説明

業務用加圧式炊飯装置

【課題】炊飯釜から排出される蒸気を、吸引装置を設けることなく屋外等の所定箇所に排出可能な業務用加圧式炊飯機を提供する。
【解決手段】上面に釜収納部を有する本体2と、該本体に2出し入れ自在であって、被調理物を入れる炊飯釜3と、該炊飯釜を加熱する加熱手段と、前記炊飯釜の開口部を覆い、炊飯時に炊飯釜内の蒸気を排出する1つ又は複数の蒸気抜け穴が設けられた蓋4と、前記炊飯釜3のフランジと該フランジの上に重ねられた前記蓋のフランジとを挟持して前記炊飯釜3を密封する密封手段5と、前記蒸気抜け穴から排出される蒸気を貯留するとともに、前記蒸気の一部を装置外へ排出する予備加圧室を内側に備えた排気フードとから構成し、前記予備加圧室に、前記蒸気抜け穴の開口総面積よりも小さい径の装置外へ連通する圧力規制管を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯工場、学校、病院等で用いられる業務用炊飯装置に関するもので、特に加圧式の炊飯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、業務用の炊飯装置において、特許文献1に記載されているように、炊飯釜内を大気圧を超える圧力に加圧して炊飯することが行われている。炊飯釜内を加圧して炊飯を行うためには、炊飯釜内で発生した蒸気を適切に釜外へ排出させるための蒸気排出機構が必要となる。特許文献1では、炊飯釜の蓋に蒸気抜け穴を設け、該蒸気抜け穴によって炊飯釜内で発生する蒸気が釜外へ排出するのを規制して炊飯釜内を加圧する構成とし、釜外へ流出した蒸気は、前記蒸気抜け穴の上方に位置する排気フードから排出される。
【0003】
特許文献1に記載の蒸気排出機構によれば、固定機構によって密封された炊飯釜内を容易に加圧することが可能であるが、釜外へ排出された蒸気を屋外等の所定箇所へ排出するために前記排気フードに連通した吸引装置を別途設ける必要があり、前記吸引装置を設けることによるイニシャルコストとランニングコストが必要になり、また、吸引装置を設けるスペースも必要であった。
【0004】
このため、業務用の加圧式炊飯装置において、炊飯釜から排出される蒸気を、吸引装置を設けることなく屋外等の所定箇所に排出可能とすることが強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−262821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点にかんがみ、炊飯釜から排出される蒸気を、吸引装置を設けることなく屋外等の所定箇所に排出可能な業務用加圧式炊飯機を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は業務用の加圧式炊飯装置において、上面に釜収納部を有する本体(2)と、該本体(2)に出し入れ自在であって、被調理物を入れる炊飯釜(3)と、該炊飯釜(3)の開口部を覆い、炊飯時に炊飯釜(3)内の蒸気を排出する1つ又は複数の蒸気抜け穴(21)が設けられた蓋(4)と、前記炊飯釜(3)のフランジ(25)と該フランジ(25)の上に重ねた前記蓋(4)のフランジ(24)とを挟持して前記炊飯釜(3)を密封する密封装置(5)と、炊飯時に前記蒸気抜け穴(21)の周囲に密接する排気フード(28)とを備え、該排気フード(28)には、前記蒸気抜け穴(21)から排出された蒸気を滞留させる予備加圧室(6)を設け、該予備加圧室(6)に、前記蒸気抜け穴(21)の開口総面積より小さい開口面積となる径の装置外へ連通する圧力規制管(33)を設ける、という技術的手段を講じた。
【0008】
また、前記蓋(4)に平面状の押し付け面(20)を設け、該押し付け面(20)の中心部に前記蒸気抜け穴(21)を配置し、前記排気フード(28)を前記押し付け面(20)に押し付けて密接させる、という技術的手段を講じた。
【0009】
