構築用型枠支持支柱
【課題】 使用の都度、使用する型枠の形態や大きさに左右されることなく、事前にボルト穴の穿設作業を必要とすることなく、支柱の長手方向において必要な任意の箇所で型枠との連結作業を行うことができる構築用型枠支持支柱の提供。
【解決手段】 長尺の管状材45を2本対向させて配置し、その管状材45,45の間に空間部sを形成し、この空間部sの間隔を、両管状材45,45の下端部に固定して位置決めするベース金具50と、上端部に固定して位置決めするトップ金具55とにそれぞれ固定した位置決め金具52,52によって確定させ、両管状材45,45の下端部と上端部とを、該位置決め金具52,52に固定したナット金具53に対するボルト53bによる締め付け固定によって形状固定してある構成としたもの。また、支柱の構成材として断面長方形の角管を使用したもの。
【解決手段】 長尺の管状材45を2本対向させて配置し、その管状材45,45の間に空間部sを形成し、この空間部sの間隔を、両管状材45,45の下端部に固定して位置決めするベース金具50と、上端部に固定して位置決めするトップ金具55とにそれぞれ固定した位置決め金具52,52によって確定させ、両管状材45,45の下端部と上端部とを、該位置決め金具52,52に固定したナット金具53に対するボルト53bによる締め付け固定によって形状固定してある構成としたもの。また、支柱の構成材として断面長方形の角管を使用したもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山の傾斜面や、盛り土・切土の傾斜面等の土砂崩れを防ぐための土留め工事や、ダム壁や治水壁等のコンクリート壁造成工事等におけるコンクリート打設工事において、コンクリート打設予定空間の前面に配置したコンクリート型枠の外側に立設して、コンクリート型枠を介して打設コンクリート圧を受け止めさせるために使用する型枠支持支柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この型枠支持支柱によって支持される、従来から一般に普及し汎用されているコンクリート型枠は、硬質で厚手の木質合板もしくは鋼板を面板とし、その周縁部に角材やフランジ金具を連結し、中間部分にも補強用の角材やリブ金具を立設した構造としたものが大半を占めている。
【0003】
そして、これらの従来の一般的なコンクリート型枠は、コンクリートの打設・硬化後に打設したコンクリート面から剥離除去するものである。また、これらの一般的な型枠は、コンクリートを受け止める盤面が、木質合板や鋼板の平板状のものであるため打設コンクリート硬化後の型枠除去面は、変化に乏しいコンクリートの平坦面を呈するものとなっていた。
【0004】
そこで、本出願人は、下記非特許文献1に記載のような型枠のコンクリートの受け面に凹凸模様を形成し、打設したコンクリートの硬化後に型枠を除去すると、コンクリートの表面に、型枠の凹凸模様と同じ凹凸模様が形成されるようにしたコンクリート型枠を開発し、提案するとともに実施している。
【0005】
また、このような打設コンクリートの硬化後に型枠を除去する一般的なコンクリート擁壁の形成手段としては、本出願人の出願に係る下記特許文献1の、殊に図1及び図3にみられるように、コンクリート打設予定空間の前面に立設した型枠支持支柱(主支柱1)に対して、コンクリート打設予定空間側にコンクリート受け面を向けて、多数のコンクリート型枠Cを上下左右に密着させながら連結して、打設コンクリートの受け面を形成していた。
【0006】
この特許文献1に記載の型枠支持支柱(主支柱1)は、当該明細書に説明されているように、アングル状またはチャンネル状またはH状に形成された型材或いは四角筒状の金属材で形成されていたものである。
【0007】
他方、このような打設コンクリートの硬化後に型枠を除去するという一般的な型枠除去作業を必要としないコンクリート擁壁の形成手段として、本出願人は下記特許文献2の、殊に図1,図2及び図5,図9にみられるように、コンクリート打設予定空間Aの前面に立設した型枠支持支柱(建込みフレーム2)に対して、コンクリート型枠(表装型枠1)のコンクリート打設予定空間A側に、コンクリート型枠1の背面側を向けて、即ち、背面側をコンクリート受け面としてコンクリート型枠1を、上下左右に密着させながら多数連結し、これらの型枠1の背面側で打設コンクリートを受け止めさせることによって、打設コンクリートの表面に型枠1を連結一体化させて、打設コンクリートの硬化後も型枠を除去することなく残存させておき、型枠1をコンクリートの表面材として使用するようにした工法についても既に提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−200513号公報
【特許文献2】特開2004−162433号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】実公平2−19470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの特許文献1に記載の型枠支持支柱(主支柱1)及び特許文献2に記載の型枠支持支柱(建込みフレーム2)は、支柱の上下方向において予めボルト連結用の穴を穿設しておく必要があり、このボルト穴の形成箇所以外には型枠との連結ができないという課題を有するものとなっていた。また、前記特許文献1に記載の型枠支持支柱(主支柱1)にあっては、打設コンクリートの硬化後に、型枠から解体除去した型枠支持支柱(主支柱1)は、次の使用時にはボルト穴の形成箇所がそのまま使用できないため、当該次の工事に適したボルト穴を穿設形成しなければならないという課題を有するものであった。
【0011】
本発明は、このような従来の型枠支持支柱が有していた課題を一挙に解決することができる型枠支持支柱を開発したもので、使用の都度、使用する型枠の形態や大きさに左右されることなく、また、事前にボルト穴の穿設作業を必要とすることなく、支柱の長手方向において必要な任意の箇所で型枠との連結作業を行うことができる構造とした型枠支持支柱をここに提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために講じた本発明の請求項1に記載の構築用型枠支持支柱の構成を、実施例において使用した符号を用いて説明すると、支柱を構成する長尺の2本の管状材45,45を、その間に所定の空間部sを隔てて対向配置させ、この空間部sの間隔を、これら両管状材45,45の下端部に固定して位置決めするベース金具50と、上端部に固定して位置決めするトップ金具55とにそれぞれ固定した位置決め金具52,52によって確定させ、これら両管状材45,45の下端部と上端部とを、該位置決め金具52,52に固定したナット金具53に対するボルト53bによる締め付け固定によって形状固定してある構成としたものである。
