説明

架橋性シリコーン組成物及びその架橋物

【課題】 ヒドロシリル化反応により架橋して、室温では高硬度の固体状であり、高温では著しく軟化もしくは液状化する架橋物を形成する架橋性シリコーン組成物、および室温では高硬度の固体状であり、高温では著しく軟化もしくは液状化する架橋物を提供する。
【解決手段】 (A)平均単位式で表される、フェニル基及びアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(B)一般式で表される、フェニル基及びアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(C)一分子中に少なくとも1個のフェニル基と2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、および(D)ヒドロシリル化反応用触媒から少なくともなる架橋性シリコーン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロシリル化反応により架橋する架橋性シリコーン組成物、及びその架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロシリル化反応により硬化する硬化性シリコーン組成物は、フォトカプラー、発光ダイオード、固体撮像素子等の光学用半導体装置における半導体素子の保護剤あるいはコーティング剤として使用されている。このような硬化性シリコーン組成物としては、例えば、一分子中、アルケニル基を少なくとも2個有し、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも20モル%がアリール基であるオルガノポリシロキサン、ケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、一分子中、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも5モル%がアルケニル基であり、少なくとも5モル%がアリール基であり、少なくとも5モル%がアルコキシ基であり、少なくとも5モル%がエポキシ含有有機基であるオルガノポリシロキサン、及びヒドロシリル化反応用触媒から少なくともなる硬化性シリコーン組成物(特許文献1参照)、一分子中、ケイ素原子結合全有機基の少なくとも0.5モル%がアルケニル基であり、少なくとも25モル%がアリール基であるオルガノポリシロキサン、一分子中、少なくとも平均2個のケイ素原子結合アリール基と少なくとも平均2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、及びヒドロシリル化反応用触媒からなる硬化性シリコーン組成物(特許文献2参照)が挙げられる。
【0003】
これらの硬化性シリコーン組成物を硬化して得られる硬化物は、熱により硬さが低下するため、該組成物を半導体素子の保護剤あるいはコーティング剤に用いた場合、半導体素子への応力の緩和効果を有するものの、その低下の割合が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−327019号公報
【特許文献2】特開2008−1828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ヒドロシリル化反応により架橋して、室温では高硬度の固体状であり、高温では著しく軟化もしくは液状化する架橋物を形成する架橋性シリコーン組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、室温では高硬度の固体状、高温では著しく軟化もしくは液状化する架橋物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の架橋性シリコーン組成物は、
(A)平均単位式:
(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)(R1/2)
(式中、Rはフェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基、または炭素原子数2〜6のアルケニル基であり、ただし、Rの60〜80モル%はフェニルであり、Rの10〜20モル%はアルケニル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、a、b、c、dおよびeは、0≦a≦0.2、0.2≦b≦0.7、0.2≦c≦0.6、0≦d≦0.2、0≦e≦0.1、かつa+b+c+d=1を満たす数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B)一般式:
SiO(RSiO)SiR
(式中、Rはフェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基、または炭素原子数2〜6のアルケニル基であり、ただし、Rの40〜70モル%はフェニル基であり、Rの少なくとも1個はアルケニル基であり、mは5〜100の整数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン{(A)成分100重量部に対して0〜20重量部}
(C)一分子中に2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合有機基の30〜70モル%がフェニル基であるオルガノポリシロキサン{(A)成分中と(B)成分中のアルケニル基の合計に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜2となる量}、および
(D)ヒドロシリル化反応用触媒{(A)成分と(B)成分中のアルケニル基と(C)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するに十分な量}
から少なくともなる。
【0007】
また、本発明の架橋物は、上記の架橋性シリコーン組成物を架橋してなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の架橋性シリコーン組成物は、ヒドロシリル化反応により架橋して、室温では高硬度の固体状であり、高温では著しく軟化もしくは液状化する架橋物を形成するという特徴がある。また、本発明の架橋物は、室温では高硬度の固体状、高温では軟化もしくは液状化するという特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
