説明

欠陥検査装置および欠陥検査方法

【課題】検出された欠陥が擬似欠陥であるか否かを精度よく判定する欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】被検査対象物の画像を比較することによって欠陥を検査する画像比較検査部1と、あらかじめ登録された擬似欠陥画像を記憶する擬似欠陥画像記憶部2と、画像比較検査部で検出された欠陥について、擬似欠陥画像記憶部に記憶された擬似欠陥画像と比較し、上記欠陥が擬似欠陥であるか否か判定を行う擬似欠陥判定部3とを備える。あらかじめ登録された擬似欠陥と画像を比較することにより、擬似欠陥であるか否か判定しているので、画像比較検査部で検出された欠陥が本来欠陥と判断されるべきではない擬似欠陥であるか否かを精度よく判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査対象物の外観を検査して欠陥を検出する外観検査装置およびその方法に関する。特に、半導体装置の外観検査において、本来欠陥として検出したくないパターンが欠陥として検出されてしまう擬似欠陥を欠陥候補から自動的に取り除いて検査を行う欠陥検査装置および欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から外観検査では、被検査対象物同士の外観を比較し、同じ形状になるはずのパターン間に見られる差を基にパターン欠陥を検出することが行われている。特に半導体集積回路は、半導体ウェハ上にチップ単位またはステッパのショット単位に周期的にパターンが形成され、またメモリセル部分の様にセル単位に周期的にパターンが形成されており、それらの周期的なパターンを比較して欠陥の有無を検査する外観検査が行われている。具体的には、イメージセンサで撮像した画像をデジタル処理し、対応する画素の強度の差をとり、差の絶対値が一定の閾値を越えた箇所を異常と判断するという手順によって検査することが多い。同じになるはずの(同じ形に設計した)2つのパターン間で差が生じた部分を欠陥と呼ぶことにすると、欠陥とその周囲の差が生じていない領域を含む画像(実画像と呼ぶことにする)および、画素間の差分をとることによって構成された画像(差画像と呼ぶことにする)を記録することができる。画素の強度差に閾値を小さくすれば非常に多くの欠陥が検出され、閾値を大きくすれば検出される欠陥数は非常に少なくなる。この閾値は対象や目的に応じて適宜決定される。目的に応じて設定された閾値条件の下で検査装置が検出する欠陥と、半導体製造の観点から検出した欠陥は異なっている場合がほとんどである。検査装置が検出する欠陥を欠陥候補と呼ぶことにすると、欠陥候補は通常非常に多いのでコンピュータ等の自動検査機械を用いて欠陥かどうかの判断が行われる。この欠陥候補の中から、半導体製造上で問題になる可能性のある真の欠陥と、半導体製造上の問題にならないいわゆる擬似欠陥を区別することが実用上は非常に重要である。さらには、欠陥を分類し整理しておくことにより、製造工程にフィードバック等することも行われる。この観点から、以下に示すような先行技術が公開されている。
【0003】
特許文献1には、半導体チップ等の同一パターンが形成されている繰り返し部を単位として、イメージセンサにより得られた画像信号を比較することにより、欠陥を検査する画像比較方式の欠陥検査装置が記載されている。さらに、欠陥候補には、本来欠陥とはならない色むらによる擬似欠陥が含まれ、パターンエッジ等の信号差が発生しやすい部分信号を強調することにより、色むらによる擬似欠陥を減少させることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、メモリコア部や外周部等のパターン密度毎の領域による分類と、異物による欠陥か、回路パターン欠陥か、傷による欠陥か等の欠陥の種類によるカテゴリーの分類により、致命性のある欠陥を精度よく、正確に選択できるようにする検査データ処理方法、およびその装置が記載されている。また、致命性のある欠陥であるかを判定するために、欠陥の面積、欠陥の明るさ、欠陥の長さ等を数値化して判定することが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、欠陥検査の結果と、欠陥検査の後工程で加工する回路パターンの設計データを用いることにより、検査後の加工工程で生じるであろう欠陥を分類する検査データ処理プログラムが記載されている。
【0006】
さらに、特許文献4には、欠陥検出により得られた情報から1ダイ(チップ)毎のデータの重ね合わせ(ダイスタック)を行い、重ね合わせたデータから擬似欠陥を特定し、擬似欠陥が検出された箇所を非検査領域に設定し、擬似欠陥を検査の対象から除外することにより高い検査感度で欠陥検査を行うことが記載されている。
