説明

末端処理されたフッ化ビニリデン系ポリマーおよびフッ化ビニリデン系ポリマーセグメントを有するブロック共重合体ならびにその製造方法

【課題】末端にアルキニル基を含むフッ化ビニリデン系ポリマーとその製造方法、ならびに該フッ化ビニリデン系ポリマーを用い、アジド末端ポリアルキレンオキシドと高分子反応させるブロック共重合体の製造方法および新規ブロック共重合体を提供する。
【解決手段】主鎖の片末端または両末端にスルホン酸ハロゲン化物を末端基に有するフッ化ビニリデン系ポリマーに、アルキニル基を有するアミンを反応させることを特徴とするフッ化ビニリデン系ポリマーの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主鎖の片末端または両末端にアルキニル基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーおよびフッ化ビニリデン系ポリマーセグメントとポリアルキレンオキシドポリマーセグメントを有するブロック共重合体ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の種類の高分子を共有結合で複合化して、新たな機能を付与したポリマーが注目されている。例えば、含フッ素ポリマーとの反応により、含フッ素ポリマーの持つ優れた耐熱性、耐候性、耐薬品性等を付与することができ、また、両セグメントが非相溶系の場合には、ミクロ相分離構造を有する高機能性ポリマーが得られると考えられている。
【0003】
公知の含フッ素ポリマーを含有するブロック共重合体のほとんどが、パーフルオロポリエーテルを含フッ素ポリマーセグメントとして有するブロック共重合体である。その中で、フッ化ビニリデン系ポリマーを含フッ素ポリマーセグメントとして有するものとして、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどラジカル重合可能な単量体との共重合体(例えば、特許文献1または2、非特許文献1参照)が開示されている。
【0004】
非フッ素ポリマーとポリアルキレンオキシドとのブロック共重合体は、界面活性剤等へ広く応用されている。近年、ミクロ相分離構造の構築や、ポリマーミセルを制御した高機能性ポリマーが検討されている。しかし、フッ化ビニリデン系ポリマーに対しては、分子制御が不充分なために、このような検討ができる共重合体が得られていない。
【0005】
フッ化ビニリデン系ポリマーとポリアルキレンオキシドとの共重合体に関して、特許文献3、特許文献4では、末端修飾したポリエチレンオキシドと溶融混練することにより熱可塑性樹脂組成物が得られている。組成物は完全相溶していないとの記述がある。通常、共重合体は、各セグメントは共有結合で結ばれているので、マクロに相分離しない。反応が充分でないために相分離していることを意味する。また、反応点が制御できないため、高度なモルフォロジー制御による特性向上が図ることができない。
【0006】
また、特許文献5において、フッ化ビニリデン樹脂の主鎖から、ポリエチレンオキシド鎖を有するメタクリレートを重合させたグラフト重合体が開示され、それを水濾過用の膜として使用している。この共重合体において、重合開始点が制御できないため、モルフォロジーを制御による特性向上を図ることができない。さらに反応開始点がフッ化ビニリデン系ポリマー鎖中のフッ素原子であるため、含フッ素ポリマーが有する特徴が損なわれる。
【0007】
さらに、非特許文献2において、フッ化ビニリデン系ポリマーの末端からポリエチレンオキシド鎖を有するスチレンを重合させ、グラフト鎖がポリエチレンオキシド鎖で構成されたブロック共重合体が開示されている。開始末端は、片末端の−CCl3に限られることから、得られる共重合体は、フッ化ビニリデン系ポリマーセグメント(A)とポリエチレンオキシドセグメント(B)が、AB型の配列に限定される。
【0008】
一方、ポリエチレンオキシドとの線形ブロック共重合体として、特許文献6において、フッ化ビニリデン樹脂の末端をエポキシ基に変換し、ポリエチレンオキシドを反応させたブロック共重合体が開示されている。この製造法では、AB型、ABA型、(AB)n型が同時に生成するため、反応を制御することが難しい。また、フッ化ビニリデン樹脂末端のエポキシ基による単独重合も起こり、含フッ素ポリマーセグメントの分子量分布も広くなる傾向がある。
【0009】
これら公知のフッ化ビニリデン系ポリマーセグメント(A)とポリアルキレンオキシドセグメント(B)を有する共重合体は、AB型、ABA型、(AB)n型の選択的な製造と、分子量と反応点の制御を同時に満足させるものではない。
【0010】
【特許文献1】特公昭58−4728号公報
【特許文献2】特公昭62−24446号公報
【特許文献3】特開平8−151496号公報
【特許文献4】特開平8−208927号公報
【特許文献5】特表2004−509192号公報
【特許文献6】特開平6−298943号公報
【非特許文献1】Macromolecules 2004,37,2084−2089
【非特許文献2】Macromolecules 2007,40,2295−2298
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、末端にアルキニル基を含むフッ化ビニリデン系ポリマーとその製造方法、ならびに該フッ化ビニリデン系ポリマーを用い、アジド末端ポリアルキレンオキシドと高分子反応させるブロック共重合体の製造方法および新規ブロック共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、主鎖の片末端または両末端に式(1):
−CR12−CR34−SO21 (1)
(式中、R1〜R4は、同じであっても異なっていてもよく、水素原子またはフッ素原子であり、X1は塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である)
で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーに、式(2):
BNH−R5−C≡CR6 (2)
(式中、R5は、分岐していても良い炭素数1〜10のアルキレン基、カルボニル基、−C(=O)−(CH2n−または
【化1】

であり、R6は、水素原子または−(CH2n−H(nは1〜10の整数)、−SiRA3(RAは同じかまたは異なり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、またはフェニル基)であり、RBは、水素原子、−(CH2n−H(nは1〜10の整数)または置換されていても良いフェニル基であり、RBは、水素原子、−(CH2n−H(nは1〜10の整数)または置換されていても良いフェニル基である)
で示されるアルキニル基を含むアミンを反応させる(以下、「スルホン酸アミド化反応」ということもある)ことを特徴とするフッ化ビニリデン系ポリマーの製造方法に関する。
【0013】
また、本発明は、主鎖の片末端または両末端に式(3):
−SO2NRB−R5−C≡CR6 (3)
(式中、R5は、分岐していても良い炭素数1〜10のアルキレン基、カルボニル基、−C(=O)−(CH2n−または
【化2】

であり、R6は、水素原子または−(CH2n−H(nは1〜10の整数)、−SiRA3(RAは同じかまたは異なり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、またはフェニル基)であり、RBは、水素原子、−(CH2n−H(nは1〜10の整数)または置換されていても良いフェニル基である)
で示される末端基を有し、
フッ化ビニリデン系ポリマーの両末端基を除く構造が、式(4):
【化3】

(式中、lは7〜150000の整数、mは0〜4900の整数、nは0〜6500の整数である)
で示されるフッ化ビニリデン系ポリマーにも関する。
【0014】
また、本発明は、主鎖の片末端または両末端に式(3):
−SO2NRB−R5−C≡CR6 (3)
(式中、R5は、分岐していても良い炭素数1〜10のアルキレン基、カルボニル基、−C(=O)−(CH2n−または
【化4】

であり、RBは、水素原子、−(CH2n−H(nは1〜10の整数)または置換されていても良いフェニル基である)
で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーに、式(a):
3−(Q1O)p1−(Q2O)p2−(Q3O)p3−R7 (a)
(式中、Q1、Q2、Q3は同じかまたは異なり、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、2−メチルペンタメチレン、ヘキサメチレンまたはシクロヘキシレンであり、p1、p2、p3は0〜3000000の整数であり、p1とp2とp3が同時に0でなく、R7は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メトキシ−1−メチルエチル基、2−アミノエチル基、2−(ジメチルアミノ)エチル基、3,3−ジフェニルプロピル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ハロゲン化フェニル基、アリル基、ベンジル基、アセチル基、ベンゾイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基または水素原子である)
または式(b):
3−(Q1O)q1−(Q2O)q2−(Q3O)q3−A−N3 (b)
(式中、Aはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、2−メチルペンタメチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレンであり、Q1、Q2、Q3は同じかまたは異なり、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、2−メチルペンタメチレン、ヘキサメチレンまたはシクロヘキシレンであり、q1、q2、q3は0〜3000000の整数であり、q1とq2とq3が同時に0でない)
で示されるポリアルキレンオキシドを反応させる(以下、「Huisgen環化反応」ということもある)ことを特徴とするブロック共重合体の製造方法にも関する。
【0015】
また、本発明は、ポリアルキレンオキシドセグメントと式(4):
【化5】

(式中、lは7〜150000の整数、mは0〜4900の整数、nは0〜6500の整数である)
で示されるフッ化ビニリデン系ポリマーセグメントからなるブロック共重合体であって、
ポリアルキレンオキシドセグメントとフッ化ビニリデン系ポリマーセグメントが、式(6):
【化6】

