説明

楽譜表示システム

【課題】 身体的な特徴を入力することで、適切な難度の楽曲の候補を提示する。
【解決手段】 電子楽器10のCPU21は、演奏者の身長を示す身長データおよび指の開き度合いを示す音程データを取得して、楽譜配信サーバ30に送信する。楽譜配信サーバ30の制御部32は、受信した身長データに対応した、演奏者についてのダンパペダルの使用の難度を示すペダル難度を取得するとともに、受信した音程データに対応した、演奏者についての和音演奏の難度を示す和音難度を取得し、演奏者についてのペダル難度および和音難度とそれぞれ合致した楽曲を選択して、楽曲候補の楽譜タイトルリストを生成して、電子楽器10に送信する。楽譜配信サーバ30の制御部32は、電子楽器10からの選択された楽曲の情報に基づき、記憶装置から楽譜データを読み出して、電子楽器10に送信し、電子楽器10は表示部14の画面上に、楽譜の画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽譜表示が可能な楽譜表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、その上面に配置された液晶表示装置に、楽譜を表示することができる電子楽器が提案されている。また、電子楽器が、その記憶装置中に大量の楽譜データを保持するのではなく、電子楽器(或いは、電子楽器と接続されたパーソナルコンピュータ)が、インターネットなどネットワークを介して、サーバ(楽譜配信サーバ)とデータ通信し、所望の楽譜データを受信するようなシステムも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−265337号公報
【特許文献2】特開2003−208185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば、特許文献1には、サーバからの楽譜の画像データである楽譜データ、および、自動演奏やいわゆるガイド演奏をするための楽曲データを受信して、楽曲データを再生したときに、演奏中の音符を含む楽譜を、表示装置に表示する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、複数人の演奏者のそれぞれが、サーバを介して相互にデータ通信することにより、各演奏者の端末装置に、楽曲の所定のパート譜を配信されるように構成された技術が開示されている。
【0006】
上記サーバを利用した楽譜の配信の場合、予め楽譜の内容を確認することが難しい。たとえば、電子楽器がサーバに対して、試用として、楽譜の最初のページの配信を求め、サーバが、楽譜の最初のページのデータを電子楽器に送信し、電子楽器の表示装置の画面上に、当該最初のページを表示することが考えられる。しかしながら、楽譜の最初のページ(或いは、任意の1ページ)の楽譜をみただけで、その楽曲の難度を判断することは不可能である。特に、小学生など身長や手の大きさが、大人と比較して小さい演奏者の場合、演奏が非常に困難なものが存在する。
【0007】
そこで、本発明は、身体的な特徴を入力することで、適切な難度の楽曲の候補を提示可能な楽譜表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、楽曲ごとの楽譜データに基づく楽譜の画像を表示する楽譜表示システムであって、
前記楽譜データにおいて、それぞれの楽曲に対して、当該楽曲についてダンパペダルの使用の難度を示すペダル難度と、当該楽曲について和音演奏の難度を示す和音難度とが関連付けられ、
演奏者の身長を示す身長データ、および、演奏者の指の開き度合いを示す音程データを受け入れる演奏者情報受付手段と、
前記身長データに対応した、前記演奏者についてのダンパペダルの使用の難度を示すペダル難度を取得するペダル難度取得手段と、
前記音程データに対応した、前記演奏者についての和音演奏の難度を示す和音難度を取得する和音難度取得手段と、
前記演奏者についてのペダル難度および和音難度と、記憶装置に格納された楽譜データにおいて楽曲のそれぞれに関連付けられたペダル難度および和音難度とを比較して、前記演奏者についてのペダル難度および和音難度と合致した楽曲を、楽曲候補として選択する楽曲候補選択手段と、
前記楽曲候補選択手段により選択された楽曲候補から、前記演奏者により選択された所定の楽曲の楽譜データを、前記記憶装置から読み出して、前記読み出された楽譜データに基づく楽譜の画像を生成して前記表示手段に表示する楽譜画像生成手段と、
前記楽譜の画像を表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする楽譜表示システムにより達成される。
