説明

植物成分を必要とする治療方法

親油性ビタミン類または親油性薬剤のバイオアベイラビリティーに悪影響を与えない、フィトステロール療法を必要とする状態を治療する方法であって、食用油または脂肪に溶解したフィトステロールエステル(PS−E)および1,3−ジグリセリド(DAG)の混合物を投与することを含む方法、ならびに体重管理を改善する方法および過体重をもたらす代謝状態を治療する方法が本明細書で記載される。前記混合物を含む食品栄養素および栄養補助食品も、本明細書で記載される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、医学的な状態の治療における機能性食品および補助食品の分野に関する。より具体的には、本発明はフィトステロールを含有する脂質混合物による状態の治療に関するものである。
【0002】
[発明の背景]
本出願を通して指摘した全ての刊行物は、そこで引用されている全ての参考文献を含め、参照により本明細書に完全に組み込まれている。
【0003】
植物ステロール(Plant sterol)は、植物油の微量成分として食物に存在する自然発生物質である。植物ステロールは哺乳類に対するコレステロールのそれに類似した役割を植物で有し、例えば細胞膜構造を形成する。ヒト栄養において、植物ステロールおよび植物スタノール(Plant stanol)は血漿総コレステロールおよびLDLコレステロールのレベルを低下させる効果がある。用語「フィトステロール」は、植物ステロールおよび植物スタノールを包含する。
【0004】
フィトステロールは通常食の成分であり、主に植物油、種子、ナッツおよび穀類ベースの製品などの植物源から来る。西洋の食事における植物ステロールの典型的消費量は200から400mg/日の範囲であり、他方、植物ステロールの飽和形態であるフィトスタノールの摂取量は無視できるほどである。
【0005】
多量の植物ステロールおよび植物スタノールの消費は、食事性のおよび内因的に生産されたコレステロールの小腸からの吸収を抑制することによって、血液コレステロールレベルを低下させる。この抑制は、植物ステロールおよびスタノールの物理化学的性質におけるコレステロールとの類似性に関連する。
【0006】
植物ステロール/スタノールは、吸収性の非常によくない化合物である。吸収、分布、代謝および排出に関する研究は、植物ステロールは腸から十分に吸収されない(1〜10%)ことを示す。
【0007】
フィトステロールの低コレステロール血症作用は、1950年代初期から認識された(Jonesら(1997)Can.J.Physiol.Pharmacol.75,217〜227))。植物ステロールの血液コレステロール低下効果は、1日25グラムという高い用量を用いて2,400を超える対象を含む多数の治験で3年にわたって調査されてきた。数十年の植物ステロールの医学的に監視された臨床効果試験および一般臨床使用を通して、有意な悪影響は観察されなかった。さらに、薬剤サイテリン(主にβ−シトステロール)が20年以上処方され、優れた安全性を記録した。さらに、植物ステロールおよび植物スタノールについては厳密な毒性評価が行われた。
【0008】
フィトステロールまたはフィトスタノール、ならびにそれらの脂肪酸エステルおよび他の誘導体は、栄養補助食品として、または栄養補助食品と同様に健康を促進する様々な食品および飲料中の機能性成分として提供される一般的な製品であり、これらは全て血中総コレステロール濃度、特にLDL(低比重リポタンパク質)コレステロール濃度を低減する目的で提供される。
【0009】
高コレステロール血症(高血中コレステロール)はフィトステロールによって治療または制御することができるが、心血管障害(CVD)の主要な危険因子である。CVDは、世界の死亡率の有数の原因の1つである。高コレステロール血症は動脈内でプラーク沈着物の形成および蓄積も引き起こし、結果として1種の心血管障害である冠状動脈性心疾患(CHD)の根底にある病理学的過程である、アテローム性動脈硬化症をもたらす。
【0010】
2型糖尿病ならびに糖尿肥満およびメタボリックシンドロームとして知られる関連状態はCVDに関連し、その発生率も過去1世紀にわたって劇的に増加した。ほとんどの場合、そのような代謝異常によって心血管障害は増大し、もしくは誘起されることさえあり、またはそれらの開始および進行は前記症候群によって加速される。これらはまた、異常な血液脂質プロフィール、特に高レベルの総コレステロールおよび非HDLコレステロール種、主にLDLコレステロールの危険因子に密接に関連する。
【0011】
メタボリックシンドローム、糖尿病もしくは肥満、およびCVDもしくはCHDになる危険のある者、または前記状態の患者と既に分類されている者は、彼らの血液脂質プロフィール、特に高レベルの血液コレステロールを監視して制御するように注意を喚起される。多くの健康状態およびリスクに共通するこの危険因子に対処する最も効率的な方法の1つは、植物ステロールまたはスタノールまたはそれらの誘導体の摂取である。
【0012】
そのような危険因子に対処するために用いられてきた強力な治療方法は、スタチンおよびフィトステロールの両方の補充であった。両有効成分は、それぞれ異なる作用機構を用いて高レベルの血液コレステロールに対処する。スタチンベースの医薬成分はコレステロールの新規合成を抑制するが、フィトステロールは食事からのおよび内因的に生産されたコレステロールの吸収を抑制する。スタチン療法を受けているがLDLコレステロールレベルが依然として高い患者による植物スタノールエステルの消費は、総コレステロールおよびLDLコレステロールのレベルをさらにそれぞれ最高12%および17%低下させることができるということが証明されている(Blairら(2000)Am.J.Cardiol.86、46〜52)。さらに、原発性高コレステロール血症の対象をスタチンおよびフィトステロールエステル含有食品で治療すると、LDLコレステロール減少に対して純粋に付加的な影響を生じた(Simonsら(2002)Am.J.Cardiol.90、737〜740)。実際、Simonsらは、スタチン療法へのフィトステロールエステルの添加は、スタチンの用量を二倍にすることと同等のLDLコレステロール減少を提供すると結論した。類似した結果が他から示された(Vuorioら(2000)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.500〜506)。
【0013】
閉経期後の女性は、ほてり、寝汗、不眠、膣の乾燥ならびに骨粗鬆症、CVDおよび中枢神経系関連の変化(不安および気分変動、うつ病および認知能減退)などの障害のようないくつかの典型的症状を示す。この集団におけるCVD合併症に関しては、心筋梗塞の率は3倍増加し、脳血管障害が急増することが証明されている。エストロゲンは内皮細胞壁を保護し、おそらく血栓症から保護する役割を演ずるので、その欠乏は前記症状を引き起こすと考えられている。ホルモン補充療法(HRT)は、更年期の症状および骨粗鬆症の治療で明白な役割をする。しかし、Women Health Initiative (WHI)からの最近の知見は、HRTによる治療は心疾患、脳卒中および肺動脈塞栓症への女性のリスクを増加させることを明らかにした。最近、植物スタノールを含むマーガリンを6週間にわたって消費した閉経婦人(50〜55歳)は対ベースラインでLDLコレステロールの顕著な減少を示し、一方ではHDLコレステロールレベルは増加した結果、LDL/HDLコレステロール比が低下した(GyllingおよびMiettinen(1999)Metabolism 48:575〜580)。しかし、異なるスタノールによる介入の後には、α−およびβ−カロテン濃度の顕著な減少があり、一方、レチノール、ビタミンDおよび脂質標準化α−トコフェロールレベルはベースライン値と同等であった。
【0014】
フィトステロールも関連付けされ、抗癌効果を有することが示された。疫学的および実験的な研究は、食事からのフィトステロールは西洋社会で最も一般的な癌、例えば結腸癌、乳癌および前立腺癌からの保護を提供する可能性があることを示唆する。乳癌リスクの低い集団は、高リスクの集団より食事からより多くのフィトステロールを消費する。いくつかのin vitro研究は、フィトステロールがヒト乳癌および前立腺癌の細胞に毒性があることを示唆している。in vivo動物実験は、結腸腫瘍、乳癌および前立腺癌の発生率、増殖および転移に対するフィトステロールの抑制効果を示す(Awad,A.B.およびFink C.S.(2000)J.Nutr.130:2127〜2130、Moreaua R.A.ら(2002)Progress in Lipid Research 41:457〜500)。フィトステロールが抗癌特性を有するという証拠はあるが、それらが腫瘍増殖を抑制する機構はまだわからない。しかし、フィトステロールがこの保護を提供する可能な機構としては、腫瘍および宿主組織の膜構造および機能、腫瘍増殖およびアポトーシスを調節するシグナル伝達経路に及ぼす直接効果がある(AwadおよびFink(2000)上記)。
【0015】
CVDおよびCHDならびに糖尿病2型のような代謝異常の主要な危険因子の1つは、フリーラジカルの相対的増加である酸化的ストレスである。これらは例えば、相対的に高レベルで存在するときは初期のアテローム性動脈硬化症の証拠である泡沫細胞の形成を担う、酸化型LDLの生成増加の原因である。フリーラジカルは様々な原因のために、一部は汚染の増加のような環境的なもの、または酸化促進性栄養素の摂取、もしくは異なる抗酸化栄養素の不十分な摂取に起因する栄養不足に関連するもののために、血液および他の組織で高レベルで見られることがある。さらに、フリーラジカルレベルの上昇は2型糖尿病、糖尿肥満およびメタボリックシンドロームのような代謝状態で一般的であり、持続的な血液高血糖状態を伴う。酸化的ストレスは、抗酸化活性を、基本的には体内のフリーラジカルを中和する活性を有する様々な有効成分によって治療または予防さえすることができる。
