説明

欠陥検出方法

【課題】特定の織物パターンがタイル状に敷き詰められた構造を有する複雑な地合の織物画像に含まれる微小欠陥を検出する。
【解決手段】検査対象となる織物に含まれる欠陥を検出する方法であって、織物の画像を取得する画像取得工程S10と、画像取得工程S10で取得した取得画像に基づいて比較用正常パターンを含む参照画像を生成する参照画像生成工程S20と、参照画像生成工程S20で生成した参照画像と画像取得工程S10で取得した取得画像との双方にウェーブレット変換を施す画像変換工程S30と、画像変換工程S30によるウェーブレット変換後の参照画像と取得画像とを比較する画像比較工程S40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物画像における欠陥を検出する方法に関し、より詳細には、特定の織物パターンがタイル状に敷き詰められた構造を有する複雑な地合の織物画像中に含まれる微小欠陥を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、織物画像の欠陥を検出する方法が種々提案され、実用化されている。例えば、画像の輝度レベルに対して所定の閾値を設定し、2値化処理を行うことにより欠陥部を抽出する手法が提案されている。また、近年においては、検査対象の織物表面画像を取得し、正常な場合の画像の周波数成分を予め求めて記憶しておき、検査時における画像の周波数成分と比較することにより、欠陥の有無を判定する手法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−102202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定の閾値を設定して2値化処理を行う手法は、正常部と欠陥部に明確な輝度値の差が存在する場合は有用である。しかし、正常部自体が輝度値の変化に富み、欠陥部との輝度値差が存在しない場合には、このような手法によって欠陥を抽出することは困難である。
【0005】
また、特許文献1に記載されているような画像の周波数成分を用いて欠陥の有無を判定する手法では、画像に対して欠陥の占める面積が大きい場合は周波数成分に明瞭な差異が生じるが、微小な欠陥の場合には周波数成分における変化がほとんど生じず、欠陥を抽出することが困難となる。また、このような従来の手法は、正常部が均一なテクスチャとなっている場合は効果的であるが、正常部において糸のねじれや乱れが生じている場合には、それらがノイズとして働き、欠陥部の抽出が困難となる。
【0006】
従来の欠陥検出方法には上述したような問題があることから、現状では検査員による目視検査が実施されている。しかし、目視検査では、検査員の熟練度や体調によって判定が左右され得るといった問題が生じてしまう。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、特定の織物パターンがタイル状に敷き詰められた構造を有する複雑な地合の織物画像に含まれる微小欠陥を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る方法は、検査対象となる織物に含まれる欠陥を検出する方法であって、織物の画像を取得する画像取得工程と、画像取得工程で取得した取得画像に基づいて比較用正常パターンを含む参照画像を生成する参照画像生成工程と、参照画像生成工程で生成した参照画像と画像取得工程で取得した取得画像との双方にウェーブレット変換を施す画像変換工程と、画像変換工程によるウェーブレット変換後の参照画像と取得画像とを比較する画像比較工程と、を備えるものである。
【0009】
かかる方法を採用すると、取得画像に基づいて比較用正常パターンを含む参照画像を生成することにより比較処理をし易くすることができる。また、参照画像及び取得画像の双方にウェーブレット変換を施すことにより、欠陥情報を強調することができる。この結果、微小な欠陥の検出を実現させることができる。
【0010】
本発明に係る欠陥検出方法において、参照画像生成工程は、画像取得工程で取得した取得画像の輝度値を縦横方向各々において積分することにより取得画像の縦横方向における投影データを算出する投影データ算出工程と、投影データ算出工程で算出した各投影データの自己相関を算出する自己相関算出工程と、自己相関算出工程で算出した各自己相関の所定範囲内におけるピーク位置を検出するピーク位置検出工程と、ピーク位置検出工程で検出した各ピーク位置に基づいて縦横方向における最小ユニットサイズを設定するユニットサイズ設定工程と、ユニットサイズ設定工程で設定した最小ユニットサイズで取得画像を繰り返し切り出す画像切出工程と、画像切出工程で切り出した画像の平均画像を生成する平均画像生成工程と、平均画像生成工程で生成した平均画像を敷き詰めることにより参照画像を生成する平均画像敷詰工程と、を有することができる。
