説明

有機酸含有組成物及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】駆動電圧に対する輝度半減時の電圧上昇がなく、かつ、発光寿命の長い有機EL素子を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物と一般式(1)で表される繰り返し単位を含有しない少なくとも1種の有機酸を含む組成物。一般式(1):


(式中、Z1〜Z4は置換基を示す。p1、p2は0〜5の整数、p3、p4は0〜4の整数を示し、p1〜p4が2以上の場合、複数存在するそれぞれのZ1、Z2、Z3およびZ4は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素基または置換基を示す。X1およびX2は互いに同一であっても異なっていてもよい無置換または置換された二価の芳香族基を示し、lとmは0または1を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物と一般式(1)で表される繰り返し単位を含有しない少なくとも1種の有機酸を含む組成物及びそれを用いて形成される有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子の再結合エネルギーにより蛍光物質が発光する原理を利用した自発光素子である。
有機EL素子は、例えば、正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層、等の各機能を有する層の積層によって構成される。そして、発光層はホスト材料とドーパント材料とで構成され、ホスト材料からドーパント材料にエネルギー移動等が生じ、ドーパント材料が発光機能を担う。
【0003】
寿命や発光効率等に優れた有機EL素子を構成するためのホスト材料として、アントラセン誘導体が知られている。
例えば、銅フタロシアニン系化合物を正孔注入層、アントラセン誘導体を発光層のホスト材料、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)錯体を電子輸送層とした長寿命、高発光効率の有機EL素子が開示されている。
しかしながらこのような素子構成では駆動電圧が高いという問題点があった。
【0004】
ここで、正孔輸送性能が高く、有機EL素子全体の駆動電圧の低下が望める正孔注入材料として、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSSA)とを含有する組成物が知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
最近では、PEDOTに過フッ化ポリマーを添加した組成物を正孔注入層とすることで、有機EL素子の長寿命化が図られている(特許文献2、3、4、5、6)。
しかし、このような有機EL素子の寿命は、従来の有機EL素子の寿命、即ちアントラセン誘導体が本来有する寿命には及ばない短いものであった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−91081号公報
【特許文献2】特開2003−297582号公報
【特許文献3】特開2005−232452号公報
【特許文献4】特表2006−500461号公報
【特許文献5】特表2006−500463号公報
【特許文献6】特開2006−313931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、駆動電圧に対する輝度半減時の電圧上昇を低減し、かつ、発光寿命の長い有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、所定の一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物と一般式(1)で表される繰り返し単位を含有しない有機酸を含有する組成物を、有機EL素子の有機薄膜層の材料として使用することにより、駆動電圧に対する輝度半減時の電圧上昇値の低減と、素子の発光寿命を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、以下の組成物等が提供できる。
1.一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物と一般式(1)で表される繰り返し単位を含有しない少なくとも1種の有機酸を含む組成物。
一般式(1):
【化1】


