説明

樹脂製光反射体用基体

【課題】成形時の収縮により離型を阻害するような形状因子を有する成形品においても、外観と成形性に優れ、高温度雰囲気に曝されても高輝度感の保持が可能な樹脂組成物を用いた光反射体用基板を提供する。
【解決手段】ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100重量部に対して、少なくとも、ポリブチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性ポリエステル樹脂(b1)およびビニル系熱可塑性樹脂(b2)から選ばれる少なくとも一種以上の熱可塑性樹脂(B)10〜50重量部、平均一次粒子径が0.1〜10μmのタルク(C)と水溶性高分子バインダ(D)を含む顆粒状タルク(E)10〜50重量部、およびヒンダードフェノール系およびホスファイト系から選ばれた少なくとも一種の酸化防止剤(F)0.01〜2.0重量部を配合した樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製光反射体用基体に関する。特に、エクステンション用途に適した樹脂製光反射体用基体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ランプ等におけるハウジング、リフレクター、エクステンションや家電照明器具等などの光反射体は、ランプ光源の方向性、反射性のために、高い輝度感、平滑性、均一な反射率、さらには光源からの発熱に耐えうる高耐熱性等が要求される。よって光反射体としては、従来、金属製(板金)のものや、バルクモールディングコンパウンド(BMC)やシートモールディングコンパウンド(SMC)に代表される熱硬化性樹脂の表面に、金属メッキ加工や蒸着等により金属薄膜を設けたものが用いられてきた。
【0003】
しかしながら、金属製の光反射体は加工性が悪く、また重く扱い難いという欠点があった。一方、熱硬化性樹脂を成形してなる光反射体用基体の表面に金属薄膜を有する光反射体は、耐熱性、剛性、寸法安定性をはじめとして優れた特性を有している。しかしながら、熱硬化性樹脂の成形のためのサイクルが長く、また、成形の際にバリが発生したり、成形時のモノマー揮発によってガスが発生したりしていた。
【0004】
この様な問題を解決し、さらに、近年の光反射体の高機能化やデザインの多様化に対応し、かつ、生産性にも優れる、熱可塑性樹脂を用いて形成された光反射体用基体を用いることが検討されている。そして、反射体としては、このような熱可塑性樹脂組成物からなる光反射体用基体の表面に金属薄膜を設けたものが主流となってきている。
【0005】
この様な熱可塑性樹脂組成物からなる光反射体用基体には、機械的性質、電気的性質、その他物理的・化学的特性に優れ、かつ良好な加工性が要求される。そこで、該熱可塑性樹脂組成物として、結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂、特には、ポリブチレンテレフタレート樹脂、または、ポリエチレンテレフタレート樹脂と他の樹脂との混合物を主成分とし、これに、様々な強化材を添加配合した組成物が用いられてきた。
ここで、光反射体は、一般的に、射出成形により熱可塑性樹脂組成物を成形して光反射体用基体とし、その表面にアンダーコート等の前処理(下塗り)を行った後、真空蒸着等により光反射層として金属薄膜を形成して製造されていた。
【0006】
しかしながら、アンダーコート等の下塗りは、大幅なコストアップとなり、デザインの自由度も制限されるので、アンダーコートしなくとも高い輝度感を有する光反射体を得ることが望まれている。ここで、アンダーコートせずに光反射体用基体の一面に光反射層が設けられた反射体が、高い輝度感・均一な反射率を有するには、光反射体用基体が良好な表面平滑性を有し、且つ高い光沢性・輝度感を有することが必要となる。またその用途仕様から、原料となる樹脂の耐熱性や、樹脂組成物の成形時等におけるガス発生抑制(低ガス性)も重要な問題である。
【0007】
しかし、高輝度とするために、樹脂を射出成形するための成形金型の表面を著しく研磨すると、射出成形による成形時に成形体(光反射体用基体)の取り出しの際の型離れが悪くなり、成形サイクルが低下し、離型ムラ模様が成形体表面に現れやすくなる。これは、反射率の低下に起因する。そこで成形性を低下させないために離型性を向上させつつ、表面輝度を保持することが必要となる。
【0008】
さらに、車両用部材等に用いられる光反射体用基体は、通常、中空柱状構造を有する。そして、中空柱状構造を有する光反射基体は、その形状ゆえに成形時の収縮等によって金型に圧着して離型不良の原因となる。
【0009】
ここで、光反射体用基体に、粒子径の小さい無機フィラーを配合した樹脂組成物を用いることが多数提案されている(特許文献1〜7)。しかしながら、粒子径の小さいフィラーを用いることで樹脂組成中のフィラー分散不良や押出段階での作業環境の汚染、ホッパーでの詰まり、押出機への食い込み不良等、押出加工性の低下が起こり、剛性、寸法安定性、低収縮性および耐熱性を十分に満足する程の無機フィラーを添加することができなかった。一方、特許文献8〜10では、粒子径の小さいタルクを分散性を維持したまま顆粒化する技術が提案されているが、低収縮性、離型性について検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−203613号公報
【特許文献2】特開平08−183114号公報
【特許文献3】特開2000−35509号公報
【特許文献4】特開2001−316573号公報
【特許文献5】特開2002−294042号公報
【特許文献6】特開2006−225439号公報
【特許文献7】特開2005−97578号公報
【特許文献8】特開2006−77176号公報
【特許文献9】特開2006−111822号公報
【特許文献10】特開2007−284502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
かかる状況のもと、本発明者らが、さらに検討を行った結果、上記特許文献7〜10では樹脂中から発生するガスにより、光反射層である、金属薄膜表面を犯してしまうことが分かった。これは、光反射体の表面の曇りにつながる。特に、中空構造を有する樹脂成光反射体用基体については、その構造の特殊性から、離型性が問題となる。
