説明

樹脂成形品及びその成形方法と回転角センサとスロットル開度制御装置

【課題】樹脂成形品の樹脂成形時のマグネット片の割れを防止する。
【解決手段】スロットルギヤ30は、マグネット片34を樹脂によりインサート成形してなる。樹脂により形成されかつ円筒状をなすギヤ本体38のボス部40に、マグネット片34が配置される。マグネット片34の着磁方向に交差する2つの側面34a,34bを、ギヤ本体38の樹脂により全面的に埋設する。マグネット片34の着磁方向に交差する2つの側面34a,34bが、矩形状の外形で、一方向に長い外形を有している。スロットルギヤ30の樹脂成形時において、マグネット片34の着磁方向に交差する2つの側面34a,34bに加わる溶融樹脂の樹脂圧のアンバランスを緩和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品及びその成形方法と回転角センサとスロットル開度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、スロットルボデー内に収容されたスロットル弁の開度を検出する回転角センサを備えるスロットル開度検出装置がある(例えば、特許文献1参照。)。このようなスロットル開度検出装置の回転角センサ(特許文献1における「スロットルポジションセンサ」が相当する。)は、マグネット片(同、「永久磁石」が相当する。)を備えかつスロットル弁のシャフト部に固定された回転体(同、「ロータ」が相当する。)と、磁気検出素子(同、「検出素子」が相当する。)を設けた固定側部材(同、「センサカバー」が相当する。)とを備えている。そして、磁気検出素子が出力する信号に基づいて、回転体の回転角を非接触状態で検出する構成となっている。
【0003】
回転体を、樹脂によりマグネット片をインサート成形(モールド成形とも呼ばれる。)した樹脂成形品とする場合がある。なお、図8は従来例にかかる回転体を示す断面図である。
図8に示すように、回転体130は、樹脂により形成された略円筒状の回転体本体138の内周部に、左右一対をなす四角柱状のマグネット片134が左右対称状に配置されている。そして、回転体本体138の内周面に、マグネット片134の一側面134aが全面的に露出されている。また、マグネット片134の一側面134aに交差する側面(他側面という。)134bの大半は、回転体本体138すなわち樹脂部に埋設されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−84503
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来例の回転体130では、回転体本体138の内周面にマグネット片134の一側面134aが全面的に露出されており、他側面134bの大半が回転体本体(樹脂部)138に埋設されている。このため、回転体130の樹脂成形時において、マグネット片134を配置した成形型のキャビティ内に樹脂すなわち溶融樹脂を射出する際に、マグネット片134の交差する2つの側面134a,134bに加わる溶融樹脂の圧力(「樹脂圧」という。)がアンバランスとなる。すなわち、マグネット片134の一側面134aに対する樹脂圧は低く、その他側面134bに対する樹脂圧は高い。このため、樹脂圧のアンバランスにより、マグネット片134の一端部(図8において上端部)を支点として、他端部(図8において下端部)を回転体本体138の径方向外方へ押しやる曲げモーメントMが加わりやすく、甚だしいときにはマグネット片134に割れを生じるという問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、マグネット片の割れを防止することのできる樹脂成形品及びその成形方法と回転角センサとスロットル開度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、特許請求の範囲の欄に記載された構成を要旨とする樹脂成形品及びその成形方法と回転角センサとスロットル開度制御装置により解決することができる。
すなわち、請求項1に記載された樹脂成形品によると、樹脂によりインサート成形するマグネット片の着磁方向に交差する2つの側面を、樹脂により全面的に埋設している。このため、樹脂成形品の樹脂成形時において、マグネット片の着磁方向に交差する2つの側面に加わる樹脂(溶融樹脂)の樹脂圧のアンバランスが緩和される。これにより、従来、溶融樹脂の樹脂圧のアンバランスにより生じたマグネット片の割れを防止あるいは低減することができる。
【0008】
また、請求項2に記載された樹脂成形品によると、着磁方向に交差する2つの側面が矩形状の外形を有しているマグネット片の割れを防止あるいは低減することができる。
