説明

樹脂組成物、塗料組成物、塗膜、及び塗膜形成方法

【課題】 新規な内部構造を有し、吸音性、遮音性、制振性に優れた成形体及び塗膜を形成する樹脂組成物及び塗料組成物を提供する。
【解決手段】 表面に発泡剤をまぶした無機微粒子と樹脂を含有することを特徴とする樹脂組成物及び塗料組成物で、無機微粒子が、金属、金属酸化物、合金、磁性体微粒子、セラミックス、ガラスから選択され、プラスチゾルや水系エマルジョンの形態で、塗布してから加熱することにより発泡させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐チッピッチング性能及び防音・制振・吸音性に優れ、主として自動車の床裏部やホイルハウス部等に塗布される自動車用塗料に好適な樹脂組成物、塗料組成物、塗膜、及び塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の床裏部やホイルハウス部においては、自動車走行時にタイヤが跳ね上げる小石や砂利の衝突により塗膜が剥がされる、いわゆるチッピング現象が発生する。さらにその小石や砂利の衝突による衝突音、いわゆるスプラッシュ音も発生する。このため従来より、このチッピング現象の防止やスプラッシュ音の低減を図るべく、塗装工程を終えた自動車用鋼板の表面に、ポリ塩化ビニル系のプラスチゾルを使用した防音アンダーコートを塗布、乾燥して、車体保護用塗膜を形成することがおこなわれている。
【0003】
特許文献1には、中空状充填剤を配合した塩化ビニルプラスチゾル組成物が開示され、特許文献2には、加熱により膨張する有機中空充填剤或いは特定量の発泡剤を水系塗料組成物に配合した車両部材用の水系塗料が開示されているが、いずれも100Hz以下の防振・制振を目的にするもので、吸・遮音性に関する教示はない。
【0004】
そこで、特許文献3には、磁性流体内包マイクロカプセルを混合した塗料組成物が開示されている。具体的には、磁性流体内包マイクロカプセルは、外殻及びそれに内包される磁性流体からなり、磁性流体は5〜200nmの平均粒径を有する磁性体微粒子を疎水性有機溶媒に分散させたものであり、外殻が熱可塑性樹脂である。
【0005】
又、特許文献4には、磁性流体内包カプセルを含有するプラスチックシートの少なくとも片面に繊維強化プラスチックが一体成形された吸遮音複合プラスチックパネルの製造方法が開示されている。具体的には、繊維強化プラスチック成形材料に磁性流体内包カプセルを含有するプラスチツクシートを積層、載置し、プレスにより硬化成形することを提案している。
【特許文献1】特開平4−145174号公報
【特許文献2】特開平7−145331号公報
【特許文献3】特許第3357070号公報
【特許文献4】特開平9−248835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に開示されたように、マイクロカプセルを塗料中に混入すると、混練時に外殻のカプセルが破損してしまい、十分な性能が得られない、という問題点があった。
【0007】
又、特許文献4に開示された磁性流体内包カプセルを含有した吸遮音複合プラスチックパネルの製造方法を、自動車等の製造ラインに適用すると、このようなプレス成形物を設置することは取り付け部位が限定されるばかりでなく、取り付け工程も最終組付け工程に限定され、実用的でない、という問題点がある。
【0008】
更に、自動車では、さまざまな複雑・曲面形状部位を有し、その部分に防音効果が要求される場合が多い。かつ、スペース上制約が多く、加えて、軽量化も図らなければならない。その意味で、積層・プレス成形は非常に不利である。
【0009】
そこで、本発明は新規な内部構造を有し、吸音性、遮音性及び制振性に優れたスラッシュ成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定組成の樹脂組成物、塗料組成物により上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、第1に、本発明は樹脂組成物の発明であり、表面に発泡剤をまぶした無機微粒子を含有することを特徴とする。該発泡体は樹脂組成物加熱して成形する工程で発泡し、生成した発泡セルの内部に該無機微粒子を閉じ込めて、鈴型セルとなる。ここで、鈴型セルとは、内部に多数の空孔(セル)を有し、かつ、その空孔(セル)中に独立に運動しうる粒子を有する鈴状構造を有するセルのことである。本発明の樹脂組成物を成形した樹脂成形物は、音エネルギーや振動エネルギーが、空孔(セル)中の無機微粒子の運動エネルギーに変換されるので、吸音性、遮音性及び制振性に優れている。
【0012】