【特許文献1】特開2002−303588号公報
【特許文献2】特開2001−305073号公報
【特許文献3】特開2005−150409号公報
【特許文献4】特開2006−126020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
擬似欠陥が生じる原因は、上記特許文献1に記載されているような色むらに限られず、上記先行技術文献によっても、擬似欠陥であるか否かを適切に判定することは困難である。上記特許文献2、3に記載されているように欠陥を分類することも擬似欠陥を判定し、取り除くことが前提であり、擬似欠陥であるか否かを適切に判定することができない限り、真の欠陥を正しく分類することもできない。以下に述べるように、特許文献2のように、欠陥の面積、欠陥の明るさ、欠陥の長さ等を数値化しただけでは、擬似欠陥か否かの判定は困難である。
【0008】
発明者らの考察によれば、擬似欠陥であるか否かの判定が困難な理由は以下のとおりである。近年の半導体の微細化の進捗に伴い、新規プロセスの開発においては、いくつかの微小なトランジスタや配線を盛り込んだテストパターンが形成され、解析の都合で光学顕微鏡により視認できる程度の文字を形成することがある。このような場合、文字パターンは機能素子では無いので、プロセス上完全にパターンが形成されなくても電気的特性を評価する上では問題が無い。すなわち、半導体ウェハには、パターンが正しく形成されないと不良品となる欠陥と、パターンが正しく形成されなくとも、不良品とはならない欠陥(本明細書では広い意味で擬似欠陥と呼ぶ)が存在する。
【0009】
しかし、実際の検査においては半導体の電気的特性に影響を与える欠陥を検出し、分布や数の推移を評価することが目的であるのに電気的に影響を与えない欠陥の数が多い場合にはそれがノイズとなってしまい本来の検査の目的が達成できなくなる。
【0010】
また、欠陥の検出に周囲のパターンとの差画像を用いた場合、パターン自体の差が非常に小さな場合は1画素程度の差にしかならない。この差異が、ランダム欠陥となる場合もあり、ならない場合もある。このような場合、捨てても良い情報と残すべき情報が区別できないことになり不要な欠陥を除くという目的では機能しない。さらに被検査物が解像限界に近いパターンを持っているため、すべてのパターンが異常になるわけではなく、単独のダイだけで擬似欠陥が検出されることもある。このような欠陥は上記特許文献4に記載されているように、1ダイ(チップ)毎のデータの重ね合わせ(ダイスタック)を行い、重ね合わせたデータから擬似欠陥を特定する方法では擬似欠陥を取り除くことができない。
【0011】
また、特許文献4のように、擬似欠陥が検出された箇所を非検査領域に設定し、検査の対象からはずしてしまったのでは、擬似欠陥が検出された箇所と同じ箇所に真の欠陥があった場合には、見逃されてしまう。以上、述べたように、擬似欠陥であるか否かを適切に判定する欠陥検査装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つのアスペクト(側面)に係る欠陥検査装置は、複数の被検査対象物の画像データを比較し、同一性の有無で欠陥の有無を差画像を基にして検査する画像比較検査部と、あらかじめ登録された擬似欠陥画像(欠陥の周囲を含む実画像)を記憶する擬似欠陥画像記憶部と、前記画像比較検査部で検出された欠陥とその周辺領域について、前記擬似欠陥画像記憶部に記憶された擬似欠陥画像と比較し、前記欠陥が擬似欠陥であるか否か判定を行う擬似欠陥判定部と、を備えている。
【0013】
なお、本発明において、「擬似欠陥」とは、画像比較検査で検出された欠陥のうち、欠陥検査において検出しようとする欠陥以外の欠陥をいう。たとえば、欠陥検査において、特定の欠陥のみを検出しようとする場合は、この特定の欠陥以外の欠陥をすべて擬似欠陥として扱うものであってもよい。
【0014】
また、本発明の別なアスペクト(側面)に係る欠陥検査方法は、複数の被検査対象物の画像データを比較し、同一性の有無で欠陥の有無を検査するステップと、あらかじめ登録された擬似欠陥画像と、前記欠陥の有無を検査するステップで検査された欠陥とを比較し、前記欠陥が擬似欠陥であるか否か判定を行うステップと、を備えている。
【0015】
