説明

有機ELデバイス製造装置及びその製造方法並びに成膜装置及び成膜方法

【課題】
本発明は、基板やマスクの撓みを低減し高精度に蒸着できる、または搬送チャンバを小型化できる、あるいは駆動部等を大気側に配置することで真空内の粉塵やガスの発生を低減し、生産性の高いまたは稼働率の高い有機ELデバイス製造装置またはその製造方法あるいは成膜装置または成膜方法を提供することである。
【解決手段】
本発明は、真空チャンバ内での基板とマスクとのアライメントを前記基板または前記マスクを具備する垂下体として垂下した状態で行い、該基板に蒸着材料を蒸着する際に、前記垂下体上の接触部を移動させて前記垂下体を垂直にし真空チャンバ内に搬送し、前記位置合せ位置にセットし、前記垂下体の垂下体接触部と前記搬送する搬送手段の前記垂下体接触部との搬送接触部とを離反し、その後前記アライメントを行なうことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELデバイス製造装置及びその製造方法並びに成膜装置及び成膜方法に係わり、特に大型の基板のアライメントに好適な有機ELデバイス製造装置及びその製造方法並びに成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELデバイスを製造する有力な方法として真空蒸着法がある。真空蒸着においては基板とマスクとのアライメントが必要である。年々処理基板の大型化の波が押し寄せ、G6世代の基板サイズは1500mm×1800mmになる。基板サイズが大型化すると当然マスクも大型化し、その寸法は2000mm×2000mm程度にも及ぶ。特に鋼製のマスクを使用すると有機ELデバイスではその重量は300Kgにもなる。従来では、基板及びマスクを水平にして位置合せをしていた。そのような従来技術としては、下記の特許文献1がある。
【0003】
また、真空蒸着法では、図4に示すように蒸着したい場所に開口部を有するマスクを処理対象である基板に密着させて行なう。このマスクは、蒸着材の付着により孔の形状が変わるために半日乃至1日度に交換する必要がある。従来は、図14に示すように真空蒸着を行なう処理チャンバSを有するクラスタCに交換用及び使用済みマスクMを保管する真空チャンバであるマスク保管室Hを設け、基板搬送を行なう搬送ロボットRで処理チャンバSまで搬送しセットしていた(特許文献2)。
【0004】
また、特許文献3には、マスク寸法を所望範囲に収めるために予めマスクを加温する加温室を処理チャンバに隣接して設け、必要なときに処理チャンバのマスクを交換することが開示されている。しかしながら、加温室には加温設備しか記載されておらず、その搬入出は特許文献3の第1の実施形態に記載されているように、特許文献2と同様に基板搬送を行なう搬送ロボット等を用いて行なっていると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-302896号公報
【特許文献2】特開2003-027213号公報
【特許文献3】特開2006-196360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された基板とマスクを横にしてアライメントする方法は、図13に示すように、基板及びマスクはその薄さと自重により大きく撓む。その撓みが一様であるならばそれを考慮してマスクを製作すればよいが、当然中心程大きくなり基板サイズが大きくなると製作は困難となる。また、一般的にその中心点における撓み量は、基板の撓みをd1、マスクの撓みをd2とすると、d1>d2となる。基板撓みが大きいと、基板蒸着面にマスクと接触し接触傷が生じるために、密着させることができない。そのために、被写界深度以上に離間してアライメントすると精度が悪く、不良品となる課題がある。特に、表示装置用基板では高精彩な画面を得ることができない。
【0007】
また、特許文献1に開示された方法では、基板とマスクをアライメントする機構全体が真空内の設置されているために、駆動部などの移動に伴う粉塵及び熱が発生す可能性があり、前者の真空内への漏洩は漏洩粉塵が基板やマスクに付着し蒸着不良を起こし、後者の発熱はマスクと熱膨張を助長し蒸着サイズを変化させ、共に歩留まり率、即ち生産性を低下させる問題がある。
【0008】
さらに、基板とマスクをアライメントする機構全体が真空内の設置されているために、一旦駆動部等において故障が発生すると保守に時間を要し、装置の稼働率が低下するとい問題がある。
【0009】
また、特許文献2,3に開示された方法では、マスクを可搬できる搬送ロボットが必要になるが、前記要求を満たす搬送ロボットを収める処理チャンバの大きさに対応した現実的な大きさ、例えば、5m角の搬送チャンバを製作することは困難な課題である。
【0010】
さらに、特許文献2,3に開示された方法では、搬送ロボットはマスクを搬送するとともに基板も搬送する。従って、基板を交換中はマスクを搬送できず、マスクの交換の必要な処理チャンバは勿論のこと、その下流に存在する処理チャンバにおいても処理ができず、稼働率が低下し、生産性が低下するとういう課題がある。
【0011】
従って、本発明の第一の目的は、基板やマスクの撓みを低減し、高精度に蒸着できる有機ELデバイス製造装置またはその製造方法あるいは並びに成膜装置または及び成膜方法を提供することである。
また、本発明の第二の目的は、搬送チャンバを小型化できる有機ELデバイス製造装置またはその製造方法あるいは成膜装置または成膜方法を提供することである。
また、本発明の第三の目的は、駆動部等を大気側に配置することで真空内の粉塵やガスの発生を低減し、生産性の高い有機ELデバイス製造装置またはその製造方法あるいは成膜装置または成膜方法を提供することである。
【0012】
さらに、本発明の第四の目的は、駆動部等を大気側に配置することで保守性を高め、稼働率の高い有機ELデバイス製造装置またはその製造方法あるいは成膜装置または成膜方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記第1または第2の目的を達成するために、真空チャンバ内での基板とマスクとのアライメントを前記基板または前記マスクを具備する垂下体として垂下した状態で行い、該基板に蒸着材料を蒸着する際に、前記垂下体上の接触部を移動させて前記垂下体を垂直にし真空チャンバ内に搬送し、前記位置合せ位置にセットし、前記垂下体の垂下体接触部と前記搬送する搬送手段の前記垂下体接触部との搬送接触部とを離反し、その後前記アライメントを行なうことを第1の特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記第1または第2の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記離反は前記アライメントをするアライメント部の有する前記垂下体を上下する手段で行なうことを第2の特徴とする