【0009】
好ましい実施態様においては、前記楽曲候補選択手段が、前記演奏者についてのペダル難度と、同等或いはそれより難度の低いペダル難度を有し、かつ、前記演奏者についての和音難度と、同等或いはそれより難度の低いペダル難度を有する楽曲を選択する。
【0010】
また、好ましい実施態様においては、前記演奏者情報受付手段が、演奏者が指を開いた状態で鍵盤を押鍵した押鍵情報を受け入れ、前記押鍵された鍵の最高音と最低音の差を音程データとして取得する。
【0011】
別の好ましい実施態様においては、前記楽譜表示システムは、
前記表示手段、前記演奏者情報受付手段および前記楽譜画像生成手段を備えたクライアント装置と、
前記ペダル難度取得手段、前記和音難度取得手段、および、前記楽曲候補取得手段と、を備えた楽譜配信サーバと、を備え、
前記クライアント装置と、前記楽譜配信サーバとの間が、データ通信ネットワークにて接続されている。
【0012】
また、好ましい実施態様においては、前記クライアント装置が、複数の鍵を備えた鍵盤、および、押鍵された鍵の音高にしたがった楽音の楽音データを生成する楽音データ生成手段を備えた電子楽器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、身体的な特徴を入力することで、適切な難度の楽曲の候補を提示可能な楽譜表示システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる電子楽器の外観を示す図である。
【図2】図2は、本実施の形態にかかる電子楽器の構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図3】図3は、本実施の形態にかかる電子楽器を含む楽譜配信・表示システムの構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図4】図4は、本実施の形態にかかる電子楽器にて実行される処理の概略を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本実施の形態にかかる演奏者情報入力処理の例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本実施の形態にかかる楽譜配信サーバにおける、電子楽器とのデータ通信処理の例を示すフローチャートである。
【図7】図7(a)、(b)は、それぞれ、本実施の形態にかかる変換テーブル群を構成するダンパ難度変換テーブルおよび和音難度変換テーブルの例を示す図である。
【図8】図8は、本実施の形態にかかる楽譜データのデータ構成の一例を示す図である。
【図9】図9は、本実施の形態にかかる鍵盤処理の例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の他の実施の形態にかかる電子楽器システムの構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図11】図11は、他の実施の形態にかかる演奏者情報入力処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる電子楽器の外観を示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる電子楽器10は、鍵盤11を有する。また、鍵盤11の上部には、テンキー12を含む種々のスイッチ群、液晶表示装置を含む表示部14が配置される。液晶表示装置の画面上には、楽譜、発音する楽音の音色など種々の情報が表示され得る。
【0016】
図2は、本実施の形態にかかる電子楽器の構成を示すブロックダイヤグラムである。図2に示すように、本実施の形態にかかる電子楽器10は、CPU21、ROM22、RAM23、サウンドシステム24、鍵盤11、入力部13、表示部14および通信インタフェース(I/F)15を備える。
【0017】
鍵盤11は、複数の鍵を有し、CPU21により、鍵のオン、オフ、および、鍵オンされたときの押鍵速度(ベロシティ)が検出される。入力部13は、テンキー12や、他の種々のスイッチ群(たとえば、カーソルキーなど)を有する。また、入力部13には、演奏者が足で踏み込むダンパペダル(図示せず)が含まれる。
【0018】
CPU21は、電子楽器10全体の制御、鍵盤11の鍵の押鍵や入力部13を構成するスイッチ(たとえば、テンキー12)の操作の検出、鍵やスイッチの操作にしたがったサウンドシステム24の制御、後述する演奏者に関する情報を入力して楽譜リストや楽譜データを取得する演奏者情報入力処理、通信I/F15を介した楽譜配信サーバ30(図2)とのデータ通信処理など、種々の処理を実行する。