【0011】
かかる方法を採用すると、最小ユニットサイズ単位で取得画像を分割して平均化し、平均化した画像を敷き詰めて参照画像を生成することができるので、参照画像生成のための計算量を少なくすることができる。また、取得画像の縦横方向における投影データの自己相関ピークを使用して最小ユニットサイズを設定しているので、糸の乱れ等に起因したユニットサイズ単位の変動に対してもロバストな結果を得ることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る欠陥検出方法の画像変換工程におけるウェーブレット変換では、想定される欠陥のサイズ及び/又は形状に基づいて設定したパラメータを使用して基底関数を決定することができる。
【0013】
かかる方法を採用すると、想定される欠陥のサイズや形状に基づいて設定したパラメータを使用して基底関数を決定するので、より少ない計算量で効果的な欠陥の強調を行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る欠陥検出方法の画像比較工程では、画像変換工程によるウェーブレット変換後の参照画像と取得画像との差分と、所定の閾値と、に基づいて欠陥の有無を判定することができる。
【0015】
かかる方法を採用すると、ウェーブレット変換後の両画像の差分と、所定の閾値と、に基づいて欠陥の有無を客観的に判定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定の織物パターンがタイル状に敷き詰められた構造を有する複雑な地合の織物画像に含まれる微小欠陥を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る欠陥検出方法を実施する際に使用される検査システムのブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る欠陥検出方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】検査対象となる織物の欠陥の分類を説明するための説明図である。
【図4】(A)は本実施形態に係る欠陥検出方法で生成される参照画像の一例を示す図であり、(B)は本実施形態に係る欠陥検出方法で取得される取得画像の一例を示す図である。
【図5】(A)は図4(A)に示す参照画像のVA-VA断面における輝度値のグラフであり、(B)は図4(B)に示す取得画像のVB-VB断面における輝度値のグラフである。
【図6】(A)は取得画像の横(x)方向における投影データのグラフであり、(B)は取得画像の横(x)方向における投影データの自己相関のグラフであり、(C)は取得画像の縦(y)方向における投影データのグラフであり、(D)は取得画像の縦(y)方向における投影データの自己相関のグラフである。
【図7】(A)は最小ユニットを示す図であり、(B)は(A)に示す最小ユニットで取得画像を分割した状態を示す図である。
【図8】図4(A)に示す参照画像に4種類の基底関数を採用してウェーブレット変換を施した画像を示す図である。
【図9】(A)は図8(A)に示す画像のIXA-IXA断面における輝度値のグラフであり、(B)は図8(B)に示す取得画像のIXB-IXB断面における輝度値のグラフであり、(C)は図8(C)に示す画像のIXC-IXC断面における輝度値のグラフであり、(D)は図8(D)に示す取得画像のIXD-IXD断面における輝度値のグラフである。
【図10】図4(B)に示す取得画像に4種類の基底関数を採用してウェーブレット変換を施した画像を示す図である。
【図11】(A)は図10(A)に示す画像のXIA-XIA断面における輝度値のグラフであり、(B)は図10(B)に示す取得画像のXIB-XIB断面における輝度値のグラフであり、(C)は図10(C)に示す画像のXIC-XIC断面における輝度値のグラフであり、(D)は図10(D)に示す取得画像のXID-XID断面における輝度値のグラフである。
【図12】4種類の基底関数を採用してウェーブレット変換を施した参照画像と取得画像の差分の画像を示す図である。
