説明

樹脂発泡成形品の製造方法及び樹脂発泡成形品

【課題】従来の製造装置に特別な装置を付加しなくても樹脂発泡成形品の成形のサイクルタイムを短くし得て、生産効率を高めることができる樹脂発泡成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】第1分割型40と第2分割型48とで形成される第1キャビティ50に、発泡樹脂材料55を射出して充填し、その後第1分割型40を後退移動させて第1キャビティ50を拡大し、発泡樹脂材料55を発泡させて、表皮とその内側の発泡層を芯材12に一体に積層して成る樹脂発泡成形品を製造するに際し、第1分割型40に芯材12を貫通する複数の凸型部46を設けておいて、これら凸型部46にて発泡層を冷却し、脱型までの時間を短縮化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発泡射出成形の手法を用いた硬質の樹脂製の芯材を有する樹脂発泡成形品の製造方法及び樹脂発泡成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬質の熱可塑性樹脂の板状の芯材に対して熱可塑性樹脂の発泡層と、同じく熱可塑性樹脂の表皮とを一体に積層した樹脂発泡成形品の製造方法として、発泡射出成形方法が知られている。
この製造方法は、自動車のドアトリムその他の自動車の内装品その他の製造方法に好適な方法として近年広く用いられるようになってきている。
【0003】
この製造方法では、型開き方向に第1分割型と第2分割型とに分割された金型の第1キャビティに、硬質の樹脂製の芯材を一方の第1分割型に重ねてセットし保持させた状態で、熱可塑性樹脂の基材に発泡剤を含有させた発泡樹脂材料を射出してキャビティに充填し、しかる後芯材を保持した一方の第1分割型を第2分割型に対し所定ストローク型開き方向に相対的に後退移動させてキャビティを拡大し、発泡樹脂材料を発泡させることによって、基材が金型内面で固化して形成された表皮と、発泡樹脂材料の発泡にて形成された、表皮の内側の発泡層及び芯材を積層状態に一体に有する樹脂発泡成形品を成形する。
【0004】
更にこの樹脂発泡成形品の製造方法として、異材質を成す基材と発泡層及び表皮とをほぼ同時的に連続して成形する2色成形方法も知れられている。
例えば下記特許文献1,特許文献2にその製造方法が開示されている。
図5はその具体例を示している。
【0005】
図5において、200は第1分割型、202は第3分割型、203は型締状態でそれら第1分割型200と第3分割型202とで形成される第2キャビティである。
ここでは先ず第2キャビティ203に芯材用の熱可塑性の樹脂材料を射出して芯材204を板状に成形する。
【0006】
そして芯材204の成形後、第1分割型200を芯材204を保持した状態で第3分割型202に対して型開き方向に図中上向きに後退移動させ、しかる後第3分割型202と第2分割型206とを取り替えて型締めし、第1分割型200と第2分割型206とで発泡層成形用の第1キャビティを形成する。
図6(I)はこのときの状態を示している。
【0007】
同図において、208は第1分割型200と第2分割型206とで形成された第1キャビティである。
この製造方法では、熱可塑性樹脂の基材に発泡剤を含有させた発泡樹脂材料210を射出して第1キャビティ208に充填し、しかる後、第1分割型200を型開き方向に図中上向きに所定ストローク後退移動させ、第1キャビティ208を拡大させる。
【0008】
すると容積の拡大に伴う第1キャビティ208内の圧力の低下によって発泡樹脂材料210が発泡し、発泡層217を形成する。
またこのとき金型の内面に沿って、詳しくは第2分割型206の内面に沿って表皮215が形成される。
この表皮215は、熱可塑性樹脂の基材が金型の内面で冷却され固化することによって生ずる。
【0009】
しかしながら、このように樹脂製の芯材204に樹脂製の発泡層217が積層された形態の樹脂発泡成形品を上記の2色発泡射出成形法にて製造する場合、1回の成形に要する時間即ち成形サイクルタイムが、通常の射出成形品の製造に比べて長くなり、生産効率が低いといった特有の問題が生じていた。