【0019】
ROM22は、CPU21に実行させる種々の処理、たとえば、電子楽器10全体の制御、鍵盤11の鍵の押鍵や入力部13を構成するスイッチ(たとえば、テンキー12)の操作の検出、鍵やスイッチの操作にしたがったサウンドシステム24の制御、後述する演奏者に関する情報を入力して楽譜リストや楽譜データを取得する演奏者情報入力処理、通信I/F15を介した楽譜配信サーバ30(図2)とのデータ通信処理などの、処理プログラムを記憶する。また、ROM22は、ピアノ、ギター、バスドラム、スネアドラム、シンバルなどの楽音を生成するための波形データを格納した波形データエリアを有する。RAM23は、ROM22から読み出されたプログラムや、処理の過程で生じたデータを記憶する。また、RAM23は、通信I/F15を介して受信した楽譜データや楽曲データを記憶する。
【0020】
サウンドシステム24は、音源部26、オーディオ回路27およびスピーカ28を有する。音源部26は、たとえば、押鍵された鍵についてのノートオンイベントをCPU21から受信すると、ROM22の波形データエリアから所定の波形データを読み出して、所定の音高の楽音データを生成して出力する。また、音源部26は、波形データ、特に、スネアドラム、バスドラム、シンバルなど打楽器の音色の波形データを、そのまま楽音データとして出力することもできる。オーディオ回路27は、楽音データをD/A変換して増幅する。これによりスピーカ28から音響信号が出力される。
【0021】
通信I/F15は、CPU21の指示にしたがって、インターネット45(図2)を介して、サーバ30との間のデータ通信を実行する。
【0022】
図3は、本実施の形態にかかる電子楽器を含む楽譜配信・表示システムの構成を示すブロックダイヤグラムである。図3に示すように、楽譜配信・表示システム50は、電子楽器10および楽譜配信サーバ30を含む。電子楽器10と楽譜配信サーバ30とは、インターネット45を介してデータ通信が可能である。楽譜配信サーバ30は、インターネット45を介したデータ通信を制御する通信I/F31、楽音配信サーバ30における種々の処理を実行する制御部32、および、種々のデータを格納する記憶装置33を備えている。
【0023】
記憶装置33には、種々の楽曲の楽譜のデータである楽譜データ40、および、当該楽曲を自動演奏するための楽曲データ41が格納されている。各楽曲の楽譜データ40には、楽曲演奏におけるダンパペダルの踏み込みの難度を示すダンパ難度42と、演奏される和音の難度を示す和音難度43が付加されている。楽曲データ41は、たとえば、所定の音高で所定のベロシティでの発音を指示するノートオンイベント、発音時間を示すゲートタイム、および、次のノートオンイベントまでの時間間隔を示すステップタイムを有している。ダンパ難度42および和音難度43については後述する。なお、ダンパ難度および和音難度については、記憶装置33中に変換テーブル群44が設けられている。
【0024】
図4は、本実施の形態にかかる電子楽器にて実行される処理の概略を示すフローチャートである。図4に示すように、電子楽器10のCPU21は、電子楽器10の電源が投入されると、RAM23中のデータや、表示部14の画像のクリアを含むイニシャライズ処理を実行する(ステップ401)。イニシャライズ処理(ステップ401)が終了すると、CPU21は、演奏者情報入力処理を実行する(ステップ402)。
【0025】
図5は、本実施の形態にかかる演奏者情報入力処理の例を示すフローチャートである。CPU21は、入力部13のうち、演奏者情報設定のためのスイッチ操作が行なわれたか判断する(ステップ501)。ステップ501でNoと判断された場合には、演奏者情報入力処理は終了する。ステップ501でYesと判断された場合には、CPU21は、演奏者によるテンキー入力があるかを判断する(ステップ502)。本実施の形態において、演奏者は、身長を示す数字を、テンキーを用いて入力する。
【0026】
ステップ502でYesと判断された場合には、CPU21は、テンキー入力された値を身長データとして、RAM23に格納する。次いで、CPU21は、演奏者による鍵入力があったかを判断する(ステップ504)。本実施の形態においては、テンキー入力の後、演奏者は、指を開いた状態で、少なくとも親指と小指で、任意の鍵を押鍵する。CPU21は、押鍵された鍵の最高音と最低音の差(鍵間隔と称する)を、音程データとして、RAM23に格納する。
【0027】