さらに、前記炊飯釜(3)を丸釜とし、前記炊飯釜(3)及び前記蓋(4)の外周を同径とすることで、前記密封装置で確実に密封できる構造とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炊飯装置によれば、炊飯釜から排出される蒸気を屋外等の所定箇所に排出させるための排気フードが、前記炊飯釜の蓋に設けられた蒸気抜け穴を覆って前記蓋に密接しているので、前記蒸気抜け穴から排出された蒸気は前記排気フードと前記蓋との接触面から漏れ出すことがない。また、前記排気フードの内側に備えた予備加圧室には、装置外と連通する圧力規制管が設けられているが、前記圧力規制管の径は、前記蒸気抜け穴の開口総面積よりも小さい。このため、炊飯釜から排出された蒸気は、前記予備加圧室に圧縮されて滞留し、前記予備加圧室内は炊飯釜内と同じ圧力まで加圧される。そして、加圧された前記予備加圧室内の蒸気は、前記予備加圧室内の圧力により、前記圧力規制管を経由して装置外へ順次押し出されていく。このため、炊飯釜から排出された蒸気は、吸引装置を設けることなく、炊飯時に生じる炊飯釜内の圧力を利用して屋外等の所定箇所に排出させることが可能となる。
【0011】
また、炊飯時の炊飯釜内の圧力は、蓋に設けられた蒸気抜け穴のサイズによらず、前記排出フードに設けた圧力規制管の径のサイズに依存するので、前記圧力規制管の径を変更するだけで前記圧力を容易に変更できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態における炊飯装置1の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における炊飯装置1の上面図である。
【図3】炊飯装置1で使用する炊飯釜及び蓋の斜視図である。
【図4】炊飯装置1で使用する炊飯釜及び蓋の側面図である。
【図5】密封装置5を説明するための密封装置5の斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態における炊飯装置1の概略部分断面図である。
【図7】回動アーム8が待避位置に回動していることを示す図である。
【図8】回動手段37を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態における炊飯パターンを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の炊飯装置1を示す斜視図であり、図2は炊飯装置1の上面図である。図3及び4は、炊飯装置1で用いる炊飯釜3と、該炊飯釜3の開口部を覆うための蓋4を示した図である。
【0014】
炊飯装置1は、単独で一台の炊飯装置として使用することが可能であるが、例えば、特許文献1に記載されているような業務用炊飯装置における炊飯装置群を構成する複数の炊飯装置のうちの一つとして使用することも可能である。
【0015】
炊飯装置1は、炊飯釜3を加熱するための加熱手段及び炊飯釜3を収納する収納部を有する本体2から構成される。前記加熱手段は、種々のものを採用できるが、本発明では誘導加熱を用いており、本体2内部には加熱コイル、前記加熱コイルに高周波電流を流して炊飯釜3を電磁誘導作用により発熱させるインバータ、該インバータを制御するための制御装置等が設けられている。なお、図1及び2は、蓋4によって開口部が覆われた炊飯釜3が本体2の収納部に収納された状態を示している。
【0016】
本体2には、炊飯時に炊飯釜3と蓋4を密着させるための複数の密封装置5が配設されている。また、蓋4の蒸気抜け穴21から排出される蒸気を貯留するための予備加圧室6が設けられた排気フード28と、該排気フード28を昇降させるためのエアシリンダ7と、エアシリンダ7を水平方向に回動させるための回動アーム8が設けられている。
【0017】
図5は、前記密封装置5を説明するための密封装置5の斜視図である。密封装置5は、炊飯時に炊飯釜3の開口部を蓋4によって密封するために設けられている。符号9は、シリンダ取付台であって、本体2にネジ等で固定される。シリンダ取付台9の側壁10にはエアシリンダ11が取り付けられ、該エアシリンダ11の支持台14には、コの字状のブロック本体22がスペーサ15を挟んで取り付けられている。なお、シリンダ取付台9には、炊飯釜3を本体2の収納部に収納する際の位置決め手段となる回転自在な位置決めローラ23が設けられている。また、エアシリンダ11は、スピードコントローラ47が図示していないエアーコンプレッサに電磁弁を介して接続されている。
