説明

樹脂製ボーリングピンの製造方法及びそれにより製造された樹脂製ボーリングピン

【課題】ヒケ等の成形過程における不具合を回避しつつ規定に基づいた正確な形状等を得ることができ、且つ、樹脂成形における作業性を向上させることができる樹脂製ボーリングピンの製造方法及びそれにより製造された樹脂製ボーリングピンを提供する。
【解決手段】キャビティの長手方向中心軸aに沿って出没自在の第1軸棒9,10を有する第1金型8と、キャビティの長手方向中心軸bに沿って出没自在の第2軸棒16,17を有する第2金型15とを用い、キャビティ内に第1軸棒9,10を挿入しつつ溶融合成樹脂を流し込み、中芯部2を得る中芯部成形工程と、第1軸棒9,10により成形された中芯部2の穴に第2軸棒16,17を挿通して位置決めした後、第2金型15のキャビティと中芯部2との間に溶融合成樹脂を流し込み、中芯部2の外表面に表皮3を得る表皮成形工程と、を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂製ボーリングピンの製造方法及びそれにより製造された樹脂製ボーリングピンに関する。
【0002】
【従来の技術】一般にボーリングピンは、木材を積層させたものをピン形状に切削加工し、その表面に合成樹脂を塗布することにより製造されていた。かかるボーリングピンは、ゲームで使用している間に衝撃を受けて損傷し、使用できなくなるため、一定期間使用後に修理又は焼却処分が必要であった。
【0003】上記木製のボーリングピンにおいては、表面に塗布された合成樹脂を焼却すると大気汚染の原因となる有害物質が発生するため、合成樹脂を木材から削り取った後、木材のみを焼却するか、或いは表面に再び合成樹脂を塗布して再生していたが、表面の合成樹脂のみを剥離する作業は面倒であり、ボーリングピンの廃棄又は再生コストが高くなっていた。
【0004】こうした実状に鑑み、ボーリングピン全体を樹脂で成形したものが、従来より提案されている。かかる樹脂製のボーリングピンによれば、損傷を受けて使用できなくなったボーリングピン全体を溶融し、その溶融樹脂を金型に流し込んで成形すれば、新たなボーリングピンを再生することができ、廃棄コストをなくし、再生コストを低減させることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の樹脂製のボーリングピンにおいては、以下のような問題があった。ボーリングピンには過大な衝撃が加わるため、該衝撃に長期間耐え得る材質のものを使用しなければならない一方、このような要求を満たす特殊な樹脂は一般に高価であり、ボーリングピン全体を特殊な樹脂で成形すれば、材料費が極めて高くなってしまう不具合がある。そこで、ボーリングピンの中芯部を安価な汎用の樹脂で成形しておき、その表面のみを上記の如き特殊な樹脂で覆う構成とすることが検討されている。
【0006】このように、中芯部の表面に別の材質の樹脂から成る表皮を成形するには、中芯部成形用の金型と表皮成形用の金型がそれぞれ必要となるが、中芯部成形用の金型で成形された中芯部を表皮成形用の金型に移し換える際、金型に対する中芯部の位置決めが極めて困難であるという問題があった。即ち、表皮は中芯部表面から略均一の厚さで成形する必要があるので、表皮成形用の金型へ中芯部を載置する際、高度な位置決め精度が要求されるのである。
【0007】一方、ボーリングピン全体を樹脂で成形する場合、その肉厚が厚くなり、成形過程においてヒケ等が生じるため、正確な形状等を得るのが困難であるという問題もある。即ち、ボーリングピンは、その形状のみならず重量、重心の位置、ピン跳ね具合等が詳細に規定されており、その規定に合致させる必要があるため、ヒケ等による形状等の不具合があった場合、ゲームに使用することができないのである。
