説明

樹脂フィルム製袋の製造方法

【課題】他の工程の生産速度を阻害することなく、能率よくトレーサビリティを有する標識符号を付与することが可能な樹脂フィルム製袋の製造方法の提供。
【解決手段】トレーサビリティが付与された樹脂フィルム製袋の製造において、筒状の熱可塑性樹脂フィルム2に、コンピューターによって制御された印字機による識別符号5の印字工程と、底を封じる底シール4を行うシール工程と、各樹脂フィルム製袋1を裁断分離する裁断工程とをインラインで実施する樹脂フィルム製袋の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーサビリティを有する樹脂フィルム製袋の製造方法、特に、スーバー等のレジ袋、ゴミ袋等の手提げ袋や平袋等の製造に適した樹脂フィルム製袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂フィルム製袋が広く使用されている。かかる樹脂フィルム製袋は、安価で、軽量で、強度も高く、また、耐水性に優れる等の特性を有しており、例えば、レジ袋と称されるスーパーでの購入商品を持ち帰るための買い物袋、また家庭でのゴミ回収用の袋として重宝な存在となっており、平袋や手提げ部を形成した手提げ袋として使用されている。
【0003】
一方、商品の製造者責任はますます強くなっており、商品の品質管理については極めて高度な管理が要求されるようになっている。このため、樹脂フィルム製袋には、製造所、製造装置ライン、製造時期、使用材料等の、経歴あるいは特性が容易に判別することができるように、トレーサビリティを付与する必要が生じている。
【0004】
また、ゴミ袋としての場合には、各家庭から排出されるゴミがその分別回収のルールに適合した分別をしているかどうかの確認・追跡を家庭毎にできるような機能も必要となってきている。
【0005】
さらには、各地方自治体では、ゴミ処理費を有料化して、回収費用を含めた形でゴミ回収袋を販売する方向にあり、この場合、ゴミ回収袋がゴミ処理費が支払い済みであることを示す表示が必要となり、また、これら樹脂フィルム製袋は、ゴミ処理費の管理と連動したトレーサビリティ機能が必要となっている。
【0006】
樹脂フィルム製袋にトレーサビリティを付与する方法としては、各樹脂フィルム製袋に経歴等の判別を可能とする符号を印刷することが考えられるが、識別符号は、樹脂フィルム製袋を個々に、あるいは、ロット毎に変える必要があるため、頻繁に変更操作が必要となり、その都度、生産ラインを停止する方式では生産性を極めて低下させる原因となる。
【0007】
また、印字速度自体も、高速での印字は難しく、印刷速度を低下せざるを得ないため、他の印刷を行う印刷ラインで識別符号を同時に印刷する方式とすると、印刷工程の能率を低下させる問題があった。
【0008】
従って、印刷中に印刷を停めることなく識別符号を容易に替えることができ、また、印字速度の速い印字方式が要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、他の工程の生産速度を阻害することなく、能率よく標識符号を付与することが可能な樹脂フィルム製袋の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するために、鋭意検討した結果なされたもので、具体的には、トレーサビリティが付与された樹脂フィルム製袋の製造において、筒状の熱可塑性樹脂フィルムに、コンピューターによって制御された印字機による識別符号の印字工程と、底を封じる底シールを行うシール工程と、各樹脂フィルム製袋を裁断分離する裁断工程とをインラインで実施することを特徴とする樹脂フィルム製袋の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、樹脂フィルム製袋が手提げ袋であり、手提げ部を形成する打抜き工程と手提げ部を形成する手提げ部シールを上記の工程に併せてインラインで行う上記の樹脂フィルム製袋の製造方法、樹脂フィルム製袋がポリオレフィンからなる上記の樹脂フィルム製袋の製造方法、及び、コンピューターによって作動する印刷機がインクジェット方式又は熱転写方式である上記の樹脂フィルム製袋の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、識別符号の付与を、シール工程及び裁断工程と、あるいは、型打抜き工程に組み込んで各工程の加工に連動したタイミングで印字するので生産速度が揃い、他の工程の障害となることがない。また、識別符号の管理はコンピューターを用いて行われるから、生産ラインを停止させることなく変更することができ、生産を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明におけるトレーサビリティが付与された樹脂フィルム製袋1の製造は、手提げ袋にする場合、図1に示すように、筒状の熱可塑性樹脂フィルム2に、手提げ部3を形成するための打抜き工程Aと、コンピューターによって制御された印字機による識別符号5の印字工程Bと、底シール4と、手提げ部シール9を行なうシール工程Cと、各樹脂フィルム製袋1を裁断分離する裁断工程Dを、インラインで実施することによって行われる。
