説明

検出センサ及びその製造方法

【課題】 検出感度を調整しつつ比較的に容易に製造可能な検出センサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 近接センサ10は、回路基板31に対して、少なくとも検出用発光素子16及び安定確認用発光素子18の並設部分L1と、接続端子部34の周囲部分L3を除いた部分が不透明樹脂で一次成形され、上記部分L1,L2,L3部分が半透過性樹脂で2次成形されて製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感度調整機能と動作表示機能を備えた検出センサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検出センサには、その動作状態を表示するための発光素子を備えたものがある。下記特許文献1には、上記発光素子が取り付けられた回路基板に対して、発光素子部分を覆うように透明合成樹脂キャップを取り付けて、そのキャップを除く回路基板部分を不透明合成樹脂で覆うように成形された検出センサが開示されている。
【0003】
また、例えば近接センサは、通常、その検出コイル部分が合成樹脂によりモールド成形した保護部材で覆われている。しかし、上記検出コイルを覆う保護部材の肉厚の相違や、成形圧力による検出コイルの特性変化などによって検出感度が変わってしまうおそれがある。そこで、下記特許文献2では、検出コイル等が搭載された回路基板上に、上記検出感度を決定する感度調整用インピーダンス素子を設けた構成が開示されている。この近接センサの製造段階では、感度調整用インピーダンス素子部分を除く回路基板を覆うように合成樹脂製の外殻を成形し、その後に、感度調整用インピーダンス素子部分を覆うように封止部材を設けるのである。このような構成であれば、上記合成樹脂成形されて検出コイルを覆う部分の肉厚などに応じて検出感度が変わっても、その樹脂成形後に、露出した感度調整用インピーダンス素子を切断(トリミング)することで感度調整を行うことができる。
【特許文献1】実開昭61−202840号公報
【特許文献2】実公平2−29651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、図9に示すように、上記動作表示機能と、感度調整機能とを備えた近接センサ1を製造する場合、まず、別途樹脂成形された透明合成樹脂キャップ2を発光素子3部分に取り付ける。その後、当該透明合成樹脂キャップ2及び感度調整用インピーダンス素子部分4を除きかつ検出コイル8を含む回路基板5部分を不透明樹脂6で樹脂成形し、最後に感度調整用インピーダンス素子部分4に封止部材7を取り付ける方法が考えられる。しかし、この方法では、透明合成樹脂キャップ2を成形する工程と、回路基板5部分を樹脂成形する工程と、更に封止部材7を成形する工程とが必要となり、製造工程が複雑になるとともに製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、検出感度を調整しつつ比較的に容易に製造可能な検出センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係る検出センサは、被検出物の検出状態に応じた検出動作を行うとともにその検出感度が調整可能とされた検出部と、前記検出部の動作状態に応じた発光動作を行う動作表示部と、前記検出感度の調整操作を行う調整操作部とを備える検出センサにおいて、少なくとも前記動作表示部及び前記調整操作部を除いた部分が、その部分を覆うように非光透過性樹脂で成形され、前記動作表示部及び前記調整操作部を含み、かつ、前記非光透過性樹脂で成形されない部分が、その部分を覆うように光透過性樹脂で成形されていることを特徴とする。
なお、本発明で「検出部」には、例えば、被検出物の近接状態に応じた検出信号を単に出力するものだけでなく、上記検出信号と設定閾値との比較動作までを行うものも含まれる。
また、「光透過性樹脂」は、透明樹脂に限らず、動作表示部の発光動作が視認可能な程度の透明性を有する樹脂であれば半透明樹脂であってもよい。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の検出センサにおいて、前記光透過性樹脂は、光拡散性を有する樹脂であることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の検出センサにおいて、前記検出部は、その検出感度を決定する複数の感度調整用インピーダンス素子と、それら複数の感度調整用インピーダンス素子それぞれに対応して設けられ、外部から信号を受けることで前記各感度調整用インピーダンス素子を無効化させる複数の無効化手段と、を備えて構成され、前記調整操作部は、前記各無効化手段に対して前記信号を外部から供給するための接続端子部であることを特徴とする。
