説明

構内電話交換装置

【課題】内線電話を利用して消防あるいは警察に緊急通報を行ったとき、その内線電話を利用する者、例えば同一企業の他部門に勤務している者、同じ建物の別の階に勤務している者などが、その緊急事態の説明を受ける前にその緊急事態についての概要を理解することができるように配慮した電話装置を提供する。
【解決手段】内線電話から110番(警察)あるいは119番(消防)などに通話を行ったとき、消防あるいは警察から受ける呼び返し通話の内容をその社内の特定の電話機または拡声器などに中継接続して、消防や警察に直接に対応しない者にもこれを傍受させる機能を設ける。これにより、直接関係のない者にも発生している事態の概要が認識できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの企業や団体が利用するビルや事業所に設置され、その中で業務を行う者が相互に通話するための構内電話交換装置の改良に関する。とくに緊急の事態が発生し、構内電話交換装置を経由して特定の回線(例、119、110)に対する接続および通報が行われた場合の接続制御に関する。とくに通報が行われた後に、その特定の回線から呼び返しがあったときに、通報者だけでなく関係者が同時にその通報に対する会話を傍受して、その緊急の事態に対する状況を把握することができるようにするための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一つの営業所、事務所、工場などで、内部に勤務する者が相互に連絡するための構内電話交換装置が広く利用されている。構内電話交換装置は、一つの事業所に属する複数の場所に配線された電話回線を相互に接続して通話を行うほか、卓上の電話機や壁に掛けて利用する電話機に拡声器を設けて、一斉連絡や呼出しを行うことができる装置も広く普及している。一般に、構内電話交換装置には、NTTその他電話会社が運営する電話網に接続し、構内電話交換装置に属する内線電話機からその電話網の回線に接続要求を発し、その電話網に属する回線と通話することができるように構成され運用されている形態が多い。したがって上記電話網に属する特定の回線(例、110、119)に、内線電話機から直接に緊急通話を行うことができる。
【0003】
上記特定の回線(例、110、119)に対応する警察あるいは消防などに設けられている装置は、その特定の回線を介していったん連絡を受けると、最初の電話連絡をした者が受話器を置くなどにより電話回線を切断してしまったとしても、その接続を強制的に保留する、またはその接続内容を自動的に記憶させるなどにより、その特定の回線(警察、消防など)の側から最初の電話連絡をした者の電話機にベル電流を送り、もう一度通話が可能なように操作する装置が設けられている。そしてもう一度通話が可能になった状態で、その緊急な事態に対して、警察あるいは消防がさらに詳しい質問をする、あるいはどのような手配をしたかなどの連絡をすることができるように構成されている。構内電話交換装置にもこれに連動して応答する機能が原則的に装備されていて、警察あるいは消防に対する最初の連絡を行った構内電話交換装置の電話機回線に対して、警察や消防からの呼び返し接続を行うことができるように設定されている。
【0004】
ここでこの明細書における「構内電話交換装置」はその規模または種類を問わない。さらに「構内電話交換装置」には「キーテレホンシステム」と呼ばれている装置、あるいは「ビジネスホン」と呼ばれている装置に装備されている交換装置をも含む。この「構内電話交換装置」は、その構内電話交換装置に接続された内線回線をその接続要求にしたがって、NTTその他電話会社が運用する公衆通信回線に接続する機能を備えた装置である。この「構内電話交換装置」は、一つの集中的な場所における利用形態に限らず、複数の離れた場所に物理的に分散して(例、本社、工場、営業所など)配置された場合にも、一つの構内電話交換装置として利用できる形態のものも含まれる。
【0005】
下記[特許文献1]には構内電話から緊急通報が行われた(例、119番がダイヤルされた)ときに、その通話の内容を特定の電話機(例、安全管理責任者の電話機)からモニタすることができる技術が説明されている。すなわちこの内容は本発明の従来例技術に相当する。しかし緊急通報が行われ呼び返しがあったときに、それに応答しない電話機にその内容をモニタさせる技術に係わる記載はない。
【0006】
