説明

板ガラス及びその成形方法

【課題】 板ガラスの薄肉・大型化に伴う反りの発生の顕著化及び生産性向上の困難化の問題を回避して、高品質の板ガラスを提供する。
【解決手段】 両面が無研磨面である矩形の板ガラス1であって、厚みが0.7mm以下、短辺の長さが1000mm以上、長辺の長さが1200mm以上、反り率が0.03%以下である。板ガラス1の成形は、くさび状の断面形状を有する成形体3と引張りローラ4との間に、板状ガラスGの幅方向両端部の粘度が105.2〜108.6dPa・sの時にその両端部を挟持する冷却ローラ5を設け、又は、成形体3の下端部3bから冷却ローラ5の中心軸までの距離を30〜200mmにし、若しくは、冷却ローラ5の周速度Aと引張りローラ4の周速度Bとの比率B/Aを、3.5〜20にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器用基板、具体的には、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイやセンサの基板、固体撮像素子やレーザーダイオード等の半導体パッケージ用カバーガラスとして使用できる板ガラス、及びその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器産業の発達に伴って、各種電子機器、とりわけ液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ及びプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの基板、或いは固体撮像素子等のカバーガラスとして、肉厚0.3〜3.0mmの板ガラスが多量に用いられるに至っている。これらの板ガラスは、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法及びフロート法に代表される各種の方法で成形されているのが実情であるが、これらの中でも、特にオーバーフローダウンドロー法は、表面のうねりや粗さが小さく且つ表面品位に優れた板ガラスを得ることができる成形方法として知られている。
【0003】
詳述すれば、オーバーフローダウンドロー法は、くさび状の断面形状を有する成形体に連続的に供給される溶融ガラスを、成形体の頂部から両側面に沿って流下させることにより、成形体の下端部で融合させて一枚の板状形態にし、この形態になった板状ガラスを、引張りローラで挟持しつつ下方に引き抜くことによって、最終的に固化された板ガラスを成形する方法である。この場合、引張りローラは、板状ガラスの幅方向両端部のみを挟持するのが通例であるため、その僅かな挟持部位(有効面を逸脱する部位)を除外すれば、何ものにも触れられていない表面を持つ板ガラスを成形することが可能となり、これにより表面品位に優れた板ガラスが得られることになる。そのため、この成形方法によれば、コスト高の原因となる研磨工程が不要になるが、その一方で、液晶ディスプレイ等に用いられるような大型で薄肉の板ガラスを成形する場合には、反りが大きくなる傾向にある。
【0004】
このような傾向に則して、液晶ディスプレイ用のガラス基板の反りが大きいと、その上に薄膜電気回路を形成する際に、露光距離が設計通りにならなくなったり、液晶を挟む二枚の板ガラス(基板)間のギャップにムラが生じて表示性能が損なわれるという問題が生じる。特に、テレビ用の液晶ディスプレイの場合には、薄膜電気回路が複雑であり、また高い表示性能が要求されるため、基板に対する反りの要求が非常に厳しくなる。尚、板ガラスを成形した後、それを定盤上に載置した状態で熱処理を施すことによって、反りを改善することは可能であるが、熱処理工程が加わると、コスト高となるため好ましくない。
【0005】
このような背景から、オーバーフローダウンドロー法で反りの小さい板ガラスを成形する技術が各種提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平5−163032号公報
【特許文献2】特開平10−291826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の特許文献1に開示されたオーバーフローダウンドロー法による板ガラスの製造装置によれば、成形体の下方での融合直後の板状ガラスに表裏両側から接近する中空遮断板を設けることによって、板ガラスの反りや肉厚ムラを小さくする手段が採られている。
【0008】
しかしながら、このような手段では、成形体から下方に離れた板状ガラスが引張りローラの引張り力のみで引き抜かれるため、薄肉で大型の板ガラスを成形する場合には、板状ガラスの横方向(幅方向)と縦方向とに十分な張力が付与されず、反りが発生し易くなる。
【0009】
しかも、近年においては、板ガラスの薄肉・大型化に加えて、生産性が重視されていることから、上記のように成形体と引張りローラとの間に中空遮断板を介在させていても、極めて短時間で中空遮断板の間を板ガラスが通過してしまったのでは、中空遮断板を配置したことによる効果を十分に得ることができず、設備に無駄が生じる。
【0010】