なお、「感度調整用インピーダンス素子」には、例えば抵抗やコンデンサなどが含まれる。
なお、「無効化手段」には、外部からの信号として開放用電流を受けることで開放して各感度調整用インピーダンス素子を無効化させる開放手段(例えばヒューズ、トランジスタ)や、外部からの信号として短絡用電流を受けることで短絡して各感度調整用インピーダンス素子を無効化させる短絡手段(例えばツェナダイオード)などが含まれる。
なお、請求項3の発明(下記の請求項8の発明も同様)には、次の構成が含まれる。
(1)「請求項3に記載の検出センサにおいて、前記複数の感度調整用インピーダンス素子は並列接続され、前記複数の無効化手段は、それぞれに対応する前記各感度調整用インピーダンス素子に対して直列接続され開放用電流を受けることで開放して前記各感度調整用インピーダンス素子を無効化させる複数の開放手段である構成。」
(2)「請求項3に記載の検出センサにおいて、前記複数の感度調整用インピーダンス素子は直列接続され、前記複数の無効化手段は、それぞれに対応する前記各感度調整用インピーダンス素子に対して並列接続され短絡用電流を受けることで短絡して前記各感度調整用インピーダンス素子を無効化させる複数の短絡手段である構成。」
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の検出センサにおいて、前記複数の感度調整用インピーダンス素子は直列接続され、前記複数の無効化手段は、それぞれに対応する前記各感度調整用インピーダンス素子に対して並列接続されかつカソードが高電位側に接続されアノードが低電位側に接続され短絡用電流を受けることで短絡して前記各感度調整用インピーダンス素子を無効化させる複数のツェナダイオードであることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4に記載の検出センサにおいて、前記調整操作部は、外部機器と接続される信号ケーブルが前記接続端子部に接続された状態で前記光透過性樹脂で成形されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の検出センサにおいて、前記検出部は、検出コイルと、その検出コイルを発振要素とする発振回路と、当該発振回路の発振出力に基づき前記被検出物の検出動作を行う検出回路とを備えて構成され、少なくとも前記検出コイルを覆うように前記非光透過性樹脂で成形されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明に係る検出センサの製造方法は、被検出物の近接状態又は前記被検出物の検出の有無に応じた検出動作を行うとともにその検出感度が調整可能とされた検出部と、前記検出部の動作状態に応じた発光動作を行う動作表示部と、前記検出感度の調整動作をさせるための調整操作部とを備える検出センサの製造方法において、前記動作表示部及び前記調整操作部を除いた部分を覆うように非光透過性樹脂で成形する第1工程と、前記第1工程の後に、前記調整操作部にて前記検出感度の調整を行う第2工程と、前記第2工程の後に、前記動作表示部及び前記調整操作部の両部分を覆うように同一の光透過性樹脂で同時に成形する第3工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7に記載の検出センサの製造方法において、前記検出部は、その検出感度を決定する複数の感度調整用インピーダンス素子と、それら複数の感度調整用インピーダンス素子それぞれに対応して設けられ、外部からの信号を受けることで前記各感度調整用インピーダンス素子を無効化させる複数の無効化手段と、を備えて構成され、前記調整操作部は、前記各無効化手段に対して前記信号を外部から供給するための接続端子部で構成され、前記第2工程では、前記入力端子部に前記信号を与えることで前記検出感度の調整を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、請求項8に記載の検出センサの製造方法において、前記複数の感度調整用インピーダンス素子は直列接続され、前記複数の無効化手段は、それぞれに対応する前記各感度調整用インピーダンス素子に対して並列接続されかつカソードが高電位側に接続されアノードが低電位側に接続され短絡用電流を受けることで短絡して前記各感度調整用インピーダンス素子を無効化させる複数のツェナダイオードであることを特徴とする。