さらに、本発明の別なアスペクト(側面)に係る欠陥検査プログラムは、コンピュータに上記欠陥検査方法を実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、あらかじめ擬似欠陥画像を登録しておき、登録された擬似欠陥画像との比較により、検出された欠陥が擬似欠陥であるか否か判定を行うので、精度よく擬似欠陥が検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本発明の一実施形態の欠陥検査装置(たとえば、図1または図7の欠陥検査装置全体)は、複数の被検査対象物の画像データ(たとえば、被検査画像データ記憶部5の画像データ)を比較し同一性の有無で欠陥の有無を検査する画像比較検査部(たとえば、画像比較検査部1)と、あらかじめ登録された擬似欠陥画像を記憶する擬似欠陥画像記憶部(たとえば、擬似欠陥画像記憶部2)と、前記画像比較検査部で検出された欠陥について前記擬似欠陥画像記憶部に記憶された擬似欠陥画像と比較し、前記欠陥が擬似欠陥であるか否か判定を行う擬似欠陥判定部(たとえば、擬似欠陥判定部3)と、を備えている。
【0018】
また、本発明の一実施形態の欠陥検査方法(たとえば、図2の欠陥検査ステップS2、詳細は、図3、図4、図6、または、図8の欠陥検査方法)は、複数の被検査対象物の画像データを比較し同一性の有無で欠陥の有無を検査するステップ(たとえば、画像比較検査ステップS13)と、あらかじめ登録された擬似欠陥画像と前記欠陥の有無を検査するステップで検査された欠陥とを比較し前記欠陥が擬似欠陥であるか否か判定を行うステップ(たとえば、ステップS25)と、を備えている。
【0019】
以下、実施例に即し、図面を参照して詳しく説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例1の欠陥検査装置の構成を示す図である。まず、この構成について説明する。画像認識部4は、被検査対象物を含む画像をイメージセンサにより認識し、デジタル化した画像データを被検査画像データ記憶部5に記憶させる。画像比較検査部1は、被検査画像データ記憶部5に記憶された被検査画像データから規則的に配置されている画像を認識し、規則的に配置されている画像のうち、ほかの部分の画像と比較した場合に、規則性が害されている画像があるか否かを差画像を基に認識する。規則性が害されている画像データは、欠陥データAとして欠陥候補データ記憶部6に記憶される。なお、欠陥データAには後で説明するように、本来欠陥として扱う必要のない擬似欠陥が含まれている。擬似欠陥判定部3は、上記欠陥候補データ記憶部6に記憶された欠陥候補の中に擬似欠陥が含まれていないか、画像データを擬似欠陥画像記憶部2にあらかじめ登録された擬似欠陥登録画像と比較することにより判定を行う。擬似欠陥判定部3で擬似欠陥ではないと判定された欠陥候補データは、擬似欠陥を除外した真の欠陥データとして欠陥データ記憶部7に記憶される。機械を用いて自動的に比較する場合、擬似欠陥判定部3では差画像を用いることになるが、違いがあるとして抽出されたパターンであるので比較に際してはその違いを検出しないように実画像をぼかすなどの処理をした上で比較することが望ましい。
【0021】
また、欠陥データ表示部8は、欠陥候補データ記憶部6に記憶された画像データを表示する。技術者または作業者は、表示された欠陥の画像データから、その欠陥が擬似欠陥であるか否か判断し、擬似欠陥であると判断した場合は、擬似欠陥登録部9から擬似欠陥画像記憶部2に擬似欠陥データの登録を行う。
【0022】
ここで、被検査画像データ記憶部5に記憶される画像データと、欠陥候補データ記憶部6に記憶される画像データについて説明しておく。図9は、本発明における被検査対象物の画像データと、画像比較検査部1で検出された差画像との一例を示す図である。欠陥画像24と比較対照画像26は、被検査画像データ記憶部5に記憶された画像のそれぞれ一部分である。規則性のある複数のパターンのうち、ひとつだけが、欠陥画像24のように認識され、ほかの部分が比較対照画像26のように認識される場合は、画像比較検査部1は、欠陥画像24の部分を欠陥であると認識し、欠陥画像24を比較対照画像26との差画像25とともに欠陥データAに記憶させる。このとき、被検査対象物全体の中で、欠陥画像24が含まれる位置も記憶しておく。欠陥データ表示部8は、欠陥画像24と差画像25を重ね合わせてディスプレイに表示させる。単に、差画像25を表示させただけでは、何が欠陥と判定されたのか認識不能であり、欠陥画像24だけを表示させたのでは、どこが欠陥と判定されたのか場所を探し出すのが大変であるが、欠陥画像24と差画像25を重ね合わせて表示させることにより、ベテランの技術者や作業者であるならば、容易に欠陥が欠陥として判断されるべきか、擬似欠陥として扱われるべきか判断することができる。欠陥箇所をよりわかりやすくするために、重ね合わせて表示させた上に差画像25を点滅させてもよい。