次いで、CPU21は、通信I/F15を介して、身長データおよび音程データを、楽譜配信サーバに送信する(ステップ505)。図6は、本実施の形態にかかる楽譜配信サーバにおける、電子楽器とのデータ通信処理の例を示すフローチャートである。図6に示すように、楽譜配信サーバ30の通信I/F31が、電子楽器10からの身長デ−タおよび音程データを受信すると(ステップ601)、制御部32は、受信した身長データに基づき、ダンパ難度を取得する(ステップ602)とともに、受信した音程データに基づき、和音難度を取得する(ステップ603)。たとえば、楽譜配信サーバ30の記憶装置33に、変換テーブル群44を設け、その中のテーブルを参照することにより、身長データに対応するダンパ難度、および、音程データに対応する和音難度が得られる。
【0028】
図7(a)、(b)は、それぞれ、本実施の形態にかかる変換テーブル群を構成するダンパ難度変換テーブルおよび和音難度変換テーブルの例を示す図である。図7(a)に示すように、ダンパ難度変換テーブル700では、身長データの範囲ごとに、範囲とペダル難度とが対応付けられている。また、図7(b)に示すように、和音難度変換テーブル710では、音程データ(鍵における音高差)の範囲ごとに、範囲と和音難度とが対応付けられている。なお、本実施の形態においては、ダンパ難度および和音難度は、それぞれ、「1」〜「5」の何れかの値をとり、値が大きくなるのにしたがって、ダンパペダルの使用の難度や、楽曲における和音の難度が高くなることを示している。
【0029】
次いで、制御部32は、記憶装置33の楽譜データを検索して、楽譜データの楽曲にそれぞれ付与されているダンパ難度および和音難度が、前記ステップ602、603で取得したダンパ難度および和音難度と合致する楽譜のタイトルを列挙した楽譜タイトルリストを生成する(ステップ604)。この楽曲タイトルリストに列挙された楽譜タイトルが、楽曲候補となる。
【0030】
図8は、本実施の形態にかかる楽譜データのデータ構成の一例を示す図である。図8に示すように、楽譜データ800は、実際の楽譜を示す画像データ(図示せず)のほか、タイトル、作曲者、ダンパ難度および和音難度を示す値を含むレコードを有する(たとえば、符号810、811参照)。検索においては、
身長データに基づくペダル難度≧楽譜データのペダル難度、かつ、
音程データに基づく和音難度≧楽譜データのペダル難度
が成立するような、楽譜データのレコードを見出せば良い。制御部32は、通信I/F31を介して、電子楽器10に、楽曲候補が列挙された楽譜タイトルリストを送信する(ステップ605)。
【0031】
電子楽器10の通信I/F15が、楽譜タイトルリストを受理すると、CPU21は、受信した楽譜タイトルリストを含む画像を表示部14の画面上に表示する(ステップ507)。演奏者は、表示部14の画面上に表示された楽譜タイトルリストを参照し、入力部13のスイッチ(たとえばカーソルキー)を操作して、所望の楽譜タイトルを選択する(ステップ508でYes)。ステップ508でYesと判断された場合には、CPU21は、通信I/F15を介して、楽譜配信サーバ30に、選択された楽譜タイトルを送信する(ステップ510)。
【0032】
楽譜配信サーバ30の通信I/F31が、電子楽器10からの楽譜タイトルを受信すると(ステップ606)、楽譜配信サーバ30の制御部32は、記憶装置33から、選択された楽譜タイトルを有する楽譜データおよび楽曲データを読み出し、通信I/F31を介して、電子楽器10に送信する(ステップ607)。電子楽器10の通信I/F15が、楽譜データおよび楽曲データを受信すると、CPU21は、これら楽譜データおよび楽曲データを、RAM23に格納するとともに、楽譜データに基づく楽譜を含む画像を、表示部14の画面上に表示する(ステップ511)。
【0033】
ステップ508でNo、つまり、楽譜タイトルが選択されていない状態のときに、演奏者が入力部13の終了スイッチをオンすると(ステップ509でYes)、演奏者情報入力処理は終了する。終了スイッチがオンされていなければ(ステップ509でNo)、ステップ508に戻り、楽譜タイトルの選択の受理を待機する。
【0034】
演奏者情報入力処理(ステップ402)が終了すると、CPU21は、入力部13を構成するスイッチのそれぞれの操作(演奏者情報入力処理にかかるスイッチ操作以外のスイッチ操作)を検出し、検出された操作にしたがった処理を実行するスイッチ処理を実行する(ステップ403)。
【0035】
たとえば、スイッチ処理(ステップ403)においては、音色指定スイッチや、RAM23に格納された楽譜データの指定スイッチ、選択された楽曲の自動演奏のオン・オフ指定スイッチなど、種々のスイッチの操作が検出される。音色指定情報、楽譜指定情報、自動演奏のオン・オフ指定情報(自動演奏フラグ)は、RAM23の所定の領域に格納される。
