説明

有機EL用マスククリーニング方法、有機EL用マスククリーニング装置、有機ELディスプレイの製造装置および有機ELディスプレイ

【課題】レーザ光を用いて有機EL用マスクに付着している有機材料を除去するときに、有機EL用マスクに復元不能なダメージを与えることなく、高い洗浄度を得ることを目的とする。
【解決手段】有機材料51が付着した有機EL用マスク2の表面にレーザ光を走査して有機材料51を除去する有機EL用マスククリーニング方法であって、有機材料51の層を透過させてレーザ光Lを有機EL用マスク2に照射するときに、有機材料51を固形状態に維持し、且つ有機EL用マスク2が照射後に変形しないレーザ光Lを照射している。また、レーザ光Lを照射することにより、有機材料51と有機EL用マスク2とに温度差による熱膨張差を持たせることにより層間に剥離力を作用させて有機材料51の除去を行っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL用マスクにレーザ光を走査してクリーニングを行う有機EL用マスククリーニング方法、有機EL用マスククリーニング装置、有機ELディスプレイの製造装置および有機ELディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイは、バックライトを必要としない低消費電力・軽量薄型の画像表示装置として多く利用されている。その構造としては、透明性のガラス基板上に有機EL薄膜層を積層しており、有機EL薄膜層は発光層を正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層及び陽極層と陰極層とにより挟み込む構造を採用している。発光層はガラス基板上に有機材料を蒸着させて薄膜として形成するものが多く用いられており、ディスプレイを構成する各画素の領域を3分割してRGBの3色の有機材料を蒸着させている。従って、各画素の3つの領域に異なる色の有機材料(有機色素材料)を蒸着させるために多数の開口部を形成した有機EL用マスク(シャドーマスク)を用いて蒸着を行う。この有機EL用マスクを画素ピッチ分ずつずらしながら、各色の有機材料を蒸着させていくことにより、発光層の蒸着プロセスが完了する。
【0003】
蒸着プロセスを行うときには、ガラス基板だけではなく有機EL用マスクにも有機材料が付着する。有機EL用マスクは1回の蒸着プロセスだけに使用されるのではなく繰り返し使用されることから、次の蒸着プロセスを行うときに有機EL用マスクに有機材料が付着していると、新たなガラス基板に付着していた有機材料が転写して汚損させる。また、有機EL用マスクに多数形成した開口部のエッジ部分にも有機材料が蒸着して、開口部の面積を部分的にまたは全面的に閉塞させる。開口部の全部を塞いだ場合はもちろん、部分的に塞ぐことにより蒸着時の障害(影またはシャドウ)となり、当該有機EL用マスクを用いた場合の蒸着精度は著しく低下し、また使用に耐え得るものではなくなる。従って、有機EL用マスクを定期的に(好ましくは、1つの蒸着プロセスを完了した後に)クリーニングして、有機材料の除去を行っている。
【0004】
有機EL用マスクのクリーニングとしては、有機物を溶解させる洗浄液を用いたり、界面活性剤等を用いたウェットクリーニングが主に行われている。ウェットクリーニングは有機EL用マスクに対して液体を供給して行うクリーニングである。しかし、クリーニングされる有機EL用マスクはミクロンオーダー(10〜50μm程度)の極薄の金属板であり、ウェットクリーニング時に液圧や洗浄促進のための超音波と加熱とが作用することにより歪みや変形等の大きなダメージが有機EL用マスクに与えられる。また、界面活性剤等の薬液を用いてウェットクリーニングを行うと、薬液供給機構および使用済みの薬液(排液)を処理する排液処理機構を要するため機構が複雑化し、また排液による環境汚染の問題もある。さらに、近年、有機EL用マスクが大型化しており、この場合、洗浄液を多量に使用することになり、ランニングコストも増大する。
【0005】
一方、ウェットクリーニングを用いないクリーニングとして、有機EL用マスクに対してレーザ光を照射して行うクリーニング(レーザクリーニング)に関する技術が特許文献1に開示されている。金属素材の有機EL用マスクにレーザ光を照射することにより、有機EL用マスクと有機材料との間に剥離力を作用させている。特許文献1の技術は、この剥離力により有機EL用マスクから有機材料を除去してクリーニングを行うものである。そして、有機EL用マスクには粘着性のフィルムを貼り付けており、剥離した有機材料を粘着フィルムに転写させることで、クリーニングプロセスを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−169573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で開示されている技術では、レーザ光を有機EL用マスク(蒸着マスク)に向けて照射して、有機材料(堆積物)が付着した面の運動を誘起することにより有機材料の剥離を行っている。レーザ光は最初に有機材料の層に入射して、この層を透過して有機EL用マスクに入射する。
【0008】