【図13】(A)は図12(A)に示す画像のXIIIA-XIIIA断面における輝度値のグラフであり、(B)は図12(B)に示す取得画像のXIIIB-XIIIB断面における輝度値のグラフであり、(C)は図12(C)に示す画像のXIIIC-XIIIC断面における輝度値のグラフであり、(D)は図12(D)に示す取得画像のXIIID-XIIID断面における輝度値のグラフである。
【図14】中欠陥検出方法を説明するためのフローチャートである。
【図15】大欠陥検出方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
まず、図1を用いて、本実施形態に係る欠陥検出方法を実施する際に使用される検査システム1の構成について説明する(なお、ここで説明する検査システム1はあくまでも一例であり、他の構成を有するシステムを用いて本発明に係る欠陥検出方法を実施することもできる)。検査システム1は、図1に示すように、検査対象となる織物の画像を取得するための画像取得装置10と、各種画像処理を行う画像処理装置20と、画像処理装置20によって処理された画像を出力する画像出力装置30と、を備えている。
【0020】
画像取得装置10は、検査対象となる織物の画像を撮影して取得するためのカメラ等の撮像部、取得した画像を画像処理装置20に転送するための転送部、撮像部や転送部を操作するための操作部等を有している。オペレータは、操作部を介して撮像部や転送部を操作することにより、検査対象となる織物の画像を取得するとともに、取得した画像を画像処理装置20に転送することができる。
【0021】
画像出力装置30は、画像処理装置20によって処理された画像を視覚的に表示する表示部、画像に関連する音声を出力する音声出力部、表示部や音声出力部を操作するための操作部等を有している。オペレータは、操作部を介して表示部や音声出力部を操作することにより、画像処理装置20によって処理された画像に関連する情報を認識することができる。
【0022】
画像処理装置20は、CPU、入出力インターフェース、メモリ(ROM、RAM、HDD等)等を備えるコンピュータシステムであり、メモリに記録された各種制御プログラムをCPUが読み込んで所望の演算を実行することにより、種々の処理や制御を行う。
【0023】
具体的には、画像処理装置20は、画像取得装置10で取得した取得画像に基づいて比較用正常パターンを含む参照画像を生成する参照画像生成部21と、参照画像生成部21で生成した参照画像や画像取得装置10で取得した取得画像にウェーブレット変換を施す画像変換部22と、画像変換部22によるウェーブレット変換後の参照画像と取得画像とを比較する画像比較部23と、を有するとともに、図示されていない操作部等を有している。
【0024】
参照画像生成部21は、画像取得装置1で取得した取得画像の輝度値を縦横方向各々において積分することにより取得画像の縦横方向における投影データを算出する機能と、算出した各投影データの自己相関を算出する機能と、算出した各自己相関の所定範囲内におけるピーク位置を検出する機能と、検出した各ピーク位置に基づいて縦横方向における最小ユニットサイズを設定する機能と、設定した最小ユニットサイズで取得画像を繰り返し切り出す機能と、切り出した画像の平均画像を生成する機能と、生成した平均画像を敷き詰めることにより参照画像を生成する機能と、を有している。
【0025】
画像変換部22におけるウェーブレット変換では、想定される欠陥のサイズや形状に基づいて設定したパラメータを使用して基底関数を決定するようにしている。パラメータ及び基底関数の具体例については、後に詳述することとする。
【0026】
画像比較部23では、画像変換部22による変換後の参照画像と取得画像との差分と、所定の閾値と、に基づいて欠陥の有無を判定するようにしている。閾値の具体例については、後に詳述することとする。
【0027】
次に、図2〜図15を用いて、本実施形態に係る欠陥検出方法について説明する。
【0028】
本実施形態においては、図4(B)に示すように特定の織物パターンがタイル状に敷き詰められた構造を有する複雑な地合の織物中に含まれる欠陥を検出する方法について説明する。検査対象となる織物に含まれる欠陥は、図3に示すように、「小欠陥(糸足、糸切れ、毛羽等)」、「中欠陥(緯抜け、糸径のばらつき、厚段等)」及び「大欠陥(ゆるみ、目曲がり、芯材着色等)」の3つに分類されるが、本実施形態においては、「小欠陥」を検出する方法を中心に説明することとする。
【0029】
<小欠陥検出方法>
