説明

極端紫外光源装置及びコレクタミラー

【課題】LPP型EUV光源装置において、コレクタミラーのメンテナンスのコストを低減する。
【解決手段】ターゲット物質にレーザビームを照射して該ターゲット物質をプラズマ化することにより極端紫外光を生成する極端紫外光源装置において、極端紫外光を集光する際に用いられるコレクタミラー10であって、極端紫外光を反射する反射面が複数の領域に分割されており、複数の領域の内の一部の領域を含む交換用ミラー12と、複数の領域の内の他の領域を含むコレクタミラー本体11とを有し、交換用ミラー12がコレクタミラー本体11に対して取り外し可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ生成プラズマ方式の極端紫外(EUV:extreme ultra violet)光源装置においてEUV光を集光する際に用いられるコレクタミラーと、そのようなコレクタミラーが備えられた極端紫外光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴い、光リソグラフィの微細化も急速に進展しており、次世代においては、100〜70nmの微細加工、更には50nm以下の微細加工が要求されるようになる。そのため、例えば、50nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光源と縮小投影反射光学系(catadioptric system)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光源としては、ターゲットにレーザビームを照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(laser produced plasma:レーザ生成プラズマ)光源(以下において、「LPP式EUV光源装置」ともいう)と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)光源と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)光源との3種類がある。これらの内でも、LPP光源は、プラズマ密度をかなり大きくできるので黒体輻射に近い極めて高い輝度が得られ、ターゲット物質を選択することにより必要な波長帯のみの発光が可能であり、ほぼ等方的な角度分布を持つ点光源であるので光源の周囲に電極等の構造物がなく、2πsteradianという極めて大きな捕集立体角の確保が可能であること等の利点から、数十ワット以上のパワーが要求されるEUVリソグラフィ用の光源として有力であると考えられている。
【0004】
ここで、LPP式EUV光源装置におけるEUV光の生成原理について簡単に説明する。真空チャンバ内に供給されたターゲット物質に対してレーザビームを照射することにより、ターゲット物質を励起してプラズマ化させる。このプラズマからは、極端紫外光(EUV)光を含む様々な波長成分が放射される。そこで、その内の所望の波長成分(例えば、13.5nm)を選択的に反射する反射面を有するコレクタミラー(集光ミラー)を用いてEUV光を反射集光し、それを露光器に出力する。例えば、波長が13.5nm付近のEUV光を集光するコレクタミラーとしては、反射面にモリブデン(Mo)及びシリコン(Si)の薄膜が交互に積層されたミラーが用いられる。このようなMo/Si多層膜の層数は、例えば、数百層に及ぶ。
【0005】
このようなコレクタミラーは、プラズマ化したターゲット物質から放出される高速のイオンや中性粒子等の飛散物によって損傷を受け易い。そのため、コレクタミラーは、プラズマ生成点(発光点)からなるべく離して配置される。一方、EUV光の出力を稼ぐためには、コレクタミラーの捕集立体角を大きくする必要がある。従って、コレクタミラーの径は、必然的に大きくなる。例えば、実用的なコレクタミラーの直径は、200mm以上となる。
さらに、EUV光の集光率を高くするためには、コレクタミラーの反射面の表面粗さや形状について、高い精度を維持しなくてはならない。
これらの要因から、EUV光源装置において用いられるコレクタミラーの価格は、非常に高価になる。
【0006】
しかしながら、コレクタミラーは、プラズマ生成点から離して配置しても、プラズマから飛散するイオン等により、やはり損耗する。そして、コレクタミラーの反射面に形成された積層膜の層数が、所定の反射率を維持できない程度に減じたときが、コレクタミラーの寿命となる。なお、損耗したコレクタミラーであっても、ミティゲーション(緩和)技術によって、寿命を延長することは可能であるが、コレクタミラーの損傷を完全に防ぐことができるわけではない。そのため、EUV光源装置においては、高価なコレクタミラーを一定期間ごとに交換する必要があった。
【0007】
ところで、プラズマから放出される高速イオンや中性粒子は、ターゲット物質の状態や、そこに照射されるレーザビームの方向に応じた分布を形成する。即ち、多量の高速イオン等が放出される領域もあるし、わずかにしか放出されない領域もある。当然ながら、コレクタミラーの反射面の損耗が激しいのは、多量のイオン等が放出される領域である。そのため、反射面の一部において損耗が激しく、十分な反射率を維持できない場合には、それ以外の領域において損耗がそれほど進んでいなくても、コレクタミラー全体を交換しなくてはならず、無駄が多かった。
【0008】
関連する技術として、特許文献1には、X線源と、該X線源から輻射されるX線を受けて、そのうちの特定の波長のX線を反射する光学素子と、該光学素子を新たな光学素子と交換する交換手段とを具備するX線発生装置が開示されている。このX線発生装置(チャンバ)内には、光学素子として、4枚或いは6枚の多層膜放物線ミラーが取り付けられた円盤が設置されており、その内の1枚のミラーがX線源(プラズマ)からのX線を受けるように、各部が設置されている。なお、これらのミラーは、保護容器内に収納されている。このようなX線発生装置において、出力されるX線の量が低下すると、円盤を回動することによりX線を受けるミラーを新しいミラーに交替させる。このように、特許文献1においては、チャンバ内に予め複数のミラーを設置し、それらのミラーを順次使用することにより、全てのミラーを使用し終えるまで装置全体のメンテナンスを不要としている。しかしながら、使用しないミラーを配置するためのスペースがチャンバ内に必要になるので、X線発生装置全体が大型化してしまう。
