植物及び動物の油脂から誘導した潤滑剤
【課題】植物及び動物の油脂などの再生可能な工業用原料から誘導した潤滑剤等の工業用流体で有用な特徴的なトリグリセリドおよび、その製造方法を提供する。
【解決手段】本潤滑剤は、約7を超えるヨウ素価をもつ動物または植物の油脂から誘導し、前記油脂をエポキシ化し、(1)塩基性触媒の存在下で前記エポキシ化油脂とカルボン酸無水物とを反応させてジエステルを製造するか、または(2)前記エポキシ化油脂を水素化してモノアルコールを生成し、そのアルコール官能基を酸無水物、酸クロリドまたはカルボン酸でアシル化してモノエステルを生成することにより製造する。
【解決手段】本潤滑剤は、約7を超えるヨウ素価をもつ動物または植物の油脂から誘導し、前記油脂をエポキシ化し、(1)塩基性触媒の存在下で前記エポキシ化油脂とカルボン酸無水物とを反応させてジエステルを製造するか、または(2)前記エポキシ化油脂を水素化してモノアルコールを生成し、そのアルコール官能基を酸無水物、酸クロリドまたはカルボン酸でアシル化してモノエステルを生成することにより製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物及び動物の油脂などの再生可能な(renewable)工業用原料から誘導した工業用流体で有用な特徴的なトリグリセリドを提供する。工業用流体は、エンジンオイル(通常、2サイクル、4サイクル、ワンケル及びタービン型エンジン)、油圧流体、ドライブオイル(drive oil)、金属加工流体(metal working fluid)、グリース、一般的な潤滑剤、ブレーキ流体、削岩流体などとして有用である。本発明は、その特性を高めたり変性させるための潤滑剤用の添加剤(たとえば粘度増強剤)としても使用し得る材料も提供する。
【背景技術】
【0002】
植物油(すなわち大豆油及び他の植物油)などの再生可能な工業用原料由来の油、または動物性供給源(たとえばニシン、ラード、乳脂肪および他の動物性油脂)由来の油脂を種々の潤滑剤として使用する際の主な問題点は、(1)その低い酸化安定性;(2)その比較的低い粘度;及び(3)比較的高い流動点(その温度未満では流れないという温度)によって明らかにされるような低い操作温度で固化する傾向である。しかしながら、これらの潤滑剤候補は再生可能な供給原料から誘導されるので、これらのマイナス面を克服する動物または植物油脂をうまく変性することによって、外国産油への米国の依存度を軽減できるはずである。再生可能な供給原料から誘導した潤滑剤は通常、生分解可能でもある。典型的な再生可能な供給原料油としては、大豆油がある。実際、大豆油は、その高い利用可能性及び比較的低コストにより好ましい油である。
【0003】
生分解可能な潤滑剤を使用する重要な要因は、鉱物ベースの潤滑剤が世界的に乱用されているという点にある。1990年にヨーロッパで使用された約12億ガロンの潤滑剤のうち、約1億7千万ガロン(13%)が環境中に消失した。合衆国においては、使用された約13億5千万ガロンのうち約4億3千万(32%)が埋め立てゴミになったか、廃棄になった。2002年から近年の研究では、約50%の潤滑剤が世界で環境中に廃棄されていると推定されている。
【0004】
Erhanら(米国特許第6,583,302号、以後、Erhanと参照する)は、植物油トリグリセリドの隣接ジエステル(vicinal diester)は、二段階または一段階方法によって、エポキシ化トリグリセリド(例えばエポキシ化大豆油)を反応させることによって製造し得ると開示している。この二段階方法では、エポキシ化大豆油をブロンステッド酸の過塩素酸の存在下で水と反応させて、脂肪酸鎖に沿って推定上の隣接ジオール(putative vicinal diol)を製造する。次いでこの混合物を種々の酸無水物と反応させて、脂肪鎖鎖に沿って推定上の隣接ジエステル構造を製造する。
【0005】
文献例をベースとして、この二つのプロセスのいずれかによって得られた上記タイプの隣接ジエステル製品の量は、約25%と考えられる。大部分の製品(約75%)は、二つのエステル基を有するテトラヒドロフラニル(オキソラン)基礎構造からなると予想されている。
【0006】
メチレンが挿入されたビスエポキシド(methylene-interrupted bis-epoxide)は、ブロンステッド酸またはルイス酸の存在下で水と反応させると、殆ど定量的収率でテトラヒドロフラニルジオールを生成することは公知であり、公開文献に記載されている。
【0007】
従って、(ブロンステッド酸を使用する)二段階プロセスにおいて、テトラヒドロフラニルジオールは、リノレナート(linoleate)及びリノレナート脂肪酸(それぞれメチレンが挿入されたビスエポキシド構造をもつ)から製造され、これらのジオールをアシル化してテトラヒドロフラニルジエステルを形成する。
【0008】
Erhanの一段階プロセスでは、ルイス酸触媒の三フッ化硼素を使用し、この一段階プロセスでは、水を使用せずに酸無水物を使用する。Erhanの特許は、両方のプロセスによって得られた生成物がよく似たNMRスペクトルを示唆しているので、現在、二段階プロセスで形成する同じテトラヒドロフラニル構造は、一段階アプローチでも形成すると考えられている。また、二段階プロセスと一段階プロセス由来のマイクロ酸化(microoxidation)及び加圧示差操作熱量計データのいずれもが非常に良く似ている。さらに、Erhanにより報告されたマイクロ酸化の結果は、隣接ジエステルが実際に製造される場合に本発明で報告されたものよりもずっと高い不溶性沈殿物と非常に顕著な割合の揮発分の損失を示す。これらの高い酸化分解経路(high oxidative decomposition pathway)は、酸化分解に非常に敏感であることが公知のテトラヒドロフラニル環構造と一致する。
【0009】
エポキシ化大豆油では、全エポキシド基の約75%がメチレンビスエポキシド型であるので、Erhanにより記載された両方の反応アプローチのもと、テトラヒドロフラニルジエステル系を生成する。
【0010】
Erhanとは対照的に、本発明では、テトラヒドロフラニル(オキソラン)環構造の形成を防ぎつつ、塩基性触媒を使用してエポキシ化大豆油を実質的に定量の隣接ジエステルに転換させる。
【0011】
米国特許第5,623,086号(Perriら)は、本発明で有用な1,2-ビス(アシルオキシレート)の製造プロセスを開示する。
【発明の概要】
【0012】
第一の態様において、本発明は潤滑油の製造法であって、植物または動物の油脂などの再生可能な油脂を準備する;前記油脂をエポキシ化する;及び、塩基性触媒の存在下で、前記エポキシ化された油脂とカルボン酸無水物、または選択された鎖長のカルボン酸無水物の混合物とを直接反応させて、潤滑油(トリグリセリド主鎖ジエステル、以後ジエステルという)を得る、各段階を含む前記方法を提供する。
【0013】
本発明の第二の態様では、潤滑油の製造法であって、植物または動物の油脂を準備する;前記油脂をエポキシ化する;前記エポキシ化油脂を水素化してヒドロキシル基を有する水素化された中間部分(hydrogenated intermediary)を得る;及び前記ヒドロキシル基をアシル化剤、または選択された鎖長のアシル化剤混合物でアシル化して、潤滑油(トリグリセリド主鎖モノエステル、以後モノエステルという)を得る、各段階を含む前記方法を提供する。追加の態様としては、約7を超えるヨウ素価をもつ動物油、動物性脂肪、植物油または植物性脂肪を準備する;前記油脂をエポキシ化する;及びエポキシド官能基の本質的に全てが反応するまで、塩基性触媒の存在下、1〜約18個の炭素原子を持つカルボン酸無水物と前記エポキシ化油脂とを反応させることによる、ジエステルの製造法が挙げられる。通常、トリエチルアミンなどの三級アミンを含む。態様によっては、鎖間結合(interchain linkages)は、反応における無水物量を制御することによって提供する。態様によっては、二種以上の無水物を反応させて、ヘテロ置換ジエステルを製造する。
【0014】
もう一つの態様では、二重結合によってもともと結合していた隣接する炭素原子がそれぞれペンダントエステル基を有し、それぞれの前記エステル基は二種以上の異なるエステル基からランダムに選択される、変性トリグリセリドヘテロ置換ジエステルを含む。
【0015】
さらなる態様としては、流動点降下剤、耐摩耗剤、ベースストック、希釈剤、極圧添加剤及び/または酸化防止剤などの他の機能性成分と変性トリグリセリドを含む工業用流体が挙げられる。
【0016】
態様によっては、2〜17個の炭素原子を含む少なくとも一つの小さなエステル基を選択し、3〜18個の炭素原子を含む少なくとも一つの大きなエステル基を選択し、前記エステル基は少なくとも1個の炭素原子だけ異なる、エステルを提供する。通常、このエステル基は、N、O及びPからなる群から選択される置換されたヘテロ原子を含むことによって互いに異なっている。
【0017】
幾つかの態様では、大きなエステル基対小さなエステル基の比が約0.1〜約0.9であるように、エステル基を選択する。通常、小さなエステル基の炭素原子は2〜5個を変動し、大きなエステル基の炭素原子は6〜18個を変動する。
【0018】
一態様では、前記二種のエステル基の小さなエステル基と大きなエステル基の炭素原子数の差を変動させることにより、及び/または前記小さなエステル基対大きなエステル基の比を変動させることによって、工業用流体の粘度を調節する方法を提供する。
【0019】
さらなる態様では、変性トリグリセリドジエステルの製造法であって、エポキシ化トリグリセリドを準備する;塩基性触媒の存在下、前記エポキシ化トリグリセリドと酸無水物とを反応させてジエステルを製造する;及び触媒と未反応無水物から前記ジエステルを分離する、各段階を含む前記方法を提供する。通常、二種以上の無水物を反応させる。
【0020】
もう一つの態様では、短鎖無水物対長鎖無水物の比を制御することによって、短鎖無水物と長鎖無水物との混合物を選択することによる工業用流体の粘度を調節する方法であって、ここで反応させたときに小さな無水物は第一のエステル中に2〜6個の炭素原子を提供し、反応させたときに大きな無水物は第二のエステル中に6〜18個の炭素原子を提供する、前記方法を提供する。通常、変性トリグリセリドの加水分解安定性及び/または熱安定性は、立体障害エステル基を加えることによって制御する。
【0021】
もう一つの態様では、二重結合によって元々結合していた少なくとも1セットの隣接する炭素原子を持つ変性トリグリセリドモノエステルを含む変性トリグリセリドモノエステルを提供し、ここで一方の元の二重結合の炭素は水素原子を有し、他方の炭素原子はペンダントエステル基をもつ。さらなる態様では、二重結合によってもともと結合していた少なくとも二セットの隣接する炭素原子を持つ変性トリグリセリドモノエステルを含む変性トリグリセリドモノエステルを提供し、ここで一方の元の二重結合炭素は水素原子を有し、もう一方の炭素原子はペンダントエステル基を有し、且つ元の二重結合の部位のペンダントエステル基は、もう一方のもとの二重結合部位のエステル基とは異なる。通常、選択されたペンダントエステル基は、アセテート、イソブテレート、ヘキサノエート及び2-エチルヘキサノエートからなる群から選択される。場合により、変性ジエステルトリグリセリドは、N、O及びPからなる群から選択される置換ヘテロ原子を含むことによって互いに異なるエステル基をもつ。
【0022】
本発明のもう一つの態様としては、変性トリグリセリドの製造法が挙げられ、少なくとも一つの二重結合をもつトリグリセリドをエポキシ化する;前記エポキシド基を水素化して、モノアルコールを生成する;及び前記モノアルコールを、無水物、酸クロリドまたはカルボン酸でアシル化する、各段階を含む前記方法が挙げられる。通常、本方法は、二種以上の異なるアシル化剤の混合物でアシル化して、種々のペンダントエステル基をもつトリグリセリドを製造することを含む。
【0023】
もう一つの態様は、トリグリセリドの混合物を含む潤滑剤を含み、ここで前記混合物は、モノエステル:
【0024】
【化1】
【0025】
とジエステル:
【0026】
【化2】
【0027】
{式中、R’及びRはアルキル基で、C1〜C18であり、R’はそれぞれ同一または異なっていてもよく、Rはそれぞれ同一または異なっていてもよい}及びその混合物からなる群から選択される一種以上のトリグリセリドを含む。
【0028】
さらなる態様は、潤滑剤の製造法であって、植物または動物の油脂、またはその混合物を準備する;前記油脂をエポキシ化する;前記エポキシ化油脂を水素化して、水素化アームをもつ水素化中間部分を得る;及び前記水素化アームを種々の鎖長のアシル化剤でアシル化して、前記潤滑剤を得る、各段階を含む前記製造法を含む。
【0029】
もう一つの態様では、潤滑剤の製造法であって、少なくとも一つの不飽和部位をもつモノオールまたはポリオールから誘導したエステルを準備する;前記エステルをエポキシ化する;及び前記エポキシ化エステルを種々の鎖長のカルボン酸無水物と直接反応させる、各段階を含む前記方法を含む。
【0030】
追加の態様では、潤滑剤の製造法であって、少なくとも一つの不飽和部位をもつモノオールまたはポリオールから誘導したエステルを提供する;前記エステルをエポキシ化する;前記エポキシ化エステルを水素化して、水素化アームをもつ水素化中間部分を得る;及び前記水素化アームを種々の鎖長のアシル化剤でアシル化して、前記潤滑剤を得る各段階を含む前記方法を提供する。
【0031】
さらに追加の態様では、
a)モノエステル:
【0032】
【化3】
【0033】
及び/またはジエステル:
【0034】
【化4】
【0035】
{式中、R’及びRはC1〜C18を変動するアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基、および同一トリグリセリド分子内に種々の鎖長の種々のアルキル基の組み合わせを含むその混合物であり、R’はそれぞれ同一または異なっていてもよく、Rはそれぞれ同一または異なっていてもよい}を含む潤滑剤組成物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、植物または動物の油脂ジエステルを製造する二つの一般的なルートを示す。この説明図は具体的に、エポキシド付加反応によってエポキシ化大豆油(ESO)を介する大豆油からの大豆油ジエステルの製造を示す。
【図2】図2は、植物または動物の油脂モノエステルを製造する一般的なルートを示す。この説明図は具体的に、水素化及びアシル化反応によって、エポキシ化大豆油を介する大豆油からの大豆油モノエステルの製造を示す。
【図3】図3は空白である。
【図4】図4は、典型的な配合物に対する18kg荷重の四球式摩耗試験結果を示す棒グラフである。
【図5】図5は、典型的な配合物と対照大豆油の40kg荷重の四球式摩耗試験結果を示す棒グラフである。
【図6】図6は、幾つかの典型的な配合物と対照大豆油のEPDM吸着適合性(absorption compatibility)の吸着試験結果を示す棒グラフである。
【図7】図7は、幾つかの典型的な配合物と対照大豆油のEPDM適合性の膨潤試験結果を示す棒グラフである。
【図8】図8は、幾つかの典型的な配合物と対照大豆油のRPDM適合性の硬度試験結果を示す棒グラフである。
【図9】図9は、幾つかの典型的な配合物と対照大豆油のニトリル適合性の吸着試験結果を示す棒グラフである。
【図10】図10は、幾つかの典型的な配合物と対照大豆油のニトリル適合性の膨潤試験結果を示す棒グラフである。
【図11】図11は、幾つかの典型的な配合物と対照大豆油のニトリル適合性の膨潤硬度(swell hardness)試験結果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
植物及び動物の油脂などの再生可能な供給源をベースとする潤滑油の好都合な点としては、以下のものが挙げられる。植物及び動物の油脂は、エステルカルボニル基をもつトリグセリドを含む。これらのエステルカルボニル基の極性によって、トリグリセリドベースの潤滑剤のフィルム形成特性が特に油圧計で都合がよいように、非常に薄いフィルムとして金属面上に強い吸着作用をもたらす。植物油と動物油は通常、広範な温度範囲にわたって使用しやすい高い粘度指数(viscosity indice)を有する。他の好都合な点としては、通常、高い発煙点(fume point)(たとえば約200℃)と高い引火点(たとえば約300℃)が挙げられる。
【0038】
他の好都合な点としては、植物及び動物の油脂をベースとする潤滑剤は、石油から誘導した炭化水素の枯渇を軽減するという点が挙げられる。植物油をベースとする潤滑剤は再生可能な供給源に基づいており、通常、生分解性である。油(oil)と脂肪(fat)なる用語は、本明細書中、互換可能に使用される関連語である。「油」なる用語を使用する場合には、脂肪も含むものであり、逆に「脂肪」なる用語を使用する場合には、油も含むものとする。
【0039】
本発明で有用な油としては、非常に低い約7(例えばヤシ油)〜約160のヨウ素価(iodine number:I.N.)を有する動物及び植物の油が挙げられる。有用な油の典型例としては、ヤシ油(I.N.=6〜11)、パーム油(I.N.=50〜55)、オリーブ油(I.N.=75〜88)、キャノーラ油(I.N.=100〜115)、ニシン油(I.N.=115〜160)、大豆油(I.N.=123〜139)、及びベニバナ油(I.N.=140〜150)が挙げられる。大豆油の中でも、オレイン酸が多い中及び高オレイン酸の大豆油は有用である。供給源の油及び/または製品の油を混合して、最終の潤滑油に特徴的な特性を提供することができる。供給源の油は、精製、処理及び混合して、最終製品を製造する際に好ましい特性をもつトリグリセリドを得ることができる。態様によっては、供給源のトリグリセリドを慎重に選択することによって、最終潤滑油製品に特定の特性を提供するだろう。
【0040】
大豆油を含む個々の植物油は、これらのトリグリセリド構造の中にランダム分散された個々の脂肪酸の特徴的な量を含むトリグリセリドである。典型的な大豆油組成物は、以下の脂肪酸組成:11%パルミチン酸、4%ステアリン酸(いずれも飽和)、54%リノール酸(二重不飽和)、23%オレイン酸(一不飽和)、及び8%リノレン酸(三重不飽和)を含む。オレイン酸などのトリグリセリド脂肪酸のアリル型メチレン基、特にリノール酸およびリノレン酸などのトリグリセリド脂肪酸の二重アリル型メチレン基(doubly allylic methylene group)は酸化の影響を受けやすいが、本発明は、トリグリセリド不飽和脂肪酸の二重結合の本質的に全てに二つのエステル基を付加させ(てジエステルを形成す)ることにより、またはエステルと水素原子を付加させ(てモノエステルを形成させ)ることにより、この傾向を克服する。
【0041】
そのようなエステル基の具体的な方向性(orientation)とは、もともとは脂肪族二重結合の構成要素であった炭素原子に酸素原子を直接結合させること、及びカルボニル基をそのような炭素原子に結合させることである。高い酸化安定性に加えて、これらの誘導体の幾つかは、低い流動点、流動点降下剤に対する高い反応性及び、高い粘度粘度指数(または粘度指数での減少が少ない)という好都合な点を有するとキャラクタリゼーションできる。
【0042】
動物油及び植物油の酸化不安定性は、多くの二重結合の側面に位置する活性化メチレン基(the activated methylene groups flanking their numerous double bonds)(たとえば、大豆油は、大豆トリグリセリド分子あたり約4.7個の二重結合をもつ)での酸素の攻撃に起因する。特に、リノール酸とリノレン酸に知見されるような二個の二重結合によって側面に位置するこれらのメチレン基が脆弱である。潤滑剤としてこれらの油を改良する一つのアプローチは、その酸化不安定性を克服するために、種々の酸化防止剤を多量に添加するということである。他方、水素化などのプロセスによって油中のこれらの二重結合を変性または除去するとその酸化安定性を顕著に改良するが、流動点が不都合に、そして大きく上昇してしまう。本発明は、動物油及び植物油、その誘導体中の二重結合を、その流動点と粘度プロフィールを維持し、そして場合により改良しつつ、酸化安定性を顕著に高める方法で変性する。従って、構造的に多様性のある多くの潤滑剤サンプルを、図1及び2に示す方法によって製造した。これらの図中で、「分子の残余部分(rest of molecule)」は、リノール酸、リノレン酸及び他の脂肪酸などの種々の脂肪酸を通常含む大豆油中の汎用トリグリセリドの残余部分を意味する。このトリグリセリド中の不飽和脂肪酸は、通常、ジエステルまたはモノエステル誘導体に転換される。
【0043】
加水分解攻撃及び熱攻撃を克服する方法としては、変性トリグリセリドに立体障害エステル基を導入することがある。立体障害エステル基の典型例としては、イソブチラート及び2−エチルヘキサノエートが挙げられる。
【0044】
図1を参照して、この図は、本発明の一態様を示すものであり、ここでエポキシ化大豆油は、図中でエポキシ化リノール脂肪酸アームによって表されている(リノール酸は、大豆トリグリセリドの主な脂肪酸だからである)。これらのトリグリセリドの他のエポキシド構造は、オレイン酸及びリノレン酸から誘導することができる。
【0045】
図1を再び参照して、反応Aでは、要するに、エポキシ化大豆油、酸無水物{(RCO)2O}、トリエチルアミンなどの三級アミン及びジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)を、通常15〜20時間、オートクレーブ中で加熱して、大豆油ジエステルを得る。同じ反応は、エポキシ化プロピレングリコールジソイエート(disoyate)、エポキシ化メチルソイエート(soyate)、または他のエポキシ化脂肪酸エステルに応用できるだろう。
【0046】
図1において、反応Bでは、要するにエポキシ化大豆油、酸無水物{(RCO)2O}及び無水炭酸カリウムを、プロトン核磁気共鳴分光法によって示されるように全てのエポキシド官能基が消費されるまで、約210℃までの温度で加熱する。場合により、激しい発泡の停止により、この反応が完了したかそれに近いことが解る。この反応は、R基が大きくなると応用可能であると予想される。反応AとBは両方とも、RがC1〜C8を変動する、大豆油ジエステルの製造に使用した。同じ反応をエポキシ化プロピレングリコールジソイエートまたはエポキシ化メチルソイエート、または他のエポキシ化脂肪酸エステルに応用できるだろう。
【0047】
図2に示されている汎用アプローチでは、Pd(C)、Pd(Al2O2)、ラネーニッケルまたは他の水素化触媒などの存在下、エポキシ化大豆油を、通常、水素で最初に還元することを含む。次いでこの水素化した材料を、ヒドロキシル化アームのアセチル化によって反応させる。図2に示されているように、水素化エポキシ化大豆油は、通常、ピリジンなどのアシル化触媒、またはトリエチルアミンなどの塩化水素トラップの存在下、酸無水物{(R’CO)2O}または酸クロリド(R’COCL)などのアシル化剤と反応させて、目的の生成物を得る。同じ反応シークエンスをエポキシ化プロピレングリコールジソイエートまたはエポキシ化メチルソイエート、または他のエポキシ化脂肪酸エステルに応用できるだろう。
【0048】
図2の「他の位置異性体(regioisomer)」とは、互いに水素原子とエステル基の方向に起因する類似の構造をさす。言い換えれば、エステル基と水素原子の各対は、図2に示されている方向であってもよく、どちらかまたは両方とも交換していてもよい。
【0049】
性能試験は、表1、2及び3に示されているように大豆ジエステルとモノエステルで実施した。
ミクロ酸化試験(microoxidation test)は、ペンシルバニア州(Penn.State)ミクロ酸化試験(油サンプル(40マイクロリットル)をステンレススチール(C1010スチール)クーポン上におき、秤量し、次いで20ml/分で空気を種々の時間、加熱サンプル上を通しながら、種々の時間加熱する)で実施した。加熱後にサンプルを秤量し、次いで付着物を残したままテトラヒドロフランで洗浄して油を溶解し、溶媒を完全に除去した後でクーポンを再び秤量して、不溶性付着物量を測定した。これらの分析によって、これらの条件下における付着率と蒸発率を測定できる。
【0050】
これらのミクロ酸化試験において、本発明の油は通常、精製し、漂白し脱臭した(refined,bleached and deodorized:RBD)大豆油並びに、慣用の大豆油よりもずっと酸化安定性であることが公知の高オレイン酸大豆(high oleic soybean)よりも、付着物及び蒸発がずっと少なかった。RBDは大豆油の一般的なグレードである。本発明に従って変性油(モノ及びジエステル)に酸化防止剤を添加すると、非変性大豆油それ自体にこれらの添加剤を添加することによって達成された酸化安定性と比較して、かなり優れた酸化安定性をもたらすはずである。
【0051】
本発明の油の全ては、40℃〜100℃で測定したときにRBD大豆油よりも実質的に高い粘度を有する。潤滑剤業界には、そのような油がベースストックまたは粘度エンハンサーとして使用可能にする広範な粘度をもつ油に対する需要がある。そのような油は生分解性であることも判明しているので、非常に有用であろう。そのような油が設定された温度変化を受けたときの粘度変化が少ないことを示す、高い粘度指数をもつのも好都合である。本発明の油によっては、RBD大豆油と似たような粘度指数をもつものもあり、特に、一種の油(大豆油モノイソブチラート)は、大豆油よりもかなり高い粘度指数を有する。
【0052】
本発明の多くの油は、RBD大豆油と同様の、そして好都合にはRBD大豆油よりも低い流動点をもち、流動点降下剤を使用することによって降下させるのに効果を示した。
本発明に従って二つの種類の潤滑油を製造した。一つは植物油誘導体形成化ジエステル(たとえば大豆油ジエステル)であり、ここでこのジエステルは、不飽和脂肪酸のもとの二重結合で形成する;もうひとつは植物油誘導体形成化モノエステル(例えば大豆油モノエステル)である。以下の二つの式を参照されたい。
【0053】
ジエステル:
【0054】
【化5】
【0055】
モノエステル:
【0056】
【化6】
【0057】
式1及び2のR-及びR’基は、同一または異なっていてもよく、通常、1〜18個の炭素原子をもつアルキル基である。より好ましくは、R基は、同一または異なっていてもよく、通常、約1〜約8個の炭素原子を含む。態様によっては、Rは同一または異なっていてもよく、一つ以上の芳香族基と置換芳香族基を含む。態様によっては、R基の少なくとも一つは異なり、そのような材料は、この二つのアプローチのどちらかを適用したときに,二つ以上の種々のアシル化剤の混合物を使用することによって生じる。
【0058】