以上述べたとおり、成形時の収縮により離型を阻害するような中空構造を有する光反射体用基体においても、成形品表面の平滑性が高く、成形時の収縮率が小さいものが求められている。本発明はかかる要求に答えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題のもと、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、特定の熱可塑性樹脂と、特定の無機フィラーと、特定の酸化防止剤を、特定の割合で配合することにより、成形性、押出加工性および離型性に優れた樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下の手段により達成された。
(1)主成分の樹脂成分である、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100重量部に対して、少なくとも、ポリブチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性ポリエステル樹脂(b1)およびビニル系熱可塑性樹脂(b2)から選ばれる少なくとも一種以上の熱可塑性樹脂(B)10〜50重量部、平均一次粒子径が0.1〜10μmのタルク(C)と水溶性高分子バインダ(D)を含む顆粒状タルク(E)10〜50重量部、およびヒンダードフェノール系およびホスファイト系から選ばれた少なくとも一種の酸化防止剤(F)0.01〜2.0重量部。を配合した樹脂組成物からなり、かつ、中空柱状構造を有する樹脂製光反射体用基体。
(2)前記水溶性高分子バインダ(D)量がタルク(C)に対して0.05〜1.5重量%であり、かつ、顆粒状タルク(E)の嵩密度が0.4〜1.5g/mlである、(1)に記載の樹脂製光反射体用基体。
(3)(b1)成分と、(b2)成分の重量比(b1/b2)が、1を越えて5以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の樹脂製光反射体用基体。
(4)(b1)成分がポリエチレンテレフタレート樹脂であり、(b2)成分がアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂であることを特徴とする(3)に記載の樹脂製光反射体用基体。
(5)前記樹脂組成物の樹脂成分の98重量%以上が、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)および前記熱可塑性樹脂(B)である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の樹脂製光反射体用基体。
(6)ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端カルボキシル基量が50eq/ton以下である(1)〜(5)のいずれか1項に記載の樹脂製光反射体用基体。
(7)前記樹脂製反射体用基体がエクステンション用である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の樹脂製光反射体用基体。
(8)(1)〜(7)のいずれか1項に記載の樹脂製光反射体用基体上に光反射層を有する光反射体。
【発明の効果】
【0013】
本発明における樹脂組成物は、成形品の表面外観、フォギング性評価、成形収縮率、離型性評価、押出生産性および押出作業性に優れたものであり、これらを用いることにより、表面外観等に優れた中空柱状構造を有する樹脂製光反射体用基体を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0015】
本発明における光反射体用基体とは、車両のランプ等に使用される中空柱状構造を有する樹脂製光反射体用基体をいい、例えば、特開2002−294042号公報、特開2008−71556号公報(特に、図5)、特開2009−197200号公報、特開2009−199769号公報、国際公開WO2009/005084号パンフレット、特開2006−225439号公報、特開2008−280498号公報、特開2005−41977号公報等の記載を参酌することができる。
【0016】
本発明において、「エクステンション」とは、車両用灯具のボディとカバー(またはアウタレンズ)とで形成される灯室内の、ランプの周囲に設けられ、少なくとも一主面に鏡面処理が施される、灯具の一構成部品であって、灯具を外部から観察したときに灯室内全体を鏡面色に見せて見栄えを向上させる目的、および/または、一のランプから隣接するランプ側へ漏洩する光を遮断して各ランプによる表示の視認性を高める目的で使用されるものである。自動車用灯具のエクステンションとしては、前照灯や尾灯に多用されているが、本発明では特に限定されず、その他、前照灯(ヘッドランプ)、尾灯(テールランプ)、制動灯(ストップランプ)、方向指示灯(いわゆるウインカー)、車幅灯、後退灯なども含む趣旨である。
【0017】
本発明における、「中空柱状構造」とは、例えば、円筒状物や枠状物、またはこの様な構造を部分的に有する成形品の様に、金型に溶融樹脂が抱きつく形状で射出成形を行うものが挙げられる。このような構造は、本発明で用いる樹脂組成物の溶融状態のものの冷却時の収縮が著しい際に、樹脂成形品が金型を抱き込んでしまい、離型不良の発生の原因となっている。本発明は、このような離型不良を改善できた点に優位性がある。
本発明における中空柱状構造としては、中空柱状部の厚み(T)が1〜5mmであり、高さ(H)が10〜200nmのものが例示される。
【0018】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂
本発明で用いる樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を主成分の樹脂とする。ここで、主成分の樹脂とは、樹脂組成物に含まれる樹脂のうち、含量が最も多い樹脂をいい、好ましくは、70重量%以上を占めることをいう。さらに、本発明では、樹脂成分の98重量%以上が、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)および後述する熱可塑性樹脂(B)であることが好ましい。このような構成とすることにより、表面外観および離型性をより向上させることができる。