(式中、R5は、分岐していても良い炭素数1〜10のアルキレン基、カルボニル基、−C(=O)−(CH2n−(nは1〜10の整数)または
【化7】

であり、RBは、水素原子、−(CH2n−H(nは1〜10の整数)または置換されていても良いフェニル基である)
で結合されているブロック共重合体にも関する。
【0016】
さらに、本発明は、前記のブロック共重合体の製造方法で得られたブロック共重合体からなる界面活性剤にも関する。
【0017】
さらに、本発明は、前記の新規ブロック共重合体からなる界面活性剤にも関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、主鎖の片末端または両末端を、高収率でアルキニル基末端を有するフッ化ビニリデン系ポリマーを製造することができる。また、本発明の製造方法により得られるアルキニル基末端を有するフッ化ビニリデン系ポリマーは、ブロック共重合体などの製造原料として用いることができるので、ポリマー中間体として有用である。
【0019】
また、前記アルキニル基末端を有するフッ化ビニリデン系ポリマーとアジド末端ポリアルキレンオキシドとを高分子反応させることにより、高収率でブロック共重合体を製造することができる。
【0020】
さらに、本発明の製造方法により得られるブロック共重合体は、親水基であるポリアルキレンオキシドセグメントとフッ化ビニリデン系ポリマーセグメントを有するため、界面活性剤として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、主鎖の片末端または両末端に式(1):
−CR12−CR34−SO21 (1)
で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーに、式(2):
BNH−R5−C≡CR6 (2)
で示されるアルキニル基を有するアミンを反応させることを特徴とするフッ化ビニリデン系ポリマーの製造方法に関する。
【0022】
式(1):
−CR12−CR34−SO21 (1)
におけるR1〜R4は、同じであっても異なっていてもよく、水素原子またはフッ素原子であり、X1は塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
【0023】
式(1)で示される末端基の具体例としては、−CF2CH2SO2Cl、−CF2CH2SO2Br、−CH2CF2SO2Cl、−CH2CF2SO2Br、−CF2CF2SO2Cl、−CF2CF2SO2Brなどがあげられる。
【0024】
スルホン酸アミド化反応に用いられるアルキニル基を有するアミンとしては、
式(2):
BNH−R5−C≡CR6 (2)
があげられる。
【0025】
式(2)で示されるアルキニル基を有するアミンにおけるR5は、分岐していても良い炭素数1〜10のアルキレン基、カルボニル基、−C(=O)−(CH2n−または
【化8】

であり、R6は、水素原子または−(CH2n−H(nは1〜10の整数)、−SiRA3(RAは同じかまたは異なり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、またはフェニル基)であり、RBは、水素原子、−(CH2n−H(nは1〜10の整数)または置換されていても良いフェニル基である。
【0026】
5の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、−(CH25−、−(CH26−、二価のシクロヘキシル基、二価のシクロペンチル基、カルボニル基、−COCH2−、−CO(CH22−、−CO(CH23−、−CO(CH24−、式:
【化9】

などがあげられるが、これらのなかで、アミンの調製の容易さ、コストなどの点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、−(CH25−、−(CH26−、カルボニル基、−COCH2−、−CO(CH22−、−CO(CH23−、−CO(CH24−、式:
【化10】

