説明

機械式駐車設備および当該設備における出庫制御方法

【課題】出庫待機用の専用スペースを設けずに、出庫予約があった場合でも出庫を迅速に行い得る機械式駐車設備を提供する。
【解決手段】各駐車階3の中央に設けられた車両の搬送台車6の走行用通路7の両側に配置された各駐車室列8に、通路側から奥側に向かって順番に、手前側駐車室11a、中央駐車室11b、奥側駐車室11cを設けるとともに、この通路に最も近い手前側駐車室11aを、出庫予約が行われた際の待機室に兼用させたものであり、また入庫車両を格納する際に、手前側駐車室11aに駐車車両が格納されている場合には、当該入庫車両と駐車車両との入出庫頻度レベルを比較し、入出庫頻度レベルが高い方の車両を手前側駐車室11aに格納させるようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車設備、特に出庫予約を行うことができる駐車設備およびその出庫制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体駐車設備の中には、出庫口付近に設けられた出庫指示手段による出庫指示から、指示した車両が出庫口に現れるまでの待ち時間を短縮するものとしては、出庫リフトに隣接またはその付近に設けられた待機専用の駐車室に、出庫予約が行われた車両を搬送しておき、出庫指示があったときに、迅速に出庫し得るようにしたものがある(例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平7−158301号公報
【特許文献2】特開2002−194913号公報
【特許文献3】特開2003−269000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の各立体駐車場においては、出庫待機用の専用スペースが必要とされるため、不特定多数の利用者が頻繁に入出庫を行う繁華街などや、高集客力を有する施設に設置される立体駐車場には向いていると思われるが、特定の利用者が共同で所有しコストを負担しているような、例えば大規模マンションに備え付けられた機械式の立体駐車場の場合には、出庫待機専用の専用スペースを設けることは、ごく短時間の利用のために固定資産を余分に保持することになるため、コスト的に不利となる。
【0004】
また、出庫予約がキャンセルになった場合、当該車両が出庫待機用の専用スペースから元の駐車室に、または別な駐車室に再度搬送されることになり、搬送台車の稼働頻度が増えることになり、余分な動力を消費するとともに車両搬送に伴う余分な騒音も増えてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、出庫待機用の専用スペースを必要とせずに、出庫予約があった場合に、その出庫に迅速に対応し得るとともに、搬送台車の稼働頻度も減らし得る立体駐車設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の機械式駐車設備は、入庫部および出庫部(または入出庫部;この部分は解決手段へ移動)が配置された駐車用空間部と、
この駐車用空間部内に設けられた搬送用通路に走行自在に配置された車両の搬送台車と、
上記搬送用通路の側方位置において、当該通路に近い手前側位置より当該通路から遠い奥側位置に向かって複数の駐車室がそれぞれ配置されてなる複数の駐車室列と、
これら各駐車室列に配置されて車両を載置して各駐車室列における各駐車室毎に移動させ得る移動装置と、
入庫を指示するための入庫指示手段および出庫を指示するための出庫指示手段と、
出庫の予約を指示するための出庫予約指示手段と、
上記各指示手段からの指示に基づき上記搬送台車および移動装置を作動させて車両の入出庫を行わせる制御装置とを具備するとともに、
上記各駐車室列の手前側位置の駐車室を出庫時における待機室として兼用させるようになし、
さらに上記制御装置に、
各駐車室に対する駐車車両の有無・車両特定データなどの駐車情報を記録するデータベース部と、
上記入庫指示手段からの入庫指示に基づき上記データベース部から空き駐車室を検索するとともに当該空き駐車室に入庫車両を入庫させるための入庫制御部と、
上記出庫指示手段からの出庫指示に基づき上記データベース部から当該出庫車両が格納された駐車室を検索するとともに当該駐車室から出庫車両を出庫させるための出庫制御部と、
上記出庫予約手段からの出庫予約指示に基づき上記データベース部から当該出庫予約車両が格納された駐車室を検索するとともに当該出庫予約車両が駐車室列の少なくとも手前位置の駐車室兼待機室以外に格納されている場合に、その出庫予約車両より搬送用通路側に格納されている駐車車両とを入れ替えさせる出庫予約制御部とを具備したものである。
【0007】
また、請求項2に係る機械式駐車設備は、請求項1に記載の駐車設備におけるデータベース部に、
利用者、駐車室の使用状態などの駐車情報を記録するデータベースと、
各制御部からの指示によりデータベース内を検索するとともに、入庫作業、出庫作業および出庫予約作業が完了した際に、その作業完了後における駐車情報を更新するための検索処理部とを具備させたものである。
【0008】
また、請求項3に係る機械式駐車設備は、請求項1または2に記載の駐車設備におけるデータベースに、駐車車両の入出庫頻度レベルを記録させるとともに、
入庫制御部により、駐車車両が格納されている入庫先候補の駐車室列に車両を入庫させる際に、
当該入庫車両に付与された入出庫頻度レベルと、入庫先候補の駐車室列に格納されている駐車車両の入出庫頻度レベルとを比較し、当該入庫車両の入出庫頻度レベルが高い場合には、上記駐車車両よりも当該駐車室列の手前側位置に入庫させ、当該入庫車両の入出庫頻度レベルが低い場合には、他の駐車室列に対して上記手順を繰り返すようにしたものである。
【0009】
また、請求項4に係る機械式駐車設備は、請求項1または2に記載の駐車設備におけるデータベースに、駐車車両の入出庫頻度レベルを記録させるとともに、
入庫制御部により、駐車車両が格納されている入庫先候補の駐車室列に車両を入庫させる際に、
当該入庫車両に付与された入出庫頻度レベルと、入庫先候補の駐車室列に格納されている駐車車両の入出庫頻度レベルとを比較し、当該入庫車両の入出庫頻度レベルが低い場合には、当該駐車車両を空の駐車室を有する他の駐車室列に移動させた後、当該入庫車両を入庫先候補の駐車室列の奥側位置に入庫させるとともに上記他の駐車室列に移動された駐車車両を手前側位置に戻すようにしたものである。
【0010】
さらに、本発明の機械式駐車設備における出庫制御方法は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の機械式駐車設備における出庫制御方法であって、