自動車用のエクステンションに用いられる樹脂は、これまで、種々の熱可塑性樹脂が採用されていた。しかしながら、驚くべきことに、ポリブチレンテレフタレート樹脂を主成分とし、顆粒状タルクと酸化防止剤を組み合わせることにより、樹脂組成物から冷却されるときの収縮から抑制され離型性が向上し、中空構造を有する光反射体用基体に好適に用いることができることを見出した。
【0019】
ポリブチレンテレフタレートは、特に制限されず、ブチレンテレフタレート単位の単独重合体であってもよいし、ブチレンテレフタレート単位を繰り返し単位中70質量%以上含有する共重合体であってもよい。共重合されるモノマーとしては、テレフクル酸およびその低級アルコールエステル以外の二塩基酸成分として、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、コハク酸等の芳香族もしくは脂肪族多塩基酸またはそれらのエステル等が挙げられる。また、1,4−ブタンジオール以外のグリコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオベンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,3−オクタンジオール等のアルキレングリコール;ビスフェノールA、4,4'−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族アルコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等のアルキレンオキサイド付加体アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ化合物またはそれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0020】
本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の数平均分子量(Mn)は、特に制限はなく、適宜選択して決定することができる。通常は、1×104〜100×104であり、1×104〜30×104であることが好ましく、1×104〜10×104であることがさらに好ましい。
【0021】
また本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度[η]は、通常、0.5〜2.0dl/gであり、0.6〜1.4dl/gであることが好ましい。ここで固有粘度とは、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの重量比1:1の混合溶媒に試料を溶解し、ウベローデ粘度計を用いて30℃にて測定した粘度である。固有粘度を0.5以上とすることにより機械的強度がより向上する傾向にあり、2.0以下とすることにより、溶融成形時の流動性が低下し過ぎず、成形体の表面特性を光反射体としての高輝度を発揮し易い傾向にあり好ましい。
【0022】
また、本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は適宜選択して決定すればよいが、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。50eq/ton以下とすることにより本発明における樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しにくくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/ton以上である。
【0023】
本発明における(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基濃度は、ベンジルアルコール25mLにポリアルキレンテレフタレート0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定して得られた値をいう。末端カルボキシル基濃度を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調節する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
【0024】
本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法は任意であり、従来公知の任意のものを使用できる。例えば、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールを直接エステル化反応させる直接重合法と、テレフタル酸ジメチルを主原料として使用するエステル交換法とに大別される。
【0025】
前者は初期のエステル化反応で水が生成し、後者は初期のエステル交換反応でアルコールが生成するという違いがある。直接エステル化反応は原料コスト面から有利である。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法は、原料供給またはポリマーの払い出し形態から回分法と連続法に大別される。
【0026】
さらに、初期のエステル化(またはエステル交換)反応を連続操作で行い、続く重縮合を回分操作で行う方法や、初期のエステル化(またはエステル交換)反応を回分操作で行い、続く重縮合を連続操作で行う方法も挙げられる。
【0027】
尚、本発明における重量平均分子量の測定方法は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法であり、また酸価の測定方法は、0.5mol KOHエタノール溶液による電位差滴定法(ASTM D 1386)による。
【0028】
(B)熱可塑性樹脂
本発明における樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100重量部に対して、
ポリブチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性ポリエステル樹脂(b1)およびビニル系熱可塑性樹脂(b2)から選ばれる少なくとも一種以上の熱可塑性樹脂(B)10〜50重量部を含み、より好ましくは、20〜45重量部含む。