【0013】
請求項2に記載の構築用型枠支持支柱の構成は、断面長方形の角管を支柱構成管状材45として2本対向させて配置し、その管状材45,45間に空間部sを形成し、この空間部sを、これら両管状材45,45の下端部に固定して位置決めするベース金具50と、上端部に固定して位置決めするトップ金具55とにそれぞれ固定したコの字形の位置決め金具52,52によって間隔を確定させ、これら両管状材45,45の下端部と上端部とを、該コの字形位置決め金具52,52に固定したナット金具53に対するボルト53bによる締め付け固定によって形状固定してある構成としたものである。
【0014】
請求項3に記載の構築用型枠支持支柱の構成は、請求項1または2に記載の管状材45が、長手方向に沿った一面に肉厚部46を形成してあり、この肉厚部46をコの字形の位置決め金具52に連結する構成としたものである。
【0015】
請求項4に記載の構築用型枠支持支柱の構成は、請求項1乃至3の何れかに記載の管状材45の上端部に固定するトップ金具55が、基板56の上面に、他の部材を連結するための穴59を備えた板金具57が連設されている構成としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明にいうところの構築用型枠支持支柱は、支柱を構成する長尺の2本の管状材を、その間に所定の空間部sを隔てて対向配置させ、この空間部sの間隔を、これら両管状材のとにそれぞれ固定した位置決め金具によって確定させ、これら両管状材の下端部と上端部とを、該位置決め金具に固定したナット金具に対するボルトによる締め付け固定によって形状固定してある構成としたものであるから、支柱は、下端部に固定したベース金具と上端部に固定したトップ金具との間の、長さ方向の全長に亘って所定の空間部sを保持しているので、使用の都度、使用する型枠の形態や大きさに左右されることなく、事前にボルト穴の穿設作業を一切必要とすることなく、支柱の長手方向の任意の箇所で、コンクリート表装型枠や、コンクリート型枠とボルト連結して使用することができるので、工事の簡素化を図ることができるという顕著な効果を有するものである。
【0017】
請求項2にいうところの支柱は、支柱の構成部材として、断面長方形の角管を使用してこれを2本対向させてその間に空間部sを形成してあるものとしてあるので、この空間部sを利用して、支柱の長手方向の任意の箇所でコンクリート型枠等とボルト連結して使用できるという前記の効果を有しているものでありながら、前記空間部sを形成する角管の対向面が平坦面であるので、コンクリート型枠等とのボルト連結時に何等の支障もなく円滑に空間部s内にボルトを挿通し背面側に突出させて連結する作業を容易迅速にできるという効果有しているものである。
【0018】
請求項3に記載の支柱は、管状材が、長手方向に沿った一面に肉厚部を備えていて、この肉厚部に位置決め金具を連結する構成としてあるので、強度の高い支柱が得られ、同時に位置決め金具との連結が強固な支柱が得られる利点がある。
【0019】
請求項4に記載の支柱は、管状材の上端部に固定するトップ金具が、基板の上面に、他の部材を連結するための穴を備えた板金具が連設されている構成としてあるので、足場の組み立て等の作業が容易にできる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】型枠支持支柱の使用状態を示す側面図。
【図2】構築用型枠の側面図。
【図3】同型枠の背面側の斜視図。
【図4】植物種子混合材を示す斜視図。
【図5】構築現場の側面図。
【図6】型枠と支柱と結合金具との関係説明用斜視図。
【図7】型枠と支柱と固定金具との斜視図。
【図8】支柱の一部中断正面図。
【図9】同支柱の側面図。
【図10】支柱構成管状材の平面図。
【図11】図8に示したA−A線横断平面図。
【図12】ベース金具の斜視図。
【図13】トップ金具の平面図。
【図14】同トップ金具の正面図。
【図15】同トップ金具の左側面図。
【図16】同トップ金具の斜視図。
【図17】支柱形成材の他の形状を示す図11相当の平面図。
【図18】支柱形成材の更に他の形状を示す図11相当の平面図。
【図19】支柱形成材の更なる他形状を示す図11相当の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明にいう構築用型枠支持支柱の実施に当たっては、2本の支柱構成管状材45,45と、これら両管状材45,45の下端部に固定するベース金具50と、同上端部に固定するトップ金具55とを一セットとして工事現場に搬送し、これらを工事現場においてボルト連結して支柱を組み立てるようにしてもよい。この支柱構成管状材45の形成素材は、例えば、鉄・鋼・ステンレス等の鉄系金属のみならず、アルミ材のような非鉄金属、場合によっては耐圧変形性能を保持させた硬質合成樹脂材、ガラス繊維やカーボン繊維を混合して耐圧性能を向上させた強化合成樹脂等を使用することができる。また、該支柱構成管状材45は、押出成形機によって押し出した押出成形品とするのが、生産性向上のために好ましい。
【実施例】
【0022】
以下本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の構築用型枠支持支柱の構築現場における使用例を示した図であって、後述する型枠支持支柱Pを構成する2本の管状材45,45の間に形成した空間部sからみた左側の状態を示した側面図である。
【0023】
而して、該図1の右側に示した型枠Fは、図2に示した側面図にみられるように表面側と背面側とに凹凸溝を備えた形状とされ、全体として平板状で、コンクリート素材や繊維強化コンクリート素材を押し出して成形し、後述する所要の長さに切断したものである。
【0024】
この実施例に示した平板形の型枠Fは、上下方向の長さ=300mm、左右方向の長さ=1500mm、厚さ20mmとしたものである。この型枠Fの平面寸法は、現在一般的に使用されている合板製型枠の大きさ=上下方向の長さ=900mm、左右方向の長さ=1500mm、または1800mmに形成してもよいが、金型やアルミ押出機の大型化等を考慮して、合板製型枠の整数分の1としておくのが運搬や現場での配置作業が容易である点で好ましい。この上下方向の長さを300mmとした点は、金属製型枠であるメタルフォームの寸法と同じ寸法である点でも使用し易いという利便性がある。このように、上下方向の長さを合板製型枠の3分の1または2分の1等の整数分の1または整数倍としておき、また、横方向の長さについても、メタルフォームの寸法と同じ1500mmまたは1800mmに形成しておくのが、合板型枠や金属型枠と同様の工事方法で使用することができる点で好ましい。