これは、樹脂の発泡層217の断熱性が高くて放熱し難いため、即ち金型による発泡層217の冷却が効き難いため、更には発泡層217と第1分割型200との間には樹脂製の芯材204が介在していて、第1分割型200による発泡層217の冷却が、板状の樹脂の芯材204を介して行われることとなって冷却の効率が低いため、発泡終了後においてこれを冷却し、固化させるまでに長い時間を要してしまうことによる。
【0010】
こうした課題については、下記特許文献3にも開示されている。
この特許文献3に開示のものでは、問題解決のために金型に冷却ガスの通路を設け、そこに冷却ガスを供給し流通させることで冷却時間を早めるようにしている。
しかしながらこの場合、金型構造が複雑化するとともに、冷却のためにガス供給装置や排出装置を設けておかなければならず、全体として装置コストが高くなるとともに、樹脂発泡成形品の製造工程が複雑化してしまう。
【0011】
【特許文献1】特開平7−80885号公報
【特許文献2】特開平7−88878号公報
【特許文献3】特開平5−278058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上のような事情を背景とし、従来の製造装置に特別な装置を付加しなくても樹脂発泡成形品の成形のサイクルタイムを短くし得て、生産効率を高めることができる樹脂発泡成形品の製造方法及び樹脂発泡成形品を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
而して請求項1は樹脂発泡成形品の製造方法に関するもので、型開き方向に分割された第1分割型と、第3分割型とを型締めして、それら第1分割型と第3分割型とで形成される第2キャビティに樹脂材料を射出して、硬質の熱可塑性樹脂から成る芯材を板状に成形した後、該芯材を該第1分割型に保持させた状態で該第3分割型を該第3分割型とは別体の第2分割型とを取り替えて、それら第1分割型と第2分割型とで形成される第1キャビティに、熱可塑性樹脂の基材に発泡剤を含有させた発泡樹脂材料を射出して該第1キャビティに充填し、しかる後前記芯材を保持した前記一方の第1分割型を前記第2分割型に対し所定ストローク前記型開き方向に相対的に後退移動させて前記第1キャビティを拡大し、前記発泡樹脂材料を発泡させることによって、前記基材が金型内面で固化して形成された表皮と、該発泡樹脂材料の発泡にて形成された、該表皮の内側の発泡層及び前記芯材を積層状態に一体に有する発泡成形品を製造する発泡成形品の製造方法において、前記第1分割型には、前記第2キャビティを通過して前記第3分割型まで到る凸型部を複数設け、前記芯材の成形時にそれら凸型部にて該芯材に板厚方向に貫通した複数の凹所を形成することを特徴とする。
【0014】
請求項2は樹脂発泡成形品に関するもので、熱可塑性樹脂から成る硬質の板状の芯材に対して、熱可塑性樹脂の発泡層と表皮とが一体に積層してあり、且つ前記芯材には、前記発泡層まで到る貫通した複数の凹所が設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0015】
以上のように本発明では、板状の芯材を成形する金型の第1分割型に、芯材の成形空間となる第2キャビティを通過して第3分割型まで到る凸型部を複数設け、芯材の成形時にそれら凸型部にて芯材に板厚方向に貫通した複数の凹所を形成する。
【0016】
本発明の製造方法では、その後に第3分割型と第2分割型とを取り替えて、それら第1分割型と第2分割型とで形成される第1キャビティに、熱可塑性樹脂の基材に発泡剤を含有させた発泡樹脂材料を射出し、そしてその後第1キャビティを拡大させて発泡樹脂材料を発泡させ、芯材に積層する形で発泡層を表皮とともに成形する。
【0017】
このようにして発泡層を成形したところで、詳しくは発泡が終了したところで、これを金型による冷却にて固化させる。
このとき、芯材を保持した第1分割型には複数の凸型部が設けてあって、これら凸型部が、芯材を貫通して発泡層の成形空間まで達しているため、これら複数の凸型部の部分において、発泡層を金型によって直接的に冷却することができる。