さらに、上記第1または第2の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記離反は前記搬送接触部を垂下体接触部から離反させることを第3の特徴とする。
【0015】
また、上記第1または第2の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記垂下体はマスクを具備する垂下体であり、前記垂下体接触部は前記マスクに沿って設けたラックであり、前記搬送接触部はピニオンであることを第4の特徴とする。
【0016】
また、上記第3または第4の目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記離反する離反機構の駆動手段を大気雰囲気中に設けたことを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板やマスクの撓みを低減し、高精度に蒸着できる有機ELデバイス製造装置または成膜装置提供することができる。
また、本発明によれば、搬送チャンバを小型化できる有機ELデバイス製造装置またはその製造方法あるいは成膜装置または成膜方法を提供することができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、駆動部等を大気側に配置することで、真空内の粉塵やガスの発生を低減し、生産性の高い有機ELデバイス製造装置またはその製造方法あるいは成膜装置または成膜方法を提供することができる。
また、本発明によれば、駆動部等を大気側に配置することで保守性を高め、稼働率の高い有機ELデバイス製造装置またはその製造方法あるいは成膜装置または成膜方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態である有機ELデバイス製造装置を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態である搬送チャンバと処理チャンバの構成の模式図と動作説明図である。
【図3】処理チャンバとマスク交換チャンバとの間をマスクを搬入出するマスク搬送機構の本発明の一実施形態を示す図でである。
【図4】本発明の一実施形態であるマスクを示す図である
【図5】本発明の一実施形態であるアライメント部を示す図である。
【図6】図(a)は搬送時において搬送機構のラックとピニオンが噛み合っている状態を示す図である。図(b)はアライメント時において搬送機構のラックとピニオンが離反している状態を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態であるアライメント光学系の基本構成を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態である搬送機構及び離反機構を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態である有機ELデバイス製造装置を示す図である。
【図10】本発明の本発明の第2実施形態である有機ELデバイス製造装置であるマスク交換チャンバの構成とその動作を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態である有機ELデバイス製造装置おけるマスク搬入出室の構成及び動作を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態である有機ELデバイス製造装置を示す図である。
【図13】マスク・基板を水平にして蒸着する従来技術の課題を説明する図である。
【図14】マスク交換における従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の有機ELデバイス製造装置における第1の実施形態を図1から図7を用いて説明する。有機ELデバイス製造装置は、単に発光材料層(EL層)を形成し電極で挟むだけの構造ではなく、陽極の上に正孔注入層や輸送層、陰極の上に電子注入層や輸送層をなど様々な材料が薄膜としてなる多層構造を形成したり、基板を交換したりする。図1はその製造装置の一例を示したものである。
【0021】
本実施形態における有機ELデバイス製造装置100は、大別して処理対象の基板6を搬入するロードクラスタ13、基板6を処理する4つのクラスタ(A〜D)、各クラスタ間又はクラスタとロードクラスタ13あるいは次工程(封止工程)との間の設置された5つの受渡室14から構成されている。本実施形態では、基板の蒸着面を上面にして搬送し、蒸着するときに基板を立てて蒸着する。
【0022】
ロードクラスタ13は、前後に真空を維持するためにゲート弁10を有するロードロック室13Rとロードロック室13Rから基板を受取り、旋回して受渡室14aに基板6を搬入する搬送ロボット15Rからなる。各ロードロック室13R及び各受渡室14は前後にゲート弁10を有し、当該ゲート弁10の開閉を制御し真空を維持しながらロードクラスタ13あるいは次のクラスタ等へ基板を受渡する。
【0023】
各クラスタ(A〜D)は、一台の搬送ロボット15を有する搬送チャンバ2と、搬送ロボット15から基板を受取り、所定の処理をする図面上で上下に配置された2つの処理チャンバ1(第1の添え字a〜dはクラスタを示し、第2の添え字u、dは上側下側を示す)を有する。搬送チャンバ2と処理チャンバ1の間にはゲート弁10を設けている。
【0024】
処理チャンバ1の構成は処理内容によって異なるが、蒸着材料である発光材料を真空中で蒸着しEL層を形成する真空蒸着チャンバ1buを例にとって説明する。図2は、そのとき搬送チャンバ2bと真空蒸着チャンバ1buの構成の模式図と動作説明図である。図2における搬送ロボット15は、全体を上下に移動可能(矢印159参照)で、左右に旋回可能なリンク構造のアーム157を有し、その先端には基板搬送用の櫛歯状ハンド158を有する。
【0025】
本実施形態の処理の基本的な考え方は、図2に示すように、1台の真空蒸着チャンバに処理ラインを2つ設け、一方のライン(例えばRライン)で蒸着して間に、他方のLラインでは基板を搬出入し、基板6とマスク81とのアライメントをして蒸着する準備を完了させることである。この処理を交互に行なうことによって、基板に蒸着させずに無駄に蒸発(昇華)している時間を減少させることができる。
上記を実現するために、真空蒸着チャンバ1buは、基板6とマスクの位置合せを行い、基板6の必要な部分に蒸着させるアライメント部8と、搬送ロボット15と基板の受渡しを行い、蒸着部7へ基板6を移動させる処理受渡部9とを右側Rラインと左側Lラインとに2系統設け、その2系統のライン間を移動し、発光材料を蒸発(昇華)させ基板6に蒸着させる蒸着部7を有している。
【0026】
そこで、まず、処理受渡部9を説明する。処理受渡部9は、搬送ロボット15の櫛歯状ハンド158と干渉することなく基板6を受渡し可能で、基板6を固定する手段94を有する櫛歯状ハンド91と、前記櫛歯状ハンド91を旋回させて基板6を直立させアライメント部8に移動させるハンド旋回駆動手段93を有する。基板6を固定する手段(図示せず)としては、真空中であることを考慮して静電吸着や機械的クランプ等の手段を用いる。