【0025】
而して、該実施例に示した型枠Fは、図1及び図2のように、表面1側には、横方向全長に亘って延びる凹入溝2が上下方向に7段形成されていて、その内の上下方向ほぼ中間部に位置する凹入溝を、植物の種子を混合した種子混合材Mを挿入した時、容易にはみ出すことなくしっかりと受け止めさせるのに充分な深さを備えた深溝20に形成してある。また、背面11側には、図2及び図3のように、打設コンクリートを受け止めさせるための横方向全長に亘って延びるコンクリート受け溝12を上下方向に3段形成してある。
【0026】
また、上辺部31の上下方向所定長さ部分aと下辺部32の上下方向所定長さ部分bとの肉厚を、横方向全長に亘って他の部分に比して薄く形成してあるものとし、更に、上辺部31の所定長さ部分aの下端部分には、背面側に向かって突出する段部33を形成してあるものとし、型枠F,Fを上下方向に積み重ねた時に、下辺部32の所定長さ部分bの下端面34が該段部33の上に載置させて支持される構造としたものである。
【0027】
このようにした該実施例に示した型枠Fは、前記上辺部31の上下方向所定長さ部分aの上部に更に薄肉とした部分cを形成してあるものとし、型枠F,Fどうしを上下方向に積み重ねた時、表面1側に形成してある前記上辺部31の上下方向所定長さ部分aと下辺部32の上下方向所定長さ部分bとの間に、肉厚を薄くした部分cによって、上下の型枠F,Fどうしの積み重ね部分に、前記深溝20と同様形状の深溝20aが形成できるようにしてある。
【0028】
このようにした型枠は、表面1側に形成した上下方向7段の凹溝2と、背面11側に形成した上下方向3段のコンクリート受け溝12とによって、植物種子混合材Mを嵌め込む深溝20のみならず、型枠の表面全体で緑化を促進し易くし、背面側では打設コンクリートとの接触面の大面積化と剥離防止作用とをさせ、更には、運搬時の軽量化と組み立て作業の容易化等を総合的に図ったものである。
【0029】
このようにした型枠Fの表面側1の深溝20に入れる素材としては、天然繊維や天然素材で形成された古紙や廃棄布のような紙類や・織布類や編組糸・不織布等の繊維類、葦・ススキ・竹等の未利用の主として稲科の植物や、間伐材のような未使用植物や古木材のような廃棄植物繊維類を破砕加工したり粉砕加工することによってチップ状や粉粒物状とした素材やその混合物に、雑草の種や花の種や低木の種等の植物種子を混入した植物種子混合材Mを使用する。この混合材Mは、擁壁等のコンクリート表面に取り付けられた型枠Fに対して、消防ホースによる散水のように、粉粒体を放散させて、型枠Fの深溝20や他の溝2に入り込ませる方法をとることができる。また、図2に示したように、型枠Fの表面側1に形成してある深溝20にフック状部材fの一端を係止させて他端部を型枠Fの表面側1に突出させておき、この突出部に植物種子混合材Mを入れた袋またはネットを乗せたり、吊り下げたりして実施してもよい。
【0030】
しかしながら、このような擁壁等の形成後における作業を回避または不要とするための手段として、例えば図4に示したように前記混合材Mをソーセージ状に加圧形成したり、加圧機から所定の太さに押し出して得たものの周りを、天然繊維製の糸mまたは紐状物によって網筒状に包んで柔軟棒状体とし、これを必要長さ、ここでは型枠Fの横方向長さに合わせて裁断したものを型枠Fの深溝20の中に予め押し込んであるものとして実施することもできる。
【0031】
図5は、本発明にいうところの構築用型枠支持支柱Pの構築現場での使用例について説明する図であって、型枠Fと型枠支え枠Hと支柱Pとこれらを結合する結合金具Cとの関係を説明するための図である。
【0032】
より詳しくは、本発明にいう構築用型枠支持支柱Pは、図5のように、コンクリート打設予定空間Sの前面、即ち、擁壁形成必要箇所の前面に該支柱Pを立設し、この支柱Pに対して、そのコンクリート打設予定空間S側に、型枠Fと同形同大に形成した型枠支え枠Hを当てつけて、更に、そのコンクリート打設予定空間S側に、型枠Fのコンクリート受け面(背面)5側を向けた状態として、多数の型枠Fを上下左右方向に密着させながら、図6に示した結合金具Cを使用して連結する。また、必要に応じてその背面側、即ち、型枠Fの外側には、従来工法の場合と同様に、支え金具pを連結して打設コンクリート圧を受け止めさせる。
【0033】
このようにして、多数の型枠Fによって打設コンクリートの受け面を形成させた後、コンクリート打設予定空間Sにコンクリートを打設する。この具体的な手段は周知であり、前記特許文献1にも記載されている通りである。打設コンクリートの硬化後は、各型枠Fはコンクリートの表面に取り付けられた状態で表装層として残し、支柱Pと支え枠Hと結合金具Cを取り外して工事を終わる。
【0034】
この型枠Fは、図6に示したように、ロッド金具41の先端部に側面視でL字形となるように舌片形金具2を連結し、該舌片形金具2を上記型枠Fの深溝20の上部に当てつけて回転させることにより、舌片の先端部を深溝20に差し込んで、後端側に形成してある締め付けナット43を、図7に示した座金44を介して、その外側から締め付けて支柱Pに固定する。
【0035】
これらの図6及び図7では、説明の便宜上型枠Fを支柱Pに直接取り付けたものとして図示してある。言うまでもなく、打設コンクリート圧が小さい時は、このように型枠Fを支柱Pに直接固定させてもよいが、打設コンクリート圧が大きい場合は、図5に示したように、例えばメタルフォームのような型枠支え枠Hを支柱Pとの間に介在させることにより、打設コンクリート圧に耐えさせるように、強度を増加させて使用することができる。このように表面側に補強枠を当てつけて使用することにより、型枠Fを必要以上に強度を保持するものとしておく必要はない。
【0036】
このようにして、本発明にいうところの型枠Fをコンクリート硬化後の擁壁の表面に残して表面を覆わせた状態としておくことによって、その後においては何らかの緑化用の手段や手数を施すことなくそのまま放置しておくだけで、時間の経過とともに、降雨等による吸湿吸水によって型枠Fの深溝内外に予め埋め込んだり吊り下げたりしておいた種子が発芽し、徐々に生長し、次第に擁壁の表面を緑に変えてくれることとなる。
【0037】
