樹脂粒子、複合粒子の製造方法及び化粧料
【課題】非晶質リン酸カルシウムを容易に表面被覆させることができ、しかも、その脱落を抑制しうるコア粒子として適した樹脂粒子の提供を図ることによって非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層の均質性に優れたコアシェル型の複合粒子の形成に適した複合粒子の製造方法を提供し、ひいては化粧崩れの抑制効果に優れた化粧料の提供を課題としている。
【解決手段】樹脂粒子に係る本発明は、ビニル系単量体が重合されてなり、所定の構造を有する亜リン酸のジエステルか、又は、所定の構造を有するリン酸の部分エステルかのいずれかの成分を含有する樹脂粒子であって、表面に非晶質リン酸カルシウムを被覆させてコアシェル型の複合粒子を形成させるためのコア粒子に用いられることを特徴としている。
【解決手段】樹脂粒子に係る本発明は、ビニル系単量体が重合されてなり、所定の構造を有する亜リン酸のジエステルか、又は、所定の構造を有するリン酸の部分エステルかのいずれかの成分を含有する樹脂粒子であって、表面に非晶質リン酸カルシウムを被覆させてコアシェル型の複合粒子を形成させるためのコア粒子に用いられることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル系単量体が重合されてなる樹脂粒子、コアシェル型の複合粒子、及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウムは、油などの有機物の吸着性能や光散乱性能に優れ、なかでも、非晶質なリン酸カルシウムは、結晶質なヒドロキシアパタイトに比べて、一般に比表面積が大きく有機物の吸着性能等に優れている。
従来、これらのリン酸カルシウムが用いられてなる粒子や、リン酸カルシウム成分を他の粒子の表面に担持させた複合粒子が化粧料などに用いられている。
例えば、下記特許文献1には、有機物粒子、又は、無機物粒子と、これら粒子よりも細かなヒドロキシアパタイト粒子とを混合圧縮することによって先の粒子の表面にヒドロキシアパタイト粒子を付着させた複合粒子を化粧料に用いることが記載されている。
【0003】
ところで、一つの粒子中に成分を異ならせた箇所を有する複合粒子としては、内部と表面とが異なる物質で形成されたコアシェル型の複合粒子が知られている。
このコアシェル型の複合粒子は、コアとなる粒子の表面に被覆層が設けられて外殻が形成されており、前記被覆層の成分による機能を発揮させつつ、粒子の重量や柔軟性といった特性や粒子形状をコア粒子の材料や形状の選択によって調整が可能であることから用途に応じた粒子の調整が容易である。
例えば、化粧料においては、皮脂による化粧崩れを防止することや、光散乱によるソフトフォーカス(ぼかし)が求められることから、含有させるコアシェル型の複合粒子の外殻をなす被覆層をリン酸カルシウムで形成させて前記要望を満足させることができる。
さらには、ファウンデーションやアイシャドゥといった肌に接する使用がなされるためにソフトで滑らかな使用感が求められる場合には、コア粒子の形成に樹脂材料を採用することで複合粒子にソフト感(柔軟性)が付与され、しかも、球状の樹脂粒子を採用して複合粒子の形状を球状とすることで滑らかな使用感を化粧料に付与させうる。
【0004】
ここで、先の特許文献1の方法を採用して、球状の有機物粒子の表面にヒドロキシアパタイト粒子を担持させるとヒドロキシアパタイト粒子が表面に点在する状態になるばかりで、表面をヒドロキシアパタイトが被覆している状態となるように複合粒子を形成させることは難しい。
したがって、このような方法で得られる複合粒子は、ヒドロキシアパタイトによる被覆領域が小さく、ヒドロキシアパタイトの光散乱性能や有機物の吸着性能が十分発揮されないばかりでなく、表面に担持されたヒドロキシアパタイトが脱落しやすいという問題を有する。
【0005】
このような問題は、樹脂粒子の表面をリン酸カルシウムによって膜状に被覆させることで改善が期待されるが、非晶質リン酸カルシウムを用いてコアシェル型の複合粒子を形成させることについて従来十分な検討がなされていない。
そのため、この非晶質リン酸カルシウムを容易に表面被覆させることができ、しかも、強固な担持を実現させ得るコア粒子についても十分な検討がなされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−27414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、非晶質リン酸カルシウムを容易に表面被覆させることができ、しかも、その脱落を抑制しうるコア粒子として適した樹脂粒子の提供を図ることを一つの課題としている。
そして、このことによって非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層の均質性に優れたコアシェル型の複合粒子を製造可能な複合粒子の製造方法を提供し、ひいては化粧崩れの抑制効果に優れた化粧料を提供することをさらなる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決させるための本発明に係る樹脂粒子は、ビニル系単量体が重合されてなり、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化1】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化2】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化3】
のいずれかの成分を含有する樹脂粒子であって、表面に非晶質リン酸カルシウムを被覆させてコアシェル型の複合粒子を形成させるためのコア粒子に用いられることを特徴としている。
【0009】
また、複合粒子の製造方法に係る本発明は、コアシェル型の複合粒子を形成させるべく、コア粒子となる樹脂粒子の表面に、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層を形成させる複合粒子の製造方法であって、ビニル系単量体が重合されてなり、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化4】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化5】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化6】
のいずれかの成分を含有する樹脂粒子を前記コア粒子として用い、該樹脂粒子とリン酸カルシウム成分とを含む水性懸濁液を作製することによって前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させて前記被覆層を形成させることを特徴としている。
【0010】
さらに、化粧料に係る本発明は、コア粒子となる樹脂粒子の表面に、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層を形成させたコアシェル型の複合粒子が含有されてなる化粧料であって、前記複合粒子は、ビニル系単量体が重合されてなり、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化7】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化8】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化9】
のいずれかの成分を含有する樹脂粒子が前記コア粒子として用いられており、該樹脂粒子とリン酸カルシウム成分とを含む水性懸濁液を作製することによって前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させて前記被覆層が形成されたものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂粒子は、上記式(1)〜(3)に示すような成分が少なくとも1種以上含有されている。
したがって、樹脂粒子の表面にこれらの成分が存在し、この部分においてリン酸カルシウムとの親和性が向上されることから、非晶質リン酸カルシウムが強固に担持されうる。
しかも、例えば、この樹脂粒子とリン酸カルシウム成分とを含む水性懸濁液とを作製することによって前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させて前記被覆層を形成させる方法などを採用する場合に、上記式(1)〜(3)に示すような成分が存在する箇所が起点となって非晶質リン酸カルシウムが析出されることから、被覆層を容易に形成させ得る。
さらには、上記式(1)〜(3)に示すような成分は、通常、樹脂粒子の表面に分散された状態となり、これらの成分が非晶質リン酸カルシウムの析出の起点となりうることから均質性に優れた被覆層が形成されうる。
このことによって得られるコアシェル型の複合粒子には、非晶質リン酸カルシウムの特性がより顕著に発揮されることとなり、この複合粒子を含有させることで化粧料を使用時における化粧崩れの抑制が図られたものとすることができる。
【0012】
すなわち、本発明によれば、非晶質リン酸カルシウムを容易に表面被覆させることができ、しかも、その脱落を抑制しうるコア粒子として適した樹脂粒子の提供を図ることができる。
また、本発明によれば、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層の均質性に優れたコアシェル型の複合粒子の製造に適した複合粒子の製造方法が提供され得る。
さらに、本発明によれば、化粧崩れの抑制効果に優れた化粧料が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】非晶質リン酸カルシウムと結晶質リン酸カルシウムとのX線回折パターンを示す図。
【図2】製造例1の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図3】製造例2の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図4】製造例4の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図5】製造例5の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図6】製造例11の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図7】製造例12の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図8】製造例13の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図9】製造例14の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図10】製造例15の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図11】光散乱性の評価方法を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る実施形態として化粧料に含有させる成分として好適な複合粒子について説明する。
この複合粒子は、コアとなる粒子の表面に被覆層が設けられて外殻が形成されているコアシェル型の複合粒子であり、前記被覆層が非晶質リン酸カルシウムによって形成されているものである。
【0015】
なお、本明細書における「非晶質リン酸カルシウム」との用語については、一般式「Ca3(PO4)2・nH2O」で表される結晶水を含んだリン酸三カルシウムであって、特にその結晶構造が非晶質のものを意図して用いている。
そして、結晶構造が非晶質であることは、非晶質リン酸カルシウムが、結晶水を多く保有しているため、粉末X線回折法のパターンが、図1に示すように結晶質リン酸カルシウムに比べてブロードとなることから確認することができる。
なお、Ca3(PO4)2・nH2Oの同定はJCPDSカードNo.18−0303とのパターンフィッティングにより確認することができる。
Ca3(PO4)2・nH2O(JCPDSカードNo.18−0303)はX線回
折パターンの2θが31度〜35度の範囲内においてX線回折ピークが3本であるのに対し、結晶性ヒドロキシアパタイト(JCPDSカードNo.09−0432)はX線回折ピークが4本存在するためX線回折測定により非晶質リン酸カルシウムと結晶性アパタイトとを判別することが可能である。
【0016】
本実施形態の樹脂粒子の表面に形成させる被覆層を非晶質リン酸カルシウムによって形成させるのは、非晶質リン酸カルシウムは、水性媒体中での凝集力が結晶質のリン酸カルシウムに比べて強いためコア粒子となる樹脂粒子を包み込むように凝集し、脱水・乾燥後に強固な被覆層を形成させることができるためである。
これに対し結晶質ヒドロキシアパタイトや第3リン酸カルシウムを用いた場合は水性媒体中での凝集力が弱いためにコアとなる樹脂粒子を十分に被覆することが難しい。
しかも、非晶質リン酸カルシウムは、結晶質ヒドロキシアパタイトや第3リン酸カルシウムよりも皮脂成分の吸着性能に優れているため、化粧料に含有させる複合粒子の形成において好適であるといえ、本実施形態の樹脂粒子の表面に形成させる被覆層を非晶質リン酸カルシウムによって形成させるのは、皮脂の吸着による化粧崩れの防止効果が期待されるためである。
【0017】
なお、上記非晶質リン酸カルシウムのカルシウムは、本発明の効果を著しく損ねない限りにおいては、その一部に、例えば、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、アルミニウム、チタンなどの元素が固溶していたり、あるいは、一部がイオン交換または置換されていたりしてもよく、“PO4”の一部が、例えば、“VO4”、“SiO4”、“CO4”などの原子団の1種で置換されていても良い。
さらに、リン酸カルシウムが、1種または2種以上の金属酸化物と複合化されて被覆層を形成してもよい。
この金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどがあげられる。
【0018】
また、本明細書における「コアシェル型」との用語については、コア粒子の表面を隙間なく被覆する外殻が被覆層によって形成されているもののみを意図するものではなく、膜状となってコア粒子の表面を覆う被覆層が一部にのみ形成されているものまでをも含む意味で用いている。
【0019】
この被覆層によって外殻を形成させるための本実施形態のコア粒子は、ビニル系単量体が重合されて平均粒径が5〜50μmの範囲のいずれかとなるように形成された球状の樹脂粒子である。
しかも、この樹脂粒子には、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化10】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化11】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化12】
のいずれかの成分が含有されている。
【0020】
前記ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレンのようなスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルのようなアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルのようなメタクリル酸エステル系単量体が挙げられる。
これらは単独で又は混合して樹脂粒子の形成に用いることができ、上記以外に、上記に例示の単量体と共重合することのできる単量体を樹脂粒子の形成に用いることもできる。
【0021】
このような単量体によって樹脂粒子を形成させるには、懸濁重合や乳化重合などの従来公知の方法を採用することができ、中でも5〜50μmのいずれかの平均粒径を有する球状となるように樹脂粒子を形成させる方法としては、水性媒体中での懸濁重合を採用することが好ましい。
このような重合に際してビニル系単量体の重合を促進するために、重合開始剤を用いることも可能であり、該重合開始剤としては、ビニル系単量体の懸濁重合を行うために従来用いられているビニル系単量体に可溶性の重合開始剤を採用することができる。
このような重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドのような過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物が挙げられる。
【0022】
なお、樹脂粒子の平均粒径については、例えば、ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザーII」などの精密粒度分布測定装置を用いて「Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)」に従って、50μmアパチャーを用いたキャリブレーションを実施して求めることができる。
【0023】
また、上記一般式(1)〜(3)に示される亜リン酸エステル又はリン酸の部分エステルのいずれかについては懸濁重合において樹脂粒子に含有させることができる。
なお、亜リン酸は下記構造式(5)に示されるものである。
【化13】
【0024】
すなわち、脱水縮合反応などによってエステル結合を形成させうる水酸基を2個有するものである。
亜リン酸エステルは、その2個の水酸基がすべてアルコール類等と反応してエステル化されたものであって、前記一般式(1)で表される化合物である。
すなわち、亜リン酸エステルは亜リン酸の完全エステルのみを意味し、部分エステルを含まない。
そして、一般式(1)におけるR1とR2とは炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基表している。
このR1とR2とは、互いに同じものであってもよく、また、異なっていてもよい。
このR1やR2としては、例えば、分岐、又は非分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。
また、この亜リン酸エステルの好適な例は、ジブチルハイドロジエンホスファイトである。
【0025】
また、この発明で用いるリン酸の部分エステルは、「H3PO4」で表されるリン酸の部分エステルである。
なお、亜リン酸は下記構造式(6)に示されるものである。
【化14】
【0026】
すなわち、脱水縮合反応などによってエステル結合を形成させうる水酸基を3個有するものである。
このリン酸の部分エステルは、その3個の水酸基のうちの1個又は2個だけがアルコール類等と反応してエステル化されたものであって、前記一般式(2)又は(3)で表される化合物である。
ここで、R1とR2とは前述の一般式(1)と同じであり、(2)又は(3)で表される化合物からはリン酸の完全エステルは除かれている。
リン酸の部分エステルの好適な例は、カプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート、モノイソデシルホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート等である。
【0027】