(式中、Z1〜Z4は置換基を示す。p1、p2は0〜5の整数、p3、p4は0〜4の整数を示し、p1〜p4が2以上の場合、複数存在するそれぞれのZ1、Z2、Z3およびZ4は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素基または置換基を示す。X1およびX2は互いに同一であっても異なっていてもよい無置換または置換された二価の芳香族基を示し、lとmは0または1を示す。Ar1とAr2は互いに同一であっても異なっていてもよい無置換または置換された一価の芳香族基を示し、Yは無置換または置換された二価の芳香族基を示し、sは0〜1000の整数を示し、tは1〜1000の整数を示す。但し、Ar1、Ar2、X1、X2、Yで示される芳香族基上の置換基およびZ1〜Z4の少なくとも一つが、スルホ基、カルボキシル基、ホスホリル基およびヒドロキシ基からなる群から選択される基である。)
2.前記有機酸がポリマー有機酸である1に記載の組成物。
3.前記ポリマー有機酸が含フッ素ポリマー有機酸である2に記載の組成物。
4.前記含フッ素ポリマー有機酸の全重量に対するフッ素原子の比率が20重量%以上80重量%以下である3に記載の組成物。
5.さらに、少なくとも1種の有機溶媒を含む1〜4のいずれかに記載の組成物。
6.有機エレクトロルミネッセンス材料である1〜5のいずれかに記載の組成物。
7.5に記載の組成物を有機エレクトロルミネッセンス材料用として被成膜領域に塗布し、組成物を塗布した被成膜領域から有機溶媒を蒸発させて有機エレクトロルミネッセンス材料薄膜を成膜する有機エレクトロルミネッセンス材料薄膜の形成方法。
8.6に記載の組成物を用いて得られる有機エレクトロルミネッセンス材料薄膜。
9.8に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料薄膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
10.陽極と陰極と、前記陽極と陰極の間に、発光層を含む一層以上の有機薄膜層を有し、前記有機薄膜層の少なくとも一層が8に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料薄膜からなる9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、有機EL素子の有機薄膜層を形成する好適な材料(組成物)を提供できる。また、有機EL素子の発光寿命を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0012】
本発明の組成物は、一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物と一般式(1)で表される繰り返し単位を含有しない少なくとも1種の有機酸を含む。
【0013】
本発明の高分子化合物は、一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物である。
一般式(1):
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、Z1〜Z4は置換基を示す。p1、p2は0〜5の整数、p3、p4は0〜4の整数を示し、p1〜p4が2以上の場合、複数存在するそれぞれのZ1、Z2、Z3およびZ4は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素基または置換基を示す。X1およびX2は互いに同一であっても異なっていてもよい無置換または置換された二価の芳香族基を示し、lとmは0または1を示す。Ar1とAr2は互いに同一であっても異なっていてもよい無置換または置換された一価の芳香族基を示し、Yは無置換または置換された二価の芳香族基を示し、sは0〜1000の整数を示し、tは1〜1000の整数を示す。但し、Ar1、Ar2、X1、X2、Yで示される芳香族基上の置換基およびZ1〜Z4の少なくとも一つが、スルホ基、カルボキシル基、ホスホリル基およびヒドロキシ基からなる群から選択される基である。)
【0016】
一般式(1)において、ArとArは、独立に一価の芳香族基を表し、一価の芳香族炭化水素基あるいは一価の芳香族複素環基が包含される。これらの基は、無置換であっても置換されていても良い。これらの基が無置換または置換された芳香族炭化水素基の場合、該基の環を構成する炭素数は6〜30が好ましく、炭素数6〜20がより好ましい。
一方、これらの基が無置換または置換された芳香族複素環基である場合、該基の環を構成する炭素数は4〜30が好ましく、炭素数4〜20がより好ましい。ArとArは、同一の基であることが好ましく、同一の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
【0017】
ArとArの芳香族炭化水素基、あるいは芳香族複素環基の具体例としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、2−フルオロ−9−フェナントリル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−フルオレニル基、5−アセナフチレニル基、3−フルオランテニル基、1−トリフェニレニル基、2−トリフェニレニル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、3−ペリレニル基、4−キノリル基、2−キノリル基、4−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、3−ピリダジニル基、4−ピリダジニル基、2−ピラジニル基、3−フリル基、2−フリル基、2−ベンゾフリル基、4−ジベンゾフラニル基、2−ジベンゾフラニル基、3−チエニル基、2−チエニル基、ジベンゾチオフェン−4−イル基、ジベンゾチオェン−2−イル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基、カルバゾール−3−イル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基を挙げることができる。
ArとArは好ましくは、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−フルオレニル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、あるいは、4−フェニルフェニル基を表す。
【0018】
ArとArの芳香族炭化水素基、あるいは芳香族複素環基上の置換基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、一置換アミノ基、二置換アミノ基、スルホ基、ホスホリル基および一般式(1'a)〜(3'a):
−(O)L'−D' (1'a)
−O(C=O)−D' (2'a)
−(C=O)O−D' (3'a)
(式中、D'は無置換または置換された直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基、無置換または置換された炭素数4〜12の一価の芳香族基、無置換または置換された炭素数7〜20のアラルキル基を示し、L'は0または1を示す)
で表される基を挙げることができ、ニ置換アミノ基、スルホ基および一般式(1'a)で表される基が好ましい。一般式(1'a)で表される基としては、L'は0であることが好ましい。
ArとArの芳香族炭化水素基、あるいは芳香族複素環基上の置換基の置換位置は特に制限されない。また、置換数は制限されないが、好ましくは0〜5である。
【0019】
D'の無置換または置換された直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、2−エチルブチル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、n−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−プロピルペンチル基、2,2−ジメチルヘキシル基、2,6−ジメチル−4−ヘキシル基、3,5,5−トリメチルペンチル基、
シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチル基、2−エチルブチル基、
3,3−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルナンメチル基、
シクロブチル基、1−メチルシクロペンチル基、4−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、2,3−ジメチルシクロヘキシル基、2,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,6−ジメチルシクロヘキシル基、3,4−ジメチルシクロヘキシル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、
メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−ブトキシメチル基、n−ヘキシルオキシメチル基、(2−エチルブチルオキシ)メチル基、n−オクチルオキシメチル基、n−デシルオキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−プロポキシエチル基、2−iso−プロポキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、2−n−ペンチルオキシエチル基、2−n−ヘキシルオキシエチル基、2−(2'−エチルブチルオキシ)
エチル基、2−n−ヘプチルオキシエチル基、2−n−オクチルオキシエチル基、2−(2'−エチルヘキシルオキシ)エチル基、2−シクロヘキシルオキシエチル基、2−メトキシプロピル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−n−プロポキシプロピル基、3−iso−プロポキシプロピル基、3−(n−ブトキシ)プロピル基、3−(n−ペンチルオキシ)プロピル基、3−(n−ヘキチルオキシ)プロピル基、3−(2'−エチルブトキシ)プロピル基、3−(n−オクチルオキシ)プロピル基、3−(2'−エチルヘキシルオキシ)プロピル基、3−シクロヘキシルオキシプロピル基、4−メトキシブチル基、4−エトキシブチル基、4−n−プロポキシブチル基、4−iso−プロポ
キシブチル基、4−n−ブトキシブチル基、4−n−ヘキシルオキシブチル基、4−n−オクチルオキシブチル基、5−メトキシペンチル基、
5−エトキシペンチル基、5−n−エトキシペンチル基、6−エトキシヘキシル基、6−イソプロポキシヘキシル基、6−n−ブトキシヘキシル基、6−n−ヘキシルオキシヘキシル基、4−メトキシシクロヘキシル基、7−エトキシヘプチル基、7−イソプロポキシヘプチル基、8−メトキシオクチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−(2'−メトキシエトキシ)エチル基、2−(2'−エトキシエトキシ)エチル基、2−(2'−n−ブトキシエトキシ)エチル基、3−(2'−エトキシエトキシ)プロピル基、2−アリルオキシエチル基、2−(4'−ペンテニルオキシ)エチル基、3−アリルオキシプロピル基、
3−(2'−ヘキセニルオキシ)プロピル基、3−(2'−ヘプテニルオキシ)プロピル基、3−(1'−シクロヘキセニルオキシ)プロピル基、4−アリルオキシブチル基、ベンジルオキシメチル基、2−ベンジルオキシエチル基、2−フェネチルオキシエチル基、2−(4'−メチルベンジルオキシ)エチル基、2−(2'−メチルベンジルオキシ)エチル基、2−(4'−フルオロベンジルオキシ)エチル基、2−(4'−クロロベンジルオキシ)エチル基、3−ベンジルオキシプロピル基、3−(4'−メトキシベンジルオキシ)プロピル基、4−ベンジルオキシブチル基、2−(ベンジルオキシメトキシ)エチル基、2−(4'−メチルベンジルオキシメトキシ)エチル基、フェニルオキシメチル基、4−メチルフェニルオキシメチル基、3−メチルフェニルオキシメチル基、2−メチルフェニルオキシメチル基、4−メトキシフェニルオキシメチル基、4−フルオロフェニルオキシメチル基、4−クロロフェニルオキシメチル基、2−クロロフェニルオキシメチル基、2−フェニルオキシエチル基、2−(4'−メチルフェニルオキシ)エチル基、2−(4'−エチルフェニルオキシ)エチル基、2−(4'−メトキシフェニルオキシ)エチル基、
2−(4'−クロロフェニルオキシ)エチル基、2−(4'−ブロモフェニルオキシ)エチル基、2−(1'−ナフチルオキシ)エチル基、2−(2'−ナフチルオキシ)エチル基、3−フェニルオキシプロピル基、3−(2'−ナフチルオキシ)プロピル基、4−フェニルオキシブチル基、4−(2'−エチルフェニルオキシ)ブチル基、5−(4'−tert−ブチルフェニルオキシ)ペンチル基、6−(2'−クロロフェニルオキシ)ヘキシル基、8−フェニルオキシオクチル基、2−(2'−フェニルオキシエトキシ)エチル基、3−(2'−フェニルオキシエトキシ)プロピル基、4−(2'−フェニルオキシエトキシ)ブチル基、
n−ブチルチオメチル基、n−ヘキシルチオメチル基、2−メチルチオエチル基、2−エチルチオエチル基、2−n−ブチルチオエチル基、2−n−ヘキシルチオエチル基、2−n−オクチルチオエチル基、2−n−デシルチオエチル基、3−メチルチオプロピル基、3−エチルチオプロピル基、3−n−ブチルチオプロピル基、4−エチルチオブチル基、4−n−プロピルチオブチル基、4−n−ブチルチオブチル基、5−エチルチオペンチル基、6−メチルチオヘキシル基、6−エチルチオヘキシル基、6−n−ブチルチオヘキシル基、8−メチルチオオクチル基、2−(2'−メトキシエチルチオ)エチル基、4−(
3'−エトキシプロピルチオ)ブチル基、2−(2'−エチルチオエチルチオ)エチル基、
2−アリルチオエチル基、2−ベンジルチオエチル基、3−(4'−メチルベンジルチオ)プロピル基、4−ベンジルチオブチル基、2−(2'−ベンジルオキシエチルチオ)エチル基、3−(3'−ベンジルチオプロピルチオ)プロピル基、2−フェニルチオエチル基、2−(4'−メトキシフェニルチオ)エチル基、2−(2'−フェニルオキシエチルチオ)エチル基、3−(2'−フェニルチオエチルチオ)プロピル基、
2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基、6−ヒドロキシヘキシル基、5−ヒドロキシヘプチル基、8−ヒドロキシオクチル基、2−ヒドロキシシクロヘキシル基などを挙げることができる。
【0020】
D'の芳香族基は、一価の芳香族炭化水素基あるいは一価の芳香族複素環基が包含される。これらの基は、無置換であっても置換されていてもよい。これらの基が無置換または置換された芳香族炭化水素基の場合、該基の環を構成する炭素数は6〜12が好ましい。
一方、これらの基が無置換または置換された芳香族複素環基である場合、該基の環を構成する炭素数は4〜12が好ましい。
【0021】
D'の芳香族炭化水素基あるいは芳香族複素環基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、5−アセナフチレニル基、4−キノリル基、2−キノリル基、4−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、3−ピリダジニル基、4−ピリダジニル基、2−ピラジニル基、3−フリル基、2−フリル基、2−ベンゾフリル基、4−ジベンゾフラニル基、2−ジベンゾフラニル基、3−チエニル基、2−チエニル基、ジベンゾチオフェン−4−イル基、ジベンゾチオフェン−2−イル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基、カルバゾール−3−イル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、などを挙げることができる。
【0022】
D'の芳香族基上の置換基としては、例えば、スルホ基、カルボキシル基、ホスホリル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子および直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が挙げられる。
【0023】
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0024】
ここで、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基は、無置換であっても置換されていてもよい。アルキル基としては、炭素数1〜16のものが好ましく、炭素数1〜8のものがより好ましい。無置換または置換された直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基の具体例としては、D'の無置換または置換された直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基として示したものを挙げることができる。
【0025】
D'の無置換または置換された炭素数7〜20のアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α−エチルベンジル基、フェネチル基、α−メチルフェネチル基、β−メチルフェネチル基、α,α−ジメチルベンジル基、α,α−ジメチルフェネチル基、4−メチルフェネチル基、4−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、2−メチルベンジル基、4−エチルベンジル基、2−エチルベンジル基、4−イソプロピルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、2−tert−ブチルベンジル基、4−tert−ペンチルベンジル基、4−シクロヘキシルベンジル基、4−n−オクチルベンジル基、4
−tert−オクチルベンジル基、4−アリルベンジル基、4−ベンジルベンジル基、4−フェネチルベンジル基、4−フェニルベンジル基、4−(4'−メチルフェニル)ベンジル基、4−メトキシベンジル基、2−メトキシベンジル基、2−エトキシベンジル基、4−n−ブトキシベンジル基、4−n−ヘプチルオキシベンジル基、4−n−デシルオキシベンジル基、4−n−テトラデシルオキシベンジル基、4−n−ヘプタデシルオキシベンジル基、
3,4−ジメトキシベンジル基、4−メトキシメチルベンジル基、4−イソブトキシメチルベンジル基、4−アリルオキシベンジル基、4−ビニルオキシメチルベンジル基、4−ベンジルオキシベンジル基、4−フェネチルオキシベンジル基、4−フェニルオキシベンジル基、3−フェニルオキシベンジル基、
4−ヒドロキシベンジル基、3−ヒドロキシベンジル基、2−ヒドロキシベンジル基、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル基、4−フルオロベンジル基、2−フルオロベンジル基、4−クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、2−クロロベンジル基、3,4−ジクロロベンジル基、ジフェニルメチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基などを挙げることができる。
【0026】
前記の一置換アミノ基、または二置換アミノ基の置換基としては、無置換または置換された直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、および無置換または置換された芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を挙げることができる。
【0027】
ここで、無置換または置換された直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基としては、炭素数1〜16のものが好ましく、炭素数1〜8のものがより好ましい。置換基の具体例としては、D'の無置換または置換された直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基として示したものを挙げることができる。
【0028】
ここで、無置換または置換された芳香族炭化水素基としては、環を構成する炭素数が6〜30のものが好ましい。無置換または置換された芳香族複素環基としては、環を構成する炭素数が4〜30のものが好ましい。
【0029】
無置換または置換された芳香族炭化水素基、または、無置換または置換された芳香族複素環基の具体例としては、Ar とAr の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基の具体例として示したものを挙げることができる。
【0030】
芳香族炭化水素基または芳香族複素環基の置換基としては、スルホ基、カルボキシル基、ホスホリル基、ヒドロキシル基および無置換または置換された直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基を挙げることができる。無置換または置換された直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基としては、炭素数1〜16のものが好ましく、炭素数1〜8のものがより好ましい。置換基の具体例としては、D'の無置換または置換された直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基として示したものを挙げることができる。
【0031】
一置換アミノ基および二置換アミノ基の具体例としては、例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−フェニルアミノ基、N−(1−ナフチル)アミノ基、N−(2−ナフチル)アミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(1−ナフチル)アミノ基、N,N−ジ(2−ナフチル)アミノ基、9H−カルバゾール−9−イル基、10H−フェノチアジン−10−イル基、10H−フェノキサジン−10−イル基、N−フェニル−N−(1−ナフチル)アミノ基、N−フェニル−N−(2−ナフチル)アミノ基、N−フェニル−N−(1−アン
トラセニル)アミノ基、N−フェニル−N−(9−アントラセニル)アミノ基、N−フェニル−N−(1−フェナントリル)アミノ基、N−フェニル−N−(2−フェナントリル)アミノ基、N−フェニル−N−(3−フェナントリル)アミノ基、N−フェニル−N−(4−フェナントリル)アミノ基、N−フェニル−N−(9−フェナントリル)アミノ基、N−フェニル−N−(1−ピレニル)アミノ基、N−フェニル−N−(2−ピレニル)アミノ基、N−フェニル−N−(4−ピレニル)アミノ基、N−フェニル−N−(2−フルオレニル)アミノ基、N−フェニル−N−(5−アセナフチレニル)アミノ基、N−フェニル−N−(3−フルオランテニル)アミノ基、N−フェニル−N−(1−トリフェニレニル)アミノ基、N−フェニル−N−(2−トリフェニレニル)アミノ基、N−フェニル−N−(1−ナフタセニル)アミノ基、N−フェニル−N−(2−ナフタセニル)アミノ基、N−フェニル−N−(9−ナフタセニル)アミノ基、N−フェニル−N−(3−ペリレニル)アミノ基、
N−フェニル−N−(4−キノリル)アミノ基、N−フェニル−N−(2−キノリル)アミノ基、N−フェニル−N−(2−ピリジル)アミノ基、N−フェニル−N−(3−ピリジル)アミノ基、N−フェニル−N−(4−ピリジル)アミノ基、N−フェニル−N−(2−ピリミジル)アミノ基、N−フェニル−N−(3−チエニル)アミノ基、N−フェニル−N−(2−フェニルフェニル)アミノ基、N−フェニル−N−(3−フェニルフェニル)アミノ基、N−フェニル−N−(4−フェニルフェニル)アミノ基、N,N−ビス[4−(ジフェニルアミノ)フェニル]アミノ基、N,N−ビス[3−(ジフェニルアミノ)
フェニル]アミノ基、N,N−ビス[4−{N'−フェニルーN'−(2−ナフチル)アミノ}フェニル]アミノ基、N,N−ビス[3−{N'−フェニルーN'−(2−ナフチル)アミノ}フェニル]アミノ基、N,N−ビス[4−{N'−フェニルーN'−(1−ナフチル)アミノ}フェニル]アミノ基、N,N−ビス[3−{N'−フェニルーN'−(1−ナフチル)アミノ}フェニル]アミノ基、N,N−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]アミノ基、N,N−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]アミノ基、
N,N−ビス(4−スルホフェニル)アミノ基、N,N−ビス[1−(8−スルホナフチル]アミノ基、N,N−ジ[2−(8−スルホナフチル)]アミノ基、N−(4−スルホフェニル)−N−[1−(8−スルホナフチル)]アミノ基、N−(4−スルホフェニル)−N−[2−(8−スルホナフチル)]アミノ基、3,6−ジスルホ−9H−カルバゾール−9−イル基、N,N−ビス[4−{ビス(4'−スルホフェニル)アミノ}フェニル]アミノ基、N,N−ビス[4−(3,6−ジスルホ−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]アミノ基、N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、N,N−ビス(4−エチルフェニル)アミノ基、N,N−ビス(4−n−プロピルフェニル)アミノ基、N,N−ビス(4−iso−プロピルフェニル)アミノ基、N,N−ビス(4−n−ブチルフェニル)アミノ基、N,N−ビス(4−iso−ブチルフェニル)アミノ基、N,N−ビス(4−sec−ブチルフェニル)アミノ基、N,N−ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、
N,N−ビス(4−n−ペンチルフェニル)アミノ基、N,N−ビス(4−iso−ペンチルフェニル)アミノ基、N,N−ビス(4−ネオペンチルフェニル)アミノ基、N,N−ビス(4−tert−ペンチルフェニル)アミノ基、N,N−ビス(4−n−ヘキシルフェニル)アミノ基、N,N−ビス[4−(1−メチルペンチル)フェニル]アミノ基、N,N−ビス[4−(4−メチル−2−ペンチル)フェニル]アミノ基、などを挙げることができる。
【0032】
一般式(1)において、Yは、炭素数4〜90の二価の芳香族基が好ましい。
【0033】
-Y-で表される基としては、一般式(1b):
-A-(B-A)n- (1b)
(式中、Aは二価の芳香族基を示し、-B-は、単結合、アルキレン基、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-SiH-、および-SiMe-を示し、nは0〜2の整数を示す。)で表される基が包含される。
一般式(1b)において、nは0〜2の整数を示し、0または1の整数が好ましい。
【0034】
Aは、炭素数4〜60のニ価芳香族基が好ましく、ニ価の芳香族炭化水素基あるいは二価の芳香族複素環基を包含する。
【0035】
Aのニ価の芳香族炭化水素基あるいは二価の芳香族複素環基は、無置換であっても置換されていても良い。該基が無置換または置換された芳香族炭化水素基の場合、該基の炭素数は6〜30が好ましい。一方、該基が無置換または置換された芳香族複素環基である場合、該基の炭素数は4〜30が好ましい。
【0036】
Aの置換された二価の芳香族炭化水素基あるいは芳香族複素環基上の置換基としては、一般式(1)におけるArとArの芳香族炭化水素基、あるいは芳香族複素環基上の置換基と同様ものが挙げられる。
【0037】
Aの二価の芳香族炭化水素基あるいはニ価の芳香族複素環基としては、例えば、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,2−フェニレン基、2,5-チオフェンジイル基、3,4―チオフェンジイル基、2,5-フランジイル基、3,4-フランジイル基、2,5-ピロールジイル基、3,4-ピロールジイル基、2,5-ピリジンジイル基、2,6-ピリジンジイル基、1,4-ナフタレンジイル基、1,5-ナフタレンジイル基、2,6-ナフタレンジイル基、9,10-アントラセンジイル基、2,7-フルオレンジイル基、3,6-フルオレンジイル基、2,7-カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基、4,5-カルバゾールジイル基、2,8−ジベンゾチオフェンジイル基、3,7
−ジベンゾチオフェンジイル基、1,8−ピレニル基、6,12−クリセニル基、1,7−ペリレニル基、2,8−ジベンゾフランジイル基、3,7−ジベンゾフランジイル基、
一般式(1b−1)、
【0038】
【化3】