好都合には、本明細書中で記載のジエステル製造法は、同じトリグリセリド分子の脂肪酸アーム(鎖)の間及び/または、異なるトリグリセリド分子の脂肪酸アームの間に、鎖間エーテル結合(interchain ether linkage)をもつジエステルトリグリセリドも提供する。通常約0〜約4個の鎖内(intrachain)または鎖間エーテル結合がエステル基100個ごとに生成し、図1の反応Bで製造したときにトリグリセリド構造に結合する。上記エーテル結合の存在は、NMRデータの解釈をベースとする。これらのエーテル結合の好都合な点は、これらを付加する分子及び任意の配合物の特性(例えば粘度、安定性)を制御できるという点である。鎖間エーテル結合数は、反応中で使用する無水物の相対量によって制御する。たとえは多量の無水物は、鎖間結合数を低下させると予想されるのに対し、少量の無水物はその数を増加させると予想される。
【0059】
再び式1と2を参照して、通常、大豆油誘導体化ジエステルに関しては、脂肪酸アームあたり約3.1個のエステル基がある(平均1.55×2)。通常、大豆油誘導体化モノエステルに関しては、脂肪酸アームあたり約1.55個のエステル基である。脂肪酸アームにそってジエステル及びモノエステル中にエステル官能基を設置することは、金属に対するその吸着性と、フィルム形成性を高めるものと予想される。
【0060】
本発明の一態様において、潤滑剤を合成する一般的な方法は、大きなサイズのアルキル基(R)を付加し、また骨格(backbone)のジエステル及びモノエステル系に分岐を加えることである。この2−エチルヘキサン酸および2−エチル酪酸エステル基の特定のエステル基の高い熱安定性及び加水分解安定性により、これらの基を脂肪酸骨格に結合させた。
【0061】
本明細書の実施例によっては、蒸気脱臭(steam deodorization)を使用した。これは天然油業界で通常、蒸気フローを使用して揮発または蒸留する脂肪酸、モノグリセリド及び他の材料を除去するプロセスである。このプロセスは、本発明ではジエステルとモノエステルの両方を精製するために使用し、扱いにくい(recalcitrant)酸無水物及び酸クロリドを加水分解するために、ピリジンと水との混合物と一緒に反応混合物を加熱するのも別法である。蒸気フローは、トリグリセリドエステル結合を加水分解することなく、好都合には酸無水物と酸クロリドのいずれをもその対応する酸に転換する。本発明で使用するラボスケールの蒸気脱臭アプローチにおいて、粗な反応混合物を、真空ポンプをで負圧下に保持したコンデンサと受けフラスコに接続した丸底脱臭フラスコに入れた。この段階で使用した例では、反応フラスコは、折りたためないチューブを介して水/蒸気レザーバにも接合され、蒸気入口は、脱臭フラスコ中の反応混合物表面下に向けた。水/蒸気レザーバを種々の温度に加熱して、蒸気流入を部分的に制御した。
【0062】
以下の実施例は、本発明の説明を目的とするものであって、本発明の範囲を多少なりとも限定するものではない。
実施例1
本実施例は、図1、反応Aに従って、オートクレーブ中、ジグリムの存在下、触媒としてトリエチルアミンを使用する、エポキシ化大豆油と無水酢酸との反応から製造した大豆油ジアセテートの製造法について説明する。一反応において、エポキシ化大豆油11.27g(0.049molエポキシド)、無水酢酸6.32g(0.062mol)、トリエチルアミン(0.55-0.7mL)、ジグリム(0.5mL)を約125℃のオートクレーブ中で22時間加熱して大豆油ジアセテートに定量的に転換させた。このタイプの反応の進行は、プロトン核磁気共鳴(NMR)分光法で追跡調査した。残存する無水酢酸を短経路蒸留装置中、蒸留によって除去した。この残渣をエチルエーテル150mLに溶解し、水で抽出し、エーテル層を硫酸マグネシウム上で乾燥した。この溶媒をロータリエバポレーターで除去すると、油状物12.69gが得られた。この方法で製造したサンプル(サンプル1)を試験し、表1に示すように後で再試験した(サンプル1A)。大豆油ジアセテートの別のサンプル(サンプル2)を上記と同様の方法で製造し、試験結果を表1に示す。
【0063】
実施例2
この実施例では、図1、反応Aに従って、オートクレーブ中、2-エチルヘキサン酸とジグリムの存在下、触媒としてトリエチルアミンを使用して、エポキシ化大豆油と2-エチルヘキサン酸無水物との反応から製造した大豆油ビス(2-エチルヘキサノエート)の製造法について説明する。一反応において、エポキシ化大豆油74.99g(0.328molエポキシド)、111.37gの2-エチルヘキサン酸無水物(0.412mol)、11.69gの2-エチルヘキサン酸(0.081mol)、2.69gのトリエチルアミン(0.027mol)、3.12gジグリムを、オートクレーブ中、約150℃で20時間加熱して、大豆油ビス(2-エチルヘキサノエート)に完全に転換させた。残存する2-エチルヘキサン酸無水物、2-エチルヘキサン酸、トリエチルアミン及びジグリムをクーゲルロフ短経路蒸留装置で真空蒸留により除去した。NMR分析から、大豆油、2-エチルヘキサン酸無水物、2-エチルヘキサン酸、トリエチルアミン及びジグリムはこの油状物中には残存していないことが判明した。
【0064】
実施例3〜7は、図1、反応Bに一般的に示されるような高温で、炭酸カリウムの存在下、エポキシ化大豆油と種々の酸無水物との反応から製造したホモ置換大豆油の製造法について説明する。
【0065】
実施例3
本実施例は、大豆油ジプロピオネートの製造法について説明する。エポキシ化大豆油(50.0g、約0.219molエポキシド)、34.7mLプロピオン酸無水物(0.263mol)及び3.067g無水炭酸カリウムを、アルゴンを満たしたグローブバッグ中に分配し、加熱マントル、マグネチックスターラー、アルゴンガス入口チューブを備えたコンデンサと反応物中に入れた熱電対とを備えた250mL三つ首フラスコに加えた。フラスコをアルゴンでフラッシュした後、反応混合物を、バブラー装置によってアルゴン雰囲気下に保持した。加熱マントルの抵抗制御を中間に設定し、これによって反応内容物の温度が約4時間後に約206℃に上昇した。反応混合物をこの温度にさらに2時間保持し、その時点でプロトンNMR分析から、全てのエポキシド基が消費されたことが判明した。この反応混合物を一晩放冷し、42℃に加熱して液体に転換させた。この混合物をエチルエーテル2×100mLを添加して分取漏斗に移し、混合したエーテル溶液を、洗液のpHが4に低下してそれ以上変化しなくなるまで、100mLの水で洗浄した。この洗浄によって、過剰量のプロピオン酸無水物を除去せずに、炭酸カリウムを除去した。このエーテル溶液を綿を通し、硫酸ナトリウム溶液上で乾燥し、エーテル溶液を、アスピレーター圧下、50℃浴温、次いで真空ポンプで約0.4トールでロータリエバポレーターでストリッピングした。この混合物を、30mL水と10mLピリジンと一緒に2時間マグネチックスターラーで攪拌しつつ60℃〜70℃に加熱して、過剰量のプロピオン酸無水物をプロピオン酸に加水分解した。この混合物を200mL酢酸エチルで遠心分離管に移し、洗液100mLと一緒に急速に震蘯させると混合物が得られ、これを遠心分離により相分離させて、その後、下部の水性相をピペットで取り除いた。以下の溶液を使用した。水(pH6)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH14)、10%塩酸及び、さらに100mL酢酸エチル(pH1)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、水(pH8)、水(pH7)、水(pH5)、水(pH5)、水(pH5)。酢酸エチル溶液を綿で濾過し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、浴温41℃でアスピレーター圧下、次いで浴温50℃で真空ポンプを使用して0.3トール、2.3時間でロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物64.7gが得られた。NMRおよび赤外(IR)スペクトル分析により、エポキシとヒドロキシル基とプロピオン酸無水物はこの油状物中には残存していないことが判明した。
【0066】
実施例4
この実施例は、大豆油ジイソブチラートの製造法について説明する。エポキシ化大豆油(50.0g、約0.219molエポキシド)、45.0mLイソ酪酸無水物(0.263mol)及び3.027gの無水炭酸カリウムを、アルゴンを充填したグローブバッグ中に分配し、加熱マントル、マグネチックスターラー、アルゴンガス入口チューブを備えたコンデンサと反応物中に入れた熱電対とを備えた250mL三つ首フラスコに加えた。フラスコをアルゴンでフラッシュした後、反応混合物をバブラー装置によってアルゴン雰囲気下に保持した。加熱マントルの抵抗制御を中間に設定すると、55分後、210℃に上昇し、その後、混合物をゆっくりと放冷した。70分後のサンプルのプロトンNMR分析から、全てのエポキシド基が消費されたことが判明した。この反応混合物を一晩放冷し、100mLエチルエーテルと共に温め、すすぎとしてエチルエーテル100mLをさらに使用して分液漏斗に移した。混合したエーテル溶液を、洗液のpHが4に低下して、それ以上変化しなくなるまで、100mL水洗した。相分離が非常に遅かったので、これらの混合物を遠心分離した。この洗浄によって、過剰量のイソ酪酸無水物を除去せずに、炭酸カリウムを除去した。このエーテル溶液を綿を通し、硫酸ナトリウム溶液上で乾燥し、エーテル溶液を、アスピレーター圧下、50℃浴温、次いで真空ポンプで約0.5トールでロータリエバポレーターで3.5時間ストリッピングした。この混合物を、30mL水と10mLピリジンと一緒に2.3時間マグネチックスターラーで攪拌しつつ60℃〜70℃に加熱して、過剰量のイソ酪酸無水物をイソ酪酸に加水分解した。この混合物を200mL酢酸エチルで遠心分離管に移し、洗液100mLと一緒に急速に震蘯させると混合物が得られ、これを遠心分離により相分離させて、その後、下部の水性相をピペットで取り除いた。以下の溶液を使用した。水(pH6)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%塩酸及び、さらに100mL酢酸エチル(pH1)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、水(pH8)、水(pH8)、水(pH5)、水(pH5)、水(pH5)。酢酸エチル溶液を綿で濾過し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、浴温41℃でアスピレーター圧下、次いで浴温50℃で真空ポンプを使用して0.3トール、3時間でロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物56.1gが得られた。NMRおよび赤外(IR)スペクトル分析により、エポキシとヒドロキシル基とイソ酪酸無水物はこの油状物中に残存していないことが判明した。
【0067】
実施例4A
図1、反応Aに従った大豆油ジイソブチラートの製造法。
この実施例は、図1、反応Aに従った大豆油ジイソブチラートの製造法について説明する。以下のものを300mLの攪拌しているオートクレーブに充填した:エポキシ化大豆油(45.86g、約0.2006molエポキシド)、39.14gイソ酪酸無水物(0.2474mol)、4.30gイソ酪酸、(0.0488mol)、1.64gトリエチルアミン(0.0162mol)及び1.91gジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム;0.0142mol)。オートクレーブを100psiアルゴンと大気圧の間のサイクルに3回かけて、オートクレーブの空気をフラッシュし、次いでオートクレーブをアルゴンで100psiに加圧した。酸無水物に相当するカルボン酸を使用すると、大豆油ジアセテートの製造においてジアシル化反応が加速されて、再現可能な結果を与えることが判明した。このオートクレーブを300RPMで攪拌し、内容物を20時間加熱し、その時点で、2.9〜3.1ppm(?)領域の吸収がないことをベースとするプロトンNMR分光法によって全てのエポキシ基が完全に消費されたことが判明した。この反応混合物を丸底フラスコに移し、揮発性成分を、最初はクーゲルロフ装置中、約0.06トールの圧、100℃で1時間、次いで約0.05トールの圧、140℃で5.5時間で加熱することによって除去すると、69.99gの黄色のやや粘稠な液体が得られた。この物質のプロトンNMRスペクトルは、イソブチラート基にそれぞれが結合したエポキシ基に元々結合していた二個のメチン水素原子に相当する4.80〜5.35ppmに吸収があり、これらのシグナルの統合は、殆どジアシル化が完了したことを示していた。このIRスペクトルは、イソブチラートエステル基に対応する1737cm-1に強い吸収があった。
【0068】
実施例5
この実施例は、大豆油誘導体化ビス(2-エチルブチラート)の製造法について説明する。エポキシ化大豆油(25.0g、約0.110molエポキシド)、28.18gビス(2-エチルイソ酪酸)無水物(0.132mol)及び1.520gの無水炭酸カリウムを、アルゴンを充填したグローブバッグ中に分配し、加熱マントル、マグネチックスターラー、アルゴンガス入口チューブを備えたコンデンサと反応物中に入れた熱電対とを備えた250mL三つ首フラスコに加えた。フラスコをアルゴンでフラッシュした後、反応混合物を、バブラー装置によってアルゴン雰囲気下に保持した。加熱マントルの抵抗制御を、中間に設定し、約64分後、混合物の温度を約203℃に上昇させた。93分後、温度はゆっくりと198℃に低下し、この時点でプロトンNMR分析から、全てのエポキシド基が消費されたことが判明した。この反応の間には殆ど発泡はなかった。この反応混合物を一晩放冷し、25mLエチルエーテルと共に温め、すすぎとしてエチルエーテル25mLをさらに使用して分液漏斗に移した。混合したエーテル溶液を、洗液のpHが4に低下して、それ以上変化しなくなるまで50mL水洗した。エチルエーテル50mLを添加した後、変化はなかった。この洗浄によって、過剰量のビス(2-エチルイソ酪酸)無水物を除去せずに、炭酸カリウムを除去した。このエーテル溶液を綿を通し、硫酸ナトリウム溶液上で乾燥し、エーテル溶液を、アスピレーター圧下、43℃浴温でロータリエバポレーターでストリッピングした。この混合物を、15mL水と5mLピリジンと一緒に2時間マグネチックスターラーで攪拌しつつ60℃で加熱して、過剰量のビス(2-エチルイソ酪酸)無水物をイソ酪酸に加水分解した。この混合物を50mL酢酸エチルで遠心分離管に移し、洗液100mLで急速に震蘯させると混合物が得られ、これを遠心分離により相分離させて、その後、下部の水性相をピペットで取り除いた。以下の溶液を使用した。水(pH6)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH14)、10%塩酸及び、さらに100mL酢酸エチル(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、水(pH7)、水(pH6)、水(pH5)、水(pH5)、水(pH5)。さらに100mLの酢酸エチルを添加した後、この溶液を綿で濾過し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、浴温41℃でアスピレーター圧下、次いで浴温50℃で真空ポンプを使用して0.55トールで4時間ロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物37.9gが得られた。NMRおよび赤外(IR)スペクトル分析により、エポキシとヒドロキシル基とビス(2-エチルイソ酪酸)無水物はこの油状物中には残存していないことが判明した。
【0069】
実施例6
本実施例は、大豆油ジヘキサノエートの製造法について説明する。エポキシ化大豆油(50.0g、約0.219molエポキシド)、61.47mLヘキサン酸無水物(0.263mol)及び3.032gの無水炭酸カリウムを、アルゴンを充填したグローブバッグ中に分配し、加熱マントル、マグネチックスターラー、アルゴンガス入口チューブを備えたコンデンサと反応物中に入れた熱電対とを備えた250mL三つ首フラスコに加えた。フラスコをアルゴンでフラッシュした後、反応混合物を、バブラー装置によってアルゴン雰囲気下に保持した。加熱マントルの抵抗制御を中間に設定し、これによって約65分後、混合物の温度を約236℃に上昇させ、93分後、抵抗設定を下げることなく217℃に冷却した(発熱があったことが示された)。反応混合物が約150℃に到達すると、かなり発泡が見られた。サンプルのプロトンNMR分析から、このときに全てのエポキシド基が消費されたことが判明した。この反応混合物を一晩放冷し、次いで50mLエチルエーテルと共に温め、すすぎとしてエチルエーテル50mLをさらに使用して遠心分離管に移した。続く全ての洗浄では効果的に相分離させるには遠心分離が必要であった。混合したエーテル溶液を、洗液のpHが4に低下して、それ以上変化しなくなるまで、50mLの水で洗浄した。この洗浄によって、過剰量のヘキサン酸酸無水物を除去せずに、炭酸カリウムを除去した。このエーテル溶液を綿を通し、硫酸ナトリウム溶液上で乾燥し、エーテル溶液を、アスピレーター圧下、43℃浴温でロータリエバポレーターでストリッピングした。この混合物を、30mL水と10mLピリジンと一緒に2時間マグネチックスターラーで攪拌しつつ60℃に加熱して、過剰量のヘキサン酸無水物をヘキサン酸に加水分解した。この混合物を100mL酢酸エチルで遠心分離管に移し、洗液100mLで急速に震蘯させると混合物が得られ、これを遠心分離により相分離させて、その後、下部の水性相をピペットで取り除いた。以下の溶液を使用した。水(pH6)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH14)、10%塩酸(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、水(pH7)、水(pH6)、水(pH5)、水(pH5)。さらに100mLの酢酸エチルを添加した後、この溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、浴温50℃でアスピレーター圧下、次いで浴温50℃で真空ポンプを使用して0.3トール、4時間でロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物65.6gが得られた。NMRおよび赤外(IR)スペクトル分析により、エポキシとヒドロキシル基とヘキサン酸無水物はこの油状物中に残存していないことが判明した。
【0070】
実施例6A
酸無水物または酸クロリドを除去するために蒸気脱臭プロセスを使用する大豆油ジヘキサノエート(実施例6は、ピリジン/水を使用して過剰量のヘキサン酸無水物を除去することについて記載する)
ヘキサン酸無水物を除去するためのピリジンと水との処理の前に、蒸気脱臭(steam deodorization)を使用して、実施例6で記載したのと同一手順を使用して製造しておいた大豆油ジヘキサノエートの粗な反応混合物221.7gを精製した。この材料は約22の出発酸価(starting acid value)を有していた。顕著な発泡のため圧力は0.5トールに低下したので、当初、水蒸気は周囲温度で保持したサンプルに通さなかった。発泡が落ち着くにつれて、温度は193℃に上昇し、圧力は0.2トールに低下し、この間に系内に水蒸気を4時間通し、その後、温度は240℃に上昇したが、発泡によりかなりの材料が失われた。反応混合物酸価は0.47に低下し、その質量の21%がこの時点で蒸留していた。水蒸気スループットを高めつつ0.1〜0.15トール、245〜250℃でさらに1.5時間後、酸価は0.08に低下した。酸価をもっと低下させようと、混合物を同じ温度と圧力で2.5時間保持すると、酸価0.06の材料が得られた。この時点での質量回復率はたったの58%であり、酸価は0.06に低下し、この材料を珪藻土床を通して痕跡量の栓のグリースを除去した。顕著な発泡によって失われた物質の損失量は、そのような発泡を最小化させる脱臭装置を変形することによって低下させることができる。しかしながら、大豆ジエステルは、蒸気脱臭流出物の赤外線分析を使用して以下に示すように、大豆油ビス(2-エチルヘキサノエート)の蒸気蒸留で測定されたように、その蒸留によっても失われるようである。かくして、効果的な蒸気脱臭では、大豆油エステル生成物を蒸留する前に、殆どの酸性成分を除去するために、このプロセスを変形するか、停止しなければならない。
【0071】
実施例7
本実施例では、大豆油ビス(2-エチルヘキサノエート)の製造法について説明する。エポキシ化大豆油(25.0g、約0.110molエポキシド)、35.06gビス(2-エチルヘキサン酸)無水物(0.1315mol)及び1.5295gの無水炭酸カリウムを、加熱マントル、マグネチックスターラー、アルゴンガス入口チューブを備えたコンデンサと反応物中に入れた熱電対とを備えた250mL三つ首フラスコに加えた。フラスコをアルゴンでフラッシュした後、反応混合物を、バブラー装置によってアルゴン雰囲気下に保持した。加熱マントルの抵抗制御を中間に設定し、約60分後、混合物の温度を約212℃に上昇させた。76分後、反応混合物は227℃に到達したが、60分後に得られた反応混合物のプロトンNMR分析から、このときに全てのエポキシド基が消費されたことが判明した。この反応混合物を一晩放冷し、次いで50mLエチルエーテルと共にゆっくり温め、すすぎとしてエチルエーテル50mLをさらに使用して混合物を部分的に溶かして遠心分離管に移した。この混合物を、洗液のpHが4.5に低下するまで、50mL水で洗浄した。この洗浄によって、過剰量のビス(2-エチルヘキサン酸)酸無水物を除去せずに、炭酸カリウムを除去した。このエーテル溶液を綿を通し、硫酸ナトリウム溶液上で乾燥し、エーテル溶液を、アスピレーター圧下、50℃浴温でロータリエバポレーターでストリッピングした。この混合物を、15mL水と5mLピリジンと一緒に2時間マグネチックスターラーで攪拌しつつ65℃に加熱して、過剰量のビス(2-エチルヘキサン酸)無水物をビス(2-エチルヘキサン)酸に加水分解した。この混合物を50mL酢酸エチルで遠心分離管に移し、洗液50mLで急速に震蘯させると混合物が得られ、これを遠心分離により相分離させて、その後、下部の水性相をピペットで取り除いた。以下の溶液を使用した。水(pH6.5)、10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%塩酸(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、水(pH6)、さらに酢酸エチル50mL(pH6)、水(pH5)、水(pH5)。この酢酸エチル溶液を綿で濾過し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、浴温46℃でアスピレーター圧下、次いで真空ポンプを使用して0.5トールでロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物45.6gが得られた。しかしながら、NMRおよび赤外(IR)スペクトル分析で、無水物カルボニル基の立体的にひどく密集していたことから、この油状物中に無水物が残存していないことが判明した。かくして、水/ピリジンを使用する無水物加水分解の上記プロセスを繰り返したが、混合物は190分間攪拌し、次いでこの混合物を200mLの酢酸エチルで分液漏斗に移した。この混合物を以下の洗浄溶液で洗浄し、以下のpH価が得られた:水(pH6.5)、10%水酸化ナトリウム(pH13)、10%水酸化ナトリウム(pH12)、10%塩酸(pH0〜1)、5%重炭酸ナトリウム(pH8.5)、水及びさらに55mLの酢酸エチル(pH7)、水(pH5.5)、水およびさらに50mLの酢酸エチル(pH5.5)。この酢酸エチル溶液を綿で濾過し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、アスピレーター圧下、浴温50℃で、次いで真空ポンプでロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物41.0gが得られた。この物質のNMRスペクトルから、この油状物にはビス(2-エチルヘキサン酸)無水物が残存していないことが判明した。
【0072】
実施例7A
ビス(2-エチルヘキサン酸)無水物を除去するためにピリジンと水との処理の前に、蒸気脱臭を使用し、実施例7と同一手順を使用し、2バッチで製造しておいた大豆油ビス(2-エチルヘキサノエート)の粗な反応混合物398.6gを精製した。この材料は、出発酸価12.86であった。反応混合物の温度は、蒸気フローなしに0.1トールで210℃に最初に上昇させ、その時点で、温度が250℃に到達するまで水蒸気フローをゆっくりと増加させた。高いポット温度で集めた流出物の粘度は最初に集めたものよりもずっと高く、このことは、生成物ジエステルがこの時点で蒸留されていることを示す。この段階での反応混合物の重量は329.7gであり、これは17.5%の重量減に相当するが、過剰量の酸無水物をベースとして予想された重量減は約9.7%であった。この段階での酸価は0.37であった。第一の段階で使用した量と比較して蒸気量を増加させつつ蒸気脱臭を継続し、さらに材料9.6%を蒸留した。しかしながら、この材料の酸価が0.38であったということは、第一段階で過剰量の無水物が効果的に除去されたことを示している。反応混合物を珪藻土床に通して、痕跡量の栓のグリースを除去した。第一段階の流出物の赤外線分析では、無水物、エステル及び酸のピークがそれぞれ1813、1737、及び1708cm-1であることが示され、第二段階の流出物は主にエステルであり、このことは、大豆油ビス(2-エチルヘキサノエート)がこれらの条件下でも蒸気蒸留できることを示している。従って、効果的な蒸気脱臭では、生成物の潤滑剤も蒸留する前に、プロセスを適当に停止しなければならない。
【0073】
実施例8〜14は、エポキシ化大豆油の水素化と、この生成物と酸無水物または酸クロリドとのアシル化によって形成した大豆油モノエステルの製造法について記載する。エポキシ化大豆油の水素化は、パール(Paar)震蘯水素化装置で実施した。典型的な実施例では、29.4gの炭素上10%パラジウムをアルゴンを予め散布しておいた2.5Lパールボトルに入れ、751mlエタノールと40ml氷酢酸の混合物中のエポキシ化大豆油164.8g(Vikoflex 7170、オキシラン数7.0)の溶液を添加した。ボトルを水素化装置に取り付け、60psi水素まで6回のサイクルで圧縮し、大気圧付近に解放した。水素圧を50〜60psi近くに保持し、反応を約8日間進行させ、この時点でボトル圧の低下は最小となり、ボトルを、リザーバ水素化タンクから単離した。反応混合物を、濯ぎ用の冷エタノール(glacial ethanol)を使用して珪藻土床を通して濾過し、この溶液を高真空下で凍結乾燥すると、白色固体112.0gが得られた。プロトンNMR分光法により、エポキシ基が完全に消費されたことが判明し、また形成したモノグリセリドとジグリセリドのレベルが低かったことが判明した。