有機EL用マスクは繰り返し使用されることから、歪みないしは反り等の変形を生じないようにしなければならない。有機EL用マスクにダメージが与えられて、元の状態に復元不能な程度に変形が生じると、当該有機EL用マスクを用いた蒸着を正確に行うことができなくなる。このため、次の蒸着プロセスで有機EL用マスクの再利用ができなくなる。レーザ光を有機EL用マスクに照射すると、レーザ光が照射された部位およびその付近は局所的に温度上昇する。このときに極端に温度上昇をすると、有機EL用マスク2が元の状態に復元できなくなるほどのダメージが与えられる。
【0009】
そこで、本発明は、レーザ光を用いて有機EL用マスクに付着している有機材料を除去するときに、有機EL用マスクに復元不能なダメージを与えることなく、高い洗浄度を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、本発明の請求項1の有機EL用マスククリーニング方法は、有機材料が付着した有機EL用マスクの表面にレーザ光を走査して前記有機材料を除去する有機EL用マスククリーニング方法であって、前記有機材料を透過させて前記レーザ光を前記有機EL用マスクに照射するときに、前記有機材料を固形状態に維持し、且つ前記有機EL用マスクが照射後に変形しないレーザ光を照射することを特徴とする。
【0011】
この有機EL用マスククリーニング方法によれば、有機材料を透過させてレーザ光を照射したとしても、有機材料は固形状態を維持し、且つ有機EL用マスクが変形することがない。これにより、レーザクリーニングを行うときに、有機EL用マスクに復元不能なダメージを与えることなく、高い洗浄度を得ることができる。
【0012】
本発明の請求項2の有機EL用マスククリーニング方法は、請求項1記載の有機EL用マスククリーニング方法であって、前記レーザ光を照射することにより、前記有機材料と前記有機EL用マスクとに温度差による熱膨張差を持たせることにより層間に剥離力を作用させて前記有機材料の除去を行うことを特徴とする。
【0013】
この有機EL用マスククリーニング方法によれば、レーザ光を照射することで、有機EL用マスクと有機材料との間に熱膨張差を持たせることができ、これにより有機材料を有機EL用マスクから剥離することができる。
【0014】
本発明の請求項3の有機EL用マスククリーニング方法は、請求項2記載の有機EL用マスククリーニング方法であって、前記有機材料と前記有機EL用マスクとに応じて、前記レーザ光の波長λは「400nm≦λ≦1200nm」の中から、前記有機材料を固形状態に維持し、且つ前記有機EL用マスクが熱膨張後に復元可能な波長を選択したことを特徴とする。
【0015】
この有機EL用マスククリーニング方法によれば、有機材料と有機EL用マスクとに応じてレーザ光の波長を前記のように選択している。これにより、有機EL用マスクに復元不能なダメージを与えることなく、高い洗浄度を得ることができる。
【0016】
本発明の請求項4の有機EL用マスククリーニング方法は、請求項3記載の有機EL用マスククリーニング方法であって、前記レーザ光をパルスレーザとしたことを特徴とする。
【0017】
この有機EL用マスククリーニング方法によれば、パルスレーザを用いることで、1回の照射時にレーザ光のエネルギーを集中させることができ、高い剥離効果を得ることができる。且つ、間欠的にポイントを変えてレーザ光を照射しているため、有機材料の流動化や有機EL用マスクに対するダメージといった問題を回避できる。
【0018】
本発明の請求項5の有機EL用マスククリーニング方法は、請求項4記載の有機EL用マスククリーニング方法であって、前記レーザ光を前記有機EL用マスクに照射したときに形成されるスポットのスポット径を制御したことを特徴とする。
【0019】
この有機EL用マスククリーニング方法によれば、有機EL用マスクに形成されるレーザ光のスポット径を調整ができる。スポット径を小さくすることにより有機材料の除去効率を高くすることができ、スポット径を大きくすることによりクリーニング効率を高めることができる。従って、スポット径を調整することにより、最適な除去効率とクリーニング効率とを設定することができる。
【0020】
本発明の請求項6の有機EL用マスククリーニング装置は、有機材料が付着した有機EL用マスクの表面にレーザ光を走査して前記有機材料を除去する有機EL用マスククリーニング装置であって、前記有機材料透過させて前記レーザ光を前記有機EL用マスクに照射するときに、前記有機材料を固形状態に維持し、且つ前記有機EL用マスクが照射後に変形しないレーザ光を発振するレーザ光源を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項7の有機EL用マスククリーニング装置は、請求項6記載の有機EL用マスククリーニング装置であって、前記レーザ光源は、前記有機材料と前記有機EL用マスクとに温度差による熱膨張差を持たせることにより層間に剥離力を作用させて前記有機材料の除去を行うレーザ光を発振することを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項8の有機EL用マスククリーニング装置は、請求項7記載の有機EL用マスククリーニング装置であって、前記レーザ光源は、前記有機材料と前記有機EL用マスクとに応じて、前記レーザ光の波長λは「400nm≦λ≦1200nm」の中から、前記有機材料を固形状態に維持し、且つ前記有機EL用マスクが熱膨張後に復元可能な波長を発振することを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項9の有機EL用マスククリーニング装置は、請求項8記載の有機EL用マスククリーニング装置であって、前記レーザ光源は、パルスレーザを発振することを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項10の有機EL用マスククリーニング装置は、請求項9記載の有機EL用マスククリーニング装置であって、前記レーザ光を集光させる集光手段と、前記レーザ光の焦点位置を変化させる焦点位置変化手段と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項11の有機ELディスプレイの製造装置は、請求項6乃至10の何れか1項に記載の有機EL用マスククリーニング装置を備えたことを特徴とする。また、本発明の請求項12の有機ELディスプレイは、請求項11記載の有機ELディスプレイの製造装置により製造されことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、レーザ光を有機EL用マスクに照射して有機材料の除去を行うときに、レーザ光が透過した時に有機材料に固形状態を維持させるため、有機材料を確実に剥離させることができるようになり、高い洗浄度が得られる。そして、有機EL用マスクにレーザ光を照射して熱膨張させた後に元の状態に復元可能な条件をレーザ光に持たせているため、有機EL用マスクを再利用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】有機EL用マスククリーニング装置の外観図である。
【図2】有機EL用マスクの側面図および平面図である。
【図3】レーザ光を照射したときの剥離プロセスを説明する図である。
【図4】波長によって有機材料が固形状態を維持できるか否かを示す図である。
【図5】2台のレーザ光源を備えた場合の有機EL用マスククリーニング装置の外観図である。
【図6】有機EL用マスクの微小開口部の側壁に付着した有機材料の剥離を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1において、本発明の有機EL用マスククリーニング装置(レーザ光により有機EL用マスクの表面をレーザクリーニングする装置)は、ベース1と有機EL用マスク2とマスク保持部材3とレーザ走査手段4とを備えて概略構成している。ベース1は有機EL用マスククリーニング装置の各要素を取り付けるための基台となっている。なお、図1において、X方向とY方向とは水平面上の相互に直交する2方向になっており、Z方向は垂直方向である。そして、Z方向の矢印が示す方向が上方になり、反対側が下方になる。従って、重力は矢印反対方向に作用する。
【0029】
有機EL用マスク2は有機EL用マスククリーニング装置を用いて洗浄される被洗浄体である。図2に示すように、有機EL用マスク2は有機ELディスプレイを構成するガラス基板20に発光層としての有機材料を蒸着してパターン形成を行うために用いられる極薄の金属板である。ガラス基板20に高精度に有機材料を蒸着させるために、有機EL用マスク2の厚みは10〜50μm程度の極薄の金属板が用いられる。そして、有機ELディスプレイの大型化に伴い、有機EL用マスク2のサイズも大型になり、このため有機EL用マスク2は極薄且つ大型の金属板になる。
【0030】
有機EL用マスク2はマスク本体21を有しており、このマスク本体21に規則的に配列された多数の微小開口部(30μm×80μm程度)22を形成したマスク金属板(シャドーマスク)である。有機EL用マスク2の素材としては種々の金属を用いることができるが、例えばニッケル系の合金(インバー)や42アロイ等を用いることができる。有機EL用マスク2は、発光層の有機材料を蒸着する図示しない真空蒸着槽においてガラス基板20に密着させた状態で、蒸着源から有機材料を蒸着させるようにしている。
【0031】
発光層の有機材料としては種々のものを適用できるが、例えばAlqやIr(ppy)3、α―NPD等の任意の有機材料を適用することができる。蒸着源から蒸発した有機材料は、有機EL用マスク2の微小開口部22からガラス基板20に蒸着する。これにより、ガラス基板20の画素に対応する領域に発光層としての有機材料が蒸着してパターンが形成される。有機EL用マスク2は大型且つ極薄の金属板であるため、図2に示すように、その周囲に保形性を持たせるための補強枠23を取り付けている。補強枠23は金属素材であってもよいし、金属以外の素材であってもよい。
【0032】
有機EL用マスク2を用いて1回の蒸着プロセスを行うと、ガラス基板20だけではなく有機EL用マスク2にも有機材料が付着する。蒸着プロセスは繰り返し行われることから、有機EL用マスク2に付着した有機材料のクリーニングが所定のタイミング(好ましくは、1回の蒸着プロセスごと)で行われる。有機EL用マスククリーニング装置が配置されている洗浄槽とガラス基板20に蒸着を行う真空蒸着槽とは別個独立に設けられているため、有機EL用マスククリーニング装置を行うときには有機EL用マスク2が真空蒸着槽から洗浄槽内に移行される。