ここで、カプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレートとしては、下記構造式(7)で表される化合物の(n=1、a=1、b=2)と(n=1、a=2、b=1)との混合物である日本化薬株式会社から商品名「PM−21」として市販されているものを使用することができる。
【化15】
【0028】
上述の亜リン酸エステル又はリン酸の部分エステル(以下、この両者を総称して「エステル類」ともいう)は、水性媒体中での懸濁重合においてビニル系単量体の分散剤として作用させるものでその重合後に粒子内に取り込まれた状態となるものである。
樹脂粒子の形成に用いる前記エステル類は、いずれか1種のみを単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよく、亜リン酸エステルの中から選ばれる1種以上と、リン酸の部分エステルの中から選ばれる1種以上とを混合して用いることもできる。
【0029】
このエステル類とともに、懸濁重合において無機化合物の粉末を分散剤として用いることができる。
特に、ピロリン酸マグネシウム粉末を用いることが好ましい。
このエステル類とピロリン酸マグネシウム粉末とを含む水性媒体中での懸濁重合を実施することにより粒度の整った球状の樹脂粒子が容易に得られ、化粧料に適した複合粒子の作製に有用な樹脂粒子を得ることができる。
このエテスル類とピロリン酸マグネシウムの粉末とを用いた懸濁重合では、ビニル系単量体の合着を抑制しつつ重合体(樹脂粒子)を得ることができる。
そのため、水性媒体中におけるビニル系単量体の初期の分散状態に近い状態で重合を完結させることができ、水性媒体中におけるビニル系単量体の割合、分散剤の使用量、及び撹拌速度などを調整して、重合初期におけるビニル系単量体の分散状態を調節することにより樹脂粒子の大きさをある程度調整することができる。
通常、1〜100μmの範囲内であれば、このような調整によって大きさの揃った樹脂粒子を得ることができる。
【0030】
なお、ピロリン酸マグネシウム粉末は、これらの無機化合物は、平均粒径が0.01〜10μmのいずれかの微粉末として用いることが好ましく、特に0.01〜1μmのいずれかの平均粒径を有する微粉末として用いることが好ましい。
このピロリン酸マグネシウム粉末以外には、例えば、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等の水に難溶性の塩類、タルク、ベントナイト、珪酸、珪藻土、粘土等の無機高分子物質の粒子を分散剤として併用することができる。
【0031】
これらは、ピロリン酸マグネシウム粉末と同様に平均粒径が0.01〜10μmのいずれかの微粉末として用いることが好ましく、特に0.01〜1μmのいずれかの平均粒径を有する微粉末として用いることが好ましい。
【0032】
これら分散剤は、エステル類の合計使用量については、ビニル系単量体に対し0.01〜0.4重量%のいずれかとすることが好ましい。
その内、0.03〜0.2重量%のいずれかとすることが特に好ましい。
エステル類の使用量がこのような範囲の内から選択されることが好ましいのは、エステル類が0.4重量%を超えて用いられると、懸濁重合において水相と油相を混合・分散させてモノマー滴を形成する際に過度に微粒化されてしまい、複合粒子を化粧料用途に適した大きさとすることが困難になるためである。
また、逆にエステル類が0.01重量%未満になると、重合過程で分散しているビニル系単量体の液滴が合着するのを抑制する効果が乏しくなって粗大な樹脂粒子が形成されるおそれを有するためである。
さらに、エステル類は、樹脂粒子と非晶質リン酸カルシウムとの親和性を向上させるための成分でもあり、リン酸カルシウム成分を含むスラリーによって樹脂粒子の表面に析出させるのに際して、析出の起点となる成分でもある。
このことから、エステル類が0.01重量%未満になると、非晶質リン酸カルシウムによる被覆層の均質性が損なわれたり、樹脂粒子表面からの剥離を生じやすくさせたりするおそれがある。
【0033】
また、無機化合物微粉末の添加量は、ビニル系単量体に対し0.1〜20重量%のいずれかとすることが好ましい。
その内、0.5〜10重量%のいずれかとすることが特に好ましい。
無機化合物粉末の使用量がこのような範囲の内から選択されることが好ましいのは、無機化合物粉末が20重量%を超えて用いられると、懸濁重合の液の粘度が上がり過ぎる結果、懸濁重合が困難となるためである。
一方で、0.1重量%未満になると、ビニル系単量体の液滴が合着するのを抑制する効果が乏しくなって粗大な樹脂粒子が形成されるおそれを有するためである。
【0034】
なお、ここでは詳述しないが、樹脂粒子や被覆層の形成に上記例示の成分以外の、例えば、着色成分等を含有させることも可能であり、非晶質リン酸カルシウムによって形成された被覆層のさらに外側に着色層等を形成させることも可能である。
【0035】
次いで、樹脂粒子の製造方法及び該製造方法によって得られた樹脂粒子をコア粒子として用いてコアシェル型の複合粒子を製造する製造方法について説明する。
【0036】
(樹脂粒子の製造方法)
本実施形態における樹脂粒子の製造方法としては、上記に例示の成分を用いて懸濁重合を行うことが好適である。
この際の各成分の混合順序等に格別の制限が設けられるものではないが、混合順序としては下記のようにすることが好ましい。
すなわち、
(工程1−1)
まず、ピロリン酸マグネシウム粉末等の無機化合物の粉末と、必要に応じて界面活性剤等を予め水に溶解させる。
(工程1−2)
他方、エステル類と、重合開始剤と、ビニル系単量体とを混合した混合液を作製する。
(工程2)
その後、(1−1)において準備した無機化合物粉末分散水と(1−2)において準備した混合液とを混合攪拌してビニル系単量体による液滴が水性媒体中に分散された懸濁液を作製する。
【0037】
なお、(工程2)においては、ビニル系重合体の粒子(液滴)の大きさを観察しつつ攪拌機やホモミキサーの撹拌速度を調節して粒子の大きさが所望の大きさになった時点で、撹拌速度を一定にし、その後はそのままの速度で撹拌を続けることによって目的とする大きさの樹脂粒子を容易に得ることができる。
【0038】
この懸濁液に重合反応を発生させて樹脂粒子を製造するには、反応容器としてオートクレーブを用いることが好ましい。
オートクレーブとしては撹拌機の付設されたもので、加熱、冷却ができるようにジャケットを備えたものが好ましい。
そして重合の初期には50〜100℃のいずれかの温度に加熱し、その後はこの範囲の温度に維持し、重合期間中は絶えず撹拌を続けることが好ましい。
そして、この加熱温度と攪拌を維持した状態で、時間経過に伴ってビニル系単量体が重合し、通常、数時間のうちに重合が完了して重合体(樹脂粒子)を得ることができる。
この間、分散したビニル系単量体粒子どうしの合着を抑制することができるため、所望の粒子径に揃った樹脂粒子を得ることができる。
合着を起こしたかどうかは、得られた重合体粒子の一部を取って、顕微鏡下で観察し、いびつな形状の粒子が多数混在するかどうかによって容易に判別できる。
【0039】
また、このビニル系単量体の重合時には、前記エステル類が取り込まれて樹脂粒子が形成されることになる。
このことを詳しく述べると、重合前には、エステル類はビニル系単量体によって水性媒体中に形成される液滴と、水性媒体との界面(粒子表面)近傍に比較的多く存在し、ビニル系単量体の重合反応に伴って、その一部、特に炭化水素部分や前記式(4)に係る部分を粒子内部に突入させ、しかも、一部をビニル系単量体と反応させた状態となって樹脂粒子に取り込まれる。
このエステル類は、リン酸カルシウムとの親和性が高く、エステル類の存在箇所は、非晶質リン酸カルシウムの析出起点となりやすい。
しかも、樹脂粒子の表面にエステル類が分散されて多く存在することによって非晶質リン酸カルシウムが均質状態で析出されやすく、均質で且つ強固な被覆層が形成されることとなる。
また、被覆層が均質となることで、複合粒子も樹脂粒子と同様の球状に形成されやすくなり、化粧料に適した、均質な被覆層を有する球状の複合粒子の形成が容易に実施されることとなる。
【0040】
(複合粒子製造方法)
続いて、この樹脂粒子を用いた複合粒子の作製方法について説明する。
この樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムによる被覆層を形成させる方法は、特に限定されるものではないが、均質な被覆層を形成させるには、前記樹脂粒子とリン酸カルシウム成分とを含む水性懸濁液を作製して前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させて被覆層を形成させることが重要である。
【0041】
このような複合粒子の製造方法としては、例えば、次のような工程を実施する方法が挙げられる。
すなわち、
(工程A)
水中に水酸化カルシウムなどのカルシウム塩を分散させたアルカリ性溶液を作製する。
(工程B)
この(工程A)にて作製されたアルカリ性溶液に、先の製造方法によって製造された樹脂粒子を分散させ樹脂粒子分散液を作製する。
(工程C)
この(工程B)にて作製された樹脂粒子分散液にリン酸を加え、先の水酸化カルシウムのカルシウム分とともにリン酸カルシウム成分を構成させ、このリン酸カルシウム成分を含んだ水性懸濁液中で樹脂粒子の表面にリン酸カルシウムを析出させて被覆層の形成を実施する。
【0042】
このときリン酸カルシウム成分を含む液のpHが、酸性、特にpH5.0未満の状態になるとリン酸水素カルシウムが形成されるおそれがあることから、リン酸カルシウムによる被覆層の形成における前記水性懸濁液のpHは5.0以上に維持させることが好ましい。
特には、pHが、6.5〜10.5のいずれかの値となるようにリン酸の添加量を調整することが好ましい。
また、リン酸を加えることにより、反応熱で水性懸濁液の温度が上昇するため、例えば、水性懸濁液の温度が50℃以下の温度となるように冷却を実施しつつ被覆層の形成を行うことが好ましい。
この冷却を行うことにより、リン酸を加える工程を複数回に分けて、都度、自然放冷を待つ手間を割愛することができ複合粒子の製造方法をより効率的なものとすることができる。
【0043】
なお、この(工程C)における非晶質リン酸カルシウムの析出において、樹脂粒子に含有されているエステル類が非晶質リン酸カルシウムの析出する起点となりやすく、この非晶質リン酸カルシウムの析出に有利な起点(エステル類)が樹脂粒子の表面に多く存在することから樹脂粒子の表面における非晶質リン酸カルシウムの析出速度に偏りが発生し難く均質な被覆層が形成されることになる。
しかも、被覆層と樹脂粒子との接着性も良好なものとなり非晶質リン酸カルシウムが複合粒子の表面から脱落することが抑制されることになる。
【0044】
なお、樹脂粒子に担持させる非晶質リン酸カルシウムの量は、主として、(工程C)における樹脂粒子とリン酸カルシウム成分との割合によって調整することができる。
このときのリン酸カルシウム成分の含有量が過少である場合には、被覆層の厚みが十分確保できずに、得られる複合粒子に非晶質リン酸カルシウムが有する光散乱性や有機物吸着性が十分に発揮されないおそれがある一方で、過剰にリン酸カルシウム成分を含有させても、非晶質リン酸カルシウムの単独粒子が多く形成されてしまうおそれを有する。
【0045】
このような観点から、樹脂粒子の大きさなどにもよるが、例えば、1〜10μmの内のいずれかの平均粒径を有する樹脂粒子であれば、この樹脂粒子100重量部に対して、5重量部以上の割合でリン酸カルシウム成分を水性懸濁液中に含有させることが好ましく、7重量部以上の割合でリン酸カルシウム成分を水性懸濁液中に含有させることがより好ましい。
【0046】
(工程D)
表面に所定の厚みで被覆層を形成させた後は、水性懸濁液の脱水乾燥を行って、コアシェル型の複合粒子を粉末状態とすることができる。
この脱水乾燥において、被覆層を形成している非晶質リン酸カルシウムの凝集力が増大され、より強固に表面担持され、脱落抑制がなされることになる。
【0047】
なお、乾燥前の複合粒子は、被覆層が水で膨潤された状態にあるために、乾燥後の被覆層に比べて軟質な状態となっている。
そのため、例えば、前記水性懸濁液を脱水装置で濾過して脱水ケーキを作製した場合などにおいて、該脱水ケーキを乾燥した後に解砕して得られる複合粒子粉末よりも、ある程度水分を含んだ被覆層がある程度難質な状態から攪拌等を実施しつつ乾燥して得られる複合粒子粉末の方が、表面の凹凸が減少した状態となる。
【0048】
例えば、樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させる工程においては、エステル類の作用によって比較的均質に非晶質リン酸カルシウムが析出するもののある程度の凹凸は複合粒子の表面に形成される可能性がある。
また、非晶質リン酸カルシウムは、被覆層となって樹脂粒子の表面に析出するもの以外にも、単独で樹脂粒子よりも微細なサイズの粒子となって析出するものもあることから、この水性懸濁液を濾過すると、複合粒子の表面にこの非晶質リン酸カルシウムの単独粒子を付着させた状態にもなり得る。
【0049】
そこで、濾別された脱水ケーキをそのままの状態、あるいは、ある程度解砕しただけの状態で静置乾燥させると、表面の凹凸や、非晶質リン酸カルシウム粒子の付着による突起部が乾燥後の複合粒子に残存されることとなる。
一方で、脱水装置で濾別された直後の被覆層が軟質な状態の複合粒子に対して、攪拌を伴う乾燥工程を実施することによって、乾燥が進んで被覆層が硬質な状態に変化するまでの間に、複合粒子どうしの衝突、擦れ合いを発生させて、濾別する工程が行われた直後の複合粒子に形成されていた表面の凹凸を平均化させたり、表面に付着していた非晶質リン酸カルシウム単独の微細粒子を被覆層に取り込ませたりするなどして、平坦な表面状態に変化させることができる。
【0050】
このような複合粒子は、表面が平滑になるため、特に化粧料に好適なものとなり、例えば、メークアップ化粧料の成分として用いた際においては、当該メークアップ化粧料を肌の上において引き伸ばす際のキシミ感を低減でき、滑らかな感触を使用者に感じさせることができる。
【0051】
なお、複合粒子のサイズや、被覆層の厚みなどにもよるが、通常、脱水ケーキの状態での含水率は、概ね15〜70重量%となる。
これに対して、先のような平坦な表面状態の乾燥粉末を得るためには、少なくとも前記含水率が5重量%以下に低下するまでは全体を攪拌しつつ乾燥させることが好ましく、含水率が2重量%以下に低下するまで攪拌を続けることがより好ましい。
なお、このときに急速な乾燥を実施すると複合粒子の表面が十分に平坦化されないままに乾燥されてしまうおそれがある一方で、過度に緩やかな乾燥を行うことは、作業時間を長期化させることとなる。
このことから、15〜70重量%の含水率の脱水ケーキを5重量%以下の含水率とするまでに要する時間を、概ね5〜20時間とすることが好ましい。
【0052】
このような攪拌を伴う乾燥工程を実施させるには、例えば、攪拌型乾燥機などを用いて実施させることができる。
【0053】
以上説明したように、エステル類を含有する樹脂粒子を用いることで、非晶質リン酸カルシウムの表面被覆を容易に実施することができ、しかも、該非晶質リン酸カルシウムによって均質な被覆層を容易に形成させることができる。
しかも、表面からの非晶質リン酸カルシウムの脱落の抑制が図られた複合粒子を前記樹脂粒子の使用によって得ることができる。
【0054】
通常、非晶質リン酸カルシウムは単独では非常に凝集力が強く取り扱いにくいものではあるが、樹脂粒子に被覆して複合粒子として用いることによって凝集が緩和され、取り扱いが容易になる一方で、樹脂粒子も、単独では発塵を発生させやすいなどの問題を有しているが、非晶質リン酸カルシウムによって被覆層を形成させることによってこのような問題の発生が抑制され、取り扱いが容易になる。
【0055】
そして、複合粒子に、樹脂粒子の形状を反映させて球形状とすることでソフト感が発揮されるとともに、非晶質リン酸カルシウムの光散乱性と有機物吸着性が発揮されることとなり、化粧料に配合する成分として適したものとなる。
【0056】
この複合粒子を化粧料に用いる場合においては、複合粒子をそのまま化粧料に配合する他、表面処理を施して化粧料に含有させることも可能であり、表面処理の例としては、シリコーン、アクリルシリコーン、金属石鹸、レシチン、アミノ酸、コラーゲン、カップリング剤、フッ素系化合物などの化粧料で従来用いられている材料による処理が挙げられる。
【0057】
この化粧料には、他の粉末成分として、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、酸化セリウム、タルク、マイカ(白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、合成雲母)、セリサイト、カオリン、ベントナイト、クレー、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、含フッ素金雲母、合成タルク、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、チッ化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、カラミン、炭酸マグネシウムおよびこれらの複合体などの無機粉体や、シリコーン粉末、シリコーン弾性体粉末、ポリウレタン粉末、セルロース粉末、ポリアミド粉末、アクリル系樹脂粉末、スターチ、ポリエチレン粉末およびこれらの複合体などの有機粉末を、それぞれ1種または2種以上必要に応じて配合することができる。
【0058】
また、化粧料には、油性成分として、流動パラフィン、スクワラン、エステル油、ジグリセライド、トリグリセライド、パーフルオロポリエーテル、ワセリン、ラノリン、セレシン、カルナバロウ、固形パラフィン、脂肪酸、多価アルコール、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ビニルピロリドンなどを1種または2種以上必要に応じて配合することができる。
【0059】
また、本実施形態の複合粒子が配合される化粧料には、機能性成分として、色素、pH調整剤、保湿剤、増粘剤、界面活性剤、分散剤、安定化剤、着色剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料などを本発明の効果を著しく損ねない範囲において適宜配合することができる。
【0060】
このような化粧料の剤型としては、たとえば乳化型ファンデーション、パウダーファンデーション、油性ファンデーション、固形乳化ファンデーション、アイシャドウ、チークカラー、ボディパウダー、パフュームパウダー、ベビーパウダー、フェースパウダー、口紅、乳液、美容ローション、化粧水、美容クリーム、日焼け防止ローションなどがあげられる。
【0061】
なお、本明細書においては、本発明を上記例示に基づいて説明したが、本発明は、上記例示に限定されるものではない。
例えば、複合粒子の用途を化粧料に限定するものではなく、塗料など他の用途においても利用が可能であり、その製法も、懸濁重合によらず乳化重合などの樹脂粒子製造方法を採用して、より粒子径の樹脂粒子を作製し、複合粒子の微細化を図ることも可能である。
さらには、樹脂粒子や複合粒子の形状についても球状に限定されるものでもない。
すなわち、本発明の樹脂粒子や複合粒子は、不定形状などでもよく、その形状が問われるものではない。
【実施例】
【0062】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
(複合粒子の製造例1)
(樹脂粒子の作製)
容量5リットルのステンレスビーカーに、分散剤としてピロリン酸マグネシウム粉末60gを水3000gに分散させた分散液を入れた。