【0036】
その後、CPU21は、鍵盤処理を実行する(ステップ404)。図9は、本実施の形態にかかる鍵盤処理の例を示すフローチャートである。鍵盤処理において、CPU21は、鍵盤11の鍵を走査する(ステップ901)。鍵の走査結果である鍵イベント(鍵オン或いはオフ)は、RAM23に一時的に記憶される。CPU21は、RAM23に記憶された鍵の走査結果を参照して、ある鍵について新規の鍵イベントが有るか否かを判断する(ステップ902)。ステップ902でYesと判断された場合には、CPU21は、新規の鍵イベントが鍵オンであるか否かを判断する(ステップ903)。ステップ903でYesと判断された場合には、CPU21は、スイッチ処理で指定されていた音色で、当該鍵オンがあった鍵の音高の楽音を、その鍵についてのベロシティで発音するためのノートオンイベントを生成し、音源部26に出力する(ステップ904)。
【0037】
その一方、ステップ903でNo、つまり、新規の鍵イベントが鍵オフであった場合には、CPU21は、鍵オフとなった鍵についてのノートオフイベントを生成し、音源部26に出力する(ステップ905)。ステップ904、905の後、CPU21は、全ての鍵について処理が終了したかを判断し(ステップ906)、処理が終了していない場合には(ステップ906でNo)、ステップ902に戻る。その一方、ステップ906でYesと判断された場合には、鍵盤処理を終了する。
【0038】
鍵盤処理(ステップ404)が終了すると、CPU21は、自動伴奏処理を実行する(ステップ405)。自動伴奏処理は、自動演奏がオン(自動演奏フラグが「1」)であるときに、以下の処理が実行される。CPU21は、RAM23に格納された楽曲データを、アドレス情報ADに基づいて読み出す。アドレス情報ADは初期的には、楽曲データの先頭を指定している。
【0039】
アドレス情報が、ステップタイムであれば、CPU21は、別途カウントしているタイマ値を参照して、ステップタイムが経過しているかを判断し、ステップタイムが経過していれば、アドレス情報ADをインクリメントして、RAM23から、次のノートオンイベントを読み出して、当該ノートオンイベントを音源部26に出力する。その後、CPU21は、上記タイマをクリアするとともに、アドレス情報ADをインクリメントする。
【0040】
アドレス情報が、ゲートタイムであった場合には、CPU21は、タイマ値を参照して、ゲートタイムが経過しているかを判断し、ゲートタイムが経過していれば、ノートオフすべき音高の楽音についてノートオフイベントを生成して、音源部26に出力する。また、CPU21は、アドレス情報をインクリメントする。このようにして、RAM23に格納された楽曲データに基づき、ノートオンイベントおよびノートオフイベントが生成され、音源部26に出力される。
【0041】
その後、音源部26において発音処理が実行される(ステップ405)。発音処理においては、音源部26は、CPU21から与えられたノートオンイベントのそれぞれに基づき、ノートオンイベントに含まれる音色、音高にしたがって、ROM22の楽音波形データを読み出し、ノートオンイベントに含まれるベロシティに基づく音量レベルを乗算することで楽音データを生成する。音源部26にて生成された楽音データは、オーディオ回路27に出力され、スピーカ28から所定の楽音が発生する。また、発音処理においては、音源部26は、CPU21から与えられたノートオフイベントのそれぞれに基づき、消音が指示された楽音を消音する。
【0042】
発音処理(ステップ406)が終了すると、CPU21は、楽譜表示処理を実行する(ステップ407)。本実施の形態において、楽譜表示処理では、演奏者の演奏に伴って、表示される楽譜の部分が更新されるのが望ましい。たとえば、CPU21は、鍵盤処理において検出されている新規の鍵オンイベントと、楽曲データのノートオンイベントとを比較して、楽曲中、現在演奏されている音符を見出し、当該音符を含む楽譜の画像を生成して、表示部14の画面上に表示する。楽譜表示処理(ステップ407)の後、CPU21は、その他の処理を実行して(ステップ408)、ステップ402に戻る。その他の処理には、たとえば、通信I/F15を介した通信に関する処理などが該当する。
【0043】