下記[特許文献2]には、内線電話から緊急通報が行われたことを判断する機能が説明されている(段落[0016])。
【0007】
下記[特許文献3]には内線電話で他の回線の通話を傍受する技術が開示されている(段落[0039])。
【0008】
下記[特許文献4]には接続要求番号からそれが緊急通報であることを判断する技術が開示されている(段落[0014])。
【0009】
下記[特許文献5]には着信呼が緊急通報先からの呼び返しであることを識別することが説明されている(段落[0011])。
【0010】
【特許文献1】特開2001−8248(日本電気テレコムシステム)
【特許文献2】特開2002−204472(京セラ)
【特許文献3】特開2002−262323(日本電気テレコムシステム)
【特許文献4】特開2005−26803(日本電気)
【特許文献5】特開平05−122377(日本電気通信システム)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般に上記のような緊急事態の連絡に対してその事業所の規模が大きいほど、そこに勤務している者は、緊急事態の発生について何も知らないまま時間が経過することになりやすい。かりに何らかの形でその緊急事態に自発的に協力できる者がいたとしても、緊急事態の発生を知らなければ協力することはできない。一般に、緊急事態が発生してその連絡をした者またはその連絡を受けた担当者に対して、その緊急事態を社内の他の部所などに直ちに情報として連絡することを期待するのは無理である。連絡を受けた担当者は、その緊急事態に直接に対応する措置が優先し、予防的な連絡はその対応措置がひととおり済んでからになる。かりにその連絡中の緊急事態について、その被害が拡大してしまい、多くの者に避難命令が出るような事態になったとしても、避難する者にとって何が起きているのかその大略を理解している場合とまったく理解のない場合とでは、避難の迅速さも被害の状況も違ってくるものと考えられる。
【0012】
本発明はこのような事態に対応する装置であって、同一の事業所等ひとつの構内電話装置を利用する範囲に居る者、またはその一部の者に、緊急事態の発生に伴う電話連絡の内容を受話器を取り上げなくとも、そのまま傍受することができる装置を提供することを目的とする。本発明は、一つの事業所の中で何らかの緊急を要する事態が発生して、これを消防または警察などに連絡した後に、消防または警察がその事業所に到着して対応する措置をとる場合に、事業所の職員の多くの者がすでにその事情の大略を知っていて、消防や警察に協力できる状態を形成しやすくすることを目的とする。本発明は、構内電話交換装置としてその商品力を向上することができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、構内電話交換装置であって、その構内電話交換装置に収容されている内線回線の一つから、警察または消防(例、110、119)などに緊急連絡が行われたとき、その連絡を受け付けた警察または消防から応答連絡がある。この応答連絡およびそれにつづく会話のやりとりをその事業所等の中の一つまたは複数の箇所に配置された拡声手段に、その回線の通話音声を同時にかつ自動的に中継拡声させることを特徴とする。
【0014】
すなわち本発明は、複数の内線および一以上の外線(公衆通信回線)が収容され、その内線の一つからの接続要求にしたがって外線の一つを選択して外線への接続を行う手段と、外線の一つから到来する着信呼についてその接続要求情報にしたがって特定の内線に呼出接続を行う手段とを備えた構内電話交換装置において、前記内線の一つから外線への接続要求(例、0発信)につづいてあらかじめ設定された特定の緊急番号(例、119または110)がダイヤルされたことを認識する手段と、その通話がいったん終了した後に、前記接続要求を発生した内線に宛て外線からの接続要求が到来したときに、その外線からの呼が前記緊急番号からの呼び返しであるかを判定する手段と、この手段により呼び返しであることが判定されたときには、その呼び返し接続要求に対して通話路を設定接続するとともに、その呼び返しあて先以外の場所に設置された拡声器にその通話路の音声を中継接続する手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