第2に、本発明は塗料組成物の発明であり、表面に発泡剤をまぶした無機微粒子を含有することを特徴とする。該発泡体は塗料組成物加熱する工程で発泡し、生成した発泡セルの内部に該無機微粒子を閉じ込めて、鈴型セルとなる。ここで、鈴型セルとは、内部に多数の空孔(セル)を有し、かつ、その空孔(セル)中に独立に運動しうる粒子を有する鈴状構造を有するセルのことである。本発明の塗料組成物を成膜した塗膜は、音エネルギーや振動エネルギーが、空孔(セル)中の無機微粒子の運動エネルギーに変換されるので、吸音性、遮音性及び制振性に優れている。
【0013】
本発明で用いられる前記無機微粒子としては、比重が所定以上に大きいものであれば特に限定されない。具体的には、金属、金属酸化物、合金、磁性体微粒子、セラミックス、ガラスから選択される1種以上が好ましく例示される。
【0014】
優れた吸音性、遮音性及び制振性を発揮するために、鈴型セル中の無機微粒子の平均粒径は5〜500nmが好ましく、その比重は1.0〜5.0であることが好ましい。
【0015】
一方、鈴型セルの外殻となる空孔セルの平均粒径は5〜500μmであることが上記鈴型セル中の無機微粒子の平均粒径とのバランス上好ましい。
【0016】
本発明の塗料組成物の形態は特に限定されないが、プラスチゾル塗料や水系エマルジョン塗料であることが好ましい。つまり、樹脂パウダー及び可塑剤を主成分とするプラスチゾルであることや、水溶性樹脂を主成分とする水系エマルジョンであることが好ましい。
【0017】
第3に、本発明は、塗膜の発明であり、塗膜内部に空孔を有し該空孔中に該空孔(セル)と独立に運動しうる無機微粒子を内包する鈴型セルを含有している。本発明の塗膜は、吸音性、遮音性及び制振性に優れている。
【0018】
本発明の塗膜は、塗膜中の空孔(セル)の一部または全部が連続気泡を形成している場合には、特に吸音性、遮音性及び制振性に優れていて好ましい。特に吸音性、遮音性及び制振性が優れる理由は必ずしも明らかではないが、独立した気泡の場合と比べて、塗膜に入った音が連続気泡中を減衰しながら通過して行くからと考えられる。
【0019】
本発明において、鈴型セルの詳細は限定されないが、例えば、鈴型セル中の無機微粒子の平均粒径が5〜500nmであり、かつ比重が1.0〜5.0であるものが、吸音性、遮音性及び制振性に優れていて好ましい。また、鈴型セルを形成する空孔(セル)の平均粒径が5〜500μmであることが好ましい。
【0020】
第4に、本発明は、塗膜形成方法の発明であり、表面に発泡剤をまぶした無機微粒子、及び樹脂を塗膜成分とする塗料組成物を対象物に塗布する工程と、得られた塗布物を加熱し該発泡剤を発泡させるとともに塗膜を形成することによって、塗膜内部に空孔を有し該空孔中に該空孔(セル)と独立に運動しうる無機微粒子を内包する鈴型セルを含有した塗膜を形成する。
【0021】
ここで、上記塗布物を加熱する工程は、塗膜を乾燥する工程を兼ねていること場合は、塗膜形成工程上好ましい。
【0022】
本発明の塗料組成物の用途は特に限定されず、内部に多数の空孔を有し、かつ、その空孔中に基体と独立に運動しうる粒子を有する鈴状構造を有する鈴型セルが塗膜中に形成されることによって発揮される優れた吸音性、遮音性及び制振性を生かして各種用途に用いられる。例えば、自動車用塗料、航空機用塗料、電車用塗料、家電製品匡体用塗料、建築物の外壁用塗料、内張材用塗料、屋根材用塗料、或いは高速道路、鉄道路線における防音壁用塗料等に好適に用いられる。
【0023】
特に、第5に、本発明は、上記塗料組成物からなる防音・制振・吸音塗料であり、第6に、本発明は、上記塗料組成物からなる自動車用塗料である。第7に、本発明は、上記塗膜を有する自動車である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の樹脂組成物から成形される樹脂成形体、及び本発明の塗料組成物から形成される塗膜は、内部に多数の空孔を有し、かつ、その空孔中に基体と独立に運動しうる無機微粒子を有する鈴状構造を有する鈴型セルを有することによって、振動エネルギーが効率よく吸収され、優れた吸音性、遮音性及び制振性が発揮される。この塗料組成物から形成される塗膜は、自動車用塗料、建築用塗料内装用塗料、建築用外装用塗料等の各種用途に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1に、本発明の無機微粒子を内包する鈴型セルを含有した塗膜形成を模式的に示す。表面に発泡剤をまぶした無機微粒子、及び樹脂パウダーを塗膜成分とする塗料組成物を対象物に塗布した後、図1に示すように、得られた塗布物を加熱し該発泡剤を発泡させるとともに塗膜を形成すると、塗膜内部に空孔を有し該空孔中に該空孔(セル)と独立に運動しうる無機微粒子を内包する鈴型セルを含有した塗膜が形成される。鈴型セル中の基体と独立に運動しうる無機微粒子が、振動エネルギーを効率よく吸収して優れた吸音性、遮音性、及び制振性が発揮されるものと考えられる。
