説明

機能性膜形成システムおよび機能性膜形成方法

【課題】片伸びが生じた支持体の全域に均一な膜厚の機能性膜を形成する。
【解決手段】長尺帯状の支持体10を走行させる走行装置2と、支持体10に樹脂材料(機能性膜形成用塗料としての光学膜形成用塗料)Rを塗布する塗布装置3とを備えて、走行装置2によって支持体10を走行させつつ、塗布装置3によって支持体10の一方の面11に樹脂材料Rを塗布することによってハードコート膜HC(機能性膜としての光学膜)を形成する光学膜形成システ(機能性膜形成システム)1であって、支持体10を吸引する正圧吸引装置4を備え、正圧吸引装置4は、塗布装置3による塗布処理位置に配設されて、支持体10の他方の面12(一方の面11の裏面)に向けて気体を吹き付けることによって正圧吸引装置4と支持体10との間に負圧を生じさせて支持体10を非接触状態で吸引して保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺帯状の支持体を走行させつつ機能性膜形成用塗料を塗布することによって、支持体の一方の面に機能性膜を形成する機能性膜形成システムおよび機能性膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開平9−73081号公報には、長尺な透明フィルムを走行させつつ、その表面に塗布液を塗布して乾燥させることで、透明フィルムの表面に透明な樹脂層(光学膜)を形成して長尺状光学補償シートを製造する方法が開示されている。この公開公報に開示されている長尺状光学補償シートの製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう)では、ワイヤーバー塗布装置を使用して塗布液を塗布している。具体的には、透明フィルムにおける光学膜の形成面にワイヤーバー(ワイヤーバーコータ)の周面が直接、または塗布液を介して接触するように、透明フィルムをワイヤーバーに沿わせた状態において、透明フィルムを走行させる。これにより、ワイヤーバーから透明フィルムに一定量の塗布液が転写されて、透明フィルムの表面に塗膜が形成される。この後、塗膜を乾燥させることによって、透明フィルムの表面に光学膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−73081号公報(第4−16頁、第1−12図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の製造方法、および光学膜の形成に際して使用している製造システムには、以下の解決すべき問題点が存在する。すなわち、従来の製造方法(製造システム)では、透明フィルムにおける光学膜の形成面に塗布装置におけるワイヤーバーの周面が直接、または塗布液を介して接触するように、透明フィルムをワイヤーバーに沿わせた状態において走行させる塗布方法(塗布装置)が採用されている。一方、この種の製造方法に従って光学膜を形成する際には、図5に示すように、幅広の支持体100を破線の位置で細幅に裁断した複数の支持体10(この例では、3本の支持体10)のうちのいずれかを上記の「透明フィルム」として使用することがある。なお、同図および後に参照する図6では、支持体100(10)の構成についての理解を容易とするために、その長尺方向の寸法を実際の支持体100(10)の寸法よりも短く図示している。
【0005】
この場合、幅広の支持体100を幅方向で裁断して複数の細幅の支持体10を製造したときには、図6に示すように、支持体100における幅方向の端部側の部位で構成されている支持体10(図5,6における上方側の部位、および下方側の部位で構成された支持体10)に、いわゆる片伸びが生じた状態となることがある。このように片伸びが生じた支持体10に対して、従来の製造方法に従って塗布液を塗布する場合には、支持体10の幅方向における一方の端部のワイヤーバーに対する接触圧と、支持体10の幅方向における他方の端部のワイヤーバーに対する接触圧とが相違する状態となる。このような状態においては、ワイヤーバーに対する接触圧が小さい端部の側において、走行中の支持体10にばたつき(ふらつき)が生じて、ワイヤーバーに対する距離が変動する。この結果、塗膜の厚みが変動して、支持体10の長手方向に沿った各部において塗膜が薄くなったり、厚くなったりする。このため、従来の製造方法(製造システム)には、片伸びが生じた支持体10の全域に対して均一な膜厚の光学膜を形成することが困難になっているという問題点が存在する。
