説明

機能層の形成装置、及び機能層の形成方法

【課題】機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する残存及び損傷を抑制すると共に、膜厚のバラツキが抑制した機能層を形成する機能層の形成方法を提供すること。
【解決手段】例えば、樹脂フィルム10上に、機能層形成用塗布液を塗布して塗膜11を形成する塗布装置30と、塗膜11を乾燥又は硬化して、塗膜11を指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態とする第1乾燥又は硬化装置50Aと、指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態の塗膜11の幅方向両端部を、塗膜の被塗布面の一部が露出するように除去する塗膜除去装置40であって、塗膜11の除去面が弾性体で構成される塗膜除去装置40(例えば、塗膜除去ロール41)と、幅方向両端部が除去された塗膜11を、乾燥又は硬化して機能層を形成する第2乾燥又は硬化装置50Bと、を塗布装置に具備させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能層の形成装置、及び機能層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶素子や有機エレクトロルミネッセンス素子等を用いた表示媒体や、太陽電池等の電気光学素子が種々開発されている。この電気光学素子は、例えば、樹脂フィルム上に形成された電極上に機能層(例えば、液晶層、光スイッチング層、有機エレクトロルミネッセンス素子層、光電気変換層等)を塗布形成することで、作製される。この機能層の塗布形成に関しては、上記電気光学素子以外にも、種々開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、連続的に搬送される帯状支持体に塗布液を塗布し、過剰に塗布された塗布液を塗布手段の下流側に設けた膜厚規制手段により薄膜化又は除去する塗布装置において、膜厚規制手段の塗膜と接触する部分に、塗膜と離間後付着した塗布液と共に剥がして除去するフィルムを設けたことを特徴とする塗布装置が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、被塗布物に塗布液を塗布して、該被塗布物上に塗布層を形成し、該塗布層が乾燥する前に該塗布層の端部から加温した吸収部材で塗布液を吸取り、次いで上記の塗布層を乾燥させることを特徴とする電子写真感光材料の製造における塗布層縁部の処理方法が提案されている。
【特許文献1】特開2002−301417公報
【特許文献2】特公昭52−038407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する残存及び損傷を抑制すると共に、膜厚のバラツキが抑制した機能層を形成する機能層の形成装置及び形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
樹脂フィルム上に、機能層形成用塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布手段と、
前記塗膜を乾燥又は硬化して、前記塗膜を指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態とする第1乾燥又は硬化手段と、
前記指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態の塗膜の幅方向両端部を、前記塗膜の被塗布面の一部が露出するように除去する塗膜除去手段であって、前記塗膜の除去面が弾性体で構成される塗膜除去手段と、
前記幅方向両端部が除去された塗膜を、乾燥又は硬化して機能層を形成する第2乾燥又は硬化手段と、
を備える機能層の形成装置。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記弾性体の硬度が、10以上40以下である請求項1に記載の機能層の形成装置。
【0008】
請求項3に係る発明は、
前記弾性体が、溶剤を含浸してなる請求項1に記載の機能層の形成装置。
【0009】
請求項4に係る発明は、
前記塗膜除去手段が、前記弾性体を前記塗膜の被塗布面側に押付けて配設される請求項1に記載の機能層の形成装置。
【0010】
請求項5に係る発明は、
前記塗膜除去手段が、複数備えられた請求項1に記載の機能層の形成装置。
【0011】
請求項6に係る発明は、
前記樹脂フィルム上の前記塗膜の被塗布面に他の機能層が形成されてなり、前記塗膜除去手段による前記塗膜の除去により前記他の機能層の一部を露出する請求項1に記載の機能層の形成装置。