【0018】
このため、本発明の製造方向では発泡樹脂材料が発泡した後においてこれを冷却する際の冷却速度を速めることができ、その結果、発泡樹脂材料が発泡した後、これを冷却して金型から樹脂発泡成形品を取り出すまでの時間を、従来よりも短縮化することができ、樹脂発泡成形品の成形のサイクルタイムを短くすることができる。これにより樹脂発泡成形品の生産効率を効果的に高めることができる。
【0019】
本発明では、断熱性を有する発泡層と第1分割型との間に、それ自身も断熱性を有する樹脂製の芯材が介在しているにも拘らず、第1分割型に凸型部を設けて、これを発泡層に接触させることで、発泡層を効率高く冷却することができる特長を有する。
【0020】
本発明の製造方法によれば、次のような利点も得られる。
即ち本発明の製造方法では、第1分割型の複数の凸型部によって、芯材に板厚方向に貫通した凹所を複数形成することとなるため、芯材の重量を軽減でき、樹脂発泡成形品全体の重量を軽量化することができる。
また芯材成形のための材料を節減することができ、材料コストもまた低減することができる。
【0021】
尚硬質の樹脂製の芯材は、その剛性によって樹脂発泡成形品に形状保持機能を与えるもので、貫通の凹所の割合が過大とならない限り一定の形状保持機能を確保することが可能である。
但し貫通の凹所の占める割合が過大になると、芯材による形状保持機能が損なわれるため、貫通の凹所の割合については芯材に求められる形状保持機能に応じて決定することとなる。
【0022】
本発明では、芯材の存在により樹脂発泡成形品全体の剛性が高くなり過ぎる場合において、かかる芯材に上記の貫通の凹所を複数設けることで芯材自体の剛性を弱め、これにより樹脂発泡成形品全体の柔軟性を高め、触感,フィーリング向上を図ることができる利点も得られる。
【0023】
また本発明では、単に第1分割型に複数の凸型部を設けておくだけで、発泡層に対する冷却速度を高めることができるため、特許文献3に開示のもののように製造装置に冷却のための特別な装置を付加しなくてもよい利点が得られる。
【0024】
尚、硬質の熱可塑性樹脂から成る芯材を、予め別途に成形しておいて、これを発泡層及び表皮の成形用の金型にインサートとしてセットし、発泡層及び表皮を成形する場合、芯材の貫通の凹所と第1分割型の凸型部との嵌合部分に隙間が生じてしまい、そしてその隙間を通じて第1キャビティに射出した発泡樹脂材料の液が外部へと漏出してしまい、その漏出した液が外部で固まってバリとなってしまう問題が生ずる。
【0025】
しかるに本発明では、第1分割型を用いて芯材を成形し、その後芯材を第1分割型に残したまま、第1分割型と第2分割型とを合せて第1キャビティを形成し、そこに発泡樹脂材料を射出して発泡層を表皮とともに成形するものであるため、第1分割型の凸型部と芯材の凹所とは、それらの接触面が密着状態にシールされた状態にあって、そこに隙間は生じておらず、従って第1キャビティに射出した発泡樹脂材料の液がそれらの間の隙間を通じて外部に漏出してしまうといったことはない。
【0026】
請求項2は樹脂発泡成形品に関するもので、この樹脂発泡成形品は、芯材に設けてある貫通した複数の凹所によって芯材の重量、ひいては樹脂発泡成形品全体の重量を軽量化することができる。
またこの樹脂発泡成形品は、2色成形且つ発泡射出成形にてこれを製造する際に、芯材の凹所を貫通した第1分割型の凸型部によって、発泡層を金型にて直接的に冷却し、冷却速度を速めることができる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は自動車のドアトリムその他自動車の内装品等に好適に用いられる樹脂発泡成形品で、この樹脂発泡成形品10は、硬質の熱可塑性樹脂から成る芯材12と、芯材12に積層された熱可塑性樹脂の発泡層14と、発泡層14と同じ材質の樹脂から成り、発泡層14の外表面を全体的に覆うソリッド樹脂から成る表皮16とを積層状態に一体に有している。
【0028】
この樹脂発泡成形品10は、全体的に図中上向きに太鼓状に膨出した形状をなしている。