が特に好ましい。
【0027】
また、R6における、−(CH2n−Hのnは1〜10の整数であり、好ましくは1〜6の整数である。nが10より大きいと、反応溶媒への溶解性が悪くなったり、また、分子量増加に伴い使用量の増加などが考慮される。
【0028】
また、R6における、−SiRA3は汎用性から、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基が好ましい。
【0029】
さらに、RBにおける、−(CH2n−Hのnは1〜10の整数であり、好ましくは1〜6の整数である。RBは、−SO2NH−R5−C≡CR6のNHが、ジアミド化などの副反応を起こす場合において、選択性を向上させるために有効な手段である。副反応を抑制する効果から、特にnを10より大きくする必要がない。
【0030】
また、RBにおける、置換されていても良いフェニル基には、調製が容易なことからフェニル基、トルイル基が好ましい。
【0031】
式(2)の具体例としては、
2N−CH2−C≡CH、H2N−CH2CH2−C≡CH、H2N−CH2CH2CH2−C≡CH、
PhNH−CH2−C≡CH、PhNH−CH2CH2−C≡CH、PhNH−CH2CH2CH2−C≡CH(Phはフェニル基)、
TolNH−CH2−C≡CH、TolNH−CH2CH2−C≡CH、TolNH−CH2CH2CH2−C≡CH(Tolはトルイル基)、
CH3CONH−CH2−C≡CH、CH3CONH−CH2CH2−C≡CH、CH3CONH−CH2CH2CH2−C≡CH、
(CH33SiNH−CH2−C≡CH、(CH33SiNH−CH2CH2−C≡CH、(CH33SiNH−CH2CH2CH2−C≡CH、
(C253SiNH−CH2−C≡CH、(C253SiNH−CH2CH2−C≡CH、(C253SiNH−CH2CH2CH2−C≡CH、
(i−C373SiNH−CH2−C≡CH、(i−C373SiNH−CH2CH2−C≡CH、(i−C373SiNH−CH2CH2CH2−C≡CH、
2N−CH2−C≡CCH3、H2N−CH2−C≡CCH2CH3、H2N−CH2−C≡CCH2CH2CH3、H2N−CH2−C≡CCH2CH2CH2CH3、H2N−CH2−C≡CCH2CH2CH2CH2CH3、H2N−CH2−C≡CCH2CH2CH2CH2CH2CH3
2N−CO−C≡CH、H2N−COCH2−C≡CH、H2N−COCH2CH2−C≡CH、H2N−COCH2CH2CH2−C≡CH、
CH3NH−CO−C≡CH、CH3NH−COCH2−C≡CH、CH3NH−COCH2CH2−C≡CH、CH3NH−COCH2CH2CH2−C≡CH、
25NH−CO−C≡CH、C25NH−COCH2−C≡CH、C25NH−COCH2CH2−C≡CH、C25NH−COCH2CH2CH2−C≡CH、
2N−CO−C≡CCH3、H2N−COCH2−C≡CCH3、H2N−COCH2CH2−C≡CCH3、H2N−COCH2CH2CH2−C≡CCH3
2N−CO−C≡CC25、H2N−COCH2−C≡CC25、H2N−COCH2CH2−C≡CC25、H2N−COCH2CH2CH2−C≡CC25
2N−CO−C≡CCH2CH2CH3、H2N−COCH2−C≡CCH2CH2CH3、H2N−COCH2CH2−C≡CCH2CH2CH3、H2N−COCH2CH2CH2−C≡CCH2CH2CH3
1−エチニルシクロヘキシルアミン、N−フェニル−1−エチニルシクロヘキシルアミン、N−トリメチルシリル−1−エチニルシクロヘキシルアミン、N−アセチル−1−エチニルシクロヘキシルアミン、
1−エチニルシクロペンチルアミン、N−フェニル−1−エチニルシクロペンチルアミン、N−トリメチルシリル−1−エチニルシクロペンチルアミン、N−アセチル−1−エチニルシクロペンチルアミン、
2N−C64−C≡CH、H2N−C64−C≡CSi(CH33、H2N−C64−C≡CSi(C253、H2N−C64−C≡CSi(i−C373、H2N−C64−C≡CCH3、H2N−C64−C≡CC25
(CH33SiNH−C64−C≡CH、(CH33SiNH−C64−C≡CSi(CH33、(CH33SiNH−C64−C≡CCH3、(CH33SiNH−C64−C≡CC25
CH3NH−C64−C≡CH、CH3NH−C64−C≡CSi(CH33、CH3NH−C64−C≡CCH3、CH3NH−C64−C≡CC25
25NH−C64−C≡CH、C25NH−C64−C≡CSi(CH33、C25NH−C64−C≡CCH3、C25NH−C64−C≡CC25、H2N−C64−CH2C≡CH
などがあげられるが、これらの中で、塩基性の低いアミンの使用は、ポリマー中のフッ化ビニリデン鎖からの脱フッ酸を抑制する効果があるという点、合成が容易という点などから、H2N−CH2−C≡CH、H2N−CH2CH2−C≡CH、H2N−CH2CH2CH2−C≡CH、
PhNH−CH2−C≡CH(Phはフェニル基)、TolNH−CH2−C≡CH(Tolはトルイル基)、CH3CONH−CH2−C≡CH、(CH33SiNH−CH2−C≡CH、(C253SiNH−CH2−C≡CH、(i−C373SiNH−CH2−C≡CH、
2N−CO−C≡CH、H2N−COCH2−C≡CH、H2N−COCH2CH2−C≡CH、H2N−COCH2CH2CH2−C≡CH、
CH3NH−CO−C≡CH、CH3NH−COCH2−C≡CH、CH3NH−COCH2CH2−C≡CH、CH3NH−COCH2CH2CH2−C≡CH、
25NH−CO−C≡CH、C25NH−COCH2−C≡CH、C25NH−COCH2CH2−C≡CH、C25NH−COCH2CH2CH2−C≡CH、
2N−CO−C≡CCH3、H2N−COCH2−C≡CCH3、H2N−COCH2CH2−C≡CCH3、H2N−COCH2CH2CH2−C≡CCH3
1−エチニルシクロヘキシルアミン、N−フェニル−1−エチニルシクロヘキシルアミン、N−トリメチルシリル−1−エチニルシクロヘキシルアミン、N−アセチル−1−エチニルシクロヘキシルアミン、
1−エチニルシクロペンチルアミン、N−フェニル−1−エチニルシクロペンチルアミン、N−トリメチルシリル−1−エチニルシクロペンチルアミン、N−アセチル−1−エチニルシクロペンチルアミン、
2N−C64−C≡CH、H2N−C64−C≡CSi(CH33、H2N−C64−C≡CSi(C253、H2N−C64−C≡CSi(i−C373
(CH33SiNH−C64−C≡CH、
CH3NH−C64−C≡CH、C25NH−C64−C≡CH、
が特に好ましい。
【0032】
式(2)で示されるアルキニル基を有するアミンの量は、ポリマーの立体障害や隣接基効果などによる反応性、アルキニル基を有するアミンが、残存するハロゲン化水素やハロゲン化剤と反応することから、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、1当量以上が好ましく、5当量以上がより好ましい。また、式(2)で示されるアルキニル基を有するアミンの量は、塩基性が低い場合において、大過剰用いることも可能である。
【0033】
スルホン酸アミド化反応における反応温度としては、式(2)で示されるアルキニル基を有するアミンの種類、末端基の種類によって適宜選定すればよい。ポリマー中のフッ化ビニリデン鎖からの脱フッ酸反応や、ポリマー鎖や末端基の分解反応を抑制するため、可能な限り低温で実施するのが好ましく、反応温度溶媒の凝固点から150℃以下の範囲で行うことが好ましい。
【0034】
スルホン酸アミド化反応における反応時間は、特に限定しない。式(2)で示されるアルキニル基を有するアミンの種類、末端基の種類、濃度、反応温度よって適宜選定すればよい。
【0035】
スルホン酸アミド化反応においては、さらに添加剤として除酸剤、活性化剤などを加えてもよい。添加剤の具体例としては、たとえば、ピリジン、メチルピリジン、2,6−ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、イミダゾール、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、水素化カルシウム、水素化ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどがあげられる。添加剤としては、ポリマー中のフッ化ビニリデン鎖からの脱フッ酸反応や、ポリマー鎖や末端基の分解反応が起こり難いことから、ピリジン、メチルピリジン、2,6−ルチジン、トリメチルアミン、イミダゾール、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、水素化カルシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが好ましい。フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、0.5当量以上が好ましく、1当量以上がより好ましい。また、有機系の添加剤は、溶媒としての効果も期待できるので、大過剰用いることも可能である。また添加剤が金属塩である場合、反応に影響を及ぼさないものは大量に用いることができる。金属塩の添加剤の量としては、フッ化ビニリデン系ポリマーと溶媒を合わせた重量の50%以下の重量であることが好ましい。
【0036】
スルホン酸アミド化反応における溶媒としては、式(2)で示されるアルキニル基を有するアミンに対して安定な溶媒であれば、いずれも利用可能であり、ポリマーの種類によって適宜選定すれば良い。具体的には、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、四塩化炭素、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、4−メチルペンタン−2−オン、アセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジクロロペンタフルオロプロパン(CFC−225)、1,1−ジクロロフルオロエタン(HCFC−141b)、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン(CFC−113)、テトラクロロヘキサフルオロブタン、ジクロロオクタフルオロブタン、ペンタクロロペンタフルオロヘキサン、ジブロモテトラフルオロエタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロデカリン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロトリブチルアミン、水などがあげられる。また、前記溶媒の混合溶媒であってもよい。
【0037】
本発明の製造方法で用いるフッ化ビニリデン系ポリマーとしては、主鎖の片末端または両末端に前記式(1)を有するフッ化ビニリデン系ポリマーであれば特に限定されるものではなく、フッ化ビニリデン(VdF)単位を含むポリマーであればよい。
【0038】
式(1)で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーの製造方法としては、
主鎖の片末端または両末端に式(7):
−CR12−CR34−X2 (7)
(式中、R1〜R4は、前記式(1)と同じであり、X2は臭素原子またはヨウ素原子である)
で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーに、式(8):
(M1n2-n24 (8)
(式中、M1は、1価〜2価の金属イオンであり、nは0〜2の整数である)
で示される硫黄化合物を反応させ(以下、「スルフィン化反応」ということもある)、主鎖の片末端または両末端に式(9):
−CR12−CR34−SO2M (9)
(式中、R1〜R4は、前記式(1)と同じ、Mは、M1またはHである)
で示される主鎖の片末端または両末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーを製造し、さらに、前記式(9)で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーに、ハロゲン化剤を反応させる(以下、「ハロゲン酸化反応」ということもある)ことにより製造される。
【0039】
式(7)で示される末端基の具体例としては、−CF2CH2I、−CF2CH2Br、−CH2CF2I、−CH2CF2Br、−CF2CF2I、−CF2CF2Brなどがあげられる。
【0040】
スルフィン化反応における亜二チオン酸塩としては、式(8):
(M1n2-n24 (8)
(式中、M1は、1価〜2価の金属イオンであり、nは0〜2の整数である)
があげられ、M1における1価〜2価の金属イオンとしては、Li+、Na+、K+などのアルカリ金属イオン、Mg2+、Ca2+などのアルカリ土類金属イオン、Zn2+、NH4+などがあげられる。
【0041】
式(8)で示される具体的な化合物としては、Na224、ZnS24、K224、Li224、NaHS24、KHS24、LiHS24があげられる。
【0042】
硫黄化合物の量は、ポリマーの立体障害や隣接基効果などによる反応性、硫黄化合物の拡散の低下があることから、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、1当量以上が好ましく、5当量以上がより好ましい。また、硫黄化合物の量は、得られたフッ化ビニリデン系ポリマー中に、無機または低分子硫黄化合物が残存しないために、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、500当量以下が好ましく、100当量以下がより好ましく、30当量以下がさらに好ましい。
【0043】
スルフィン化反応における反応温度としては、低温では反応の進行が遅くなることから、−50℃以上が好ましく、−20℃以上がより好ましい。また、脱SO2による副反応が起こることから、150℃以下が好ましく、100℃以下がさらに好ましい。
【0044】
スルフィン化反応における反応時間は、末端基の種類、反応温度によって適宜選定すればよい。副反応である末端基の脱SO2化が進行するため、可能な限り短い時間での反応が好まれる。0.5〜24時間の範囲で行うのが好ましい。
【0045】
スルフィン化反応における溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、ジメチルスルホン、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、アセトニトリル、アセトン、2−メチル−2−プロパノール、酢酸エチル、4−メチルペンタン−2−オン、アセトン、2−ブタノン、ニトロメタン、ジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−225)、1,1−ジクロロフルオロエタン(HCFC−141b)、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン(CFC−113)、テトラクロロヘキサフルオロブタン、ジクロロオクタフルオロブタン、ペンタクロロペンタフルオロヘキサン、ジブロモテトラフルオロエタン、パーフルオロヘキサン、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどがあげられる。また、前記溶媒と水との混合溶媒であってもよい。
【0046】
スルフィン化反応において、さらに、副反応の脱SO2化を抑える目的で添加剤を配合してもよい。添加剤には、pH制御、活性末端の保護などの効果が期待でき、クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ベンジルクロロジメチルシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン、t−ブチルジフェニルクロロシラン、クロロジメチルフェニルシラン、ジ−t−ブチルジクロロシラン、ジクロロジメチルシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、トリクロロビニルシラン、トリイソプロピルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルなどがあげられる。
【0047】
主鎖の片末端または両末端が前記式(7)で示される末端を有するフッ化ビニリデン系ポリマーを出発物質として、高分子反応により、高収率(70%以上)で主鎖の片末端または両末端をスルフィン化することができる。
【0048】
また、主鎖の片末端または両末端に式(9):
−CR12−CR34−SO2M (9)
(式中、R1〜R4は、前記式(1)と同じである)
で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーをハロゲン酸化反応することにより、主鎖の片末端または両末端に式(1)で示される主鎖の片末端または両末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーが得られる。
【0049】
ハロゲン化剤としては、Cl2、Br2、F2、ICl、BrCl、IF5、IBr、CuCl2、CuBr2、FeCl3、FeBr3、N−クロロコハク酸イミド、N−ブロモコハク酸イミド、SO2Cl2、SO2Br2などがあげられるが、これらの中で、反応性、取り扱いの容易さ、コスト面などの点から、Cl2、Br2、CuCl2、FeCl3、SO2Cl2が好ましい。
【0050】
ハロゲン化剤の量は、ポリマーの立体障害や隣接基効果などによる反応性、ハロゲン化剤の拡散の低下があることから、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、1当量以上が好ましく、5当量以上がさらに好ましい。沸点を有するハロゲン化剤は、常圧または減圧下で蒸発させることにより、容易に除去できるので、大過剰用いることも可能である。一方、ハロゲン化剤が金属塩である場合、無水条件下でのろ過などの金属塩の除去工程が必要となることから、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、500当量以下が好ましく、100当量以下がより好ましく、30当量以下がさらに好ましい。
【0051】
ハロゲン酸化反応における反応温度としては、ハロゲン化剤の種類、末端基の種類によって適宜選定すればよい。ポリマー鎖や末端基の熱分解反応を抑制するため、分解温度以下が好ましい。可能な限り低温で実施するのが好ましく、反応温度−30〜150℃とすることが好ましい。
【0052】
ハロゲン酸化反応における反応時間は、特に限定しない。ハロゲン化剤の種類、末端基の種類によって適宜選定すればよい。
【0053】
ハロゲン酸化反応における溶媒としては、ハロゲン化剤に対して安定な溶媒であれば、いずれも利用可能であり、ポリマーの種類によって適宜選定すれば良い。アセトニトリル、酢酸、トリフルオロ酢酸、蟻酸、シュウ酸、ジクロロメタン、四塩化炭素、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼンジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−225)、1,1−ジクロロフルオロエタン(HCFC−141b)、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン(CFC−113)、テトラクロロヘキサフルオロブタン、ジクロロオクタフルオロブタン、ペンタクロロペンタフルオロヘキサン、ジブロモテトラフルオロエタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロデカリン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロトリブチルアミン、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどがあげられる。また、前記溶媒の混合溶媒であってもよい。
【0054】
式(1)で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーにおけるフッ化ビニリデン系ポリマー構造の製造方法としては、得られる重合体の分子量分布が狭く、分子量の制御が容易である点、末端にヨウ素原子を導入することができる点から、公知のヨウ素移動重合法が好ましい。
【0055】
例えば、実質的に無酸素下で、ヨウ素および/または臭素化合物、好ましくはジヨウ素および/またはジ臭素化合物の存在下に、前記のフッ化ビニリデン系ポリマーを構成する単量体と、要すれば架橋部位を与える単量体を加圧下で撹拌しながらラジカル開始剤の存在下、水媒体中での乳化重合あるいは溶液重合を行う方法があげられる。
【0056】
使用するヨウ素または臭素化合物の代表例としては、例えば、式(10):
8xBry (10)
(式中、xおよびyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R8は炭素数1〜8の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1〜3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で示される化合物などをあげることができる。このようなヨウ素化合物を用いて得られるフッ化ビニリデン系ポリマーの末端には、ヨウ素原子または臭素原子が導入される(例えば、特開昭53−125491号公報および特開昭63−304009号公報参照)。
【0057】
また、連鎖移動剤として、特開平3−52907号公報によるアルカリまたはアルカリ土類金属のヨウ素化合物および/または臭化物を使用できる。ヨウ素および/または臭素を含む連載度剤と関連して、酢酸エチル、マロン酸ジエチルのような従来技術で公知の連鎖移動剤も使用できる。
【0058】
フッ化ビニリデン(VdF)系ポリマーとしては、VdF系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/VdF系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/VdF系フッ素ゴムなどがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組合わせて用いることができる。
【0059】
VdF系ポリマーとしては、式(11)で示されるものが好ましい。
−(A1)−(A2)−(B1)− (11)
(式中、構造単位A1はVdF(a1)由来の構造単位であり、構造単位A2は含フッ素エチレン性単量体(a2)由来の構造単位であり、構造単位B1は単量体(a1)および単量体(a2)と共重合可能な単量体(b1)由来の繰り返し単位である)
一般式(11)で示されるVdF系ポリマーの中でも、構造単位A1を45〜85モル%、構造単位A2を55〜15モル%含むものが好ましく、より好ましくは構造単位A1を50〜80モル%、構造単位A2を50〜20モル%である。構造単位B1は、構造単位A1と構造単位A2の合計量に対して、0〜10モル%であることが好ましい。
【0060】
含フッ素エチレン性単量体(a2)としては、1種または2種以上の単量体が利用でき、例えばTFE、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、HFP、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体があげられるが、これらのなかでも、TFE、HFP、PAVEが好ましい。
【0061】
単量体(b1)としては、単量体(a1)および単量体(a2)と共重合可能なものであれば、いかなるものでもよいが、例えばエチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどがあげられる。
【0062】
このようなVdF系ポリマーとして、具体的には、VdF−HFP系ゴム、VdF−HFP−TFE系ゴム、VdF−CTFE系ゴム、VdF−CTFE−TFE系ゴムなどが好ましくあげられ、具体的には、式(4):
【化11】

