アルミニウム化合物を用いた。
【0169】
【表1】

【0170】
表1及び表2の結果に見られるように、この実施の形態の2H−ピロン誘導体においては、対照の[化24]の化合物と比較して、一部低い蛍光を示す化合物もあるが、ほとんどの化合物が同等もしくはそれ以上の蛍光を示した。化学式1乃至化学式36は4−メチルチオ−2H−ピロン誘導体で6位のアリール基によってその蛍光の度合が相当異なる。6位のフェニル基では一般にメトキシ基のような電子供与基の方が対照の化合物と比較して強い蛍光を示した。そのメトキシ基でもその位置及びその個数によってもその蛍光の強さは異なる。また、ナフチル基等の2環性アリール基でもその蛍光は強い。このことは6位の多環性芳香族誘導体でも強い蛍光を示すことが示唆される。化合物フェニル基上に電子吸引基のシアノ基がある化学式13で表わせる化合物の蛍光は全く蛍光を示さない。同様に電子不足型複素環化合物のピリジル基を6位に持つ化学式21で表わせる化合物でも同様、その蛍光は微弱である。ところが同じ6位に電子過剰型の複素環化合物であるフランやチオフェン誘導体、化学式17乃至化学式20で表わせる化合物ではその蛍光は強くなる。2H−ピロン環とアリール基との間に二重結合を導入した6−スチル−2H−ピロン誘導体(化学式22乃至化学式27)でも同様相当の蛍光を示す。
【0171】
蛍光色素で赤色蛍光は、有機電界素子用色素の開発にとってきわめて重要である。本実施の形態の2H−ピロン誘導体の中で、6位のフェニル基のパラ位にジメチルアミノ基が導入された化学式12で示される化合物の吸収極大波長は、467nmでその蛍光スペクトルは波長608nmで公知の[化7]で表される化合物の波長589nmより長波長側で発光する。さらにこの化合物に二重結合を導入した化学式25で示される化合物は波長610nmで発光する赤色発光体である。化学式26で表されるN−エチル体は614nmで発光し、化学式27で表わせる化合物は波長620nmで発光する。これは本実施の形態の4−メチルチオ−2H−ピロン誘導体の中で最も長波長側で発光する化合物である。これら一連のパラN,N−ジメチルアミノフェニル誘導体は赤色有機電界素子として極めて有用である。
【0172】
【表2】

【0173】
さらに重要な事は、表1に示しているように2H−ピロン誘導体の3位には電子吸引基としてシアノ基の存在は欠かせない事実であるが、表2に示すように電子吸引基としてメチルエステル基やスルホニル基のように、4位のメチルチオ基の硫黄原子との相互作用がある化合物では、その発光強度は対照とする[化24]で示される化合物よりも3.94倍であった。特に、スルホニル体である化学式36で示される化合物は実に11.27倍の発光.能を示した。本実施の形態の範囲はこの3位の置換基が種々の電子吸引性置換基におよぶ事を意味している。それは各種メチルエステル基、エチルエステル基のようなアルキル基やアリール基も含まれる。またアセチル基やアロイル基、それに種々のアリール基も含む。また、アリール基としてフェニル基のみを示しているが、フェニル基に限定されるものではない。このアリール基として多環性アリール基をはじめ各種複素環化合物や、スチリール基も含んでいる。さらにアリール基上の置換着としては電子吸引基やメトキシ基やアミノ基等の電子供与基全般を意味している。
【0174】
化学式37乃至化学式73(一部、実施例参照)の2H−ピロン誘導体の物性を表3に纏めた。吸収極大の波長は、エタノールに溶解して測定したものであり、また、蛍光スペクトルは固体状態で島津UV3100PCを用いて測定した。なお、対照には、[化24]で表わせる公知のトリス(8−キノリンノール)アルミニウム(以下Alq3)化合物を用いた。
【0175】
【表3】

【0176】
表3に示すように化学式37や化学式38で表わせる4−メトキシ2H−ピロン誘導体は、対照化学物の[化24]で表わせる化合物よりは2.88倍強く発光し、3−シアノ−6−(4−メトキシフェニル)−4−メトキシ−2H−ピロンは5.14倍の発光を示した。このように4位のメチルチオ基を他の原子、すなわち酸素原子であるメトキシ基に変えるとその蛍光強度は強められる。ここではメトキシ基だけについて検討しているが、各種アルコキシ基やフェノキシ基等も本実施の形態に含まれる。
【0177】
化学式1乃至化学式36で表される4−メチルチオ−2H−ピロン誘導体と各種アミン誘導体との反応で得られる化学式37乃至化学式73で表される4−アミノ−2H−ピロン誘導体(一部、実施例参照)の吸収極大値はやや短波長側に移動するが、蛍光強度は著しく増強される。特に、化学式54で表わされる4−ジメチルアミノ−6−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−3−シアノ−2H−ピロンは対照化合物の9.9倍であった。6位のフェニル基のパラ位にジメチルアミノ基のある化学式54乃至化学式57の吸収極大は400nmから410nmに、それらの蛍光スペクトルは517nm−606nmで発光する。化学式54の蛍光は対照化合物の9.90倍と4−アミノ−2H−ピロン誘導体の中で最も強かった。化学式65で表わされる6位の複素環基の3−シアノ−4−モルホリノ−6−チエニル−2H−ピロンも対照化合物の6.99倍の蛍光を示した。このように化学式39乃至化学式73の化合物は図23の化学式87で表わされる化合物と2級アミンとの反応で得られるが、1級アミンとの反応で得られ化学式70は蛍光が弱められる。
【0178】
表4には4−メチルチオ−2H−ピロン誘導体の4位のメチルチオ基を活性メチレン化合物との反応で置換した化学式74乃至化学式81(一部、実施例参照)で表される化合物の物性を示している。吸収極大の波長は、エタノールに溶解して測定したものであり、また、蛍光スペクトルは固体状態で島津UV3100PCを用いて測定した。なお、対照には、[化24]で表わせる公知Alq3化合物を用いた。
【0179】
【表4】