【0014】
樹脂フィルム製袋1は、筒状の熱可塑性樹脂フィルム2を横断方向に直に裁断し、あるいは、両縁を織り込むことなく筒状体のまま使用して平袋としてもよいが、手提げ部3と封止片7を形成することにより、物を収容したときの運搬が容易となり、また、筒状の熱可塑性樹脂フィルム2の両側に折込み6、6を形成したガゼット入りとすることによって、袋の大きさに対して内容積を大きくすることができ、また、手提げ部3が二重構造となって重量物を運搬することが可能となる。
【0015】
熱可塑性樹脂フィルム2を形成する材料としては、一般に使用されている熱可塑性樹脂を広く使用することができ、具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド等を用いることができる。また、ポリプロピレンフィルムの内面にポリエチレンフィルムを積層した複合フィルムを用いることもできる。中でも、経済性、耐水性、ガスバリアー性等からポリオレフィンのフィルムが望ましい。
【0016】
これら熱可塑性樹脂には、目的に応じて各種の添加剤を添加することができる。具体的には、フェノール系、有機ホスファイト系などの有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アルカリ土類金属塩のカルボン酸塩系等の塩素補足剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;ヒドラジン系、アミンアシド系等の金属不活性剤;無機、有機充填剤、可塑剤等が挙げられる。
【0017】
これら添加剤は、適宜組み合わせて材料組成物を製造する工程で配合される。添加剤の配合は、従来の公知の二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール等の混練装置を用いて所定割合に混合して、これを溶融混練して調製してもよいし、高濃度のいわゆるマスターバッチを作製し、これを希釈して使用するようにしてもよい。
【0018】
成形は、Tダイによる押し出し成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法等を使用材料と目的から選択して実施することができる。Tダイによる押し出し成形法、あるいは、カレンダー成形法を用いてフラットなフィルムとしたときは2枚を重ねてその両側をヒートシールすることによって筒状とされる。
【0019】
熱可塑性樹脂フィルム2の厚さは目的に応じて任意に選定することができるが、一般的には、5〜50μm、好ましくは5〜30μm程度である。また、熱可塑性樹脂フィルム2は二軸方向に延伸がかかる条件で成形することが望ましい。
【0020】
本発明による樹脂フィルム製袋1の製造は、図3に示すような装置によって行うことができる。手提げ部3を有する手提げ袋の例でもって説明すれば、必要に応じて印刷がされ、両側に折込み6、6が形成された筒状の熱可塑性樹脂フィルム2を、製袋機10の打抜き工程Aに供給し打抜き機構11で打抜きが行われる。打抜きは、手提げ部3と封止片7を形成するもので、図1、図2に示すように、筒状熱可塑性樹脂フィルム2の両側部と、商品を収容した後開口を封鎖するための封止片7を形成するために中央部とを残して、樹脂フィルム製袋1の不要な部分8が打抜かれる。
【0021】
両側に折込み部6、6が形成された筒状の熱可塑性樹脂フィルム2が使用される場合は、図2に示すように、折込み部6の谷部6aを切り欠くように裁断される。折込み部6の谷部6aを切り欠くことによって折込み部6、6の上下が分離しその間に手を差し入れることが可能となる。
【0022】
不要な部分8が打抜かれた熱可塑性樹脂フィルム2は、印字工程Bに送給され、コンピューター12で制御された印字機構13を用いて識別符号5が印字される。識別符号5は、樹脂フィルム製袋1を識別可能とし、トレーサビリィティを付与するもので、個々の樹脂フィルム製袋1毎に、あるいは、ロット毎、もしくは生産日毎等に定まった符号がコンピューターに予め入力され、前記の製袋工程と連動したタイミングに制御されて、印字される。識別符号5は、数字、アルファベット、文字、記号等目的に応じたものを自由に選択して使用することができる。これらは連番でも任意の番号や順序での印字でもよい。