前記拡声器は前記内線に接続された一つまたは複数の電話機に実装されている拡声器とすることができる。また前記拡声器は構内放送用に設置された拡声器とすることができる。
【0016】
前記中継接続する手段により通話路の音声を拡声器に中継接続中に、前記複数の内線の一つから特定番号がダイヤルされたとき、その特定番号がダイヤルされた内線の通話路を前記呼び返し接続要求に対して設定接続された通話路に割り込み接続する手段を備えた構成とすることができる。この特定番号はいわゆるパスワードである。これについては具体例を下記[第三実施例]に詳しく説明する。
【0017】
前記通話路の音声を中継接続する拡声器は、前記特定の緊急番号がダイヤルされた電話番号対応にあらかじめ選択的に設定可能に構成することができる。すなわち前記特定の緊急番号がダイヤルされた内線回線に接続された電話機のすぐ近所に設置された電話機には、この音声を中継し拡声させる必要がほとんどない。たとえば一つの小さい部屋で多数の内線電話が使用されている場合には、その多数の内線電話に同時に上記音声を中継し拡声させることは意味がない。来客用応接室に設置されている内線電話に、社内で発生しているけが人の情報を中継接続して拡声する必要はほとんどない。
【0018】
前記緊急番号は消防または救急の要請に利用される番号(例、119)に限られるように設定可能に構成することができる。消防署との連絡は社内に中継して、多くの社員がその情報を共有することは安全管理のうえから意味があるが、警察に連絡しなければならないような情報は、必ずしもそのすべてが社内で同時に共有する必要がない。
【0019】
警察や消防との会話をその内容や状況によりすべて中継接続することが望ましくない場合を配慮して、前記通話路の音声を中継接続する手段を操作により一時的に無効化する手段を含む構成とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、緊急連絡を行った者が、火災の消火活動、あるいはけが人の搬送など、必要な緊急措置に集中し、周囲への通報が後回しになっている場合でも、その内線電話回線を利用する他の部所の者(またはその内の特定の者)は、どのような緊急事態が発生しているのか、どのような手配が行われているのか、などを電話回線を介してのやりとりを傍受して相応に認識することができる。これにより緊急事態が自分の所に及ばないことを適正に判断して業務を継続できる、あるいは自発的な救護行動をとることができる、もしくは避難準備の行動をとることができる。またこれにより、緊急通報を受付けた担当者は、他に対する通報や説明などを後回しにして、緊急通報の内容に対する措置に集中することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第一実施例)
本発明第一実施例装置を図面を用いて説明する。図1は一つの企業の内線に接続された電話機(A)から発呼操作が行われ、内線電話交換機を通して「119」がダイヤルされた状態を説明する図である。企業内でけが人が発生し救急車の出動を要請する場合を例にして説明する。はじめに電話機から受話器を取り上げ、外線接続を指示する「外線」ボタンを押下する。これにより外線が捕捉されると外線からの発信音が聞こえる。つづいて電話番号として「119」がダイヤルされる。これにより回線は消防庁の緊急受付台に接続され、消防庁の係官が応答する。この状態で緊急呼の発信人と消防庁の受付台との間で会話が交わされ、消防庁の係官におおよそその内容が把握されると、消防庁側の担当官はその判断にしたがって救急車の手配を行う。「大略何分後に救急車は現場に到着します」という連絡により緊急呼の発信人は受話器を置いて、電話をひとまず切る。
【0022】
これにより図2に示すように接続回線はひとまず放棄された状態になるが、このとき消防庁の緊急受付台には、回線接続が実行された時点で公衆通信網から到来した発呼者の情報およびその接続情報が、自動的に記録情報として残される。次いで図3に示すように緊急受付台から呼び返し接続が行われる。これにより上記記録情報が参照され、その情報にしたがって、はじめに消防庁に電話をした当該内線電話回線が選択され、その内線電話回線に接続された電話機(A)から呼出音(ベル音)が送出される。
【0023】