【0027】
蒸着部7は、蒸発源71をレール76r上に沿って上下方向に移動させる上下駆動手段76、蒸発源71をレール75上に沿って左右のアライメント部間移動する左右駆動ベース74を有する。蒸発源71は内部に蒸着材料である発光材料を有し、前記蒸着材料を加熱制御(図示せず)することによって安定した蒸発速度が得られ、図2の引出し図に示すように、蒸発源71に並んだ複数の穴73から噴射する構造となっている。必要によっては、蒸着膜の特性を向上させるために添加剤も同時に加熱して蒸着する。この場合、蒸発源と一対若しくは複数の蒸発源と上下に平行に並べて蒸着する。
【0028】
アライメント部8を説明する前に、図3を用いて本実施形態の大きな特徴であるマスク交換チャンバ5の構成とその動作を、アライメント部を示す図5を参照しながら説明する。図3は、処理チャンバ1とマスク交換チャンバ5との間を垂下体を構成するマスク81を搬入出するマスク搬送機構の一実施形態を示す図で、図5はアライメント部の一実施形態を示す図である。
【0029】
図1の引出し図に示すように、本実施形態では蒸着処理する処理チャンバ1に隣接してゲート弁10Bを介してマスク交換チャンバ5を設けている。マスク交換チャンバ5は少なくともマスク交換時に処理チャンバ1と同じ真空度を維持できるチャンバである。以下の説明では、図1の引出し図に示す、真空蒸着チャンバ1adのLラインと真空蒸着チャンバ1bdのRラインのマスク81の交換を担当するマスク交換チャンバ5bdを例にとって説明する。
なお、真空蒸着チャンバ1adと真空蒸着チャンバ1bdのL、Rラインの呼び方は、図2に示す真空蒸着チャンバ1buのラインの呼び方とは上下反対になるので図上では逆になる。また、図1におけるマスク交換チャンバ等の添え字は、第1の添え字が左からabc順を、第2の添え字が上段u、下段dを表す。但し、説明の煩雑さを避けるために必要のない限り、添え字は省略する。
【0030】
まず、図4に示す本実施形態で用いるマスク81の一例を説明する。マスク81は大別してマスク部81Mとマスク部を支持するフレーム81Fからなる。引出し図に示すように、マスク部81Mには基板6に蒸着する部分に対応した箇所に開口部81hを有する。本例では赤(R)、緑(G)、青(B)の発光材料を蒸着するマスクのうち赤に対応する開口部を示している。マスクの寸法は基板の大型化に伴い2000mm×2000mmにもなり、その重量も300kg超にも及ぶ。その窓の大きさは色によって異なるが平均して幅30μm、高さ150μm程度である。マスク81Mの厚さは50μm程度であり、今後さらに薄くなる傾向がある。一方、マスク81Mには、精密アライメントマーク81mが4ヶ所、粗アライメントマーク81mrが2ヶ所、計6ヶ所にアライメントマーク81mが設けられている。それに対応して、基板にも精密アライメントマーク6msが4ヶ所、粗アライメントマーク6mrが2ヶ所の計6ヶ所にアライメントマーク6mが設けられている
次に、真空蒸着チャンバである処理チャンバ1とマスク交換チャンバ5との間をマスク81を搬入出するマスク搬送機構の構成と動作を説明する。図3においては紛らわしさ避けるために搬送機構以外の部分は省略している。図3の左側に処理チャンバ1を、右側にマスク交換チャンバ5を示しており、マスク81は処理チャンバ1にセットされている状態を実線で示す。前記2つのチャンバの間にはそれらを仕切るためのゲート弁10Bがある。ゲート弁の両側には、マスク81を搬送させるための各搬送部(交換チャンバ搬送部:56、処理チャンバ搬送部:86)がある。各搬送部は基本的には、同じ構造を有しているので、構造に関してはマスク交換チャンバ5を主体に、後述するマスク搬送駆動手段に関しては後述の説明で図5を参照する関係上真空蒸着チャンバ1を主体に説明する。そのために、図3においては煩雑さを避けるために図面及び符号を一部省略している。
【0031】
各搬送部(56、86)は、マスク81を保持するベース(セットベース:52、アライメントベース:82)とマスク搬送駆動手段(交換チャンバ搬送駆動部:56B、処理チャンバ搬送駆動部:86B)とからなる。ベースは、ベースにマスク81が搬入する際にマスク上部を支持するマスク上部固定部(52u、82u)とその下部にマスク81を搬送する複数のローラ状の搬送レール(56r、82r)とを有する。マスクはその下部にマスク定載置固定して一体になって移動するマスク下部固定部81kを有する。マスク下部固定部81kはその固定部の凸部底部には搬送接触部であるピニオン(小歯車:56g、86g)が噛み合う垂下体接触部であるラック81rを有する。二つのマスク搬送部の駆動歯車であるピニオンの間隔はマスク81の横長LSより短い間隔LDになるように配置されている。従って、LS>LDであるから、少なくとも一方のピニオンがラック81rと噛み合うので、前記2つのピニオンを協調して制御することでマスクを前後進させることができる。
【0032】
マスク81がスムーズに搬送できるようにするために、マスク上部固定部の内部には、引出し図Aに示すように複数の左右のガイドローラ56ur、56ulからなる搬送ガイド56hを設け、一方、マスク下部固定部81kは、引出し図Bに示すようにラック側とは反対側のベースにピニオンと協調してマスク81を挟みながら搬送させる複数のローラ56drが設けられている。さらに、搬送レール(56r、82r)は、ラック81rがあってもマスクをスムーズに搬送できるように、引出し図Bに示すようにH型の形状を有する。
【0033】
交換チャンバ搬送部56のガイドローラ56ur、56ulに対応する処理チャンバ搬送部86のガイドローラ86ur、86ul(図示せず)は、アライメント時においてマスクを把持固定する役目を果たしている。従って、アライメント時に安定してマスクを保持できるように、ガイドローラ86ur、86ul間の挟み合う度合いはガイドローラ56ur、56ul間に比べやや固めに調節している。前記搬送ローラ82r及びガイドローラは真空蒸着に悪影響を及ぼすガスを低減するために、ローグリースベアリングを使用している。なお、マスク81を前記マスク下部固定部81kに着脱可能に且つ確実に固定するために、前記マスク下部固定部81kには、マスク下部に設けた三角錐状の突起物が納まる三角錐状の凹部(図示せず)が複数設けてある。
【0034】
処理チャンバ搬送駆動部86Bは、図5に示すように、大気側であるチャンバ1の下部壁1Y下に設けた搬送駆動モータ86m、マスクのラック81rに噛み合うピニオン86g、回転軸を90度変換するための2つの傘歯車86k1,86k2、歯車支持体86h及び真空シールするシール部86sからなる。このように処理チャンバ搬送駆動部86Bもアライメント機構部83と同様にシール部を介して大気側に設けられており、真空蒸着に悪影響及ぼす粉塵等を真空内に持ち込まないようしている。
【0035】
