欠陥画素マップ作成方法、欠陥画素マップ作成システム、コンソールおよび放射線画像撮影装置
【課題】放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素を補正できる欠陥画素マップを作成する。
【解決手段】放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の線質を変更し、放射線画像撮影装置1が、欠陥画素マップの作成のためのマップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質毎に生成し、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、欠陥画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを作成することを特徴とする。
【解決手段】放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の線質を変更し、放射線画像撮影装置1が、欠陥画素マップの作成のためのマップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質毎に生成し、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、欠陥画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを作成することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥画素マップ作成方法、欠陥画素マップ作成システム、コンソールおよび放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病気診断等を目的として、X線画像に代表される放射線を用いて撮影された放射線画像が広く用いられている。こうした医療用の放射線画像は、従来からスクリーンフィルムを用いて撮影されていたが、放射線画像のデジタル化を図るために輝尽性蛍光体シートを用いたCR(Computed Radiography)装置が開発され、最近では、照射された放射線を、二次元状に配置された放射線検出素子で検出して、デジタル画像データとして取得する放射線画像撮影装置が開発されている。
【0003】
このような放射線画像撮影装置としては、照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0004】
このタイプの放射線画像撮影装置は、通常、複数の放射線検出素子が二次元状に配列されたセンサパネルを備えており、FPD(Flat Panel Detector)として知られている。従来は、センサパネルが支持台に一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、センサパネルを筐体内に収納して持ち運びできるようにした可搬型の放射線画像撮影装置が開発されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
FPD型の放射線画像撮影装置では、センサパネル上に放射線検出素子を積層して製造する際に放射線検出素子中に不純物が混入する等して、恒常的に或いは一定の確率で異常な画像データを出力する画素(以下「欠陥画素」という。)が生じる場合がある。
【0006】
このような欠陥画素が存在すると、その部分に画像の欠損が生じ、高精細な画像を得ることができない。
そのため、通常、放射線画像撮影装置により撮影された放射線画像を表示等する前に、欠陥画素の近傍の正常画素の画素値を単純平均する単純平均補間や、センサパネルの特性等に従って重み付け平均する重み付け平均補間などの手法により欠陥画素の画素値を補間する等の欠陥画素補正処理が行われている。
【0007】
欠陥画素補正処理を行うためには、欠陥画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを予め作成しておく必要がある。欠陥画素でない画素が誤って欠陥画素と判定されたり、欠陥画素である画素なのに欠陥画素と判定されなかったりして、欠陥画素の判定が正確に行われないと、正確な欠陥画素マップが作成されず、欠陥画素の補正を的確に行うことができなくなってしまう。欠陥画素の補正が的確に行われないと、放射線画像の画質が低下してしまうので、このような放射線画像を用いて診断を行った場合、病変部を見落としたり、正常な部分を病変部と見誤ったりして誤診が生じる等の不都合が生じてしまう虞がある。
そこで、欠陥画素の判定を正確に行うために、放射線の照射量を変更し、それぞれの照射量での撮影にて得られる撮影画像を用いて欠陥画素位置情報の抽出を行うことが可能な画像処理装置が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開平7−246199号公報
【特許文献3】特開2001−427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、欠陥画素の中には、放射線の照射量を変更しても位置情報を抽出できないものがある。このような欠陥画素としては、例えば、センサパネルを筐体内に収納する際等に筐体内に混入した異物の影響で生じる欠陥画素が挙げられる。
【0010】
例えば、放射線画像撮影装置に照射された放射線が透過できない異物が筐体内に混入しており、当該異物が邪魔になって当該異物の下方にあるシンチレータ(直接型の放射線画像撮影装置の場合は検出素子)に十分な線量の放射線が入射しない場合、当該異物の位置に対応する画素は欠陥画素になる。
一方、筐体内に異物が混入していたとしても、放射線画像撮影装置に照射された放射線が当該異物を透過可能であり、当該異物の下方にあるシンチレータに十分な線量の放射線が入射する場合、当該異物の位置に対応する画素は欠陥画素にならない。
【0011】
言い換えれば、筐体内に混入している異物に対する放射線の透過率が変化すると、その異物の位置に対応する画素は欠陥画素になったり欠陥画素にならなかったりする。
なお、異物に対する放射線の透過率は、放射線の線質に応じて変化する。そして、放射線画像撮影装置に照射される放射線の線質は、撮影部位等に応じて変更される撮影条件、具体的には放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する放射線発生装置の管電圧により変化する。また、放射線画像撮影装置に照射される放射線の線質は、被写体の有無や被写体の体型などによっても変化する。
【0012】
筐体内に混入している異物に起因する欠陥画素が発生しても、その欠陥画素の位置情報が登録されている欠陥画素マップを用いれば、その欠陥画素を補正することは可能である。
しかしながら、従来の欠陥画素マップは、放射線画像撮影装置に照射される放射線の線質を変更して作成されたものではなく、線質を変更せずに線質を一定にして作成されたものである。そのため、管電圧の変更や被写体の有無などによって、欠陥画素マップ作成時の放射線の線質と実際の撮影時(被写体撮影時)の放射線の線質とが異なり、異物の位置に対応する画素のうち、欠陥画素マップ作成時には欠陥画素と判定されなかった画素が実際の撮影時には欠陥画素になる場合や、欠陥画素マップ作成時には欠陥画素と判定された画素が実際の撮影時には欠陥画素にならない場合がある。したがって、放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素は、線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行っても補正できない場合があり、このような場合、適切な画質の放射線画像を取得できない可能性が高くなる。
【0013】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素を補正できる欠陥画素マップを作成可能な欠陥画素マップ作成方法、放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素を補正できる欠陥画素マップを作成可能な欠陥画素マップ作成システム、当該欠陥画素マップを用いて放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素を補正可能なコンソールおよび放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の問題を解決するために、本発明の欠陥画素マップ作成方法は、
