説明

検査装置及び検査方法

【課題】検査体に電磁波を照射して、検査体構造の透過画像あるいは反射画像を得る検査装置に関し、検査体本体と透過率あるいは反射率が異なる構造や内部欠陥を非破壊に行なうための装置を提供する。
【解決手段】タンネット等のダイオード発振器から発生される概ね10GHzから1000GHz(1THz)の電磁波を、発振周波数や偏波面等を選択することが出来る平面アンテナへ給電して第一の共振を得て、高純度シリコン等により形成される半球型誘電体共振器により第二の共振を得ると共に、発生された電磁波を集光することによって照射する電磁波の強度を高め、更に検査体に照射する前の電磁波の一部を参照信号として得て照射電磁波の変動をキャンセルすることで検査の信頼性を高め、検査体表面に適切なインピーダンス整合膜を検査装置側に配置することで検査体表面からの電磁波反射を抑制する手段を講じ、検査体の透過あるいは反射画像の明瞭化を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査体に電磁波を照射して、検査体構造の透過画像あるいは反射画像を得る検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年その広範な応用が期待されているテラヘルツ電磁波は、電波と光の中間周波数領域に亘り、電波と光の両方の性質を併せ持つ。周波数では1012Hz領域であり、波長で言えば100ミクロン領域の電磁波は、非極性物質に対する電波の良好な透過性と、光の直進性及び幾何光学的取り扱いが可能という特徴がある。そして水等の極性物質には強い吸収・反射特性を示す。電波の性質として金属には反射される。このテラヘルツ周波数領域には、複数の分子間結合に関わる特有の骨格振動や水素結合のような分子間の弱い結合振動周波数があり、指紋スペクトルとしてそれを検出することで、生体関連物質や医薬品等の検出や劣化あるいは結晶多形の検出が可能となる。その特有の吸収や反射を利用して検査体の画像を得ることで、検査体の分布や内部構造を知る事が出来る。これが広範な応用が期待される所以である。
【0003】
広範な応用の中に、非極性物への高い透過性を生かしたコンクリート等の建造物検査がある。セメント・コンクリートの起源は遠くエジプト・ローマ時代まで遡るから、その研究は数多くそして歴史も永い。科学的な手法による研究は、赤外分光やカロリーメトリ的手法等によって行なわれてきた。その結果、微視的なセメント・骨材水和反応過程の解明と強度形成過程が解明され、永く多くの集積されたデータに基づいて経験的に強度・劣化の状況が把握されて、充分な強度を持つ工程管理がなされた建造物が作成されてきたわけである。しかし、近年その経験則が脅かされる事態が多く発生している。その事態を受けて、世界的に強度劣化調査が行なわれている。しかしその手法は、人体に危険なX線やγ線あるいは中性子線を用いた透視や、コア抜きによる破壊的な手法によっているのが現状である。またコンクリート構造物中の鉄筋構造は、簡便には高周波誘導電流法により、その場所を特定することが出来る。これは安価であり操作も容易である。しかし更に厳密な鉄筋の二次元的構造を把握するためには、X線やγ線といった放射線源を用いた方法が適用されている。これは人体に有害であり、特殊資格者が必要で厳密な現場養生を求められ、作業性が悪い。このような背景を受けて、非破壊で建造物欠陥あるいは劣化の程度を把握するニーズは大変高まっている。また、木材は優れた耐久性、調湿性、見た目の美しさなどの理由から、古くから様々な製品に加工され、現在でも建造物や家具などの材料として広く利用されている。建築物へ木材を利用する際、白蟻などによる食害や乾燥不足による狂い・割れ・腐朽などの発生が問題であるが、木材内部に存在する欠陥を目視によって発見することは非常に困難である。社会基盤の安全・安心の観点からも、木材内部の欠陥検出や含水率測定を非破壊で精度良く行う方法が求められている。従来、木材の欠陥検出・含水率測定には超音波またはX線を利用した探傷装置や電気抵抗式および高周波容量式水分計などが利用されているが、安全性や精度などの問題、構造物に組み込まれた木材には適用し難いという欠点もある。そこで小型テラヘルツ光源であるタンネットを用いた小型軽量の検査装置が提案されている
【特許文献1】特開2007−132915