一方、上記の特許文献2に開示されたオーバーフローダウンドロー法による板ガラスの製造装置によれば、成形体の下方に板状ガラスの両端部を挟持する一対の冷却ローラを設け、冷却ローラの周速度を引張りローラの周速度よりも小さくすることによって、板ガラスの反りを改善する手段が採られている。この手段によれば、冷却ローラと引張りローラとの相互作用によって、板状ガラスの横方向と縦方向とに張力を加えることが可能となり、反りの低減が期待できる。
【0011】
しかしながら、この特許文献2に開示の手段によるにしても、近年において、板ガラスの薄肉・大型化に伴って、反りの発生が顕著化した点と、生産性の向上を図ることが困難になった点とを勘案すれば、未だ解決すべき問題が残存している。
【0012】
すなわち、冷却ローラの配設位置及び配設状態や、冷却ローラの周速度と引張りローラの周速度との関係などは、板ガラスが薄肉且つ大型になった場合や、生産性を高めるべく成形体に供給する溶融ガラスを増量した場合に、従来と同様であると、高品質の板ガラスを得ることが困難である。
【0013】
例えば、特許文献2には、引張りローラの周速度を大きくすると板状ガラスと冷却ローラとの間でスリップが生じるという事項、詳しくは冷却ローラの周速度が引張りローラの周速度の30%よりも小さいとスリップが生じるという事項が記載されている。このようなスリップが生じると、板状ガラスの移動速度が不安定となって、横方向に収縮が生じ、或いは縦横方向に十分な張力が付与されず、反りが発生し易くなるという根本的な問題が生じる。しかし、この程度の両ローラの周速度の比率でスリップが生じていたのでは、近年における板ガラスの薄肉・大型化や生産性向上の要請に適切に応じることが困難である。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、板ガラスの薄肉・大型化に伴う反りの発生の顕著化及び生産性向上の困難化の問題を回避して、高品質の板ガラスを提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、既述の板状ガラスと冷却ローラとの間におけるスリップの発生要因及び生産性悪化の要因は、主として、板状ガラスの固化状態との関係などにおける冷却ローラの配設位置や配設状態が適切でなかったことによるものであることを見出すに至った。また、その冷却ローラの配設位置や配設状態によっては、特許文献2に記載のように冷却ローラの周速度が引張りローラの周速度の30%よりも小さい場合に、スリップが必ずしも発生するものではなく、生産性改善をも含めてより適切な両ローラの周速度の比率が存在することをも見出すに至った。
【0016】
詳述すると、従来は、(1)板状ガラスの冷却ローラによる挟持部位の粘度が高過ぎたこと、(2)成形体の下端から冷却ローラまでの距離が長過ぎたこと、(3)冷却ローラの周速度が引張りローラの周速度に比して相対的に高過ぎたこと、を骨子として、上記(1)〜(3)の要素である数値の具体的な範囲を見出すに至った。
【0017】
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、第1に、上記(1)に対応するものとして、くさび状の断面形状を有する成形体の頂部から両側面に沿って溶融ガラスを流下させることにより、前記成形体の下端部で融合して板状になった板状ガラスを、引張りローラで挟持しつつ下方に引き抜く板ガラスの成形方法において、成形体と引張りローラとの間に、板状ガラスの幅方向両端部を挟持して冷却するための冷却ローラを設け、板状ガラスの幅方向両端部の粘度が105.2〜108.6dPa・sの時に該両端部を冷却ローラが挟持することに特徴づけられる。第2に、上記(2)に対応するものとして、成形体の下端部から冷却ローラの中心軸までの距離を30〜200mmにすることに特徴づけられる。第3に、上記(3)に対応するものとして、冷却ローラの周速度Aと、引張りローラの周速度Bとの比率B/Aを、3.5〜20にすることに特徴づけられる。
【0018】
すなわち、本発明者は、厚みが0.7mm以下で且つ有効幅が1200mm以上の薄肉・大型の板ガラスをオーバーフローダウンドロー法で生産するに当たり、生産性の向上を配慮して引張りローラの周速度を大きくしながら、板状ガラスの幅方向の収縮を抑えて、反りの低減を図るためには、できるだけ高温状態(粘度の低い状態)の板状ガラスを、冷却ローラで挟持する必要があることを案出した。そして、高温状態の板状ガラスを冷却ローラで挟持する具体的手段として、板状ガラスの幅方向両端部の粘度が105.2〜108.6dPa・sの時に冷却ローラで挟持すれば、板状ガラスと冷却ローラとの間でスリップが生じず、得られる板ガラスの反り率が0.03%以下となり、この板ガラスが特に液晶ディスプレイ用基板として好適であることを見出した。この知見に基づいて完成したのが、上記(1)に対応する発明する。
【0019】
また、本発明者は、上記と同様に薄肉・大型の板ガラスを生産する過程において、生産性の向上を配慮しつつ、反りの低減を図るためには、成形体の下端部から冷却ローラまでの距離をできるだけ短くする必要があることを案出し、その具体的手段として、成形体の下端部から冷却ローラの中心軸までの距離を30〜200mmにすれば、上記と同様に、得られる板ガラスの反り率が0.03%以下となることを見出した。この知見に基づいて完成したのが、上記(2)に対応する発明である。
【0020】