最初に、図2〜図13を用いて、「小欠陥」を検出する方法について説明する。まず、オペレータは、検査システム1の画像取得装置10の操作部を操作することにより、検査対象となる織物の画像を取得し、取得した取得画像を画像処理装置20に転送する(画像取得工程:S10)。図4(B)は取得画像の一例を示すものであり、図5(B)は図4(B)のVB-VB断面における輝度値のグラフを示すものである。オペレータは、これら取得画像や輝度値のグラフを、検査システム1の画像出力装置30の表示部に表示して確認することができる。なお、本実施形態においては、図4(B)に示すように、検査対象となる織物の中央に異物(糸くず)Fが混入しているものとする。
【0030】
次いで、オペレータは、画像処理装置20の操作部を操作することにより、画像取得工程S10で取得した取得画像に基づいて、比較用正常パターンを含む参照画像を生成する(参照画像生成工程:S20)。ここで、参照画像生成工程S20を構成する各工程群について説明する。
【0031】
まず、オペレータは、画像処理装置20の操作部を操作することにより、画像取得工程S10で取得した取得画像の輝度値を縦横(x、y)方向各々において積分して、取得画像の縦横(x、y)方向における投影データを算出する(投影データ算出工程:S21)。図6(A)は、取得画像の横(x)方向における投影データのグラフであり、図6(C)は、取得画像の縦(y)方向における投影データのグラフである。オペレータは、これら縦横(x、y)方向における投影データのグラフを、画像出力装置30の表示部に表示して確認することができる。なお、投影データ算出工程S21で算出された投影データは、後述する中欠陥検出方法(図14)で使用される。
【0032】
投影データ算出工程S21を経た後、オペレータは、画像処理装置20の操作部を操作することにより、縦横(x、y)方向における投影データの自己相関を算出する(自己相関算出工程:S22)。図6(B)は、取得画像の横(x)方向における投影データの自己相関のグラフであり、図6(D)は取得画像の縦(y)方向における投影データの自己相関のグラフである。オペレータは、これら縦横(x、y)方向における自己相関のグラフを、画像出力装置30の表示部に表示して確認することができる。
【0033】
次いで、オペレータは、自己相関算出工程S22で算出した縦横(x、y)方向における自己相関の所定範囲内におけるピーク位置を検出する(ピーク位置検出工程:S23)。ピーク位置の取り得る範囲はオペレータが適宜設定することができる。例えば、図6(B)に示すように、横(x)方向において100〜200画素の範囲内でピーク位置を検出する一方、図6(D)に示すように、縦(y)方向において50〜150画素の範囲内でピーク位置を検出するように設定することができる。オペレータは、画像出力装置30の表示部に表示された縦横(x、y)方向における自己相関のグラフを視認しながら、所定範囲内におけるピーク位置を検出することができる。
【0034】
ピーク位置検出工程S23を経た後、オペレータは、各ピーク位置に基づいて縦横(x、y)方向における最小ユニットサイズを設定する(ユニットサイズ設定工程:S24)。例えば、オペレータは、図6(B)に示すように横(x)方向におけるピークが156画素の位置にあり、図6(D)に示すように縦(y)方向におけるピークが102画素の位置にある場合は、図7(A)に示すように横(x)方向156画素・縦(y)方向102画素の最小ユニットサイズを設定する。
【0035】
ユニットサイズ設定工程S24を経た後、オペレータは、図7(A)に示すような最小ユニットサイズを有する最小ユニットで取得画像を繰り返し切り出す(画像切出工程:S25)。例えば、オペレータは、横(x)方向1024画素・縦(y)方向768画素の図7(B)に示すような取得画像を、横(x)方向156画素・縦(y)方向102画素の最小ユニットサイズを有する図7(A)の最小ユニットで切り出す場合には、取得画像を全部で42個の最小ユニットに分割(横(x)方向6分割、縦(y)方向7分割)する。オペレータは、画像出力装置30の表示部に表示された取得画像を視認しながらこの画像切出作業を行うことができる。
【0036】
画像切出工程S25を経た後、オペレータは、切り出した画像の平均画像を生成する(平均画像生成工程:S26)。オペレータは、平均画像を生成する際に加算するユニット数を適宜決定することができる。例えば、取得画像を42個(縦7個×横6個)のユニットに分割した場合には、42個のユニットを全て加算して平均画像を生成することができる。また、横一列(6個)のユニットを加算して平均画像を生成してもよい。一般的に、加算するユニット数を増加させるとユニット毎の歪みが抑えられ、理想的なパターンに近付く傾向があるため、好ましい。
