説明

極性基含有アリルモノマー共重合体の製造方法

【課題】ラジカル重合等他の重合様式では合成困難と考えられてきた、新規な構造を有し、種々の応用が可能な高分子量の極性基含有アリル共重合体、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】下記式1に代表される構造を有する周期表第10族金属錯体を触媒として用い、オレフィンと極性基を有するアリル化合物とを共重合することにより、分岐が少なく、分子末端に不飽和基を有する高分子量の極性基含有アリルモノマー共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性基含有アリルモノマー共重合体の製造方法及びその方法により得られる共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
非極性モノマーであるエチレンやプロピレンなどのオレフィンと極性基を有するビニルモノマーとの共重合体は広く知られている。特にエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、エチレンとビニルアルコールとからなるランダム共重合体であり、エチレンと酢酸ビニルのラジカル共重合で得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することによって合成される。EVOHはその優れたガスバリア性を生かして、食品包装用途など広い分野で使用されている。
【0003】
ラジカル重合でエチレンを共重合させて得られる共重合体は、バックバイティング反応により短鎖分岐や長鎖分岐が生成することが広く知られている。例えばEVOHの場合、エチレン含有量約30モル%のEVOH中に約1モル%のアルキル分岐と約0.1〜0.2モル%のアセトキシル分岐が存在することが示されている(日本化学学会誌,11,1698(1977))。一般にポリマー鎖中に分岐が存在すると、結晶化度の低下などを招き、重合体の物性が変化することが知られている。
【0004】
アリル基を有するモノマーの重合はビニルモノマーと比べて難しく、その重合体は殆ど知られていない。その主な理由は、アリル基を有するモノマーをラジカル重合させた場合、モノマーへの退化的連鎖移動反応のためポリマーの生長反応が極めて遅く、重合度の低いオリゴマーしか得られなかったためである(Chem. Rev. 58, 808 (1958))。
【0005】
特開昭58−49792号公報には、炭化水素油組成物として、エチレン・酢酸アリル共重合体、エチレン・酢酸アリル・酢酸ビニル三元共重合体が開示されている。合成方法はラジカル重合法であり、実施例では、極限粘度で0.12dl/g程度の低分子量体が得られている。
【0006】
特表2005−514083号公報には、医療装置用コーティング材として、EVOHより高い疎水性を目的としたエチレン・アリルアルコール共重合体の合成が記載されている。合成方法は、アリルモノマーの重合によって直接重合体を得ると言う本発明の目的とは異なり、エチレンとアクリル酸のラジカル共重合の後、還元反応を行うことにより目的のポリマーを得ている。しかしこの方法では、重合体の還元反応にコストがかかり過ぎるという問題があった。また、ラジカル重合法で合成しているため、ポリマー骨格は分岐構造を有していると考えられる。
【0007】
ラジカル重合法とは異なり、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒などの配位重合法による極性基モノマーの共重合は、極性基が触媒毒になってしまうため一般の条件では難しい。米国特許第4423196号明細書(特許文献1)には、TiCl3型のチーグラー・ナッタ触媒を使用した重合で得られるプロピレンとアリルアルコールの共重合体が開示されている。アリルアルコールに対して等モルの有機アルミニウム化合物を使用し、アルコール部位を有機アルミニウムで保護することにより重合反応を進行させている。分子量分布に関する記述はないものの、アイソタクティック部分が98%であり、分子量分布及び組成分布が広い重合体であると考えられる。
【0008】
近年進展しつつあるシングルサイト触媒でも、エチレン、プロピレンなどの非極性ビニルモノマーと極性モノマーの重合が試みられている。
第4族金属錯体を用いた触媒は、従来、エチレンやプロピレンなどのモノマーに対して高い重合活性を有することが知られているが、極性基含有モノマーとの共重合も開示されている。第4族元素のメタロセン触媒を使用したエチレンと極性基含有モノマーとの共重合では、極性基含有モノマーの触媒への保護基の役割として、等モル以上の有機アルミニウムを使用する必要があった。その結果として有機アルミニウムへの連鎖移動反応による成長反応の停止が支配的となり、重合体の末端構造は飽和末端結合のみが観測され、β−水素脱離による末端二重結合が観測されなかった。この場合、過剰の有機アルミニウム使用によるコストアップ、極性基含有モノマー濃度を上げられないことにより極性基含有モノマーの共重合率が高くならない点、重合反応後の未反応モノマー回収のコストアップ等に繋がり、実用化に向けての問題点となっていた。
【0009】
特開2003−252930号公報(特許文献2)及びJ. Am. Chem. Soc., 124, 1176 (2002)(非特許文献1)には、特定の構造を有する第4族元素のメタロセン錯体を使用したオレフィン重合体主鎖のω位に2つの極性基を有するオレフィン重合体及び主鎖のω位と1つ以上の(ω−n)位(n≧1)に極性基を持つオレフィン重合体並びに製造方法が記載されている。重合体末端構造解析により、分子鎖末端は飽和結合のみであり、不飽和結合は存在しないことが確認されている。実施例に記載の、特定構造を有するジルコノセン触媒を用いたエチレンとアリルアルコールの共重合で得られた共重合体のポリエチレン主鎖中へのアリルアルコール含有量は、0.2〜1.2モル%の範囲である。また、アリルアルコールと等モル以上の有機アルミニウムを使用している。
【0010】
特開2006−265541号公報(特許文献3)には、特定の構造を有する4〜5族金属錯体を使用した極性オレフィン共重合体の製造方法が記載されている。実施例においてエチレンと塩化アリル、エチレンと酢酸アリル、エチレンとアリルアルコールの共重合が開示されている。エチレンと塩化アリルの共重合では、ポリエチレン主鎖中のアリル含有量は、0.1〜0.3モル%であり、また、アリル化合物と等モル以上の有機アルミニウムを使用している。
【0011】
特開2003−231710号公報(特許文献4)には、層状化合物からなる触媒を用い、オレフィンと極性ビニルモノマーとの共重合体の製造方法が開示されている。実施例においてプロピレンとアリルアルコールの共重合が記載されているが、重合体中に含まれるアリルアルコールは、0.3%以下と僅かであり、また有機アルミニウムを使用している。
【0012】
後周期金属を用いた触媒系では、保護基としての有機アルミニウムを使用せずに、極性基モノマーとの共重合が可能であることが一般に知られている。例えばアクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどとエチレンとの共重合の例がある(J. Am. Chem. Soc., 118, 267 (1996)(非特許文献2)、J. Am. Chem. Soc., 129, 8948 (2007)(非特許文献3)、特開2007−046032号公報(特許文献5))。しかしながら、従来、後周期金属を用いた触媒系では、低活性な上に、長時間重合すると重合活性が低下してゆく。また、高価な後周期遷移金属錯体を使用するため触媒コストが高く、工業的な使用には問題点があった。
一方、アリル化合物の場合、アリル化合物の後周期遷移金属への酸化的付加反応など、オレフィン部位の重合反応とは異なる様式で反応が進行する可能性があることなどから、本発明の目的であるアリル化合物とオレフィンとの共重合反応の例は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4423196号明細書
【特許文献2】特開2003−252930号公報
【特許文献3】特開2006−265541号公報
【特許文献4】特開2003−231710号公報
【特許文献5】特開2007−46032号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 124, 1176 (2002)
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 118, 267 (1996)
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc., 129, 8948 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、ラジカル重合等他の重合様式では合成困難と考えられてきた、新規な構造を有し種々の応用が可能な高分子量の極性基含有アリル共重合体、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来のラジカル重合法や前周期遷移金属触媒とは異なり、周期律表第10族金属錯体を触媒成分として極性基含有アリルモノマーを重合することにより、新規な構造を有し種々の応用が可能な新規の極性基含有アリルモノマー共重合体が提供可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[15]に関する。
[1] 一般式(C1)
【化1】

(式中、Mは周期律表第10族の金属原子を表し、Xはリン原子(P)または砒素原子(As)を表し、R5は水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基及びアシロキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、Y、R6及びR7はそれぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、R6とR7は結合して環構造を形成してもよく、QはZ[−S(=O)2−O−]M、Z[−C(=O)−O−]M、Z[−P(=O)(−OH)−O−]MまたはZ[−S−]Mの「[ ]」の中に示される2価の基を表し(ただし、両側のZ、Mは基の結合方向を示すために記載している。)、Zは水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜40の炭化水素基を表し、YとZは結合して環構造を形成してもよく、R6及び/またはR7はYと結合して環構造を形成してもよい。また、Lは電子供与性配位子を表し、qは0、1/2、1または2である。)
で示される金属錯体を触媒として使用し、一般式(1)
【化2】

(式中、R1は水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す。)
で示されるオレフィンと一般式(2)
【化3】

(式中、R2は、−OH、−OCOR3(R3は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表す。)、−N(R42(R4は水素原子、炭素原子数1〜5の炭化水素基、炭素原子数6〜18の芳香族残基、または−COOR10(R10は炭素原子数1〜10の炭化水素基、または炭素原子数6〜10の芳香族残基を表す。)を表し、2つのR4は同じでも異なっていてもよい。)、またはハロゲン原子を表す。)
で示されるアリル化合物とを共重合することを特徴とする一般式(3)、及び一般式(4)
【化4】