別に、メタクリル酸メチル950gにエチレングリコールジメタクリレート50gと、2、2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9gとを加え、さらにエステル類としてカプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「PM−21」)を500ppm/単量体の割合となるように加えて単量体溶液を作製した。
この単量体溶液を上記ステンレスビーカーに入れ、特殊機化製「卓上型TKホモミキサー」(回転数6000rpm)により分散を行った後、攪拌機付ジャケット式の5リットル容量のオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の温度を50℃に保ちながら撹拌して、6時間懸濁重合を行った。
その後105℃に昇温し、2時間攪拌を続けて樹脂粒子を含むスラリーを作製した。
次いで冷却し6規定の塩酸をスラリーのpHが1以下になるまで加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解した後濾過、洗浄を行った。
得られた樹脂粒子の平均粒径は8.5μmであった。
【0064】
(被覆層の形成)
作製された樹脂粒子をイオン交換水に分散させ、全量を3.5リットルにしたものに水酸化カルシウムを80g加えた後良く攪拌し樹脂粒子分散液を作製した。なお、この時の樹脂粒子分散液のpHは13.0であった。
この樹脂粒子分散液を20℃以下の温度に冷却した後、濃度10%に希釈したオルトリン酸をpHが10.5になるまで徐々に加え、リン酸カルシウム成分を含む水性懸濁液を作製した。
なお、オルトリン酸を加えている間は樹脂粒子分散液の温度が40℃を超えないように調整し、樹脂粒子分散液の粘度変化に応じて適宜攪拌の回転数を調整した。
このオルトリン酸の滴下終了後2時間攪拌を継続して、樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させた後、この水性懸濁液を濾過・乾燥し複合粒子を得た。
なお、乾燥後の複合粒子は凝集状態であったため、市販のミキサーで解砕後、200メッシュの篩を通過させ製造例1の複合粒子とした。
【0065】
(製造例2)
(樹脂粒子の作製)
容量5リットルのステンレスビーカーに、分散剤としてピロリン酸マグネシウム粉末60gを水3000gに分散させた分散液を入れた。
別に、メタクリル酸メチル950gにエチレングリコールジメタクリレート50gと、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9gとを加え、さらにエステル類としてカプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「PM−21」)を500ppm/単量体の割合となるように加えて単量体溶液を作製した。
この単量体溶液を上記ステンレスビーカーに入れ、特殊機化製「卓上型TKホモミキサー」(回転数6000rpm)により分散を行った後、攪拌機付ジャケット式の5リットル容量のオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の温度を50℃に保ちながら撹拌して、6時間懸濁重合を行った。
その後105℃に昇温し、2時間攪拌を続けて樹脂粒子を含むスラリーを作製した。
次いで冷却し、6規定の塩酸をスラリーのpHが1以下になるまで加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解した後濾過、洗浄を行った。
得られた樹脂粒子の平均粒径は8.5μmであった。
【0066】
(被覆層の形成)
容量5リットルのポリビーカーにイオン交換水3リットルを採取し、水酸化カルシウムを80g加えた後良く攪拌した。この時の液のpHは13.0であった。
この液を20℃以下の温度に冷却した後、濃度7.5%に希釈したオルトリン酸をpHが10.5になるまで徐々に加えリン酸カルシウム成分を含有する液を作製した。
なお、オルトリン酸を加えている間は液温が40℃を超えないように調整し、液の粘度変化に応じて適宜攪拌の回転数を調整した。
オルトリン酸の滴下終了後2時間攪拌を継続した。
このようにして得られたリン酸カルシウムスラリーに先に作製した樹脂粒子を加えてリン酸カルシウム成分と樹脂粒子とを含む水性懸濁液を作製し、この水性懸濁液を2時間攪拌して樹脂粒子の表面に非結晶質リン酸カルシウムを析出させた後、濾過・乾燥し複合粒子を得た。
なお、乾燥後の複合粒子は凝集状態であったため、市販のミキサーで解砕後、200メッシュの篩を通過させ製造例2の複合粒子とした。
【0067】
(製造例3)
(樹脂粒子の作製)
容量5リットルのステンレスビーカーに、分散剤としてピロリン酸マグネシウム粉末60gを水3000gに分散させた分散液を入れた。
別に、メタクリル酸メチル1000gに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9gを加え、さらにエステル類としてカプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「PM−21」)を500ppm/単量体の割合となるように加えて単量体溶液を作製した。
この単量体溶液を上記ステンレスビーカーに入れ、特殊機化製「卓上型TKホモミキサー」(回転数6000rpm)により分散を行った後、攪拌機付ジャケット式の5リットル容量のオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の温度を50℃に保ちながら撹拌して、6時間懸濁重合を行った。
その後105℃に昇温し、2時間攪拌を続けて樹脂粒子を含むスラリーを作製した。
次いで冷却し、6規定の塩酸をスラリーのpHが1以下になるまで加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解した後濾過、洗浄を行った。
得られた樹脂粒子の平均粒径は4.5μmであった。
【0068】
(被覆層の形成)
作製された樹脂粒子をイオン交換水に分散させ、全量を3.5リットルにしたものに水酸化カルシウムを80g加えた後良く攪拌し樹脂粒子分散液を作製した。なお、この時の樹脂粒子分散液のpHは13.0であった。
この樹脂粒子分散液を20℃以下の温度に冷却した後、濃度10%に希釈したオルトリン酸をpHが10.5になるまで徐々に加え、リン酸カルシウム成分を含む水性懸濁液を作製した。
なお、オルトリン酸を加えている間は樹脂粒子分散液の温度が40℃を超えないように調整し、樹脂粒子分散液の粘度変化に応じて適宜攪拌の回転数を調整した。
このオルトリン酸の滴下終了後2時間攪拌を継続して、樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させた後、この水性懸濁液を濾過・乾燥し複合粒子を得た。
なお、乾燥後の複合粒子は凝集状態であったため、市販のミキサーで解砕後、200メッシュの篩を通過させ製造例3の複合粒子とした。
【0069】
(製造例4)
(樹脂粒子の作製)
容量5リットルのステンレスビーカーに、分散剤としてピロリン酸マグネシウム60gを水3000gに分散させた分散液を入れた。
別に、アクリル酸ブチル600g、アクリル酸2エチルヘキシル200g、エチレングリコールジメタクリレート200gと、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9gとを加え、さらにエステル類としてカプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「PM−21」)を500ppm/単量体の割合となるように加えて単量体溶液を作製した。
この単量体溶液を上記ステンレスビーカーに入れ、特殊機化製「卓上型TKホモミキサー」(回転数6000rpm)により分散を行った後、攪拌機付ジャケット式の5リットル容量のオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の温度を50℃に保ちながら撹拌して、6時間懸濁重合を行った。
その後105℃に昇温し、2時間攪拌を続けて樹脂粒子を含むスラリーを作製した。
次いで冷却し、6規定の塩酸をスラリーのpHが1以下になるまで加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解した後濾過、洗浄を行った。
得られた樹脂粒子の平均粒径は7.8μmであった。
【0070】
(被覆層の形成)
作製された樹脂粒子をイオン交換水に分散させ、全量を3.5リットルにしたものに水酸化カルシウムを80g加えた後良く攪拌し樹脂粒子分散液を作製した。なお、この時の樹脂粒子分散液のpHは13.0であった。
この樹脂粒子分散液を20℃以下の温度に冷却した後、濃度10%に希釈したオルトリン酸をpHが10.5になるまで徐々に加え、リン酸カルシウム成分を含む水性懸濁液を作製した。
なお、オルトリン酸を加えている間は樹脂粒子分散液の温度が40℃を超えないように調整し、樹脂粒子分散液の粘度変化に応じて適宜攪拌の回転数を調整した。
このオルトリン酸の滴下終了後2時間攪拌を継続した、樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させた後、この水性懸濁液を濾過・乾燥し複合粒子を得た。
なお、乾燥後の複合粒子は凝集状態であったため、市販のミキサーで解砕後、200メッシュの篩を通過させ製造例4の複合粒子とした。
【0071】
(製造例5)
(樹脂粒子の作製)
容量5リットルのステンレスビーカーに、分散剤としてピロリン酸マグネシウム60gを水3000gに分散させた分散液を入れた。
別に、メタクリル酸メチル300g、エチレングリコールジメタクリレート200g、酢酸エチル500gと、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9gとを加え、さらにエステル類としてカプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「PM−21」)を500ppm/単量体の割合となるように加えて単量体溶液を作製した。
この単量体溶液を上記ステンレスビーカーに入れ、特殊機化製「卓上型TKホモミキサー」(回転数6000rpm)により分散を行った後、攪拌機付ジャケット式の5リットル容量のオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の温度を50℃に保ちながら撹拌して、6時間懸濁重合を行った。
その後70℃に昇温し、2時間攪拌を続けて樹脂粒子を含むスラリーを作製した。
次いでスラリーを蒸留し、酢酸エチルを留去した後、冷却し、6規定の塩酸をスラリーのpHが1以下になるまで加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解した。
さらに、これを濾過、洗浄を行った。
得られた粒子は多孔質で、平均粒径は7.2μm、乾燥後の比表面積は90m2/gであった。
【0072】
(被覆層の形成)
作製された樹脂粒子をイオン交換水に分散させ、全量を3.5リットルにしたものに水酸化カルシウムを80g加えた後良く攪拌し樹脂粒子分散液を作製した。なお、この時の樹脂粒子分散液のpHは13.0であった。
この樹脂粒子分散液を20℃以下の温度に冷却した後、濃度10%に希釈したオルトリン酸をpHが10.5になるまで徐々に加え、リン酸カルシウム成分を含む水性懸濁液を作製した。
なお、オルトリン酸を加えている間はスラリーの温度が40℃を超えないように調整し、スラリーの粘度変化に応じて適宜攪拌の回転数を調整した。
このオルトリン酸の滴下終了後2時間攪拌を継続して、樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させた後、この水性懸濁液を濾過・乾燥し複合粒子を得た。
なお、乾燥後の複合粒子は凝集状態であったため、市販のミキサーで解砕後、200メッシュの篩を通過させ製造例5の複合粒子とした。
【0073】
(製造例6〜10)
被覆層の形成において用いる水酸化カルシウムの量とオルトリン酸の量とを調整して、水性懸濁液中の樹脂粒子100重量部に対するリン酸カルシウム成分の量が、5.1重量部(製造例6)、7.4重量部(製造例7)、21.0重量部(製造例8)、28.5重量部(製造例9)、34.7重量部(製造例10)となるようにしたこと以外は、製造例1と同様に複合粒子を作製した。
なお、製造例1〜5における水性懸濁液中の樹脂粒子100重量部に対するリン酸カルシウム成分の量は、いずれも9.6重量部である。
【0074】
(製造例11)
(樹脂粒子の作製)
容量5リットルのステンレスビーカーに、無機化合物としてピロリン酸マグネシウム60gおよびラウリル硫酸ナトリウム0.75を水3000gに分散させた分散液を入れた。
別に、メタクリル酸メチル950gにエチレングリコールジメタクリレート50gと、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9gとを加えて単量体溶液を作製した。
すなわち、ここではエステル類を用いずに単量体溶液を作製した。
この単量体溶液を上記ステンレスビーカーに入れ、特殊機化製「卓上型TKホモミキサー」(回転数6000rpm)により分散を行った後、攪拌機付ジャケット式の5リットル容量のオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の温度を50℃に保ちながら撹拌して、6時間懸濁重合をした。
その後105℃に昇温し、2時間攪拌を続けて樹脂粒子を含むスラリーを作製した。
次いで冷却し、6規定の塩酸をスラリーのpHが1以下になるまで加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解した後濾過、洗浄を行った。
得られた樹脂粒子の平均粒径は8.5μmであった。
【0075】
(被覆層の形成)
作製された樹脂粒子をイオン交換水に分散させ、全量を3.5リットルにしたものに水酸化カルシウムを80g加えた後良く攪拌し樹脂粒子分散液を作製した。なお、この時の樹脂粒子分散液のpHは13.0であった。
この樹脂粒子分散液を20℃以下の温度に冷却した後、濃度10%に希釈したオルトリン酸をpHが10.5になるまで徐々に加え、リン酸カルシウム成分を含む水性懸濁液を作製した。
なお、オルトリン酸を加えている間はスラリーの温度が40℃を超えないように調整し、スラリーの粘度変化に応じて適宜攪拌の回転数を調整した。
このオルトリン酸の滴下終了後2時間攪拌を継続して、樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させた後、この水性懸濁液を濾過・乾燥し複合粒子を得た。
なお、乾燥後の複合粒子は凝集状態であったため、市販のミキサーで解砕後、200メッシュの篩を通過させ製造例11の複合粒子とした。
【0076】
(製造例12)
製造例2で示した方法によってリン酸カルシウム成分を含有するスラリーを作製した。
このスラリーを吸引濾過した後80℃で乾燥し、解砕後ジェットミルで微粉砕して非晶質リン酸カルシウム粉末を作製した。
一方で、製造例1で示した樹脂粒子の製造方法によって樹脂粒子を作製し、この樹脂粒子を乾燥後解砕してオープン45μmの篩を通過させたもの100g用意し、これに先の非晶質リン酸カルシウム粉末10gを加えて市販のミキサーで混合して複合粒子を作製し製造例12の複合粒子とした。
【0077】
(製造例13)
製造例2で用いたリン酸カルシウムスラリーを市販の第3リン酸カルシウムスラリー(太平化学社、商品名「TCP−10U」)に置き換えた以外は製造例2と同様にして複合粒子を作製し、製造例13の複合粒子とした。
なお、第3リン酸カルシウムスラリーを吸引濾過後、80℃で乾燥したリン酸カルシウム粉末のX線回折パターンはヒドロキシアパタイトのX線回折パターンと一致していた。
また、この製造例13では、リン酸カルシウムによる被覆層が形成された複合粒子とともにリン酸カルシウムの単独粒子が多く観察された。
【0078】
(製造例14)
前記製造例1の複合粒子は、水性懸濁液を濾過して濾別されたものが棚式の乾燥機で乾燥された後に粉末状に解砕されて製造されたものであるのに対して、水性懸濁液から濾別する工程を実施した後に、該濾別された複合粒子に攪拌を伴う乾燥を実施して製造したこと以外は、製造例1と同様にして複合粒子を作製した。
より詳しくは、水性懸濁液から濾別されて得られた脱水ケーキを、甘糟興産社製の横型真空乾燥機を用いて攪拌しつつ乾燥を実施し、得られた複合粒子の粉末をミキサーにてさらに解砕した後、200メッシュの篩を通過させて製造例14の複合粒子とした。
【0079】
具体的には、横型真空乾燥機の温度(乾燥機のジャケット温度):60℃、回転数:10rpm、周速:7.85m/分とし、乾燥を18時間実施して、初期含水率が25重量%であったものを1.5重量%の含水率となるまで乾燥させた。
【0080】
(製造例15)
前記製造例4の複合粒子は、水性懸濁液を濾過して濾別されたものが棚式の乾燥機で乾燥された後に粉末状に解砕されて製造されたものであるのに対して、水性懸濁液から濾別する工程を実施した後に、該濾別された複合粒子に攪拌を伴う乾燥を実施して製造したこと以外は、製造例4と同様にして複合粒子を作製した。
より詳しくは、水性懸濁液から濾別されて得られた脱水ケーキを、甘糟興産社製の横型真空乾燥機を用いて攪拌しつつ乾燥を実施し、得られた複合粒子の粉末をミキサーにてさらに解砕した後、200メッシュの篩を通過させて製造例15の複合粒子とした。
【0081】
具体的には、横型真空乾燥機の温度(乾燥機のジャケット温度):60℃、回転数:10rpm、周速:7.85m/分とし、乾燥を16時間実施して、初期含水率が23重量%であったものを0.9重量%の含水率となるまで乾燥させた。
【0082】
(評価)
製造例1、2、4、5、11、12、13、14、15の複合粒子に対し走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行うとともに製造例1〜13の複合粒子(複合粒子と、リン酸カルシウムによる単独粒子との混合粒子)に対して光散乱特性、オレイン酸を用いた吸油量測定を行った。
また、後段において詳述するが、製造例1、4、14、15の複合粒子に対しては肌触りに関する官能試験を実施した。
【0083】
(SEM観察)
製造例1、2、4、5、11、12、13、14、15の複合粒子のSEM写真を図2〜図10に示す。なお、写真左は低倍率で複合粒子を撮像したものであり、右は左の写真よりも高倍率で撮像を行ったものである。
この内、製造例1、2、4、5は、エステル類を含有する樹脂粒子が用いられたものである。
これらについての図2〜図5からは、表面に非晶質リン酸カルシウムによる被膜層が均質に形成されていることがわかる。
このことは、非晶質リン酸カルシウム粉末と樹脂粒子とをミキサーで混合した製造例12(図7)との比較によって、明確に把握することができ、この製造例12では、被膜層が形成されておらず、非晶質リン酸カルシウム粉末が表面に僅かに付着するのみで、樹脂粒子の多くが表面に露出してしまっている。
一方で製造例1、2、4、5は、表面に被膜層が形成されており、その形状が、樹脂粒子と同じような球状となっていることから、均質な膜状に被覆層が形成されていることもわかる。
なお、ここでは具体的に例示しないが、製造例3、6〜10の複合粒子においても、製造例1、2、4、5と同様の複合粒子が得られていることがSEM観察によって確認されている。