【0015】
請求項10の発明は、請求項8又は請求項9に記載の検出センサの製造方法において、前記第2工程後に、前記入力端子部に信号ケーブルを電気的に接続し、この状態で前記第3工程を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項11の発明は、請求項7〜請求項10のいずれかに記載の検出センサの製造方法において、前記検出部は、検出コイルと、その検出コイルを発振要素とする発振回路と、当該発振回路の発振出力に基づき前記被検出物の検出動作を行う検出回路とを備えて構成され、前記第1工程では、少なくとも前記検出コイルを覆うように前記非光透過性樹脂で成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
<請求項1,7の発明>
請求項1に係る検出センサは、動作表示部及び調整操作部を除いた部分がその部分を覆うように非光透過性樹脂で成形され、動作表示部及び調整操作部の両部分がその両部分を覆うように同一の光透過性樹脂で成形されている。このような構成であれば、まず、動作表示部及び調整操作部を除いた部分を覆うように非光透過性樹脂で成形し(第1工程)、調整操作部にて検出感度の調整を行い(第2工程)、次いで、動作表示部及び調整操作部の両部分を覆うように光透過性樹脂で同時に成形する(第3工程)という請求項7の製造方法を適用することができる。つまり、検出部を覆う成形を行った後にその検出感度の調整ができ、動作表示部を光透過性樹脂で覆った検出センサを、従来のものよりも簡単かつ低コストで製造することが可能になる。
【0018】
<請求項2の発明>
本構成によれば、動作表示部を覆う光透過性樹脂が光拡散性を有する樹脂であるから、例えば動作表示部が検出センサの周面から奥まった位置に配置されていてもそれを覆う部分全体から発光するようになり、その発光動作を視認しやすくなる。
【0019】
<請求項3,4,8,9の発明>
検出感度の調整方法としては、例えばレーザ光を使って感度調整用抵抗素子を切断する、いわゆるレーザトリミング方法があるが、この方法はレーザ光を使用する必要があり製造コストが高価になる。また、可変抵抗等を備えて機械的ボリウムによって検出感度の調整を行う方法もあるが、この方法では、成形後に振動等によってボリウムの調整位置がずれで検出感度が変動してしまうという問題が生じ得る。
これに対して、請求項3,8の発明によれば、外部からの信号を与えることで(より具体的には、各短絡手段(例えばツェナダイオード)や開放手段(例えばヒューズ)に対して短絡用電流または開放用電流を印加することで)、各感度調整用インピーダンス素子を無効化させて検出感度調整を行う構成であるから、安価な製造コストで安定して感度調整を行うことができる。なお、請求項3の構成では、無効化手段を、外部からの信号を受けて各感度調整用インピーダンス素子を一時的に無効化させもの(例えばトランジスタなど)とし、このときの無効化状態に対応した情報を記憶する記憶手段を備え、検出動作時にはこの記憶手段から上記情報を読み出して調整した無効化状態に復帰させる構成も含まれる。これに対して、請求項4,9の構成では、無効化手段は一度短絡したら復帰しないツェナダイオードを使っているから上述の記憶手段等を設ける必要がなく構成を簡略化できるというメリットがある。
【0020】
<請求項5,10の発明>
本構成によれば、信号ケーブルの接続部と、調整操作部とを共有化することで検出センサの小型化が可能になる。
【0021】
<請求項6,11の発明>
上記各構成は、特に、検出コイルを有する近接センサに対して有用である。つまり、検出コイルを覆うように成形した後に、その覆った部分の肉厚や、成形圧力による検出コイルの特性変化などに応じて変動した検出感度を所望の感度に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1〜図7によって説明する。
1.近接センサの構成
本実施形態の近接センサ10(本発明の「検出センサ」に相当)は、後述する検出コイル11を構成要素とするLC並列回路13を発振回路14によって発振させ、その発振振幅変化に基づき例えば金属製ワーク(本発明の「被検出物」に相当)の接近やその有無を判別するものである。
