説明

標準光カプラのマルチビット使用

単一の光カプラを用いてマルチビット値を表示する方法は、第1の範囲に含まれる光カプラ出力電圧に応答して第1のマルチビット値を表示し、また第2の範囲に含まれる光カプラ出力電圧に応答して第2のマルチビット値を表示する。第1の範囲は、第2の範囲と異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本出願は、光カプラに関するものであって、さらに詳細には単一の光カプラを使用してマルチビット値を表示する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光カプラは、回路要素同士を電気的に分離したままで、回路要素間で信号を運ぶ短い光学的通信経路を使用するデバイスである。光カプラの1つの構成には、光を放射してフォト・トランジスタをターン・オンさせて電流を流し、出力電圧を生じさせるフォト・ダイオードが含まれる。すなわち、フォト・ダイオードは、フォト・トランジスタから電気的に分離された状態で、フォト・トランジスタを制御できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光カプラは、広い許容範囲(tolerance range)を持つため、光カプラへの入力電流は、広範囲の出力電圧を生ずる。この結果、データ通信に用いられる光カプラは、1つのビット値(例えば、論理0がOFFで、論理1がON)を通すためだけに使用される。マルチビットのデータを送信するためにデータの各ビットに対して1つの光カプラが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
単一の光カプラを使用してマルチビット値を表示する方法は、第1の範囲に含まれる光カプラ出力電圧に応答して第1のマルチビット値を表示し、また第2の範囲に含まれる光カプラ出力電圧に応答して第2のマルチビット値を表示する。第1の範囲は、第2の範囲と異なる。
【0005】
単一の光カプラを使用してマルチビット値を表示するためのシステムは、光カプラ、コントローラおよびアナログ−デジタル変換器を含む。コントローラは、光カプラに特定の入力電流を注入して、複数の予め定められた範囲の1つに含まれる出力電圧を生じさせるように動作する。アナログ−デジタル変換器は、光カプラに接続されて、複数の予め定められた範囲の1つに含まれる光カプラの出力電圧に応答して1つのマルチビット値を表示するように動作する。複数の予め定められた範囲の各々には、1つのマルチビット値が割り当てられる。
【0006】
本発明のこれらおよびその他の特徴については、以下の説明および図面から最もよく理解することができる。次は、それの簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】例示的光カプラの模式図。
【図2】50%から200%の電流伝達率を有する光カプラに対応する例示的入力電圧および出力電圧の範囲を示す模式的表。
【図3】50%から200%の電流伝達率を有する光カプラに対応する例示的入力電圧および出力電圧の範囲を示す模式的グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(好適な実施の形態の詳細な説明)
図1は、互いに電気的に分離されたフォト・ダイオード12とフォト・トランジスタ14とを含む例示的光カプラ10を模式的に示している。コントローラ16は、フォト・ダイオード12を流れてフォト・ダイオード12から光を放射させるダイオード電流Iを制御する。放射された光は、フォト・トランジスタ14をターン・オンさせ、トランジスタ電流Iが流れるのを許可し、出力電圧Voutを生じさせる。抵抗18(“R”)は、コントローラ16とフォト・ダイオード12に接続されている。抵抗19(“R”)は、フォト・トランジスタ14とアナログ−デジタル変換器20に接続されている。アナログ−デジタル変換器20は、アナログ出力電圧Voutを、マイクロプロセッサ(図示せず)が読めるデジタル信号に変換する。
【0009】
トランジスタ電流Iの大きさは、下記の式#1によって決まり、また出力電圧Voutの大きさは、下記の式#2によって決まる。
【0010】
= I×CTR 式#1
ここで、Iは、トランジスタの電流で、Iは、ダイオード電流である。またCTRは、光カプラの電流伝達率(“CTR”)であり、入力電流(“I”)に対する出力電流(“I”)の比率を表す。
【0011】
out = I×R 式#2
【0012】
図2は、Rが1kΩであると仮定して、50%から200%のCTRを有する光カプラについて、例示的入力電流22a−d、例示的出力電圧範囲24a−dおよび例示的2進値割当て26の表21を模式的に示す。表21に示すように、光カプラ10に一定のダイオード電流Iを注入することによって特定の電圧範囲を得ることができる。各々の範囲24a−dに対して異なるマルチビット値26を割り当てることによって、光カプラが広範囲に変動するCTR(例えば、50%から200%)を有する場合でも、単一の光カプラ10を用いて複数のマルチビット値26a−dを表現できる。
【0013】
図2の例では、範囲24aがマルチビット値26a(“00”)に対応し、範囲24bがマルチビット値26b(“01”)に対応し、範囲24cがマルチビット値26c(“10”)に対応し、範囲24dがマルチビット値26d(“11”)に対応する。このマルチビット値26を利用して照明システムなどのシステムの状態を表示することができる。一例では、マルチビット値26a(“00”)が故障なしに対応し、マルチビット値26b(“01”)が過熱故障に対応し、マルチビット値26c(“10”)が過電流故障に対応し、マルチビット値26d(“11”)がハードウエア故障(例えば、損傷したMOSFET)に対応する。もちろんマルチビット値26は、その他の状態を表示するためにも使用でき、さらに状態でないその他の情報を表示するためにも使用できる。
【0014】
図3は、50%から200%のCTRを有する光カプラに対応する例示的入力電流および出力電圧の範囲のグラフを模式的に示す。図2の表21および図3のグラフの例では、各々の電圧範囲24a−dは、重なっておらず、最小の電圧範囲間隔で分離されている。表21の例で、最小の電圧範囲間隔は、0.05Vである。もちろん図2の値および図3のグラフは、ほんの一例であり、これ以外の電流伝達率、電流値、抵抗値および電圧分離範囲を使用することもできる。電圧範囲が重なり合う場合には、既知の方法に従う統計的分析技術を利用して与えられた出力電圧がどの電圧範囲に含まれるかを決定することができる。
【0015】