放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに含まれる欠陥画素を補正する際に使用する欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成方法において、
前記放射線画像撮影装置に対して照射する放射線の線質を変更する変更ステップと、
前記放射線画像撮影装置が、前記欠陥画素マップの作成のためのマップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質毎に生成する生成ステップと、
前記放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、前記欠陥画素の位置情報が登録された前記欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成ステップと、
を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の欠陥画素マップ作成システムは、
放射線画像撮影を行う放射線画像撮影装置と、前記放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する放射線発生装置と、前記放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに含まれる欠陥画素を補正する際に使用する欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成装置と、を備える欠陥画素マップ作成システムにおいて、
前記放射線発生装置は、前記放射線画像撮影装置に対して照射する放射線の線質を変更可能であり、
前記放射線画像撮影装置は、前記欠陥画素マップの作成のためのマップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質毎に生成する生成手段を備え、
前記欠陥画素マップ作成装置は、前記放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、前記欠陥画素の位置情報が登録された前記欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成手段を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のコンソールは、
前記放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに対して所定の画像処理を行うコンソールにおいて、
本発明の欠陥画素マップ作成システムが備える欠陥画素マップ作成装置により作成された欠陥画素マップを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている欠陥画素マップに基づいて、前記放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに対して欠陥画素補正処理を行う欠陥画素補正手段と、
を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の放射線画像撮影装置は、
二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備えるセンサパネルと、
前記放射線検出素子から電荷を読み出し、前記放射線検出素子ごとに前記電荷を電気信号に変換し画像データとして出力する読み出し回路と、
本発明の欠陥画素マップ作成システムが備える欠陥画素マップ作成装置により作成された欠陥画素マップを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている欠陥画素マップに基づいて、前記読み出し回路により出力された画像データに対して欠陥画素補正処理を行う欠陥画素補正手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の欠陥画素マップ作成方法および欠陥画素マップ作成システムにおいて作成される欠陥画素マップは、放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質を変更して作成された欠陥画素マップであるので、筐体内に混入している異物に起因する欠陥画素等の放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素の位置情報も登録されている。したがって、当該欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行えば、放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素も補正できるので、放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行う場合よりも適切な画質の放射線画像を取得することが可能となる。
【0019】
また、本発明のコンソールおよび放射線画像撮影装置によれば、放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質を変更して作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行うので、放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素も補正することが可能となる。したがって、放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行う場合よりも適切な画質の放射線画像を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置を示す外観斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図4】図3の基板上の小領域に形成された放射線検出素子やTFTなどの構成を示す拡大図である。
【図5】図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【図6】COFやプリント基板などが取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】本実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【図9】本実施形態に係る欠陥画素マップ作成システムの全体構成を示す図である。
【図10】本実施形態に係る欠陥画素マップ作成方法について説明するためのフローチャートである。
【図11】図11(A)は放射線発生装置の管電圧が所定の第1検査用電圧である場合の欠陥画素について説明するための図であり、図11(B)は放射線発生装置の管電圧が所定の第2検査用電圧である場合の欠陥画素について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明を適用可能な実施形態はこれに限定されるものではなく、また、本発明は図示例に限定されるものでもない。
【0022】
[放射線画像撮影装置]
まず、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成について説明する。
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して照射し、放射線検出素子で電気信号である画像データに変換する、いわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレータ等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
