説明

板状部材の支持装置

【課題】半導体ウエハ等の板状部材を精度良く支持することができるようにすること。
【解決手段】支持装置10は、半導体ウエハWが載置される載置面19を有する載置手段11と、載置面19から離れる方向に突設されているとともに、載置面19に載置される半導体ウエハWの外方に位置するガイド手段12とを備えて構成されている。ガイド手段12は、案内部24を備え、この案内部24は、載置面19から離れるに従って平面視で半導体ウエハWの中心から離れる方向に延びるように傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部材の支持装置に係り、更に詳しくは、板状部材を精度良く位置決めして支持することができる板状部材の支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と称する場合がある)等の板状部材を支持する支持装置が広く利用されるに至っており、かかる支持装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の支持装置は、ウエハを支持可能な3本のアームを備え、このアームの先端側にウエハWが載置される受部がそれぞれ設けられている。各受部には、ウエハが載置される面から鉛直方向に起立する突起が設けられ、この突起を介してウエハの面方向の移動が規制されるようになっている。
【0003】
ここで、図2に示されるように、ウエハWは、その外縁の断面形状が円弧状に形成される。ウエハWは、裏面研削等の所定の処理を施すために、基材シートBSと、この基材シートBSの一方の面に設けられた接着剤層ADとを備えた接着シートSが回路面(同図中下面)側に貼付される。接着シートSは、前記所定の処理が行われる際に、研削粉や冷却水等が侵入することを防止するために、ウエハWの外縁の円弧状部に回り込むように貼付される。このような貼付は、ウエハWの外縁からはみ出す大きさの接着シートSを貼付した後、ウエハWにおける円弧部の接線方向に切断刃を傾けて当該接着シートSを切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−21956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、支持するウエハの位置の精度向上を図るべく突起とウエハとの間の隙間を小さくすると、支持装置に搬送されるウエハに位置的なずれが生じていた場合、ウエハが突起に乗り上げて傾いた状態になり易くなる等、却ってウエハ位置の精度が低下する、という不都合がある。
【0006】
ところで、図2に示されるように、ウエハWに貼付された接着シートSを切断すると、接着シートSの接着剤層ADがウエハWの外縁側に表出することとなる。このため、特許文献1の突起にあっては、アームの幅に対応する領域でウエハW外縁に線状に接触するので、突起と接着剤層ADとが接着し易くなり、支持装置からウエハWを搬出できなくなったり、搬出するときにウエハWを破損させてしまう、という不都合を生じる。
【0007】
また、前記搬送装置においてウエハを挟み込むチャックに接着剤層ADの接着剤が付着し、ひいては、チャックとウエハWとが接着した状態になる場合がある。これにより、ウエハWを搬送して載置する際に、ウエハWをチャックから切り離すことができず、搬送先のウエハWの載置位置がずれてしまったり、チャックとウエハWとが接着したまま搬送装置が次の動作に移行し、ウエハWが予期しない位置に落下して破損してしまったりする、という不都合を招来する。
【0008】
[発明の目的]
本発明の目的は、板状部材を精度良く支持することができる板状部材の支持装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、板状部材に貼付された接着シートの接着剤がガイド手段に付着することを抑制することができる板状部材の支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、基材シートの一方の面に接着剤層が積層された接着シートが貼付された板状部材の支持装置であって、
前記接着シートは、前記板状部材の外縁に達する位置まで貼付され、
前記板状部材が載置される載置面を有する載置手段と、当該載置面に載置される板状部材の外方に位置するとともに、前記載置面から離れる方向に突設したガイド手段とを備え、
前記ガイド手段は、前記載置面から離れるに従って平面視で板状部材の中心から離れる方向に延びる案内部を備える、という構成を採っている。
【0010】
本発明において、前記ガイド手段は、平面視で載置面に載置される板状部材の中心方向に膨出する凸状部を備えた形状に設けられ、この凸状部は板状部材の外縁側に点接触可能に設けられる、という構成を採ってもよい。
【0011】
また、前記ガイド手段の先端は、前記板状部材を搬送する搬送装置が板状部材を支持及びその支持を解除するときに、当該板状部材より高い位置に設定される、という構成も好ましくは採用される。
【0012】
更に、前記載置面は、前記板状部材の外縁に隣接する所定幅領域だけに当接可能に設けられる、という構成を採ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、案内部が前述した方向に延びるので、ガイド手段の上方では案内部と板状部材外縁との隙間を大きく設定でき、板状部材が搬送されてくる位置に多少のずれが生じたとしても、ガイド手段の内側に板状部材を容易に入り込ませることが可能となる。しかも、ガイド手段の下方における案内部と板状部材外縁との隙間が小さくなるように設定したり殆どなくしたりすることにより、案内部の上方から搬入された板状部材を載置面上の所定の位置に案内し、当該板状部材を精度良く位置決めして支持することが可能となる。
【0014】