【0016】
フィトステロールは炎症関連の状態または障害、例えばリンパ球増殖反応、肺結核、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ストレス誘発性免疫抑制、関節リウマチおよびアレルギー性鼻炎/副鼻腔炎の予防に役立つ可能性がある(Bouic(2001)Opin Clin Nutr.Metab.Care4:471〜475)。植物ステロールがそれらの抗炎症作用を表す機構には、炎症伝達物質、例えばインターロイキン6および単球による腫瘍壊死因子−αの分泌の抑制が含まれると考えられる。しかし、大部分の研究は動物モデルを用いて実施されたので、具体的な機構はまだ明確になっていない。
【0017】
フィトステロールは抗潰瘍活性も示し、ヘリコバクターピロリ感染症から保護する。最近の研究において、ホースグレイン(horse grain)(インドで食物および飼料のために栽培されるDolichos属のハーブ)のステロールではなくフィトステロールエステルは、潰瘍の幽門ライゲーションモデルで保護的であった(Jayarajら(2003)Phytother Res17:391〜398)。ステロールおよびリン脂質と共に、食物中のこれらの食物脂質は、ある地理領域における、ヘリコバクターピロリ感染症の一様に高い有病率にもかかわらず十二指腸潰瘍の低い有病率を説明することができる。
【0018】
前記障害および/または状態に対処するいかなる治療も、健康的でバランスの取れた栄養が伴う必要がある。当然ながらこの栄養は、これらのビタミンの中でも必須栄養素を全て患者に提供するものでなければならない。これらのビタミンの多くは親油性であり、ビタミンAおよびビタミンEはそのような患者にとって重要なものの1つである。これらのビタミンは、体を酸化的ストレスから保護して、おそらくフリーラジカル活性からの傷害を予防するために重要である抗酸化活性も有する。レチノールとしても知られるビタミンAは、カロテノイドのビタミンである(スキーム1を参照)。ビタミンAは、肝臓において異なるプロビタミンカロテノイド、特に最も重要なプロビタミンAでありそれ自体が抗酸化剤であるβカロテンから生産される。α−トコフェロールとしても知られるビタミンEは主に植物源に存在し、それも強力な抗酸化剤である。この親油性ビタミンは、通常ベータおよびガンマトコフェロールなどのトコフェロール骨格の他の誘導体を伴う。
【0019】
フィトステロールおよびフィトスタノール、ならびにそれらの脂肪酸エステルは、単独でもまたはスタチンもしくは他の成分と併用しても高コレステロール血症危険因子の治療の最も効率的な方法の1つであるが、最近の研究は、これらの植物成分の使用は悪影響をもたらす可能性があることを示す。フィトステロール補充に関係する主要な懸念は、脂溶性ビタミンおよびカロテノイドの吸収および循環レベルに及ぼす可能性のあるその影響である。食事からのフィトステロールは食物および胆汁のコレステロールの吸収を抑制し、それは次にカロテノイドおよび脂溶性ビタミンの吸収を減少させる(Noakesら(2002)Am.J.Clin.Nutr.76(1):79〜86)。上記のように、カロテノイドおよびビタミンの食事からの摂取と関連する多くの健康増進効果があるので、これは懸念されることである(Hendriksら(1999)Eur.J.Clin.Nutr.53(4):319〜327)。
【0020】
さらに、フィトステロールの摂取は血漿カロテノイドレベルのかなりの低下を誘導することが報告されている、いくつかの治験が特定された(Katanら(2003)Mayo Clin.Proc.78(8):965〜978)。これらの減少は、1日に0.83〜3.6gのフィトステロールを含むスプレッドまたは油を3〜52週間の間摂取した後に起こった。近年では、βカロテンおよびαトコフェロールのバイオアベイラビリティーは、やや過体重の男性ボランティアにおいて1日に2.2gのフィトステロールを1年間摂取した後に低下することが報告された(Richelleら(2004)Am.J.Clin.Nutr.80(1):171〜177)。しかし、この試験において、植物ステロールエステルは遊離の植物ステロールよりも多く、βカロテンおよびαトコフェロールのバイオアベイラビリティーを低下させた。βカロテンレベルの低下は50%と高かった。
【0021】
そのうえ、フィトステロールとスタチンとの併用療法の有益効果が示されたが(Vuorio(2000)上記)、ビタミンA、ビタミンEならびにαカロテンおよびβカロテンの血中濃度を監視した結果、この療法は全てのビタミンおよびプロビタミンの血清レベルの10〜50%の減少をもたらすことが明らかにされた。これらの影響は、特に遺伝的状態のために治療を受けている子供で顕著であった(Bergerら(2004)Lipids Health Dis.3:5〜24のレビューを参照)。
【0022】
European Union Scientific Committee on Food (SCF)は、フィトステロールを含む食品の販売は、可能な有害健康影響、中でも血漿βカロテンレベルに対する影響の調査を伴うべきと結論した。UK Food Advisory Committee(FAC)は、消費者に対してフィトステロールエステルを含む製品は幼児および授乳中の女性には栄養上適当でないことを知らせるべきと勧告したが、その理由は彼らは血液コレステロールレベルを下げる必要がなく、ビタミンAレベルに影響を及ぼす可能性があるからである。European Food Safety Authority(EFSA)のScientific Panel on Dietetic Products,Nutrition and Allergiesは、1日あたり3gを超えるフィトステロール/フィトスタノールの摂取の可能性を最小化するためのリスク管理措置、およびβカロテンを低下させる製品の潜在的影響に対処するための果菜類の規則的な摂取の必要に関する適当な情報の消費者への提供の必要性を強調した。
【0023】
Lichtensteinおよび同僚(Lichtensteinら(2001)Circulation.103:1177〜1179)は、植物スタノール/ステロールエステル含有脂肪の使用と関連する潜在リスク、中でもスタノールエステルおよびステロールエステルの両方を含む食品の摂取の結果としての血漿中のα−およびβカロテン、αトコフェロールおよび/またはリコペンのレベルの減少の観察を指摘している。
【0024】
植物ステロールを含む食品は食事の間全ての家族によって共有されると考えられるので、非高コレステロール血症の者が摂取する可能性はかなりある。したがって、American Heart Associationは、正常コレステロール血および高コレステロール血症の成人、ならびに子供における植物ステロール/スタノールエステルを含む食品の長期安全性を判断するために、さらなる研究および大規模モニタリングの実施を勧告した。
【0025】
医薬の有効成分の間の有害相互作用と同様に、同じことは医薬であろうが食品であろうが、CVDおよび上述の他の健康状態の健康上の必要に対処するために利用することができるか必要な異なる有効成分または栄養素の間でも避けなければならない。そのような相互作用は、その治療で用いられる1つまたは複数の成分の効果または摂取量を減らす可能性がある。一部の症例では、前記状態の治療で用いられる成分の相互作用は、全身の健康を維持してそのために治療されている特定の危険因子に対処することができるように個人が必要とする、他の食事源の栄養素または成分の効果または摂取量の減少を引き起こす可能性がある。一般に、ビタミンAおよびβカロテン、ならびにビタミンEの摂取量に及ぼすフィトステロール投与の観察された悪影響は、カロテノイドおよびトコフェロールのように親油性である他の食事源の栄養素、活性医薬成分または食事源の有効成分にも関連する可能性がある。それらの摂取量または効果がフィトステロールの並行投与によってさらに障害されるそのような親油性食事源栄養素、活性医薬成分または食事源有効成分としては、医薬用の抗異脂肪血症成分、天然の抗酸化剤、栄養脂質または活性脂質、などがある。スキーム1および2は、ビタミンAおよびEとならんでいくつかの親油性有効成分および食事源の栄養素の化学構造を例示する。
【0026】
【化1】



スキーム1−ビタミンA、Eおよび他の親油性有効成分および食事源の栄養素の化学構造
【0027】
【化2】



スキーム2−親油性オメガ−3 LC−PUFA DHAの化学構造
【0028】
医薬有効成分は高レベルの血液コレステロールを調節することを目的に開発され、上記の状態に関してリスクのある集団の治療で広く使われている。おそらく、最も好まれる手法は、コレステロール生産の生合成経路を阻止し、それによって血液コレステロールレベルの低下を導くことが知られているスタチン化学ファミリーの有効成分に依存する。用いられる他の有効成分は、胆汁酸結合樹脂、コレステロール吸収阻害剤、コレステロール吸収阻害剤配合剤およびスタチン、フィブレートおよびナイアシンである。
【0029】
様々な合成抗酸化剤が、産業用および食品用に用いられてきた。現在の方法は、主に植物源に由来する天然の抗酸化剤の利用を好む。そのような植物由来抗酸化剤としては、主に赤い植物、特にトマトに存在するリコペン、およびルテインがある。他の植物起源の抗酸化剤としては、ゼアキサンチンおよびβカロテンがある。これら全ての抗酸化剤は脂溶性が高いものに分類することができ、それは、それらに共通するカロテノイド骨格の直接的な結果である。他の抗酸化剤としては、ポリフェノール化学特性を有するものがある。そのようなカロテノイド、ポリフェノールおよび他の親油性天然抗酸化剤の全ては上記状態の治療に役立ち、フィトステロールとの並行投与は有益なはずである。