また、放射線画像撮影装置が可搬型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、支持台等と一体的に形成された固定型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0023】
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の外観斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。
放射線画像撮影装置1は、いわゆるフラットパネルディテクタ(以下「FPD」という。)を可搬型に構成したカセッテ型FPDであり、放射線画像撮影に用いられ、放射線を検出して当該放射線の線量に応じた画像データを生成して取得するものである。
放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレータ3や基板4などで構成されるセンサパネルSPが収納されて構成されている。
【0024】
筐体2は、少なくとも放射線の照射を受ける側の面R(以下「放射線入射面R」という。)が放射線を透過するカーボン板やプラスチックなどの材料で形成されている。
なお、図1や図2では、筐体2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、これに限定されることはなく、例えば、筐体2を一体的に角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態においては、筐体2の側面部分に、電源スイッチ36や、LED等で構成されたインジケータ37や、バッテリ41(後述する図7参照)の交換等のために開閉可能とされた蓋部材38などが配置されている。また、本実施形態においては、蓋部材38の側面部に、画像データを、後述する欠陥画素マップ作成装置101やコンソール58などの外部装置に無線で転送するための通信手段であるアンテナ装置39が埋め込まれている。なお、画像データを外部装置に有線方式で転送するように構成することも可能であり、その場合は、例えば、通信手段として、ケーブル等を差し込むなどして接続するための接続端子等が放射線画像撮影装置1の側面部等に設けられる。
【0026】
図2に示すように、筐体2の内部には、センサパネルSPが収納されている。センサパネルSPは、基板4とこれに積層されるシンチレータ3とを備えており、基板4やシンチレータ3の放射線入射面R側には、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
また、基板4の下方側には図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたプリント基板33や緩衝部材34などが取り付けられている。
【0027】
シンチレータ3は、基板4の検出部P(後述)に貼り合わされている。本実施形態において、シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
具体的には、本実施形態において、シンチレータ3は、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の各種高分子材料により形成された支持膜の上に、例えば気相成長法により蛍光体を成長させて形成されたものであり、蛍光体の柱状結晶からなっている。気相成長法としては、蒸着法やスパッタ法などが好ましく用いられる。
【0028】
本実施形態において、基板4は、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6とにより区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0029】
このように、走査線5と信号線6とで区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域がセンサパネルSPの検出部Pとされている。
【0030】
本実施形態においては、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。
各放射線検出素子7は、図3や図3の拡大図である図4に示すように、スイッチ素子である薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下「TFT」という。)8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0031】
そして、TFT8は、走査駆動手段15(後述)から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を当該放射線検出素子7から信号線6に放出させるように構成されている。
また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内で発生した電荷を当該放射線検出素子7内に保持して蓄積させるように構成されている。
【0032】
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図5に示す断面図を用いて簡単に説明する。図5は、図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【0033】
図5に示すように、基板4の面4a上には、AlやCrなどからなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
【0034】
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
【0035】
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上にゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCrなどが積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCrやMoなどからなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。なお、補助電極72は必ずしも設けられなくてもよい。
【0036】
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
【0037】
そして、放射線画像撮影時に、放射線画像撮影装置1に対して照射された放射線が筐体2の放射線入射面Rから入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が図中上方から照射されると、電磁波は放射線検出素子7のi層76に到達して、i層76内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、シンチレータ3から照射された電磁波を電荷(電子正孔対)に変換するようになっている。
【0038】
また、p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。本実施形態においては、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態においては、放射線検出素子7として、上記のようにp層77、i層76、n層75の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
【0039】
放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7にバイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78、バイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
【0040】
図3や図4に示すように、本実施形態では、列状に配置された複数の放射線検出素子7にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、図3に示すように、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0041】