また、板状部材の外縁側に点接触可能な凸状部を有するので、当該外縁側とガイド手段との接触領域をなるべく小さくして、板状部材とガイド手段とが接着することを防止することができる。これにより、板状部材の搬出時に、接着に起因する板状部材の損傷を回避することが可能となる。
【0015】
更に、ガイド手段の高さが前述のように設定されるので、仮に、搬送装置のチャックと板状部材とが接着していても、搬入時のチャックの移動に伴って板状部材がガイド手段の外側に移動したり、板状部材がガイド手段に乗り上げて傾いた状態となったりすることを確実に防止することが可能となる。これにより、搬入時に載置面に載置される予定の板状部材がチャックと接着したままになることを回避でき、当該板状部材が破損することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る支持装置の概略平面図。
【図2】前記支持装置の部分概略正面図。
【図3】変形例に係る支持装置の概略平面図。
【図4】図3の支持装置の部分概略正面図。
【図5】他の変形例に係るガイド手段の概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書において、特に明示しない限り、「上」、「下」は、図2を基準として用いる。
【0018】
図1及び図2において、支持装置10は、板状部材としてのウエハWが載置される載置手段11と、この載置手段11に載置されたウエハWの周方向約120°間隔毎に3体設けられたガイド手段12とを備えて構成されている。
【0019】
前記ウエハWは、平面視略円形をなし、図2中上面W1が回路面とされ、同図中下面W2の外縁側にリング状の凸部W3を有する形状に設けられている。ウエハWの外縁形状は、径方向に断面視したときに円弧状に形成されている。ウエハWの上面W1には、前述と同様の基材シートBS及び接着剤層ADを含む接着シートSが貼付されている。この接着シートSの貼付及びその後の切断も前述のように行われ、接着シートSがウエハWの外縁に達する位置まで貼付されて接着剤層ADがウエハWの外縁側に表出している。
【0020】
前記載置手段11は、ベース15と、このベース15上に設けられて平面視でウエハWと略同一サイズの円形に形成されるとともに、上方を開放する円筒容器状のテーブル16と、このテーブル16に設けられる吸着離脱手段17とを備えている。テーブル16の上端面は、ウエハWが載置される載置面19とされ、この載置面19は、円形の閉ループ状に形成されてウエハWの外縁に隣接する所定幅領域だけに当接して支持可能となっている。
【0021】
前記吸着離脱手段17は、載置面19上であってテーブル16の周方向所定間隔毎に形成された孔20と、これらの孔20からテーブル11内を延びる通路21と、この通路21に接続される図示しない減圧手段としての減圧ポンプ及び加圧手段としての加圧ポンプとを備えている。吸着離脱手段17は、図示しない切替弁を介して減圧ポンプの減圧力を通路21及び孔20を介して載置面19に接するウエハWに付与することで、当該ウエハWを吸着支持可能に設けられ、同様に加圧ポンプで加圧された気体をウエハWに付与することで、当該ウエハWを載置面19から浮上させることが可能に設けられている。
【0022】
前記各ガイド手段12は、テーブル16の外周面にそれぞれ隣接するよう設けられ、載置面19に載置されるウエハWの外方にそれぞれ位置するとともに、ベース15上から立設して載置面19から離れる方向すなわち上方向にそれぞれ突設している。各ガイド手段12は、テーブル16側の端部に案内部24をそれぞれ備え、当該案内部24は、上方に向かうに従って平面視でウエハWの中心から離れる方向に延びるように傾斜している。各ガイド手段12の案内部24下端では、載置面19上に載置されたウエハWの外縁3箇所位置に接して当該ウエハWの面方向の移動が規制される。一方、各ガイド手段12の案内部24上端側では、ウエハW外縁との間に隙間を設けることができ、ウエハWが多少の位置ずれを起こして搬送されてきたとしても、各ガイド手段12の間にウエハWを搬送し得るようになっている。案内部24は、平面視で、載置面19上のウエハW中心方向に円弧状に膨出する凸状部25を備えた形状に設けられ、これにより、凸状部25がウエハWの外縁側に点接触可能となる。ここで、ガイド手段12の先端(上端)は、後述する搬送装置がウエハWを支持及び当該支持を解除するときに、ウエハWの上面W1より高い位置に設定されている。
【0023】
支持装置10へのウエハWの搬送は、図1及び図2中二点鎖線で示される搬送装置Bを用いて行われる。搬送装置Bは、二股状に分岐したアーム部材B1と、このアーム部材B1の下面側に設けられ、同図中左右方向に移動可能に設けられたチャックB2とを備えている。アーム部材B1は、図示しない多関節ロボットのアーム等により支持される。チャックB2は、ウエハWの外縁側に対応する位置に設けられ、当該ウエハWを図1中左右方向から挟み込んでウエハWを把持可能に設けられている。
【0024】
次に、本実施形態におけるウエハWの支持方法について説明する。
【0025】
図示しない多関節ロボットのアーム等の作動によりアーム部材B1をテーブル16の上方に移動させ、図2に示されるように、チャックB2で把持されたウエハWを各ガイド手段12の内側に配置させる。このとき、平面視でウエハWと載置面19との位置が大まかに一致するようにし、また、図2に示されるように、ガイド手段12上端よりウエハW上面W1が低くなり、ウエハWの凸部W3下面と載置面19との間に隙間が空いた状態とする。次いで、図示しない切替弁を介して加圧ポンプで加圧された気体をウエハWに付与する。その後、チャックB2によるウエハWの支持を解除させると、自重によりウエハWが落下しようとするが、気体の吹き付けによってウエハWが上方に付勢され、ウエハWと載置面19との間に隙間が生じるように、それらを離脱した状態が保たれる。
【0026】