このとき本発明による構内電話交換機の特徴として、はじめに緊急呼を発した電話機(A)以外の電話機(B)でもその呼び返し呼の通話内容をスピーカを介して傍受することができるように設定する。すなわち図3に示すように、あらかじめその構内電話交換機に設定された一つまたは複数の内線電話回線に接続されている一つまたは複数の電話機(B)を選択するとともに、その電話機(B)に設置されているスピーカ、および一つまたは複数の構内スピーカにその通話音声が同時に流れるように設定する。
【0024】
ついで電話機(A)が応答すると、その電話機(A)と消防庁の緊急受付台とが通話可能になる。このとき本発明の特徴として、上記内線電話機(B)に装備されているスピーカおよび上記構内スピーカから、電話機(A)が使用している電話回線の双方向の通話音声が中継拡声される。電話機(A)はけが人が発生した現場に近い位置にある電話機である。しかし電話機(B)は必ずしもけが人が発生した現場に設置されているものではなく、その事業所の他の部門、あるいは他の部屋、もしくは他の階、他の建物などに設置されている電話機である。この電話機(B)は複数の電話機を同時に傍受用電話機(B)として選択設定することができる。とりあえずこの電話機(B)から通話を行うことはできない。かりにこの電話機(B)のハンドセットを取り上げても、その送話器は有効にならない。これは通話中の緊急連絡を妨害することがないようにするためである。なおこの電話機(B)またはその他の電話機から通話することができる構成については、あとから第三実施例で詳しく説明する。
【0025】
この電話機(B)は、原則としてけが人が発生した部門とは直接に関係のない部門に設置された電話機である。この企業がビルに入居しているのであれば、けが人が発生した電話機(A)はたとえば2階であったとすると、電話機(B)は3階、あるいは4階の電話機でもよい。繰り返すが電話機(B)は複数であってもよい。三つでも十でもよい。すなわちそのけが人が発生した現場とは直接に関係のない部所であっても、その会社でけが人が発生し救急車の出動を依頼したようである、ということを理解することができる。これにより救護を援助に行くこともできるし、何らかの手伝いを自発的に実行することもできる。
【0026】
上記例はとりあえずけが人が発生したことを例にとって説明したが、火災が発生した、という場合には、直接に関係のない部所の状況であったとしても、さらに事情を詳しく理解しておくことが全体の被害を小さくとどめるためにも有効である。つまり発生した火災に現場で対応している者は、消火に努めることに専念して他の部所に連絡することは後回しになる。他の部所の者は電話回線を利用して消防庁との間で行われている連絡を傍受することにより、相応に事態を的確に把握することができるから、避難命令その他の命令が出る前に相応の準備を行うことが可能であり、被害が拡大することを防ぐことができる。
【0027】
(第二実施例)
本発明を利用したさらに高度の接続利用形態を第二実施例装置として説明する。図5は第二実施例装置の接続手順を説明する図である。この第二実施例は本発明の一つの応用形態である。図5の左上「発信者」は消防庁緊急受付台であり、この図5を用いて、緊急通報を発した電話加入者を逆に呼び返し通話するための手順を説明する。消防庁緊急受付台は最初の緊急連絡を受けたあと、いったん電話回線の接続を解除して必要な手配を行い、その手配の後にさらに必要な情報を得るために緊急通報を発した電話加入者を呼び返す操作を行う。これは上記第一実施例で説明したものと同等である。この呼び返す操作以降について、援助を求めた事業所の内線電話回線を利用して複数のスピーカを起動させて、消防庁と最初に緊急通報を発した者との通話内容を中継拡声するものである。
【0028】
図5の左上から、消防庁に設置されている装置は、最初の119番通報により取得し、自動的に記録として残されている通報元の情報にしたがって、公衆通信網を介して本発明が実施された内線電話交換網に接続を実行する。内線電話交換網はその呼が緊急番号受付台から発信された呼であることを判定すると、内線電話交換網は電話機1、電話機2および構内スピーカに対して分岐接続を実行する。この電話機1は最初に消防庁に対して緊急通報を発した電話機であり、消防庁からの呼び返しはこの電話機1に接続されることを期待している。電話機2はこの企業の他の部門にある電話機であり、これは電話機2に通話を求めるためではなく、電話機2に設けられている拡声器にその通話内容を中継拡声させることを目的とする接続である。構内スピーカはその会社内の一つまたは複数の箇所に設けられたスピーカである。このスピーカもこの内線電話交換網の一つの構成要素である。電話機1は一つの回線に接続された一個の電話機であるが、電話機2はかならずしも一つではなく、複数の電話機であってもよい。複数の電話機であるときにはその複数の電話機への音声信号は並列に接続される。