【特許文献1】特開2002−311200号公報(第1、2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、LPP型EUV光源装置において、コレクタミラーのメンテナンスのコストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の1つ観点に係る極端紫外光源装置用コレクタミラーは、ターゲット物質にレーザビームを照射して該ターゲット物質をプラズマ化することにより極端紫外光を生成する極端紫外光源装置において、極端紫外光を集光する際に用いられるコレクタミラーであって、極端紫外光を反射する反射面が複数の領域に分割されており、複数の領域の内の一部の領域を含む第1のミラー部分と、複数の領域の内の他の領域を含む第2のミラー部分とを具備し、前記第1のミラー部分が前記第2のミラー部分に対して取り外し可能となっている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の部分に分割されたミラーによって1つのコレクタミラーを形成するので、コレクタミラーの損耗した部分のみを交換することができる。従って、コレクタミラーのメンテナンスに要する手間やコストを削減できるので、極端紫外光源装置の運転コスト全体を低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る極端紫外(EUV)光源装置用コレクタミラー(以下において、単に、コレクタミラーと言う)の構造を示す図である。図1の(a)は、本実施形態に係るコレクタミラーの正面図であり、図1の(b)は、図1の(a)に示す一点鎖線1B−1Bにおける断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るコレクタミラー10は、コレクタミラー本体11及び交換用ミラー12を含んでいる。コレクタミラー本体11及び交換用ミラー12は、所定の波長(例えば、13.5nm)を有するEUV光を選択的に反射する反射面11a及び12aをそれぞれ有している。これらの反射面11a及び12aには、例えば、モリブデン(Mo)及びシリコン(Si)が交互に積層されたMo/Si多層膜が形成されている。通常の使用状態(露光時)において、コレクタミラー本体11と交換用ミラー12とは、僅かな空隙16を隔てて、それらの反射面11a及び12aによって所定の位置(例えば、EUV光源装置から露光器への光伝送系の光路上)に焦点が形成されるように配置されている。なお、コレクタミラー本体11と交換用ミラー12との間の空隙16は、コレクタミラー本体11に対して交換用ミラー12の姿勢を調整する際に必要となる「調整しろ」である。なお、図示されていないが、コレクタミラー10には、プラズマから発生する熱による温度上昇を抑制するために、水冷等による冷却機構が設けられている。
【0014】
図2は、コレクタミラー本体11から交換用ミラー12を取り外した状態を示している。コレクタミラー本体11には、コレクタミラー本体支持部13が取り付けられている。一方、交換用ミラー12は、交換用ミラー姿勢調整部14を介して、交換用ミラー支持部15に、姿勢を調整することが可能な状態で固定されている。コレクタミラー本体支持部13に対して、交換用ミラー支持部15をはめ込むことにより、EUV光の反射面11a及び12a(図1)が形成される。その際に、コレクタミラー本体11に対する交換用ミラー12の姿勢を調整することにより、反射面の焦点を所定の位置に正確に形成することができる。
【0015】
図3は、図1に示すコレクタミラーが設置されるEUV光源装置の構成を示す模式図である。このEUV光源装置は、EUV光の生成が行われる真空チャンバ110と、ターゲット供給装置120と、レーザ発振器130とを含んでいる。真空チャンバ110の内部には、コレクタミラー10と、ターゲットノズル121と、ターゲット回収筒122が備えられている。また、真空チャンバ110には、後述するレーザビーム2を透過させるための窓111が設けられている。
【0016】
ターゲット供給装置120は、ターゲット物質をターゲットノズル121に供給する。ターゲット物質とは、レーザビーム2によって照射されることにより励起してプラズマ化する物質である。ターゲット物質としては、キセノン(Xe)、キセノンを主成分とする混合物、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、又は、低気圧状態でガスとなる水(HO)若しくはアルコール、錫(Sn)やリチウム(Li)等の溶融金属、水又はアルコールに錫や酸化錫や銅等の微小な金属粒子を分散させたもの、水にフッ化リチウム(LiF)や塩化リチウム(LiCl)を溶解させたイオン溶液等が用いられる。
【0017】
ターゲット物質の状態としては、液体又は固体のいずれであっても良い。例えば、キセノンのように常温で気体のターゲット物質を液体ターゲットとして用いる場合には、ターゲット供給装置120は、キセノンガスを加圧及び冷却することにより液化してターゲットノズル121に供給する。反対に、例えば、錫のように常温で固体の物質を液体ターゲットとして用いる場合には、ターゲット供給装置120は、錫を加熱することによりこれを液化して、ターゲットノズル121に供給する。
【0018】
ターゲットノズル121は、ターゲット供給装置120から供給されたターゲット物質1を噴射することにより、ターゲットジェット(噴流)やドロップレット(液滴)ターゲットを形成し、プラズマ発光点に供給する。ドロップレットターゲットを形成する場合には、所定の周波数でターゲットノズル121を振動させる振動機構が更に設けられる。
【0019】
レーザ発振器130は、高い繰り返し周波数でパルス発振できるレーザ光源であり、ターゲット物質に照射して励起させるためのレーザビーム2を射出する。また、レーザ発振器130の光路には集光レンズ131が配置されており、それにより、レーザ発振器130から射出したレーザビーム2を所定の位置(プラズマ発光点)に集光させる。なお、図3においては集光レンズ131を用いているが、それ以外の集光光学部品又は複数の光学部品を組み合わせることにより、集光光学系を構成しても良い。