(式中、R1及びR2は前記と同じ意味を表し、nとmはそれぞれのモノマーユニットのモル比を表す数値である。)
で示されるモノマーユニットを有する極性基含有アリルモノマー共重合体の製造方法。
[2] 一般式(C1)で示される触媒が、一般式(C2)
【化5】

(式中、Y1はハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜70の2価の炭化水素基を表し、Q、M、X、R5、R6、R7、L及びqは前記[1]の記載と同じ意味を表す。)
で示される前記[1]に記載の共重合体の製造方法。
[3] 一般式(C2)中のQが−SO2−O−である(ただし、SはY1に結合し、OはMに結合する。)前記[2]に記載の共重合体の製造方法。
[4] 一般式(C2)で示される触媒が、一般式(C3)
【化6】

(式中、4個のR8はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜18のアリールオキシ基、またはハロゲン原子を表し、M、R5、R6、R7、L及びqは前記[1]の記載と同じ意味を表す。)
で示される前記[3]に記載の共重合体の製造方法。
[5] 一般式(C3)中のR6及びR7が、ともにシクロヘキシル基、シクロペンチル基、イソプロピル基、o−メトキシフェニル基、または2’,6’−ジメトキシ−2−ビフェニル基を表し、R8がすべて水素原子であるか、R8の一つがエチル基であり、残りの3つが水素原子である前記[4]に記載の共重合体の製造方法。
[6] MがPdである前記[1]〜[5]のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
[7] XがPである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法によって得られた極性基含有アリルモノマー共重合体。
[9] 一般式(3−1)及び一般式(4)
【化7】

(式中、R1-1は、水素原子またはメチル基を表し、R2、n及びmは前記[1]の記載と同じ意味を表す。)
で示されるモノマーユニットを有する共重合体であって、(A)主鎖の炭素原子数2以上の分岐が主鎖を構成する炭素原子1000個あたり1個以下であり、かつ(B)主鎖の少なくとも片末端に炭素−炭素二重結合を有する構造を有する極性基含有アリルモノマー共重合体。
[10] さらに、(C)ポリスチレン換算での数平均分子量Mnが1,000以上1,000,000以下、(D)分子量分布(Mw/Mn)が1.0以上3.0以下、かつ(E)一般式(3−1)及び一般式(4)のモノマーユニットのモル比nとmが次式
【数1】

を満足する構造を有する前記[9]に記載の極性基含有アリルモノマー共重合体。
[11] 一般式(3−1)及び一般式(4)で示されるモノマーユニットのみを有する前記[9]または[10]に記載の極性基含有アリルモノマー共重合体。
[12] 一般式(3−1)、一般式(4−1)、及び一般式(4−2)
【化8】

(式中、R1-1は前記と同じ意味を表し、n、m1及びm2は、それぞれのモノマーユニットのモル比を表す数値である。)
で示されるモノマーユニットを有する前記[9]または[10]に記載の極性基含有アリルモノマー共重合体。
[13] 一般式(3−1)のR1-1が水素原子である前記[9]〜[11]のいずれかに記載の極性基含有アリルモノマー共重合体。
[14] 一般式(4)で示されるモノマーユニットが、酢酸アリル、塩化アリル、臭化アリル、アリルアミン、N−アリルアニリン、及びN−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミンから選ばれる少なくとも1種のアリル化合物に由来する前記[9]〜[11]のいずれかに記載の極性基含有アリルモノマー共重合体。
[15] 一般式(3−1)中のR1-1が水素原子であり、一般式(4)で示されるモノマーユニットが、酢酸アリル、塩化アリル、臭化アリル、アリルアミン、N−アリルアニリン、及びN−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミンから選ばれる少なくとも1種のアリル化合物に由来する前記[9]〜[11]のいずれかに記載の極性基含有アリルモノマー共重合体。
【発明の効果】
【0018】
周期律表第10族の金属錯体を触媒成分として極性基含有アリルモノマーとオレフィンを共重合させる本発明の方法により、従来困難であった高分子量の極性基含有アリルモノマー共重合体を得ることができる。特に、アリル系極性基を共重合モノマーの1つとして以下の(A)及び(B)の構造を有する重合体を直接得ることができる。
すなわち、本発明の極性基含有アリル共重合体は、
(A)従来のラジカル重合で得られる分岐を有する構造ではなく、主鎖のポリメチレン構造が直鎖状の構造を有する。この構造により高い結晶性が実現され、その結果、優れた機械強度などの諸物性が実現する。
(B)重合体の末端構造に二重結合を有する。この末端二重結合を利用することにより必要な官能基修飾、ブロック共重合体化、星状ポリマー化などが可能となる。
また、高価な後周期遷移金属錯体を主成分としつつも、活性の向上と触媒寿命の飛躍的な向上により触媒コストを大幅に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1で得られたエチレン/酢酸アリル共重合体の13C−NMRスペクトル。
【図2】図1における12〜40ppm部分の拡大図。
【図3】共重合体の末端構造と13C−NMRのケミカルシフト値、及び実施例1における重合体分析の炭素同定をアルファベットにて示す。
【図4】実施例1で得られたエチレン/酢酸アリル共重合体のIRスペクトル。
【図5】実施例36で得られたエチレン/アリルアルコール共重合体のIRスペクトル。
【図6】実施例41で得られたエチレン/塩化アリル共重合体の13C−NMRスペクトル。
【図7】図6における10〜55ppm部分の拡大図。
【図8】共重合体の末端構造と13C−NMRのケミカルシフト値、及び実施例41における重合体分析の炭素同定をアルファベットにて示す。
【図9】実施例44で得られたエチレン/臭化アリル共重合体の13C−NMRスペクトル。
【図10】図9における10〜45ppm部分の拡大図。
【図11】共重合体の末端構造と13C−NMRのケミカルシフト値、及び実施例44における重合体分析の炭素同定をアルファベットにて示す。
【図12】実施例46で得られたエチレン/N−アリルアニリン共重合体の13C−NMRスペクトル。
【図13】図12における10〜55ppm部分の拡大図。
【図14】図12における105〜155ppm部分の拡大図。
【図15】共重合体の末端構造と13C−NMRのケミカルシフト値、及び実施例46における重合体分析の炭素同定をアルファベットにて示す。
【図16】実施例32〜35の重合時間と触媒当たりのポリマー生産性の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0020】
[モノマー]
本発明の共重合体の製造方法に用いられる一方のモノマーであるオレフィンは、一般式(1)
【化9】

で示される。
【0021】
一般式(1)において、R1は、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表し、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましい。一般式(1)のオレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンが挙げられる。この中でも特に、エチレン及びプロピレンが好ましい。またこれらは1種を単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
【0022】
本発明で重合に用いられるもう一方のモノマーである極性基を有するアリル化合物は、一般式(2)
【化10】

で示される。
【0023】
一般式(2)において、R2は、−OH、−OCOR3(R3は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表す。)、−N(R42(R4は水素原子、炭素原子数1〜5の炭化水素基、炭素原子数6〜18の芳香族残基、または−COOR10(R10は炭素原子数1〜10の炭化水素基、または炭素原子数6〜10の芳香族残基を表す。)を表し、2つのR4は同じでも異なっていてもよい。)、またはハロゲン原子を表す。R3は炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。R4は水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、またはフェニル基が好ましい。−COOR10のR10としては炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキル基、フェニル基、ベンジル基などが好ましい。R2のハロゲン原子としては塩素、臭素が好ましい。
【0024】
一般式(2)で示される極性基を有するアリル化合物の具体例としては、酢酸アリル、アリルアルコール、アリルアミン、N−アリルアニリン、N−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミン、N−ベンジルオキシカルボニル−N−アリルアミン、N−ベンジル−N−アリルアミン、塩化アリル、臭化アリルが挙げられる。この中でも特に、酢酸アリル、アリルアルコールが好ましい。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
また、一般式(1)、一般式(2)で示される化合物(モノマー)に加えて、その他のモノマーを共重合することも可能である。その他のモノマーとして、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。
一般式(1)で示されるオレフィンと一般式(2)で示されるアリル化合物の組み合わせとしては、エチレンと酢酸アリル、エチレンとアリルアルコール、エチレンと酢酸アリル及びアリルアルコール、エチレンと塩化アリル、エチレンと臭化アリル、エチレンとアリルアミン、エチレンとN−アリルアニリン、エチレンとN−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミン、エチレンとN−ベンジルオキシカルボニル−N−アリルアミン、エチレンとN−ベンジル−N−アリルアミン、プロピレンと酢酸アリル、プロピレンとアリルアルコール、プロピレンと酢酸アリル及びアリルアルコール、プロピレンと塩化アリル、プロピレンと臭化アリル、プロピレンとアリルアミン、プロピレンとN−アリルアニリン、プロピレンとN−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミン、プロピレンとN−ベンジルオキシカルボニル−N−アリルアミン、プロピレンとN−ベンジル−N−アリルアミンなどが挙げられる。これらの中でも重合体の性能と経済性の面でエチレンと酢酸アリル、エチレンとアリルアルコール、エチレンと酢酸アリルとアリルアルコール、エチレンと塩化アリル、エチレンとアリルアミンが好ましい。
【0025】
[触媒]
本発明で使用する周期表第10族金属錯体からなる触媒(の構造)は、一般式(C1)
【化11】

