説明

樹脂製ロープとそれを用いたエレベータの位置検出装置

検出装置(8)により検出可能な情報を有する被検出体(7)を備えた樹脂製ロープ(5)と、この樹脂製ロープ(5)を使用して、エレベータ昇降路(1)内を昇降するかご(4)の位置を検出するエレベータの位置検出装置である。かご(4)を懸吊する樹脂製ロープ(5)に設けられた複数の被検出体(7)の位置情報が、樹脂製ロープ(5)と僅かな間隙を有して対向するように昇降路(1)内に設けられた1つの検出装置(8)によって読み取られ、かご(4)の位置が検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、検出装置によって検出可能な情報を有する被検出体を備えた樹脂製ロープと、この樹脂製ロープを用いて、エレベータ昇降路内を昇降するかごの位置を検出するエレベータの位置検出装置に関する。
【背景技術】
従来のエレベータ装置において、エレベータのかごが昇降路の昇降可能範囲の上限又は下限に接近した際に、このかごの走行位置を検出する場合には、例えば、日本特開2000−34070号公報に記載されたエレベータの位置検出装置が採用されていた。この装置では、エレベータのかごが昇降路の昇降可能範囲の上限又は下限に接近した際に、かごに設けられた複数段に対向する投光手段と受光手段との間を、昇降路内に設けられた遮蔽板が通過するようにそれぞれ設置されている。さらに、この遮蔽板は、受光手段によって得られる出力信号が2進数で出力されるようにそれぞれ構成され、その出力信号によってかごの減速位置が検出される。しかし、昇降路内に設けられた遮蔽板は、かごの減速位置に対応してそれぞれ設置される必要があるため、特に、かごをより安全に停止させるために段階的に減速する場合等には、昇降路上部及び下部の広範囲に渡って遮蔽板を設置する必要があった。また、このような位置検出装置を使用して、建築物の各階に設けられた乗場にかごを停止させる場合には、昇降路内の各階の乗場付近にも遮蔽板を設置する必要があり、遮蔽板の設置及び調整に多大な時間と労力とが必要とされていた。特に、建築物の階数が増えると、昇降路側に設置する位置検出のための遮蔽板も増やす必要があり、各階毎に位置検出装置の取付や調整、配線等を行う必要があった。また、昇降路全長に渡って位置検出装置が設けられているため、保守作業時に遮蔽板の調整等に時間を要し、作業性が悪いという問題が生じていた。
この発明は、このような従来の問題点を解決するもので、エレベータ昇降路内を昇降するかごの位置を、簡単な構成で容易に検出することができるようにしたものである。
【発明の開示】
この発明は、樹脂製ロープにおいて、検出装置により検出可能な情報を有する被検出体を備えたものである。
また、上述の樹脂製ロープを使用したエレベータの位置検出装置において、エレベータのかごを懸吊する樹脂製ロープに位置情報を有する被検出体を設け、この位置情報を、樹脂製ロープと僅かな間隙を有して対向するように設けられた検出装置によって読み取り、かごの位置を検出するものである。このことによって、据付及び保守等の作業性に優れたエレベータの位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明にかかるエレベータの位置検出装置の側面図である。
第2図は、この発明にかかるエレベータの位置検出装置の第1の実施例を示す要部側面図である。
第3図は、この発明にかかるエレベータの位置検出装置の第2の実施例を示す要部側面図である。
第4図は、この発明にかかるエレベータの位置検出装置の第3の実施例を示す要部側面図である。
第5図は、この発明にかかるエレベータの位置検出装置の第4の実施例を示す側面図である。
第6図は、この発明にかかるエレベータの位置検出装置の第5の実施例を示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
この発明をより詳細に説明するために、添付の図面に従ってこれを説明する。
第1図はこの発明にかかるエレベータの位置検出装置の全体を示した側面図、第2図は検出装置及び被検出体の第1の実施例を示す要部側面図、第3図は検出装置及び被検出体の第2の実施例を示す要部側面図、第4図は検出装置及び被検出体の第3の実施例を示す要部側面図である。