自動車用のエクステンションには、他の熱可塑性樹脂も広く用いられているが、本発明者が検討した結果、ポリブチレンテレフタレート樹脂を主成分とし、これに、上記の割合で、ポリブチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性ポリエステル樹脂(b1)およびビニル系熱可塑性樹脂(b2)から選ばれる少なくとも一種以上の熱可塑性樹脂(B)と、特定の添加剤を配合することにより、表面外観、フォギング性、成形収縮率、離型性、押出生産性および押出作業性の全てに総合的に優れた樹脂組成物が得られることを見出したものである。このような効果は、他の樹脂と、本発明で規定する添加剤の組み合わせでは得られない。
さらに、本発明における樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性ポリエステル樹脂(b1)およびビニル系熱可塑性樹脂(b2)の両方を含むことが好ましい。さらに、(b1)成分と、(b2)成分の重量比(b1/b2)が、1を越えて5以下の割合で配合されていることがより好ましく、1.5〜3.5の割合で配合されていることがさらに好ましい。このような配合比とすることにより、フォギング性を低下させずに成形収縮率を低下させることができる。
【0029】
ポリブチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性ポリエステル樹脂(b1)としては、ポリマー主鎖に−CO−O−結合を有し、加熱溶融できるポリブチレンテレフタレート樹脂以外のものをいう。その代表的なものとしては、ジカルボン酸又はその誘導体、例えば低級アルキルエステル、酸ハライド、酸無水物等と、グリコール又は二価フェノールとを縮合させて製造される飽和ポリエステル類、及び、ラクトンの開環重合によって製造される飽和ポリエステル類が挙げられる。具体的には、単独重合体では、ポリアルキレンテレフタレート類(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)等の縮合重合体、及び、ポリピバロラクトン、ポリ(ε−カプロラクトン)等の開環重合体がある。
また、共重合体では、アルキレングリコールとパラ−ヒドロキシ安息香酸(PHB)及びテレフタル酸とのコポリエステル、PHB及び6−オキシ−2−ナフトエ酸とのコポリエステルや、p,p'−ビスフェノールとPHB及びテレフタル酸とのコポリエステルである液晶性ポリエステル類等も挙げることができる。これらの中で、ポリアルキレンテレフタレート類(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)等が好適である。
本発明では、ポリアルキレンテレフタレート樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。
ポリエステルは、フェノールとテトラクロロエタンの1:1(重量比)の溶媒中で、30℃の固有粘度が、0.4〜1.5dl/gの範囲のものが好ましく、さらに好ましくは0.6〜1.3dl/gである。
【0030】
ビニル系熱可塑性樹脂(b2)としては、特に制限されず、公知のビニル系熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、エポキシ基含有アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、マレイミド系共重合樹脂等の非晶性樹脂が挙げられ、これに限定されるものではないが、これらから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂を含むことがさらに好ましい。
【0031】
アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂としては、特に制限されないが、アクリロニトリルとスチレンの比率は質量比でアクリロニトリル/スチレン=20/80〜45/55の範囲が好ましく、25/75〜35/65の範囲がより好ましい。アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂の製造方法としては、特に制限されないが、懸淘重合、乳化重合、溶液重合、バルク重合等が挙げられる。アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂の分子量は、特に制限されないが、テトラヒドロフランを溶媒としたゲルバーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量で50000〜200000(ポリスチレン換算)の範囲が好ましい。
【0032】
また、エポキシ基含有アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂としては、特に制限されないが、例えば、シアン化ビニル単量体単位15〜40質量%、芳香族ビニル単量体単位60〜84.9質量%、およびエポキシ基含有ビニル単量体単位0.1〜0.4質量%からなる共重合樹脂が好ましい。エポキシ基含有アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂の製造方法としては、特に制限されないが、懸淘重合、乳化重合、溶液重合、バルク重合等が挙げられる。
【0033】
マレイミド系共重合樹脂としては、特に制限されないが、マレイミド系単量体単位、並びに、芳香族ビニル系単量体単位および/または他のビニル系単量体単位からなる共重合樹脂が挙げられ、マレイミド系単量体単位の含有量が15〜65質量%、好ましくは20〜50質量%の範囲のものが挙げられる。マレイミド系単量体としては、N−シクロヘキシルマレイミド、N−オルトクロルフェニルマレイミド、N−オルトブロモマレイミド、N−フェニルマレイミドが好ましく、N−フェニルマレイミドがより好ましい。これらマレイミド系単量体は1種あるいは2種以上を組み合わせてもよい。芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。これら芳香族ビニル系単量体は1種あるいは2種以上を組み合わせて用いる事が出来る。芳香族ビニル系単量体単位の含有量は、35〜85質量%、好ましくは40〜70質量%の範囲が好ましい。他のビニル系単量体としては、シアン化ビニル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸エステル系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体などが挙げられ、特にシアン化ビニル系単量体が好ましい。