上記実施形態では処理チャンバ搬送駆動部86Bのシール部86sを搬送駆動モータ86mと傘歯車86k1の間に設けたが、処理チャンバ1の下壁1Yから突出た筒状体に傘歯車収納部を設け、傘歯車収納部とピニオンの間に真空シール例えば磁性流体シールを設けてもよい。交換チャンバ搬送駆動部56Bも処理チャンバ搬送駆動部86Bと同様な構成を有している。
【0036】
また、このような搬送機構によってマスク81がアライメントベース82の所望の位置にセットされたかどうかは、本実施形態では、後述する図5に示すアライメント光学系85を利用する。図4に示すようにアライメントは基板6及びマスク81に設けたアライメントマーク6m、81mが重なるように制御する。そこで、両アライメントマーク6m、81mがアライメント光学系85のカメラに共に撮像されればセットされたと判断する。勿論、マスク上部固定部82uの端部にスイッチ等のセンサを設けてもよい。
【0037】
本搬送機構の実施形態によれば、マスクの交換時において、真空蒸着チャンバなどの処理チャンバ1とマスク交換チャンバ5の間にあるゲート弁10Bの両側に、マスクに保持するマスク下部固定部に設けられたラックを駆動する駆動部を設けた簡単な機構で、確実にマスクを移動でき、搬入後、ゲート弁10Bを閉じることで真空蒸着チャンバなどの処理チャンバをマスク交換チャンバから完全に分離できる。
【0038】
上記に説明した搬送機構の実施形態によれば、マスクを確実にアライメントベースにセットできるので、高精度に蒸着できる有機ELデバイス製造装置を提供できる。
【0039】
次に、図5を用いて本実施形態の他の特徴であるアライメント部8を説明する。図5では処理チャンバである真空蒸着チャンバの壁やゲート弁を省略している。本実施形態では、アライメントは、真空蒸着チャンバの外部からマスクを搬入し、基板6をほぼ垂直または垂直に固定し、マスク81を垂下してマスクの姿勢を変えて行なわれる。そのために、図面上部にはアライメントを行なう機構が、下部には真空蒸着チャンバの外部から内部にマスクを搬入する為の搬送機構である搬送部86が設けられている。アライメント及びマスク搬送のための機構部は、可能な限り、真空蒸着チャンバの外側である大気側に、具体的には真空蒸着チャンバの上部壁1T上、あるいは下部壁1Y下に設けている。また、真空蒸着チャンバ内に設けなければならないものは、大気部から凸部を設けてその中に設けている。
【0040】
アライメント部8は、マスク81、マスク81を固定するアライメントベース82、アライメントベース82を保持し、アライメントベース82即ちマスク81のXZ平面での姿勢を規定するアライメント駆動部83、アライメントベース82を下から支持し、アライメント駆動部83と協調してマスク81の姿勢を規定するアライメント従動部84、基板6と前記マスク81に設けられた図4に示すアライメントマークを検出するアライメント光学系85、アライメントマークの映像を処理し、アライメント量を求めアライメント駆動部83を制御する制御装置20(図1参照)からなる。
【0041】
以下、本実施形態におけるアライメント方法を実現する基本的な構成を説明し、その後基本的な構成に基づくアライメント方法、それを実現する駆動機構を順に説明する。
【0042】
マスク81はその上部を保持部82uでアライメントベース82固定され、アライメントベース82に固定されている複数のローラ状の搬送レール82rで支持されている。そのアライメントベースを上部に設けられた2ヶ所の回転可能な支持部81a、81bで懸垂し、その81a、81bをZ方向にあるいはX方向に主動(アクティブに駆動)することによって、アライメントベース82即ちマスクのXZ平面での姿勢を規定しアライメントする。また、その姿勢規定時のアライメントベース82を下から支えるために、支持部81a、81bのそれぞれの下に設けられた回転可能な支持部81c、81dを設け、支持部81c、81dが支持部81a、81bの動きに対して従動的に動作する。なお、アライメントベース82はマスクを介して基板6に蒸着できるように回の字ように空洞になっている。
【0043】
次に、アライメント方法を説明する。図5に示す4箇所に設けられたアライメント光学系85により基板中心における基板6とマスク81の位置ズレ(ΔX、ΔZ、θ)を検出する。この結果に基づいて、アライメントベース82上部に設けた主動支持部81bをX方向、Z方向に、同じく上部に設けた主動支持部81aをZ方向に移動させる。このとき、81a、81bのZ方向の移動差によってθ補正が、両者のZ方向の移動にθ補正の影響を加味した値でΔZ補正が、81bのX方向の移動にθ補正の影響を加味した値でΔX補正が行なわれアライメントされる。上記において、主動支持部81a、81bの両者間の距離は長いほうが、同じZ方向の動きに対してθ補正を精度良くできる利点がある。
【0044】
また、アライメントベース82の上記移動にともない、主動支持部81aはX方向に、アライメントベース82下部に設けた従動支持部81c、81dはX及びZ方向に従動的に移動する。主動支持部81bの駆動は、真空蒸着チャンバ1buの上部壁1T上に設けられた駆動モータを有するアライメント駆動部83R、主動支持部81aの駆動及び受動はアライメント駆動部83L、及び従動支持部81c、81dの従動は真空蒸着チャンバ1buの下部壁1Y下に設けられたアライメント従動部84R、84Lで行なう。
【0045】
このマスクのアライメントはマスクを垂下して行なわれるが、図6(a)に示すように搬送時の状態でマスクのラック81rとピニオン86gが噛み合っているとスムーズなアライメントの妨げになる。そこで、アライメント時は両者を離反機構で離反させてその後アライメントする必要がある。本実施形態での離反動作は、マスク81をアライメント位置よりやや下側で搬送し、図6(b)のようにラック81r、即ちアライメントベース82を一定距離吊り上げて行なう。吊り上げは主動支持部81a、81bをZ方向に移動させて行なう。従って、離反機構40は主動支持部81a、81bをZ方向に移動させる後述するZ駆動部83Zで構成される。上述したZ方向の吊り上げ量は、アライメントに差し支えない程度の量であるので、それほど大きくなくてもよい。吊り上げ動作に伴い、主動支持部81a、81bと従動支持部81c、81dのZ方向の可動範囲をその分だけ多少長くとる必要がある。
以上説明した方法は、本来アライメント部8が有しているZ方向の動作自由度利用してマスクを吊り上げマスクとピニオンを離反させたが、ピニオンを降下させることで離反させてもよい。
【0046】
上記した本実施形態の離反機構によれば、処理チャンバ1にマスク81を搬送してアライメントベース82にセットし、マスクとピ二オンを離反させることで、スムーズに精度よくアライメントをすることができ、高精度に蒸着できる有機ELデバイス製造装置を提供できる。
また、離反機構として本来アライメント部が有している自由度を用いることで簡単な機構でスムーズなアライメントを実現できる。
【0047】