第1図において、エレベータの昇降路1へと通じる建築物の各階の乗場2には、昇降路1内への転落防止のための乗場の戸3が設けられている。また、昇降路1内をガイドレール(図示せず)に案内されて昇降するエレベータのかご4は、樹脂製ロープ5によって懸吊され、この樹脂製ロープ5が、昇降路1上部や機械室、あるいは昇降路1下部等に設置された巻上機6の駆動綱車に巻き掛けられている。したがって、この巻上機6の駆動綱車が回動すると、樹脂製ロープ5は駆動綱車との摩擦力によってその回動に連動して移動し、この樹脂製ロープ5に懸吊されたかご4が昇降路1内を昇降する。かご4を懸吊しているこの樹脂製ロープ5には、複数の被検出体7が設けられており、この被検出体7を検出する検出装置8は、樹脂製ロープ5と僅かな間隙を有して対向するように昇降路1上部に設けられている。樹脂製ロープ5に設けられたこれら複数の被検出体7は、かご4が各階の乗場2の停止位置、即ち、かご室内の床面と各階の乗場2の床面とが略面一となる時に、検出装置8と同高さとなるようにそれぞれ配置されるとともに、かご4が安全に停止することができるように、かご4が昇降路1の上部及び下部に設けられた減速位置にあるときに、検出装置8と同高さとなるようにそれぞれ配置されている。なお、昇降路1上部及び下部において、かご4をより安全に停止させるために段階的に減速する場合には、被検出体7は、それぞれの終端階減速位置に対応して、複数設けられている。また、図示されていないが、移動する樹脂製ロープ5と昇降路1上部に固定された検出装置8との間隔を一定に保つために、例えば、樹脂製ロープ5に三方又は四方から接触して案内するローラ等を備えた樹脂製ロープ5の案内装置を、検出装置8の上方及び下方となる位置に設けても良い。
以上のように構成されたエレベータの位置検出装置では、樹脂製ロープ5に設けられた被検出体7には、かご4の各階における停止位置や昇降路1の昇降可能範囲上限又は下限といったそれぞれ異なるかご4の位置情報が入力されており、昇降路1上部に設けられた検出装置8の近傍を通過する際又は検出装置8に対向して停止した際等に、この検出装置8によってその位置情報が読み取られ、その被検出体7に対応したかご4の位置が検出される。そして、この検出結果に基づいて、かご4の停止位置や減速位置の制御が行われる。なお、かご4を懸吊するロープに樹脂製ロープ5が使用されているため、巻上機6の駆動綱車や昇降路1下部又は上部等に設けられた返し車(図示せず)に潤滑油を使用する必要がない。したがって、潤滑油が樹脂製ロープ5に付着する恐れがなく、検出装置8による被検出体7の位置情報の読み取りに不具合が生じることもない。また、昇降路1上部に機械室が設けられたエレベータ装置においては、検出装置8を機械室に設置することで、据付及び保守等をさらに効率良く行うことも可能である。
以下、検出装置8と被検出体7との構成について具体的に説明する。
第2図に示すエレベータの位置検出装置は、昇降路1上部に設けられた1つの近接センサ9と、樹脂製ロープ5に設けられた被検出体7とが備えられている。この被検出体7は、樹脂製ロープ5の表面に円周方向に渡って設けられた薄いメッシュ状の金属部材10と、この金属部材10の摩耗を防止するために金属部材10を完全に被覆した保護部材11とから構成されている。近接センサ9は、樹脂製ロープ5が移動した際に金属部材10が近傍を通過したり、かご4の停止のために金属部材10が接近したりすること等によって発生する磁界の変化を検出する。このため、被検出体7の保護部材11は、近接センサ9によって検出される磁界に影響を与えず、且つ、巻上機6の駆動綱車に巻き掛けられた際に滑らかに通過することが可能なように、薄く設けられている。
第3図に示すエレベータの位置検出装置は、昇降路1上部に設けられた1つの近接センサ9と、樹脂製ロープ5に設けられた被検出体7とが備えられている。この被検出体7は、薄いリング状を呈する複数の金属部材12が、その中空部に樹脂製ロープ5が貫通するように等間隔に設けられている。そして、この金属部材12の摩耗を防止するために、保護部材11が全ての金属部材12を完全に被覆するように樹脂製ロープ5に薄く設けられている。また、近接センサ9は、樹脂製ロープ5が移動した際に金属部材12が近傍を通過したり、かご4の停止のために金属部材12が接近したりすること等によって発生する磁界の変化を検出する。