【0018】
ブロック本体22の前面の上下部には、炊飯釜3のフランジ25と蓋4のフランジ24とを挟持するための上クランプアーム12及び下クランプアーム13が設けられている。上クランプアーム12及び下クランプアーム13の先端部には、回転自在な転動ローラ16,17が水平方向に平行に取り付けられている。また、ブロック本体22は、エアシリンダ11の伸縮ロッド18により進退自在である。符号19は、ブロック本体22の進退時における回転を防止するための回転防止杵である。
【0019】
本発明では、図1や図2に示すように4つの密封装置5を炊飯釜4の外周に均等な間隔で配設しているが、4つに限定されるわけではなく、炊飯時の加圧条件により設置個数を増減すればよい。例えば、炊飯釜内を高圧力にする必要がある場合は密封装置5の設置個数を増やし、炊飯釜内の圧力をさほど高める必要がない場合は密封装置5の設置個数を減らせばよい。
【0020】
炊飯釜3は丸釜であって、炊飯釜3と蓋4とは同径である。蓋4の中央に設けられた押し付け面20はフラットな面(平面)を形成しており、図3の点線(符号E)で示した位置に後述のOリングが上方から圧接される。また、符号Eで示した点線の内側には1つ又は2個以上の貫通した蒸気抜け穴21が設けられている。なお、押し付け面20の材質を磁性体として、磁力によって蓋4を開閉可能とするのが好ましい。
【0021】
図6は、加圧炊飯時の炊飯装置1の部分断面図であって、炊飯釜3のフランジ25と蓋4のフランジ24とが、密封装置5の上クランプアーム12及び下クランプアーム13によって挟持されて密封されている状態を示している。
【0022】
フランジ24及び25を挟持する際は、エアシリンダ11によりブロック本体22が前方に進出し、上クランプアーム12及び下クランプアーム13の転動ローラ16,17が挟み込むようにそれぞれフランジ24及び25に圧接する。この圧接により炊飯釜3の上端部27が、蓋4のフランジ24の内側の位置に環状に取り付けられたパッキン26に圧接して炊飯釜が密封される構造となっている。したがって、フランジ25とフランジ26とは、接触していない。
【0023】
また、図6は、炊飯釜内の圧力を制御するための予備加圧室6を示している。予備加圧室6は、炊飯釜3内の圧力を調節するために設けられている。予備加圧室6は円柱状の排気フード28内に形成されており、該排気フード28は、エアシリンダ7によって昇降する。また、エアシリンダ7は、回動自在な回動アーム8に取り付けられており、スピードコントローラ48が図示しないエアーコンプレッサに電磁弁を介して接続されている。また、排気フード28は、支持台30を介してエアシリンダ7の伸縮ロッド29に取り付けられている。なお、符号31は回転防止杵であり、支持台30及び排気フード28が昇降する際に回転するのを防止するために設けられている。
【0024】
炊飯時、排気フード28はエアシリンダ7により蓋4の押し付け面20に押しつけられる。その際、排気フード28の底面に取り付けられている環状のOリング32は、平面状の押し付け面20に圧接される。
【0025】
炊飯時には、蒸気抜け穴21から予備加圧室6内に蒸気が流入し、流入した蒸気は、予備加圧室6の上方に設けられた圧力規制管33から装置外へ排出される。ところで、圧力規制管33の開口面積は、蒸気抜け穴21の開口総面積のよりも小さくなるように設計されているので、炊飯時の沸騰維持工程中には予備加圧室6内に流入した蒸気の一部しか装置外へ排出されず、排出されない蒸気は予備加圧室6内に圧縮されて貯留することになる。このため、予備加圧室6内の圧力は、徐々に上昇し、それに伴って炊飯釜3内の圧力も上昇することになる。
【0026】