【0023】
また、新規なレチクル(マスク)を用いたパターンを検査する場合または新規なマスク検査の場合、擬似欠陥を予め知ることはできない場合が少なくないので、通常の検査方法によって擬似欠陥を登録する必要がある。図9に示したような差画像によって欠陥が検出され、人間が実画像を見て擬似欠陥と判断され、更に登録が必要と判断される場合、欠陥画像24を比較対照画像26との差画像25とともに擬似欠陥データとして擬似欠陥画像記憶部2に記憶させる。
【0024】
次に、この欠陥検査装置を用いた欠陥検査方法の主な部分について、図2から図5のフローチャートを用いて説明する。図2は、本発明の実施例1の欠陥検査方法の全体フローチャートを示す図である。欠陥検査方法は大きく分けて、擬似欠陥画像をあらかじめ擬似欠陥画像記憶部2に登録する処理ステップS1と、ステップS1で登録した擬似欠陥画像データを用いて実際の欠陥検査を行うステップS2が含まれる。
【0025】
擬似欠陥画像記憶部2には、あらかじめ、擬似欠陥画像が登録されていることを前提に、ステップS2の欠陥検査から説明する。ステップS2の欠陥検査は、図3に示す欠陥検査の前処理となる欠陥候補抽出処理と、図4に示す擬似欠陥除外処理からなる。図3は、欠陥検査の前処理となる欠陥候補抽出処理のフローチャートである。被検査画像データ記憶部5には、被検査対象の画像データがすでに格納されているものとする。最初に、初期設定として、擬似欠陥を含む欠陥候補データである欠陥候補データ記憶部6の欠陥データAをクリアする(ステップS11)。次に、被検査画像データ記憶部5に格納された被検査画像データから画像データを読み出す(ステップS12)。次に読み出した画像データと周期性のある同等部分の画像データを読み出して比較する(ステップS13)。もし、一致しない場合は、さらに、ほかの周期性のある同等部分のデータを読み出して比較し、どちらかが、欠陥であるかを判定する(ステップS14)。ステップS14で欠陥であると判定された場合は、欠陥データをその位置、欠陥画像、比較対照画像との差画像とともに欠陥データAとして、欠陥候補データ記憶部6に記憶する(ステップS15)。まだ、欠陥を検査していない被検査画像が残っているか否か調べ、検査していない被検査画像が残っている限り、ステップS12へ戻り、欠陥検査を繰りかえす。すべての被検査画像について欠陥検査が終われば、欠陥の抽出は終了となる(ステップS16)。
【0026】
次に、図4を用いて、抽出された欠陥が擬似欠陥であるか否か判定するステップS2後半の詳細なフローチャートについて説明する。欠陥候補データ記憶部6には、すでに欠陥データが格納されており、擬似欠陥画像記憶部2には、擬似欠陥データが登録されているものとする。最初に、初期設定として、擬似欠陥を除外した欠陥データである欠陥データ記憶部7の欠陥データBをクリアする(ステップS21)。次に、欠陥候補データ記憶部6から欠陥データAをひとつ読み出す(ステップS22)。次に、ステップS22で読み出した欠陥データAと比較する擬似欠陥データを擬似欠陥画像記憶部2から読み出す(ステップS23)。次に、ステップS22で読み出した欠陥画像と、ステップS23で読み出した擬似欠陥画像を比較し、ステップS22で読み出した欠陥データAが擬似欠陥であるか否か検査する(ステップS24)。検査の結果、その擬似欠陥データと同一性がないと判定された場合は、次の擬似欠陥データを読み出し、検査を続ける。この処理を同一性のある擬似欠陥データが見つかるか(ステップS25のYes)、すべての登録された擬似欠陥データと一致しないと判定されるまで続ける(ステップS26のYes)。同一性のある擬似欠陥が見つからなかった場合は、その欠陥を擬似欠陥ではないと判定し、真の欠陥として、欠陥位置データ、欠陥画像データを欠陥データBに登録する(ステップS27)。同一性のある擬似欠陥が見つかった場合は、その欠陥を擬似欠陥であるとして、欠陥データBには登録しない。その処理をすべての欠陥データAについて処理が終わるまで繰り返す(ステップS28)。最終的に、欠陥データ記憶部7には、欠陥データAのうち擬似欠陥ではないと判定された欠陥のみの欠陥位置データ、欠陥画像データが欠陥データBとして記憶される。
【0027】
次に、図5は、図2のステップS1である擬似欠陥登録処理のフローチャートである。まず、擬似欠陥登録の前処理として、擬似欠陥の抽出を行う半導体ウェハ上の領域を設定する(ステップS51)。また、画像比較検査の判断基準となる差画像の閾値を設定する(ステップS52)。このステップS51とステップS52で、擬似欠陥抽出の対象となる総欠陥数を絞り込むことになる。総欠陥数は、全数を人が見られるようにするため、1000〜3000程度以下になるように選択することが望ましい。