【0039】
で表される基、および一般式(1b−2)
【0040】
【化4】

【0041】
で表される基などを挙げることができる。
Aの二価の芳香族炭化水素基あるいはニ価の芳香族複素環基としては、1,4-フェニレン基、1、3−フェニレン基、1,4-ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、2,7-フルオレンジイル基、9,10−アントラセンジイル基、1,8−ピレニル基、2,7-カルバゾールジイル基、3,7−ジベンゾチオフェンジイル基、3,7−ジベンゾフランジイル基、および前記一般式(1b−1)
【0042】
【化5】

【0043】
で表される基が好ましい。
一般式(1b)において、-B-は、単結合、アルキレン基、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-SiH-、および-SiMe-を示し、nは0〜2の整数を示す 。
−B−で表されるアルキレン基は、無置換であっても置換されていてもよい。無置換または置換されたアルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキレン基である。
一般式(1b)において、-B-は好ましくは、単結合、アルキレン基、−O−、−S−、−CO−、−SO−、-SO-、-SiMeから選ばれる基であり、
アルキレン基としては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜3のアルキレン基がより好ましい。
【0044】
無置換または置換されたアルキレン基の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1,1−シクロプロピレン基、1,2−シクロプロピレン基、1,1−シクロブチレン基、1,1−シクロペンチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,1−シクロへキシレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基、3−メチル−1,1−シクロへキシレン基、3,3,5−トリメチル−1,1−シクロへキシレン基、1,1−シクロへプチレン基、1,1−ジフェニルメチレン基、1,1−ジベンジルメチレン基、9,9−フルオレニレン基などを挙げることができる。
【0045】
アルキレン基上の置換基としては、アルキル基、芳香族基またはアラルキル基が挙げられる。
アルキレン基上のアルキル基とは、無置換または置換された直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基である。具体例としては、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、2−エチルブチル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、n−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−プロピルペンチル基、n−ノニル基、2,2−ジメチルヘ
プチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、1−エチルオクチル基、n−ドデシル基、1−メチルデシル基、n−トリデシル基、1−ヘキシルヘプチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、1−ヘキシルオクチル基、n−ヘキサデシル基、
シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、(1−イソプロピルシクロヘキシル)メチル基、(2−イソプロピルシクロヘキシル)エチル基、シクロペンチル基、2−エチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルヘキシル基、ボルネル基、イソボルネル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルナンメチル基、1−ビシクロ〔2.2.2〕オクチル基、1−アダマンチル基、3−ノルアダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、シクロブチル基、1−メチルシクロペンチル基、4−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、2,3−ジメチルシクロヘキシル基、2,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,6−ジメチルシクロヘキシル基、3,4−ジメチルシクロヘキシル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,4,6−トリメチルシクロヘキシル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、2,6−ジイソプロピルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、3−tert−ブチルシクロヘキシル基、4−フェニルシクロヘキシル基、2−フェニルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、シクロテトラデシル基などを挙げることができる。
【0046】
アルキレン基上の芳香族基とは、無置換または置換された芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を包含する。無置換または置換された芳香族炭化水素基としては、環を構成する炭素数が6〜30のものが好ましい。無置換または置換された芳香族複素環基としては、環を構成する炭素数が4〜30のものが好ましい。
【0047】
芳香族炭化水素基または芳香族複素環基としては、Ar とAr の具体例として示したものを挙げることができる。
【0048】
芳香族炭化水素基または芳香族複素環基上の置換基としては、一般式(1)におけるArとArの芳香族炭化水素基、あるいは芳香族複素環基上の置換基と同様ものが挙げられる。
【0049】
アルキレン基上のアラルキル基とは、無置換または置換された炭素数7〜20のアラルキル基が好ましい。アラルキル基の具体例としては、D'のアラルキル基として示したものを挙げることができる。
【0050】
一般式(1)において、XおよびXは、互いに同一であっても異なってもよい無置換または置換されたニ価の芳香族基を表し、ニ価の芳香族炭化水素基あるいはニ価の芳香族複素環基が包含される。好ましくは、XおよびXで表される基が炭素数6〜30のニ価の芳香族炭化水素基または炭素数4〜30のニ価の芳香族複素環基である。XとXは、同一の基であることが好ましく、同一の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
【0051】
一般式(1)中、XおよびXで表される基としては、一般式(1)におけるYのニ価の芳香族基と同様のものが挙げられ、好ましくは−Y−で表される基の一般式(1b)におけるnが0または1の整数でBが単結合のYの二価の芳香族基、すなわち−A−または−A−A−で表される基が挙げられる。
【0052】
、Xのニ価の芳香族基としては、一般式(a−1)
【0053】
【化6】