【0034】
(E)顆粒タルク
本発明で用いる顆粒タルクは、平均一次粒子径が0.1〜10μmのタルク(C)と水溶性高分子バインダ(D)を含む顆粒状タルクである。
タルク(C)は、平均一次粒子径が好ましくは0.5〜7μmの範囲のものである。ここで平均粒子径とは、X線透過による液相沈降方式で測定されたD50をいう。このような測定ができる装置としては、Sedigraph粒子径分析器(Micromeritics Instruments社製、モデル5100)を挙げることができる。タルク(C)の平均一次粒子径が0.1μm未満では、熱可塑性樹脂組成物の機械的強度や寸法安定性に対する改良効果が小さく、10μmを超えると成形品の外観不良が発生し易くなるので好ましくない。
本発明で用いるタルク(C)の化学組成は、含水ケイ酸マグネシウムであり、通常SiO2 を58〜66重量%、MgOを28〜35重量%、H2 Oを約5重量%含んでいる。その他少量成分としてFe2 3 が0.03〜1.2重量%、Al2 3 が0.05〜1.5重量%、CaOが0.05〜1.2重量%、K2 Oが0.2重量%以下、Na2 Oが0.2重量%以下等、含有しており比重は約2.7である。
【0035】
本発明で用いる顆粒状タルク(E)は、上記のようなタルク(C)が水溶性高分子バインダ(D)によって処理されている。水溶性高分子バインダ(D)を用いることにより、小粒径のタルクを顆粒状とし、コンパウンド時に樹脂の分解を抑制し、押出し性を改善できる。
本明細書における水溶性高分子バインダ(D)は、水に可溶な高分子化合物であって、タルクとの造粒性が高く、不活性で安定な物質であり、色相に優れ、得られた熱可塑性樹脂成形品の機械的特性を低下させないものであれば制限はなく、ポリピニルアルコール、ポリピニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、寒天、多糖類(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロプルセルロース、カルポキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系誘導体や澱粉等)、タンパク質(ゼラチン、膠等)等が挙げられる。これらの中でも、粘結性が高く、タルクとの吸着性の高い多糖類、タンパク質がより好ましく、中でもタルク分散性、外観改善の面からカルポキシメチルセルロースナトリウムが特に好ましい。顆粒状タルク(E)の製造時に使用される水溶性高分子バインダ(D)の量は、タルク(C)に対して、好ましくは0.05〜1.5重量%であり、より好ましくは0.08〜0.8重量%である。水溶性高分子バインダ(D)量が0.05重量%以上とすることにより、顆粒状タルク(E)と熱可塑性樹脂の予備の混合作業や、溶融混練機等への移し替え作業中に、顆粒状タルクが壊れるのを抑制し、粒径の小さいタルクの飛散・粉塵の発生による作業環境の悪化や、押出加工性の低下を抑制する傾向にあり好ましい。一方、水溶性高分子バインダ(D)の量を1.5重量%以下とすることにより、顆粒状物が壊れにくくなり、顆粒状タルク(E)の分散性を向上させることが可能になる。
【0036】
顆粒状タルク(E)の嵩密度は、好ましくは0.4〜1.5g/mlの範囲であり、より好ましくは0.5〜1.3g/mlである。嵩密度を0.4g/ml以上とすることにより、押出加工性が向上し、嵩密度を1.5g/ml以下とすることにより、タルク(C)の分散性を向上させることができる。ここで、顆粒状タルク(E)の嵩密度は、以下の方法により求めた。
1) 試料を目開きが1.4mmの篩上に乗せ、ハケで均等に軽く掃きながら篩を通す。
2) 上記試料をJIS K5101に規定された嵩密度測定装置に付属する受器に山盛りになるまで投入する。
3) 受器の投入口から上部の山盛りになった試料をヘラで削り取り、受器内の試料の重量を測定し、下式にて嵩密度を算出する。
嵩密度(g/ml)=受器内の試料の重量(g)/受器の容量(ml)
【0037】
また、本発明で用いる顆粒状タルク(E)は、破壊率が好ましくは81〜100重量%の範囲であり、更に好ましくは90〜100重量%の範囲のものである。破壊率が十分大きくないと、組成物中でタルク(C)の分散不良、成形品の外観不良、機械的特性不十分等の目的未達が発生する。なお、顆粒状タルク(E)の破壊率は、バインダ含有率や製造条件により調整できる。
【0038】
本発明で用いる顆粒状タルク(E)は、その製造方法に特に制限はないが、タルク(C)と水溶性高分子バインダ(D)との混練性を高めるとともに、顆粒製造時における混練物に可塑性を与え、製造を容易にし、かつ、造粒機の摩耗を低減し、さらに顆粒状物の硬さを調製するために湿潤剤を加えることが好ましい。通常、タルク(C)と水溶性高分子バインダ(D)とに潤滑剤を加え、また、必要に応じて分散剤やその他の添加剤を加えて、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機で撹拌しながら混合物とする。この混合物を一軸や二軸等のスクリュー式押出機等で混練後、ストランド状に押出し、カッティングして造粒し、流動式乾燥機やバンドヒーター等を用いて乾燥して、顆粒状タルク(E)を製造する。乾燥した後に分級を行うこともできる。
【0039】
上記のようにして得られた顆粒状タルク(E)は、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100重量部に対し10〜50重量部配合され、好ましくは10〜40重量部、より好ましくは15〜35重量部配合される。顆粒状タルク(E)の配合率を10重量部以上とすることにより、樹脂組成物の寸法安定性や剛性の改良効果が大きくなり、50重量部以下とすることにより、流動性や表面外観、耐衝撃性を向上させることができる。
【0040】
(F)酸化防止剤