【0026】
図2に、自動車の車体底部、特にホイールハウスに本発明の無機微粒子を内包する鈴型セルを含有した塗膜を形成した場合を模式的に示す。車体を構成する鋼板に電着層(ED)を介して本発明の塗膜を形成する。プラスチゾル塗料は加熱工程を経て内部に無機微粒子を内包する鈴型セルを含有した塗膜となる。図1で説明したように、鈴型セル中の基体と独立に運動しうる無機微粒子が、振動エネルギーを効率よく吸収して優れた吸音性、遮音性、及び制振性が発揮される。
【0027】
本発明において、無機微粒子が空孔(セル)に内包される樹脂組成物の樹脂材質としては特に制限されない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ガラス強化ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性ポリマー、フッ素樹脂、ポリアレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアミドビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール等の熱硬化性樹脂、及びこれらを2種以上ブレンドした材料を用いることが可能である。
【0028】
本発明において、空孔(セル)に内包される無機微粒子の材質としては特に制限されないが、金属酸化物微粒子、セラミックス微粒子、金属微粒子、磁性体微粒子などが用いられる。
【0029】
通常、塗料には、樹脂が必須成分として含まれ、場合により、顔料、溶剤、水、各種添加剤等の1種以上が含まれている。これらの成分の含有割合は、塗料の要求特性に応じて適宜選定されるものであり、種々の割合である。その樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、タルク、クレー等の無機顔料、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系等の有機顔料などが挙げられ、溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエステル系溶剤等が挙げられる。
【0030】
エマルジョン塗料に用いられる水溶性樹脂としては、酸価が20〜70mgKOH/gで、水酸基価が20〜160mgKOH/gの水溶性樹脂が好ましく、具体的には、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂が特に好ましい。水溶性樹脂として好適に用いられるポリエステル樹脂は、多価アルコール及び多塩基酸を樹脂原料として用いて得られる、酸価が20〜70mgKOH/g、好ましくは25〜60mgKOH/g、特に好ましくは30〜55mgKOH/gで、水酸基価が20〜160mgKOH/g、好ましくは80〜130mgKOH/gの水溶性樹脂である。
【0031】
水溶性ポリエステル樹脂は、その樹脂原料として、通常のポリエステル樹脂を構成する多価アルコール、多塩基酸及び必要に応じ油脂類を用い、公知のエステル化反応によって容易に得ることができる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、ジペンタエリトリット等が挙げられる。これらの多価アルコールは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。該多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水トリメリット酸等を挙げることができる。これらの多塩基酸は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。油脂類としては、例えば、大豆油、椰子油、サフラワー油、ぬか油、ひまし油、きり油、あまに油、トール油、及びこれから得られる脂肪酸を挙げることができる。
【0032】
水溶性樹脂として好適に用いられるアクリル樹脂は、ビニル系モノマーを樹脂原料として用いて得られる、酸価が20〜70mgKOH/g、好ましくは22〜50mgKOH/g、特に好ましくは23〜40mgKOH/gで、水酸基価が20〜160mgKOH/g、好ましくは80〜150mgKOH/gの水溶性樹脂である。
【0033】