【特許文献2】特開2006−145513
【特許文献3】特開2007−17419
テラヘルツ電磁波はX線等の電離放射線と異なり人体に無害で、安全に検査を行なうことが出来る。検査結果はイメージングで得られるから、熟練や経験を要しない。しかしこれらの検査装置では次の三つの問題点があった。
【0004】
第一の問題点は、タンネット発振器が空洞共振器で構成されていることである。検査精度を高めるために電磁波周波数を高くしていくと、それにつれて空洞共振器の機械加工精度も高く要求される。50GHzの周波数では波長6mmであり、機械加工精度はその1/100程度の0.06mm(60ミクロン)以下であるが、周波数300GHzでは波長1mm、機械加工精度は少なくとも10ミクロン以下、1THzでは波長300ミクロンで、加工精度は3ミクロン以下となり、機械加工精度が共振器のQを劣化させることになる。周波数が高くなるにつれてこの影響は益々深刻となる。加えて、従来の空洞共振器からホーンアンテナを経て取り出されたテラヘルツ電磁波は、その偏波面が回転し特定の偏波を用いるためにはワイヤーグリッド偏光子等を用いる必要があって、照射出力に損失が生じる。
【0005】
第二の問題点は、タンネット発振器が制御ループが無いオープンループの形式であることである。タンネットデバイスは逆バイアストンネル注入キャリアの走行時間効果発振素子であるから、雪崩注入を用いたインパットデバイス等と異なり、負の温度係数を持つため、注入電流の暴走は起こりにくいが、電磁波出力の微妙な変動があり、発振器出力のフィードバックループ無しでイメージングに用いると、電磁波の透過強度あるいは反射強度に、検査体構造の差異を反映しないイメージを示す場合がある欠点があった。
【0006】
第三の問題点は、タンネットデバイスの放熱構造である。タンネットデバイスは、他のテラヘルツ半導体光源であるQCL等と違って室温で動作することが特徴であるが、その注入直流電力は単位面積当たり、時に6x10Wcm−2にもなり、しばしば故障や特性劣化の原因ともなる。そのため、タンネットデバイスのアセンブリに当たっては、接合側を放熱構造側へボンディングし、熱伝導率が高いダイヤモンドヒートシンク等を用いてデバイス接合から放熱しているが、これが特性を制限している欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、機械加工精度が共振器性能を制限する第一課題と、タンネット発振器出力の変動がある第二の課題と、タンネットデバイスの放熱が自然放熱では不十分である第三の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では機械加工精度を要しないリソグラフィー工程で形成することが出来る平面アンテナに実装したタンネット発振器を構成することで第一の課題を解決する。加えて平面アンテナ構造では設計により電磁波の偏波面を決定することが出来、損失が多い偏光子を用いることなく所望の偏光面を持ったテラヘルツ電磁波を照射することが出来る。更に高純度シリコン半球レンズ等による二重共振と集光共振器構造により、高出力化と高Q化が実現できる。
【0009】
第二の課題を解決するために、本発明では適切な透過率を持つハーフミラー等からの反射電磁波をモニターすることによって、検査体に照射されるテラヘルツ電磁波の強度を把握し、取得されるイメージング画像変動を補正する。
【0010】
第三の課題を解決するために、本発明ではタンネットデバイスをペルチェ素子などの小型である能動冷却デバイスを用いて積極的に放熱する。この構造は従来の空洞共振器構造では適用しがたく、平面アンテナ構造を採用する本発明により可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の装置構成と方法により、第一の課題が解決されることにより、高周波テラヘルツ電磁波領域まで平面アンテナの材料系とパターン設計で決めることが出来る周波数の電磁波を高出力で得ることが出来て、明瞭な検査体イメージングを得る効果がある。
【0012】
また第二の課題が本発明により解決されることで、誤謬が無い正確な検査体イメージング画像を得る効果がある。
【0013】