はじめに、本発明の架橋性シリコーン組成物を詳細に説明する。
(A)成分は、本組成物の主成分であり、平均単位式:
(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)(R1/2)
で表されるオルガノポリシロキサンである。
【0010】
式中、Rはフェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基、または炭素原子数2〜6のアルケニル基である。Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が例示される。Rのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が例示される。Rのアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示される。なお、式中、Rの内、フェニル基の含有量は60〜80モル%の範囲内であり、好ましくは、65〜80モル%の範囲内である。これは、フェニル基の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる架橋物の高温での軟化が不十分であり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物の透明性が失われ、その機械的強度も低下するからである。また、式中、Rの内、アルケニル基の含有量は10〜20モル%の範囲内である。これは、アルケニル基の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる架橋物の室温での十分な硬さが得られなくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物の高温での軟化が不十分となるからである。
【0011】
また、式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基である。Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が例示され、好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0012】
また、式中、aは、一般式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位の割合を示す数であり、0≦a≦0.2、好ましくは、0≦a≦0.1を満たす数である。これは、aが上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物の室温での十分な硬さが得られなくなるからである。また、式中、bは、一般式:RSiO2/2で表されるシロキサン単位の割合を示す数であり、0.2≦b≦0.7、好ましくは、0.4≦b≦0.7を満たす数である。これは、bが上記範囲の下限未満であると、得られる架橋物の高温での軟化が不十分となるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物の室温での十分な硬さが得られなくなるからである。また、cは、一般式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位の割合を示す数であり、0.2≦c≦0.6、好ましくは、0.3≦c≦0.6を満たす数である。これは、cが上記範囲の下限未満であると、得られる架橋物の室温での十分な硬さが得られなくなるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物の高温での軟化が不十分となるからである。また、dは、一般式:SiO4/2で表されるシロキサン単位の割合を示す数であり、0≦d≦0.2、好ましくは、0≦d≦0.1を満たす数である。これは、dが上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物の高温での軟化が不十分となるからである。また、eは、一般式:R1/2で表される単位の割合を示す数であり、0≦e≦0.1を満たす数である。これは、eが上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物の室温での十分な硬さが得られなくなるからである。なお、式中、a、b、c、及びdの合計は1である。
【0013】
(B)成分は、本組成物の取扱作業性を向上させたり、得られる架橋物の室温での硬さを調整するための成分であり、一般式:
SiO(RSiO)SiR
で表されるオルガノポリシロキサンである。
【0014】
式中、Rはフェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基、または炭素原子数2〜6のアルケニル基である。Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が例示される。Rのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が例示される。Rのアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示される。なお、式中、Rの内、フェニル基の含有量は40〜70モル%の範囲内であり、好ましくは、40〜60モル%の範囲内である。これは、フェニル基の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる架橋物の高温での軟化が不十分であり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物の透明性が失われ、その機械的強度も低下するからである。また、式中、Rの少なくとも1個はアルケニル基である。これは、アルケニル基を有さないと、本成分が架橋反応に取り込まれず、得られる架橋物から本成分がブリードアウトするおそれがあるからである。
【0015】
また、式中、mは5〜100の範囲内の整数であり、好ましくは、10〜50の範囲内の整数である。これは、mが上記範囲の下限未満であると、得られる架橋物の機械的強度が低下するおそれがあるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の取扱作業性が低下するおそれがあるからである。
【0016】