【0054】
(式中、uは0〜2の整数を表す。)
で表される基がより好ましく、uが0または1の整数であることがより好ましい。
【0055】
一般式(1)中、Z 〜Z で表される置換基としては、互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、一置換アミノ基、二置換アミノ基、スルホ基、ホスホリル基および一般式(1a)〜(3a):
−(O)L −D (1a)
−O(C=O)−D (2a)
−(C=O)O−D (3a)
(式中、Dは無置換または置換された直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基、無置換または置換された炭素数4〜12の一価の芳香族基、無置換または置換された炭素数7〜20のアラルキル基を示し、Lは0または1を示す)で表される基からなる群から選択される基であり、Z 〜Z で表される置換基の好ましい例および具体例は、一般式(1)におけるAr とAr の芳香族炭化水素基、あるいは芳香族複素環基上の置換基と同様のものが挙げられる。
【0056】
一般式(1)において、p〜pは好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0または1の整数である。また、Z とZおよびZとZ はそれぞれ同一の置換基であり、かつ、pとpおよびpとpは、それぞれが同一の整数であることが好ましい。
【0057】
一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくともひとつ有する高分子化合物において、Ar、Ar、X、X、Yの置換基およびZ〜Zで表される基の少なくとも一つが、スルホ基、カルボキシル基、ホスホリル基およびヒドロキシ基からなる群から選択される基であり、スルホ基であることが好ましい。
【0058】
一般式(1)において、sは0〜1000の整数であり、tは1〜1000の整数である。好ましくは、sは0〜100の整数であり、tは1〜100の整数である。より好ましくは、sは0〜2の整数であり、tは1〜2の整数である。また、sが2以上の場合には、それぞれのAr、Yは同一であっても異なっていてもよく、tが2以上の場合には、それぞれのAr、X、Xは同一であっても異なっていてもよい。
さらに、lとmは0または1を示す。
【0059】
また、一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物においては、塩を形成していても構わない。塩としては特に限定されるものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムなどの無機塩類、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、モルホリンなどの有機アミン類あるいはアミノ酸類との塩などが挙げられる。
【0060】
また、一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物の重量平均分子量は、特に限定するものではないが、ポリスチレン換算で、1000〜1000000であり、好ましくは3000〜500000である。より好ましくは、4000〜200000である。
【0061】
また、一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物は、末端基を無置換または置換された芳香族炭化水素基、二置換アミノ基、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルキル基を有するアルキルオキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基などで置換することによる末端処理をされていても構わない。
【0062】
本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物の具体例としては、例えば、以下に例示するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
尚、以下の具体例としては、下記の一般式(1)におけるZ〜Zが水素原子である化合物を、下記の表1〜表44中に、各々対応する具体例としてAr、Ar、Y、X、X、s、t、lおよびmの組み合わせで示しているが、本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくともひとつ有する高分子化合物はAr1、Ar2、X1、X2、Yの置換基およびZ1〜Z4の少なくとも一つが、スルホ基、カルボキシル基、ホスホリル基およびヒドロキシル基からなる群から選択される基である。
ここで、スルホ基、カルボキシル基、ホスホリル基およびヒドロキシル基の置換位置に特に限定はないが、好ましくは、Ar1、Ar2の置換基およびZ1〜Z4の少なくとも一つが、スルホ基、カルボキシル基、ホスホリル基およびヒドロキシル基からなる群から選択される基であり、より好ましくは、Ar1、Ar2の置換基およびZ1〜Z4の少なくとも一つが、スルホ基である。
【0063】
【化7】

【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
【表8】

【0072】
【表9】

【0073】
【表10】

【0074】
【表11】

【0075】
【表12】

【0076】
【表13】

【0077】
【表14】

【0078】
【表15】

【0079】
【表16】

【0080】
【表17】

【0081】
【表18】

【0082】
【表19】

【0083】
【表20】

【0084】
【表21】

【0085】
【表22】

【0086】
【表23】

【0087】
【表24】

【0088】
【表25】

【0089】
【表26】

【0090】
【表27】

【0091】
【表28】

【0092】
【表29】

【0093】
【表30】

【0094】
【表31】

【0095】
【表32】

【0096】
【表33】

【0097】
【表34】

【0098】
【表35】

【0099】
【表36】

【0100】
【表37】

【0101】
【表38】

【0102】
【表39】

【0103】
【表40】

【0104】
【表41】

【0105】
【表42】

【0106】
【表43】

【0107】
【表44】

【0108】
次に、本発明の一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物の製造方法について説明する。
【0109】
一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物は、例えば、一般式(2):
H−N(Ar)−Y−N(Ar)−H (2)
(式中、Ar、ArおよびYは一般式(1)の通り。)
で表される化合物と一般式(3):
【0110】
【化8】

