説明

材料貯蔵ホッパのアーチングブレーカー

【課題】 ホッパ内壁付近の貯蔵材料をスムーズに流下させることでアーチングを効果的に抑え、安定した払い出しを可能とする材料貯蔵ホッパのアーチングブレーカーを提供する。
【解決手段】 材料貯蔵ホッパ1のスクリューフィーダ5の上位に攪拌軸19を回転自在に軸支すると共に、攪拌軸19の外周にはホッパ内の貯蔵材料を撹拌しながら攪拌軸19の長手方向中央側へと送り出すようにそれぞれ所定の送り角度を設けた複数の送り羽根25、26を周設する。そして、前記攪拌軸19を駆動モータ21にて回転させることにより、攪拌軸19周囲の貯蔵材料を撹拌してばらばらにほぐしながら攪拌軸19の長手方向中央側へと送り出すと共に、ホッパ内壁付近の貯蔵材料をスムーズに流下させることによってアーチングの形成を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂等の骨材、その他の粒体や粉体などの各種材料を一旦貯蔵した後に払い出す材料貯蔵ホッパに関し、特にホッパ内の貯蔵材料のアーチングを防止する材料貯蔵ホッパのアーチングブレーカー(アーチング防止装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、新しい鋳造技術として減圧凍結鋳型鋳造法なるものがあり、鋳物砂に水を混ぜて型枠に込め、減圧凍結させて鋳型を作り、この鋳型に溶鋼を流し込めば鋳型が自然に崩れて型ばらしができ、この型ばらし後の鋳物砂を元の砂粒状態へと戻して鋳物砂として再利用する鋳造法が提案されている。この鋳造法においては、型ばらし後の鋳物砂を篩って砂粒状態へと戻し、ホッパに一旦貯蔵してから次工程へと送り出す篩付きの材料貯蔵ホッパがシステム構築時の一装置として必要となる。
【0003】
ところで、ホッパ内に貯蔵される前記鋳物砂は、その工程上どうしても含水量が多くなるため、流動性に乏しくて圧密を起こしやすく、場合によってはホッパ内でアーチングを生じて払い出しが困難になるおそれがある。そして、このような流動性に劣る様々な貯蔵材料を安定して払い出す手段の一つに、ホッパ内の貯蔵材料を強制的に撹拌するなどして流動性を高めて貯蔵材料のアーチングを防止するアーチングブレーカーがある(特許文献1、2)。
【0004】
例えば、特許文献1には、ホッパ内の上段位置に撹拌式のアーチングブレーカーを備えると共に、下段位置にはスクリュー式のアーチングブレーカーを備えたものが提案されている。そして、このホッパ装置では、上段の撹拌式のアーチングブレーカーにより貯蔵材料を撹拌して適度に流動性を与えつつ、下段のスクリュー式のアーチングブレーカーによりホッパ下端部のスクリューフィーダの材料移送方向とは逆方向に貯蔵材料を送り出し、ホッパ内の貯蔵材料がスクリューフィーダ出口側の一方に偏るのを抑えてホッパ容積効率が低下するのを防止するように図られている。
【特許文献1】特開2004−353953号公報
【特許文献2】特開2005−29202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ホッパ内での貯蔵材料のアーチングは、貯蔵材料がホッパ出口の内壁付近で滞留するのが原因であり、このホッパ内壁付近での貯蔵材料の滞留を減らせればアーチングを抑えることができる。そこで、本発明者らは、貯蔵材料をホッパの中央側へと集めるような送り出し機能を備えればホッパ内壁付近の貯蔵材料をスムーズに流下させることができ、アーチングをより効果的に抑えることができるのではないかと考えた。
【0006】
本発明は上記の点に鑑み、ホッパ内壁付近の貯蔵材料をスムーズに流下させることでアーチングを効果的に抑え、安定した払い出しを可能とする材料貯蔵ホッパのアーチングブレーカーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の材料貯蔵ホッパのアーチングブレーカーは、底部に材料供給用のスクリューフィーダを備えた材料貯蔵ホッパにおいて、前記スクリューフィーダの上位に攪拌軸を回転自在に軸支し、該攪拌軸の外周にはホッパ内の貯蔵材料を撹拌しながら攪拌軸の長手方向中央側へと送り出すようにそれぞれ所定の送り角度を設けた複数の送り羽根を周設すると共に、前記攪拌軸を所定速度にて回転させる駆動モータを備えたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載の材料貯蔵ホッパのアーチングブレーカーは、前記攪拌軸を手動操作により