すなわち、製造例12のような方法では、均質な被覆層を複合粒子を形成させることは困難である一方で、製造例1のような方法によれば、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層の均質性に優れたコアシェル型の複合粒子を容易に得られることがわかる。
【0084】
なお、エステル類を含有しない樹脂粒子を用いた製造例11(図6)については、製造例12ほどではなく、一部には膜状に樹脂粒子を被覆するリン酸カルシウムが見られるものの製造例1、2、4、5(図2〜図5)ほど、一面に非晶質リン酸カルシウムで覆われている様子は見られない。
【0085】
さらに、エステル類を含有する樹脂粒子を用いながらも非晶質リン酸カルシウムではなく結晶質のリン酸カルシウムを表面に析出させた製造例13(図8)においては、表面を全体的にリン酸カルシウムが覆っている様子が観察されてはいるが、製造例1、2、4、5(図2〜図5)のように均質な膜状の被覆層を形成しているのではなく結晶質のリン酸カルシウムからなる細かな粉が樹脂粒子の表面全面に付着して、毛羽立った状態となっている。
これは、エステル類が、非晶質リン酸カルシウムのみならず結晶質のリン酸カルシウムに対しても析出の起点になりやすいものの、結晶質のリン酸カルシウムは非晶質リン酸カルシウムに比べて凝集力が低いために析出したリン酸カルシウムが膜状とならずに粉状となってしまったためであると考えられる。
これらの点については、続いて説明する光散乱性の評価結果によっても裏付けられている。
【0086】
また、図2と図9(製造例1と14)、図4と図10(製造例4と15)とを比較すると、これらは乾燥方法を異ならせただけのものであるが、図2に比べて撮影倍率の高い図9において、あるいは、図4に比べて撮影倍率の高い図10の写真においても、表面の凹凸が見られず、平坦な表面が形成されていることがわかる。
すなわち、攪拌をともなう乾燥工程を実施することで表面の平滑性に優れた複合粒子を得られることがわかる。
【0087】
(光散乱性の評価)
製造例1〜13によって得られた複合粒子、及び、製造例1において作製された樹脂粒子(非晶質リン酸カルシウムを析出させる前のもの)に対して、自動変角光度計(村上色彩研究所社製、型名「GP−200」)を用いて入射角−45度で光を照射した際の反射角−90度から+90度における反射光分布を測定した。
具体的には、白黒隠蔽紙(BYK−Gardner社製、「Test Chart 2803」)に対して、その黒色部分を中心にして一辺5cmの正方形に切断した両面テープを接着させ、この両面テープ貼付け位置にかさ比重測定器(JIS K 5101準拠品)を用いて各製造例で得られた複合粒子を落下させ、この両面テープ上に落下させた複合粒子に圧縮空気を吹き付けて余分な複合粒子を除去して測定試料として反射光分布を測定した。
得られた結果を、+45度における反射光強度を100とした場合の、−25度、0度、+25度におけるそれぞれの反射光強度の比率(反射光強度比)を表1に示す。
この−25度、0度、+25度と、−45度の入射角、基準となる+45度の反射角とは、図11に示すようなもので、入射光が−45度の方向から入射された場合、通常は、+45度の方向に光が反射されることから、この光の反射方向に対して後方側、すなわち、−25度側などにおいて強い反射強度が観測されるほど光散乱性に優れているといえる。
【0088】
【表1】
【0089】
上記に示すように、エステル類を含有しない樹脂粒子を用いた製造例11や、樹脂粒子の表面に殆どリン酸カルシウムが被覆されていない製造例12や、エステル類を含有する樹脂粒子を用いながらも非晶質リン酸カルシウムではなく結晶質のリン酸カルシウムを表面に析出させた製造例13においては、−25度、0度の反射光強度比が低い値となっており、製造例1〜5などで得られた複合粒子に比べてリン酸カルシウムによる樹脂粒子表面の被覆が十分ではないことがわかる。
【0090】
なお、エステル類を含有する樹脂粒子を用いた製造例6でも、−25度、0度の反射光強度比が低い値となって観察されている。
ただし、製造例6においては、リン酸カルシウムの析出の起点となるエステル類が含有された樹脂粒子が用いられていることから、このようなエステル類を含有していない樹脂粒子を用いた製造例11や、凝集力の弱い結晶性のリン酸カルシウムを析出させた製造例13などの場合と違って比較的均質な被覆層が形成されながらも、リン酸カルシウム成分の量が、製造例1〜4や、製造例11〜13の場合における「9.6重量部」に比べて約半分の「5.1重量部」しか水性懸濁液に含有されていないために、製造例1〜4の複合粒子と同等の優れた光散乱性を発揮させるのに十分な被覆層が形成されていないためであると考えられる。
【0091】
なお、言い換えれば、製造例6では、製造例11〜13(リン酸カルシウム添加量:9.6重量部)に比べて、約半分のリン酸カルシウム量でありながらこれらと同等の光散乱性が得られており、本発明の複合粒子製造方法が従来の複合粒子製造方法に比べて効率的であるといえる。
また、この製造例6のようにリン酸カルシウム成分が少ない量でしか水性懸濁液に含有されていない場合でも、リン酸カルシウムの析出時間や水性懸濁液のpH値といった複合粒子の製造条件を精細に調整することで析出量の増大を図って光散乱性の向上を図り得ると考えられるが、その際には、複合粒子の製造作業において高い精度が要求されることになる。
したがって、光散乱性等に優れたコアシェル型の複合粒子を容易に製造させ得る点において、水性懸濁液には、樹脂粒子100重量部に対して5重量部以上の割合でリン酸カルシウム成分を含有させることが好ましく、7重量部以上の割合でリン酸カルシウム成分を水性懸濁液中に含有させることがより好ましく、9.6重量部以上が特に好ましいといえる。
【0092】
(吸油量の評価)
製造例1〜13によって得られた複合粒子、及び、製造例1において作製された樹脂粒子(非晶質リン酸カルシウムを析出させる前のもの)に対して、吸油量を測定した。
測定に際して、油剤として皮脂の主成分であるオレイン酸を用い吸油量を測定した。
測定は、ガラス板上に各製造例の複合粒子を1g精秤した後、容量10mlのビュレットを用いオレイン酸を滴下し、その都度、ステンレス製のヘラで試料をすばやく練ることを繰り返した。
この操作を進め、試料がひとつの塊状になった時点のオレイン酸量を求め、この値を湿潤点(WP)とした。
さらにオレイン酸を滴下・混練を繰り返し試料が流動化し始めた時のオレイン酸量を求め、この値を流動点(FP)とした。
この評価により、流動点と湿潤点との値の差(FP−WP)を複合粒子100gの場合に換算し吸油量の値(ml/100g)とした。
その結果を、上記表1に示す。また、製造例1において作製された樹脂粒子の吸油量を基準値(1.0)とした場合の各製造例の複合粒子の吸油量の比率を算出した。
その値を表1に併せて示す。
【0093】
そして、この表に示されているように、製造例11、12の複合粒子においても優れた吸油性が観察されている。
一方で、製造例13の複合粒子は、低い吸油量しか示していない。
これは、非晶質リン酸カルシウムと結晶質のリン酸カルシウムとの吸油性能の相違に起因しているものと考えられる。
また、製造例11、12の複合粒子においても優れた吸油性が観察されたのは、樹脂粒子の表面に、十分な量の非晶質リン酸カルシウムが担持されているわけではなく、非晶質リン酸カルシウムの単独粒子が多く混在しているためであると考えられる。
すなわち、光散乱性が低い値しか示されていないにもかかわらず吸油量において高い値が示されているのは、樹脂粒子を被覆している非晶質リン酸カルシウムの量が少なく、単独粒子を構成している非晶質リン酸カルシウムが多く存在する証拠であると認められる。
【0094】
なお、水性懸濁液に含有させるリン酸カルシウム成分の量を、製造例1〜4、製造例11などに比べて減量した製造例6、7では、光散乱性の値に相応する吸油量の値が示されており、このことからも、製造例6、7では、リン酸カルシウム成分の多くが樹脂粒子に被覆されており、均質な被覆がなされていることがわかる。
【0095】
(肌触りの評価)
製造例14、15によって得られた複合粒子について、乾燥方法を異ならせただけの製造例1、4の複合粒子と対比して肌触りの官能評価を実施した。
また、非晶質リン酸カルシウムをスプレードライヤーで球状に造粒した平均粒子径11.3μmの粒子(ヒドロキシアパタイト粒子)も合せて評価に供した。
なお、評価は、10名のパネラーに、各粒子を手首に塗り伸ばす行為、及び、親指と人差し指との間に挟んで、これらの指を擦り合わせる行為を実施させて、その感触について官能的評価を加えることによって実施した。
評価項目は、「キシミ感の無さ」、「滑りの良さ」、「肌への付着性」の3項目とした。
このとき、それぞれの項目において、10名中9名以上が「良い」と評価したものを「◎」、10名中7〜8名が「良い」と評価したものを「○」、10名中5〜6名が「良い」と評価したものを「△」、「良い」と評価したパネラーが4名以下の場合を「×」として判定した。
結果を、表2に示す。
また、先の「反射光強度」の測定を製造例14、15の複合粒子に対しても実施した。
得られた結果を、先の製造例1、4の複合粒子の結果と併せて表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
このことからも、攪拌をともなう乾燥工程を実施した製造例14、15の複合粒子は、表面の平滑性に優れており、化粧料に含有させる成分として特に優れていることがわかる。
【0098】
(化粧料の製造事例)
(1)パウダーファンデーションの製造
下記「配合(1)」に示す配合によりパウダーファンデーションを作製した。
<配合(1)>
製造例1の複合粒子:15重量部
セリサイト:21重量部
白雲母:51重量部
赤色酸化鉄:0.6重量部
黄色酸化鉄:1重量部
黒色酸化鉄:0.1重量部
2−エチルヘキサン酸セチル:10重量部
ソルビタンセスキオレエート:1重量部
防腐剤:0.2重量部
香料:0.1重量部
なお、作製に際しては、複合粒子、セリサイト、白雲母、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄及び黒色酸化鉄をヘンシェルミキサーで混合し、これに、2−エチルヘキサン酸セチル、ソルビタンセスキオレエート及び防腐剤を混合溶解したものを加えて均一に混合した。
これに、香料を加えて混合した後、粉砕して篩いに通した。
これを、金皿に圧縮成型してパウダーファンデーションを得た。
【0099】
(2)乳化型ファンデーションの製造
下記「配合(2)」に示す配合により乳化型ファンデーションを作製した。
<配合(2)>
製造例1の複合粒子:20.0重量部
セリサイト:6.0重量部
二酸化チタン:3.0重量部
ステアリン酸:2.0重量部
セチルアルコール:0.3重量部
流動パラフィン:20.0重量部
ポリエチレン(10モル)モノオレイン酸エステル:1.0重量部
ソルビタントリオレイン酸エステル:1.0重量部
プロピレングリコール:5.0重量部
ポリエチレングリコール4000:5.0重量部
トリエタノールアミン:1.0重量部
ビーガム:0.5重量部
精製水:50.2重量部
顔料:適量
香料:適量
防腐剤:適量
なお、作製に際しては、まず、複合粒子、セリサイト、二酸化チタン及び顔料をニーダーで混合した(粉末部)。
そして、この“粉末部”とは別に、精製水にポリエチレングリコール、トリエタノールアミン、プロピレングリコール及びビーガムを加え加熱溶解して溶液を作製した。
この溶液に、先に調整した粉末部を加え、ホモミキサーで粉末を均一に分散させ70℃に保温した(水相成分)。
次いで、他の成分を混合し、加熱溶解して70℃に保温した(油相成分)。
先の水相成分を油相成分に加え、予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化・分散後、かきまぜながら冷却させて乳化型ファンデーションを得た。
【0100】
(3)化粧乳液の製造
下記「配合(3)」に示す配合により化粧乳液を作製した。
<配合(3)>
製造例15の複合粒子:10.0重量部
ステアリン酸:2.5重量部
セチルアルコール:1.5重量部
ワセリン:5.0重量部
流動パラフィン:10.0重量部
ポリエチレン(10モル)モノオレイン酸エステル:2.0重量部
ポリエチレングリコール1500:3.0重量部
トリエタノールアミン:1.0重量部
精製水:64.5重量部
香料:0.5重量部
防腐剤:適量
なお、作製に際しては、まず、ステアリン酸、セチルアルコール、ワセリン、流動パラフィン及びポリエチレンモノオレイン酸エステルを加熱溶解し、これに複合粒子を添加し、ニーダーで混合し、70℃に保温した(油相成分)。
また、精製水にポリエチレングリコール、トリエタノールアミンを加え、加熱溶解し、70℃に保温した(水相成分)。
この水相成分に油相成分を加え、予備乳化を行い、その後ホモミキサーで均一に乳化し、乳化後かきまぜながら30℃まで冷却させて化粧乳液を得た。
【0101】
(4)口紅の製造
下記「配合(4)」に示す配合により口紅を作製した。
<配合(4)>
製造例14の複合粒子:10.0重量部
二酸化チタン:3.0重量部
赤色202号:0.5重量部
赤色206号:2.0重量部
赤色223号:0.05重量部
セレシン:12.0重量部
ミツロウ:8.0重量部
セチルアルコール:5.0重量部
鯨ロウ:4.0重量部
カルバナロウ:1.0重量部
流動パラフィン:21.0重量部
液体ラノリン:20.0重量部
ブチルステアリン酸エステル:11.45重量部
ソルビタンセスキオレイン酸エステル:2.0重量部
香料:適量
酸化防止剤:適量
なお、作製に際しては、まず、複合粒子、二酸化チタン、赤色202号及び赤色206号を流動パラフィンの一部に加えコーラーでよく混合した(顔料部)。
赤色223号をブチルステアリン酸エステルに溶解させた(染料部)。
他の成分を混合し、加熱溶解した後、顔料部と染料部とを加え、ホモミキサーで均一に分散させた。
分散後、型に流し込み、急冷してスチック状の口紅を得た。
【0102】
これらの「パウダーファンデーション」、「乳化型ファンデーション」、「化粧乳液」、及び「口紅」は、化粧崩れを起こしにくく使用感に優れるものであった。
【0103】
以上のようなことからも、本発明によれば、非晶質リン酸カルシウムを容易に表面被覆させることができ、しかも、その脱落を抑制しうるコア粒子として適した樹脂粒子が提供されうることがわかる。
また、本発明によれば、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層の均質性に優れたコアシェル型の複合粒子を製造しうる複合粒子の製造方法が提供されうることがわかる。
さらに、本発明によれば、化粧崩れの抑制効果に優れた化粧料が提供されうることがわかる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル系単量体が重合されてなる樹脂粒子、コアシェル型の複合粒子、及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウムは、油などの有機物の吸着性能や光散乱性能に優れ、なかでも、非晶質なリン酸カルシウムは、結晶質なヒドロキシアパタイトに比べて、一般に比表面積が大きく有機物の吸着性能等に優れている。
従来、これらのリン酸カルシウムが用いられてなる粒子や、リン酸カルシウム成分を他の粒子の表面に担持させた複合粒子が化粧料などに用いられている。
例えば、下記特許文献1には、有機物粒子、又は、無機物粒子と、これら粒子よりも細かなヒドロキシアパタイト粒子とを混合圧縮することによって先の粒子の表面にヒドロキシアパタイト粒子を付着させた複合粒子を化粧料に用いることが記載されている。
【0003】
ところで、一つの粒子中に成分を異ならせた箇所を有する複合粒子としては、内部と表面とが異なる物質で形成されたコアシェル型の複合粒子が知られている。
このコアシェル型の複合粒子は、コアとなる粒子の表面に被覆層が設けられて外殻が形成されており、前記被覆層の成分による機能を発揮させつつ、粒子の重量や柔軟性といった特性や粒子形状をコア粒子の材料や形状の選択によって調整が可能であることから用途に応じた粒子の調整が容易である。
例えば、化粧料においては、皮脂による化粧崩れを防止することや、光散乱によるソフトフォーカス(ぼかし)が求められることから、含有させるコアシェル型の複合粒子の外殻をなす被覆層をリン酸カルシウムで形成させて前記要望を満足させることができる。
さらには、ファウンデーションやアイシャドゥといった肌に接する使用がなされるためにソフトで滑らかな使用感が求められる場合には、コア粒子の形成に樹脂材料を採用することで複合粒子にソフト感(柔軟性)が付与され、しかも、球状の樹脂粒子を採用して複合粒子の形状を球状とすることで滑らかな使用感を化粧料に付与させうる。
【0004】
ここで、先の特許文献1の方法を採用して、球状の有機物粒子の表面にヒドロキシアパタイト粒子を担持させるとヒドロキシアパタイト粒子が表面に点在する状態になるばかりで、表面をヒドロキシアパタイトが被覆している状態となるように複合粒子を形成させることは難しい。
したがって、このような方法で得られる複合粒子は、ヒドロキシアパタイトによる被覆領域が小さく、ヒドロキシアパタイトの光散乱性能や有機物の吸着性能が十分発揮されないばかりでなく、表面に担持されたヒドロキシアパタイトが脱落しやすいという問題を有する。
【0005】
このような問題は、樹脂粒子の表面をリン酸カルシウムによって膜状に被覆させることで改善が期待されるが、非晶質リン酸カルシウムを用いてコアシェル型の複合粒子を形成させることについて従来十分な検討がなされていない。
そのため、この非晶質リン酸カルシウムを容易に表面被覆させることができ、しかも、強固な担持を実現させ得るコア粒子についても十分な検討がなされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−27414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、非晶質リン酸カルシウムを容易に表面被覆させることができ、しかも、その脱落を抑制しうるコア粒子として適した樹脂粒子の提供を図ることを一つの課題としている。
そして、このことによって非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層の均質性に優れたコアシェル型の複合粒子を製造可能な複合粒子の製造方法を提供し、ひいては化粧崩れの抑制効果に優れた化粧料を提供することをさらなる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決させるための本発明に係る樹脂粒子は、ビニル系単量体が重合されてなり、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化1】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化2】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化3】
のいずれかの成分を含有する樹脂粒子であって、表面に非晶質リン酸カルシウムを被覆させてコアシェル型の複合粒子を形成させるためのコア粒子に用いられることを特徴としている。
【0009】