【0020】
ターゲットノズル121から噴射されたターゲット物質1にレーザビーム2を照射することによりプラズマ3が発生し、そこから様々な波長を有する光が放射される。この内の所定の波長成分(例えば、13.5nm)が、コレクタミラー10によって反射集光される。図3においては、コレクタミラー10により、図の手前方向(プラスZ方向)に集光される。このEUV光は、例えば、出力光学系を介して露光器に出力される。
【0021】
ターゲット回収装置122は、ターゲットノズル121に対向する位置に配置されており、レーザビームを照射されることなくプラズマ化しなかったターゲット物質や、プラズマ化したターゲット物質の残渣等を吸引することにより回収する。
【0022】
このようなEUV光源装置において、コレクタミラー10は真空チャンバ110に対して精密にアライメントされている。即ち、理想的には、コレクタミラー10の第1の焦点(プラズマ発光点)において、ターゲット物質1に対してレーザビーム2を照射するようにする。それにより、プラズマ3から放射されたEUV光が、コレクタミラー10の第2の焦点(集光点)に集光される。なお、コレクタミラー10は、通常、十分な冷却が施されることにより、それ自体の熱変形は抑制されている。
【0023】
図4は、図1に示すコレクタミラー10の姿勢を調節する機構を示す模式図である。図4に示すように、コレクタミラー10を支持するコレクタミラー支持体13は、コレクタミラー姿勢調整部140に固定されている。
【0024】
コレクタミラー姿勢調整部140は、XYZステージ141と、βステージ142と、θステージ143とを含んでいる。これらのステージ141〜143は互いに機械的に結合されていると共に、真空チャンバ110(図3)の外部にマウントされており、真空チャンバ110とはベローズ等を介して連結されている。このようにステージを設置する理由は、真空チャンバ110の機械的振動及び熱伝導からステージ141〜143を隔離するためである。
【0025】
コレクタミラー姿勢制御装置150は、コレクタミラー10によって反射されるEUV光が所定の位置に正確に集光するように、ステージ141〜143を介してコレクタミラー10の姿勢を調整する。
また、交換用ミラー姿勢制御部160は、図1に示す交換用ミラー姿勢調整部14を制御することにより、交換用ミラー12の姿勢を調整する。
【0026】
IF(intermediate focus:中間集光点)イメージセンサ170は、例えば、CCD等の撮像素子を含むカメラであり、反射集光されて、EUVフィルタ171を透過するEUV光の像(集光イメージ)を撮像するために設けられている。後述するように、この集光イメージは、EUV光源制御装置100において、コレクタミラー10のアライメント時や、ミラー交換を行うタイミングを求める際に用いられる。EUVフィルタ171は、所定の波長成分(例えば、13.5nm)を選択的に透過させるフィルタであり、不要な波長成分がIFイメージセンサ170に入射するのを防いでいる。このようなIFイメージセンサ170は、アライメント以外の時には、破線で示す位置に退避させられている。
【0027】
コレクタミラー変位モニタ装置180は、コレクタミラー10の位置及び姿勢の変動を非接触でモニタしている。コレクタミラー10の変位を表す検出信号は、EUV光源制御装置100に出力される。図4に示すように、コレクタミラー変位モニタ装置180は、レーザ変位計181と、CCD等の撮像素子182と、コレクタミラーの傾きを検知するために用いられるレーザ光源183と、基準反射面184とを含んでいる。レーザ光源183は、例えば、半導体レーザである。また、基準反射面184は、コレクタミラー10の背面に取り付けられている。レーザ変位計181は、コレクタミラー10のXYZ軸の位置変動を検出する。また、撮像素子182は、レーザ光源183から射出して基準反射面184から反射された光を検出することにより、コレクタミラー10のθ角及びβ角の変位を検出する。
【0028】
このようなEUV光源装置において用いられるコレクタミラーは、次のようにして設計される。
図1に示すコレクタミラー10の内の交換用ミラー12の形状及び大きさは、プラズマ3から放出されるイオンがコレクタミラー10の反射面に与えるダメージの位置や形状や面積や深さに応じて決定される。これらの要素は、ターゲット物質1に照射されるレーザビーム2の波長、プラズマ発光点におけるレーザビーム2の集光サイズ、レーザビーム2の入射方向、ターゲット物質1の状態及びサイズ、ターゲット物質1の入射方向、ターゲット物質1に対するレーザビーム2の照射位置(即ち、プラズマ発光点)からコレクタミラー10までの距離、及び、集光立体角等に応じて異なってくる。
【0029】
そのため、まず、実験やシミュレーションを行うことにより、プラズマから放出されるイオンの分布を計測し、イオン濃度が一定の値以上となる領域をカバーするように、交換用ミラー12の形状及び大きさを決定する。イオンの分布を求めるためには、例えば、コレクタミラーの表面を模した仮想曲面を配置し、EUVプラズマを発生させた場合におけるイオン信号の分布を利用すれば良い。
【0030】
また、交換用ミラー12の別の設計方法として、真空チャンバにコレクタミラーを設置し、所定の回数(例えば、レーザビームを50M(メガ)ショット)だけプラズマを生成する。その後で、使用されたコレクタミラーを真空チャンバから一旦外し、コレクタミラーの反射面に残っているMo/Si多層膜の層数を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定する。そして、Mo/Si多層膜の損耗が所定の層数以上に至っている領域をカバーするように、交換用ミラー12の形状及び大きさを決定する。
【0031】
コレクタミラーのさらに別の設計方法として、まず、実際にEUV光を生成するのと同じ条件の下でコレクタミラーを使用することにより、反射率の低下を検出できる程度までコレクタミラーの反射面を損耗させる。このときの集光イメージ(コレクタミラーによって集光されたEUV光の像)を取得することにより、反射面における損耗領域を検出する。この損耗領域をカバーするように、交換用ミラー12の形状及び大きさを決定する。
【0032】