なお、蒸気抜け穴21の開口総面積とは、蒸気抜け穴が1つだけ設けられている場合は、1つの蒸気抜け穴21の面積が開口総面積となる。また、複数個の蒸気抜け穴21が設けられている場合は、複数個の蒸気抜け穴21の面積の総和が開口総面積となる。このため、蒸気抜け穴21の径が圧力規制管33の径よりも小さい場合でも、複数個の前記蒸気抜け穴21を設けることで、前記蒸気抜け穴21の開口総面積が前記圧力規制管33の開口面積よりも大きくなる。
【0027】
符号34は、圧力規制管33と連通する蒸気排出管であり、排出弁35を経由して排出管49により蒸気を装置外の所定箇所へ排出させる構造としている。なお、蒸気排出管34の径は、スムーズに蒸気を排出させるために圧力規制管33の径よりも大きい。また、予備加圧室6内の圧力が異常に高くなった場合に備え、安全弁36を設けている。
【0028】
ところで、本発明の実施の形態では、圧力規制管33の径は3mm程度であり、予備加圧室6は直径が52mmで高さが17mmの円柱状に形成している。なお、予備加圧室6の形状は円柱状に限定されるわけではなく、多角柱状、多角錐状、円錐状等にしてもよい。また、蒸気抜け穴21の直径は5mm程度である。予備加圧室6の直径は、設けられている複数の蒸気抜け穴21の全てを覆える程度にする必要がある。
【0029】
圧力規制管33の径は、3mmに限定されるわけではなく、炊飯条件に合わせ、適宜試験的に求めるようにすればよい。また、圧力規制管33の長さは、短い方が好ましく、10mm以下、より望ましくは6mm以下であり、本発明の実施の形態では4mmとしている。圧力規制管33の長さが短い方が好ましいのは、炊飯釜3内から発生する蒸気に、おねばや調味料等の不純物が混ざっているためであり、これら不純物により圧力規制管33が詰まるおそれがあるからである。
【0030】
排気フード28がエアシリンダ7を介して先端部に取り付けられている回動アーム8は、後述する回動手段37によって水平に旋回できる構成になっており、炊飯時には、排気フード28が蓋4の中央に設けられている蒸気抜け穴21の真上にくる位置に回動し、炊飯釜3の出し入れの際には、図7に示すように待避位置に回動する。図7においては、エアシリンダ11の伸縮ロッド18が戻された状態であり、転動ローラ16は蓋4のフランジ24に接触していない。
【0031】
回動手段37は、本体2の上面40に立接するシャフトカバー38と、該シャフトカバー38内にベアリングを介して回転自在に配設されたシャフト39と、該シャフト39の下端と本体2内側で接続されるエアシリンダ41とから構成される。
【0032】
図8は、回動手段37を説明するための図であって、回動手段37を炊飯装置1の下方から示した図である。シャフトカバー38及びシャフト39は、本体2内に延設されており、シャフトカバー38は、本体2の内側に設けられた固定プレート42に固定されている。エアシリンダ41は、一方の端を固定軸43に回転自在に軸着され、他端となるロッド44の先端は、ピン45を介して屈曲アーム46と接続している。該屈曲アーム46の他端はシャフト39の下端に固定している。回動手段37はこのように構成されているため、エアシリンダ41のロッド44を進退させると、ピン45が支点軸となって、シャフト39が回転し、回動アーム8が水平に回転する。なお、回動手段37にはモータ等の回転手段を用いてもよい。
【0033】
次に、上記構成における炊飯装置1の作用を述べる。
【0034】
まず、炊飯釜3内に適量の米及び炊飯水をそれぞれ投入し、該炊飯釜3の開口部を蓋4で覆って浸漬処理を行う。浸漬処理後、炊飯釜3を炊飯装置1の釜収納部に搬送する。なお、炊飯装置1の釜収納部に炊飯釜3を収納した状態で浸漬処理を行ってもよいし、空の炊飯釜を炊飯装置1に搬送して、搬送後の炊飯釜3内に米及び炊飯水を投入するようにしてもよい。また、浸漬後には炊飯釜3内を撹拌する撹拌工程を設けるのが望ましく、炊飯する米飯の種類によっては、調味料や具材を投入することもある。
【0035】
炊飯装置1に炊飯釜3が搬送されると、複数の密封装置5が作動し、転動ローラ16,17によって炊飯釜3が蓋4で密封される。炊飯釜3の密封は、図示しない制御装置60からの信号により、エアシリンダ11の伸縮ロッド18が伸び、伸縮ロッド18の先端に設けられた転動ローラ16及び17で、炊飯釜3のフランジ25と該フランジ25の上に重ねた蓋4のフランジ24とを挟持して行う。
