横断防止機能を有する道路標識柱
【課題】 最小限の部品構成により標識柱本体とビームとを組付けることができるようにすると共に、特に、現場における組付け作業を簡単かつ迅速に行ない得る横断防止機能を有する道路標識柱を提供すること。
【解決手段】 路面に立設された弾性体よりなる標識柱本体と、該本体に対しこれとT字形をなすように結合されたビームとにより構成された道路標識柱において、両者の固定機構を、本体の頂部に充填された頭部中に埋設固定されたブッシュと、該ブッシュを経由してビーム中に挿脱し得るようにしたピンとにより構成し、ピンをブッシュ中に挿入した後回転させると、ピンに形成した突起がブッシュに形成されたアンダーカット部と係合して標識柱本体とビームとを固定し得るようにする。
【解決手段】 路面に立設された弾性体よりなる標識柱本体と、該本体に対しこれとT字形をなすように結合されたビームとにより構成された道路標識柱において、両者の固定機構を、本体の頂部に充填された頭部中に埋設固定されたブッシュと、該ブッシュを経由してビーム中に挿脱し得るようにしたピンとにより構成し、ピンをブッシュ中に挿入した後回転させると、ピンに形成した突起がブッシュに形成されたアンダーカット部と係合して標識柱本体とビームとを固定し得るようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道のセンターライン、中央分離帯、車歩道の境界部分などの路面上に設置される歩行者の横断防止機能を有する道路標識柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、道路の中央分離帯aに鋼製の棚bを設置して、横断防止を図ることが行なわれているが、このようにすると、鋼製の柵に車輌などが衝突した場合、車輌や鋼製柵が破損して2次的事故につながるおそれがある。なお、図10において、Cは車道である。
【0003】
上記の如き問題点を改善するため、弾性体よりなる中空の道路標識柱を所定間隔をおいて路面上に所要数列設して横断防止の規制を行なうことが行なわれている。このようにすると、道路標識柱は弾性体よりなるので、車輌などが衝突すると弾性変形して道路標識柱や車輌の破損を防止すると共に、大きな2次的事故につながるおそれを少なくすることができる。
【0004】
しかし乍ら、前記の道路標識柱のみよる規制では、隣接する道路標識柱と道路標識柱との間に間隔があるので、人が自由に通り抜けることができ、このため、例えば駅から離れた位置に横断歩道がある場合、駅近くからの横断を規制するために道路標識柱を所要数列設しても、人がその道路標識柱の間を通り抜けて横断してしまうという問題がある。
【0005】
以上の如き従来技術の問題点を改善するため、弾性体よりなる中空の道路標識柱の片側もしくは両側から外側方にビームを張り出させ、実際には通り抜けることは可能であるが、視覚的に通り抜けることができないところと観念されて横断防止効果を発揮させることができるようにした道路標識柱が提案されている。その一例を示すと下記特許文献のとおりである。
【特許文献1】特開2001−81746号公報
【特許文献2】特開2001−182021号公報
【特許文献3】特開2002−348820号公報
【特許文献4】特開2003−105726号公報
【0006】
前記従来技術の一例を図11に示す。なお、図11は前記特許文献2に記載のものである。
この従来技術は、所望の復元弾性を有する中空の標識柱本体101の頂部近くにビーム取付用の孔102を設け、この孔102に標識柱本体と同様の材質よりなる中空のビーム103を差し込み、その状態においてウレタン発泡体の注型成形法により頭部104を成型することにより、標識柱本体101,ビーム103,頭部104を一体に結合せしめたものである。なお、この図において、105は再帰反射シートなどの反射材、106は隣接するビーム同士を紐などで連結するための連結孔である。
【0007】
この従来例は、前記のように、復元弾性を有する中空の標識柱本体101の片側もしくは両側から側方にビーム103を張り出させたので、これを路面上に配設すると共に隣接するビームの端部同士を結合すると、実際には通り抜けることが可能であるが、視覚的に通り抜けることができないと観念されて横断防止効果を発揮させることができる。
【0008】
しかし乍ら、図11に示す従来例は、標識柱本体から側方にこれと一体をなすビームが張り出しているので、ビームが邪魔になって取扱性が悪くなるばかりでなく、輸送時には図12に示すようにダンボール箱107内に無駄な空間108が存在してコストが高くなるという問題がある。なお、図中の符号109は路面設置用の台座である。