【0006】
一方、上記の製造方法(塗布液の塗布方法)に代えて、支持体10における光学膜の形成面(塗布液の塗布面)の裏面をバックアップロールによって支持しつつ、形成面に塗布液を塗布する方法を採用することも考えられる。しかしながら、上記のように片伸びが生じた支持体10をバックアップロールによって支持しつつ塗布液を塗布する方法を採用したときには、支持体10に生じた片伸びに起因して、支持体10の幅方向における一方の端部のバックアップロールに対する接触圧と、支持体10の幅方向における他方の端部のバックアップロールに対する接触圧とが相違する状態となる。このような状態においては、バックアップロールに対する接触圧が小さい端部の側において、走行中の支持体10にばたつきが生じて、バックアップロールに対する距離が変動する。この結果、バックアップロールによって支持しない上記の塗布方法と同様にして、塗膜の厚みが変動して、薄くなったり、厚くなったりする。このため、このような塗布方法を採用したとしても、片伸びが生じた支持体10の全域に対して均一な膜厚の光学膜を形成することが困難となる。
【0007】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、片伸びが生じた支持体の全域に均一な膜厚の機能性膜を形成し得る機能性膜形成システムおよび機能性膜形成方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明に係る機能性膜形成システムは、長尺帯状の支持体を走行させる走行装置と、前記支持体に機能性膜形成用塗料を塗布する塗布装置とを備えて、前記走行装置によって前記支持体を走行させつつ、前記塗布装置によって当該支持体の一方の面に前記機能性膜形成用塗料を塗布することによって機能性膜を形成する機能性膜形成システムであって、前記支持体を吸引する吸引装置を備え、前記吸引装置は、前記塗布装置による塗布処理位置に配設されて、前記一方の面の裏面に向けて気体を吹き付けることによって当該吸引装置と前記支持体との間に負圧を生じさせて当該支持体を非接触状態で吸引して保持する。
【0009】
また、本発明に係る機能性膜形成システムは、前記機能性膜形成用塗料としての光学膜形成用塗料を塗布して前記機能性膜として光学膜を形成可能に構成されている。
【0010】
また、本発明に係る機能性膜形成方法は、長尺帯状の支持体を走行させつつ、当該支持体に機能性膜形成用塗料を塗布することによって当該支持体の一方の面に機能性膜を形成する機能性膜形成方法であって、前記機能性膜形成用塗料の塗布処理位置に吸引装置を配設して、当該吸引装置から前記一方の面の裏面に向けて気体を吹き付けることによって当該吸引装置と前記支持体との間に負圧を生じさせて当該支持体を非接触状態で吸引して保持する。
【0011】
また、本発明に係る機能性膜形成方法は、前記機能性膜形成用塗料としての光学膜形成用塗料を塗布して前記機能性膜として光学膜を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る機能性膜形成システムおよび機能性膜形成方法によれば、長尺帯状の支持体を走行させつつ、支持体の一方の面に機能性膜形成用塗料を塗布することによって一方の面に機能性膜を形成する際に、機能性膜形成用塗料の塗布処理位置に吸引装置を配設して、吸引装置から一方の面の裏面に向けて気体を吹き付けることによって吸引装置と支持体との間に負圧を生じさせて支持体を非接触状態で吸引して保持することにより、機能性膜形成用塗料の塗布処理位置において、走行中の支持体にばたつき(ふらつき)が生じないため、たとえ支持体に片伸びが生じていたとしても、機能性膜形成用塗料を塗布する一方の面と、塗布装置のバー、シリンダーおよびリップ等との距離を一定距離に維持することができる。したがって、支持体の一方の面の全域に対して均一な膜厚の塗膜を形成することができる結果、全域に対して均一な膜厚の機能性膜を形成することができる。さらに、吸引装置によって支持体を非接触状態で吸引して保持することにより、支持体を保持するための構成によって支持体に傷付きが生じる事態を回避することができる。
