説明

樹脂組成物及びその硬化物を用いた光学部材

【課題】 透明性が高く、耐熱性に優れ、かつ曲げ強度が十分に高い硬化物を形成することができる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物と(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物とを、(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物におけるエポキシ基の総数が(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物におけるカルボキシル基の総数よりも過剰となるように共重合させてなるエポキシ基残存プレポリマーと、(B)硬化剤と、(C)硬化促進剤と、を含有してなる樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びその硬化物を用いた光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部材は、透明基板、レンズ、接着剤又は光導波路として用いられる部材や、発光ダイオード(LED)、フォトトランジスタ、フォトダイオード、固体撮像素子等の光半導体素子における透明部材として用いられる。
【0003】
従来、光学部材用樹脂としてアクリル系樹脂、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)などが多く用いられている。PMMAをはじめとするアクリル系樹脂の硬化物は、透明性や耐光性に優れるものの、硬化収縮が大きいこと、耐熱性が十分ではないことなどの問題があった。
【0004】
一方、光・電子機器分野で利用される光学部材には、電子基板等への実装プロセスや高温動作下での耐熱性や優れた機械特性が求められる。従来、比較的これらの特性に優れたエポキシ系樹脂の硬化物が光学部材としてよく用いられている。一般にエポキシ樹脂の硬化物は可視光域での透明性は高いものの、紫外光から近紫外光域での十分な透明性を示さない場合が多い。ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の芳香族環を水素化した脂環式エポキシと酸無水物とを用いたエポキシ樹脂を用いることにより、紫外光から近紫外光域での透明性が比較的高い硬化物が得られるものの、熱や光によって着色し易い等の問題点がある。これに対して、例えば、特許文献1及び特許文献2には、脂環式エポキシに含まれる着色原因の一つである不純物を低減する方法が開示されている。
【0005】
また、近年、透明性、耐熱性及び耐光性に優れるシリコーン樹脂の硬化物を光学部材用途へと適用することが検討されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−171439号公報
【特許文献2】特開2004−75894号公報
【特許文献3】特開2004−2810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1、2の方法を用いた場合であっても、熱や光による着色を十分に防ぐことは難しく、更なる耐熱性及び耐光性の向上が求められている。更には、近年、光・電子機器分野において高強度のレーザ光、青色光や近紫外光の利用が広がっており、これらの光を受けたときの透過率の低下を抑制するため、従来以上に透明性、耐熱性、耐光性に優れた樹脂が求められている。
【0008】
一方、シリコーン樹脂は、一般に取扱いが難しく、硬化物の線膨張係数が大きいことから、用途によっては光学部材としての使用が困難である。また、シリコーン樹脂は他の材料との接着性や相溶性が小さいという問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、透明性が高く、耐熱性に優れ、かつ曲げ強度が十分に高い硬化物を形成することができる樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、上記樹脂組成物の硬化物からなり、光学的透明性が高く、耐熱性に優れ、かつ曲げ強度が十分に高い光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、(A)(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物と(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物とを、(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物におけるエポキシ基の総数が(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物におけるカルボキシル基の総数よりも過剰となるように共重合させてなるエポキシ基残存プレポリマーと、(B)硬化剤と、(C)硬化促進剤と、を含有してなる樹脂組成物を提供する。
【0011】
上記樹脂組成物は、上記構成を有することにより、透明性が高く、耐熱性に優れ、かつ曲げ強度が十分に高い硬化物を形成することができる。
【0012】
また、上記樹脂組成物は、(A)エポキシ基残存プレポリマーがシロキサン構造(Si−O−Si)を含有しているため、耐熱性及び耐光性に優れた硬化物を形成可能である。一般に、シリコーン樹脂等、シロキサン構造を含有する化合物は有機物との相溶性が得られにくい傾向があるが、本発明の(A)エポキシ基残存プレポリマーは、あらかじめシロキサン構造含有ジエポキシ化合物とジカルボン酸化合物とをプレポリマー化しているため、上記樹脂組成物中の有機物成分との十分な相溶性を得ることができる。また、これにより透明性がより高い硬化物を形成することができる。
【0013】
上記樹脂組成物において、(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物は、下記式(1)又は式(2)で表される化合物であることが好ましい。ここで、式(1)中、nは0〜20の整数である。また、Rは炭素数1〜9のアルキレン基を示す。
【化1】