【0036】
次に、待避位置の回動アーム8が回動手段37によって水平に旋回し、回動アーム8の先端部に取り付けられた排気フード28が、蓋4の押し付け面20の真上に移動する。移動後、エアシリンダ7の伸縮ロッド29が下に向かって伸び、排気フード28の底面が押し付け面20に押しつけられる。
【0037】
そして、排気フード28が押し付け面20に押しつけられた状態のままで加熱手段による炊飯釜3の加熱が開始される。該加熱は、あらかじめ設定された炊飯パターンに沿って行われる。図9は、本実施例における炊飯装置1の炊飯パターンを示した図であって、横軸に時間、縦軸に温度(℃)及び圧力(atm)をとっており、炊飯時の炊飯釜3内の圧力、炊飯釜3の底面の温度及び加熱パターンを示している。
【0038】
本発明の実施の形態では、7kgの白米を、20℃の水温で70分間浸漬してから炊飯している。このため、炊飯開始時の釜底温度は20℃となっている。図9に示しているように、炊飯開始後、最初の7分間が炊き上げ工程で、7分から12分頃までが沸騰維持工程、そして、12分から17分までが炊き上げ工程となる。
【0039】
炊飯開始後の炊き上げ工程では、釜底の温度は100℃付近まで急激に上昇する。この間、炊飯釜内に蒸気はほとんど発生しないため、釜内圧力に変化はない。釜底温度が100度付近に達し、炊飯釜3内の炊飯水が沸騰すると、蒸気が発生し、蒸気の一部が蓋4の押し付け面20に設けられた蒸気抜け穴21から予備加圧室6に流入する。
【0040】
予備加圧室6に流入した蒸気は、圧力規制管33を経由して装置外へ排出されるが、蒸気抜け穴21の開口総面積(径)に比べ、圧力規制管33の開口面積(径)は狭い構造としている。このため、予備加圧室6に流入する蒸気の量に比べ、予備加圧室6から排出される蒸気の量が小量となるので、炊飯釜3から予備加圧室6に流入した蒸気が予備加圧室6内に滞留する。沸騰維持工程中は、炊飯釜3内で蒸気が発生し続けるので、それに伴い予備加圧室6内に流入して滞留する蒸気の量が増加し、その結果として、予備加圧室6内の圧力は大気圧を超えて徐々に上昇し、それに伴い、炊飯釜3内の圧力も上昇する。沸騰維持工程中は、釜内圧力は上昇し続け、本発明の実施の形態では最終的に1.24atmまで上昇する。
【0041】
沸騰維持工程で炊飯釜3内の炊飯水は、白米に吸収されるか、蒸発して蒸気となるので、沸騰維持工程終了時には、液状としての炊飯水はほぼ無くなる。このため、次工程である炊き上げ工程では、釜底温度が100℃を超える。しかし、液状の炊飯水が存在しないため新たに発生する蒸気が無くなり、その一方で、炊飯釜3内の蒸気は、排気フード28に設けられた予備加圧室6の圧力規制管33から装置外へ排出されるので、釜内圧力は徐々に降下する。
【0042】
本発明では、炊飯時に予備加圧室内が大気圧を超えるまで加圧されるので、この間に炊飯釜3内から排出された蒸気は、予備加圧室内の圧力により、圧力規制管33、蒸気排出管34、排出弁35及び排出管49を経由して装置外へ排出される。このため、前記蒸気を屋外等の所定箇所に排出するために吸引装置を設ける必要がない。
【0043】
また、加熱パターン(ヒートサイクル)について説明すると、炊飯開始から8分30秒までは、加熱手段の誘導加熱(IH)による出力を90%とし、8分30秒から15分までは同出力を40%とし、15分後は同出力を0%(停止)としている。15分後に出力を0%にしたのは、釜底温度が設定値である130℃に達したためである。このため、出力を0%とした後の釜底温度は低下している。なお、釜内圧力が、炊飯開始から約9分後に降下しているのは、加熱パターンによって誘導加熱の出力を下げたことに一時的に応答しているからである。
【0044】
なお、排気フード28は押し付け面20に押しつけられており、かつ、底面に環状のOリング32が設けられているので、排気フード28と押し付け面20との接触面から蒸気が洩れることはない。また、蒸気漏れが起こらない程度に排気フード20を押しつける押圧力が必要であるので、エアシリンダ7には、前記押圧力を考慮したものを使用する必要がある。