逆回転可能としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る請求項1記載の材料貯蔵ホッパのアーチングブレーカーによれば、底部に材料供給用のスクリューフィーダを備えた材料貯蔵ホッパにおいて、前記スクリューフィーダの上位に攪拌軸を回転自在に軸支し、該攪拌軸の外周にはホッパ内の貯蔵材料を撹拌しながら攪拌軸の長手方向中央側へと送り出すようにそれぞれ所定の送り角度を設けた複数の送り羽根を周設すると共に、前記攪拌軸を所定速度にて回転させる駆動モータを備えたので、攪拌軸の回転によって材料貯蔵ホッパ出口上位の貯蔵材料をホッパの中央側へと送り出してホッパ内壁付近の貯蔵材料をスムーズに流下させることができ、これによって貯蔵材料のアーチングを効果的に抑えることができてホッパ内の貯蔵材料を安定して払い出すことができる。
【0010】
また、本発明に係る請求項2記載の材料貯蔵ホッパのアーチングブレーカーによれば、前記攪拌軸を手動操作により逆回転可能としたので、万一アーチングが生じた場合でも、逆回転させることによってホッパ内に形成されたアーチングを崩壊させて解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る材料貯蔵ホッパのアーチングブレーカーにあっては、材料貯蔵ホッパ下端部のスクリューフィーダの上位に攪拌軸を回転自在に軸支すると共に、該攪拌軸の外周にはホッパ内に貯蔵した材料を撹拌しながら、かつ攪拌軸に沿って送り出しの可能な複数の送り羽根を螺旋状に配置して周設する。各送り羽根は、攪拌軸の略中央部分を境に材料の送り方向が逆転するようにそれぞれの送り角度を調整しており、攪拌軸を通常運転時の回転方向である正回転させた場合には、攪拌軸周囲の材料を攪拌軸の長手方向中央側、即ちホッパ内部中央側へと送り出させるようにしている。なお、ホッパ外部には前記攪拌軸を所定の速度で回転させる駆動モータを備えると共に、好ましくは手動操作により回転方向を正逆自在に切り替え可能としておく。
【0012】
そして、前記材料貯蔵ホッパに、例えば鋳物砂などのような流動性に乏しい材料を貯蔵すると、材料の性状によりホッパ底部付近では圧密が生じてアーチングを形成しようとする。このとき、駆動モータを駆動してアーチングブレーカーの攪拌軸を正回転させると、貯蔵材料は送り羽根によって撹拌されてほぐされながら攪拌軸中央側であるホッパ中央側へと強制的に送り出されていくが、これによってホッパ内壁付近の貯蔵材料がスムーズに流下するようになり、ホッパ内におけるアーチングの発生を効果的に抑えることが可能となり、その結果、ホッパ内の貯蔵材料をスクリューフィーダによって安定して払い出すことができる。
【0013】
なお、アーチングブレーカーを駆動していても万一アーチングが生じたときには、手動操作によって駆動モータを逆転させ、アーチングブレーカーの攪拌軸を逆回転させる。これによって、攪拌軸周囲に形成されたアーチングに対して送り羽根からそれまでとは逆方向から力が加わることになり、アーチングを極力崩壊させることができる。そして、アーチングの解消を確認した後には、再び手動操作によって駆動モータを正回転に戻し、アーチングブレーカーの攪拌軸を通常の正回転へと戻す。
【0014】
このように、貯蔵材料をほぐしながらホッパの中央側へと集めるような送り機構を備えてホッパ内壁付近の貯蔵材料をスムーズに流下させるようにしたので、ホッパ内でのアーチングの形成を効果的に抑えることができ、安定した貯蔵材料の払い出しを可能とする。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】
図中の1は、例えば鋳物砂を篩って砂粒状態へと戻してから一旦貯蔵し、必要に応じて順次払い出す篩付きの材料貯蔵ホッパであって、ホッパ本体2を架台3にて支持し、ホッパ本体2の上端部には開口した投入口4を有し、ホッパ本体2の下端部には貯留物を順次払い出すスクリューフィーダ5を配設している。
【0017】
また、ホッパ本体2の投入口4には、その開口部全面を覆うように比較的大きめの網目サイズ、本実施例においては50mm口径の網目サイズのグリズリ6を備えており、このグリズリ6によって鋳物砂中に混入している比較的大きな金属片などの異物や、解砕不十分な大きめの塊状物などをに取り除けるようにしている。更に、ホッパ本体2のグリズリ6の下位には後述する篩枠をスライド収納するためのガイドレール7を適宜配置している。
【0018】