第三の課題が本発明により解決されることで、安定に動作する検査装置を構成する効果がある。この能動的な放熱によってタンネット接合部温度が低下し、安定したデバイス動作が得られると同時に、タンネットデバイスの特性から動作電圧の低電圧化が可能となるので、低消費電力で高いテラヘルツ電磁波出力を得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0014】
本発明の検査装置に用いたパッチ型平面アンテナを実装したタンネット発振器構造を図1に示した。平面アンテナはパッチアンテナに限定されることなく、スロットアンテナや他の平面アンテナ構造でも良い。パッチアンテナは石英やアルミナあるいはジルコニア等の絶縁基板4上に、フォトリソグラフィーによりアンテナパターン1と直流バイアス給電パターン2を作成して構成している。直流バイアス給電パターン2からアンテナパターンへは、電源への電磁波の輻射を防ぐため高インピーダンスチョークを通じてタンネットダイオード9へ直流バイアスを給電している。アンテナパターンは、インピーダンス整合のためのスタブやλ/4インピーダンス変換部分などを含む。長辺側が電磁波の放射端であり、短辺側が電磁波の非放射端である。0。2THzで50Ωインピーダンス整合で設計した場合、照射端長さは約300ミクロン、非放射端長さは約210ミクロンとなり、0。2THzでZ/Zo(50Ω)=0。12が得られるので低VSWRの良好な発振特性が得られる。
【0015】
タンネットダイオード9は放熱のため、熱伝導率が高いダイヤモンドやチッカアルミニウム等からなるヒートシンク6上にマウントされるが、ヒートシンクはその両面に金等からなる金属層5を形成され、タンネットダイオード9との熱的密着性を高めている。金属層5はタンネットダイオードをボンディングするために3ミクロン内外の比較的厚い層を用いている。
【0016】
5,6,9からなるヒートシンク上のタンネットダイオードと、1,2,4からなる平面アンテナは、高導電率で高熱伝導率の金属ブロック8上にアセンブリされる。金属ブロックは更に放熱のためペルチェ等の電子的冷却素子7に装着されている。電子的冷却素子7へ給電することにより、タンネットダイオード9からの熱は、より効率的に放熱され、その結果テラヘルツ電磁波発生の効率が高まり、タンネットダイオード9の劣化も無い。平面アンテナとタンネットダイオードは金等の配線3でボンディングされている。配線3はインダクタンス成分が小さく低抵抗とするため、リボン状の配線を用いている。
【0017】
ここでタンネットダイオードの構造を図2に示す。面方位{100}のnGaAs基板結晶13’上に第一のnGaAsバッファ層13を50nmエピタキシャル成長させ、その上に高純度nGaAs層12を所望の厚さエピタキシャル成長する。nGaAs層12は走行領域である。更に第二のnGaAs層11とpGaAs層10をエピタキシャル成長させた。ダイオード直列抵抗を低減するためnGaAs基板結晶を5乃至10ミクロン程度まで薄膜化する。その後、図に示されていない金属電極を、nGaAs基板結晶とpGaAs層に形成し、タンネットダイオード構造とする。pGaAs層10に対する金属電極としては、Ti/Pt/Au等の低接触抵抗率を示し耐熱性に優れた電極材料を用いる。薄膜化されたnGaAs基板結晶に対する金属電極としては、AuGe/Ni/Au等の低接触抵抗率電極材料を用いる。電極形成後に所望の形状にダイシングした後、ダイオード寄生容量を低減するため5乃至30ミクロンφ程度まで接合面積を減少させる。第二のnGaAs層11とpGaAs層10がトンネル接合であり、逆バイアスでトンネル注入された電子がnGaAs層走行領域12を伝導するときに生じる走行時間効果により、負性抵抗を生じることでテラヘルツ電磁波が発生する。nGaAs層11とpGaAs層10からなるトンネル接合は、ゼロバイアス電圧でnGaAs層11が完全に空乏化するようにシートキャリア密度を設計した時、最も効率よくトンネル注入が行なわれる。第一のnGaAsバッファ層13は基板結晶13’からの欠陥の伝播を防止する目的で形成されるが、結晶品質が充分保障される分子層エピタキシャル成長法等のエピタキシャル成長法を採用した場合には無くてもよい。また、タンネットダイオードはGaAs半導体である必要は無く、禁制帯幅が小さくトンネル注入効率が高いGeやGaSb半導体等でも良い。更に熱伝導率の高さと禁制帯幅の観点からSi半導体で形成することも良い。本実施例では結晶面方位は{100}であるが、{100}に限られることは無い。このように形成されたタンネットダイオードが図1の9のように平面アンテナ14に装着される。