また、複合粒子の製造方法に係る本発明は、コアシェル型の複合粒子を形成させるべく、コア粒子となる樹脂粒子の表面に、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層を形成させる複合粒子の製造方法であって、ビニル系単量体が重合されてなり、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化4】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化5】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化6】
のいずれかの成分を含有する樹脂粒子を前記コア粒子として用い、該樹脂粒子とリン酸カルシウム成分とを含む水性懸濁液を作製することによって前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させて前記被覆層を形成させることを特徴としている。
【0010】
さらに、化粧料に係る本発明は、コア粒子となる樹脂粒子の表面に、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層を形成させたコアシェル型の複合粒子が含有されてなる化粧料であって、前記複合粒子は、ビニル系単量体が重合されてなり、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化7】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化8】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化9】
のいずれかの成分を含有する樹脂粒子が前記コア粒子として用いられており、該樹脂粒子とリン酸カルシウム成分とを含む水性懸濁液を作製することによって前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させて前記被覆層が形成されたものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂粒子は、上記式(1)〜(3)に示すような成分が少なくとも1種以上含有されている。
したがって、樹脂粒子の表面にこれらの成分が存在し、この部分においてリン酸カルシウムとの親和性が向上されることから、非晶質リン酸カルシウムが強固に担持されうる。
しかも、例えば、この樹脂粒子とリン酸カルシウム成分とを含む水性懸濁液とを作製することによって前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させて前記被覆層を形成させる方法などを採用する場合に、上記式(1)〜(3)に示すような成分が存在する箇所が起点となって非晶質リン酸カルシウムが析出されることから、被覆層を容易に形成させ得る。
さらには、上記式(1)〜(3)に示すような成分は、通常、樹脂粒子の表面に分散された状態となり、これらの成分が非晶質リン酸カルシウムの析出の起点となりうることから均質性に優れた被覆層が形成されうる。
このことによって得られるコアシェル型の複合粒子には、非晶質リン酸カルシウムの特性がより顕著に発揮されることとなり、この複合粒子を含有させることで化粧料を使用時における化粧崩れの抑制が図られたものとすることができる。
【0012】
すなわち、本発明によれば、非晶質リン酸カルシウムを容易に表面被覆させることができ、しかも、その脱落を抑制しうるコア粒子として適した樹脂粒子の提供を図ることができる。
また、本発明によれば、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層の均質性に優れたコアシェル型の複合粒子の製造に適した複合粒子の製造方法が提供され得る。
さらに、本発明によれば、化粧崩れの抑制効果に優れた化粧料が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】非晶質リン酸カルシウムと結晶質リン酸カルシウムとのX線回折パターンを示す図。
【図2】製造例1の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図3】製造例2の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図4】製造例4の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図5】製造例5の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図6】製造例11の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図7】製造例12の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図8】製造例13の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図9】製造例14の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図10】製造例15の複合粒子を示す図(SEM写真、左:低倍率、右:高倍率)。
【図11】光散乱性の評価方法を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る実施形態として化粧料に含有させる成分として好適な複合粒子について説明する。
この複合粒子は、コアとなる粒子の表面に被覆層が設けられて外殻が形成されているコアシェル型の複合粒子であり、前記被覆層が非晶質リン酸カルシウムによって形成されているものである。
【0015】
なお、本明細書における「非晶質リン酸カルシウム」との用語については、一般式「Ca3(PO4)2・nH2O」で表される結晶水を含んだリン酸三カルシウムであって、特にその結晶構造が非晶質のものを意図して用いている。
そして、結晶構造が非晶質であることは、非晶質リン酸カルシウムが、結晶水を多く保有しているため、粉末X線回折法のパターンが、図1に示すように結晶質リン酸カルシウムに比べてブロードとなることから確認することができる。
なお、Ca3(PO4)2・nH2Oの同定はJCPDSカードNo.18−0303とのパターンフィッティングにより確認することができる。
Ca3(PO4)2・nH2O(JCPDSカードNo.18−0303)はX線回
折パターンの2θが31度〜35度の範囲内においてX線回折ピークが3本であるのに対し、結晶性ヒドロキシアパタイト(JCPDSカードNo.09−0432)はX線回折ピークが4本存在するためX線回折測定により非晶質リン酸カルシウムと結晶性アパタイトとを判別することが可能である。
【0016】
本実施形態の樹脂粒子の表面に形成させる被覆層を非晶質リン酸カルシウムによって形成させるのは、非晶質リン酸カルシウムは、水性媒体中での凝集力が結晶質のリン酸カルシウムに比べて強いためコア粒子となる樹脂粒子を包み込むように凝集し、脱水・乾燥後に強固な被覆層を形成させることができるためである。
これに対し結晶質ヒドロキシアパタイトや第3リン酸カルシウムを用いた場合は水性媒体中での凝集力が弱いためにコアとなる樹脂粒子を十分に被覆することが難しい。
しかも、非晶質リン酸カルシウムは、結晶質ヒドロキシアパタイトや第3リン酸カルシウムよりも皮脂成分の吸着性能に優れているため、化粧料に含有させる複合粒子の形成において好適であるといえ、本実施形態の樹脂粒子の表面に形成させる被覆層を非晶質リン酸カルシウムによって形成させるのは、皮脂の吸着による化粧崩れの防止効果が期待されるためである。
【0017】
なお、上記非晶質リン酸カルシウムのカルシウムは、本発明の効果を著しく損ねない限りにおいては、その一部に、例えば、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、アルミニウム、チタンなどの元素が固溶していたり、あるいは、一部がイオン交換または置換されていたりしてもよく、“PO4”の一部が、例えば、“VO4”、“SiO4”、“CO4”などの原子団の1種で置換されていても良い。
さらに、リン酸カルシウムが、1種または2種以上の金属酸化物と複合化されて被覆層を形成してもよい。
この金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどがあげられる。
【0018】
また、本明細書における「コアシェル型」との用語については、コア粒子の表面を隙間なく被覆する外殻が被覆層によって形成されているもののみを意図するものではなく、膜状となってコア粒子の表面を覆う被覆層が一部にのみ形成されているものまでをも含む意味で用いている。
【0019】
この被覆層によって外殻を形成させるための本実施形態のコア粒子は、ビニル系単量体が重合されて平均粒径が5〜50μmの範囲のいずれかとなるように形成された球状の樹脂粒子である。
しかも、この樹脂粒子には、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化10】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化11】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化12】
のいずれかの成分が含有されている。
【0020】
前記ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレンのようなスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルのようなアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルのようなメタクリル酸エステル系単量体が挙げられる。
これらは単独で又は混合して樹脂粒子の形成に用いることができ、上記以外に、上記に例示の単量体と共重合することのできる単量体を樹脂粒子の形成に用いることもできる。
【0021】
このような単量体によって樹脂粒子を形成させるには、懸濁重合や乳化重合などの従来公知の方法を採用することができ、中でも5〜50μmのいずれかの平均粒径を有する球状となるように樹脂粒子を形成させる方法としては、水性媒体中での懸濁重合を採用することが好ましい。
このような重合に際してビニル系単量体の重合を促進するために、重合開始剤を用いることも可能であり、該重合開始剤としては、ビニル系単量体の懸濁重合を行うために従来用いられているビニル系単量体に可溶性の重合開始剤を採用することができる。
このような重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドのような過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物が挙げられる。
【0022】
なお、樹脂粒子の平均粒径については、例えば、ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザーII」などの精密粒度分布測定装置を用いて「Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)」に従って、50μmアパチャーを用いたキャリブレーションを実施して求めることができる。
【0023】
また、上記一般式(1)〜(3)に示される亜リン酸エステル又はリン酸の部分エステルのいずれかについては懸濁重合において樹脂粒子に含有させることができる。
なお、亜リン酸は下記構造式(5)に示されるものである。
【化13】
【0024】
すなわち、脱水縮合反応などによってエステル結合を形成させうる水酸基を2個有するものである。
亜リン酸エステルは、その2個の水酸基がすべてアルコール類等と反応してエステル化されたものであって、前記一般式(1)で表される化合物である。
すなわち、亜リン酸エステルは亜リン酸の完全エステルのみを意味し、部分エステルを含まない。
そして、一般式(1)におけるR1とR2とは炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基表している。
このR1とR2とは、互いに同じものであってもよく、また、異なっていてもよい。
このR1やR2としては、例えば、分岐、又は非分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。
また、この亜リン酸エステルの好適な例は、ジブチルハイドロジエンホスファイトである。
【0025】
また、この発明で用いるリン酸の部分エステルは、「H3PO4」で表されるリン酸の部分エステルである。
なお、亜リン酸は下記構造式(6)に示されるものである。
【化14】
【0026】
すなわち、脱水縮合反応などによってエステル結合を形成させうる水酸基を3個有するものである。
このリン酸の部分エステルは、その3個の水酸基のうちの1個又は2個だけがアルコール類等と反応してエステル化されたものであって、前記一般式(2)又は(3)で表される化合物である。
ここで、R1とR2とは前述の一般式(1)と同じであり、(2)又は(3)で表される化合物からはリン酸の完全エステルは除かれている。
リン酸の部分エステルの好適な例は、カプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート、モノイソデシルホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート等である。
【0027】
ここで、カプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレートとしては、下記構造式(7)で表される化合物の(n=1、a=1、b=2)と(n=1、a=2、b=1)との混合物である日本化薬株式会社から商品名「PM−21」として市販されているものを使用することができる。
【化15】
【0028】
上述の亜リン酸エステル又はリン酸の部分エステル(以下、この両者を総称して「エステル類」ともいう)は、水性媒体中での懸濁重合においてビニル系単量体の分散剤として作用させるものでその重合後に粒子内に取り込まれた状態となるものである。
樹脂粒子の形成に用いる前記エステル類は、いずれか1種のみを単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよく、亜リン酸エステルの中から選ばれる1種以上と、リン酸の部分エステルの中から選ばれる1種以上とを混合して用いることもできる。
【0029】
このエステル類とともに、懸濁重合において無機化合物の粉末を分散剤として用いることができる。
特に、ピロリン酸マグネシウム粉末を用いることが好ましい。
このエステル類とピロリン酸マグネシウム粉末とを含む水性媒体中での懸濁重合を実施することにより粒度の整った球状の樹脂粒子が容易に得られ、化粧料に適した複合粒子の作製に有用な樹脂粒子を得ることができる。
このエテスル類とピロリン酸マグネシウムの粉末とを用いた懸濁重合では、ビニル系単量体の合着を抑制しつつ重合体(樹脂粒子)を得ることができる。
そのため、水性媒体中におけるビニル系単量体の初期の分散状態に近い状態で重合を完結させることができ、水性媒体中におけるビニル系単量体の割合、分散剤の使用量、及び撹拌速度などを調整して、重合初期におけるビニル系単量体の分散状態を調節することにより樹脂粒子の大きさをある程度調整することができる。
通常、1〜100μmの範囲内であれば、このような調整によって大きさの揃った樹脂粒子を得ることができる。
【0030】
なお、ピロリン酸マグネシウム粉末は、これらの無機化合物は、平均粒径が0.01〜10μmのいずれかの微粉末として用いることが好ましく、特に0.01〜1μmのいずれかの平均粒径を有する微粉末として用いることが好ましい。
このピロリン酸マグネシウム粉末以外には、例えば、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等の水に難溶性の塩類、タルク、ベントナイト、珪酸、珪藻土、粘土等の無機高分子物質の粒子を分散剤として併用することができる。
【0031】
これらは、ピロリン酸マグネシウム粉末と同様に平均粒径が0.01〜10μmのいずれかの微粉末として用いることが好ましく、特に0.01〜1μmのいずれかの平均粒径を有する微粉末として用いることが好ましい。
【0032】
これら分散剤は、エステル類の合計使用量については、ビニル系単量体に対し0.01〜0.4重量%のいずれかとすることが好ましい。
その内、0.03〜0.2重量%のいずれかとすることが特に好ましい。
エステル類の使用量がこのような範囲の内から選択されることが好ましいのは、エステル類が0.4重量%を超えて用いられると、懸濁重合において水相と油相を混合・分散させてモノマー滴を形成する際に過度に微粒化されてしまい、複合粒子を化粧料用途に適した大きさとすることが困難になるためである。
また、逆にエステル類が0.01重量%未満になると、重合過程で分散しているビニル系単量体の液滴が合着するのを抑制する効果が乏しくなって粗大な樹脂粒子が形成されるおそれを有するためである。
さらに、エステル類は、樹脂粒子と非晶質リン酸カルシウムとの親和性を向上させるための成分でもあり、リン酸カルシウム成分を含むスラリーによって樹脂粒子の表面に析出させるのに際して、析出の起点となる成分でもある。
このことから、エステル類が0.01重量%未満になると、非晶質リン酸カルシウムによる被覆層の均質性が損なわれたり、樹脂粒子表面からの剥離を生じやすくさせたりするおそれがある。
【0033】
また、無機化合物微粉末の添加量は、ビニル系単量体に対し0.1〜20重量%のいずれかとすることが好ましい。
その内、0.5〜10重量%のいずれかとすることが特に好ましい。
無機化合物粉末の使用量がこのような範囲の内から選択されることが好ましいのは、無機化合物粉末が20重量%を超えて用いられると、懸濁重合の液の粘度が上がり過ぎる結果、懸濁重合が困難となるためである。
一方で、0.1重量%未満になると、ビニル系単量体の液滴が合着するのを抑制する効果が乏しくなって粗大な樹脂粒子が形成されるおそれを有するためである。
【0034】
なお、ここでは詳述しないが、樹脂粒子や被覆層の形成に上記例示の成分以外の、例えば、着色成分等を含有させることも可能であり、非晶質リン酸カルシウムによって形成された被覆層のさらに外側に着色層等を形成させることも可能である。
【0035】
次いで、樹脂粒子の製造方法及び該製造方法によって得られた樹脂粒子をコア粒子として用いてコアシェル型の複合粒子を製造する製造方法について説明する。
【0036】
(樹脂粒子の製造方法)
本実施形態における樹脂粒子の製造方法としては、上記に例示の成分を用いて懸濁重合を行うことが好適である。
この際の各成分の混合順序等に格別の制限が設けられるものではないが、混合順序としては下記のようにすることが好ましい。
すなわち、
(工程1−1)
まず、ピロリン酸マグネシウム粉末等の無機化合物の粉末と、必要に応じて界面活性剤等を予め水に溶解させる。
(工程1−2)
他方、エステル類と、重合開始剤と、ビニル系単量体とを混合した混合液を作製する。
(工程2)
その後、(1−1)において準備した無機化合物粉末分散水と(1−2)において準備した混合液とを混合攪拌してビニル系単量体による液滴が水性媒体中に分散された懸濁液を作製する。
【0037】
なお、(工程2)においては、ビニル系重合体の粒子(液滴)の大きさを観察しつつ攪拌機やホモミキサーの撹拌速度を調節して粒子の大きさが所望の大きさになった時点で、撹拌速度を一定にし、その後はそのままの速度で撹拌を続けることによって目的とする大きさの樹脂粒子を容易に得ることができる。
【0038】
この懸濁液に重合反応を発生させて樹脂粒子を製造するには、反応容器としてオートクレーブを用いることが好ましい。