8は前記ガイドレール7上に載置する篩枠であって、略方形の枠体9に篩網10が張設してあり、例えば、砂回収のときには5mm口径の網目サイズの篩網を使用する。この篩枠8は、メンテナンス時の着脱が容易なように、ホッパ本体2の上端開口面積を少なくとも1以上に分割した取り扱いやすい大きさとすると良く、図示例ではホッパ本体2の上端部開口サイズが2m×2m程度の大きさなので、4分割した1m×1m程度大きさの篩枠8を4個使用している。
【0019】
前記篩枠8の略四隅の下部には車輪11、好ましくは篩の振動を吸収するゴム製の車輪を回転自在に軸着すると共に、進退操作用の取っ手12を取り付けている。また、篩枠8の取っ手12を取り付けた側面側には篩枠8に振動を付与するバイブレータ13を固定している。
【0020】
また、篩枠8の前後両端部には防振用のゴム製の緩衝材14、14´を固着しており、篩枠8をガイドレール7に沿わせてホッパ本体2内にスライド収納させたときに、篩枠8の枠体9とホッパ本体2との当接部に緩衝材14、14´を介在させ、バイブレータ13からの振動がホッパ本体2にまで極力伝わらないようにしている。
【0021】
一方、ホッパ本体2の上端開口の略中央部には、前記ガイドレール7に沿ってスライド収納する篩枠8の前端部のゴム製緩衝材14を当接させる当板15を配設すると共に、ホッパ本体2にはワンタッチ操作で篩枠8を締結固定または解除する固定クランプ16を配設し、前記当板15に篩枠8前端部のゴム製緩衝材14を当接させつつ、篩枠8後端部のゴム製緩衝材14´を前記固定クランプ16でホッパ内方側へ押圧して押し潰すようにして篩枠8をホッパ本体2に固定するようにしている。
【0022】
ホッパ本体2の排出部の上位には、ホッパ本体2内に貯留した貯留物のアーチングを防止するアーチングブレーカー17を配設している。前記アーチングブレーカー17は、ホッパ本体2のスクリューフィーダ5上位の左右側壁面に備えた軸受18にて攪拌軸19を回動自在に軸支すると共に、該攪拌軸19の一端部に固着したスプロケット20と、その近傍に備えた駆動モータ21の駆動スプロケット22とをチェーン23にて巻回し、駆動モータ21の駆動により所定速度にて攪拌軸19を回転可能としている。なお、前記駆動モータ21は、手動操作により回転方向を正逆自在に切り替え可能としている。
【0023】
前記攪拌軸19の外周には複数のアーム24を適宜間隔で螺旋配置にて周設しており、攪拌軸19を回転させた際、ホッパ本体2内部に貯蔵した材料を撹拌しながら攪拌軸19に沿って送り出していく送り羽根25、26を、前記各固定アーム24にボルト27にてそれぞれ締結固定している。
【0024】
平板形状の前記送り羽根25は、図3及び図4に示すように、攪拌軸19の中間位置の広範囲に亘って取り付けており、攪拌軸19の略中央部分を境として材料の送り出し方向が逆になるようにそれぞれの送り羽根25の送り角度を調整している。そして、攪拌軸19を通常運転時に行う正回転(図4中の実線矢印方向)させた場合には、攪拌軸19周囲の材料を攪拌軸19の長手方向中央側へ、即ちホッパ本体2内部の中央側へと送り出し、ホッパ内壁付近の貯蔵材料がスムーズに流下するようにしてアーチングを形成することのないようにしている。また、攪拌軸19を逆回転(図4中の点線矢印方向)させた場合には、攪拌軸19周囲の材料を攪拌軸19の両端側へ、即ちホッパ本体2の内壁側へと送り出し、万一アーチングが形成されても容易に切り崩して解消できるようにしている。
【0025】
また、断面略V字形状の送り羽根26は、図3及び図4に示すように、攪拌軸19の両端位置に一枚ずつ取り付けており、攪拌軸19を正回転、或いは逆回転させた場合でも、その周囲の貯蔵材料を軸体19の長手方向中央側へ、即ちホッパ本体2内部の中央側へと送り出し、貯蔵材料をホッパ内壁に押し当ててアーチングを形成することのないようにしている。
【0026】
次に、上記材料貯蔵ホッパ1の取り扱いについて説明する。例えば、型ばらし後の鋳物砂を貯蔵させるときには、先ず、篩枠8のバイブレータ13を駆動させて篩枠8を振動させながら、型ばらし後の鋳物砂をホッパ本体2のグリズリ6上に払い出す。グリズリ6によって鋳物砂中に混入している比較的大きめの、例えば金属片などの異物や、解砕不十分な大きめの塊状物などは取り除かれていく。
【0027】