【0037】
平均画像生成工程S26を経た後、オペレータは、生成した平均画像を敷き詰めることにより参照画像を生成する(平均画像敷詰工程:S27)。例えば、取得画像を42個(縦7個×横6個)のユニットに分割した場合には、生成した平均画像を42個(縦7個×横6個)敷き詰めることにより参照画像を生成する。図4(A)は参照画像の一例を示すものであり、図5(A)は図4(A)のVA-VA断面における輝度値のグラフを示すものである。オペレータは、これら参照画像や輝度値のグラフを、画像出力装置30の表示部に表示して確認することができる。図5(A)及び図5(B)に示されるように、参照画像の輝度値は、取得画像の輝度値と比較して平均化されていることがわかる。
【0038】
続いて、オペレータは、参照画像生成工程S20で生成した参照画像にウェーブレット変換を施すとともに、画像取得工程S10で取得した取得画像にウェーブレット変換を施す(画像変換工程:S30)。本実施形態においては、以下の数式を用いて参照画像及び取得画像にウェーブレット変換を施すこととしている。
【0039】
【数1】

【0040】
ここで、f(x,y)は変換前の画像(参照画像及び取得画像)を表す関数であり、ψ (x,y)は基底関数であり、α、σ、u、θは欠点のサイズ、形状、傾き等に基づいて設定されるパラメータである。本実施形態においては、小欠陥として「異物(糸くず等)の混入」を想定し、糸くずの糸の太さを既知、糸くずの糸の角度を未知としてパラメータを設定することとした。なお、本実施形態においては、未知である角度に対応するため、パラメータの一つであるθに4種類の値(0°、45°、90°、135°)を採用し、これらを使用した4種類の基底関数を決定することとしている。
【0041】
なお、本実施形態の画像変換工程S30においては、参照画像生成工程S20で生成した参照画像に二次元高速フーリエ変換を施す(参照画像フーリエ変換工程:S31A)とともに、画像取得工程S10で取得した取得画像に二次元高速フーリエ変換を施し(取得画像フーリエ変換工程:S31B)、その後、前記した4種類の基底関数を採用して逆二次元高速フーリエ変換を施すことにより、ウェーブレット変換を行っている。取得画像フーリエ変換工程S31Bを経て二次元高速フーリエ変換が施された取得画像は、後述する大欠陥検出方法(図15)で使用される。
【0042】
図8(A)〜図8(D)は、図4(A)に示す参照画像に4種類の基底関数を採用してウェーブレット変換を施した画像を示す図である。図9(A)は、図8(A)に示す画像のIXA-IXA断面における輝度値のグラフであり、図9(B)は、図8(B)に示す取得画像のIXB-IXB断面における輝度値のグラフであり、図9(C)は、図8(C)に示す画像のIXC-IXC断面における輝度値のグラフであり、図9(D)は、図8(D)に示す取得画像のIXD-IXD断面における輝度値のグラフである。図9(A)〜図9(D)に示されるように、ウェーブレット変換後の4種類の参照画像は、各々異なる輝度値を有しかつ平均化されていることがわかる。
【0043】
一方、図10(A)〜図10(D)は、図4(B)に示す取得画像に4種類の基底関数を採用してウェーブレット変換を施した画像を示す図である。図10(B)に示されるウェーブレット変換後の取得画像には、混入した異物Fが強調されて表されている。図11(A)は、図10(A)に示す画像のXIA-XIA断面における輝度値のグラフであり、図11(B)は、図10(B)に示す取得画像のXIB-XIB断面における輝度値のグラフであり、図11(C)は、図10(C)に示す画像のXIC-XIC断面における輝度値のグラフであり、図11(D)は、図10(D)に示す取得画像のXID-XID断面における輝度値のグラフである。図11(B)には、異物Fの混入に起因する輝度値のピークPが表されていることがわかる。
【0044】
続いて、オペレータは、画像変換工程S30によるウェーブレット変換後の参照画像と取得画像とを比較する(画像比較工程:S40)。画像比較工程S40においては、画像変換工程S30によるウェーブレット変換後の参照画像と取得画像との差分と、所定の閾値と、に基づいて欠陥の有無を判定する。
【0045】