【0009】
また、標識柱本体とビームとを別体に構成し、両者を現場において固定部材を介して一体的に結合するようにしたものも前記特許文献に記載されている。しかし従来のものは、部品点数が多くなってコストが増大し、あるいは、設置作業に多くの手数が必要になるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記の如き従来技術の問題点を改善し、最小限の部品構成によりビームと標識柱本体とを着脱することができるようにすると共に、特に、現場における組付け作業を簡単かつ迅速に行なうことができる横断防止機能を有する道路標識柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明は、路面に立設する中空の標識柱本体と、その標識柱本体の頂部近くに設けた貫通孔に挿通する中空のビームと、前記標識柱本体の貫通孔に挿通したビームを標識柱本体に対し着脱可能に固定する固定機構とよりなり、該固定機構を、前記貫通孔にビームを挿通した状態において前記本体の頂部中に充填形成された頭部中に埋設固定されたブッシュと、該ブッシュを経由してビーム中に着脱可能に挿入されるピンとにより構成し、そのブッシュにアンダーカット部を形成すると共にピンの外周に前記ブッシュのアンダーカット部と係合する突起を形成してピンの抜け止めを行なうように構成したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記ブッシュのアンダーカットとピンの突起とによる抜止めを、ピン挿入後該ピンを回転させることにより行なうようにしたことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、前記ビーム中に補強体を挿着するなどしてビームに剛性を付与してビームの自由端側が垂れ下らないように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、前記の如く、標識柱本体とビームとの固定機構を、標識柱本体にビームを挿通した状態において本体の頂部中に充填形成された頭部中に埋設固定されたブッシュと、該ブッシュ経由してビーム中に着脱可能に挿入されるピンとにより構成したので、部品点数を節減してコストを低減せしめると共に、特に現場における設置作業は、標識柱本体にビームを装着した後ピンをブッシュに挿入し、そのピンを回転するだけで完了するので、現場における設置作業を極めて簡単かつ迅速に行なうことができる。
【0015】
また、本発明は、ビーム中に補強体を装着するなどしてビームに剛性を付与したので、ビームの自由端側が垂れ下ることを防止して整然とした外観を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面について本発明の具体的実施形態を説明する。
図1は本発明による道路標識柱の一実施形態を示す正面図であって、路面から起立設置される中空の標識柱本体1と、その標識柱本体の下端にこれと一体に成型された路面への固定設置用の台座2と、標識柱本体の頂部近くにこれとT字形をたすように組付けられたビーム3とから構成されている。4は再帰反射シートなどの反射体である。
【0017】
前記標識柱本体1は、車線分離用,車歩道の境界表示用などの視線誘導標識として広く実施されている周知のものであるからその詳細な説明は省略するが、例えば下記物性を有するポリウレタンにより構成してこれに車輌などが衝突すると弾性変形してその衝撃を吸収緩和すると共に車輌が通過すると復元し得るように構成する。
【0018】
引張り破壊強さ:14.7MPa(試験方法 JIS K 7311)
引張り破壊伸び:300%(試験方法 JIS K 7311)
引裂き破壊強さ:49N/mn(試験方法 JIS K 7311)
硬さ :デュロメータA90(試験方法 JIS K 7311)
【0019】
もっとも、本発明は前記のポリウレタンに限定されるものではなく、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)や低密度ポリエチレン(LDPE)などの弾性体、あるいは、その弾性体に近い樹脂を使用することもできる。
【0020】
ビーム3はこの実施形態の場合、標識柱本体1と同一の物性を有するポリウレタンにより構成したが、その場合、ビーム3の自由端側が垂れ下がるのを防止するためビーム3の成形時にその内部に補強体31を挿着する。
【0021】
補強体31は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂から構成され、この実施形態においてはポリレンテレフタレート(PET)を使用した。その物性を示すと下記のとおりである。