【0008】本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ヒケ等の成形過程における不具合を回避しつつ規定に基づいた正確な形状等を得ることができ、且つ、樹脂成形における作業性を向上させることができる樹脂製ボーリングピンの製造方法及びそれにより製造された樹脂製ボーリングピンを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、ボーリングピンの所望外形寸法より小さい形状のキャビティを有し、該キャビティの長手方向中心軸に沿って出没自在で所定径の第1軸棒を有する第1金型と、ボーリングピンの外形寸法と略等しい形状のキャビティを有し、該キャビティの長手方向中心軸に沿って出没自在で所定径の第2軸棒を有する第2金型と、を用いる樹脂製ボーリングピンの製造方法であって、前記第1金型のキャビティ内に前記第1軸棒を挿入しつつ溶融合成樹脂を流し込み、当該溶融合成樹脂が固化した後に前記第1軸棒を抜き出してボーリングピンの中芯部を得る中芯部成形工程と、前記第1軸棒により成形された前記中芯部の穴に前記第2軸棒を挿通して位置決めした後、前記第2金型のキャビティと中芯部との間に溶融合成樹脂を流し込み、前記中芯部の外表面に表皮を得る表皮成形工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】かかる構成によれば、第1金型にて中芯部を成形する際、第1軸棒にて当該中芯部の軸線に沿った穴が形成され、その穴に第2軸棒を挿通した後、第2金型にて表皮を成形する。これにより、中芯部と表皮とが異なった材質から成る樹脂製のボーリングピンを得ることができ、その中芯部には上端又は下端を臨む穴が形成される。
【0011】請求項2記載の発明は、前記表皮成形工程の後、ボーリングピンの軸部に形成された穴に樹脂製の蓋を圧入する圧入工程を備えたことを特徴とする。
【0012】請求項3記載の発明は、前記第1軸棒又は第2軸棒が、それぞれ第1金型又は第2金型のキャビティの対向する面から出没する一対の棒状部材であることを特徴とする。
【0013】かかる構成によれば、中芯部成形工程において上端及び下端の双方に臨む穴が中芯部に形成され、これら穴に対し表皮成形工程で第2軸棒が挿通される。
【0014】請求項4記載の発明は、前記第1軸棒の一対の棒状部材が、それら先端が互いに当接可能とされ、当接された状態にて前記中芯成形工程が行われることを特徴とする。
【0015】かかる構成によれば、中芯部成形工程において、上端から下端に貫通した孔が中芯部に形成される。
【0016】請求項5記載の発明は、前記第1金型及び第2金型への溶融合成樹脂の流し込みが、所定圧力が付与されつつ行われる射出成形であり、前記表皮成形工程における溶融合成樹脂の射出は、ボーリングピンの重心位置と異なる位置に向かって行われることを特徴とする。
【0017】請求項6記載の発明は、前記第1軸棒により成形された穴を前記中芯部の内部に有するとともに前記第2軸棒により成形された前記穴の開口部を前記表皮に有することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1で示すように、第1実施形態に係る樹脂製ボーリングピン1は、中芯部2と表皮3とから主に成り、その上下端1a、1bにはナイロン製の上蓋4及び下蓋5が配設されている。
【0019】中芯部2は、ナイロン系樹脂(例えばナイロンとPP(ポリプロピレン)との合成樹脂)とから主に成り、その上下端1a、1bにそれぞれ臨む上端側穴6及び下端側穴7を内部に有する。上端側穴6は、樹脂製ボーリングピン1の上端1aから下方に向かって縮径する勾配を有しつつ形成されており、くびれ部1c近傍まで延設されるとともに、下端側穴7は、樹脂製ボーリングピン1の下端1bから上方に向かって縮径する勾配を有しつつ形成されており、くびれ部1cの近傍まで延設されている。
【0020】表皮3は、ナイロン樹脂から成るもので、中芯部2の外表面を覆うように形成されており、その表面全体に対しプライマ加工及びクリア塗装が施され、くびれ部1cの周方向に赤色の2本線が施されている。即ち、中芯部2の外輪郭形状と表皮3の外輪郭形状とは略相似を成しており、表皮3の外輪郭形状がボーリングピンの規格に適合するよう構成されている。尚、かかる表皮3の材質は、過大な衝撃に耐えうるよう、種々の強化材が添加されている。