【0029】
内線電話網の交換接続が起動されると、発信者である消防庁受付台のヘッドホンに呼出音が送出される。電話機1が応答するとその応答信号が消防庁受付台に表示される。これにより緊急番号発信者である消防庁の電話機とこの会社の内線電話機1との通話が可能になる。そしてこの通話内容は、その会社の電話機2(複数の場合もある)および構内スピーカに中継され、近くにいる者が傍受することができる。
【0030】
図6はこの緊急応答分析の接続手順をさらに詳しく説明する図である。すなわち上記説明のように電話機1が応答すると、それが緊急受付台からの呼び返しであるかそれ以外の呼であるかを送信されてくる識別コードにより判定する。それが緊急受付台からの呼であるときには、あらかじめ用意されている手順の通話路制御を実行する。すなわち図5で説明した電話機2(上述のように複数の場合もある)あるいは構内スピーカに対して、それ以降の通話内容を傍受できるように設定する。具体的には電話機2のスピーカを起動させ電話機ハンドセットは遮断させた状態に制御する。そしてその電話機2に緊急番号の通話モニタ中である旨の表示を点灯させる。かりに電話機2のハンドセットを取り上げても、そのハンドセットの送話については有効にならない。これは緊急受付台との間の会話音声を傍受させるものであって、緊急受付台との通話に割り込むためのものではないからである。
【0031】
このようにして消防あるいは警察との会話内容をその企業体の他の部所でも傍受することができるから、直接その緊急通話に関係の薄い者も、詳しい説明がある前に事態の概要を把握することができる。これにより不安を取り除くことができるとともに、必要と判断する場合には自発的な協力を開始することができる。
【0032】
ここで会話内容を傍受することができる拡声装置は、設備のうえからもなるべく小規模の範囲に設定すべきである。また緊急通報を最初に発信した電話回線がどの電話回線であるかによって、その会話内容を傍受することができる回線、あるいはスピーカの範囲を個別に設定することが可能なように構成することがよい。
【0033】
(第三実施例)
図7は本発明第三実施例装置の接続手順を説明する図である。上記第一実施例装置および第二実施例装置の説明では、緊急通報の宛先(例、消防庁緊急受付台)からの呼び返しに対して、最初に緊急通報を発した内線電話機が原則的に応答可能であり、他の内線電話機からはその会話音声が聞こえるだけで、他の内線電話機から音声で応答することはできないものとして説明した。これは火災発生その他の緊急事態に直接に関係のない場所では、通話を傍受できれば十分であり通話に割り込むことが必要ないとする考え方に基づくものであった。しかしこの第三実施例装置では、特定の条件のもとに緊急事態に直接に関係ない場所からも、緊急通報先からの呼び返しに割り込むことができるようにすることが、好都合であるとの考え方に基づくものである。これは特許請求の範囲の請求項4に記載の内容に相当する。
【0034】
図7について、消防庁の受付台からの呼び返し接続に対して、電話機1が応答し通話を開始するとともに、電話機2および構内スピーカにその通話内容を中継するところは上記説明の第一実施例装置および第二実施例装置と同様である。この第三実施例装置では、さらに電話機3から特定番号が発信されたときには、この特定番号を発信した電話機3を消防庁受付台とこの事業所の内線に接続された電話機1との通話回線に、割り込み接続させることができるところにその特徴がある。
【0035】
その割り込み接続が実行されると、この例では消防庁受付台と、最初に緊急通話を発した電話回線の電話機1と、特定番号により割り込み接続された電話機3とが三者通話の形態で相互に通話が可能になる。この割り込み接続を要求するための電話機3は、原則的にその内線電話のどの回線に接続された電話機でもよい。かりに通話音声が中継接続されている電話機2でもよい。緊急事態が発生している現場であっても、その現場から離れた場所に設置されている電話機でもよい。
【0036】