オートクレーブとしては撹拌機の付設されたもので、加熱、冷却ができるようにジャケットを備えたものが好ましい。
そして重合の初期には50〜100℃のいずれかの温度に加熱し、その後はこの範囲の温度に維持し、重合期間中は絶えず撹拌を続けることが好ましい。
そして、この加熱温度と攪拌を維持した状態で、時間経過に伴ってビニル系単量体が重合し、通常、数時間のうちに重合が完了して重合体(樹脂粒子)を得ることができる。
この間、分散したビニル系単量体粒子どうしの合着を抑制することができるため、所望の粒子径に揃った樹脂粒子を得ることができる。
合着を起こしたかどうかは、得られた重合体粒子の一部を取って、顕微鏡下で観察し、いびつな形状の粒子が多数混在するかどうかによって容易に判別できる。
【0039】
また、このビニル系単量体の重合時には、前記エステル類が取り込まれて樹脂粒子が形成されることになる。
このことを詳しく述べると、重合前には、エステル類はビニル系単量体によって水性媒体中に形成される液滴と、水性媒体との界面(粒子表面)近傍に比較的多く存在し、ビニル系単量体の重合反応に伴って、その一部、特に炭化水素部分や前記式(4)に係る部分を粒子内部に突入させ、しかも、一部をビニル系単量体と反応させた状態となって樹脂粒子に取り込まれる。
このエステル類は、リン酸カルシウムとの親和性が高く、エステル類の存在箇所は、非晶質リン酸カルシウムの析出起点となりやすい。
しかも、樹脂粒子の表面にエステル類が分散されて多く存在することによって非晶質リン酸カルシウムが均質状態で析出されやすく、均質で且つ強固な被覆層が形成されることとなる。
また、被覆層が均質となることで、複合粒子も樹脂粒子と同様の球状に形成されやすくなり、化粧料に適した、均質な被覆層を有する球状の複合粒子の形成が容易に実施されることとなる。
【0040】
(複合粒子製造方法)
続いて、この樹脂粒子を用いた複合粒子の作製方法について説明する。
この樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムによる被覆層を形成させる方法は、特に限定されるものではないが、均質な被覆層を形成させるには、前記樹脂粒子とリン酸カルシウム成分とを含む水性懸濁液を作製して前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させて被覆層を形成させることが重要である。
【0041】
このような複合粒子の製造方法としては、例えば、次のような工程を実施する方法が挙げられる。
すなわち、
(工程A)
水中に水酸化カルシウムなどのカルシウム塩を分散させたアルカリ性溶液を作製する。
(工程B)
この(工程A)にて作製されたアルカリ性溶液に、先の製造方法によって製造された樹脂粒子を分散させ樹脂粒子分散液を作製する。
(工程C)
この(工程B)にて作製された樹脂粒子分散液にリン酸を加え、先の水酸化カルシウムのカルシウム分とともにリン酸カルシウム成分を構成させ、このリン酸カルシウム成分を含んだ水性懸濁液中で樹脂粒子の表面にリン酸カルシウムを析出させて被覆層の形成を実施する。
【0042】
このときリン酸カルシウム成分を含む液のpHが、酸性、特にpH5.0未満の状態になるとリン酸水素カルシウムが形成されるおそれがあることから、リン酸カルシウムによる被覆層の形成における前記水性懸濁液のpHは5.0以上に維持させることが好ましい。
特には、pHが、6.5〜10.5のいずれかの値となるようにリン酸の添加量を調整することが好ましい。
また、リン酸を加えることにより、反応熱で水性懸濁液の温度が上昇するため、例えば、水性懸濁液の温度が50℃以下の温度となるように冷却を実施しつつ被覆層の形成を行うことが好ましい。
この冷却を行うことにより、リン酸を加える工程を複数回に分けて、都度、自然放冷を待つ手間を割愛することができ複合粒子の製造方法をより効率的なものとすることができる。
【0043】
なお、この(工程C)における非晶質リン酸カルシウムの析出において、樹脂粒子に含有されているエステル類が非晶質リン酸カルシウムの析出する起点となりやすく、この非晶質リン酸カルシウムの析出に有利な起点(エステル類)が樹脂粒子の表面に多く存在することから樹脂粒子の表面における非晶質リン酸カルシウムの析出速度に偏りが発生し難く均質な被覆層が形成されることになる。
しかも、被覆層と樹脂粒子との接着性も良好なものとなり非晶質リン酸カルシウムが複合粒子の表面から脱落することが抑制されることになる。
【0044】
なお、樹脂粒子に担持させる非晶質リン酸カルシウムの量は、主として、(工程C)における樹脂粒子とリン酸カルシウム成分との割合によって調整することができる。
このときのリン酸カルシウム成分の含有量が過少である場合には、被覆層の厚みが十分確保できずに、得られる複合粒子に非晶質リン酸カルシウムが有する光散乱性や有機物吸着性が十分に発揮されないおそれがある一方で、過剰にリン酸カルシウム成分を含有させても、非晶質リン酸カルシウムの単独粒子が多く形成されてしまうおそれを有する。
【0045】
このような観点から、樹脂粒子の大きさなどにもよるが、例えば、1〜10μmの内のいずれかの平均粒径を有する樹脂粒子であれば、この樹脂粒子100重量部に対して、5重量部以上の割合でリン酸カルシウム成分を水性懸濁液中に含有させることが好ましく、7重量部以上の割合でリン酸カルシウム成分を水性懸濁液中に含有させることがより好ましい。
【0046】
(工程D)
表面に所定の厚みで被覆層を形成させた後は、水性懸濁液の脱水乾燥を行って、コアシェル型の複合粒子を粉末状態とすることができる。
この脱水乾燥において、被覆層を形成している非晶質リン酸カルシウムの凝集力が増大され、より強固に表面担持され、脱落抑制がなされることになる。
【0047】
なお、乾燥前の複合粒子は、被覆層が水で膨潤された状態にあるために、乾燥後の被覆層に比べて軟質な状態となっている。
そのため、例えば、前記水性懸濁液を脱水装置で濾過して脱水ケーキを作製した場合などにおいて、該脱水ケーキを乾燥した後に解砕して得られる複合粒子粉末よりも、ある程度水分を含んだ被覆層がある程度難質な状態から攪拌等を実施しつつ乾燥して得られる複合粒子粉末の方が、表面の凹凸が減少した状態となる。
【0048】
例えば、樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させる工程においては、エステル類の作用によって比較的均質に非晶質リン酸カルシウムが析出するもののある程度の凹凸は複合粒子の表面に形成される可能性がある。
また、非晶質リン酸カルシウムは、被覆層となって樹脂粒子の表面に析出するもの以外にも、単独で樹脂粒子よりも微細なサイズの粒子となって析出するものもあることから、この水性懸濁液を濾過すると、複合粒子の表面にこの非晶質リン酸カルシウムの単独粒子を付着させた状態にもなり得る。
【0049】
そこで、濾別された脱水ケーキをそのままの状態、あるいは、ある程度解砕しただけの状態で静置乾燥させると、表面の凹凸や、非晶質リン酸カルシウム粒子の付着による突起部が乾燥後の複合粒子に残存されることとなる。
一方で、脱水装置で濾別された直後の被覆層が軟質な状態の複合粒子に対して、攪拌を伴う乾燥工程を実施することによって、乾燥が進んで被覆層が硬質な状態に変化するまでの間に、複合粒子どうしの衝突、擦れ合いを発生させて、濾別する工程が行われた直後の複合粒子に形成されていた表面の凹凸を平均化させたり、表面に付着していた非晶質リン酸カルシウム単独の微細粒子を被覆層に取り込ませたりするなどして、平坦な表面状態に変化させることができる。
【0050】
このような複合粒子は、表面が平滑になるため、特に化粧料に好適なものとなり、例えば、メークアップ化粧料の成分として用いた際においては、当該メークアップ化粧料を肌の上において引き伸ばす際のキシミ感を低減でき、滑らかな感触を使用者に感じさせることができる。
【0051】
なお、複合粒子のサイズや、被覆層の厚みなどにもよるが、通常、脱水ケーキの状態での含水率は、概ね15〜70重量%となる。
これに対して、先のような平坦な表面状態の乾燥粉末を得るためには、少なくとも前記含水率が5重量%以下に低下するまでは全体を攪拌しつつ乾燥させることが好ましく、含水率が2重量%以下に低下するまで攪拌を続けることがより好ましい。
なお、このときに急速な乾燥を実施すると複合粒子の表面が十分に平坦化されないままに乾燥されてしまうおそれがある一方で、過度に緩やかな乾燥を行うことは、作業時間を長期化させることとなる。
このことから、15〜70重量%の含水率の脱水ケーキを5重量%以下の含水率とするまでに要する時間を、概ね5〜20時間とすることが好ましい。
【0052】
このような攪拌を伴う乾燥工程を実施させるには、例えば、攪拌型乾燥機などを用いて実施させることができる。
【0053】
以上説明したように、エステル類を含有する樹脂粒子を用いることで、非晶質リン酸カルシウムの表面被覆を容易に実施することができ、しかも、該非晶質リン酸カルシウムによって均質な被覆層を容易に形成させることができる。
しかも、表面からの非晶質リン酸カルシウムの脱落の抑制が図られた複合粒子を前記樹脂粒子の使用によって得ることができる。
【0054】
通常、非晶質リン酸カルシウムは単独では非常に凝集力が強く取り扱いにくいものではあるが、樹脂粒子に被覆して複合粒子として用いることによって凝集が緩和され、取り扱いが容易になる一方で、樹脂粒子も、単独では発塵を発生させやすいなどの問題を有しているが、非晶質リン酸カルシウムによって被覆層を形成させることによってこのような問題の発生が抑制され、取り扱いが容易になる。
【0055】
そして、複合粒子に、樹脂粒子の形状を反映させて球形状とすることでソフト感が発揮されるとともに、非晶質リン酸カルシウムの光散乱性と有機物吸着性が発揮されることとなり、化粧料に配合する成分として適したものとなる。
【0056】
この複合粒子を化粧料に用いる場合においては、複合粒子をそのまま化粧料に配合する他、表面処理を施して化粧料に含有させることも可能であり、表面処理の例としては、シリコーン、アクリルシリコーン、金属石鹸、レシチン、アミノ酸、コラーゲン、カップリング剤、フッ素系化合物などの化粧料で従来用いられている材料による処理が挙げられる。
【0057】
この化粧料には、他の粉末成分として、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、酸化セリウム、タルク、マイカ(白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、合成雲母)、セリサイト、カオリン、ベントナイト、クレー、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、含フッ素金雲母、合成タルク、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、チッ化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、カラミン、炭酸マグネシウムおよびこれらの複合体などの無機粉体や、シリコーン粉末、シリコーン弾性体粉末、ポリウレタン粉末、セルロース粉末、ポリアミド粉末、アクリル系樹脂粉末、スターチ、ポリエチレン粉末およびこれらの複合体などの有機粉末を、それぞれ1種または2種以上必要に応じて配合することができる。
【0058】
また、化粧料には、油性成分として、流動パラフィン、スクワラン、エステル油、ジグリセライド、トリグリセライド、パーフルオロポリエーテル、ワセリン、ラノリン、セレシン、カルナバロウ、固形パラフィン、脂肪酸、多価アルコール、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ビニルピロリドンなどを1種または2種以上必要に応じて配合することができる。
【0059】
また、本実施形態の複合粒子が配合される化粧料には、機能性成分として、色素、pH調整剤、保湿剤、増粘剤、界面活性剤、分散剤、安定化剤、着色剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料などを本発明の効果を著しく損ねない範囲において適宜配合することができる。
【0060】
このような化粧料の剤型としては、たとえば乳化型ファンデーション、パウダーファンデーション、油性ファンデーション、固形乳化ファンデーション、アイシャドウ、チークカラー、ボディパウダー、パフュームパウダー、ベビーパウダー、フェースパウダー、口紅、乳液、美容ローション、化粧水、美容クリーム、日焼け防止ローションなどがあげられる。
【0061】
なお、本明細書においては、本発明を上記例示に基づいて説明したが、本発明は、上記例示に限定されるものではない。
例えば、複合粒子の用途を化粧料に限定するものではなく、塗料など他の用途においても利用が可能であり、その製法も、懸濁重合によらず乳化重合などの樹脂粒子製造方法を採用して、より粒子径の樹脂粒子を作製し、複合粒子の微細化を図ることも可能である。
さらには、樹脂粒子や複合粒子の形状についても球状に限定されるものでもない。
すなわち、本発明の樹脂粒子や複合粒子は、不定形状などでもよく、その形状が問われるものではない。
【実施例】
【0062】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
(複合粒子の製造例1)
(樹脂粒子の作製)
容量5リットルのステンレスビーカーに、分散剤としてピロリン酸マグネシウム粉末60gを水3000gに分散させた分散液を入れた。
別に、メタクリル酸メチル950gにエチレングリコールジメタクリレート50gと、2、2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9gとを加え、さらにエステル類としてカプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「PM−21」)を500ppm/単量体の割合となるように加えて単量体溶液を作製した。
この単量体溶液を上記ステンレスビーカーに入れ、特殊機化製「卓上型TKホモミキサー」(回転数6000rpm)により分散を行った後、攪拌機付ジャケット式の5リットル容量のオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の温度を50℃に保ちながら撹拌して、6時間懸濁重合を行った。
その後105℃に昇温し、2時間攪拌を続けて樹脂粒子を含むスラリーを作製した。
次いで冷却し6規定の塩酸をスラリーのpHが1以下になるまで加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解した後濾過、洗浄を行った。
得られた樹脂粒子の平均粒径は8.5μmであった。
【0064】
(被覆層の形成)
作製された樹脂粒子をイオン交換水に分散させ、全量を3.5リットルにしたものに水酸化カルシウムを80g加えた後良く攪拌し樹脂粒子分散液を作製した。なお、この時の樹脂粒子分散液のpHは13.0であった。
この樹脂粒子分散液を20℃以下の温度に冷却した後、濃度10%に希釈したオルトリン酸をpHが10.5になるまで徐々に加え、リン酸カルシウム成分を含む水性懸濁液を作製した。
なお、オルトリン酸を加えている間は樹脂粒子分散液の温度が40℃を超えないように調整し、樹脂粒子分散液の粘度変化に応じて適宜攪拌の回転数を調整した。
このオルトリン酸の滴下終了後2時間攪拌を継続して、樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させた後、この水性懸濁液を濾過・乾燥し複合粒子を得た。
なお、乾燥後の複合粒子は凝集状態であったため、市販のミキサーで解砕後、200メッシュの篩を通過させ製造例1の複合粒子とした。
【0065】
(製造例2)
(樹脂粒子の作製)
容量5リットルのステンレスビーカーに、分散剤としてピロリン酸マグネシウム粉末60gを水3000gに分散させた分散液を入れた。
別に、メタクリル酸メチル950gにエチレングリコールジメタクリレート50gと、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9gとを加え、さらにエステル類としてカプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「PM−21」)を500ppm/単量体の割合となるように加えて単量体溶液を作製した。
この単量体溶液を上記ステンレスビーカーに入れ、特殊機化製「卓上型TKホモミキサー」(回転数6000rpm)により分散を行った後、攪拌機付ジャケット式の5リットル容量のオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の温度を50℃に保ちながら撹拌して、6時間懸濁重合を行った。
その後105℃に昇温し、2時間攪拌を続けて樹脂粒子を含むスラリーを作製した。
次いで冷却し、6規定の塩酸をスラリーのpHが1以下になるまで加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解した後濾過、洗浄を行った。
得られた樹脂粒子の平均粒径は8.5μmであった。
【0066】
(被覆層の形成)
容量5リットルのポリビーカーにイオン交換水3リットルを採取し、水酸化カルシウムを80g加えた後良く攪拌した。この時の液のpHは13.0であった。
この液を20℃以下の温度に冷却した後、濃度7.5%に希釈したオルトリン酸をpHが10.5になるまで徐々に加えリン酸カルシウム成分を含有する液を作製した。
なお、オルトリン酸を加えている間は液温が40℃を超えないように調整し、液の粘度変化に応じて適宜攪拌の回転数を調整した。
オルトリン酸の滴下終了後2時間攪拌を継続した。
このようにして得られたリン酸カルシウムスラリーに先に作製した樹脂粒子を加えてリン酸カルシウム成分と樹脂粒子とを含む水性懸濁液を作製し、この水性懸濁液を2時間攪拌して樹脂粒子の表面に非結晶質リン酸カルシウムを析出させた後、濾過・乾燥し複合粒子を得た。
なお、乾燥後の複合粒子は凝集状態であったため、市販のミキサーで解砕後、200メッシュの篩を通過させ製造例2の複合粒子とした。
【0067】
(製造例3)
(樹脂粒子の作製)
容量5リットルのステンレスビーカーに、分散剤としてピロリン酸マグネシウム粉末60gを水3000gに分散させた分散液を入れた。
別に、メタクリル酸メチル1000gに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9gを加え、さらにエステル類としてカプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「PM−21」)を500ppm/単量体の割合となるように加えて単量体溶液を作製した。
この単量体溶液を上記ステンレスビーカーに入れ、特殊機化製「卓上型TKホモミキサー」(回転数6000rpm)により分散を行った後、攪拌機付ジャケット式の5リットル容量のオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の温度を50℃に保ちながら撹拌して、6時間懸濁重合を行った。
その後105℃に昇温し、2時間攪拌を続けて樹脂粒子を含むスラリーを作製した。
次いで冷却し、6規定の塩酸をスラリーのpHが1以下になるまで加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解した後濾過、洗浄を行った。
得られた樹脂粒子の平均粒径は4.5μmであった。
【0068】
(被覆層の形成)