本発明における樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、ヒンダードフェノール系およびホスファイト系から選ばれた少なくとも一種の酸化防止剤(F)を0.01〜2.0重量部含み、好ましくは、0.1〜1.0重量部の範囲で含む。
従来から、熱可塑性樹脂組成物に酸化防止剤を配合することは検討されていたが、タルクと酸化防止剤の関係は全く検討されていなかった。そして、驚くべきことに、本発明における樹脂組成物において、上記顆粒状タルク(E)と特定の酸化防止剤を組み合わせて用いることにより、本発明の効果を奏することを見出したものである。特に、本発明で規定する顆粒状タルク以外のタルクと、ヒンダードフェノール系および/またはホスファイト系酸化防止剤を併用しても、本発明の効果が十分に奏されない。従って、本発明において酸化防止剤を添加する意義は極めて高い。
【0041】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の例としては、1,6 −ヘキサンジオールビス〔3−(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。
フォルファイト系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、トリ(ノニルフェニル)フォスファイト等のトリアリルフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライル−ビス−(2,4 −ジ−t−ブチルフェニル−フォスファイト)、ジ−(2,6 −ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等の耐熱性フォスファイト類等が挙げられる。
【0042】
離型剤
本発明における樹脂組成物は、金型からの離型性をさらに高めるという点から、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、金属膜密着性を阻害しにくいという点で、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましい。
【0043】
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、ポリオレフィン系化合物の分散が良好であるという点から、重量平均分子量が、700〜10,000、更には900〜8,000のポリエチレンワックスが好ましい。
【0044】
脂肪酸エステル系化合物としては、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物などが挙げられ、中でも、炭素数11〜28、好ましくは炭素数17〜21の脂肪酸で構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ぺンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリストールジステアレート等が挙げられる。
【0045】
また、シリコーン系化合物としては、樹脂との相溶性などの点から、変性されている化合物が好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端および/または片末端に有機基を導入したシリコーンオイルなどが挙げられる。導入される有機基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基などが挙げられ、好ましくはエポキシ基が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
【0046】
離型剤の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、好ましくは、0.05〜2重量部である。該配合量を0.05重量部以上とすることにより、溶融成形時の離型不良を抑制して、表面性を向上させることが可能になり、2重量部以下とすることにより、離型剤のブリード抑制、及び樹脂組成物の練り込み作業性が向上する。離型剤の配合量は、好ましくは0.07〜1.5重量部、さらに好ましくは0.1〜1.0重量部である。
【0047】
<その他の添加剤>
本発明における樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、難燃剤、熱安定剤、滑剤、触媒失活剤、結晶核剤、着色剤、顔料等を挙げることができる。これらの添加剤は、樹脂の重合途中又は重合後に添加することができる。さらに、ポリブチレンテレフタレート樹脂に所望の性能を付与するため、紫外線吸収剤、耐候安定剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、顆粒状タルク以外の無機充填剤等を配合してもよい。
これらの添加剤の含量は、本発明における樹脂組成物の10重量%以下であることが好ましい。
【0048】
難燃剤としては、特に制限されず、例えば、有機ハロゲン化合物、アンチモン化合物、リン化合物、その他の有機難燃剤、無機難燃剤等が挙げられる。有機ハロゲン化合物としては、例えば、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレートが挙げられる。アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダが挙げられる。リン化合物としては、例えば、リン酸エステル、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等が挙げられる。その他の有機難燃剤としては、例えば、メラミン、シアヌル酸等の窒素化合物が挙げられる。その他の無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ素化合物、ホウ素化合物が挙げられる。
これらの難燃剤の配合量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部である。難燃剤の配合量を0.1重量部以上とすることにより、難燃性をより効果的に発現することができ、50重量部以下にすることにより、物性、特に機械的強度をより高く保つことができる。
【0049】