【0074】
実施例8
本実施例は、図2に従って大豆油モノアセテートの製造法について説明する。水素化エポキシ化大豆油(23.43g、0.104molヒドロキシル基)を、マグネチックスターラーを備えた1Lフラスコ中、352mLの無水酢酸(3.73mol)と11.7mLのピリジンと反応させ、60℃で125分間加熱した。過剰量の無水酢酸を100℃以下の温度、約0.1トール圧でクーゲルロフ装置中で蒸留すると、琥珀色流体26.8gが得られた。このサンプルをアシル化剤として無水酢酸とアセチルクロリドと、同様の方法で製造した二つの小ロットと混合した(全てのロットは同一プロトンNMRスペクトルであったから)。この材料はやや濁っていたので、ヘキサンに溶解し、0.22ミクロンのGeneral Solvent膜フィルターを通し、ストリッピングすると、32.31gの油状物となった。NMR分析から、この材料は痕跡量の無水酢酸を含んでいたことが判明したので、クーゲルロフ装置で100℃、約0.1トールで再び蒸留すると、油状物32.01gが得られた。
【0075】
実施例9
この実施例は、図2に従った大豆油モノイソブチラートの製造法について説明する。水素化エポキシ化大豆油(19.6g、0.0870molヒドロキシル)を、マグネチックスターラーを備えた250mLフラスコ中、209.9gのイソ酪酸無水物(1.327mol)と12.0mLのピリジンと反応させ、アルゴン雰囲気下、75〜76℃で2.0時間加熱した。過剰量のイソ酪酸無水物を100℃以下の温度、37ミクロンまでの圧力でクーゲルロフ装置中で留去すると、油状物13.61gが得られた。この材料のIRスペクトル分析では、無水物または酸のバンドは明らかにならなかったが、サンプルはイソ酪酸の臭いがしたので、この材料を水15mLとピリジン15mLと一緒に65℃で2時間、急速攪拌しながら加熱してさらに加水分解にかけた。この材料を酢酸エチル150mLで遠心分離管に移し、水性洗液50mLで急速に震蘯すると、混合物が得られ、これを遠心分離によって相分離し、その後、下部相をピペットで取り除いた。以下の溶液を使用し、以下の洗液のpH価を検知した:水(初期濯ぎの一部として使用)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH14)、10%塩酸プラス追加の酢酸エチル50mL(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH8)、水100mL及び酢酸エチル50mL(pH6.5)、水100mL及び酢酸エチル50mL(pH5.5)。この酢酸エチル溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥し、綿で濾過し、浴温50℃でアスピレーター圧下、次いで真空ポンプを使用して0.1トールで3時間ロータリーエバポレーターでストリッピングすると、油状物が得られた。NMR及びIRスペクトル分析から、エポキシ基及びヒドロキシル基及びイソ酪酸無水物は、この油状物中には残存していないことが判明した。
【0076】
実施例9A
大豆油モノイソブチラート
本実施例は、図2に従って大豆油モノイソブチラートの製造法について説明する。マグネチックスターラーと、ガス入口管を備えた環流コンデンサのついた2L三つ首丸底フラスコに、水素化大豆油112.06g(0.490molヒドロキシル基)及びイソブチリルクロリド57.43g(0.539mol)及びジエチルエーテル692mlを添加した。攪拌した反応混合物をアルゴンでフラッシュし、バブラー装置を使用してアルゴン雰囲気下で保持し、ピリジン44.78g(0.566mol)を、フラスコを加熱せずにフラスコのネック部分の隔壁を介してシリンジでゆっくりと添加した。この混合物を10時間環流し、ついで冷蔵庫に入れてから、ピリジンを中程度の多孔度ガラスフリットで濾過した。濾液を5%塩酸(pH0)の350ml分、5%重炭酸ナトリウム3回分(それぞれpH9)、水(pH8)、水(pH6)、水(pH5)で洗浄した。このエーテル層を予備乾燥のために綿に通し、次いで硫酸ナトリウム上で乾燥した。この混合物をアスピレーター圧下、次いでクーゲルロフ装置中、100℃及び0.04トールで2時間、次いで115℃及び0.02トールで0.5時間ロータリエバポレーターでストリッピングすると、液体102.1gが得られた。この材料をアルミナ床に材料を通すためにアルゴンガスを使用して加圧フィルター装置中、塩基性アルミナ(75g)を通し、生成物を同じアルミナ床にさらに2回以上通すと、酸価0.091の物質65.0gが得られた。
【0077】
実施例10
本実施例は、図2に従って大豆油モノヘキサノエートの製造法について説明する。水素化エポキシ化大豆油(50.0g、0.218molヒドロキシル)、33.71gヘキサノイルクロリド(0.2505mol)及び20.3mLピリジン(0.2505mol)を、無水エーテル270mLに溶解し、アルゴン雰囲気下で7時間環流した。一晩攪拌した後、ピリジン塩酸塩の沈殿をエーテル濯ぎ液を使用してガラスフリットで濾過して除去した。この溶液を分液漏斗に移し、以下の水溶液150mLで抽出し、洗浄すると、除去後に以下のpH価であった:5%塩酸2×150mL(pH0、0)、10%重炭酸ナトリウム150mL(pH9)、10%重炭酸ナトリウム150mL(pH9)、及び10%重炭酸ナトリウム150mL(pH9)。この時点で、エーテル溶液の少量を蒸発させて、IRスペクトルを得、酸クロリドがまだ残存することが確認された。重炭酸ナトリウム溶液で連続抽出してもヘキサノイルクロリド濃度が目に見えて減らなかったので、エーテル溶液を乾燥、蒸発させて、残渣を水15mLとピリジン5mLと一緒に迅速に攪拌しながら、65℃で3時間加熱した。この物質を酢酸エチル150mLと水150mLで分液漏斗に移し、水性溶液150mLと一緒に迅速に攪拌すると、混合物が得られ、これを分液漏斗中で相分離した。以下の洗液を使用し、以下のpH価が得られた:水、10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%水酸化ナトリウムプラス酢酸エチル75mL、10%塩酸(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH8)、水100mL(pH6)、水100mL(pH6)。この酢酸エチル溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、綿で濾過し、浴温50℃でアスピレーター圧下、次いで真空ポンプを使用して2時間ロータリーエバポレーターでストリッピングすると、油状物25.01gが得られた。NMRとIRスペクトル分析から、エポキシ基とヒドロキシル基とヘキサノイルクロリドは、この油状物中には残存していないことが判明した。
【0078】
実施例10A
大豆油モノヘキサノエート
本実施例は、図2に従った大豆油モノヘキサノエートの製造法について説明する。水素化エポキシ化大豆油119.4gを使用し、全ての試薬の割合を維持しつつ、溶媒として酢酸ではなくエタノールを使用してエポキシ化大豆油を還元した以外には、実施例10に記載の方法をこの物質の製造のために使用した。ピリジン/水手順を使用して(実施例10に記載)加水分解し、痕跡量の酸クロリドを除去すると、酸価0.54の液体119.1gが得られた。この材料をアルミナ床に材料を通すためにアルゴンガスを使用して加圧フィルター装置中、塩基性アルミナ(75g)に通し、生成物を同じアルミナ床にさらに2回以上通すと、酸価0.144の液体78.3gが得られた。このアルミナ床をエーテルで抽出し、ストリッピングすると、酸価0.149の物質がさらに19.8g得られた。
【0079】
実施例11
本実施例は、図2に従って大豆油モノ2-エチルヘキサノエートの製造法について説明する。水素化エポキシ化大豆油(47.0g、0.206molヒドロキシル)、37.54gの2-エチルヘキサノイルクロリド(0.2262mol)及びピリジン19.94mL(0.2467mol)を、無水エーテル270mLに溶解し、アルゴン雰囲気下、10時間環流した。一晩攪拌した後、ピリジン塩酸塩の沈殿を、エーテル濯ぎを使用してGeneral Solvent膜フィルターを通して濾過により除去した。この混合物によって固体ができたので、これを冷蔵庫に一晩おき、General Solvent膜フィルターで再び濾過した。これをアスピレーター圧下でストリッピングすると、濁った白色溶液74.7gが得られ、これを水37.5mLとピリジン12.5mLと一緒に65℃で約3時間加熱した。この溶液を酢酸エチル150mLで遠心分離管に移し、以下の溶液150mLで洗浄し、相分離後に以下のpH値であった:10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%塩酸(pH0)、5%重炭酸ナトリウム150mL(pH9)、10%重炭酸ナトリウム150mL及び酢酸エチル40mL(pH9)、10%重炭酸ナトリウム150mLプラス酢酸エチル40mL(pH7〜8)、水プラス酢酸エチル50mL(pH6)。この時点で、エーテル溶液の少量を蒸発させ、IRスペクトルを得て、残りの酸クロリドがまだ存在するということにより確認した。かくして、エーテル溶液を乾燥し、蒸発させ、この残渣を水38mLとピリジン17mLと一緒に65℃で6時間、迅速に攪拌しなが加熱した。この材料を酢酸エチル250mLと水100mLで遠心分離管に移し、水性洗液100mLと共に迅速に震蘯すると、混合物が得られ、これを遠心分離により相分離した。以下の洗浄液を使用し、以下の洗浄pHが得られた:水、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH11)、10%塩酸(pH0)、10%塩酸(pH0)、10%重炭酸ナトリウム(pH8)、水100mL(pH5.5)。酢酸エチル溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾紙で濾過し、浴温50℃でアスピレーター圧下、次いで真空ポンプで0.04トールで2.5時間、ロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物25.96gが得られた。NMRとIRスペクトル分析から、エポキシ基とヒドロキシル基と2-エチルヘキサノイルクロリドが油状物中に残存していないことが判明した。
【0080】
実施例11A
大豆油モノ(2-エチルヘキサノエート)
本実施例は、図2に従って大豆油モノ(2-エチルヘキサノエート)の製造法について説明する。水素化エポキシ化大豆油116.2gを使用し、全ての試薬比を維持しつつ、溶媒として酢酸ではなくエタノールを使用してエポキシ化大豆油を還元した以外には、実施例11に記載の方法を使用した。ピリジン塩酸塩を除去した後、加水分解し、過剰量の酸クロリドを除去するためにピリジン/水手順(実施例X、Yに記載)を使用すると、酸価0.68の物質155.8gが得られた。この物質のプロトンNMRスペクトルは、エステル基に結合したメチン水素原子に相当する4.76〜5.04ppmに吸収があった。この物質(150.0g)をアルミナ床に材料を通すためにアルゴンガスを使用して加圧フィルター装置中、塩基性アルミナ(71g)に通し、生成物を同じアルミナ床にさらに2回以上通すと、酸価0.16の物質104.2gが得られた。
【0081】
実施例12
大豆油混合モノ(ヘキサノエート/アセテート、50:50)
本実施例は、図2に従って大豆油混合モノ(アセテート/ヘキサノエート、50:50)の製造法について説明する。マグネチックスターラーと、ガス入口管を備えた環流コンデンサのついた1L三つ首丸底フラスコに、水素化大豆油58.50g(酢酸ではなくエタノール中でエポキシ化大豆油の還元により製造;0.2559molヒドロキシル基)、ピリジン23.08g(0.2918mol)及びジエチルエーテル337mlを添加した。攪拌した反応混合物をバブラー装置を使用してアルゴン雰囲気下で保持し、ヘキサノイルクロリド19.64g(0.1459mol)とアセチルクロリド(11.45g;0.1459mol)をフラスコを加熱せずに、フラスコネックの隔壁を介してシリンジで順に添加した(ヘキサノイルクロリドを先に添加)。この混合物を10時間環流し、ついで冷蔵庫で冷却してから、ピリジン塩酸塩を0.22ミクロンGeneral Solvent(GS)膜で濾過し、溶媒をロータリエバポレーターで除去した。過剰量の酸クロリドを加水分解するために、ピリジン22.6ml、水62.7mlをこの混合物に添加し、これをメカニカルスターラーで8時間、激しく攪拌しながら、65℃に保持した油浴中で加熱した。この混合物を酢酸エチル187mlで1Lプラスチックボトルに移し、混合物を水性洗浄溶液50ml分で抽出し、その後、下層をピペットで取り除き、以下の洗浄pH値が観察された:10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%HCl(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、10%重炭酸ナトリウムプラス酢酸エチル50mL(pH9)、10%重炭酸ナトリウムプラスさらに酢酸エチル113mL(pH9)、水(pH9)、水(pH7〜8)、水(pH5〜6)。混合物を硫酸ナトリウム上で一晩乾燥し、溶媒を70℃、アスピレーター圧下ロータリエバポレーターで最初にストリッピングすると物質55.49gが得られ、これをさらに120℃、0.08〜0.02トールで4時間、クーゲルロフ装置(真空ポンプ付き)中でストリッピングすると、透明、薄黄色でやや粘稠な液体53.97gが得られた。この物質は酸価0.96であった。
【0082】
実施例13
大豆油混合モノ(ヘキサノエート/イソブチラート、50:50)
本実施例は、図2に従って大豆油混合モノ(イソブチラート/ヘキサノエート、50:50)の製造法について説明する。メカニカルスターラー装置と、ガス入口管を備えた環流コンデンサのついた1L三つ首丸底フラスコに、水素化大豆油58.50g(酢酸ではなくエタノール中でエポキシ化大豆油の還元により製造;0.2559molヒドロキシル基)、ピリジン23.08g(0.2918mol)及びジエチルエーテル337mlを添加した。攪拌した反応混合物をバブラー装置を使用してアルゴン雰囲気下で保持し、イソブチリルクロリド(13.50g;0.1459mol)とヘキサノイルクロリド19.64g(0.1459mol)をフラスコを加熱せずに、フラスコネックの隔壁を介してシリンジで順に添加した(イソブチリルクロリドを先に添加)。この混合物を10時間環流し、その後、ピリジン塩酸塩を0.22ミクロンGeneral Solvent(GS)膜で濾過し、溶媒をロータリエバポレーターでストリッピングした。過剰量の酸クロリドを加水分解するために、ピリジン22.6ml、水62.7mlをこの混合物に添加し、これをメカニカルスターラーで5時間、激しく攪拌しながら、65℃に保持した油浴中で加熱した。この混合物を酢酸エチル187mlで1Lプラスチックボトルに移し、混合物を水性洗浄溶液50ml分で抽出し、その後、下相をピペットで取り除き、以下の洗浄pHが観察された:10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%HCl(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、10%重炭酸ナトリウムプラス酢酸エチル50mL(pH9)、10%重炭酸ナトリウムプラスさらに酢酸エチル113mL(pH9)、水94mL(pH9)。混合物を硫酸ナトリウム上で一晩乾燥し、溶媒を70℃、アスピレーター圧下ロータリエバポレーターで、さらに120℃、0.07トールで2.5時間、クーゲルロフ装置(真空ポンプ付き)中でストリッピングすると、透明、殆ど無色でやや粘稠な液体70.05gが得られた。この物質のプロトンNMRスペクトルは、エステル基に結合したメチン水素原子に相当する4.80〜5.04ppmに吸収があった。この物質は酸価0.86であった。
【0083】
実施例14
大豆油混合モノ(ヘキサノエート/2-エチルヘキサノエート、50:50)
本実施例は、図2に従って大豆油混合モノ(ヘキサノエート/2-エチルヘキサノエート、50:50)の製造法について説明する。マグネチックスターラーと、ガス入口管を備えた環流コンデンサのついた1L三つ首丸底フラスコに、水素化大豆油80.40g(酢酸ではなくエタノール中でエポキシ化大豆油の還元により製造;0.3519molヒドロキシル基)、ピリジン31.56g(0.3990mol)及びジエチルエーテル462mlを添加した。攪拌した反応混合物をバブラー装置を使用してアルゴン雰囲気下で保持し、2-エチルヘキサノイルクロリド32.61g(0.1995mol)とヘキサノイルクロリド(26.99g;0.1995mol)をフラスコを加熱せずに、フラスコネックの隔壁を介してシリンジで順に添加した(ヘキサノイルクロリドを先に添加)。この混合物を10時間環流し、ついで冷蔵庫温度に冷却してから、ピリジン塩酸塩を0.22ミクロンGeneral Solvent(GS)膜で濾過し、エーテルをロータリエバポレーターで除去した。過剰量の酸クロリドを加水分解するために、ピリジン21.2ml、水64.1mlをこの混合物に添加し、これをメカニカルスターラーで8時間、激しく攪拌しながら、65℃に保持した油浴中で加熱した。この混合物を酢酸エチル200mlで1Lプラスチックボトルに移し、混合物を水性洗浄溶液100ml分で抽出し、その後、下部相をピペットで取り除き、以下の洗浄pHが観察された:10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウムプラス酢酸エチル50ml(pH10)、20%水酸化ナトリウム(pH14)、HCl(pH1)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、10%重炭酸ナトリウムプラスさらに酢酸エチル50mL(pH9)、10%重炭酸ナトリウムプラスさらに酢酸エチル113mL(pH9)、水(pH9)、水(pH7)、水(pH6.5〜7.0)、水(pH5.5〜6)。混合物を硫酸ナトリウム上で一晩乾燥し、溶媒を40℃、アスピレーター圧下ロータリエバポレーターで、さらに140℃、0.03トールで2時間、クーゲルロフ装置(真空ポンプ付き)中でストリッピングすると、透明、薄黄色でやや粘稠な液体70.0gが得られた。この物質は酸価0.64であった。
【0084】
【表1】
【0085】
**:実施例4Aに従ったプロセスを製造に使用する。
***:蒸気脱臭を実施例5A、6A及び7Aで使用する以外には、実施例5及び6に従ったプロセスを使用する。
****:実施例4Aに従ったプロセスと、熱水抽出、エタノールアミンを添加して過剰量の酸無水物と反応させる。
【0086】
実施例1Aは、実施例1の材料の繰り返し試験であり、実施例1Bは、実施例1の繰り返しの製造例である。
【0087】
【表2】
【0088】
ESO:エポキシ化大豆油
潤滑スクリーニング試験(lubrication screening test)は、大豆油ジエステル及びモノエステルに関して、表1、2及び3に記載のごとく実施した。
【0089】
ペンシルバニア州ミクロ酸化テスト(the Penn. State micro-oxidation test)は、空気に暴露されているステンレススチール表面でサンプルを加熱し、付着率と蒸発重量率とを測定することを含む。標準物質と比較して割合が低いと、潤滑剤候補の酸化安定性の尺度を提供する。全ての酸化安定性試験は、酸化安定剤を添加せずに実施した。表1、2及び3には、本発明の油が、RBD大豆油並びに高オレイン酸大豆種油よりもずっと少量の付着率及び蒸発率であることがわかる。高い補助的な酸化安定性を提供するために、同量の酸化防止剤を添加することによって、未変性RBD大豆油と比較して高い酸化安定性が本発明の変性油に与えられるはずである。この効果は、酸化防止剤である亜鉛ジアルキルジチオフォスフェート(2DDP)を1%レベルで添加することによって証明された。大豆油ジエステルサンプル4A、5及び特に蒸気蒸留によって精製した5Aと7は非常に低い付着率となり、これはエステルカルボニル基に対してアルファ位でアルキル基に懸垂するエステル基に起因し、脂肪酸骨格にさらなる酸化安定性を提供する。加水分解安定性はこれらのサンプルでは評価しなかったが、カルボニル基に対してアルファ位で分岐をもつこれらのエステル基は、この分岐を持たないエステル側鎖と比較して実質的に高い加水分解安定性をもつものと予想される。実施例5は、全ての調整サンプルの中で最も低い蒸発重量損失比も提供する。実施例1、3、4A、6B、8、12、13及び14も、低い付着物重量比を与えた。サンプル5A、6A(蒸気脱臭により精製)及び実施例6Bにより解るように、1%ZDDPも付着物重量%をかなり改善したことが解る。少量の残存溶媒の蒸発は、一部、蒸発重量損失比に寄与しているとも考えられる。
【0090】
注目すべき蒸発重量比は、実施例1A、1B、5、5A、6、6A、12、13及び14で得られた。1%ZDDPは、サンプル5A、6C、13及び14に見られるように、蒸発重量%をかなり改善したことも解る。
【0091】
40℃と100℃の両方で大豆油ジエステルとモノエステルの粘度は、トリグリセリド対照の粘度よりもかなり高く、同じサイズのRまたはR’を比較したとき、任意のジエステルの粘度は、対応するモノエステルの粘度よりも高いことが解る。試験した全ての油は生分解性であることが判明し、その高い粘度により粘度エンハンサー及び潤滑剤ベース油としての使用が予想される。大豆油ジアセテート(サンプル1、1A、及び1B)は、特に大きな粘度での改良点を提供し、この用途に関しては高粘度が必要とされるので、削岩流体として特別な用途をもつ。生分解性であることと非毒性であることは、そのような削岩流体は岩盤や井堀削の間に横切った地下水位に残ってしまうので、この用途に関しては特に重要な特性であろう。
【0092】
粘度指数(viscosity index)は、温度変化による粘度変化の尺度であり、特定の温度区間にわたって温度が変化するにつれて、粘度に望ましい小さな変化がある物質は粘度指数が大きい。本発明の油は広範な粘度指数範囲を有し、そのうちの一つのサンプル9(大豆油モノイソブチラート)は、大豆油対照よりも粘度指数がかなり高い。
【0093】
測定した全サンプルの曇り点は対照よりもずっと優れていた。曇り点は飽和成分の内部相分離の兆候であり、低い方が好ましい。表1において「なし」なる表示は、流動点測定に含まれる最低温度に対して曇り点が観察されなかったことを示す。全大豆油ジエステルサンプルに関して測定された曇り点は、大豆油対照に対して優れた改良点を示した。大豆油モノエステルに関しては、サンプル8と11以外の全サンプルの曇り点は、対照のRBD大豆油よりもよく、サンプル12、12及び14は、大豆油よりもずっと良かった。
【0094】
潤滑剤の流動点は、材料がASTM D97に従って流れる最低温度を示し、低温用途が可能になるようにできるだけ低くなければならない。少量の流動点降下剤は、流動点を好都合に低下させることもできる。流動点を測定し、表1及び2に列記する。大豆油ジエステルサンプル5、5A、6、6A及び6Bは、大豆油対照よりも流動点が改良された。大豆油ジエステルに関しては、最も良い結果は、直鎖及び分岐鎖の6個の炭素原子のエステル側鎖(実施例5、5A、6、6A、6B、及び6C)に関して得られた。最良の挙動は、蒸気脱臭(6A)され、中オレイン酸(midoleic)大豆油(6C)から誘導した大豆油ジヘキサノエートで達成された。1%Lubrizol 3715Aと本発明の材料との混合物に関する流動点を表1、2及び3に示す。1%Lubrizol 3715を使用する流動点は、実施例6に関しても試験し、同様の結果であった。サンプル5、6及び6Cに関しては、Lubrizolを使用するとかなり低い流動点となった。−21℃という流動点が、脱臭した大豆油ジヘキサノエート(サンプル6A)と、中-オレイン酸(mido-oleic)大豆油(実施例6C)から誘導した大豆油ジヘキサノエートで達成されたことは、注目に値する。これらのサンプルは両方とも、1%流動点降下剤を添加すると、−23℃の流動点であった。この低い流動点により、大豆油よりも明らかに有利である。
【0095】
流動点は、ホモ置換大豆油モノエステルに関しても評価し、ヘキサノエート(実施例10)と2-エチルヘキサノエート(実施例11)は、それぞれ−15℃と−18℃であった。ヘキサノエートとイソブチラート(実施例13)と、ヘキサノエートと2-エチルヘキサノエート(サンプル14)の約1:1比のヘテロ置換モノエステルは、それぞれ−24℃と−22℃の流動点であった。
【0096】
この結果はおおまかに以下のようにまとめられる:ミクロ酸化特性は、鉱物ベース油及び合成油のものと匹敵し得ることが知見された。高い粘度が多くのサンプルで達成されたので、バイオベースの油(biobased oil)、添加剤および粘度エンハンサーとしての使用できる。粘度指数は、通常Rの大きさが大きくなるにつれて頂点に達し、その後低下する。ピーク粘度指数は以下のようである:ジエステル(ジヘキサノエート−141、サンプル6);モノエステル(モノイソブチラート−281)。通常、流動点は、Rが大きくなるにつれて最小化する、たとえばジエステル(ジヘキサノエート:−12℃、−21℃、及び−23℃、流動点降下剤を使用、実施例6A);モノエステル(モノイソブチラート:−7℃、及び−12℃、流動点降下剤を使用、サンプル9;モノヘキサノエート:−15℃、及び−18℃、流動点降下剤を使用、サンプル10及び2-エチルヘキサノエート:−18℃)。
【0097】
四球式摩耗試験
潤滑剤の重要な特性の一つは、潤滑剤が接触し、互いに通過している二つの表面間の摩耗を最小化するということである。摩耗を最小化する潤滑剤の能力を測定する一つの方法としては、ASTM D4172に記載のような四球式摩耗試験(4-ball wear test)で得られた摩耗傷を測定することがある。この四球式摩耗試験は、表面間に非整合(non-conformal)且つ点接触(point contact)を提供するもので、潤滑剤の摩耗媒介特性(wear-mediating property)の非常に積極的な尺度である。対照として試験したのは、本発明の変性油と共に、RBD大豆油、Mobil SHC-634ギヤ油及びSAE 10W-30潤滑油(motor oil)であった。荷重18kg条件下では、本発明の多くの候補物質は、大豆油および一つの物質、添加剤を含まない大豆油ジヘキサノエートよりもかなり摩耗傷径が小さく、耐摩耗成分を含む二つの市販潤滑剤と本質的に同一の摩耗傷径であった。公知の耐摩耗及び酸化防止剤の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)を荷重18kgで1%レベルで使用すると、本発明の物質の摩耗傷径は、大豆油由来のものと同等またはそれよりもよく、幾つかは二つの市販潤滑剤の摩耗傷径に匹敵した。荷重40kg下では、本発明の全ての物質は、大豆油由来のものと匹敵する大きな摩耗傷であった。しかしながら1%ZDDPを添加すると、本発明の多くの潤滑剤は大豆油由来のものよりも摩耗傷径が小さく、市販潤滑剤の摩耗傷径と匹敵した。これらの試験結果は、特定の大豆油モノエステル及びジエステルに見られるトリグリセリドの脂肪酸基に沿ってエステル基を付加すると、適用した接触力に依存して、低濃度で添加剤ZDDPを含んでも含まなくても、非変性植物油、特に大豆油で知見されるものよりも摩耗が少なくなることが示される。