水溶性アクリル樹脂は、その樹脂原料として、通常のアクリル樹脂を構成するビニル系モノマーを用いて、有機過酸化物を開始剤とする公知の溶液重合法等によって、容易に得ることができる。ビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸類、アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、シクロヘキシル、ステアリル等のアルキルエステル類、アクリル酸またはメタクリル酸の2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、分子量1000以下のポリエチレングリコール等のヒドロキシアルキルエステル類、アクリル酸またはメタクリル酸のアミド類またはそれらのアルキルエーテル類、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
更に、エポキシ基を持つグリシジル(メタ)アクリレートや第3級アミノ基を含むモノマー類、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。この他、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン等の芳香族モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸、またはフマル酸のモノまたはジアルキルエステル類等が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、アシルパーオキシド類(例えば、過酸化ベンゾイル)、アルキルヒドロパーオキシド類(例えば、t−ブチルヒドロパーオキシド、p−メタンヒドロパーオキシド)、ジアルキルパーオキシド類(例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド)等が挙げられる。
【0035】
水溶性樹脂として好適に用いられるポリウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートを原料として用いて得られる、酸価が20〜70mgKOH/g、好ましくは22〜50mgKOH/g、特に好ましくは23〜35mgKOH/gで、水酸基価が20〜160mgKOH/g、好ましくは25〜50mgKOH/gの水溶性樹脂である。
【0036】
水溶性ポリウレタン樹脂は、その樹脂原料として、通常のポリウレタン樹脂を構成するポリオールとポリイソシアネートを用いて、付加重合することによって、容易に得ることができる。
【0037】
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等が挙げられる。また、ポリイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビスフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
水溶性のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等は、通常塩基性物質で中和することにより水溶性が付与される。この際、塩基性物質は、水溶性樹脂に含まれている酸性基の40モル%以上を中和するのに必要な量を用いることが好ましい。上記の塩基性物質としては、例えば、アンモニア、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モルホリン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0039】
水溶性樹脂の数平均分子量は特に制限ないが、通常500〜50000が好ましく、800〜25000がより好ましく、1000〜12000が特に好ましい。
【0040】
本発明に用いられる発泡剤は、防音・制振・吸音性能をより向上させるために必要であり、加熱によりガスを発生するタイプの発泡剤を用いることができる。この発生したガスにより、塗膜の内部に気泡を形成し、気泡内部に無機微粒子を内包させて、塗膜に小石等が衝突する時に発生する衝撃音を減少させる。具体的には、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド等のアゾ系発泡剤、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ系発泡剤、ベンゼンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン系発泡剤等を使用することができる。また、これらの発泡剤の分解温度を低下させて、ガスの発生を促進するために発泡助剤を用いることができ、例えば酸化亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛や、ナトリウム系、カリウム系化合物、尿素等が使用できる。