図中10-1は、樹脂発泡成形品10における膨出部を表している。
また図中12-1,14-1,16-1は樹脂発泡成形品10の膨出部10-1に対応した芯材12,発泡層14,表皮16におけるそれぞれの膨出部を表している。
【0029】
芯材12は、樹脂発泡成形品10に形状保持機能を付与するもので、この実施形態において、芯材12は全体として板状をなしている。
この芯材12は、膨出部12-1の図中左端と右端から下向きに垂下した形状の縦の折曲げ部18,20と、その折曲げ部18,20の下端から直角且つ図中左向きと右向きとに折れ曲った鍔部22,24を有している。図中26,28はそれら鍔部22,24の側端面を表している。
【0030】
発泡層14は、膨出部14-1から折曲げ部18,20の外面に沿って図中下向きに延びる縦の壁30,32を有しており、更に表皮16もまた、この折曲げ部18,20に沿って膨出部16-1の左端と右端とから図中下向きに延びる縦の壁34,36を有している。
ここで芯材12における鍔部22の側端面26と、表皮16の縦の壁34の外面とは、図中左右方向において同じ位置に位置している。即ち側端面26と表皮16の縦の壁34の外面とは上下方向に同一面(面一面)を成している。
【0031】
また図中右側の鍔部24の側端面28と、表皮16の縦の壁36の外面も、図中左右方向において同じ位置に位置している。
即ち側端面28と表皮16の縦の壁36の外面とは上下方向に同一面(面一面)を成している。
【0032】
本実施形態において、発泡層14及び表皮16を構成する熱可塑性樹脂として、様々な種類の樹脂を用いることが可能であるが、ここではこれら発泡層14及び表皮16を構成する熱可塑性樹脂として熱可塑性エラストマー(TPE)が用いられている。
またTPEとしてスチレン系(スチレン・ブロック・コポリマー(SBC)),オレフィン系(TPO),ウレタン系(TPU),ポリエステル系(TPEE),ポリアミド系(TPAE),1,2-ポリブタジエン系,塩ビ系(TPVC),フッ素系その他のものを用いることが可能であるが、ここでは特に好適なものとしてオレフィン系の熱可塑性エラストマー(TPO)が用いられている。
【0033】
一方、芯材12は上記の機能から剛性を有する硬質の熱可塑性樹脂を用いる必要があり、この実施形態ではかかる芯材12を構成する熱可塑性樹脂として様々な樹脂を用いることが可能であるが、特に好適なものとしてここではポリプロピレン樹脂が用いられている。
尚、芯材12は硬質のものであることが必要で、ここではロックウェル硬度(Rスケール)が80〜100、或いは100〜120程度のものが用いられているが、この芯材12としてはロックウェル硬度で50以上のものを用いるのが望ましい。
尚、芯材12はここではその厚みが2.3mmである。芯材12としては厚みが1.5mm以上であることが望ましい。
【0034】
一方、上記発泡層14は熱可塑性樹脂の基材に予め発泡剤を含有させた発泡樹脂材料を射出成形して発泡させたもので、その発泡の手段として物理的発泡法と化学的発泡法の何れも使用可能である。
具体的には、物理的発泡法として溶融状態の基材樹脂に、窒素や二酸化炭素等の発泡性ガスを物理的に強制的に注入し、これを射出成形後に発泡させる方法、或いは熱分解により発泡性ガスを放出する発泡剤を樹脂材料中に加えておいて、射出成形後においてこれを熱分解させて発泡させる方法の何れも可能である。
【0035】
後者の化学的発泡法を用いる場合には、発泡剤としてアゾ化合物やニトロソ化合物等の有機発泡剤又は重炭酸ナトリウム等の無機発泡剤を使用することができるが、ここでは重炭酸ナトリウムを発泡剤として用いている。
【0036】
この実施形態では、芯材12に、これを板厚方向に貫通した複数の凹所38が設けられている。
各凹所38はここでは円形の穴とされている(但し4角形状その他の形状であっても良い)。また各凹所38は、図1中等しいピッチlで左右方向に等間隔で設けられている。
この実施形態において、各凹所38は図1中の左右方向寸法が同寸法のdとされている。
【0037】
具体的には、図中の寸法L=約50mm,L=約45mmに対してd=約3mm,l=約5mmである。