第4図に示すエレベータの位置検出装置は、昇降路1上部に設けられた1つの光電センサ13と、光沢ある着色等によって樹脂製ロープ5の表面に円周方向に渡って設けられた反射体14と、樹脂製ロープ5の円周方向に渡って一端部が接触し、光電センサ13の上方と下方となる位置にそれぞれ設けられたブラシ15とを備えている。この光電センサ13は、樹脂製ロープ5が移動した際に検出体14が近傍を通過したり、反射体14が光電センサ13に対向して停止したりすること等によって生じる反射体14からの反射光を検出する。また、反射体14に付着した汚れや埃等をブラシ15によって除去することにより、光電センサ13の誤検出を防止している。
なお、上述したような被検出体7であれば、既に設置されている樹脂製ロープ5に対して、後から被検出体7を設けることができるため、樹脂製ロープ5を使用した既存のエレベータ装置にも対応することが可能となる。
次に、上記のような検出装置8と被検出体7とを使用した場合におけるかご4の位置検出方法について説明する。
第5図(a)〜(c)はこの発明にかかるエレベータの位置検出装置の第4の実施例を示す側面図、第6図(a)〜(b)は、エレベータの位置検出装置の第5の実施例を示す側面図である。
第5図において、エレベータ昇降路1上部には、複数(第5図では4つ)の検出装置8a〜8dが樹脂製ロープ5と僅かな間隙を有して対向するように等間隔に設置されている。また、かご4を懸吊する樹脂製ロープ5には、複数の被検出体7a〜7dが設けられている。この検出装置8a〜8d及び被検出体7a〜7dのうち、最上部に設置された検出装置8aと、かご4側に配置された樹脂製ロープ5の最上部に位置する被検出体7aとは、それぞれ検出トリガ用の検出装置及び被検出体である。また、検出トリガ用の検出装置8aの下方に設けられた検出装置8b〜8dと、検出トリガ用の被検出体7aの下方に設けられた被検出体7b〜7dとは、それぞれかご4の位置検出用の検出装置及び被検出体である。この位置検出用の被検出体7b〜7dは、検出トリガ用の被検出体7aが検出装置8aに対して対向する位置となった際に、検出装置8b〜8dの何れかに対向するように配置されている。
検出トリガ用の被検出体7aが検出トリガ用の検出装置8aによって検出されると、検出装置8aの下方に設けられた検出装置8b〜8dによって、被検出体7b〜7dの検出が行われる。ここで、(a)の場合、検出装置8b〜8dの全てによって位置検出用の被検出体7b〜7dが検出され、(b)(c)の場合は、それぞれ被検出体7b及び7c、被検出体7b及び7dが検出される。この検出装置8b〜8dの検出結果は、制御盤等に入力され、被検出体7b〜7dを検出した検出装置8b〜8dの組み合わせに基づいて、かご4の停止階等が判断される。
第6図において、エレベータ昇降路1上部には、3つの検出装置8a〜8cが樹脂製ロープ5と僅かな間隙を有して対向するように等間隔に設置されている。また、かご4を懸吊する樹脂製ロープ5には、複数の被検出体7a及び7e、7fが設けられている。この検出装置8a〜8c及び被検出体7a、7e、7fのうち、最上部に設置された検出装置8aと、かご4側に配置された樹脂製ロープ5の最上部に位置する被検出体7aとは、それぞれ検出トリガ用の検出装置及び被検出体である。また、検出トリガ用の検出装置8aの下方に設けられた検出装置8b及び8cと、検出トリガ用の被検出体7aの下方に設けられた被検出体7e及び7fとは、それぞれかご4の位置検出用の検出装置及び被検出体である。この被検出体7e及び7fは、検出トリガ用の被検出体7aが検出トリガ用の検出装置8aに対して対向する位置となった際に、検出装置8aの下方に設けられた検出装置8b又は検出装置8b及び8cの両方に対向するように配置されている。ここで、被検出体7eが、1つの検出装置8bによって検出されるのに対し、この被検出体7eよりも樹脂製ロープ5の長手方向に長い被検出体7fは、上下に配置された2つの検出装置8b及び8cによって同時に検出される。