【0012】
請求項7に係る発明は、
樹脂フィルム上に、機能層形成用塗布液を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥又は硬化して、前記塗膜を指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態とする工程と、
前記塗膜の除去面が弾性体で構成された塗膜除去手段により、前記指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態の塗膜の幅方向両端部を、前記塗膜の幅方向両端部を前記塗膜の被塗布面の一部が露出するように除去する工程と、
前記幅方向両端部が除去された塗膜を、乾燥又は硬化して機能層を形成する工程と、
を有する機能層の形成方法。
【0013】
請求項8に係る発明は、
前記弾性体の硬度が、10以上40以下である請求項7に記載の機能層の形成方法。
【0014】
請求項9に係る発明は、
前記弾性体が、溶剤を含浸してなる請求項7に記載の機能層の形成方法。
【0015】
請求項10に係る発明は、
前記塗膜除去手段の弾性体を前記塗膜の被塗布面側に押付けて、前記塗膜の幅方向両端部を除去する請求項7に記載の機能層の形成方法。
【0016】
請求項11に係る発明は、
複数の前記塗膜除去手段により、前記塗膜の幅方向両端部を除去する請求項7に記載の機能層の形成方法。
【0017】
請求項12に係る発明は、
前記樹脂フィルム上の前記塗膜の被塗布面に他の機能層が形成されてなり、前記塗膜除去手段による前記塗膜の除去により前記他の機能層の一部を露出する請求項7に記載の機能層の形成方法。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する残存及び損傷が抑制されると共に、膜厚のバラツキが抑制された機能層が形成される。
請求項2に係る発明によれば、弾性体の硬度を考慮しない場合に比べ、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する損傷が抑制される。
請求項3に係る発明によれば、弾性体が溶剤を含浸しない場合に比べ、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する残存及び損傷が抑制される。
請求項4に係る発明によれば、塗膜除去手段の弾性体を被塗布面側に押し付けない場合に比べ、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する残存が抑制される。
請求項5に係る発明によれば、塗膜除去手段を複数備えない場合に比べ、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する残存が抑制される。
請求項6に係る発明によれば、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に他の機能層が存在しても、他の機能層に対する残存及び損傷が抑制される。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する残存及び損傷が抑制されると共に、膜厚のバラツキが抑制された機能層が形成される。
請求項8に係る発明によれば、弾性体の硬度を考慮しない場合に比べ、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する損傷が抑制される。
請求項9に係る発明によれば、弾性体が溶剤を含浸しない場合に比べ、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する残存及び損傷が抑制される。
請求項10に係る発明によれば、塗膜除去手段の弾性体を被塗布面側に押し付けない場合に比べ、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する残存が抑制される。
請求項11に係る発明によれば、塗膜除去手段を複数備えない場合に比べ、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する残存が抑制される。
請求項12に係る発明によれば、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に他の機能層が存在しても、他の機能層に対する残存及び損傷が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同一の機能・作用を持つ部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0020】