【0098】
封止材料適合性試験(Seal Material Compatibility Test)
潤滑剤は、通常、動かない部品と動く部品との間を封止する区間に入れられる。好ましい封止特性は、膨潤が最小であって、温かいまたは熱い潤滑剤に暴露されたときにそのもとの硬度を維持するというものである。従って、本発明の潤滑剤と大豆油に68℃で24時間暴露されたときに、二つのエラストマーの硬度における変化と膨潤度を測定するために試験を実施した。試験したエラストマーは、エチレンプロピレンジエン(EPDM)とニトリルゴムであった。EPDMを試験したとき、本発明の四つ全ての潤滑剤は、一次元及び容積変化をベースとして、かなり膨潤が少なく、大豆油よりもずっとその元の硬度も維持した。ニトリルゴムを試験したとき、本発明の潤滑剤と大豆油との間には寸法安定性ならびにそのゴムの硬度において殆ど差は無かった。これらの試験結果は、使用した具体的な封止材料に依存して、本発明の潤滑剤は、非変性植物油、特に大豆油による同じ特性と比較して、非常に優れた寸法安定性を提供し、且つ個々のエラストマーの固有の硬度も維持したことを示す。
【0099】
本発明のもう一つの態様では、ヘテロ置換ジエステル及びモノエステルを提供する。ヘテロ置換ジエステル及びモノエステルの典型的な構造は以下に説明する。
【0100】
【化7】
【0101】
式Aは、脂肪酸基(例えばリノール酸)由来のジエステルの一つの基を表し、ここでR1、R2、R3、及びR4は同一でも異なってもよく、1〜18個の炭素をもつ。Xはトリグリセリド内の脂肪酸の残余部分である。
【0102】
式Bは、脂肪酸基(たとえばリノール酸)由来のモノエステルの一つの基を表し、ここでR1及びR2は同一でも異なっていてもよく、1〜18個の炭素をもつ。Xはトリグリセリド内の脂肪酸の残余部分である。式Bにおいて、隣接水素化(H)およびエステル基(-O2CR)が交換することによって他の位置異性体が可能である。
【0103】
上記式において、他の位置異性体も可能である。任意の数のアシル化剤(たとえば、必要に応じて酸無水物または酸クロリド)を使用することができる。上記構造は、リノレエートから誘導したモノエステル中の最大二つの異なる基と、リノレエートから誘導したジエステル中の最大四つの異なる基を挙げている。相対濃度及び相対反応性に比例した形で上記に示されている二つの異なる構造をとる、ジエステルの場合でもモノエステルの場合でも所望の多くの異なるアシル化試薬の混合物が使用可能であることは特記すべきである。これはトリグリセリドのそれぞれの脂肪酸アームに適用する。
【0104】
トリグリセリド中の同一脂肪酸骨格中に種々のサイズのR基を配置することによって、得られた大豆油、または植物油、通常ジエステル及びモノエステルが、低い流動点、流動点降下剤に対する高い反応性及び、種々の粘度を有すると予想される。
【0105】
混合ジエステルは、通常、エポキシ化大豆油またはエポキシ化油を、構造:(RnCO)2O及び(RmCO)2Oをもつ無水物の混合物と三級アミンとの混合物と反応させて、場合により
(a)(単数または複数)の無水物と三級アミンからのR1CO2HまたはR2CO2H(式中、酸は同一でも異なっていてもよい)または水と三級アミン、あるいは
(b)カリウムまたは他の金属カーボネートで触媒作用を与えることにより得ることができる。
【0106】
混合モノエステルは、通常、水素化エポキシ化大豆油、または水素化エポキシ化植物油と、構造:(R1CO)2Oと(R2CO)2O(式中、無水物は同一でも異なっていてもよい)を有する無水物の混合物、または構造:R1COClとR2COCl(式中、酸クロリドは同一でも異なっていてもよい)を有する酸クロリドの混合物と反応させることによって得ることができる。三級アミンまたは芳香族アミン(たとえばピリジン)を触媒として使用することができる。
【0107】
ヘテロ置換ジエステル及びモノエステルは、上記方法スキーム及び以下の表3に従って製造した。
【0108】
【表3】
【0109】
*:これは反応中で使用されたカルボン酸を同定する。混合ジエステルの製造で使用した酸の相対モルは、得られる最終粘度に影響する。たとえば、実施例3-1において、エポキシ基1モルはヘキサン酸無水物0.500モル、無水酢酸7.55モルと酢酸0.248モルと反応する。
**:実施例2の手順に従った製造例。
***:製造例または実施例3-6及び3-9は、水洗でK2CO3除去した後に、過剰量の未水和物(anhydrate)を約140℃、約0.03Torrで操作するクーゲルロフで完全に除去した以外には、実施例3-7に従ったプロセスにより実施することができる。いずれの例示プロセス(実施例2または実施例3-7)に関しても、生成物は所望の酸価となるまでクーゲルロフ中で処理する。
【0110】
本発明に従った全性能を改良するための能力を持つ当業界で公知の典型的な添加剤としては、耐摩耗添加剤、流動点降下剤、フォーム調整剤(foam modifier)、界面活性剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0111】
さらに本発明に従った材料の任意の混合物が具体的な使用に関して有益な効果をもたらすものと予想される。
ジエステル官能基とモノエステル官能基の両方を含むもう一つのタイプの潤滑剤候補は、植物の油脂ジエステル及びモノエステルを個々に製造するのに使用したアプローチの組み合わせを使用して製造することができよう。このプロセスは、エポキシ化油脂の部分的水素化と、ジエステルとモノエステルを別個に製造するために使用される同一触媒の存在下、エポキシドとアルコール基の誘導体化混合物と酸無水物との反応により実施されよう。このようにして、ジエステル官能基とモノエステル官能基の両方が同一または異なるトリグリセリドの脂肪酸に導入される。
【0112】
植物油脂に関連する重要な問題は、主に低い温度で結晶化する強い傾向をもつ飽和脂肪酸レベルが比較的多量に存在するため、曇り点と流動点が高いということである。この欠陥を克服する一つの方法は、その比較的高いヨウ素価により示されるように、その脂肪酸内の不飽和量が多い油脂で植物油脂をエステル交換することである。エステル交換(interesterification)は、そのプロセスによって全ての脂肪酸がランダム交換されるので、亜麻仁油またはニシン油などの高いヨウ素価の材料を使用すると、飽和脂肪酸の割合の低い物質となるので、その曇り点及び流動点も低下する。
【0113】
多量のオレイン酸及び少量のリノール酸を含む大豆油は、相対的なオレイン酸含有量に依存して、中オレイン酸(mid-oleic)または高オレイン酸(high-oleic)大豆油と称される。多量のオレイン酸を含むトリグリセリドは、リノール酸及びリノレン酸脂肪酸に知見されるように二重アリル型メチレン基が少ないので、高い酸化安定性を有する。かくして、中オレイン酸及び高オレイン酸大豆油、または一般に植物油のジエステル及びモノエステル誘導体の製造によって、通常の大豆油のジエステル及びモノエステル誘導体で立証されるようなものと比較して高い酸化安定性となるものと予想される。高いオレイン酸含有量の他の植物油を使用する際にも同様の効果が予想される。
【0114】
トリグリセリド脂肪酸アームに沿ってヒドロキシル基を含む植物油脂ベースの潤滑剤は、本明細書中に記載のジエステル及びモノエステル潤滑剤から入手可能であるか、植物油脂の二重結合にヒドロキシル基を直接付加することによって入手可能である。これらの誘導体化ポリヒドロキシトリグリセリドは、有用な潤滑剤であると予想される。
【0115】
実施例4-1
大豆油ジヘキサノエートを製造する手順
以下の実施例は、炭酸カリウム触媒を添加する前に反応温度を180℃に迅速に上昇させることにより、図1の反応Bを使用して大豆油ジエステルの製造法について説明するものである。実施例3-7の手順よりこの手順が優れているのは、全体の反応時間が短く、且つもっと再現可能に実施できるという点である。炭酸カリウムを最初に反応フラスコに充填すると、反応が制御下に維持されるように発熱温度を獲得するまで、反応温度をゆっくりと上昇させなければならないからである。エポキシ化大豆油(200g、0.875molオキシラン)及びヘキサン酸無水物225.17g(1.05mol)を、アルゴンガス入口アダプター、コンデンサ、熱電対及びメカニカルスターラーを備えた2L三つ首丸底フラスコに秤量した。粉末炭酸カリウム(12.25g、0.089mol)をアルゴン充填グローブバッグ中で秤量し、アルゴンでフラッシュしておいたフラスコに添加した。J-Kemヒートコントローラーを使用して、加熱マントルで混合物を180℃に加熱し、その温度で攪拌しながら炭酸カリウムをゆっくりと添加した。温度が201℃に急上昇してから、180℃に1時間40分でゆっくりと戻した。反応をNMRによりモニターし、3.5時間の総反応時間後に完了した。冷却後、反応生成物を水200mlとジエチルエーテル200mlとの間で分配し、その後、10%水酸化ナトリウム200ml、10%塩酸、10%重炭酸ナトリウムで抽出し、次いで水洗して水性層のpHを中性にした。このエーテル溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、メディウムフリットフィルターで濾過し、次いでアスピレーターと、1.5トール、60℃で2時間真空ポンプでロータリエバポレーターでストリッピングすると、透明/黄色油状物383.0gが得られた。
【0116】
実施例4-2
大豆油ジヘキサノエートの製造手順
以下の実施例は、反応温度が180℃に急激に上昇した後、炭酸カリウム触媒と、二次触媒として酸無水物に相当するカルボン酸も添加することにより、図1の反応Bを使用して大豆油ジエステルの製造法について説明する。実施例3-7の手順よりも本手順が優れているのは、先の実施例での好都合な点だけでなく、二次触媒によっても反応時間が短くなるという点である。エポキシ化大豆油(200g、0.875molオキシラン)及びヘキサン酸無水物225.45g(1.05mol)及びヘキサン酸5.29g(0.045mol)を、アルゴンガス入口アダプター、コンデンサ、熱電対及びメカニカルスターラーを備えた2L三つ首丸底フラスコに秤量した。J-Kemヒートコントローラーを使用して、加熱マントルで混合物を180℃に加熱し、その温度で攪拌しながら無水炭酸カリウム(12.42g;アルゴンを充填したグローブバッグで秤量)をその温度でゆっくりと添加した。加熱マントルをすぐに外したが、温度は229℃に急上昇し、ゆっくり1時間で180℃にもどした。反応をNMRによりモニターし、2時間の総反応時間後に完了した。冷却後、反応生成物を、水200mlとジエチルエーテル200mlとの間で分配し、その後、10%水酸化ナトリウム200ml、10%塩酸、10%重炭酸ナトリウム抽出し、次いで水洗して水性層のpHを中性にした。このエーテル溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、メディウムフリットフィルターで濾過し、次いでアスピレーターで、60℃で2時間、ロータリエバポレーターでストリッピングすると、透明/黄色油状物368.8gが得られた。
【0117】
生分解性試験サンプル
試験サンプル:サンプル:実施例14、実施例6A、実施例BPAD
本試験用の下水(sewage sludge)は、Hiram(オハイオ州)の汚水処理プラントから入手した。正式に試験を開始する2週間前に、ASM 5864セクション8.3.1に列記された任意選択の摂取材料予備適合法(ptional inoculum pre-adaptation technique)の一部として結果を強めるために、スラッジ微生物を試験サンプルに予備暴露した。
【0118】
キャノーラ油対照と他の配合物の炭素含有量は、後の生分解性の計算用に、ASTM D-5291-02に記載の手順に従って測定した。
【0119】
【表4】
【0120】
ミクロ酸化(micro-oxidation)
ミクロ酸化試験は、ベース油の安定性を評価するために使用した。試験は180℃で30分と60分実施した。全体として、試験から、慣用の高オレイン酸植物ベースの油と比較して、本発明に従って変性した油では、酸化安定性が大きく改善されたことが判明した。この油は、ミクロ酸化及び四球式摩耗試験に見られるように亜鉛アルキルジチオホスフェートに対して優れた応答も示した。
【0121】
粘度
粘度は、油の重要な物理的特性、40℃における粘度、100℃における粘度及び粘度指数を測定するために実施した。
【0122】
流動点及び曇り点
−25℃の流動点は、流動点降下剤(PPD)なしものもと一致した。
以下は、石油ベースのストック(Petr.BS)と比較した本発明に従った二種の油の比較である。
【0123】
【表5】
【0124】
本発明に従った油は、潤滑剤添加剤、工業用添加剤及び粘度指数改良剤としても使用することができる。
本明細書中に開示の本発明の形式は、好ましい態様を構成するものであり、他にも多くの態様が考えられる。本明細書において、本発明の可能な等価物または効果について全てを記載するつもりはない。本明細書中で使用された用語は限定するものではなく単に説明のためのものであり、本発明の趣旨及び範囲を逸脱せずに多くの変形が可能であることは理解されよう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物及び動物の油脂などの再生可能な(renewable)工業用原料から誘導した工業用流体で有用な特徴的なトリグリセリドを提供する。工業用流体は、エンジンオイル(通常、2サイクル、4サイクル、ワンケル及びタービン型エンジン)、油圧流体、ドライブオイル(drive oil)、金属加工流体(metal working fluid)、グリース、一般的な潤滑剤、ブレーキ流体、削岩流体などとして有用である。本発明は、その特性を高めたり変性させるための潤滑剤用の添加剤(たとえば粘度増強剤)としても使用し得る材料も提供する。
【背景技術】
【0002】
植物油(すなわち大豆油及び他の植物油)などの再生可能な工業用原料由来の油、または動物性供給源(たとえばニシン、ラード、乳脂肪および他の動物性油脂)由来の油脂を種々の潤滑剤として使用する際の主な問題点は、(1)その低い酸化安定性;(2)その比較的低い粘度;及び(3)比較的高い流動点(その温度未満では流れないという温度)によって明らかにされるような低い操作温度で固化する傾向である。しかしながら、これらの潤滑剤候補は再生可能な供給原料から誘導されるので、これらのマイナス面を克服する動物または植物油脂をうまく変性することによって、外国産油への米国の依存度を軽減できるはずである。再生可能な供給原料から誘導した潤滑剤は通常、生分解可能でもある。典型的な再生可能な供給原料油としては、大豆油がある。実際、大豆油は、その高い利用可能性及び比較的低コストにより好ましい油である。
【0003】
生分解可能な潤滑剤を使用する重要な要因は、鉱物ベースの潤滑剤が世界的に乱用されているという点にある。1990年にヨーロッパで使用された約12億ガロンの潤滑剤のうち、約1億7千万ガロン(13%)が環境中に消失した。合衆国においては、使用された約13億5千万ガロンのうち約4億3千万(32%)が埋め立てゴミになったか、廃棄になった。2002年から近年の研究では、約50%の潤滑剤が世界で環境中に廃棄されていると推定されている。
【0004】
Erhanら(米国特許第6,583,302号、以後、Erhanと参照する)は、植物油トリグリセリドの隣接ジエステル(vicinal diester)は、二段階または一段階方法によって、エポキシ化トリグリセリド(例えばエポキシ化大豆油)を反応させることによって製造し得ると開示している。この二段階方法では、エポキシ化大豆油をブロンステッド酸の過塩素酸の存在下で水と反応させて、脂肪酸鎖に沿って推定上の隣接ジオール(putative vicinal diol)を製造する。次いでこの混合物を種々の酸無水物と反応させて、脂肪鎖鎖に沿って推定上の隣接ジエステル構造を製造する。
【0005】
文献例をベースとして、この二つのプロセスのいずれかによって得られた上記タイプの隣接ジエステル製品の量は、約25%と考えられる。大部分の製品(約75%)は、二つのエステル基を有するテトラヒドロフラニル(オキソラン)基礎構造からなると予想されている。
【0006】
メチレンが挿入されたビスエポキシド(methylene-interrupted bis-epoxide)は、ブロンステッド酸またはルイス酸の存在下で水と反応させると、殆ど定量的収率でテトラヒドロフラニルジオールを生成することは公知であり、公開文献に記載されている。
【0007】
従って、(ブロンステッド酸を使用する)二段階プロセスにおいて、テトラヒドロフラニルジオールは、リノレナート(linoleate)及びリノレナート脂肪酸(それぞれメチレンが挿入されたビスエポキシド構造をもつ)から製造され、これらのジオールをアシル化してテトラヒドロフラニルジエステルを形成する。
【0008】
Erhanの一段階プロセスでは、ルイス酸触媒の三フッ化硼素を使用し、この一段階プロセスでは、水を使用せずに酸無水物を使用する。Erhanの特許は、両方のプロセスによって得られた生成物がよく似たNMRスペクトルを示唆しているので、現在、二段階プロセスで形成する同じテトラヒドロフラニル構造は、一段階アプローチでも形成すると考えられている。また、二段階プロセスと一段階プロセス由来のマイクロ酸化(microoxidation)及び加圧示差操作熱量計データのいずれもが非常に良く似ている。さらに、Erhanにより報告されたマイクロ酸化の結果は、隣接ジエステルが実際に製造される場合に本発明で報告されたものよりもずっと高い不溶性沈殿物と非常に顕著な割合の揮発分の損失を示す。これらの高い酸化分解経路(high oxidative decomposition pathway)は、酸化分解に非常に敏感であることが公知のテトラヒドロフラニル環構造と一致する。
【0009】
エポキシ化大豆油では、全エポキシド基の約75%がメチレンビスエポキシド型であるので、Erhanにより記載された両方の反応アプローチのもと、テトラヒドロフラニルジエステル系を生成する。
【0010】
Erhanとは対照的に、本発明では、テトラヒドロフラニル(オキソラン)環構造の形成を防ぎつつ、塩基性触媒を使用してエポキシ化大豆油を実質的に定量の隣接ジエステルに転換させる。
【0011】
米国特許第5,623,086号(Perriら)は、本発明で有用な1,2-ビス(アシルオキシレート)の製造プロセスを開示する。
【発明の概要】
【0012】
第一の態様において、本発明は潤滑油の製造法であって、植物または動物の油脂などの再生可能な油脂を準備する;前記油脂をエポキシ化する;及び、塩基性触媒の存在下で、前記エポキシ化された油脂とカルボン酸無水物、または選択された鎖長のカルボン酸無水物の混合物とを直接反応させて、潤滑油(トリグリセリド主鎖ジエステル、以後ジエステルという)を得る、各段階を含む前記方法を提供する。
【0013】
本発明の第二の態様では、潤滑油の製造法であって、植物または動物の油脂を準備する;前記油脂をエポキシ化する;前記エポキシ化油脂を水素化してヒドロキシル基を有する水素化された中間部分(hydrogenated intermediary)を得る;及び前記ヒドロキシル基をアシル化剤、または選択された鎖長のアシル化剤混合物でアシル化して、潤滑油(トリグリセリド主鎖モノエステル、以後モノエステルという)を得る、各段階を含む前記方法を提供する。追加の態様としては、約7を超えるヨウ素価をもつ動物油、動物性脂肪、植物油または植物性脂肪を準備する;前記油脂をエポキシ化する;及びエポキシド官能基の本質的に全てが反応するまで、塩基性触媒の存在下、1〜約18個の炭素原子を持つカルボン酸無水物と前記エポキシ化油脂とを反応させることによる、ジエステルの製造法が挙げられる。通常、トリエチルアミンなどの三級アミンを含む。態様によっては、鎖間結合(interchain linkages)は、反応における無水物量を制御することによって提供する。態様によっては、二種以上の無水物を反応させて、ヘテロ置換ジエステルを製造する。
【0014】
もう一つの態様では、二重結合によってもともと結合していた隣接する炭素原子がそれぞれペンダントエステル基を有し、それぞれの前記エステル基は二種以上の異なるエステル基からランダムに選択される、変性トリグリセリドヘテロ置換ジエステルを含む。
【0015】
さらなる態様としては、流動点降下剤、耐摩耗剤、ベースストック、希釈剤、極圧添加剤及び/または酸化防止剤などの他の機能性成分と変性トリグリセリドを含む工業用流体が挙げられる。
【0016】
態様によっては、2〜17個の炭素原子を含む少なくとも一つの小さなエステル基を選択し、3〜18個の炭素原子を含む少なくとも一つの大きなエステル基を選択し、前記エステル基は少なくとも1個の炭素原子だけ異なる、エステルを提供する。通常、このエステル基は、N、O及びPからなる群から選択される置換されたヘテロ原子を含むことによって互いに異なっている。
【0017】
幾つかの態様では、大きなエステル基対小さなエステル基の比が約0.1〜約0.9であるように、エステル基を選択する。通常、小さなエステル基の炭素原子は2〜5個を変動し、大きなエステル基の炭素原子は6〜18個を変動する。
【0018】
一態様では、前記二種のエステル基の小さなエステル基と大きなエステル基の炭素原子数の差を変動させることにより、及び/または前記小さなエステル基対大きなエステル基の比を変動させることによって、工業用流体の粘度を調節する方法を提供する。
【0019】
さらなる態様では、変性トリグリセリドジエステルの製造法であって、エポキシ化トリグリセリドを準備する;塩基性触媒の存在下、前記エポキシ化トリグリセリドと酸無水物とを反応させてジエステルを製造する;及び触媒と未反応無水物から前記ジエステルを分離する、各段階を含む前記方法を提供する。通常、二種以上の無水物を反応させる。
【0020】
もう一つの態様では、短鎖無水物対長鎖無水物の比を制御することによって、短鎖無水物と長鎖無水物との混合物を選択することによる工業用流体の粘度を調節する方法であって、ここで反応させたときに小さな無水物は第一のエステル中に2〜6個の炭素原子を提供し、反応させたときに大きな無水物は第二のエステル中に6〜18個の炭素原子を提供する、前記方法を提供する。通常、変性トリグリセリドの加水分解安定性及び/または熱安定性は、立体障害エステル基を加えることによって制御する。
【0021】
もう一つの態様では、二重結合によって元々結合していた少なくとも1セットの隣接する炭素原子を持つ変性トリグリセリドモノエステルを含む変性トリグリセリドモノエステルを提供し、ここで一方の元の二重結合の炭素は水素原子を有し、他方の炭素原子はペンダントエステル基をもつ。さらなる態様では、二重結合によってもともと結合していた少なくとも二セットの隣接する炭素原子を持つ変性トリグリセリドモノエステルを含む変性トリグリセリドモノエステルを提供し、ここで一方の元の二重結合炭素は水素原子を有し、もう一方の炭素原子はペンダントエステル基を有し、且つ元の二重結合の部位のペンダントエステル基は、もう一方のもとの二重結合部位のエステル基とは異なる。通常、選択されたペンダントエステル基は、アセテート、イソブテレート、ヘキサノエート及び2-エチルヘキサノエートからなる群から選択される。場合により、変性ジエステルトリグリセリドは、N、O及びPからなる群から選択される置換ヘテロ原子を含むことによって互いに異なるエステル基をもつ。
【0022】
本発明のもう一つの態様としては、変性トリグリセリドの製造法が挙げられ、少なくとも一つの二重結合をもつトリグリセリドをエポキシ化する;前記エポキシド基を水素化して、モノアルコールを生成する;及び前記モノアルコールを、無水物、酸クロリドまたはカルボン酸でアシル化する、各段階を含む前記方法が挙げられる。通常、本方法は、二種以上の異なるアシル化剤の混合物でアシル化して、種々のペンダントエステル基をもつトリグリセリドを製造することを含む。
【0023】
もう一つの態様は、トリグリセリドの混合物を含む潤滑剤を含み、ここで前記混合物は、モノエステル:
【0024】
【化1】
【0025】
とジエステル:
【0026】
【化2】
【0027】
{式中、R’及びRはアルキル基で、C1〜C18であり、R’はそれぞれ同一または異なっていてもよく、Rはそれぞれ同一または異なっていてもよい}及びその混合物からなる群から選択される一種以上のトリグリセリドを含む。
【0028】
さらなる態様は、潤滑剤の製造法であって、植物または動物の油脂、またはその混合物を準備する;前記油脂をエポキシ化する;前記エポキシ化油脂を水素化して、水素化アームをもつ水素化中間部分を得る;及び前記水素化アームを種々の鎖長のアシル化剤でアシル化して、前記潤滑剤を得る、各段階を含む前記製造法を含む。
【0029】
もう一つの態様では、潤滑剤の製造法であって、少なくとも一つの不飽和部位をもつモノオールまたはポリオールから誘導したエステルを準備する;前記エステルをエポキシ化する;及び前記エポキシ化エステルを種々の鎖長のカルボン酸無水物と直接反応させる、各段階を含む前記方法を含む。
【0030】
追加の態様では、潤滑剤の製造法であって、少なくとも一つの不飽和部位をもつモノオールまたはポリオールから誘導したエステルを提供する;前記エステルをエポキシ化する;前記エポキシ化エステルを水素化して、水素化アームをもつ水素化中間部分を得る;及び前記水素化アームを種々の鎖長のアシル化剤でアシル化して、前記潤滑剤を得る各段階を含む前記方法を提供する。
【0031】
さらに追加の態様では、
a)モノエステル:
【0032】
【化3】
【0033】
及び/またはジエステル:
【0034】
【化4】
【0035】
{式中、R’及びRはC1〜C18を変動するアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基、および同一トリグリセリド分子内に種々の鎖長の種々のアルキル基の組み合わせを含むその混合物であり、R’はそれぞれ同一または異なっていてもよく、Rはそれぞれ同一または異なっていてもよい}を含む潤滑剤組成物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、植物または動物の油脂ジエステルを製造する二つの一般的なルートを示す。この説明図は具体的に、エポキシド付加反応によってエポキシ化大豆油(ESO)を介する大豆油からの大豆油ジエステルの製造を示す。