本発明にいうところの型枠Fは、擁壁の全表面に使用する必要はなく、例えば、人目に付き易い所要の高さ部分に使用し、奥深い山地では目立ち易い一部のみに使用することとし、人目に付きにくい箇所や擁壁の高い箇所では、部分的に従来通りのコンクリート型枠を使用した工法を採用することによって、本発明にいう型枠Fの使用量を少なくすることも可能である。
【0038】
図8乃至図16は、本発明にいうところの構築用型枠支持支柱Pの実施例に関する説明図である。これらの中の図8は支柱Pの中間部を一部中断して示した正面図であり、図9は同支柱Pの、同じく中間部を一部中断して示した側面図であり、図10は同支柱を構成する管状材45の平面形状を示した上端面図である。また、図11は図8に示したA−A線断面図、図12はベース金具の斜視図、図13乃至図16はトップ金具についての平面図、正面図、左側面図及び斜視図である。
【0039】
而して、該実施例に示した支柱Pは、特定構造のものでなければならないものではないが、次の構造のものとしておくと、前記図6に示したように、結合金具Cを支柱Pのセンター、即ち支柱Pの幅方向の中心部分に形成してある空間部sを通して金具桿41を締め付けることができる点で好ましい。該支柱Pは、図10に示したように、断面長方形の角管を支柱構成管状材45として、図8に示したように、2本対向させて配置し、その管状材間に空間部sを形成したものである。
【0040】
この空間部sは、これら両管状材45,45の下端部に固定して位置決めするベース金具50と、上端部に固定して位置決めするトップ金具55とにそれぞれ固定した平面視コの字形の位置決め金具(以下該実施例において「コの字形金具」という)52,52によって位置を確定させ、図8,9にみられるように、これら両管状材45,45の下端部と上端部とを、コの字形金具52,52のボルト穴54の位置に対応させて溶接したナット金具53に対するボルト53bによる締め付け固定によって形状固定してある。
【0041】
このように、支柱Pは幅方向の中心部分に空間部sを形成するようにして、その下端部に固定して位置決めするとベース金具50と、上端部に固定して位置決めするトップ金具55とによって形状固定したものであるから、これらのベース金具50とトップ金具55との間は全長に亘って空間部sが存在するものとなっている。即ち、対向する2本の支柱構成管状材45,45の間には上端から下端まで空間部sが存在する構造となっている。したがって、図1及び図7にみられるように、任意の箇所に結合金具Cを配置することができるので、支柱Pの上下方向のどの箇所でも型枠Fとの連結ができるのである。
【0042】
なお、前記管状材45は、図10のように長手方向の一面の中央部分を肉厚に形成してあり、この肉厚部をコの字形金具52,52に連結するようにしてある。これらの管状材45の上端部に固定するトップ金具55は、基板56の下側に連接してある前記コの字形金具52,52の他に、基板56の上面には、足場形成用の管部材のような他の管状材や棒部材を連結するためのボルト穴59付きの2枚の板金具57,58を平面視L字形に連設したものとしてある。
【0043】
以上の実施例では、支柱Pを構成する管状材45として、図10及び図11にみられるように、断面長方形の角管として示したが、本発明にいう支柱Pは、必ずしも管体である必要はなく、例えば、図17に示したような断面コの字形のチャンネル鋼(溝形鋼)45や、図18に示した断面Cの字形のシーチャンネル(リップ溝形鋼)45のような長尺材を使用することができる。また、これらのように断面長方形または長方形類似の管状材であることも必要要件ではなく、図19に示した丸形管45を利用して形成することもできるものである。該図19に示した丸形管45の場合には、前記の各実施例に示したコの字形金具52に対応する位置決め金具として、平面視部分円弧状とした弧状の位置決め金具52aを使用することができ、該丸形管45の外側には図示のように平面視コの字形の座金53aを介してボルト連結するのが安定性上好ましい。
【0044】
以上本発明の代表的と思われる実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施例に示した構造のみに限定されるものではなく、本発明にいう前記の構成要件を備えていて、本発明にいう目的を達成し、本発明にいう上記の効果を有する範囲内において、適宜に改変して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明いう構築用型枠支持支柱は、通常の土留め壁や擁壁の構築工法に使用することができる支柱であって、使用前にボルト連結穴の穿設等の事前加工を一切必要とすることなく、長手方向の任意の箇所で、コンクリート表装型枠や、コンクリート型枠とボルト連結して使用することができるので、コンクリート構築工事業者に受け入れられて普及する可能性が大きいものである。
【符号の説明】
【0046】
45 管状材
46 肉厚部
50 ベース金具
52 位置決め金具
53 ナット金具
53b ボルト
55 トップ金具
56 基板
57 板金具
59 穴
P 支柱
s 空間部
【技術分野】
【0001】
本発明は、山の傾斜面や、盛り土・切土の傾斜面等の土砂崩れを防ぐための土留め工事や、ダム壁や治水壁等のコンクリート壁造成工事等におけるコンクリート打設工事において、コンクリート打設予定空間の前面に配置したコンクリート型枠の外側に立設して、コンクリート型枠を介して打設コンクリート圧を受け止めさせるために使用する型枠支持支柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この型枠支持支柱によって支持される、従来から一般に普及し汎用されているコンクリート型枠は、硬質で厚手の木質合板もしくは鋼板を面板とし、その周縁部に角材やフランジ金具を連結し、中間部分にも補強用の角材やリブ金具を立設した構造としたものが大半を占めている。
【0003】
そして、これらの従来の一般的なコンクリート型枠は、コンクリートの打設・硬化後に打設したコンクリート面から剥離除去するものである。また、これらの一般的な型枠は、コンクリートを受け止める盤面が、木質合板や鋼板の平板状のものであるため打設コンクリート硬化後の型枠除去面は、変化に乏しいコンクリートの平坦面を呈するものとなっていた。
【0004】
そこで、本出願人は、下記非特許文献1に記載のような型枠のコンクリートの受け面に凹凸模様を形成し、打設したコンクリートの硬化後に型枠を除去すると、コンクリートの表面に、型枠の凹凸模様と同じ凹凸模様が形成されるようにしたコンクリート型枠を開発し、提案するとともに実施している。
【0005】