式中、lは7〜150000の整数、mは0〜4900の整数、nは0〜6500の整数が好ましく、lは8〜12000の整数、mは0〜4900の整数、nは0〜6500の整数であることがより好ましい。
【0063】
本発明で使用するラジカル重合開始剤は、従来からVdF系ポリマーの重合に使用されているものと同じものであってよい。これらの開始剤には有機および無機の過酸化物ならびにアゾ化合物がある。典型的な開始剤として過硫酸塩類、過酸化カーボネート類、過酸化エステル類などがあり、好ましい開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)があげられる。
【0064】
乳化重合に使用される乳化剤としては、広範囲なものが使用可能であるが、重合中におこる乳化剤分子への連鎖移動反応を抑制する観点から、フルオロカーボン鎖、またはフルオロポリエーテル鎖を有するカルボン酸の塩類が望ましい。乳化剤の使用量は、添加された水の約0.05〜2重量%が好ましく、とくに0.2〜1.5重量%が好ましい。
【0065】
本発明で使用するモノマー混合ガスは、カルブ(G.H.Kalb)ら、アドヴァンシーズ・イン・ケミストリー・シリーズ(Advances in Chemistry Series.),129,13(1973)に記載されるように、爆発性を有するので、重合装置には着火源となるスパークなどが発生しないように工夫する必要がある。
【0066】
重合圧力は、広い範囲で変化させることができる。一般には、0.5〜7MPaの範囲である。重合圧力は、高い程重合速度が大きくなるため、生産性の向上の観点から、0.8MPa以上であることが好ましい。
【0067】
前記式(10)で表されるヨウ素または臭素化合物の添加量としては、得られるVdF系ポリマーの全重量の0.0001〜15重量%であればよい。
【0068】
VdF系ポリマーの数平均分子量は、架橋による3次元網目構造の形成が困難となる傾向があり、また、VdF系ポリマーの末端にあるモノマーの構造単位が一定にならず、それにより化学的安定性が変化することから、500以上が好ましく、1000以上がより好ましく、5000以上がさらに好ましい。また、VdF系ポリマーの数平均分子量は、溶剤に対する溶解性が良好であるという点から、1000000以下が好ましく、300000以下がさらに好ましい。
【0069】
また、本発明は、主鎖の片末端または両末端に式(3):
−SO2NRB−R5−C≡CR6 (3)
で示される末端基を有し、
フッ化ビニリデン系ポリマーの両末端基を除く構造が、式(4):
【化12】

で示されるフッ化ビニリデン系ポリマーにも関する。
【0070】
式(3)の末端基におけるR6は、水素原子または−(CH2n−H(nは1〜10の整数)、−SiRA3(RAは同じかまたは異なり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、またはフェニル基)であり、R5は、分岐していても良い炭素数1〜10のアルキレン基、カルボニル基、−C(=O)−(CH2n−または
【化13】

であり、RBは、−(CH2n−H(nは1〜10の整数)または置換されていても良いフェニル基である。
【0071】
5の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、−(CH25−、−(CH26−、二価のシクロヘキシル基、二価のシクロペンチル基、カルボニル基、−COCH2−、−CO(CH22−、−CO(CH23−、−CO(CH24−、式:
【化14】

などがあげられるが、これらのなかで、アミンの調製の容易さ、コストなどの点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、−(CH25−、−(CH26−、カルボニル基、−COCH2−、−CO(CH22−、−CO(CH23−、−CO(CH24−、式:
【化15】

が特に好ましい。
【0072】
また、RBにおける、−(CH2n−Hのnは1〜10の整数であり、好ましくは1〜6の整数である。RBは、−SO2NH−R5−C≡CR6のNHが、ジアミド化などの副反応を起こす場合において、選択性を向上させるために有効な手段である。副反応を抑制する効果から、特にnを10より大きくする必要がない。
【0073】
さらに、RBにおける、置換されていても良いフェニル基には、調製が容易なことからフェニル基、トルイル基が好ましい。
【0074】
式(3)の具体例としては、−SO2NH−CH2−C≡CH、−SO2NH−CH2CH2−C≡CH、−SO2NH−CH2CH2CH2−C≡CH、−SO2NPh−CH2−C≡CH、−SO2NPh−CH2CH2−C≡CH、−SO2NPh−CH2CH2CH2−C≡CH(Phはフェニル基)、−SO2NTol−CH2−C≡CH、−SO2NTol−CH2CH2−C≡CH、−SO2NTol−CH2CH2CH2−C≡CH(Tolはトルイル基)、−SO2N(COCH3)−CH2−C≡CH、−SO2N(COCH3)−CH2CH2−C≡CH、−SO2N(COCH3)−CH2CH2CH2−C≡CH、−SO2N[Si(CH33]−CH2−C≡CH、−SO2N[Si(CH33]−CH2CH2−C≡CH、−SO2N[Si(CH33]−CH2CH2CH2−C≡CH、−SO2N[Si(C253]−CH2−C≡CH、−SO2N[Si(C253]−CH2CH2−C≡CH、−SO2N[Si(C253]−CH2CH2CH2−C≡CH、−SO2N[Si(i−C373]−CH2−C≡CH、−SO2N[Si(i−C373]−CH2CH2−C≡CH、−SO2N[Si(i−C373]−CH2CH2CH2−C≡CH、−SO2NH−CO−C≡CH、−SO2NH−COCH2−C≡CH、−SO2NH−COCH2CH2−C≡CH、−SO2NH−COCH2CH2CH2−C≡CH、−SO2N(CH3)−CO−C≡CH、−SO2N(CH3)−COCH2−C≡CH、−SO2N(CH3)−COCH2CH2−C≡CH、−SO2N(CH3)−COCH2CH2CH2−C≡CH、−SO2N(C25)−CO−C≡CH、−SO2N(C25)−COCH2−C≡CH、−SO2N(C25)−COCH2CH2−C≡CH、−SO2N(C25)−COCH2CH2CH2−C≡CH、
【化16】

−SO2NH−C64−C≡CH、−SO2N[Si(CH33]−C64−C≡CH、−SO2N(CH3)−C64−C≡CH、−SO2N(C25)−C64−C≡CH、H2N−C64−CH2C≡CH
などがあげられるが、これらの中で、合成が容易という点から、
−SO2NH−CH2−C≡CH、−SO2NH−CH2CH2−C≡CH、−SO2NH−CH2CH2CH2−C≡CH、−SO2NPh−CH2−C≡CH(Phはフェニル基)、−SO2NTol−CH2−C≡CH(Tolはトルイル基)、−SO2N(COCH3)−CH2−C≡CH、−SO2N[Si(CH33]−CH2−C≡CH、−SO2N[Si(C253]−CH2−C≡CH、−SO2N[Si(i−C373]−CH2−C≡CH、−SO2NH−CO−C≡CH、−SO2NH−COCH2−C≡CH、−SO2NH−COCH2CH2−C≡CH、−SO2NH−COCH2CH2CH2−C≡CH、−SO2N(CH3)−CO−C≡CH、−SO2N(CH3)−COCH2−C≡CH、−SO2N(CH3)−COCH2CH2−C≡CH、−SO2N(CH3)−COCH2CH2CH2−C≡CH、−SO2N(C25)−CO−C≡CH、−SO2N(C25)−COCH2−C≡CH、−SO2N(C25)−COCH2CH2−C≡CH、−SO2N(C25)−COCH2CH2CH2−C≡CH、
【化17】