図1は、本実施形態に係る機能層形成装置の主要部を示す概略構成図である。図2及び図3は、本実施形態に係る機能層形成装置を示す工程図である。なお、図2は、平面図での工程図である。また、図3は、断面図での工程図である。
【0021】
本実施形態に係る機能層形成装置101は、樹脂フィルム10を支持しつつ搬送するための支持ロール20、21と、樹脂フィルム10を介して支持ロール20と対向して配設される塗布装置30と、樹脂フィルム10を介して支持ロール21と対向して配設される塗膜除去装置40と、を具備している。また、塗布装置30と塗膜除去装置40との間には、第1乾燥又は硬化装置50Aが配設されている。また、第2乾燥又は硬化装置50Bが配設されている。
【0022】
塗布装置30は、機能層形成用塗布液を樹脂フィルムに塗布するための塗布手段である。塗布装置30としては、例えば、バー塗布法、ダイ塗布法、スライドホッパ塗布法、ロール塗布法、カーテン塗布法、エアーナイフ塗布法、又はグラビア塗布法等などに利用される周知の塗布ヘッドが挙げられる。
【0023】
塗布装置30には、図示しないが、塗布時に塗布液が樹脂フィルム10に接触するように樹脂フィルム10に対向し、非塗布時には樹脂フィルム10から離間するように移動機構が配設されていることがよい。
【0024】
塗膜除去装置40は、機能層形成用塗布液の塗膜11の幅方向両端部(樹脂フィルム10搬送方向に対する直交方向の両端部)を除去するため装置であり、例えば一対の塗膜除去ロール41で構成されている。塗膜除去装置40は、指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態の塗膜11を、塗膜11の被塗布面の一部が露出するように除去する。そして、塗膜除去装置40は、塗膜11の除去面が弾性体で構成されている。つまり、塗膜除去装置40は、塗膜11の除去面を構成する弾性体により塗膜11を掻取るようにして塗膜11の幅方向両端部を除去する。
【0025】
塗膜除去装置40としての塗膜除去ロール41は、具体的には例えば、シャフト41Aと、シャフト41Aの外周面に配設された弾性層41B(弾性体)とで構成されている。この塗膜除去ロール41を、塗膜11の幅方向両端部が除去されるように2本配設させている。このように、塗膜除去ロール41は、機能層形成用塗布液の塗膜の除去面が弾性体、つまり弾性層41Bで構成されている。なお、塗膜除去ロール41は、一対に限られず、一本のシャフト41Aの外周面に対して、弾性層41Bを塗膜11の幅方向両端部に位置して(つまり、塗膜11の幅方向両端部が除去されるようにして)、2箇所配設させた一本のロールを適用してもよい。
【0026】
シャフト41Aとしては、例えば、一般には鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等で構成された棒状部材が挙げられる。
【0027】
弾性層41B(弾性体)は、その硬度が10以上40以下であることがよく、好ましくは15以上35以下であり、さらに好ましくは20以上30以下である。この硬度を上記範囲とすることで、機能層形成塗布液の塗膜11の被塗布面に対する損傷が抑制される。
【0028】
ここで、弾性層41Bの硬度は、日本ゴム協会標準規格(SRIS0101)であるアスカーC硬度計により測定される値である。
【0029】
弾性層41B(弾性体)を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合体、ブチルゴム、二トリルゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム等が挙げられる。
【0030】
弾性層41B(弾性体)を構成する材料は、非発泡弾性体であってもよいし、発泡弾性体であってもよいが、発泡弾性体であることがよい。弾性層41B(弾性体)が、発泡弾性体で構成されることで、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する損傷が抑制される。
【0031】
弾性層41B(弾性体)は、溶剤を含浸してなることがよい。これにより、機能層用塗布液の塗膜11の被塗布面に対する残存及び損傷が抑制される。
【0032】
溶剤は、機能層形成塗布液(その塗膜11)における溶媒成分を除く成分を溶解又は膨潤するものが適用される。溶剤として好適には、溶解する成分を主成分とすることが良い。
【0033】
塗膜除去ロール41は、弾性層41B(弾性体)を塗膜11の被塗布面側に押付けて配設されることがよい。これにより、塗膜の幅方向両端部を除去する際、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する残存が抑制される。無論、塗膜除去ロール41は、弾性層41B(弾性体)塗膜11の被塗布面に接触するのみで(非押圧で)配設してもよい。