【0180】
化学式1乃至化学式36で表される4−メチルチオ−2H−ピロン誘導体から活性メチレン化合物の反応で得られる化学式74乃至化学式81で表される2H−ピロン誘導体の蛍光は、それぞれの原料の4−メチルチオ−2H−ピロン誘導体よりも強い。またその蛍光波長もやや長波長側に見られる。
【0181】
特に赤色蛍光化合物である化学式12や化学式25で表わされる化合物から活性メチレン化合物との反応で得られる化学式77,化学式78,それに化学式81で表される2H−ピロン誘導体は、その蛍光がさらに強められる。対照のDCM等の赤色蛍光化合物より蛍光は強く、その蛍光スペクトルは590nmから620nmに極大値があり赤色有機電界素子として極めて有用である。
【0182】
本実施の形態の大部分は固体状態で強い蛍光を示すが、橙色から赤色蛍光物質に至っては結晶状態ではその蛍光が弱く相対的比較ができない場合がある。表5に化学式12乃至化学式81で表せる化合物のジクロロメタン中での吸収極大波長と蛍光極大波長とその励起波長を示している。標準物質としてDCMを使用している。化学式12で表される2H−ピロン誘導体は結晶状態でも強い蛍光(表3参照)を示したが、ジクロロメタン中でもDCMの8.54倍と強い蛍光を示した。
【0183】
【表5】

【0184】
この実施の形態の有機蛍光化合物は、固体状態もしくは溶液状態で強い蛍光を示すもので、特に固体状態で強い蛍光を示すものは有機電界素子として極めて重要である。発光体や情報を視覚的に表示する情報表示機器として必要な光の三原色、すなわち青緑赤色で、蛍光スペクトルで表わすと440nmから640nmの波長領域にある。本実施の形態の2H−ピロン誘導体はただ1種類の化合物でその三原色に必要な全領域に蛍光極大をもつ。特に、これまで開発が困難とされていた617nmから640 nmに蛍光極大がある赤色蛍光化合物は、発光体や情報を視覚的に表示する情報表示機器において多種多様の用途を有する。有機電界素子を光源とする発光体は、消費電力が小さいうえに、軽量な平板状に構成することができるので、一般照明の光源に加えて、液晶素子、複写装置、印字装置、電子写真装置、コンピューター及びその応用機器、工業制御機器、電子計測機器、分析機器、計器一般、通信機器、医療用電子計測機器、自動車、船舶、航空機、宇宙船などに搭載する機器、航空機の管制機器、インテリア、看板、標識などの省エネルギーにして省スペースな光源として有用である。この実施の形態の蛍光体はそれぞれの蛍光極大の色をそれぞれ単色光としても利用可能であるが、それぞれの別の領域で発光する有機電界素子と組み合わせても利用可能である。その実現によってテレビジョン、コンピューター、ビデオ、ゲーム機、カーナビゲション、オシロスコープ、レーダー、ソナーなどの情報表示機器に用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】本発明に係る一般式1乃至一般式4で表せる2H−ピロン誘導体の化学式を示す図である。
【図2】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式1乃至化学式5を示す図である。
【図3】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式6乃至化学式10を示す図である。
【図4】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式11乃至化学式15を示す図である。
【図5】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式16乃至化学式20を示す図である。
【図6】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式21乃至化学式25を示す図である。
【図7】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式26乃至化学式30を示す図である。
【図8】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式31乃至化学式35を示す図である。
【図9】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式36乃至化学式40を示す図である。
【図10】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式41乃至化学式45を示す図である。
【図11】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式46乃至化学式48を示す図である。
【図12】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式49乃至化学式50を示す図である。
【図13】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式51乃至化学式53を示す図である。
【図14】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式54乃至化学式55を示す図である。
【図15】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式56乃至化学式58を示す図である。
【図16】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式59乃至化学式60を示す図である。
【図17】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式61乃至化学式63を示す図である。
【図18】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式64乃至化学式65を示す図である。
【図19】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式66乃至化学式70を示す図である。
【図20】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式71乃至化学式73を示す図である。
【図21】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式74乃至化学式78を示す図である。
【図22】本発明に係る2H−ピロン誘導体の例である化学式79乃至化学式81を示す図である。
【図23】本発明に係る化学式87を示す図である。
【図24】本発明に係る化学式39で表わされる2H−ピロン誘導体の蛍光スペクトル図である。
【図25】本発明に係る化学式81で表わされる2H−ピロン誘導体の蛍光スペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1、一般式2、一般式3、又は一般式4のいずれかで表される2H−ピロン誘導体からなる
ことを特徴とする有機蛍光性化合物。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