また、本発明者は、上記と同様に薄肉・大型の板ガラスを生産する過程において、生産性の向上を配慮しつつ、反りの低減を図るためには、冷却ローラの周速度に比して引張りローラの周速度を大幅に高くする必要があることを案出し、その具体的手段として、冷却ローラの周速度Aと、引張りローラの周速度Bとの比率B/Aを、3.5〜20にすれば、上記と同様に、得られる板ガラスの反り率が0.03%以下となることを見出した。この知見に基づいて完成したのが、上記(3)に対応する発明である。
【0021】
そして、上記の各知見に基づいて完成された板ガラスとしての発明は、両面が無研磨面である矩形の板ガラスであって、厚みが0.7mm以下、短辺の長さが1000mm以上、長辺の長さが1200mm以上、反り率が0.03%以下であることを特徴とするものである。
【0022】
すなわち、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなる両面が無研磨面の板ガラスは、従来より液晶ディスプレイ用基板として公知となっているが、この従来のものは、厚みが0.7mm以下、短辺の長さが1000mm以上、長辺の長さが1200mm以上であっても、反り率は0.03%を超えていたことから、この点において本発明に係る板ガラスは、新規な板ガラスである。このように反り率が極めて小さい板ガラスを、液晶ディスプレイ用基板として使用すると、その基板上に薄膜電気回路を形成する際に、露光距離が設計通りにならなくなったり、液晶を挟む二枚の板ガラス(基板)間のギャップにムラが生じて表示性能が損なわれる等の問題を解消することができる。このような観点から、本発明に係る板ガラスは、液晶テレビ等のディスプレイ用基板として好適である。ここで、「反り率が0.03%以下」とは、理想平面(具体的には精密定盤の上面)に板ガラスを表面が上向きとなる状態で載置した場合に、長辺に沿う方向における理想平面と板ガラスの裏面との間の最大離反距離(反り量)を長辺の全長で除算して得られる第1の反り率と、短辺に沿う方向における理想平面と板ガラスの裏面との間の最大離反距離(反り量)を短辺の全長で除算して得られる第2の反り率と、理想平面に板ガラスを表面が下向きとなる状態で載置した場合に、長辺に沿う方向における理想平面と板ガラスの表面との間の最大離反距離(反り量)を長辺の全長で除算して得られる第3の反り率と、短辺に沿う方向における理想平面と板ガラスの表面との間の最大離反距離(反り量)を短辺の全長で除算して得られる第4の反り率とのうち、最も値の大きい反り率が0.03%以下であることを意味する。
【0023】
この板ガラスは、歪点が630℃以上、30〜380℃における熱膨張係数が28〜40×10-7/℃、密度が2.60g/cm3以下、液相温度における粘度が105.8dPa・s以上の特性を有するものとして得ることができ、また、質量%で、SiO2 55〜70%、Al23 12〜22%、B23 3〜15%、アルカリ土類金属酸化物 2〜20%を含有し、アルカリ金属酸化物 0.1%以下のものとして得ることもできる。
【0024】
一方、本発明に係る板ガラスの成形方法については、既に述べたところであるが、付言すると、上記(1)に対応する成形方法、つまり板状ガラスの幅方向両端部の粘度が105.2〜108.6dPa・sの時に該両端部を冷却ローラが挟持する成形方法によれば、以下に示すような利点を享受できる。
【0025】
すなわち、オーバーフローダウンドロー法で板ガラスを成形する場合、薄肉で大型の板ガラスを効率良く生産しようとすると、引張りローラの周速度を大きくする必要があり、その一方で、板状ガラスの幅方向両端部を冷却しようとすると、冷却ローラの周速度を小さくして、板状ガラスと冷却ローラとの接触時間を長くする必要がある。その場合、板状ガラスの幅方向両端部が冷却されて粘度が既に高くなっている時に、当該両端部を冷却ローラにより挟持した状態で引張りローラの周速度を大きくすると、板状ガラスと冷却ローラとの間でスリップが生じ、板状ガラスの移動速度が不安定となって反りが大きくなる。しかしながら、この成形方法では、板状ガラスの幅方向両端部が高温で未だ粘度が低い状態にある時、具体的には、当該両端部の粘度が108.6dPa・s以下の時に冷却ローラで挟持するため、引張りローラの周速度を大きくしても、板状ガラスと冷却ローラとの間におけるスリップの発生確率が極めて低くなる。その結果、板状ガラスの幅方向両端部を安定して冷却することができるため、幅方向の収縮が充分に抑制される。つまり、成形体の下端部から離れた板状ガラスは、下方に引張られながら徐々に板幅が収縮するが、この成形方法では、成形体から離れた直後で未だ軟化変形し易い状態にある板状ガラスの幅方向両端部を冷却ローラで挟持し、その移動速度を小さくすることができるため、幅方向の収縮を抑えることができる。そして、この状態で板状ガラスが下方に引張られ、横方向と縦方向とに張力が働いた状態で固化することになるため、薄肉・大型で且つ反りの小さい板ガラスを容易に成形することが可能になると共に、引張りローラの周速度を大きくしてもスリップが生じ難いため、生産性の向上を図ることも可能になる。この場合において、板状ガラスが軟らか過ぎる状態の時に冷却ローラで挟持したのでは、ガラスが冷却ローラに巻き付いたり、冷却ローラが劣化し易くなるため、板状ガラスの幅方向両端部の粘度が105.2dPa・s以上になってから冷却ローラで挟持する必要がある。尚、上記の粘度の下限値は105.7dPa・sであることがより好ましく、またその上限値は107.5dPa・sであることがより好ましく、加えて、上記の粘度の下限値は106.0dPa・sであることが更に好ましく、またその上限値は107.0dPa・sであることが更に好ましい。