また、このような打設コンクリートの硬化後に型枠を除去する一般的なコンクリート擁壁の形成手段としては、本出願人の出願に係る下記特許文献1の、殊に図1及び図3にみられるように、コンクリート打設予定空間の前面に立設した型枠支持支柱(主支柱1)に対して、コンクリート打設予定空間側にコンクリート受け面を向けて、多数のコンクリート型枠Cを上下左右に密着させながら連結して、打設コンクリートの受け面を形成していた。
【0006】
この特許文献1に記載の型枠支持支柱(主支柱1)は、当該明細書に説明されているように、アングル状またはチャンネル状またはH状に形成された型材或いは四角筒状の金属材で形成されていたものである。
【0007】
他方、このような打設コンクリートの硬化後に型枠を除去するという一般的な型枠除去作業を必要としないコンクリート擁壁の形成手段として、本出願人は下記特許文献2の、殊に図1,図2及び図5,図9にみられるように、コンクリート打設予定空間Aの前面に立設した型枠支持支柱(建込みフレーム2)に対して、コンクリート型枠(表装型枠1)のコンクリート打設予定空間A側に、コンクリート型枠1の背面側を向けて、即ち、背面側をコンクリート受け面としてコンクリート型枠1を、上下左右に密着させながら多数連結し、これらの型枠1の背面側で打設コンクリートを受け止めさせることによって、打設コンクリートの表面に型枠1を連結一体化させて、打設コンクリートの硬化後も型枠を除去することなく残存させておき、型枠1をコンクリートの表面材として使用するようにした工法についても既に提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−200513号公報
【特許文献2】特開2004−162433号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】実公平2−19470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの特許文献1に記載の型枠支持支柱(主支柱1)及び特許文献2に記載の型枠支持支柱(建込みフレーム2)は、支柱の上下方向において予めボルト連結用の穴を穿設しておく必要があり、このボルト穴の形成箇所以外には型枠との連結ができないという課題を有するものとなっていた。また、前記特許文献1に記載の型枠支持支柱(主支柱1)にあっては、打設コンクリートの硬化後に、型枠から解体除去した型枠支持支柱(主支柱1)は、次の使用時にはボルト穴の形成箇所がそのまま使用できないため、当該次の工事に適したボルト穴を穿設形成しなければならないという課題を有するものであった。
【0011】
本発明は、このような従来の型枠支持支柱が有していた課題を一挙に解決することができる型枠支持支柱を開発したもので、使用の都度、使用する型枠の形態や大きさに左右されることなく、また、事前にボルト穴の穿設作業を必要とすることなく、支柱の長手方向において必要な任意の箇所で型枠との連結作業を行うことができる構造とした型枠支持支柱をここに提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために講じた本発明の請求項1に記載の構築用型枠支持支柱の構成を、実施例において使用した符号を用いて説明すると、支柱を構成する長尺の2本の管状材45,45を、その間に所定の空間部sを隔てて対向配置させ、この空間部sの間隔を、これら両管状材45,45の下端部に固定して位置決めするベース金具50と、上端部に固定して位置決めするトップ金具55とにそれぞれ固定した位置決め金具52,52によって確定させ、これら両管状材45,45の下端部と上端部とを、該位置決め金具52,52に固定したナット金具53に対するボルト53bによる締め付け固定によって形状固定してある構成としたものである。
【0013】
請求項2に記載の構築用型枠支持支柱の構成は、断面長方形の角管を支柱構成管状材45として2本対向させて配置し、その管状材45,45間に空間部sを形成し、この空間部sを、これら両管状材45,45の下端部に固定して位置決めするベース金具50と、上端部に固定して位置決めするトップ金具55とにそれぞれ固定したコの字形の位置決め金具52,52によって間隔を確定させ、これら両管状材45,45の下端部と上端部とを、該コの字形位置決め金具52,52に固定したナット金具53に対するボルト53bによる締め付け固定によって形状固定してある構成としたものである。
【0014】
請求項3に記載の構築用型枠支持支柱の構成は、請求項1または2に記載の管状材45が、長手方向に沿った一面に肉厚部46を形成してあり、この肉厚部46をコの字形の位置決め金具52に連結する構成としたものである。
【0015】
請求項4に記載の構築用型枠支持支柱の構成は、請求項1乃至3の何れかに記載の管状材45の上端部に固定するトップ金具55が、基板56の上面に、他の部材を連結するための穴59を備えた板金具57が連設されている構成としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明にいうところの構築用型枠支持支柱は、支柱を構成する長尺の2本の管状材を、その間に所定の空間部sを隔てて対向配置させ、この空間部sの間隔を、これら両管状材のとにそれぞれ固定した位置決め金具によって確定させ、これら両管状材の下端部と上端部とを、該位置決め金具に固定したナット金具に対するボルトによる締め付け固定によって形状固定してある構成としたものであるから、支柱は、下端部に固定したベース金具と上端部に固定したトップ金具との間の、長さ方向の全長に亘って所定の空間部sを保持しているので、使用の都度、使用する型枠の形態や大きさに左右されることなく、事前にボルト穴の穿設作業を一切必要とすることなく、支柱の長手方向の任意の箇所で、コンクリート表装型枠や、コンクリート型枠とボルト連結して使用することができるので、工事の簡素化を図ることができるという顕著な効果を有するものである。
【0017】
請求項2にいうところの支柱は、支柱の構成部材として、断面長方形の角管を使用してこれを2本対向させてその間に空間部sを形成してあるものとしてあるので、この空間部sを利用して、支柱の長手方向の任意の箇所でコンクリート型枠等とボルト連結して使用できるという前記の効果を有しているものでありながら、前記空間部sを形成する角管の対向面が平坦面であるので、コンクリート型枠等とのボルト連結時に何等の支障もなく円滑に空間部s内にボルトを挿通し背面側に突出させて連結する作業を容易迅速にできるという効果有しているものである。
【0018】
請求項3に記載の支柱は、管状材が、長手方向に沿った一面に肉厚部を備えていて、この肉厚部に位置決め金具を連結する構成としてあるので、強度の高い支柱が得られ、同時に位置決め金具との連結が強固な支柱が得られる利点がある。