【0041】
本発明の塗料組成物には、さらに、可塑剤、及び充填剤を含有させることができる。可塑剤としては、選択した熱可塑性樹脂に適した一般的な可塑剤を用いることができる。例えば、フタル酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、二価アルコールエステル系等を挙げることができる。また、芳香族環、ナフテン環、パラフィン鎖の三種を組合せた鉱物油系軟化剤や、液状または低分子量の合成樹脂軟化剤等が挙げられる。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、クレー、タルク等の粉状充填剤、マイカ、グラファイト等のリン片状充填剤、針状カルシウムメタシリケート、ゾノライト、チタン酸カリ、ロックウール短繊維、ガラスファイバー短繊維、アルミニウムシリケート、カーボンファイバー短繊維、アラミドファイバー短繊維等の針状充填剤、ガラスバルーン、シリカバルーン、炭素無機中空球等の無機中空状充填剤、及び塩化ビニリデン、アクリロニトリル等の有機合成樹脂からなるプラスチックバルーン等の有機中空状充填剤などが挙げられる。
【0042】
可塑剤の含有量は、塗料組成物の塗膜成分量に対して、1〜10質量%が好ましく、3〜5質量%が特に好ましい。1質量%未満では、効果が得られないことがある。10質量%を超えると、軟化し優れた塗膜物性が得られないことがある。充填剤の含有量は、塗料組成物の塗膜成分量に対して、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%が特に好ましい。5質量%未満では、硬度が低下することがある。50質量%を超えると、耐チッピング性が低下することがある。
【0043】
また、本発明の塗料組成物には、上記成分の他に、着色剤、塗装作業性を改善するための高沸点有機溶剤や、塗膜の接着性を高めるための接着剤を添加することができる。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン等が挙げられる。また、接着剤としては、例えば、ポリアミン、ポリアミド、ポリオール等から選ばれる1種以上の樹脂と、オキシム、ラクタム等の適当なブロック剤により末端のNCO基がブロックされたポリイシソアネートプレポリマーとの混合物が挙げられる。また、熱可塑性樹脂に有効な老化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、分解剤等の、公知の各種添加剤も含有させることができる。
【0044】
本発明の塗料組成物の塗装方法は、それぞれの被塗物に応じてスプレー塗装、刷毛塗り、ロールコーター塗装、バーコーター塗装等、任意の塗装方法を採用することができる。ただし、自動車車体下部塗装の目的で、短時間に膜厚を得るにはエアレススプレー塗装が適している。本発明の塗料組成物は、単層に塗布してもよいし、2層以上重ね塗りしてもよい。塗膜の焼付は、適宜選定すればよいが、焼付温度は通常120〜180℃であればよく、焼付時間は通常1分〜2時間であればよい。形成される塗膜の膜厚は、特に制限ないが、通常1〜1000μmであればよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでない。
【0046】
[実施例1]
塩化ビニルゾルまたはアクリルゾルに、0.5〜5.0μmの平均粒径と比重13〜15を有するタングステン粒子にADCA(アゾジカルボンアミド)系発泡剤をまぶし、後述の方法でサンプル作成した。
【0047】
[実施例2]
アクリルエマルジョン、SBRエマルジョン等の水系エマルジョン材料に、0.5〜5.0μmの平均粒径と比重13〜15を有するタングステン粒子にADCA(アゾジカルボンアミド)系発泡剤をまぶし、後述の方法でサンプル作成した。
【0048】
[比較例1]
上記発泡剤をまぶすことなく、別個に、上記塩化ビニルゾルまたはアクリルソ"を後述の方法でサンプル作成した。
【0049】
[比較例2]
上記発泡剤をまぶすことなく、別個に、アクリルエマルジョン、SBRエマルジョン等の水系エマルジョン材料を後述の方法でサンプル作成した。
【0050】
[評価結果]
実施例及び比較例のサンプルについて、下記の方法にて吸音性、遮音性、制振性を調べた。評価法は以下の通りである。結果を下記表1に示す。
制振性:片持ち梁法にける損失係数
(10×220mmの鋼板に塗布し、130℃焼付け)
吸音性:2マイク吸音管における吸音率
(離型紙に塗布し、130℃焼付け後剥離し、φ100−φ29にカット)
遮音性:遮音測定機における透過損失
(離型紙に塗布し、130℃焼付け後剥離し、φ93にカット)
【0051】