【0021】上蓋4及び下蓋5は、上端側穴6及び下端側穴7の開口部に圧入されたもので、図2に示すように、上蓋4の上面4aは、樹脂製ボーリングピン1の頂部を成すべくR形状に成形されているとともに、上端側穴6開口部に施された縁取り面3aに合致する外周面4b、及び中芯部2における上端側穴6の径に合致する外周面4cが形成されている。
【0022】また、図3に示すように、下蓋5の下面は、樹脂製ボーリングピン1の底部を成すべく平坦に加工されているとともに、中央には、その上面と下面とを貫通した孔5aが形成されている。更に、上方に延びる円環状の突起部5bが形成されており、かかる突起部5bの外周面が下端側穴7の開口部側寸法に略合致するよう構成されている。
【0023】次に、上記樹脂製ボーリングピン1の製造方法について説明する。本実施形態における樹脂製ボーリングピンの製造方法においては、中芯部2を成形する中芯部成形工程と、表皮3を形成する表皮形成工程とを含み、中芯部成形工程においては第1金型、表皮形成工程においては第2金型が用いられる。各金型の詳細については以下に述べる。
【0024】中芯部成形工程は、図4で示す第1金型8により行われ、かかる第1金型8は、完成品としての樹脂製ボーリングピン1の所望外形寸法より小さい形状(即ち、中芯部2の外形寸法と略等しい形状)のキャビティ8cを有し、該キャビティ8cの長手方向中心軸aに沿って出没自在で所定径の下側第1軸棒9及び上側第1軸棒10を有する。
【0025】また、第1金型8は、固定型8aと可動型8bとから主に成り、固定型8aにはキャビティ8cに通じる湯道8aaが形成されて成形機のシリンダ13とキャビティ8cとが連通するよう構成されている。即ち、キャビティ8c内に対し成形機のシリンダ13から溶融合成樹脂を加圧しつつ流し込むことができ、射出成形を可能としている。
【0026】可動型8bは、固定型8aに対し当接、離間可能とされるべく図示しない駆動源により駆動され、当接時にキャビティ8cを形成するものである。この可動型8bには、キャビティ8c内に対し出没可能な押出ピン14が複数配設されており、キャビティ8c内で固化した中芯部2を容易に当該金型から取り出すことができるよう構成されている。
【0027】下側第1軸棒9及び上側第1軸棒10は、キャビティ8cの対向する面(同図中上下面)から出没する一対の棒状部材であり、上方又は下方に縮径する抜き勾配を有し、それぞれ油圧シリンダ11及び12によりキャビティ8cに対し出没自在となるよう駆動される。かかる下側第1軸棒9及び上側第1軸棒10の径は、完成した樹脂製ボーリングピン1の重量が規定値となるよう設定されている。
【0028】即ち、中芯部2の内部に形成される上端側穴6及び下端側穴7の合計体積により完成品としての樹脂製ボーリングピン1の重量が調整されるので、かかる上端側穴6及び下端側穴7の合計体積が最適となるよう上側第1軸棒10及び下側第1軸棒9の径を予め設定しておくのである。
【0029】上記第1金型8を用いた中芯部成形工程においては、上記第1金型8のキャビティ8c内に下側第1軸棒9及び上側第1軸棒10を挿入した状態で溶融合成樹脂(ナイロンとPPとから成る合成樹脂を溶融させたもの)を成形機のシリンダ13から加圧しつつ流し込み、当該キャビティ8c内を溶融合成樹脂で充填させる。
【0030】そして、溶融合成樹脂が固化した後、油圧シリンダ11及び12を駆動させて下側第1軸棒9及び上側第1軸棒10を抜き出し、可動型8bを固定型8aから離間させるとともに押出ピン14をキャビティ8c側に突出させ、中芯部2を第1金型8から取り出す。ここで、下側第1軸棒9を抜き出した跡が下端側穴7となり、上側第1軸棒10を抜き出した跡が上端側穴6となる。
【0031】表皮成形工程は、図5で示す第2金型15により行われ、かかる第2金型15は完成品としての樹脂製ボーリングピン1の外形寸法と略等しい形状のキャビティ15cを有し、該キャビティ15cの長手方向中心軸bに沿って出没自在で所定径の下側第2軸棒16及び上側第2軸棒17を有する。ここで、下側第2軸棒16及び上側第2軸棒17は、中芯部成形工程にて形成された下端側穴7及び上端側穴6と略合致する径とされている。