【0034】
塗膜除去ロール41は、非回転で配設されてもよいし、回転駆動させて配設してもよい。回転駆動させる場合、塗膜除去ロール41は、樹脂フィルム10の搬送方向とは逆回転で駆動させて、塗膜11を除去させることがよい。
【0035】
塗膜除去ロール41は、例えば、樹脂フィルム10の搬送方向に沿って特定の間隔を持って2つ配設されていてもよい。これにより、2回にわたり、塗膜11の幅方向両端部を除去する。塗膜除去手段としての塗膜除去ロール41の数は、2つに限られるわけではなく、1つであってもよいし、3つ以上の複数であってもよい。塗膜除去手段としての塗膜除去ロール41を複数配設することで、機能層用塗布液の塗膜の電極に対する残存が抑制される。
【0036】
なお、本実施形態では、塗膜除去装置40として塗膜除去ロール41を適用した形態を説明したが、これに限られず、塗膜11の除去面が弾性体で構成されていれば、特に制限はなく、例えば、塗膜11の除去面が弾性体で構成されたブレードであってもよい。
【0037】
第1乾燥又は硬化装置50Aは、塗膜11を乾燥又は硬化して塗膜11を指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態とするための手段である。第1乾燥又は硬化装置50Aは、例えば、乾燥のみで機能層が形成される機能層形成用塗布液を適用した場合、乾燥装置が適用され、例えば、樹脂の硬化反応を利用して機能層が形成される機能層形成用塗布液を適用した場合、硬化装置が適用される。
乾燥装置としては、例えば、加熱装置、送風装置が適応される。
硬化装置としては、機能層形成用塗布液が硬化する刺激に応じて選択される。例えば、機能層形成用塗布液が熱硬化性の場合、硬化装置としては加熱装置が適用され、光硬化性の場合には光照射装置が適用される。
【0038】
第2乾燥又は硬化装置50Bは、塗膜11を乾燥又は硬化して塗膜11を機能層11Aとする、即ち指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態の塗膜11を完全に乾燥又は硬化させて機能層11Aとする手段である。なお、完全に乾燥又は硬化とは通常求められる機能層11Aとしての状態にすることを意味し、機能層11Aは僅かに未乾燥状態又は未硬化状態であってもよい。
第2乾燥又は硬化装置50Bとして具体的には、第1乾燥又は硬化装置50Aと同様なものが例示される。
【0039】
次に、本実施形態に係る機能層形成装置101を適用した塗布方法について説明する。
【0040】
本実施形態に係る塗布方法は、まず、図2(A)及び図3(A)に示すように、支持ロール20、21により搬送される樹脂フィルム10表面に対して、塗布装置30により機能層形成塗布液を塗布する。これにより、機能層形成塗布液の塗膜11を形成する。樹脂フィルム10は、シート状の樹脂フィルムを搬送して塗布させてもよいし、ロール状の樹脂フィルムを引き出しつつ搬送して塗布させてもよい。
【0041】
ここで、本実施形態では、樹脂フィルム10には、機能層形成塗布液の被塗布面の一部に、予め他の機能層12が形成されている。具体的には、例えば、樹脂フィルム10の幅方向中央部に他の機能層12が形成され、これが樹脂フィルム10の搬送方向に沿って特定の間隙を持って複数形成されている。そして、機能層形成塗布液を、例えば他の機能層12を完全に覆って塗布させ、その塗膜11を形成する
【0042】
次に、図2(B)及び図3(B)に示すように、第1乾燥又は硬化装置50Aにより塗膜11を指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態とする。ここで、塗膜11の指触乾燥状態とは、塗膜11(塗面)の中央部に指先で軽く触れて指先が汚れない状態を意味する(JIS K 5600−1−1 4.3.5 a)参照)。塗膜11の半硬化乾燥状態とは、塗膜11(塗面)の中央部を指先で静かに軽くこすって塗膜11(塗面)にすり跡が付かない状態を意味する(JIS K 5600−1−1 4.3.5 b)参照)。
【0043】
なお、機能層形成塗布液が、非硬化材料を適用し、その塗膜の乾燥のみで機能層11Aが形成されるものの場合、その乾燥状態が進むにつれて、未乾燥状態、指触乾燥状態、半硬化乾燥状態、完全硬化乾燥状態とその状態が変化する。
【0044】