図12(A)〜図12(D)は、4種類の基底関数を採用してウェーブレット変換を施した参照画像と取得画像との差分の画像(差分画像)を示す図である。図12(B)に示される差分画像にも、混入した異物Fが依然として強調されて表されている。図13(A)は、図12(A)に示す画像のXIIIA-XIIIA断面における輝度値のグラフであり、図13(B)は、図12(B)に示す取得画像のXIIIB-XIIIB断面における輝度値のグラフであり、図13(C)は、図12(C)に示す画像のXIIIC-XIIIC断面における輝度値のグラフであり、図13(D)は図12(D)に示す取得画像のXIIID-XIIID断面における輝度値のグラフである。図13(B)にも、異物Fの混入に起因する輝度値のピークPが表されている。
【0046】
本実施形態においては、図13(A)〜図13(D)に示される各差分画像の輝度値が所定の数式「Th=μ+kσ」を用いて算出された閾値Thを超えた場合に、小欠陥がある(異物が混入している)ものと判定することとする。この数式において、「μ」は各差分画像の輝度値から算出した平均であり、「σ」は各差分画像の輝度値から算出した標準偏差であり、「k」は欠陥に応じて設定される係数である。このような判定手法を採用した結果、図13(B)に示される差分画像の輝度値のピークPが閾値Thを超え、小欠陥がある(検査対象である織物に異物が混入している)ものと判定された。以上の工程群により、本実施形態における小欠陥検出方法が構成される。
【0047】
<中欠陥検出方法>
次に、図14を用いて、「中欠陥」を検出する方法について説明する。最初に、オペレータは、検査システム1の画像取得装置10の操作部を操作することにより、検査対象となる織物の画像を取得し、取得した取得画像を画像処理装置20に転送する(画像取得工程:S10)。次いで、オペレータは、画像処理装置20の操作部を操作することにより、画像取得工程S10で取得した取得画像の輝度値を縦横(x、y)方向各々において積分して、取得画像の縦横(x、y)方向における投影データを算出する(投影データ算出工程:S21)。これら画像取得工程S10及び投影データ算出工程S21は、小欠陥検出方法で説明したものと共通である。
【0048】
次いで、オペレータは、画像処理装置20の操作部を操作することにより、投影データ算出工程S21で算出した投影データを2値化する(2値化工程:S51)。その後、オペレータは、画像処理装置20の操作部を操作することにより、2値化した投影データの「0」同士の間隔と「1」同士の間隔とを算出する(間隔算出工程:S52)。そして、オペレータは、算出した間隔が正常範囲内にあるか否かを判定し(間隔判定工程:S53)、算出した間隔が正常範囲内にない場合には、糸径のばらつきや厚段(中欠陥)があるものと判定する。
【0049】
また、オペレータは、2値化工程S51を経た後、画像処理装置20の操作部を操作することにより、2値化した投影データの「0」同士の間隔数と「1」同士の間隔数とを計測する(間隔数計測工程:S54)。そして、オペレータは、計測した間隔数が正常範囲内にあるか否かを判定し(間隔数判定工程:S55)、計測した間隔数が正常範囲内にない場合には、緯抜け(中欠陥)があるものと判定するものとする。以上の工程群により、本実施形態における中欠陥検出方法が構成される。
【0050】
<大欠陥検出方法>
次に、図15を用いて、「大欠陥」を検出する方法について説明する。最初に、オペレータは、検査システム1の画像取得装置10の操作部を操作することにより、検査対象となる織物の画像を取得し、取得した取得画像を画像処理装置20に転送する(画像取得工程:S10)。次いで、オペレータは、画像処理装置20の操作部を操作することにより、画像取得工程S10で取得した取得画像に二次元高速フーリエ変換を施す(取得画像フーリエ変換工程:S31B)。これら画像取得工程S10及び取得画像フーリエ変換工程S31Bは、小欠陥検出方法で説明したものと共通である。
【0051】
次いで、オペレータは、画像処理装置20の操作部を操作することにより、取得画像フーリエ変換工程S31Bを経て二次元高速フーリエ変換を施した取得画像データを2値化する(2値化工程:S61)。その後、オペレータは、画像処理装置20の操作部を操作することにより、2値化した取得画像データの縦軸及び横軸周りの分布を切り出し(縦軸分布切出工程:S62A、横軸分布切出工程:S62B)、切り出した分布に含まれる白画素の座標平均を算出する(座標平均算出工程:S63)。そして、オペレータは、座標平均算出工程S63で算出した座標平均の傾きを算出し(傾き算出工程:S64)、算出した傾きが正常範囲内にあるか否かを判定し(傾き判定工程:S65)、算出した傾きが正常範囲内にない場合には、目曲がり(大欠陥)があるものと判定する。以上の工程群により、本実施形態における大欠陥検出方法が構成される。
【0052】