図5は、プラズマから放出されるイオンの分布を求める方法を説明するための図である。図5の(a)は、実験用のコレクタミラー20を示す正面図であり、図5の(b)は、図5の(a)に示す一点鎖線5B−5Bにおける断面図である。
図5の(a)に示すように、コレクタミラー20を、その焦点がプラズマ発光点に来るように設置し、ターゲット物質1にレーザビーム2を照射することによってプラズマ3を生成する。それにより、EUV光が、コレクタミラー20によって所定の方向に集光される。この実験を繰り返すことにより、コレクタミラー20の反射面21が次第に損耗して、損耗領域22が生じる。図5の(b)には、反射面21の一部が削られて、Mo/Si多層膜が薄くなっている損耗領域22が示されている。
【0033】
先にも述べたように、このような損耗領域22の位置や形状や深さは、EUV光の集光イメージを観察したり、コレクタミラー20をAFMによって観察したり、コレクタミラー20の反射面の各部における反射率を計測することによって測定することができる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係るコレクタミラーについて説明する。
図6は、本実施形態に係るコレクタミラーの反射面を示す正面図である。本実施形態に係るコレクタミラーは、図1に示す交換用ミラー12の替わりに、図6に示す交換用ミラー31を有している。その他の構成については、図1に示すものと同様である。
【0035】
交換用ミラー31は、2つの分割ミラー31a及び31bを含んでいる。これらの分割ミラー31a及び31bは、互いに僅かな空隙32を隔てて、コレクタミラー本体11に対して、独立して取り外しが可能な状態で取り付けられている。空隙32は、分割ミラー31a及び31bの姿勢を調整する際に必要となる「調整しろ」である。
【0036】
ここで、再び図5を参照すると、プラズマ3から放出されたイオンの分布がコレクタミラーの中心に対して偏っている場合には、損耗領域22も、コレクタミラーの反射面において非対称形となる。例えば、図5においては、イオン放射がレーザビーム2の入射方向において強くなっているので、コレクタミラー20の中心よりも左側において、反射面の損傷が激しくなる。
【0037】
このような場合に、コレクタミラーの中心の円形領域内であっても、あまり損耗していない部分が存在するので、その円形領域全体を交換してしまうと無駄が多い。そこで、本実施形態においては、交換用ミラーをさらに複数の領域に分割することにより、各領域を独立に交換可能としている。
【0038】
例えば、図5に示すように、プラズマ発光点に対して、損耗領域22が図の左側に偏っている場合には、図6に示す交換用ミラー31の内でも、左側の分割ミラー31aの損耗が早くなるので、高頻度で交換するようにする。一方、右側の分割ミラー31bは、多少は損耗するが、分割ミラー31aほどではないので、低頻度で交換するようにする。
このように、交換用ミラーをさらに複数の領域に分割し、各々を独立して交換できるようにすることにより、コレクタミラーのメンテナンスコストをさらに低減することが可能になる。
【0039】
次に、本実施形態に係るコレクタミラーの変形例について説明する。
図6においては、交換用ミラーを2つの領域に分割していたが、3つ以上の領域に分割しても良い。例えば、図7に示すコレクタミラーの交換用ミラー33は、4つの分割ミラー33a〜33dを含んでいる。この場合には、例えば、レーザビームの入射方向側(図5参照)に位置する分割ミラー33aを高頻度で交換するようにし、それ以外の分割ミラー33b〜33dを、低頻度で交換するようにする。それにより、反射面の消耗が激しい領域のみをミラー交換できるので、メンテナンスコストをさらに低減できるようになる。
【0040】
本実施形態においては、図6及び図7に示すように、交換用ミラーを、その回転軸について対称となるように分割することにより、高頻度で交換する分割ミラーと低頻度で交換する分割ミラーとを同一形状にすることが望ましい。それにより、分割ミラーの作製の手間及びコストを低減できるからである。
【0041】
次に、本発明の第1及び第2の実施形態に係るコレクタミラーの使用方法について、図8を参照しながら説明する。
ここで、図1や図6や図7に示すコレクタミラーにおいては、所定のタイミングで交換用ミラー12を交換することにより、コレクタミラー全体についてのメンテナンスの手間やコストを低減できる。しかしながら、以下に説明するようにコレクタミラーを使用することにより、コレクタミラーや交換用ミラー自体の寿命を延ばすことも可能になる。
【0042】
図8の(a)及び(b)に示すように、プラズマ3から放出されるイオンの分布が、コレクタミラー10の中心からいずれかの方向(図8の(b)においては、左側)に偏っている場合には、コレクタミラー10の損耗領域5も中心からずれることになる。そこで、コレクタミラー10がある程度損耗した場合に、交換用ミラー12を交換するのではなく、コレクタミラー10全体を所定の角度だけ回転させる(図8の(a)参照)。
【0043】
コレクタミラー10を回転させる時期は、例えば、後述するミラー交換基準を利用して設定しても良い。また、コレクタミラー10の回転角度は、イオンによって損耗させられるコレクタミラーの範囲をシミュレーションや実験等によって予め求め、その範囲に基づいて決定すれば良い。なお、実際の回転作業は、コレクタミラー10の位置ずれを防止するために、露光を行っていないときに実施する。
【0044】
しかしながら、図8の(c)に示すように、ミラーの中心部分については、コレクタミラー10を回転させても重複して損傷を受けるので、他の領域よりも深く損耗する。そこで、そのような領域をカバーするように、交換用ミラー12を形成する。そして、コレクタミラー10を所定の角度ずつ、所定の回数回転させた後に、交換用ミラー12を交換する。例えば、コレクタミラー10全体を10M(メガ)ショットごとに10度回転させ、3600Mショット(即ち、10回転)したときに、交換用ミラー12を交換する。ここで、ショット数とは、EUV光を生成するためにプラズマを発生させた回数のことである。
【0045】
一般に、コレクタミラーの一部であっても深く損耗した部分があれば、コレクタミラー全体を使用することができなくなる。しかしながら、本実施形態によれば、コレクタミラーを回転させながら使用することにより、ミラーの損耗を分散させ、損耗が一部に偏るのを防ぐことができる。従って、コレクタミラー及び交換用ミラーの寿命を延ばすことが可能になる。