【0018】
図3に示すように、平面アンテナ14に装着されたタンネットダイオードは、更に例えば高純度シリコン等のテラヘルツ電磁波の吸収が少なく屈折率が高い材料で形成された半球状レンズ15に装着される。シリコンを用いた場合、
0。2THz帯のタンネット発振器では半球状レンズの半径は大略3mm程度を用いる。平面アンテナ14においてタンネットダイオードは第一の共振器を形成し、シリコン半球レンズ15内で第二の共振器を形成する。この二段の共振器構造によって、高出力で高いQのタンネット発振器が構成される。放射されるテラヘルツ電磁波は平面アンテナに対してほぼ鉛直方向の平行光となり、放射密度が高い。
【0019】
このように構成されたタンネット発振器を用いて本発明の検査装置が構成される。しかしテラヘルツ電磁波発生源はタンネットダイオードに限らない。タンネットダイオードは室温動作で高周波数まで発振可能で動作電圧も低く雑音も小さい特徴があるが、その他ガンダイオードあるいはインパットダイオード、ミッタントダイオード、共鳴トンネルダイオード、量子カスケートレーザダイオード等でも良い。図4に本発明の検査装置の構成を示す。タンネット発振器20から放射されたテラヘルツ電磁波ビーム27は、例えばテラヘルツ電磁波に対して高い透過率を持つ高純度シリコン等で作られるテラヘルツ用ビームスプリッター26を通し、更に試験体16の任意の深さに焦点を結ぶための例えばフレネルレンズ等の収束光学系29を通じて試験体16内部に照射される。試験体16内部には、例えばセメント構造体内部の空洞欠陥や鉄筋あるいは水の浸潤部、または水和物形成不良等の検査対象となる欠陥部17がある。ビームスプリッター26を通るテラヘルツ電磁波27の一部は、ビームスプリッター26で反射され、反射テラヘルツ電磁波25を生じるが、これを検出器23で計測し、試験体16に照射されるテラヘルツ電磁波の強度変動をモニターする。一方試験体16中の構造物欠陥17から反射あるいは散乱されたテラヘルツ電磁波28は、再び集光光学系29により集束されて増強された後、ビームスプリッター26で反射され、反射波30を生じて、検出器24により計測される。照射電磁波強度モニターの検出器23と欠陥からの反射・散乱電磁波強度測定用の検出器24は同時計測され、その電磁波強度信号は計測制御装置18で信号処理されて試験体16への照射電磁波27の強度変動をキャンセルする。そのため正確な構造欠陥17の検出が可能となる。
【0020】
これらタンネット発振器20、検出器23及び24、ビームスプリッター26集束光学系29は一体に構成され、試験体16上を走査するXY走査駆動装置21,22に装着される。XY走査駆動装置21,22は同時にZ方向駆動も可能であり、試験体16内部への照射テラヘルツビーム27の集束深度を変化することが出来る。Z方向駆動可能なXY走査駆動装置21,22は走査制御装置19で制御され、計測制御装置18からの測定シーケンスに従って駆動される。
【実施例2】
【0021】
図5に比較的試験体が小さい場合の検査装置と方法を示す。試験体が小さい場合は、試験体自身をXYZ移動機構31で走査することによって検査を行なう装置構成としている。この場合、試験体はXYZ移動機構31上に設置される。XYZ移動機構31は、計測制御装置18に制御された位置制御装置32によって走査され、試験体16中の構造欠陥17のイメージングを得る。その他の構成要素は同じである。
【実施例3】
【0022】
テラヘルツ電磁波を絶縁体の試験体へ入射する場合、空気と試験体の誘電率や消衰係数の相違、即ち、屈折率の相違によって、検査体表面で反射が起こり、検査体内部へのテラヘルツ電磁波の浸透強度が減衰する。その場合検査体表面に電磁波とインピーダンス整合するような誘電体物質があると、有効に表面反射波を抑制でき、検査体内部へテラヘルツ電磁波を浸透することが出来る。
【0023】
検査体は導電率が極めて小さなコンクリートや木材などの絶縁物に近い。入射媒質(通常空気)、検査体上に存在するインピーダンス整合膜そして検査体の屈折率をそれぞれ、n,n,nとする。テラヘルツ電磁波が厚さdのインピーダンス整合膜に垂直に入射する場合を考えるが、その場合、インピーダンス整合膜の特性マトリックスMは