【0033】
図1に示すように、有機EL用マスク2は垂直方向に立てた状態(有機EL用マスク2の表面の法線方向が水平面方向)で保持されている。このため、マスク保持部材3には有機EL用マスク2と同程度或いはそれよりも大きなサイズを持たせており、通常、有機EL用マスク2とマスク保持部材3とは高精度に位置合わせされ、溶接により一体化されている。そして、蒸着時には、ガラス基板20の背面から多数のマグネットで有機EL用マスク2を引き付け、有機EL用マスク2を満遍なく均一に密着させて蒸着を行う。有機EL用マスク2は寝かせた状態(有機EL用マスク2の表面の法線方向が垂直方向)で保持するものであってもよい。
【0034】
レーザ走査手段4について説明する。レーザ走査手段4はレーザ光源41とガルバノミラー42とガルバノ駆動部43とを備えて概略構成している。レーザ光源41はレーザ光Lを発振する光源になっている。ここでは、レーザ光源41はパルスレーザを発振するようにしている。レーザ光源41には非常に時間幅の短いパルスが入力されており、当該パルスに同期して間欠的にレーザ光Lを発振している。従って、パルスの時間幅(パルス幅)を調整することにより、1回のパルスにおけるレーザ光Lの照射時間を制御することができる。
【0035】
レーザ光源41はZ方向下方に向けてレーザ光Lが照射されるように配置されており、レーザ光の入射位置にガルバノミラー42を配置している。ガルバノミラー42はレーザ光Lを走査させる反射ミラーであり、ミラーを高速に微小運動させることにより、レーザ光Lの照射方向が変化する。これにより、有機EL用マスク2にレーザ光Lが走査される。レーザ光Lの走査は有機EL用マスク2の所定エリア(クリーニングエリア)に対して行う。このクリーニングエリアは有機EL用マスク2の全面に設定してもよいし、一部の領域に設定してもよい。いずれにしても、クリーニングエリアは面になっており、面のクリーニングを行うために、レーザ光LをX方向に走査して1本のスキャンラインを形成し、このスキャンラインをZ方向に微小シフトさせて、面のクリーニングを行う。また、ガルバノミラー42にはガルバノ駆動部43が取り付けられており、このガルバノ駆動部43がガルバノミラー42を運動させている。
【0036】
レーザ光源41とガルバノミラー42との間には集光手段としての集光レンズ44が配置されている。レーザ光源41から発振されるレーザ光Lは平行光になっており、このレーザ光Lの焦点を結ばせるために集光レンズ44をレーザ光Lの光路上に設けている。集光レンズ44には焦点位置調整手段としてのレンズ位置調整部材45が取り付けられている。このレンズ位置調整部材45は集光レンズ44をレーザ光Lの光路に沿って移動(Z方向に移動)させるための部材である。これにより、集光レンズ44の位置が変化し、焦点位置を変化させることが可能になる(デフォーカスが可能になる)。なお、集光レンズ44およびレンズ位置調整部材45は、集光レンズ44がレーザ光Lの光路上にあれば任意の位置に配置することができる。
【0037】
次に、搬送空気流形成手段6について説明する。搬送空気流形成手段6は送風部61と吸風部62とを備えて概略構成している。送風部61はY方向に延びる2本の支柱からなる送風支持部63に取り付けられており、吸風部62も同様にY方向に延びる2本の支柱からなる吸風支持部64に取り付けられている。また、送風支持部63と吸風支持部64とはそれぞれベース1に取り付けられている。吸風部62には回収部65が設けられており、吸引した遊離物質を回収部65が回収する。
【0038】
送風部61にはスリット長が長く、スリット幅が短い送風スリット61Sが形成されている。同様に、吸風部62にもスリット長が長く、スリット幅が短い吸風スリット62Sが形成されている。送風スリット61Sと吸風スリット62SとはY方向において同じ位置に対向するようにして形成され、且つ有機EL用マスク2の表面から離間した位置に形成されている。送風スリット61Sからは下方に向けてエアが送風され、吸風スリット62Sは上方のエアを吸引するため、送風部61と吸風部62との間に空気流が形成される。この空気流を搬送空気流とする。なお、送風部61および吸風部62に設けたスリットにより搬送空気流を形成しているが、スリット以外の機構を採用してもよい。
【0039】
マスク移動手段7について説明する。マスク移動手段7は有機EL用マスク2を移動させる移動手段であり、移動テーブル71により概略構成されている。移動テーブル71はマスク保持部材3を垂直方向に立てた状態で固定的に取り付けて移動させるためのテーブルである。移動テーブル71としては、例えばボールネジ手段やリニアモータ手段、ロボット手段等を適用できる。移動テーブル71が移動することにより、有機EL用マスク2は垂直方向に立てられた状態で移動を行う。移動テーブル71はX方向に移動する例を示しているが、Y方向、Z方向に移動可能であってもよい。
【0040】
次に、動作について説明する。最初に、真空蒸着槽において有機EL用マスク2を用いてガラス基板20に蒸着材料を蒸着させた後に、洗浄槽内に配置した有機EL用マスククリーニング装置に有機EL用マスク2を搬入する。搬入時にはマスク保持部材3に有機EL用マスク2が当接した状態で、しかも垂直方向に立てられた状態で保持されている。この状態で、移動テーブル71により、有機EL用マスク2を搬送空気流形成手段6の位置にまでX方向に移動させて、その位置で停止する。