検出トリガ用の被検出体7aが検出トリガ用の検出装置8aによって検出されると、検出装置8aの下方に設けられた検出装置8b及び8cによって被検出体7e及び7fの検出が行われる。ここで(a)の場合、検出装置8bによって被検出体7eが検出され、検出装置8cには何も検出されない。このように検出装置8bのみによって被検出体7eが検出される場合には、その検出結果に基づいて、各階床のかご4の停止位置が判断される。これに対して(b)の場合には、被検出体7fは、上下に設けられた検出装置8b及び8cに渡って設けられているため、両方の検出装置8b及び8cによって検出される。このように検出装置8b及び8cの両方によって検出される場合には、その検出結果に基づいて、かご4の昇降可能範囲の上端又は下端が検出される。なお、被検出体7fは上下の検出装置8b及び8cに渡って設けられているため、かご4の停止位置が多少ずれた場合でも、確実に検出することが可能となり、検出装置の間隔が狭い場合等には有効な手段となる。以上のように、異なる長さを有する被検出体7eと7fとを検出した検出装置8b及び8cの組み合わせに基づいて、かご4の各階床の停止位置及び昇降可能範囲が判断される。
【産業上の利用可能性】
以上のように、この発明の樹脂製ロープ5によれば、被検出体7の設置位置や情報内容を変えることで、樹脂製ロープ5の様々な状態を検出することができる。例えば、被検出体7を樹脂製ロープ5の内部に埋め込み、検出装置8によりこの被検出体7の樹脂製ロープ5表面への露出を検出することによって、樹脂製ロープ5の摩耗状態を検出することができる。また、樹脂製ロープ5の表面に一定間隔に被検出体7を設け、それぞれの被検出体7の通過時間を検出することによって、樹脂製ロープ5の移動速度を直接検出することも可能となる。
また、この発明のエレベータの位置検出装置によれば、昇降路1上部のみに設けられた検出装置8によって樹脂製ロープ5に設けられた複数の被検出体7の位置情報を検出することができるため、建築物が高層でエレベータのかごの停止位置が多い場合等には、据付及び保守等の作業性に優れ、特に有効である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出装置によって検出可能な情報を有する被検出体を備えたことを特徴とするエレベータ用樹脂製ロープ。
【請求項2】
被検出体は、金属部材を有することを特徴とする請求の範囲第1項記載のエレベータ用樹脂製ロープ。
【請求項3】
被検出体は、その表面に設けられた反射体を有することを特徴とする請求の範囲第1項記載のエレベータ用樹脂製ロープ。
【請求項4】
エレベータの昇降路内を昇降するかごと、このかごを懸吊する樹脂製ロープと、この樹脂製ロープが巻き掛けられた駆動綱車を有する巻上機と、前記樹脂製ロープに設けられた複数の被検出体と、前記樹脂製ロープと所定の間隙を有して対向するように設けられ、前記被検出体の有する位置情報を検出する検出装置とを備えたことを特徴とするエレベータの位置検出装置。
【請求項5】
被検出体は、樹脂製ロープ表面に設けられた金属部材を備え、検出装置は、前記金属部材によって発生する磁界の変化を検出することを特徴とする請求の範囲第4項記載のエレベータの位置検出装置。
【請求項6】
金属部材は、メッシュ状であることを特徴とする請求の範囲第5項記載のエレベータの位置検出装置
【請求項7】
金属部材は、リング状を呈し、このリング状の中空部を樹脂製ロープが貫通することを特徴とする請求の範囲第5項記載のエレベータの位置検出装置。
【請求項8】
被検出体は、樹脂製ロープの表面に設けられた反射体を備え、検出装置は、前記反射体からの反射光を検出することを特徴とする請求の範囲第4項記載のエレベータの位置検出装置。
【請求項9】
検出装置は、被検出体の長さに基づいて異なる位置情報を検出することを特徴とする請求の範囲第4項記載のエレベータの位置検出装置。

【国際公開番号】WO2005/082763
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519074(P2006−519074)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002474
【国際出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】