で示される。
【0026】
式中、Mは周期律表第10族の金属原子を表す。Xはリン(P)原子または砒素原子(As)を表す。R5は水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。Y、R6及びR7はそれぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。R6とR7は結合して環構造を形成してもよい。QはZ[−S(=O)2−O−]M、Z[−C(=O)−O−]M、Z[−P(=O)(−OH)−O−]M、またはZ[−S−]Mの「[ ]」の中に示される2価の基を表す(ただし、両側のZ、Mは基の結合方向を示すために記載している。)。Zは水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜40の炭化水素基を表す。YとZは結合して環構造を形成してもよい。R6及び/またはR7はYと結合して環構造を形成してもよい。Lは電子供与性配位子を表し、qは0、1/2、1または2である。また、本明細書では「炭化水素」は飽和、不飽和の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素を含む。
【0027】
以下、一般式(C1)の構造について説明する。
Mは周期律表第10族の元素を表す。周期律表第10族の元素としては、Ni、Pd、Ptが挙げられるが、触媒活性や得られる分子量の観点からNi及びPdが好ましく、Pdがより好ましい。
【0028】
Xはリン原子(P)または砒素原子(As)であり、Mに2電子配位している。Xとしては入手が容易であることと触媒コストの面からPが好ましい。
【0029】
Y、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。アルコキシ基としては炭素原子数1〜20のものが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基などが挙げられる。アリールオキシ基としては炭素原子数6〜24のものが好ましく、フェノキシ基などが挙げられる。シリル基としてはトリメチルシリル基、アミノ基としてはアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基などが挙げられる。また、R6とR7は同じでも、異なっていてもよい。また、R6とR7は結合して環構造を形成してもよい。R6及び/またはR7はYと結合して環構造を形成してもよい。Y及びR6、R7のハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基における、炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、フリル基などが挙げられる。ハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基における、アルコキシ基、アリールオキシ基の具体例としては前記と同様のものが挙げられる。ハロゲン原子はフッ素が好ましい。特に触媒活性の観点から、アルキル基及びアリール基が好ましい。
【0030】
以下、XがP(リン原子)の場合の、Y−X−R6、R7部位、すなわち
【化12】

の具体例を挙げる。なお、PとMとの結合は省略している。
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【0031】
XがAs(砒素原子)の場合の、Y−X−R6、R7部位、すなわち
【化17】

の具体例としては、
【化18】

が挙げられる。
【0032】
5は、水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、及びアシロキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、及びアシロキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基における炭素原子数1〜30の炭化水素基としては炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましい。ハロゲン原子は塩素、臭素が好ましい。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基が好ましい。アリールオキシ基としてはフェノキシ基が好ましい。アシロキシ基としてはアセトキシ基、ピバロキシ基が好ましい。R5の特に好ましい例として、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、1−アセトキシフェニル基、1−ピバロキシプロピル基などが挙げられる。
【0033】
Qは−S(=O)2−O−、−C(=O)−O−、−P(=O)(−OH)−O−、または−S−で示される2価の基を表し、Mに1電子配位する部位である。前記各式の左側がZに結合し、右側がMに結合している。これらの中でも触媒活性の面から−S(=O)2−O−が特に好ましい。
【0034】
Zは水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜40の炭化水素基を表す。YとZは結合して環構造を形成してもよい。「ハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜40の炭化水素基」におけるハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基の具体例はY、R6及びR7について述べたものが挙げられる。炭素原子数1〜40の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、フェニル基、2−i−プロピルフェニル基、2,6−ジ−i−プロピルフェニル基などが挙げられる。
【0035】
Z−Q部位は電気陰性度の大きい酸素原子または硫黄原子で金属原子Mに1電子配位している。Z−Q−M間の結合電子は、MからZ−Qに移動しているため、形式上、Z−Qをアニオン状態、Mをカチオン状態で表記することも可能である。
【0036】
一般式(C1)において、Y部位とZ部位は結合することができる。この場合、一般式(C1)は一般式(C2)で示される。一般式(C2)では、Y−Z部位を一体としてY1で示している。ここで、Y1はQとXとの間の架橋構造を表すことになる。
【化19】

式中、Y1はハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜70の2価の炭化水素基を表す。Q、M、X、R5、R6、R7、L及びqは一般式(C1)と同じ意味を表す。
【0037】
1におけるハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基の具体例はYで説明したものと同様である。炭素原子数1〜70の炭化水素基としてはアルキレン基、アリーレン基等が挙げられる。特に好ましくはアリーレン基である。
【0038】
XがP(リン原子)の場合、[(R6)(R7)P]部位としては、具体的に以下の構造が挙げられる。なお、下記の構造式ではPとM及びY1との結合は省略している。
【化20】

【化21】

【化22】

【0039】
架橋構造Y1はXとQ部位を結合する架橋部位である。XをP原子で示した架橋構造Y1の具体例を以下に示す。ここで、複数のR9は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子1〜20の炭化水素基、またはハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。
【化23】

【0040】
置換基R6及びR7は、Y1部位と結合して環構造を形成してもよい。具体的には以下の構造が挙げられる。
【化24】

【0041】
一般式(C2)で示される触媒の中でも、特に以下の一般式(C3)で示されるものが好ましい。
【化25】

【0042】
式中、4個のR8はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜18のアリールオキシ基、またはハロゲン原子を表し、M、R5、R6、R7、L及びqは一般式(C1)と同じ意味を表す。
【0043】
式(C3)においては、R5は炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。R6及びR7は、ともにシクロヘキシル基、シクロペンチル基、またはイソプロピル基であることが好ましい。MはPdが好ましい。
【0044】
一般式(C1)及び(C2)で示される触媒の金属錯体は、公知の文献(例えば、J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 8948)に従って合成することができる。すなわち、0価あるいは2価のMソースと一般式(C1)または(C2)中の配位子とを反応させて金属錯体を合成する。
【0045】
一般式(C3)で示される化合物は、一般式(C2)中のY1及びQを、一般式(C3)に対応する特定の基にすることにより合成することができる。
【0046】
0価のMソースは、パラジウムソースとして、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが挙げられ、ニッケルソースとして、テトラカルボニルニッケル(0):Ni(CO)4、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルが挙げられる。
【0047】
2価のMソースは、パラジウムソースとして、(1,5−シクロオクタジエン)(メチル)塩化パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム:PdCl2(CH3CN)2、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム:PdCl2(PhCN)2、(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)ジクロロパラジウム(II):PdCl2(TMEDA)、(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)ジメチルパラジウム(II):PdMe2(TMEDA)、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II):Pd(acac)2、トリフルオロメタンスルホン酸パラジウム(II):Pd(OCOCF32が、ニッケルソースとして、(アリル)塩化ニッケル、(アリル)臭化ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II):Ni(acac)2、(1,2−ジメトキシエタン)ジクロロニッケル(II):NiCl2(DME)、トリフルオロメタンスルホン酸ニッケル(II):Ni(OSO2CF32が挙げられる。
【0048】
一般式(C1)または一般式(C2)で示される金属錯体は、単離して使用することができるが、錯体を単離することなくMを含む金属ソースと配位子前駆体を反応系中で接触させて、これをそのまま(in situ)重合に供することもできる。特に一般式(C1)及び(C2)中のR5が水素原子の場合、0価のMを含む金属ソースと配位子前駆体とを反応させた後、錯体を単離することなくそのまま重合に供することが好ましい。
【0049】
この場合の配位子前駆体は、一般式(C1)の場合、
【化26】

(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)、及び
【化27】

(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)
で示される。
【0050】
一般式(C2)の場合、次式(C2−1)
【化28】