【図2】図2は、植物または動物の油脂モノエステルを製造する一般的なルートを示す。この説明図は具体的に、水素化及びアシル化反応によって、エポキシ化大豆油を介する大豆油からの大豆油モノエステルの製造を示す。
【図3】図3は空白である。
【図4】図4は、典型的な配合物に対する18kg荷重の四球式摩耗試験結果を示す棒グラフである。
【図5】図5は、典型的な配合物と対照大豆油の40kg荷重の四球式摩耗試験結果を示す棒グラフである。
【図6】図6は、幾つかの典型的な配合物と対照大豆油のEPDM吸着適合性(absorption compatibility)の吸着試験結果を示す棒グラフである。
【図7】図7は、幾つかの典型的な配合物と対照大豆油のEPDM適合性の膨潤試験結果を示す棒グラフである。
【図8】図8は、幾つかの典型的な配合物と対照大豆油のRPDM適合性の硬度試験結果を示す棒グラフである。
【図9】図9は、幾つかの典型的な配合物と対照大豆油のニトリル適合性の吸着試験結果を示す棒グラフである。
【図10】図10は、幾つかの典型的な配合物と対照大豆油のニトリル適合性の膨潤試験結果を示す棒グラフである。
【図11】図11は、幾つかの典型的な配合物と対照大豆油のニトリル適合性の膨潤硬度(swell hardness)試験結果を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
植物及び動物の油脂などの再生可能な供給源をベースとする潤滑油の好都合な点としては、以下のものが挙げられる。植物及び動物の油脂は、エステルカルボニル基をもつトリグセリドを含む。これらのエステルカルボニル基の極性によって、トリグリセリドベースの潤滑剤のフィルム形成特性が特に油圧計で都合がよいように、非常に薄いフィルムとして金属面上に強い吸着作用をもたらす。植物油と動物油は通常、広範な温度範囲にわたって使用しやすい高い粘度指数(viscosity indice)を有する。他の好都合な点としては、通常、高い発煙点(fume point)(たとえば約200℃)と高い引火点(たとえば約300℃)が挙げられる。
【0038】
他の好都合な点としては、植物及び動物の油脂をベースとする潤滑剤は、石油から誘導した炭化水素の枯渇を軽減するという点が挙げられる。植物油をベースとする潤滑剤は再生可能な供給源に基づいており、通常、生分解性である。油(oil)と脂肪(fat)なる用語は、本明細書中、互換可能に使用される関連語である。「油」なる用語を使用する場合には、脂肪も含むものであり、逆に「脂肪」なる用語を使用する場合には、油も含むものとする。
【0039】
本発明で有用な油としては、非常に低い約7(例えばヤシ油)〜約160のヨウ素価(iodine number:I.N.)を有する動物及び植物の油が挙げられる。有用な油の典型例としては、ヤシ油(I.N.=6〜11)、パーム油(I.N.=50〜55)、オリーブ油(I.N.=75〜88)、キャノーラ油(I.N.=100〜115)、ニシン油(I.N.=115〜160)、大豆油(I.N.=123〜139)、及びベニバナ油(I.N.=140〜150)が挙げられる。大豆油の中でも、オレイン酸が多い中及び高オレイン酸の大豆油は有用である。供給源の油及び/または製品の油を混合して、最終の潤滑油に特徴的な特性を提供することができる。供給源の油は、精製、処理及び混合して、最終製品を製造する際に好ましい特性をもつトリグリセリドを得ることができる。態様によっては、供給源のトリグリセリドを慎重に選択することによって、最終潤滑油製品に特定の特性を提供するだろう。
【0040】
大豆油を含む個々の植物油は、これらのトリグリセリド構造の中にランダム分散された個々の脂肪酸の特徴的な量を含むトリグリセリドである。典型的な大豆油組成物は、以下の脂肪酸組成:11%パルミチン酸、4%ステアリン酸(いずれも飽和)、54%リノール酸(二重不飽和)、23%オレイン酸(一不飽和)、及び8%リノレン酸(三重不飽和)を含む。オレイン酸などのトリグリセリド脂肪酸のアリル型メチレン基、特にリノール酸およびリノレン酸などのトリグリセリド脂肪酸の二重アリル型メチレン基(doubly allylic methylene group)は酸化の影響を受けやすいが、本発明は、トリグリセリド不飽和脂肪酸の二重結合の本質的に全てに二つのエステル基を付加させ(てジエステルを形成す)ることにより、またはエステルと水素原子を付加させ(てモノエステルを形成させ)ることにより、この傾向を克服する。
【0041】
そのようなエステル基の具体的な方向性(orientation)とは、もともとは脂肪族二重結合の構成要素であった炭素原子に酸素原子を直接結合させること、及びカルボニル基をそのような炭素原子に結合させることである。高い酸化安定性に加えて、これらの誘導体の幾つかは、低い流動点、流動点降下剤に対する高い反応性及び、高い粘度粘度指数(または粘度指数での減少が少ない)という好都合な点を有するとキャラクタリゼーションできる。
【0042】
動物油及び植物油の酸化不安定性は、多くの二重結合の側面に位置する活性化メチレン基(the activated methylene groups flanking their numerous double bonds)(たとえば、大豆油は、大豆トリグリセリド分子あたり約4.7個の二重結合をもつ)での酸素の攻撃に起因する。特に、リノール酸とリノレン酸に知見されるような二個の二重結合によって側面に位置するこれらのメチレン基が脆弱である。潤滑剤としてこれらの油を改良する一つのアプローチは、その酸化不安定性を克服するために、種々の酸化防止剤を多量に添加するということである。他方、水素化などのプロセスによって油中のこれらの二重結合を変性または除去するとその酸化安定性を顕著に改良するが、流動点が不都合に、そして大きく上昇してしまう。本発明は、動物油及び植物油、その誘導体中の二重結合を、その流動点と粘度プロフィールを維持し、そして場合により改良しつつ、酸化安定性を顕著に高める方法で変性する。従って、構造的に多様性のある多くの潤滑剤サンプルを、図1及び2に示す方法によって製造した。これらの図中で、「分子の残余部分(rest of molecule)」は、リノール酸、リノレン酸及び他の脂肪酸などの種々の脂肪酸を通常含む大豆油中の汎用トリグリセリドの残余部分を意味する。このトリグリセリド中の不飽和脂肪酸は、通常、ジエステルまたはモノエステル誘導体に転換される。
【0043】
加水分解攻撃及び熱攻撃を克服する方法としては、変性トリグリセリドに立体障害エステル基を導入することがある。立体障害エステル基の典型例としては、イソブチラート及び2−エチルヘキサノエートが挙げられる。
【0044】
図1を参照して、この図は、本発明の一態様を示すものであり、ここでエポキシ化大豆油は、図中でエポキシ化リノール脂肪酸アームによって表されている(リノール酸は、大豆トリグリセリドの主な脂肪酸だからである)。これらのトリグリセリドの他のエポキシド構造は、オレイン酸及びリノレン酸から誘導することができる。
【0045】
図1を再び参照して、反応Aでは、要するに、エポキシ化大豆油、酸無水物{(RCO)2O}、トリエチルアミンなどの三級アミン及びジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)を、通常15〜20時間、オートクレーブ中で加熱して、大豆油ジエステルを得る。同じ反応は、エポキシ化プロピレングリコールジソイエート(disoyate)、エポキシ化メチルソイエート(soyate)、または他のエポキシ化脂肪酸エステルに応用できるだろう。
【0046】
図1において、反応Bでは、要するにエポキシ化大豆油、酸無水物{(RCO)2O}及び無水炭酸カリウムを、プロトン核磁気共鳴分光法によって示されるように全てのエポキシド官能基が消費されるまで、約210℃までの温度で加熱する。場合により、激しい発泡の停止により、この反応が完了したかそれに近いことが解る。この反応は、R基が大きくなると応用可能であると予想される。反応AとBは両方とも、RがC1〜C8を変動する、大豆油ジエステルの製造に使用した。同じ反応をエポキシ化プロピレングリコールジソイエートまたはエポキシ化メチルソイエート、または他のエポキシ化脂肪酸エステルに応用できるだろう。
【0047】
図2に示されている汎用アプローチでは、Pd(C)、Pd(Al2O2)、ラネーニッケルまたは他の水素化触媒などの存在下、エポキシ化大豆油を、通常、水素で最初に還元することを含む。次いでこの水素化した材料を、ヒドロキシル化アームのアセチル化によって反応させる。図2に示されているように、水素化エポキシ化大豆油は、通常、ピリジンなどのアシル化触媒、またはトリエチルアミンなどの塩化水素トラップの存在下、酸無水物{(R’CO)2O}または酸クロリド(R’COCL)などのアシル化剤と反応させて、目的の生成物を得る。同じ反応シークエンスをエポキシ化プロピレングリコールジソイエートまたはエポキシ化メチルソイエート、または他のエポキシ化脂肪酸エステルに応用できるだろう。
【0048】
図2の「他の位置異性体(regioisomer)」とは、互いに水素原子とエステル基の方向に起因する類似の構造をさす。言い換えれば、エステル基と水素原子の各対は、図2に示されている方向であってもよく、どちらかまたは両方とも交換していてもよい。
【0049】
性能試験は、表1、2及び3に示されているように大豆ジエステルとモノエステルで実施した。
ミクロ酸化試験(microoxidation test)は、ペンシルバニア州(Penn.State)ミクロ酸化試験(油サンプル(40マイクロリットル)をステンレススチール(C1010スチール)クーポン上におき、秤量し、次いで20ml/分で空気を種々の時間、加熱サンプル上を通しながら、種々の時間加熱する)で実施した。加熱後にサンプルを秤量し、次いで付着物を残したままテトラヒドロフランで洗浄して油を溶解し、溶媒を完全に除去した後でクーポンを再び秤量して、不溶性付着物量を測定した。これらの分析によって、これらの条件下における付着率と蒸発率を測定できる。
【0050】
これらのミクロ酸化試験において、本発明の油は通常、精製し、漂白し脱臭した(refined,bleached and deodorized:RBD)大豆油並びに、慣用の大豆油よりもずっと酸化安定性であることが公知の高オレイン酸大豆(high oleic soybean)よりも、付着物及び蒸発がずっと少なかった。RBDは大豆油の一般的なグレードである。本発明に従って変性油(モノ及びジエステル)に酸化防止剤を添加すると、非変性大豆油それ自体にこれらの添加剤を添加することによって達成された酸化安定性と比較して、かなり優れた酸化安定性をもたらすはずである。
【0051】
本発明の油の全ては、40℃〜100℃で測定したときにRBD大豆油よりも実質的に高い粘度を有する。潤滑剤業界には、そのような油がベースストックまたは粘度エンハンサーとして使用可能にする広範な粘度をもつ油に対する需要がある。そのような油は生分解性であることも判明しているので、非常に有用であろう。そのような油が設定された温度変化を受けたときの粘度変化が少ないことを示す、高い粘度指数をもつのも好都合である。本発明の油によっては、RBD大豆油と似たような粘度指数をもつものもあり、特に、一種の油(大豆油モノイソブチラート)は、大豆油よりもかなり高い粘度指数を有する。
【0052】
本発明の多くの油は、RBD大豆油と同様の、そして好都合にはRBD大豆油よりも低い流動点をもち、流動点降下剤を使用することによって降下させるのに効果を示した。
本発明に従って二つの種類の潤滑油を製造した。一つは植物油誘導体形成化ジエステル(たとえば大豆油ジエステル)であり、ここでこのジエステルは、不飽和脂肪酸のもとの二重結合で形成する;もうひとつは植物油誘導体形成化モノエステル(例えば大豆油モノエステル)である。以下の二つの式を参照されたい。
【0053】
ジエステル:
【0054】
【化5】
【0055】
モノエステル:
【0056】
【化6】
【0057】
式1及び2のR-及びR’基は、同一または異なっていてもよく、通常、1〜18個の炭素原子をもつアルキル基である。より好ましくは、R基は、同一または異なっていてもよく、通常、約1〜約8個の炭素原子を含む。態様によっては、Rは同一または異なっていてもよく、一つ以上の芳香族基と置換芳香族基を含む。態様によっては、R基の少なくとも一つは異なり、そのような材料は、この二つのアプローチのどちらかを適用したときに,二つ以上の種々のアシル化剤の混合物を使用することによって生じる。
【0058】
好都合には、本明細書中で記載のジエステル製造法は、同じトリグリセリド分子の脂肪酸アーム(鎖)の間及び/または、異なるトリグリセリド分子の脂肪酸アームの間に、鎖間エーテル結合(interchain ether linkage)をもつジエステルトリグリセリドも提供する。通常約0〜約4個の鎖内(intrachain)または鎖間エーテル結合がエステル基100個ごとに生成し、図1の反応Bで製造したときにトリグリセリド構造に結合する。上記エーテル結合の存在は、NMRデータの解釈をベースとする。これらのエーテル結合の好都合な点は、これらを付加する分子及び任意の配合物の特性(例えば粘度、安定性)を制御できるという点である。鎖間エーテル結合数は、反応中で使用する無水物の相対量によって制御する。たとえは多量の無水物は、鎖間結合数を低下させると予想されるのに対し、少量の無水物はその数を増加させると予想される。
【0059】
再び式1と2を参照して、通常、大豆油誘導体化ジエステルに関しては、脂肪酸アームあたり約3.1個のエステル基がある(平均1.55×2)。通常、大豆油誘導体化モノエステルに関しては、脂肪酸アームあたり約1.55個のエステル基である。脂肪酸アームにそってジエステル及びモノエステル中にエステル官能基を設置することは、金属に対するその吸着性と、フィルム形成性を高めるものと予想される。
【0060】
本発明の一態様において、潤滑剤を合成する一般的な方法は、大きなサイズのアルキル基(R)を付加し、また骨格(backbone)のジエステル及びモノエステル系に分岐を加えることである。この2−エチルヘキサン酸および2−エチル酪酸エステル基の特定のエステル基の高い熱安定性及び加水分解安定性により、これらの基を脂肪酸骨格に結合させた。
【0061】
本明細書の実施例によっては、蒸気脱臭(steam deodorization)を使用した。これは天然油業界で通常、蒸気フローを使用して揮発または蒸留する脂肪酸、モノグリセリド及び他の材料を除去するプロセスである。このプロセスは、本発明ではジエステルとモノエステルの両方を精製するために使用し、扱いにくい(recalcitrant)酸無水物及び酸クロリドを加水分解するために、ピリジンと水との混合物と一緒に反応混合物を加熱するのも別法である。蒸気フローは、トリグリセリドエステル結合を加水分解することなく、好都合には酸無水物と酸クロリドのいずれをもその対応する酸に転換する。本発明で使用するラボスケールの蒸気脱臭アプローチにおいて、粗な反応混合物を、真空ポンプをで負圧下に保持したコンデンサと受けフラスコに接続した丸底脱臭フラスコに入れた。この段階で使用した例では、反応フラスコは、折りたためないチューブを介して水/蒸気レザーバにも接合され、蒸気入口は、脱臭フラスコ中の反応混合物表面下に向けた。水/蒸気レザーバを種々の温度に加熱して、蒸気流入を部分的に制御した。
【0062】
以下の実施例は、本発明の説明を目的とするものであって、本発明の範囲を多少なりとも限定するものではない。
実施例1
本実施例は、図1、反応Aに従って、オートクレーブ中、ジグリムの存在下、触媒としてトリエチルアミンを使用する、エポキシ化大豆油と無水酢酸との反応から製造した大豆油ジアセテートの製造法について説明する。一反応において、エポキシ化大豆油11.27g(0.049molエポキシド)、無水酢酸6.32g(0.062mol)、トリエチルアミン(0.55-0.7mL)、ジグリム(0.5mL)を約125℃のオートクレーブ中で22時間加熱して大豆油ジアセテートに定量的に転換させた。このタイプの反応の進行は、プロトン核磁気共鳴(NMR)分光法で追跡調査した。残存する無水酢酸を短経路蒸留装置中、蒸留によって除去した。この残渣をエチルエーテル150mLに溶解し、水で抽出し、エーテル層を硫酸マグネシウム上で乾燥した。この溶媒をロータリエバポレーターで除去すると、油状物12.69gが得られた。この方法で製造したサンプル(サンプル1)を試験し、表1に示すように後で再試験した(サンプル1A)。大豆油ジアセテートの別のサンプル(サンプル2)を上記と同様の方法で製造し、試験結果を表1に示す。
【0063】
実施例2
この実施例では、図1、反応Aに従って、オートクレーブ中、2-エチルヘキサン酸とジグリムの存在下、触媒としてトリエチルアミンを使用して、エポキシ化大豆油と2-エチルヘキサン酸無水物との反応から製造した大豆油ビス(2-エチルヘキサノエート)の製造法について説明する。一反応において、エポキシ化大豆油74.99g(0.328molエポキシド)、111.37gの2-エチルヘキサン酸無水物(0.412mol)、11.69gの2-エチルヘキサン酸(0.081mol)、2.69gのトリエチルアミン(0.027mol)、3.12gジグリムを、オートクレーブ中、約150℃で20時間加熱して、大豆油ビス(2-エチルヘキサノエート)に完全に転換させた。残存する2-エチルヘキサン酸無水物、2-エチルヘキサン酸、トリエチルアミン及びジグリムをクーゲルロフ短経路蒸留装置で真空蒸留により除去した。NMR分析から、大豆油、2-エチルヘキサン酸無水物、2-エチルヘキサン酸、トリエチルアミン及びジグリムはこの油状物中には残存していないことが判明した。
【0064】
実施例3〜7は、図1、反応Bに一般的に示されるような高温で、炭酸カリウムの存在下、エポキシ化大豆油と種々の酸無水物との反応から製造したホモ置換大豆油の製造法について説明する。
【0065】
実施例3
本実施例は、大豆油ジプロピオネートの製造法について説明する。エポキシ化大豆油(50.0g、約0.219molエポキシド)、34.7mLプロピオン酸無水物(0.263mol)及び3.067g無水炭酸カリウムを、アルゴンを満たしたグローブバッグ中に分配し、加熱マントル、マグネチックスターラー、アルゴンガス入口チューブを備えたコンデンサと反応物中に入れた熱電対とを備えた250mL三つ首フラスコに加えた。フラスコをアルゴンでフラッシュした後、反応混合物を、バブラー装置によってアルゴン雰囲気下に保持した。加熱マントルの抵抗制御を中間に設定し、これによって反応内容物の温度が約4時間後に約206℃に上昇した。反応混合物をこの温度にさらに2時間保持し、その時点でプロトンNMR分析から、全てのエポキシド基が消費されたことが判明した。この反応混合物を一晩放冷し、42℃に加熱して液体に転換させた。この混合物をエチルエーテル2×100mLを添加して分取漏斗に移し、混合したエーテル溶液を、洗液のpHが4に低下してそれ以上変化しなくなるまで、100mLの水で洗浄した。この洗浄によって、過剰量のプロピオン酸無水物を除去せずに、炭酸カリウムを除去した。このエーテル溶液を綿を通し、硫酸ナトリウム溶液上で乾燥し、エーテル溶液を、アスピレーター圧下、50℃浴温、次いで真空ポンプで約0.4トールでロータリエバポレーターでストリッピングした。この混合物を、30mL水と10mLピリジンと一緒に2時間マグネチックスターラーで攪拌しつつ60℃〜70℃に加熱して、過剰量のプロピオン酸無水物をプロピオン酸に加水分解した。この混合物を200mL酢酸エチルで遠心分離管に移し、洗液100mLと一緒に急速に震蘯させると混合物が得られ、これを遠心分離により相分離させて、その後、下部の水性相をピペットで取り除いた。以下の溶液を使用した。水(pH6)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH14)、10%塩酸及び、さらに100mL酢酸エチル(pH1)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、水(pH8)、水(pH7)、水(pH5)、水(pH5)、水(pH5)。酢酸エチル溶液を綿で濾過し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、浴温41℃でアスピレーター圧下、次いで浴温50℃で真空ポンプを使用して0.3トール、2.3時間でロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物64.7gが得られた。NMRおよび赤外(IR)スペクトル分析により、エポキシとヒドロキシル基とプロピオン酸無水物はこの油状物中には残存していないことが判明した。
【0066】
実施例4
この実施例は、大豆油ジイソブチラートの製造法について説明する。エポキシ化大豆油(50.0g、約0.219molエポキシド)、45.0mLイソ酪酸無水物(0.263mol)及び3.027gの無水炭酸カリウムを、アルゴンを充填したグローブバッグ中に分配し、加熱マントル、マグネチックスターラー、アルゴンガス入口チューブを備えたコンデンサと反応物中に入れた熱電対とを備えた250mL三つ首フラスコに加えた。フラスコをアルゴンでフラッシュした後、反応混合物をバブラー装置によってアルゴン雰囲気下に保持した。加熱マントルの抵抗制御を中間に設定すると、55分後、210℃に上昇し、その後、混合物をゆっくりと放冷した。70分後のサンプルのプロトンNMR分析から、全てのエポキシド基が消費されたことが判明した。この反応混合物を一晩放冷し、100mLエチルエーテルと共に温め、すすぎとしてエチルエーテル100mLをさらに使用して分液漏斗に移した。混合したエーテル溶液を、洗液のpHが4に低下して、それ以上変化しなくなるまで、100mL水洗した。相分離が非常に遅かったので、これらの混合物を遠心分離した。この洗浄によって、過剰量のイソ酪酸無水物を除去せずに、炭酸カリウムを除去した。このエーテル溶液を綿を通し、硫酸ナトリウム溶液上で乾燥し、エーテル溶液を、アスピレーター圧下、50℃浴温、次いで真空ポンプで約0.5トールでロータリエバポレーターで3.5時間ストリッピングした。この混合物を、30mL水と10mLピリジンと一緒に2.3時間マグネチックスターラーで攪拌しつつ60℃〜70℃に加熱して、過剰量のイソ酪酸無水物をイソ酪酸に加水分解した。この混合物を200mL酢酸エチルで遠心分離管に移し、洗液100mLと一緒に急速に震蘯させると混合物が得られ、これを遠心分離により相分離させて、その後、下部の水性相をピペットで取り除いた。以下の溶液を使用した。水(pH6)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%塩酸及び、さらに100mL酢酸エチル(pH1)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、水(pH8)、水(pH8)、水(pH5)、水(pH5)、水(pH5)。酢酸エチル溶液を綿で濾過し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、浴温41℃でアスピレーター圧下、次いで浴温50℃で真空ポンプを使用して0.3トール、3時間でロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物56.1gが得られた。NMRおよび赤外(IR)スペクトル分析により、エポキシとヒドロキシル基とイソ酪酸無水物はこの油状物中に残存していないことが判明した。
【0067】
実施例4A
図1、反応Aに従った大豆油ジイソブチラートの製造法。
この実施例は、図1、反応Aに従った大豆油ジイソブチラートの製造法について説明する。以下のものを300mLの攪拌しているオートクレーブに充填した:エポキシ化大豆油(45.86g、約0.2006molエポキシド)、39.14gイソ酪酸無水物(0.2474mol)、4.30gイソ酪酸、(0.0488mol)、1.64gトリエチルアミン(0.0162mol)及び1.91gジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム;0.0142mol)。オートクレーブを100psiアルゴンと大気圧の間のサイクルに3回かけて、オートクレーブの空気をフラッシュし、次いでオートクレーブをアルゴンで100psiに加圧した。酸無水物に相当するカルボン酸を使用すると、大豆油ジアセテートの製造においてジアシル化反応が加速されて、再現可能な結果を与えることが判明した。このオートクレーブを300RPMで攪拌し、内容物を20時間加熱し、その時点で、2.9〜3.1ppm(?)領域の吸収がないことをベースとするプロトンNMR分光法によって全てのエポキシ基が完全に消費されたことが判明した。この反応混合物を丸底フラスコに移し、揮発性成分を、最初はクーゲルロフ装置中、約0.06トールの圧、100℃で1時間、次いで約0.05トールの圧、140℃で5.5時間で加熱することによって除去すると、69.99gの黄色のやや粘稠な液体が得られた。この物質のプロトンNMRスペクトルは、イソブチラート基にそれぞれが結合したエポキシ基に元々結合していた二個のメチン水素原子に相当する4.80〜5.35ppmに吸収があり、これらのシグナルの統合は、殆どジアシル化が完了したことを示していた。このIRスペクトルは、イソブチラートエステル基に対応する1737cm-1に強い吸収があった。
【0068】
実施例5