【0023】
(1)近接センサの回路構成
図1には、近接センサ10の回路構成が示されている。検出コイル11及びコンデンサ12からなるLC並列回路13は、発振回路14によって発振状態に維持されることで、検出コイル11から交流磁界H(検出領域H)を発生する。この発振状態で金属製ワークが接近すると、検出コイル11の磁気エネルギーが吸収され、これに応じてLC並列回路13の振幅電圧が変化(例えば減少)する。検出回路15は、例えばLC並列回路13の振幅電圧を所定の検出用閾値と大小比較し、この比較結果に基づき検出動作を行う。本実施形態では、検出動作として、LC並列回路13の振幅電圧が上記検出用閾値を下回ったときに、動作表示灯としての検出用発光素子16(本発明の「動作表示部」に相当。例えば緑色に発光する発光ダイオード)を発光させるとともに、出力回路17を介して検出信号を外部に出力する。
【0024】
また、検出回路15は、LC並列回路13の振幅電圧を上記検出用閾値よりも高い安定確認用閾値とも比較し、上記検出動作時においてLC並列回路13の振幅電圧がこの安定確認用閾値を上回らなくなったときに安定確認用発光素子18(本発明の「動作表示部」に相当。例えば赤色に発光する発光ダイオード)を発光させるようになっている。また、図1中の符号20,21は、本近接センサ10に電源を供給するための電源端子及びグランド端子であり、符号22は出力回路17からの上記検出信号を外部機器に出力する出力端子である。また、符号23は、発振回路14に連なり上記LC並列回路13の振幅電圧を調整するための感度調整回路19に与える制御信号を外部機器から入力するための入力端子である。
【0025】
図2には、感度調整回路19の回路構成が示されている。同図中の符号R1,R2,R3は、上記発振回路14とグランド端子21との間に直列接続された複数(本実施形態では3つ)の感度調整用抵抗(これらの抵抗値は全て同じであっても互いに異なっていてもよい。)である。また、電源端子20とグランド端子21の間に直列接続されたスイッチ素子S1,S2,S3及びツェナダイオードD1,D2,D3(本発明の「無効化手段(短絡手段)」に相当)が上記各感度調整用抵抗R1,R2,R3に対応してそれぞれ設けられている。各ツェナダイオードD1〜D3と各スイッチ素子S1〜S3の接続点に、対応する抵抗R1〜R3の高電位側が接続されている。また、感度調整回路19は、上記入力端子23から制御信号を受けて動作するシフトレジスタ24が設けられており、この各出力T1、T2、T3が上記各スイッチ素子S1〜S3の制御端子に接続されている。
【0026】
感度調整を行う際には、まず、電源端子20とグランド端子21との間に高電流を印加しつつ、シフトレジスタ24に所定の制御信号を与える。これによりオン動作したスイッチ素子S1(S2,S3)に連なるツェナダイオードD1(D2,D3)に大電流が流れて短絡する。例えばスイッチ素子S1がオン動作するとツェナダイオードD1が短絡して感度調整用抵抗R1が無効化される。スイッチ素子S2がオン動作するとツェナダイオードD2が短絡して感度調整用抵抗R1,R2が無効化される。スイッチ素子S3がオン動作するとツェナダイオードD3が短絡して感度調整用抵抗R1,R2,3が無効化される。このように発振回路14に連なる感度調整用抵抗の合計抵抗値を変えることでLC並列回路13の振幅電圧を変化させて検出感度を調整することができるのである。
【0027】
(2)近接センサの構造
図3には、近接センサを検出面30側から見た上面図であり、図4は、検出面30とは反対側の面から見た底面図である。同図に示すように、近接センサ10は、全体として直方体状をなし、その直方体に対応した長方形上の回路基板31が内部に収容されている。回路基板31には、その長手方向の先端(図3で紙面左方向)寄りの位置に上記検出コイル11が搭載されおり、基端部には、上記各端子20〜23が配された接続端子部34(本発明の「調整操作部」に相当)が設けられいる。そして、ここに外部機器に連なる信号ケーブル32の各信号線が接続されている。
【0028】
また、回路基板31の中央よりやや基端側の位置には、近接センサ10を所定の位置に取り付けるための取付ネジが挿通される円筒状のスリーブ33が上下面を貫通するように埋設されている。なお、上記検出コイル11と各端子20〜23との間の回路パターンに上記発振回路14、検出回路15、出力回路17及び感度調整回路19が搭載されている。また、上記検出用発光素子16及び安定確認用発光素子18は、図4に示すように、回路基板31の裏面側の先端側に並設されている。
