説明

枕木の締結装置

【課題】列車の通過に起因する振動等が作用しても、橋梁等の構造物に対して枕木が緩むことがないような枕木の締結装置を提供することを目的とする。
【解決手段】鉄道レール10に沿って長手方向に配設されている橋梁B等の構造物4上に直交するよう配置される橋枕木1等の枕木の締結装置であり、この締結装置は、この橋枕木1に固定され前記構造物4の頂面4Aに当接する押圧板部2Aを備えた取付部材2と、この取付部材2の押圧板部2Aとその下方の構造物4とをスプリング力により挟持するクリップ状の挟持具7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、鉄道レールの長手方向に沿って延設されている構造物上に該構造物に直交するよう配置される枕木を、該構造物側に締結する枕木の締結装置に関し、特に前記構造物が橋梁の構造物であり前記枕木が橋枕木である場合に好適な枕木の締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道レールの長手方向に沿って延設されている構造物、例えば、河川上等に設けられている橋梁の構造物に、該構造物上に直交するようその上方に配設される枕木(橋梁に配設される枕木は特に「橋枕木」と呼ばれる)を締結する従来の締結装置は、一端がフック状に形成された特殊なボルトとこのボルトに螺合されるナットでもって、前記枕木を構造物に締結するような構成が採用されていた。具体的には、例えば、構造物が橋梁の構造物であり枕木が橋枕木である場合には、前記ボルトのフック状の部分を橋梁の構造物に係止するとともに、該ボルトの基端側を橋枕木に挿通しその基端部にナットを螺合させることによって、橋枕木を橋梁の構造物側に固定していた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−49620号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記ボルトとナットの螺合は、橋梁を通過する列車による振動に起因して、所定時間(期間)経過するとこれらボルトとナットの螺合が緩むことが考えられる。特に、質量の大きいボルトのフック状の部分が下方に位置しているため、振動による緩みが生じ易い。特に、橋梁の固有振動数と列車が通過するとき生じる振動数とがマッチングするような場合には、ナットの緩みが顕著になることもある。
このため、保線員は定期的に前記ボルトに螺合されているナットの緩みを点検し、必要に応じてナットの締め増しをおこなっているのが現状である。また、条件によっては、ナットに係止ピン等を装着して、緩み止めの対策をおこなうとともに、定期的に、新しい係止ピンと取り替える必要があった。
しかし、前記締結装置は、各橋枕木に少なくとも2箇所設けられており、このため、橋梁の全長では極めて数が多く、退避場所が限られた且つ作業し難い橋梁上と言うこともあって、保線員の点検、保守作業は、多大な時間と労力を伴う極めて大変な作業となっている。また、構造物が橋梁の構造物でないような場合にも、条件によっては、概ね同じようなことが考えられる。
【0004】
本願発明は、このような現況に鑑みおこなわれたもので、列車の通過に起因する振動等が作用しても、橋梁等の構造物に対して枕木が緩むことがないような枕木の締結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる枕木の締結装置は、鉄道レールに沿って長手方向に配設されている構造物上に、該構造物に直交するよう配置される枕木を該構造物側と締結する枕木の締結装置であって、
この締結装置が、前記構造物の頂面上に配設される押圧板部を備えた取付部材と、この取付部材の押圧板部とその下方の構造物とをスプリング力により挟持する挟持具とを備えていることを特徴とする。
【0006】
前述のように構成された本発明によれば、枕木が取付部材を介して、スプリング力で挟持する前記挟持具によって、橋梁等の構造物に対して挟持されているため、振動が作用しても、スプリング力によってその振動が吸収され、この結果、振動下においても長期間安定して、枕木を構造物上に固定しておくことができる。
【0007】