【0022】
引張り破壊強さ:133MPa(試験方法JIS C 2151)
引張り破壊伸び:244%(試験方法 JIS C 2151)
【0023】
本発明は、前記の如く、路面から起立設置される中空の標識柱本体1と、その標識柱本体の頂部近くにこれとT字形をなすように組み付けられたビーム3とから構成された道路標識柱において、両者の固定機構を、標識柱本体1にビーム3を挿通した状態において前記本体の頂部中に充填形成された頭部5中に埋設固定されたブッシュ6と、該ブッシュを経由してビーム3中に着脱可能に挿入されるピン7とにより構成したことを特徴とする。
【0024】
すなわち、図2ないし図5は本発明の要部を示すもので、図2は図1のA部に相当する拡大断面図、図3はその組付け方法の説明図、図4はピンの一例を示す立体図、図5はブッシュの一例を示す立体図である。
【0025】
これらの図に示すように、前記のブッシュ6は、標識柱本体1の頂部に近接して設けたビーム挿通孔11にビーム3を挿着した状態において頭部5を形成する際、その頭部5と一体的に結合されるように外周に凹凸条61を設けた円筒状をなし、その内部に前記ピン7を挿入した後該ピンを回転することによりピンの突起と係合するアンダーカット部62が形成されている。すなわち、前記アンダーカット部62には、その中心に前記突起つきのピン7を挿脱することができる図5に示すような形状のピン挿通穴63が形成されていて、上方からこのピン挿通穴63中に突起つきのピン7を挿入した後そのピン7を例えば90°回転させるとピンの突起がアンダーカット部62と係合して抜け止めを行なうように構成されている。
【0026】
前記のピン7は、図2および図3に示すように、頭部5中に前記ブッシュ6を経由してピン7を挿入すると、その先端がビーム3に形成したピン孔32,33を貫通して頭部5に形成したピン孔51に達する長さを持ち、その上方のブッシュ6の高さ位置に対応した位置に上部が外径方向に開いた突起71が形成され、さらにその上方にピン7の回転操作用の溝72を有するピン頭部73が形成されている。なお、溝72は突起でもよい。
【0027】
前記ブッシュ6およびピン7は、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂成型品であって、この実施形態の場合、特に限定されるものではないが、下記の物性を有するポリウレタンを使用してブッシュ6を成型し、同様に下記の物性を有するポリプロピレンを使用してピン7を成型した。
【0028】
ブッシュの物性
引張り破壊強さ:43MPa(試験方法 JIS K 6301)
引張り破壊伸び:270%(試験方法 JIS K 6301)
硬さ :JIS A99(試験方法 JIS K 6301)
【0029】
ピンの物性
引張り破壊強さ:23MPa(試験方法 JIS K 6758)
引張り破壊伸び:200%(試験方法 JIS K 6758)
硬さ:ロックウエルRスケール70(試験方法 JIS K 6758)
【0030】
頭部5は、標識柱本体1の挿通孔11にビーム3を挿通させたのと同様の状態において発泡ポリウレタンを充填硬化させて形成せしめると共に前記ブッシュを固定保持するものであって、その物性は例えば下記のとおりである。
【0031】
引張り破壊強さ:7.8MPa(試験方法 JIS K 7311)
引張り破壊伸び:340%(試験方法 JIS K 7311)
硬さ :デュロメータA86(試験方法 JIS K 7311)
【0032】
本発明は、前記の如く、標識柱本体とビームとの固定機構を、本体の頂部に充填形成された頭部中に埋設固定されたブッシュと、該ブッシュを経由してビーム中に着脱可能に挿入されるピンとにより構成したので、部品数を節減してコストを低減せしめると共に、特に現場における組み付け作業は、標識柱本体にビームを挿着した後ピンをブッシュに挿入し、そのピンを回転するだけで完了するので、設置現場における設置作業を極めて簡単かつ迅速に行なうことができる。
【0033】
前記図2および図3に示す実施形態は、ビーム3を標識柱本体1と同様の弾性を有する材質のものにより構成し、その場合の自由端側の垂れ下がりを防止するため、ビーム3中に補強体31を挿入した実施形態を示したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。
【0034】