次に、図2(C)及び図3(C)に示すように、塗膜除去ロール41により、機能層形成用塗布液の塗膜11の幅方向両端部(樹脂フィルム10搬送方向に対する直交方向の両端部)を除去する。機能層形成用塗布液の塗膜11は、塗膜11が指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態で、塗膜11の被塗布面の一部が露出するように除去する。具体的には、例えば、塗膜11の幅方向両端部で覆われた樹脂フィルム10表面と共に他の機能層12表面の一部が露出するように、塗膜11の幅方向両端部を除去する。具体的には、例えば、他の機能層12の幅方向一端部が露出するように、塗膜11の幅方向両端部を除去する。なお、塗膜11は、幅方向端辺から幅方向に沿った長さで例えば50mm以内の領域の幅方向両端部を除去する。
【0045】
その後、図2(D)及び図3(D)に示すように、第2乾燥又は硬化装置50Bにより、幅方向両端部が除去された機能層形成用塗布液の塗膜11を、乾燥又は硬化させて機能層11Aを形成する。このようにして、樹脂フィルム10上に、機能層11Aが形成される。
【0046】
ここで、機能層形成塗布液の塗膜11は、その幅方向端部の膜厚が他の部分よりも厚くなる傾向にあり(図4参照)、この塗膜11を乾燥又は硬化させた機能層の幅方向端部は、機能層としての性能が他の部分と異なる性能を発揮してしまい、機能層として使用できない領域となることが多い。なお、図4は、塗膜の幅方向両端部を除去する前における塗布液の塗膜の幅方向の膜厚プロファイルを示す模式図である。
【0047】
そこで、本実施形態に係る機能層形成装置(機能層形成方法)では、第1乾燥又は硬化装置50Aにより塗膜11を指蝕乾燥状態又は半硬化乾燥状態として、塗膜除去装置40(塗膜除去ロール41)により他の部分よりも膜厚が厚い塗膜11の幅方向両端部を塗膜11の被塗布面の一部が露出するようして除去する。つまり、当該塗膜11の幅方向両端部を取り除く。そして、塗膜11の幅方向両端部の除去を、塗膜11が指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態で行う。これにより、ある程度固化した状態で塗膜の幅方向両端部の除去が行われることから、除去後の塗膜11の幅方向両端部の膜厚変動が抑制される(図5参照)。図5は、本実施形態において、塗膜の幅方向両端部を除去した後における塗膜の幅方向両端部の膜厚プロファイルを示す模式図である。
【0048】
一方で、塗膜11の幅方向両端部の除去を、塗膜11の除去面が弾性体で構成された塗膜除去装置40(塗膜除去ロール41)により行う。これにより、当該弾性体(塗膜除去ロール41の弾性層41B)が塗膜11の被塗布面と接触しても弾性体が弾性変形することから、塗膜11の被塗布面の損傷が抑制されると共に、塗膜11の残存も抑制される。
【0049】
したがって、本実施形態に係る機能層形成装置(機能層形成方法)では、機能層用塗布液の塗膜の被塗布面に対する残存及び損傷が抑制されると共に、膜厚のバラツキが抑制された機能層が形成される。
【0050】
また、本実施形態に係る機能層形成装置(機能層形成方法)では、樹脂フィルム10上の塗膜11の被塗布面に他の機能層12が形成されていても、上記同様の理由から、他の機能層12に対する損傷が抑制される。結果、樹脂フィルム10や他の機能層12の損傷に起因する性能劣化が抑制される。特に、機能層形成塗布液の塗膜11により覆われた他の機能層12を、上記塗膜11の幅方向両端部の除去により露出する場合に有効である。具体的には、例えば、他の機能層12として電極を樹脂フィルム10に形成させ、この電極の導通を図る目的で上記塗膜11の幅方向両端部の除去により露出する場合、電極の損傷による導通不良が抑制されると共に、塗膜11の残存が抑制されることから当該残存に起因する導通不良も抑制される。これは、電極として、他種に比べ外的な衝撃(例えば摺擦等)に比較的弱い酸化スズインジウム(ITO)電極を適用する場合に有効である。
【0051】
本実施形態に係る機能層形成装置(機能層形成方法)は、例えば、電気光学素子、これらを製造するプリンタブルエレクトロニクス等の分野に適用される。電気光学素子としては、例えば、表示媒体(液晶素子、光スイッチング素子、有機エレクトロルミネッセンス素子等)、太陽電池等が挙げられる。
【0052】
具体的には、形成する機能層11Aとしては、例えば、液晶層、有機エレクトロルミネッセンス素子層、光電気変換層、光スイッチング層(例えば電荷発生層及び電荷輸送層等の積層体から構成される光導電層:なお、各層が機能層11Aに該当する)等が挙げられる。これらの機能層11Aを形成するための機能層塗布液は、各機能層11Aの種類に応じた周知のものが適用され、非硬化性の材料を用いてもよいし、硬化性の材料を用いてもよい。つまり、機能層塗布液は、その塗膜の乾燥のみで機能層11Aが形成されるもの、及びその塗膜を硬化反応を生じさせることで機能層11Aが形成されるもののいずれでもよい。