前記の種々の添加剤の配合方法は、特に制限されないが、ベント口から脱揮できる設備を有する1軸又は2軸の押出機を混練機として使用する方法が好ましい。各成分は、付加的成分を含めて、混練機に一括して供給してもよいし、順次供給してもよい。また、付加的成分を含めて、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合、混練しておいてもよい。
【0050】
本発明の光反射体は、上述の方法で得られた樹脂組成物からなる光反射体用基体上に光反射層を有するものであり、好ましくは、光反射体用基体の表面に光反射層を有するものである。本発明における樹脂組成物を成形する成形方法としては、生産性と、得られる光反射体用基体の表面性が良好となるなど、本発明の効果が顕著であることから、射出成形法により成形することが好ましい。従来公知の任意の成形方法としては、例えば、通常の射出成形の他に、ガスアシスト射出成形、中空成形、圧縮成形等が挙げられる。
【0051】
本発明における光反射層は、通常、金属蒸着等によって形成される金属薄膜であり、光反射体用基体の表面に形成される。金属蒸着の方法は特に制限はなく、従来公知の任意の方法を用いればよい。例えば、以下に示す方法が挙げられる。
【0052】
光反射体用基体を真空状態下の蒸着装置内に静置し、アルゴン等の不活性ガスと酸素を導入後、光反射体用基体の表面にプラズマ活性化処理を施す。次に蒸着装置内においてターゲットを担持した電極に通電し、チャンバー内に誘導放電したプラズマによりスパッタしたスパッタ粒子(例えば、アルミ粒子)を光反射体用基体に付着させる。さらに必要に応じて、アルミニウム蒸着膜の保護膜として、珪素を含むガスをプラズマ重合処理するか、または酸化珪素をイオンプレーティング法等により、アルミニウム蒸着膜の表面に付着してもよい。
【0053】
本発明の光反射体用基体は、光反射体用基体の表面に、アンダーコートを形成することなく、直接、金属薄膜を設ける場合に、特に有用である。つまり、本発明の光反射体用基体は、表面性に優れ、その表面にプライマー処理を施さずに直接に金属蒸着しても、金属薄膜との接着性に優れ、良好な光沢表面が得られる。さらに、射出成形時においても、光反射体用基体の金型からの離型性が高いので、金型の転写むらの発生も抑制できる。
【0054】
金属薄膜に用いられる金属としては、例えば、クロム、ニッケル、アルミニウムなどが挙げられ、中でもアルミニウムが好ましい。尚、光反射体用基体の表面と金属薄膜との接着力を上げるために、蒸着前に、光反射体用基体の表面を洗浄、脱脂してもよい。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0056】
これらの実施例および比較例においては下記の成分を使用した。
【0057】
[樹脂成分]
(A)ポリブチレンテレフタレート(PBT):三菱エンジニアリングプラスチックス(MEP)社製、ノバデュラン5008、η=0.85、末端カルボキシル基量20eq/ton、Mn20,000
(B−1)ポリエチレンテレフタレート(PET):三菱化学社製PBK1、η=0.65
(B−2)アクリロニトリル−ポリスチレン(AS):UMGABS社製、AP−A
【0058】
[離型剤]
離型剤1:商品名H−476D ペンタエリスリトールジステアレート 融点53℃ 密度0.918/cm3
離型剤2:クラリアント社製 商品名リコワックスPED522 酸化ポリエチレン 酸価22〜28mgKOH 滴点 102〜107℃ 密度0.95〜0.97g/cm3 分子量Mn1000 Mw3100
離型剤3:クラリアント社製 リコモントCaV102 酸価 10mgKOH/g以下 滴点147℃以下 密度0.98g/cm3以下、アルカリ含有量4%(Ca)以下
【0059】
[タルク]
顆粒状タルク1:松村産業社製 ハイコンタルクC−3
タルクは、平均一次粒子径4〜7μm、嵩密度0.7g/mlである。また、本顆粒状タルクは、タルクに対して、0.2重量%のカルポキラメチルセルロースナトリウムを含む。
顆粒状タルク2:松村産業社製 ハイコンタルクC−12
タルクは、平均一次粒子径1.8μm、嵩密度0.74g/mlである。また、本顆粒状タルクは、タルクに対して、0.3重量%のカルポキラメチルセルロースナトリウムを含む。
圧縮タルク:松村産業社製 ハイフィラー#5000PJC 1.8μm 嵩密度0.62g/ml
汎用タルク1:松村産業社製 ハイフィラー#5000PJ 1.8μm 嵩密度0.12g/ml
汎用タルク2:松村産業社製 クラウンタルクP 11μm 嵩密度0.34g/ml
表面処理タルク:林原化成社製 CHC−13S−10E
タルクは平均一次・・・2.8μm 嵩密度0.35g/mlである。また表面処理タルクはタルクに対して1重量%の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含む。
[酸化防止剤]
ホスファイト系酸化防止剤:ADEKA社製 PEP−36 融点237℃ 分子量633
ヒンダードフェノール系酸化防止剤:ADEKA社製 AO−330 融点244℃ 分子量775
【0060】
[実施例および比較例]
樹脂成分、およびその他の添加剤を、表1の組成で十分にドライブレンドした後、260℃に設定した2軸スクリュウ押出機を用い、40Kg/時間の押出速度でペレット化した。
得られたペレットを射出成形前に120℃、6時間乾燥し、型締め力が80tonの射出成形機を用い、成形温度260℃、成形体形状が60mm×60mm×3mmの鏡面金型を用い、金型温度60℃で成形して、光反射体用基体を得た。射出成形時の離型性は良好であり、無抵抗で成形体の取り出しが可能であった。
【0061】
[試験・評価方法]
表面外観
金型温度設定60℃で成形した板状成形品の表面外観を目視にて観察し、成形品表面の平滑性が高く、曇りのないものを◎、成形品表面のタルク凝集物や曇りのないものを○、凝集物が少しあるものを△+、ガスによる曇りやフローマークのあるものを△−、凝集物が多いものを×として評価した。
【0062】
フォギング性評価
成形品を粉砕しペレット大とし、試験管(φ20×160mm)に10g入れ、180℃に温度調節したフォギング試験機(GLサイエンス社製中型恒温槽L−75改良機)にセットした。さらに、上記試験管に、耐熱ガラス(テンパックスガラスφ25×2mmt)の蓋をした後、耐熱ガラス部を25℃雰囲気に温度調節し、180℃で20時間、熱処理を実施した。熱処理後、ガラス板内側には樹脂組成物より昇華した分解物等による付着物が析出した。熱処理終了後、耐熱ガラスの付着物の状態を肉眼で観察し、以下の3段階の基準で評価した。