また、本実施形態において、各走査線5や各信号線6やバイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、IC12a等のチップが組み込まれたCOF(Chip On Film)12が、異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)などの異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0042】
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側でプリント基板33に接続されている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサパネルSPの基板4部分が形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0043】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。
図7は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1のセンサパネルSPの等価回路図である。
【0044】
各放射線検出素子7の一方の電極(第2電極78)にはそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78それぞれにバイアス電圧(本実施形態では逆バイアス電圧)を印加する。
また、バイアス電源14は、制御手段22(後述)に接続されており、制御手段22によって、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるように構成されている。
【0045】
また、各放射線検出素子7の他方の電極(第1電極74)はそれぞれTFT8のソース電極8s(図7中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図7中ではGと表記されている。)は、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる走査線5の各ラインL1〜Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図7中ではDと表記されている。)は、各信号線6にそれぞれ接続されている。
【0046】
本実施形態において、走査駆動手段15は、配線15cを介してゲートドライバ15bにオン電圧やオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。
ゲートドライバ15bは、走査線5の各ラインL1〜Lxを介してTFT8のゲート電極8gに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えて、各TFT8のオン状態とオフ状態とを制御する。
【0047】
また、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。
読み出しIC16は、増幅回路18や相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling)回路19からなる読み出し回路17、アナログマルチプレクサ21、A/D変換器20等で構成されている。
【0048】
例えば、放射線画像撮影で被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線が照射され、シンチレータ3で放射線が他の波長の電磁波に変換されて、その直下の放射線検出素子7に照射される。そして、放射線検出素子7で照射された放射線の線量(電磁波の光量)に応じて電荷が発生する。
【0049】
各放射線検出素子7からの電荷の読み出し処理においては、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxを介してゲート電極8gにオン電圧が印加されたTFT8がオン状態となり、放射線検出素子7から信号線6に電荷が放出される。
そして、放射線検出素子7から放出された電荷量に応じて読み出し回路17の増幅回路18から電圧値が出力され、それを読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19で相関二重サンプリングしてアナログ値の画像データがアナログマルチプレクサ21に出力される。アナログマルチプレクサ21から順次出力された画像データは、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データに変換され、記憶手段40に出力されて順次保存される。
すなわち、読み出し回路17は、放射線検出素子7から電荷を読み出し、放射線検出素子7ごとに当該電荷を電気信号に変換し画像データとして出力する。
【0050】
制御手段22は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)などによって構成されている。
なお、ROMやRAMは、制御手段22ではなく、制御手段22に接続された記憶手段40に備えられていてもよい。また、制御手段22は、専用の制御回路で構成されていてもよい。
【0051】
本実施形態において、制御手段22には、アンテナ装置39と、不揮発性の記憶手段40と、放射線画像撮影装置1の各機能部に電力を供給するバッテリ41と、が接続されている。バッテリ41には、クレードル55(後述する図8参照)等の充電装置からバッテリ41に電力を供給してバッテリ41を充電する際の接続端子42が取り付けられている。
また、制御手段22には、図7では図示を省略するが、電源スイッチ36やインジケータ37などが接続されている。
【0052】
制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作等を制御する。
具体的には、例えば、制御手段22は、バイアス電源14を制御して各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を制御したり、走査駆動手段15を制御して信号読み出し用の電圧を印加する走査線5を切り替えたり、或いは、読み出し回路17(具体的には、増幅回路18や相関二重サンプリング回路19)等を制御して各放射線検出素子7からの画像データの読み出しを行う等の各種の処理を実行するように構成されている。
【0053】
[放射線画像撮影システム]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の構成について説明する。
放射線画像撮影システム50は、例えば、病院や医院内で行われる放射線画像撮影を想定したシステムであり、放射線画像として医療用の診断画像を撮影するシステムとして採用することができるが、必ずしもこれに限定されない。
【0054】
図8は、放射線画像撮影システム50の全体構成を示す図である。
放射線画像撮影システム50は、図8に示すように、放射線を照射して患者の一部である被写体(患者の撮影対象部位)の撮影を行う撮影室R1と、撮影室R1に隣接し放射線技師等の操作者が被写体に照射する放射線の制御等の種々の操作を行う前室R2と、それらの外部とに配置される。
【0055】
撮影室R1には、例えば、放射線画像撮影装置1を装填可能なブッキー装置51と、被写体に照射する放射線を発生させるX線管球を備えた放射線源(図示省略)を備える放射線発生装置52と、無線アンテナ53を備え放射線画像撮影装置1とコンソール58等の外部装置との間の通信を中継する基地局54とが設けられている。
【0056】
なお、図8では、可搬型の放射線画像撮影装置1を、ブッキー装置51のカセッテ保持部51aに装填した状態で用いる場合と、ブッキー装置51に装填されない単独の状態で用いる場合、具体的には臥位撮影用のブッキー装置51Bの上面側に配置してその放射線入射面R上に被写体である患者の手等を載置して用いる場合等とが示されているが、放射線画像撮影装置1はブッキー装置51や支持台などと一体的に形成されたものであってもよい。