次に、マスク81の姿勢を規定するアライメント駆動部83とアライメント従動部84について図5に戻りより詳細に説明する。
【0048】
アライメント駆動部83は、真空蒸着チャンバ1buの上部壁1T(図2も参照)上の大気中に設けられ、回転指示部81aをZ方向に移動させるZ駆動部83Zを有する左駆動部83Lと、回転支持部81bを左駆動部83L同様にZ方向に移動させるZ駆動部83Zと前記Z駆動部全体をX方向(図5の左右方向)に移動させるX駆動部83Xを有する右駆動部83Rとからなる。左右駆動部83L、83RのZ駆動部は基本的に同じで構成であるので同じ番号を付し、かつ一部番号を省略している。以下、番号の付け方、省略の仕方は他の機構部においても同様である。
【0049】
左駆動部83Lを例に採りZ駆動部83Zを説明する。Z駆動部83Zは、前述したようにレール83r上をX方向に従動するZ駆動部固定板83kに固定され、Z方向駆動モータ83zmによりボールネジ83n、テーパ83tを介して連結棒83jをZ方向に移動する。アライメント軸83aは、その上部で連結した連結棒83jによりZ方向に移動する。テーパ83tは、アライメントベース82等の重力を利用して前記Z方向のロストモーションを防ぐために設けたもので、その結果ヒステリシスがなくなり目標値に早く収束する効果がある。また、アライメント軸83aは、真空蒸着チャンバ1buの上部壁1Tに設けられたシール部(図示せず)に一端を固定されたベローズ83vを介して動作し、スプライン83sによって傾斜することなくZ方向に垂直かつ/またはX方向に平行移動する。
【0050】
右駆動部83Rは、さらに前記Z駆動部83Zに加え、真空蒸着チャンバ1の上部壁1Tに固定され、Z駆動部83Zを搭載しているZ駆動部固定板83kをX軸レール83r上に沿って駆動するX駆動部83Xを有する。X駆動部83Xの駆動方法はX方向駆動モータ83xmの回転力をボールネジ83n、テーパ83tを介するなど基本的にはZ軸駆動部83Zと同じであるが、その駆動力は、アライメントベース82を回転駆動及びアライメントベースを介して他の駆動部あるいは従動部を移動させるパワーが必要である。アライメント軸83aは、左駆動部83Lのアライメント軸83a同様にスプライン83sによって傾斜することなくZ方向に垂直かつ/またはX方向に平行移動する。また、アライメント軸83aはX方向にも移動するため、そのベローズ83vもX方向に対する自由度を有しており、伸縮とともに左右に柔軟に移動する。
【0051】
アライメント従動部84は、回転支持部81c、81dの前述した従動回転に対応できるように、それぞれのアライメント軸84aをZ方向、X方向に移動できる左右の従動部84L,84Rを有する。従動部は中心部に1ヶ所でもよいが、本実施形態では、安定して動作させるために2ヶ所設けている。両従動部は基本的には左右線対称に同一構造を有するので、代表して84Rを説明する。アライメント軸84aは、真空蒸着チャンバ1の下部壁1Yに設けられたシール部84cに一端を固定された真空蒸着チャンバ1の真空をシールするベローズ84v、スプライン84sを介してX軸従動板84kに固定されている。そこで、X方向の従動はアライメント従動部84を固定するアライメント支持部固定台84bに敷かれたレール84rを移動させて行なう。また、Z方向の従動は前記スプライン84sによって行なう。
【0052】
上記のアライメント部の実施形態では、4ヶ所の回転支持部81のうち真空蒸着チャンバ上部に2ヶ所設けた回転支持部をZ方向に、またそのうち1ヶ所をX方向に主動(アクティブに駆動)することによって、マスクのアライメントを実施している。そのほかに種々の駆動方法が挙げられる。
例えば、上部3ヶ所に回転支持部を設け、中央の回転支持部を回転させ、左右の回転支持部でZ方向とX方向に主動または従動させてアライメントする。そして下部に少なくとも1ヶ所の従動部を設ける。あるいは、上記実施形態同様に上部回転支持部を2ヶ所設け、その1ヶ所に回転、Z方向及びX方向の主動を集中させ、他は従動とする方法。また、上記実施形態では基本的には、上部を主動、下部を従動としたがこれを反対にしてもよい。
【0053】
上記アライメントのための機構部の実施形態によれば、シール部を介して大気側に設けられており、真空蒸着に悪影響及ぼす粉塵等を真空内に持ち込まないようしており、生産性の高い有機ELデバイス製造装置を提供できる。
また、上記アライメントのための機構部の実施形態によれば、駆動部等を大気側に配置することで保守性を高め、稼働率の高い有機ELデバイス製造装置を提供できる。
【0054】
次に、アライメント光学系85について説明する。アライメント光学系は、前述したそれぞれアライメントマークを独立して撮像できるように、4つの精密アライメントマーク81msに対する4つの精密アライメント光学系85sと、2つの粗アライメントマーク81mrに対する2つの粗アライメント光学系85rとの、計6つの光学系から構成される。
【0055】
図7に6つのアライメント光学系の基本構成を示す。光学系の基本的構成は、マスク81を挟んでアライメントベース82側に、真空蒸着チャンバ1buの上部1Tに固定され光学窓85wを介して照射する光源85kと後述する遮断アーム85asに固定された光源側反射ミラー85kmを設け、基板6側に、撮像カメラ収納筒85tからのアーム85aに取付けた撮像カメラ側反射ミラー85cm及び撮像カメラ収納筒85tに収納された撮像手段である撮像カメラ85cを設けた、いわゆる透過型の構成を有している。なお、撮像カメラ収納筒85t、アーム85a等は、基板が垂直姿勢になるときの軌道Kの邪魔にならないように破線で示すアーム85a位置までベローズ85v等により移動できるようになっている。
【0056】
透過型であるので、光が通過できるようにマスク81Mに4角形の貫通孔のアライメントマーク81mを設け、さらに、フレーム81Fにも円筒状の貫通孔81kを設けている。一方、基板6のアライメントマーク6mは光透過性の基板の上に金属性の四角形したマスクのアライメントマーク81mに比べて十分に小さいマークである。
【0057】
貫通孔81kを設けると、蒸着時に蒸着材料が貫通孔に入りアライメントマーク上に蒸着されるため、次の工程からアライメントができない。これを防ぐために、蒸着時には蒸着材料が貫通孔81kに入らないよう遮蔽する。本実施形態では、アライメント時に光源側反射ミラーを取付けたアームが蒸着時には蒸着に有効な領域を遮断するので、そのアームを移動可能とし、かつ蒸着時には貫通孔81kを遮蔽する構造を有する遮蔽型アーム85asとした。遮蔽型アーム85asは、大気側に設けた駆動部(図示せず)に上下に駆動される連結棒85bにより伸縮し、その一端をシール部85sに固定されたベローズ85vを介して駆動させる。図7に示す破線が遮蔽状態を示す、実線がアライメント状態を示す。
【0058】