以上説明した実施形態に係る欠陥検出方法においては、取得画像に基づいて比較用正常パターンを含む参照画像を生成することにより比較処理をし易くすることができる。また、参照画像及び取得画像の双方にウェーブレット変換を施すことにより、欠陥情報を強調することができる。この結果、微小な欠陥の検出を実現させることができる。
【0053】
また、以上説明した実施形態に係る欠陥検出方法においては、最小ユニットサイズ単位で取得画像を分割して平均化し、平均化した画像を敷き詰めて参照画像を生成することができるので、参照画像生成のための計算量を少なくすることができる。また、取得画像の縦横方向における投影データの自己相関ピークを使用して最小ユニットサイズを設定しているので、糸の乱れ等に起因したユニットサイズ単位の変動に対してもロバストな結果を得ることが可能となる。
【0054】
また、以上説明した実施形態に係る欠陥検出方法においては、想定される欠陥のサイズや形状に基づいて設定したパラメータを使用して基底関数を決定するので、より少ない計算量で効果的な欠陥の強調を行うことができる。
【0055】
また、以上説明した実施形態に係る欠陥検出方法においては、ウェーブレット変換後の両画像の差分と、所定の閾値と、に基づいて欠陥の有無を客観的に判定することができる。
【0056】
なお、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、この実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0057】
1…検査システム
10…画像取得装置
20…画像処理装置
30…画像出力装置
S10…画像取得工程
S20…参照画像生成工程
S21…投影データ算出工程
S22…自己相関算出工程
S23…ピーク位置検出工程
S24…ユニットサイズ設定工程
S25…画像切出工程
S26…平均画像生成工程
S27…平均画像敷詰工程
S30…画像変換工程
S40…画像比較工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象となる織物に含まれる欠陥を検出する方法であって、
前記織物の画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程で取得した取得画像に基づいて比較用正常パターンを含む参照画像を生成する参照画像生成工程と、
前記参照画像生成工程で生成した参照画像と前記画像取得工程で取得した取得画像との双方にウェーブレット変換を施す画像変換工程と、
前記画像変換工程によるウェーブレット変換後の参照画像と取得画像とを比較する画像比較工程と、を備える、
欠陥検出方法。
【請求項2】
前記参照画像生成工程は、
前記画像取得工程で取得した取得画像の輝度値を縦横方向各々において積分することにより前記取得画像の縦横方向における投影データを算出する投影データ算出工程と、
前記投影データ算出工程で算出した各投影データの自己相関を算出する自己相関算出工程と、
前記自己相関算出工程で算出した各自己相関の所定範囲内におけるピーク位置を検出するピーク位置検出工程と、
前記ピーク位置検出工程で検出した各ピーク位置に基づいて縦横方向における最小ユニットサイズを設定するユニットサイズ設定工程と、
前記ユニットサイズ設定工程で設定した最小ユニットサイズで前記取得画像を繰り返し切り出す画像切出工程と、
前記画像切出工程で切り出した画像の平均画像を生成する平均画像生成工程と、
前記平均画像生成工程で生成した平均画像を敷き詰めることにより前記参照画像を生成する平均画像敷詰工程と、を有する、
請求項1に記載の欠陥検出方法。
【請求項3】
前記画像変換工程におけるウェーブレット変換では、
想定される欠陥のサイズ及び/又は形状に基づいて設定したパラメータを使用して基底関数を決定する、
請求項1又は2に記載の欠陥検出方法。
【請求項4】
前記画像比較工程では、前記画像変換工程によるウェーブレット変換後の参照画像と取得画像との差分と、所定の閾値と、に基づいて欠陥の有無を判定する、
請求項1から3の何れか一項に記載の欠陥検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−72866(P2013−72866A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214699(P2011−214699)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000116736)旭化成エンジニアリング株式会社 (49)
【Fターム(参考)】