【0026】
また、上記(2)に対応する成形方法、つまり成形体の下端部から冷却ローラの中心軸までの距離を30〜200mmにする成形方法によれば、以下に示すような利点を享受できる。
【0027】
すなわち、成形体の下端部から冷却ローラの中心軸までの距離が長いと、上記の場合と同様に、板状ガラスの幅方向両端部が冷却されて粘度が既に高くなっている時に当該両端部を冷却ローラにより挟持することになり、この状態で生産性を高めるべく引張りローラの周速度を大きくすると、板状ガラスと冷却ローラとの間でスリップが生じ、板状ガラスの移動速度が不安定となって反りが大きくなる。しかしながら、この成形方法では、板状ガラスの幅方向両端部が高温で未だ粘度が低い状態にある時、具体的には、成形体の下端部から下方への離間寸法が200mm以内の位置で、板状ガラスの幅方向両端部が冷却ローラにより挟持されるため、引張りローラの周速度を大きくしても、板状ガラスと冷却ローラとの間におけるスリップの発生確率が極めて低くなる。従って、この成形方法による場合にも、上記と同様の理由で、薄肉・大型で且つ反りの小さい板ガラスを容易に成形することが可能になると共に、引張りローラの周速度を大きくしてもスリップが生じ難いため、生産性の向上を図ることも可能になる。また、成形体の下端部から冷却ローラの中心軸までの離間寸法が短すぎる位置にあることにより板状ガラスが軟らか過ぎる時に冷却ローラで挟持したのでは、ガラスが冷却ローラに巻き付いたり等の上記と同様の問題が生じることから、成形体の下端部から冷却ローラの中心軸までの離間寸法は30mm以上としておく必要がある。尚、この離間寸法のより好ましい上限値は100mmである。
【0028】
加えて、上記(3)に対応する成形方法、つまり冷却ローラの周速度Aと、引張りローラの周速度Bとの比率B/Aを、3.5〜20にする成形方法によれば、以下に示すような利点を享受できる。
【0029】
すなわち、この場合においても既述のように、オーバーフローダウンドロー法で板ガラスを成形する場合、薄肉で大型の板ガラスを効率良く生産しようとすると、引張りローラの周速度を大きくする必要があるのに対して、板状ガラスの幅方向両端部を適切に冷却しようとすると、冷却ローラの周速度を小さくする必要がある。冷却ローラの周速度Aと引張りローラの周速度Bとの差が小さいと、換言すれば上記の比率B/Aが小さいと、引張りローラの周速度を大きくして生産性を高めるような条件にした場合、冷却ローラの周速度Aが大きくなるので、冷却ローラにより板状ガラスを適正に冷却することができず、板状ガラスの安定した移動速度を確保できるような条件とすることが困難になる。そのため、薄肉・大型の板ガラスを成形するに際して、生産性を高めた上で、反りを小さくできるような成形条件とすることは極めて困難となる。しかしながら、この成形方法では、冷却ローラの周速度Aと引張りローラの周速度Bとが適正に充分相違するような設定、具体的には上記の比率B/Aが3.5以上とされているので、薄肉・大型の板ガラスの生産性の向上を図りつつ、反りを小さくすることが可能となる。一方、冷却ローラの周速度Aと引張りローラの周速度Bとの差が不当に大きいと(上記の比率B/Aが不当に大きいと)、成形条件が不安定となり、所望の形状の板ガラスが安定して得られ難くなる。そこで、この成形方法では、上記の比率B/Aを20以下としている。尚、以上の事項を総合的に勘案すれば、上記の比率B/Aにおける下限は4であることがより好ましく、その上限は15であることがより好ましい。
【0030】
以上の成形方法において、成形体の側面部付近及び/又は頂部付近にヒータを設けてガラスを加熱することが好ましい。
【0031】
このようにすれば、成形体の頂部から側面部に沿って流下する溶融ガラスの粘度を調整できるため、上述の冷却ローラによる板状ガラスの挟持部位の粘度、成形体の下端部から冷却ローラまでの距離、冷却ローラの周速度と引張りローラの周速度との比率などを、適宜変更できることになり、成形条件の好都合な設定を容易に行うことが可能となる。
【0032】
また、上記の成形方法において、冷却ローラの下方における一箇所または下方における上下方向の複数箇所に補助冷却ローラを設けることが好ましい。
【0033】
すなわち、板状ガラスは、冷却ローラで挟持して冷却した後でも、その下方でさらに幅方向に収縮しようとするが、冷却ローラの下方に補助冷却ローラを設けておけば、その補助冷却ローラによっても板状ガラスの幅方向両端部が挟持されることになるため、冷却ローラを離れた後における板状ガラスの幅方向の収縮を抑えることができる。その結果、より有効幅の大きい板ガラスを得ることが可能となる。この場合、補助冷却ローラの周速度は、引張りローラの周速度の80%未満とすることが好ましいが、これは、補助冷却ローラの周速度が引張りローラの周速度の80%を超えると、板状ガラスに対する冷却作用が著しく低下して、幅方向の収縮を効率良く抑えることが困難となることに由来する。尚、補助冷却ローラの周速度は、引張りローラの周速度の70%未満とすることがより好ましい。そして、板ガラスの幅方向の収縮を抑える効果をより大きくするには、補助冷却ローラを上下方向のできるだけ多くの箇所に設けることが好ましいが、製造条件やコストを考慮すれば、補助冷却ローラは、上下方向の1〜4箇所に設けることが妥当である。そして、このように補助冷却ローラを設けた場合であっても、その上方に存する冷却ローラに関する既述の全ての事項が意味をなさなくなることはない。