【0111】
(式中、Qはハロゲン原子を示し、X、X、Z〜Z、p〜p、lおよびmは前記の通り。)で表される化合物を塩基存在下、Pd触媒などで重合させることにより製造することができる。
【0112】
Qのハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0113】
本発明の、Ar、Ar、X、X、Yの置換基およびZ〜Zの少なくとも一つがスルホ基である高分子化合物は、例えば、WO2007/043607の記載に従い、一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有するスルホ基を含有しない高分子化合物をスルホン化することにより製造することができる。
【0114】
スルホン化に用いるスルホン化剤としては、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、三酸化硫黄錯体、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、アミド硫酸などが挙げられ、使用するスルホン化剤の量は特に限定されない。
【0115】
三酸化硫黄錯体としては、エーテル類、アミン類、スルフィド類などのルイス酸との錯体で、N,N−ジメチルホルムアミド・三酸化硫黄錯体、ジオキサン・三酸化硫黄錯体、ピリジン・三酸化硫黄錯体、トリエチルアミン・三酸化硫黄錯体、トリメチルアミン・三酸化硫黄錯体などが挙げられる。
【0116】
反応は、無溶媒または溶媒中で行うことができる。反応に用いる溶媒としては、反応に影響しない溶媒であれば特に限定されるものではないが、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタンなどの塩素化有機溶媒;液体二酸化硫黄、二硫化炭素、酢酸、無水酢酸;酢酸エチルなどのエステル類;ジエチルエーテルなどのエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミ
ド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドンなどを挙げることができる。
【0117】
反応温度は、−20度〜150度(セルシウス温度を表す。以下、同じ。)の範囲から選択すればよく、反応時間は、数分〜96時間である。また、クロロ硫酸によりスルホニルクロリドを合成し、これを加水分解して得ることもできる。
【0118】
高分子化合物の単離方法は特に限定されない。生成物が反応溶媒から析出した場合は、濾取もしくは遠心分離することによって単離が可能であり、反応溶媒に溶解している場合は、減圧下、溶媒を溜去する方法や適当な溶媒を加えて析出させ、濾取もしくは遠心分離する方法が採用可能である。
【0119】
反応生成物が硫酸塩を形成している場合には、ろ過後、水洗することで過剰のスルホン化剤を除去し、得られた硫酸塩を塩基で中和処理することにより硫酸を除去することができる。塩基としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの水酸化物やイオン交換樹脂などを用いることが可能である。
【0120】
高分子化合物について、精製を必要とする場合は、常法としてよく知られている方法が採用可能であり、例えば、再結晶法、再沈殿法、カラムクロマトグラフィー法、溶媒による洗浄(スラッジ)、活性炭などを用いた吸着処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜、透析膜、逆浸透膜、限外濾過膜などを用いた処理方法などを挙げることができる。
【0121】
本発明において一般式(1)で表される繰り返し単位を含有しない有機酸(以下、単に「有機酸」と言う。)とは、酸性を示す有機化合物(酸性基を有する有機化合物)であって、遊離の酸あるいは塩である。有機酸が備える酸性基としてはカルボン酸基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、チオール基、リン酸基等が挙げられる。
有機酸としては、例えば、ポリマー有機酸や非ポリマー有機酸がある。
ポリマー有機酸とは、酸性基を有するポリマーのことである。酸性基は主鎖あるは側鎖どちらに置換していても良い。
ポリマー有機酸としては、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSSA)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)(「PAAMPSA」)等が挙げられる。
非ポリマー有機酸は、ポリマー有機酸以外の有機酸を意味する。非ポリマー有機酸の好適例としては、酢酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
【0122】
有機酸のうち、本発明ではポリマー有機酸が好ましい。本発明においては、ポリマー有機酸として、含フッ素ポリマー有機酸が特に好ましい。
含フッ素ポリマー有機酸とは、分子中にフッ素原子を有するポリマー有機酸のことである。
含フッ素ポリマー有機酸としては、フッ素原子を有する、ポリマースルホン酸、ポリマーカルボン酸、ポリマーリン酸、ポリマーアクリル酸、又はこれらのうち2種以上を含む混合物が挙げられる。
【0123】
含フッ素ポリマー有機酸として、パーフルオロ化されたポリマースルホン酸や、パーフルオロアルキレンスルホン酸が好ましい。
【0124】
また、前記含フッ素ポリマー有機酸の全重量に対するフッ素原子の比率が20重量%以上80重量%以下であることが好ましい(以下、この含フッ素ポリマー有機酸を「高度にフッ素化されたポリマー有機酸」ということがある)。前記含フッ素ポリマー有機酸の全重量に対するフッ素原子の比率は、特に好ましくは40重量%以上75重量%以下である。
尚、フッ素原子の比率は蛍光X線により測定した値を意味する。
【0125】
以下、高度にフッ素化されたポリマー有機酸の例として、高度にフッ素化されたポリマースルホン酸を用いて具体的に説明する。尚、本発明においては、高度にフッ素化されたポリマースルホン酸が特に好ましい。
高度にフッ素化されたポリマースルホン酸は、例えば、陽イオン交換基を持った繰り返し側鎖が主鎖に結合した構造を含んでいる。この高度にフッ素化されたポリマースルホン酸は、ホモポリマーでも、2つ以上のモノマーの共重合体であってもよい。該共重合体は、非官能モノマー(第1モノマー)と、陽イオン交換基又はその前駆体、例えば、後でスルホネート官能基へ加水分解することができるスルホニルフルオリド基(−SOF)を持ったモノマー(第2モノマー)とから典型的には形成される。
例えば、フッ素化ビニルモノマー(第1モノマー)と、スルホニルフルオリド基(−SOF)を有するフッ素化ビニルモノマー(第2モノマー)との共重合体を使用することができる。
第1モノマーの例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、及びそれらの組合せが挙げられる。TFEが好ましい第1モノマーである。
【0126】
第2モノマーとしては、高度にフッ素化されたポリマースルホン酸中に所望の側鎖を提供することができるスルホネート官能基又は前駆体基付きのフッ素化ビニルエーテルが挙げられる。
【0127】
更に、エチレン、プロピレン、及びR−CH=CH(ここで、Rは1〜10個の炭素原子のパーフルオロ化アルキル基である)をはじめとする追加のモノマーを、必要ならば高度にフッ素化されたポリマースルホン酸中へ組み込むことができる。
【0128】
尚、用語「スルホネート官能基」は、スルホン酸基又はスルホン酸基の塩のどちらかを意味し、該スルホン酸基の塩としては、例えば、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩を意味する。該官能基は式−SOX(ここで、Xは陽イオンであり、「対イオン」としても知られる)で表される。XはH、Li、Na、K又はN(R)(R)であってもよく、R及びRは同じか又は異なるものであり、例えば、H、CH又はCである。Xはまた、Ca++、及びAl+++のようなイオンで表されるように多価であってもよい。一般にMn+と表される、多価対イオンの場合には、対イオン当たりのスルホネート官能基の数が価「n」に等しいであろうことは当業者には明らかである。
【0129】
高度にフッ素化されたポリマースルホン酸は、本明細書でランダム共重合体と言われるタイプのもの、即ち、コモノマーの相対濃度ができるだけ一定に保たれ、その結果、ポリマー鎖に沿ったモノマー単位の分布がそれらの相対濃度及び相対的反応性に一致している重合によって製造される共重合体であってもよい。重合の過程でモノマーの相対濃度を変えることによって製造された、ランダムさがより少ない共重合体もまた使用されてもよい。ブロック共重合体と呼ばれるタイプのポリマーもまた使用されてもよい。
【0130】
本発明で使用する高度にフッ素化されたポリマースルホン酸の具体例としては、高度にフッ素化された、例えば、パーフルオロ化された炭素主鎖と、下記式で表される側鎖とを有する高度にフッ素化されたポリマースルホン酸が挙げられる。
−(O−CFCFR−O−CFCFR'SO
(式中、R及びR'は独立してF、Cl又は1〜10個の炭素原子を有するパーフルオロ化アルキル基から選択され、a=0、1又は2であり、かつ、XはH、Li、Na、K又はN(R)(R)であり、R及びRは同じ又は異なるものであり、例えば、H、CH又はCである)
尚、XはHでもよく、上に述べたように、Xは多価であってもよい。
【0131】
また、高度にフッ素化されたポリマースルホン酸としては、例えば、米国特許第3,282,875号公報にならびに米国特許第4,358,545号公報及び米国特許第4,940,525号公報に開示されているポリマーが含まれる。
好ましい高度にフッ素化されたポリマースルホン酸の例は、パーフルオロカーボン主鎖と、下記式で表される側鎖とを含んでなる。
−O−CFCF(CF)−O−CFCFSO
(ここで、Xは上に定義されたようなものである)
【0132】
この高度にフッ素化されたポリマースルホン酸は米国特許第3,282,875号公報に開示されており、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ化ビニルエーテルCF=CF−O−CFCF(CF)−O−CFCFSOF(パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド))(PDMOF)との共重合、引き続くスルホニルフルオリド基の加水分解によるスルホネート基への変換及び必要に応じてイオン交換してそれらを所望のイオン形に変換して製造することができる。
米国特許第4,358,545号公報及び米国特許第4,940,525号公報に開示されている高度にフッ素化されたポリマースルホン酸の例は、Xが上に定義されたようなものである側鎖−O−CFCFSOXを有する。この高度にフッ素化されたポリマースルホン酸はテトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ化ビニルエーテルCF=CF−O−CFCFSOF(パーフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド))(POPF)との共重合、引き続く加水分解及び必要に応じてさらなるイオン交換によって製造することができる。
【0133】
高度にフッ素化されたポリマースルホン酸の分散液は、好ましくはイー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE))から入手可能なナフィオン(Nafion)(登録商標)であるが、これに限らない。
【0134】
本発明の組成物における、高分子化合物と有機酸の比率(重量)は100:1〜1:100が好ましく、特に20:1〜1:10が好ましい。
【0135】
本発明の組成物は必要により、さらに1種以上の有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒を使用することにより、有機EL素子の有機エレクトロルミネッセンス材料薄膜(以下「有機EL材料薄膜」とも言う。)を形成する際、塗布法が使用できる。
有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、テトラクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒;ベンゼン、ドデシルベンゼン、トルエン、クロロトルエン、キシレン等のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンを有しても良い芳香族系溶媒;シクロへキサン、メチルシクロへキサン、n−ペンタン、n−へキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロへキサノン、シクロヘプタノン、シクロペンタノン、シクロオクタノン、べンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、酢酸フェニル、酢酸アミル等のエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−へキサンジオール、等の多価アルコール及びその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、ベンジルアルコール、イソプロパノール、シクロへキサノール、エチルセロソルブ等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が例示される。また、これらの有機溶媒は、単独で、又は複数組み合わせて用いることができる。これらのうち、溶解性、成膜の均一性、粘度特性等の観点から、アルコール系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、低級脂肪族アルコール、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、5−ブチルベンゼン、n−へキシルベンゼン、シクロへキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、テトラリン、アニソール、エトキシベンゼン、シクロへキサン、ビシクロへキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロへキサン、n−へキシルシクロヘキサン、デカリン、安息香酸メチル、シクロへキサノン、2−プロピルシクロへキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロへキシルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンがより好ましい。
【0136】
有機溶媒の使用量は、高分子化合物や有機酸の量や種類、有機EL材料薄膜の厚さ等を考慮して適宜調製することができる。一般的には、組成物全体の固形分量が、0.01〜20重量%になるよう調整することが好ましく、0.05〜10重量%がより好ましい。本発明の組成物に用いる有機溶媒は、1種でも、複数の有機溶媒を併用して用いてもよい。
【0137】
本発明の組成物には、一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物、一般式(1)で表される繰り返し単位を含有しない有機酸及び有機溶媒の他に、例えば、後述する正孔輸送材料、電子輸送材料又は発光材料や、安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。
例えば、粘度及び/又は表面張力を調節するための増粘剤(高分子量化合物等)、粘度降下剤(低分子量化合物等)、界面活性剤等を含有していてもよい。また、保存安定性を改善するために、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等、有機EL素子の性能に影響しない酸化防止剤を含有していてもよい。
尚、本発明の組成物は、少なくとも高分子化合物、及び有機酸を含み、より好ましくは、任意の有機溶媒を含む。さらに本発明の組成物は、該高分子化合物、有機酸及び任意の有機溶媒の他に公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0138】
本発明の組成物は、有機EL材料として用いることができ、有機EL素子を構成する有機EL材料薄膜、特に、正孔注入輸送領域に形成される正孔注入層や正孔輸送層等の材料として好適である。
【0139】
本発明の組成物の製膜方法は特に限定されない。例えば、上述した本発明の組成物を各種の塗布法により被成膜領域に塗布し、組成物を塗布した被成膜領域から有機溶媒を蒸発させることで有機EL材料薄膜を成膜できる。尚、前記被成膜領域とは、基板または基板上に形成された層の表面を示し、該基板上に形成された層としては、有機層や無機層(陽極など)が挙げられる。
【0140】
例えば、塗布法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等が挙げられる。パターン形成が容易であるという点で、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法が好ましい。これらの方法による成膜は当業者に周知の条件により行うことができる。
【0141】
尚、有機EL材料薄膜の膜厚は特に制限されない。例えば、有機EL素子の分野において一般的な膜厚である5nm〜5μm程度が例示できる。
【0142】
続いて、本発明の有機EL素子について説明する。
本発明の有機EL素子は、上述した本発明の有機EL材料薄膜を、いずれかの部材で使用していればよい。その他、具体的な素子の構造や材料等は公知のものを採用できる。
有機EL素子の構成としては、例えば、陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層以上の有機薄膜層が挟持されており、有機薄膜層の少なくとも1層が、本発明の組成物、即ち、高分子化合物と有機酸を含有する層からなる構成が挙げられる。
本発明の有機EL素子は、有機薄膜層が正孔輸送層及び/又は正孔注入層を有し、本発明の有機EL材料薄膜がこれらに含有されていると好ましい。特に、本発明の有機EL材料薄膜が主成分として正孔輸送層又は正孔注入層に含有されていることが好ましい。
【0143】
以下、本発明の有機EL素子の素子構成について説明する。
[1]有機EL素子の構成
有機EL素子の代表的な素子構成としては、下記(1)〜(8)等の構造を挙げることができる。
(1) 陽極/発光層/陰極
(2) 陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3) 陽極/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(4) 陽極/正孔注入層/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(5) 陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(6) 陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(7) 陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
(8) 陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極
これらの中で通常(5)の構成が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0144】
図1〜8に(1)〜(8)の構成を示す。この有機EL素子は、陽極10及び陰極20と、その間に挟持されている、正孔注入層30、正孔輸送層32、発光層34、電子注入・輸送層36、絶縁層40からなる。正孔注入層30、正孔輸送層32、発光層34、電子注入・輸送層36が、複数の有機薄膜層に相当する。これら有機薄膜層30,32,34,36の少なくとも一層が、本発明の有機EL材料薄膜からなる。
【0145】
本発明の有機EL材料薄膜からなる層は、有機EL素子のどの有機薄膜層に用いてもよいが、発光帯域又は正孔輸送帯域に用いることができ、好ましくは正孔輸送帯域、特に正孔注入層や正孔輸送層に用いることが好ましい。これにより、素子の寿命を向上できる。
【0146】
[2]基板
本発明の有機EL素子は基板上に作製する。ここでいう基板は素子を支持する基板であり、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上で、平滑な基板が好ましい。
【0147】
具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。
尚、光取り出し方向の反対側に支持基板が位置する場合には透光性は不要である。
【0148】
[3]陽極
本発明の有機EL素子の陽極は、正孔を正孔輸送層又は発光層に注入する機能を有するものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。本発明に用いられる陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、金、銀、白金、銅等が挙げられる。
陽極は、これらの電極物質を蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。
このように発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率が10%より大きくすることが好ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
【0149】
[4]発光層
有機EL素子の発光層は以下(1)〜(3)の機能を併せ持つものである。
(1)注入機能;電界印加時に陽極又は正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極又は電子注入層より電子を注入することができる機能
(2)輸送機能;注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能
(3)発光機能;電子と正孔の再結合の場を提供し発光させる機能
ただし、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさに違いがあってもよく、また、正孔と電子の移動度で表される輸送能に大小があってもよいが、どちらか一方の電荷を移動することが好ましい。
この発光層を形成する方法としては、例えば蒸着法、スピンコート法、LB法等の公知の方法を適用することができる。発光層は、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態又は液相状態の材料化合物から固体化され形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。
また、特開昭57−51781号公報に開示されているように、樹脂等の結着剤と材料化合物とを有機溶媒に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、発光層を形成することができる。
【0150】
本発明においては、以下に例示する発光材料の中から一種類の材料を用いてもよく、また目的が損なわれない範囲で複数種を混合して用いたり、他の公知の発光材料を含有させてもよく、また複数種の発光層を積層して用いても良い。
【0151】
発光層に使用できる発光材料(ホスト及びドーパント)としては、例えば、アントラセン誘導体、ナフタレン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、コロネン誘導体、クリセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ペリレン誘導体、フタロペリレン誘導体、ナフタロペリレン誘導体、ペリノン誘導体、フタロペリノン誘導体、ナフタロペリノン誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビスベンゾキサゾリン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、キノリン金属錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、イミン誘導体、ジフェニルエチレン誘導体、ビニルアントラセン誘導体、ジアミノカルバゾール誘導体、ピラン誘導体、チオピラン誘導体、ポリメチン誘導体、メロシアニン誘導体、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体及び蛍光色素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
発光層に使用できるホスト材料の具体例としては、下記(i)〜(ix)で表される化合物が挙げられる。
下記式(i)で表されるアントラセン。
【0153】
【化9】