図6はその一例を示す第2の実施形態であって、1は標識柱本体、3はビームを示し、標識柱本体1の頂部に形成した頭部5に埋設固定されたブッシュ6と、該ブッシュに対し着脱可能に組付けられたピン7とにより標識柱本体とビームとの固定機構を構成したことは前記図2および図3に示す実施形態と全く同様であるが、ビームの構成が相違している。すなわち、この実施形態は、2色成形法により、弾性体樹脂3−aと硬質樹脂3−bとが交互に連続しながら軸方向にのびる複合樹脂管によりビーム3´を構成し、その弾性体樹脂3−aにより所要の弾性を具備せしめると共に、硬質樹脂3−bにより硬度を上げて第1の実施形態で使用した補強体を使用することなくビーム自由端の垂れ下がりを防止することができるようにしたものである。
【0035】
図7は第3の実施形態を示すものである。すなわち、この実施形態は、標識柱本体1とビーム3との固定機構をブッシュ6とピン7とにより構成したことは前記第19実施形態と全く同様であるが、この実施形態においては、ビームを、合成樹脂製の不織布を材料として構成した下記の物性を有する樹脂紙管3″を使用してビームを構成した。
【0036】
引張り強さ:9.7MPa(試験方法 JIS L 1016)
伸び :42%(試験方法 JIS L 1016)
【0037】
この実施形態は、前記の如く、不織布を材料として構成した樹脂紙管3″をビームとして使用することにより、重量が軽くなってビームの自重による垂れ下がりを防止することが可能となる。
【0038】
なお、本発明による道路標識柱は、通常は一般に使用されている道路鋲と同様の大きさの台座を標識柱本体と一体に成型して路面上に起立設置するものであるが、必要に応じ、台座を小型化して図8または図9に示すように、マウントアップ8または縁石9中に設置することもできる。なお、図8または図9において、10は小型化された台座、11は該台座中に埋設されたボルト、12は埋設用脚であるが、この構成は道路標識柱の設置構造として周知であるので、その詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のA部に相当する本発明の要部の拡大断面図である。
【図3】組付け状態の説明図である。
【図4】組付け用ピンの一例を示す立体図である。
【図5】組付け用ブッシュの一例を示す立体図である。
【図6】第2の実施形態を示す一部の正面図である。
【図7】第3の実施形態を示す一部の正面図である。
【図8】設置構造の変形例を示す一部断面図である。
【図9】設置構造の他の変形例を示す一部断面図である。
【図10】中央分離帯に鋼製柵を設置した従来例を示す説明図である。
【図11】従来の道路標識柱の一例を示す正面図である。
【図12】図11に示す従来例の不具合を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1:標識柱本体、2:台座、3:ビーム、3’:弾性体樹脂、3’’:樹脂紙管、5:頭部、6:ブッシュ、7:ピン、8:マウントアップ、9:縁石、11:ビーム挿通孔、11:挿通孔、31:補強体、32,33:ピン孔、51:ピン孔、61:凹凸条、62:アンダーカット部、63:ピン挿通穴、70:スチール、71:突起、72:溝、73:ピン頭部、101:標識柱本体、102:孔、103:ビーム。104:頭部、107:ダンボール箱、108:空間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道のセンターライン、中央分離帯、車歩道の境界部分などの路面上に設置される歩行者の横断防止機能を有する道路標識柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、道路の中央分離帯aに鋼製の棚bを設置して、横断防止を図ることが行なわれているが、このようにすると、鋼製の柵に車輌などが衝突した場合、車輌や鋼製柵が破損して2次的事故につながるおそれがある。なお、図10において、Cは車道である。
【0003】
上記の如き問題点を改善するため、弾性体よりなる中空の道路標識柱を所定間隔をおいて路面上に所要数列設して横断防止の規制を行なうことが行なわれている。このようにすると、道路標識柱は弾性体よりなるので、車輌などが衝突すると弾性変形して道路標識柱や車輌の破損を防止すると共に、大きな2次的事故につながるおそれを少なくすることができる。
【0004】
しかし乍ら、前記の道路標識柱のみよる規制では、隣接する道路標識柱と道路標識柱との間に間隔があるので、人が自由に通り抜けることができ、このため、例えば駅から離れた位置に横断歩道がある場合、駅近くからの横断を規制するために道路標識柱を所要数列設しても、人がその道路標識柱の間を通り抜けて横断してしまうという問題がある。