従って図1に示す断面において、凹所38の寸法dを全て合せた合計の寸法は寸法Lに対して約30%である。
尚、紙面と直角方向においても凹所38は同じ寸法のものが同じピッチで設けられている。
この実施形態において、凹所38の発泡層14に対する開口面積の比率は、芯体12の発泡層14側の面の約9%程度である。
【0038】
図2及び図3は、図1の樹脂発泡成形品10の製造方法を具体的に示している。
ここでは樹脂発泡成形品10を2色成形によって成形し、金型の一部を共通に用いて先ず芯体12を成形した後、続いて発泡層14及び表皮16を連続して成形し、それらを一体化する。
図2は、先ず芯材12を成形する際の方法を示している。
【0039】
図において、芯材12を成形する金型は雄型としての第1分割型40と、雌型としての第3分割型42との分割構造とされており、それら第1分割型40と第3分割型42とによって、芯材12の形状に対応した形状の第2キャビティ44を形成する。
ここで第1分割型40には、芯材12の凹所38に対応した形状の凸型部46が、凹所38に対応した数で設けられている。
【0040】
尚、図2(II)に示す型締状態の下で、第1分割型40の複数の凸型部46のそれぞれは、第2キャビティ44を図中上向きに通過して第3分割型42まで達し、各凸型部46の突出側の先端面(図中上端面)が、第3分割型42の内面に接触している。
【0041】
ここでは、図2(II)に示しているように芯材12用の樹脂材料を射出成形によって第2キャビティ44に充填し、そこでこれを固化させることによって芯材12を成形する。
このとき、芯材12には図1に示す複数の貫通の凹所38が、第1分割型40の凸型部46によって同時に成形される。
その成形状態において、芯材12の凹所38の内周面と第1分割型40の各凸型部46の外周面とは全周に亘り密着接触していて、それらの間に隙間は生じておらず、凸型部46の外周面と凹所38の内周面との間が良好にシールされた状態にある。
【0042】
芯材12を成形したら、図2(III)に示すように第1分割型40と第3分割型42とを図中上下方向に型開きする。
このとき、成形された芯材12は第1分割型40の側に残り、そこに保持される。
【0043】
図3は、発泡射出成形によって発泡層14と表皮16とを成形し且つこれを芯材12に一体化する際の方法を示している。
図3に示しているように、発泡層14及び表皮16を成形する金型は、図2に示す第1分割型40と、第2分割型48との分割構造を成している。
即ち、発泡層14及び表皮16を成形する発泡射出成形用の金型は、芯材12成形用の第1分割型40を共通の金型として用いている。
具体的には、芯材12成形用の図2の第3分割型42と、図3の第2分割型48とを取り替えることで、発泡層14及び表皮16の発泡射出成形用の金型が構成される。
【0044】
図3(IV)は、先に成形した芯材12を保持した第1分割型40と、第2分割型48とを型締めした状態を表している。
この状態で、第1分割型40と第2分割型48とによって、発泡層14及び表皮16に対応した形状の第1キャビティ50が形成される。
【0045】
図中52,54は第2分割型48側の第2摺動面で、これら第2摺動面52,54は、型締状態で芯材12の側端面26,28に芯材12の弾性に基づいて弾性接触することでそれらの間をシールし、第1キャビティ50を閉鎖する。
尚、図3(IV)においてPLは第1分割型40と第2分割型48とのパーティングラインを表している。
【0046】
この発泡射出成形方法では、図3(IV)の状態において熱可塑性樹脂の基材に発泡剤を含有させた発泡樹脂材料55を、射出機から溶融状態で第1キャビティ50内に射出して第1キャビティ50に充填する。
図3(V)はこのときの状態を表している。
ここで第1キャビティ50は、第2分割型48の第2摺動面52,54と芯材12の側端面26,28とによるシールによって閉鎖されており、第1キャビティ50に射出された発泡樹脂材料55の液が外部に漏出することはない。
【0047】