【0028】
次に、ステップS51で設定した領域について、画像比較検査部1は、ステップS52で設定した閾値を基準に画像比較検査を行ない(ステップS61)、この画像比較検査で得られた欠陥画像の集合体を事前欠陥データファイルCとして欠陥候補データ記憶部6に格納する(ステップS62)。ここまでの処理で擬似欠陥登録の前処理である仮検査を終了する。
【0029】
次に、擬似欠陥画像データの抽出を開始する。まず、擬似欠陥画像登録データファイルDを作成する(ステップS63)。次に、事前欠陥データファイルCから欠陥画像の読み込みを行う(ステップS64)。未検査の欠陥画像が残っていれば(ステップS65のNo)、目視検査を行い、その欠陥画像について擬似欠陥として登録すべきか否か判断を行う(ステップS66)。擬似欠陥として登録すべきであると判断すれば、擬似欠陥登録データファイルDに画像データを登録し(ステップS67)、事前欠陥データファイルCから次の欠陥画像の読み込みに戻る(ステップS64)。一方、擬似欠陥に登録する必要がないと判断した場合は、擬似欠陥に登録せずに、ステップS64に戻る(ステップS66のNo)。このステップS64からステップS67の処理を事前欠陥データファイルCの全ての欠陥画像について繰り返す(ステップS65)。
【0030】
次に、登録した擬似欠陥の妥当性の検証(ステップS70。破線内の全体)の処理に移る。まず、「擬似欠陥として除くことのできた事前欠陥の数」を表す変数Nrの初期値を0に設定し、事前欠陥データファイルCから求めた総欠陥数を変数Ncに設定する(ステップS71)。次に、事前欠陥データファイルCから欠陥画像を読み込む(ステップS72)。読み出した欠陥画像と擬似欠陥登録データファイルDに登録されているいずれかの画像と同一性があるか否かの判定を行う(ステップS74)。事前欠陥データファイルCから読み出した欠陥画像が擬似欠陥登録データファイルDに登録されているいずれかの画像と同一性があれば、擬似欠陥であると判定する。一方、擬似欠陥登録データファイルDに登録されているいずれの画像とも同一性がない場合には、その欠陥画像は、擬似欠陥ではないと判定する。このステップS74では、擬似欠陥判定部3により自動的に判定を行うことができる。
【0031】
擬似欠陥であると判定した場合には、「擬似欠陥として除くことのできた数」Nrに1を加算し(ステップS75)、次の欠陥画像の読み込みに戻る(ステップS72)。一方、擬似欠陥でないと判定した場合は、そのまま、ステップS72に戻る(ステップS74のNo)。このステップS72からステップS75の処理を事前欠陥データファイルCの全ての欠陥画像について繰り返す(ステップS73)。すべての欠陥画像について、擬似欠陥か否かの判定が終了したならば、「事前欠陥データファイルCの総欠陥数」Ncと「その中で擬似欠陥として除くことのできた数」Nrとを比較し、「擬似欠陥として除くことのできた数」Nrが許容できるか否か判定する(ステップS76)。許容できないと判定した場合は、ステップS64に戻って、擬似欠陥登録データファイルDに新たな擬似欠陥を登録する処理からやり直す。一方、登録した擬似欠陥の数が許容できれば、擬似欠陥登録データファイルDを閉じて、擬似欠陥登録処理を完了させる(ステップS81)。
【0032】
この擬似欠陥の登録作業は、同一製品が安定して製造ラインを流れている場合には、行う必要がない。従来とは擬似欠陥の発生する傾向の異なる新製品が製造ラインを流れるときか、製造ラインに変更が生じて今まで発生していなかった擬似欠陥が発生するようになったときに擬似欠陥の登録を行えば十分である。
【0033】
また、図4や図5のフローチャートで登録された擬似欠陥の画像と、欠陥の画像を比較して擬似欠陥であるか否か判定する処理には、既存のパターン認識の技術を用いることができる。特に、擬似欠陥であるか否かの判定には、擬似欠陥の登録画像のデータとその擬似欠陥の部分に対応する擬似欠陥がない場合の正常品の画像の両者を登録しておき、欠陥画像を擬似欠陥画像と正常品の画像の両者の画像と比較し、欠陥画像が、擬似欠陥画像と正常品の画像の範囲内に含まれていれば、擬似欠陥として扱い、欠陥画像が、擬似欠陥画像と正常品の画像の範囲を超えている場合には、欠陥と判断することができる。
【実施例2】
【0034】