本実施の形態においては、電子楽器10のCPU21は、演奏者の身長を示す身長データおよび指の開き度合いを示す音程データを取得して、楽譜配信サーバ30に送信する。楽譜配信サーバ30の制御部32は、受信した身長データに対応した、演奏者についてのダンパペダルの使用の難度を示すペダル難度を取得するとともに、受信した音程データに対応した、演奏者についての和音演奏の難度を示す和音難度を取得する。また、楽譜配信サーバ30の制御部32は、演奏者についてのペダル難度および和音難度と、記憶装置33中の楽曲についてのペダル難度および和音難度を参照して、演奏者についてのペダル難度および和音難度とそれぞれ合致した楽曲を選択して、楽曲候補の楽譜タイトルリストを生成して、電子楽器10に送信する。また、楽譜配信サーバ30の制御部32は、電子楽器10からの選択された楽曲の情報に基づき、記憶装置から楽譜データを読み出して、電子楽器10に送信し、電子楽器10は表示部14の画面上に、楽譜の画像を表示する。
【0044】
上述したように、本実施の形態によれば、演奏者の身体的な特徴に基づいて、演奏が可能であると考えられる適切な楽曲の候補を演奏者に提示し、その楽譜を提供することが可能となる。
【0045】
また、本実施の形態において、楽譜配信サーバ30の制御部32は、演奏者についてのペダル難度と、同等或いはそれより難度の低いペダル難度を有し、かつ、演奏者についての和音難度と、同等或いはそれより難度の低いペダル難度を有する楽曲を、楽曲候補として選択する。これにより、演奏者は、自己の身体的な特徴に基づく最も難度の高い楽曲およびより難度の低い楽曲を、楽曲候補として知ることが可能となる。
【0046】
本実施の形態においては、電子楽器10のCPU21は、演奏者が指を開いた状態で鍵盤11を押鍵した押鍵情報を受け入れ、押鍵された鍵の最高音と最低音の差を音程データとして取得する。これにより、演奏者による簡単な操作で、演奏者の手の大きさに応じた適切な音程データを得ることができ、その結果、適切な和音難度を得ることが可能となる。
【0047】
また、本実施の形態においては、電子楽器10が、身長データおよび音程データを取得して、インターネット40を介して、楽譜配信サーバ30に送信し、楽譜配信サーバ30の制御部32が、演奏者についての身長データに基づくペダル難度および音程データに基づく和音難度を取得して、楽曲候補を含む楽譜タイトルリストを生成し、電子楽器10に送信する。また、楽譜配信サーバ30は、選択された楽曲の楽譜データを、電子楽器10に送信する。これにより、電子楽器10は、大量の楽譜データを、内部の記憶装置に保持する必要が無い。
【0048】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0049】
たとえば、前記実施の形態においては、電子楽器10が、身長データおよび音程データを、楽譜配信サーバ30に送信し、楽譜配信サーバから、楽譜データなどを提供されるように構成されている。しかしながら、これに限定されるものではなく、電子楽器10において、楽譜データを保持するような構成であっても良い。図10は、本発明の他の実施の形態にかかる電子楽器システムの構成を示すブロックダイヤグラムである。図10に示すように、他の実施の形態にかかる電子楽器100は、CPU21、ROM22、RAM23、サウンドシステム24、鍵盤11、入力部13および表示部14に加えて、大規模記憶装置133を有している。大規模記憶装置133は、図2に示す楽音配信サーバ30と同様のデータを記憶している。すなわち、大規模記憶装置133には、楽譜データ40、楽曲データ41、および、変換テーブル群44が格納される。楽譜データ44には、図示しないが、楽曲ごとに、ダンパ難度および和音難度が付与されている。
【0050】
図11は、他の実施の形態にかかる演奏者情報入力処理の例を示すフローチャートである。図11に示す演奏者情報入力処理は、基本的には、図5および図6に示す処理において、データ送受信を除いたものに相当する。図11のステップ1101〜1105は、図5のステップ501〜506に対応する。また、図11のステップ1106〜1107は、図6のステップ602〜603に対応する。
【0051】
ステップ1107の後、CPU21は、記憶装置133の楽譜データを検索して、楽譜データの楽曲にそれぞれ付与されているダンパ難度および和音難度が、ステップ1106、1107で取得したダンパ難度および和音難度と合致する楽譜のタイトルを列挙した楽譜タイトルリストを生成し、生成された楽譜タイトルリストを表示部14の画面上に表示する(ステップ1108)。演奏者は、表示部14の画面上に表示された楽譜タイトルリストを参照し、入力部13のスイッチ(たとえばカーソルキー)を操作して、所望のタイトルを選択する(ステップ1109でYes)。ステップ1109でYesと判断された場合には、CPU21は、選択された楽譜タイトルを有する楽譜データを読み出して、楽譜を含む画像を、表示部14の画面上に表示する(ステップ1111)。ステップ1109でNoのときに、演奏者が入力部13の終了スイッチをオンすると(ステップ1110でYes)、演奏者情報入力処理は終了する。そうでなければ、ステップ1109に戻る。