(式中の記号は前記と同じ意味を表す。)
で示される。
【0051】
一般式(C1)におけるMソース(M)と配位子前駆体(C1−1)(X)あるいは配位子前駆体(C1−2)(Z)との比率(X/MあるいはZ/M)またはMソース(M)と配位子前駆体(C2−1)(C2配位子)との比率((C2配位子)/M)は、0.5〜2.0の範囲で、さらには、1.0〜1.5の範囲で選択することが好ましい。
【0052】
一般式(C1)あるいは一般式(C2)の金属錯体を単離する場合、予め電子供与性配位子(L)を配位させて安定化させたものを用いることもできる。この場合、qは1/2、1または2となる。qが1/2とは一つの2価の電子供与性配位子が2つの金属錯体に配位していることを意味する。qは金属錯体触媒を安定化する意味で1/2または1が好ましい。なお、qが0の場合は配位子がないことを意味する。
【0053】
電子供与性配位子(L)とは、電子供与性基を有し、金属原子Mに配位して金属錯体を安定化させることのできる化合物である。
電子供与性配位子(L)としては、硫黄原子を有するものとしてジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。窒素原子を有するものとして、アルキル基の炭素原子数1〜10のトリアルキルアミン、アルキル基の炭素原子数1〜10のジアルキルアミン、ピリジン、2,6−ジメチルピリジン(別名:ルチジン)、アニリン、2,6−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、アセトニトリル、ベンゾニトリル、2−メチルキノリンなどが挙げられる。酸素原子を有するものとして、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンが挙げられる。
【0054】
一般式(C1)または一般式(C2)で示される金属錯体は、担体に担持して重合に使用することもできる。この場合の担体は、特に限定されないが、シリカゲル、アルミナなどの無機担体、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの有機担体などを挙げることができる。金属錯体の担持法としては、金属錯体の溶液を担体に含浸させて乾燥する物理的な吸着方法や、金属錯体と担体とを化学的に結合させて担持する方法などが挙げられる。
【0055】
[重合方法]
本発明の金属錯体を触媒として使用する場合、一般式(1)及び一般式(2)で表されるモノマーの重合方法は特に制限されるものではなく、一般に使用される方法で重合可能である。すなわち、溶液重合法、懸濁重合法、気相重合法などのプロセス法が可能であるが、特に溶液重合法、懸濁重合法が好ましい。また重合様式は、バッチ様式でも連続様式でも可能である。また、一段重合でも、多段重合でも行うこともできる。
【0056】
一般式(C1)、(C2)または(C3)で示される金属錯体触媒は2種類以上を混合して重合反応に使用してもよい。混合して使用することで重合体の分子量、分子量分布、一般式(4)で示されるモノマーユニットの含有量を制御することが可能であり、所望の用途に適した重合体を得ることができる。一般式(C1)、(C2)または(C3)で示される金属錯体触媒とモノマーの総量のモル比は、モノマー/金属錯体の比で、1〜10,000,000の範囲、好ましくは10〜1,000,000の範囲、より好ましくは100〜100,000の範囲が用いられる。
【0057】
重合温度は、特に限定されない。通常−30〜200℃の範囲で行われ、好ましくは0〜180℃、より好ましくは20〜150℃の範囲で行われる。
一般式(1)で示されるオレフィンの圧が内部圧力の大半を占める重合圧力については、常圧から20MPaの範囲内、好ましくは常圧から10MPaの範囲内で行われる。
【0058】
重合時間は、プロセス様式や触媒の重合活性などにより適宜調整することができ、数分の短い時間も、数千時間の長い反応時間も可能である。
【0059】
重合系中の雰囲気は触媒の活性低下を防ぐため、モノマー以外の空気、酸素、水分などが混入しないように窒素やアルゴンなどの不活性ガスで満たすことが好ましい。また溶液重合の場合、モノマー以外に不活性溶媒を使用することが可能である。不活性溶媒は、特に限定されないが、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチルなどの脂肪族エステル、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどの芳香族エステルなどが挙げられる。
【0060】
本発明の極性基含有アリルモノマー共重合体は、一般式(1)と一般式(2)で示される化合物に加えて、1種類あるいはそれ以上の第3のモノマーを共重合させ、重合体に機能を付加させることができる。第3のモノマーとしては、炭素数9以上のオレフィン化合物、あるいは、アリルモノマー以外の極性基含有モノマーを挙げることができる。炭素数9以上のオレフィン化合物としては1−ノネン、1−デセンなどが挙げられる。アリルモノマー以外の極性基含有モノマーとして、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0061】
本発明の重合体は、その官能基の反応性を利用して、種々の重合体に変換が可能である。例えば、R2が水酸基であれば、その第1級水酸基をハロゲンに置換して、リビングラジカル重合の開始点とし、種々の極性基含有モノマーをラジカル重合によって重合することにより、2種類以上のポリマーが結合するグラフトポリマーの生成も可能である。この場合のラジカル重合可能なモノマーとして、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレンなどを例示できる。
【0062】
一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマーの仕込み比は目的とする共重合体の組成比にあわせて適宜調節する。第3のモノマーを使用する場合も同様である。
一般式(1)で示されるモノマーは重合反応温度にて気体であり、圧力を制御により調節する。また一般式(2)で示されるモノマーは、そのまま使用することができるが、不活性溶媒により希釈して、モノマー仕込み比を調節することもできる。
【0063】
重合反応終了後、生成物である共重合体は、公知の操作、処理方法(例えば、中和、溶媒抽出、水洗、分液、溶媒留去、再沈殿など)により後処理されて単離される。
共重合体は、通常の熱可塑性樹脂の条件で、ペレット状、フィルム状、シート状などに成形することができる。
エチレンなどと酢酸アリルとの共重合体は、ケン化することにより、アリルアルコールの共重合体に変換することができる。部分ケン化すればエチレン、アリルアルコール、酢酸アリルの3元共重合体となる。
得られた共重合体は、射出成形、押出し成形、フィルム成形などの成形により、それ自体で製品にすることができる。あるいは、ポリオレフィンなどに添加して接着性、印刷性など表面特性の改質剤、無極性なポリオレフィンと極性の高い他の樹脂との相溶化剤、顔料などの分散剤として使用することができる。あるいは、塗料やインキ、接着剤、バインダー、可塑剤、滑剤、潤滑油、界面活性剤などの用途も挙げることができる。
【0064】
[極性基含有アリルモノマー共重合体]
本発明の極性基含有アリルモノマー共重合体は前記一般式(1)、一般式(2)で示される化合物及び必要に応じて使用してもよい第三のモノマーを前記触媒の存在下で重合することで得られる。本発明の極性基含有アリルモノマー共重合体は一般式(3−1)及び一般式(4)
【化29】

(式中、R1-1は、水素原子またはメチル基を表し、R2、n、mは前記と同じ意味を表す。)
で示されるモノマーユニットを有する共重合体であって、以下の(A)及び(B)の構造を有する共重合体である。
(A)主鎖の炭素原子数2以上の分岐が主鎖を構成する炭素原子1000個あたり1個以下である。
(B)主鎖の少なくとも片末端に炭素−炭素二重結合を有する。
さらには下記(C)、(D)、(E)の要件を満たすことがさらに好ましい。
(C)ポリスチレン換算での数平均分子量Mnが1,000以上1,000,000以下
(D)分子量分布 Mw/Mnが1.0以上、3.0以下
(E)一般式(3−1)及び一般式(4)のモノマーユニットのモル比nとmが次式
【数2】

を満足する
一般式(3−1)においてR1-1は、水素原子またはメチル基を表し、好ましくは水素原子である。R2、m、nは前記と同じ意味を表す。
【0065】
本発明では、分岐は炭素原子数2以上のものを表し、モノマーの側鎖は分岐にはカウントしない。
ポリマー鎖構造では、一般に直鎖状構造と分岐構造とが知られている。ラジカル重合法によって得られるエチレン系ポリマーは、バックバイティング機構により分岐状の構造体が得られることが知られている。分岐構造としてはバックバイティングによる炭素数5以下の短鎖分岐、主鎖に発生したラジカルを開始点とする長鎖分岐が存在する。一方、本発明の触媒系で得られる共重合体の構造は長鎖分岐が非常に少ない直鎖状である。本発明の共重合体では分岐が主鎖を構成する炭素原子1000個あたり1個以下である。ここで炭素原子1000個あたりの分岐の数は、炭素数2以上の分岐が結合している主鎖の3級炭素の数を13C−NMRで測定することにより計算することができる。なお、モノマーの側鎖は本発明の分岐にはカウントしない。例えば、第三のモノマーとして1−ブテンが共重合されている場合、エチル基が側鎖となるが、これは分岐とはしない。
【化30】

【0066】
本発明のポリマーの末端構造は、主鎖の構造とは異なる。末端構造は、重合の開始時にできる開始端と重合の停止時にできる停止端とに分けて考えることができる。開始端は、金属−水素原子間の結合あるいは金属−アルキル基間の結合にオレフィンが挿入してできるため飽和結合となるが、停止端はその反応機構により飽和結合の場合と不飽和結合の場合に分類される。反応系中に有機アルミニウムのようなアルキル基をもつ連鎖移動剤を使用する場合、分子鎖がアルミニウム原子に連鎖移動し、反応を停止させることで、飽和末端となることが報告されている。3塩化チタン系のチーグラー・ナッタ触媒や周期律表第4族元素の金属錯体を触媒に用いる場合、極性基を有するアリル化合物を共重合させるために有機アルミニウムを使用するため、末端構造が飽和結合になる。一方、本発明においては有機アルミニウムを使用しないため、ポリマー鎖生長はβ水素脱離機構により停止し、少なくとも一方の末端構造が不飽和二重結合となる。
【化31】

式中、Rは、一般式(1)または(2)における、R1またはCH22を表し、Polymerはポリマー鎖を表す。
【0067】
不飽和二重結合は、共重合体のNMR解析により確認することが可能である。この末端不飽和結合は、反応性に富み、官能基修飾、ブロック共重合体化、星状ポリマー化などが可能となるため、本発明の共重合体は極めて有用である。
【0068】
本発明の極性基含有アリルモノマー共重合体の製造方法によれば、ポリスチレン換算での数平均分子量Mnが3,000以上、1,000,000以下の極性基含有アリルモノマー共重合体を得ることができる。このような共重合体は各種成形法に供することが可能である。
【0069】
また、その共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は1.0以上、3.0以下という狭い分布を有するものを得ることが可能となる。分子量分布が狭いことで、低分子量成分あるいは高分子量成分がカットされ、一般的に重合体の物性面に良い影響を与えることができる。さらに、物性バランスをとるための分子量分布のコントロールも容易となる。
【0070】
一般式(4)で示されるモノマーユニットの含有量(モル%={m/(m+n)}×100)は0.1%以上、50%以下であることが好ましい。一般式(4)で示されるモノマーユニットの含有量はポリエチレンと同程度の溶融粘度、成形条件とする観点から、0.5〜15.0モル%が好ましく、1.0〜6.0モル%がさらに好ましい。一般式(4)で示されるモノマーユニットが複数種存在する場合、mはそれら各モノマーユニットの合計値とする。また、一般式(3−1)及び一般式(4)で示される化合物モノマーユニット以外に前述のように第三のモノマーユニットが共重合されていてもよい。
【0071】
本発明の共重合体においては一般式(4)で示されるモノマーユニットはその一部または全部がケン化されてもよい。一般式(4)で示されるモノマーユニットが酢酸アリル由来の場合、ケン化反応後の共重合体は次のような構造となる。式(4−2)の酢酸アリルに由来するモノマーユニットがケン化されて、式(4−1)で示すアリルアルコール由来のモノマーユニットに変化する。m1+m2=mとなる。一般式(4)で示されるモノマーユニットの全部がケン化されるとm1=0となる。m1とm2の比率はケン化度で調整することができる。共重合体のケン化はポリ酢酸ビニルのケン化と同様の公知の方法で行う。当該共重合体を溶媒に溶解または分散させ、水やアルコールの存在下、酸やアルカリで処理すればよい。
【化32】