また、前記枕木の締結装置において、前記取付部材が、前記枕木の側面に固定される枕木固定部をさらに有し、該枕木固定部と前記押圧板部とが交角をなすアングル鋼状の部材によってこの取付部材が構成されていると、簡単な構成により、前記枕木に対してこの取付部材の枕木固定部を確実に固定することができ、また、この取付部材の押圧板部を前記構造物に対して挟持具を介して固定することが可能となる。
【0008】
また、前記枕木の締結装置において、前記挟持具が、側面視において概略の形態がC型チャンネル鋼状のクリップ状の形態を有するとともに、該C型の一方の先端に前記構造物上の前記押圧板部と当接する第1の当接部と、該C型のもう一方の先端に該構造物の下面と当接する第2の当接部とを有し、前記第1の当接部と第2の当接部とが狭まる方向に前記スプリング力が作用するよう構成されていると、前記構造物上の押圧板部に前記挟持具の第1の当接部が当接し且つ前記構造物の下面に前記挟持具の第2の当接部が当接した状態で、該挟持具が構造物と取付部材とを挟持することが可能となる。従って、シンプルな且つ振動に対しても緩むことなく挟持するような、枕木の締結装置を実現できる。
【0009】
また、前記枕木の締結装置において、前記取付部材の押圧板部の表面に、前記挟持具の第1の当接部が係止されるための凹部が形成されていると、第1の当接部が押圧板部の凹部に確実に位置した状態を維持することができる。
【0010】
また、前記枕木の締結装置において、前記取付部材が前記枕木の両側方に一対配置され、これら一対の取付部材とその間の枕木とを貫通する取付ボルトと、該取付ボルトに螺合するナットにより、該取付部材と枕木とが相互に固定されていると、この取付ボルトとナットにより枕木に一体に取着された取付部材と、挟持具とを介して、枕木を橋梁等の構造物に対して確実に締結できる構成を実現できる。
【発明の効果】
【0011】
しかして、本発明にかかる枕木の締結装置によれば、列車の通過等に起因する振動等が繰り返し作用しても、橋梁等の構造物に対して枕木が緩むことがない。従って、定期的に増し締め等する必要が無くなるため、保守が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかる枕木の締結装置を、枕木が橋枕木であり構造物が橋梁の構造物である場合を例に挙げて、その実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明の一実施形態にかかる橋枕木の締結装置の全体の構成を示す斜視図、図2は図1に示す橋枕木の締結装置の側面図、図3は図2のIII −III 矢視図である。
【0013】
図1〜図3において、1は全体の形状が概略四角柱(直方体)状の形態を有する橋枕木で、この橋枕木1は、橋梁Bの構造物4上にその長手方向に直交する状態で配置されている。そして、前記構造物4は、鉄道レール10(図1,図2参照)の長手方向(図1の矢印Lの方向参照)に沿って延設されている。つまり、前記構造物4の長手方向は、前記鉄道レール10の長手方向と一致している。
【0014】
そして、前記橋枕木1の両端部の両側面には、取付部材2が一対、取付ボルト8とナット9を介してそれぞれ一体に取着されている。この取付部材2は、本実施形態の場合、金属製(鋼製)の板材からなる押圧板部2Aと、同じく板材からなり橋枕木1の側面に取着される枕木固定部2Bとが相互に直交するように各端で接合された、アングル鋼状の形態を有する。この押圧板部2Aと枕木固定部2Bとは、溶接により一体に結合(接合)されることによってアングル鋼状の形態になっていてもよく、あるいは一枚の板材の中間部をプレスにより屈曲することによってアングル鋼状の形態になっていてもよい。さらには、押圧板部2Aと枕木固定部2Bが、所望の寸法を有するアングル鋼材そのものによって構成されていてもよい。
そして、前記取付部材2の枕木固定部2Bの中央には、上下方向に延びる長穴2aが穿設されている。また、前記橋枕木1の前記長穴2aに対応する箇所には、側面視が円形の横方向(前記鉄道レール10の長手方向に一致する方向)に延びる貫通穴状の取付穴1c(図3参照)が形成されている。
【0015】
また、前記橋枕木1は、橋梁Bの該橋枕木1を支持する構造物(この実施例では、H型状の鋼材からなる構造物)4の頂面(上面)4Aに、リベット調整板5と床板3を介して、載置されている。
【0016】
そして、前記リベット調整板5は、図2に図示するように、前記構造物4の頂面4Aから上方に突出しているリベットRのかしめ部分R1を、穿設した収納穴5dに収容し、上面がフラットな状態になるように、つまり、該リベット調整板5の上面がフラットになるように配置されている。なお、前記リベットRは、橋梁Bの各構造物やそれに取着されている部材等を一体に接合するために使用されているものである。