【0005】
以上の如き従来技術の問題点を改善するため、弾性体よりなる中空の道路標識柱の片側もしくは両側から外側方にビームを張り出させ、実際には通り抜けることは可能であるが、視覚的に通り抜けることができないところと観念されて横断防止効果を発揮させることができるようにした道路標識柱が提案されている。その一例を示すと下記特許文献のとおりである。
【特許文献1】特開2001−81746号公報
【特許文献2】特開2001−182021号公報
【特許文献3】特開2002−348820号公報
【特許文献4】特開2003−105726号公報
【0006】
前記従来技術の一例を図11に示す。なお、図11は前記特許文献2に記載のものである。
この従来技術は、所望の復元弾性を有する中空の標識柱本体101の頂部近くにビーム取付用の孔102を設け、この孔102に標識柱本体と同様の材質よりなる中空のビーム103を差し込み、その状態においてウレタン発泡体の注型成形法により頭部104を成型することにより、標識柱本体101,ビーム103,頭部104を一体に結合せしめたものである。なお、この図において、105は再帰反射シートなどの反射材、106は隣接するビーム同士を紐などで連結するための連結孔である。
【0007】
この従来例は、前記のように、復元弾性を有する中空の標識柱本体101の片側もしくは両側から側方にビーム103を張り出させたので、これを路面上に配設すると共に隣接するビームの端部同士を結合すると、実際には通り抜けることが可能であるが、視覚的に通り抜けることができないと観念されて横断防止効果を発揮させることができる。
【0008】
しかし乍ら、図11に示す従来例は、標識柱本体から側方にこれと一体をなすビームが張り出しているので、ビームが邪魔になって取扱性が悪くなるばかりでなく、輸送時には図12に示すようにダンボール箱107内に無駄な空間108が存在してコストが高くなるという問題がある。なお、図中の符号109は路面設置用の台座である。
【0009】
また、標識柱本体とビームとを別体に構成し、両者を現場において固定部材を介して一体的に結合するようにしたものも前記特許文献に記載されている。しかし従来のものは、部品点数が多くなってコストが増大し、あるいは、設置作業に多くの手数が必要になるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記の如き従来技術の問題点を改善し、最小限の部品構成によりビームと標識柱本体とを着脱することができるようにすると共に、特に、現場における組付け作業を簡単かつ迅速に行なうことができる横断防止機能を有する道路標識柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明は、路面に立設する中空の標識柱本体と、その標識柱本体の頂部近くに設けた貫通孔に挿通する中空のビームと、前記標識柱本体の貫通孔に挿通したビームを標識柱本体に対し着脱可能に固定する固定機構とよりなり、該固定機構を、前記貫通孔にビームを挿通した状態において前記本体の頂部中に充填形成された頭部中に埋設固定されたブッシュと、該ブッシュを経由してビーム中に着脱可能に挿入されるピンとにより構成し、そのブッシュにアンダーカット部を形成すると共にピンの外周に前記ブッシュのアンダーカット部と係合する突起を形成してピンの抜け止めを行なうように構成したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記ブッシュのアンダーカットとピンの突起とによる抜止めを、ピン挿入後該ピンを回転させることにより行なうようにしたことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、前記ビーム中に補強体を挿着するなどしてビームに剛性を付与してビームの自由端側が垂れ下らないように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、前記の如く、標識柱本体とビームとの固定機構を、標識柱本体にビームを挿通した状態において本体の頂部中に充填形成された頭部中に埋設固定されたブッシュと、該ブッシュ経由してビーム中に着脱可能に挿入されるピンとにより構成したので、部品点数を節減してコストを低減せしめると共に、特に現場における設置作業は、標識柱本体にビームを装着した後ピンをブッシュに挿入し、そのピンを回転するだけで完了するので、現場における設置作業を極めて簡単かつ迅速に行なうことができる。
【0015】