上記実施形態では、光源側反射ミラー85kmを遮断アーム85asに取付けたが、マスクのフレーム81Fの厚さが十分であれば、フレーム81FにL字型の貫通孔81kを設け、光源側反射ミラー85kmを内蔵することも可能である。その場合は、遮蔽型アームは不要である。
また、上記実施形態では、アライメント時に光源側反射ミラー85kmが蒸着領域を遮断するので遮蔽型アームを移動させたが、遮断しない場合は、遮蔽型アームを固定にすることができる。
【0059】
一方、カメラ収納筒85tは、図5に示すように真空蒸着チャンバ1の上部1Tから突出た構造を有し、先端に光学窓85wを設けて、撮像カメラ85cを大気側に維持するととともに、アライメントマーク6m、81mを撮像できるようにしている(符号は図7を参照)。
上記実施形態では、撮像カメラ側反射ミラーを真空中に設けたが、撮像カメラ収納筒85を長くし、前記ミラーを内蔵してもよい。
【0060】
精密アライメント光学系85sと粗アライメント光学系85rの構成上の違いは、前者が高精度にアライメントするために、視野を小さくし高分解でアライメントを撮像するための高倍率レンズ85hを有している点である。これに伴い、図7に示す基板及びマスクのアライメントマーク6m、81mの寸法が異なっている。精密の場合、粗と比べて1桁以上小さく、最終的にはμmオーダのアライメントが可能である。
従って、精密アライメント時は、視野が外れないようにマスク81のアライメントマーク81mの移動に合せ、精密アライメント光学系85sも追随して移動する必要がある。そこで、図5に示すように、アライメントベースの上部側の精密アライメント光学系85sにおいては、撮像カメラ85cを固定する固定板85pをZ駆動部固定板83kあるいはX軸従動板84kに接続し追随させる。または、モータ付きステージを設け数値制御により追随させてもよい。また、粗アライメント光学系85rについては、初期の取付け時に位置調整ができるようにカメラ位置合せステージ85pを設けている。
【0061】
上記実施形態では、6つのアライメント光学形を用いたが、アライメントの要求精度によっては、粗アライメント光学系を設ける必要がなく、さらに、精密アライメント光学系においても4つも必要がなく、粗・精密含めて最低2つあればよい。
【0062】
上記アライメント部8の実施形態では、アライメント駆動部83、アライメント従動部84、アライメント光学系85を真空蒸着チャンバ1buの上部あるいは下部の大気側に設けたが、真空蒸着チャンバ1buの側壁側の大気に設けてもよい。勿論、上部、下部及び側壁部に分散させてもよい
上記アライメント光学系85の実施形態によれば、カメラ及び光源等を真空側に突き出た内部が大気中である収納筒に収納しており、真空蒸着に悪影響及ぼす粉塵等を真空内に持ち込まないようしており、生産性の高い有機ELデバイス製造装置を提供できる。
【0063】
次に搬送機構及び離反機構の第2の実施形態を図8を用いて説明する。図8にはマスク交換チャンバ5を示していないが基本的には同様である。図8において説明に関係ない符号は省略している。
【0064】
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は次のとおりである。第1は、ラック81rをマスク81を固定するマスク下部固定部81kの側部に設けた点である。第2は、第1の変更に伴い、ピニオン86g(56g)の回転軸を90度変更する必要がないために傘歯車を用いないで搬送駆動モータ86m(56m)の回転軸をピニオン86g(56g)に直接接続している点である。第3に、第1の変更に伴い、搬送レール82r(56r)の形状はH状にする必要がなくなり平坦でもよい点である。第4に、離反機構45としてピニオン86gをマスクから離すために処理チャンバ搬送駆動部86B全体を駆動する駆動部離反手段87を設けている点である。駆動部離反手段87は、駆動部離反手段87を載置する離反板87kを駆動モ−タ87mでボールジョイント87bを旋回しレール87r上を移動させて行なう。第5に、処理チャンバ搬送駆動部86Bも離反動作に対応できるようにシール86s上にベロー86vを有する。なお、上記説明では離反機構としてピニオン86を離反させる駆動部離反手段87を設けたが、マスク側を離反させてもよい。
【0065】
第2の実施形態においても、第1の実施形態同様に、確実にマスクを交換でき、ピニオンとマスクとを離反させることでので、スムーズに精度よくアライメントをすることができ、高精度に蒸着できる有機ELデバイス製造装置を提供できる。
【0066】
以上の搬送機構の第1及び第2の実施形態においては、いわゆるラック及びピニオンを用いて説明したが、マスクに設けられた平坦なレール上をローラで駆動して搬送させてもよい。その場合、十分な摩擦力が得られない場合には、レールまたはローラ表面を処理して摩擦力を大きくして使用する。
【0067】
次に、本発明の有機ELデバイス製造装置における第2の実施形態を図9から図11を用いて説明する。本第2の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、マスク交換チャンバはマスク交換チャンバ5に隣接して新たなマスクと交換できるマスク搬入出室12を有する点である。隣接する位置は、前面または後方あるいは上部または下部となる。本実施形態では図3に示したマスク搬送機構を活かすこと及びスペースファクターを考慮して後方に設けることとした。そのために、マスク交換チャンバ5は、マスクを90度方向転換する方向転換機構、例えばターンテーブル機構57を有する。
【0068】
以下順に、マスク交換チャンバ5とマスク搬入出室12の構成と動作を説明する。
図9におけるマスク交換チャンバ5は、図3に示した交換チャンバ搬送部56を有するタイプに、交換チャンバ搬送部を90度旋回するターンテーブル機構57とマスク搬入出室12との間にゲート弁10Aを付加した構成を有する。
【0069】
図10は本発明の第2の実施形態であるマスク交換チャンバ5のより詳細な構成とその動作を示す図であり、交換チャンバ搬送部56とターンテーブル機構57を示す。交換チャンバ搬送部56の基本的な構成は既に図3で説明したとおりである。図3と異なるのは、交換チャンバ搬送駆動部56B以外の交換チャンバ搬送部56はターンテーブル56tの上に固定されている点である。左右の真空蒸着チャンバ1または後方にあるマスク搬入出室12との間でマスク81を搬入出するために、交換チャンバ搬送駆動部56Bは、図9の一点鎖線のクロス位置に配置する必要がある。例えば、交換チャンバ搬送駆動部56Bの搬送駆動モータ56mの回転中心をターンテーブル56の回転中心位置にくるように配置する。駆動モータをターンテーブル56の回転中心位置に配置することで駆動モータをターンテーブル上に設けなくてもよく、その結果、駆動モータを大気側の設けることができる。
【0070】
また、ターンテーブル機構57は、その周囲に歯車57rを有するターンテーブル57tとターンテーブル駆動部57Bからなる。ターンテーブル駆動部57Bは、大気側であるマスク交換チャンバ5の下部壁5Y下に設けたターンテーブル駆動モータ57m、真空シールするシール部57s、ターンテーブル57tの歯車57rと噛み合う歯車57g及びマスク交換チャンバ5の下部壁5Y上を走行する複数の走行輪57kからなる。