【0030】
オメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸(LC−PUFA)、特にドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエン酸(EPA)は、一部、抗過トリグリセリド血症活性により、心血管の健康を促進すると認識されている。米国Food and Drug Administration(FDA)は、2004年9月にこれらの脂肪酸は、EPAおよびDHAを含む食品または栄養補助食品の摂取によりCHDリスクを減少させる健康効果を表示することが認められたと発表した。実際、これらの脂肪酸の摂取は、前記の障害もしくは状態を患っている集団または前記状態の開始を予防または抑制することを望む集団に有益となる。
【0031】
これら全ての成分および他の成分は、CVD、CHD、代謝障害患者、ハイリスク集団、癌患者、その他の危険因子に対処するために、併用によりまたは単独で用いることができる。
【0032】
他の親油性医薬有効成分および他の親油性栄養補助食品、主に異なる植物源から抽出されるかそれらに由来する植物成分は、フィトステロールおよび/またはそれらの誘導体の並行投与または摂取を必要とするかそれから利益を享受し、それ故に前記フィトステロールの投与によってそれらの摂取が妨害されるリスクに直面する異なる健康状態に対処するために、発見する必要があるかまたは開発中である。
【0033】
したがって、高コレステロール血症の治療方法としての、または様々なCVD、CHD、代謝障害健康リスク、例えば過トリグリセリド血症、過血糖および酸化的ストレス、ならびに癌のような他の健康状態に対処するさらなる成分と併用されたフィトステロールの有益効果を考慮して、本発明の目的は、他の重要な成分、例えばビタミン類、抗酸化剤さらには医薬有効成分の摂取の抑制の可能な悪影響なしに、フィトステロール/フィトスタノールおよびそれらのエステルの有益効果を最大限に活用することを可能にする治療方法を提供することである。
【0034】
過体重または肥満は、2型糖尿病(DM)、高血圧、異脂肪血症、冠状動脈性心疾患、うっ血性心不全、脳卒中、胆嚢疾患、肝臓の脂肪症、変形性関節炎、睡眠無呼吸ならびに子宮内膜、乳腺、前立腺および結腸の癌を含むいくつかの状態の罹患率のリスクをかなり増加させる。全ての原因からくる死亡率の増加も、より重い体重と関連している。これらの状態の多くは、フィトステロール/フィトスタノールおよびそれらのエステルを用いて治療または予防することができる。
【0035】
本発明の他の目的は、患者の体重を調節してさらにその減少を促進しつつ、高コレステロール血症に及ぼすフィトステロール/フィトスタノールおよびそれらのエステルの有益効果を提供する治療方法を提供することである。
【0036】
このように本発明の目的は、食用油もしくは脂肪、またはそれを含む組成物もしくは食品に溶解または分散したPS−E(フィトステロールエステル)およびDAG(主に1,3ジグリセリド)の混合物のそれを必要とする対象への投与を通しての、親油性ビタミン類、親油性薬剤、親油性栄養素または任意の親油性医薬有効成分のいずれか1つのバイオアベイラビリティーに悪影響を与えずに、フィトステロール療法を必要とする状態を治療する方法を提供することである。
【0037】
本発明のこの目的および他の目的は、以下の説明で明瞭になる。
【0038】
[発明の概要]
第1の態様では、本発明は、親油性ビタミン類、親油性薬剤、親油性栄養素または任意の親油性医薬有効成分のいずれか1つのバイオアベイラビリティーに悪影響を与えずにフィトステロール療法を必要とする状態を治療する方法であって、食用油もしくは脂肪、またはそれを含む組成物もしくは食品に任意選択で溶解または分散したPS−E(フィトステロールエステル)およびDAG(主に1,3ジグリセリド)の混合物の治療有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含む方法を提供する。
【0039】
主に、本発明は、親油性ビタミン類、親油性薬剤、親油性栄養素または任意の親油性医薬有効成分のいずれか1つのバイオアベイラビリティーに悪影響を与えずにフィトステロール療法を必要とする状態を治療する方法であって、食用油もしくは脂肪、またはそれを含む組成物もしくは食品に溶解または分散したPS−EおよびDAG(主に1,3ジグリセリド)の混合物の治療有効量をそれを必要とする対象へ投与することを含む方法を提供する。
【0040】
本発明の方法の具体的な一実施形態では、前記親油性ビタミンはカロテノイドおよびトコフェロール、好ましくはビタミンAおよびビタミンEである。
【0041】
本発明の方法の他の具体的な実施形態では、前記親油性有効成分はフィトステロールである。
【0042】
フィトステロール療法を必要とする前記状態は、以下の状態からなる群から選択することができる:癌、良性前立腺肥大症、潰瘍、前立腺炎、心臓血管障害(CVD)、冠状動脈性心疾患(CHD)、アテローム性動脈硬化症、肺結核、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ストレス誘発性免疫抑制、関節リウマチおよびアレルギー性鼻炎/副鼻腔炎。
【0043】
食事、代謝異常、脂肪吸収不良、薬剤−ビタミン相互作用またはビタミン吸収障害による脂溶性ビタミンの欠乏は、脳卒中、糖尿病、乳癌、免疫不全、免疫抑制、骨粗鬆症、オステオペニア、光老化、皮膚腫瘍、光過敏症反応、白内障発生および白内障、網膜光悪化、赤血球光化学分解、光線紅斑、光発癌、クローン病、短小腸症候群、アルツハイマー病、認知症、小児非アルコール性脂肪肝炎、多発性硬化症を起こす可能性がある。
【0044】
他の態様では、本発明は体重管理を向上させる方法であって、食用油もしくは脂肪、またはそれを含む組成物もしくは食品に任意選択で溶解または分散したPS−EおよびDAG(主に1,3ジグリセリド)の混合物の治療有効量をそれを必要とする対象へ投与することを含む方法を提供する。
【0045】
他の態様では、本発明は過体重をもたらす代謝状態を治療する方法であって、食用油もしくは脂肪、またはそれを含む組成物もしくは食品に任意選択で溶解または分散したPS−EおよびDAG(主に1,3ジグリセリド)の混合物の治療有効量をそれを必要とする対象へ投与することを含む方法を提供する。詳細には、前記状態は肥満である。
【0046】
本発明の方法の一実施形態では、前記食用油は、オリーブ油、魚油、カノーラ油、ダイズ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、パーム油、アボカド油、ゴマ油、アマニ油およびルリヂサ油からなる群から選択される。好ましくは、前記油は魚油である。
【0047】
本発明の方法の他の実施形態では、前記食用脂は任意の天然脂肪であり、バター脂肪、無水乳脂、カカオ脂およびラードからなる群から選択される。
【0048】
本発明の方法の他の実施形態では、PS−EおよびDAGの脂肪酸残基は、それが由来する油の脂肪酸残基、例えばオレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエノ酸(EPA)残基に任意選択で対応する。
【0049】
本発明の方法の他の実施形態では、前記フィトステロールエステルはスチグマステロール、シトステロール、β−シトステロール、ブラシカステロール、カンペステロールおよび/または5−アベナステロールの脂肪酸エステルならびにその異性体および誘導体であり、前記フィトスタノールエステルはβ−シトスタノール、カンペスタノールおよび/またはスチグマスタノールの脂肪酸エステルならびにその異性体および誘導体である。
【0050】
本発明の方法のさらに他の実施形態では、前記混合物は従来の栄養組成物成分をさらに含む。
【0051】
本発明の方法の特定の一実施形態では、前記混合物中のフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルおよびジアシルグリセロール、ならびにフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルの間の重量比は、約15:1から1:1、好ましくは約10:1から約1:1、より好ましくは5:1から1:1、特に約2:1である。
【0052】
本発明の方法の他の特定の実施形態では、前記混合物中のジアシルグリセロールの量は少なくとも1重量%である。より具体的には、前記混合物中のジアシルグリセロールの量は約1から約99重量%、好ましくは約4から約70重量%、特に約7から約48重量%、より特定すると約10から約22重量%であり、前記混合物中のフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルの量は約1から約99重量%、好ましくは約5から約70重量%、より特定すると約7から約60重量%、具体的には約10から約60重量%、より特定すると約7から約35重量%、より具体的には約20から約35重量%である。
【0053】
本発明の方法の他の特定の実施形態では、前記混合物中のフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルの量は少なくとも1重量%である。
【0054】
本発明の方法の好ましい一実施形態では、前記混合物は、オリーブ油、カノーラ油および魚油の1つに溶解または分散した15重量%のDAG、主に1,3−DAGおよび25重量%の総PS−Eからなる。