出庫予約指示手段により出庫予約を行う出庫予約ステップと、
この出庫予約ステップにて出庫予約された当該出庫予約車両の駐車室を認識する駐車室認識ステップと、
この駐車室認識ステップにて認識された駐車室が駐車室兼待機室でない場合に当該駐車室列の搬送用通路側に他の駐車車両が格納されているか否かを認識する駐車車両認識ステップと、
この駐車車両認識ステップにて他の駐車車両を認識した場合に、他の空の駐車室を検索するとともに当該検索された空の駐車室に上記他の駐車車両を移動させる駐車車両移動ステップと、
この駐車車両移動ステップにて空になった駐車室兼待機室に出庫車両を移動させる出庫車両移動ステップと、
この出庫車両移動ステップにて駐車室兼待機室に移動された出庫車両に対して出庫予約指示手段から出庫指示があった場合に、当該駐車室兼待機室に移動された出庫車両を出庫口まで移動させる出庫ステップとを具備した方法である。
【発明の効果】
【0011】
上記機械式駐車設備およびその出庫制御方法によると、出庫予約を行う場合、当該出庫に係る出庫予約車両は、駐車階に配置された各駐車室列の手前側駐車室、すなわち待機室兼駐車室に移動させるようにしたので、例えば待機専用のスペースを設ける場合に比べて、駐車利用スペースの有効利用を図ることができる。
【0012】
また、車両を入庫させる際に、当該入庫車両と既に駐車されている駐車車両との入出庫頻度レベルを比較して、この入出庫頻度レベルが高い方の車両を、駐車室兼待機室に格納させるようにしたので、車両を出庫させる際に必要な作業を少なくすることができ、延いては、設備のランニングコストの低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1に係る機械式駐車設備および当該駐車設備における車両の入出庫等の制御方法について、図面に基づき説明する。
【0014】
図1〜図3に示すように、この機械式駐車設備は、建屋1の例えば地下(勿論、地上であってもよい)に駐車空間部2が形成されるとともに、この駐車空間部2内には、車両Cの駐車用スペースが多数設けられた駐車階3が上下に複数配置されており、また出入用通路Rに対応する階、例えば建屋1の1階(地上部分)には、車両の入庫口(入庫バースとも言う)4および出庫口(出庫バースとも言う)5が設けられている。勿論、入庫口と出庫口とが同一箇所(入出庫口ともいう)に設けられている場合もある。
【0015】
そして、駐車空間部2内に設けられる駐車階3については、例えば中央に車両Cの搬送台車6の走行用通路(搬送用通路)7が配置されるとともに、その両側には、走行用通路7に近い手前からより離れた遠い奥側に向かって例えば3台の車両Cを格納し得る駐車室列8が、走行用通路7の走行方向に沿って複数列並置されている。なお、各駐車階3の走行用通路7には、搬送台車6を案内する案内レール7aが設けられている。
【0016】
そして、これら各駐車室列8には、手前、中央、奥の任意位置に移動させ得るスラットコンベヤなどの移動装置(例えば、ベルトコンベヤを用いてもよく、またコンベヤに車両を直接載せてもよいしパレットを介して載せるようにしたものでもよい)9が一体となり設けられており、言い換えれば、各駐車室列8の移動装置9上には、手前側駐車室11(11a)、中央駐車室11(11b)、奥側駐車室11(11c)が配置されていることになる。なお、搬送台車6にも、移動装置9と同じ構造の例えばスラットコンベヤが用いられた移載装置10が設けられており、また図示しないが、入庫口4、出庫口5および後述する各エレベータにも、同様のスラットコンベヤが用いられた移載装置が配置されている。
【0017】
したがって、この移動装置9を駐車室列8の奥行き方向(搬送台車の走行方向と直交する方向)で移動させることにより、車両Cを、手前側駐車室11a、中央駐車室11b、奥側駐車室11cのいずれかに移動させることができる。詳しく説明すれば、手前側駐車室11aに格納された状態で、別の車両を格納する場合、手前側駐車室11aの車両が中央駐車室11bに移動され、新たに駐車される車両が手前側駐車室11aに格納されることになる。さらに、別の車両を格納する場合には、手前側駐車室11aの車両が中央駐車室11bに移動されるとともに中央駐車室11bの車両が奥側駐車室11cに移動され、新たに駐車される車両が手前側駐車室11aに格納されることになる。言い換えれば、格納される車両は、常に、手前側駐車室11aから奥側駐車室11cに向かって順番に格納され、また空き駐車室(空き室ともいう)がある場合には、常に、奥側駐車室11cから空き室となる。
【0018】
ところで、この駐車設備においては、後述する出庫予約が行われた場合に、出庫を迅速に行うために、走行用通路7に接している手前側駐車室11aを出庫するための待機室としても利用するようにされており、以下、この手前側駐車室11aを駐車室兼待機室ともいう。
【0019】
また、この駐車設備には、図2および図4に示すように、駐車室11を構成(形成)する移動装置9、搬送台車6の他に、入庫用エレベータ12、出庫用エレベータ13、入庫口4近傍に配置される入庫指示手段14、出庫口5近傍に配置される出庫指示手段15、所定の複数箇所(後述する)に配置される出庫予約手段16および駐車設備の管理室などに配置される制御装置17が具備されている。
【0020】
なお、本実施の形態1における駐車設備は、ショッピング施設に併設されているものとして説明し、この場合、従業員(以下、特定利用者という)とお客(以下、一般利用者という)とが利用することになる。
【0021】
このため、特定利用者が使用する出庫予約手段16は従業員の控え室に配置されるとともに、一般利用者が使用する出庫予約手段16はショッピング施設の各階の適当な場所に配置されることになる。なお、出庫予約手段16を、入庫口4、出庫口5などに設けることもできる。
【0022】
また、以下の説明においては、入庫(駐車)しようとする車両を入庫車両といい、駐車室11に格納された車両を駐車車両といい、出庫しようとする車両を出庫車両という。
上記入庫指示手段14は、入庫口4付近に設けられており、利用者の入庫車両を特定し得るデータを入力するためのものである。
【0023】
このデータとしては、特定利用者の場合には、予め、制御装置17側に登録された従業員番号(利用者データともいう)、車両番号(車両データであり、例えばナンバープレートに記載された番号)などが用いられ、また一般利用者の場合には、入庫指示手段17で発行された駐車券に記載または電磁的に記録された駐車券番号や、発券時に車両番号の入力を求めるのであれば当該車両番号(券番号、車両番号を車両データとして扱う)などが用いられる。ここでは、従業員番号と駐車券番号を用いるものとし、これらを纏めて呼ぶ場合には識別番号という。