【0024】

となる。但し、ここで
【0025】
δ=(2π/λ)nd
であり、テラヘルツ電磁波の位相のずれである。λはテラヘルツ電磁波の波長である。その膜系の特性マトリックスは
【0026】

で表される。するとフレネルの反射係数ρと反射率Rは
【0027】

【0028】

となるので反射率がゼロになるためには、Rの分子がゼロになる条件、つまり
【0029】
11−n22=(n−n)のcosδ=0
かつ
【0030】

が求められる。この条件が充たされるとき、電磁波の反射がゼロとなり、検査体内部への電磁波透過強度が最大となる。一般に、検査体の屈折率は周囲環境(通常空気)の屈折率と違うので、n≠nだから
【0031】

これをインピーダンス整合の位相条件という。更に、この条件の元でsinδ=±1となるので、結局、
【0032】

が得られる。これをインピーダンス整合の振幅条件という。本発明の第三の実施例では、この条件を充たす屈折率nと、膜厚dを有するインピーダンス整合膜を検査体との間に装着した検査装置を示す。
【0033】
図6にインピーダンス整合膜を装着した検査装置を示す。検査体33には建造物内部の欠陥17が存在する。テラヘルツ電磁波の発生源及び検出装置構成は実施例1及び2と同様の構成である。検査装置周囲には適切なインピーダンス整合位相条件と振幅条件を充たす可曉的な誘電体層35がローラー34に支えられ回転して、検査装置が検査体33表面上を移動して走査する構造である。テラヘルツ電磁波の発生源と検出装置そしてローラー34を含む走査装置は、図面に描かれていない計測制御装置と走査制御装置によって制御される。テラヘルツ照射ビーム27は、常に検査体33と接するインピーダンス整合膜35を通して検査体33へほぼ垂直照射されるので、位相条件と振幅条件を充たす屈折率と厚さを適切に選択することによって、検査体33表面での反射が抑制され、検査体33内部への入射強度が高まるから、検査体33内部のより深い場所に位置する欠陥17を検出することが出来る。
【実施例4】
【0034】
以上のような構成でコンクリート壁面に配置されたセラミックタイルの接着状態を検査した例を図7に示す。図7の右図は試験体の光学像であり、左図はテラヘルツ電磁波のイメージである。この例では検査体39の大きさが約12cm四方と小さいので、試験体を移動して走査する図5に示した実施例2の装置構成を用いた。検査体39は約12cm四方のコンクリート面に、約4cm四方のセラミックタイル41を外装タイル貼用有機系接着剤で9個固定したものである。テラヘルツ電磁波の反射イメージは、検査体39の中央部分の4cm四方のセラミックタイルについて行なった。試験体には故意に接着不良領域36を設けた。図7に示されるように、本発明の検査装置で、テラヘルツ電磁波の反射イメージを撮像すると、図7の左図に示されるように、接着不良領域36に対応する領域イメージ38が明瞭に認識された。また、接着良好領域37に対応してタイル接着良好領域イメージ40が明瞭に認識できた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の検査装置及び方法を用いることで、これまで検査することが出来なかったコンクリートや木材などによる構造物内部の構造や欠陥を、熟練した経験を要する事無く安全に効率よく検査することができる。また建造物の外壁やタイルの接着良否そしてトンネル内壁の密着状態等も熟練した経験を要する事無く安全に効率よく検査することが出来る。そして建造物強度劣化に大きな影響を及ぼす水の浸潤状態を検査することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】平面アンテナに実装されたタンネット発振器
【図2】タンネットダイオードの積層構造
【図3】半球レンズ型共振器に実装された平面アンテナ共振器
【図4】タンネット発振器を用いた検査装置の概略構成図
【図5】小型検査体用の検査装置の概略構成図
【図6】インピーダンス整合膜を備えた検査装置の概略構成図
【図7】タイルの接着状態を本検査装置で撮像したイメージ
【符号の説明】
【0037】
1...アンテナパターン
2...給電パターン
3...リボン状配線