図6は、本発明の実施例2のフローチャートである。実施例2は、実施例1の「擬似欠陥画像データを用いて実際の欠陥検査を行う」図3と図4のフローチャートに置き換わるものである。擬似欠陥登録処理については、図5のフローチャートをそのまま用いることができる。また、実施例2の欠陥検査装置の構成は、図1の構成を概略そのまま用いることができる。図6において、図3、図4と処理内容がほぼ同じステップは、同一符号を付している。
【0035】
まず、初期設定として、欠陥データ記憶部7の欠陥データBをクリアし(ステップS21)、欠陥候補データ記憶部6の欠陥データAをクリアする(ステップS11)。次に、被検査画像データ記憶部5から被検査画像データを読み出し(ステップS12)、画像比較検査を行い(ステップS13)、欠陥を取得する(ステップS14)。なお、画像比較検査で欠陥が見つかり欠陥が一つ取得できるまでステップS12とステップS13は繰り返す。
【0036】
次に、取得した欠陥を欠陥候補データ記憶部6の欠陥データAに登録し(ステップS15)、欠陥データAからその欠陥候補データを読み出し(ステップS22)、擬似欠陥画像記憶部2から擬似欠陥データを読み出して(ステップS23)、画像比較を行う(ステップS24)。その欠陥候補データが擬似欠陥画像記憶部2に記憶されているいずれかの擬似欠陥データと同一性があれば、その欠陥候補データは擬似欠陥であると判断し、いずれの擬似欠陥データとも同一性がなければ、真の欠陥データであると判断する(ステップS25)。真の欠陥データであると判断した場合は、欠陥データBに登録を行い(ステップS27)、次の被検査画像の読み出しに戻る(ステップS12)。一方、ステップS25で擬似欠陥であると判断した場合は、欠陥データBへの登録を行わずに、ステップS11へ戻る。この処理をすべての被検査画像について繰りかえす(ステップS28)。
【0037】
この実施例2では、欠陥データAをテンポラリにしか保存しておらず、画像比較検査(ステップS13)で欠陥(欠陥候補)が見つかる毎に、逐次、擬似欠陥画像との比較を行っている。欠陥データAは画像データであるので、実施例1のように、欠陥候補抽出処理(図3)と、擬似欠陥除外処理(図4)をそれぞれ一括して行うと、欠陥候補抽出処理で得られた全ての欠陥データAを記憶する大容量の記憶装置が必要である。しかし、実施例2のように、欠陥候補抽出(ステップS14)と擬似欠陥判定(ステップS25)を逐次行えば、欠陥データAを保存する記憶装置の容量は小さくて済むという利点を有する。
【実施例3】
【0038】
次に、本発明の実施例3について説明する。実施例1、2では、欠陥の数によらず、欠陥候補から擬似欠陥を除外する擬似欠陥除外処理を行っていた。しかし、欠陥の数が少なければ、欠陥の分析も必要でなく、したがって、その前提となる擬似欠陥除外処理を行う必要性がない場合がある。この場合は、擬似欠陥除外処理を省略することにより、欠陥検査工程を簡略化することができる。実施例3は、この欠陥の数の判定により、欠陥検査工程を簡略化する実施例である。
【0039】
図7は、本発明の実施例3の欠陥検査装置の構成を示す図である。図7において、図1と構成、動作が実質同一である部分は、同一の符号を付し、説明は省略する。図7では、図1に対して、欠陥数判定部21を備えている点で異なっている。欠陥数判定部21は、欠陥候補データ記憶部6が記憶する欠陥数のデータを判定して擬似欠陥判定部3による擬似欠陥判定を行うか否かを判定する。
【0040】
次に、実施例3の欠陥検査方法の処理手順について説明する。図8は、実施例3の欠陥検査方法の全体フローチャートを示す図である。図8において、欠陥候補抽出処理ステップS41は、実施例1の図3のフローチャートと同一である。実施例3では、欠陥候補抽出処理ステップS41の後に、欠陥数判定ステップS42を行っている点が実施例1と異なっている。欠陥数判定ステップS42は、欠陥データAの中に含まれる欠陥数のデータを用いて行われる。欠陥データAの中には、検査対象となったロットの大きさやサンプル数と、そのロットやサンプルの中で欠陥として検出された欠陥の数が記録されている。このデータを過去の同一製品同一工程での検査記録と対比して、擬似欠陥除外処理ステップS44を行うか否かを決定することができる。判定の方法としては、過去の欠陥数のデータの分布を正規分布であると仮定し、標準偏差の3倍以上の欠陥数が検出されたか否かにより判定してもよい。3倍以上の欠陥が検出された場合には、ステップS44の擬似欠陥除外処理を行うが、欠陥数が3倍未満で合った場合には、擬似欠陥除外処理を省略する。なお、ここでは、擬似欠陥除外処理を行う場合と行わない場合で欠陥データBの整合性を保つため、欠陥データAの欠陥データBへのコピーを行っている(ステップS43)が、欠陥データBのデータを後工程で使用しない場合は、このステップS43の処理は省略できる。ステップS44の擬似欠陥除外処理は、実施例1である図4のフローチャートの処理または、実施例2である図6のフローチャートの処理をそのまま適用できる。なお、ステップS44で、図6のフローチャートの処理を行う場合は、当然、ステップS41で出力する欠陥データAには、欠陥候補の画像データを含める必要はない。