【0009】
また、請求項3に記載された樹脂成形品によると、着磁方向に交差する2つの側面が一方向に長い外形を有しているマグネット片の割れを防止あるいは低減することができる。
【0010】
また、請求項4に記載された樹脂成形品によると、樹脂により形成されかつ円筒状をなす樹脂部の内周部に配置されるマグネット片の割れを防止あるいは低減することができる。
【0011】
また、請求項5に記載された樹脂成形品の成形方法によると、成形型のマグネット支持部により、マグネット片の着磁方向に交差する方向の両端部を支持した状態で、成形型のキャビティ内に樹脂を射出する。このため、溶融樹脂の樹脂圧のアンバランスによるマグネット片の着磁方向に交差する方向の両端部の位置ずれを抑制することにより、マグネット片の割れを防止あるいは低減することができる。
【0012】
また、請求項6に記載された樹脂成形品の成形方法によると、成形型のマグネット支持部により、マグネット片の着磁方向に交差する方向の両端部において対角方向に位置する隅角部を支持する。これにより、マグネット片の着磁方向に交差する方向の両端部に対する成形型のマグネット支持部の当接面積を減少し、マグネット支持部に対する当接によるマグネット片の欠けの発生を防止あるいは低減することができる。
【0013】
また、請求項7に記載された樹脂成形品の成形方法によると、成形型のマグネット支持部により、マグネット片の隅角部を稜線方向に関して部分的に支持する。これにより、マグネット片の着磁方向に交差する方向の両端部に対する成形型のマグネット支持部の当接面積を一層減少し、マグネット支持部に対する当接によるマグネット片の欠けの発生を効果的に防止あるいは低減することができる。
【0014】
また、請求項8に記載された回転角センサによると、マグネット片を備える回転体の回転にともなって固定側部材の磁気検出素子が出力する信号に基づいて、回転体の回転角を非接触状態で検出することができる。また、回転体が、前記請求項1〜4のいずれか1つに記載の樹脂成形品であるので、マグネット片の割れを防止あるいは低減することのできる回転体を備えた回転角センサを提供することができる。
【0015】
また、請求項9に記載されたスロットル開度検出装置によると、マグネット片を備えるスロットルギヤの回転にともなって、固定側部材の磁気検出素子が出力する信号に基づいて、スロットル弁の回転角を非接触状態で検出することができる。また、マグネット片の割れを防止あるいは低減することのできるスロットルギヤを備えたスロットル開度検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。説明の都合上、内燃機関用のスロットル制御装置から説明する。なお、図1は内燃機関用のスロットル制御装置を示す断面図である。
図1に示すように、スロットル制御装置10は、制御モータ12の駆動により、ギヤ伝動機構を介してスロットル軸14が回動されることにより、スロットル弁16が開閉されるように構成されている。また、スロットル制御装置10は、スロットル弁16の開度すなわち回転角を検出するスロットル開度検出装置18を備えている。
【0018】
前記スロットル制御装置10のボデー本体20には、図1において紙面表裏方向に貫通する吸気通路21が形成されている。ボデー本体20には、吸気通路21を径方向(図1において左右方向)に横切るスロットル軸14の両端部が、転がり軸受23とメタル軸受24とにより回動可能に支持されている。また、スロットル軸14上には、吸気通路21内を開閉する円板形状のバタフライ式のスロットル弁16が取付けられている。なお、スロットル軸14は、本明細書でいう「軸部」に相当する。
【0019】
前記スロットル軸14における転がり軸受23側の端部(図1において左端部)には、略カップ状のばね座26が固定されている。ばね座26と、そのばね座26に対向するボデー本体20との間には、捻じりコイルばね28が介装されている。捻じりコイルばね28は、スロットル軸14とともにスロットル弁16を閉じる方向に付勢している。さらに、スロットル軸14の同端部には、スロットル弁16の回転駆動用のスロットルギヤ30が固定されている。スロットルギヤ30とばね座26との間には、捻じりコイルばね28よりも小さいコイル径の捻じりコイルばね32が介装されている。スロットルギヤ30は、スロットル開度検出装置18を構成するマグネット片34、及び、磁気回路を構成するヨーク36等を樹脂によりインサート成形してなる樹脂成形品である。
【0020】
前記スロットルギヤ30を説明する。なお、図2はスロットルギヤを示す正面図、図3は同じく背面図、図4は図2のIV−IV線矢視断面図、図5は図4のV−V線矢視断面図、図6はマグネット片及びヨークを示す分解斜視図である。