【0046】
なお、以上の説明においては、コレクタミラー10全体を回転させることとしたが、コレクタミラー10を固定し、交換用ミラー12の部分のみを回転させるようにしても良い。この場合にも、交換用ミラーを均一に損耗させることができるので、交換用ミラー自体の寿命を延ばすことが可能になる。
【0047】
次に、本発明の第3の実施形態に係るコレクタミラーについて説明する。図9の(a)は、本実施形態に係るコレクタミラーの正面図であり、図9の(b)は、図9の(a)に示す一点鎖線9B−9Bにおける断面図である。
【0048】
図9の(a)に示すように、コレクタミラー40は、コレクタミラー本体41及び交換用ミラー42を含んでいる。また、交換用ミラー42は、回転体であるコレクタミラー40を、回転軸を含む2つの面によって切り取った形状を有している。即ち、図9の(b)の正面図において、交換用ミラー42は、円形のコレクタミラー40を扇状に切り取った形状を有している。一方、コレクタミラー本体41は、その残りの領域である。なお、本実施形態においては、交換用ミラー42を切り取る2つの面がなす角度を90度としているが(即ち、正面図における交換用ミラー42の中心角が90度)、この角度は0度より大きく180度以下の範囲であれば良い。
【0049】
また、コレクタミラー本体41には、コレクタミラー本体支持部43が取り付けられている。一方、交換用ミラー42は、交換用ミラー姿勢調整部44を介して、交換用ミラー支持部45に姿勢調整可能な状態で固定されている。これらの支持部43及び45、並びに、交換用ミラー姿勢調整部44の構造及び機能は、図1に示す支持部13及び15、並びに、交換用ミラー姿勢調整部14と同様である。しかしながら、ミラー形状が異なっていることから、コレクタミラー本体41及び交換用ミラー42に対する支持部等43〜45の取り付け位置は、図1に示すものとは若干異なっている。
【0050】
このようなコレクタミラー40は、例えば、次のようにして作製される。即ち、フルミラー(反射面を分割していないミラー)を2つ用意し、一方のフルミラーから、例えば、回転軸を通る1/4の領域を切り取る。これを、コレクタミラー本体41とする。また、他方のフルミラーを、回転軸を通る4つの領域に分割する。この内の1つを、交換用ミラー42とし、残りの3つを予備の交換用ミラー42とする。このようなコレクタミラー本体41と交換用ミラー42とを組み合わせることにより、コレクタミラー40が形成される。
【0051】
本実施形態によれば、コレクタミラーの反射面を回転対称となるように分割し、その内の一部を交換用ミラーとするので、交換用ミラーのために別途小型のミラーを作製する手間が省くことができる。従って、コレクタミラーの製造工程が簡単になると共に、材料コストを節減することが可能になる。
【0052】
図10は、本発明の第4の実施形態に係るコレクタミラーの反射面を示す正面図である。このコレクタミラー51は、正面図において円形である反射面を、中心角を90度ずつとして4つに分割することにより、交換用ミラー51aと、コレクタミラー本体(交換されない部分)51b〜51dとを形成したものである。本実施形態によれば、1つのフルミラーを複数に分割することにより、交換用ミラーとコレクタミラーとを作製することができるので、製造工程が簡単になると共に、材料コストを低減することが可能になる。
【0053】
図11は、本発明の第5の実施形態に係るコレクタミラーの反射面を示す正面図である。このコレクタミラー52は、正面図において円形である反射面を、中心角を120度ずつとして、3つに分割することにより、交換用ミラー52aと、コレクタミラー本体(交換されない部分)52b及び52cとを形成したものである。本実施形態に係るコレクタミラーは、コレクタミラー52全体における交換用ミラー52aの占める領域が大きいので、ミラーの損耗領域を広くカバーすることができる。
【0054】
図12は、本発明の第6の実施形態に係るコレクタミラーの反射面を示す正面図である。このコレクタミラー53は、高頻度交換用ミラー53aと、低頻度交換用ミラー53bと、コレクタミラー本体(交換されない部分)53c〜53eとを含んでいる。コレクタミラー本体53c〜53eは、正面図において円形である反射面を、中心角を90度ずつとして、4つに分割することによって形成されている。また、交換用ミラー53a及び53bは、その内の1つをさらに、小さい円の円周に沿って分割することによって形成されている。これらの内で、比較的損耗が激しい中心側のミラー53aを高頻度交換用とし、損耗はそれほど激しくない周縁側のミラー53bを低頻度交換用としている。
本実施形態によれば、交換用ミラーをさらに複数の領域に分割することにより、損耗度合いに応じて効率良くミラー交換することが可能になる。
【0055】
次に、本発明の一実施形態に係るコレクタミラーのアライメント方法について、図13を参照しながら説明する。以下においては、図1に示すコレクタミラー10をアライメントする場合について説明するが、第2〜第6の実施形態に係るコレクタミラーについても同様の方法によりアライメントされる。
図13に示すように、コレクタミラー本体11及び交換用ミラー12を含むコレクタミラー10は、コレクタミラー本体支持部13及びコレクタミラー姿勢調整部140を介して、姿勢調整可能な状態で真空チャンバ110(図3)内に設置されている。
【0056】
交換用ミラー12は、所定の交換基準が満たされたときに交換される。このミラー交換は、コレクタミラー本体11から交換用ミラー12を取り外し、反射面が損耗していない新しい交換用ミラー12をコレクタミラー本体11に取り付けるという手順で行われる。その後で、アライメントが行われる。なお、交換基準については、後で説明する。
【0057】
アライメントは、EUV光源制御装置100の制御の下で、IFイメージセンサ170から出力された信号に基づいて、コレクタミラー姿勢制御装置150と、交換用ミラー姿勢制御装置160とによって行われる。また、EUV光源制御装置100には、記憶装置101が備えられている。記憶装置101には、ミラー交換前にIFイメージセンサ170によって予め取得された集光イメージが記憶されている。
【0058】