(式中、R1-1は前記と同じ意味を表し、n、m1、m2は、それぞれのモノマーユニットのモル比を表す数値である。)
【0072】
エチレンなどとN−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミンとの共重合体は、酸性条件下加水分解することにより、アリルアミンあるいはアリルアンモニウム塩の共重合体に変換することができる。部分ケン化すればエチレン、アリルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミンの3元共重合体となる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0074】
[重合体の構造の解析方法]
実施例で得た共重合体の構造は、日本電子(株)製JNM−ECS400を用いた各種NMR解析により決定した。一般式(2)で示されるアリル化合物に由来するモノマーユニットの含有率と共重合体末端構造は、溶媒として1,2,4−トリクロロベンゼン(0.55mL)及び緩和試薬としてCr(acac)3(10mg)を用い、120℃において、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMR(9.0マイクロ秒の90°パルス、スペクトル幅:31kHz、緩和時間:10秒、取り込み時間:10秒、FIDの積算回数5,000〜10,000回)によって決定した。
【0075】
分岐構造は、13C−NMRの3級炭素原子のスペクトルにより判断することができる。すなわち、酢酸アリル分岐の炭素原子(図3中の炭素原子dに相当)は37.9ppmに現れるのに対して、ポリマー主鎖の分岐がある場合、3級炭素原子(分岐根元の炭素原子)のケミカルシフト値は、38.2〜39ppm付近に現れるので、両者を区別することができる(図3参照)(参考文献:Macromolecules 1999, 32, 1620-1625)。
【0076】
末端構造についても同様に、13C−NMRあるいは1H−NMRで構造を解析することができる。特に末端二重結合を有する場合、13C−NMRスペクトルで114ppm及び139ppmにスペクトルが現れ、10〜40ppmに現れる飽和末端構造を区別することができる(参考文献:Chem. Commun. 2002, 744-745)。
【0077】
数平均分子量及び重量平均分子量は、東ソー(株)製,TSKgel GMHHR−H(S)HTカラム(7.8mmI.D.×30cmを2本直列)を備えた東ソー(株)製高温GPC装置、HLC−8121GPC/HTを用い、ポリスチレンを分子量の標準物質とするサイズ排除クロマトグラフィー(溶媒:1,2−ジクロロベンゼン、温度:145℃)により算出した。
【0078】
[金属錯体触媒1の合成]
下記の反応スキームに従って金属錯体触媒1を合成した。
【化33】

【0079】
(a)化合物1aの合成
アルゴン雰囲気下、ベンゼンスルホン酸(東京化成工業製、662mg,4.2mmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(20mL)に、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.65Mヘキサン溶液,5.1mL,8.4mmol)を0℃で加え、室温で2.5時間撹拌した。反応容器を−78℃に冷却した後にクロロジシクロヘキシルホスフィン(Sigma-Aldrich製,885mg,3.8mmol)を−78℃で加え、室温で24時間撹拌した。反応をトリフルオロ酢酸(東京化成工業製、0.5M THF溶液,8.4mL,4.2mmol)で停止した後に、生じた沈殿をろ過によって回収し、減圧下乾燥してホスホニウムスルホナート(化合物1a)を得た。収量は656mg(85%)であった。
【0080】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 0.98-0.27 (m, 4H), 1.30-1.58 (m, 6H), 1.62-1.78 (m, 4H), 1.88 (br s, 4H), 2.28 (br s, 2H), 3.33 (br s, 2H), 5.19 (br d, 1JPH = 370 Hz, 1H), 7.48-7.58 (m, 2H), 7.80 (br s, 1H), 8.27 (br s, 1H);
13C−NMR(101MHz,CDCl3):δ 25.0 (s), 25.6-26.2 (m), 28.8 (br), 30.3 (br), 34.6 (br d, 1JPC = 40 Hz), 113.4 (br d, 1JPC = 87 Hz), 128.8 (d, JPC = 9 Hz), 130.1 (d, JPC = 9 Hz), 135.4 (br), 137.1 (br), 150.5 (br);
31P−NMR(162MHz,CDCl3):δ 52.8 (d, 1JPH = 370 Hz) (90%), 20.8 (d, 1JPH = 530 Hz) (10%);
Anal. calcd for C18273PS, C, 60.99; H, 7.68. found: C, 60.90; H, 7.55。
【0081】
(b)錯体1bの合成
アルゴン雰囲気下、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(2-(dicyclohexylphosphino)benzenesulfonic acid;化合物1a)(426mg,1.2mmol)とジイソプロピルエチルアミン(和光純薬工業製、1.1mL,6.0mmol)の塩化メチレン溶液(16mL)に、(COD)PdMeCl(「Chem., 1993, 32, 5769-5778」に従って合成。COD=1,5−シクロオクタジエン、321mg,1.2mmol)の塩化メチレン溶液(6mL)を加え、室温で1時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、ろ過により沈殿物を取り除き、溶液をヘキサン中に加えた。生じた沈殿物をろ過によって回収し、ヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、錯体1bを得た。収量は656mg(85%)であった。
【0082】
1H−NMR(500MHz,CDCl3):δ 0.71 (d, 3JPH = 1.4 Hz, 3H, PdCH3), 1.11-1.35 (m, 8H), 1.45 (d, J = 6.6 Hz, 6H, HNCH(CH3)2), 1.57 (d, J = 6.6Hz, 6H, HNCH(CH3)2), 1.57 (t, J = 7.3 Hz, 3H, HNCH2CH3), 1.60-1.70 (m, 6H), 1.72-1.84 (m, 4H), 2.12-2.28 (m, 4H), 3.29 (dq, J = 7.3, 5.0 Hz, 2H, HNCH2CH3), 3.92-4.01 (m, 2H, HNCH(CH3)2), 7.45 (dd, J = 7.2, 7.2 Hz, 1H), 7.49 (dd, J = 7.6, 7.6 Hz, 1H), 7.59 (dd, J = 7.3, 7.3 Hz, 1H), 8.21 (ddd, J = 7.7, 3.6, 1.3 Hz, 1H), 8.87 (br, 1H, NH);
13C−NMR(101MHz,CDCl3):δ -7.3 (s, PdCH3), 12.0 (s, HNCH2CH3), 17.9 (s, HNCH(CH3)2), 19.2 (s, HNCH(CH3)2), 26.0 (s), 26.9-27.4 (m), 28.7 (s), 29.4 (d, JPC = 4 Hz), 35.6 (d, 1JPC = 25 Hz), 42.4 (s, HNCH2CH3), 54.6 (s, HNCH(CH3)2), 125.5 (d, 1JPC = 33 Hz), 128.3 (d, JPC = 7 Hz), 128.9 (d, JPC = 6 Hz), 130.3 (s), 132.5 (s), 150.9 (d, 2JPC = 11 Hz);
31P−NMR(162MHz,CDCl3):δ 31.7;
Anal. calcd for C2749ClNO3PPdS, C, 50.62; H, 7.71; N, 2.19. found: C, 50.49; H, 8.00, N, 2.12。
【0083】
(c)金属錯体触媒1の合成
アルゴン雰囲気下、炭酸カリウム(420mg,3.03mmol)と2,6−ルチジン(東京化成工業製、333mg,3.11mmol)の塩化メチレン懸濁液(2mL)に、錯体1b(194mg,0.30mmol)の塩化メチレン溶液(4mL)を加え、室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下留去して残った固体をジエチルエーテルで洗浄した後に、塩化メチレンで抽出した。抽出液をセライト(乾燥珪藻土)でろ過し、ゆっくりとヘキサン(40mL)中に加えた。生じた沈殿物をろ過によって回収し、ヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒1を得た。収量は123mg(70%)であった。
【0084】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 0.32 (d, 3JPH = 2.3 Hz, 3H, PdCH3), 1.12-1.47 (m, 8H), 1.60-1.94 (m, 10H), 2.22-2.33 (m, 4H), 3.18 (s, 6H, CH3 of lutidine), 7.12 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 7.47 (dd, J = 7.6, 7.6 Hz, 1H), 7.52 (dddd, J = 7.6, 7.6, 1.4, 1.4 Hz, 1H), 7.58 (dd, J = 8.1, 8.1 Hz, 1H), 7.60 (dd, J = 7.5, 7.5 Hz, 1H), 8.29 (ddd, 7.8, 3.9, 1.5 Hz, 1H);
13C−NMR(101MHz,CDCl3):δ -9.4 (d, 2JPC = 4.8 Hz, PdCH3), 26.3 (s, CH3 of lutidine), 26.9-27.5 (m), 28.6 (s), 29.6 (d, JPC = 3 Hz), 35.5 (d, 1JPC = 26 Hz), 122.5 (s),122.5 (s), 124.6 (d, 1JPC = 35 Hz), 128.9 (d, JPC = 7 Hz), 129.0 (d, JPC = 6 Hz), 130.7 (s), 132.4 (s), 138.1 (s). 151.0 (d, 2JPC = 12 Hz), 159.0 (s);
31P−NMR(162MHz,CDCl3):δ 27.5;
Anal. calcd for C2638NO3PPdS, C, 53.65; H, 6.58; N, 2.51. found: C, 53.51; H, 6.74; N, 2.40。
【0085】
実施例1:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体1の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒1(58.2mg,0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、塩化メチレン(3.75mL)、トルエン(3.75mL)、酢酸アリル(7.5mL,7.0g,70mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(約20mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体1を得た。収量は754mgであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量8,100、重量平均分子量16,200と算出し、Mw/Mnは2.0であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMRによりエチレン:酢酸アリルのモル比は100:3.4(酢酸アリルモル分率=3.3%)と決定した。また、炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2ppm)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。この場合の検出限界値より、分岐数が炭素原子1000個あたり1個以下である直鎖状ポリマーであることがわかった。また、末端二重結合に由来する114ppm及び139ppmに13C−NMRシグナルが観測され、末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。さらに、図4に示すIRスペクトルでは、1744cm-1にカルボニル基由来のピークが観測された。
重合条件及び結果を表1及び2に示す。
なお、生産性と触媒活性は次の式により計算した。
【数3】