その後、図示しない電空レギュレータ等の緩衝手段を作動し孔20から吹き付ける気体の量を次第に少なくすることにより、ウエハWをゆっくりと下降させる。このとき、各ガイド手段12の案内部24にウエハW外縁が点接触して、当該ウエハWがテーブル16上から脱落することなく、傾斜する案内部24によりウエハWの下降が案内される。そして、載置面19上にウエハWが接触して載置され、この状態で、各ガイド手段12の下端側でウエハWが面方向にずれないように位置決めされる。その後、図示しない切替弁を介して減圧ポンプの減圧力を孔20を介してウエハWに付与することにより、載置面19上でウエハWの外縁側が吸着支持される。
【0027】
接着シートSの剥離等の工程を終えた後、テーブル16上のウエハWを搬出する場合、吸着を解除し、孔20から気体をウエハWに吹き付けて載置面19から離脱させた後、搬送装置BのチャックB2によりウエハWを把持して後工程に搬送される。ウエハWの載置面19からの離脱時も、ウエハWの外方に各ガイド手段12が位置するので、当該ガイド手段12によりウエハWがテーブル16上から脱落することを防止できる。また、案内部24が傾斜しているので、ウエハWがガイド部材12に接触しないように搬出可能となる。
【0028】
従って、このような実施形態によれば、載置面19上にウエハWを載置するときに、案内部24上で搬入されたウエハWを滑り落として載置面19に向かって案内でき、且つ、案内部24によって載置面19に載置されたウエハWの面方向の移動を規制することが可能となる。これにより、搬送装置BによるウエハWの搬送されてくる位置が多少ずれていたとしても、載置面19上にウエハWを精度良く位置決めして支持することができる。また、凸状部25によってウエハW外縁側とガイド手段12とが点接触するので、ガイド手段12とウエハWとが接着した状態となることを抑制でき、それらが接着してウエハWが搬出不能となることを回避することができる。更に、チャックB2によるウエハWの支持を解除するときに、ガイド手段12上端よりウエハW上面W1が低くなるので、チャックB2とウエハW外縁とが接着しても、ガイド手段12によって、チャックB2の移動方向にウエハWが移動することを規制して、その接着を解除することが可能となる。
【0029】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0030】
前記載置手段11は、種々の設計変更が可能であり、例えば、図3及び図4に示される構成としてもよい。同図の載置手段30は、平面視三叉状のベース31と、ガイド手段12の上面に載置面32を形成する支持部33とを備えている。ベース31の平面視中央部には駆動機器としての回転モータ35が設けられている。載置面32には、接着シートSを下向きとしてウエハWが載置される。ウエハWの外縁側には、カメラからなる検出手段36が設けられ、回転モータ35の作動によるウエハWの回転中に、ウエハWの外縁を撮像することで、Vノッチ等の位置を検出可能となっている。従って、検出手段36の結果に基づき回転モータ35の作動を制御することで、ウエハWのアライメントが行えるようになる。
【0031】
更に、前記凸状部25は、ウエハWの外縁側と点接触可能な限りにおいて、図5に示されるように、ウエハWに向かって尖った形状に膨出するように形成してもよい。
【0032】
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【0033】
更に、本発明において、板状部材は、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他の被着体も対象とすることができ、半導体ウエハは、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 搬送装置
11 載置手段
12 ガイド手段
19 載置面
24 案内部
25 凸状部
AD 接着剤層
BS 基材シート
S 接着シート
W 半導体ウエハ(板状部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面に接着剤層が積層された接着シートが貼付された板状部材の支持装置であって、
前記接着シートは、前記板状部材の外縁に達する位置まで貼付され、
前記板状部材が載置される載置面を有する載置手段と、当該載置面に載置される板状部材の外方に位置するとともに、前記載置面から離れる方向に突設したガイド手段とを備え、
前記ガイド手段は、前記載置面から離れるに従って平面視で板状部材の中心から離れる方向に延びる案内部を備えていることを特徴とする板状部材の支持装置。
【請求項2】
前記ガイド手段は、平面視で載置面に載置される板状部材の中心方向に膨出する凸状部を備えた形状に設けられ、この凸状部は板状部材の外縁側に点接触可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の板状部材の支持装置。
【請求項3】
前記ガイド手段の先端は、前記板状部材を搬送する搬送装置が板状部材を支持及びその支持を解除するときに、当該板状部材より高い位置に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の板状部材の支持装置。
【請求項4】
前記載置面は、前記板状部材の外縁に隣接する所定幅領域だけに当接可能に設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の板状部材の支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−156418(P2012−156418A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15988(P2011−15988)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】