アライメントを行う際には、まず、IFイメージセンサ170を、実線で示す観測位置(EUVフィルタ171の後ろ側)に移動させる。次に、真空チャンバ内にターゲット物質を噴射し、そこにレーザビームを照射してプラズマ化させることにより、EUV光4を生成する。EUV光源制御装置100は、IFイメージセンサ170からEUV光4の集光イメージを取得すると共に、ミラー交換前に撮像された集光イメージを記憶装置101から取得し、両者を比較する(一次調整)。この一次調整において、IFイメージセンサ170は、主に、ミラー交換していない領域、即ち、コレクタミラー本体11からの集光イメージを観測する。その理由は、この領域からの集光イメージは、ミラー交換前における集光イメージから変化していないはずであるが、ミラー交換時の振動等により、コレクタミラー本体11の姿勢が変化している可能性があるからである。
【0059】
一次観測に取得された集光イメージと、ミラー交換前に取得された集光イメージとにおいて、無視できない差が生じていた場合には、EUV光源制御装置100の制御の下で、コレクタミラー姿勢制御装置150が、集光イメージの差が許容範囲に収まるまでコレクタミラー姿勢調整部17を調整する。
【0060】
次に、EUV光源制御装置100は、IFイメージセンサ170から、交換用ミラー12からの集光イメージを取得する。そして、その集光イメージを、ミラー交換前に撮像された集光イメージと比較する(二次調整)。この二次調整において参照されるミラー交換前の集光イメージは、前回、ミラー交換を行った直後に撮像されたものであることが望ましい。そして、交換用ミラー姿勢制御装置160が、EUV光源制御装置100の制御の下で、これらの集光イメージの差が最小となるように、交換用ミラー姿勢調整部14を調整する。
二次調整が終了すると、IFイメージセンサ170は、観測位置から退避させられ、通常の露光動作のためのEUV光の生成が開始される。
【0061】
以上説明したアライメント方法を実施することにより、コレクタミラーを部分的に交換した後においても、露光器に対して適正な集光イメージを出力できるので、精度の良い露光動作を行うことが可能になる。
【0062】
次に、本発明の第1〜第6の実施形態に係るコレクタミラーが備えられたEUV光源源装置において交換用ミラーを交換する際に、そのタイミングを判断する基準(ミラー交換基準)について説明する。ミラー交換のタイミングは、次の(1)〜(5)の方法、又は、それらを組み合わせた方法によって決定される。
【0063】
(1)ミラー交換基準として、照射時間の積算値を用いる方法
生成されたEUV光によってコレクタミラーが照射された時間の積算値が所定値を超えた場合に、交換用ミラーを交換する。この照射時間は、次式によって求められる。
照射時間=(EUV光の発光信号がオンになっていた継続時間)
−(エラー等により、実際には発光していなかった時間)
図4に示すEUV光源制御装置100は、この照射時間を積算し、その積算値がシミュレーションや実験等によって予め取得された値を超えた場合に、ミラー交換信号を出力して、ミラー交換時に至ったことを画面表示や警告音等によりユーザに通知する。
【0064】
(2)ミラー交換基準として、ショット数を用いる方法
ショット数の積算値を求め、この積算値が所定値を超えた場合に交換用ミラーを交換する。
図14は、EUV光源装置において、ショット数の積算値を求める際に用いられるEUV光源装置の構成を示す模式図である。図14に示すように、この場合には、図4に示す構成に対して、EUV光を検出するEUV発光モニタ200が追加される。このEUV発光モニタ200は、コレクタミラー10周辺であって、EUV光の放射領域内に設置される。また、EUV光源制御装置100には、EUV発光モニタ200から出力される検出信号に基づいてショット数をカウントするための積算回路が設けられている。
【0065】
ミラー交換基準を求める際には、ショット数を積算しながらEUV光の生成及び露光を行う。そして、露光の合間に間欠的にIFイメージセンサ170を集光点付近に配置して、IFイメージセンサ170によって取得された集光イメージを観察し、交換用ミラー12の交換が必要とされる程度の損耗が認められた場合に、そのときのショット数の積算値をミラー交換基準値とする。
【0066】
また、ミラー交換を行った後で、通常の露光動作を再開すると、EUV光源制御装置100は、その直後からショット数の積算を開始する。そして、ショット数の積算値が予め取得されたミラー交換基準値以上になった場合に、EUV光源制御装置100は、ミラー交換信号を出力して、ミラー交換時に至ったことを画面表示や警告音等によりユーザに通知する。
【0067】
(3)ミラー交換基準としてEUVエネルギーの積算値を用いる方法
生成されたEUV光のエネルギー積算値が所定値を超えた場合に交換用ミラーを交換する。
図15は、EUV光源装置において、EUVエネルギーの積算値を求める際に用いられるEUV光源装置の構成を示す模式図である。図15に示すように、この場合には、図4に示す構成に対して、EUVエネルギーを検出するEUVエネルギーモニタ210が追加される。また、EUV光源制御装置100には、EUVエネルギーモニタ210から出力される検出信号に基づいてEUVエネルギーの積算値を算出するための積算回路が設けられている。
【0068】
ミラー交換基準を求める際には、EUVエネルギーを積算しながらEUV光源の生成及び露光を行う。そして、露光の合間に間欠的にIFイメージセンサ170を集光点付近に配置して、IFイメージセンサ170によって取得された集光イメージを観察し、交換用ミラー12の交換が必要とされる程度の損耗が認められた場合に、そのときのEUVエネルギーの積算値をミラー交換基準値とする。
【0069】
また、ミラー交換を行った後で、通常の露光動作を再開すると、EUV光源制御装置100は、その直後からEUVエネルギーの積算を開始する。そして、その積算値がミラー交換基準値以上になった場合に、EUV光源制御装置100は、ミラー交換信号を出力して、ミラー交換時に至ったことを画面表示や警告音等によりユーザに通知する。
【0070】
(4)ミラー交換基準としてコレクタミラーの損耗量の積算値を用いる方法
コレクタミラー反射面の損耗量(損耗した厚さ)の総量が所定値を超えた場合に、交換用ミラーを交換する。コレクタミラーの損耗量を求めるためには、(i)コレクタミラーの表面を直接モニタする方法、又は、(ii)ダミーのコレクタミラーをモニタする方法が用いられる。