【実施例4】
【0041】
なお、上記の実施例1乃至3の検査装置、方法において、コンピュータとそのコンピュータ上で動作するプログラムによって、そのコンピュータを実施例1乃至3の検査装置として機能させることができる。また、コンピュータとそのコンピュータ上で動作するプログラムにより、そのコンピュータに実施例1乃至3の検査方法を実行させることができる。
【0042】
この場合、図1、図7の検査装置の構成において、画像認識部4は、コンピュータに接続されたイメージセンサと、イメージセンサに対して制御を行いイメージセンサの出力するイメージデータをコンピュータに取り込むプログラムと、によって実現できる。さらに、擬似欠陥画像記憶部2、被検査画像データ記憶部5、欠陥候補データ記憶部6、欠陥データ記憶部7は、それぞれ、コンピュータのRAM等の主記憶装置や、キャッシュメモリ、さらには、ハードディスクやその他の光記憶装置、磁気記憶装置等の補助記憶装置によって実現できる。また、画像比較検査部1、擬似欠陥判定部3、欠陥数判定部21の機能は、コンピュータにその様な機能を実現させるプログラムによって実現できる。さらに、欠陥データ表示部8は、コンピュータのスクリーンと、そのスクリーンにその様な表示をさせるプログラムにより実現できる。さらに、擬似欠陥登録部9は、キーボートやマウス等の入力デバイスと、その入力デバイスへの入力を受け付けるプログラムと、により実現できる。
【0043】
さらに、図2〜6、8のフローチャートの各処理は、図5のステップS66で「擬似欠陥として登録するか否かの判断」をオペレータが行うことを除いて、上記の構成のコンピュータとプログラムにより実現できる。
【0044】
また、そのコンピュータプログラムは、RAM等の半導体メモリ、光記憶媒体、磁気記憶媒体等の記憶媒体や、インターネットを介してコンピュータにインストールすることができ、コンピュータを欠陥検査装置として機能させ、コンピュータに欠陥検査方法を実行させることができる。
【0045】
以上、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【0046】
上記実施例では、半導体ウェハの表面に形成された半導体集積回路の回路パターンを例に欠陥検査装置、方法について説明したが、本発明は、規則性のあるパターンを有する被検査対象物であれば、適用可能である。さらに、規則性のあるパターンを有しない場合であっても、あらかじめ、被検査対象物の中で欠陥のない対象物がわかっている場合には、その欠陥のない対象物と比較することにより、被検査対象物について、外観検査の欠陥を検査することが可能である。
【0047】
また、上記実施例では、擬似欠陥登録処理をオペレータの判断で行っているが、必ずしもオペレータが擬似欠陥の登録をオペレータの判断で行う必要はない。たとえば、外観検査結果での欠陥と、最終製品での機能、品質の不良品との相関データを構築し、外観検査結果での擬似欠陥と判定した箇所が、最終製品での不良と相関があった場合には、その擬似欠陥を擬似欠陥の登録データから削除し、最終製品での不良と外観検査結果での欠陥との相関が見られない欠陥を新たに擬似欠陥として自動的に登録することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例の欠陥検査装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施例の欠陥検査方法の全体フローチャートを示す図である。
【図3】本発明の一実施例において、欠陥候補抽出処理の詳細を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施例において、擬似欠陥除外処理の詳細を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施例において、擬似欠陥登録処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】本発明の別な実施例における欠陥検査方法の詳細を示すフローチャートである。
【図7】本発明のさらに別な実施例の欠陥検査装置の構成を示す図である。
【図8】本発明のさらに別な実施例の欠陥検査方法の全体フローチャートを示す図である。