【0029】
さて、本実施形態では、回路基板31の裏面のうち上記検出用発光素子16及び安定確認用発光素子18の並設部分L1、回路基板31の中央位置の底面部分を除く周囲部分(両側壁及び上面部)L2、接続端子部34の周囲部分L3がそれぞれ半透明の乳白色の樹脂、より具体的には、ポリカーボネートまたはポリアリレートなど(本発明の「光透過性樹脂、光拡散性を有する樹脂」に相当)で覆われるように成形されている。また、それらL1、L2,L3以外の部分が不透明の樹脂(非光透過性樹脂)で覆われるように成形されている。なお、図3,4では、斜線網掛け部分が半透明樹脂で成形された部分であり、それ以外の部分が不透明樹脂で成形した部分である。
【0030】
2.近接センサの製造方法
(1)第1工程
次に、近接センサ10の製造方法について、図5〜7を参照しつつ説明する。
まず、図5に示すように、回路基板31の表面上に検出コイル11等を半田付けし、裏面に検出用発光素子16及び安定確認用発光素子18等を半田付けする。そして、回路基板31に形成された貫通孔31aにスリーブ33を嵌合させる。
【0031】
次いで、図6に示すように、上記L1、L2、L3部分を除いて不透明樹脂で一次成形を行う。このとき、回路基板31の中央位置の周囲部分L2も樹脂成形しない理由は、回路基板31の先端側の部分L1及び基端側の部分L2だけでなく、中央部分L3を支持しつつ樹脂成形することで、回路基板31の反りを抑えるためである。
【0032】
この一次形成部材40(図6で斜線網掛け部分)は、検出コイル11を覆う部分が突出し全体としてL字状の形状をなす。また、接続端子部34が突出する基端面には、一次形成部材40の本体部分よりも径小な径小部41が延設され、この延設端周面部には全周に亘って突出形成された防水用壁42が設けられている。また、上記検出用発光素子16及び安定確認用発光素子18の並設部分L1の周縁部には、その形状に対応した溝が設けられることでやはり防水用壁43が形成されている。
【0033】
(2)第2工程
ここで、一次成形部材40によって覆われた検出コイル11部分、つまり検出面30部分の肉厚はばらついたり、成形圧力による検出コイル11の特性が変化するので、やはり検出感度調整が必要となる。そこで、所定の測定機器によって出力端子22からの検出信号レベルに基づき近接センサ10の検出感度を測定しつつ、この検出感度が所望の値になるように前述の感度調整作業を行うのである。即ち、接続端子部34の電源端子20及びグランド端子21間に高電流を印加しつつ入力端子23に所定の制御信号を与えて特定の感度調整抵抗を無効化させる。
【0034】
(3)第3工程
検出感度の調整が完了すると、次に、接続端子部34の電源端子20、グランド端子21及び出力端子22に上記信号ケーブル32の各信号線を半田付けする。その後、上記L1、L2、L3部分について半透明樹脂によって二次成形を一括で行う。これにより、図7に示すように、上記検出用発光素子16及び安定確認用発光素子18がそれらの光を透過可能な半透明樹脂によって覆われる。また、信号ケーブル32が近接センサ10に対して一体的に成形される。また、各防水用壁42,43を半透明樹脂によって覆うように成形して防水性が図られる。なお、その後、本実施形態では、図3に示すように、二次成形部分に型番(同図では「ABC」「DE」)などをレーザ光によって発色印字する。
【0035】
3.本実施形態の効果
(1)本実施形態の近接センサ10は、回路基板31に対して、少なくとも検出用発光素子16及び安定確認用発光素子18の並設部分L1と、接続端子部34の周囲部分L3を除いた部分が不透明樹脂で一次成形され、上記部分L1,L2,L3部分が半透過性樹脂で2次成形されて製造される。従って、検出コイル11を覆う一次成形後に、その一次成形部材の厚みによって変動した検出感度を調整後に、2次成形を行うことができる。しかも、2回の成形で製造することができるため、前述した図9に示す構成に比べて簡単かつ低コストで製造することが可能になる。
(2)また、検出用発光素子16及び安定確認用発光素子18を覆う半透過性樹脂は光拡散性を有する樹脂であるから、本実施形態のように検出用発光素子16等が近接センサ10の周面から奥まった位置に配置されていてもそれを覆う2次成形部材全体から発光するようになり、その発光動作を視認しやすくなる。
【0036】