4...絶縁基板
5...金属層
6...高熱伝導率ヒートシンク
7...電子的冷却素子
8...高伝導率・高熱伝導率金属ステム
9...タンネットダイオード素子
10...p+アノード層
11...n+トンネル障壁層
12...高純度走行層
13...n+バッファ層
13‘...n+基板結晶
14...平面アンテナ
15...半球状レンズ共振器
16...試験体
17...試験体の欠陥
18...計測制御装置
19...XYZ走査制御装置
20...テラヘルツ電磁波発振器
21...XYZ走査駆動装置
22...第二のXYZ走査駆動装置
23...参照用電磁波検出器
24...反射電磁波検出器
25...参照用反射電磁波ビーム
26...ビームスプリッター
27...照射電磁波ビーム
28...欠陥からの反射・散乱電磁波ビーム
29...集光装置
30...ビームスプリッターで反射された欠陥からの反射・散乱電磁波ビーム
31...検査体走査用XYZ駆動装置
32...検査体駆動制御装置
33...検査体
34...ローラー
35...インピーダンス整合膜
36...タイル接着不良領域
37...タイル接着良好領域
38...タイル接着不良領域イメージ像
39...タイル接着検査体
40...タイル接着良好領域イメージ像
41...タイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面アンテナ構造に実装したダイオード発振器からなる概ね10GHzから1000GHz(1THz)の広範囲の電磁波発生装置を用いて、前記電磁波の発生手段と前記発生電磁波の集光手段と電磁波の分割手段と、前記分割手段から反射される電磁波を検出する手段と、検査体から反射あるいは散乱される電磁波を検出する手段との組み合わせを一体構造となし、前記一体構造を前記検査体上を3次元的に走査して、前記検査体表面及び内部からの電磁波強度を測定して前記検査体の反射イメージを得ることにより、前記検査体の内部構造及び欠陥を画像化することを特徴とする電磁波を用いた構造物の検査装置及び方法。
【請求項2】
平面アンテナ構造に実装したダイオード発振器からなる概ね10GHzから1000GHz(1THz)の広範囲の電磁波発生装置を用いて、前記電磁波の発生手段と前記発生電磁波の集光手段と電磁波の分割手段と、前記分割手段から反射される電磁波を検出する手段と、検査体から反射あるいは散乱される電磁波を検出する手段との組み合わせを一体構造となし、前記検査体を3次元的に走査して、前記検査体表面及び内部からの電磁波強度を測定して前記検査体の反射イメージを得ることにより、前記検査体の内部構造及び欠陥を画像化することを特徴とする電磁波を用いた構造物の検査装置及び方法。
【請求項3】
請求項1記載の一体構造の少なくとも波長λの電磁波放射部分を囲むように可曉性の誘電体膜で覆い、前記誘電体膜は検査体表面と密着して移動し、前記

て、前記検査体表面及び内部からの電磁波強度を測定して前記検査体の反射イメージを得ることにより、前記検査体の内部構造及び欠陥を画像化することを特徴とする電磁波を用いた構造物の検査装置及び方法。
【請求項4】
前記平面アンテナ構造に実装するダイオード発振器が、タンネットダイオード、ガンダイオードあるいはインパットダイオード、ミッタントダイオード、共鳴トンネルダイオード、量子カスケートレーザダイオードのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3記載の電磁波を用いた構造物の検査装置及び方法。
【請求項5】
前記平面アンテナ構造に実装したダイオード発振器が半球状誘電体レンズからなる第二の発振器に実装されたことを特徴とする請求項1乃至3記載の電磁波を用いた構造物の検査装置及び方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−145312(P2009−145312A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341769(P2007−341769)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(506060708)株式会社テラヘルツ研究所 (10)
【Fターム(参考)】