次いで、このグリズリ6を通過した鋳物砂は、その下段に位置する篩枠8の篩網10上に落下し、バイブレータ13による振動によって篩われて砂粒状態となってホッパ本体2内へと落下していき、再利用可能な状態となって回収される。このとき、バイブレータ13による篩枠8の振動は、篩枠8に固着したゴム製の緩衝材14、14´、及びゴム製の車輪11にてその大部分が吸収されてホッパ本体2への振動伝達は少ない。
【0028】
そして、ホッパ本体2内に貯蔵された鋳物砂は、その流動性の乏しさと圧密によってアーチングを形成しようとするが、駆動モータ21の駆動によりアーチングブレーカー17の攪拌軸19を正回転させると、攪拌軸19に周設した多数の送り羽根25、26によって攪拌軸19周囲の鋳物砂を撹拌してばらばらにほぐしながらホッパ本体2の中央側へと送り出し、これによってホッパ内壁付近の鋳物砂もスムーズに流下し、アーチングを形成することなく下位のスクリューフィーダ5より安定して払い出されていく。
【0029】
一方、鋳物砂の性状が影響するなどして、アーチングブレーカー17周囲に万一アーチングが生じた場合には、アーチングブレーカー17の駆動モータ21を手動にて逆転操作して攪拌軸19を逆回転させる。この攪拌軸19の逆回転によって攪拌軸19周囲に形成されたアーチングに対して送り羽根25、26から逆方向の力が加わることになり、アーチングが崩壊することとなる。そして、アーチングが解消されたことが確認されれば、駆動モータ21を正転に戻し、アーチングブレーカー17の攪拌軸19を通常の使用状態である正回転へと戻す。
【0030】
このように、材料貯蔵ホッパ1に貯蔵する貯蔵材料が、鋳物砂のように流動性に乏しくアーチングを生じやすいようなものであっても、アーチングブレーカー17の回転する攪拌軸19周囲に周設した多数の送り羽根25、26により、ホッパ本体2内部の貯蔵材料は強制的に撹拌されてばらばらにほぐされながらホッパ本体2中央側へと送り出されるため、ホッパ内壁付近の貯蔵材料もスムーズに流下し、その結果、アーチングの形成を効果的に抑えられて、貯蔵材料の安定した払い出しを可能とする。
【0031】
なお、本実施例においては、アーチングブレーカー17の攪拌軸19をスクリューフィーダ5に対して直交方向に備え付けているが、これに限定するものではなく、例えばスクリューフィーダ5と平行に備え付けるようにしても良い。
【0032】
また、本実施例においては、貯蔵材料として型ばらし後の鋳物砂を想定し、鋳物砂をホッパ本体2内へ貯蔵する際に異物除去や解砕処理が可能なように、ホッパ本体2の上端部にグリズリ6や篩網10などを備えた材料貯蔵ホッパ1に対してアーチングブレーカー17を備え付けたものを採用しているが、特にこれに限定するものではなく、篩い装置などを備えていないような普通の材料貯蔵ホッパに対しても好適に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る材料貯蔵ホッパのアーチングブレーカーを採用した材料貯蔵ホッパの一実施例を示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の一部切り欠き平面図である。
【図4】図2の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0034】
1…材料貯蔵ホッパ 2…ホッパ本体
5…スクリューフィーダ 17…アーチングブレーカー
19…攪拌軸 21…駆動モータ
24…アーム 25、26…送り羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に材料供給用のスクリューフィーダを備えた材料貯蔵ホッパにおいて、前記スクリューフィーダの上位に攪拌軸を回転自在に軸支し、該攪拌軸の外周にはホッパ内の貯蔵材料を撹拌しながら攪拌軸の長手方向中央側へと送り出すようにそれぞれ所定の送り角度を設けた複数の送り羽根を周設すると共に、前記攪拌軸を所定速度にて回転させる駆動モータを備えたことを特徴とする材料貯蔵ホッパのアーチングブレーカー。
【請求項2】
前記攪拌軸を手動操作により逆回転可能としたことを特徴とする請求項1記載の材料貯蔵ホッパのアーチングブレーカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−191185(P2007−191185A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10591(P2006−10591)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【Fターム(参考)】