【0023】
印字機構13はコンピューター12によって符号を容易に替えることができるものが使用され、一般には、インクジェット方式、熱転写方式が望ましい。
【0024】
識別符号5が印字された熱可塑性樹脂フィルム2は、シール工程Cに送給されて、シール機構14によって、各樹脂フィルム製袋1の底を形成するための底シール4と、手提げ部3を形成するための手提げ部シール9が形成される。シールの方法は、高周波シール、超音波シールを用いることができるが、熱溶着法によるシールが一般的である。
【0025】
底シール4と手提げ部シール9が形成された熱可塑性樹脂フィルム2は、裁断工程Dに送給されて、裁断機構15によって個々に裁断され、図2に示すように、樹脂フィルム製袋1とされた後、折り畳み工程Eに送られて折り畳み機構(図示せず)によって所定の大きさに折り畳まれた後、通常10枚とかの単位毎に外包装される。印字する場所は、この袋の外包装された状態でも外から識別できるような場所が好ましい。折り畳みは、通常、袋の長手方向に先ず二つ折りし、これをまた同じく二つ折りして後、今度は左右に折りたたむのが望ましく、従って、印字する場所は、四等分の下二段目の裏側にすると、印字が外から識別可能となる。印字する場所、及び、折り畳み方は、限定されるものではないが、いずれにしろ折り畳んで重ねた状態で上面となる部分に印字するのが好ましい。
【0026】
本発明は、上述のように手提げ袋を生産する場合は、筒状の熱可塑性樹脂フィルム2に、手提げ部3を形成するための打抜き工程Aと、コンピューターによって制御された印字機13による識別符号5の印字工程Bと、底シール4と手提げ部シール9を形成するシール工程Cと、各樹脂フィルム製袋1を裁断分離する裁断工程Dを、インラインで実施するが、各工程の順序は目的に応じて変更することができる。
【0027】
また、本発明は、手提げ部3を有しない平袋の生産を行うこともでき、その場合は、上述の製造工程から、打抜き工程Aが省略される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の樹脂フィルム製袋は、トレーサビリティを有するから、品質管理あるいは流通管理に優れ、また、手提げ袋や平袋として樹脂フィルム製袋を能率よく製造することができる。特に近年の公共事業体のゴミ収集に関する有料化に対応するトレーサビリティ機能を有する樹脂フィルム製袋として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明樹脂フィルム製袋の製造工程を示す斜視図
【図2】本発明樹脂フィルム製袋の例を示す平面図
【図3】本発明樹脂フィルム製袋を製造する装置の正面図
【符号の説明】
【0030】
A.打抜き工程
B.印字工程
C.シール工程
D.裁断工程
E.折り畳み工程
1、樹脂フィルム製袋
2、熱可塑性樹脂フィルム
3、手提げ部
4、底シール
5、識別符号
6、折込み部
7、封止片
8、不要な部分
9、手提げ部シール
10、製袋機
11、打抜き機構
12、コンピューター
13、印字機構
14、シール機構
15、裁断機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーサビリティが付与された樹脂フィルム製袋の製造において、筒状の熱可塑性樹脂フィルムに、コンピューターによって制御された印字機による識別符号の印字工程と、底を封じる底シールを行うシール工程と、各樹脂フィルム製袋を裁断分離する裁断工程とをインラインで実施することを特徴とする樹脂フィルム製袋の製造方法。
【請求項2】
樹脂フィルム製袋が、手提げ袋であり、手提げ部を形成する打抜き工程と手提げ部を形成する手提げ部シールを請求項1記載の工程に併せてインラインで行う請求項1記載の樹脂フィルム製袋の製造方法。
【請求項3】
樹脂フィルム製袋が、ポリオレフィンからなる請求項1又は2に記載の樹脂フィルム製袋の製造方法。
【請求項4】
コンピューターによって作動する印刷機が、インクジェット方式又は熱転写方式である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂フィルム製袋の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−305980(P2006−305980A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134211(P2005−134211)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(591143951)ジェイフィルム株式会社 (19)
【Fターム(参考)】