【0045】
炊き上げ工程後、蒸らし等の炊飯後工程が行われる。蒸らしは、炊飯装置1に収納された状態で行ってもよいが、一般的に、炊飯装置から搬送されて別の場所で行われる。炊飯装置1から炊飯釜3を取り出す際は、まず、排気フード28をエアシリンダ7により上昇させてから、回動手段37により回動アーム8を待避位置まで移動させる。そして、蓋4の蒸気抜け穴21から炊飯釜3内に残存する蒸気を圧力規制管33による規制なしに釜外へ排出させ、炊飯釜3内の圧力が十分に低下してから、固定手段5による炊飯釜3の密封を解除するようにする。なお、排気フード28を上昇させてから前記解除を行うまでの時間は、10秒程度である。
【0046】
本発明によれば、炊飯釜3内で発生した蒸気は、排気フード28に設けられた予備加圧室6の圧力規制管33を経由しなければ装置外へ排出されないので、該圧力規制管33によって炊飯釜3内の圧力が調節されることになる。また、炊飯釜内を加圧する場合、目標とする米飯の品質にあわせて釜内圧力の高さを、圧力規制管33の径で調節すればよく、1.1〜1.4気圧の範囲で調節するようにすればよい。この調節は、圧力規制管33の径を変更するだけで行える。
【符号の説明】
【0047】
1 炊飯装置
2 本体
3 炊飯釜
4 蓋
5 密封装置
6 予備加圧室
7 エアシリンダ
8 回動アーム
9 シリンダ取付台
10 側壁
11 エアシリンダ
12 上クランプアーム
13 下クランプアーム
14 ブロック本体
15 スペーサ
16 転動ローラ
17 転動ローラ
18 伸縮ロッド
19 回転防止杵
20 押し付け面
21 蒸気抜け穴
22 ブロック本体
23 位置決めロール
24 フランジ
25 フランジ
26 パッキン
27 上端部
28 排気フード
29 伸縮ロッド
30 支持台
31 回転防止杵
32 Oリング
33 圧力規制管
34 蒸気排出管
35 排出弁
36 安全弁
37 回動手段
38 シャフトカバー
39 シャフト
41 エアシリンダ
42 固定プレート
43 固定軸
44 ロッド
45 ピン
46 屈曲アーム
47 スピードコントローラ
48 スピードコントローラ
49 排出管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に釜収納部を有する本体(2)と、
該本体(2)に出し入れ自在であって、被調理物を入れる炊飯釜(3)と、
該炊飯釜(3)の開口部を覆い、炊飯時に炊飯釜(3)内の蒸気を排出する1つ又は複数の蒸気抜け穴(21)が設けられた蓋(4)と、
前記炊飯釜(3)のフランジ(25)と該フランジ(25)の上に重ねた前記蓋(4)のフランジ(24)とを挟持して前記炊飯釜(3)を密封する密封装置(5)と、
炊飯時に前記蒸気抜け穴(21)の周囲に密接する排気フード(28)とを備え、
該排気フード(28)には、前記蒸気抜け穴(21)から排出された蒸気を滞留させる予備加圧室(6)を設け、該予備加圧室(6)に、前記蒸気抜け穴(21)の開口総面積より小さい面積となる径の装置外へ連通する圧力規制管(33)を設けたことを特徴とする業務用加圧式炊飯装置。
【請求項2】
前記蓋(4)に平面状の押し付け面(20)を設け、該押し付け面(20)の中心部に前記蒸気抜け穴(21)を配置し、前記排気フード(28)を前記押し付け面(20)に押し付けて密接させることを特徴とする請求項1に記載の業務用加圧式炊飯装置。
【請求項3】
前記炊飯釜(3)が丸釜であって、前記炊飯釜(3)及び前記蓋(4)の外周が同径であることを特徴とする請求項1又は2に記載の業務用加圧式炊飯装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−10914(P2012−10914A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149805(P2010−149805)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】