尚、170℃以上の高温状態で射出機から第1キャビティ50に充填された発泡樹脂材料55は、その高い射出圧に基づいて図3(V)に示す型締状態の下では、そこに含有された発泡剤のほとんどがガス化することはなく、従ってこの状態では発泡を生じない。
【0048】
この状態で、図3(VI)に示しているように第1分割型40を図中下方向に所定ストローク相対的に後退移動させ、これにより第1キャビティ50(の容積)を拡大させると、これによる第1キャビティ50の圧力低下によって、そこで発泡樹脂材料55に含有させてある発泡剤がガス化し、発泡樹脂材料55が発泡を生じる。
また熱可塑性樹脂の基材が冷却状態の金型の内面に接することで、そこで基材が冷却固化し、図1に示す表皮16を形成する。
そしてこの表皮16の内側に、発泡樹脂材料55の発泡によって図1に示す発泡層14が形成される。
【0049】
ここで第1分割型40を第2分割型48に対して所定ストローク図中下向きに相対的に後退移動させる際、第2分割型48の第2摺動面52,54は、芯材12の側端面26,28を第1摺動面としてこれに対し摺動する。
ここで第1分割型40は、芯材12の厚み、具体的には側端面26,28の図3中上下方向の高さ以下のストロークで最終の後退位置まで移動する。
芯材12の厚み、即ち側端面26,28の高さが予めそのように定めてある。
【0050】
この実施形態では、その際の第1分割型40の後退移動の際においても、芯材12の側端面26,28及び第2分割型48側の第2摺動面52,54の摺動によるシールによって第1キャビティ50が閉鎖状態に維持される。
【0051】
上記にて成形された発泡層14は、その後金型によって、具体的には第1分割型40と第2分割型48とによって冷却され、固化される。そして固化が終了したところで金型が開かれ、樹脂発泡成形品10が金型から脱型される。
【0052】
この実施形態では、発泡が終了した後に発泡層14を金型にて冷却するに際して、第1分割型40の各凸型部46が芯材12を貫通して発泡層14まで達し、発泡層14と接触しているため、これら凸型部46の部分において、発泡層14が第1分割型40によって直接的に冷却せしめられる。
【0053】
即ち従来の成形方法によれば、第1分割型40による発泡層14の冷却が、芯材12を介して間接的に行われることとなるが、この実施形態では、凸型部46が発泡層14に接触せしめられているため、これら凸型部46の部分においては発泡層14が第1分割型40によって直接的に冷却される。
そのために発泡層14の冷却速度が速く、従って発泡層14が固化するまでの時間、即ち樹脂発泡成形品10の脱型までの時間が短縮化される。
【0054】
さて以上のようにして発泡層14及び表皮16の成形及び冷却が終了したところで、第1分割型40を大きく図中下向きに後退移動させて、第1分割型40と第2分割型48とを型開きし、成形された発泡成形品10を金型から脱型する。
ここにおいて図1に示す樹脂発泡成形品10が得られる。
【0055】
以上のような本実施形態によれば、発泡樹脂材料55が発泡した後、これを冷却して金型から樹脂発泡成形品10を取り出すまでの時間を従来よりも短縮化することができ、樹脂発泡成形品10の成形のサイクルタイムを短くすることができる。
これにより、樹脂発泡成形品10の生産効率を効果的に高めることができる。
【0056】
また本実施形態によれば、第1分割型40の複数の凸型部46によって、芯材12に板厚方向に貫通した凹所38を複数形成するため、芯材12の重量を軽減でき、樹脂発泡成形品10全体の重量を軽量化することができる。
また芯材12成形のための材料を節減することができ、材料コストもまた低減することができる。
【0057】
また本実施形態によれば、場合によって芯材12の存在により樹脂発泡成形品10全体の剛性が高くなり過ぎる場合において、かかる芯材12に貫通の凹所38を複数設けることで、芯材12自体の剛性を弱め、これにより樹脂発泡成形品10全体の柔軟性を高め、触感,フィーリング向上を図ることができる利点も得られる。
【0058】
更にこの実施形態では、第1分割型40の複数の凸型部46によって、発泡層14に対する冷却速度を速めることができるため、発泡層14の冷却のための別途の特別の装置を設けるのを省略することができる。