【0013】
また、本発明に係る機能性膜形成システムおよび機能性膜形成方法によれば、機能性膜形成用塗料としての光学膜形成用塗料を塗布して機能性膜として光学膜を形成することにより、塗膜の厚みをモニタリングして塗布装置のバーやシリンダー等の姿勢を調整する(モニタリング結果を塗布処理にフィードバックする)ことが可能な塗料の塗布時とは異なり、塗膜の厚みをモニタリングすること自体が困難な光学膜形成用塗料の塗布に際して、支持体の一方の面の全域に対して、確実かつ容易に均一な膜厚の塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】光学膜形成システム1の構成を示す構成図である。
【図2】光学膜形成システム1における正圧吸引装置4と支持体10との位置関係について説明するための正圧吸引装置4および支持体10の断面側面図である。
【図3】光学膜形成システム1における正圧吸引装置4と支持体10との位置関係について説明するための正圧吸引装置4および支持体10の底面図である。
【図4】他の実施の形態に係る正圧吸引装置4Aと支持体10との位置関係について説明するための正圧吸引装置4Aおよび支持体10の断面側面図である。
【図5】支持体100の平面図である。
【図6】支持体100を裁断した形成した複数の支持体10の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る機能性膜形成システムおよび機能性膜形成方法の実施の形態について説明する。
【0016】
図1に示す光学膜形成システム1は、「機能性膜形成システム」の一例であって、本発明に係る「機能性膜形成方法」に従い、支持体10の一方の面11に、樹脂材料Rを塗布して乾燥させることにより、「機能性膜としての光学膜」の一例であるハードコート膜HCを形成可能に構成されている。具体的には、この光学膜形成システム1は、走行装置2、塗布装置3、正圧吸引装置4,4、第1乾燥装置5、第2乾燥装置6および図示しない制御装置を備えて構成されている。この場合、支持体10は、光透過性を有する樹脂材料(一例として、PET:PolyEthylene Terephthalate)で構成された厚み14〜200μm程度の樹脂フィルムであって、図5,6に示すように、幅広の支持体100を幅方向で裁断することによって長尺帯状に形成されている。このため、前述したように、複数の支持体10の中には、片伸びが生じた支持体10が存在することがある。また、ハードコート膜HCを形成するための樹脂材料Rは、「機能性膜形成用塗料」としての「光学膜形成用塗料」の一例であって、本例では、アクリル樹脂等を主成分とする材料を溶剤で希釈した液で構成されている。この「アクリル樹脂等を主成分とする材料」もまた、光透過性を有する樹脂材料の一つである。
【0017】
一方、走行装置2は、制御装置の制御に従い、ハードコート膜HCを形成する支持体10を巻回した繰出し側ロール(図示せず)から、ハードコート膜HCの形成が完了した支持体10を巻回する巻取り側ロール(図示せず)まで、支持体10を矢印Aの向きに走行させる装置であって、一例として、上記の繰出し側ロールや巻取り側ロールを回転させる回転機構を備えて構成されている。塗布装置3は、一例として、バーコート装置で構成されており、走行装置2によって走行させられる支持体10の一方の面11にバーを介して樹脂材料Rを転写することで一方の面11に樹脂材料Rを塗布する。この場合、この光学膜形成システム1では、従来の製造方法において使用しているワイヤーバー塗布装置とは異なり、支持体10の一方の面11を塗布装置3のバーに対して沿わせる(押し付ける)ことなく、後述するように、支持体10の一方の面11が塗布装置3のバーに対して一定距離だけ離間した状態が維持されるように構成されている。