前記特定番号は、例えばこの構内電話交換装置が施設されている事業所の管理責任者など、一人または限られた少数の者のみが承知して他の者に知らせてない暗証番号である。この第三実施例は、例えば管理責任者などが会社内の離れた場所にいて、緊急事態が発生した現場に急行することができない場合に、消防または警察などからの質問に対応することが必要になるような事態を想定している。この特定番号は必ずしも内線電話番号と同じ桁数である必要はなく、むしろ内線電話番号と区別できるように、スター(*)またはパウンド(#)を含むなど、一般の内線電話番号と区別しやすいように設定することもできる。管理責任者等が複数いる場合には、この特定番号はひとつの番号に限らず管理責任者等の数に応じて複数の番号を設定することもできる。
【0037】
この第三実施例の構成により、本発明は単に緊急通報の呼び返し応答の内容を傍受できるとの効果に限らず、管理責任者などが、消防庁または警察などから現場に対する質問に直接に対応することができる新たな効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0038】
有線回線により接続された内線電話装置として説明したが、本発明は携帯電話機またはPHS電話機をその端末電話機として利用する内線電話装置についても同様に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明第一実施例装置の接続説明図(呼出時)。
【図2】本発明第一実施例装置の接続説明図(一旦解放時)。
【図3】本発明第一実施例装置の接続説明図(呼び返し着信時)。
【図4】本発明第一実施例装置の接続説明図(呼び返し着信に対する応答時)。
【図5】本発明第二実施例装置の接続手順説明図。
【図6】本発明第二実施例装置の判定接続の説明図。
【図7】本発明第三実施例装置の接続手順説明図。
【符号の説明】
【0040】
(A) 緊急番号に発信した電話機
(B) 緊急番号からの呼び返し通話を傍受する電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内線および一以上の外線が収容され、その内線の一つからの接続要求にしたがって外線の一つを選択して外線への接続を行う手段と、外線の一つから到来する着信呼についてその接続要求情報にしたがって特定の内線に呼出接続を行う手段とを備えた構内電話交換装置において、
前記内線の一つから外線への接続要求につづいてあらかじめ設定された特定の緊急番号がダイヤルされたことを認識する手段と、
その通話がいったん終了した後に、前記接続要求を発生した内線に宛て外線からの接続要求が到来したときに、その外線からの呼が前記緊急番号からの呼び返しであるかを判定する手段と、
この手段により呼び返しであることが判定されたときには、その呼び返し接続要求に対して通話路を設定接続するとともに、その呼び返しあて先以外の場所に設置された拡声器にその通話路の音声を中継接続する手段と
を備えたことを特徴とする構内電話交換装置。
【請求項2】
前記拡声器は前記内線に接続された一つまたは複数の電話機に実装されている拡声器である請求項1記載の構内電話交換装置。
【請求項3】
前記拡声器は構内放送用に設置された拡声器である請求項1記載の構内電話交換装置。
【請求項4】
前記中継接続する手段により通話路の音声を拡声器に中継接続中に、前記複数の内線の一つから特定番号がダイヤルされたとき、その特定番号がダイヤルされた内線の通話路を前記呼び返し接続要求に対して設定接続された通話路に割り込み接続する手段を備えた請求項1記載の構内電話交換装置。
【請求項5】
前記通話路の音声を中継接続する拡声器は、前記特定の緊急番号がダイヤルされた電話番号対応にあらかじめ選択的に設定可能に構成された請求項2記載の構内電話交換装置。
【請求項6】
前記緊急番号は消防または救急の要請に利用される番号に限られるように設定可能に構成された請求項1記載の構内電話交換装置。
【請求項7】
前記通話路の音声を中継接続する手段を操作により一時的に無効化する手段を含む請求項1記載の構内電話交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−17107(P2008−17107A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185404(P2006−185404)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】