【0071】
(i)コレクタミラーの表面を直接モニタする方法
図16は、コレクタミラーの損耗量を検出する装置の構成例を示している。この装置は、コレクタミラー10の反射面に光を照射する参照光投光器221と、コレクタミラー10の反射面から反射された光を受光する参照光受光器222とを含んでいる。参照光投光器221は、例えば、単波長光を射出するレーザ光源であり、EUV光源制御装置100(図4参照)の制御の下で、コレクタミラー10の反射面を2次元的に照射する。一方、参照光受光器222は、受光面に偏光フィルタが配置された撮像素子(例えば、CCD)であり、コレクタミラー10からの反射光を受光することにより検出信号を生成して、EUV光源制御装置100に出力する。EUV光源制御装置100は、この検出信号に基づいて干渉縞画像を生成し、それによって得られたコレクタミラー10の反射面の凹凸情報に基づいて、コレクタミラー10における損耗量を求める。
【0072】
この方法(i)の変形例として、参照光投光器221から細く絞られたレーザビームを射出し、EUV光源制御装置100の制御の下で、コレクタミラー10の反射面を2次元的に走査するようにしても良い。この場合には、参照光受光器222として、フォトダイオード等の簡単な装置を用いることができる。
【0073】
(ii)ダミーのコレクタミラーをモニタする方法
図17は、ダミーのコレクタミラーの損耗量を検出する装置の構成例を示している。この場合には、ダミーのコレクタミラー231と、ダミーのコレクタミラー231の反射面に光を照射する参照光投光器232と、ダミーのコレクタミラー231の反射面から反射された光を受光する参照光受光器233とが用いられる。
【0074】
ダミーのコレクタミラー10は、コレクタミラー10の近傍に設置されており、図示はされていないが、プラズマからの発生する熱による温度上昇を抑制するために、コレクタミラー10と同様に、水冷等の冷却機構が設けられている。ダミーのコレクタミラー231は、コレクタミラー10と同じ材料によって形成されていても良いし、コレクタミラー10とは異なる材料に、コレクタミラー10の反射面と同じMo/Si多層膜を形成したものであっても良い。いずれにしても、ダミーのコレクタミラー231の損耗量と、コレクタミラー10の損耗量とが関連付けられていれば良い。従って、両者の関連を予め取得することができれば、コレクタミラー10とは異なる材料(例えば、Si基板)をダミーのコレクタミラー231として用いても良い。
【0075】
参照光投光器232は、例えば、単波長光を射出するレーザ光源であり、EUV光源制御装置100の制御の下で、ダミーのコレクタミラー231の反射面を2次元的に照射する。一方、参照光受光器233は、受光面に偏光フィルタが配置されたCCD等の撮像素子であり、ダミーのコレクタミラー231からの反射光を受光することにより検出信号を生成し、EUV光源制御装置100に出力する。EUV光源制御装置100は、この検出信号に基づいて干渉縞画像を生成し、ダミーコレクタミラー231の反射面の凹凸情報に基づいて反射面の損耗量を求め、さらに、この損耗量をコレクタミラー10における損耗量に換算する。
【0076】
(5)ミラー交換基準としてコレクタミラーの反射率を用いる方法
コレクタミラーの反射率が所定の値を下回った場合に、交換用ミラーを交換する。コレクタミラーの反射率を求めるためには、(i)コレクタミラーの表面を直接モニタする方法、又は、(ii)ダミーのコレクタミラーをモニタする方法が用いられる。
【0077】
(i)コレクタミラーの表面を直接モニタする方法
まず、損耗していないコレクタミラーにおける反射率を予め求めておく。例えば、図14に示す構成において、EUV発光モニタ200によって検出された直接光の光量と、IFイメージセンサ170によって検出された反射光の光量との関係を取得し、それらの値に基づいて反射率Aを算出する。ミラー交換のタイミングを判断する際には、IFイメージセンサ170を随時観察位置に配置し、EUV光の集光イメージから光量を測定し、一方で、そのときのEUV発光モニタ200による直接光の光量も測定する。そして、それらの値に基づいて反射率Bを算出し、当初の反射率Aと比較する。その結果、反射率Bが所定の値より下回っていた場合、例えば、反射率Aの50%より小さい場合に、EUV光源制御装置100は、ミラー交換信号を出力する。
【0078】
(ii)ダミーコレクタミラーをモニタする方法
コレクタミラーの近傍に、コレクタミラーと同じ材料によって形成されたダミーのコレクタミラーを配置し、EUV発光モニタ200やIFイメージセンサ170等を用いてダミーのコレクタミラーの反射率を測定する。測定方法の詳細については、上記(i)と同様である。ダミーのコレクタミラーを用いる場合には、IFイメージセンサによってEUV光の光路が遮られることがないので、露光中においてもモニタすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、LPP方式の極端紫外光源装置、及び、そのような極端紫外光源装においてEUV光を集光する際に用いられるコレクタミラーにおいて利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るコレクタミラーを示す図である。
【図2】図1に示すコレクタミラーを、コレクタミラー本体と交換用ミラーとに取り外した様子を示す断面図である。
【図3】図1に示すコレクタミラーが備えられた極端紫外光源装置を示す模式図である。
【図4】図1に示すコレクタミラーの姿勢を調整する機構を示す模式図である。
【図5】プラズマからのイオン放出分布を求める実験を説明するための図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るコレクタミラーの反射面を示す正面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るコレクタミラーの変形例を示す正面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るコレクタミラーの使用する1つの方法を説明するための図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るコレクタミラーの反射面を示す図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るコレクタミラーの反射面を示す正面図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係るコレクタミラーの反射面を示す正面図である。