【発明の効果】
【0034】
以上のように本発明によれば、液晶ディスプレイ用基板の上に薄膜電気回路を形成する際に、露光距離が設計通りにならなくなったり、液晶を挟む二枚の板ガラス(基板)間のギャップにムラが生じて表示性能が損なわれる等の問題を解消することが可能な薄肉で大型の板ガラスを提供することが可能となる。
【0035】
また、本発明によれば、オーバーフローダウンドロー法により、厚みが0.7mm以下、有効幅が1200mm以上(好ましくは1500mm以上、より好ましくは2000mm以上)の薄肉・大型の板ガラスを成形する場合であっても、生産性の向上を図ることが可能で且つ反りを小さくすることが可能な成形方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0037】
図1は、本発明の実施形態に係る板ガラスを誇張して示す概略断面図である。同図に示すように、この板ガラス1は、表面及び裏面の両面が無研磨面である矩形をなし、厚みtが0.7mm以下、短辺の長さL1が1000mm以上、長辺の長さ(L2)が1200mm以上、反り率が0.03%以下である。ここで、反り率とは、精密定盤の上面Jに板ガラス1を載置して、長辺に沿う方向における精密定盤の上面Jと板ガラス1の下面との間の最大離反距離(反り量)S1を長辺の全長L1で除算して得られる長辺側の反り率{(S1/L1)×100}と、短辺に沿う方向における精密定盤の上面Jと板ガラス1の下面との間の最大離反距離(反り量)S2を短辺の全長L2で除算して得られる短辺側の反り率{(S2/L2)×100}との両者を含む。そして、上述の「反り率が0.03%以下」とは、精密定盤の上面Jに板ガラス1を表面が上向きの状態で載置した場合における長辺側の反り率と短辺側の反り率、及び、精密定盤の上面Jに板ガラス1を表面が下向きの状態で載置した場合における長辺側の反り率と短辺側の反り率との計四つの反り率のうち、最も大きい値の反り率が、0.03%以下であることを意味する(下記の「0.02%以下」及び「0.01%以下」についても同様)。
【0038】
この場合、板ガラス1の反り率は、0.02%以下であることが好ましく、更には0.01%以下であることがより好ましい。また、短辺の長さL1及び長辺の長さL2は、何れも1500mm以上、更には2000mm以上であってもよい。更に、板ガラス1の厚みtは、0.65mm以下、更には0.60mm以下であってもよいが、厚みtが薄すぎると、強度が著しく低下して成形性が低下するため、この厚みtは、0.03mm以上、更には少なくとも0.1mm以上であることが好ましい。
【0039】
また、この板ガラス1は、歪点が630℃以上、30〜380℃における熱膨張係数が28〜40×10-7/℃、密度が2.60g/cm3以下、液相温度における粘度が105.8dPa・s以上であって、耐薬品性(耐バッファードフッ酸性や耐塩酸性)に優れている。このような特性を有する板ガラス1は、液晶ディスプレイ基板として用いる場合に特に好適である。この場合、液相温度における粘度が上記のように105.8dPa・s以上であれば、比較的低い温度で板状ガラスを成形しても、ガラス中に失透物が発生せず、成形性が向上するために好ましく、この事を勘案すれば、105.9dPa・s以上であることがより好ましい。
【0040】
更に、この板ガラス1の組成は、質量%で、SiO2 55〜70%、Al23 12〜22%、B23 3〜15%、アルカリ土類金属酸化物 2〜20%を含有し、アルカリ金属酸化物を実質的に含有していない(換言すれば、アルカリ金属酸化物は質量%で、0.1%以下である)。板ガラス1が、このような組成であると、特に液晶ディスプレイ用基板として好適であり、また、このような組成範囲内で、各構成成分の含有量を適宜組み合わせることにより、上述のような特性を備えた板ガラス1が得られる。
【0041】
上記のガラス組成範囲の限定理由は、以下に示す通りである。即ち、第1に、SiO2が少なくなり過ぎると、ガラスの耐薬品性が低下し易くなり、これとは逆に、多くなり過ぎると、ガラスの溶融性が悪化すると共に、ガラス中に失透異物(クリストバライト)が生じ易くなる。従って、SiO2の含有量は、50〜70%が妥当であり、好ましくは55〜68%である。第2に、Al23が少なくなり過ぎると、液相温度が上昇し、ガラス中に失透異物(クリストバライト)が生じ易くなると共に、ガラスの歪点が低下し、これとは逆に、多くなり過ぎると、ガラスの耐バッファードフッ酸性が低下すると共に、失透性が低下し、ガラス中にムライトや長石系の失透異物が発生し易くなる。従って、Al23の含有量は、10〜19%が妥当であり、好ましくは11〜18%である。第3に、B23は、融剤として働き、ガラスの高温粘性を下げ、溶融性を改善する成分であって、このB23が少なくなり過ぎると、融剤としての働きが不十分になると共に、ガラスの耐バッファードフッ酸性が低下し、これとは逆に、多くなり過ぎると、ガラスの歪点が低下し、耐熱性が悪化すると共に、耐酸性が悪化する。