【化2】

【0014】
(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物を、上記式(1)又は式(2)で表される化合物とすることによって、耐熱性及び耐光性により優れた硬化物を形成可能な樹脂組成物とすることができる。
【0015】
(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物は、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【化3】

【0016】
(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物を、上記式(3)で表される化合物とすることによって、耐熱性により優れ、曲げ強度がより高い硬化物を形成可能な樹脂組成物とすることができる。
【0017】
また、上記樹脂組成物において、(B)硬化剤は、酸無水物系硬化剤であることが好ましい。(B)硬化剤を、酸無水物系硬化剤とすることによって、より一層耐熱性に優れた硬化物を形成可能な樹脂組成物とすることができる。
【0018】
上記樹脂組成物中の、(A)エポキシ基残存プレポリマーは、(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物と(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物とを、(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物におけるエポキシ基の総数の(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物におけるカルボキシル基の総数に対する比が、1.5〜9.5となるように共重合させてなるものであることが好ましい。上記比を1.5〜9.5の範囲内とすることで、透明性及び機械特性により優れた硬化物を形成可能な樹脂組成物とすることができる。
【0019】
本発明は、また、上記樹脂組成物の硬化物からなる光学部材を提供する。本発明の光学部材は、上記樹脂組成物の硬化物からなるため、光学的透明性が高く、耐熱性に優れ、かつ曲げ強度が十分に高いものである。また、耐熱性に優れることから、実装信頼性が高い光学部材とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、透明性が高く、耐熱性に優れ、かつ曲げ強度が十分に高い硬化物を形成可能な樹脂組成物を提供することができる。本発明の樹脂組成物は、その硬化物の光学的透明性が高く、高温保管後の光透過率の低下が少なく、曲げ強度などの機械特性に優れることから、光半導体素子における封止用樹脂等、電子材料用途の光学素子における光学部材形成用樹脂として好適に用いることができる。
【0021】
また、本発明によれば、上記樹脂組成物の硬化物からなり、光学的透明性が高く、耐熱性に優れ、かつ曲げ強度が十分に高い光学部材を提供することができる。本発明の光学部材は熱による光透過率の低下が少ないことから、本発明の光学部材を用いることにより、光学素子の寿命や信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の光学部材を用いた表面実装型LEDパッケージの具体例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ基残存プレポリマーと、(B)硬化剤と、(C)硬化促進剤とを含有してなる樹脂組成物である。
【0025】
ここで、(A)エポキシ基残存プレポリマーは、(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物(以下、「(a)シロキサン構造含有ジエポキシ化合物」又は単に「(a)成分」ともいう。)におけるエポキシ基の総数が(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物(以下、「(b)ジカルボン酸化合物」又は単に「(b)成分」ともいう。)におけるカルボキシル基の総数よりも過剰となるように、(a)シロキサン構造含有ジエポキシ化合物と(b)ジカルボン酸化合物とを共重合させてなるものである。
【0026】
(a)成分の具体例としては、例えば、上記式(1)で表される化合物、上記式(2)で表される化合物、COATOSIL2810(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、TSL9906(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が挙げられる。これらの中でも、上記式(1)で表される化合物、上記式(2)で表される化合物が(a)成分としてより好ましい。上記式(1)で表される化合物として、例えば、KF−105(信越化学社製、官能基等量490)、X−22−163A(信越化学社製、官能基等量950)、X−22−163B(信越化学社製、官能基等量1750)、X−22−163C(信越化学社製、官能基等量2700)等が挙げられる。これらの中でも、有機物との相溶性に優れることから、KF−105がより好ましい。上記式(2)で表される化合物は、例えば、XC96−C4658(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)が挙げられる。
【0027】
(b)ジカルボン酸化合物の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物の硬化物が、耐熱性と機械特性により優れたものとなることから、上記式(3)で表される1,4−シクロヘキサンジカルボン酸がより好ましい。
【0028】
(A)エポキシ基残存プレポリマーは、バルク重合法や溶液重合法などの公知の方法により、酸−エポキシ反応触媒の存在下で(a)成分と(b)成分とを共重合させて製造することができる。なお、(a)成分におけるエポキシ基の総数が(b)成分におけるカルボキシル基の総数よりも過剰となるように、反応容器中に(a)成分及び(b)成分を仕込み、反応させることにより、樹脂組成物が硬化物を形成可能な程度に(A)エポキシ基残存プレポリマー分子中に未反応のエポキシ基を残存させることができる。酸−エポキシ反応触媒としては、例えば、塩基性触媒を用いることができ、塩基性触媒の具体例としては、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、リン系触媒、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。(A)エポキシ基残存プレポリマーは、例えば、反応容器中に(a)シロキサン構造含有ジエポキシ化合物及び(b)ジカルボン酸化合物を仕込み、塩基性触媒の存在下、窒素ガス雰囲気下で150℃にて、3〜8時間反応させることにより製造することができる。