図2に示すように、スロットルギヤ30は、樹脂により形成された樹脂部としてのギヤ本体38の表面側(図4において上側)の外周部に、扇形のギヤ部39が同心状に一体形成されている(図3及び図4参照。)。ギヤ本体38の内周部に円筒状のボス部40が同心状に一体形成されている。
【0021】
図4に示すように、前記ボス部40の底部すなわち裏面側(図4において下側)の端部には、前記スロットル軸14(図1参照。)の端部に嵌合されかつその端部のかしめにより結合される金属製の取付板42が同心状に設けられている。取付板42の中央部には、所定の角度でかつスロットル軸14の端部に回り止め状態に嵌合させるための二面幅状の取付孔43が形成されている。取付板42及びマグネット片34並びに前記ヨーク36は、樹脂によりインサート成形されることにより、ギヤ本体38に一体化されている。
【0022】
前記ギヤ本体38のボス部40には、2個一対をなすマグネット片34とヨーク36が配置されている(図4及び図6参照。)。マグネット片34は、例えば、サマリウムコバルト(SmCo)磁石からなる永久磁石であって、四角柱状いわゆる直方体状に形成されている(図6参照。)。
また、図6に示すように、ヨーク36は、磁性材により半円弧状に形成されており、相互に円環状をなすように配置される。ヨーク36の両端部には、径方向外方へ張り出す鍔部45が形成されている。両ヨーク36の鍔部45の相互間に、それぞれマグネット片34が挟み込まれる。また、スロットルギヤ30(図2〜図5参照。)の樹脂成形時において、2個のマグネット片34及び2個のヨーク36並びに前記取付板42が、成形型(後述する。)のキャビティ内の所定位置に配置された状態でインサート成形される。
【0023】
前記2個のマグネット片34は、両ヨーク36の鍔部45(図6参照。)に面する方向(図2中、矢印参照。)に着磁されている。このため、マグネット片34におけるボス部40の内周側に位置する側面(「内側側面」という。)34aと、ボス部40の外周側に位置する側面(「外側側面」という。)34bが、「着磁方向に交差する2つの側面」となっている。また、マグネット片34の内側側面34aと外側側面34bは、ギヤ本体38のボス部40の樹脂により全面的に埋設されている。これとともに、マグネット片34におけるボス部40の表側(図4において上側)に位置する側面(「表側側面」という。)34cと、ボス部40の裏側(図4において下側)に位置する側面(「裏側側面」という。)34dについても、ギヤ本体38のボス部40の樹脂により全面的に埋設されている。また、マグネット片34の内側側面34a及び外側側面34bは、矩形状の外形、詳しくは一方向すなわちギヤ本体38のボス部40の軸方向に長い長四角形状の外形を有している(図6参照。)。
【0024】
図4に示すように、前記ギヤ本体38の裏面(図4において下面)には、ボス部40を取り囲む環状の溝部47が形成されている。また、ギヤ本体38のボス部40の表面(図4において上面)には、マグネット片34の内側側面34aと表側側面34cとのなす隅角部34eに達する表側スリット状溝48が形成されている(図5参照。)。また、ギヤ本体38の裏面(図4において下面)には、マグネット片34の外側側面34bと裏側側面34dとのなす隅角部34fに達する裏側スリット状溝49が形成されている(図3参照。)。なお、スロットルギヤ30は、本明細書でいう「樹脂成形品」、「回転体」に相当する。
【0025】
図1に示すように、前記ボデー本体20の側部(図1において上側部)には、モータ収納部51が形成されている。モータ収納部51内には、スロットル弁16を開閉駆動するための電動モータからなる制御モータ12が収納されている。制御モータ12の出力回転軸(図示しない。)には、ピニオンギヤ53が固定されている。また、ボデー本体20内に支持されたギヤ軸55には、減速用の中間ギヤ57が回転可能に支持されている。中間ギヤ57は、大径ギヤ部58と小径ギヤ部59とを有している。大径ギヤ部58はピニオンギヤ53に噛合され、また小径ギヤ部59は前記スロットルギヤ30のギヤ部39に噛合されている。したがって、制御モータ12の回転駆動により中間ギヤ57を介してスロットルギヤ30が回転されることにより、スロットル軸14と共にスロットル弁16が開閉制御される。
【0026】