【数4】

【0086】
実施例2:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体2の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒1(58.2mg,0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(7.5mL)、酢酸アリル(7.5mL,7.0g,70mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(約20mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体2を得た。収量は585mgであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量7,900、重量平均分子量15,500と算出し、Mw/Mnは2.0であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMRによりエチレン:酢酸アリルのモル比は100:4.4(酢酸アリルモル分率=4.2%)と決定した。また、炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2ppm)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114ppm及び139ppmに13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0087】
実施例3:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体3の調製)
2−(ジシクロペンチルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(2-(dicyclopentylphosphino)benzenesulfonic acid)を出発物質として金属錯体触媒1と同様の方法により金属錯体触媒2を合成した。
【化34】


この金属錯体触媒2を使用して、実施例2と同様に酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。すなわち、アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒2(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(7.5mL)、酢酸アリル(7.5mL,7.0g,70mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(約20mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体3を得た。収量は226mgであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量3,400、重量平均分子量5,400と算出し、Mw/Mnは1.6であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMRによりエチレン:酢酸アリルのモル比は100:2.0(酢酸アリルモル分率=2.0%)と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2ppm)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114ppm及び139ppmに13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。重合条件及び結果を表1及び2に示す。。
【0088】
実施例4:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体4の調製)
2−(ジイソプロピルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(2-(diisopropylphosphino)benzenesulfonic acid)を出発物質として金属錯体触媒1と同様の方法により金属錯体触媒3を合成した。
【化35】

この金属錯体触媒3を使用して、実施例2と同様に酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。すなわち、アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒3(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(7.5mL)、酢酸アリル(7.5mL,7.0g,70mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(約20mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体4を得た。収量は525mgであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量6,700、重量平均分子量12,700と算出し、Mw/Mnは1.9であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMRによりエチレン:酢酸アリルのモル比は100:2.7(酢酸アリルモル分率=2.0%)と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2ppm)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114ppm及び139ppmに13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0089】
比較例1:ラジカル法による酢酸アリルとエチレンの共重合
金属錯体触媒の代わりに、ラジカル発生剤AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)を使用して、酢酸アリルとエチレンの共重合を行った。すなわち、120mLオートクレーブに、AIBN(0.742g,4.52mmol)、酢酸アリル(80mL,74.6g,747mmol)を加えた。エチレンを圧力1.0MPaとなるように充填した後、オートクレーブを90℃で、2時間撹拌した。反応中のエチレン圧は、溶媒に溶け込む分の圧低下が観測された後(エチレン圧をかけて開始約10分間)、反応によるエチレン圧の低下は観測されなかった。室温に冷却後、得られた溶液を減圧蒸留して未反応の酢酸アリルを留去すると、オイル状物質7.3gが得られた。得られたオイル状物質を1H−NMR、13C−NMRにより分析すると、エチレン共重合によるエチレン骨格は存在せず、酢酸アリルのみが反応したオリゴマー(酢酸アリルモル分率=100.0%)であることがわかった。サイズ排除クロマトグラフィーにより分析すると、数平均分子量1,600、重量平均分子量2,800と算出され、Mw/Mnは1.9であった。重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0090】
[金属錯体触媒4の合成]
【化36】

窒素雰囲気下、2−[ビス(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]ベンゼンスルホン酸(2-[bis(2-methoxyphenyl)phosphino]benzenesulfonic acid)(0.46g,1.1mmol)と(TMEDA)PdMe2(「Organometallics 1989, 8, 2907-2917」に従って合成。TMEDA=N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、0.29g,1.1mmol)の塩化メチレン溶液(7mL)を室温で0.5時間撹拌した。その後、反応液に2,6−ルチジン(1.2g,11.4mmol)を加え、さらに3時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、シリンジフィルターを用いたろ過により沈殿物を取り除き、溶液をヘキサン中に滴下した。生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒4を得た。収量は0.46g(64%)であった。
【0091】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ -0.06 (d, 3JPH = 1.2 Hz, 3H, PdCH3), 3.15 (s, 6H, CH3 of lutidine), 3.61 (s, 6H, OCH3), 6.90-6.93 (m, 2H), 7.03-7.11 (m, 4H), 7.32-7.57 (m, 6H), 7.77 (br s, 2H), 8.16 (br s, 1H)。
【0092】
[金属錯体触媒5の合成]

窒素雰囲気下、2−(ジイソプロピルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸(2-(diisopropylphosphino)benzenesulfonic acid)(0.96g,3.5mmol)と(TMEDA)PdMe2(0.88g,3.5mmol)の塩化メチレン溶液(30mL)を室温で1.5時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、シリンジフィルターを用いたろ過により沈殿物を取り除き、溶液をヘキサン中に滴下した。生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥し、金属錯体触媒5を得た。収量は1.6g(98%)であった。
【0093】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 0.39 (s, 6H, PdCH3), 1.23 (br, 24H, P[CH(CH3)2]2), 2.57 (br, 2H, PC[H(CH3)2]2), 2.64 (s, 12H, (CH3)2NCH2CH2N(CH3)2), 3.48 (s, 4H, (CH3)2NCH2CH2N(CH3)2), 7.48-7.55 (m, 6H), 8.29 (br, 2H)。
【0094】
[金属錯体触媒6の合成]

窒素雰囲気下、金属錯体触媒5(0.48g,0.53mmol)のジメチルスルホキシド(dmso)溶液(10mL)を減圧下(0.15mmHg)、40℃で10時間撹拌した。反応液に塩化メチレン(30mL)及び水(30mL)を加えた後、分液漏斗を用い、有機層と水層を分離した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を留去した。残渣に塩化メチレン(10mL)を加え溶解させ、その溶液をヘキサン(50mL)に滴下した。生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒6を得た。収量は0.26g(52%)であった。
【0095】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 0.68 (s, 3H, PdCH3), 1.21-1.32 (m, 12H, P[CH(CH3)2]2), 2.49-2.58 (m, 2H, P[CH(CH3)2]2), 2.88 (s, 6H, CH3(S=O)CH3), 7.47-7.58 (m, 3H), 8.31-8.33 (m, 1H)。
【0096】
[金属錯体触媒7の合成]
【化37】

窒素雰囲気下、2−(ジイソプロピルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸((2-diisopropylphosphino)benzenesulfonic acid)(0.33g,1.2mmol)と(TMEDA)PdMe2(0.30g,1.2mmol)の塩化メチレン溶液(10mL)を室温で0.5時間撹拌した。その後、反応液にピリジン(和光純薬工業製、0.48g,6.0mmol)を加え、さらに1時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、シリンジフィルターを用いたろ過により沈殿物を取り除き、溶液をヘキサン中に滴下した。生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒7を得た。収量は0.39g(68%)であった。
【0097】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 0.57 (s, 3H, PdCH3), 1.19-1.35 (m, 12H, P[CH(CH3)2]2), 2.52-2.61 (m, 2H, P[CH(CH3)2]2), 7.47-7.59 (m, 5H), 7.82-7.87 (m, 1H), 8.35 (br, 1H), 8.87 (br, 2H)。
【0098】
[金属錯体触媒8の合成]
【化38】