【0055】
具体的な一態様では、本発明は女性の体重管理を向上させる方法であって、オリーブ油、またはそれを含む組成物もしくは食品に任意選択で溶解または分散したPS−EおよびDAG(主に1,3ジグリセリド)の混合物の治療有効量をそれを必要とする対象へ投与することを含む方法を提供する。
【0056】
他の態様では、本発明は、親油性ビタミン類、親油性薬剤、親油性栄養素または任意の親油性医薬有効成分のいずれか1つのバイオアベイラビリティーにも悪影響を与えない、フィトステロール療法を必要とする状態を治療する食用組成物を含む栄養補助食品であって、前記組成物は食用油もしくは脂肪に任意選択で溶解または分散したPS−EおよびDAG(主に1,3ジグリセリド)の混合物を含む栄養補助食品を提供する。
【0057】
本発明の栄養補助食品の一実施形態では、前記油は、オリーブ油、魚油、カノーラ油、ダイズ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、パーム油、アボカド油、ゴマ油、アマニ油およびルリヂサ油からなる群から選択することができる。好ましくは、前記油は魚油である。
【0058】
本発明の栄養補助食品の他の実施形態では、前記食用脂は任意の天然脂肪であり、バター脂肪、無水乳脂、カカオ脂およびラードからなる群から選択される。
【0059】
本発明の栄養補助食品の他の実施形態では、PS−EおよびDAGの脂肪酸残基は、それが由来する油の脂肪酸残基、例えばオレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエノ酸(EPA)残基に任意選択で対応する。
【0060】
本発明の栄養補助食品の他の実施形態では、フィトステロールエステルはスチグマステロール、シトステロール、β−シトステロール、ブラシカステロール、カンペステロールおよび/または5−アベナステロールの脂肪酸エステルならびにその異性体および誘導体であり、前記フィトスタノールエステルはβ−シトスタノール、カンペスタノールおよび/またはアベナスタノールの脂肪酸エステルならびにその異性体および誘導体である。
【0061】
本発明の栄養補助食品のさらに他の実施形態では、前記混合物は従来の栄養組成物成分をさらに含む。
【0062】
本発明の栄養補助食品の好ましい一実施形態では、前記混合物中のフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルおよびジアシルグリセロール、ならびにフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルの間の重量比は、約15:1から1:1、好ましくは約10:1から約1:1、より好ましくは5:1から1:1、特に約2:1である。
【0063】
本発明の栄養補助食品の他の好ましい実施形態では、前記混合物中のジアシルグリセロールの量は少なくとも1重量%である。より具体的には、前記混合物中のジアシルグリセロールの量は約1から約99重量%、好ましくは約4から約70重量%、特に約7から約48重量%、より特定すると約10から約22重量%であり、前記混合物中のフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルの量は約1から約99重量%、好ましくは約5から約70重量%、より特定すると約7から約60重量%、具体的には約10から約60重量%、より特定すると約7から約35重量%、より具体的には約20から約35重量%である。
【0064】
本発明の栄養補助食品の他の好ましい実施形態では、前記混合物中のフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルの量は少なくとも1重量%である。
【0065】
最後に、本発明の栄養補助食品の最も好ましい実施形態では、前記混合物は、オリーブ油、カノーラ油および魚油の1つに溶解または分散した15重量%のDAG、主に1,3−DAG、および25重量%の総PS−Eからなる。
【0066】
[発明の詳細な説明]
食事からのフィトステロールは食物および胆汁のコレステロールの吸収を抑制し、長期にわたるフィトステロールの毎日の摂取は血漿中のコレステロールおよびLDLコレステロールの濃度低下を誘導する。これらの低下は、摂取するフィトステロールの用量、フィトステロールのエステル化、フィトステロールが溶解されるマトリックス、バックグラウンド食事、および遺伝要因を含む2、3の因子に関連する。フィトステロールを投与することの主な望ましくない影響は、それらが脂溶性薬剤と同様にビタミン類(特にカロテノイド)などの他の多くの脂溶性食品成分の吸収に干渉することである。さらに、フィトステロールが溶解されるマトリックスは、フィトステロールのLDLコレステロールを低下させる効力に明らかに影響を及ぼすことができる。腸内での吸収の間、フィトステロールはコレステロールだけでなく他の親油性分子も排出して、混合ミセルへの取り込みによりそれらを置換することができると仮定される。混合ミセル相への分離はエステル化により、およびフィトステロールがその中で摂取される媒体の他の成分により影響され得る。
【0067】
NestleのResearch Centerの科学者らは、コレステロール吸収を減らすために食品に加えた植物ステロールは、βカロテンおよびビタミンEを吸収する体の能力を低下させることもできると報告している(Richelle(2004)同上)。この望ましくない副作用は、遊離のステロールよりもステロールエステルの摂取で甚大である。
【0068】
本発明者らは、食事で提供されるフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステル(PS−E)とDAG、主に1,3−ジアシルグリセロールとの組合せが、カロテノイド、特にビタミンAの摂取または血清レベルを悪化させることなく、例えば高コレステロール血症の治療法の一部として有益な健康効果を付与することを観察した。
【0069】
DAGは、1,2−ジグリセリドおよび1,3−ジグリセリドの混合物を意味し、主に1,3−ジグリセリド(約80%)を含む。
【0070】
本明細書で記載されるステロールエステルおよびDAG組成物は、その摂取によりトコフェロールまたはカロテノイドの摂取に悪影響を及ぼさない。それに反して、それを定常レベルで維持する。
【0071】
トコフェロールに言及するときは、それはαおよびβ−トコフェロール、ならびにビタミンEおよび他の栄養的にまたは健康に有益な誘導体も含むものと理解されたい。同様に、カロテノイドに言及するときは、それはαおよびβ−カロテン、リコペン、ビタミンAならびに栄養的にまたは健康に有益な誘導体も含むものと理解されたい。
【0072】
発明者らは、実験動物においてカノーラ油、オリーブ油または魚油に溶かしたDAG、主に1,3−ジアシルグリセロールとPS−Eとの組合せを含む組成物は、コレステロールおよびトリグリセリドの血中濃度を低下させ、さらにマクロファージ、血清および血清LDLの酸化レベルを低下させる特性を有することを以前示した(国際公開第2004/069150号パンフレット)。さらに、この組成物は泡沫細胞の形成も抑制した(国際公開第2004/069160号パンフレット)。
【0073】
ヒトで実施された本研究では、総コレステロール濃度のかなりの減少が魚油治療(LC−PUFA)に続いて見られたが、対照食事の摂取は有意であるがより小さなコレステロール低下効果を誘導した(表2)。したがって、PS−E+DAG−魚(調製物A)による治療は、補助植物ステロールを含まない食事およびオメガ−3含有食治療と比較して総コレステロール濃度の減少をもたらした。
【0074】
PS−E+DAG−魚(調製物A)はさらに、強力なコレステロール低下およびトリグリセリド低下効果を有して、メタボリックシンドロームおよび糖尿病に感受性のあることがわかった異脂肪血症患者の治療に適することが判明した。
【0075】
しかし、それらの作用機構のために、植物ステロールエステル増強製品は、脂溶性ビタミンの吸収に影響を及ぼす可能性がある。ほとんどのトコフェロールは植物ステロール摂取の後に減少することが多数の研究で示されたLDL粒子で運ばれるので、フィトスタノール摂取後の低下した血清α−トコフェロール濃度は予想外の知見ではない。同様に、いくつかのカロテノイド、特にαおよびβ−カロテンのレベルも、植物ステロールエステル摂取に続く変化によって同様に影響される。
【0076】
驚くべきことに、本研究は発明者らによって開発されたPS−E−DAG組成物が循環ビタミンのレベルを守ることができることを示す。
【0077】
表4および図1で示すように、PS−E+DAG−魚(調製物A)による治療は、PS−E(P値=0.05)と比較するとビタミンA吸収レベルの増加をもたらした。PS−Eのレチノール血中濃度に対する対のある比較は、PS−E+DAG−魚(調製物A)で治療した対象における5.1%高い濃度を示唆した。図1は、これらの有意差を対照食の中央レベルからの変化率%として提示する。これらの結果は、DAG含有マトリックス中で同等用量で提供される植物ステロールエステルは、ビタミンAバイオアベイラビリティーに対してPS−E単独よりも大きな影響を有することを示す。
【0078】
したがって、PS−E+DAG−魚(調製物A)が血液コレステロール低下作用に加えて脂溶性ビタミン類の血中レベルも維持したことは、非常に重要なことである。このことは、本明細書で記載した組成物を、フィトステロールベースの療法の分野における重要な改良とする。前記したように、フィトステロールは循環コレステロールを低下させるために広く使われてきた。しかし、それらの循環脂質分子を「吸収する」能力のために、フィトステロールは他の循環脂質または親油性分子のレベルにも影響を及ぼし、したがって体に有害になる可能性がある。それにもかかわらず、本明細書で提示される組成物は、このような悪影響を及ぼさなかった。