また、機能層11Aの下層(被塗布面)として形成されている他の機能層12としては、例えば電極(例えば、ITO電極、金電極、銅電極、銀電極等)や、上記機能層11A自体も挙げられる。
また、樹脂フィルム10としては、例えば、樹脂材料(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート等)で構成されたものが用いられる。また、樹脂フィルム10は、可塑性のものを用いると、フレキシブルな表示媒体や太陽電池が得られることがからよい。また、樹脂フィルム10は、表示媒体や太陽電池に適用する場合、光透過性のものを用いることがよい。なお、樹脂フィルム10の厚みは特に限定されないが、例えば、0.01mm以上0.5mm以下の範囲とすることがよい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0054】
(実施例1)
−樹脂フィルム−
・フィルム搬送方向に沿って特定の間隙を持って配列するように、厚み0.08μmのITO電極(幅方向125mm×搬送方向250mm)が形成された厚み125μmのPETフィルム(幅180mm)を準備した(図Aの配置を参照してください)。
【0055】
−機能層形成塗布液−
正の誘電率異方性を有するネマチック液晶E8(メルク社製)74.8質量部に,カイラル剤CB15(BDH社製)21質量部とカイラル剤R1011(メルク社製)4.2質量部とを加熱溶解し、その後室温に戻して、ブルーグリーンの色光を選択反射するカイラルネマチック液晶を得た。
このブルーグリーンカイラルネマチック液晶10質量部に、キシレンジイソシアネート3モルとトリメチロールプロパン1モルとの付加物(武田薬品工業製D−110N)3質量部と酢酸エチル100質量部とを加えて均一溶液とし、油相となる液を調製した。
一方、ポリビニルアルコール(クラレ社製ポバール217EE)10質量部を、熱したイオン交換水1000質量部に加えて攪拌後、放置冷却することによって,水相となる液を調製した。
次に、スライダックで30V交流を与えた家庭用ミキサーによって、前記油相10質量部を前記水相100質量部中に1分間乳化分散して、水相中に油相液滴が分散した水中油エマルジョンを調製した。この水中油エマルジョンを60℃のウォーターバスで加熱しながら2時間攪拌し、界面重合を完了させて、液晶マイクロカプセルを形成した。得られた液晶マイクロカプセルの平均粒径をレーザー粒度分布計によって測定したところ、約12μmと見積もられた。
得られた液晶マイクロカプセル分散液を、網目38μmのステンレスメッシュを通して濾過後一昼夜放置し、乳白色の上澄みを取り除くことにより、液晶マイクロカプセルからなる固形成分約40質量%のスラリーを得た。
得られたスラリーに、その固形成分の質量に対して2/3となる量のポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール12質量%の溶液を加えることにより機能層形成塗布液を調製した。
【0056】
−塗膜除去装置−
外径φ20mm、長さ200mmのSUS303からなるシャフトを準備し、これの外周面にゴムスポンジ層(弾性層)を形成して、2本の塗膜除去ロールを準備した。
【0057】
上記機能層塗布液、及び各部材を本実施形態に係る機能層形成装置に適用し(図1参照)、本実施形態に係る機能層形成方法に従って、次のようにして機能層を形成した(図2及び図3参照)。
【0058】
まず、樹脂フィルムを搬送しつつ、機能層塗布液を塗布装置(ダイヘッドを備え、ロール状のフィルムを搬送できるダイ塗布装置)により樹脂フィルム表面に塗布して、第2乾燥装置通過後の機能膜の膜厚が40μmとなるように塗膜を形成した。この塗膜は、樹脂フィルムに形成されたITO電極を覆うような幅(160mm)で形成した。
次に、第1乾燥装置として温風スリット吹き出し装置を用い、温度40℃の温風が、0.2m/s以下の風速で塗膜面に当たるようにして塗膜を乾燥した。この塗膜を調べたところ、指触乾燥状態であった。
次に、指触乾燥状態の塗膜の幅方向両端部を、2本の塗膜除去ロールを圧力0.05MPaで樹脂フィルム側に押圧しつつ除去した。この塗膜の除去は、塗膜の幅方向両端部のそれぞれ幅20mmの領域が除去されると共に、ITO電極の幅方向一端部が幅10mmで露出するように行われた。
次に、第2乾燥装置として温風スリット吹き出し装置を用い、100℃の温風が2.0〜3.0m/sの風速で塗膜面に当たるようにしてで、幅方向両端部が除去された塗膜を乾燥することで、機能層(液晶層)を形成した。
【0059】