窒素雰囲気下、2−(ジイソプロピルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸((2-diisopropylphosphino)benzenesulfonic acid)(0.22g,0.81mmol)と(TMEDA)PdMe2(0.21g,0.81mmol)の塩化メチレン溶液(8mL)を室温で0.5時間撹拌した。その後、反応液に2−メチルキノリン(東京化成工業製、1.2g,8.1mmol)を加え、さらに2時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、シリンジフィルターを用いたろ過により沈殿物を取り除き、溶液をヘキサン中に滴下した。生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒8を得た。収量は0.41g(95%)であった。
【0099】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 0.39 (s, 3H, PdCH3), 1.30-1.49 (m, 12H, P[CH(CH3)2]2), 2.62-2.69 (m, 2H, P[CH(CH3)2]2), 3.43 (s, 3H, 2-CH3-quinoline), 7.41-7.64 (m, 5H), 7.81-7.86 (m, 2H), 8.19 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 8.30 (br, 1H), 9.58 (d, 1H, J = 8.0 Hz)。
【0100】
[金属錯体触媒9の合成]
【化39】

窒素雰囲気下、4−エチルベンゼンスルホン酸(Sigma-Aldrich社製)を出発原料として化合物1aと同様の方法で合成した2−ジイソプロピルホスフィノ−4−エチルベンゼンスルホン酸(2-diisopropylphosphino-4-ethylbenzenesulfonic acid)(0.37g,1.2mmol)と(TMEDA)PdMe2(0.31g,1.2mmol)の塩化メチレン溶液(8mL)を室温で0.5時間撹拌した。その後、反応液に2,6−ルチジン(1.3g,12.3mmol)を加え、さらに2時間撹拌した。溶液を濃縮した後に、シリンジフィルターを用いたろ過により沈殿物を取り除き、溶液をヘキサン中に滴下した。生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒9を得た。収量は0.51g(77%)であった。
【0101】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 0.33 (s, 3H, PdCH3), 1.26-1.39 (m, 15H), 2.52-2.73 (m, 4H), 3.18 (s, 6H, CH3 of lutidine), 7.12 (d, 2H, J = 7.2 Hz), 7.33-7.37 (m, 2H), 7.57 (t, 1H, J = 7.2 Hz), 8.20 (br, 1H)。
【0102】
[金属錯体触媒10の合成]
【化40】


窒素雰囲気下、ベンゼンスルホン酸(Sigma-Aldrich社製)を出発原料として化合物1aと同様の方法で合成した2−ビス(2',6'−ジメトキシ−2−ビフェニル)ホスフィノベンゼンスルホン酸(2-bis(2',6'-dimethoxy-2-biphenyl)phosphinobenzenesulfonic acid)(0.53g,0.87mmol)と(TMEDA)PdMe2(0.22g,0.87mmol)のTHF溶液(12mL)を室温で0.5時間撹拌した。その後、反応液に2,6−ルチジン(0.93g,8.7mmol)を加え、さらに4時間撹拌した。反応液にt−ブチルメチルエーテル(10mL)を加え、生じた沈殿物をろ過によって回収し、t−ブチルメチルエーテル及びヘキサンで洗浄した後に減圧下乾燥して、金属錯体触媒10を得た。収量は0.50g(69%)であった。
【0103】
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ 0.16 (s, 3H, PdCH3), 3.14 (s, 6H, CH3 of lutidine), 3.48-3.74 (m, 12H), 6.12-8.27 (m, 21H)。
【0104】
実施例5:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体5の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒4(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、塩化メチレン(3.75mL)、トルエン(3.75mL)、及び酢酸アリル(7.5mL,7.0g,70mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(約20mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体5を得た。収量は0.29gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量4,000、重量平均分子量7,000と算出し、Mw/Mnは1.7であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMRにより、モル分率で3.7%と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0105】
実施例6:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体6の調製)
窒素雰囲気下、酢酸アリル(37.5mL,34.9g,350mmol)を含む120mLオートクレーブ中に、金属錯体触媒1(0.10mmol)のトルエン溶液(37.5mL)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、5時間撹拌した。室温に冷却後、反応液をメタノール(400mL)に加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体6を得た。収量は2.1gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量14,000、重量平均分子量29,000と算出し、Mw/Mnは2.1であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMRにより、モル分率で3.8%と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0106】
実施例7〜30:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体7〜30の調製)
実施例5及び6と同様にして共重合体7〜30を製造した。重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
比較例2:エチレンの単独重合
金属錯体触媒1を使用して、エチレンの単独重合を行った。すなわち、窒素雰囲気下、120mLオートクレーブ中に、金属錯体触媒1(0.050mmol)のトルエン溶液(75mL)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、1時間撹拌した。室温に冷却後、反応液をメタノール(400mL)に加えた。生じた重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥した。収量は8.3gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量30,000、重量平均分子量70,000と算出され、Mw/Mnは2.1であった。
【0110】
比較例3:有機アルミを使用した場合
前周期の遷移金属錯体を使用して極性基含有モノマーを(共)重合させる場合には、極性基含有モノマーに対して等量以上の有機アルミニウムを使用する。この場合、ポリマー鎖が有機アルミへ連鎖移動してポリマー生長が停止するため、末端二重結合が観測されないことが文献に示されている(Macromolecules 2004, 37, 5145)。
【0111】
実施例31: 酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体31の調製;in situ)
アルゴン雰囲気下、2−(ジイソプロピルホスフィノ)ベンゼンスルホン酸-(2-(diisopropylphosphino)benzenesulfonic acid)(0.12mmol)とPd2(DBA)3・CHCl3(DBA=ジベンジリデンアセトン,0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、塩化メチレン(3.75mL)、トルエン(3.75mL)、及び酢酸アリル(7.5mL,7.0g,70mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、15時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(約20mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体31を得た。収量は1.7gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量4,000、重量平均分子量9,000と算出し、Mw/Mnは2.7であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMRにより、モル分率で2.7%と決定した。また、炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。
【0112】
実施例32:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体32の調製)
窒素雰囲気下、酢酸アリル(37.5mL,34.9g,348mmol)を含む120mLオートクレーブ中に、金属錯体触媒3(0.010mmol)のトルエン溶液(37.5mL)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、5時間撹拌した。室温に冷却後、反応液をメタノール(400mL)に加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体32を得た。収量は0.89gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量13,000、重量平均分子量29,000と算出し、Mw/Mnは2.2であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMRにより、モル分率で3.3%と決定した。また、炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。、また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。
【0113】
実施例33〜35:酢酸アリルとエチレンの共重合(共重合体33〜35の調製)
反応時間をそれぞれ25時間、50時間、100時間としたこと以外は実施例32と同様にして、共重合体33〜35を得た。重合条件及び結果を表1及び2に示す。
【0114】
実施例32〜35の重合時間に対する触媒当たりのポリマー生産性をグラフにしたものを図16に示す。本重合触媒系では、触媒失活が殆ど見られず、重合時間の経過と共に、ポリマー収量が増大していることがわかる。これは、エチレンと酢酸ビニルの共重合では、重合時間の経過と共に、重合活性が低下して、触媒当たりのポリマー生産性が頭打ちになっている現象(例えば、J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 14606, Supporting Information S10参照)と大きく異なっており、本発明が工業化にとって有利な技術であることが分る。
【0115】
実施例36:酢酸アリル・エチレン共重合体のけん化反応(共重合体36の調製)
窒素雰囲気下、実施例6で得られた酢酸アリル・エチレン共重合体(1.0g)及び水酸化カリウム(0.056g,1.1mmol)のトルエン(115mL)、エタノール(35mL)懸濁液を80℃で、6時間撹拌した。室温に冷却後、反応液をメタノール(500mL)に加えた。生じた沈殿をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体36を得た。収量は0.86gであった。得られた粉末を13C−NMR、IRにより分析すると、酢酸アリル・エチレン共重合体に存在していたエステル基が完全に水酸基に変換されており、アリルアルコール・エチレン共重合体であることがわかった。IRスペクトルを図5に示す。アリルアルコール含有率は13C−NMRにより、モル分率で3.2%と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。加えて、サイズ排除クロマトグラフィーにより分析すると、数平均分子量12,000、重量平均分子量26,000と算出され、Mw/Mnは2.2であった。
【0116】
実施例37:酢酸アリル・エチレン共重合体の部分けん化反応(共重合体37の調製)
窒素雰囲気下、実施例20で得られた酢酸アリル・エチレン共重合体(3.0g)及び水酸化カリウム(0.0023g,0.042mmol)のトルエン(75mL)、エタノール(5mL)懸濁液を80℃で、30分撹拌した。室温に冷却後、反応液をメタノール(500mL)に加えた。生じた沈殿をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体37を得た。収量は2.8gであった。得られた粉末を13C−NMRにより分析すると、モル分率で酢酸アリルユニットが2.0%、アリルアルコールユニットが1.8%存在することが判明した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。加えて、サイズ排除クロマトグラフィーにより分析すると、数平均分子量11,000、重量平均分子量26,000と算出され、Mw/Mnは2.4であった。
【0117】
実施例38:アリルアルコールとエチレンの共重合(共重合体38の調製)
窒素雰囲気下、アリルアルコール(15mL,12.8g,219.8mmol)を含む120mLオートクレーブ中に、金属錯体触媒1(0.15mmol)のトルエン溶液(60mL)を加えた。エチレン(4.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、7時間撹拌した。室温に冷却後、反応液をメタノール(400mL)に加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体38を得た。収量は0.12gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量2,000、重量平均分子量3,400と算出し、Mw/Mnは1.7であった。共重合体中の酢酸アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMRにより、モル分率で2.7%と決定した。
【0118】
実施例39〜40:アリルアルコールとエチレンの共重合(共重合体39、40の調製)
表3に示す条件としたこと以外は実施例38と同様にして共重合体39及び40を製造した。結果を表4に示す。
【0119】
実施例41:塩化アリルとエチレンの共重合(共重合体41の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒1(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(12mL)、塩化アリル(3mL,2.8g,36.8mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、15時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(30mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体41を得た。収量は0.41gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量10,000、重量平均分子量19,000と算出し、Mw/Mnは1.9であった。共重合体中の塩化アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMRにより、モル分率で1.0%と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。
【0120】
実施例42〜43:塩化アリルとエチレンの共重合(共重合体42〜43の調製)
表3に示す条件としたこと以外は実施例41と同様にして共重合体42及び43を製造した。結果を表4に示す。
【0121】
実施例44:臭化アリルとエチレンの共重合(共重合体44の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒1(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(12mL)、臭化アリル(3mL,4.3g,35.5mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、15時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(30mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体44を得た。収量は0.34gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量8,000、重量平均分子量15,000と算出し、Mw/Mnは1.9であった。共重合体中の臭化アリル含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMRにより、モル分率で0.71%と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。
【0122】
実施例45:臭化アリルとエチレンの共重合(共重合体45の調製)
表3に示す条件としたこと以外は実施例44と同様にして共重合体45を製造した。結果を表4に示す。
【0123】
実施例46:N−アリルアニリンとエチレンの共重合(共重合体46の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒1(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(12mL)、N−アリルアニリン(3mL,2.9g,22.1mmol)を加えた。エチレン(5.0MPa)を充填した後、オートクレーブを120℃で、15時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(30mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体46を得た。収量は0.13gであった。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。また、末端二重結合に由来する114及び139ppmに13C−NMRシグナルが観測されたことから、直鎖状で末端二重結合を有するポリマーであることが確認された。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量1,500、重量平均分子量3,100と算出し、Mw/Mnは2.1であった。
【0124】
実施例47:N−アリルアニリンとエチレンの共重合(共重合体47の調製)
表3に示した条件としたこと以外は実施例46と同様にして共重合体47を製造した。結果を表4に示した。なお、サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量2,100、重量平均分子量3,200と算出し、Mw/Mnは1.5であった。
【0125】
実施例48:N−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミンとエチレンの共重合(共重合体48の調製)
アルゴン雰囲気下、金属錯体触媒1(0.10mmol)を含む50mLオートクレーブ中に、トルエン(15mL)、N−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミン(2.4g,15.0mmol)を加えた。エチレン(3.0MPa)を充填した後、オートクレーブを80℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、オートクレーブ中にメタノール(30mL)を加えた。生じた共重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、共重合体48を得た。収量は1.9gであった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量5,200、重量平均分子量12,200と算出し、Mw/Mnは2.4であった。共重合体中のN−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミン含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMRにより、モル分率で3.7%と決定した。
【0126】
実施例49:N−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミンとエチレンの共重合体の加水分解反応(共重合体49の調製)
窒素雰囲気下、実施例48で得られたN−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミン・エチレン共重合体(0.302g)を含む100mLナスフラスコに、トルエン(40mL)、エチルアルコール(12mL)、35%塩酸(20mL)を加え、78℃で、3時間撹拌した。室温に冷却後、炭酸水素ナトリウムを加え中和した。水による洗浄を4回行った後に減圧下乾燥して、共重合体49を得た。収量は0.237gであった。共重合体中のアリルアミン含有率は、逆ゲート付きデカップリング法を用いた13C−NMRにより、モル分率で2.0%と決定した。炭素数2以上の分岐に由来する3級炭素原子のケミカルシフト値(δc=38.2)に13C−NMRシグナルは観測されなかった。サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量2,600、重量平均分子量4,700と算出し、Mw/Mnは1.8であった。
【0127】
【表3】