一般式1に示すAr(アリール基)は各種芳香族化合物を意味し、単環性のフェニル基、双環性のナフチル基、縮合多環性芳香族化合物、電子過剰芳香族複素環化合物、電子不足芳香族複素環化合物を表す。ピロン環上の3位の置換基R1は、電子吸引基を表す。ピロン環上の4位の置換基R2は、硫黄原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも1つを含む置換基を表す。ピロン環上の5位の置換基R3は、水素原子、各種アルキル基、フェニル基を表す。
一般式2で示すピロン環上の6位のフェニル基の4位の置換アミノ基の置換基Rは、アルキル基またはアリール基を表す。ピロン環上の3位の置換基R1は、電子吸引基を表す。ピロン環上の4位の置換基R2は、硫黄原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも1つを含む置換基を表す。
一般式3に示すピロン環上の6位のスチリル基の末端のフェニル基上の4位の置換基R3は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子の少なくとも1つを含む置換基である。ピロン環上の3位の置換基R1は、電子吸引基を表す。ピロン環上の4位の置換基R2は、硫黄原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも1つを含む置換基を表す。
一般式4で示すピロン環上の6位のフェニル基の4位の置換アミノ基の置換基Rは、アルキル基またはアリール基を表す。ピロン環上の3位の置換基R1は、電子吸引基を表す。ピロン環上の4位の置換基R2は、硫黄原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも1つを含む置換基を表す。
【請求項2】
前記アリール基が、アルキル基、またはヘテロ原子を有する置換基とされた
ことを特徴とする請求項1に記載の有機蛍光性化合物。
【請求項3】
前記電子吸引基が、シアノ基、各種エステル基、スルホニル基のいずれかとされた
ことを特徴とする請求項1に記載の有機蛍光性化合物。
【請求項4】
前記アルキルチオ基が、メチルチオ基またはエチルチオ基のいずれかとされた
ことを特徴とする請求項1に記載の有機蛍光性化合物。
【請求項5】
前記アルコキシ基が、ハイドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基のいずれかとされた
ことを特徴とする請求項1に記載の有機蛍光性化合物。
【請求項6】
前記一般式1に示すアリール基を単環性のフェニル基で表したとき、その環上の置換基が、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲノ基のいずれかとされた
ことを特徴とする請求項1に記載の有機蛍光性化合物。
【請求項7】
前記一般式1に示すアリール基が電子過剰芳香族複素環化合物とされ、
前記電子過剰芳香族複素環化合物が、フリル基、キノリル基、フタジル基のいずれかとされた
ことを特徴とする請求項1に記載の有機蛍光性化合物。
【請求項8】
前記一般式1に示すアリール基が電子不足芳香族複素環化合物とされ、
前記電子不足芳香族複素環化合物が、ピリジル基、キノリル基、フタジル基のいずれかとされた
ことを特徴とする請求項1に記載の有機蛍光性化合物。
【請求項9】
ピロン環上の5位の置換基R3と6位のアリール基とが架橋され、多環性複素環化合物とされた
ことを特徴とする請求項1に記載の有機蛍光性化合物。
【請求項10】
前記架橋が、メチレン基またはエチレン基により形成された
ことを特徴とする請求項9に記載の有機蛍光性化合物。
【請求項11】
前記架橋が、硫黄原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも1つを含む置換基により形成された
ことを特徴とする請求項9に記載の有機蛍光性化合物。
【請求項12】
440nmから640nmに発光極大を有する
ことを特徴とする請求項1乃至11に記載の有機蛍光性化合物。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の有機蛍光性化合物の製造方法であって、
一般式5で表せる化合物に、請求項1に記載の一般式1のArに対応したArを有する一般式6で表せる化合物を反応させる工程を経由する
ことを特徴とする有機蛍光性化合物の製造方法。
【化5】

置換基Xは、CN,COOMeである。置換基R1は、CN,COOMe,COOEt,SO−Ph,SO−Ph−Meである。
【化6】

【請求項14】
請求項1に記載の一般式1、一般式2、一般式3、及び一般式4で表される2H−ピロン誘導体骨格の1位から6位の置換基、6位のアリール基上の置換基による蛍光の構造活性相関関係を明らかにする
ことを特徴とする有機蛍光性化合物の製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の有機蛍光性化合物を用いて発光層が構成されている
ことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項16】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の有機蛍光性化合物を用いてなる
ことを特徴とする有機電界発光素子用発光剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2006−206523(P2006−206523A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21968(P2005−21968)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【Fターム(参考)】