従って、B23の含有量は、5〜15%が妥当であり、好ましくは7〜14%である。第4に、アルカリ土類金属酸化物(MgO+CaO+SrO+BaO)が少なくなり過ぎると、ガラスの溶融性が悪化したり、液相温度が上昇し易くなり、これとは逆に、多くなり過ぎると、ガラスの密度が大きくなり易くなる。従って、アルカリ土類金属酸化物の含有量は、5〜20%が妥当であり、好ましくは7〜18%である。以上の成分の他に、溶融性、耐失透性、耐酸性の改善や熱膨張係数の調整を行うため、ZnO、P25、ZrO2、Y23、Nb23、La23、TiO2等の成分を、各々5%以下で含有させてもよく、また清澄剤であるAs23、Sb23、Cl、F、SO3等の成分を各々2%まで含有させてもよい。但し、ガラス中にアルカリ金属酸化物(Li2O、Na2O、K2O)を含有すると、これらの成分が、基板上に形成される半導体素子に拡散し、半導体素子に悪影響を与えるため、実質的に含有しないことが望まれる。従って、これらの成分の含有量は、0.1%以下に抑えるべきである。
【0042】
図2は、板ガラスの成形方法の実施状況を示す概略側面図、図3は、その概略正面図である。ここでは、板ガラスの成形方法の説明に先立ち、図2及び図3に基づいて、板ガラスの成形方法の実施に用いられる成型装置の構成を説明する。この成形装置2の基本的構成は、縦断面形状がくさび状をなし且つ頂部にオーバーフロー溝3aが形成された成形体3と、成形体3の頂部から溢れ出た溶融ガラスYを板状ガラスGとして引き抜く引張りローラ4と、成形体3の下端部3bから引張りローラ4に至るガラス成形経路の途中に配置された上側の冷却ローラ5及び下側の補助冷却ローラ6とを備えている。これらの各構成要素3、4、5、6は、耐火煉瓦からなる炉壁7により取り囲まれている。また、成形体3の側面3cの周辺、この実施形態では炉壁7の側壁部内面には、成形体3の側面3cを流下するガラス(溶融ガラス)を縦横方向にゾーン加熱することが可能な複数のヒータ8が成形体3の両側方にそれぞれ配設されている。
【0043】
引張りローラ4は、板状ガラスGの幅方向両端部のみを挟持するものであって、それぞれの端部に一対ずつ計四個を備えている。そして、板状ガラスGの表側に存する二個の引張りローラ4は、軸部材4aで連結されて一体回転可能とされると共に、その裏側に存する二個の引張りローラ4も軸部材4aで連結されて一体回転可能とされ、これらの引張りローラ4には、回転駆動力が付与されるようになっている。また、冷却ローラ5も、板状ガラスGの幅方向両端部のみを挟持するものであり、それぞれの端部に一対ずつ計四個を備えているが、板状ガラスGの表側に存する二個の冷却ローラ5は分離され、それらが独立して回転可能とされると共に、その裏側に存する二個の冷却ローラ5も分離され、それらが独立して回転可能とされている(補助冷却ローラ6も同様)。そして、冷却ローラ5は、回転駆動力が付与される駆動ローラとされているのに対して、補助冷却ローラ6は回転駆動力が付与されずに空転する非駆動ローラとされている。
【0044】
引張りローラ4、冷却ローラ5及び補助冷却ローラ6は、ステンレスまたは耐熱鋼もしくはセラミックス等で形成されている。更に、これらのローラ5、6は、内部が中空となっており、その中空部を通じて軸方向先端部付近まで冷媒が流通可能とされている。この場合、冷媒としては、気体や液体を使用することができる。
【0045】
そして、冷却ローラ5は、成形体3の頂部から両側面3cに沿って溶融ガラスYが流下して、成形体3の下端部3bで融合することにより、一枚の板状となった直後の板状ガラスGを挟持して冷却し得る位置に配設されている。詳述すると、この冷却ローラ5は、板状ガラスGの幅方向両端部における粘度が、105.2〜108.6dPa・sの時、より好ましくは105.7〜107.5dPa・s(更に好ましくは106.0〜107.0dPa・s)の時に、その両端部を挟持する位置に保持されている。そして、このような条件を満たすべく、成形体3の下端部3bから冷却ローラ5の中心軸までの距離aは、30〜200mm、より好ましくは30〜100mmに設定されている。この場合、冷却ローラ5の中心軸と補助冷却ローラ6の中心軸との距離bは、50〜300mm、より好ましくは100〜200mmに設定されている。
【0046】
また、冷却ローラ5の周速度と引張りローラ4の周速度との比は、1:3.5〜1:20、より好ましくは1:4〜1:15に設定され、補助冷却ローラ6の周速度は、冷却ローラ5の周速度以上の範囲内で、引張りローラ4の周速度の80%未満、より好ましくは70%未満となるように設定されている。
【0047】
以上のような構成を備えた成形装置2によれば、成形体3に供給されてその頂部から側面3cに沿って流下する溶融ガラスYは、ヒータ8により粘度を調整されつつ、成形体3の下端部3bで融合して一枚の板状となり、この板状ガラスGが引張りローラ4により挟持されて下方に引き抜かれていく。この引張りローラ4による引き抜きが行われる初期段階においては、冷却ローラ5が板状ガラスGの幅方向両端部に接触して、その接触部周辺を適度に冷却するが、板状ガラスGにおける冷却ローラ5との接触部の粘度は、既述のように適度に低いため、生産性を高めるべく引張りローラ4の周速度を大きくしても、板状ガラスGと冷却ローラ5との間でスリップは生じ難くなる。
【0048】