【図9】本発明における被検査対象物の画像データと、画像比較検査部で検出された差画像との一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 画像比較検査部
2 擬似欠陥画像記憶部
3 擬似欠陥判定部
4 画像認識部
5 被検査画像データ記憶部
6 欠陥候補データ(欠陥データA、欠陥データC)記憶部
7 欠陥データ(欠陥データB)記憶部
8 欠陥データ表示部
9 擬似欠陥登録部
21 欠陥数判定部
24 欠陥画像
25 差画像
26 比較対照画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被検査対象物の画像データを比較し、同一性の有無で欠陥の有無を検査する画像比較検査部と、
あらかじめ登録された擬似欠陥画像を記憶する擬似欠陥画像記憶部と、
前記画像比較検査部で検出された欠陥について、前記擬似欠陥画像記憶部に記憶された擬似欠陥画像と比較し、前記欠陥が擬似欠陥であるか否か判定を行う擬似欠陥判定部と、
を備えた欠陥検査装置。
【請求項2】
前記被検査対象物が繰り返しパターンを備えた対象物の一部分であり、前記画像データの比較が前記繰り返しパターン間で画像データを比較する画像比較検査部である請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記被検査対象物が半導体ウェハの一部分である請求項1または2記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記画像比較検査部で一定数以上の欠陥が検出された場合は、前記擬似欠陥判定部による擬似欠陥判定を行い、検出された欠陥が一定数未満であった場合は、前記擬似欠陥判定部による判定を省略する欠陥数判定部をさらに備えた請求項1乃至3いずれか1項記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記被検査対象物の画像を認識し、前記画像データを生成する画像認識部をさらに備えた請求項1乃至4いずれか1項記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
複数の被検査対象物の画像データを比較し、同一性の有無で欠陥の有無を検査するステップと、
あらかじめ登録された擬似欠陥画像と、前記欠陥の有無を検査するステップで検査された欠陥とを比較し、前記欠陥が擬似欠陥であるか否か判定を行うステップと、
を備えた欠陥検査方法。
【請求項7】
前記被検査対象物が繰り返しパターンを有する対象物の一部分であり、検査するステップは、前記繰り返しパターン間で画像データの比較を行い、欠陥の有無を検査するステップである請求項6記載の欠陥検査方法。
【請求項8】
前記被検査対象物が半導体ウェハの一部分である請求項6または7記載の欠陥検査方法。
【請求項9】
前記欠陥の有無を検査するステップで欠陥と判断された部分を含む画像を表示するステップと、
前記表示された欠陥について擬似欠陥として登録できるようにするステップと、
をさらに含む請求項6乃至8いずれか1項記載の欠陥検査方法。
【請求項10】
前記検査するステップで、検出された欠陥が一定数以上であった場合、前記擬似欠陥であるか否か判定を行うステップを実施し、欠陥が前記一定数未満であった場合、前記判定を行うステップを省略する請求項6乃至9いずれか1項記載の欠陥検査方法。
【請求項11】
繰り返しパターンを有する被検査対象物について繰り返しパターン間で画像データを比較し、前記繰り返しパターン間の同一性の有無で欠陥の有無を検査するステップと、
前記欠陥の有無を検査するステップで一つ以上の欠陥が検出された場合、前記検出された欠陥それぞれについて、あらかじめ登録された複数の擬似欠陥画像と当該欠陥を含む画像データについて比較を行い、当該欠陥を含む画像データが前記複数の擬似欠陥画像のいずれかと同一性がある場合には、当該欠陥を擬似欠陥であると判定するステップと、
前記検出された欠陥のうち、前記擬似欠陥であると判定された欠陥を除く欠陥を欠陥リストとして出力するステップと、
を含む欠陥検査方法。
【請求項12】
コンピュータに請求項6乃至11いずれか1項記載の欠陥検査方法を実行させるための欠陥検査プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−19561(P2010−19561A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177577(P2008−177577)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】