【0154】
(式中、Ar001は置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族基である。Ar002は置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族基である。X001及びX002は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基である。a及びbは、それぞれ0〜4の整数である。nは1〜3の整数である。また、nが2以上の場合は、[ ]内は、同じでも異なっていてもよい。)
【0155】
下記式(ii)で表されるピレン誘導体。
【0156】
【化10】

【0157】
[式中、Ar005及びAr006は、それぞれ置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族基である。nは1〜4の整数、tは0〜4の整数である。]
【0158】
下記式(iii)で表されるアントラセン誘導体。
【0159】
【化11】

【0160】
(式中、R021〜R030は、それぞれ独立に水素原子,アルキル基,シクロアルキル基,置換してもよいアリール基,アルコキシル基,アリーロキシ基,アルキルアミノ基,アルケニル基,アリールアミノ基又は置換してもよい複素環基を示し、a及びbは、それぞれ1〜5の整数を示し、それらが2以上の場合、R021同士又はR022同士は、それぞれにおいて、同一でも異なっていてもよく、また、R021同士又はR022同士が結合して環を形成していてもよいし、R023とR024,R025とR026,R027とR028,R029とR030がたがいに結合して環を形成していてもよい。L003は単結合、−O−,−S−,−N(R)−(Rはアルキル基又は置換してもよいアリール基である)、アルキレン基又はアリーレン基を示す。)
【0161】
下記式(iv)で表されるアントラセン誘導体。
【0162】
【化12】

【0163】
(式中、R031〜R040は、それぞれ独立に水素原子,アルキル基,シクロアルキル基,アリール基,アルコキシル基,アリーロキシ基,アルキルアミノ基,アリールアミノ基又は置換してもよい複素環基を示し、c,d,e及びfは、それぞれ1〜5の整数を示し、それらが2以上の場合、R031同士,R032同士,R036同士又はR037同士は、それぞれにおいて、同一でも異なっていてもよく、またR031同士,R032同士,R036同士又はR037同士が結合して環を形成していてもよいし、R033とR034,R038とR039がたがいに結合して環を形成していてもよい。L004は単結合、−O−,−S−,−N(R)−(Rはアルキル基又は置換してもよいアリール基である)、アルキレン基又はアリーレン基を示す。)
【0164】
下記式(v)で表されるスピロフルオレン誘導体。
【0165】
【化13】

【0166】
(式中、A005〜A008は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のビフェニリル基又は置換もしくは無置換のナフチル基である。)
【0167】
下記式(vi)で表される縮合環含有化合物。
【0168】
【化14】

【0169】
(式中、A011〜A013は2価の基を示し、A014〜A016は置換基を示す。R041〜R043は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数5〜18のアリールオキシ基、炭素数7〜18のアラルキルオキシ基、炭素数5〜16のアリールアミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のエステル基又はハロゲン原子を示し、A011〜A016のうち少なくとも1つは3環以上の縮合芳香族環を有する基である。)
【0170】
下記式(vii)で表されるフルオレン化合物。
【0171】
【化15】

【0172】
(式中、R051及びR052は、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換アミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表わす。異なるフルオレン基に結合するR051同士、R052同士は、同じであっても異なっていてもよく、同じフルオレン基に結合するR051及びR052は、同じであっても異なっていてもよい。R053及びR054は、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基又は置換あるいは無置換の複素環基を表わし、異なるフルオレン基に結合するR053同士、R054同士は、同じであっても異なっていてもよく、同じフルオレン基に結合するR053及びR054は、同じであっても異なっていてもよい。Ar011及びAr012は、ベンゼン環の合計が3個以上の置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基又はベンゼン環と複素環の合計が3個以上の置換あるいは無置換の炭素でフルオレン基に結合する縮合多環複素環基を表わし、Ar011及びAr012は、同じであっても異なっていてもよい。nは、1乃至10の整数を表す。)
【0173】
以上の材料の中でも、好ましくはアントラセン誘導体、さらに好ましくはモノアントラセン誘導体、特に好ましくは非対称アントラセンである。
【0174】
燐光性ドーパントを使用する際のホスト化合物の具体例としては、カルバゾール環を含む化合物が好ましい。カルバゾール環を含む化合物からなるりん光発光に好適なホストは、その励起状態からりん光発光性化合物へエネルギー移動が起こる結果、りん光発光性化合物を発光させる機能を有する化合物である。ホスト化合物としては励起子エネルギーをりん光発光性化合物にエネルギー移動できる化合物ならば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。カルバゾール環以外に任意の複素環等を有していても良い。
【0175】
このようなホスト化合物の具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。ホスト化合物は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
具体例としては、以下のような化合物が挙げられる。
【0176】
【化16】

【0177】
りん光発光性のドーパントは三重項励起子から発光することのできる化合物である。三重項励起子から発光する限り特に限定されないが、Ir、Ru、Pd、Pt、Os及びReからなる群から選択される少なくとも一つの金属を含む金属錯体であることが好ましく、ポルフィリン金属錯体又はオルトメタル化金属錯体が好ましい。ポルフィリン金属錯体としては、ポルフィリン白金錯体が好ましい。りん光発光性化合物は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
オルトメタル化金属錯体を形成する配位子としては種々のものがあるが、好ましい配位子としては、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−フェニルキノリン誘導体等が挙げられる。これらの誘導体は必要に応じて置換基を有しても良い。特に、フッ素化物、トリフルオロメチル基を導入したものが、青色系ドーパントとしては好ましい。さらに補助配位子としてアセチルアセトナート、ピクリン酸等の上記配位子以外の配位子を有していても良い。
りん光発光性のドーパントの発光層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.1〜70重量%であり、1〜30重量%が好ましい。りん光発光性化合物の含有量が0.1重量%未満では発光が微弱でありその含有効果が十分に発揮されず、70重量%を超える場合は、濃度消光と言われる現象が顕著になり素子性能が低下する。
【0178】
また、発光層は、必要に応じて正孔輸送材、電子輸送材、ポリマーバインダーを含有しても良い。
【0179】
発光層の膜厚は、好ましくは5〜50nm、より好ましくは7〜50nm、最も好ましくは10〜50nmである。5nm以上であると発光層形成がしやすく、色度の調整が容易となり、50nm以下であると、駆動電圧が上昇することがなく、好ましい。
【0180】
[5]正孔注入層・正孔輸送層(正孔注入・輸送層:正孔輸送帯域)
正孔注入・輸送層は発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.6eV以下と小さい。このような正孔注入・輸送層としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば10〜10V/cmの電界印加時に、少なくとも10−4cm/V・sであれば好ましい。
本発明の組成物を正孔輸送帯域に用いる場合、本発明の組成物単独で正孔注入・輸送層を形成してもよく、他の材料と混合して用いてもよい。
本発明においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により正孔輸送層若しくは正孔注入層に、前記組成物以外の有機化合物を含有させてもよく、また、本発明の組成物を含む正孔輸送層若しくは正孔注入層に、公知の有機化合物を含む他の正孔輸送層若しくは正孔注入層を積層してもよい。
正孔注入・輸送層を形成する材料としては、前記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において正孔の電荷輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入・輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。本発明においては、正孔輸送能を有し、正孔輸送帯域に用いることが可能な材料を正孔輸送材料と呼ぶ。
【0181】
具体例としては、トリアゾール誘導体(米国特許3,112,197号明細書等参照)、オキサジアゾール誘導体(米国特許3,189,447号明細書等参照)、イミダゾール誘導体(特公昭37−16096号公報等参照)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許3,615,402号明細書、同第3,820,989号明細書、同第3,542,544号明細書、特公昭45−555号公報、同51−10983号公報、特開昭51−93224号公報、同55−17105号公報、同56−4148号公報、同55−108667号公報、同55−156953号公報、同56−36656号公報等参照)、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729号明細書、同第4,278,746号明細書、特開昭55−88064号公報、同55−88065号公報、同49−105537号公報、同55−51086号公報、同56−80051号公報、同56−88141号公報、同57−45545号公報、同54−112637号公報、同55−74546号公報等参照)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51−10105号公報、同46−3712号公報、同47−25336号公報、同54−119925号公報等参照)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、同第3,240,597号明細書、同第3,658,520号明細書、同第4,232,103号明細書、同第4,175,961号明細書、同第4,012,376号明細書、特公昭49−35702号公報、同39−27577号公報、特開昭55−144250号公報、同56−119132号公報、同56−22437号公報、西独特許第1,110,518号明細書等参照)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501号明細書等参照)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号明細書等に開示のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56−46234号公報等参照)、フルオレノン誘導体(特開昭54−110837号公報等参照)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54−59143号公報、同55−52063号公報、同55−52064号公報、同55−46760号公報、同57−11350号公報、同57−148749号公報、特開平2−311591号公報等参照)、スチルベン誘導体(特開昭61−210363号公報、同第61−228451号公報、同61−14642号公報、同61−72255号公報、同62−47646号公報、同62−36674号公報、同62−10652号公報、同62−30255号公報、同60−93455号公報、同60−94462号公報、同60−174749号公報、同60−175052号公報等参照)、シラザン誘導体(米国特許第4,950,950号明細書)、ポリシラン系(特開平2−204996号公報)、アニリン系共重合体(特開平2−282263号公報)等を挙げることができる。
【0182】
正孔注入・輸送層の材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物(特開昭63−295695号公報等に開示のもの)、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物(米国特許第4,127,412号明細書、特開昭53−27033号公報、同54−58445号公報、同55−79450号公報、同55−144250号公報、同56−119132号公報、同61−295558号公報、同61−98353号公報、同63−295695号公報等参照)、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
また、米国特許第5,061,569号に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有する、例えば、4,4'−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(以下NPDと略記する)、また特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4',4"−トリス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(以下MTDATAと略記する)等を挙げることができる。
さらに、発光層の材料として示した前述の芳香族ジメチリディン系化合物の他、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入・輸送層の材料として使用することができる。
【0183】
正孔注入・輸送層は本発明の組成物や他の材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜化することにより形成することができる。正孔注入・輸送層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μmである。
また、発光層への正孔注入又は電子注入を助ける層として有機半導体層を設けてもよく、10−10S/cm以上の導電率を有するものが好適である。このような有機半導体層の材料としては、含チオフェンオリゴマーや特開平8−193191号公報に開示してある含アリールアミンオリゴマー等の導電性オリゴマー、含アリールアミンデンドリマー等の導電性デンドリマー等を用いることができる。
【0184】
[6]電子注入層及び電子輸送層(電子注入・輸送層)
電子注入・輸送層は、発光層への電子の注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、電子移動度が大きい。また、付着改善層は、電子注入層の中で特に陰極との付着が良い材料からなる層である。
電子注入・輸送層は数nm〜数μmの膜厚で適宜選ばれるが、特に膜厚が厚いとき、電圧上昇を避けるために、10〜10V/cmの電界印加時に電子移動度が少なくとも10−5cm/V・s以上であることが好ましい。
【0185】
電子注入・輸送層に用いられる材料としては、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体やオキサジアゾール誘導体が好適である。8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを挙げることができる。
【0186】
オキサジアゾール誘導体としては、以下の式で表される電子伝達化合物が挙げられる。
【0187】
【化17】