【0079】
したがって、本発明によって提供される組成物は、循環ビタミンレベルの保護を促進するという点で現在市販されている類似組成物に比べて利点を提供する。同様に、他の親油性分子、例えば親油性薬剤または栄養素を含む他の医薬有効成分のレベルも、本明細書で提供されるPS−E−DAG組成物の摂取により守られると予想することができる。
【0080】
特定の疾患、状態または障害の治療で有効な本発明の治療組成物または医薬組成物の量は、疾患、状態または障害の性質に依存して、標準の臨床手法で決定することができる。さらに、最適投薬量範囲の特定を助けるために、in vitroアッセイおよびin vivo実験を任意選択で使用することができる。有効量は、in vitroまたは動物モデル試験系から導かれた用量反応曲線から推定できる。
【0081】
本明細書の目的のための治療有効量は、当技術分野で公知のような考慮事項により決定されるものである。その量は例えばフィトステロールのコレステロール低下効果を有効にするのに十分でなければならず、その一方で、他の親油性分子、例えばビタミン、またはスタチンなどの医薬有効成分および他の親油性薬剤もしくは食事成分の生物学的利用能に悪影響を与えてはならない。前記親油性分子、特に親油性薬剤は、経口的に、または他の手段を通して、例えば静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内もしくは経皮(皮膚パッチを通して)により得ることができた。
【0082】
本発明で提供される様々な治療法および体重管理を向上させる方法は、本明細書で記載されるように、食用油もしくは脂肪、またはそれを含む組成物もしくは食品に溶解または分散したPS−EおよびDAGの混合物の治療有効量を投与することを含む。混合物、組成物または食品の好ましい投与方法は、場合により経口である。それにもかかわらず、特に混合物および組成物の場合は、他の投与方法、例えば静脈(i.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、または経皮(t.d.、皮膚パッチ)も可能である。食品は固体食品、飲料またはペーストでよい。
【0083】
言い換えると、本明細書で記載される組成物または混合物は主にフィトステロール療法を必要とする状態の治療のためのものであって、それとの関連でビタミン、親油性薬剤、親油性栄養素、その他のような親油性循環分子のバイオアベイラビリティーを維持する。あるいは、前記組成物は、親油性薬剤、中でも例えば特定の鎮痛薬、麻酔薬、免疫サプレッサー、HIVプロテアーゼ阻害剤、抗マラリア薬剤、向精神薬の使用を要する他の状態の療法と併行または併用して使用することができる。
【0084】
本明細書で記載される組成物は、肥満症の治療に関する特性も示した。肥満は世界的に拡大している問題であり、アテローム性動脈硬化症、高血圧および2型糖尿病の主要な危険因子である。実施例4に示すように、平均BMIレベルは、特に女性において、PS−E+DAG−オリーブ(調製物B)組成物による治療後に減少する傾向を示した。図2で示すように、対照と比較したときのBMIレベルの減少に対する最大で最も有意な影響は、PS−E+DAG−オリーブ(調製物B)補充の結果として得られた。
【0085】
現在まで、同じように制限された食事が糖尿病対象および非糖尿病対象に提供された最近の刊行物を含めて、フィトステロール介入の試験後にBMIが減少した同等の結果は報告されていない(Lauら(2005)Am J.Clin.Nutr.81:1351〜1358)。肥満、異脂肪血症および糖尿病との間の関係は証明されているが、脂溶性ビタミンレベルを維持しつつ血液脂質レベル、BMIの減少を提供する薬剤または栄養補助食品は報告されていない。
【0086】
したがって本発明の目的は、高コレステロール血症状態の発生またはその進行により、より重度の健康状態、例えばCVD、CHD、アテローム性動脈硬化症または糖尿病2型もしくは肥満などのメタボリックシンドロームが発症しやすくなる集団のために、高コレステロール血症状態への対処を必要とする様々な障害の治療法または予防/維持療法を提供することである。さらに、以下の状態も本明細書で記載の組成物で治療することができる:癌、良性前立腺肥大症、潰瘍、前立腺炎、肺結核、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ストレス誘発性免疫抑制、関節リウマチおよびアレルギー性鼻炎/副鼻腔炎。前記治療方法は、他の親油性有効成分および/または栄養素の正常な取り込みレベルを維持しつつ血液コレステロールレベルの減少を課すために、フィトステロール、好ましくはフィトステロールエステルをジグリセリドと、任意選択でトリグリセリドと併用して提供することを含む。前記有効成分は、コレステロール生産のための生合成経路の抑制によってコレステロールレベルを低下させるために用いられる、スタチンなどの医薬成分でよい。スタチンおよびフィトステロールを用いる治療は、付加的な有益効果を有することが示された。さらに、前記成分は、抗酸化剤、好ましくは天然のカロテノイド抗酸化剤、例えばルテイン、β−カロテンおよびリコペンでよい。本明細書で記載の治療の標的集団の多くは、心血管状態またはメタボリックシンドローム状態を悪化させる可能性がある酸化的ストレスを患うか、それらを患いやすいので、そのような抗酸化剤の使用はこの意味で有益である。さらなる成分としては、オメガ−3 LC−PUFA、特にDHAおよびEPAがある。
【0087】
実施例4で記載の結果は、フィトステロールの循環レベルは食事の変化によって影響されることを示す。さらに、本発明のPS−E+DAG組成物の摂取は、PS−E食と比較してフィトステロールおよびスタノール、例えばβ−シトステロールのバイオアベイラビリティーを増加させた。したがって、本明細書で記載される組成物は、抗癌剤としてのフィトステロールの効力、およびそれらの他の健康への利点を確実に強化することができる。
【0088】
さらに、いくつかの状態が脂溶性ビタミンレベルの減少から起こる可能性があり、したがって前記状態を患っているかそれらに罹りやすい対象は、本明細書で記載の循環ビタミンのレベルを持続させる組成物による治療および/または予防のための非常に良い候補である。そのような状態には、脳卒中、糖尿病、乳癌、免疫不全、免疫抑制、骨粗鬆症、オステオペニア、光老化、皮膚腫瘍、光過敏症反応、白内障発生および白内障、網膜光悪化、赤血球光化学分解、光線紅斑、光発癌、クローン病、短小腸症候群、アルツハイマー病、認知症、小児非アルコール性脂肪肝炎、多発性硬化症が含まれる。
【0089】
詳細には、食事性親油性ビタミンなどの親油性有効成分およびその正常な摂取が良い全身の健康状態を維持するために重要な他の食事性親油性栄養素は、本明細書で記載される治療法の重要な標的である。好ましい一実施形態では、前記食事性親油性ビタミン類はカロテノイドまたはトコフェロールがベースであって、ビタミンA、ビタミンE、それらのプロビタミンならびにそれらの異性体および誘導体が含まれる。場合によっては、前記カロテノイドおよび/またはトコフェロールビタミン類は抗酸化剤と考えられている。
【0090】
一般に、腸の油/ミセル相に分離する医薬成分および植物成分などの様々な他の親油性分子の吸収は、フィトステロールの溶解性によって損なわれる。したがって、本発明の治療法は、高コレステロール血症状態または高コレステロール血症促進状態を治療するための、それらがその状態の同じかまたは関連した態様(CVD、CHD、メタボリックシンドローム)、またはそれらの治療のために必要な有効成分の摂取がフィトステロールまたはそれらのエステルによる並行治療によって損なわれる他の健康状態もしくは障害を治療するために必要であるかどうかに関係なく、他の有効成分または食物栄養素の摂取またはバイオアベイラビリティーを阻害しない手段を提供する。
【0091】
したがって、本発明のさらなる他の態様は、代謝誘導性の過体重に関連した状態を治療および/または予防するための、上記のように前記栄養補助食品、または本発明の組成物の治療有効量を投与することからなる方法を提供することである。前記状態は、肥満、糖尿病、高コレステロール血症およびメタボリックシンドロームのいずれか1つである。
【0092】
したがって本発明に従い、治療法の一部として、フィトステロールエステルの前記組合せは、高コレステロール血症に対処し、かつ他の親油性有効成分または食物栄養素の十分な摂取レベルを維持しつつ、体重コントロールさらには体重減も提供する。上記のように、体重のコントロールおよび/または減少は、この治療方法によって対処される健康状態の治療および/または予防の重要な部分である。
【0093】
本発明は請求項によって規定され、その内容は明細書の開示に含まれるものと解釈される。
【0094】
開示および記載したが、処理工程および物質はいくらか変化してもよいので、本発明は本明細書で開示される特定の実施例、処理工程および物質に限定されないことを理解されたい。本発明の範囲は添付の請求項およびその等価物だけによって限定されるので、本明細書で使われる専門用語は特定の実施形態を記載するためだけに用いられ、限定するものではないことも理解されたい。
【0095】
本明細書と添付の請求項で使われているように、単数形「a」、「an」および「the」は、明らかに別の指示がない限り複数の指示物を含むことに注意する必要がある。
【0096】