前記ボデー本体20のギヤの配設側(図1において左側)には、カバー体61が装着されている。カバー体61の内側面には、前記スロットルギヤ30のボス部40内に非接触状態で挿入されるセンサ装着部62が突出状に設けられている。センサ装着部62には、磁気検出素子64及びステータ66が組込まれている。磁気検出素子64には、ホール素子、ホールIC、磁気抵抗素子等が用いられる。また、磁気検出素子64は、マグネット片34を備えるスロットルギヤ30の回転にともなって変化する磁界の強さに応じた電圧信号等の電気信号を出力する。また、ステータ66は、金属(磁性材料)製で、磁気検出素子64への磁束を集中させる。カバー体61及びステータ66は、センサ装着部62と共に樹脂成形されている。また、カバー体61の樹脂成形時に、磁気検出素子64及びステータ66をインサート成形することができる。なお、ボデー本体20とカバー体61とにより、本明細書でいう「スロットルボデー」が構成されている。また、カバー体61は、本明細書でいう「固定側部材」、「スロットルボデー側に設けられる部材」に相当する。
【0027】
前記カバー体61を前記ボデー本体20に装着することにより、前記センサ装着部62が前記スロットルギヤ30のボス部40内に非接触状態で挿入される。これにより、磁気検出素子64の磁気検出面が、スロットルギヤ30のボス部40の内周面に非接触状態で対向する。また、スロットルギヤ30の両マグネット片34によって磁気が印加され、例えば一方のヨーク36にN極が、他方のヨーク36にS極が発生すると、カバー体61のセンサ装着部62内の磁気検出素子64の磁気検出面を通る磁路が形成される。そして、磁路に流れる磁界の強さは、磁気検出素子64に対するヨーク36及びマグネット片34の回転角により変化する。その磁界の強さに応じて、磁気検出素子64の出力電圧が変化し、スロットルギヤ30と一体回転するスロットル弁16の回転角(開度)を示す電圧信号が出力される。
【0028】
前記スロットル開度検出装置18は、前記マグネット片34を備えるスロットルギヤ30の回転にともなって磁気検出素子64が出力する信号に基づいて、スロットルギヤ30の回転角を非接触状態で検出する回転角センサを備えており、スロットル弁16の回転角(開度)を非接触状態で検出するものである。なお、磁気検出素子64の出力側は、カバー体61に設けられたターミナル部(図示しない。)等を通して、外部に設けられた検出回路、及び、エンジン制御用コントローラ等に接続されている。
【0029】
前記スロットル制御装置10は、車両等の内燃機関に搭載される。そして、例えば、車両等の運転者がアクセルペダルを踏み込むと、アクセル開度センサによりその開度が検出され、その開度信号がエンジン制御用コントローラに出力される。エンジン制御用コントローラは、アクセル開度信号の信号に応じた駆動信号を、スロットル弁16の開度がアクセル開度に応じた開度になるように制御モータ12に出力する。これにより、制御モータ12が駆動される。制御モータ12の駆動力は、ピニオンギヤ53を介して中間ギヤ57に伝達され、中間ギヤ57を介してスロットルギヤ30が回転される。これにより、スロットル軸14及びスロットル弁16が、捻じりコイルばね28の付勢力に抗して所定の回転角だけ回転される。このとき、スロットル開度検出装置18の磁気検出素子64は、スロットルギヤ30の回転角つまりスロットル弁16の開度に応じた検出信号を出力する。この信号は、スロットル開度信号としてエンジン制御用コントローラに入力されることにより、エンジンの燃料噴射量の演算などに使用される。
【0030】
次に、前記スロットルギヤ(樹脂成形品)30の成形方法にかかる成形型について説明する。なお、図7はスロットルギヤの成形型を示す断面図である。
図7に示すように、成形型70は、上型としての固定型72と、固定型72に対して型締め、型開き可能な下型としての可動型74を備えている。
固定型72の下面には、スロットルギヤ30(図2〜図5参照。)の表面側に対応する形状の成形面76が形成されている。成形面76には、スロットルギヤ30のギヤ本体38のボス部40(図4参照。)の内周面に対応する形状の中子型77が設けられている。中子型77の下端面は前記取付板42の表面に面し、その下端面には取付板42の取付孔43内に嵌合する突起部78が形成されている。また、中子型77の基端部の外周面上には、一対のマグネット支持部80が突出されている。このマグネット支持部80は、薄板状をなしかつスロットルギヤ30のマグネット片34の表側の端部(図7において上端部)における内側側面34aと表側側面34cとのなす隅角部34eに嵌合する入隅状の支持凹部81が形成されている。さらに、マグネット支持部80は、マグネット片34の隅角部34eの稜線方向(図7において紙面表裏方向)の中央部に部分的に対応している。なお、マグネット支持部80は、固定型72に一体形成してもよいし、別体で形成したものを固定型72に取付けるように構成してもよい。
【0031】