また、本発明は、ビーム中に補強体を装着するなどしてビームに剛性を付与したので、ビームの自由端側が垂れ下ることを防止して整然とした外観を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面について本発明の具体的実施形態を説明する。
図1は本発明による道路標識柱の一実施形態を示す正面図であって、路面から起立設置される中空の標識柱本体1と、その標識柱本体の下端にこれと一体に成型された路面への固定設置用の台座2と、標識柱本体の頂部近くにこれとT字形をたすように組付けられたビーム3とから構成されている。4は再帰反射シートなどの反射体である。
【0017】
前記標識柱本体1は、車線分離用,車歩道の境界表示用などの視線誘導標識として広く実施されている周知のものであるからその詳細な説明は省略するが、例えば下記物性を有するポリウレタンにより構成してこれに車輌などが衝突すると弾性変形してその衝撃を吸収緩和すると共に車輌が通過すると復元し得るように構成する。
【0018】
引張り破壊強さ:14.7MPa(試験方法 JIS K 7311)
引張り破壊伸び:300%(試験方法 JIS K 7311)
引裂き破壊強さ:49N/mn(試験方法 JIS K 7311)
硬さ :デュロメータA90(試験方法 JIS K 7311)
【0019】
もっとも、本発明は前記のポリウレタンに限定されるものではなく、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)や低密度ポリエチレン(LDPE)などの弾性体、あるいは、その弾性体に近い樹脂を使用することもできる。
【0020】
ビーム3はこの実施形態の場合、標識柱本体1と同一の物性を有するポリウレタンにより構成したが、その場合、ビーム3の自由端側が垂れ下がるのを防止するためビーム3の成形時にその内部に補強体31を挿着する。
【0021】
補強体31は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂から構成され、この実施形態においてはポリレンテレフタレート(PET)を使用した。その物性を示すと下記のとおりである。
【0022】
引張り破壊強さ:133MPa(試験方法JIS C 2151)
引張り破壊伸び:244%(試験方法 JIS C 2151)
【0023】
本発明は、前記の如く、路面から起立設置される中空の標識柱本体1と、その標識柱本体の頂部近くにこれとT字形をなすように組み付けられたビーム3とから構成された道路標識柱において、両者の固定機構を、標識柱本体1にビーム3を挿通した状態において前記本体の頂部中に充填形成された頭部5中に埋設固定されたブッシュ6と、該ブッシュを経由してビーム3中に着脱可能に挿入されるピン7とにより構成したことを特徴とする。
【0024】
すなわち、図2ないし図5は本発明の要部を示すもので、図2は図1のA部に相当する拡大断面図、図3はその組付け方法の説明図、図4はピンの一例を示す立体図、図5はブッシュの一例を示す立体図である。
【0025】
これらの図に示すように、前記のブッシュ6は、標識柱本体1の頂部に近接して設けたビーム挿通孔11にビーム3を挿着した状態において頭部5を形成する際、その頭部5と一体的に結合されるように外周に凹凸条61を設けた円筒状をなし、その内部に前記ピン7を挿入した後該ピンを回転することによりピンの突起と係合するアンダーカット部62が形成されている。すなわち、前記アンダーカット部62には、その中心に前記突起つきのピン7を挿脱することができる図5に示すような形状のピン挿通穴63が形成されていて、上方からこのピン挿通穴63中に突起つきのピン7を挿入した後そのピン7を例えば90°回転させるとピンの突起がアンダーカット部62と係合して抜け止めを行なうように構成されている。
【0026】
前記のピン7は、図2および図3に示すように、頭部5中に前記ブッシュ6を経由してピン7を挿入すると、その先端がビーム3に形成したピン孔32,33を貫通して頭部5に形成したピン孔51に達する長さを持ち、その上方のブッシュ6の高さ位置に対応した位置に上部が外径方向に開いた突起71が形成され、さらにその上方にピン7の回転操作用の溝72を有するピン頭部73が形成されている。なお、溝72は突起でもよい。
【0027】
前記ブッシュ6およびピン7は、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂成型品であって、この実施形態の場合、特に限定されるものではないが、下記の物性を有するポリウレタンを使用してブッシュ6を成型し、同様に下記の物性を有するポリプロピレンを使用してピン7を成型した。
【0028】
ブッシュの物性