A:ガラスプレートへの付着、曇りはほとんど無く、目視にて透過像が鮮明に認識できる。
B:ガラスプレートへの付着、曇りはややあり、透過像は多少ぼやけるが目視にて認識できる。
C:ガラスプレートへの付着、曇りが多く、透過像は認識できない。
【0063】
成形収縮率
射出成形機(日精樹脂工業社製、NEX80)を用い、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件下で、縦100mm、横100mm、厚み2mmの四角形の平板をフィルムゲート金型により成形し、流れの直角方向(TD)の成形収縮率を測定した。
【0064】
離型性評価
住友重機械工業社製SE−50成形機を用い、直径55mm×35mm、深さ16mm、厚み1.5mmの金型を用いて、成形温度260℃、金型温度60℃で連続成形し、成形性を以下の3段階の基準で評価した。
○:30ショット以上、不良発生無く連続成形できる。
△:10ショット以上30ショット未満で離型不良が発生する(コアへの抱き付きによるエジェクトピン突き抜け)。
×:離型不良により連続成形できない。
【0065】
押出生産性
二軸押出機(日本製鋼所製、TEX30XCT、L/D=42)を用いて、ホッパーでの詰まり、押出機への食い込み不良等の問題がなく、スムーズに押出可能な樹脂組成物の最大吐出量(kg/hr)から以下のようにして評価した。
○:25kg/hr以上
△:15〜25kg/hr
×:15kg/hr以下
【0066】
押出作業性
移し替え作業や押出機運転中における、樹脂組成物調製時のタルクの飛散・粉塵の発生による作業環境の悪化度合について、周囲の粉塵濃度を測定し、粉塵濃度(mg/m3)が0.05以下を◎、0.05〜0.1を○、0.1〜0.3を△、0.3以上を×として評価した。なお、粉塵濃度は、柴田科学社製のデジタル粉塵計P−5H型使用して測定した。
【0067】
【表1】

【表2】

【表3】

【0068】
上記表の結果から明らかなとおり、本発明における樹脂組成物を用いた成形品は、表面外観、フォギング性評価、成形収縮率、離型性評価、押出生産性および押出作業性に優れたものであり、優れた中空柱状構造を有する樹脂製光反射体用基体が得られることが分かる。
一方、樹脂成分として、ポリブチレンテレフタレート樹脂のみを用いた場合(比較例1)、表面外観および離型性に劣ることが分かる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、ポリブチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性ポリエステル樹脂およびビニル系熱可塑性樹脂の配合量が50重量部を超える場合も、表面外観に劣ることが分かる。一方、タルクとして、顆粒状タルク以外のものを用いた場合、押出生産性、表面外観フォンギング性が両立できないことが分かる。
また、一般的な表面処理タルクでは顆粒状とならないため押出生産性を十分に満足することができず、表面外観と押出生産性を両立することができないことが分かる(比較例13)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分の樹脂成分である、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100重量部に対して、少なくとも、
ポリブチレンテレフタレート樹脂以外の熱可塑性ポリエステル樹脂(b1)およびビニル系熱可塑性樹脂(b2)から選ばれる少なくとも一種以上の熱可塑性樹脂(B)10〜50重量部、
平均一次粒子径が0.1〜10μmのタルク(C)と水溶性高分子バインダ(D)を含む顆粒状タルク(E)10〜50重量部、および
ヒンダードフェノール系およびホスファイト系から選ばれた少なくとも一種の酸化防止剤(F)0.01〜2.0重量部、
を配合した樹脂組成物からなり、かつ、中空柱状構造を有する樹脂製光反射体用基体。
【請求項2】
前記水溶性高分子バインダ(D)量がタルク(C)に対して0.05〜1.5重量%であり、かつ、顆粒状タルク(E)の嵩密度が0.4〜1.5g/mlである、請求項1に記載の樹脂製光反射体用基体。
【請求項3】
(b1)成分と、(b2)成分の重量比(b1/b2)が、1を越えて5以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂製光反射体用基体。
【請求項4】
(b1)成分がポリエチレンテレフタレート樹脂であり、(b2)成分がアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂製光反射体用基体。
【請求項5】
前記樹脂組成物の樹脂成分の98重量%以上が、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)および前記熱可塑性樹脂(B)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂製光反射体用基体。
【請求項6】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端カルボキシル基量が50eq/ton以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂製光反射体用基体。
【請求項7】
前記樹脂製反射体用基体がエクステンション用である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂製光反射体用基体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂製光反射体用基体上に光反射層を有する光反射体。

【公開番号】特開2011−133523(P2011−133523A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290275(P2009−290275)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】