前記可動型74の上面には、前記スロットルギヤ30(図2〜図5参照。)の裏面側に対応する形状の成形面83が形成されている。成形面83には、スロットルギヤ30のギヤ本体38のボス部40(図4参照。)の裏面側の端部の内周面に対応する形状の中子型84が設けられている。中子型84の上端面は、前記取付板42の裏面、及び、前記固定型72の中子型77の突起部78の先端面(下端面)に面する。また、成形面83には、ギヤ本体38の裏側の溝部47(図4参照。)を形成するための環状凸部86が形成されている。環状凸部86の内側付近には、一対のマグネット支持部87が設けられている。このマグネット支持部87は、上方に延びる薄板状をなしかつマグネット片34の裏側の端部(図7において下端部)における外側側面34bと裏側側面34dとのなす隅角部34fに嵌合する入隅状の支持凹部88が形成されている。さらに、マグネット支持部87は、マグネット片34の前記隅角部34fの稜線方向(図7において紙面表裏方向)の中央部に部分的に対応している。また、固定型72のマグネット支持部80と可動型74のマグネット支持部87とは、マグネット片34の対角方向の隅角部34e,34fを支持するものとなっている。なお、マグネット支持部87は、可動型74に一体形成してもよいし、別体で形成したものを可動型74に取付けるように構成してもよい。
【0032】
図7に示すように、前記固定型72に前記可動型74を型締めすることにより、スロットルギヤ30(図2〜図5参照。)を形成するキャビティ90が形成される。キャビティ90内には、2個のマグネット片34と、2個のヨーク36(図6参照。)と、取付板42とが、所定位置に配置される。2個のマグネット片34は、ヨーク36の鍔部45(図6参照。)の間に挟まれた状態で、固定型72のマグネット支持部80及び環状凸部86と可動型74のマグネット支持部87とにより所定位置に支持される。また、取付板42は、固定型72の中子型77と可動型74の中子型84とにより所定位置に支持される。なお、2個のヨーク36は、周知のように、固定型72に設けられたヨーク支持部(図示しない。)と可動型74のヨーク支持部(図示しない。)とにより、所定位置に支持されるものとする。
【0033】
前記スロットルギヤ30の樹脂成形時において、前記成形型70のキャビティ90内に溶融樹脂が所定の射出圧力をもって射出される。このとき、成形型70のキャビティ90内に予め配置されているマグネット片34とヨーク36と取付板42は、樹脂によりインサート成形される。このとき、マグネット片34の着磁方向に交差する2つの側面すなわち内側側面34aと外側の側面34bが樹脂により全面的に埋設されるように溶融樹脂が回り込む。このため、マグネット片34の内側側面34aと外側の側面34bとに加わる溶融樹脂の樹脂圧のアンバランスが緩和される。
【0034】
前記したインサート成形を行なうことによって、マグネット片34及びヨーク36、取付板42の外周部は、ギヤ本体38を形成する溶融樹脂により埋設され、その樹脂により所定位置に固定される。また、溶融樹脂の硬化後、型開きすることにより、マグネット、ヨーク36、取付板42を樹脂部であるギヤ本体38に一体化したスロットルギヤ30が取り出される(図2〜図5参照。)。なお、ギヤ本体38の表面側のスリット状溝48(図2、図4及び図5参照。)は、固定型72のマグネット支持部80(図7参照。)の撤去により形成される。また、ギヤ本体38の裏面側のスリット状溝49(図3、図4及び図5参照。)は、可動型74のマグネット支持部87(図7参照。)の撤去により形成される。
【0035】
前記したスロットルギヤ30(図2〜図5参照。)によると、樹脂によりインサート成形するマグネット片34の着磁方向に交差する2つの側面すなわち内側側面34aと外側の側面34bを、ギヤ本体38のボス部40の樹脂により全面的に埋設している。このため、スロットルギヤ30の樹脂成形時において、マグネット片34の着磁方向に交差する2つの側面(内側側面34aと外側の側面34b)に加わる樹脂(溶融樹脂)の樹脂圧のアンバランスが緩和される。これにより、従来、溶融樹脂の樹脂圧のアンバランスにより生じたマグネット片34の割れを防止あるいは低減することができる。このことは、マグネット片34が、焼結体で脆い性質を有するサマリウムコバルト(SmCo)磁石等の永久磁石である場合に有効である。
【0036】
また、着磁方向に交差する2つの側面(内側側面34aと外側の側面34b)が矩形状の外形を有しているマグネット片34の割れを防止あるいは低減することができる。
【0037】
また、着磁方向に交差する2つの側面(内側側面34aと外側の側面34b)が一方向(ギヤ本体38のボス部40の長手方向)に長い外形を有しているマグネット片34の割れを防止あるいは低減することができる。
【0038】
また、樹脂により形成されかつ円筒状をなす樹脂部すなわちギヤ本体38のボス部40の内周部に配置されるマグネット片34の割れを防止あるいは低減することができる。