【0041】
そして、有機EL用マスク2を停止した状態でクリーニングを開始する。このクリーニング(レーザクリーニング)は有機EL用マスク2に向けてレーザ光Lを走査することにより行う。レーザ光源41から発振したレーザ光Lは集光レンズ44により収束光にされた後に、ガルバノミラー42で反射して有機EL用マスク2に照射される。有機EL用マスク2は有機材料が付着している面(表面)がレーザ光の照射方向に向くように配置されており、ガルバノミラー42で反射したレーザ光は有機EL用マスク2に照射される。
【0042】
図3(a)に示すように、有機EL用マスク2の表面には固形状態の有機材料51が膜状となって付着しており、この有機材料51を透過してレーザ光Lが有機EL用マスク2に照射される。レーザ光Lは集光レンズ44により収束光にされており、有機EL用マスク2の表面(或いはその近傍)に焦点が結ばれる。有機EL用マスク2の表面(或いはその近傍)に焦点を結んだレーザ光Lは有機EL用マスク2に吸収される。
【0043】
このため、有機EL用マスク2に形成されるレーザ光Lのスポット径は極めて微小な領域(円形領域)になり、この領域にレーザ光Lが吸収される。有機EL用マスク2は金属素材であり、レーザ光Lが吸収されることにより熱エネルギーが作用して、吸収された部位(円形領域およびその付近)が瞬間的に温度上昇する。しかも、レーザ光Lは有機EL用マスク2の表面付近に焦点を結んでいるため、厚み方向における表層部(数μm)のごく一部の部分のみが温度上昇する。
【0044】
温度上昇した有機EL用マスク2の部位は熱膨張を起こす。前記したように、非常に狭小な領域に対してレーザ光Lが吸収されて熱エネルギーが集中するため、瞬間的に温度上昇して、温度上昇した部位は急激に熱膨張を起こす。一方で、レーザ光Lが及ぼす熱エネルギーは非常に狭小な領域に集中しており、他の部位は温度上昇することなくそのままの形状を維持している。従って、図3(b)に示すように、固形状態となって付着している有機材料51に向けて熱膨張を起こす。
【0045】
図3(a)に示すように、有機EL用マスク2の層と有機材料51の層とが積層構造となっている。後述するようにレーザ光Lが透過したとしても有機材料51は固形状態を維持している。つまり、有機EL用マスク2が熱膨張を起こして瞬間的に隆起する一方、有機材料51は殆ど熱膨張を起こさないことから、層間に剥離力が作用する。このとき、急激に有機EL用マスク2が熱膨張を起こし、剥離力が作用するときには、固形状態の有機材料51に強い衝撃が与えられて破砕され、有機材料51は粉体等の粒径の小さい遊離物質となって有機EL用マスク2から離間する方向に飛散する。
【0046】
飛散した遊離物質は重力の作用によりZ方向下方に向けて落下しようとする。そして、飛散方向には搬送空気流形成手段6により搬送空気流が形成されており、この搬送空気流に補足されて、吸風部62に遊離物質が回収される。これにより、飛散した遊離物質が有機EL用マスク2に再付着しなくなり、遊離物質が再付着することによる洗浄度の低下といった問題を生じなくなる。
【0047】
前述したように、レーザ光Lはパルスレーザとして発振している。そして、ガルバノミラー42により1方向(X方向:走査方向)にレーザ光Lの照射位置が変化するように走査しているため、前記の円形領域が連続するように走査がされる。この走査を1方向に行って1本のスキャンラインを形成して、スキャンラインをZ方向(X方向に直交する方向)に微小シフトさせることで、面のクリーニングを行う。なお、前記円形領域は有機EL用マスク2にレーザ光Lを照射したときに形成されるスポットと同じ形状とは限らず、それよりも広い領域になっていることもある。
【0048】
ここで、レーザ光源41から発振するレーザ光Lの波長は2つの条件を満たすようにしている。1つ目の条件はレーザ光Lが透過したとしても有機材料51が固形状態を維持すること、2つ目の条件はレーザ光Lを照射して有機EL用マスク2が熱膨張した後に復元可能なこと、を満たすようにする。
【0049】
1つ目の条件について説明する。図3(a)にも示したように、レーザ光Lは有機材料51の層を透過させて有機EL用マスク2に照射している。このとき、レーザ光Lは有機材料51に対しても吸収されることがある。有機材料51として例えばIr(ppy)3を適用した場合に、短い波長(例えば、532nm以下)のレーザ光Lが入射すると、レーザ光Lが有機材料51に吸収される。これは、Ir(ppy)3が持つ固有の吸収スペクトルが当該波長のレーザ光を吸収する性質を持つためである。
【0050】
有機材料51は有機EL用マスク2と比較して、融点が低い。このため、固形状態の有機材料51にレーザ光Lが吸収されて熱エネルギーが作用すると、固形状態から溶融して流動体になる。有機EL用マスク2が熱膨張を起こして有機材料51を剥離できるのは、有機材料51が固形状態を維持しているからであり、この場合には層間に剥離力を作用させることができる。一方で、流動体になった場合には、有機EL用マスク2を熱膨張させても、層間に剥離力を作用させることができず、有機材料51を除去できない。なお、有機材料51にレーザ光Lが吸収されて固形状態から軟化した場合も有機材料51に対して剥離力を作用させることができなくなる。