評価基準として、「実施例1」は「比較例1」に対し、「実施例2」は「比較例2」に対し下記の基準で評価した。
◎:51%以上効果アップ
○:21〜50%以上効果アップ
△:0〜20%以上効果アップ
×:効果ダウン
【0052】
【表1】

【0053】
表1の結果より、鈴型セルを内包する本発明の塗料組成物は、鈴型セルを内包しない場合と比べて、吸音性、遮音性、制振性が格段に向上することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
従来の制振材料は、質量則に則って材料自体を重くするというものであったのに対し、本発明の樹脂組成物及び塗料組成物は、材料自体を重くすることなく、優れた吸音性、遮音性及び制振性が発揮される。これらの特性を生かして、この樹脂組成物及び塗料組成物は自動車用塗料、建築用内装用塗料、建築用外装用塗料、自動車用接着剤、建築用接着剤、自動車用構造材料、建築用構造材料等の各種用途に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の無機微粒子を内包する鈴型セルを含有した塗膜形成を模式的に示す。
【図2】自動車の車体底部、特にホイールハウスに本発明の無機微粒子を内包する鈴型セルを含有した塗膜を形成した場合を模式的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に発泡剤をまぶした無機微粒子を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機微粒子が、金属、金属酸化物、合金、磁性体微粒子、セラミックス、ガラスから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記鈴型セル中の無機微粒子の平均粒径が5〜500nmであり、かつ比重が1.0〜5.0であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
表面に発泡剤をまぶした無機微粒子を含有することを特徴とする塗料組成物。
【請求項5】
前記無機微粒子が、金属、金属酸化物、合金、磁性体微粒子、セラミックス、ガラスから選択される1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記鈴型セル中の無機微粒子の平均粒径が5〜500nmであり、かつ比重が1.0〜5.0であることを特徴とする請求項4または5に記載の塗料組成物。
【請求項7】
樹脂パウダー及び可塑剤を主成分とするプラスチゾルであることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項8】
水溶性樹脂を主成分とする水系エマルジョンであることを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項9】
塗膜内部に空孔を有し該空孔中に該空孔(セル)と独立に運動しうる無機微粒子を内包する鈴型セルを含有したことを特徴とする塗膜。
【請求項10】
前記塗膜中の空孔(セル)の一部または全部が連続気泡を形成していることを特徴とする請求項9に記載の塗膜。
【請求項11】
前記鈴型セル中の無機微粒子の平均粒径が5〜500nmであり、かつ比重が1.0〜5.0であることを特徴とする請求項9または10に記載の塗料組成物。
【請求項12】
前記鈴型セルの外殻となる空孔(セル)の平均粒径が5〜500μmであることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項13】
表面に発泡剤をまぶした無機微粒子、及び樹脂を塗膜成分とする塗料組成物を対象物に塗布する工程と、得られた塗布物を加熱し該発泡剤を発泡させるとともに塗膜を形成することによって、塗膜内部に空孔を有し該空孔中に該空孔(セル)と独立に運動しうる無機微粒子を内包する鈴型セルを含有した塗膜形成方法。
【請求項14】
前記塗布物を加熱する工程が乾燥工程を兼ねていることを特徴とする請求項13に記載の塗膜形成方法。
【請求項15】
請求項4乃至8のいずれかに記載の塗料組成物からなる防音・制振・吸音塗料。
【請求項16】
請求項4乃至8のいずれかに記載の塗料組成物からなる自動車用塗料。
【請求項17】
請求項9または10に記載の塗膜を有する自動車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−335918(P2006−335918A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163565(P2005−163565)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】