【0032】また、第2金型15は、固定型15aと可動型15bとから主に成り、固定型15aには湯道15aaとキャビティ15cとに通じたゲート部18が形成されて成形機のシリンダ19とキャビティ15cとが連通するよう構成されている。即ち、第1金型8と同様、キャビティ15c内に対し成形機のシリンダ19から溶融合成樹脂を加圧しつつ流し込むことができ、射出成形を可能としている。
【0033】ここで、ゲート部18のキャビティ15c側開口は、樹脂製ボーリングピン1の重心位置と異なる位置(例えば、重心位置から若干下側にずれた位置)とされているため、過大な衝撃が加わるボーリングピンの重心位置の剛性を維持することができる。即ち、一般には溶融合成樹脂が流し込まれる部位は、冷却固化するのが他の部位に比べて遅く、剛性が弱いとされるため、最も強い衝撃が加わる位置(ボーリングの球が当たる部位)である重心位置から剛性樹脂の射出位置をずらしているのである。
【0034】従って、本実施形態においては、ボーリングピンの重心位置から若干下方に溶融合成樹脂を射出するようにしているので、上記剛性の維持に加え、溶融合成樹脂をキャビティ15c内における隅々まで流入させることができ、キャビティ15c内への溶融合成樹脂の充填効率を維持することができる。
【0035】可動型15bは、固定型15aに対し当接、離間可能とされるべく図示しない駆動源により駆動され、当接時にキャビティ15aを形成するものである。この可動型15bには、下側第2軸棒16及び上側第2軸棒17を押し出すための押出ピン20が配設されており、表皮3を成形した後の樹脂製ボーリングピン1を軸棒ごと取り出し可能とされている。
【0036】下側第2軸棒16及び上側第2軸棒17は、キャビティ15cの対向する面(同図中上下面)から出没する一対の棒状部材であり、上方又は下方に縮径する抜き勾配を有し、それぞれ図6又は図7に示す形状とされている。上側第2軸棒17は、図6に示すように、押出ピン20が当接される台座部17aと、完成品としての樹脂製ボーリングピン1における縁取り面3aを形成するための縁取り面形成部17bと、中芯部2の上端側穴6に合致して嵌り込む棒状部17cとから構成されている。
【0037】また、下側第2軸棒16は、図7で示すように、押出ピン20が当接される台座部16aと、中芯部2の下端側穴7の開口形状を形成する開口形状形成部16bと、中芯部2の下端側穴7に合致して嵌り込む棒状部16cとから構成されている。即ち、図6及び図7において二点鎖線で示した位置に中芯部2の上端及び下端が位置する状態とされた上で表皮3が成形されるので、縁取り面形成部17bより下方及び開口形状形成部16bより上方が中芯部2の内部に入り込むこととなる。
【0038】上記第2金型15を用いた表皮成形工程においては、第1金型8の下側第1軸棒16及び上側第1軸棒17により形成された中芯部2における下端側穴7及び上端側穴6に対し、それぞれ下側第2軸棒16及び上側第2軸棒17を挿通することにより、中芯部2の第2金型15に対する位置決めをする。
【0039】ここで、下側第2軸棒16及び上側第2軸棒17は、第2金型15の所定箇所に配設されているので、これら軸棒を位置決めピンとして機能させることにより、容易に中芯部2をキャビティ15cの中央に位置決めすることができる。即ち、下側第2軸棒16及び上側第2軸棒17の棒状部16c及び17cが位置決め機能、開口形状形成部16b及び縁取り面形成部17bが樹脂成形における中子機能を果たすのである。
【0040】その後、第2金型15のキャビティ15cと中芯部2との間に成型機のシリンダ19にて溶融合成樹脂を加圧しつつ流し込み、かかる空間を当該溶融合成樹脂で充填させる。この溶融合成樹脂が冷却固化すると中芯部2と一体とされた表皮3が形成されることとなり、可動型15bを固定型15aから離間させる一方、押出ピン20をキャビティ15c側に突出させ、下側第2軸棒16及び上側第2軸棒17とともに成形品を第2金型15から取り出す。