この実施例は、大豆油誘導体化ビス(2-エチルブチラート)の製造法について説明する。エポキシ化大豆油(25.0g、約0.110molエポキシド)、28.18gビス(2-エチルイソ酪酸)無水物(0.132mol)及び1.520gの無水炭酸カリウムを、アルゴンを充填したグローブバッグ中に分配し、加熱マントル、マグネチックスターラー、アルゴンガス入口チューブを備えたコンデンサと反応物中に入れた熱電対とを備えた250mL三つ首フラスコに加えた。フラスコをアルゴンでフラッシュした後、反応混合物を、バブラー装置によってアルゴン雰囲気下に保持した。加熱マントルの抵抗制御を、中間に設定し、約64分後、混合物の温度を約203℃に上昇させた。93分後、温度はゆっくりと198℃に低下し、この時点でプロトンNMR分析から、全てのエポキシド基が消費されたことが判明した。この反応の間には殆ど発泡はなかった。この反応混合物を一晩放冷し、25mLエチルエーテルと共に温め、すすぎとしてエチルエーテル25mLをさらに使用して分液漏斗に移した。混合したエーテル溶液を、洗液のpHが4に低下して、それ以上変化しなくなるまで50mL水洗した。エチルエーテル50mLを添加した後、変化はなかった。この洗浄によって、過剰量のビス(2-エチルイソ酪酸)無水物を除去せずに、炭酸カリウムを除去した。このエーテル溶液を綿を通し、硫酸ナトリウム溶液上で乾燥し、エーテル溶液を、アスピレーター圧下、43℃浴温でロータリエバポレーターでストリッピングした。この混合物を、15mL水と5mLピリジンと一緒に2時間マグネチックスターラーで攪拌しつつ60℃で加熱して、過剰量のビス(2-エチルイソ酪酸)無水物をイソ酪酸に加水分解した。この混合物を50mL酢酸エチルで遠心分離管に移し、洗液100mLで急速に震蘯させると混合物が得られ、これを遠心分離により相分離させて、その後、下部の水性相をピペットで取り除いた。以下の溶液を使用した。水(pH6)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH14)、10%塩酸及び、さらに100mL酢酸エチル(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、水(pH7)、水(pH6)、水(pH5)、水(pH5)、水(pH5)。さらに100mLの酢酸エチルを添加した後、この溶液を綿で濾過し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、浴温41℃でアスピレーター圧下、次いで浴温50℃で真空ポンプを使用して0.55トールで4時間ロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物37.9gが得られた。NMRおよび赤外(IR)スペクトル分析により、エポキシとヒドロキシル基とビス(2-エチルイソ酪酸)無水物はこの油状物中には残存していないことが判明した。
【0069】
実施例6
本実施例は、大豆油ジヘキサノエートの製造法について説明する。エポキシ化大豆油(50.0g、約0.219molエポキシド)、61.47mLヘキサン酸無水物(0.263mol)及び3.032gの無水炭酸カリウムを、アルゴンを充填したグローブバッグ中に分配し、加熱マントル、マグネチックスターラー、アルゴンガス入口チューブを備えたコンデンサと反応物中に入れた熱電対とを備えた250mL三つ首フラスコに加えた。フラスコをアルゴンでフラッシュした後、反応混合物を、バブラー装置によってアルゴン雰囲気下に保持した。加熱マントルの抵抗制御を中間に設定し、これによって約65分後、混合物の温度を約236℃に上昇させ、93分後、抵抗設定を下げることなく217℃に冷却した(発熱があったことが示された)。反応混合物が約150℃に到達すると、かなり発泡が見られた。サンプルのプロトンNMR分析から、このときに全てのエポキシド基が消費されたことが判明した。この反応混合物を一晩放冷し、次いで50mLエチルエーテルと共に温め、すすぎとしてエチルエーテル50mLをさらに使用して遠心分離管に移した。続く全ての洗浄では効果的に相分離させるには遠心分離が必要であった。混合したエーテル溶液を、洗液のpHが4に低下して、それ以上変化しなくなるまで、50mLの水で洗浄した。この洗浄によって、過剰量のヘキサン酸酸無水物を除去せずに、炭酸カリウムを除去した。このエーテル溶液を綿を通し、硫酸ナトリウム溶液上で乾燥し、エーテル溶液を、アスピレーター圧下、43℃浴温でロータリエバポレーターでストリッピングした。この混合物を、30mL水と10mLピリジンと一緒に2時間マグネチックスターラーで攪拌しつつ60℃に加熱して、過剰量のヘキサン酸無水物をヘキサン酸に加水分解した。この混合物を100mL酢酸エチルで遠心分離管に移し、洗液100mLで急速に震蘯させると混合物が得られ、これを遠心分離により相分離させて、その後、下部の水性相をピペットで取り除いた。以下の溶液を使用した。水(pH6)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH14)、10%塩酸(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、水(pH7)、水(pH6)、水(pH5)、水(pH5)。さらに100mLの酢酸エチルを添加した後、この溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、浴温50℃でアスピレーター圧下、次いで浴温50℃で真空ポンプを使用して0.3トール、4時間でロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物65.6gが得られた。NMRおよび赤外(IR)スペクトル分析により、エポキシとヒドロキシル基とヘキサン酸無水物はこの油状物中に残存していないことが判明した。
【0070】
実施例6A
酸無水物または酸クロリドを除去するために蒸気脱臭プロセスを使用する大豆油ジヘキサノエート(実施例6は、ピリジン/水を使用して過剰量のヘキサン酸無水物を除去することについて記載する)
ヘキサン酸無水物を除去するためのピリジンと水との処理の前に、蒸気脱臭(steam deodorization)を使用して、実施例6で記載したのと同一手順を使用して製造しておいた大豆油ジヘキサノエートの粗な反応混合物221.7gを精製した。この材料は約22の出発酸価(starting acid value)を有していた。顕著な発泡のため圧力は0.5トールに低下したので、当初、水蒸気は周囲温度で保持したサンプルに通さなかった。発泡が落ち着くにつれて、温度は193℃に上昇し、圧力は0.2トールに低下し、この間に系内に水蒸気を4時間通し、その後、温度は240℃に上昇したが、発泡によりかなりの材料が失われた。反応混合物酸価は0.47に低下し、その質量の21%がこの時点で蒸留していた。水蒸気スループットを高めつつ0.1〜0.15トール、245〜250℃でさらに1.5時間後、酸価は0.08に低下した。酸価をもっと低下させようと、混合物を同じ温度と圧力で2.5時間保持すると、酸価0.06の材料が得られた。この時点での質量回復率はたったの58%であり、酸価は0.06に低下し、この材料を珪藻土床を通して痕跡量の栓のグリースを除去した。顕著な発泡によって失われた物質の損失量は、そのような発泡を最小化させる脱臭装置を変形することによって低下させることができる。しかしながら、大豆ジエステルは、蒸気脱臭流出物の赤外線分析を使用して以下に示すように、大豆油ビス(2-エチルヘキサノエート)の蒸気蒸留で測定されたように、その蒸留によっても失われるようである。かくして、効果的な蒸気脱臭では、大豆油エステル生成物を蒸留する前に、殆どの酸性成分を除去するために、このプロセスを変形するか、停止しなければならない。
【0071】
実施例7
本実施例では、大豆油ビス(2-エチルヘキサノエート)の製造法について説明する。エポキシ化大豆油(25.0g、約0.110molエポキシド)、35.06gビス(2-エチルヘキサン酸)無水物(0.1315mol)及び1.5295gの無水炭酸カリウムを、加熱マントル、マグネチックスターラー、アルゴンガス入口チューブを備えたコンデンサと反応物中に入れた熱電対とを備えた250mL三つ首フラスコに加えた。フラスコをアルゴンでフラッシュした後、反応混合物を、バブラー装置によってアルゴン雰囲気下に保持した。加熱マントルの抵抗制御を中間に設定し、約60分後、混合物の温度を約212℃に上昇させた。76分後、反応混合物は227℃に到達したが、60分後に得られた反応混合物のプロトンNMR分析から、このときに全てのエポキシド基が消費されたことが判明した。この反応混合物を一晩放冷し、次いで50mLエチルエーテルと共にゆっくり温め、すすぎとしてエチルエーテル50mLをさらに使用して混合物を部分的に溶かして遠心分離管に移した。この混合物を、洗液のpHが4.5に低下するまで、50mL水で洗浄した。この洗浄によって、過剰量のビス(2-エチルヘキサン酸)酸無水物を除去せずに、炭酸カリウムを除去した。このエーテル溶液を綿を通し、硫酸ナトリウム溶液上で乾燥し、エーテル溶液を、アスピレーター圧下、50℃浴温でロータリエバポレーターでストリッピングした。この混合物を、15mL水と5mLピリジンと一緒に2時間マグネチックスターラーで攪拌しつつ65℃に加熱して、過剰量のビス(2-エチルヘキサン酸)無水物をビス(2-エチルヘキサン)酸に加水分解した。この混合物を50mL酢酸エチルで遠心分離管に移し、洗液50mLで急速に震蘯させると混合物が得られ、これを遠心分離により相分離させて、その後、下部の水性相をピペットで取り除いた。以下の溶液を使用した。水(pH6.5)、10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%塩酸(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、水(pH6)、さらに酢酸エチル50mL(pH6)、水(pH5)、水(pH5)。この酢酸エチル溶液を綿で濾過し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、浴温46℃でアスピレーター圧下、次いで真空ポンプを使用して0.5トールでロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物45.6gが得られた。しかしながら、NMRおよび赤外(IR)スペクトル分析で、無水物カルボニル基の立体的にひどく密集していたことから、この油状物中に無水物が残存していないことが判明した。かくして、水/ピリジンを使用する無水物加水分解の上記プロセスを繰り返したが、混合物は190分間攪拌し、次いでこの混合物を200mLの酢酸エチルで分液漏斗に移した。この混合物を以下の洗浄溶液で洗浄し、以下のpH価が得られた:水(pH6.5)、10%水酸化ナトリウム(pH13)、10%水酸化ナトリウム(pH12)、10%塩酸(pH0〜1)、5%重炭酸ナトリウム(pH8.5)、水及びさらに55mLの酢酸エチル(pH7)、水(pH5.5)、水およびさらに50mLの酢酸エチル(pH5.5)。この酢酸エチル溶液を綿で濾過し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、アスピレーター圧下、浴温50℃で、次いで真空ポンプでロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物41.0gが得られた。この物質のNMRスペクトルから、この油状物にはビス(2-エチルヘキサン酸)無水物が残存していないことが判明した。
【0072】
実施例7A
ビス(2-エチルヘキサン酸)無水物を除去するためにピリジンと水との処理の前に、蒸気脱臭を使用し、実施例7と同一手順を使用し、2バッチで製造しておいた大豆油ビス(2-エチルヘキサノエート)の粗な反応混合物398.6gを精製した。この材料は、出発酸価12.86であった。反応混合物の温度は、蒸気フローなしに0.1トールで210℃に最初に上昇させ、その時点で、温度が250℃に到達するまで水蒸気フローをゆっくりと増加させた。高いポット温度で集めた流出物の粘度は最初に集めたものよりもずっと高く、このことは、生成物ジエステルがこの時点で蒸留されていることを示す。この段階での反応混合物の重量は329.7gであり、これは17.5%の重量減に相当するが、過剰量の酸無水物をベースとして予想された重量減は約9.7%であった。この段階での酸価は0.37であった。第一の段階で使用した量と比較して蒸気量を増加させつつ蒸気脱臭を継続し、さらに材料9.6%を蒸留した。しかしながら、この材料の酸価が0.38であったということは、第一段階で過剰量の無水物が効果的に除去されたことを示している。反応混合物を珪藻土床に通して、痕跡量の栓のグリースを除去した。第一段階の流出物の赤外線分析では、無水物、エステル及び酸のピークがそれぞれ1813、1737、及び1708cm-1であることが示され、第二段階の流出物は主にエステルであり、このことは、大豆油ビス(2-エチルヘキサノエート)がこれらの条件下でも蒸気蒸留できることを示している。従って、効果的な蒸気脱臭では、生成物の潤滑剤も蒸留する前に、プロセスを適当に停止しなければならない。
【0073】
実施例8〜14は、エポキシ化大豆油の水素化と、この生成物と酸無水物または酸クロリドとのアシル化によって形成した大豆油モノエステルの製造法について記載する。エポキシ化大豆油の水素化は、パール(Paar)震蘯水素化装置で実施した。典型的な実施例では、29.4gの炭素上10%パラジウムをアルゴンを予め散布しておいた2.5Lパールボトルに入れ、751mlエタノールと40ml氷酢酸の混合物中のエポキシ化大豆油164.8g(Vikoflex 7170、オキシラン数7.0)の溶液を添加した。ボトルを水素化装置に取り付け、60psi水素まで6回のサイクルで圧縮し、大気圧付近に解放した。水素圧を50〜60psi近くに保持し、反応を約8日間進行させ、この時点でボトル圧の低下は最小となり、ボトルを、リザーバ水素化タンクから単離した。反応混合物を、濯ぎ用の冷エタノール(glacial ethanol)を使用して珪藻土床を通して濾過し、この溶液を高真空下で凍結乾燥すると、白色固体112.0gが得られた。プロトンNMR分光法により、エポキシ基が完全に消費されたことが判明し、また形成したモノグリセリドとジグリセリドのレベルが低かったことが判明した。
【0074】
実施例8
本実施例は、図2に従って大豆油モノアセテートの製造法について説明する。水素化エポキシ化大豆油(23.43g、0.104molヒドロキシル基)を、マグネチックスターラーを備えた1Lフラスコ中、352mLの無水酢酸(3.73mol)と11.7mLのピリジンと反応させ、60℃で125分間加熱した。過剰量の無水酢酸を100℃以下の温度、約0.1トール圧でクーゲルロフ装置中で蒸留すると、琥珀色流体26.8gが得られた。このサンプルをアシル化剤として無水酢酸とアセチルクロリドと、同様の方法で製造した二つの小ロットと混合した(全てのロットは同一プロトンNMRスペクトルであったから)。この材料はやや濁っていたので、ヘキサンに溶解し、0.22ミクロンのGeneral Solvent膜フィルターを通し、ストリッピングすると、32.31gの油状物となった。NMR分析から、この材料は痕跡量の無水酢酸を含んでいたことが判明したので、クーゲルロフ装置で100℃、約0.1トールで再び蒸留すると、油状物32.01gが得られた。
【0075】
実施例9
この実施例は、図2に従った大豆油モノイソブチラートの製造法について説明する。水素化エポキシ化大豆油(19.6g、0.0870molヒドロキシル)を、マグネチックスターラーを備えた250mLフラスコ中、209.9gのイソ酪酸無水物(1.327mol)と12.0mLのピリジンと反応させ、アルゴン雰囲気下、75〜76℃で2.0時間加熱した。過剰量のイソ酪酸無水物を100℃以下の温度、37ミクロンまでの圧力でクーゲルロフ装置中で留去すると、油状物13.61gが得られた。この材料のIRスペクトル分析では、無水物または酸のバンドは明らかにならなかったが、サンプルはイソ酪酸の臭いがしたので、この材料を水15mLとピリジン15mLと一緒に65℃で2時間、急速攪拌しながら加熱してさらに加水分解にかけた。この材料を酢酸エチル150mLで遠心分離管に移し、水性洗液50mLで急速に震蘯すると、混合物が得られ、これを遠心分離によって相分離し、その後、下部相をピペットで取り除いた。以下の溶液を使用し、以下の洗液のpH価を検知した:水(初期濯ぎの一部として使用)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH14)、10%塩酸プラス追加の酢酸エチル50mL(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH8)、水100mL及び酢酸エチル50mL(pH6.5)、水100mL及び酢酸エチル50mL(pH5.5)。この酢酸エチル溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥し、綿で濾過し、浴温50℃でアスピレーター圧下、次いで真空ポンプを使用して0.1トールで3時間ロータリーエバポレーターでストリッピングすると、油状物が得られた。NMR及びIRスペクトル分析から、エポキシ基及びヒドロキシル基及びイソ酪酸無水物は、この油状物中には残存していないことが判明した。
【0076】
実施例9A
大豆油モノイソブチラート
本実施例は、図2に従って大豆油モノイソブチラートの製造法について説明する。マグネチックスターラーと、ガス入口管を備えた環流コンデンサのついた2L三つ首丸底フラスコに、水素化大豆油112.06g(0.490molヒドロキシル基)及びイソブチリルクロリド57.43g(0.539mol)及びジエチルエーテル692mlを添加した。攪拌した反応混合物をアルゴンでフラッシュし、バブラー装置を使用してアルゴン雰囲気下で保持し、ピリジン44.78g(0.566mol)を、フラスコを加熱せずにフラスコのネック部分の隔壁を介してシリンジでゆっくりと添加した。この混合物を10時間環流し、ついで冷蔵庫に入れてから、ピリジンを中程度の多孔度ガラスフリットで濾過した。濾液を5%塩酸(pH0)の350ml分、5%重炭酸ナトリウム3回分(それぞれpH9)、水(pH8)、水(pH6)、水(pH5)で洗浄した。このエーテル層を予備乾燥のために綿に通し、次いで硫酸ナトリウム上で乾燥した。この混合物をアスピレーター圧下、次いでクーゲルロフ装置中、100℃及び0.04トールで2時間、次いで115℃及び0.02トールで0.5時間ロータリエバポレーターでストリッピングすると、液体102.1gが得られた。この材料をアルミナ床に材料を通すためにアルゴンガスを使用して加圧フィルター装置中、塩基性アルミナ(75g)を通し、生成物を同じアルミナ床にさらに2回以上通すと、酸価0.091の物質65.0gが得られた。
【0077】
実施例10
本実施例は、図2に従って大豆油モノヘキサノエートの製造法について説明する。水素化エポキシ化大豆油(50.0g、0.218molヒドロキシル)、33.71gヘキサノイルクロリド(0.2505mol)及び20.3mLピリジン(0.2505mol)を、無水エーテル270mLに溶解し、アルゴン雰囲気下で7時間環流した。一晩攪拌した後、ピリジン塩酸塩の沈殿をエーテル濯ぎ液を使用してガラスフリットで濾過して除去した。この溶液を分液漏斗に移し、以下の水溶液150mLで抽出し、洗浄すると、除去後に以下のpH価であった:5%塩酸2×150mL(pH0、0)、10%重炭酸ナトリウム150mL(pH9)、10%重炭酸ナトリウム150mL(pH9)、及び10%重炭酸ナトリウム150mL(pH9)。この時点で、エーテル溶液の少量を蒸発させて、IRスペクトルを得、酸クロリドがまだ残存することが確認された。重炭酸ナトリウム溶液で連続抽出してもヘキサノイルクロリド濃度が目に見えて減らなかったので、エーテル溶液を乾燥、蒸発させて、残渣を水15mLとピリジン5mLと一緒に迅速に攪拌しながら、65℃で3時間加熱した。この物質を酢酸エチル150mLと水150mLで分液漏斗に移し、水性溶液150mLと一緒に迅速に攪拌すると、混合物が得られ、これを分液漏斗中で相分離した。以下の洗液を使用し、以下のpH価が得られた:水、10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%水酸化ナトリウムプラス酢酸エチル75mL、10%塩酸(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH8)、水100mL(pH6)、水100mL(pH6)。この酢酸エチル溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、綿で濾過し、浴温50℃でアスピレーター圧下、次いで真空ポンプを使用して2時間ロータリーエバポレーターでストリッピングすると、油状物25.01gが得られた。NMRとIRスペクトル分析から、エポキシ基とヒドロキシル基とヘキサノイルクロリドは、この油状物中には残存していないことが判明した。
【0078】
実施例10A
大豆油モノヘキサノエート
本実施例は、図2に従った大豆油モノヘキサノエートの製造法について説明する。水素化エポキシ化大豆油119.4gを使用し、全ての試薬の割合を維持しつつ、溶媒として酢酸ではなくエタノールを使用してエポキシ化大豆油を還元した以外には、実施例10に記載の方法をこの物質の製造のために使用した。ピリジン/水手順を使用して(実施例10に記載)加水分解し、痕跡量の酸クロリドを除去すると、酸価0.54の液体119.1gが得られた。この材料をアルミナ床に材料を通すためにアルゴンガスを使用して加圧フィルター装置中、塩基性アルミナ(75g)に通し、生成物を同じアルミナ床にさらに2回以上通すと、酸価0.144の液体78.3gが得られた。このアルミナ床をエーテルで抽出し、ストリッピングすると、酸価0.149の物質がさらに19.8g得られた。
【0079】
実施例11
本実施例は、図2に従って大豆油モノ2-エチルヘキサノエートの製造法について説明する。水素化エポキシ化大豆油(47.0g、0.206molヒドロキシル)、37.54gの2-エチルヘキサノイルクロリド(0.2262mol)及びピリジン19.94mL(0.2467mol)を、無水エーテル270mLに溶解し、アルゴン雰囲気下、10時間環流した。一晩攪拌した後、ピリジン塩酸塩の沈殿を、エーテル濯ぎを使用してGeneral Solvent膜フィルターを通して濾過により除去した。この混合物によって固体ができたので、これを冷蔵庫に一晩おき、General Solvent膜フィルターで再び濾過した。これをアスピレーター圧下でストリッピングすると、濁った白色溶液74.7gが得られ、これを水37.5mLとピリジン12.5mLと一緒に65℃で約3時間加熱した。この溶液を酢酸エチル150mLで遠心分離管に移し、以下の溶液150mLで洗浄し、相分離後に以下のpH値であった:10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%塩酸(pH0)、5%重炭酸ナトリウム150mL(pH9)、10%重炭酸ナトリウム150mL及び酢酸エチル40mL(pH9)、10%重炭酸ナトリウム150mLプラス酢酸エチル40mL(pH7〜8)、水プラス酢酸エチル50mL(pH6)。この時点で、エーテル溶液の少量を蒸発させ、IRスペクトルを得て、残りの酸クロリドがまだ存在するということにより確認した。かくして、エーテル溶液を乾燥し、蒸発させ、この残渣を水38mLとピリジン17mLと一緒に65℃で6時間、迅速に攪拌しなが加熱した。この材料を酢酸エチル250mLと水100mLで遠心分離管に移し、水性洗液100mLと共に迅速に震蘯すると、混合物が得られ、これを遠心分離により相分離した。以下の洗浄液を使用し、以下の洗浄pHが得られた:水、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH11)、10%塩酸(pH0)、10%塩酸(pH0)、10%重炭酸ナトリウム(pH8)、水100mL(pH5.5)。酢酸エチル溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾紙で濾過し、浴温50℃でアスピレーター圧下、次いで真空ポンプで0.04トールで2.5時間、ロータリエバポレーターでストリッピングすると、油状物25.96gが得られた。NMRとIRスペクトル分析から、エポキシ基とヒドロキシル基と2-エチルヘキサノイルクロリドが油状物中に残存していないことが判明した。
【0080】
実施例11A
大豆油モノ(2-エチルヘキサノエート)
本実施例は、図2に従って大豆油モノ(2-エチルヘキサノエート)の製造法について説明する。水素化エポキシ化大豆油116.2gを使用し、全ての試薬比を維持しつつ、溶媒として酢酸ではなくエタノールを使用してエポキシ化大豆油を還元した以外には、実施例11に記載の方法を使用した。ピリジン塩酸塩を除去した後、加水分解し、過剰量の酸クロリドを除去するためにピリジン/水手順(実施例X、Yに記載)を使用すると、酸価0.68の物質155.8gが得られた。この物質のプロトンNMRスペクトルは、エステル基に結合したメチン水素原子に相当する4.76〜5.04ppmに吸収があった。この物質(150.0g)をアルミナ床に材料を通すためにアルゴンガスを使用して加圧フィルター装置中、塩基性アルミナ(71g)に通し、生成物を同じアルミナ床にさらに2回以上通すと、酸価0.16の物質104.2gが得られた。
【0081】
実施例12
大豆油混合モノ(ヘキサノエート/アセテート、50:50)
本実施例は、図2に従って大豆油混合モノ(アセテート/ヘキサノエート、50:50)の製造法について説明する。マグネチックスターラーと、ガス入口管を備えた環流コンデンサのついた1L三つ首丸底フラスコに、水素化大豆油58.50g(酢酸ではなくエタノール中でエポキシ化大豆油の還元により製造;0.2559molヒドロキシル基)、ピリジン23.08g(0.2918mol)及びジエチルエーテル337mlを添加した。攪拌した反応混合物をバブラー装置を使用してアルゴン雰囲気下で保持し、ヘキサノイルクロリド19.64g(0.1459mol)とアセチルクロリド(11.45g;0.1459mol)をフラスコを加熱せずに、フラスコネックの隔壁を介してシリンジで順に添加した(ヘキサノイルクロリドを先に添加)。この混合物を10時間環流し、ついで冷蔵庫で冷却してから、ピリジン塩酸塩を0.22ミクロンGeneral Solvent(GS)膜で濾過し、溶媒をロータリエバポレーターで除去した。過剰量の酸クロリドを加水分解するために、ピリジン22.6ml、水62.7mlをこの混合物に添加し、これをメカニカルスターラーで8時間、激しく攪拌しながら、65℃に保持した油浴中で加熱した。この混合物を酢酸エチル187mlで1Lプラスチックボトルに移し、混合物を水性洗浄溶液50ml分で抽出し、その後、下層をピペットで取り除き、以下の洗浄pH値が観察された:10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%HCl(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、10%重炭酸ナトリウムプラス酢酸エチル50mL(pH9)、10%重炭酸ナトリウムプラスさらに酢酸エチル113mL(pH9)、水(pH9)、水(pH7〜8)、水(pH5〜6)。混合物を硫酸ナトリウム上で一晩乾燥し、溶媒を70℃、アスピレーター圧下ロータリエバポレーターで最初にストリッピングすると物質55.49gが得られ、これをさらに120℃、0.08〜0.02トールで4時間、クーゲルロフ装置(真空ポンプ付き)中でストリッピングすると、透明、薄黄色でやや粘稠な液体53.97gが得られた。この物質は酸価0.96であった。
【0082】
実施例13
大豆油混合モノ(ヘキサノエート/イソブチラート、50:50)