【0029】
(A)エポキシ基残存プレポリマーの製造において、(a)成分と(b)成分とを共重合させる際の、(a)成分におけるエポキシ基の総数の(b)成分におけるカルボキシル基の総数に対する比は、1.3〜10の範囲であることが好ましく、1.5〜9.5の範囲であることがより好ましい。この比が1.3未満になると、樹脂組成物の硬化物の硬度が低下する傾向にあり、一方、10を超えると硬化物の透明性が低下する傾向にある。
【0030】
(A)エポキシ基残存プレポリマーの重量平均分子量は、5,000〜150,000であることが好ましく、7,000〜130,000であることがより好ましい。(A)エポキシ基残存プレポリマーの重量平均分子量が5,000未満であると、樹脂組成物の硬化物の透明性が低下する傾向にあり、一方、150,000を超えると、(A)エポキシ基残存プレポリマーの(B)硬化剤への溶解度が低下する傾向にある。
【0031】
なお、本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により、標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定したものであり、測定条件は次のとおりである。
〈GPC条件〉
使用機器:日立L−6000型〔(株)日立製作所〕
カラム :ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440(計3本)〔いずれも日立化成工業(株)製商品名〕
溶離液 :テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量 :1.75ml/min.
検出器 :L−3300RI〔(株)日立製作所〕
【0032】
(B)硬化剤は、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより優れたものとなるため、酸無水物系硬化剤とするのが好ましい。酸無水物系硬化剤の例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸が挙げられ、その中でも上述の耐熱性の観点からメチルヘキサヒドロ無水フタル酸がより好ましい。
【0033】
(C)硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールなどの3級アミン類、2−エチル−4メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフェニルボレートなどのリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類、及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、あるいは、併用してもよい。これらの硬化促進剤の中では、3級アミン類、イミダゾール類、リン化合物を用いることが好ましい。
【0034】
上記樹脂組成物における(A)エポキシ基残存プレポリマーと(B)硬化剤との混合比は、(A)エポキシ基残存プレポリマー中のエポキシ基1当量に対して、(B)硬化剤中のエポキシ基と反応可能な活性基が、0.5〜1.5当量であることが好ましく、0.7〜1.2当量であることがより好ましい。(B)硬化剤として酸無水物系硬化剤を用いる場合には、上記エポキシ基と反応可能な活性基とは、酸無水物基を意味する。
【0035】
(B)硬化剤中のエポキシ基と反応可能な活性基が0.5当量未満であると、樹脂組成物を硬化させる際に、硬化速度が低下する傾向にあり、また、得られる硬化物が脆くなる傾向にある。一方、1.5当量を超えると、得られる硬化物が熱により着色しやすくなる傾向にある。
【0036】
上記樹脂組成物における(C)硬化促進剤の含有率は、(A)エポキシ基残存プレポリマーと(B)硬化剤との合計量100質量部に対して、0.01〜8.0質量部であることが好ましく、0.1〜3.0質量部であることがより好ましい。(C)硬化促進剤の含有率が、0.01質量部未満では、硬化を促進する効果が得られにい傾向にあり、また、8.0質量部を超えると、得られる硬化物の透明性が低下する傾向にある。
【0037】
上記樹脂組成物には、上述した成分以外にも、フェノール系やリン系の酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤、重合禁止剤等を添加することができる。また、成形性の観点から離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0038】
紫外線吸収剤の中でもヒンダートアミン系光安定剤(HALS)は、硬化物の耐光性が向上するため、より好ましい。ヒンダートアミン系光安定剤としては、例えば、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(ADEKA社製;商品名アデカスタブ LA−52)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(ADEKA社製;商品名アデカスタブ LA−57)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル、及びトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(ADEKA社製;商品名アデカスタブ LA−62)、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジノールとトリデシルアルコールと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸との縮合物(ADEKA社製;商品名アデカスタブ LA−67)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)−ジエタノールとの縮合物(ADEKA社製;商品名アデカスタブ LA−68LD)、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(ADEKA社製;商品名アデカスタブ LA−77Y)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート(ADEKA社製;商品名アデカスタブ LA−82)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(ADEKA社製;商品名アデカスタブ LA−87)、高分子量ヒンダードアミン系光安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名CHIMASSORB 119FL、CHIMASSORB 