【0041】次に、下端側穴7及び上端側穴6から下側第2軸棒16及び上側第2軸棒17を抜き出し、成形品の表面全体に対しプライマ加工及びクリア塗装を施すとともに、くびれ部1cの周方向に赤色の2本線を印刷する。その後、下端側穴7及び上端側穴6の開口部にそれぞれ別途成形した下蓋5及び上蓋4を圧入し、完成品としての樹脂製ボーリングピン1を得る。
【0042】従って、樹脂製ボーリングピン1における下端側穴7及び上端側穴6は、ピン全体の重量調整の為に設けられるとともに、表皮成形工程における位置決めのための穴の機能をも果たす。更に、樹脂製ボーリングピン1の肉厚を薄くすることができるので、樹脂成形時におけるヒケ等の不具合を回避することができる。
【0043】次に、本発明における第2実施形態に係る樹脂製ボーリングピン及びその製造方法について説明する。尚、第1実施形態の構成要素と同一の部位については同一の符号を付してある。本実施形態に係る樹脂製ボーリングピン1’は、図8に示すように、その長手方向中心軸に沿って貫通孔21が形成されたものである。即ち、第1実施形態における上端側穴6と下端側穴7とが先端でつながり、上端1’aから下端1bとが貫通されたものである。尚、他の部位については第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0044】上記樹脂製ボーリングピン1’は、図9で示す第1金型8’及び図10で示す第2金型15’を用いて成形される。第1金型8’は、下側第1軸棒9’及び上側第1軸棒10’を有しており、第2金型15’は、下側第2軸棒16’及び上側第2軸棒17’を有しており、それら先端が互いに当接可能とされている。
【0045】そして、中芯部2を成形する中芯部成形工程においては、下側第1軸棒9’及び上側第1軸棒10’の先端を当接させた状態で第1金型8’内に溶融合成樹脂を流し込み、その後の表皮3を成形する表皮成形工程においては、下側第2軸棒16’及び上側第2軸棒17’の先端を当接させた状態で第2金型15’内に溶融合成樹脂を流し込む。尚、樹脂製ボーリングピン1’の他の製造工程(例えば、上蓋4及び下蓋5の圧入工程等)については、第1実施形態と同様である。
【0046】上記第1及び第2実施形態によれば、第1軸棒(上側第1軸棒及び下側第1軸棒)により成形された穴(上端側穴6及び下端側穴7)を中芯部2の内部に有するとともに第2軸棒(上側第2軸棒及び下側第2軸棒)により成形された穴の開口部(上蓋4及び下蓋5の圧入部)を表皮3に有するので、樹脂製ボーリングピン全体としての重量が規定に合致し、且つ、ひけ等がない質の高い樹脂製ボーリングピンを得ることができる。
【0047】次に、本発明における第3実施形態に係る樹脂製ボーリングピン及びその製造方法について説明する。尚、第1実施形態及び第2実施形態の構成要素と同一の部位については同一の符号を付してある。本実施形態に係る樹脂製ボーリングピン1”は、図11に示すように、下部側(下端1”b側)のみに中芯部2’が成形されるとともに、表皮3’がその下部側において中芯部2’を覆いつつ上部側(上端1”a側)で樹脂製ボーリングピン1”の形状(外輪郭がボーリングピンの規格に適合する形状)に成形されたものである。尚、第1実施形態と同様、中芯部2’における下端1”bからは上方に向かって下端側穴7が形成されるとともに、表皮3’における上端1”aからは下方に向かって上端側穴6が形成されている。
【0048】上記樹脂製ボーリングピン1”は、図12で示す第1金型8”により中芯部2’が成形される中芯部成形工程と、図13で示す第2金型15(第1実施形態と同様のもの)により表皮3’が成形され表皮成形工程との各工程を経て製造される。尚、各図において第1実施形態及び第2実施形態と同様の部材については、既述されているため、詳細な説明を省略する。
【0049】中芯成形工程は、図12に示す第1金型8”により行われ、かかる第1金型8”は、完成品としての樹脂製ボーリングピン1”の下部側における所望外形寸法より小さい形状(即ち、中芯部2’の外形寸法と略等しい形状)のキャビティ8”cを有し、該キャビティ8”cの長手方向中心軸aに沿って出没自在で所定径の下側第1軸棒9”を有する。