【0019】
請求項4に記載の支柱は、管状材の上端部に固定するトップ金具が、基板の上面に、他の部材を連結するための穴を備えた板金具が連設されている構成としてあるので、足場の組み立て等の作業が容易にできる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】型枠支持支柱の使用状態を示す側面図。
【図2】構築用型枠の側面図。
【図3】同型枠の背面側の斜視図。
【図4】植物種子混合材を示す斜視図。
【図5】構築現場の側面図。
【図6】型枠と支柱と結合金具との関係説明用斜視図。
【図7】型枠と支柱と固定金具との斜視図。
【図8】支柱の一部中断正面図。
【図9】同支柱の側面図。
【図10】支柱構成管状材の平面図。
【図11】図8に示したA−A線横断平面図。
【図12】ベース金具の斜視図。
【図13】トップ金具の平面図。
【図14】同トップ金具の正面図。
【図15】同トップ金具の左側面図。
【図16】同トップ金具の斜視図。
【図17】支柱形成材の他の形状を示す図11相当の平面図。
【図18】支柱形成材の更に他の形状を示す図11相当の平面図。
【図19】支柱形成材の更なる他形状を示す図11相当の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明にいう構築用型枠支持支柱の実施に当たっては、2本の支柱構成管状材45,45と、これら両管状材45,45の下端部に固定するベース金具50と、同上端部に固定するトップ金具55とを一セットとして工事現場に搬送し、これらを工事現場においてボルト連結して支柱を組み立てるようにしてもよい。この支柱構成管状材45の形成素材は、例えば、鉄・鋼・ステンレス等の鉄系金属のみならず、アルミ材のような非鉄金属、場合によっては耐圧変形性能を保持させた硬質合成樹脂材、ガラス繊維やカーボン繊維を混合して耐圧性能を向上させた強化合成樹脂等を使用することができる。また、該支柱構成管状材45は、押出成形機によって押し出した押出成形品とするのが、生産性向上のために好ましい。
【実施例】
【0022】
以下本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の構築用型枠支持支柱の構築現場における使用例を示した図であって、後述する型枠支持支柱Pを構成する2本の管状材45,45の間に形成した空間部sからみた左側の状態を示した側面図である。
【0023】
而して、該図1の右側に示した型枠Fは、図2に示した側面図にみられるように表面側と背面側とに凹凸溝を備えた形状とされ、全体として平板状で、コンクリート素材や繊維強化コンクリート素材を押し出して成形し、後述する所要の長さに切断したものである。
【0024】
この実施例に示した平板形の型枠Fは、上下方向の長さ=300mm、左右方向の長さ=1500mm、厚さ20mmとしたものである。この型枠Fの平面寸法は、現在一般的に使用されている合板製型枠の大きさ=上下方向の長さ=900mm、左右方向の長さ=1500mm、または1800mmに形成してもよいが、金型やアルミ押出機の大型化等を考慮して、合板製型枠の整数分の1としておくのが運搬や現場での配置作業が容易である点で好ましい。この上下方向の長さを300mmとした点は、金属製型枠であるメタルフォームの寸法と同じ寸法である点でも使用し易いという利便性がある。このように、上下方向の長さを合板製型枠の3分の1または2分の1等の整数分の1または整数倍としておき、また、横方向の長さについても、メタルフォームの寸法と同じ1500mmまたは1800mmに形成しておくのが、合板型枠や金属型枠と同様の工事方法で使用することができる点で好ましい。
【0025】
而して、該実施例に示した型枠Fは、図1及び図2のように、表面1側には、横方向全長に亘って延びる凹入溝2が上下方向に7段形成されていて、その内の上下方向ほぼ中間部に位置する凹入溝を、植物の種子を混合した種子混合材Mを挿入した時、容易にはみ出すことなくしっかりと受け止めさせるのに充分な深さを備えた深溝20に形成してある。また、背面11側には、図2及び図3のように、打設コンクリートを受け止めさせるための横方向全長に亘って延びるコンクリート受け溝12を上下方向に3段形成してある。
【0026】
また、上辺部31の上下方向所定長さ部分aと下辺部32の上下方向所定長さ部分bとの肉厚を、横方向全長に亘って他の部分に比して薄く形成してあるものとし、更に、上辺部31の所定長さ部分aの下端部分には、背面側に向かって突出する段部33を形成してあるものとし、型枠F,Fを上下方向に積み重ねた時に、下辺部32の所定長さ部分bの下端面34が該段部33の上に載置させて支持される構造としたものである。
【0027】
このようにした該実施例に示した型枠Fは、前記上辺部31の上下方向所定長さ部分aの上部に更に薄肉とした部分cを形成してあるものとし、型枠F,Fどうしを上下方向に積み重ねた時、表面1側に形成してある前記上辺部31の上下方向所定長さ部分aと下辺部32の上下方向所定長さ部分bとの間に、肉厚を薄くした部分cによって、上下の型枠F,Fどうしの積み重ね部分に、前記深溝20と同様形状の深溝20aが形成できるようにしてある。
【0028】
このようにした型枠は、表面1側に形成した上下方向7段の凹溝2と、背面11側に形成した上下方向3段のコンクリート受け溝12とによって、植物種子混合材Mを嵌め込む深溝20のみならず、型枠の表面全体で緑化を促進し易くし、背面側では打設コンクリートとの接触面の大面積化と剥離防止作用とをさせ、更には、運搬時の軽量化と組み立て作業の容易化等を総合的に図ったものである。
【0029】
このようにした型枠Fの表面側1の深溝20に入れる素材としては、天然繊維や天然素材で形成された古紙や廃棄布のような紙類や・織布類や編組糸・不織布等の繊維類、葦・ススキ・竹等の未利用の主として稲科の植物や、間伐材のような未使用植物や古木材のような廃棄植物繊維類を破砕加工したり粉砕加工することによってチップ状や粉粒物状とした素材やその混合物に、雑草の種や花の種や低木の種等の植物種子を混入した植物種子混合材Mを使用する。この混合材Mは、擁壁等のコンクリート表面に取り付けられた型枠Fに対して、消防ホースによる散水のように、粉粒体を放散させて、型枠Fの深溝20や他の溝2に入り込ませる方法をとることができる。また、図2に示したように、型枠Fの表面側1に形成してある深溝20にフック状部材fの一端を係止させて他端部を型枠Fの表面側1に突出させておき、この突出部に植物種子混合材Mを入れた袋またはネットを乗せたり、吊り下げたりして実施してもよい。