しかも、成形体3の下端部3bから冷却ローラ5の中心軸までの距離は、既述のように適度に短くされているため、板状ガラスGにおける冷却ローラ5との接触部の粘度を効果的に低くすることができる。更に、引張りローラ4の周速度は、冷却ローラ5の周速度に比して、既述のように適度に大きくされているので、板状ガラスGの移動阻害を阻止した上で、生産性を大幅に高めることが可能となる。
【0049】
このようにして、板状ガラスGが下方に引き抜かれていく途中においては、補助冷却ローラ6によっても板状ガラスGの幅方向両端部が挟持されて補助的に冷却が行われる。この場合、補助冷却ローラ6が仮に存在しないとしたならば、図3に鎖線(符号X)で示すように板状ガラスGが幅方向に収縮して、最終的に幅の広い板ガラスを得ることが出来なくなるが、この実施形態のように補助冷却ローラ6を配設しておけば、板状ガラスGの幅方向の収縮を抑えることができ、板ガラスの薄肉・大型化を図る上で有利となる。この事を勘案すれば、補助冷却ローラ6は、最上段の冷却ローラ5と最下段の引張りローラ4との間に、複数段(例えば2段から4段)に配設されていることが好ましい。
【実施例】
【0050】
本発明の実施例1として、図2及び図3に示す成形装置2と基本的構成が同一であって補助冷却ローラ6が設けられていない装置を用いて、質量%で、SiO2 60%、Al23 15%、B23 10%、CaO 6%、SrO 6%、BaO 2%、清澄剤 1%の組成を有する板ガラス(日本電気硝子株式会社製OA−10)を成形した。この装置における成形体3の幅方向の長さは2500mm、成形体3の下端部3bから冷却ローラ5の中心軸までの距離は100mmである。尚、冷却ローラ5の冷媒は空気である。この成形に際しては、ヒータ8によって、成形体3の両側面3cに沿って流下する溶融ガラスYや、成形体3の下端部3bと冷却ローラ5との間の板状ガラスGを加熱し、板状ガラスGの幅方向両端部の粘度が106.9dPa・sの時に、当該端部を冷却ローラ5で挟持するようにした。また、引張りローラ4の周速度を200cm/分、冷却ローラ5の周速度を40cm/分とした。
【0051】
このような条件の下で成形された板ガラスは、板幅が2100mm、幅方向中央部の厚みが0.7mmであって、厚みが0.7mm±0.05mmの範囲に収まる有効幅は、1800mm以上であった。この板ガラスを、短辺が1800mm、長辺が2200mmの寸法になるように切断加工し、その反り率を算出したところ、短辺側と長辺側との双方共に0.01%以下であった。また、この板ガラスは、歪点が660℃、30〜380℃における熱膨張係数が37×10-7/℃、密度が2.49g/cm3、液相温度における粘度が106dPa・s以上であり、耐バッファードフッ酸性と耐塩酸性にも優れていた。尚、歪点は、ASTM C336−71の方法に基づいて測定し、熱膨張係数は、押棒式熱膨張測定装置によって測定し、密度は、周知のアルキメデス法に基づいて測定した。板ガラスの液相温度における粘度は、先ず粒径300〜500μmに粉砕したガラスを白金ボートに充填し、温度勾配炉内に8時間保持し、顕微鏡を用いて内部に結晶が析出した最も高い温度を求め、その温度を液相温度とし、周知の白金球引き上げ法により、液相温度に対応する粘度を測定することによって求めた。耐バッファードフッ酸性は、ガラス表面を光学研磨した後、20℃に保持された38.7質量%フッ化アンモニウム、1.6質量%フッ酸からなるバッファードフッ酸溶液に30分間浸漬した後、その表面状態を観察することによって評価し、また耐塩酸性は、ガラス表面を光学研磨してから、80℃に保持された10質量%塩酸水溶液に24時間浸漬した後、その表面状態を観察することによって評価した。上記の板ガラスは、表面の変化が認められず、耐薬品性に優れていた。
【0052】
本発明の実施例2として、冷却ローラ5に加えて一段の補助冷却ローラ6を備えた成形装置、つまり図2及び図3に示すものと同様の構成要素を備えたものであって、上記の実施例1で使用した成形装置とは、補助冷却ローラ6を備えている点のみが相違している成形装置を使用して、上記の実施例1と同様の組成を有する板ガラスを成形した。この成形装置においては、冷却ローラ5の中心軸と補助冷却ローラ6の中心軸との距離を200mmに設定すると共に、板状ガラスGの幅方向両端部の粘度が106.9dPa・sの時に当該端部を冷却ローラ5で挟持するようにし、且つ、引張りローラ4の周速度を220cm/分、冷却ローラ5の周速度を33cm/分、補助冷却ローラ6の周速度を155cm/分とした。尚、冷却ローラ5及び補助冷却ローラ6の冷媒は、何れも空気である。
【0053】
このような条件の下で成形された板ガラスは、板幅が2250mm、幅方向中央部の厚みが0.63mmであって、厚みが0.63mm±0.05mmの範囲内に収まる有効幅は、1950mm以上であった。そして、この板ガラスを、短辺が1950mm、長辺が2200mmの寸法となるように切断加工し、その反り率を算出したところ、短辺側と長辺側との双方共に0.01%以下であった。
【0054】
本発明の実施例3として、上記の実施例2で使用したものと同様の構成要素を備えた成形装置を使用して、上記の実施例1と同様の組成を有する板ガラスを成形した。この実施例3で使用する成形装置が、上記の実施例2における成形装置と相違する点は、成形体3の幅方向長さが2000mmである点と、引張りローラ4の周速度を500cm/分、冷却ローラ5の周速度を40cm/分、補助冷却ローラ6の周速度を300cm/分とした点とである。