(式中、Ar301、Ar302、Ar303、Ar305、Ar306、及びAr309はそれぞれ置換又は無置換のアリール基を示す。またAr304、Ar307、Ar308はそれぞれ置換又は無置換のアリーレン基を示す。)
【0188】
ここでアリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、アントラニル基、ペリレニル基、ピレニル基等が挙げられる。また、アリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントラニレン基、ペリレニレン基、ピレニレン基等が挙げられる。また、置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はシアノ基等が挙げられる。この電子伝達化合物は薄膜形成性のものが好ましい。
【0189】
上記電子伝達性化合物の具体例としては下記のものを挙げることができる。
【化18】


(Meはメチル基、tBuはtブチル基を示す。)
【0190】
さらに、電子注入・輸送層に用いられる材料として、下記式(A)〜(F)で表されるものも用いることができる。
【化19】

【0191】
(式(A)及び(B)中、A311〜A313は、それぞれ窒素原子又は炭素原子である。
Ar311は、置換もしくは無置換の核炭素数6〜60のアリール基、又は置換もしくは無置換の核原子数3〜60のヘテロアリール基であり、Ar311'は、置換もしくは無置換の核炭素数6〜60のアリーレン基又は置換もしくは無置換の核原子数3〜60のヘテロアリーレン基であり、Ar312は、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換の核原子数3〜60のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基である。ただし、Ar311及びAr312のいずれか一方は、置換もしくは無置換の核炭素数10〜60の縮合環基、又は置換もしくは無置換の核原子数3〜60のモノヘテロ縮合環基である。
311、L312及びL313は、それぞれ、単結合、置換もしくは無置換の核炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは無置換の核原子数3〜60のヘテロアリーレン基、又は置換もしくは無置換のフルオレニレン基である。
R及びR311は、それぞれ水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換の核原子数3〜60のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、nは0〜5の整数であり、nが2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよく、また、隣接するR基同士で結合して、炭素環式脂肪族環又は炭素環式芳香族環を形成していてもよい。)で表される含窒素複素環誘導体。
【0192】
HAr−L314−Ar321−Ar322 (C)
(式中、HArは、置換基を有していてもよい炭素数3〜40の含窒素複素環であり、L314は、単結合、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリーレン基、置換基を有していてもよい原子数3〜60のヘテロアリーレン基又は置換基を有していてもよいフルオレニレン基であり、Ar321は、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の2価の芳香族炭化水素基であり、Ar322は、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基又は置換基を有していてもよい原子数3〜60のヘテロアリール基である。)で表される含窒素複素環誘導体。
【0193】
【化20】

【0194】
(式中、X301及びY301は、それぞれ炭素数1〜6の飽和もしくは不飽和の炭化水素基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ヒドロキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環又はXとYが結合して飽和又は不飽和の環を形成した構造であり、R301〜R304は、それぞれ、水素、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、アミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アゾ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、スルフィニル基、スルフォニル基、スルファニル基、シリル基、カルバモイル基、アリール基、ヘテロ環基、アルケニル基、アルキニル基、ニトロ基、ホルミル基、ニトロソ基、ホルミルオキシ基、イソシアノ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基又はシアノ基である。これらの基は置換されていてもよい。また、隣接した基が置換もしくは無置換の縮合環を形成してもよい。)で表されるシラシクロペンタジエン誘導体。
【0195】
【化21】

【0196】
(式中、R321〜R328及びZ322は、それぞれ、水素原子、飽和もしくは不飽和の炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロ環基、置換アミノ基、置換ボリル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示し、X302、Y302及びZ321は、それぞれ、飽和もしくは不飽和の炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロ環基、置換アミノ基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示し、Z321とZ322は相互に結合して縮合環を形成してもよく、nは1〜3の整数を示し、n又は(3−n)が2以上の場合、R321〜R328、X302、Y302、Z322及びZ321は同一でも異なってもよい。但し、nが1、X、Y及びR322がメチル基でR328が水素原子又は置換ボリル基の化合物、及びnが3でZ321がメチル基の化合物を含まない。)で表されるボラン誘導体。
【0197】
【化22】

【0198】
[式中、Q301及びQ302は、それぞれ、下記式(K)で示される配位子を表し、L315は、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基、−OR(Rは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基である。)又は−O−Ga−Q303(Q304)(Q303及びQ304は、Q301及びQ302と同じ)で示される配位子を表す。]で表されるガリウム錯体。
【0199】
【化23】

[式中、環A301及びA302は、それぞれ置換基を有してよい互いに縮合した6員アリール環構造である。]
【0200】
この金属錯体は、n型半導体としての性質が強く、電子注入能力が大きい。さらには、錯体形成時の生成エネルギーも低いために、形成した金属錯体の金属と配位子との結合性も強固になり、発光材料としての蛍光量子効率も大きい。
式(K)の配位子を形成する環A301及びA302の置換基の具体的な例を挙げると、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基等の置換もしくは無置換のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ピレニル基、3−メチルフェニル基、3−メトキシフェニル基、3−フルオロフェニル基、3−トリクロロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、3−ニトロフェニル基等の置換もしくは無置換のアリール基、メトキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、トリクロロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロポキシ基、6−(パーフルオロエチル)ヘキシルオキシ基等の置換もしくは無置換のアルコキシ基、フェノキシ基、p−ニトロフェノキシ基、p−t−ブチルフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基、ペンタフルオロフェニル基、3−トリフルオロメチルフェノキシ基等の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、t−ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基等の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、フェニルチオ基、p−ニトロフェニルチオ基、p−t−ブチルフェニルチオ基、3−フルオロフェニルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基、3−トリフルオロメチルフェニルチオ基等の置換もしくは無置換のアリールチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、メチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のモノ又はジ置換アミノ基、ビス(アセトキシメチル)アミノ基、ビス(アセトキシエチル)アミノ基、ビス(アセトキシプロピル)アミノ基、ビス(アセトキシブチル)アミノ基等のアシルアミノ基、水酸基、シロキシ基、アシル基、カルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等の置換もしくは無置換のカルバモイル基、カルボン酸基、スルフォン酸基、イミド基、シクロペンタン基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、インドリニル基、キノリニル基、アクリジニル基、ピロリジニル基、ジオキサニル基、ピペリジニル基、モルフォリジニル基、ピペラジニル基、カルバゾリル基、フラニル基、チオフェニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、トリアゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基等の複素環基等がある。また、以上の置換基同士が結合してさらなる6員アリール環もしくは複素環を形成してもよい。
【0201】
有機EL素子の好ましい形態では、電子を輸送する領域又は陰極と有機層の界面領域に、還元性ドーパントを含有する。ここで、還元性ドーパントとは、電子輸送性化合物を還元ができる物質と定義される。従って、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物又は希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、希土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体、希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも一つの物質を好適に使用することができる。
【0202】
また、より具体的に、好ましい還元性ドーパントとしては、Li(仕事関数:2.9eV)、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)及びCs(仕事関数:1.95eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属や、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0〜2.5eV)、及びBa(仕事関数:2.52eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属が挙げられる仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
これらのうち、より好ましい還元性ドーパントは、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属であり、さらに好ましくは、Rb又はCsであり、最も好ましいのは、Csである。
【0203】
これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントとして、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRbあるいはCsとNaとKとの組み合わせであることが好ましい。
Csを組み合わせて含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子注入域への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0204】
本発明においては陰極と有機層の間に絶縁体や半導体で構成される電子注入層をさらに設けてもよい。この時、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。
このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。
【0205】
具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe及びNaOが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、CsF,LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF及びBeFといったフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0206】
また、電子注入・輸送層を構成する半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、電子注入・輸送層を構成する無機化合物が、微結晶又は非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。電子輸送層がこれらの絶縁性薄膜で構成されていれば、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。
尚、このような無機化合物としては、上述したアルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0207】
[7]陰極
陰極としては、電子注入・輸送層又は発光層に電子を注入するため、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム・カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム・銀合金、アルミニウム/酸化アルミニウム、アルミニウム・リチウム合金、インジウム、希土類金属等が挙げられる。
この陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
ここで発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。
また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
【0208】
[8]絶縁層
有機EL素子は超薄膜に電界を印加するために、リークやショートによる画素欠陥が生じやすい。これを防止するために、一対の電極間に絶縁性の薄膜層を挿入することが好ましい。
絶縁層に用いられる材料としては例えば酸化アルミニウム、弗化リチウム、酸化リチウム、弗化セシウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、弗化マグネシウム、酸化カルシウム、弗化カルシウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化バナジウム等が挙げられ、これらの混合物や積層物を用いてもよい。
【0209】
[9]有機EL素子の製造方法
有機EL素子を作製する方法については、例えば上記の材料及び方法により、陽極から、必要な層を順次形成し、最後に陰極を形成すればよい。また、陰極から陽極へ、逆の順序で有機EL素子を作製することもできる。
【0210】
以下、透光性基板上に、陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極が順次設けられた構成の有機EL素子の作製例について説明する。
まず、透光性基板上に、陽極材料からなる薄膜を蒸着法あるいはスパッタリング法により形成し、陽極とする。
次に、この陽極上に正孔注入層を設ける。正孔注入層の形成は、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法により行うことができるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが発生しにくい等の点から真空蒸着法により形成することが好ましく、大面積化及び、低コスト化という観点からは、スピンコート法等の塗布法により形成することが好ましい。
【0211】
次に、正孔注入層上に発光層を設ける。発光層の形成も、真空蒸着法、スパッタリング、スピンコート法、キャスト法等の方法により、発光材料を薄膜化することにより形成できるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが発生しにくい等の点から真空蒸着法により形成することが好ましく、大面積化及び、低コスト化という観点からは、スピンコート法等の塗布法により形成することが好ましい。
【0212】
次に、発光層上に電子注入層を設ける。この場合にも正孔注入層、発光層と同様、均質な膜を得る必要から真空蒸着法により形成することが好ましく、大面積化及び、低コスト化という観点からは、スピンコート法等の塗布法により形成することが好ましい。
そして、最後に陰極を積層して有機EL素子を得ることができる。陰極は蒸着法、スパッタリングにより形成できる。下地の有機物層を製膜時の損傷から守るためには真空蒸着法が好ましい。
【実施例】
【0213】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。尚、実施例で使用した化合物の構造を下記に示す。
【0214】
【化24】