本組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分100重量部に対して0〜20重量部、好ましくは、0〜15重量部の範囲内となる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物の高温での軟化が不十分となるおそれがあるからである。
【0017】
(C)成分は、本組成物の架橋剤であり、一分子中に2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合有機基の30〜70モル%がフェニル基であるオルガノポリシロキサンである。(C)成分中のケイ素原子結合水素原子は一分子中に2個である。これは、ケイ素原子結合水素原子が一分子中に2個未満であると、得られる架橋物の室温での十分な硬さが得られなくなるからであり、一方、2個を超えると、得られる架橋物の高温での軟化が不十分となるからである。また、(C)成分中のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等の脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基が例示され、好ましくは、フェニル基、または炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基である。(C)成分は、ケイ素原子結合有機基の30〜70モル%がフェニル基である。これは、フェニル基の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる架橋物の高温での軟化が不十分であり、上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物の透明性が失われ、その機械的強度も低下するからである。
【0018】
このような(C)成分としては、一般式:
(HRSiO)SiR
で表されるオルガノトリシロキサンが好ましい。
【0019】
式中、Rはフェニル基、または炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基である。Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が例示される。Rのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が例示される。なお、Rの内、フェニル基の含有量は30〜70モル%の範囲内である。
【0020】
本組成物において、(C)成分の含有量は、(A)成分中および(B)成分中のアルケニル基の合計に対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜2の範囲内となる量であり、好ましくは、0.5〜1.5の範囲内となる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲外であると、得られる架橋物の室温での十分な硬さが得られなくなるからである。
【0021】
(D)成分は、(A)成分および(B)成分中のアルケニル基と(C)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒である。(D)成分としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体が例示され、特に、白金−アルケニルシロキサン錯体であることが好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3−ジビニル−1,1,3,3−トテラメチルジシロキサンが好ましい。また、この白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させることができることから、この錯体に1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーを添加することが好ましく、特に、アルケニルシロキサンを添加することが好ましい。
【0022】
本組成物において、(D)成分の含有量は、(A)成分および(B)成分中のアルケニル基と(C)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するための十分な量であれば特に限定されないが、好ましくは、本組成物に対して、本成分中の金属原子が質量単位で0.01〜500ppmの範囲内となる量であることが好ましく、さらには、0.01〜100ppmの範囲内となる量であることが好ましく、特には、0.01〜50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる組成物が十分に架橋しなくなる傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる架橋物に着色等の問題を生じるおそれがあるからである。
【0023】
本組成物は、上記(A)成分〜(D)成分から少なくともなるが、その他任意の成分として、エチニルヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾール等の反応抑制剤を含有してもよい。この反応抑制剤の含有量は限定されないが、本組成物の重量に対して1〜5,000ppmの範囲内であることが好ましい。
【0024】
また、本組成物には、硬化途上で接触している基材への接着性を更に向上させるために接着促進剤を含有することが好ましい。この接着促進剤としては、トリアルコキシシロキシ基(例えば、トリメトキシシロキシ基、トリエトキシシロキシ基)もしくはトリアルコキシシリルアルキル基(例えば、トリメトキシシリルエチル基、トリエトキシシリルエチル基)と、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)を有するオルガノシラン、またはケイ素原子数4〜20程度の直鎖状構造、分岐状構造又は環状構造のオルガノシロキサンオリゴマー;トリアルコキシシロキシ基もしくはトリアルコキシシリルアルキル基とメタクリロキシアルキル基(例えば、3−メタクリロキシプロピル基)を有するオルガノシラン、またはケイ素原子数4〜20程度の直鎖状構造、分岐状構造又は環状構造のオルガノシロキサンオリゴマー;トリアルコキシシロキシ基もしくはトリアルコキシシリルアルキル基とエポキシ基結合アルキル基(例えば、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基)を有するオルガノシランまたはケイ素原子数4〜20程度の直鎖状構造、分岐状構造又は環状構造のオルガノシロキサンオリゴマー;アミノアルキルトリアルコキシシランとエポキシ基結合アルキルトリアルコキシシランの反応物、エポキシ基含有エチルポリシリケートが挙げられ、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランと3−アミノプロピルトリエトキシシランの反応物、シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの縮合反応物、シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーと3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランの縮合反応物、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0025】