【0024】
したがって、この入庫指示手段14として、具体的には、例えば特定利用者の従業員番号を入力するタッチパネル(入力ボードともいう)、および一般利用者のための駐車券の発行機能を有する発券機などが用いられる。
【0025】
上記出庫指示手段15は、出庫口5付近に設けられており、利用者が出庫車両を特定し得る車両データを入力するものである。
この入力データとしては、入庫指示手段14の箇所で説明したものと同じもの、すなわち識別番号が用いられる。したがって、出庫指示手段15として、具体的には、特定利用者の従業員番号や車両番号を入力するタッチパネル(入力ボード)、および駐車券の読取機などが用いられる。
【0026】
上記出庫予約手段16についても、出庫指示手段15と同様のものが用いられるが、出庫車両を特定するデータを入力するタッチパネル以外に、出庫時刻(時刻そのもの、現時刻から何分後等)の入力手段も具備され(勿論、タッチパネルにこの入力機能を具備させてもよい)、さらに当該出庫予約が受け付けられた場合に、この受け付けた旨を制御装置17から利用者に伝える伝達手段(音声または表示画面などを用いたもの)も具備されている。
【0027】
上記制御装置17には、図4に示すように、駐車設備に設けられた各動作機器、例えば入庫用エレベータ12、出庫用エレベータ13、各駐車階3に配置された搬送台車6および移載装置10、各駐車室列8に設けられた移動装置9、入庫口4および出庫口5に設けられた移載装置などを制御して基本的な入出庫動作を行わせるための基本動作部21と、上記入庫指示手段14からの利用者データ、車両データ、入庫時刻(入力時刻)などの入庫情報を受けて入庫動作を基本動作部21に指示する入庫制御部22と、上記出庫指示手段15からの利用者データ、車両データ、出庫時刻(入力時刻)などの出庫情報を受けて出庫動作を基本動作部21に指示する出庫制御部23と、上記出庫予約指示手段16からの利用者データ、車両データ、出庫予定時刻などの出庫予約情報を受けて出庫車両を駐車室兼待機室である手前側駐車室11aに移動させるための移動動作を基本動作部21に指示する出庫予約制御部24と、当該駐車設備における駐車室列8の使用可否などの管理情報を記録(蓄積)しているデータベース部26とが具備されている。
【0028】
このデータベース部26には、上述した各種データ(利用者、駐車室データ、駐車室が空いているか否かなどの駐車情報)を記録しているデータベース27と、入庫制御部22、出庫制御部23および出庫予約制御部24からの要求によりこれら各データベースにアクセスして空き駐車室、出庫車両が格納されている駐車室11などを検索するとともに入出庫完了時点での駐車状態に応じてデータの更新を行う検索処理部28とが具備されている。
【0029】
上記基本動作部21には、各制御部22〜24からの動作指令により、少なくとも、入庫車両を入庫口4から指定された駐車室11へ移動(入庫)させる入庫機能、出庫車両を出庫口5に移動(出庫)させる出庫機能、或る駐車室11の駐車車両を他の駐車室11に移動させる移動機能、および駐車車両同士を入れ替える移動機能(以下、この機能については、入替機能ともいう)が具備されている。勿論、これらの移動機能には、入庫用エレベータ12、出庫用エレベータ13および搬送台車6を走行させる機能、並びにそれぞれ配置された移載装置を作動させる機能も含まれている。
【0030】
なお、各駐車室列8に設けられている移動装置9の駆動源としては、搬送台車6に設けられた移載装置10の駆動源が利用される。例えば、各駐車室列8の移動装置9を駆動する際には、搬送台車6側に設けられたアーム部材の先端に設けられた駆動用歯車を移動装置9側に設けられた被駆動用歯車に噛合させた後、移載装置10側の駆動用歯車を回転させることにより、被駆動用歯車を介して移動装置9すなわちスラットコンベヤを駆動するようにしたものである。また、エレベータ装置12,13および入出庫口4,5に設けられる車両の移載装置としては、それぞれ独立して駆動し得るものが配置されている。
【0031】
次に、上記データベース部26について説明する。
データベース部26に具備されたデータベース27には、図5〜図8に示すように、駐車室11の駐車状態(使用状態)に関するデータを記録するための駐車室テーブル31と、特定利用者に関するデータを記録するための特定利用者テーブル32と、特定利用者の利用状態を示す入出庫履歴データを時系列でもって記録するための入出庫履歴テーブル33と、各駐車室列8における移動装置9の使用の均等化を図るために使用しているか否かの(使用可否の)データを記録するための使用状態管理テーブル34とが具備されている。
【0032】
上記駐車室テーブル31には、図5に示すように、駐車室11を特定するための駐車室データ(固有コードでもある)と、当該駐車室11に格納される入庫車両を特定する車両データ(識別番号)と、出庫予約の有無を示す予約データ(予約フラグでもある)と、当該入庫車両についての入出庫頻度の程度を示す入出庫頻度レベルとが記録される。
【0033】
なお、この入出庫頻度レベルは、特定利用者については、例えば3段階レベルで表わされ、特定利用者については、一日に数回程度の入出庫を行う場合を最高のレベル3とし、一日に1回程度の入出庫を行う場合を中間のレベル2とし、2〜3日に1回程度の入出庫を行う場合を最低のレベル1とされ、一般利用者については、利用時間が短いため、平均レベルよりも高いレベル、例えばレベル3などに設定される。
【0034】
上記駐車室データは、例えばその駐車室11が位置する駐車階(階層、フロアともいう)3と、当該駐車階3における駐車室列8と、当該駐車列8のどの位置すなわち手前側駐車室11a、中央駐車室11b、奥側駐車室11cに格納されているかを示すもので、駐車階3の階層を1桁の数字α(例えば、地下1階であれば「1」、地下2階であれば「2」)で表わし、駐車室列8を2桁の0〜9の数字nnで表わし、駐車室列8における駐車室11の位置をa,b,cの文字で表すものとする。例えば、駐車室11が地下1階で、駐車室列8が第1番目で、走行用通路7寄りの手前側駐車室11aである場合には、「101a」で表わされる。なお、図9に、参考として、地下1階の駐車階3における各駐車室11の固有コードである駐車室データの一例を示しておく。
【0035】