【0018】
正圧吸引装置4は、「吸引装置」の一例であって、上記の塗布装置3による樹脂材料Rの塗布処理位置に配設されて、走行装置2によって走行させられている支持体10の他方の面12(一方の面の裏面)に向けて乾燥圧縮空気(「気体」の一例:以下、単に「圧縮空気」ともいう)を吹き付けることにより、支持体10を非接触状態で吸引して保持する。この場合、図2,3に示すように、正圧吸引装置4は、支持体10における他方の面12との対向面に、図示しないエアポンプから供給された圧縮空気を噴出させるための一対のスリット状の噴出口H,Hが形成されている。なお、スリット状の噴出口H,Hを設ける構成に代えて、複数の細孔(噴出口)を支持体10の幅方向に対応させて列状に設けた構成(図示せず)や、スリット状の噴出口Hおよび複数の細孔を適宜組み合わせた構成(図示せず)を採用することもできる。
【0019】
この光学膜形成システム1では、一例として、塗布装置3のバーに対する繰出しロール側、および塗布装置3のバーに対する巻取りロール側にそれぞれ1つずつ正圧吸引装置4を配設することで、塗布装置3によって樹脂材料Rが塗布される直前の支持体10、および塗布装置3による樹脂材料Rの塗布が完了した直後の支持体10を両正圧吸引装置4,4によって吸引して保持する構成が採用されている。
【0020】
第1乾燥装置5および第2乾燥装置6は、塗布装置3による樹脂材料Rの塗布が完了した支持体10(一方の面11に塗布された樹脂材料Rからなる塗膜)に向けて温風を吹き付けることにより、樹脂材料R(塗膜)に含まれている溶剤を揮発させて乾燥させる。なお、上記の樹脂材料Rに代えて、例えば紫外線硬化型の樹脂材料(「機能性膜形成用塗料」としての「光学膜形成用塗料」の他の一例)を塗布して「光学膜(「機能性膜としての光学膜」の他の一例)」を形成する場合には、この第1乾燥装置5や第2乾燥装置6に加えて、樹脂材料(塗膜)に紫外線を照射する紫外線照射装置(図示せず)を配設する。
【0021】
この光学膜形成システム1によって支持体10の一方の面11にハードコート膜HCを形成する際には、まず、ハードコート膜HCを形成する支持体10が巻回された繰出し側ロールから支持体10の一端部を繰り出して、この一端部を、塗布装置3と正圧吸引装置4,4との間(塗布処理位置)、第1乾燥装置5内、および第2乾燥装置6内をこの順で通過させて、巻取り側ロールにセットする。次いで、図示しない操作部の操作によって処理開始を指示する。この際には、制御装置が、光学膜形成システム1の各部を制御することにより、走行装置2による支持体10の走行、正圧吸引装置4,4による支持体10の吸引(保持)、塗布装置3による樹脂材料Rの塗布、第1乾燥装置5による樹脂材料R(塗膜)の乾燥、および第2乾燥装置6による樹脂材料R(塗膜)の乾燥の各処理を開始させる。
【0022】
この場合、塗布装置3による塗布処理位置においては、図2に示すように、正圧吸引装置4の各噴出口H,Hから支持体10の他方の面12に向けて矢印B1の向きで圧縮空気が噴出される(両噴出口H,Hから互いに離反する向きに圧縮空気を噴出する構成・方法の例)。この際には、支持体10における他方の面12と正圧吸引装置4との間(この例では、正圧吸引装置4における両噴出口H,H間)に負圧が生じる結果、この負圧によって対象物(この例では、支持体10)が矢印Cの向きに吸引される。また、正圧吸引装置4に向けて吸引された支持体10は、両噴出口Hから噴出された圧縮空気が他方の面12を矢印Dの向きに押圧する結果、上記の負圧によって生じる矢印Cの向きの吸引力と、噴出口H,Hから噴出された圧縮空気による矢印Dの向きの押圧力との均衡が得られる高さに位置することとなる。これにより、走行装置2によって矢印Aの向きに走行させられている支持体10が、両正圧吸引装置4,4によって保持されて、塗布装置3のバーに対する距離が一定の距離に維持される。
【0023】