【0055】
このような条件の下で成形された板ガラスは、板幅が1600mm、幅方向中央部の厚みが0.2mmであって、厚みが0.2mm±0.05mmの範囲内に収まる有効幅は、1200mm以上であった。そして、この板ガラスを、短辺が1200mm、長辺が1400mmの寸法となるように切断加工し、その反り率を算出したところ、短辺側と長辺側との双方共に0.02%以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る板ガラスを誇張して示す概略断面図である。
【図2】前記板ガラスの成形に用いる成形装置の要部を示す概略側面図である。
【図3】前記板ガラスの成形に用いる成形装置の要部を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 板ガラス
2 成形装置
3 成形体
3b 成形体の下端部
3c 成形体の側面部
4 引張りローラ
5 冷却ローラ
6 補助冷却ローラ
8 ヒータ
Y 溶融ガラス
G 板状ガラス
a 成形体の下端部から冷却ローラの中心軸までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面が無研磨面である矩形の板ガラスであって、厚みが0.7mm以下、短辺の長さが1000mm以上、長辺の長さが1200mm以上、反り率が0.03%以下であることを特徴とする板ガラス。
【請求項2】
歪点が630℃以上、30〜380℃における熱膨張係数が28〜40×10-7/℃、密度が2.60g/cm3以下、液相温度における粘度が105.8dPa・s以上であることを特徴とする請求項1に記載の板ガラス。
【請求項3】
質量%で、SiO2 55〜70%、Al23 12〜22%、B23 3〜15%、アルカリ土類金属酸化物 2〜20%を含有し、アルカリ金属酸化物 0.1%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の板ガラス。
【請求項4】
ディスプレイ用基板として使用されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の板ガラス。
【請求項5】
前記ディスプレイ用基板が、液晶ディスプレイ用基板であることを特徴とする請求項4に記載の板ガラス。
【請求項6】
くさび状の断面形状を有する成形体の頂部から両側面に沿って溶融ガラスを流下させることにより、前記成形体の下端部で融合して板状になった板状ガラスを、引張りローラで挟持しつつ下方に引き抜く板ガラスの成形方法において、
前記成形体と引張りローラとの間に、前記板状ガラスの幅方向両端部を挟持して冷却するための冷却ローラを設け、前記板状ガラスの幅方向両端部の粘度が105.2〜108.6dPa・sの時に該両端部を前記冷却ローラが挟持することを特徴とする板ガラスの成形方法。
【請求項7】
くさび状の断面形状を有する成形体の頂部から両側面に沿って溶融ガラスを流下させることにより、前記成形体の下端部で融合して板状になった板状ガラスを、引張りローラで挟持しつつ下方に引き抜く板ガラスの成形方法において、
前記成形体と引張りローラとの間に、前記板状ガラスの幅方向両端部を挟持して冷却するための冷却ローラを設け、前記成形体の下端部から前記冷却ローラの中心軸までの距離を30〜200mmにすることを特徴とする板ガラスの成形方法。
【請求項8】
くさび状の断面形状を有する成形体の頂部から両側面に沿って溶融ガラスを流下させることにより、前記成形体の下端部で融合して板状になった板状ガラスを、引張りローラで挟持しつつ下方に引き抜く板ガラスの成形方法において、
前記成形体と引張りローラとの間に、前記板状ガラスの幅方向両端部を挟持して冷却するための冷却ローラを設け、該冷却ローラの周速度Aと、前記引張りローラの周速度Bとの比率B/Aを、3.5〜20にすることを特徴とする板ガラスの成形方法。
【請求項9】
前記成形体の側面部付近及び/又は頂部付近にヒータを設けてガラスを加熱することを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載の板ガラスの成形方法。
【請求項10】
前記冷却ローラの下方における一箇所または下方における上下方向の複数箇所に補助冷却ローラを設けたことを特徴とする請求項6〜9の何れかに記載の板ガラスの成形方法。
【請求項11】
前記引張りローラよりも下流側で固化してなる板ガラスの厚みが0.7mm以下で且つ有効幅が1200mm以上であることを特徴とする請求項6〜10の何れかに記載の板ガラスの成形方法。
【請求項12】
前記引張りローラよりも下流側で固化してなる板ガラスの反り率が0.03%以下であることを特徴とする請求項6〜11の何れかに記載の板ガラスの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−51027(P2007−51027A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237717(P2005−237717)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】