【0017】
そして、図1〜図3に図示するように、前記取付部材2の頂面当接部2Aと、前記リベット調整板5、及び構造物4の頂面4Aとなる上面を備えた該構造物4のフランジ部4Fは、後述する挟持具7で、一体に挟着される。
つまり、この挟持具7は、この実施形態では、ばね鋼を、全体の概略の形態がC型チャンネル鋼状のクリップ状に屈曲形成したもので構成され、このC型チャンネル鋼状の開口部分7wが所定寸法から拡げられると閉まり側に付勢されるよう構成されている。この所定寸法は、前記フランジ部4Fの厚さとリベット調整板5の厚さと前記頂面当接部2Aの厚さを加算した寸法より小さい寸法に構成されている。前記挟持具7の形態としては、スプリング力によって挟持するものであれば、C型チャンネル鋼状以外のクリップ状の形態であってもよく、あるいはその他の形態のものであってもよい。
また、図1あるいは図2に図示するように、この挟持具7のC型の両方の先端部(開口部)には、互いに離間する側に所定角度拡がる方向に湾曲したリップ部分(第1の当接部、第2の当接部に相当)7aが上下に対向して形成されている。この実施形態では、上方に位置するリップ部分7aが、請求項で言う第1の当接部を構成し、下方に位置するリップ部分7aが、請求項で言う第2の当接部を構成している。
【0018】
そして、前述のように構成された本実施形態にかかる橋枕木1の締結装置は、以下のように締結され、以下のような作用効果を奏する。つまり、
まず、図3に図示するように、橋枕木1の両端部の両側面1Sの側方に、前記取付部材2を、該取付部材2の枕木固定部2Bが一対対向するような状態で配置し、一側方の前記取付部材2の長穴2a(図2参照)から取付ボルト8を橋枕木1の取付穴1cを経てもう他方の取付部材2の長穴2aに貫通させる。そして、前記取付ボルト8の先端に前記ナット9を螺着する。この取付ボルト8の貫通作業において、前記取付穴1cが前記各長穴2aと上下方向の位置が多少ずれていた場合にも、前記長穴2aにより、無理なく貫通させることが可能となる。なお、かかる場合には、前記ナット9側に平ワッシャとスプリングワッシャとを介装してもよい。
【0019】
そして、図1〜図3に図示するように、このように両側方に取付部材2を一体に取着した橋枕木1を、該取付部材2の側端が、橋梁Bの構造物4及びリベット調整板5の端面とが一致するような状態、あるいは略一致するような状態に配置する。かかる状態において、前記挟持具7のC型の開口部分7wの上端が、前記取付部材2の押圧板部2Aの上端と略一致し、且つ、該開口部分7wの下端が、構造物4のフランジ部4Fの下端に略一致した状態で、この挟持具7の該C型の開口部分7wが、該押圧板部2Aとフランジ部4Fの奥方に移動するように、圧入する。かかる圧入の際に、前記C型の開口部分7wは拡がり勝手に弾性変形し、該挟持具7に、前記取付部材2と構造物4を挟持する方向のスプリング力が発生する。このため、圧入完了後は、図1〜図3に図示するように、この挟持具7のスプリング力により、前記取付部材2と構造物4は一体に締結されることになる。
【0020】
そして、本締結装置によれば、このように挟持具7のスプリング力により前記取付部材2と構造物4が挟持されるため、列車が前記橋枕木1上に配設される鉄道レール10(図1,図2参照)上を通過する際に発生する振動によっても、締結装置による締結が緩むようなことはない。
(実施形態2)
また、図4に図示するように、前記挟持具7のリップ部分7aが当接する前記取付部材12の押圧板部12Aの該当箇所に、該リップ部分7aの形状に合わせた凹部12dを設けておくと、あるいは図示しないが矩形状の凹部を設けておくと、前記振動に対して挟持箇所がさらに移動することのない、より確実な挟持状態を得ることが可能となる。なお、図4において、4Fは構造物4のフランジ部、5はリベット調整板を示す。
(実施形態3)
また、図1〜図3に示す実施形態に代えて、図5に図示するように、前記取付部材22の長さを、前記構造物4やリベット調整板5の幅寸法に合わせ、該取付部材22の押圧板部22Aの両端部を前記挟持具7で、該構造物4やリベット調整板5の上下両側から、それぞれ一対状に挟持するような構成にすると、より確実に挟持できる構成を得ることができる。かかる構成は、振動条件がより厳しい箇所に採用すると、好まし構成となる。なお、図5において、1は橋枕木、8はボルト、10は鉄道レールである。