【0039】
また、前記スロットルギヤ30の成形方法によると、成形型70(図7参照。)の固定型72のマグネット支持部80及び可動型74のマグネット支持部87により、マグネット片34の着磁方向に交差する方向の両端部(ギヤ本体38のボス部40の軸方向の両端部)を支持した状態で、成形型70のキャビティ90内に樹脂を射出する。このため、溶融樹脂の樹脂圧のアンバランスによるマグネット片34の着磁方向に交差する方向の両端部の位置ずれを抑制することにより、マグネット片34の割れを防止あるいは低減することができる。
【0040】
また、成形型70の固定型72のマグネット支持部80及び可動型74のマグネット支持部87により、マグネット片34の着磁方向に交差する方向の両端部(ギヤ本体38のボス部40の軸方向の両端部)において対角方向に位置する隅角部34e,34fを支持する。これにより、マグネット片34の着磁方向に交差する方向の両端部に対する成形型70の固定型72のマグネット支持部80及び可動型74のマグネット支持部87の当接面積を減少し、両マグネット支持部80,87に対する当接によるマグネット片34の欠けの発生を防止あるいは低減することができる。
【0041】
また、成形型70のマグネット支持部80及び可動型74のマグネット支持部87により、マグネット片34の隅角部34e,34fを稜線方向に関して部分的に支持する。これにより、マグネット片34の着磁方向に交差する方向の両端部に対する成形型70のマグネット支持部80及び可動型74のマグネット支持部87の当接面積を一層減少し、両マグネット支持部80,87に対する当接によるマグネット片34の欠けの発生を効果的に防止あるいは低減することができる。
【0042】
また、前記スロットル開度検出装置18(図1参照。)によると、マグネット片34を備えるスロットルギヤ30の回転にともなって、カバー体61の磁気検出素子64が出力する信号に基づいて、スロットル弁16の回転角を非接触状態で検出することができる。また、マグネット片34の割れを防止あるいは低減することのできるスロットルギヤ30を備えたスロットル開度検出装置18を提供することができる。
【0043】
また、前記スロットル開度検出装置18(図1参照。)に備えた回転角センサによると、マグネット片34を備えるスロットルギヤ30の回転にともなって、カバー体61の磁気検出素子64が出力する信号に基づいて、スロットルギヤ30の回転角を非接触状態で検出することができる。また、マグネット片34の割れを防止あるいは低減することのできるスロットルギヤ30を備えた回転角センサを提供することができる。
【0044】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明の樹脂成形品及びその成形方法は、前記実施例のスロットルギヤ及びその成形方法に限らず、マグネット片を樹脂によりインサート成形した種々の樹脂成形品及びその成形方法として適用することができる。また、本発明の回転角センサは、前記実施例のスロットル開度検出装置に限らず、種々の回転体の回転角を検出するものとして適用することができる。また、本発明は、前記実施例の制御モータによりスロットル弁を開閉駆動する内燃機関用のスロットル制御装置に限らず、アクセルペダルの踏み込み量をワイヤーケーブルやアクセルレバーを介して機械的にスロットル弁を開閉させる内燃機関用のスロットル制御装置にも適用することができる。また、本発明は、前記実施例の制御モータによりスロットル弁を開閉駆動する内燃機関用のスロットル制御装置に限らず、アクセルペダルの踏み込み量をワイヤーケーブルやアクセルレバーを介して機械的にスロットル弁を開閉させる内燃機関用のスロットル制御装置にも適用することができる。また、前記実施例では、スロットル軸とスロットル弁とを一体化したが、これに代え、スロットル軸に相当する軸部とスロットル弁に相当する弁部とを樹脂により一体化(例えば、一体成形)することにより、1部品とすることもできる。また、マグネット片は、前記実施例で例示したサマリウムコバルト(SmCo)磁石に限らず、例えば、ネオジウム(NdFeB))磁石、フェライト磁石等の適宜の磁石材料により形成することができる。また、マグネット片は、前記実施例で例示したサマリウムコバルト(SmCo)磁石のような焼結体に限らず、例えば鋳造磁石、焼結磁石等からなる磁石により形成することができる。また、マグネット片の形状は、前記四角柱状いわゆる直方体状に限らず、例えば、立方体、円弧形柱状、三角形、六角形等の多角形柱状、楕円形柱状等のように適宜変更することができる。また、前記実施例では、上型を固定型、下型を可動型とする成形型を例示したが、下型を固定型、上型を可動型とする成形型とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例にかかる内燃機関用のスロットル制御装置を示す断面図である。