【0052】
また、前記実施の形態においては、電子楽器10が、身長データおよび音程データを取得して、これらデータを楽譜配信サーバ30に送信し、楽譜配信サーバ30が、受信した身長データに基づきペダル難度を取得し、また、受信した音程データに基づき和音難度を取得している。しかしながら、これに限定されるものではなく、電子楽器10が、ペダル難度および和音難度を取得し、ペダル難度および和音難度を、楽譜配信サーバ30に送信するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0053】
10 電子楽器
11 鍵盤
12 テンキー
13 入力部
14 表示部
15 通信I/F
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 サウンドシステム
26 音源部
27 オーディオ回路
28 スピーカ
30 楽譜配信サーバ
31 通信I/F
32 制御部
33 記憶装置
40 楽譜データ
41 楽曲データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲ごとの楽譜データに基づく楽譜の画像を表示する楽譜表示システムであって、
前記楽譜データにおいて、それぞれの楽曲に対して、当該楽曲についてダンパペダルの使用の難度を示すペダル難度と、当該楽曲について和音演奏の難度を示す和音難度とが関連付けられ、
演奏者の身長を示す身長データ、および、演奏者の指の開き度合いを示す音程データを受け入れる演奏者情報受付手段と、
前記身長データに対応した、前記演奏者についてのダンパペダルの使用の難度を示すペダル難度を取得するペダル難度取得手段と、
前記音程データに対応した、前記演奏者についての和音演奏の難度を示す和音難度を取得する和音難度取得手段と、
前記演奏者についてのペダル難度および和音難度と、記憶装置に格納された楽譜データにおいて楽曲のそれぞれに関連付けられたペダル難度および和音難度とを比較して、前記演奏者についてのペダル難度および和音難度と合致した楽曲を、楽曲候補として選択する楽曲候補選択手段と、
前記楽曲候補選択手段により選択された楽曲候補から、前記演奏者により選択された所定の楽曲の楽譜データを、前記記憶装置から読み出して、前記読み出された楽譜データに基づく楽譜の画像を生成して前記表示手段に表示する楽譜画像生成手段と、
前記楽譜の画像を表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする楽譜表示システム。
【請求項2】
前記楽曲候補選択手段が、前記演奏者についてのペダル難度と、同等或いはそれより難度の低いペダル難度を有し、かつ、前記演奏者についての和音難度と、同等或いはそれより難度の低いペダル難度を有する楽曲を、楽曲候補として選択することを特徴とする請求項1に記載の楽譜表示システム。
【請求項3】
前記演奏者情報受付手段が、演奏者が指を開いた状態で鍵盤を押鍵した押鍵情報を受け入れ、前記押鍵された鍵の最高音と最低音の差を音程データとして取得することを特徴とする請求項1または2に記載の楽譜表示システム。
【請求項4】
前記楽譜表示システムは、
前記表示手段、前記演奏者情報受付手段および前記楽譜画像生成手段を備えたクライアント装置と、
前記記憶手段、ペダル難度取得手段、前記和音難度取得手段、および、前記楽曲候補取得手段と、を備えた楽譜配信サーバと、を備え、
前記クライアント装置と、前記楽譜配信サーバとの間が、データ通信ネットワークにて接続されていることを特徴とする請求項1ないし3に記載の楽譜表示システム。
【請求項5】
前記クライアント装置が、複数の鍵を備えた鍵盤、および、押鍵された鍵の音高にしたがった楽音の楽音データを生成する楽音データ生成手段を備えた電子楽器であることを特徴とする請求項4に記載の楽譜表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−242561(P2011−242561A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113810(P2010−113810)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】