−SO2NH−C64−C≡CH、−SO2N[Si(CH33]−C64−C≡CH、−SO2N(CH3)−C64−C≡CH、−SO2N(C25)−C64−C≡CH、が特に好ましい。
【0075】
式(4)におけるlは7〜150000の整数、mは0〜4900の整数、nは0〜6500の整数が好ましく、lは8〜12000の整数、mは0〜4900の整数、nは0〜6500の整数であることがより好ましい。
【0076】
また、本発明は、主鎖の片末端または両末端に式(3):
−SO2NRB−R5−C≡CR6 (3)
で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーに、式(a):
3−(Q1O)p1−(Q2O)p2−(Q3O)p3−R7 (a)
または式(b):
3−(Q1O)q1−(Q2O)q2−(Q3O)q3−A−N3 (b)
で示されるポリアルキレンオキシドを反応させることを特徴とするポリアルキレンオキシドセグメントとフッ化ビニリデン系ポリマーセグメントからなるブロック共重合体の製造方法にも関する。
【0077】
式(3)におけるRB、R5およびR6は、前記式(2)と同じものである。
【0078】
式(3)の具体例としては、−SO2NH−CH2−C≡CH、−SO2NH−CH2CH2−C≡CH、−SO2NH−CH2CH2CH2−C≡CH、−SO2NPh−CH2−C≡CH(Phはフェニル基)、−SO2NTol−CH2−C≡CH(Tolはトルイル基)、−SO2N(COCH3)−CH2−C≡CH、−SO2N[Si(CH33]−CH2−C≡CH、−SO2N[Si(C253]−CH2−C≡CH、−SO2N[Si(i−C373]−CH2−C≡CH、−SO2NH−CO−C≡CH、−SO2NH−COCH2−C≡CH、−SO2NH−COCH2CH2−C≡CH、−SO2NH−COCH2CH2CH2−C≡CH、−SO2N(CH3)−CO−C≡CH、−SO2N(CH3)−COCH2−C≡CH、−SO2N(CH3)−COCH2CH2−C≡CH、−SO2N(CH3)−COCH2CH2CH2−C≡CH、−SO2N(C25)−CO−C≡CH、−SO2N(C25)−COCH2−C≡CH、−SO2N(C25)−COCH2CH2−C≡CH、−SO2N(C25)−COCH2CH2CH2−C≡CH、
【化18】

−SO2NH−C64−C≡CH、−SO2N[Si(CH33]−C64−C≡CH、−SO2N(CH3)−C64−C≡CH、−SO2N(C25)−C64−C≡CH、があげられる。
【0079】
式(a)で示されるポリアルキレンオキシドにおけるQ1、Q2、Q3は、同じかまたは異なり、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、2−メチルペンタメチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレンなどがあげられるが、汎用性から、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、2−メチルペンタメチレン、ヘキサメチレンが好ましい。
【0080】
式(a)で示されるポリアルキレンオキシドにおけるR7は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メトキシ−1−メチルエチル基、2−アミノエチル基、2−(ジメチルアミノ)エチル基、3,3−ジフェニルプロピル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ハロゲン化フェニル基、アリル基、ベンジル基、アセチル基、ベンゾイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、水素原子などがあげられるが、汎用性から、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、アリル基、ベンジル基、アセチル基、ベンゾイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水素原子が好ましい。
【0081】
式(a)で示されるポリアルキレンオキシドにおけるp1とp2とp3は0〜3000000の整数である。好ましくはp1、p2、p3の和が3〜1000000の整数である。p1、p2、p3の和が3未満であると、ブロック共重合体へ親水性を付与することができなくなり、また、p1、p2、p3の和が1000000より大きいと、式(a)のポリマーにおいて、アジド基の導入率が低くなる傾向がある。
【0082】
また、式(b)で示されるポリアルキレンオキシドにおけるq1とq2とq3は0〜3000000の整数である。好ましくはq1とq2とq3の和が3〜1000000の整数である。q1とq2とq3の和が3未満であると、ブロック共重合体へ親水性を付与することができなくなり、また、qが100000より大きいと、式(a)のポリマーにおいて、アジド基の導入率が低くなる傾向がある。
【0083】
式(a)または式(b)で示されるポリエチレンオキシドの量は、末端基同士の反応性が良好であるため、少量でも充分にフッ化ビニリデンポリマーの改質ができるという点から、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、0.01当量以上が好ましく、0.1当量以上がより好ましい。また、式(a)または式(b)で示されるポリエチレンオキシドの量は、反応系内に未反応のポリアルキレンオキシドが増大することにより、用途によっては、未反応ポリアルキレンオキシドの除去工程を必要とすることから、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、100当量以下が好ましく、10当量以下がさらに好ましい。
【0084】
Huisgen環化反応における反応温度としては、式(a)または式(b)で示されるポリアルキレンオキシドの種類、末端基の種類によって適宜選定すればよい。ポリマー鎖や末端基の熱分解反応を抑制するため、分解温度以下が好ましい。可能な限り低温で実施するのが好ましく、反応温度−100〜200℃とすることがより好ましく、−30〜120℃とすることがさらに好ましい。
【0085】
Huisgen環化反応における反応時間は、式(a)または式(b)で示されるポリアルキレンオキシドの種類、末端基の種類、触媒の種類、触媒の量によって適宜選定される。Huisgen環化反応における反応時間は、1分以上が好ましく、10分以上がより好ましい。また、Huisgen環化反応における反応時間は、100時間以下が好ましく、50時間以下がより好ましい。
【0086】
Huisgen環化反応における溶媒としては、具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、トリフルオロエタノール、ペンタフルオロプロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、四塩化炭素、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、4−メチルペンタン−2−オン、アセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジクロロペンタフルオロプロパン(CFC−225)、1,1−ジクロロフルオロエタン(HCFC−141b)、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン(CFC−113)、テトラクロロヘキサフルオロブタン、ジクロロオクタフルオロブタン、ペンタクロロペンタフルオロヘキサン、ジブロモテトラフルオロエタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロデカリン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロトリブチルアミンなどがあげられる。また、前記溶媒の混合溶媒であってもよい。
【0087】
Huisgen環化反応における触媒としては、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、塩化銅(I)、臭化銅(II)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(II)、ヨウ化銅(I)、酢酸銅(II)、酢酸銅(I)、ビスアセチルアセチナト銅(II)、炭酸銅(II)、水酸化銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、シアン化銅(I)、フッ化銅(II)、アルキルカルボン酸銅(II)、パーフルオロアルキルカルボン酸銅(II)、アルキルスルホン酸銅(II)、パーフルオロアルキルスルホン酸銅(II)、硝酸銅(II)、テトラフルオロホウ酸銅(II)チオシアン酸銅(I)、銅、亜鉛−銅合金などがあげられる。
【0088】
Huisgen環化反応における触媒の量は、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、0.01当量以上が好ましく、0.1当量以上がより好ましい。また、触媒の量は、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、100当量以下が好ましく、10当量以下がより好ましい。
【0089】
また、Huisgen環化反応における触媒を、還元剤の存在下で使用しても良い。好ましい還元剤としては、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸、金属銅、キノン、ヒドロキノン、ビタミンK1、グルタチオン、システイン、Fe2+、Co2+、Al、Be、Co、Cr、Fe、Mg、Mn、NiおよびZnから成る群より選択される金属があげられる。
【0090】
ブロック共重合体の製造方法において、主鎖の片末端にのみ式(3)で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーと式(a)で示されるポリアルキレンオキシドを反応させた場合、AB型ジブロック共重合体が得られる。
【0091】
AB型ジブロック共重合体を製造される際の式(a)で示されるポリアルキレンオキシドの量は、末端基同士の反応性が良好であるため、少量でも充分にフッ化ビニリデンポリマーの改質ができる点から、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、0.01当量以上が好ましく、0.1当量以上がより好ましい。また、式(a)で示されるポリアルキレンオキシドの量は、末端基同士の反応性が良好であるため、少量でも充分にポリアルキレンオキシドの改質ができる点から、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、100当量以下が好ましく、10当量以下がより好ましい。
【0092】
また、前記のブロック共重合体の製造方法において、主鎖の両末端に式(3)で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーと式(a)で示されるポリアルキレンオキシドを反応させた場合、ABA型トリブロック共重合体が得られる。
【0093】
ABA型トリブロック共重合体を製造される際の式(a)で示されるポリアルキレンオキシドの量は、末端基同士の反応性が良好であるため、少量でも充分にフッ化ビニリデンポリマーの改質ができる点から、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、0.01当量以上が好ましく、0.1当量以上がより好ましい。また、式(a)で示されるポリアルキレンオキシドの量は、末端基同士の反応性が良好であるため、少量でも充分にポリアルキレンオキシドの改質ができる点から、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、100当量以下が好ましく、10当量以下がより好ましい。
【0094】
さらに、前記のブロック共重合体の製造方法において、主鎖の両末端に式(3)で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーと式(b)で示されるポリアルキレンオキシドを反応させた場合、(AB)r型マルチブロック共重合体が得られる。
【0095】
(AB)r型マルチブロック共重合体を製造される際の式(a)で示されるポリアルキレンオキシドの量は、フッ化ビニリデン系ポリマーの末端基に対して大過剰、または、微量である場合、ABA型トリブロック共重合体が得られることから、フッ化ビニリデン系ポリマーの1つの末端基に対して、0.25〜4.0当量の範囲が好ましく、0.5〜2.0当量の範囲がより好ましく、0.8〜1.25当量の範囲がさらに好ましい。
【0096】
また、本発明は、ポリアルキレンオキシドセグメントと式(4):
【化19】