得られた機能層の膜厚について次のようにして評価した。ニコン製デジマイクロMF−501を用い、測定値から基板の厚みの差分を膜厚とした。ITO電極パターンの搬送方向中心位置での幅方向膜厚分布を評価した。幅方向は5mm間隔で測定を行い、ITOパターン上の塗膜の幅側端部から5mmの位置をそれぞれ測定開始、終了とした。測定点は、図6に示すように合計22点とした。そして、以下の式に基づき、膜厚むらとして算出した。
膜厚むら=|(両端部3点ずつの計6点平均値)-(全測定点での平均値)|/ (全測定点での平均値)。評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
○:0.15未満
△:0.15以上0.4未満
×:0.4以上
【0060】
また、機能層形成の塗膜を除去後に露出した樹脂フィルム及びITO電極の表面ついて次のようにして評価した。塗膜の残存及びITO電極の損傷については以下のようにデバイスを作成後、電圧をかけて、液晶が駆動するかで判断した。
まず、上記でITO電極と機能層(液晶層)が形成された樹脂フィルムを、幅130mm×搬送方向長さ260mmで裁断した(図7参照)。なお、図7中、他の機能層12がITO電極に相当する。
次に、上記構成と同じITO電極が形成された樹脂フィルム(PETフィルム)を準備し、このITO電極上に厚み5μmの両面粘着フィルムを張り合わせ装置で貼り付けた。
次に、ITO電極と機能層(液晶層)が形成された樹脂フィルムと、ITO電極が形成された樹脂フィルムと、を互いのITO電極形成面側が対面させ(図8(A)参照)、これらを貼り合せた後、プレス装置で圧着した(図8(B)参照:但し、互いのITO電極の一部が非接触となるように2つの0樹脂フィルムを圧着した)。これにより、液晶表示素子を作製した。図8中、110は樹脂フィルムを示し、120はITO電極を示し、121が両面テープを示す。
得られた液晶表示素子の露出したITO電極間に、まず10Hz、2パルスで800Vの電圧を与えたのち、10Hz、2パルス、400Vの電圧を与え、液晶が駆動して表示が切り替わるかを目視で確認し、塗膜の残存とITO電極の損傷を判断した。これを50枚実施した。評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
◎◎:駆動不良(損傷又は塗膜残存)なし
◎:駆動不良5%未満
○:駆動不良10%以下
△:駆動不良30%以下
×:駆動不良30%を超える
【0061】
(実施例2乃至5)
表1に従って、塗膜除去装置(塗膜除去ロール)の塗膜除去面(弾性層)の構成材料種を変更した以外は、上記実施例1と同様にして機能層を形成して、評価した。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例6)
機能層形成塗布液として上記塗布液を用い、第1乾燥装置の条件を温度40℃の温風が1.0m/s〜2.0m/sの風速で塗膜面に当たるようにし、第2乾燥装置の条件は実施例1と同様とした以外は、実施例1と同様にして機能層を形成して、評価した。結果を表1に示す。
なお、第1乾燥装置により、機能層形成塗布液の塗膜を乾燥した後の当該塗膜の状態を調べたところ、半硬化乾燥状態であった。
【0063】
(実施例7)
弾性層(ゴムスポンジ層)に水を含浸させた塗膜除去ロールを適用した以外は、実施例1と同様にして機能層を形成し、評価した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例1)
塗膜除去装置として、金属ブレード(SUS304製の金属ブレード)を適用した以外は、上記実施例1と同様にして機能層を形成して、評価した。結果を表2に示す。
【0065】
(比較例2)
第1乾燥装置による処理をせず、機能層形成塗布液の塗膜を指触乾燥状態とする前に、塗膜除去ロールにより塗膜の両端部を除去した以外は、実施例2と同様にして機能層を形成して評価した。結果を表2に示す。
【0066】
(比較例3)
ITO電極の幅方向一端部が幅10mmの領域を露出し、それ以外の領域のITO電極を覆うように、機能層塗布液を幅120mmで塗布を行った以外は、実施例2と同様にして機能層を形成して、評価した。結果を表2に示す。
【0067】
(比較例4)
第1乾燥装置の条件を、温度100℃の温風が、1.0m/s〜2.0m/sの風速で塗膜面に当たるようにし、第2乾燥装置は実施例1と同様にした以外は、実施例1と同様にして機能層を形成して、評価した。結果を表2に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、機能層の膜厚のバラツキが抑制されると共に、樹脂フィルム及びITO電極の表面に塗布液の残存及び損傷の抑制が抑制されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施形態に係る機能層形成装置の主要部を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る機能層形成装置を示す工程図である。