【0021】
ところで、本発明は、前述した実施形態に限定されるものでなく、当業者が自明の範囲において、適宜変更した形態で実施することができることを言うまでもない。
【0022】
なお、前記実施形態は、構造物が橋梁の一部をなす鉄道レールに沿って延設された構造物を例に挙げて説明したが、橋梁以外の同様の構造物に、橋枕木以外の枕木(木製の枕木、合成枕木、鉄枕木、PC枕木)を締結する場合についても適用でき、同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明にかかる枕木の締結装置は、鉄道レールを支持する枕木を橋梁等の構造物に固定する等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態にかかる橋枕木の締結装置の全体の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す橋枕木の締結装置の側面図である。
【図3】図2のIII −III 矢視図である。
【図4】図1〜図3に示す取付部材とは異なる凹部を表面に形成した取付部材を使用した橋枕木の締結装置の要部拡大図である。
【図5】図1〜図3に示す締結装置とは異なる構成からなる締結装置の構成を示す鉄道レールを除く図1に対応する斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
B…橋梁
1…橋枕木
2,22…取付部材
2A…押圧板部
4…構造物
4A…頂面
7…挟持具
10…鉄道レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道レールに沿って長手方向に配設されている構造物上に、該構造物に直交するよう配置される枕木を該構造物側と締結する枕木の締結装置であって、
この締結装置が、前記構造物の頂面上に配設される押圧板部を備えた取付部材と、この取付部材の押圧板部とその下方の構造物とをスプリング力により挟持する挟持具とを備えていることを特徴とする枕木の締結装置。
【請求項2】
前記取付部材が、前記枕木の側面に固定される枕木固定部をさらに有し、該枕木固定部と前記押圧板部とが交角をなすアングル鋼状の部材によってこの取付部材が構成されていることを特徴とする請求項1記載の枕木の締結装置。
【請求項3】
前記挟持具が、側面視において概略の形態がC型チャンネル鋼状のクリップ状の形態を有するとともに、該C型の一方の先端に前記構造物上の前記押圧板部と当接する第1の当接部と、該C型のもう一方の先端に該構造物の下面と当接する第2の当接部とを有し、
前記第1の当接部と第2の当接部とが狭まる方向に前記スプリング力が作用するよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の枕木の締結装置。
【請求項4】
前記取付部材の押圧板部の表面に、前記挟持具の第1の当接部が係止されるための凹部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の枕木の締結装置。
【請求項5】
前記取付部材が前記枕木の両側方に一対配置され、これら一対の取付部材とその間の枕木とを貫通する取付ボルトと、該取付ボルトに螺合するナットにより、該取付部材と枕木とが相互に固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1の項に記載の枕木の締結装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−57164(P2008−57164A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233688(P2006−233688)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000174404)阪急阪神ホールディングス株式会社 (2)
【出願人】(502316913)大和軌道製造株式会社 (25)
【出願人】(000220147)東京ファブリック工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】