(3)検出感度の調整方法としては、例えばレーザ光を使って感度調整用抵抗素子を切断する、いわゆるレーザトリミング方法があるが、この方法はレーザ光を使用する必要があり製造コストが高価になる。また、可変抵抗等を備えて機械的ボリウムによって検出感度の調整を行う方法もあるが、この方法では、成形後に振動等によってボリウムの調整位置がずれで検出感度が変動してしまうという問題が生じ得る。
これに対して、本構成によれば、ツェナダイオードD1〜D3に対して短絡用電流を印加することで検出感度調整を行う構成であるから、安価な製造コストで安定して感度調整を行うことができる。
【0037】
(4)接続端子部34にて、信号ケーブル32の接続部と、調整操作部とを共有化することで近接センサ10の小型化が可能になる。
【0038】
<実施形態2>
図8は実施形態2を示す。前記実施形態との相違は、感度調整回路の回路構成にあり、その他の点は前記実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0039】
図8に示すように、4つの感度調整用抵抗R1〜R4が、発振回路14とグランド端子21との間に並列接続されている。また、各感度調整用抵抗R1〜R4には、グランド端子21側(低電位側)にヒューズ素子H1〜H4(本発明の「無効化手段(開放手段)」に相当)がそれぞれ直列接続されている。そして、電源端子20と、各感度調整用抵抗R1(R2、R3、R4)及び各ヒューズ素子H1(H2、H3、H4)の接続点との間には、それぞれに対応してスイッチ素子S1(S2、S3、S4)が接続されている。各スイッチ素子S1〜S4の制御端子は、シフトレジスタ50の出力T1〜T4に接続され、このシフトレジスタ50によって各スイッチ素子S1〜S4がオン動作され、それに直列接続された各ヒューズ素子H1〜H4に高電流を流して開放させて、対応する各感度調整用抵抗R1〜R4を無効化させるのである。
このような構成であっても、上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0040】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、検出センサとして近接センサ10を例に挙げて説明したが。これに限らず、例えば超音波センサなどであってもよい。
【0041】
(2)また、検出感度調整としては、上述したレーザトリミング方法や、可変抵抗による機械的ボリウムによる方法を採用してもよい。この場合、本発明の調整操作部は、前者の場合はレーザ光によって切断(トリミング)される感度調整用抵抗であり、後者の場合は可変抵抗器を操作するための操作部となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態1に係る近接センサのブロック図
【図2】感度調整回路の回路図
【図3】近接センサの上面図
【図4】近接センサの底面図
【図5】成形前の回路基板を示す側面図
【図6】一次成形後の回路基板を示す側面図
【図7】二次成形後の回路基板を示す側面図
【図8】実施形態2の感度調整回路の回路図
【図9】従来の近接センサの断面図
【符号の説明】
【0043】
10…近接センサ(検出センサ)
11…検出コイル(検出部)
16…検出用発光素子(動作表示部)
18…安定確認用発光素子(動作表示部)
19…感度調整回路
32…信号ケーブル
34…接続端子部(調整操作部)
D1〜D3…ツェナダイオード(短絡手段)
H1〜H4…ヒューズ素子(開放手段)
R1〜R4…感度調整用抵抗(感度調整用インピーダンス素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物の検出状態に応じた検出動作を行うとともにその検出感度が調整可能とされた検出部と、
前記検出部の動作状態に応じた発光動作を行う動作表示部と、
前記検出感度の調整操作を行う調整操作部とを備える検出センサにおいて、
少なくとも前記動作表示部及び前記調整操作部を除いた部分が、その部分を覆うように非光透過性樹脂で成形され、
前記動作表示部及び前記調整操作部を含み、かつ、前記非光透過性樹脂で成形されない部分が、その部分を覆うように光透過性樹脂で成形されていることを特徴とする検出センサ。
【請求項2】
前記光透過性樹脂は、光拡散性を有する樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の検出センサ。
【請求項3】