この明細書および続く請求項を通して、特記しない限り、単語「含む(comprise)」および変形形態「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」は、記載されている完全体もしくは段階、または完全体もしくは段階の群を含むことを意味するが、任意の他の完全体および段階ならびに完全体および段階の群の排除を意味するものではないことを理解されたい。
【0097】
以下の実施例は、本発明の態様を実行する際に発明者らが使用した手法を代表する。これらの手法は本発明の実行のための好ましい実施形態を例示するが、当然ながら、当業者ならば本発明の精神および意図された範囲から逸脱することなく、本開示に照らして多数の修正を加えることができることを認識するであろうことを理解されたい。
【実施例】
【0098】
(方法)
(ヒト臨床試験設計)
この研究は、無作為化された単純盲検クロスオーバー臨床インターベンション試験として設計された。この実験は、食事の修正が主要な、時に唯一の推奨治療である血清脂質レベルが上昇した中等度の過体重の対象において、非補充食と比較して、普通食に含ませた特定の脂肪酸および/または植物ステロール混合物を含む食物マトリックスのビタミン吸収、および体重増加に及ぼす影響を試験することを含んだ。
【0099】
(患者)
LDLコレステロール濃度が>130mg/dLの24人のボランティア(男性11人、女性13人、年齢30〜65歳)がこの研究のために募集された。BMIが21.4〜23kg/mであった3名の対象を除いて、対象の肥満度指数(BMI)は23〜32kg/mであった。21人のボランティアが研究を完了した(男性11人、女性10人)。
【0100】
(食事)
全てのボランティアは、各4週の5食事相を含む半無作為化ラテン方格クロスオーバーデザインに従って、食事試験を受けた。対照食が最初に提供され、次に他の相が無作為化された。各食事期は4週間のウォッシュアウト期で分離され、その間は、ボランティアは制限なしで彼らの典型的な食事を摂取した。食事組成は、食品および栄養素量に関して類似していた。基本食は、30%のエネルギーを脂肪として(対照食を参照)、80mgコレステロール/1000kcal、12g繊維/1000kcal、15%のエネルギーをタンパク質として、55%を炭水化物として含んでいた。可変成分は、治療油であった。
【0101】
食事は以下のように指定された。
【0102】
対照群:
約200mg/日のベースライン植物ステロールレベル、食事脂肪はオレイン酸増量植物油として70%エネルギー分含まれた。
【0103】
LC−PUFA群:
同じ量のEPAおよびDHAを植物ステロール−魚油エステル食として提供する魚油の7.6g/日。
【0104】
PS−E+DAG−魚(調製物A)(オメガ−3−エステル混合物)群:
魚油脂肪酸(EPAおよびDHAを含む)にエステル化した1.7g/日大豆ステロール、魚油(市販の魚油、Pronova製造、Lysaker、Norway)を含むジグリセリドおよびトリグリセリドに含まれる(総量=9g/d)。
【0105】
PS−E:
リノール酸(LA)およびOAのような多価不飽和脂肪酸にエステル化した1.7g/dの大豆ステロール、市販のフィトステロールエステル製品に似ている。
【0106】
PS−E+DAG−オリーブ(調製物B)(PS−E+DAG)群:
オリーブ油脂肪酸(主にオレイン酸)にエステル化した1.7g/日の大豆ステロール、オリーブ油(市販のエキストラバージンオリーブ油、Meshek Eger製造、Yokeneam HaMoshava、Israel)を含むジグリセリド(DAG)およびトリグリセリドに含まれる(総量=9g/d)。
【0107】
【表1】



【0108】
全ての食事は等カロリーであり、朝食は毎日監督下で摂取された。治療油は、毎日クリニックで監督下で摂取された朝食と一緒に与えられた。ボランティアは、水を除いてClinical Nutrition Research Unit(McGill University、Montreal、Canada)から彼らに与えられた物のみを飲食するように指示された。試験ボランティアは、彼らの通常レベルの身体活動を維持するように奨励された。エネルギー所要量はミフリン方程式を用いて推定し、1.7の活動係数を掛けた。エネルギー摂取量は一定の体重を維持するように最初の2週間にわたって調節され、残りの4週および他の治療相の間、一定にした。
【0109】
(血液脂質分析)
1日目、2日目、28日目および29日目に、絶食状態で血液サンプルを得た。血漿を直ちに分離して、分析まで−80℃で保存した。各相の1日目、2日目、28日目および29日目に収集したサンプルで、総コレステロール、フィトステロールおよびトリグリセリドレベルを測定した。血漿総コレステロールおよびトリグリセリドのレベルは、酵素試薬(Abbott A−GENT)を用いてAbbott Spectrum CCX Analyzer(Abbott、Dallas、TX)で2反復で自動化方法で測定した。血漿フィトステロール濃度は、GLC(HP5890シリーズII:Hewlett−Peckard)で測定した。ビタミンE(α−トコフェロール)およびビタミンA(レチノール)のレベルは1日目および28日目からの試料で測定して、HPLCを通して定量化した。血漿レプチンレベルは、各相の終わりにラジオイムノアッセイを通して測定した。
【0110】
人体計測値:
以下の測定は、5食事相のそれぞれの開始時(1日目、2日目および3日目)および終了時(27日目、28日目および29日目)に3反復で実施した。体重は、毎日朝食の前に、軽い衣服で靴なしで測定した。身長は、固定されたスタジオメータを用いて頭の頂部から足(靴なし)の底までの距離として測定した。BMIは、体重(kg)を身長(m)の二乗で割って計算した。
【0111】
(実施例1)
(PS−E+DAG−魚(調製物A)のコレステロール低下効果)
高コレステロール血症の過体重ボランティアに4週間、対照食、LC−PUFA油、PS−E+DAG−魚(調製物A)またはPS−Eの食事を与え、その後4週間のウォッシュアウト期および対抗補充が続いた。総コレステロールレベルは、方法で記載されているように各相の開始時および終了時に試験した。結果は、表2に示す。値は、21人の患者における示された時点での総コレステロールレベルおよび変化率%の平均±S.E.Mを表す。変化値の百分率の間の一元配置ANOVAとそれに続くTukeyのpost hoc検定により得られた異なる治療間の統計的有意性は、P値<0.1であった。異なる上付き文字の平均値は、P<0.05で有意に異なる。
【0112】
表2で示すように、総コレステロール濃度のベースラインおよびエンドポイントの両方は、異なる食事相摂取(P値はそれぞれ0.99および0.61)を通して全ての対象で同等であった。しかし、全てのこれらの治療は、異なる程度にではあるけれども、総コレステロール濃度の割合の有意な減少を誘導した(P値=0.057)。Post Hoc評価は、PS−E+DAG−魚(調製物A)がこのパラメータに対して最も顕著な正の効果を示すこと、すなわち総コレステロールレベルを低下させることを示唆する。
【0113】
【表2】



【0114】
(実施例2)
(PS−E+DAG−魚(調製物A)のトリグリセリド低下効果)
高コレステロール血症の過体重ボランティアに4週間、対照食、LC−PUFA油、PS−E+DAG−魚(調製物A)またはPS−Eの食事を与え、その後4週間のウォッシュアウト期および対抗補充が続いた。トリグリセリドレベルは、方法で記載されているように絶食条件下で各相の開始時および終了時に試験した。結果は、表3に示す。値は、21人の患者における示された時点でのトリグリセリドレベルおよび変化率%の平均±SEMを表す。一元配置ANOVAとそれに続くTukeyのpost hoc検定により得られた異なる治療間の統計的有意性は、エンドポイント値の間ではP値<0.01で、変化率%の間ではP値<0.001であった。異なる上付き文字の平均値は、P<0.05で有意に異なる。
【0115】
以前これらのボランティアの血漿コレステロール含有成分について示したように、ベースライン値は実質的に類似していた(P値=0.33)。これらの治療の投与の最終結果は、これらの高コレステロール血症対象でトリグリセリドレベルを低下させる上で有益であることが示された。しかし、オメガ−3含有治療の効力と他の脂肪酸食事の効力の間で明白な差が存在した(P値=0.0036)。未反応の魚油は空腹時血漿トリグリセリドを37.1%(P値=0.007)減少させたが、本発明のオメガ−3エステル混合物(PS−E+DAG−魚(調製物A))の同等の効果は42.9%の減少(P値=0.00002)であり、それでも、これらの栄養補助の効果の間の差を示唆する弱い傾向だけがあった(スチューデントのt検定対のある分析、P値=0.112)。空腹時トリグリセリドレベルに及ぼすこれらの補助食品の影響と、対照食(−5.3%、P値=0.04)およびPS−E(−8.7%、P値=0.04)のむしろ穏やかな効果との比較は、魚油摂取と植物油摂取の間の統計学的に有意な差を提供する(表3を参照)。
【0116】
【表3】



【0117】
(実施例3)
(血漿脂溶性ビタミンレベル)
高コレステロール血症の過体重ボランティアに4週間、対照食、LC−PUFA油、PS−E+DAG−魚(調製物A)またはPS−Eの食事を与え、その後4週間のウォッシュアウト期および対抗補充が続いた。ビタミンレベルは、方法で記載されているように各相の終了時に試験した。結果を図1および表4に示す。値は表4では21人の患者から得られたビタミンA濃度の平均±SEMを表し、図1では対照食中央値からの変化率%として表す。スチューデントのt検定対のある分析により得られた異なる治療間の統計的有意性は、P値<0.05であった。
【0118】
【表4】



【0119】