【0059】
本実施形態の製造方法は、樹脂発泡成形品10を2色発泡射出成形にて成形することで、芯材12に貫通の凹所38を形成し且つ凹所38形成のための第1分割型40の凸型部46を、発泡層14成形のための第1キャビティ50に臨ましめ、その凸型部46によって発泡層14の冷却を可能ならしめている点を特長としている。
【0060】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば図4に示しているように、場合によって凸型部46を芯材12の厚み以上の突出高さとしておくことも可能である。このようにしておけば、図3に示す方法で発泡層14を表皮16とともに成形する際、発泡層14に対する第1分割型40による冷却の効率を一層高めることが可能となる。
その他本発明は上例以外の他の様々な形状,構造の樹脂発泡成形品の製造に適用可能であるし、また発泡層14を表皮16とともに発泡射出成形にて成形するに際し、図6に示すように第2分割型48と第1分割型40とを、それぞれの型開閉方向に延びる摺動面で金属接触させるようになすことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態の樹脂発泡成形品を示した断面図である。
【図2】図1の樹脂発泡成形品の芯材の成形方法の説明図である。
【図3】図1の樹脂発泡成形品の発泡層と表皮の成形方法の要部工程の説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態の要部の説明図である。
【図5】従来公知の樹脂発泡成形品の製造方法の要部工程の説明図である。
【図6】図5に続く製造方法の要部工程の説明図である。
【符号の説明】
【0062】
10 樹脂発泡成形品
12 芯材
14 発泡層
16 表皮
38 凹所
40 第1分割型
42 第3分割型
44 第2キャビティ
46 凸型部
48 第2分割型
50 第1キャビティ
55 発泡樹脂材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型開き方向に分割された第1分割型と、第3分割型とを型締めして、それら第1分割型と第3分割型とで形成される第2キャビティに樹脂材料を射出して、硬質の熱可塑性樹脂から成る芯材を板状に成形した後、該芯材を該第1分割型に保持させた状態で該第3分割型を別体の第2分割型に取り替えて、それら第1分割型と第2分割型とで形成される第1キャビティに、熱可塑性樹脂の基材に発泡剤を含有させた発泡樹脂材料を射出して該第1キャビティに充填し、しかる後前記芯材を保持した前記一方の第1分割型を前記第2分割型に対し所定ストローク前記型開き方向に相対的に後退移動させて前記第1キャビティを拡大し、前記発泡樹脂材料を発泡させることによって、前記基材が金型内面で固化して形成された表皮と、該発泡樹脂材料の発泡にて形成された、該表皮の内側の発泡層及び前記芯材を積層状態に一体に有する樹脂発泡成形品を得る樹脂発泡成形品の製造方法において、
前記第1分割型には、前記第2キャビティを通過して前記第3分割型まで到る凸型部を複数設け、前記芯材の成形時にそれら凸型部にて該芯材に板厚方向に貫通した複数の凹所を形成することを特徴とする樹脂発泡成形品の製造方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂から成る硬質の板状の芯材に対して、熱可塑性樹脂の発泡層と表皮とが一体に積層してあり、且つ前記芯材には前記発泡層まで到る貫通した複数の凹所が設けてあることを特徴とする樹脂発泡成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−82843(P2010−82843A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251912(P2008−251912)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000219668)東海化成工業株式会社 (39)
【Fターム(参考)】