ここで、可搬型の放射線画像撮影装置1をブッキー装置51に装填されない単独の状態で用いる場合、臥位撮影用のブッキー装置51Bの上面側に配置してその放射線入射面R上に被写体である患者の手等を載置して用いる他に、例えば撮影室R1内に設けられたベッド等の上面側に配置してその放射線入射面R上に被写体である患者の手等を載置したり、或いは、例えばベッドの上に横臥した患者の腰や足などとベッドとの間に差し込んだりして用いることも可能である。
【0057】
また、図8では、放射線画像撮影装置1と基地局54とを無線接続し、放射線画像撮影装置1と外部装置との間の通信を、基地局54を介して無線方式で行うことができるように構成した場合が示されているが、放射線画像撮影装置1と基地局54とをLAN(Local Area Network)ケーブル等で有線接続し、放射線画像撮影装置1と外部装置との間の通信を、基地局54を介して有線方式で行うことができるように構成することも可能である。
また、図8では、ブッキー装置51と基地局54とを有線接続し、ブッキー装置51に装填されている放射線画像撮影装置1と外部装置との間の通信を、基地局54を介して有線方式で行うことができるように構成した場合が示されているが、これに限定されることはなく、ブッキー装置51と基地局54とは有線接続されていなくてもよい。
【0058】
また、図8では、撮影室R1内に、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bとが1個ずつ設けられている場合が示されているが、撮影室R1内に設けられるブッキー装置51の個数や種類は特に限定されない。
また、図8では、撮影室R1内に、放射線発生装置52として、ブッキー装置51に対応付けられた放射線発生装置52Aと、ポータブルの放射線発生装置52Bとが1個ずつ設けられている場合が示されているが、撮影室R1内に設けられる放射線発生装置52の個数や種類は特に限定されない。
【0059】
また、図8に示すように、本実施形態において、撮影室R1には、放射線画像撮影装置1が挿入されると、放射線画像撮影装置1から当該放射線画像撮影装置1を識別するためのカセッテIDを読み取り、基地局54を介してコンソール58に通知するクレードル55が備えられている。なお、このクレードル55で放射線画像撮影装置1の充電等を行うように構成することも可能である。
【0060】
[放射線発生装置]
撮影室R1には、放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する放射線発生装置52が設けられている。
そして、本実施形態においては、撮影室R1に隣接する前室R2に、放射線発生装置52の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が放射線発生装置52に対して放射線の照射開始等を指示する際に操作するための操作スイッチ56が設けられている。
【0061】
また、放射線発生装置52は、放射線技師等の操作者が操作卓57を操作して或いは手動で、放射線画像撮影装置1に対して放射線が適切に照射されるように放射線照射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように絞りを調整したり、適切な線量や適切な線質の放射線が照射されるように放射線源を調整したりすることができるように構成されている。
【0062】
[コンソール]
コンソール58は、図8に示すように、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)などからなる表示部58aと、コンソール58の各機能部の動作等を制御する制御部58bと、HDD(Hard Disk Drive)等からなる記憶手段59と、LANケーブル等によって基地局54と接続され放射線画像撮影装置1等の他の装置との間で通信を行うための通信部(図示省略)と、キーボードやマウスなどからなる入力部(図示省略)とを備えて構成されるコンピュータである。
【0063】
なお、図8では、コンソール58が撮影室R1や前室R2の外側に設けられている場合が示されているが、コンソール58は、例えば前室R2に設けられていてもよい。
また、図8では、コンソール58に記憶手段59が接続されている場合が示されているが、記憶手段59はコンソール58に内蔵されていてもよい。
【0064】
コンソール58の制御部58bは、通信部が基地局54を介して、放射線画像撮影装置1により生成された放射線画像の画像データを当該放射線画像撮影装置1から受信すると、当該画像データに伸長処理、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理等の所定の画像処理を施して、診断用の画像データを作成する。
そして、コンソール58の制御部58bは、操作者により操作された入力部等からの指示に従って、当該診断用の画像データに基づく放射線画像を表示部58aに表示したり、当該診断用の画像データを通信部等から出力してイメージャやデータ管理サーバなどの他の装置(図示省略)に送信したりする。
【0065】
なお、本実施形態では、オフセット補正処理やゲイン補正処理などを、コンソール58が行うように構成したが、これに限定されることはなく、例えば、放射線画像撮影装置1がオフセット補正処理やゲイン補正処理などを行うように構成することも可能である。
【0066】
ここで、本実施形態において、記憶手段59は、欠陥画素マップ作成装置101(後述)により作成された欠陥画素マップを記憶している。
欠陥画素マップは、センサパネルSP上に二次元状に配列された複数の放射線検出素子7に対応する各画素のうちの欠陥画素の画素位置を示すマップであり、コンソール58の制御部58bが放射線画像撮影装置1により生成された放射線画像の画像データに含まれる欠陥画素を補正する際に使用する。
すなわち、コンソール58の制御部58bは、記憶手段59に記憶されている欠陥画素マップに基づいて、放射線画像撮影装置1により生成された放射線画像の画像データに対して欠陥画素補正処理を行う欠陥画素補正手段として機能する。
【0067】
センサパネルSPは、複数の放射線検出素子7を備えており、これら放射線検出素子7の中には製造当初から出力が異常を示すものが含まれている。放射線検出素子7の出力異常としては、放射線の照射にもかかわらず全く電荷を出力しないもの、放射線の線量変化にかかわらず一定の出力しか行わないもの、一定線量の放射線の入射に対して毎回出力が異なり法則性を示さないもの等が挙げられる。
このような出力異常を示す異常な放射線検出素子7が存在すると、当該放射線検出素子7に対応する画素部分に画像の欠損が生じ、適切な画質の放射線画像を取得できなくなってしまう。そのため、異常な放射線検出素子7に起因する欠陥画素は補正する必要がある。
【0068】
また、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に金属片やシンチレータ片などの異物が混入していると、当該異物が邪魔になって、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶のうち当該異物の下方にある蛍光体の柱状結晶に十分な線量の放射線が入射しなくなる場合がある。このような場合、当該異物の下方にある蛍光体の柱状結晶の直下の放射線検出素子7は、当該放射線検出素子7が正常であっても、放射線の照射にもかかわらず全く電荷を出力しなかったり、放射線の線量変化にかかわらず一定の出力しか行わなかったりして、前述した出力異常の場合と同様の出力を示す場合がある。
そのため、筐体2内に混入している異物、具体的にはセンサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物に起因する欠陥画素も補正する必要がある。
【0069】