さらに、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、前記(A)成分〜(C)成分以外のオルガノポリシロキサン;シリカ、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛等の無機質充填剤;ポリメタクリレート樹脂等の有機樹脂微粉末;耐熱剤、染料、顔料、蛍光体、難燃性付与剤、溶剤等を含有してもよい。
【0026】
本組成物の25℃における粘度は限定されないが、100〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、500〜50,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。これは、粘度が上記範囲の下限未満であると、得られる架橋物の機械的強度が低下する傾向があるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の取扱作業性が低下する傾向があるからである。
【0027】
本組成物は室温もしくは加熱により架橋が進行するが、迅速に架橋させるためには加熱することが好ましい。この加熱温度としては、50〜200℃の範囲内であることが好ましい。このような本組成物は、ヒドロシリル化反応により架橋して、室温、例えば、25℃では高硬度の固体状であり、高温、例えば、100℃では軟化もしくは液状化する架橋物を形成するので、電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護剤、コーティング剤、アンダーフィル剤として使用することができ、特に、光透過率が高いことから、光学用途の半導体素子の接着剤、ポッティング剤、保護剤、コーティング剤、アンダーフィル剤として好適である。
【0028】
次に、本発明の架橋物について詳細に説明する。
本発明の架橋物は、上記組成物をヒドロシリル化反応により架橋してなるものである。この架橋物は、室温、例えば、25℃では高硬度の固体状、具体的には、硬質ゴム状であり、高温、例えば、100℃では著しく軟化、具体的には、軟質ゴム状となるか、あるいは100℃で液状化するという特徴がある。この架橋物は、25℃でのJIS K 6253規定のタイプAデュロメータ硬さが60以上であることが好ましい。また、この架橋物は100℃で流動性を有するか、100℃でのタイプAデュロメータ硬さが10以下であることが好ましい。100℃で流動性を有する場合、その粘度は特に限定されないが、少なくとも0.1Pa・sであることが好ましい。このような特徴を有する架橋物は、加熱により変形する熱可塑性フィルムあるいはシートとしての利用が可能である。
【実施例】
【0029】
本発明の架橋性シリコーン組成物及びその架橋物を実施例により詳細に説明する。なお、粘度は25℃における値である。また、式中のMe、Ph、およびViは、それぞれメチル基、フェニル基、およびビニル基を表している。なお、架橋物の硬さを、JIS K 6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に規定のタイプAデュロメータにより測定した。
【0030】
[実施例1]
平均単位式:
(MeViSiO2/2)0.25(PhSiO2/2)0.3(PhSiO3/2)0.45(HO1/2)0.03
で表されるメチルビニルフェニルポリシロキサン 75重量部、および式:
(HMeSiO)SiPh
で表されるトリシロキサン 25重量部(上記のメチルビニルフェニルポリシロキサンのビニル基1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1.11モルとなる量)を均一に混合した後、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液(本組成物に対して白金金属が重量単位で5ppmとなる量)、およびエチニルヘキサノール(本組成物に対して重量単位で250ppmとなる量)を混合して、25℃の粘度が8,400mPa・sである架橋性シリコーン組成物を調製した。
【0031】
この組成物を150℃で2時間加熱して架橋物を形成した。この架橋物は、25℃でタイプAデュロメータ硬さが90の硬質ゴム状であり、100℃でタイプAデュロメータ硬さが9の軟質ゴム状であった。
【0032】
[実施例2]
平均単位式:
(MeViSiO2/2)0.25(PhSiO2/2)0.3(PhSiO3/2)0.45(HO1/2)0.03
で表されるメチルビニルフェニルポリシロキサン 70重量部、および式:
(HMeSiO)SiPh
で表されるトリシロキサン 30重量部(上記のメチルビニルフェニルポリシロキサンのビニル基1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1.43モルとなる量)を均一に混合した後、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液(本組成物に対して白金金属が重量単位で5ppmとなる量)、およびエチニルヘキサノール(本組成物に対して重量単位で250ppmとなる量)を混合して、25℃の粘度が6,600mPa・sである架橋性シリコーン組成物を調製した。
【0033】
この組成物を150℃で2時間加熱して架橋物を形成した。この架橋物は、25℃でタイプAデュロメータ硬さが78の硬質ゴム状であり、100℃で粘度220Pa・sの液状であった。
【0034】
[実施例3]
平均単位式:
(MeViSiO2/2)0.25(PhSiO2/2)0.3(PhSiO3/2)0.45(HO1/2)0.03