2020FDL)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名CHIMASSORB 944FDL)、高分子立体障害型アミン誘導体(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN 622LD)、(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ブチルマロネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN144)、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN 765)等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、耐熱性及び耐光性を著しく向上させるものとして、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(ADEKA社製;商品名アデカスタブ LA−52)、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(ADEKA社製;商品名アデカスタブ LA−77Y)、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN 765)がより好ましい。
【0039】
次に、本発明の光学部材について説明する。本発明の光学部材は、上述した本発明の樹脂組成物を硬化した硬化物からなるものである。そのため、光学的透明性が高く、耐熱性に優れ、かつ曲げ強度が十分に高いものである。
【0040】
光学部材としては、例えば、透明基板、レンズ、接着剤、光導波路、発光ダイオード(LED)、フォトトランジスタ、フォトダイオード、固体撮像素子等の光半導体素子用途の光学部材が挙げられる。
【0041】
本発明の樹脂組成物を用いた光学部材の製造方法として、例えば、樹脂組成物の溶液を所望の部分に注型、ポッティング、又は金型へ流し込み、加熱によって硬化させる方法が挙げられる。また、硬化阻害や着色防止のため、あらかじめ窒素バブリングによって樹脂組成物中の酸素濃度を低減することが望ましい。
【0042】
加熱により硬化させる際の温度、反応時間に関しては、樹脂組成物中の(B)硬化剤の種類、組み合わせ、添加量により、適切な条件が異なるため、最終的に樹脂組成物の硬化が完結する温度、反応時間となるよう、適宜設定することが望ましい。なお、温度は100〜150℃の範囲とし、反応時間は1〜5時間の範囲とするのが望ましい。また、急激な硬化反応により発生する内部応力を低減するために、温度を段階的に上昇させることが望ましい。
【0043】
本樹脂組成物を表面実装型LEDパッケージの透明封止樹脂に適用した場合のパッケージ成形体としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を適用することができる。熱可塑性樹脂としては、液晶ポリマー、ポリフタルアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート等、従来から知られているあらゆる熱可塑性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂等種々のものを用いることができる。特に、エポキシ樹脂は透明封止樹脂に対する接着性が優れるため好ましい。熱可塑性樹脂を用いた場合、成形は射出成形で行い、熱硬化性樹脂を用いた場合、成形はトランスファー成形で行う。
【0044】
図1は、本発明の光学部材を用いた表面実装型LEDパッケージの具体例を示す模式断面図である。図1に示す表面実装型LEDパッケージ200は、半導体発光素子102と、本発明の樹脂組成物を硬化した硬化物からなる封止体(透明封止樹脂)104と、樹脂成形体100とを有する。
樹脂成形体100は、リードフレームから成形した一対のリード105、106を熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる樹脂部103によりモールドした構造を有する。
樹脂部103には開口部101が形成されており、その中に半導体発光素子102が載置されている。そして、半導体発光素子102を包含するように透明封止樹脂104により封止されている。半導体発光素子102は、リード106の上にマウントされている。
そして、半導体発光素子102上の電極102aとリード105とが、ワイア107により接続されている。2本のリード105、106を通して半導体発光素子102に電力を供給すると発光が生じ、その発光が透明封止樹脂104を通して光取り出し面108から取り出される。
【0045】
以上、説明した本発明の樹脂組成物は、その硬化物の光学的透明性が高く、耐熱性、耐光性、機械特性、実装信頼性に優れる樹脂組成物であり、その硬化物を用いた透明基板、レンズ、接着剤、光導波路や発光ダイオード(LED)、フォトトランジスタ、フォトダイオード、固体撮像素子等の光半導体素子用途の光学部材として使用することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
(製造例1)
(a)XC96−C4658(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)230質量部、(b)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(1,4−CHDA;日興リカ社製)34質量部、トリフェニルホスフィン(TPP;和光純薬株式会社製)0.05質量部を混合した重合性単量体組成物(表1、配合1)を反応容器中に57質量部入れ、窒素ガス雰囲気下、150℃まで加熱、攪拌した。温度を150℃で維持し、3時間反応を行って共重合させ、(A)エポキシ基残存プレポリマーを合成した。得られた(A)エポキシ基残存プレポリマーの重量平均分子量は、110,000であった。また、共重合させた(a)XC96−C4658と(b)1,4−CHDAとのモル比は(a)/(b)=3/1であり、(a)中のエポキシ基の総数の(b)中のカルボキシル基の総数に対する比は3であった。
【0048】
(製造例2〜6)
製造例2〜6では、重合性単量体組成物の混合比をそれぞれ表1の配合2〜6に変更した以外は製造例1と同様の条件で、(A)エポキシ基残存プレポリマーを合成した。得られた(A)エポキシ基残存プレポリマーの重量平均分子量、及び共重合させた(a)XC96−C4658と(a’)KF−105(信越化学社製)と(b)1,4−CHDAとのモル比(a)/(a’)/(b)を表1にまとめた。また、共重合させた(a)中のエポキシ基の総数の(b)中のカルボキシル基の総数に対する比は、6.1(製造例2)、4(製造例3)、3.03(製造例4)、9(製造例5)、1.5(製造例6)であった。
【0049】
【表1】