(式中、lは7〜150000、好ましくは8〜12000の整数、mは0〜4900、好ましくは0〜4900の整数、nは0〜6500の整数である)
で示されるフッ化ビニリデン系ポリマーセグメントからなるブロック共重合体であって、
ポリアルキレンオキシドセグメントとフッ化ビニリデン系ポリマーセグメントが、式(6):
【化20】

で結合されているブロック共重合体にも関する。
【0097】
式(6)におけるRBおよびR5は、前記式(3)と同じである。
【0098】
ブロック共重合体の製造方法において、主鎖の片末端にのみ式(3)で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーと式(a)で示されるポリアルキレンオキシドを反応させた場合、式(6a):
【化21】

(式中、Aはフッ化ビニリデン系ポリマーセグメントであり、Bはポリアルキレンオキシドセグメントである)
で示されるAB型ジブロック共重合体が得られる。
【0099】
また、前記のブロック共重合体の製造方法において、主鎖の両末端に式(3)で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーと式(a)で示されるポリアルキレンオキシドを反応させた場合、式(6b):
【化22】

(式中、AおよびBは、前記式(6a)と同じである)
で示されるABA型トリブロック共重合体が得られる。
【0100】
さらに、前記のブロック共重合体の製造方法において、主鎖の両末端に式(3)で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーと式(b)で示されるポリアルキレンオキシドを反応させた場合、式(6c):
【化23】

(式中、AおよびBは、前記式(6a)と同じであり、rは、2〜100000の整数であることが好ましく、4〜1000の整数であることがより好ましい)
で示される(AB)r型マルチブロック共重合体が得られる。
【0101】
ポリアルキレンオキシドセグメントとしては、式:
【化24】

(ブロック共重合体またはランダム共重合体、S1とS2の和がSとなる。)
【化25】

(ブロック共重合体またはランダム共重合体、S1とS2の和がSとなる。)
【化26】

(ブロック共重合体またはランダム共重合体、S1とS2の和がSとなる。)
などがあげられる。式中、Sは、特に制限されるものではないが、ブロック共重合体へ親水性を付与することができるという観点から、1以上の整数であることが好ましく、3以上の整数であることがより好ましい。また、アジド基末端への変換率が低くなることから、3000000以下の整数であることが好ましく、100000の整数であることがより好ましい。
【0102】
さらに、本発明は、前記の製造方法で得られたブロック共重合体および前記の新規ブロック共重合体は、親水性セグメントとしてポリアルキレンオキシドを含有する両親媒性物質である。界面活性作用を有しており、新規な界面活性剤を提供することができる。
【0103】
本発明の界面活性剤は、水系、水−有機溶媒混合系で用いられることができる。有機溶媒として、特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、 炭酸ジメチル、炭酸ジメチル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、トリフルオロエタノール、ペンタフルオロプロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、4−メチルペンタン−2−オン、アセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、ヘプタン、オクタン、ペンタン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、四塩化炭素、ジクロロペンタフルオロプロパン(CFC−225)、1,1−ジクロロフルオロエタン(HCFC−141b)、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン(CFC−113)、テトラクロロヘキサフルオロブタン、ジクロロオクタフルオロブタン、ペンタクロロペンタフルオロヘキサン、ジブロモテトラフルオロエタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロデカリン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロトリブチルアミンなどがあげられる。
【0104】
本発明の界面活性剤は、従来乳化剤として知られているパーフルオロオクタン酸アンモニウム(PFOA)より高い界面活性作用が得られる。化粧品、香粧品、トイレタリー、医薬、農薬の基剤、洗浄、食品、塗料、切削油、潤滑剤、接着剤、帯電防止剤など極めて広範囲に利用できる。
【実施例】
【0105】
つぎに製造例、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0106】
製造例1(末端に−CF2CH2Iを有するVdF系ポリマーの製造方法)
3.0Lオートクレーブに、純水(1500g)、20重量%のパーフルオロオクタン酸アンモニウム水溶液(22g)を供給した。系内を窒素ガスで置換し、減圧状態にした後、内温を80℃にし、HFPを内圧が0.73MPaまで、さらにVdFを1.5MPaまで供給した。その後、撹拌下、1,4−ジヨードオクタフルオロブタン(12.6g,27.8mmol)、水(8g)に溶解させた過硫酸アンモニウム(APS)(40mg)を加え、重合を開始させた。重合圧力を1.5MPaとし、VdF/HFP混合モノマー(VdF/HFP=78/22,417g)を連続的に供給した。途中、重合開始後2時間にAPS(66mg)4時間にAPS(80mg)、7時間にAPS(96mg)を水(8g)に溶解させた水溶液を系内に仕込んだ。反応時間は10時間であった。得られた乳濁液の重量は1900g、ポリマー濃度が20重量%であった。
【0107】
この乳濁液を硫酸アルミニウム水溶液で凝析した後、温水により洗浄し、末端に−CH2CF2Iを有するVdF系ポリマーを得た。得られたVdF系ポリマーの共重合組成比は19F−NMRで測定によりVdF/HFP=78/22(モル%)であった。GPC測定でのポリエチレンオキシド換算の分子量は、数平均分子量が11000であった。また、重アセトン溶媒での1H−NMRの分析において、3.95〜3.82ppmに末端構造−CF2CH2Iに由来するシグナルが観察された。また13C−NMRの分析において、−3.2ppmに末端構造−CF2CH2Iに由来するシグナルが観測された。
【0108】
製造例2(末端に−SO2Hを有するVdF系ポリマー:Mn=11000の製造方法)
製造例1の末端に−CF2CH2Iを有するVdF/HFP共重合体(Mn=11000,2.00g,180μmol)を20mLフラスコに入れ、ジメチルスルホキシド(20mL)を加え、6時間撹拌させて溶解させた。その後、反応系をクロロトリメチルシラン(50μL,390μmol)を添加し、次いで、Na224(450mg,2.60mmol)を加え、アルゴン下、室温で1時間撹拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルを加えて、分液させた(水相pH5)。有機層を分離し、飽和NaCl水(100mL)で洗浄した。MgSO4で乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。
【0109】
得られたVdF系ポリマーの数平均分子量は、11000であった。また、重アセトン溶媒での1H−NMRの分析において、3.47〜3.60ppmに末端構造−CF2CH2SO2Hに由来するシグナルが観察された。主シグナルの高さから求めた主鎖末端の変換率は、約90%であった。また13C−NMRの分析において、−3.2ppmの末端構造−CF2CH2Iのシグナルが観測されず、59.8ppmに末端構造−CF2CH2SO2Hに由来するシグナルが観測された。
【0110】
実施例1(末端に−SO2NHCH2C≡CHを有するVdF系ポリマー:Mn=13000の製造方法)
製造例2で合成した末端に−CF2CH2SO2Hを有するVdF/HFP共重合体(Mn=11000,0.90g,82μmol)が入った50mLフラスコにアセトニトリル(10mL)を入れた後、塩化スルフリル(100μL,1.23mmol)を添加して、アルゴン下、室温で6時間反応させ、減圧下で反応液を濃縮し、末端に−CF2CH2SO2Clを有するVdF/HFP共重合体とした。
【0111】
その後、反応系にアセトニトリル(10mL)を入れた後、氷浴下、プロパルギルアミン(200μL,2.92mmol)を加え8時間撹拌した。その後、1N−HCl(50mL)にあけ、酢酸エチルを加えて分液させた。有機層を分離し、飽和NaCl水溶液(50mL)で洗浄した。MgSO4で乾燥後、減圧下で溶媒を留去、アセトンに溶解させ、ベンゼン−ヘキサン混合溶媒(V/V=1/1)から再沈させた。ポリマーを採取した後、減圧下60℃で乾燥して、末端に−SO2NHCH2C≡CHを有するVdF/HFP共重合体(0.69g)を得た。
【0112】
得られたVdF系ポリマーの数平均分子量は、13000であった。また、重アセトン溶媒での1H−NMRの分析において、4.04〜4.19ppmに末端構造−CF2CH2SO2−に由来するシグナルが、4.04ppmに−CH2C≡CHに由来するシグナルが観察された。1H−NMRから求めた主鎖末端の変換率は、70%であった。また13C−NMRの分析において、51.8ppmの末端構造−CF2CH2SO2NH−に由来するシグナルが観測され、33.0、74.5、79.9ppmにプロパルギル基の存在が確認された。さらにIRの分析において、3313cm-1にアルキニル由来のC−H伸縮振動が確認された。
【0113】
実施例2(末端に式:
【化27】

を有するVdF系ポリマー:Mn=12000の製造方法)
製造例2で合成した末端に−CF2CH2SO2Hを有するVdF/HFP共重合体(Mn=11000,0.50g,45μmol)が入った50mLフラスコにアセトニトリル(5mL)を入れた後、臭素(20mg,0.13mmol)を添加して、アルゴン下、−20℃で1時間反応させ、末端に−CF2CH2SO2Brを有するVdF/HFP共重合体とした。
【0114】
その後、反応系に−20℃にて、H2N−C64−C≡CH(750mg,6.40mmol)、ピリジン(150μl,1.85mmol)を入れた後、氷浴下、8時間撹拌した。その後、1N−HCl(50mL)にあけ、酢酸エチルを加えて分液させた。有機層を分離し、飽和NaCl水溶液(50mL)で洗浄した。MgSO4で乾燥後、減圧下で溶媒を留去、アセトンに溶解させ、ベンゼン−ヘキサン混合溶媒(V/V=1/1)から再沈させた。ポリマーを採取した後、減圧下60℃で乾燥して、末端に式:
【化28】