また、シンチレータ3は、複数の蛍光体の柱状結晶からなっており、これら蛍光体の柱状結晶それぞれにおいて、放射線画像撮影装置1に対して照射された放射線を電磁波に変換して照射するように構成されている。適切な画質の放射線画像を取得するには、蛍光体の柱状結晶から照射される電磁波の輝度が所定の許容範囲内に収まる必要があるが、これら蛍光体の柱状結晶から照射される電磁波の輝度には製造当初からばらつきがあり、これら蛍光体の柱状結晶のうち何れかから上限値を上回る輝度の電磁波や下限値を下回る輝度の電磁波が照射される場合がある。また、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に異物としてシンチレータ片が混入していると、当該シンチレータ片から照射される電磁波の輝度の影響で、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶のうち当該シンチレータ片の近傍にある蛍光体の柱状結晶から許容範囲外の輝度の電磁波が照射される場合がある。
シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶の中にこのような許容範囲外の輝度の電磁波を照射する蛍光体の柱状結晶が存在すると、当該蛍光体の柱状結晶に対応する画素部分に画像の白とびや黒つぶれが生じ、適切な画質の放射線画像を取得できなくなってしまう。そのため、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶から照射される電磁波の輝度に起因する欠陥画素も補正する必要がある。
【0070】
なお、本実施形態では、欠陥画素マップに欠陥画素の位置情報(位置座標)のみを登録することとして説明するが、欠陥画素マップは、欠陥画素の位置情報と正常画素の位置情報との双方が登録されたマップであってもよい。
【0071】
[欠陥画素マップ作成システム]
次に、本実施形態に係る欠陥画素マップ作成システム100の構成について説明する。
欠陥画素マップ作成システム100は、例えば、放射線画像撮影装置1の出荷前に行う出荷検査時に、放射線照射を伴う検査を実施することで欠陥画素を判定して欠陥画素マップを作成するシステムである。
【0072】
図9は、欠陥画素マップ作成システム100の全体構成を示す図である。
欠陥画素マップ作成システム100は、図9に示すように、製造された放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射して当該放射線画像撮影装置1の検査を行う検査室R3と、検査室R3に隣接し検査者等の操作者が放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の制御等の種々の操作を行う操作室R4と、それらの外部とに配置される。
【0073】
具体的には、欠陥画素マップ作成システム100は、図9に示すように、放射線画像撮影を行う放射線画像撮影装置1、放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する放射線発生装置52、放射線画像撮影装置1により生成された放射線画像の画像データに含まれる欠陥画素を補正する際に使用する欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成装置101等を備えて構成される。
【0074】
検査室R3には、例えば、放射線画像撮影装置1を装填可能なブッキー装置51と、放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線を発生させるX線管球を備えた放射線源(図示省略)を備える放射線発生装置52と、ブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1と欠陥画素マップ作成装置101等の外部装置との間の通信を中継する中継器103とが設けられている。
【0075】
なお、図9では、可搬型の放射線画像撮影装置1を、ブッキー装置51のカセッテ保持部51aに装填した状態で検査する場合が示されているが、これに限定されることはなく、例えば、放射線画像撮影装置1をブッキー装置51に装填されない単独の状態で検査するように構成することも可能である。
【0076】
また、図9では、ブッキー装置51と中継器103とを有線接続し、ブッキー装置51に装填されている放射線画像撮影装置1と外部装置との間の通信を、中継器103を介して有線方式で行うことができるように構成した場合が示されているが、これに限定されることはなく、ブッキー装置51と中継器103とは有線接続されていなくてもよい。
このようにブッキー装置51と中継器103とが有線接続されていない場合は、例えば、中継器103に無線アンテナを備えて、放射線画像撮影装置1と中継器103とを無線接続し、放射線画像撮影装置1と外部装置との間の通信を、中継器103を介して無線方式で行うことができるように構成することも可能であるし、放射線画像撮影装置1と中継器103とをLANケーブル等で有線接続し、放射線画像撮影装置1と外部装置との間の通信を、中継器103を介して有線方式で行うことができるように構成することも可能である。
【0077】
また、図9では、検査室R3内に、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aが1個設けられている場合が示されているが、検査室R3内に設けられるブッキー装置51の個数や種類は特に限定されない。
また、図9では、検査室R3内に、放射線発生装置52として、ブッキー装置51に対応付けられた放射線発生装置52Aが1個設けられている場合が示されているが、検査室R3内に設けられる放射線発生装置52の個数や種類は特に限定されない。
【0078】
なお、欠陥画素マップ作成システム100が備える放射線発生装置52、操作卓57および操作スイッチ56の構成は、前述した放射線画像撮影システム50が備える放射線発生装置52、操作卓57および操作スイッチ56の構成とそれぞれ同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0079】
[欠陥画素マップ作成装置]
欠陥画素マップ作成装置101は、図9に示すように、CRTやLCDなどからなる表示部101aと、欠陥画素マップ作成装置101の各機能部の動作等を制御する制御部101bと、HDD等からなる記憶手段102と、LANケーブル等によって中継器103と接続され放射線画像撮影装置1等の他の装置との間で通信を行うための通信部(図示省略)と、キーボードやマウスなどからなる入力部(図示省略)とを備えて構成されるコンピュータである。
【0080】
なお、図9では、欠陥画素マップ作成装置101が検査室R3や操作室R4の外側に設けられている場合が示されているが、欠陥画素マップ作成装置101は、例えば操作室R4に設けられていてもよい。
また、図9では、欠陥画素マップ作成装置101に記憶手段102が接続されている場合が示されているが、記憶手段102は欠陥画素マップ作成装置101に内蔵されていてもよい。
【0081】
欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bは、通信部が中継器103を介して、放射線画像撮影装置1により生成されたマップ作成用画像データを当該放射線画像撮影装置1から受信すると、当該マップ作成用画像データに基づいて欠陥画素を判定し、当該欠陥画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを作成する。
そして、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bは、操作者により操作された入力部等からの指示に従って、当該欠陥画素マップに基づくマップ画像を表示部58aに表示したり、当該欠陥画素マップを記憶手段102に記憶したり、当該欠陥画素マップを通信部等から出力してデータ管理サーバなどの他の装置(図示省略)に送信したりする。
【0082】
ここで、「マップ作成用画像データ」は、欠陥画素マップの作成のために生成された放射線画像の画像データである。当該放射線画像は、被写体を介さない状態で、放射線発生装置52の管電圧を切り替えながら撮影される。
すなわち、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、マップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質毎に生成する生成手段として機能する。