【0050】
(実施例1)
製造例1により得られた(A)エポキシ基残存プレポリマー200質量部、(B)メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(日立化成工業株式会社製;商品名HN−5500)52質量部、(C)テトラブチルホスホニウムジエチルホスホジチオネート(日本化学工業株式会社製;商品名PX−4ET)0.5質量部を常温にて混合し、樹脂組成物(溶液)を調製した。3mm厚又は1mm厚のシリコーン製のスペーサーを2枚のガラス板で挟んで型とし、この型の中に、調製した樹脂組成物(溶液)を流し入れた。これをオーブンに入れ、段階的に温度を上昇させながら、100℃で2時間、次いで120℃で2時間、更に150℃で1時間加熱し、それぞれ、3mm厚及び1mm厚の硬化物を得た。
【0051】
(実施例2〜6)
製造例2〜6により得られた(A)エポキシ基残存プレポリマーを用い、表2に示す配合割合で混合して樹脂組成物(溶液)を調製し、実施例1と同様の手順で、3mm厚及び1mm厚の硬化物を得た。
【0052】
(比較例1〜2)
(A)エポキシ基残存プレポリマーに換えて、その原料となる(a)XC96−C4658、(a’)KF−105及び(b)1,4−CHDAを、表2に示す配合割合で混合して樹脂組成物(溶液)を調製した。この樹脂組成物(溶液)を用い、実施例1と同様の手順で、3mm厚及び1mm厚の硬化物を得た。
【0053】
【表2】