を有するVdF/HFP共重合体(0.43g)を得た。
【0115】
得られたVdF系ポリマーの数平均分子量は、12000であった。また、重アセトン溶媒での1H−NMRの分析において、3.62ppmに−C≡CHに由来するシグナルが、4.05〜4.23ppmに末端構造−CF2CH2SO2−に由来するシグナルが、7.37、7.50ppmにベンゼン環に由来するシグナルが観察された。1H−NMRから求めた主鎖末端の変換率は、75%であった。またIRの分析において、3313cm-1にアルキニル由来のC−H伸縮振動が確認された。
【0116】
実施例3(末端に式:
【化29】

を有するVdF系ポリマー:Mn=20000の製造方法)
製造例2で合成した末端に−CF2CH2SO2Hを有するVdF/HFP共重合体(Mn=11000,0.50g,45μmol)が入った50mLフラスコにアセトニトリル(10mL)、次いで酢酸(25μL)入れた後、CuCl2(44mg,0.33mmol)を添加して、アルゴン下、室温で6時間反応させ、末端に−CF2CH2SO2Clを有するVdF/HFP共重合体とした。
【0117】
その後、反応系にアセトニトリル(5mL)を入れた後、氷浴下、H2N−C64−C≡CSi(CH33(185mg,0.98mmol)を加え8時間撹拌した。その後、1N−HCl(50mL)にあけ、酢酸エチルを加えて分液させた。有機層を分離し、飽和NaCl水溶液(50mL)で洗浄した。MgSO4で乾燥後、減圧下で溶媒を留去、アセトンに溶解させ、ベンゼン−ヘキサン混合溶媒(V/V=1/1)から再沈させた。ポリマーを採取した後、減圧下60℃で乾燥して、末端に式:
【化30】

を有するVdF/HFP共重合体(0.33g)を得た。
【0118】
得られたVdF系ポリマーの数平均分子量は、12000であった。また、重アセトン溶媒での1H−NMRの分析において、0.21ppmに−Si(CH33に由来するシグナルが、4.03〜4.20ppmに末端構造−CF2CH2SO2−に由来するシグナルが、7.36、7.47ppmにベンゼン環に由来するシグナルが観察された。1H−NMRから求めた主鎖末端の変換率は、47%であった。
【0119】
製造例3(片末端に−N3を有するポリエチレンオキシド:Mn=1500の製造方法)
Macromolecules2006,39,4960.を参考に合成した。
【0120】
ジクロロメタン中、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(Mn=1500,3.0g,2.0mmol)にトリエチルアミン(2.02g,20mmol)、p−トルエンスルホン酸クロリド(3.81g,20mmol)を12時間反応させ、p−トルエンスルホン酸エステル末端ポリエチレンオキシドモノメチルエーテルを合成した。
【0121】
その後、ジメチルホルムアミド−水混合溶媒中、p−トルエンスルホン酸エステル末端ポリエチレンオキシドモノメチルエーテルにアジ化ナトリウム(1.30g,20mmol)を24時間反応させ、片末端に−N3を有するポリエチレンオキシドを合成した。13C−NMRの分析において、アジド末端に変換されたことを確認した。また、GPC測定において、ポリエチレンオキシド換算の数平均分子量は1500であった。
【0122】
製造例4(片末端に−N3を有するポリエチレンオキシド:Mn=4000の製造方法)
製造例3の片末端に−N3を有するポリエチレンオキシドの合成までを同様にして行った。すなわち、ジクロロメタン中、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(Mn=4000,1.0g,0.16mmol)、トリエチルアミン(162mg,1.6mmol)、p−トルエンスルホン酸クロリド(306mg,1.6mmol)を反応させp−トルエンスルホン酸エステル末端ポリエチレンオキシドモノメチルエーテルとした。
【0123】
その後、ジメチルホルムアミド−水混合溶媒中、p−トルエンスルホン酸エステル末端ポリエチレンオキシドモノメチルエーテルにアジ化ナトリウム(104mg,1.6mmol)を24時間反応させ、両末端に−N3を有するポリエチレンオキシドを合成した。13C−NMRの分析において、アジド末端に変換されたことを確認した。数平均分子量は4000であった。
【0124】
製造例5(両末端に−N3を有するポリエチレンオキシド:Mn=18000の製造方法)
製造例3の両末端に−N3を有するポリエチレンオキシドの合成までを同様にして行った。すなわち、ジクロロメタン中、ポリエチレンオキシド(Mn=18000,1.5g,55μmol)、トリエチルアミン(111mg,1.1mmol)、p−トルエンスルホン酸クロリド(210mg,1.1mmol)を反応させp−トルエンスルホン酸エステル末端ポリエチレンオキシドとした。
【0125】
その後、ジメチルホルムアミド−水混合溶媒中、p−トルエンスルホン酸エステル末端ポリエチレンオキシドにアジ化ナトリウム(72mg,1.1mmol)を24時間反応させ、両末端に−N3を有するポリエチレンオキシドを合成した。13C−NMRの分析において、アジド末端に変換されたことを確認した。数平均分子量は18000であった。
【0126】
製造例6(両末端に−N3を有するポリエチレンオキシド:Mn=550の製造方法)
製造例3の片末端に−N3を有するポリエチレンオキシドの合成までを同様にして行った。すなわち、ジクロロメタン中、ポリエチレンオキシド(MnNMR=600,0.5g,0.85mmol)、トリエチルアミン(1.72g,17mmol)、p−トルエンスルホン酸クロリド(3.25g,17mmol)を反応させp−トルエンスルホン酸エステル末端ポリエチレンオキシドとした。
【0127】
その後、ジメチルホルムアミド−水混合溶媒中、p−トルエンスルホン酸エステル末端ポリエチレンオキシドにアジ化ナトリウム(1.11g,17mmol)を24時間反応させ、両末端に−N3を有するポリエチレンオキシドを合成した。13C−NMRの分析において、アジド末端に変換されたことを確認した。13C−NMRから求めた数平均分子量は550であった。
【0128】
製造例7(両末端に−N3を有するポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドブロック共重合体:Mn=5000の製造方法)
製造例3の両末端に−N3を有するポリエチレンオキシドの合成までを同様にして行った。すなわち、ジクロロメタン中、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Mn=5000,1.5g,55μmol)、トリエチルアミン(111mg,1.1mmol)、p−トルエンスルホン酸クロリド(210mg,1.1mmol)を反応させp−トルエンスルホン酸エステル末端ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドブロック共重合体とした。
【0129】
その後、ジメチルホルムアミド−水混合溶媒中、p−トルエンスルホン酸エステル末端ポリエチレンオキシドにアジ化ナトリウム(72mg,1.1mmol)を24時間反応させ、両末端に−N3を有するポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドブロック共重合体を合成した。13C−NMRの分析において、アジド末端に変換されたことを確認した。数平均分子量は5000であった。
【0130】
実施例4(VdF系ポリマー−ポリエチレンオキシド ABA型ブロック共重合体の製造方法)
実施例1で合成した末端に−SO2NHCH2C≡CHを有するVdF/HFP共重合体(Mn=13000,100mg,8μmol)と製造例3で合成した末端に−N3を有するポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(Mn=1500,30mg,20μmol)を10mLフラスコに入れ、メタノール(3mL)に溶解させた。その後、水(3mL)を加えた。1.0Mアスコルビン酸ナトリウム溶液(20μL)、1.0M硫酸銅水溶液(20μL)を加えて、室温で48時間反応させた。
【0131】
反応液を減圧下で濃縮した後、メタノールに溶解させ、アルミナカラムを用いて銅塩を除去した。メタノール除去した後、ポリマーを水中で4日間透析させ74mgのABA型のブロック共重合体を得た。
【0132】
得られたブロック共重合体の数平均分子量は、17000であった。重アセトン溶媒での1H−NMRの分析において、4.04ppmの−CH2C≡CHに由来するシグナルが完全に消失し、新たに7.90ppmにトリアゾール環CHシグナルが生じたのを確認した。また、IRの分析において、得られたポリマーには、3313cm-1のアルキニルC−H伸縮振動および、2109cm-1のN3伸縮振動が含まれていないことを確認した。また、1115cm-1にポリエチレンオキシド由来のエーテル伸縮振動が観測された。
【0133】
実施例5(VdF系ポリマー−ポリエチレンオキシド ABA型ブロック共重合体の製造方法)
実施例2で合成した末端に式:
【化31】