【0051】
このため、レーザ光Lが透過したとしても有機材料51が固形状態を維持しなければならない。従って、当該条件を満たすようなレーザ光Lの波長を選択する。有機材料51はその材料によって吸収スペクトルが異なるため、有機材料51の種類に応じて有機材料を固形状態に維持できるようなレーザ光Lの波長を選択するようにする。有機材料51の吸収スペクトルは短波長のレーザ光を吸収し、長波長のレーザ光を吸収しない性質を有している。このため、レーザ光Lには極端に短い波長を選択せずに、例えば波長1064nmのレーザ光を選択することで、有機材料51を剥離することができる。いずれにしても、波長が400nm未満の場合には、有機材料51に吸収されて固形性が失われるため、レーザ光Lの下限値は400nmに設定する。
【0052】
以上の条件を満たすレーザ光Lをレーザ光源41から発振させることにより、レーザ光Lの有機材料51への吸収率を小さくできる。ただし、何れの材料を用いたとしても、吸収率が完全に0%になることはない。このため、レーザ光Lを同じ箇所に照射し続けると、僅かな吸収が累積して、有機材料51が固形性を失う可能性がある。このため、レーザ光源41から発振するレーザ光Lをパルスレーザとしており、レーザ光Lを間欠的に照射するようにしている。しかも、ガルバノミラー42により走査を行っていることから、1回の照射毎に照射位置を変化させている。これにより、同じ箇所にレーザ光Lが照射され続けることがなくなる。
【0053】
このとき、パルス幅を調整することにより、1回の照射時間が制御されることは既に述べたとおりである。パルス幅を過剰に長くすると、やはり同じ箇所に対する照射時間が長くなり、有機材料51が固形性を失うおそれがある。一方、パルス幅を過剰に短くすると、有機材料51を剥離可能な程度に有機EL用マスク2を熱膨張させることができなくなるおそれがある。このため、有機材料51が固形状態を維持し、且つ有機材料51を剥離するために必要なパルス幅に適宜設定するようにする。
【0054】
以上により、レーザ光Lは有機材料51に殆ど吸収されることなく、有機材料51が固形状態を維持したまま有機EL用マスクに入射する。これにより、有機EL用マスク2と有機材料51との間に温度差を持たせることができ、層間に剥離力を作用させることができる。従って、有機材料51が有機EL用マスク2から剥離されて除去される。
【0055】
次に、2つ目の条件について説明する。前述したように、有機材料51は短い波長域のレーザ光が入射すると、吸収により溶解して固形状態から流動体(或いは軟体)に変化する。この点から言えば、レーザ光Lの波長は長い方が望ましい。ただし、レーザ光Lの波長が長くなると、有機EL用マスク2に対して大きなダメージを与える。これは、レーザ光Lの波長が長くなるほど赤外の波長域に近づき、有機EL用マスク2に入射されたときに作用する熱量が大きくなるためである。
【0056】
レーザ光Lの照射により有機EL用マスク2の狭小な領域が瞬間的に温度上昇して熱膨張をするが、熱膨張後には再び元の形状に復元しなければならない。このとき、レーザ光Lにより有機EL用マスク2が過剰に温度上昇すると、変形したまま元の状態に復元しなくなり、極端に温度上昇すると有機EL用マスク2が溶解することもある。
【0057】
有機EL用マスク2が溶融したりする場合は勿論、復元不能に変形した場合でも、有機EL用マスク2の再利用ができなくなる。有機EL用マスク2を用いてガラス基板20に有機材料を蒸着するときには、極めて高い蒸着精度が要求される。従って、蒸着時に有機EL用マスク2に僅かな変形でも生じている場合には、当該有機EL用マスク2を用いて次の蒸着プロセスを行うことができない。つまり、再利用することができなくなる。
【0058】
このため、レーザ光Lを照射して有機EL用マスク2が熱膨張したとしても、熱が解除された後に元の状態に復元可能なようなレーザ光Lを照射する。このために、レーザ光Lの波長は、熱膨張後に有機EL用マスク2が復元可能な波長を選択する。これにより、レーザ光Lを照射したとしても有機EL用マスク2が元の形状に復元するため、次の蒸着プロセスに再利用することができるようになる。有機EL用マスク2には種々の金属の材料を用いることができ、選択した材料により復元性が異なる。従って、復元性の強い材料であれば、ある程度まで長い波長のレーザ光Lを用いることができ、復元性の弱い材料であれば、レーザ光の波長を長くしすぎないようにする。つまり、有機EL用マスク2に応じて、有機EL用マスク2が熱膨張後に復元可能な波長を選択する。ただし、何れの材料を用いる場合であっても、波長1200nmを超過するようなレーザ光Lを照射すると、有機EL用マスク2には復元不能なダメージが与えられる。このため、レーザ光Lの上限値は1200nmに設定する。
【0059】
一方、レーザクリーニング時には、レーザ光Lを有機EL用マスク2の非常に狭小な領域に集中させることにより、有機材料51を剥離できる程度の熱膨張を起こすような温度に上昇させている。そして、狭小な領域で、且つ表層にのみ変化を起こさせるため、有機EL用マスク2を変形させることがない。
【0060】