※表中の数値の単位は全て質量部である。
【0054】
[硬化物の評価]
上記実施例1〜6、比較例1〜2で得られた硬化物の機械特性(すなわち、曲げ弾性率、曲げ強度)及び光学特性(すなわち、初期と高温放置後での波長400nmにおける透過率)を以下の方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0055】
(機械特性)
硬化物から3×20×50mmの試験片を切り出し、三点曲げ試験装置を用いて、JIS−K−6911に準拠した三点支持による曲げ試験を行った。得られた結果から、数式(1)により曲げ弾性率を、数式(2)により曲げ強度を算出し、結果を表3に示した。なお、支点間距離は24mm、クロスヘッド移動速度は0.5mm/分、測定温度は室温(25℃)であった。
【数1】


【数2】


ここに、Ef:曲げ弾性率(MPa)、σfB:曲げ強度(MPa)、P/Y:荷重−たわみ曲線の直線部分の勾配(N/mm)、P’:試験片が折れた時の荷重(N)、L:支点間距離(mm)、W:試験片の幅(mm)、h:試験片の厚さ(mm)である。
【0056】
(光学特性)
硬化物の硬化後(初期)及び150℃で144時間放置した後(高温放置後)における光学特性を、下記の方法で評価した。1mm厚の硬化物を評価に供し、初期及び高温放置後の硬化物について、波長400nmにおける透過率を分光光度計で測定した。なお、高温放置後の光学特性は、耐熱変色性の指標となる。
【0057】
【表3】

【0058】
実施例1から6の硬化物は、いずれも曲げ強度が著しく高く、機械特性に優れていた。また、硬化後(初期)の波長400nmにおける透過率が高く、かつ黄変度が小さく、更に、高温放置後における透過率の低下が少なく、黄変度の変化量も小さく、光学特性にも優れていた。一方、(A)エポキシ基残存プレポリマーをプレポリマー化して用いていない比較例1及び2では、硬化物が白濁していた。
【符号の説明】
【0059】
100…樹脂成形体、101…開口部、102…半導体発光素子、102a…電極、103…樹脂部、104…封止体(透明封止樹脂)、105、106…リード、107…ワイア、108…光取り出し面、200…表面実装型LEDパッケージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物と(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物とを、(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物におけるエポキシ基の総数が(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物におけるカルボキシル基の総数よりも過剰となるように共重合させてなるエポキシ基残存プレポリマーと、
(B)硬化剤と、
(C)硬化促進剤と、を含有してなる樹脂組成物。
【請求項2】
(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物が、下記式(1)又は式(2)で表される化合物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】


[式(1)中、nは0〜20の整数であり、Rは炭素数1〜9のアルキレン基を示す。]
【化2】

【請求項3】
(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物が、下記式(3)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【化3】

【請求項4】
(B)硬化剤が酸無水物系硬化剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)エポキシ基残存プレポリマーが、(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物と(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物とを、(a)1分子中にエポキシ基を2個有するシロキサン構造含有ジエポキシ化合物におけるエポキシ基の総数の(b)1分子中にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸化合物におけるカルボキシル基の総数に対する比が、1.5〜9.5となるように共重合させてなるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる光学部材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−122075(P2011−122075A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281487(P2009−281487)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】