作製された樹脂粒子をイオン交換水に分散させ、全量を3.5リットルにしたものに水酸化カルシウムを80g加えた後良く攪拌し樹脂粒子分散液を作製した。なお、この時の樹脂粒子分散液のpHは13.0であった。
この樹脂粒子分散液を20℃以下の温度に冷却した後、濃度10%に希釈したオルトリン酸をpHが10.5になるまで徐々に加え、リン酸カルシウム成分を含む水性懸濁液を作製した。
なお、オルトリン酸を加えている間は樹脂粒子分散液の温度が40℃を超えないように調整し、樹脂粒子分散液の粘度変化に応じて適宜攪拌の回転数を調整した。
このオルトリン酸の滴下終了後2時間攪拌を継続して、樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させた後、この水性懸濁液を濾過・乾燥し複合粒子を得た。
なお、乾燥後の複合粒子は凝集状態であったため、市販のミキサーで解砕後、200メッシュの篩を通過させ製造例3の複合粒子とした。
【0069】
(製造例4)
(樹脂粒子の作製)
容量5リットルのステンレスビーカーに、分散剤としてピロリン酸マグネシウム60gを水3000gに分散させた分散液を入れた。
別に、アクリル酸ブチル600g、アクリル酸2エチルヘキシル200g、エチレングリコールジメタクリレート200gと、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9gとを加え、さらにエステル類としてカプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「PM−21」)を500ppm/単量体の割合となるように加えて単量体溶液を作製した。
この単量体溶液を上記ステンレスビーカーに入れ、特殊機化製「卓上型TKホモミキサー」(回転数6000rpm)により分散を行った後、攪拌機付ジャケット式の5リットル容量のオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の温度を50℃に保ちながら撹拌して、6時間懸濁重合を行った。
その後105℃に昇温し、2時間攪拌を続けて樹脂粒子を含むスラリーを作製した。
次いで冷却し、6規定の塩酸をスラリーのpHが1以下になるまで加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解した後濾過、洗浄を行った。
得られた樹脂粒子の平均粒径は7.8μmであった。
【0070】
(被覆層の形成)
作製された樹脂粒子をイオン交換水に分散させ、全量を3.5リットルにしたものに水酸化カルシウムを80g加えた後良く攪拌し樹脂粒子分散液を作製した。なお、この時の樹脂粒子分散液のpHは13.0であった。
この樹脂粒子分散液を20℃以下の温度に冷却した後、濃度10%に希釈したオルトリン酸をpHが10.5になるまで徐々に加え、リン酸カルシウム成分を含む水性懸濁液を作製した。
なお、オルトリン酸を加えている間は樹脂粒子分散液の温度が40℃を超えないように調整し、樹脂粒子分散液の粘度変化に応じて適宜攪拌の回転数を調整した。
このオルトリン酸の滴下終了後2時間攪拌を継続した、樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させた後、この水性懸濁液を濾過・乾燥し複合粒子を得た。
なお、乾燥後の複合粒子は凝集状態であったため、市販のミキサーで解砕後、200メッシュの篩を通過させ製造例4の複合粒子とした。
【0071】
(製造例5)
(樹脂粒子の作製)
容量5リットルのステンレスビーカーに、分散剤としてピロリン酸マグネシウム60gを水3000gに分散させた分散液を入れた。
別に、メタクリル酸メチル300g、エチレングリコールジメタクリレート200g、酢酸エチル500gと、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9gとを加え、さらにエステル類としてカプロラクトンEO変性リン酸ジメタクリレート(日本化薬株式会社製、商品名「PM−21」)を500ppm/単量体の割合となるように加えて単量体溶液を作製した。
この単量体溶液を上記ステンレスビーカーに入れ、特殊機化製「卓上型TKホモミキサー」(回転数6000rpm)により分散を行った後、攪拌機付ジャケット式の5リットル容量のオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の温度を50℃に保ちながら撹拌して、6時間懸濁重合を行った。
その後70℃に昇温し、2時間攪拌を続けて樹脂粒子を含むスラリーを作製した。
次いでスラリーを蒸留し、酢酸エチルを留去した後、冷却し、6規定の塩酸をスラリーのpHが1以下になるまで加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解した。
さらに、これを濾過、洗浄を行った。
得られた粒子は多孔質で、平均粒径は7.2μm、乾燥後の比表面積は90m2/gであった。
【0072】
(被覆層の形成)
作製された樹脂粒子をイオン交換水に分散させ、全量を3.5リットルにしたものに水酸化カルシウムを80g加えた後良く攪拌し樹脂粒子分散液を作製した。なお、この時の樹脂粒子分散液のpHは13.0であった。
この樹脂粒子分散液を20℃以下の温度に冷却した後、濃度10%に希釈したオルトリン酸をpHが10.5になるまで徐々に加え、リン酸カルシウム成分を含む水性懸濁液を作製した。
なお、オルトリン酸を加えている間はスラリーの温度が40℃を超えないように調整し、スラリーの粘度変化に応じて適宜攪拌の回転数を調整した。
このオルトリン酸の滴下終了後2時間攪拌を継続して、樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させた後、この水性懸濁液を濾過・乾燥し複合粒子を得た。
なお、乾燥後の複合粒子は凝集状態であったため、市販のミキサーで解砕後、200メッシュの篩を通過させ製造例5の複合粒子とした。
【0073】
(製造例6〜10)
被覆層の形成において用いる水酸化カルシウムの量とオルトリン酸の量とを調整して、水性懸濁液中の樹脂粒子100重量部に対するリン酸カルシウム成分の量が、5.1重量部(製造例6)、7.4重量部(製造例7)、21.0重量部(製造例8)、28.5重量部(製造例9)、34.7重量部(製造例10)となるようにしたこと以外は、製造例1と同様に複合粒子を作製した。
なお、製造例1〜5における水性懸濁液中の樹脂粒子100重量部に対するリン酸カルシウム成分の量は、いずれも9.6重量部である。
【0074】
(製造例11)
(樹脂粒子の作製)
容量5リットルのステンレスビーカーに、無機化合物としてピロリン酸マグネシウム60gおよびラウリル硫酸ナトリウム0.75を水3000gに分散させた分散液を入れた。
別に、メタクリル酸メチル950gにエチレングリコールジメタクリレート50gと、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.9gとを加えて単量体溶液を作製した。
すなわち、ここではエステル類を用いずに単量体溶液を作製した。
この単量体溶液を上記ステンレスビーカーに入れ、特殊機化製「卓上型TKホモミキサー」(回転数6000rpm)により分散を行った後、攪拌機付ジャケット式の5リットル容量のオートクレーブに入れ、オートクレーブ内の温度を50℃に保ちながら撹拌して、6時間懸濁重合をした。
その後105℃に昇温し、2時間攪拌を続けて樹脂粒子を含むスラリーを作製した。
次いで冷却し、6規定の塩酸をスラリーのpHが1以下になるまで加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解した後濾過、洗浄を行った。
得られた樹脂粒子の平均粒径は8.5μmであった。
【0075】
(被覆層の形成)
作製された樹脂粒子をイオン交換水に分散させ、全量を3.5リットルにしたものに水酸化カルシウムを80g加えた後良く攪拌し樹脂粒子分散液を作製した。なお、この時の樹脂粒子分散液のpHは13.0であった。
この樹脂粒子分散液を20℃以下の温度に冷却した後、濃度10%に希釈したオルトリン酸をpHが10.5になるまで徐々に加え、リン酸カルシウム成分を含む水性懸濁液を作製した。
なお、オルトリン酸を加えている間はスラリーの温度が40℃を超えないように調整し、スラリーの粘度変化に応じて適宜攪拌の回転数を調整した。
このオルトリン酸の滴下終了後2時間攪拌を継続して、樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させた後、この水性懸濁液を濾過・乾燥し複合粒子を得た。
なお、乾燥後の複合粒子は凝集状態であったため、市販のミキサーで解砕後、200メッシュの篩を通過させ製造例11の複合粒子とした。
【0076】
(製造例12)
製造例2で示した方法によってリン酸カルシウム成分を含有するスラリーを作製した。
このスラリーを吸引濾過した後80℃で乾燥し、解砕後ジェットミルで微粉砕して非晶質リン酸カルシウム粉末を作製した。
一方で、製造例1で示した樹脂粒子の製造方法によって樹脂粒子を作製し、この樹脂粒子を乾燥後解砕してオープン45μmの篩を通過させたもの100g用意し、これに先の非晶質リン酸カルシウム粉末10gを加えて市販のミキサーで混合して複合粒子を作製し製造例12の複合粒子とした。
【0077】
(製造例13)
製造例2で用いたリン酸カルシウムスラリーを市販の第3リン酸カルシウムスラリー(太平化学社、商品名「TCP−10U」)に置き換えた以外は製造例2と同様にして複合粒子を作製し、製造例13の複合粒子とした。
なお、第3リン酸カルシウムスラリーを吸引濾過後、80℃で乾燥したリン酸カルシウム粉末のX線回折パターンはヒドロキシアパタイトのX線回折パターンと一致していた。
また、この製造例13では、リン酸カルシウムによる被覆層が形成された複合粒子とともにリン酸カルシウムの単独粒子が多く観察された。
【0078】
(製造例14)
前記製造例1の複合粒子は、水性懸濁液を濾過して濾別されたものが棚式の乾燥機で乾燥された後に粉末状に解砕されて製造されたものであるのに対して、水性懸濁液から濾別する工程を実施した後に、該濾別された複合粒子に攪拌を伴う乾燥を実施して製造したこと以外は、製造例1と同様にして複合粒子を作製した。
より詳しくは、水性懸濁液から濾別されて得られた脱水ケーキを、甘糟興産社製の横型真空乾燥機を用いて攪拌しつつ乾燥を実施し、得られた複合粒子の粉末をミキサーにてさらに解砕した後、200メッシュの篩を通過させて製造例14の複合粒子とした。
【0079】
具体的には、横型真空乾燥機の温度(乾燥機のジャケット温度):60℃、回転数:10rpm、周速:7.85m/分とし、乾燥を18時間実施して、初期含水率が25重量%であったものを1.5重量%の含水率となるまで乾燥させた。
【0080】
(製造例15)
前記製造例4の複合粒子は、水性懸濁液を濾過して濾別されたものが棚式の乾燥機で乾燥された後に粉末状に解砕されて製造されたものであるのに対して、水性懸濁液から濾別する工程を実施した後に、該濾別された複合粒子に攪拌を伴う乾燥を実施して製造したこと以外は、製造例4と同様にして複合粒子を作製した。
より詳しくは、水性懸濁液から濾別されて得られた脱水ケーキを、甘糟興産社製の横型真空乾燥機を用いて攪拌しつつ乾燥を実施し、得られた複合粒子の粉末をミキサーにてさらに解砕した後、200メッシュの篩を通過させて製造例15の複合粒子とした。
【0081】
具体的には、横型真空乾燥機の温度(乾燥機のジャケット温度):60℃、回転数:10rpm、周速:7.85m/分とし、乾燥を16時間実施して、初期含水率が23重量%であったものを0.9重量%の含水率となるまで乾燥させた。
【0082】
(評価)
製造例1、2、4、5、11、12、13、14、15の複合粒子に対し走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行うとともに製造例1〜13の複合粒子(複合粒子と、リン酸カルシウムによる単独粒子との混合粒子)に対して光散乱特性、オレイン酸を用いた吸油量測定を行った。
また、後段において詳述するが、製造例1、4、14、15の複合粒子に対しては肌触りに関する官能試験を実施した。
【0083】
(SEM観察)
製造例1、2、4、5、11、12、13、14、15の複合粒子のSEM写真を図2〜図10に示す。なお、写真左は低倍率で複合粒子を撮像したものであり、右は左の写真よりも高倍率で撮像を行ったものである。
この内、製造例1、2、4、5は、エステル類を含有する樹脂粒子が用いられたものである。
これらについての図2〜図5からは、表面に非晶質リン酸カルシウムによる被膜層が均質に形成されていることがわかる。
このことは、非晶質リン酸カルシウム粉末と樹脂粒子とをミキサーで混合した製造例12(図7)との比較によって、明確に把握することができ、この製造例12では、被膜層が形成されておらず、非晶質リン酸カルシウム粉末が表面に僅かに付着するのみで、樹脂粒子の多くが表面に露出してしまっている。
一方で製造例1、2、4、5は、表面に被膜層が形成されており、その形状が、樹脂粒子と同じような球状となっていることから、均質な膜状に被覆層が形成されていることもわかる。
なお、ここでは具体的に例示しないが、製造例3、6〜10の複合粒子においても、製造例1、2、4、5と同様の複合粒子が得られていることがSEM観察によって確認されている。
すなわち、製造例12のような方法では、均質な被覆層を複合粒子を形成させることは困難である一方で、製造例1のような方法によれば、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層の均質性に優れたコアシェル型の複合粒子を容易に得られることがわかる。
【0084】
なお、エステル類を含有しない樹脂粒子を用いた製造例11(図6)については、製造例12ほどではなく、一部には膜状に樹脂粒子を被覆するリン酸カルシウムが見られるものの製造例1、2、4、5(図2〜図5)ほど、一面に非晶質リン酸カルシウムで覆われている様子は見られない。
【0085】
さらに、エステル類を含有する樹脂粒子を用いながらも非晶質リン酸カルシウムではなく結晶質のリン酸カルシウムを表面に析出させた製造例13(図8)においては、表面を全体的にリン酸カルシウムが覆っている様子が観察されてはいるが、製造例1、2、4、5(図2〜図5)のように均質な膜状の被覆層を形成しているのではなく結晶質のリン酸カルシウムからなる細かな粉が樹脂粒子の表面全面に付着して、毛羽立った状態となっている。
これは、エステル類が、非晶質リン酸カルシウムのみならず結晶質のリン酸カルシウムに対しても析出の起点になりやすいものの、結晶質のリン酸カルシウムは非晶質リン酸カルシウムに比べて凝集力が低いために析出したリン酸カルシウムが膜状とならずに粉状となってしまったためであると考えられる。
これらの点については、続いて説明する光散乱性の評価結果によっても裏付けられている。
【0086】
また、図2と図9(製造例1と14)、図4と図10(製造例4と15)とを比較すると、これらは乾燥方法を異ならせただけのものであるが、図2に比べて撮影倍率の高い図9において、あるいは、図4に比べて撮影倍率の高い図10の写真においても、表面の凹凸が見られず、平坦な表面が形成されていることがわかる。
すなわち、攪拌をともなう乾燥工程を実施することで表面の平滑性に優れた複合粒子を得られることがわかる。
【0087】
(光散乱性の評価)
製造例1〜13によって得られた複合粒子、及び、製造例1において作製された樹脂粒子(非晶質リン酸カルシウムを析出させる前のもの)に対して、自動変角光度計(村上色彩研究所社製、型名「GP−200」)を用いて入射角−45度で光を照射した際の反射角−90度から+90度における反射光分布を測定した。
具体的には、白黒隠蔽紙(BYK−Gardner社製、「Test Chart 2803」)に対して、その黒色部分を中心にして一辺5cmの正方形に切断した両面テープを接着させ、この両面テープ貼付け位置にかさ比重測定器(JIS K 5101準拠品)を用いて各製造例で得られた複合粒子を落下させ、この両面テープ上に落下させた複合粒子に圧縮空気を吹き付けて余分な複合粒子を除去して測定試料として反射光分布を測定した。
得られた結果を、+45度における反射光強度を100とした場合の、−25度、0度、+25度におけるそれぞれの反射光強度の比率(反射光強度比)を表1に示す。
この−25度、0度、+25度と、−45度の入射角、基準となる+45度の反射角とは、図11に示すようなもので、入射光が−45度の方向から入射された場合、通常は、+45度の方向に光が反射されることから、この光の反射方向に対して後方側、すなわち、−25度側などにおいて強い反射強度が観測されるほど光散乱性に優れているといえる。
【0088】
【表1】
【0089】
上記に示すように、エステル類を含有しない樹脂粒子を用いた製造例11や、樹脂粒子の表面に殆どリン酸カルシウムが被覆されていない製造例12や、エステル類を含有する樹脂粒子を用いながらも非晶質リン酸カルシウムではなく結晶質のリン酸カルシウムを表面に析出させた製造例13においては、−25度、0度の反射光強度比が低い値となっており、製造例1〜5などで得られた複合粒子に比べてリン酸カルシウムによる樹脂粒子表面の被覆が十分ではないことがわかる。
【0090】
なお、エステル類を含有する樹脂粒子を用いた製造例6でも、−25度、0度の反射光強度比が低い値となって観察されている。
ただし、製造例6においては、リン酸カルシウムの析出の起点となるエステル類が含有された樹脂粒子が用いられていることから、このようなエステル類を含有していない樹脂粒子を用いた製造例11や、凝集力の弱い結晶性のリン酸カルシウムを析出させた製造例13などの場合と違って比較的均質な被覆層が形成されながらも、リン酸カルシウム成分の量が、製造例1〜4や、製造例11〜13の場合における「9.6重量部」に比べて約半分の「5.1重量部」しか水性懸濁液に含有されていないために、製造例1〜4の複合粒子と同等の優れた光散乱性を発揮させるのに十分な被覆層が形成されていないためであると考えられる。
【0091】
なお、言い換えれば、製造例6では、製造例11〜13(リン酸カルシウム添加量:9.6重量部)に比べて、約半分のリン酸カルシウム量でありながらこれらと同等の光散乱性が得られており、本発明の複合粒子製造方法が従来の複合粒子製造方法に比べて効率的であるといえる。
また、この製造例6のようにリン酸カルシウム成分が少ない量でしか水性懸濁液に含有されていない場合でも、リン酸カルシウムの析出時間や水性懸濁液のpH値といった複合粒子の製造条件を精細に調整することで析出量の増大を図って光散乱性の向上を図り得ると考えられるが、その際には、複合粒子の製造作業において高い精度が要求されることになる。
したがって、光散乱性等に優れたコアシェル型の複合粒子を容易に製造させ得る点において、水性懸濁液には、樹脂粒子100重量部に対して5重量部以上の割合でリン酸カルシウム成分を含有させることが好ましく、7重量部以上の割合でリン酸カルシウム成分を水性懸濁液中に含有させることがより好ましく、9.6重量部以上が特に好ましいといえる。
【0092】
(吸油量の評価)
製造例1〜13によって得られた複合粒子、及び、製造例1において作製された樹脂粒子(非晶質リン酸カルシウムを析出させる前のもの)に対して、吸油量を測定した。
測定に際して、油剤として皮脂の主成分であるオレイン酸を用い吸油量を測定した。
測定は、ガラス板上に各製造例の複合粒子を1g精秤した後、容量10mlのビュレットを用いオレイン酸を滴下し、その都度、ステンレス製のヘラで試料をすばやく練ることを繰り返した。