【0050】また、第1金型8”は、固定型8”aと可動型8”bとから主に成り、固定型8”にはキャビティ8”cに通じる湯道8”aaが形成されて、成形機のシリンダ13とキャビティ8”cとが連通するよう構成されている。これにより、可動型8”bが固定型8”に対して当接し、キャビティ8”cを形成した後、当該キャビティ8”c内に対し油圧シリンダ11により下側第1軸棒9”を突出させた状態(図12の状態)で成形機のシリンダ13から溶融合成樹脂を加圧しつつ流し込み、中芯部2’が製造され得るよう構成されている。
【0051】尚、下側第1軸棒9”の基端側には、該下側第1軸棒9”の外周面に環状に形成された凹溝9”aを複数(好ましくは2〜3本)有しており、中芯部2’の樹脂成形時に凹溝9”aに対応する位置に下蓋5との嵌合力を向上させるための凸部が形成されるよう構成されている。尚、凹溝9”aの断面形状は、矩形状、U字状若しくはV字状のいずれであってもよい。
【0052】その後、樹脂が完全に冷却固化した後においては、形成した凸部により下側第1軸棒9が抜け出せなくなってしまうので、溶融合成樹脂が柔らかい状態において、油圧シリンダ11を駆動させて下側第1軸棒9を抜き出す。そして、可動型8”bを固定型8”aから離間させるとともに、押出ピン14をキャビティ8”c側に突出させ、中芯部2’を第1金型8”から取り出す。ここで、下側第1軸棒9”を抜き出した跡が下端側穴7となる。
【0053】表皮成形工程は、図13で示す第2金型15により行われ、かかる第2金型15は完成品としての樹脂製ボーリングピン1”の外形寸法と略等しい形状のキャビティ15cを有し、該キャビティ15cの長手方向中心軸bに沿って出没自在で所定径の下側第2軸棒16”及び上側第2軸棒17”を有する。ここで、下側第2軸棒16”には、中芯部成形工程で成形された凸部に対応する複数の凹溝16”aが形成されているとともに、上側第2軸棒17”の基端側にも、同様の複数の凹溝17”aが形成されている。尚、下側第2軸棒16”は、中芯部成形工程にて形成された下端側穴7と略合致する径とされて、第2金型15における位置決めピンの役割を果たしている。
【0054】上記第2金型15内に溶融合成樹脂(ナイロン樹脂に種々の強化材が添加されたもの等)を流し込み、当該樹脂が柔らかい状態のまま下側第2軸棒17”及び上側第2軸棒17”を抜き出した後、成形品を当該第2金型15から取り出す。尚、かかる表皮成形工程で成形されたものが冷却固化した後、先の実施形態と同様、その表面にプライマ加工及びクリア塗装を施し、くびれ部1cの周方向に赤色の2本線を施す。
【0055】そして、成形品に形成された上端側穴6及び下端側穴7の開口部に上蓋4”(図14参照)及び下蓋5”(図15参照)を嵌合して規定の樹脂製ボーリングピン1”を得る。ここで、両図に示すように、上蓋4”及び下蓋5”のそれぞれの側面には、中芯部成形工程及び表皮成形工程で成形された凸部と嵌合し得る環状の凹溝4”d及び5”cが形成されており、これら上蓋4及び下蓋5”が嵌合した際の嵌合力を向上させている。
【0056】以上、第1〜第3実施形態に係る樹脂製ボーリングピンの製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば第1軸棒及び第2軸棒を金型の下方から延びる1本の棒状部材としてもよく、この場合、樹脂製ボーリングピン内部には、その下端に臨む穴のみが形成されることとなる。また、内部に貫通孔を有する樹脂製ボーリングピンを製造するには、第2実施形態の如く上下方向から突出した2本の軸棒を用いてもよいし、上方又は下方へ延びる1本の軸棒としてもよい。
【0057】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、第1軸棒によりボーリングピン内部に上端又は下端に臨む穴が設けられるので、肉厚を薄くすることができるとともに、その穴の大きさを調整することにより、重量等を調整することができるので、ヒケ等の成形過程における不具合を回避しつつ規定に基づいた正確な形状等を得ることができる。