上記予約データとしては、例えば出庫予約が行われていない場合には「0」が、出庫予約が行われている場合には「1」が記録される。勿論、これら以外の数値、記号を用いることができる。なお、この駐車設備においては、出庫予約が行われた出庫予約車両は、各駐車室列8の手前側位置の駐車室兼待機室に移動されることになるため、この駐車室兼待機室となる駐車室に対してだけ、すなわち駐車室データの最終位置に「a」の文字が付く駐車室11aについてだけ、予約データの欄を用意すればよい。なお、手前側駐車室11aおよび中央駐車室11bの両方を、駐車室兼待機室にする場合には、「b」の文字が付く駐車室11bにも用意される。
【0036】
上記入出庫頻度レベルは、特定利用者については、特定利用者テーブルに登録された入出庫頻度レベルが用いられる(コピーされる)が、お客である一般利用者については、短時間での出庫が予想されるため、高い頻度レベル(例えば、レベル3)が設定される。
【0037】
また、上記特定利用者テーブル32は、図6に示すように、入庫指示手段14、出庫指示手段15および出庫予約手段16からの入力データを認証(確認)するためのもので、例えば従業員番号(利用者データ)と、当該特定利用者に係る車両データと、この車両データについての入出庫頻度レベルとから構成されている。この入出庫頻度レベルについては、後述する入出庫履歴テーブル33に記録された履歴を元に別途演算されるかまたは任意に定めた入出庫頻度レベルが記録される。なお、この入出庫頻度レベルは、入庫させる際に、特定利用者の利用頻度を考慮して、出庫作業を効率良く行うことを目的として設けられている。
【0038】
上記入出庫履歴テーブル33は、図7に示すように、時系列に、日時、車両データ、入出庫時刻が記録される。
なお、この入出庫履歴テーブル33の機能としては、駐車設備での利用状態の把握とともに、特定利用者の入出庫頻度レベルの更新に利用するために用いられる。
【0039】
このため、図7の破線にて示すように、入庫から出庫までの期間(連続して駐車した時間)、前回出庫してから今回入庫するまでの期間(駐車していない時間)を出庫時および入庫時にそれぞれ演算して登録しておいてもよい。これにより、頻度レベル設定時に別途行う計算が、日時データ、車両データ、入出庫利用のデータを用いて計算する場合よりも容易となる。
【0040】
上記使用状態管理テーブル34は、図8に示すように、駐車室列8を均等に使用して設備の長寿命化を図るために用いられるもので、各駐車室列データに対して使用の可否を示す使用データ(使用フラグともいえる)が記録される。一つの駐車室列を満車にしてから、次の駐車室列への入庫を行うのではなく、満車でない駐車室列であれば、複数台分の空き駐車室があっても1台入庫すると、次の駐車室列へ入庫させるという均等使用の手順を実現するために使用フラグが用いられる。
【0041】
上記駐車室列データとしては、図8の下部に示したように、第1層目に相当する地下1階の第1駐車室列(101)から、同第2駐車室列(102)、・・・、同最終駐車室列というように同一階層内では駐車室列番号が大きくなる方向に並べられ、次に第2層目に相当する地下2階の第1駐車室列(201)から同最終駐車室列まで順番に並べられ、そして最後の階層まで同様に並べられる。なお、テーブル34での駐車室列の並びが優先順位となる。
【0042】
そして、上記駐車室列データに対しては、空き駐車室を有する駐車室列は使用フラグが「0」であるところを、1回使用(1台入庫)された場合には、駐車室列の順番に、使用されたというデータとして「1」が記録され、使用されない場合には、未使用であるデータとして「0」が記録されている。
【0043】
したがって、使用開始時においては、車両が入庫される毎に、地下1階の駐車室列8の順番に従って各駐車室列に1台ずつ入庫されるとともにその使用データの欄には「1」が記録され、最下層階まで使用されると、また地下1階に戻ることになる。そして、地下1階に戻った際に、空き駐車室がない駐車室列8を除いた駐車室列8の使用データについては「0」にリセットされ、再度、順番に、駐車室列8が使用されていくことになる。勿論、地下1階が済み、地下2階に移った場合、同様に、空き駐車室がない駐車室列8を除いて使用データが「0」にリセットされる。
【0044】
次に、データベース検索処理部28について説明する。
このデータベース検索処理部28は、データベース27に記録されている各種データ(所謂、フィールド名)をキーとして検索を行い、検索された(ヒットした)データから必要なデータを各制御部22〜24に出力する(渡す)とともに、各制御部22〜24からの指示に基づき、データの記録・更新などを行うものである。
【0045】
例えば、入庫制御部22からの入庫指示に対しては、空き駐車室11を検索するとともにその検索された空き駐車室を有する駐車室列の各駐車室データを入庫制御部22に出力することになる。
【0046】
また、入庫制御部22により、駐車車両を既に車両が格納されている駐車室列8に入庫させる際に、先に入庫されている駐車車両との入れ替えが必要と判断された場合には、当該入庫制御部22から検索処理部28にその指示が出力され、そして当該検索処理部28にて、駐車車両を一時的に移動させるための空き駐車室11が検索されて入庫制御部22に出力される。
【0047】
さらに、この検索処理部28は、出庫予約制御部24に対して、出庫を要求された出庫車両が駐車されている駐車室データを検索し、そして当該駐車室列8の搬送台車6寄りの手前側駐車室11aおよび中央駐車室11bに他の入庫車両が格納されている場合には、入替え(移動)のために一時的に使用する駐車室11を駐車室テーブル31から検索し、その移動先の駐車室データも合わせて出力する。
【0048】
次に、入庫制御方法および出庫制御方法、並びに出庫予約を行った場合の出庫制御方法について説明する。
(1)車両の入庫制御方法
まず、入庫口4に設けられた入庫指示手段14にて、特定利用者の場合には、車両データである自分の従業員番号か車両番号(識別番号)を入力し、また一般利用者の場合には、車両番号などの特定することができるデータ(識別情報)を入力し、出庫用の駐車券を発行(識別情報を記録)する。
【0049】
特定利用者の場合、識別情報は特定利用者テーブル32に登録した車両データかまたは利用者データのいずれかとなる。また、入庫しようとする車両のナンバープレートを撮影、画像処理して車両番号を認識する車両認識技術を採用していれば、入力の手間を省くことができる。この場合、車両データは、勿論、車両番号にされる。
【0050】
すると、入庫指示手段14から入庫制御部22に識別番号が送られ、そしてこの入庫制御部22から検索処理部28に、当該識別番号と空き駐車室11を検索する指令とが出力される。
【0051】
検索処理部28では、まず、特定利用者テーブル32にアクセスして特定利用者か否かを認識した後(データが存在するか否かで判る)、その車両データに基づき入出庫頻度レベルを取り出すとともに、使用状態管理テーブル34から使用可能な所謂候補となる駐車室列番号を例えば複数個(一つでもよい)検索して取り出し、これらを入庫制御部22に出力する。