引張り破壊強さ:43MPa(試験方法 JIS K 6301)
引張り破壊伸び:270%(試験方法 JIS K 6301)
硬さ :JIS A99(試験方法 JIS K 6301)
【0029】
ピンの物性
引張り破壊強さ:23MPa(試験方法 JIS K 6758)
引張り破壊伸び:200%(試験方法 JIS K 6758)
硬さ:ロックウエルRスケール70(試験方法 JIS K 6758)
【0030】
頭部5は、標識柱本体1の挿通孔11にビーム3を挿通させたのと同様の状態において発泡ポリウレタンを充填硬化させて形成せしめると共に前記ブッシュを固定保持するものであって、その物性は例えば下記のとおりである。
【0031】
引張り破壊強さ:7.8MPa(試験方法 JIS K 7311)
引張り破壊伸び:340%(試験方法 JIS K 7311)
硬さ :デュロメータA86(試験方法 JIS K 7311)
【0032】
本発明は、前記の如く、標識柱本体とビームとの固定機構を、本体の頂部に充填形成された頭部中に埋設固定されたブッシュと、該ブッシュを経由してビーム中に着脱可能に挿入されるピンとにより構成したので、部品数を節減してコストを低減せしめると共に、特に現場における組み付け作業は、標識柱本体にビームを挿着した後ピンをブッシュに挿入し、そのピンを回転するだけで完了するので、設置現場における設置作業を極めて簡単かつ迅速に行なうことができる。
【0033】
前記図2および図3に示す実施形態は、ビーム3を標識柱本体1と同様の弾性を有する材質のものにより構成し、その場合の自由端側の垂れ下がりを防止するため、ビーム3中に補強体31を挿入した実施形態を示したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。
【0034】
図6はその一例を示す第2の実施形態であって、1は標識柱本体、3はビームを示し、標識柱本体1の頂部に形成した頭部5に埋設固定されたブッシュ6と、該ブッシュに対し着脱可能に組付けられたピン7とにより標識柱本体とビームとの固定機構を構成したことは前記図2および図3に示す実施形態と全く同様であるが、ビームの構成が相違している。すなわち、この実施形態は、2色成形法により、弾性体樹脂3−aと硬質樹脂3−bとが交互に連続しながら軸方向にのびる複合樹脂管によりビーム3´を構成し、その弾性体樹脂3−aにより所要の弾性を具備せしめると共に、硬質樹脂3−bにより硬度を上げて第1の実施形態で使用した補強体を使用することなくビーム自由端の垂れ下がりを防止することができるようにしたものである。
【0035】
図7は第3の実施形態を示すものである。すなわち、この実施形態は、標識柱本体1とビーム3との固定機構をブッシュ6とピン7とにより構成したことは前記第19実施形態と全く同様であるが、この実施形態においては、ビームを、合成樹脂製の不織布を材料として構成した下記の物性を有する樹脂紙管3″を使用してビームを構成した。
【0036】
引張り強さ:9.7MPa(試験方法 JIS L 1016)
伸び :42%(試験方法 JIS L 1016)
【0037】
この実施形態は、前記の如く、不織布を材料として構成した樹脂紙管3″をビームとして使用することにより、重量が軽くなってビームの自重による垂れ下がりを防止することが可能となる。
【0038】
なお、本発明による道路標識柱は、通常は一般に使用されている道路鋲と同様の大きさの台座を標識柱本体と一体に成型して路面上に起立設置するものであるが、必要に応じ、台座を小型化して図8または図9に示すように、マウントアップ8または縁石9中に設置することもできる。なお、図8または図9において、10は小型化された台座、11は該台座中に埋設されたボルト、12は埋設用脚であるが、この構成は道路標識柱の設置構造として周知であるので、その詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のA部に相当する本発明の要部の拡大断面図である。
【図3】組付け状態の説明図である。
【図4】組付け用ピンの一例を示す立体図である。
【図5】組付け用ブッシュの一例を示す立体図である。
【図6】第2の実施形態を示す一部の正面図である。
【図7】第3の実施形態を示す一部の正面図である。
【図8】設置構造の変形例を示す一部断面図である。
【図9】設置構造の他の変形例を示す一部断面図である。
【図10】中央分離帯に鋼製柵を設置した従来例を示す説明図である。
【図11】従来の道路標識柱の一例を示す正面図である。