【0083】
そして、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bは、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データそれぞれについて、当該マップ作成用画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録された線質別マップを作成し、当該作成した各線質別マップを論理和合成して欠陥画素マップを作成する。
すなわち、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bは、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、欠陥画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成手段として機能する。
【0084】
[欠陥画素マップ作成方法]
次に、本実施形態に係る欠陥画素マップ作成方法について、図10のフローチャートを参照して説明する。
【0085】
まず、検査者等の操作者が操作室R4内の操作卓57を操作して或いは手動で、検査室R3内の放射線発生装置52の管電圧として所定の第1検査用電圧を設定し、当該放射線発生装置52から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する(ステップS1)。
【0086】
なお、本実施形態では、検査者等の操作者が操作卓57を操作して或いは手動で、放射線発生装置52(具体的には、放射線源)の管電圧を設定するように構成したが、これに限定されることはない。例えば、欠陥画素マップ作成装置101と操作卓57とを有線接続(或いは、無線接続であってもよい)し、検査者等の操作者が欠陥画素マップ作成装置101の入力部等を操作して、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bに操作卓57を介して放射線発生装置52の管電圧を設定する制御を行うよう指示する構成とすることも可能であるし、また、欠陥画素マップ作成装置101と放射線発生装置52とを直接接続し、検査者等の操作者が欠陥画素マップ作成装置101の入力部等を操作して、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bに放射線発生装置52の管電圧を設定する制御を行うよう指示する構成とすることも可能である。
【0087】
放射線発生装置52から放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されると、当該放射線画像撮影装置1の制御手段22は、当該放射線画像撮影装置1の各機能部を制御し、読み出し回路17により各放射線検出素子7から画像データを読み出すことによって、第1検査用電圧に対応するマップ作成用画像データを生成する(ステップS2;生成ステップ)。そして、当該生成したマップ作成用画像データを、中継器103を介して欠陥画素マップ作成装置101に対して送信する。
【0088】
放射線画像撮影装置1から送信されたマップ作成用画像データを受信すると、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bは、当該受信したマップ作成用画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録された線質別マップを作成する(ステップS3;線質別マップ作成ステップ(欠陥画素マップ作成ステップ))。
【0089】
具体的には、本実施形態において、制御部101bは、例えば、当該受信したマップ作成用画像データに基づいて、各放射線検出素子7からの画像データの平均値(μ)と標準偏差(σ)とを算出する。そして、欠陥画素判定のための上限の閾値をμ+5σ、下限の閾値をμ−5σとする設定を行い、各放射線検出素子7からの画像データの中から、値が上限の閾値(μ+5σ)を上回る画像データと、値が下限の閾値(μ−5σ)を下回る画像データとを判別する。そして、センサパネルSP上に二次元状に配列された複数の放射線検出素子7に対応する各画素のうち、値が上限の閾値(μ+5σ)を上回る画像データ又は値が下限の閾値(μ−5σ)を下回る画像データを出力した放射線検出素子7に対応する画素を欠陥画素と判定する。
なお、標準偏差(σ)の係数は「5」に限ることはなく任意であり、また、標準偏差(σ)の係数を任意に設定入力可能としてもよい。
また、上限の閾値や下限の閾値そのものを任意に設定入力可能としてもよい。
【0090】
次いで、検査者等の操作者が操作室R4内の操作卓57を操作して或いは手動で、検査室R3内の放射線発生装置52の管電圧として所定の第2検査用電圧を設定することにより、放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の線質を変更し(ステップS4;変更ステップ)、当該放射線発生装置52から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する(ステップS5)。
【0091】
放射線発生装置52から放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されると、当該放射線画像撮影装置1の制御手段22は、当該放射線画像撮影装置1の各機能部を制御し、読み出し回路17により各放射線検出素子7から画像データを読み出すことによって、第2検査用電圧に対応するマップ作成用画像データを生成する(ステップS6;生成ステップ)。そして、当該生成したマップ作成用画像データを、中継器103を介して欠陥画素マップ作成装置101に対して送信する。
【0092】
放射線画像撮影装置1から送信されたマップ作成用画像データを受信すると、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bは、当該受信したマップ作成用画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録された線質別マップを作成する(ステップS7;線質別マップ作成ステップ(欠陥画素マップ作成ステップ))。
なお、ステップS3やステップS7で作成した線質別マップに基づくマップ画像を、欠陥画素マップ作成装置101の表示部58aに表示するように構成することも可能である。
【0093】
次いで、制御部101bは、ステップS3で作成した線質別マップと、ステップS7で作成した線質別マップとを論理和合成して、欠陥画素マップを作成する(ステップS8;合成ステップ(欠陥画素マップ作成ステップ))。
このようにして、欠陥画素マップ作成システム100が備える欠陥画素マップ作成装置101により欠陥画素マップが作成される。
【0094】
本実施形態において、欠陥画素マップは、第1検査用電圧に対応する線質別マップと第2検査用電圧に対応する線質別マップとを論理和合成して作成されたものである。そのため、当該欠陥画素マップにおいては、放射線発生装置52の管電圧が第1検査用電圧である場合と第2検査用電圧である場合との双方で欠陥画素となった画素の位置情報と、放射線発生装置52の管電圧が第1検査用電圧である場合と第2検査用電圧である場合との何れか一方で欠陥画素となった画素の位置情報とが、欠陥画素の位置情報として登録されている。
【0095】
前述したように、異常な放射線検出素子7に対応する画素の他に、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物の位置に対応する画素も欠陥画素になり得る。
センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物の位置に対応する画素が欠陥画素になるのは、放射線画像撮影装置1に照射された放射線の当該異物に対する透過率が低く、当該異物が邪魔になって、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶のうち当該異物の下方にある蛍光体の柱状結晶に十分な線量の放射線が入射しなくなる場合である。したがって、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に異物が混入していたとしても、放射線画像撮影装置1に照射された放射線の当該異物に対する透過率が高く、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶のうち当該異物の下方にある蛍光体の柱状結晶に十分な線量の放射線が入射する場合は、当該異物の位置に対応する画素は欠陥画素にならない。