【0071】
本実施形態によれば、マスク交換チャンバ5に搬入されたマスクを、左右の処理チャンバ1またはマスク搬入出室12に搬入出することができる。
【0072】
次に、図9に示すマスク搬入出室12の構成及び動作を図11を用いて説明する。マスク搬入出室12はマスク保管部121(以下、簡単に保管部と略す)を有している。設けている。保管部121は、セットベース52と基本的には同様な構造を有し複数配置された保管ベース122と、保管ベースを搭載する保管台121dと及びマスクをターンテーブル57tと保管台121dの移動させる図5に示す交換チャンバ搬送駆動部56Bと同一構造を有する搬入出室搬送駆動部126Bからなる。搬入出室搬送駆動部126B(駆動モータ126m)は、処理チャンバ搬送駆動部86B(搬送駆動モータ86m)と交換チャンバ搬送駆動部56B(搬送駆動モータ56m)とを結ぶ直線と交換チャンバ搬送駆動部56B(搬送駆動モータ56m)と搬入出室搬送駆動部126B(駆動モータ126m)とを結ぶ直線が直角になるように配置されている。保管ベース122のターンテーブル57t側は、保管台121dからα=搬入出室搬送駆動部126B+β幅分だけ突出した状態で設置されている。そこで、保管台121dを矢印A方向移動すると共に、矢印B方向に移動することによって、全ての保管ベース121hが保管台搬送駆動部121Bと噛み合うようすることができる。なお、121rは保管台121dの走行レールである。
【0073】
図11は図9に示すマスク搬入出室12を矢印C方向から見た図で、保管ベース122を1台のみ示し搬入出室搬送部126を主体に示した図である。図11はゲート弁10Aを境にして左側がマスク交換チャンバ5であり、右側が処理チャンバ1または搬送チャンバ2である。搬入出室搬送部126は交換チャンバ搬送部56と基本的に同じであるが次の点で異なる。
第1に、搬入出室搬送駆動部126Bの配置位置は、搬送手段の立場からすれば図3の処理チャンバ搬送駆動部86Bと同じ位置にある必要がある。この位置によって、搬入出室搬送駆動部126Bは交換チャンバ搬送部56とマスクの受け渡しが可能となる。
【0074】
第2に、マスク上部固定部122uが開閉可能となっている点である。マスク搬入出室12の天井に設けた開閉可能な開口部(図示せず)からクレーン(図示せず)でマスク81を搬入し、搬送ローラ122rにセットするとき邪魔にならないようにするためである。セット後はマスク上部固定部122uに設けたセット爪122tをセット孔122hに挿入し、マスク81を保持し、安定してガイドローラ126urによって搬送できる。
【0075】
マスク搬入出室12は大気雰囲気の室でもよいが、真空チャンバすることによってゲート弁10Aを開くときにマスク交換チャンバ5の真空度を、強いて言えば処理チャンバ1の真空度を低下させることなくマスクを交換できる。この結果、真空に引くための時間を短縮でき、稼働率の高い有機ELデバイス製造装置を提供できる。
【0076】
上記、実施形態においては保管部121をマスク搬入出室12に設けたが、マスク交換チャンバ5にも設けてもよい。
【0077】
上記本発明の有機ELデバイス製造装置における第2の実施形態によれば、マスクの交換時において、基板搬送系には影響を与えず処理できるので、稼働率及び生産性の高い有機ELデバイス製造装置または製造方法を提供することができる。
【0078】
また、上記本発明の有機ELデバイス製造装置における第2の実施形態によれば、マスク搬入出する場所として閉空間となるマスク搬入出室21を設けたことで、真空蒸着チャンバの真空度低下を抑えることができるので、同じ真空蒸着チャンバ内の他の処理は継続可能である。従って、稼働率の高い有機ELデバイス製造装置または製造方法を提供することができる。
【0079】
さらに、少なくとも、マスクの交換時間が短縮できるので、稼働率及び生産性の高い有機ELデバイス製造装置または製造方法を提供することができる。
【0080】
次に、本発明の第3の実施形態である有機ELデバイス製造装置を図12を用いて説明する。本実施形態の有機ELデバイス製造装置200は、図1に示す有機ELデバイス製造装置のクラスタA〜Dが六角形の搬送チャンバ2と六角形のうち対角する2辺に設けた受渡室14f、14gと残りの4辺に処理ラインとして1ラインを有する真空蒸着チャンバ等の処理チャンバ1とで構成される装置を示している。
【0081】
本有機ELデバイス製造装置200においても図3に示すように基板とマスクをほぼ垂直または垂直にして蒸着する装置である。基板を水平にして搬送して垂直にするか最初から垂直の姿勢で搬送するかはどちらでもよい。図12においても図9と同様に各真空蒸着チャンバ1の横にマスク交換チャンバ5が設けられ、さらにマスク交換チャンバ5に隣接してマスク搬入出室12が設けられている。マスク交換チャンバ5は、真空蒸着チャンバ1とのマスク搬送をゲート弁10Bを介して行ない、マスク搬入出室12とのマスク搬送をゲート弁10Aを介して行なう。そして、本有機ELデバイス製造装置200に本発明の有機ELデバイス製造装置の第1または第2の実施形態で示した搬送機構、離反機構及びアライメント機構を適用する。
【0082】
従って、第3の実施形態においても、第1または第2の実施形態で示した効果を奏することができる。
【0083】
以上の説明では、真空蒸着チャンバなどの処理チャンバに隣接してマスク交換チャンバを設ける実施形態を説明した。例えば、処理チャンバ間に図3に示す搬送機構を複数の処理チャンバ間をリレー形式のように搬送し、それぞれの処理チャンバで離反させてアライメントし、処理を行なう有機ELデバイス製造装置にも本発明を適用でき、上記の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0084】
また、以上の説明ではマスクを搬送し、マスクを垂下してアライメントした実施形態を説明した。マスクに適用した技術を逆に基板を搬送し、基板を垂下してアライメントしてもよい。
【0085】
さらに、以上説明では、有機ELデバイスを例に説明したが、有機ELデバイスと同じ背景にある蒸着処理をする成膜装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0086】
1:処理チャンバ 1ad、1bd、1bu:真空蒸着チャンバ
2:搬送チャンバ 3:ロードクラスタ
5:マスク交換チャンバ 6:基板
6m:基板のアライメントマーク 7:蒸着部
8:アライメント部 9:処理受渡部
10、10A、10B:ゲート弁 12:マスク搬入出室
20:制御装置 40、45:離反機構
56:交換チャンバ搬送部
56B:交換チャンバ搬送駆動部(マスク搬送駆動手段)
56g、86g:ピニオン 71:蒸発源
81:マスク 81a〜d:回転支持部
81m:マスクのアライメントマーク 81r:ラック