で表されるメチルビニルフェニルポリシロキサン 75重量部、式:
ViMeSiO(MePhSiO)17.5SiViMe
で表されるメチルフェニルポリシロキサン 10重量部、および式:
(HMeSiO)SiPh
で表されるトリシロキサン 25重量部(上記のメチルビニルフェニルポリシロキサンとメチルフェニルポリシロキサン中の合計のビニル基1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1.02モルとなる量)を均一に混合した後、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液(本組成物に対して白金金属が重量単位で500ppmとなる量)、および1−エチニルヘキサノール(本組成物に対して重量単位で250ppmとなる量)を混合して、25℃の粘度が4,500mPa・sである架橋性シリコーン組成物を調製した。
【0035】
この架橋性シリコーン組成物を150℃で2時間加熱して架橋物を形成した。この架橋物は、25℃でタイプAデュロメータ硬さが83の硬質ゴム状であり、100℃でタイプAデュロメータ硬さが6の軟質ゴム状であった。
【0036】
[実施例4]
実施例3のシリコーン組成物を120℃で30分間加熱して架橋物を形成した。この架橋物は、25℃でタイプAデュロメータ硬さが75の硬質ゴム状であり、100℃で粘度120Pa・sの液状であった。
【0037】
[実施例5]
平均単位式:
(MeViSiO2/2)0.25(PhSiO2/2)0.3(PhSiO3/2)0.45(HO1/2)0.03
で表されるメチルビニルフェニルポリシロキサン 70重量部、式:
ViMeSiO(MePhSiO)17.5SiViMe
で表されるメチルフェニルポリシロキサン 10重量部、および式:
(HMeSiO)SiPh
で表されるトリシロキサン 30重量部(上記のメチルビニルフェニルポリシロキサンとメチルフェニルポリシロキサン中の合計のビニル基1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1.30モルとなる量)を均一に混合した後、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液(本組成物に対して白金金属が重量単位で5ppmとなる量)、およびエチニルヘキサノール(本組成物に対して重量単位で250ppmとなる量)を混合して、25℃の粘度が4,000mPa・sである架橋性シリコーン組成物を調製した。
【0038】
この架橋性シリコーン組成物を150℃で2時間加熱して架橋物を形成した。この架橋物は、25℃でタイプAデュロメータ硬さが70の硬質ゴム状であり、100℃で粘度250Pa・sの液状であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の架橋性シリコーン組成物は、電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤として使用することができ、特に、光透過率が高いことから、光学用途の半導体素子の接着剤、ポッティング剤、保護剤、コーティング剤、アンダーフィル剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均単位式:
(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)(R1/2)
(式中、Rはフェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基、または炭素原子数2〜6のアルケニル基であり、ただし、Rの60〜80モル%はフェニルであり、Rの10〜20モル%はアルケニル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基であり、a、b、c、dおよびeは、0≦a≦0.2、0.2≦b≦0.7、0.2≦c≦0.6、0≦d≦0.2、0≦e≦0.1、かつa+b+c+d=1を満たす数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B)一般式:
SiO(RSiO)SiR
(式中、Rはフェニル基、炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基、または炭素原子数2〜6のアルケニル基であり、ただし、Rの40〜70モル%はフェニル基であり、Rの少なくとも1個はアルケニル基であり、mは5〜100の整数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン{(A)成分100重量部に対して0〜20重量部}
(C)一分子中に2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合有機基の30〜70モル%がフェニル基であるオルガノポリシロキサン{(A)成分中と(B)成分中のアルケニル基の合計に対する本成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.5〜2となる量}、および
(D)ヒドロシリル化反応用触媒{(A)成分と(B)成分中のアルケニル基と(C)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するに十分な量}
から少なくともなる架橋性シリコーン組成物。
【請求項2】
(C)成分が、一般式:
(HRSiO)SiR
(式中、Rはフェニル基、または炭素原子数1〜6のアルキル基もしくはシクロアルキル基であり、ただし、Rの30〜70モル%はフェニル基である。)
で表されるオルガノトリシロキサンである、請求項1記載の架橋性シリコーン組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の架橋性シリコーン組成物をヒドロシリル化反応してなる架橋物。
【請求項4】
25℃でのJIS K 6253規定のタイプAデュロメータ硬さが60以上であり、100℃で流動性を有するか、100℃でのタイプAデュロメータ硬さが10以下である、請求項3記載の架橋物。

【公開番号】特開2013−1794(P2013−1794A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134124(P2011−134124)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】