植物ステロール食、すなわちPS−Eによる栄養補助は、対照のオリーブ油と比較してビタミンA(レチノール)のバイオアベイラビリティーの減少(−5%)をもたらした(それぞれ65.0±2.3μg/dLおよび68.2±2.5μg/dL)。しかし、調製物A(植物ステロールおよび魚油中のジグリセリドの組合せ)による栄養補助は、対照食レベルと同等である(P値=0.41)ことが示され、また、PS−E食の摂取と比較してビタミンA血漿濃度の小さくとも有意な増加を示した(それぞれ69.1±2.3μg/dLおよび65.0±2.5μg/dL、P値=0.05)。この傾向と一致して、PS−EおよびPS−E+DAG−魚(調製物A)食を摂取後のエンドポイントレベルの間の高コレステロール血症対象におけるビタミンA濃度の対になった変化は、後者の食事の摂取が5.1%高い血漿ビタミンAレベルをもたらすことを示唆した。類似した観察が、ビタミンA濃度を対照食中間値と比較したときに得られた(図1を参照)。
【0120】
(実施例4)
(PS−E+DAG−魚(調製物A)の血漿植物ステロール濃度に及ぼす影響)
高コレステロール血症の過体重ボランティアに4週間、対照食、LC−PUFA油、PS−E+DAG−魚(調製物A)またはPS−Eの食事を与え、その後4週間のウォッシュアウト期および対抗補充が続いた。フィトステロールレベルは、方法で記載されているように各相の開始時および終了時に試験した。結果は、表5に示す。値は、21人の患者における示された時点でのβ−シトステロールレベルおよび変化率%の平均±SEMを表す。一元配置ANOVAとそれに続くTukeyのpost hoc検定により得られた異なる治療間の統計的有意性は、エンドポイント値の間ではP値<0.05で、変化率%の間ではP値<0.001であった。異なる上付き文字の平均値は、P<0.05で有意に異なる。
【0121】
ベースライン時には治療群の間で差はなかった(P値=0.44)。しかし、治療後値は、示された食事の間で有意差を示した(P値=0.03)。これらの差は、表5で示すように変化率%でより顕著であった(P値=0.0003)。両植物ステロール含有食はこのパラメータで顕著な増加を示したにもかかわらず、スチューデントのt検定対のある分析によって評価されているように、これらの栄養補助食の効果の間には異なる傾向があった(P値=0.058)。β−シトステロール値をこれらの食事相の終わりのコレステロールレベルに標準化したときは、同等の傾向が得られた。
【0122】
【表5】



【0123】
人体は、フィトステロールを内因的に合成しない。循環フィトステロールは、腸管吸収だけに由来する。ヒトの血清フィトステロールレベルは、6から41μmol/Lである。したがって、β−シトステロール濃度の絶対変化はPS−E群より調製物A食事インターベンション群でより大きかったという事実は、ステロールレベルは摂取した食事によって影響されたことを明らかに証明する。これらの結果は、フィトステロールの循環レベルは食事の変化によって影響されることを示す。さらに、本発明のステロールエステルおよびDAG組成物の摂取は、PS−E食と比較してフィトステロールおよびスタノール、例えばβ−シトステロールのバイオアベイラビリティーを増加させ、それらの抗癌剤としての効力ならびに他の健康向上効果を強化することができる。
【0124】
(実施例5)
(体重増加)
高コレステロール血症の軽度過体重ボランティアに4週間、対照食、LC−PUFA油、PS−E+DAG−魚(調製物A)、PS−EまたはPS−E+DAG−オリーブ(調製物B)の食事を与え、その後4週間のウォッシュアウト期および対抗補充が続いた。体重レベルは、方法で記載されているように各相の開始時および終了時に試験し、BMI値をその後計算した。女性のBMI結果の変化率%を図2に示す。値は、10人の女性患者におけるBMIの変化率%の平均±S.E.Mを表す。スチューデントのt検定対のある分析により得られた示された治療間の統計的有意性は、P値<0.05であった。
【0125】
方法で示されるように、21人の対象が全5つの食事期間を完了した。5食事群の間にエネルギー摂取量の差はなかった。体重は標準スケールを用いて測定し、BMIは体重(kg)を身長の二乗(m)で割って計算した。初期およびエンドポイントのBMIレベルは、5食事相のそれぞれの開始時(1日目、2日目および3日目)および終了時(27日目、28日目および29日目)に取られたBMI測定値の平均として計算した。
【0126】
本研究において、全5食事期間においてベースラインからエンドポイントにかけてのBMI値の僅かではあるが異なる減少があった(対照は26.00±0.62から25.81±0.59、P値=0:01、LC−PUFAは26.31±0.69から26.17±0.65、P値=0.10、PS−E+DAG−魚(調製物A)は26.10±0.69から26.02±0.68、P値=0.10、PS−Eは26.27±0.64から26.14±0.63、P値=0.01、調製物Bは26.18±0.63から26.00±0.62、P値=0.001)。
【0127】
男性および女性におけるBMI値のベースラインレベルからエンドポイントレベルへの変化のさらなる評価は、これらの植物油ベースの植物ステロール治療が少し過体重の男性におけるこれらの治療の同等の影響より女性のBMIレベルを減少させることにおいてより有効であったことを示唆する。対照、PS−EおよびPS−E+DAG−オリーブ(調製物B)を投与した女性におけるベースラインからエンドポイントへの平均的変化は、それぞれ−0.09±0.02、−0.22±0.02および−0.18±0.02であり、男性においてはそれぞれ−0.29±0.03、−0.14±0.02および−0.09±0.02であった。対のある分析を用いてこれらの女性対象(n=10)の間でBMI値の変化率%を比較すると、対照のオリーブ油食(P値=0.03、図2を参照)と比較してPS−E+DAG−オリーブ(調製物B)による栄養補助の後により顕著であることが示された。この女性におけるBMIレベルの変化率%の異なる有意な減少は、対照およびPS−E補助食品の比較(P値=0.28)では得られず、食物マトリックスPS−E+DAG−オリーブ(調製物B)は体重減少においてPS−Eより有効であることを示す(図2)。興味深いことに、植物ステロール含有食によって提示された男女間のBMIレベルに対するこれらの異なる影響は、対照のエンドポイントレベルと比較して女性における対応する空腹時レプチン濃度の減少とさらに相関していた(−8.6±6.8%および−6.9±7.1%、それぞれ調製物BおよびPS−E)が、男性の類似した分析は反対の影響を生じた(2.1±6.3%および6.5±4.6%、それぞれ調製物BおよびPS−E)。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】血漿脂溶性ビタミンの有効性を示す図。 ヒストグラムは、オリーブ油(対照)による治療と比較した場合の、PS−E単独で、またはPS−E+DAG−魚(調製物A)で治療した対象における血漿ビタミンAレベルの変化率%を表す。略記号:chan.、change(変化)、cont.、control(対照)、ol.o.、olive oil(オリーブ油)、med.、median(中央値)、val.、value(値)、Prep.A、Preparation A(調製物A)。
【図2】PS−E+DAG−オリーブ(調製物B)は体重を減らすことを示す図。 ヒストグラムは、オリーブ油、PS−EまたはPS−E+DAG(調製物B)で治療した女性における肥満度指数(BMI)の変化率%を表す。略記号:chan.、change(変化)、ol.o.、olive oil(オリーブ油)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親油性ビタミン類、親油性薬剤、親油性栄養素または任意の親油性医薬有効成分のいずれか1つのバイオアベイラビリティーに悪影響を与えずにフィトステロール療法を必要とする状態を治療する方法であって、食用油もしくは脂肪、またはそれを含む組成物もしくは食品に任意選択で溶解または分散したフィトステロール(phytosterol)エステル(PS−E)および1,3−ジグリセリド(DAG)の混合物の治療有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含む方法。
【請求項2】
親油性ビタミン類、親油性薬剤、親油性栄養素または任意の親油性医薬有効成分のいずれか1つのバイオアベイラビリティーに悪影響を与えずにフィトステロール療法を必要とする状態を治療する方法であって、食用油もしくは脂肪、またはそれを含む組成物もしくは食品に溶解または分散したフィトステロールエステル(PS−E)および1,3−ジグリセリド(DAG)の混合物の治療有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含む方法。
【請求項3】
前記状態は、癌、良性前立腺肥大症、潰瘍、前立腺炎、心臓血管障害(CVD)、冠状動脈性心疾患(CHD)、アテローム性動脈硬化症、肺結核、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ストレス誘発性免疫抑制、関節リウマチおよびアレルギー性鼻炎/副鼻腔炎からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
体重管理を向上させる方法であって、食用油もしくは脂肪、またはそれを含む組成物もしくは食品に任意選択で溶解または分散したフィトステロールエステル(PS−E)および1,3−ジグリセリド(DAG)の混合物の治療有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含む方法。