【0052】
入庫制御部22では、候補の駐車室列番号を検索処理部28に出力し、駐車室テーブル31にアクセスして当該駐車室列番号に係る駐車室11(11a,11b,11c)の駐車状態(使用状態)を読み込む。
【0053】
この場合、まず、駐車室列番号順に、手前側駐車室11aが空いているか否か(全室が空き室か)を調べ、空いている場合には、その手前側駐車室11aに入庫させるように決定し、その駐車階における手前側駐車室11aが全て一杯である場合には、中央駐車室11bが空いているか否かを調べる。
【0054】
中央駐車室11bが空いている場合(手前側駐車室11aだけに駐車している場合)には、入庫車両とその駐車室列8における手前側駐車室11aに格納されている駐車車両との入出庫頻度レベルが比較され、入庫車両の方が高い場合(つまり、駐車車両の方が低い場合)には、入庫車両をその駐車室列8の手前側駐車室11aに入庫させる。この作業は、搬送台車6の移載装置10を作動させて当該駐車室列8の手前側駐車室11aに入庫車両を格納させる(押し込む)だけで、自動的に、駐車車両は手前側駐車室11aから中央駐車室11bに移動されることになる。逆に、入庫車両の方が低い場合には、最初に見つかった駐車室列8の駐車車両を、一旦、他の駐車室列8に移動させ、そして入庫車両を当該駐車室列8の手前側駐車室11aに入庫させた後、他の駐車室列8に移動された駐車車両を元の手前側駐車室11aに戻すように指令が出力される。つまり、入替作業(入庫車両は中央駐車室11bに移動)が行われる。この入替作業については、入替えのために一時的に使用する駐車室データが、基本動作部21に出力され、ここでその作業が行われる。
【0055】
なお、入替作業を極力避けたい場合であって、取得した候補の駐車室列全てに入替作業を要する場合には、同一駐車階の優先順位が下位の候補の駐車室列を取得して、入替作業を要しない駐車室列を探すようにしてもよい。同一階で、入替作業が不要な駐車室列がない場合は、最初の候補の駐車室列に対して入替作業による入庫を実施することになる。
【0056】
このとき、候補の駐車室列に奥側駐車室11cだけが空いている場合には、入出庫頻度レベルの関係で、入れ替える駐車車両が1台で済む候補に優先的に入庫させることで、作業効率を向上させることができる。この場合、上述したように、手前側駐車室11aの駐車車両を一旦他の駐車室列8に移動させた後、当該入庫車両を中央駐車室11bに移動させることになる。したがって、中央駐車室11bに駐車されていた駐車車両は奥側駐車室11cに移動されることになる。なお、入庫車両と中央駐車室11bの駐車車両との入出庫頻度レベルを判断して、中央駐車室11bの駐車車両の方が高い場合には、入庫車両を奥側駐車室11cに入庫させることになる。
【0057】
このようにして、空き駐車室11が見つかった場合には、当該入庫車両をその空き駐車室11に入庫させる指示、また駐車車両を入れ替える場合には、その一時移動の指示が、入庫制御部22から基本動作部21に出力される。
【0058】
入庫作業が完了すると、入庫制御部22からその旨が検索処理部28に出力され、当該検索処理部28により、駐車室テーブル31における車両データの欄に車両データおよび当該利用者の入出庫頻度レベルが記録され、また入出庫履歴テーブル33には入庫日時、車両データ、入出庫種別としての入庫、出庫期間(前回出庫した日時からの経過時間)が記録され、さらに使用状態管理テーブル34の当該駐車室列8の使用データが「1」に変更される。
【0059】
なお、車両が入庫したことは、例えば各駐車室11に配置されている車両検出センサにて検出することができる。
(2)車両の出庫制御方法
まず、出庫口5に設けられた出庫指示手段15にて、特定利用者の場合には、車両データである自分の識別番号を入力し、また一般利用者の場合には、駐車券をその挿入部に挿入する(識別番号の自動読込みが可能な場合、なお識別番号が印字されている場合は手入力となる)。
【0060】
すると、出庫指示手段15から出庫制御部23に識別番号が送られ、この出庫制御部23から検索処理部28に、当該識別番号とこれに対応する駐車車両が格納されている駐車室11を検索する指令とが出力される。
【0061】
特定利用者の識別情報が車両データに一致していない仕様の場合、検索処理部28では、まず特定利用者テーブル32の利用者データにアクセスして特定利用者であれば、車両データを取得して識別番号と置き換え、そうでなければ、識別番号のまま駐車室テーブル31の車両データを検索して入庫している駐車室(駐車データ)11を取得して出庫制御部23に出力するとともに駐車室列8の手前側駐車室11aでない場合には、出庫の障害となる他の駐車車両を一時的に移動させる移動先の駐車室を、近くで、空き駐車室がある駐車室列の中から選んで併せて出力する。
【0062】
出庫制御部23において、上記検索にてヒットした駐車室11の駐車室列8における位置が、手前側である場合には、そのまま、出庫させる指令が基本動作部21に出力され、中央または奥側である場合には、走行用通路7側の別な駐車車両を、他の駐車室列8に一時的に移動させるための指令が基本動作部21出力される。勿論、一時的に駐車車両が移動された場合には、当該駐車車両を元の駐車室11に戻す指示が出力される。
【0063】
出庫作業が完了すると、出庫制御部23からその旨が検索処理部28に出力され、当該検索処理部28により、駐車室テーブル31における変更のあった駐車室データに関する他の欄について更新がなされる。更新は、出庫、一時移動車両の戻しにより空き室となる駐車室や、駐車車両の駐車室がずれる場合に行われ、空き駐車室はデータのクリアが行われ、駐車室が変更された場合は、車両データおよび入出庫頻度レベルを元の欄より移動する。また、出庫車両が手前側駐車室11aの車両である場合には、当然に、予約データはクリアされる。
【0064】
また、入出庫履歴データベースに日時と車両データ、入出庫種別としての出庫、入庫期間(入庫から出庫までの経過時間)が記録される。
(3)予約による車両の出庫制御方法
まず、所定場所に設けられた出庫予約指示手段16にて、利用者の車両データである自分の識別番号を入力する。なお、一般利用者の場合には駐車券を一時的に挿入または識別情報の入力(上述の識別情報記録形態に応じる)するようにしてもよい。ここでは、一般利用者が出庫予約を行う場合について説明する。
【0065】
すなわち、出庫予約指示手段16から出庫予約制御部24に識別番号(駐車券番号)が出力され、そして出庫予約制御部24から検索処理部28に、当該識別番号とこれに対応する駐車車両が駐車されている駐車室11を検索する指令とが出力される。