したがって、たとえ片伸びが生じている支持体10であっても、他方の面12の各部の正圧吸引装置4の底面に対する距離が一定距離となる。このため、両正圧吸引装置4,4と塗布装置3との位置関係を予め調整しておくことで、矢印Aの向きに走行中の支持体10における一方の面11の各部を塗布装置3のバーに対して一定距離だけ離間した状態を維持することができる。また、塗布装置3による樹脂材料Rの塗布処理位置において、走行中の支持体10にばたつき(ふらつき)が生じる事態も回避される。これにより、塗布装置3のバーを介して転写された樹脂材料Rによって、支持体10の一方の面11の全域に均一な膜厚の塗膜が形成される。
【0024】
続いて、樹脂材料Rの塗布(塗膜の形成)が完了した支持体10は、第1乾燥装置5内および第2乾燥装置6内をこの順で通過させられる。この際に、樹脂材料R(塗膜)に含まれている溶剤は、温風を吹き付けられることによって揮発させられる。これにより、支持体10の一方の面11に樹脂材料R(塗膜)が乾燥して硬化したハードコート膜HCが形成される。この後、ハードコート膜HCの形成が完了した支持体10は、巻取り側ロールに巻回される。以上により、光学膜形成システム1によるハードコート膜HCの形成処理が完了する。
【0025】
このように、この光学膜形成システム1、および光学膜形成システム1による機能性膜形成方法(光学膜形成方法)では、長尺帯状の支持体10を走行させつつ、支持体10の一方の面11に樹脂材料Rを塗布することによって一方の面11に光学膜(この例では、ハードコート膜HC)を形成する際に、塗布処理位置に正圧吸引装置4,4を配設して、正圧吸引装置4,4から他方の面12(一方の面11の裏面)に向けて気体(この例では、乾燥圧縮空気)を吹き付けることによって正圧吸引装置4,4と支持体10との間に負圧を生じさせて支持体10を非接触状態で吸引して保持する。
【0026】
したがって、この光学膜形成システム1、および光学膜形成システム1による機能性膜形成方法(光学膜形成方法)によれば、樹脂材料Rの塗布処理位置において、走行中の支持体10にばたつき(ふらつき)が生じないため、たとえ支持体10に片伸びが生じていたとしても、樹脂材料Rを塗布する一方の面11と塗布装置3のバーとの距離を一定距離に維持することができる。したがって、支持体10の一方の面11の全域に対して均一な膜厚の塗膜を形成することができる結果、全域に対して均一な膜厚のハードコート膜HCを形成することができる。さらに、正圧吸引装置4によって支持体10を非接触状態で吸引して保持することにより、支持体10を保持するための構成によって支持体10に傷付きが生じる事態を回避することができる。
【0027】
また、この光学膜形成システム1、および光学膜形成システム1による機能性膜形成方法(光学膜形成方法)によれば、「機能性膜形成用塗料」としての「光学膜形成用塗料(この例では、樹脂材料R)」を塗布して「機能性膜」として「光学膜(この例では、ハードコート膜HC)」を形成することにより、塗膜の厚みをモニタリングして塗布装置のバー等の姿勢を調整する(モニタリング結果を塗布処理にフィードバックする)ことが可能な塗料の塗布時とは異なり、塗膜の厚みをモニタリングすること自体が困難な光学膜形成用塗料(樹脂材料R)の塗布に際して、支持体10の一方の面11の全域に対して、確実かつ容易に均一な膜厚の塗膜を形成することができる。
【0028】
なお、「機能性膜形成システム」の構成、および「機能性膜形成方法」は、上記の光学膜形成システム1の構成、および光学膜形成システム1による機能性膜形成方法の例に限定されない。例えば、「光学膜」の一例であるハードコート膜HCの形成を例に挙げて説明したが、「光学膜」はこれに限定されず、反射防止膜(AR膜)、防眩膜(AG膜)、ITO膜および拡散膜などの各種光学膜の形成に際して、上記の光学膜形成システム1および機能性膜形成方法を採用することができる。また、「機能性膜」は上記の「光学膜」に限定されず、例えば、磁性記録層を構成する磁性膜、電極およびグリーンシート等の各種の「機能性膜」の形成に本発明を適用することができる。
【0029】