以上説明したように、有機材料51が固形状態を維持し、且つ熱膨張後に元の状態に復元可能なレーザ光Lを有機EL用マスク2に照射していることで、高い洗浄度でレーザクリーニングを行うことができ、有機EL用マスク2の再利用が可能になる。図4には、有機材料51とレーザ光Lの波長λの関係を示している。この図において、発振強度は対象となる有機材料51を剥離するために必要な平均的なレーザ光Lの発振強度(ワット)になり、この発振強度はそれぞれの材料に応じて一定にしている。また、レーザ光Lの波長としては標準的に使用される532nmおよび1064nmの2つの波長を示している。なお、図中「de」はデフォーカス量を示している(単位はミリメートル)。
【0061】
この図に示すように、Alqにおいては、λが532nmと1064nmとの何れであっても、有機材料51としてのAlqを剥離することができる。これは、Alqは波長が532nmの波長域において、固形状態を維持できないほどにレーザ光Lを吸収しないためである。
【0062】
一方、Ir(ppy)3およびα―NPDの場合には、λ=1064nmの場合には剥離することができるが、λ=532nmの場合には剥離することができない。これは、532nmのレーザ光Lは、Ir(ppy)3やα―NPDの吸収率が高く、有機材料51が固形状態を維持できないためである。これにより、有機材料51の固形性が失われ、剥離することができなくなる。
【0063】
ここで、図1に戻って、集光レンズ44はレンズ位置調整部材45によって、Z軸(光軸)方向に移動可能になっている。これにより、レーザ光Lの焦点位置を変化させることができるようになる(デフォーカスが可能になる)。デフォーカス量を調整することにより、有機EL用マスク2に形成されるレーザ光Lのスポットのスポット径を調整することが可能になる。
【0064】
有機材料51を剥離させる点からは、スポット径を小さくする方が望ましい。スポット径を小さくすることにより、レーザ光Lのエネルギーが作用する領域を集中させることができ、有機材料51を剥離できる程度の熱膨張をさせることができるためである。換言すれば、スポット径を過剰に大きくすると、有機材料51を剥離ができなくなる。一方で、スポット径を大きくすると、短時間でレーザクリーニングを完了できる。つまり、スポット径を大きくすれば、一度に広範囲の有機材料51を剥離できるようになるため、その分だけレーザクリーニングに要する時間を短くできるためである。
【0065】
以上の点から、集光レンズ44およびレンズ位置調整部材45を制御することにより、有機材料51を剥離可能なスポット径であり、且つ短時間でレーザクリーニングを完了できるようなスポット径とすることが望ましい。例えば、図4に示すようなデフォーカス量(20mm)とすることが望ましい。
【0066】
また、集光レンズ44およびレンズ位置調整部材44を用いてレーザ光Lの焦点位置を変化(デフォーカス)させることで、微小開口部22の側壁に付着した有機材料51を除去できる。この点について、図6を参照して説明する。微小開口部22は有機EL用マスク2の厚み(10〜50μm)方向に貫通された領域となっており、貫通領域には側壁22Wが形成される。この側壁22Wにも有機材料51が付着する。
【0067】
このとき、レーザ光Lが平行光の場合には、側壁22Wにレーザ光Lは照射されない。側壁22Wは有機EL用マスク2の表面2Sの法線方向に平行になっており、レーザ光Lは有機EL用マスク2の法線方向から入射しているためである。また、レーザ光Lの焦点位置Fと有機EL用マスク2とが図6の仮想線で示すような位置関係にある場合、つまり有機EL用マスク2の裏面2Rよりもレーザ光源41の反対側に焦点位置Fがずれているような場合には、側壁22Wにレーザ光Lは照射されない。
【0068】
このため、レーザ光Lの焦点位置Fが有機EL用マスク2の表面2Sよりもレーザ光源41の側に焦点位置をずらすようにデフォーカスしている。このようなデフォーカスを行うことにより、微小開口部22の側壁22Wにレーザ光Lが照射される。これにより、側壁22Wに付着している有機材料51も熱膨張差により剥離することができるようになる。従って、レンズ位置調整部材44は以上のようなデフォーカスを行うように集光レンズ44の位置を調整している。
【0069】
また、レーザ光Lはパルスレーザでなくてもよい。つまり、レーザ光源41は連続的に照射するようなレーザ光Lを発振するようにしてもよい。ただし、前述したように、有機材料51の同じ箇所に対してレーザ光Lが照射され続けると、殆ど吸収されないような波長のレーザ光Lを用いているのにもかかわらず、有機材料51が溶解するような場合もある。また、連続的に照射していると、有機EL用マスク2の同じ箇所がレーザ光Lにより常時加熱された状態になるため、有機EL用マスク2にダメージが与えられるおそれがある。このため、パルスレーザを用いて間欠的な照射を行い、1回の照射毎に照射位置を変化させる方が望ましい。
【0070】
また、図1では1台のレーザ光源41を備えた例を示しているが、レーザ光源41を複数台備えるようにしてもよい。図5に2台のレーザ光源41A、41Bを備えた例を示している。レーザ光源41Aと41Bとはそれぞれ異なる波長のレーザ光Lを発振する光源であり、使用するときには何れか一方のみを切り替えて使用する。このために、例えば、レーザ光源41Aと41Bとを図中X方向に移動可能に構成し、何れかのレーザ光源がガルバノミラー42に向けてレーザ光を発振する。勿論、レーザ光源自体を移動させるのではなく、2つのレーザ光源から発振されたレーザ光の光路を合流させるような光学素子(例えば、反射ミラーやハーフミラー等)を用いるようにしてもよい。