【0058】上記効果に加え、本発明によれば、第1軸棒にて形成した穴に対し第2軸棒を挿通して表皮成形工程を施すので、中芯部成形工程で得た中芯部を第2金型へ載置する際に、中芯部の位置決めが容易であり、樹脂成形における作業性を向上させることができる。
【0059】請求項2の発明によれば、中芯部成形工程及び表皮成形工程を経た後に残る穴に対し樹脂製の蓋を圧入して塞ぐので、再生時に容易に取り外しすることができ、取り外された樹脂製の蓋も再生されたボーリングピンに再び使用することができる。
【0060】請求項3の発明によれば、中芯部成形工程において上端及び下端の双方に臨む穴が中芯部に形成されるので、ボーリングピンのくびれ部分以外の拡幅部における肉厚を薄くすることができ、有効にひけ等を防止できるとともに、表皮成形工程において、中芯部の上端及び下端に対し第2軸棒が挿通するので、第2金型のキャビティに対する位置決め精度を更に向上させることができる。
【0061】請求項4の発明によれば、中芯部成形工程において、上端から下端に貫通した孔が中芯部に形成されるので、ボーリングピンのくびれ部分を含めて肉厚を薄くすることができる。
【0062】請求項5の発明によれば、表皮成形工程における溶融合成樹脂の射出は、ボーリングピンの重心位置と異なる位置に向かって行われるので、以下の効果がある。即ち、射出成形における射出部分は、溶融樹脂の冷却固化が他の部位に比べて遅く、剛性の点で比較的劣ることが認められる一方、ボーリングピンの重心位置には、ボーリングの球が当たるので過大な衝撃が加わり、この部分の剛性が劣ることはボーリングピンの寿命を短縮させる結果となってしまう。そこで、重心位置以外の部位に向かって溶融合成樹脂を射出させることにより、重心位置の剛性を維持し、ボーリングピンの寿命期間の短縮を回避することができる。
【0063】請求項6の発明によれば、第1軸棒により成形された穴を中芯部の内部に有するとともに第2軸棒により成形された穴の開口部を表皮に有するので、樹脂製ボーリングピン全体としての重量が規定に合致し、且つ、ひけ等がない質の高い樹脂製ボーリングピンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る樹脂製ボーリングピンを示す左側正面図右側断面図
【図2】本発明の第1実施形態に係る樹脂製ボーリングピンに適用される上蓋を示す斜視図
【図3】本発明の第1実施形態に係る樹脂製ボーリングピンに適用される下蓋を示す斜視図
【図4】本発明の第1実施形態に係る樹脂製ボーリングピンの製造方法で適用される第1金型を示す断面模式図
【図5】本発明の第1実施形態に係る樹脂製ボーリングピンの製造方法で適用される第2金型を示す断面模式図
【図6】同第2金型に配設された上側第2軸棒を示す模式図
【図7】同第2金型に配設された下側第2軸棒を示す模式図
【図8】本発明の第2実施形態に係る樹脂製ボーリングピンを示す左側正面図右側断面図
【図9】本発明の第2実施形態に係る樹脂製ボーリングピンの製造方法で適用される第1金型を示す断面模式図
【図10】本発明の第2実施形態に係る樹脂製ボーリングピンの製造方法で適用される第2金型を示す断面模式図
【図11】本発明の第3実施形態に係る樹脂製ボーリングピンを示す左側正面図右側断面図
【図12】本発明の第3実施形態に係る樹脂製ボーリングピンの製造方法で適用される第1金型を示す断面模式図
【図13】本発明の第3実施形態に係る樹脂製ボーリングピンの製造方法で適用される第2金型を示す断面模式図
【図14】本発明の第3実施形態に係る樹脂製ボーリングピンに適用される上蓋を示す斜視図
【図15】本発明の第3実施形態に係る樹脂製ボーリングピンに適用される下蓋を示す斜視図
【符号の説明】
1、1’、1”…樹脂製ボーリングピン
1a、1’a、1”a…上端
1b、1’b、1”b…下端
1c…くびれ部
2、2’…中芯部
3、3’…表皮
3a…縁取り面