【0066】
検索処理部28では、駐車室テーブル31の車両データを検索して、当該一般利用者が使用している駐車室11の車両データを取得して出庫予約制御部24に出力する。
出庫予約制御部24では、この駐車室11の駐車室列8での位置が、手前側である場合には、駐車室兼待機室に駐車されているため、そのままとする。この場合、駐車室テーブル31の予約データには、出庫予約されていることを示す「1」が記録される。
【0067】
一方、当該出庫車両が、中央駐車室11bまたは奥側駐車室11cに格納されている場合には、当該出庫車両の走行用通路7側の駐車車両を、他の駐車室列8に一時的に移動させるために、予約データが「0」であり且つ空き駐車室11がある他の駐車室列8を検索する指示が検索処理部28に出力される。
【0068】
そして、空き駐車室11が検索されると(近くの駐車室列が優先的に検索される)、この駐車室データが出庫予約制御部24に出力され、この出庫予約制御部24から基本動作部21に、手前側駐車室11aの駐車車両と出庫車両とを一時的に他の駐車室列に移動させる指示が出力されるとともに、一時移動した駐車室から元の駐車室列に戻す指示が出力される。
【0069】
この出庫予約作業により出庫予約車両が駐車室兼待機室である手前側駐車室11aに移動されると、車両検出センサなどからの検出信号により、出庫予約作業が完了した旨が、出庫予約制御部24から検索処理部28に出力され、当該検索処理部28により変更があった駐車室列において駐車室テーブル31が更新される。勿論、当該出庫予約車両が移動された手前側駐車室11aの予約データには「1」が記録される。なお、一時的に移動された駐車車両については、そのままの状態にしておいてもよいが、この場合、移動先の駐車室列については、入出庫頻度レベルが考慮されて選ばれる。そのような駐車室列がある場合だけ、元の駐車室に戻さないようにしてもよい。
【0070】
そして、この後、出庫予約をした一般利用者が出庫させる場合には、出庫口5に行き、駐車券を用いて出庫させればよい。
なお、特定利用者についても、同様の手順にて出庫させることができるが、識別情報に応じて、先に特定利用者テーブル32内の車両データと利用者データのいずれかを検索するかは、上述した車両の出庫制御方法にて記載した通りである。
【0071】
ここで、簡単に、出庫予約をした場合の出庫手順、すなわち出庫制御方法を、ステップ形式にて説明しておく。
この出庫制御方法には、出庫予約指示手段により出庫予約を行う出庫予約ステップと、
この出庫予約ステップにて出庫予約された出庫車両の駐車室を認識する駐車室認識ステップと、
この駐車室認識ステップにて認識された駐車室が駐車室兼待機室でない場合に当該駐車室列の駐車室兼待機室に他の駐車車両が格納されているか否かを認識する駐車車両認識ステップと、
この駐車車両認識ステップにて他の駐車車両を認識した場合に、他の空き駐車室を検索するとともに当該検索された空き駐車室に上記他の駐車車両を移動させる駐車車両移動ステップと、
この駐車車両移動ステップにて空になった駐車室兼待機室に出庫車両を移動させる出庫車両移動ステップと、
この出庫車両移動ステップにて駐車室兼待機室に移動された出庫車両に対して出庫指示手段から出庫指示があった場合に、当該駐車室兼待機室に在る出庫予約車両を出庫口まで移動させる出庫ステップとが具備されている。
【0072】
このように、出庫予約を行う場合、当該出庫に係る出庫予約車両は、駐車階に配置された各駐車室列の手前側駐車室、すなわち待機室兼駐車室に移動させるようにしたので、例えば待機専用のスペースを設ける場合に比べて、駐車利用スペースの有効利用を図ることができる。
【0073】
また、車両を入庫させる際に、当該入庫車両と既に駐車されている駐車車両との入出庫頻度レベルを比較して、この入出庫頻度レベルが高い方の車両を、駐車室兼待機室に格納させるようにしたので、車両を出庫させる際に必要な作業を少なくすることができ、延いては、設備のランニングコストの低減化を図ることができる。
【0074】
ところで、上記実施の形態1においては、車両を入庫させる際に、当該入庫車両の入出庫頻度レベルが、駐車車両のそれよりも低い場合には、当該駐車車両よりも奥の駐車室に格納させるために、その駐車車両を一時的に他の空き駐車室に移動させた後、元の駐車室に戻す入替作業を行うように説明したが、例えば一時的ではなく、他の空き駐車室に移動させたままにすることもできる(移動作業である)。
【0075】
また、上記実施の形態1においては、車両を入庫させる際に、入替作業が1台または2台生じる形態で説明したが、入替作業が生じる場合に、次の優先順位の駐車階から入替作業が不要な駐車室列を探すようにしてもよい。
[実施の形態2]
以下、本発明の実施の形態2に係る機械式駐車設備および当該駐車設備における車両の入出庫等の制御方法について説明する。
【0076】
本実施の形態2と上記実施の形態1とは、駐車室列を構成する移動装置の構成およびそれについての制御方法が異なるだけであり、基本的な構成については、実施の形態1と同じものであるため、以下、相違点に着目して説明する。
【0077】
すなわち、上記実施の形態1においては、一つの駐車室列8に1台の移動装置9を配置したが、本実施の形態2においては、図10に示すように、2台の移動装置9(9a,9b)を配置したものである。具体的には、走行用通路(搬送用通路)7側の2つの駐車室、すなわち手前側駐車室11aと中央駐車室11bとして1台の通路側移動装置(例えば、スラットコンベヤが用いられる)9aが配置されるとともに、奥側駐車室11cとして1台の奥側移動装置(例えば、スラットコンベヤが用いられる)9bが配置されている。
【0078】
上記通路側移動装置9aは、実施の形態1で説明したように、搬送台車6に設けられた移載装置10により駆動されるようにされており、また奥側移動装置9bには、専用の駆動手段が具備されている。
【0079】
したがって、車両を奥側駐車室11cに、また逆に奥側駐車室11cから通路側に移動させる場合、搬送台車6に設けられた移載装置10による駆動方向(移載方向)と、奥側移動装置9bの駆動方向(移動方向)とが、および駆動速度も同一となるように基本動作部21により制御される。なお、通路側移動装置9aに配置される手前側駐車室11aおよび中央駐車室11bだけを用いる場合、入庫、出庫、出庫予約、それらに伴う入替作業については、奥側移動装置9bを駆動させることなく行うことができる。
【0080】
このように、一つの駐車室列8に、複数の移動装置9a,9bを配置した場合、基本動作部21におけるその構成の相違による駆動制御が変わるだけで、本発明に関わる入庫制御方法、出庫制御方法、出庫予約制御方法の主たる内容については、上述した実施の形態1と変わるものではない。