前記検出部は、その検出感度を決定する複数の感度調整用インピーダンス素子と、それら複数の感度調整用インピーダンス素子それぞれに対応して設けられ、外部から信号を受けることで前記各感度調整用インピーダンス素子を無効化させる複数の無効化手段と、を備えて構成され、
前記調整操作部は、前記各無効化手段に対して前記信号を外部から供給するための接続端子部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の検出センサ。
【請求項4】
前記複数の感度調整用インピーダンス素子は直列接続され、前記複数の無効化手段は、それぞれに対応する前記各感度調整用インピーダンス素子に対して並列接続されかつカソードが高電位側に接続されアノードが低電位側に接続され短絡用電流を受けることで短絡して前記各感度調整用インピーダンス素子を無効化させる複数のツェナダイオードであることを特徴とする請求項3に記載の検出センサ。
【請求項5】
前記調整操作部は、外部機器と接続される信号ケーブルが前記接続端子部に接続された状態で前記光透過性樹脂で成形されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の検出センサ。
【請求項6】
前記検出部は、検出コイルと、その検出コイルを発振要素とする発振回路と、当該発振回路の発振出力に基づき前記被検出物の検出動作を行う検出回路とを備えて構成され、
少なくとも前記検出コイルを覆うように前記非光透過性樹脂で成形されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の検出センサ。
【請求項7】
被検出物の近接状態又は前記被検出物の検出の有無に応じた検出動作を行うとともにその検出感度が調整可能とされた検出部と、
前記検出部の動作状態に応じた発光動作を行う動作表示部と、
前記検出感度の調整動作をさせるための調整操作部とを備える検出センサの製造方法において、
前記動作表示部及び前記調整操作部を除いた部分を覆うように非光透過性樹脂で成形する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記調整操作部にて前記検出感度の調整を行う第2工程と、
前記第2工程の後に、前記動作表示部及び前記調整操作部の両部分を覆うように同一の光透過性樹脂で同時に成形する第3工程とを含むことを特徴とする検出センサの製造方法。
【請求項8】
前記検出部は、その検出感度を決定する複数の感度調整用インピーダンス素子と、それら複数の感度調整用インピーダンス素子それぞれに対応して設けられ、外部からの信号を受けることで前記各感度調整用インピーダンス素子を無効化させる複数の無効化手段と、を備えて構成され、
前記調整操作部は、前記各無効化手段に対して前記信号を外部から供給するための接続端子部で構成され、
前記第2工程では、前記入力端子部に前記信号を与えることで前記検出感度の調整を行うことを特徴とする請求項7に記載の検出センサの製造方法。
【請求項9】
前記複数の感度調整用インピーダンス素子は直列接続され、前記複数の無効化手段は、それぞれに対応する前記各感度調整用インピーダンス素子に対して並列接続されかつカソードが高電位側に接続されアノードが低電位側に接続され短絡用電流を受けることで短絡して前記各感度調整用インピーダンス素子を無効化させる複数のツェナダイオードであることを特徴とする請求項8に記載の検出センサの製造方法。
【請求項10】
前記第2工程後に、前記入力端子部に信号ケーブルを電気的に接続し、この状態で前記第3工程を行うことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の検出センサの製造方法。
【請求項11】
前記検出部は、検出コイルと、その検出コイルを発振要素とする発振回路と、当該発振回路の発振出力に基づき前記被検出物の検出動作を行う検出回路とを備えて構成され、
前記第1工程では、少なくとも前記検出コイルを覆うように前記非光透過性樹脂で成形することを特徴とする請求項7〜請求項10のいずれかに記載の検出センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−73282(P2006−73282A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253498(P2004−253498)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】