4、4”…上蓋
4a…上面
4b、4c…外周面
5、5”…下蓋
5a…孔
5b…突起部
6…上端側穴
7…下端側穴
8、8’、8”…第1金型
8a、8”a…固定型
8aa、8”aa…湯道
8b、8”b…可動型
8c、8”c…キャビティ
9、9’、9”…下側第1軸棒
10、10’…上側第1軸棒
11、12…油圧シリンダ
13…成形機のシリンダ
14…押出ピン
15、15’…第2金型
15a…固定型
15aa…湯道
15b…可動型
15c…キャビティ
16、16’、16”…下側第2軸棒
16a…台座部
16b…開口形状形成部
16c…棒状部
17、17’、17”…上側第2軸棒
17a…台座部
17b…縁取り面形成部
17c…棒状部
18…ゲート部
19…成形機のシリンダ
20…押出ピン
21…貫通孔
a、b…長手方向中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】ボーリングピンの所望外形寸法より小さい形状のキャビティを有し、該キャビティの長手方向中心軸に沿って出没自在で所定径の第1軸棒を有する第1金型と、ボーリングピンの外形寸法と略等しい形状のキャビティを有し、該キャビティの長手方向中心軸に沿って出没自在で所定径の第2軸棒を有する第2金型と、を用いる樹脂製ボーリングピンの製造方法であって、前記第1金型のキャビティ内に前記第1軸棒を挿入しつつ溶融合成樹脂を流し込み、当該溶融合成樹脂が固化した後に前記第1軸棒を抜き出してボーリングピンの中芯部を得る中芯部成形工程と、前記第1軸棒により成形された前記中芯部の穴に前記第2軸棒を挿通して位置決めした後、前記第2金型のキャビティと中芯部との間に溶融合成樹脂を流し込み、前記中芯部の外表面に表皮を得る表皮成形工程と、を含むことを特徴とする樹脂製ボーリングピンの製造方法。
【請求項2】前記表皮成形工程の後、ボーリングピンの軸部に形成された穴に樹脂製の蓋を圧入する圧入工程を備えたことを特徴とする請求項1記載の樹脂製ボーリングピンの製造方法。
【請求項3】前記第1軸棒又は第2軸棒は、それぞれ第1金型又は第2金型のキャビティの対向する面から出没する一対の棒状部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の樹脂製ボーリングピンの製造方法。
【請求項4】前記第1軸棒の一対の棒状部材は、それら先端が互いに当接可能とされ、当接された状態にて前記中芯成形工程が行われることを特徴とする請求項3記載の樹脂製ボーリングピンの製造方法。
【請求項5】前記第1金型及び第2金型への溶融合成樹脂の流し込みは、所定圧力が付与されつつ行われる射出成形であり、前記表皮成形工程における溶融合成樹脂の射出は、ボーリングピンの重心位置と異なる位置に向かって行われることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の樹脂製ボーリングピンの製造方法。
【請求項6】前記第1軸棒により成形された穴を前記中芯部の内部に有するとともに前記第2軸棒により成形された前記穴の開口部を前記表皮に有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つにより製造された樹脂製ボーリングピン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図14】
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【図15】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2002−205316(P2002−205316A)
【公開日】平成14年7月23日(2002.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−155320(P2001−155320)
【出願日】平成13年5月24日(2001.5.24)
【出願人】(300076471)テジマ技研株式会社 (1)
【Fターム(参考)】