【図3】本実施形態に係る機能層形成装置を示す工程図である。
【図4】塗膜の幅方向両端部を除去する前における塗布液の塗膜の幅方向の膜厚プロファイルを示す模式図である。
【図5】本実施形態において、塗膜の幅方向両端部を除去した後における塗膜の幅方向両端部の膜厚プロファイルを示す模式図である。
【図6】実施例において、機能層の膜厚の測定点を示す模式図である。
【図7】実施例において、ITO電極と機能層(液晶層)が形成された樹脂フィルムを裁断した様子を示す模式図である。
【図8】実施例において、ITO電極と機能層(液晶層)が形成された樹脂フィルムと、ITO電極と両面テープが形成された樹脂フィルムと、を貼り合せた様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0072】
10 樹脂フィルム
11A 機能層
11 塗膜
12 他の機能層
20、21 支持ロール
30 塗布装置
40 塗膜除去装置
41 塗膜除去ロール
41A シャフト
41B 弾性層
50A 第1乾燥又は硬化装置
50B 第2乾燥又は硬化装置
101 機能層形成装置
110 樹脂フィルム
120 ITO電極
121 両面テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム上に、機能層形成用塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布手段と、
前記塗膜を乾燥又は硬化して、前記塗膜を指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態とする第1乾燥又は硬化手段と、
前記指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態の塗膜の幅方向両端部を、前記塗膜の被塗布面の一部が露出するように除去する塗膜除去手段であって、前記塗膜の除去面が弾性体で構成される塗膜除去手段と、
前記幅方向両端部が除去された塗膜を、乾燥又は硬化して機能層を形成する第2乾燥又は硬化手段と、
を備える機能層の形成装置。
【請求項2】
前記弾性体の硬度が、10以上40以下である請求項1に記載の機能層の形成装置。
【請求項3】
前記弾性体が、溶剤を含浸してなる請求項1に記載の機能層の形成装置。
【請求項4】
前記塗膜除去手段が、前記弾性体を前記塗膜の被塗布面側に押付けて配設される請求項1に記載の機能層の形成装置。
【請求項5】
前記塗膜除去手段が、複数備えられた請求項1に記載の機能層の形成装置。
【請求項6】
前記樹脂フィルム上の前記塗膜の被塗布面に他の機能層が形成されてなり、前記塗膜除去手段による前記塗膜の除去により前記他の機能層の一部を露出する請求項1に記載の機能層の形成装置。
【請求項7】
樹脂フィルム上に、機能層形成用塗布液を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥又は硬化して、前記塗膜を指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態とする工程と、
前記塗膜の除去面が弾性体で構成された塗膜除去手段により、前記指触乾燥状態又は半硬化乾燥状態の塗膜の幅方向両端部を、前記塗膜の幅方向両端部を前記塗膜の被塗布面の一部が露出するように除去する工程と、
前記幅方向両端部が除去された塗膜を、乾燥又は硬化して機能層を形成する工程と、
を有する機能層の形成方法。
【請求項8】
前記弾性体の硬度が、10以上40以下である請求項7に記載の機能層の形成方法。
【請求項9】
前記弾性体が、溶剤を含浸してなる請求項7に記載の機能層の形成方法。
【請求項10】
前記塗膜除去手段の弾性体を前記塗膜の被塗布面側に押付けて、前記塗膜の幅方向両端部を除去する請求項7に記載の機能層の形成方法。
【請求項11】
複数の前記塗膜除去手段により、前記塗膜の幅方向両端部を除去する請求項7に記載の機能層の形成方法。
【請求項12】
前記樹脂フィルム上の前記塗膜の被塗布面に他の機能層が形成されてなり、前記塗膜除去手段による前記塗膜の除去により前記他の機能層の一部を露出する請求項7に記載の機能層の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−131552(P2010−131552A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311162(P2008−311162)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】