【0030】
しかしながら、このような擁壁等の形成後における作業を回避または不要とするための手段として、例えば図4に示したように前記混合材Mをソーセージ状に加圧形成したり、加圧機から所定の太さに押し出して得たものの周りを、天然繊維製の糸mまたは紐状物によって網筒状に包んで柔軟棒状体とし、これを必要長さ、ここでは型枠Fの横方向長さに合わせて裁断したものを型枠Fの深溝20の中に予め押し込んであるものとして実施することもできる。
【0031】
図5は、本発明にいうところの構築用型枠支持支柱Pの構築現場での使用例について説明する図であって、型枠Fと型枠支え枠Hと支柱Pとこれらを結合する結合金具Cとの関係を説明するための図である。
【0032】
より詳しくは、本発明にいう構築用型枠支持支柱Pは、図5のように、コンクリート打設予定空間Sの前面、即ち、擁壁形成必要箇所の前面に該支柱Pを立設し、この支柱Pに対して、そのコンクリート打設予定空間S側に、型枠Fと同形同大に形成した型枠支え枠Hを当てつけて、更に、そのコンクリート打設予定空間S側に、型枠Fのコンクリート受け面(背面)5側を向けた状態として、多数の型枠Fを上下左右方向に密着させながら、図6に示した結合金具Cを使用して連結する。また、必要に応じてその背面側、即ち、型枠Fの外側には、従来工法の場合と同様に、支え金具pを連結して打設コンクリート圧を受け止めさせる。
【0033】
このようにして、多数の型枠Fによって打設コンクリートの受け面を形成させた後、コンクリート打設予定空間Sにコンクリートを打設する。この具体的な手段は周知であり、前記特許文献1にも記載されている通りである。打設コンクリートの硬化後は、各型枠Fはコンクリートの表面に取り付けられた状態で表装層として残し、支柱Pと支え枠Hと結合金具Cを取り外して工事を終わる。
【0034】
この型枠Fは、図6に示したように、ロッド金具41の先端部に側面視でL字形となるように舌片形金具2を連結し、該舌片形金具2を上記型枠Fの深溝20の上部に当てつけて回転させることにより、舌片の先端部を深溝20に差し込んで、後端側に形成してある締め付けナット43を、図7に示した座金44を介して、その外側から締め付けて支柱Pに固定する。
【0035】
これらの図6及び図7では、説明の便宜上型枠Fを支柱Pに直接取り付けたものとして図示してある。言うまでもなく、打設コンクリート圧が小さい時は、このように型枠Fを支柱Pに直接固定させてもよいが、打設コンクリート圧が大きい場合は、図5に示したように、例えばメタルフォームのような型枠支え枠Hを支柱Pとの間に介在させることにより、打設コンクリート圧に耐えさせるように、強度を増加させて使用することができる。このように表面側に補強枠を当てつけて使用することにより、型枠Fを必要以上に強度を保持するものとしておく必要はない。
【0036】
このようにして、本発明にいうところの型枠Fをコンクリート硬化後の擁壁の表面に残して表面を覆わせた状態としておくことによって、その後においては何らかの緑化用の手段や手数を施すことなくそのまま放置しておくだけで、時間の経過とともに、降雨等による吸湿吸水によって型枠Fの深溝内外に予め埋め込んだり吊り下げたりしておいた種子が発芽し、徐々に生長し、次第に擁壁の表面を緑に変えてくれることとなる。
【0037】
本発明にいうところの型枠Fは、擁壁の全表面に使用する必要はなく、例えば、人目に付き易い所要の高さ部分に使用し、奥深い山地では目立ち易い一部のみに使用することとし、人目に付きにくい箇所や擁壁の高い箇所では、部分的に従来通りのコンクリート型枠を使用した工法を採用することによって、本発明にいう型枠Fの使用量を少なくすることも可能である。
【0038】
図8乃至図16は、本発明にいうところの構築用型枠支持支柱Pの実施例に関する説明図である。これらの中の図8は支柱Pの中間部を一部中断して示した正面図であり、図9は同支柱Pの、同じく中間部を一部中断して示した側面図であり、図10は同支柱を構成する管状材45の平面形状を示した上端面図である。また、図11は図8に示したA−A線断面図、図12はベース金具の斜視図、図13乃至図16はトップ金具についての平面図、正面図、左側面図及び斜視図である。
【0039】
而して、該実施例に示した支柱Pは、特定構造のものでなければならないものではないが、次の構造のものとしておくと、前記図6に示したように、結合金具Cを支柱Pのセンター、即ち支柱Pの幅方向の中心部分に形成してある空間部sを通して金具桿41を締め付けることができる点で好ましい。該支柱Pは、図10に示したように、断面長方形の角管を支柱構成管状材45として、図8に示したように、2本対向させて配置し、その管状材間に空間部sを形成したものである。
【0040】
この空間部sは、これら両管状材45,45の下端部に固定して位置決めするベース金具50と、上端部に固定して位置決めするトップ金具55とにそれぞれ固定した平面視コの字形の位置決め金具(以下該実施例において「コの字形金具」という)52,52によって位置を確定させ、図8,9にみられるように、これら両管状材45,45の下端部と上端部とを、コの字形金具52,52のボルト穴54の位置に対応させて溶接したナット金具53に対するボルト53bによる締め付け固定によって形状固定してある。
【0041】
このように、支柱Pは幅方向の中心部分に空間部sを形成するようにして、その下端部に固定して位置決めするとベース金具50と、上端部に固定して位置決めするトップ金具55とによって形状固定したものであるから、これらのベース金具50とトップ金具55との間は全長に亘って空間部sが存在するものとなっている。即ち、対向する2本の支柱構成管状材45,45の間には上端から下端まで空間部sが存在する構造となっている。したがって、図1及び図7にみられるように、任意の箇所に結合金具Cを配置することができるので、支柱Pの上下方向のどの箇所でも型枠Fとの連結ができるのである。
【0042】
なお、前記管状材45は、図10のように長手方向の一面の中央部分を肉厚に形成してあり、この肉厚部をコの字形金具52,52に連結するようにしてある。これらの管状材45の上端部に固定するトップ金具55は、基板56の下側に連接してある前記コの字形金具52,52の他に、基板56の上面には、足場形成用の管部材のような他の管状材や棒部材を連結するためのボルト穴59付きの2枚の板金具57,58を平面視L字形に連設したものとしてある。
【0043】