【図2】スロットルギヤを示す正面図である。
【図3】スロットルギヤを示す背面図である。
【図4】図2のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図4のV−V線矢視断面図である。
【図6】マグネット片及びヨークを示す分解斜視図である。
【図7】スロットルギヤの成形型を示す断面図である。
【図8】従来例にかかる回転体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
10 スロットル制御装置
14 スロットル軸(軸部)
16 スロットル弁
18 スロットル開度検出装置
20 ボデー本体
21 吸気通路
30 スロットルギヤ(樹脂成形品、回転体)
34 マグネット片
34a 内側側面(着磁方向に交差する2つの側面を構成する一方の側面)
34b 外側側面(着磁方向に交差する2つの側面を構成する他方の側面)
34e 隅角部
34f 隅角部
38 ギヤ本体(樹脂部)
39 ギヤ部
40 ボス部(内周部)
61 カバー体(固定側部材、スロットルボデー側に設けられる部材)
64 磁気検出素子
70 成形型
80 マグネット支持部
87 マグネット支持部
90 キャビティ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネット片を樹脂によりインサート成形してなる樹脂成形品であって、
前記マグネット片の着磁方向に交差する2つの側面を、前記樹脂により全面的に埋設したことを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂成形品であって、
前記マグネット片の着磁方向に交差する2つの側面が、矩形状の外形を有していることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂成形品であって、
前記マグネット片の着磁方向に交差する2つの側面が、一方向に長い外形を有していることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂成形品であって、
前記樹脂により形成されかつ円筒状をなす樹脂部の内周部に、前記マグネット片が配置されていることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の樹脂成形品を成形する樹脂成形品の成形方法であって、
前記樹脂成形品を成形する成形型に、その成形型のキャビティ内に配置される前記マグネット片の着磁方向に交差する方向の両端部を支持するマグネット支持部を設け、
前記成形型のキャビティ内に、前記マグネット片の着磁方向に交差する方向の両端部を、前記マグネット支持部により支持した状態で樹脂を射出することを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂成形品の成形方法であって、
前記成形型のマグネット支持部により、前記マグネット片の着磁方向に交差する方向の両端部において対角方向に位置する隅角部を支持することを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂成形品の成形方法であって、
前記成形型のマグネット支持部により、前記マグネット片の隅角部を稜線方向に関して部分的に支持することを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項8】
マグネット片を備える回転体、及び、磁気検出素子を設けた固定側部材とを備え、
前記磁気検出素子が出力する信号に基づいて、前記回転体の回転角を非接触状態で検出する回転角センサであって、
前記回転体が、前記請求項1〜4のいずれか1つに記載の樹脂成形品であることを特徴とする回転角センサ。
【請求項9】
請求項8に記載の回転角センサを備え、
前記回転体が、スロットル弁の軸部に設けられかつ該スロットル弁に回動力を伝達するスロットルギヤであり、
前記固定側部材が、前記スロットル弁により開閉される吸気通路を形成するスロットルボデー側に設けられる部材である
ことを特徴とするスロットル開度検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−331330(P2007−331330A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168634(P2006−168634)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】