[実施の形態3]
以下、本発明の実施の形態3に係る機械式駐車設備および当該駐車設備における車両の入出庫等の制御方法について説明する。
【0081】
本実施の形態3においては、上記実施の形態2で示したように、一つの駐車室列に、通路側移動装置と奥側移動装置とを配置した点では同一であるが、車両を入庫させる入庫制御方法を変更した点で異なる。
【0082】
簡単に説明すると、上記実施の形態1および2においては、駐車室列の各駐車室が全て空き室である場合の最初の入庫車両の格納位置を、手前側駐車室11aとしていたところ奥側駐車室とするもので、他の点については、上述した各実施の形態で説明したものと同一であるため、以下、相違点に着目して説明する。
【0083】
すなわち、検索処理部28から取得された入庫先候補の駐車室列8の全駐車室11a,11b,11cが空き室である場合、入庫制御部22から当該入庫させる駐車室として、奥側駐車室11cである指示を基本動作部21に出力する。
【0084】
そして、この駐車室列8に2台目の車両を駐車させる場合、つまり奥側駐車室11cに駐車車両があり、当該駐車室列8に新たに車両を入庫させる場合の入庫制御方法での、当該駐車室列8に合計2台駐車された後の車両の格納状況については、奥側駐車室列11cに入出庫頻度レベルの低い車両が格納され、手前側駐車室列11aに入出庫頻度レベルが高い車両が格納された状態となる。入替作業が不要の場合には、入庫車両を手前側駐車室11aに入庫させるように基本制御部21へ指示を出力し、入替作業を伴う場合には、奥側駐車室11cの駐車車両を一時的に他の駐車室列8へ移動させるための駐車室列番号の検索を検索処理部28に要求し、その駐車室列8を取得し当該駐車室列に駐車車両を一時移動させた後、入庫車両を奥側駐車室11cへ入庫させ、そして一時移動させていた駐車車両を手前側駐車室11aに戻すように基本制御部21に指示を出力する。
【0085】
一つの駐車室列8に3台駐車させた場合の格納状況については、上述した実施の形態1および2と同様に、手前側駐車室11aから奥側駐車室11cにかけて、入出庫頻度レベルが小さくなっていくような、入出庫頻度レベルに連続性を持たせた状態となる。この駐車室列8への3台目の入庫については、全駐車室11の駐車状況とその入出庫レベルの違いから、入庫車両の入庫すべき駐車室を決定し、入替作業により一時移動する駐車車両の台数分の一時移動先の駐車室列番号を検索処理部28に要求して取得し、入庫車両の入庫先の駐車室およびどの駐車車両をどの駐車室列へ一時移動するのかの情報を基本制御部21に渡して入替指示を行うことになる。入替作業が不要な場合には、手前側駐車室11aに入庫するように基本制御部21に指示を出力することになる。
【0086】
このように、実施の形態2に比べて、移動装置9の構成が同一ではあるが入庫制御方法について相違するという形態になるが、実施の形態1と同様に、出庫予約車両を駐車室兼待機室である手前側駐車室11aに移動(入替作業含む)させるという制御は維持される。
【0087】
なお、出庫予約を行う際に、中央駐車室11bの駐車車両と手前側駐車室11aの駐車車両との入替作業を行う場合、通路側移動装置9a上での駐車車両同士の入替作業となるため、奥側移動装置9bについては駆動させる必要がない。
[実施の形態4]
以下、本発明の実施の形態4に係る機械式駐車設備および当該駐車設備における車両の入出庫等の制御方法について説明する。
【0088】
本実施の形態4においては、実施の形態3で説明した入庫制御方法での入替作業に変更を加えたものである。
すなわち、入出庫レベルの連続性について変更したものであり、通路側移動装置9aに駐車された2台の駐車車両に限っては、上述した実施の形態1〜3と同様に、手前側駐車室11aの入出庫頻度レベルが高くなるように格納されるが、奥側移動装置9bと通路側移動装置9aとの間では、どちらの入出庫頻度レベルを高くする等の取り決めをしない点で異なる。この相違点は、駐車室列8が全て空き室であったときに最初に奥側駐車室11cに入庫される車両については、出庫指示または出庫予約指示があるまで、後から入庫される車両に対して入替作業の対象にならないようにしたことである。他の点については、上述した各実施の形態で説明したものと同一であるため、以下、相違点のみ着目して説明する。
【0089】
すなわち、入庫制御方法において、駐車室列8への最初の入庫車両(1台目)は奥側駐車室11cに格納されるが、2台目の車両を入庫させる場合は、1台目との入出庫頻度レベルの比較による入替作業を実施せず、そのまま手前側駐車室11aに格納し、3台目の車両を入庫させる場合には、検索処理部28から取得した入庫先駐車室列8の手前側駐車室11aに駐車している駐車車両と入庫車両との入出庫頻度レベルだけを比較し、入替作業が必要な場合には、検索処理部28に一時移動先の別な駐車室列番号を要求し、基本動作部21に駐車車両の移動先の駐車室列番号を指示するとともに、入庫車両の入庫先を中央駐車室11bに指定して入替作業を指示する。
【0090】
このように、上記実施の形態3に比べて、移動装置9の構成および入庫制御方法が同一であるが入替作業について相違しているという形態になるが、他の実施の形態と同様に、出庫予約車両を駐車室兼待機室である手前側駐車室11aに移動(入替作業含む)させるという制御は維持される。
【0091】
なお、出庫予約を行う際に、中央駐車室11bの駐車車両と手前側駐車室11aの駐車車両との入替作業を行う場合、通路側移動装置9a上での駐車車両同士の入替作業となるため、奥側移動装置9bについては駆動させる必要がない点では、実施の形態3と同じである。
【0092】
ところで、上記各実施の形態においては、駐車設備をショッピング施設に設けた場合について説明したが、マンションなどの付帯設備として設けられたものでもよい。
この場合、利用者は、マンションの居住者であり、全て特定利用者となる。
したがって、上記出庫予約手段としては、自分の部屋に取り付けられたインターホンなどが用いられるとともに、このインターホンには出庫予約機能が具備されている。また、特定利用者の情報(利用者データ)は、マンションの住居番号、契約者番号、住居番号に車両番号を加えたものなどであり、車両データとしては、利用する車両の車両番号(ナンバープレートに記載された番号)である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施の形態に係る駐車設備の内部状態を示す平面図である。
【図2】同駐車設備の概略平面図である。
【図3】同駐車設備の要部断面図である。