【請求項5】
過体重をもたらす代謝状態を治療する方法であって、食用油もしくは脂肪、またはそれを含む組成物もしくは食品に任意選択で溶解または分散したフィトステロールエステル(PS−E)および1,3−ジグリセリド(DAG)の混合物の治療有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含む方法。
【請求項6】
前記状態は肥満である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記親油性ビタミンはカロテノイドおよびトコフェロールである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記親油性ビタミンはビタミンAおよびビタミンEである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記親油性有効成分はフィトステロールである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記食用油は、オリーブ油、魚油、カノーラ油、ダイズ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、パーム油、アボカド油、ゴマ油、アマニ油およびルリヂサ油からなる群から選択することができる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記食用脂は任意の天然脂肪であり、バター脂肪、無水乳脂、カカオ脂およびラードからなる群から選択することができる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記PS−EおよびDAGの脂肪酸残基は、それが由来する油の脂肪酸残基、例えばオレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸およびエイコサン酸残基に任意選択で対応する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記フィトステロールエステルはスチグマステロール、シトステロール、β−シトステロール、ブラシカステロール、カンペステロールおよび/または5−アベナステロールの脂肪酸エステルならびにその異性体および誘導体であり、前記フィトスタノール(phytostanol)エステルはβ−シトスタノール、カンペスタノールおよび/またはスチグマスタノールの脂肪酸エステルならびにその異性体および誘導体である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物は従来の栄養組成物成分をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物中のフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルおよびジアシルグリセロール、ならびにフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルの間の重量比は、約15:1から1:1、好ましくは約10:1から約1:1、より好ましくは5:1から1:1、特に約2:1である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物中のジアシルグリセロールの量は少なくとも1重量%である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物中のフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルの量は少なくとも1重量%である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物中のジアシルグリセロールの量は約1から約99重量%、好ましくは約4から約70重量%、特に約7から約48重量%、より特定すると約10から約22重量%であり、前記混合物中のフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルの量は約1から約99重量%、好ましくは約5から約70重量%、より特定すると約7から約60重量%、具体的には約10から約60重量%、より特定すると約7から約35重量%、より具体的には約20から約35重量%である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記混合物は、オリーブ油、カノーラ油および魚油の1つに溶解または分散した15重量%のDAG、主に1,3−DAGおよび25重量%の総PS−Eからなる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記油は魚油である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
女性の体重管理を向上させる方法であって、オリーブ油またはそれを含む組成物もしくは食品に任意選択で溶解または分散したフィトステロールエステル(PS−E)および1,3−ジグリセリド(DAG)の混合物の治療有効量を、それを必要とする対象へ投与することを含む方法。
【請求項22】
親油性ビタミン類、親油性薬剤、親油性栄養素または任意の親油性医薬有効成分のいずれか1つのバイオアベイラビリティーに悪影響を与えない、フィトステロール療法を必要とする状態を治療する食用組成物を含む栄養補助食品であって、前記組成物は食用油または脂肪に任意選択で溶解または分散したフィトステロールエステル(PS−E)および1,3−ジグリセリド(DAG)の混合物を含む栄養補助食品。
【請求項23】
前記油は、オリーブ油、魚油、カノーラ油、ダイズ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、パーム油、アボカド油、ゴマ油、アマニ油およびルリヂサ油からなる群から選択することができる、請求項22に記載の栄養補助食品。
【請求項24】
前記食用脂は任意の天然脂肪であり、バター脂肪、無水乳脂、カカオ脂およびラードからなる群から選択することができる、請求項22または23に記載の栄養補助食品。
【請求項25】
前記PS−EおよびDAGの脂肪酸残基は、それが由来する油の脂肪酸残基、例えばオレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸およびエイコサン酸残基に任意選択で対応する、請求項22〜24のいずれか一項に記載の栄養補助食品。
【請求項26】
前記フィトステロールエステルはスチグマステロール、シトステロール、β−シトステロール、ブラシカステロール、カンペステロールおよび/または5−アベナステロールの脂肪酸エステルならびにその異性体および誘導体であり、前記フィトスタノールエステルはβ−シトスタノール、カンペスタノールおよび/またはスチグマスタノールの脂肪酸エステルならびにその異性体および誘導体である、請求項22〜25のいずれか一項に記載の栄養補助食品。
【請求項27】
前記混合物は従来の栄養組成物成分をさらに含む、請求項22〜26のいずれか一項に記載の栄養補助食品。
【請求項28】
前記混合物中のフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルおよびジアシルグリセロール、ならびにフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルの間の重量比は約15:1から1:1、好ましくは約10:1から約1:1、より好ましくは5:1から1:1、特に約2:1である、請求項22〜27のいずれか一項に記載の栄養補助食品。
【請求項29】
前記混合物中のジアシルグリセロールの量は少なくとも1重量%である、請求項22〜28のいずれか一項に記載の栄養補助食品。
【請求項30】
前記混合物中のフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルの量は少なくとも1重量%である、請求項22〜29のいずれか一項に記載の栄養補助食品。
【請求項31】
前記混合物中のジアシルグリセロールの量は約1から約99重量%、好ましくは約4から約70重量%、特に約7から約48重量%、より特定すると約10から約22重量%であり、前記混合物中のフィトステロールおよび/またはフィトスタノールエステルの量は約1から約99重量%、好ましくは約5から約70重量%、より特定すると約7から約60重量%、具体的には約10から約60重量%、より特定すると約7から約35重量%、より具体的には約20から約35重量%である、請求項22〜30のいずれか一項に記載の栄養補助食品。
【請求項32】
前記混合物は、オリーブ油、カノーラ油および魚油の1つに溶解または分散した15重量%のDAG、主に1,3−DAGおよび25重量%の総PS−Eからなる、請求項22〜31のいずれか一項に記載の栄養補助食品。
【請求項33】
前記油は魚油である、請求項32に記載の栄養補助食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−509904(P2008−509904A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525450(P2007−525450)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000861
【国際公開番号】WO2006/016363
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507044206)エンジモテック リミテッド (2)
【Fターム(参考)】