この操作を進め、試料がひとつの塊状になった時点のオレイン酸量を求め、この値を湿潤点(WP)とした。
さらにオレイン酸を滴下・混練を繰り返し試料が流動化し始めた時のオレイン酸量を求め、この値を流動点(FP)とした。
この評価により、流動点と湿潤点との値の差(FP−WP)を複合粒子100gの場合に換算し吸油量の値(ml/100g)とした。
その結果を、上記表1に示す。また、製造例1において作製された樹脂粒子の吸油量を基準値(1.0)とした場合の各製造例の複合粒子の吸油量の比率を算出した。
その値を表1に併せて示す。
【0093】
そして、この表に示されているように、製造例11、12の複合粒子においても優れた吸油性が観察されている。
一方で、製造例13の複合粒子は、低い吸油量しか示していない。
これは、非晶質リン酸カルシウムと結晶質のリン酸カルシウムとの吸油性能の相違に起因しているものと考えられる。
また、製造例11、12の複合粒子においても優れた吸油性が観察されたのは、樹脂粒子の表面に、十分な量の非晶質リン酸カルシウムが担持されているわけではなく、非晶質リン酸カルシウムの単独粒子が多く混在しているためであると考えられる。
すなわち、光散乱性が低い値しか示されていないにもかかわらず吸油量において高い値が示されているのは、樹脂粒子を被覆している非晶質リン酸カルシウムの量が少なく、単独粒子を構成している非晶質リン酸カルシウムが多く存在する証拠であると認められる。
【0094】
なお、水性懸濁液に含有させるリン酸カルシウム成分の量を、製造例1〜4、製造例11などに比べて減量した製造例6、7では、光散乱性の値に相応する吸油量の値が示されており、このことからも、製造例6、7では、リン酸カルシウム成分の多くが樹脂粒子に被覆されており、均質な被覆がなされていることがわかる。
【0095】
(肌触りの評価)
製造例14、15によって得られた複合粒子について、乾燥方法を異ならせただけの製造例1、4の複合粒子と対比して肌触りの官能評価を実施した。
また、非晶質リン酸カルシウムをスプレードライヤーで球状に造粒した平均粒子径11.3μmの粒子(ヒドロキシアパタイト粒子)も合せて評価に供した。
なお、評価は、10名のパネラーに、各粒子を手首に塗り伸ばす行為、及び、親指と人差し指との間に挟んで、これらの指を擦り合わせる行為を実施させて、その感触について官能的評価を加えることによって実施した。
評価項目は、「キシミ感の無さ」、「滑りの良さ」、「肌への付着性」の3項目とした。
このとき、それぞれの項目において、10名中9名以上が「良い」と評価したものを「◎」、10名中7〜8名が「良い」と評価したものを「○」、10名中5〜6名が「良い」と評価したものを「△」、「良い」と評価したパネラーが4名以下の場合を「×」として判定した。
結果を、表2に示す。
また、先の「反射光強度」の測定を製造例14、15の複合粒子に対しても実施した。
得られた結果を、先の製造例1、4の複合粒子の結果と併せて表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
このことからも、攪拌をともなう乾燥工程を実施した製造例14、15の複合粒子は、表面の平滑性に優れており、化粧料に含有させる成分として特に優れていることがわかる。
【0098】
(化粧料の製造事例)
(1)パウダーファンデーションの製造
下記「配合(1)」に示す配合によりパウダーファンデーションを作製した。
<配合(1)>
製造例1の複合粒子:15重量部
セリサイト:21重量部
白雲母:51重量部
赤色酸化鉄:0.6重量部
黄色酸化鉄:1重量部
黒色酸化鉄:0.1重量部
2−エチルヘキサン酸セチル:10重量部
ソルビタンセスキオレエート:1重量部
防腐剤:0.2重量部
香料:0.1重量部
なお、作製に際しては、複合粒子、セリサイト、白雲母、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄及び黒色酸化鉄をヘンシェルミキサーで混合し、これに、2−エチルヘキサン酸セチル、ソルビタンセスキオレエート及び防腐剤を混合溶解したものを加えて均一に混合した。
これに、香料を加えて混合した後、粉砕して篩いに通した。
これを、金皿に圧縮成型してパウダーファンデーションを得た。
【0099】
(2)乳化型ファンデーションの製造
下記「配合(2)」に示す配合により乳化型ファンデーションを作製した。
<配合(2)>
製造例1の複合粒子:20.0重量部
セリサイト:6.0重量部
二酸化チタン:3.0重量部
ステアリン酸:2.0重量部
セチルアルコール:0.3重量部
流動パラフィン:20.0重量部
ポリエチレン(10モル)モノオレイン酸エステル:1.0重量部
ソルビタントリオレイン酸エステル:1.0重量部
プロピレングリコール:5.0重量部
ポリエチレングリコール4000:5.0重量部
トリエタノールアミン:1.0重量部
ビーガム:0.5重量部
精製水:50.2重量部
顔料:適量
香料:適量
防腐剤:適量
なお、作製に際しては、まず、複合粒子、セリサイト、二酸化チタン及び顔料をニーダーで混合した(粉末部)。
そして、この“粉末部”とは別に、精製水にポリエチレングリコール、トリエタノールアミン、プロピレングリコール及びビーガムを加え加熱溶解して溶液を作製した。
この溶液に、先に調整した粉末部を加え、ホモミキサーで粉末を均一に分散させ70℃に保温した(水相成分)。
次いで、他の成分を混合し、加熱溶解して70℃に保温した(油相成分)。
先の水相成分を油相成分に加え、予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化・分散後、かきまぜながら冷却させて乳化型ファンデーションを得た。
【0100】
(3)化粧乳液の製造
下記「配合(3)」に示す配合により化粧乳液を作製した。
<配合(3)>
製造例15の複合粒子:10.0重量部
ステアリン酸:2.5重量部
セチルアルコール:1.5重量部
ワセリン:5.0重量部
流動パラフィン:10.0重量部
ポリエチレン(10モル)モノオレイン酸エステル:2.0重量部
ポリエチレングリコール1500:3.0重量部
トリエタノールアミン:1.0重量部
精製水:64.5重量部
香料:0.5重量部
防腐剤:適量
なお、作製に際しては、まず、ステアリン酸、セチルアルコール、ワセリン、流動パラフィン及びポリエチレンモノオレイン酸エステルを加熱溶解し、これに複合粒子を添加し、ニーダーで混合し、70℃に保温した(油相成分)。
また、精製水にポリエチレングリコール、トリエタノールアミンを加え、加熱溶解し、70℃に保温した(水相成分)。
この水相成分に油相成分を加え、予備乳化を行い、その後ホモミキサーで均一に乳化し、乳化後かきまぜながら30℃まで冷却させて化粧乳液を得た。
【0101】
(4)口紅の製造
下記「配合(4)」に示す配合により口紅を作製した。
<配合(4)>
製造例14の複合粒子:10.0重量部
二酸化チタン:3.0重量部
赤色202号:0.5重量部
赤色206号:2.0重量部
赤色223号:0.05重量部
セレシン:12.0重量部
ミツロウ:8.0重量部
セチルアルコール:5.0重量部
鯨ロウ:4.0重量部
カルバナロウ:1.0重量部
流動パラフィン:21.0重量部
液体ラノリン:20.0重量部
ブチルステアリン酸エステル:11.45重量部
ソルビタンセスキオレイン酸エステル:2.0重量部
香料:適量
酸化防止剤:適量
なお、作製に際しては、まず、複合粒子、二酸化チタン、赤色202号及び赤色206号を流動パラフィンの一部に加えコーラーでよく混合した(顔料部)。
赤色223号をブチルステアリン酸エステルに溶解させた(染料部)。
他の成分を混合し、加熱溶解した後、顔料部と染料部とを加え、ホモミキサーで均一に分散させた。
分散後、型に流し込み、急冷してスチック状の口紅を得た。
【0102】
これらの「パウダーファンデーション」、「乳化型ファンデーション」、「化粧乳液」、及び「口紅」は、化粧崩れを起こしにくく使用感に優れるものであった。
【0103】
以上のようなことからも、本発明によれば、非晶質リン酸カルシウムを容易に表面被覆させることができ、しかも、その脱落を抑制しうるコア粒子として適した樹脂粒子が提供されうることがわかる。
また、本発明によれば、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層の均質性に優れたコアシェル型の複合粒子を製造しうる複合粒子の製造方法が提供されうることがわかる。
さらに、本発明によれば、化粧崩れの抑制効果に優れた化粧料が提供されうることがわかる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル系単量体が重合されてなり、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化1】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化2】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化3】
のいずれかの成分を含有する樹脂粒子であって、
表面に非晶質リン酸カルシウムを被覆させてコアシェル型の複合粒子を形成させるためのコア粒子に用いられることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項2】
ビニル系単量体の前記重合が、ピロリン酸マグネシウム粉末を含む水性媒体中での懸濁重合であり、しかも、該懸濁重合が、前記亜リン酸のジエステルか、前記リン酸の部分エステルかのいずれかを前記ビニル系単量体に混合させた状態で実施されている請求項1記載の樹脂粒子。
【請求項3】
コアシェル型の複合粒子を形成させるべく、コア粒子となる樹脂粒子の表面に、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層を形成させる複合粒子の製造方法であって、
ビニル系単量体が重合されてなり、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化4】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化5】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化6】
のいずれかの成分を含有する樹脂粒子を前記コア粒子として用い、該樹脂粒子とリン酸カルシウム成分とを含む水性懸濁液を作製することによって前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させて前記被覆層を形成させることを特徴とする複合粒子の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂粒子が、前記亜リン酸のジエステルか、前記リン酸の部分エステルかのいずれかを前記ビニル系単量体に混合させた状態で前記重合されたものであり、しかも、該重合が、ピロリン酸マグネシウム粉末を含む水性媒体中での懸濁重合である請求項3記載の複合粒子の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂粒子とカルシウム塩とを含有する樹脂粒子分散液を作製し、該樹脂粒子分散液にリン酸を加えることによって前記水性懸濁液を作製し、しかも、該水性懸濁液のpHが、6.5〜10.5のいずれかの値となるようにリン酸を加えて前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させる請求項3又は4記載の複合粒子の製造方法。
【請求項6】
形成させた複合粒子を前記水性懸濁液から濾別する工程と、該濾別によって得られた前記複合粒子を攪拌しつつ乾燥する工程とを実施する請求項3乃至5のいずれか1項に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項7】
コア粒子となる樹脂粒子の表面に、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層を形成させたコアシェル型の複合粒子が含有されてなる化粧料であって、
前記複合粒子は、ビニル系単量体が重合されてなり、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化7】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化8】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化9】
のいずれかの成分を含有する樹脂粒子が前記コア粒子として用いられており、該樹脂粒子とリン酸カルシウム成分とを含む水性懸濁液を作製することによって前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させて前記被覆層が形成されたものであることを特徴とする化粧料。
【請求項8】
前記樹脂粒子が、前記亜リン酸のジエステルか、前記リン酸の部分エステルかのいずれかを前記ビニル系単量体に混合させた状態で前記重合されたものであり、しかも、該重合が、ピロリン酸マグネシウム粉末を含む水性媒体中での懸濁重合である請求項7記載の化粧料。
【請求項9】
前記複合粒子は、前記樹脂粒子とカルシウム塩とを含有する樹脂粒子分散液が作製された後に該樹脂粒子分散液にリン酸が加えられることによって前記水性懸濁液が作製され、しかも、該水性懸濁液のpHが、6.5〜10.5のいずれかの値となるようにリン酸が加えられて前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムが析出されて形成されたものである請求項7又は8記載の化粧料。
【請求項10】
前記複合粒子は、前記水性懸濁液から濾別された後に攪拌を伴う乾燥が施されて得られたものである請求項7乃至9のいずれか1項に記載の化粧料。
【請求項1】
ビニル系単量体が重合されてなり、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化1】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化2】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化3】
のいずれかの成分を含有する樹脂粒子であって、
表面に非晶質リン酸カルシウムを被覆させてコアシェル型の複合粒子を形成させるためのコア粒子に用いられることを特徴とする樹脂粒子。
【請求項2】
ビニル系単量体の前記重合が、ピロリン酸マグネシウム粉末を含む水性媒体中での懸濁重合であり、しかも、該懸濁重合が、前記亜リン酸のジエステルか、前記リン酸の部分エステルかのいずれかを前記ビニル系単量体に混合させた状態で実施されている請求項1記載の樹脂粒子。
【請求項3】
コアシェル型の複合粒子を形成させるべく、コア粒子となる樹脂粒子の表面に、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層を形成させる複合粒子の製造方法であって、
ビニル系単量体が重合されてなり、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化4】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化5】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化6】
のいずれかの成分を含有する樹脂粒子を前記コア粒子として用い、該樹脂粒子とリン酸カルシウム成分とを含む水性懸濁液を作製することによって前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させて前記被覆層を形成させることを特徴とする複合粒子の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂粒子が、前記亜リン酸のジエステルか、前記リン酸の部分エステルかのいずれかを前記ビニル系単量体に混合させた状態で前記重合されたものであり、しかも、該重合が、ピロリン酸マグネシウム粉末を含む水性媒体中での懸濁重合である請求項3記載の複合粒子の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂粒子とカルシウム塩とを含有する樹脂粒子分散液を作製し、該樹脂粒子分散液にリン酸を加えることによって前記水性懸濁液を作製し、しかも、該水性懸濁液のpHが、6.5〜10.5のいずれかの値となるようにリン酸を加えて前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させる請求項3又は4記載の複合粒子の製造方法。
【請求項6】
形成させた複合粒子を前記水性懸濁液から濾別する工程と、該濾別によって得られた前記複合粒子を攪拌しつつ乾燥する工程とを実施する請求項3乃至5のいずれか1項に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項7】
コア粒子となる樹脂粒子の表面に、非晶質リン酸カルシウムが用いられてなる被覆層を形成させたコアシェル型の複合粒子が含有されてなる化粧料であって、
前記複合粒子は、ビニル系単量体が重合されてなり、下記一般式(1)、で表される亜リン酸のジエステルか、
【化7】
又は、下記一般式(2)又は(3)で表されるリン酸の部分エステルか、
【化8】
(ただし、上記一般式(1)〜(3)における、R1とR2とは、それぞれ独立して、炭素数が1〜14個の、非環式の飽和又は不飽和炭化水素から1個の水素原子を除去した1価基か、又は、下記式(4)で表される基である。)
【化9】
のいずれかの成分を含有する樹脂粒子が前記コア粒子として用いられており、該樹脂粒子とリン酸カルシウム成分とを含む水性懸濁液を作製することによって前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムを析出させて前記被覆層が形成されたものであることを特徴とする化粧料。
【請求項8】
前記樹脂粒子が、前記亜リン酸のジエステルか、前記リン酸の部分エステルかのいずれかを前記ビニル系単量体に混合させた状態で前記重合されたものであり、しかも、該重合が、ピロリン酸マグネシウム粉末を含む水性媒体中での懸濁重合である請求項7記載の化粧料。
【請求項9】
前記複合粒子は、前記樹脂粒子とカルシウム塩とを含有する樹脂粒子分散液が作製された後に該樹脂粒子分散液にリン酸が加えられることによって前記水性懸濁液が作製され、しかも、該水性懸濁液のpHが、6.5〜10.5のいずれかの値となるようにリン酸が加えられて前記樹脂粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムが析出されて形成されたものである請求項7又は8記載の化粧料。
【請求項10】
前記複合粒子は、前記水性懸濁液から濾別された後に攪拌を伴う乾燥が施されて得られたものである請求項7乃至9のいずれか1項に記載の化粧料。
【図1】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−241785(P2010−241785A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213466(P2009−213466)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
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