【0215】
実施例1
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。
その基板の上に、スピンコート法により高分子化合物A〔この化合物は、表1の例示化合物A−1とA−5の共重合体(共重合比1:1、重量平均分子量30000)をWO2007/043607の記載に従いスルホ化して製造した(繰り返し単位当たりのスルホ基数:2.5)〕と含フッ素ポリマー有機酸の全重量に対するフッ素原子の比率が59重量%であるNafion(登録商標)の混合物からなる正孔注入層(20nmの膜厚)を形成した。具体的に、高分子化合物A0.01gと、メタノール2.0gと、Nafion(登録商標)の溶液(Nafion(登録商標)、即ち、過弗化イオン交換樹脂を5重量%含有する、イソプロピルアルコール/HO溶液、CAS−NO.66796−30−3、AldrichオーダーNO.27,470−4、検証固形分5.30重量%)0.01gを混合し、高分子化合物Aと有機酸の固形分重量比が20:1である組成物溶液を調製した。この溶液を使用してスピンコートした。
スピンコート後、ホットプレート上で1時間乾燥し、有機溶媒を蒸発させることにより、有機EL材料薄膜である正孔注入層を得た。
この膜の上に、N,N,N',N'−テトラ(4−ビフェニル)−ジアミノビフェニレン(以下、「TBDB層」)を60nmの膜厚で真空蒸着法により成膜した。この層は正孔輸送層として機能する。
ついで化合物AN1:化合物BD1(重量比;AN1:BD1=20:1)を同時蒸着し、40nmの膜厚の発光層を成膜した。
この膜上に膜厚20nmの電子輸送材Alqを成膜した。このAlqは、電子輸送層として機能する。
この後LiFを1nmで成膜し、このLiF膜上に金属Al 150nmを蒸着させ金属陰極を形成し有機EL素子を形成した。
得られた有機EL素子について、10mA/cmにおける発光効率(L/J)及び駆動電圧を測定した。また、初期輝度5000cd/m、室温での輝度半減寿命、及び駆動初期の駆動電圧に対する輝度半減時の電圧上昇値(ΔV)を測定した。結果を表45に示す。
【0216】
【表45】

・ 構成材料の比率は、固形分重量比である。
【0217】
実施例2
正孔注入層における高分子化合物AとNafion(登録商標)の比率(固形分重量)を20:3に変更した他は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表45に示す。
【0218】
実施例3
正孔注入層における高分子化合物AとNafion(登録商標)の比率(固形分重量)を4:1に変更した他は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表45に示す。
【0219】
比較例1
正孔注入層を、Nafion(登録商標)を添加せず、高分子化合物Aとメタノールのみで形成した他は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表45に示す。
【0220】
比較例2
正孔注入層を、高分子化合物Aとメタノールを添加せず、Nafion(登録商標)のみで形成した他は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表45に示す。
【0221】
比較例3
正孔注入層を、高分子化合物AとNafion(登録商標)を用いずに、PEDOT/PSSA(濃度3.0%のポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)溶液(H.C.StarckGmbH、Baytron (商標)P CH8000)、PEDOT:PSSA(重量比)=1:20)をスピンコートすることにより、正孔注入層を形成した他は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表45に示す。
【0222】
以上の結果から、高分子化合物Aに有機酸(Nafion:登録商標)を混合した組成物を用いて正孔注入層を形成した場合、高分子化合物A単独(比較例1)やNafion(登録商標)単独(比較例2)や、従来用いられてきたPEDOT/PSSA(比較例3)の場合に比べて長寿命化し、電圧上昇も抑制できることが確認できた。
また、実施例2、3では、高分子化合物Aと有機酸の混合比を変更することで、寿命に効果が出ることが確認できた。
実施例4
パターン形成した厚さ150nmのITO透明電極を有するガラス基板(スパッター成膜品;シート抵抗15Ω)を、中性洗剤、セミコクリーン(フルウチ化学製)、超純水、アセトン、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後にUVオゾン洗浄を行った。
その基板の上に、スピンコート法により高分子化合物B〔この化合物は表1の例示化合物A−5(重量平均分子量9300)をWO2007/043607記載の方法によりスルホ化して製造した(繰り返し単位当たりのスルホ基数:3.0)〕とポリマー有機酸であるPSSAの混合物からなる正孔注入層(65nmの膜厚)を形成した。具体的には、高分子化合物B 0.01g、メタノール0.99gと、PSSA〔ポリ(スチレンスルホン酸)〕の水溶液(PSSA、即ち、ポリマー有機酸を18重量%含有する、HO溶液、CAS−No.28210−41−5、AldrichオーダーNo.561223)1.00gを混合し、高分子化合物Bと有機酸の固形分重量比が1:18である組成物溶液を調製した。この溶液を使用してスピンコートした。スピンコート後、ホットプレート上で1時間乾燥し、有機EL材料薄膜である正孔注入層を得た。
次に、スピンコート法によりポリフルオレン(以下、PF−1;AmericanDyeSource社製)からなる発光層(60nmの膜厚)を形成した。具体的には、PF−1のキシレン溶液(1.2重量%)を使用してスピンコートした後、ホットプレート上で30分減圧乾燥を行い、発光層を成膜した。
次に、発光層の上に、LiFを、蒸着速度0.02nm/秒で、0.5nmの膜厚で成膜した後、このLiF膜上に金属Al 100nmを蒸着させ金属陰極を形成し有機EL素子を形成した。
得られた有機EL素子について、10mA/cmにおける発光効率(L/J)及び駆動電圧を測定した。また、初期輝度500cd/mから室温で200時間の連続駆動を行なったところ、輝度の残存率は78%であった。また、駆動初期の駆動電圧に対する200時間後の電圧上昇値(ΔV')は5.5Vであった。 結果を表46に示す。
【0223】
実施例5
正孔注入層における高分子化合物BとPSSAの比率(固形分重量)を5:18に変更した他は、実施例4と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表46に示す。
【0224】
実施例6
正孔注入層における高分子化合物BとPSSAの比率(固形分重量)を18:18に変更した他は、実施例4と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表46に示す。
【0225】
比較例4
正孔注入層を、PSSAを添加せず、高分子化合物Bとメタノールのみで形成した他は、実施例4と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表46に示す。
【0226】
【表46】

【0227】
以上の結果から、高分子化合物Bに有機酸(PSSA)を混合した組成物を用いて正孔注入層を形成した場合、高分子化合物B単独(比較例4)と比較して、発光効率が高く、長寿命化することが確認できた。
また、実施例5、6では高分子化合物Bと有機酸の混合比を変更することで、発光効率の向上、輝度残存率の向上に効果が出ることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0228】
本発明の組成物は、有機EL素子の有機薄膜層の材料、特に正孔注入層や正孔輸送層の材料として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】本発明の一実施形態の(1)の構成例である有機EL素子の概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の(2)の構成例である有機EL素子の概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の(3)の構成例である有機EL素子の概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の(4)の構成例である有機EL素子の概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の(5)の構成例である有機EL素子の概略断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の(6)の構成例である有機EL素子の概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の(7)の構成例である有機EL素子の概略断面図である。
【図8】本発明の一実施形態の(8)の構成例である有機EL素子の概略断面図である。
【符号の説明】
【0230】
10 陽極
20 陰極
30 正孔注入層
32 正孔輸送層
34 発光層
36 電子注入・輸送層
40 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される繰り返し単位を高分子鎖中に少なくとも一つ有する高分子化合物と
一般式(1)で表される繰り返し単位を含有しない少なくとも1種の有機酸を含む組成物。
一般式(1):
【化1】


(式中、Z1〜Z4は置換基を示す。p1、p2は0〜5の整数、p3、p4は0〜4の整数を示し、p1〜p4が2以上の場合、複数存在するそれぞれのZ1、Z2、Z3およびZ4は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素基または置換基を示す。X1およびX2は互いに同一であっても異なっていてもよい無置換または置換された二価の芳香族基を示し、lとmは0または1を示す。Ar1とAr2は互いに同一であっても異なっていてもよい無置換または置換された一価の芳香族基を示し、Yは無置換または置換された二価の芳香族基を示し、sは0〜1000の整数を示し、tは1〜1000の整数を示す。但し、Ar1、Ar2、X1、X2、Yで示される芳香族基上の置換基およびZ1〜Z4の少なくとも一つが、スルホ基、カルボキシル基、ホスホリル基およびヒドロキシ基からなる群から選択される基である。)
【請求項2】
前記有機酸がポリマー有機酸である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマー有機酸が含フッ素ポリマー有機酸である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記含フッ素ポリマー有機酸の全重量に対するフッ素原子の比率が20重量%以上80重量%以下である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
さらに、少なくとも1種の有機溶媒を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
有機エレクトロルミネッセンス材料である請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の組成物を有機エレクトロルミネッセンス材料用として被成膜領域に塗布し、組成物を塗布した被成膜領域から有機溶媒を蒸発させて有機エレクトロルミネッセンス材料薄膜を成膜する有機エレクトロルミネッセンス材料薄膜の形成方法。
【請求項8】
請求項6に記載の組成物を用いて得られる有機エレクトロルミネッセンス材料薄膜。
【請求項9】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料薄膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
陽極と陰極と、
前記陽極と陰極の間に、発光層を含む一層以上の有機薄膜層を有し、
前記有機薄膜層の少なくとも一層が請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス材料薄膜からなる請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−37361(P2010−37361A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198527(P2008−198527)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】