図2の表21の値を参照すると、0.00625mAである第1の電流22aは、0.003125−0.0125V(0.00625mAの50%−200%)という第1の電圧範囲24aをもたらす。0.125mAアンペアである第2の電流22bは、0.0625−0.25V(0.125の50%−200%)という第2の電圧範囲24bをもたらす。0.6mAである第3の電流22cは、0.3−1.2V(16の50%−200%)という第3の電圧範囲24cをもたらす。2.5mAアンペアである第4の電流22dは、1.25−5V(64の50%−200%)という第4の電圧範囲24dをもたらす。
【0016】
4つの電圧範囲24a−dおよび4つのマルチビット値26a−dだけについて説明してきたが、範囲の追加およびそれに対応するマルチビット値の追加も可能である。重なりのない利用可能な範囲24の最大個数は、与えられたデジタル式光カプラ10のCTRの最大許容値に依存し、さらに与えられた光カプラの電流範囲全体で重なりのないようにどのように範囲を明確に分割できるかに依存する。
【0017】
本発明の好適な実施の形態について開示したが、当該分野の従事者であれば本発明の範囲内で一定の修正を行うことが可能であることを理解されよう。従って、以下の請求項は、本発明の範囲および内容を決定するものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の光カプラを用いてマルチビット値を表示する方法であって、
光カプラ出力電圧の第1の範囲に応答して第1のマルチビット値を表示する工程と、
前記第1の範囲と異なる光カプラ出力電圧の第2の範囲に応答して第2のマルチビット値を表示する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、さらに
前記第1の範囲および第2の範囲のいずれとも異なる光カプラ出力電圧の第3の範囲に応答して第3のマルチビット値を表示する工程、
を含む前記方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、さらに
前記第1の範囲、第2の範囲および第3の範囲のいずれとも異なる光カプラ出力電圧の第4の範囲に応答して第4のマルチビット値を表示する工程、
を含む前記方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、さらに
前記光カプラ出力電圧の範囲の各々に対して1つのマルチビット値を割り当てる工程、
を含む前記方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記光カプラ出力電圧の各範囲が光カプラ入力電流および光カプラ電流伝達率に比例する前記方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記第2の範囲が前記第1の範囲よりも広い前記方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記光カプラ出力電圧の各範囲が重ならない前記方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記予め定められた各範囲が、最小の電圧範囲間隔で分離されている前記方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記最小の電圧範囲間隔が少なくとも0.05ボルトである前記方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、さらに
光カプラ出力電圧の範囲のうち少なくとも1つが重なり合う場合に、少なくとも1つの統計的分析技術を用いて与えられた出力電圧がどの光カプラ出力電圧範囲に含まれるかを決定する工程、
を含む前記方法。
【請求項11】
単一の光カプラを用いてマルチビット値を表示するためのシステムであって、
光カプラと、
前記光カプラに一定の入力電流を注入して、複数の予め定められた範囲の1つに含まれる出力電圧を生じさせるように動作するコントローラと、
光カプラに接続されて、それぞれ1つのマルチビット値を割り当てられた前記複数の予め定められた範囲の1つに含まれる前記光カプラ出力電圧に応答して1つのマルチビット値を表示するように動作するアナログ−デジタル変換器と、
を含むシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、前記予め定められた各範囲が最小の電圧範囲間隔で分離されている前記システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、前記最小の電圧範囲間隔が少なくとも0.05ボルトである前記システム。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記光カプラ出力電圧の範囲のうちのいずれかが重なっている場合に、少なくとも1つの統計的分析技術を用いて与えられた出力電圧がどの光カプラ出力電圧範囲に含まれるかを決定する前記方法。
【請求項15】
請求項11に記載のシステムであって、互いに電気的に分離されたフォト・ダイオードとフォト・トランジスタとを前記光カプラが含む前記システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、前記フォト・トランジスタを通る電流の流れを選択的に制御する光を放射させるように前記コントローラが前記フォト・ダイオードを制御する前記システム。
【請求項17】
請求項15に記載のシステムであって、さらに
前記コントローラと前記フォト・ダイオードに接続された第1の抵抗と、
前記フォト・トランジスタと前記アナログ−デジタル変換器に接続された第2の抵抗と、
を含む前記システム。
【請求項18】
請求項11に記載のシステムであって、第1のマルチビット値が故障なしに対応し、第2のマルチビット値が過熱故障に対応し、第3のマルチビット値が過電流故障に対応し、第4のマルチビット値がハードウエア故障に対応する前記システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−531162(P2012−531162A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517524(P2012−517524)
【出願日】平成22年5月3日(2010.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/033346
【国際公開番号】WO2010/151371
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511281039)リバティー ハードウェア マニュファクテュアリング コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】