【0128】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(C1)
【化1】

(式中、Mは周期律表第10族の金属原子を表し、Xはリン原子(P)または砒素原子(As)を表し、R5は水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基及びアシロキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、Y、R6及びR7はそれぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アミノ基、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、R6とR7は結合して環構造を形成してもよく、QはZ[−S(=O)2−O−]M、Z[−C(=O)−O−]M、Z[−P(=O)(−OH)−O−]MまたはZ[−S−]Mの「[ ]」の中に示される2価の基を表し(ただし、両側のZ、Mは基の結合方向を示すために記載している。)、Zは水素原子、またはハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜40の炭化水素基を表し、YとZは結合して環構造を形成してもよく、R6及び/またはR7はYと結合して環構造を形成してもよい。また、Lは電子供与性配位子を表し、qは0、1/2、1または2である。)
で示される金属錯体を触媒として使用し、一般式(1)
【化2】

(式中、R1は水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す。)
で示されるオレフィンと一般式(2)
【化3】

(式中、R2は、−OH、−OCOR3(R3は炭素原子数1〜5の炭化水素基を表す。)、−N(R42(R4は水素原子、炭素原子数1〜5の炭化水素基、炭素原子数6〜18の芳香族残基、または−COOR10(R10は炭素原子数1〜10の炭化水素基、または炭素原子数6〜10の芳香族残基を表す。)を表し、2つのR4は同じでも異なっていてもよい。)、またはハロゲン原子を表す。)
で示されるアリル化合物とを共重合することを特徴とする一般式(3)、及び一般式(4)
【化4】

(式中、R1及びR2は前記と同じ意味を表し、nとmはそれぞれのモノマーユニットのモル比を表す数値である。)
で示されるモノマーユニットを有する極性基含有アリルモノマー共重合体の製造方法。
【請求項2】
一般式(C1)で示される触媒が、一般式(C2)
【化5】

(式中、Y1はハロゲン原子、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されていてもよい炭素原子数1〜70の2価の炭化水素基を表し、Q、M、X、R5、R6、R7、L及びqは請求項1の記載と同じ意味を表す。)
で示される請求項1に記載の共重合体の製造方法。
【請求項3】
一般式(C2)中のQが−SO2−O−である(ただし、SはY1に結合し、OはMに結合する。)請求項2に記載の共重合体の製造方法。
【請求項4】
一般式(C2)で示される触媒が、一般式(C3)
【化6】

(式中、4個のR8はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数6〜18のアリールオキシ基、またはハロゲン原子を表し、M、R5、R6、R7、L及びqは請求項1の記載と同じ意味を表す。)
で示される請求項3に記載の共重合体の製造方法。
【請求項5】
一般式(C3)中のR6及びR7が、ともにシクロヘキシル基、シクロペンチル基、イソプロピル基、o−メトキシフェニル基、または2’,6’−ジメトキシ−2−ビフェニル基を表し、R8がすべて水素原子であるか、R8の一つがエチル基であり、残りの3つが水素原子である請求項4に記載の共重合体の製造方法。
【請求項6】
MがPdである請求項1〜5のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
【請求項7】
XがPである請求項1〜3のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法によって得られた極性基含有アリルモノマー共重合体。
【請求項9】
一般式(3−1)及び一般式(4)
【化7】

(式中、R1-1は、水素原子またはメチル基を表し、R2、n及びmは請求項1の記載と同じ意味を表す。)
で示されるモノマーユニットを有する共重合体であって、(A)主鎖の炭素原子数2以上の分岐が主鎖を構成する炭素原子1000個あたり1個以下であり、かつ(B)主鎖の少なくとも片末端に炭素−炭素二重結合を有する構造を有する極性基含有アリルモノマー共重合体。
【請求項10】
さらに、(C)ポリスチレン換算での数平均分子量Mnが1,000以上1,000,000以下、(D)分子量分布(Mw/Mn)が1.0以上3.0以下、かつ(E)一般式(3−1)及び一般式(4)のモノマーユニットのモル比nとmが次式
【数1】

を満足する構造を有する請求項9に記載の極性基含有アリルモノマー共重合体。
【請求項11】
一般式(3−1)及び一般式(4)で示されるモノマーユニットのみを有する請求項9または10に記載の極性基含有アリルモノマー共重合体。
【請求項12】
一般式(3−1)、一般式(4−1)、及び一般式(4−2)
【化8】

(式中、R1-1は前記と同じ意味を表し、n、m1及びm2は、それぞれのモノマーユニットのモル比を表す数値である。)
で示されるモノマーユニットを有する請求項9または10に記載の極性基含有アリルモノマー共重合体。
【請求項13】
一般式(3−1)のR1-1が水素原子である請求項9〜11のいずれかに記載の極性基含有アリルモノマー共重合体。
【請求項14】
一般式(4)で示されるモノマーユニットが、酢酸アリル、塩化アリル、臭化アリル、アリルアミン、N−アリルアニリン、及びN−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミンから選ばれる少なくとも1種のアリル化合物に由来する請求項9〜11のいずれかに記載の極性基含有アリルモノマー共重合体。
【請求項15】
一般式(3−1)中のR1-1が水素原子であり、一般式(4)で示されるモノマーユニットが、酢酸アリル、塩化アリル、臭化アリル、アリルアミン、N−アリルアニリン、及びN−t−ブトキシカルボニル−N−アリルアミンから選ばれる少なくとも1種のアリル化合物に由来する請求項9〜11のいずれかに記載の極性基含有アリルモノマー共重合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−68881(P2011−68881A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190224(P2010−190224)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】