また、バーコート装置で構成した塗布装置3を使用する例について説明したが、「塗布装置」はこれに限定されず、スリットダイコータ、グラビアコータおよびリバースグラビアコータ等の各種の塗布装置によって樹脂材料Rを塗布する際に、正圧吸引装置4のような「吸引装置」によって「支持体」を吸引して保持することができる。このような構成を採用した場合においても、上記の塗布装置3を用いた構成と同様にして、「機能性膜形成用塗料(光学膜形成用塗料)」を塗布する「一方の面」と「塗布装置」のバーおよびシリンダーや、スリットダイコータのリップ等との距離を一定距離に維持することができる。
【0030】
さらに、2つの正圧吸引装置4によって支持体10を吸引して保持する例について説明したが、1つの正圧吸引装置4を「塗布装置」のバーやシリンダー等に対向配置して支持体10を吸引して保持する構成および方法を採用することもできる。また、両噴出口H,Hから互いに離反する向きに圧縮空気を噴出する構成の正圧吸引装置4を使用する構成・方法(図2参照)を例に挙げて説明したが、この正圧吸引装置4に代えて、図4に示すように、両噴出口H,Hから互いに接近する向き(矢印B2,B2の向き)で圧縮空気を噴出するように構成した正圧吸引装置4Aを使用する構成・方法を採用することもできる。この正圧吸引装置4Aにおいては、同図に示すように、両噴出口H,Hから支持体10の他方の面12に向けて矢印B2,B2の向きでそれぞれ圧縮空気を噴出することで、支持体10における他方の面12と正圧吸引装置4Aとの間(この例では、正圧吸引装置4Aにおける両噴出口H,H間)に負圧が生じる結果、この負圧によって対象物(この例では、支持体10)が矢印Cの向きに吸引される。なお、両噴出口H,Hから噴出された圧縮空気は、矢印B3で示すように、両噴出口H,Hの間に設けられた排気孔を通過して正圧吸引装置4Aと支持体10との間から排気される。このような構成の正圧吸引装置4Aを採用した場合においても、前述した正圧吸引装置4を使用する構成・方法と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 光学膜形成システム
2 走行装置
3 塗布装置
4,4A 正圧吸引装置
10,100 支持体
11 一方の面
12 他方の面
H 噴出口
HC ハードコート膜
R 樹脂材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の支持体を走行させる走行装置と、前記支持体に機能性膜形成用塗料を塗布する塗布装置とを備えて、前記走行装置によって前記支持体を走行させつつ、前記塗布装置によって当該支持体の一方の面に前記機能性膜形成用塗料を塗布することによって機能性膜を形成する機能性膜形成システムであって、
前記支持体を吸引する吸引装置を備え、
前記吸引装置は、前記塗布装置による塗布処理位置に配設されて、前記一方の面の裏面に向けて気体を吹き付けることによって当該吸引装置と前記支持体との間に負圧を生じさせて当該支持体を非接触状態で吸引して保持する機能性膜形成システム。
【請求項2】
前記機能性膜形成用塗料としての光学膜形成用塗料を塗布して前記機能性膜として光学膜を形成可能に構成されている請求項1記載の機能性膜形成システム。
【請求項3】
長尺帯状の支持体を走行させつつ、当該支持体に機能性膜形成用塗料を塗布することによって当該支持体の一方の面に機能性膜を形成する機能性膜形成方法であって、
前記機能性膜形成用塗料の塗布処理位置に吸引装置を配設して、当該吸引装置から前記一方の面の裏面に向けて気体を吹き付けることによって当該吸引装置と前記支持体との間に負圧を生じさせて当該支持体を非接触状態で吸引して保持する機能性膜形成方法。
【請求項4】
前記機能性膜形成用塗料としての光学膜形成用塗料を塗布して前記機能性膜として光学膜を形成する請求項3記載の機能性膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−213677(P2012−213677A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79046(P2011−79046)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】