82:アライメントベース 83:アライメント駆動部
83Z:Z軸駆動部 83X:X軸駆動部
84:アライメント従動部 85:アライメント光学系
86:処理チャンバ搬送部
86B:処理チャンバ搬送駆動部(マスク搬送駆動手段)
87:駆動部離反手段 100,200:有機ELデバイスの製造装置
A〜D:クラスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板とマスクとの位置合せを前記基板または前記マスクを具備する垂下体として垂下した状態で行なうアライメント部を具備する真空チャンバと、該基板に蒸着材料を蒸着する蒸着部を具備する真空蒸着チャンバとを有する有機ELデバイス製造装置において、
前記真空チャンバに隣接した隣接チャンバから前記真空チャンバへ前記垂下体と接触して前記垂下体を垂直姿勢で搬送し、前記垂下体の接触部である垂下体接触部上を移動させる搬送接触部を具備する搬送機構を前記真空チャンバ内と隣接チャンバ内に設け、前記垂下体接触部と前記搬送接触部を離反する離反機構を前記真空チャンバ内に設けたことを特徴とする有機ELデバイス製造装置。
【請求項2】
前記垂下体はマスクを具備する垂下体であり、前記垂下体接触部は前記マスクに沿って設けたラックであり、前記搬送接触部はピニオンであることを特徴とする請求項1に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項3】
前記垂下体はマスクを具備する垂下体であり、前記垂下体接触部は垂下体自体あるいは前記マスクに沿って設けられたレールであり、前記搬送接触部は回転駆動ローラであることを特徴とする請求項1に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項4】
前記離反機構の駆動手段を大気雰囲気中に設けたことを特徴とする請求項1に記載の記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項5】
前記垂下体接触部は前記垂下体の底部であることを特徴とする請求項2または3に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項6】
前記アライメント部は前記垂下体を上下に移動させる上下駆動手段を具備し、前記離反機構は上下駆動手段を有することを特徴とする請求項5に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項7】
前記垂下体接触部は前記垂下体の下部側部であることを特徴とする請求項2または3に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項8】
前記離反機構は前記搬送接触部を垂下体接触部から離反する手段であることを特徴とする請求項5または7に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項9】
前記真空チャンバと前記真空蒸着チャンバは同一チャンバであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項10】
前記隣接チャンバは前記マスクを交換するためのマスク交換チャンバであることを特徴とする請求項1に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項11】
前記マスク交換チャンバは前記交換時に所定の真空度を維持することを特徴とする請求項10載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項12】
前記マスク交換チャンバに隣接して前記マスクを搬入出するための大気雰囲気中のマスク搬入出室を有することを特徴とする請求項11記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項13】
前記隣接チャンバは他の真空蒸着チャンバであることを特徴とする請求項1に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項14】
前記真空チャンバと隣接チャンバの間に真空遮断部を設けたことを特徴とする請求項1または10あるいは13に記載の有機ELデバイス製造装置。
【請求項15】
真空チャンバ内での基板とマスクとのアライメントを前記基板または前記マスクを具備する垂下体として垂下した状態で行い、該基板に蒸着材料を蒸着する有機ELデバイス製造方法において、
前記垂下体上の接触部を移動させて前記垂下体を垂直にし真空チャンバ内に搬送し、前記位置合せ位置にセットし、前記垂下体の垂下体接触部と前記搬送する搬送手段の前記垂下体接触部との搬送接触部とを離反し、その後前記アライメントを行なうことを特徴とする有機ELデバイス製造方法。
【請求項16】
前記離反は前記アライメントをするアライメント部の有する前記垂下体を上下する手段で行なうことを特徴とする請求項15に記載の有機ELデバイス製造方法。
【請求項17】
前記離反は前記搬送接触部を垂下体接触部から離反させることを特徴とする請求項15に記載の有機ELデバイス製造方法。
【請求項18】
前記垂下体はマスクを具備する垂下体であり、前記垂下体接触部は前記マスクに沿って設けたラックであり、前記搬送接触部はピニオンであることを特徴とする請求項15に記載の有機ELデバイス製造方法。
【請求項19】
基板とマスクとの位置合せを前記基板または前記マスクを具備する垂下体として垂下した状態で行なうアライメント部を具備する真空チャンバと、該基板に蒸着材料を蒸着する蒸着部を具備する真空蒸着チャンバとを有する成膜装置において、
前記真空チャンバに隣接した隣接チャンバから前記真空チャンバへ前記垂下体と接触して前記垂下体を垂直姿勢で搬送し、前記垂下体の接触部である垂下体接触部上を移動させる搬送接触部を具備する搬送機構を前記真空チャンバ内と隣接チャンバ内に設け、前記垂下体接触部と前記搬送接触部を離反する離反機構を前記真空チャンバ内に設けたことを特徴とする成膜装置。
【請求項20】
真空チャンバ内での基板とマスクとのアライメントを前記基板または前記マスクを具備する垂下体として垂下した状態で行い、該基板に蒸着材料を蒸着する成膜方法において、
前記垂下体上の接触部を移動させて前記垂下体を垂直にし真空チャンバ内に搬送し、前記位置合せ位置にセットし、前記垂下体の垂下体接触部と前記搬送する搬送手段の前記垂下体接触部との搬送接触部とを離反し、その後前記アライメントを行なうことを特徴とする成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−96393(P2011−96393A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246616(P2009−246616)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】