本実施例は、図2に従って大豆油混合モノ(イソブチラート/ヘキサノエート、50:50)の製造法について説明する。メカニカルスターラー装置と、ガス入口管を備えた環流コンデンサのついた1L三つ首丸底フラスコに、水素化大豆油58.50g(酢酸ではなくエタノール中でエポキシ化大豆油の還元により製造;0.2559molヒドロキシル基)、ピリジン23.08g(0.2918mol)及びジエチルエーテル337mlを添加した。攪拌した反応混合物をバブラー装置を使用してアルゴン雰囲気下で保持し、イソブチリルクロリド(13.50g;0.1459mol)とヘキサノイルクロリド19.64g(0.1459mol)をフラスコを加熱せずに、フラスコネックの隔壁を介してシリンジで順に添加した(イソブチリルクロリドを先に添加)。この混合物を10時間環流し、その後、ピリジン塩酸塩を0.22ミクロンGeneral Solvent(GS)膜で濾過し、溶媒をロータリエバポレーターでストリッピングした。過剰量の酸クロリドを加水分解するために、ピリジン22.6ml、水62.7mlをこの混合物に添加し、これをメカニカルスターラーで5時間、激しく攪拌しながら、65℃に保持した油浴中で加熱した。この混合物を酢酸エチル187mlで1Lプラスチックボトルに移し、混合物を水性洗浄溶液50ml分で抽出し、その後、下相をピペットで取り除き、以下の洗浄pHが観察された:10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%水酸化ナトリウム(pH9)、10%HCl(pH0)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、10%重炭酸ナトリウムプラス酢酸エチル50mL(pH9)、10%重炭酸ナトリウムプラスさらに酢酸エチル113mL(pH9)、水94mL(pH9)。混合物を硫酸ナトリウム上で一晩乾燥し、溶媒を70℃、アスピレーター圧下ロータリエバポレーターで、さらに120℃、0.07トールで2.5時間、クーゲルロフ装置(真空ポンプ付き)中でストリッピングすると、透明、殆ど無色でやや粘稠な液体70.05gが得られた。この物質のプロトンNMRスペクトルは、エステル基に結合したメチン水素原子に相当する4.80〜5.04ppmに吸収があった。この物質は酸価0.86であった。
【0083】
実施例14
大豆油混合モノ(ヘキサノエート/2-エチルヘキサノエート、50:50)
本実施例は、図2に従って大豆油混合モノ(ヘキサノエート/2-エチルヘキサノエート、50:50)の製造法について説明する。マグネチックスターラーと、ガス入口管を備えた環流コンデンサのついた1L三つ首丸底フラスコに、水素化大豆油80.40g(酢酸ではなくエタノール中でエポキシ化大豆油の還元により製造;0.3519molヒドロキシル基)、ピリジン31.56g(0.3990mol)及びジエチルエーテル462mlを添加した。攪拌した反応混合物をバブラー装置を使用してアルゴン雰囲気下で保持し、2-エチルヘキサノイルクロリド32.61g(0.1995mol)とヘキサノイルクロリド(26.99g;0.1995mol)をフラスコを加熱せずに、フラスコネックの隔壁を介してシリンジで順に添加した(ヘキサノイルクロリドを先に添加)。この混合物を10時間環流し、ついで冷蔵庫温度に冷却してから、ピリジン塩酸塩を0.22ミクロンGeneral Solvent(GS)膜で濾過し、エーテルをロータリエバポレーターで除去した。過剰量の酸クロリドを加水分解するために、ピリジン21.2ml、水64.1mlをこの混合物に添加し、これをメカニカルスターラーで8時間、激しく攪拌しながら、65℃に保持した油浴中で加熱した。この混合物を酢酸エチル200mlで1Lプラスチックボトルに移し、混合物を水性洗浄溶液100ml分で抽出し、その後、下部相をピペットで取り除き、以下の洗浄pHが観察された:10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウム(pH10)、10%水酸化ナトリウムプラス酢酸エチル50ml(pH10)、20%水酸化ナトリウム(pH14)、HCl(pH1)、5%重炭酸ナトリウム(pH9)、10%重炭酸ナトリウムプラスさらに酢酸エチル50mL(pH9)、10%重炭酸ナトリウムプラスさらに酢酸エチル113mL(pH9)、水(pH9)、水(pH7)、水(pH6.5〜7.0)、水(pH5.5〜6)。混合物を硫酸ナトリウム上で一晩乾燥し、溶媒を40℃、アスピレーター圧下ロータリエバポレーターで、さらに140℃、0.03トールで2時間、クーゲルロフ装置(真空ポンプ付き)中でストリッピングすると、透明、薄黄色でやや粘稠な液体70.0gが得られた。この物質は酸価0.64であった。
【0084】
【表1】
【0085】
**:実施例4Aに従ったプロセスを製造に使用する。
***:蒸気脱臭を実施例5A、6A及び7Aで使用する以外には、実施例5及び6に従ったプロセスを使用する。
****:実施例4Aに従ったプロセスと、熱水抽出、エタノールアミンを添加して過剰量の酸無水物と反応させる。
【0086】
実施例1Aは、実施例1の材料の繰り返し試験であり、実施例1Bは、実施例1の繰り返しの製造例である。
【0087】
【表2】
【0088】
ESO:エポキシ化大豆油
潤滑スクリーニング試験(lubrication screening test)は、大豆油ジエステル及びモノエステルに関して、表1、2及び3に記載のごとく実施した。
【0089】
ペンシルバニア州ミクロ酸化テスト(the Penn. State micro-oxidation test)は、空気に暴露されているステンレススチール表面でサンプルを加熱し、付着率と蒸発重量率とを測定することを含む。標準物質と比較して割合が低いと、潤滑剤候補の酸化安定性の尺度を提供する。全ての酸化安定性試験は、酸化安定剤を添加せずに実施した。表1、2及び3には、本発明の油が、RBD大豆油並びに高オレイン酸大豆種油よりもずっと少量の付着率及び蒸発率であることがわかる。高い補助的な酸化安定性を提供するために、同量の酸化防止剤を添加することによって、未変性RBD大豆油と比較して高い酸化安定性が本発明の変性油に与えられるはずである。この効果は、酸化防止剤である亜鉛ジアルキルジチオフォスフェート(2DDP)を1%レベルで添加することによって証明された。大豆油ジエステルサンプル4A、5及び特に蒸気蒸留によって精製した5Aと7は非常に低い付着率となり、これはエステルカルボニル基に対してアルファ位でアルキル基に懸垂するエステル基に起因し、脂肪酸骨格にさらなる酸化安定性を提供する。加水分解安定性はこれらのサンプルでは評価しなかったが、カルボニル基に対してアルファ位で分岐をもつこれらのエステル基は、この分岐を持たないエステル側鎖と比較して実質的に高い加水分解安定性をもつものと予想される。実施例5は、全ての調整サンプルの中で最も低い蒸発重量損失比も提供する。実施例1、3、4A、6B、8、12、13及び14も、低い付着物重量比を与えた。サンプル5A、6A(蒸気脱臭により精製)及び実施例6Bにより解るように、1%ZDDPも付着物重量%をかなり改善したことが解る。少量の残存溶媒の蒸発は、一部、蒸発重量損失比に寄与しているとも考えられる。
【0090】
注目すべき蒸発重量比は、実施例1A、1B、5、5A、6、6A、12、13及び14で得られた。1%ZDDPは、サンプル5A、6C、13及び14に見られるように、蒸発重量%をかなり改善したことも解る。
【0091】
40℃と100℃の両方で大豆油ジエステルとモノエステルの粘度は、トリグリセリド対照の粘度よりもかなり高く、同じサイズのRまたはR’を比較したとき、任意のジエステルの粘度は、対応するモノエステルの粘度よりも高いことが解る。試験した全ての油は生分解性であることが判明し、その高い粘度により粘度エンハンサー及び潤滑剤ベース油としての使用が予想される。大豆油ジアセテート(サンプル1、1A、及び1B)は、特に大きな粘度での改良点を提供し、この用途に関しては高粘度が必要とされるので、削岩流体として特別な用途をもつ。生分解性であることと非毒性であることは、そのような削岩流体は岩盤や井堀削の間に横切った地下水位に残ってしまうので、この用途に関しては特に重要な特性であろう。
【0092】
粘度指数(viscosity index)は、温度変化による粘度変化の尺度であり、特定の温度区間にわたって温度が変化するにつれて、粘度に望ましい小さな変化がある物質は粘度指数が大きい。本発明の油は広範な粘度指数範囲を有し、そのうちの一つのサンプル9(大豆油モノイソブチラート)は、大豆油対照よりも粘度指数がかなり高い。
【0093】
測定した全サンプルの曇り点は対照よりもずっと優れていた。曇り点は飽和成分の内部相分離の兆候であり、低い方が好ましい。表1において「なし」なる表示は、流動点測定に含まれる最低温度に対して曇り点が観察されなかったことを示す。全大豆油ジエステルサンプルに関して測定された曇り点は、大豆油対照に対して優れた改良点を示した。大豆油モノエステルに関しては、サンプル8と11以外の全サンプルの曇り点は、対照のRBD大豆油よりもよく、サンプル12、12及び14は、大豆油よりもずっと良かった。
【0094】
潤滑剤の流動点は、材料がASTM D97に従って流れる最低温度を示し、低温用途が可能になるようにできるだけ低くなければならない。少量の流動点降下剤は、流動点を好都合に低下させることもできる。流動点を測定し、表1及び2に列記する。大豆油ジエステルサンプル5、5A、6、6A及び6Bは、大豆油対照よりも流動点が改良された。大豆油ジエステルに関しては、最も良い結果は、直鎖及び分岐鎖の6個の炭素原子のエステル側鎖(実施例5、5A、6、6A、6B、及び6C)に関して得られた。最良の挙動は、蒸気脱臭(6A)され、中オレイン酸(midoleic)大豆油(6C)から誘導した大豆油ジヘキサノエートで達成された。1%Lubrizol 3715Aと本発明の材料との混合物に関する流動点を表1、2及び3に示す。1%Lubrizol 3715を使用する流動点は、実施例6に関しても試験し、同様の結果であった。サンプル5、6及び6Cに関しては、Lubrizolを使用するとかなり低い流動点となった。−21℃という流動点が、脱臭した大豆油ジヘキサノエート(サンプル6A)と、中-オレイン酸(mido-oleic)大豆油(実施例6C)から誘導した大豆油ジヘキサノエートで達成されたことは、注目に値する。これらのサンプルは両方とも、1%流動点降下剤を添加すると、−23℃の流動点であった。この低い流動点により、大豆油よりも明らかに有利である。
【0095】
流動点は、ホモ置換大豆油モノエステルに関しても評価し、ヘキサノエート(実施例10)と2-エチルヘキサノエート(実施例11)は、それぞれ−15℃と−18℃であった。ヘキサノエートとイソブチラート(実施例13)と、ヘキサノエートと2-エチルヘキサノエート(サンプル14)の約1:1比のヘテロ置換モノエステルは、それぞれ−24℃と−22℃の流動点であった。
【0096】
この結果はおおまかに以下のようにまとめられる:ミクロ酸化特性は、鉱物ベース油及び合成油のものと匹敵し得ることが知見された。高い粘度が多くのサンプルで達成されたので、バイオベースの油(biobased oil)、添加剤および粘度エンハンサーとしての使用できる。粘度指数は、通常Rの大きさが大きくなるにつれて頂点に達し、その後低下する。ピーク粘度指数は以下のようである:ジエステル(ジヘキサノエート−141、サンプル6);モノエステル(モノイソブチラート−281)。通常、流動点は、Rが大きくなるにつれて最小化する、たとえばジエステル(ジヘキサノエート:−12℃、−21℃、及び−23℃、流動点降下剤を使用、実施例6A);モノエステル(モノイソブチラート:−7℃、及び−12℃、流動点降下剤を使用、サンプル9;モノヘキサノエート:−15℃、及び−18℃、流動点降下剤を使用、サンプル10及び2-エチルヘキサノエート:−18℃)。
【0097】
四球式摩耗試験
潤滑剤の重要な特性の一つは、潤滑剤が接触し、互いに通過している二つの表面間の摩耗を最小化するということである。摩耗を最小化する潤滑剤の能力を測定する一つの方法としては、ASTM D4172に記載のような四球式摩耗試験(4-ball wear test)で得られた摩耗傷を測定することがある。この四球式摩耗試験は、表面間に非整合(non-conformal)且つ点接触(point contact)を提供するもので、潤滑剤の摩耗媒介特性(wear-mediating property)の非常に積極的な尺度である。対照として試験したのは、本発明の変性油と共に、RBD大豆油、Mobil SHC-634ギヤ油及びSAE 10W-30潤滑油(motor oil)であった。荷重18kg条件下では、本発明の多くの候補物質は、大豆油および一つの物質、添加剤を含まない大豆油ジヘキサノエートよりもかなり摩耗傷径が小さく、耐摩耗成分を含む二つの市販潤滑剤と本質的に同一の摩耗傷径であった。公知の耐摩耗及び酸化防止剤の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)を荷重18kgで1%レベルで使用すると、本発明の物質の摩耗傷径は、大豆油由来のものと同等またはそれよりもよく、幾つかは二つの市販潤滑剤の摩耗傷径に匹敵した。荷重40kg下では、本発明の全ての物質は、大豆油由来のものと匹敵する大きな摩耗傷であった。しかしながら1%ZDDPを添加すると、本発明の多くの潤滑剤は大豆油由来のものよりも摩耗傷径が小さく、市販潤滑剤の摩耗傷径と匹敵した。これらの試験結果は、特定の大豆油モノエステル及びジエステルに見られるトリグリセリドの脂肪酸基に沿ってエステル基を付加すると、適用した接触力に依存して、低濃度で添加剤ZDDPを含んでも含まなくても、非変性植物油、特に大豆油で知見されるものよりも摩耗が少なくなることが示される。
【0098】
封止材料適合性試験(Seal Material Compatibility Test)
潤滑剤は、通常、動かない部品と動く部品との間を封止する区間に入れられる。好ましい封止特性は、膨潤が最小であって、温かいまたは熱い潤滑剤に暴露されたときにそのもとの硬度を維持するというものである。従って、本発明の潤滑剤と大豆油に68℃で24時間暴露されたときに、二つのエラストマーの硬度における変化と膨潤度を測定するために試験を実施した。試験したエラストマーは、エチレンプロピレンジエン(EPDM)とニトリルゴムであった。EPDMを試験したとき、本発明の四つ全ての潤滑剤は、一次元及び容積変化をベースとして、かなり膨潤が少なく、大豆油よりもずっとその元の硬度も維持した。ニトリルゴムを試験したとき、本発明の潤滑剤と大豆油との間には寸法安定性ならびにそのゴムの硬度において殆ど差は無かった。これらの試験結果は、使用した具体的な封止材料に依存して、本発明の潤滑剤は、非変性植物油、特に大豆油による同じ特性と比較して、非常に優れた寸法安定性を提供し、且つ個々のエラストマーの固有の硬度も維持したことを示す。
【0099】
本発明のもう一つの態様では、ヘテロ置換ジエステル及びモノエステルを提供する。ヘテロ置換ジエステル及びモノエステルの典型的な構造は以下に説明する。
【0100】
【化7】
【0101】
式Aは、脂肪酸基(例えばリノール酸)由来のジエステルの一つの基を表し、ここでR1、R2、R3、及びR4は同一でも異なってもよく、1〜18個の炭素をもつ。Xはトリグリセリド内の脂肪酸の残余部分である。
【0102】
式Bは、脂肪酸基(たとえばリノール酸)由来のモノエステルの一つの基を表し、ここでR1及びR2は同一でも異なっていてもよく、1〜18個の炭素をもつ。Xはトリグリセリド内の脂肪酸の残余部分である。式Bにおいて、隣接水素化(H)およびエステル基(-O2CR)が交換することによって他の位置異性体が可能である。
【0103】
上記式において、他の位置異性体も可能である。任意の数のアシル化剤(たとえば、必要に応じて酸無水物または酸クロリド)を使用することができる。上記構造は、リノレエートから誘導したモノエステル中の最大二つの異なる基と、リノレエートから誘導したジエステル中の最大四つの異なる基を挙げている。相対濃度及び相対反応性に比例した形で上記に示されている二つの異なる構造をとる、ジエステルの場合でもモノエステルの場合でも所望の多くの異なるアシル化試薬の混合物が使用可能であることは特記すべきである。これはトリグリセリドのそれぞれの脂肪酸アームに適用する。
【0104】
トリグリセリド中の同一脂肪酸骨格中に種々のサイズのR基を配置することによって、得られた大豆油、または植物油、通常ジエステル及びモノエステルが、低い流動点、流動点降下剤に対する高い反応性及び、種々の粘度を有すると予想される。
【0105】
混合ジエステルは、通常、エポキシ化大豆油またはエポキシ化油を、構造:(RnCO)2O及び(RmCO)2Oをもつ無水物の混合物と三級アミンとの混合物と反応させて、場合により
(a)(単数または複数)の無水物と三級アミンからのR1CO2HまたはR2CO2H(式中、酸は同一でも異なっていてもよい)または水と三級アミン、あるいは
(b)カリウムまたは他の金属カーボネートで触媒作用を与えることにより得ることができる。
【0106】
混合モノエステルは、通常、水素化エポキシ化大豆油、または水素化エポキシ化植物油と、構造:(R1CO)2Oと(R2CO)2O(式中、無水物は同一でも異なっていてもよい)を有する無水物の混合物、または構造:R1COClとR2COCl(式中、酸クロリドは同一でも異なっていてもよい)を有する酸クロリドの混合物と反応させることによって得ることができる。三級アミンまたは芳香族アミン(たとえばピリジン)を触媒として使用することができる。
【0107】
ヘテロ置換ジエステル及びモノエステルは、上記方法スキーム及び以下の表3に従って製造した。
【0108】
【表3】
【0109】
*:これは反応中で使用されたカルボン酸を同定する。混合ジエステルの製造で使用した酸の相対モルは、得られる最終粘度に影響する。たとえば、実施例3-1において、エポキシ基1モルはヘキサン酸無水物0.500モル、無水酢酸7.55モルと酢酸0.248モルと反応する。
**:実施例2の手順に従った製造例。
***:製造例または実施例3-6及び3-9は、水洗でK2CO3除去した後に、過剰量の未水和物(anhydrate)を約140℃、約0.03Torrで操作するクーゲルロフで完全に除去した以外には、実施例3-7に従ったプロセスにより実施することができる。いずれの例示プロセス(実施例2または実施例3-7)に関しても、生成物は所望の酸価となるまでクーゲルロフ中で処理する。
【0110】
本発明に従った全性能を改良するための能力を持つ当業界で公知の典型的な添加剤としては、耐摩耗添加剤、流動点降下剤、フォーム調整剤(foam modifier)、界面活性剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0111】
さらに本発明に従った材料の任意の混合物が具体的な使用に関して有益な効果をもたらすものと予想される。
ジエステル官能基とモノエステル官能基の両方を含むもう一つのタイプの潤滑剤候補は、植物の油脂ジエステル及びモノエステルを個々に製造するのに使用したアプローチの組み合わせを使用して製造することができよう。このプロセスは、エポキシ化油脂の部分的水素化と、ジエステルとモノエステルを別個に製造するために使用される同一触媒の存在下、エポキシドとアルコール基の誘導体化混合物と酸無水物との反応により実施されよう。このようにして、ジエステル官能基とモノエステル官能基の両方が同一または異なるトリグリセリドの脂肪酸に導入される。
【0112】
植物油脂に関連する重要な問題は、主に低い温度で結晶化する強い傾向をもつ飽和脂肪酸レベルが比較的多量に存在するため、曇り点と流動点が高いということである。この欠陥を克服する一つの方法は、その比較的高いヨウ素価により示されるように、その脂肪酸内の不飽和量が多い油脂で植物油脂をエステル交換することである。エステル交換(interesterification)は、そのプロセスによって全ての脂肪酸がランダム交換されるので、亜麻仁油またはニシン油などの高いヨウ素価の材料を使用すると、飽和脂肪酸の割合の低い物質となるので、その曇り点及び流動点も低下する。
【0113】
多量のオレイン酸及び少量のリノール酸を含む大豆油は、相対的なオレイン酸含有量に依存して、中オレイン酸(mid-oleic)または高オレイン酸(high-oleic)大豆油と称される。多量のオレイン酸を含むトリグリセリドは、リノール酸及びリノレン酸脂肪酸に知見されるように二重アリル型メチレン基が少ないので、高い酸化安定性を有する。かくして、中オレイン酸及び高オレイン酸大豆油、または一般に植物油のジエステル及びモノエステル誘導体の製造によって、通常の大豆油のジエステル及びモノエステル誘導体で立証されるようなものと比較して高い酸化安定性となるものと予想される。高いオレイン酸含有量の他の植物油を使用する際にも同様の効果が予想される。
【0114】
トリグリセリド脂肪酸アームに沿ってヒドロキシル基を含む植物油脂ベースの潤滑剤は、本明細書中に記載のジエステル及びモノエステル潤滑剤から入手可能であるか、植物油脂の二重結合にヒドロキシル基を直接付加することによって入手可能である。これらの誘導体化ポリヒドロキシトリグリセリドは、有用な潤滑剤であると予想される。
【0115】
実施例4-1
大豆油ジヘキサノエートを製造する手順
以下の実施例は、炭酸カリウム触媒を添加する前に反応温度を180℃に迅速に上昇させることにより、図1の反応Bを使用して大豆油ジエステルの製造法について説明するものである。実施例3-7の手順よりこの手順が優れているのは、全体の反応時間が短く、且つもっと再現可能に実施できるという点である。炭酸カリウムを最初に反応フラスコに充填すると、反応が制御下に維持されるように発熱温度を獲得するまで、反応温度をゆっくりと上昇させなければならないからである。エポキシ化大豆油(200g、0.875molオキシラン)及びヘキサン酸無水物225.17g(1.05mol)を、アルゴンガス入口アダプター、コンデンサ、熱電対及びメカニカルスターラーを備えた2L三つ首丸底フラスコに秤量した。粉末炭酸カリウム(12.25g、0.089mol)をアルゴン充填グローブバッグ中で秤量し、アルゴンでフラッシュしておいたフラスコに添加した。J-Kemヒートコントローラーを使用して、加熱マントルで混合物を180℃に加熱し、その温度で攪拌しながら炭酸カリウムをゆっくりと添加した。温度が201℃に急上昇してから、180℃に1時間40分でゆっくりと戻した。反応をNMRによりモニターし、3.5時間の総反応時間後に完了した。冷却後、反応生成物を水200mlとジエチルエーテル200mlとの間で分配し、その後、10%水酸化ナトリウム200ml、10%塩酸、10%重炭酸ナトリウムで抽出し、次いで水洗して水性層のpHを中性にした。このエーテル溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、メディウムフリットフィルターで濾過し、次いでアスピレーターと、1.5トール、60℃で2時間真空ポンプでロータリエバポレーターでストリッピングすると、透明/黄色油状物383.0gが得られた。
【0116】
実施例4-2
大豆油ジヘキサノエートの製造手順
以下の実施例は、反応温度が180℃に急激に上昇した後、炭酸カリウム触媒と、二次触媒として酸無水物に相当するカルボン酸も添加することにより、図1の反応Bを使用して大豆油ジエステルの製造法について説明する。実施例3-7の手順よりも本手順が優れているのは、先の実施例での好都合な点だけでなく、二次触媒によっても反応時間が短くなるという点である。エポキシ化大豆油(200g、0.875molオキシラン)及びヘキサン酸無水物225.45g(1.05mol)及びヘキサン酸5.29g(0.045mol)を、アルゴンガス入口アダプター、コンデンサ、熱電対及びメカニカルスターラーを備えた2L三つ首丸底フラスコに秤量した。J-Kemヒートコントローラーを使用して、加熱マントルで混合物を180℃に加熱し、その温度で攪拌しながら無水炭酸カリウム(12.42g;アルゴンを充填したグローブバッグで秤量)をその温度でゆっくりと添加した。加熱マントルをすぐに外したが、温度は229℃に急上昇し、ゆっくり1時間で180℃にもどした。反応をNMRによりモニターし、2時間の総反応時間後に完了した。冷却後、反応生成物を、水200mlとジエチルエーテル200mlとの間で分配し、その後、10%水酸化ナトリウム200ml、10%塩酸、10%重炭酸ナトリウム抽出し、次いで水洗して水性層のpHを中性にした。このエーテル溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、メディウムフリットフィルターで濾過し、次いでアスピレーターで、60℃で2時間、ロータリエバポレーターでストリッピングすると、透明/黄色油状物368.8gが得られた。
【0117】
生分解性試験サンプル
試験サンプル:サンプル:実施例14、実施例6A、実施例BPAD
本試験用の下水(sewage sludge)は、Hiram(オハイオ州)の汚水処理プラントから入手した。正式に試験を開始する2週間前に、ASM 5864セクション8.3.1に列記された任意選択の摂取材料予備適合法(ptional inoculum pre-adaptation technique)の一部として結果を強めるために、スラッジ微生物を試験サンプルに予備暴露した。
【0118】
キャノーラ油対照と他の配合物の炭素含有量は、後の生分解性の計算用に、ASTM D-5291-02に記載の手順に従って測定した。
【0119】
【表4】
【0120】
ミクロ酸化(micro-oxidation)
ミクロ酸化試験は、ベース油の安定性を評価するために使用した。試験は180℃で30分と60分実施した。全体として、試験から、慣用の高オレイン酸植物ベースの油と比較して、本発明に従って変性した油では、酸化安定性が大きく改善されたことが判明した。この油は、ミクロ酸化及び四球式摩耗試験に見られるように亜鉛アルキルジチオホスフェートに対して優れた応答も示した。
【0121】
粘度
粘度は、油の重要な物理的特性、40℃における粘度、100℃における粘度及び粘度指数を測定するために実施した。
【0122】
流動点及び曇り点
−25℃の流動点は、流動点降下剤(PPD)なしものもと一致した。
以下は、石油ベースのストック(Petr.BS)と比較した本発明に従った二種の油の比較である。
【0123】
【表5】
【0124】
本発明に従った油は、潤滑剤添加剤、工業用添加剤及び粘度指数改良剤としても使用することができる。
本明細書中に開示の本発明の形式は、好ましい態様を構成するものであり、他にも多くの態様が考えられる。本明細書において、本発明の可能な等価物または効果について全てを記載するつもりはない。本明細書中で使用された用語は限定するものではなく単に説明のためのものであり、本発明の趣旨及び範囲を逸脱せずに多くの変形が可能であることは理解されよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエステルの製造法であって、