【図12】本発明の第6の実施形態に係るコレクタミラーの反射面を示す正面図である。
【図13】本発明の第1〜第6の実施形態に係るコレクタミラーのアライメント方法を説明するための図である。
【図14】ミラー交換基準としてショット数を用いる方法を説明するための図である。
【図15】ミラー交換基準としてEUVエネルギーの積算値を用いる方法を説明するための図である。
【図16】ミラー交換基準としてコレクタミラーの損耗量の積算値を、コレクタミラーを直接モニタして求める方法を説明するための図である。
【図17】ミラー交換基準としてコレクタミラーの損耗量の積算値を、ダミーのコレクタミラーをモニタして求める方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0081】
1…ターゲット物質、2…レーザビーム、3…プラズマ、10、40…コレクタミラー、11、41、51b〜51d、52b、52c、53c〜53e…コレクタミラー本体、11a、12a、21、51、52、53…反射面、12、31、33、42、51a、52a、53a、53b…交換用ミラー、13、43…コレクタミラー本体支持部、14、44…交換用ミラー姿勢調整部、15、45…交換用ミラー支持部、16、32…空隙、20…実験用コレクタミラー、22…損耗領域、31a、31b、33a〜33d…分割ミラー、100…EUV光源制御装置、101…記憶装置、110…真空チャンバ、111…窓、120…ターゲット供給装置、121…ターゲットノズル、122…ターゲット回収装置、130…レーザ発振器、131…集光レンズ、140…コレクタミラー姿勢調整部、141…XYZステージ、142…βステージ、143…θステージ、150…コレクタミラー姿勢制御装置、160…交換用ミラー姿勢制御装置、170…IFイメージセンサ、171…EUVフィルタ、180…コレクタミラー変位モニタ装置、181…レーザ変位計、182…撮像素子、183…レーザ光源、184…基準反射面、200…EUV発光モニタ、210…EUVエネルギーモニタ、221、232…参照用投光器、222、233…参照用受光器、231…ダミーのコレクタミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質にレーザビームを照射して前記ターゲット物質をプラズマ化することにより極端紫外光を生成する極端紫外光源装置において、極端紫外光を集光する際に用いられるコレクタミラーであって、
極端紫外光を反射する反射面が複数の領域に分割されており、前記複数の領域の内の一部の領域を含む第1のミラー部分と、前記複数の領域の内の他の領域を含む第2のミラー部分とを具備し、
前記第1のミラー部分が、前記第2のミラー部分に対して取り外し可能となっている、前記コレクタミラー。
【請求項2】
前記コレクタミラーが回転体形状を有し、
前記第1のミラー部分が、前記コレクタミラーを、回転軸を含む1つ又は2つの面によって切り取った形状を有する、請求項1記載のコレクタミラー。
【請求項3】
前記コレクタミラーが回転体形状を有し、
前記第1のミラー部分が、前記コレクタミラーを、回転対称となる複数の部分に分割したものの内の1つの形状を有する、
請求項1記載のコレクタミラー。
【請求項4】
前記第1のミラー部分が、前記コレクタミラーを、回転対称となる複数の部分に分割し、その内の1つを更に分割することにより形成された複数の部分を有する、請求項1記載のコレクタミラー。
【請求項5】
前記第1のミラー部分を支持する第1の支持部と、
前記第2のミラー部分を支持する第2の支持部と、
前記第1の支持部の姿勢を、前記第2の支持部に対して相対的に調整する姿勢調整部と、
をさらに具備する請求項1〜4のいずれか1項記載のコレクタミラー。
【請求項6】
ターゲット物質にレーザビームを照射して前記ターゲット物質をプラズマ化することにより極端紫外光を生成する極端紫外光源装置であって、
ターゲット物質を供給する手段と、
前記ターゲット物質に照射されるレーザビームを射出するレーザ光源と、
請求項1〜5のいずれか1項記載のコレクタミラーと、
を具備する前記極端紫外光源装置。
【請求項7】
前記コレクタミラーによって反射集光された極端紫外光を撮像するモニタ装置をさらに具備する請求項6記載の極端紫外光源装置。
【請求項8】
極端紫外光の発光時間、極端紫外光の発生回数、又は、極端紫外光のエネルギーを検出する検出装置と、
前記検出装置の検出結果に基づいて、前記第1のミラー部分を交換する時期を判断する制御装置と、
をさらに具備する請求項6又は7記載の極端紫外光源装置。
【請求項9】
前記制御装置が、前記検出装置の検出結果に基づいて、前記コレクタミラーを所定の角度だけ回転させるタイミングに至ったことを表す信号を出力すると共に、前記コレクタミラーを所定の回数回転させた後で、前記第1のミラー部分を交換するタイミングに至ったことを表す信号を出力する、請求項8記載の極端紫外光源装置。
【請求項10】
前記制御装置が、前記検出装置の検出結果に基づいて、前記コレクタミラーの内の複数のミラー部分が交換タイミングに至ったことを表す複数の信号を、それぞれ異なる頻度で出力する、請求項8記載の極端紫外光源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図4】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2008−103545(P2008−103545A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285104(P2006−285104)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「極端紫外線(EUV)露光システムの基盤開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】