【図4】同駐車設備における制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】同制御装置のデータベースにおける駐車室テーブルの内容を示す図である。
【図6】同制御装置のデータベースにおける特定利用者テーブルの内容を示す図である。
【図7】同制御装置のデータベースにおける入出庫履歴室テーブルの内容を示す図である。
【図8】同制御装置のデータベースにおける使用状態管理テーブルの内容を示す図である。
【図9】同駐車設備における駐車室列データを示す図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る駐車設備の要部断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 建屋
2 駐車空間部
3 駐車階
4 入庫口
5 出庫口
6 搬送台車
7 走行用通路
8 駐車室列
9 移動装置
9a 通路側移動装置
9b 奥側移動装置
10 移載装置
11 駐車室
11a 手前側駐車室
11b 中央駐車室
11c 奥側駐車室
14 入庫指示手段
15 出庫指示手段
16 出庫予約指示手段
17 制御装置
21 基本動作部
22 入庫制御部
23 出庫制御部
24 出庫予約制御部
26 データベース部
27 データベース
28 検索処理部
31 駐車室テーブル
32 特定利用者テーブル
33 入庫履歴テーブル
34 使用状態管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入庫部および出庫部が配置された駐車用空間部と、
この駐車用空間部内に設けられた搬送用通路に走行自在に配置された車両の搬送台車と、
上記搬送用通路の側方位置において、当該通路に近い手前側位置より当該通路から遠い奥側位置に向かって複数の駐車室がそれぞれ配置されてなる複数の駐車室列と、
これら各駐車室列に配置されて車両を載置して各駐車室列における各駐車室毎に移動させ得る移動装置と、
入庫を指示するための入庫指示手段および出庫を指示するための出庫指示手段と、
出庫の予約を指示するための出庫予約指示手段と、
上記各指示手段からの指示に基づき上記搬送台車および移動装置を作動させて車両の入出庫を行わせる制御装置とを具備するとともに、
上記各駐車室列の手前側位置の駐車室を出庫時における待機室として兼用させるようになし、
さらに上記制御装置に、
各駐車室に対する駐車車両の有無・車両特定データなどの駐車情報を記録するデータベース部と、
上記入庫指示手段からの入庫指示に基づき上記データベース部から空き駐車室を検索するとともに当該空き駐車室に入庫車両を入庫させるための入庫制御部と、
上記出庫指示手段からの出庫指示に基づき上記データベース部から当該出庫車両が格納された駐車室を検索するとともに当該駐車室から出庫車両を出庫させるための出庫制御部と、
上記出庫予約手段からの出庫予約指示に基づき上記データベース部から当該出庫予約車両が格納された駐車室を検索するとともに当該出庫予約車両が駐車室列の少なくとも手前位置の駐車室兼待機室以外に格納されている場合に、その出庫予約車両より搬送用通路側に格納されている駐車車両とを入れ替えさせる出庫予約制御部と
を具備させたことを特徴とする機械式駐車設備。
【請求項2】
データベース部に、
利用者、駐車室の使用状態などの駐車情報を記録するデータベースと、
各制御部からの指示によりデータベース内を検索するとともに、入庫作業、出庫作業および出庫予約作業が完了した際に、その作業完了後における駐車情報を更新するための検索処理部と
を具備させたことを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車設備。
【請求項3】
データベースに、駐車車両の入出庫頻度レベルを記録させるとともに、
入庫制御部により、駐車車両が格納されている入庫先候補の駐車室列に車両を入庫させる際に、
当該入庫車両に付与された入出庫頻度レベルと、入庫先候補の駐車室列に格納されている駐車車両の入出庫頻度レベルとを比較し、当該入庫車両の入出庫頻度レベルが高い場合には、上記駐車車両よりも当該駐車室列の手前側位置に入庫させ、当該入庫車両の入出庫頻度レベルが低い場合には、他の駐車室列に対して上記手順を繰り返すようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の機械式駐車設備。
【請求項4】
データベースに、駐車車両の入出庫頻度レベルを記録させるとともに、
入庫制御部により、駐車車両が格納されている入庫先候補の駐車室列に車両を入庫させる際に、
当該入庫車両に付与された入出庫頻度レベルと、入庫先候補の駐車室列に格納されている駐車車両の入出庫頻度レベルとを比較し、当該入庫車両の入出庫頻度レベルが低い場合には、当該駐車車両を空の駐車室を有する他の駐車室列に移動させた後、当該入庫車両を入庫先候補の駐車室列の奥側位置に入庫させるとともに上記他の駐車室列に移動された駐車車両を手前側位置に戻すようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の機械式駐車設備。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の機械式駐車設備における出庫制御方法であって、
出庫予約指示手段により出庫予約を行う出庫予約ステップと、
この出庫予約ステップにて出庫予約された出庫車両の駐車室を認識する駐車室認識ステップと、
この駐車室認識ステップにて認識された駐車室が駐車室兼待機室でない場合に当該駐車室列の搬送用通路側に他の駐車車両が格納されているか否かを認識する駐車車両認識ステップと、
この駐車車両認識ステップにて他の駐車車両を認識した場合に、他の空き駐車室を検索するとともに当該検索された空き駐車室に上記他の駐車車両を移動させる駐車車両移動ステップと、
この駐車車両移動ステップにて空になった駐車室兼待機室に出庫車両を移動させる出庫車両移動ステップと、
この出庫車両移動ステップにて駐車室兼待機室に移動された出庫車両に対して出庫予約指示手段から出庫指示があった場合に、当該駐車室兼待機室に移動された出庫車両を出庫口まで移動させる出庫ステップと
を具備したことを特徴とする機械式駐車設備の出庫制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−262845(P2007−262845A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92613(P2006−92613)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】