a)約7を超えるヨウ素価をもつ動物油、動物脂肪または植物油若しくは植物脂肪を準備する;
b)前記油または脂肪をエポキシ化する;及び
c)前記エポキシ化油または脂肪を、塩基性触媒の存在下、1〜約18個の炭素原子をもつカルボン酸無水物と、前記エポキシド官能基の本質的に全てが反応するまで反応させる、各段階を含む前記方法。
【請求項2】
ジグリムまたは他の好適な補助溶媒を使用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒が三級アミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ジグリムまたは他の好適な補助溶媒を使用することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記三級アミンがトリエチルアミンを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
反応中の無水物量を制御することによって、鎖間結合を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ヘテロ置換ジエステルを製造するために二種以上の無水物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
二重結合によって当初結合していた隣接する炭素原子がそれぞれペンダントエステル基を有し、前記エステル基がそれぞれ二種以上の種々のエステル基からランダムに選択される、変性トリグリセリドヘテロ置換ジエステル。
【請求項10】
請求項9に記載の変性トリグリセリドともう一種の機能性成分を含む、工業用流体。
【請求項11】
前記機能性成分が、流動点降下剤、耐摩耗剤、ベースストック、希釈剤、極圧添加剤及び酸化防止剤からなる群から選択される、請求項10に記載の工業用流体。
【請求項12】
2〜17個の炭素原子を含む少なくとも一つの小さなエステル基を選択し、3〜18個の炭素原子を含む少なくとも一つの大きなエステル基を選択し、前記エステル基は少なくとも1個の炭素原子だけ異なる、請求項9に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項13】
前記エステル基が、N、O及びPからなる群から選択される置換されたヘテロ原子を含むことによって互いに異なる、請求項12に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項14】
少なくとも一つの小さなエステル基が選択され、少なくとも一つの大きなエステル基が選択され、前記エステル基は少なくとも1個の炭素原子だけ異なる、請求項9に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項15】
前記大きなエステル基対前記小さなエステル基の比が約0.1〜約0.9である、請求項14に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項16】
前記小さなエステル基の炭素原子は2〜5個を変動し、大きなエステル基の炭素原子は6〜18個を変動する、請求項12に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項17】
前記二種のエステル基の小さなエステル基と大きなエステル基の間の炭素原子の数を変動させる、及び/または前記小さなエステル基対前記大きなエステル基の量の比を変動させることによる、請求項10に記載の工業用流体の粘度の調節法。
【請求項18】
変性トリグリセリドジエステルの製造法であって、
a)エポキシ化トリグリセリドを準備する;
b)塩基性触媒の存在下、前記エポキシ化トリグリセリドを酸無水物と反応させて、ジエステルを製造する;及び
c)前記触媒と未反応無水物からジエステルを分離する、各段階を含む前記方法。
【請求項19】
前記二種以上の無水物が反応する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記塩基性触媒が金属の重炭酸塩、水酸化物または炭酸塩である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記塩基性触媒炭酸塩が、K2CO3、Na2CO3、KHCO3、NaHCO3、及び重炭酸塩からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記反応を、塩基性触媒以外の本質的に全ての成分を最初に加熱し、次いで高温で塩基性触媒を添加することにより実施する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記カルボン酸を二次触媒として添加する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記塩基性触媒は、水の分割(water partitioning)によって分離し、前記無水物を加水分解して対応するカルボン酸とする、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記無水物を、蒸気脱臭により加水分解する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
短鎖無水物対長鎖無水物の比を制御することによって短鎖無水物と長鎖無水物との混合物を選択し、ここで反応させたときに、小さな無水物が第一のエステルに2〜6個の炭素原子を、大きな無水物が第二のエステルに6〜18個の炭素原子を提供する、請求項10に記載の工業用流体の粘度の調節法。
【請求項27】
立体障害エステル基を付加する、請求項9に記載の変性トリグリセリドの加水分解安定性及び/または熱安定性を高める方法。
【請求項28】
前記立体障害エステル基がイソブチラート、2-エチルブチラート、及び/または2-エチルヘキサノエートである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
二重結合によって当初結合していた少なくとも1セットの隣接する炭素原子を持つ変性トリグリセリドモノエステルを含み、当初の1個の二重結合炭素が水素原子を有し、もう一つの炭素原子がペンダントエステル基を有する、変性トリグリセリドモノエステル。
【請求項30】
二重結合により当初結合していた少なくとも2セットの隣接する炭素原子をもち、当初の一つの二重結合炭素が水素原子をもち、もう一つの炭素原子はペンダントエステル基をもち、当初の二重結合の部位のペンダントエステル基は、もう一つの当初の二重結合の部位のエステル基とは異なる、変性トリグリセリドモノエステル。
【請求項31】
ペンダントエステル基が、アセテート、イソブテレート、ヘキサノエート及び2-エチルヘキサノエートからなる群から選択される、請求項29または30に記載の変性モノエステル。
【請求項32】
2〜17個の炭素原子を含む前記少なくとも1個の小さなエステル基が選択され、3〜18個の炭素原子を含む少なくとも1個の大きなエステル基が選択され、このエステル基は少なくとも1個の炭素原子だけ異なる、請求項30に記載の変性トリグリセリドモノエステル。
【請求項33】
前記エステルが、N、O及びPからなる群から選択される置換ヘテロ原子を含むことによって互いに異なる、請求項32に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項34】
少なくとも一つの小さなエステル基が選択され、少なくとも一つの大きなエステル基が選択され、前記エステル基は少なくとも1個の炭素原子だけ異なる、請求項30に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項35】
前記大きなエステル基対前記小さなエステル基の比が約0.1〜約0.9である、請求項34に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項36】
前記小さなエステル基の炭素原子が2〜5個を変動し、前記大きなエステル基の炭素原子が6〜18個を変動する、請求項32に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項37】
立体障害エステルを添加する、請求項30に記載の変性トリグセリドの加水分解安定性及び/または熱安定性を高める方法。
【請求項38】
立体障害基がイソブチラート、2-エチルブチラート、及び/または2-エチルヘキサノエートである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項30に記載の変性トリグリセリドともう一種の機能性成分を含む、工業用流体。
【請求項40】
a)少なくとも一つの二重結合を持つトリグリセリドをエポキシ化する;
b)前記エポキシド基を水素化してモノアルコールを生成する;
c)前記モノアルコールを酸無水物、酸クロリドまたはカルボン酸でアシル化する、各段階を含む、請求項30に記載の変性トリグセリドの製造法。
【請求項41】
種々のペンダントエステル基をもつトリグリセリドを製造するために二種以上の異なるアシル化剤の混合物でアシル化することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
立体障害エステル基を前記変性トリグリセリドモノエステルに組み込むことを含む、変性トリグリセリドモノエステルの酸化安定性/加水分解安定性を改善する方法。
【請求項43】
同一ジグリセリド内にジエステルまたはモノエステルをもつモノエステル及び/またはジエステルトリグリセリドを含む工業用流体。
【請求項44】
a)エポキシ化トリグリセリドを部分的に水素化する;及び
b)前記部分的に水素化したトリグリセリドを一種以上の無水物と反応させてペンダントエステルを形成する、各段階を含む、請求項43に記載の流体を得る方法。
【請求項45】
前記部分的に水素化したトリグリセリドと二種以上の無水物とを反応させることを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
トリグリセリドの混合物を含む潤滑剤であって、前記混合物がモノエステル:
【化1】
及びジエステル:
【化2】
{式中、R’及びRはアルキル基で、C1〜C18であり、R’はそれぞれ同一または異なっていてもよく、Rはそれぞれ同一または異なっていてもよい}及びその混合物からなる群から選択される一種以上のトリグリセリドを含む、前記潤滑剤。
【請求項47】
潤滑剤の製造法であって、
a)植物若しくは動物の油脂、またはその混合物を準備する;
b)前記油脂をエポキシ化する;
c)前記エポキシ化した油脂を水素化して、水素化アームをもつ水素化中間部分(hydrogenated intermediary)を得る;及び
d)前記水素化アームを種々の鎖長のアシル化剤でアシル化して潤滑剤を得る、各段階を含む、潤滑剤の製造法。
【請求項48】
二種以上の種々のアシル化剤を使用する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
潤滑剤の製造法であって、
a)少なくとも一つの不飽和部位をもつモノオールまたはポリオールから誘導したエステルを準備する;
b)前記エステルをエポキシ化する;及び
c)前記エポキシ化エステルを種々の鎖長の酸無水物と直接反応させる、各段階を含む、前記方法。
【請求項50】
二種以上の種々のアシル化剤を使用する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
潤滑油の製造法であって、
a)少なくとも一つの不飽和部位をもつモノオールまたはポリオールから誘導したエステルを準備する;
b)前記エステルをエポキシ化する;
c)前記エポキシ化エステルを水素化して、水素化アームをもつ水素化中間部分を得る;及び
d)前記水素化アームを種々の鎖長のアシル化剤でアシル化して、前記潤滑剤を得る、各段階を含む前記方法。
【請求項52】
モノエステル:
【化3】
及び/またはジエステル:
【化4】
{式中、R’及びRはC1〜C18のアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基、及びその混合物であり、同一トリグリセリド分子内に種々の鎖長の種々のアルキル基の組み合わせを含み、R’はそれぞれ同一または異なっていてもよく、Rはそれぞれ同一または異なっていてもよい}を含む潤滑剤組成物。
【請求項53】
(単一または複数種類の)同一リグリセリドまたは種々のトリグリセリドの脂肪酸アームの間に一つ以上の鎖間結合を含む、請求項52に記載の潤滑剤。
【請求項1】
ジエステルの製造法であって、
a)約7を超えるヨウ素価をもつ動物油、動物脂肪または植物油若しくは植物脂肪を準備する;
b)前記油または脂肪をエポキシ化する;及び
c)前記エポキシ化油または脂肪を、塩基性触媒の存在下、1〜約18個の炭素原子をもつカルボン酸無水物と、前記エポキシド官能基の本質的に全てが反応するまで反応させる、各段階を含む前記方法。
【請求項2】
ジグリムまたは他の好適な補助溶媒を使用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒が三級アミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ジグリムまたは他の好適な補助溶媒を使用することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記三級アミンがトリエチルアミンを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
反応中の無水物量を制御することによって、鎖間結合を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ヘテロ置換ジエステルを製造するために二種以上の無水物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
二重結合によって当初結合していた隣接する炭素原子がそれぞれペンダントエステル基を有し、前記エステル基がそれぞれ二種以上の種々のエステル基からランダムに選択される、変性トリグリセリドヘテロ置換ジエステル。
【請求項10】
請求項9に記載の変性トリグリセリドともう一種の機能性成分を含む、工業用流体。
【請求項11】
前記機能性成分が、流動点降下剤、耐摩耗剤、ベースストック、希釈剤、極圧添加剤及び酸化防止剤からなる群から選択される、請求項10に記載の工業用流体。
【請求項12】
2〜17個の炭素原子を含む少なくとも一つの小さなエステル基を選択し、3〜18個の炭素原子を含む少なくとも一つの大きなエステル基を選択し、前記エステル基は少なくとも1個の炭素原子だけ異なる、請求項9に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項13】
前記エステル基が、N、O及びPからなる群から選択される置換されたヘテロ原子を含むことによって互いに異なる、請求項12に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項14】
少なくとも一つの小さなエステル基が選択され、少なくとも一つの大きなエステル基が選択され、前記エステル基は少なくとも1個の炭素原子だけ異なる、請求項9に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項15】
前記大きなエステル基対前記小さなエステル基の比が約0.1〜約0.9である、請求項14に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項16】
前記小さなエステル基の炭素原子は2〜5個を変動し、大きなエステル基の炭素原子は6〜18個を変動する、請求項12に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項17】
前記二種のエステル基の小さなエステル基と大きなエステル基の間の炭素原子の数を変動させる、及び/または前記小さなエステル基対前記大きなエステル基の量の比を変動させることによる、請求項10に記載の工業用流体の粘度の調節法。
【請求項18】
変性トリグリセリドジエステルの製造法であって、
a)エポキシ化トリグリセリドを準備する;
b)塩基性触媒の存在下、前記エポキシ化トリグリセリドを酸無水物と反応させて、ジエステルを製造する;及び
c)前記触媒と未反応無水物からジエステルを分離する、各段階を含む前記方法。
【請求項19】
前記二種以上の無水物が反応する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記塩基性触媒が金属の重炭酸塩、水酸化物または炭酸塩である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記塩基性触媒炭酸塩が、K2CO3、Na2CO3、KHCO3、NaHCO3、及び重炭酸塩からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記反応を、塩基性触媒以外の本質的に全ての成分を最初に加熱し、次いで高温で塩基性触媒を添加することにより実施する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記カルボン酸を二次触媒として添加する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記塩基性触媒は、水の分割(water partitioning)によって分離し、前記無水物を加水分解して対応するカルボン酸とする、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記無水物を、蒸気脱臭により加水分解する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
短鎖無水物対長鎖無水物の比を制御することによって短鎖無水物と長鎖無水物との混合物を選択し、ここで反応させたときに、小さな無水物が第一のエステルに2〜6個の炭素原子を、大きな無水物が第二のエステルに6〜18個の炭素原子を提供する、請求項10に記載の工業用流体の粘度の調節法。
【請求項27】
立体障害エステル基を付加する、請求項9に記載の変性トリグリセリドの加水分解安定性及び/または熱安定性を高める方法。
【請求項28】
前記立体障害エステル基がイソブチラート、2-エチルブチラート、及び/または2-エチルヘキサノエートである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
二重結合によって当初結合していた少なくとも1セットの隣接する炭素原子を持つ変性トリグリセリドモノエステルを含み、当初の1個の二重結合炭素が水素原子を有し、もう一つの炭素原子がペンダントエステル基を有する、変性トリグリセリドモノエステル。
【請求項30】
二重結合により当初結合していた少なくとも2セットの隣接する炭素原子をもち、当初の一つの二重結合炭素が水素原子をもち、もう一つの炭素原子はペンダントエステル基をもち、当初の二重結合の部位のペンダントエステル基は、もう一つの当初の二重結合の部位のエステル基とは異なる、変性トリグリセリドモノエステル。
【請求項31】
ペンダントエステル基が、アセテート、イソブテレート、ヘキサノエート及び2-エチルヘキサノエートからなる群から選択される、請求項29または30に記載の変性モノエステル。
【請求項32】
2〜17個の炭素原子を含む前記少なくとも1個の小さなエステル基が選択され、3〜18個の炭素原子を含む少なくとも1個の大きなエステル基が選択され、このエステル基は少なくとも1個の炭素原子だけ異なる、請求項30に記載の変性トリグリセリドモノエステル。
【請求項33】
前記エステルが、N、O及びPからなる群から選択される置換ヘテロ原子を含むことによって互いに異なる、請求項32に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項34】
少なくとも一つの小さなエステル基が選択され、少なくとも一つの大きなエステル基が選択され、前記エステル基は少なくとも1個の炭素原子だけ異なる、請求項30に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項35】
前記大きなエステル基対前記小さなエステル基の比が約0.1〜約0.9である、請求項34に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項36】
前記小さなエステル基の炭素原子が2〜5個を変動し、前記大きなエステル基の炭素原子が6〜18個を変動する、請求項32に記載の変性ジエステルトリグリセリド。
【請求項37】
立体障害エステルを添加する、請求項30に記載の変性トリグセリドの加水分解安定性及び/または熱安定性を高める方法。
【請求項38】
立体障害基がイソブチラート、2-エチルブチラート、及び/または2-エチルヘキサノエートである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項30に記載の変性トリグリセリドともう一種の機能性成分を含む、工業用流体。
【請求項40】
a)少なくとも一つの二重結合を持つトリグリセリドをエポキシ化する;
b)前記エポキシド基を水素化してモノアルコールを生成する;
c)前記モノアルコールを酸無水物、酸クロリドまたはカルボン酸でアシル化する、各段階を含む、請求項30に記載の変性トリグセリドの製造法。
【請求項41】
種々のペンダントエステル基をもつトリグリセリドを製造するために二種以上の異なるアシル化剤の混合物でアシル化することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
立体障害エステル基を前記変性トリグリセリドモノエステルに組み込むことを含む、変性トリグリセリドモノエステルの酸化安定性/加水分解安定性を改善する方法。
【請求項43】
同一ジグリセリド内にジエステルまたはモノエステルをもつモノエステル及び/またはジエステルトリグリセリドを含む工業用流体。
【請求項44】
a)エポキシ化トリグリセリドを部分的に水素化する;及び
b)前記部分的に水素化したトリグリセリドを一種以上の無水物と反応させてペンダントエステルを形成する、各段階を含む、請求項43に記載の流体を得る方法。
【請求項45】
前記部分的に水素化したトリグリセリドと二種以上の無水物とを反応させることを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
トリグリセリドの混合物を含む潤滑剤であって、前記混合物がモノエステル:
【化1】
及びジエステル:
【化2】
{式中、R’及びRはアルキル基で、C1〜C18であり、R’はそれぞれ同一または異なっていてもよく、Rはそれぞれ同一または異なっていてもよい}及びその混合物からなる群から選択される一種以上のトリグリセリドを含む、前記潤滑剤。
【請求項47】
潤滑剤の製造法であって、
a)植物若しくは動物の油脂、またはその混合物を準備する;
b)前記油脂をエポキシ化する;
c)前記エポキシ化した油脂を水素化して、水素化アームをもつ水素化中間部分(hydrogenated intermediary)を得る;及び
d)前記水素化アームを種々の鎖長のアシル化剤でアシル化して潤滑剤を得る、各段階を含む、潤滑剤の製造法。
【請求項48】
二種以上の種々のアシル化剤を使用する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
潤滑剤の製造法であって、
a)少なくとも一つの不飽和部位をもつモノオールまたはポリオールから誘導したエステルを準備する;
b)前記エステルをエポキシ化する;及び
c)前記エポキシ化エステルを種々の鎖長の酸無水物と直接反応させる、各段階を含む、前記方法。
【請求項50】
二種以上の種々のアシル化剤を使用する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
潤滑油の製造法であって、
a)少なくとも一つの不飽和部位をもつモノオールまたはポリオールから誘導したエステルを準備する;
b)前記エステルをエポキシ化する;
c)前記エポキシ化エステルを水素化して、水素化アームをもつ水素化中間部分を得る;及び
d)前記水素化アームを種々の鎖長のアシル化剤でアシル化して、前記潤滑剤を得る、各段階を含む前記方法。
【請求項52】
モノエステル:
【化3】
及び/またはジエステル:
【化4】
{式中、R’及びRはC1〜C18のアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基、及びその混合物であり、同一トリグリセリド分子内に種々の鎖長の種々のアルキル基の組み合わせを含み、R’はそれぞれ同一または異なっていてもよく、Rはそれぞれ同一または異なっていてもよい}を含む潤滑剤組成物。
【請求項53】
(単一または複数種類の)同一リグリセリドまたは種々のトリグリセリドの脂肪酸アームの間に一つ以上の鎖間結合を含む、請求項52に記載の潤滑剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−102127(P2012−102127A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−232(P2012−232)
【出願日】平成24年1月4日(2012.1.4)
【分割の表示】特願2007−525766(P2007−525766)の分割
【原出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(504306714)バテル・メモリアル・インスティテュート (26)
【氏名又は名称原語表記】BATTELLE MEMORIAL INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】505 King Avenue, Columbus, OH 43201−2693 (US)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−232(P2012−232)
【出願日】平成24年1月4日(2012.1.4)
【分割の表示】特願2007−525766(P2007−525766)の分割
【原出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(504306714)バテル・メモリアル・インスティテュート (26)
【氏名又は名称原語表記】BATTELLE MEMORIAL INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】505 King Avenue, Columbus, OH 43201−2693 (US)
【Fターム(参考)】
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