【0071】
これにより、複数種類の有機材料51を除去することが可能になる。有機EL用マスク2にAlq3を材料とする有機材料51が付着している場合には、波長532nmのレーザ光Lを発振するレーザ光源41Aを用い、有機EL用マスク2にIr(ppy)3やα―NPDを材料とする有機材料51が付着している場合には、1064nmの波長のレーザ光Lを発振するレーザ光源41Bを用いることもできる。
【0072】
また、レーザ光Lが有機EL用マスク2に照射されたときに、有機EL用マスク2は局所的に温度上昇することにより熱膨張を起こし、有機材料51に剥離力を作用させることは前述したとおりである。この場合において、有機材料51が剥離された後には依然として有機EL用マスク2には熱が蓄積しており、これにより有機EL用マスク2が高温状態を維持する。このため、有機EL用マスク2にストレスがかかり、歪みないしは反り等の変形を及ぼす可能性がある。
【0073】
そこで、有機EL用マスク2の表面(有機材料51が付着している面)の反対面側から送風(望ましくは、冷風)を作用させることで、蓄積した熱の温度を冷却することができる。これにより、有機EL用マスク2にストレスを低減することができる。
【符号の説明】
【0074】
2 有機EL用マスク 4 レーザ走査手段
6 搬送空気流形成手段 7 マスク移動手段
41 レーザ光源 42 ガルバノミラー
43 ガルバノ駆動部 44 集光レンズ
45 レンズ位置調整部材 51 有機材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料が付着した有機EL用マスクの表面にレーザ光を走査して前記有機材料を除去する有機EL用マスククリーニング方法であって、
前記有機材料を透過させて前記レーザ光を前記有機EL用マスクに照射するときに、前記有機材料を固形状態に維持し、且つ前記有機EL用マスクが照射後に変形しないレーザ光を照射すること
を特徴とする有機EL用マスククリーニング方法。
【請求項2】
前記レーザ光を照射することにより、前記有機材料と前記有機EL用マスクとに温度差による熱膨張差を持たせることにより層間に剥離力を作用させて前記有機材料の除去を行うこと
を特徴とする請求項1記載の有機EL用マスククリーニング方法。
【請求項3】
前記有機材料と前記有機EL用マスクとに応じて、前記レーザ光の波長λは「400nm≦λ≦1200nm」の中から、前記有機材料を固形状態に維持し、且つ前記有機EL用マスクが熱膨張後に復元可能な波長を選択したこと
を特徴とする請求項2記載の有機EL用マスククリーニング方法。
【請求項4】
前記レーザ光をパルスレーザとしたこと
を特徴とする請求項3記載の有機EL用マスククリーニング方法。
【請求項5】
前記レーザ光を前記有機EL用マスクに照射したときに形成されるスポットのスポット径を制御したこと
を特徴とする請求項4記載の有機EL用マスククリーニング方法。
【請求項6】
有機材料が付着した有機EL用マスクの表面にレーザ光を走査して前記有機材料を除去する有機EL用マスククリーニング装置であって、
前記有機材料透過させて前記レーザ光を前記有機EL用マスクに照射するときに、前記有機材料を固形状態に維持し、且つ前記有機EL用マスクが照射後に変形しないレーザ光を発振するレーザ光源を備えたこと
を特徴とする有機EL用マスククリーニング装置。
【請求項7】
前記レーザ光源は、前記有機材料と前記有機EL用マスクとに温度差による熱膨張差を持たせることにより層間に剥離力を作用させて前記有機材料の除去を行うレーザ光を発振すること
を特徴とする請求項6記載の有機EL用マスククリーニング装置。
【請求項8】
前記レーザ光源は、前記有機材料と前記有機EL用マスクとに応じて、前記レーザ光の波長λは「400nm≦λ≦1200nm」の中から、前記有機材料を固形状態に維持し、且つ前記有機EL用マスクが熱膨張後に復元可能な波長を発振すること
を特徴とする請求項7記載の有機EL用マスククリーニング装置。
【請求項9】
前記レーザ光源は、パルスレーザを発振すること
を特徴とする請求項8記載の有機EL用マスククリーニング装置。
【請求項10】
前記レーザ光を集光させる集光手段と、
前記レーザ光の焦点位置を変化させる焦点位置変化手段と、
を備えたことを特徴とする請求項9記載の有機EL用マスククリーニング装置。
【請求項11】
請求項6乃至10の何れか1項に記載の有機EL用マスククリーニング装置を備えたことを特徴とする有機ELディスプレイの製造装置。
【請求項12】
請求項11記載の有機ELディスプレイの製造装置により製造されことを特徴とする有機ELディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−71038(P2011−71038A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222762(P2009−222762)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】