以上の実施例では、支柱Pを構成する管状材45として、図10及び図11にみられるように、断面長方形の角管として示したが、本発明にいう支柱Pは、必ずしも管体である必要はなく、例えば、図17に示したような断面コの字形のチャンネル鋼(溝形鋼)45や、図18に示した断面Cの字形のシーチャンネル(リップ溝形鋼)45のような長尺材を使用することができる。また、これらのように断面長方形または長方形類似の管状材であることも必要要件ではなく、図19に示した丸形管45を利用して形成することもできるものである。該図19に示した丸形管45の場合には、前記の各実施例に示したコの字形金具52に対応する位置決め金具として、平面視部分円弧状とした弧状の位置決め金具52aを使用することができ、該丸形管45の外側には図示のように平面視コの字形の座金53aを介してボルト連結するのが安定性上好ましい。
【0044】
以上本発明の代表的と思われる実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施例に示した構造のみに限定されるものではなく、本発明にいう前記の構成要件を備えていて、本発明にいう目的を達成し、本発明にいう上記の効果を有する範囲内において、適宜に改変して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明いう構築用型枠支持支柱は、通常の土留め壁や擁壁の構築工法に使用することができる支柱であって、使用前にボルト連結穴の穿設等の事前加工を一切必要とすることなく、長手方向の任意の箇所で、コンクリート表装型枠や、コンクリート型枠とボルト連結して使用することができるので、コンクリート構築工事業者に受け入れられて普及する可能性が大きいものである。
【符号の説明】
【0046】
45 管状材
46 肉厚部
50 ベース金具
52 位置決め金具
53 ナット金具
53b ボルト
55 トップ金具
56 基板
57 板金具
59 穴
P 支柱
s 空間部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱を構成する長尺の2本の管状材(45,45)を、その間に所定の空間部(s)を隔てて対向配置させ、この空間部(s)の間隔を、これら両管状材(45,45)の下端部に固定して位置決めするベース金具(50)と、上端部に固定して位置決めするトップ金具(55)とにそれぞれ固定した位置決め金具(52,52)によって確定させ、
これら両管状材(45,45)の下端部と上端部とを、該位置決め金具(52,52)に固定したナット金具(53)に対するボルト(53b)による締め付け固定によって形状固定してある構築用型枠支持支柱。
【請求項2】
断面長方形の角管を支柱構成管状材(45)として2本対向させて配置し、その管状材(45,45)の間に空間部(s)を形成し、
この空間部(s)を、これら両管状材(45,45)の下端部に固定して位置決めするベース金具(50)と、上端部に固定して位置決めするトップ金具(55)とにそれぞれ固定したコの字形の位置決め金具(52,52)によって間隔を確定させ、
これら両管状材(45,45)の下端部と上端部とを、該コの字形位置決め金具(52,52)に固定したナット金具(53)に対するボルト(53b)による締め付け固定によって形状固定してある構築用型枠支持支柱。
【請求項3】
管状材(45)が、長手方向に沿った一面に肉厚部(46)を形成してあり、この肉厚部(46)をコの字形の位置決め金具(52,52)に連結する構成としてある請求項1または2に記載の構築用型枠支持支柱。
【請求項4】
管状材(45)の上端部に固定するトップ金具(55)が、基板(56)の上面に、他の部材を連結するための穴(59)を備えた板金具(57)が連設されている構成としてある請求項1乃至3の何れかに記載の構築用型枠支持支柱。
【請求項1】
支柱を構成する長尺の2本の管状材(45,45)を、その間に所定の空間部(s)を隔てて対向配置させ、この空間部(s)の間隔を、これら両管状材(45,45)の下端部に固定して位置決めするベース金具(50)と、上端部に固定して位置決めするトップ金具(55)とにそれぞれ固定した位置決め金具(52,52)によって確定させ、
これら両管状材(45,45)の下端部と上端部とを、該位置決め金具(52,52)に固定したナット金具(53)に対するボルト(53b)による締め付け固定によって形状固定してある構築用型枠支持支柱。
【請求項2】
断面長方形の角管を支柱構成管状材(45)として2本対向させて配置し、その管状材(45,45)の間に空間部(s)を形成し、
この空間部(s)を、これら両管状材(45,45)の下端部に固定して位置決めするベース金具(50)と、上端部に固定して位置決めするトップ金具(55)とにそれぞれ固定したコの字形の位置決め金具(52,52)によって間隔を確定させ、
これら両管状材(45,45)の下端部と上端部とを、該コの字形位置決め金具(52,52)に固定したナット金具(53)に対するボルト(53b)による締め付け固定によって形状固定してある構築用型枠支持支柱。
【請求項3】
管状材(45)が、長手方向に沿った一面に肉厚部(46)を形成してあり、この肉厚部(46)をコの字形の位置決め金具(52,52)に連結する構成としてある請求項1または2に記載の構築用型枠支持支柱。
【請求項4】
管状材(45)の上端部に固定するトップ金具(55)が、基板(56)の上面に、他の部材を連結するための穴(59)を備えた板金具(57)が連設されている構成としてある請求項1乃至3の何れかに記載の構築用型枠支持支柱。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−132803(P2011−132803A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23223(P2011−23223)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2007−329084(P2007−329084)の分割
【原出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(391058369)株式会社ホーシン (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2007−329084(P2007−329084)の分割
【原出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(391058369)株式会社ホーシン (8)
【Fターム(参考)】
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