を有するVdF/HFP共重合体(Mn=12000,50mg,4μmol)と製造例4で合成した末端に−N3を有するポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(Mn=4000,75mg,19μmol)を10mLフラスコに入れ、メタノール(3mL)に溶解させた。その後、水(3mL)を加えた。
1.0Mアスコルビン酸ナトリウム溶液(20μL)、1.0M硫酸銅水溶液(20μL)を加えて、室温で48時間反応させた。
【0134】
反応液を減圧下で濃縮した後、メタノールに溶解させ、アルミナカラムを用いて銅塩を除去した。THF溶媒を用いたリサイクル分取HPLCにて、未反応ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル除去した後、81mgのABA型のブロック共重合体を得た。
【0135】
得られたブロック共重合体の数平均分子量は、25000であった。重アセトン溶媒での1H−NMRの分析において、新たに7.90ppmにトリアゾール環CHシグナルが生じたのを確認した。また、IRの分析において、得られたポリマーには、3313cm-1のアルキニルC−H伸縮振動および、2109cm-1のN3伸縮振動が含まれていないことを確認した。また、1115cm-1にポリエチレンオキシド由来のエーテル伸縮振動が観測された。
【0136】
実施例6(VdF系ポリマー−ポリエチレンオキシド (AB)n型ブロック共重合体の製造方法)
実施例1で合成した末端に−SO2NHCH2C≡CHを有するVdF/HFP共重合体(Mn=13000,100mg,8μmol)と製造例6で合成した末端に−N3を有するポリエチレンオキシド(Mn=550,4mg,7μmol)を10mLフラスコに入れ、メタノール(3mL)に溶解させた。その後、水(3mL)を加えた。1.0Mアスコルビン酸ナトリウム溶液(20μL)、1.0M硫酸銅水溶液(20μL)を加えて、室温で48時間反応させた。
【0137】
反応液を減圧下で濃縮した後、メタノールに溶解させ、アルミナカラムを用いて銅塩を除去した。メタノール除去した後、ポリマーを水中で4日間透析させ91mgの(AB)n型のブロック共重合体を得た。
【0138】
得られたブロック共重合体の数平均分子量は、40000であった。重アセトン溶媒での1H−NMRの分析において、4.04ppmの−CH2C≡CHに由来するシグナルが完全に消失し、新たに7.90ppmにトリアゾール環CHシグナルが生じたのを確認した。また、IRの分析において、得られたポリマーには、3313cm-1のアルキニルC−H伸縮振動および、2109cm-1のN3伸縮振動が含まれていないことを確認した。また、1113cm-1にポリエチレンオキシド由来のエーテル伸縮振動が観測された。
【0139】
実施例7(VdF系ポリマー−ポリエチレンオキシド (AB)n型ブロック共重合体の製造方法)
実施例2で合成した末端に式:
【化32】

を有するVdF/HFP共重合体(Mn=12000,50mg,4μmol)と製造例5で合成した末端に−N3を有するポリエチレンオキシド(Mn=18000,75mg,4μmol)を10mLフラスコに入れ、メタノール(10mL)に溶解させた。その後、1.0Mアスコルビン酸ナトリウム溶液(10μL)、1.0M硫酸銅水溶液(10μL)を加えて、室温で48時間反応させた。
【0140】
反応液を減圧下で濃縮した後、メタノールに溶解させ、アルミナカラムを用いて銅塩を除去した。THF溶媒を用いたリサイクル分取HPLCにて、低分子量成分を除去した後、105mgのABA型のブロック共重合体を得た。
【0141】
得られたブロック共重合体の数平均分子量は、37000であった。重アセトン溶媒での1H−NMRの分析において、新たに7.90ppmにトリアゾール環CHシグナルが生じたのを確認した。また、IRの分析において、得られたポリマーには、3313cm-1のアルキニルC−H伸縮振動および、2109cm-1のN3伸縮振動が含まれていないことを確認した。また、1113cm-1にポリエチレンオキシド由来のエーテル伸縮振動が観測された。
【0142】
実施例8(VdF系ポリマー−(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドブロック共重合体)(AB)n型ブロック共重合体の製造方法)
実施例2で合成した末端に式:
【化33】

を有するVdF/HFP共重合体(Mn=12000,50mg,4μmol)と製造例7で合成した末端に−N3を有するポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドブロック共重合体(Mn=5000,20mg,4μmol)を10mLフラスコに入れ、メタノール(10mL)に溶解させた。1.0Mアスコルビン酸ナトリウム溶液(10μL)、1.0M硫酸銅水溶液(10μL)を加えて、室温で48時間反応させた。
【0143】
反応液を減圧下で濃縮した後、メタノールに溶解させ、アルミナカラムを用いて銅塩を除去した。THF溶媒を用いたリサイクル分取HPLCにて、低分子量成分を除去した後、65mgのABA型のブロック共重合体を得た。
【0144】
得られたブロック共重合体の数平均分子量は、41000であった。重アセトン溶媒での1H−NMRの分析において、新たに7.90ppmにトリアゾール環CHシグナルが生じたのを確認した。また、IRの分析において、得られたポリマーには、3313cm-1のアルキニルC−H伸縮振動および、2109cm-1のN3伸縮振動が含まれていないことを確認した。また、1113cm-1にポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドブロック共重合体由来のエーテル伸縮振動が観測された。
【0145】
実施例9(界面活性剤としての評価)
表1に示す配合割合になるように、目盛付き1mL円柱型試料管に、蒸留水と酢酸エチル、実施例4で製造したブロック共重合体(FKM−b−PEG)をそれぞれ添加し、室温にて振とう、超音波処理することにより乳化させた。25℃で静置保存して、1時間後および3日後の水分離量を測定した。評価結果を表1に示す。
【0146】
実施例10(界面活性剤としての評価)
表1に示す配合割合になるように、目盛付き1mL円柱型試料管に、蒸留水と酢酸エチル、実施例7で製造したブロック共重合体(FKM−b−PEG)をそれぞれ添加し、室温にて振とう、超音波処理することにより乳化させた。25℃で静置保存して、1時間後および3日後の水分離量を測定した。評価結果を表1に示す。
【0147】
比較例1および2(界面活性剤としての評価)
表1に示す配合割合になるように、目盛付き1mL円柱型試料管に、水と酢酸エチルを添加し、さらに、界面活性剤としてパーフルオロオクタン酸アンモニウム(PFOA)を添加(比較例1)または、界面活性剤を配合しなかった(比較例2)以外は、実施例8と同様の方法にて乳化させ、水分離量を測定した。評価結果を表1に示す。
【0148】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖の片末端または両末端に式(1):
−CR12−CR34−SO21 (1)
(式中、R1〜R4は、同じであっても異なっていてもよく、水素原子またはフッ素原子であり、X1は塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である)
で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーに、式(2):
BNH−R5−C≡CR6 (2)
(式中、R5は、分岐していても良い炭素数1〜10のアルキレン基、カルボニル基、−C(=O)−(CH2n−または
【化1】

であり、R6は、水素原子または−(CH2n−H(nは1〜10の整数)、−SiRA3(RAは同じかまたは異なり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、またはフェニル基)であり、RBは、水素原子、−(CH2n−H(nは1〜10の整数)または置換されていても良いフェニル基である)
で示されるアルキニル基を含むアミンを反応させることを特徴とするフッ化ビニリデン系ポリマーの製造方法。
【請求項2】
主鎖の片末端または両末端に式(3):
−SO2NRB−R5−C≡CR6 (3)
(式中、R5は、分岐していても良い炭素数1〜10のアルキレン基、カルボニル基、−C(=O)−(CH2n−または
【化2】

であり、R6は、水素原子または−(CH2n−H(nは1〜10の整数)、−SiRA3(RAは同じかまたは異なり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、またはフェニル基)であり、RBは、水素原子、−(CH2n−H(nは1〜10の整数)または置換されていても良いフェニル基である)
で示される末端基を有し、
フッ化ビニリデン系ポリマーの両末端基を除く構造が、式(4):
【化3】

(式中、lは7〜150000の整数、mは0〜4900の整数、nは0〜6500の整数である)
で示されるフッ化ビニリデン系ポリマー。
【請求項3】
主鎖の片末端または両末端に式(3):
−SO2NRB−R5−C≡CR6 (3)
(式中、R5は、分岐していても良い炭素数1〜10のアルキレン基、カルボニル基、−C(=O)−(CH2n−または
【化4】

であり、RBは、水素原子、−(CH2n−H(nは1〜10の整数)または置換されていても良いフェニル基である)
で示される末端基を有するフッ化ビニリデン系ポリマーに、式(a):
3−(Q1O)p1−(Q2O)p2−(Q3O)p3−R7 (a)
(式中、Q1、Q2、Q3は同じかまたは異なり、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、2−メチルペンタメチレン、ヘキサメチレンまたはシクロヘキシレンであり、p1、p2、p3は0〜3000000の整数であり、p1とp2とp3が同時に0でなく、R7は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メトキシ−1−メチルエチル基、2−アミノエチル基、2−(ジメチルアミノ)エチル基、3,3−ジフェニルプロピル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ハロゲン化フェニル基、アリル基、ベンジル基、アセチル基、ベンゾイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基または水素原子である)
または式(b):
3−(Q1O)q1−(Q2O)q2−(Q3O)q3−A−N3 (b)
(式中、Aはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、2−メチルペンタメチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレンであり、Q1、Q2、Q3は同じかまたは異なり、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、2−メチルペンタメチレン、ヘキサメチレンまたはシクロヘキシレンであり、q1、q2、q3は0〜3000000の整数であり、q1とq2とq3が同時に0でない)
で示されるポリアルキレンオキシドを反応させることを特徴とするブロック共重合体の製造方法。
【請求項4】
ポリアルキレンオキシドセグメントと式(4):
【化5】

(式中、lは7〜150000の整数、mは0〜4900の整数、nは0〜6500の整数である)
で示されるフッ化ビニリデン系ポリマーセグメントからなるブロック共重合体であって、
ポリアルキレンオキシドセグメントとフッ化ビニリデン系ポリマーセグメントが、式(6):
【化6】

(式中、R5は、分岐していても良い炭素数1〜10のアルキレン基、カルボニル基、−C(=O)−(CH2n−(nは1〜10の整数)または
【化7】

であり、RBは、水素原子、−(CH2n−H(nは1〜10の整数)または置換されていても良いフェニル基である)
で結合されているブロック共重合体。
【請求項5】
請求項3記載のブロック共重合体の製造方法で得られたブロック共重合体からなる界面活性剤。
【請求項6】
請求項4記載のブロック共重合体からなる界面活性剤。

【公開番号】特開2009−242553(P2009−242553A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90377(P2008−90377)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】