【図12】図11に示す従来例の不具合を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1:標識柱本体、2:台座、3:ビーム、3’:弾性体樹脂、3’’:樹脂紙管、5:頭部、6:ブッシュ、7:ピン、8:マウントアップ、9:縁石、11:ビーム挿通孔、11:挿通孔、31:補強体、32,33:ピン孔、51:ピン孔、61:凹凸条、62:アンダーカット部、63:ピン挿通穴、70:スチール、71:突起、72:溝、73:ピン頭部、101:標識柱本体、102:孔、103:ビーム。104:頭部、107:ダンボール箱、108:空間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に立設される弾性体よりなる標識柱本体と、その標識柱本体の頂部近くに設けた貫通孔に挿通するビームと、前記標識柱本体の貫通孔に挿通したビームを標識柱本体に対して着脱可能に固定する固定機能とよりなり、該固定機構を、前記本体の頂部中に充填形成された頭部中に埋設固定されたブッシュと、該ブッシュを経由してビーム中に着脱可能に挿入されるピンとにより構成し、そのブッシュにアンダーカット部を形成すると共にピンの外周に前記ブッシュのアンダーカット部と係合する突起を形成してピンの抜け止めを行なうようにしたことを特徴とする横断防止機能を有する道路標識柱。
【請求項2】
前記ブッシュのアンダーカット部とピンの突起とによるピンの抜け止めを、ピン挿入後該ピンを回転させることにより行なうように構成したことを特徴とする請求項1に記載の横断防止機能を有する道路標識柱。
【請求項3】
特許請求の範囲第1項に記載の横断防止機能を有する道路標識柱において、ビームを中空の弾性体により構成すると共に該ビームを補強部材により補強してビーム自由端側の垂れ下がりを防止するように構成したことを特徴とする道路標識柱。
【請求項4】
特許請求の範囲第1項に記載の横断防止機能を有する道路標識柱において、ビームを、弾性体樹脂と硬質樹脂とが交互に連続しながら軸方向にのびる複合樹脂管により構成してビーム自由端側の垂れ下がりを防止するように構成したことを特徴とする道路標識柱。
【請求項5】
特許請求の範囲第1項に記載の横断防止機能を有する道路標識柱において、ビームを、合成樹脂製不織布を材料として構成した樹脂紙管により構成してビーム自由端側の垂れ下がりを防止する構造としたしたことを特徴とする道路標識柱。
【請求項1】
路面に立設される弾性体よりなる標識柱本体と、その標識柱本体の頂部近くに設けた貫通孔に挿通するビームと、前記標識柱本体の貫通孔に挿通したビームを標識柱本体に対して着脱可能に固定する固定機能とよりなり、該固定機構を、前記本体の頂部中に充填形成された頭部中に埋設固定されたブッシュと、該ブッシュを経由してビーム中に着脱可能に挿入されるピンとにより構成し、そのブッシュにアンダーカット部を形成すると共にピンの外周に前記ブッシュのアンダーカット部と係合する突起を形成してピンの抜け止めを行なうようにしたことを特徴とする横断防止機能を有する道路標識柱。
【請求項2】
前記ブッシュのアンダーカット部とピンの突起とによるピンの抜け止めを、ピン挿入後該ピンを回転させることにより行なうように構成したことを特徴とする請求項1に記載の横断防止機能を有する道路標識柱。
【請求項3】
特許請求の範囲第1項に記載の横断防止機能を有する道路標識柱において、ビームを中空の弾性体により構成すると共に該ビームを補強部材により補強してビーム自由端側の垂れ下がりを防止するように構成したことを特徴とする道路標識柱。
【請求項4】
特許請求の範囲第1項に記載の横断防止機能を有する道路標識柱において、ビームを、弾性体樹脂と硬質樹脂とが交互に連続しながら軸方向にのびる複合樹脂管により構成してビーム自由端側の垂れ下がりを防止するように構成したことを特徴とする道路標識柱。
【請求項5】
特許請求の範囲第1項に記載の横断防止機能を有する道路標識柱において、ビームを、合成樹脂製不織布を材料として構成した樹脂紙管により構成してビーム自由端側の垂れ下がりを防止する構造としたしたことを特徴とする道路標識柱。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−97246(P2006−97246A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281520(P2004−281520)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】
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