【0096】
すなわち、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質が変化して、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物に対する当該放射線の透過率が変化すると、当該異物の位置に対応する画素が欠陥画素になったり欠陥画素にならなかったりする場合がある。
【0097】
ここで、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線質は、撮影部位等に応じて変更される撮影条件、具体的には放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する放射線発生装置52の管電圧により変化する。また、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線質は、被写体の有無や被写体の体型などによっても変化する。
したがって、例えば、放射線発生装置52の管電圧を変更すると、欠陥画素であった画素が欠陥画素でなくなったり、欠陥画素でなかった画素が欠陥画素になったりする場合がある。
また、例えば、被写体が細い人から太い人に入れ替わると、欠陥画素であった画素が欠陥画素でなくなったり、欠陥画素でなかった画素が欠陥画素になったりする場合がある。
【0098】
また、1つの異物においても、当該1つの異物のうち或る部分とその他の部分とで材質等が異なり、放射線の透過率が或る部分とその他の部分とで異なる場合、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質が変化すると、欠陥画素の範囲が拡大したり縮小したりする場合がある。
【0099】
具体的には、図11に示すように、例えば、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に、内側部分と外側部分とで材質が異なる異物Mが混入しているとする。そして、当該内側部分には、管電圧が80kVに設定された放射線発生装置52から照射される放射線も、管電圧が50kVに設定された放射線発生装置52から照射される放射線も透過せず、当該外側部分には、管電圧が80kVに設定された放射線発生装置52から照射される放射線は十分に透過するが、管電圧が50kVに設定された放射線発生装置52から照射される放射線は透過しないとする。
この場合、被写体を介さない状態で放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射すると、放射線発生装置52の管電圧が80kVに設定されている場合には、例えば、図11(A)に示すように、異物Mの位置に対応する画素のうち内側部分(一点鎖線で囲まれた部分)の位置に対応する画素のみが欠陥画素になる。一方、放射線発生装置52の管電圧が50kVに設定されている場合には、例えば、図11(B)に示すように、異物Mの内側部分の位置に対応する画素に加えて、異物Mの外側部分(二点鎖線で囲まれた部分のうち一点鎖線で囲まれた部分以外の部分)の位置に対応する画素も欠陥画素になり、管電圧が80kVの場合と比較して、欠陥画素の範囲が拡大する。
なお、図11(A),(B)においては、水玉パターンで塗り潰した画素が欠陥画素を示す。
【0100】
このようなセンサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物に起因する欠陥画素が発生しても、その欠陥画素の位置情報が登録されている欠陥画素マップを用いれば、その欠陥画素を補正することは可能である。
しかしながら、従来の欠陥画素マップは、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線質を変更して作成されたものではなく、線質を変更せずに線質を一定にして作成されたものである。そのため、管電圧の変更や被写体の有無などによって、欠陥画素マップ作成時の放射線の線質と実際の撮影時(被写体撮影時)の放射線の線質とが異なり、異物の位置に対応する画素のうち、欠陥画素マップ作成時には欠陥画素でなかった画素が実際の撮影時には欠陥画素になる場合や、欠陥画素マップ作成時には欠陥画素であった画素が実際の撮影時には欠陥画素にならない場合がある。したがって、放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素は、線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行っても補正できない場合があり、このような場合、適切な画質の放射線画像を取得できない可能性が高くなる。
【0101】
また、前述したように、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶のうち、許容範囲外の輝度の電磁波を照射する蛍光体の柱状結晶の位置に対応する画素も欠陥画素になる。
シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶から照射される電磁波の輝度は、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線質によって変化する。したがって、放射線発生装置52の管電圧を変更すると、輝度が許容範囲外から許容範囲内に移行して欠陥画素であった画素が欠陥画素でなくなったり、輝度が許容範囲内から許容範囲外に移行して欠陥画素でなかった画素が欠陥画素になったりする場合がある。また、被写体が細い人から太い人に入れ替わると、輝度が許容範囲外から許容範囲内に移行して欠陥画素であった画素が欠陥画素でなくなったり、輝度が許容範囲内から許容範囲外に移行して欠陥画素でなかった画素が欠陥画素になったりする場合がある。
【0102】
このように、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶から照射される電磁波の輝度に起因する欠陥画素も、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物に起因する欠陥画素と同様、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する。
そのため、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶から照射される電磁波の輝度に起因する欠陥画素も、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行っても補正できない場合がある。
【0103】
これに対し、本実施形態において作成される欠陥画素マップは、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更して作成された欠陥画素マップである。具体的には、本実施形態においては、放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の線質を変更し、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質毎に欠陥画素を判定し、そして、少なくとも何れか1つの線質において欠陥画素と判定された画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを作成するように構成されている。したがって、当該欠陥画素マップには、異常な放射線検出素子7に起因する欠陥画素の位置情報だけでなく、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物に起因する欠陥画素や、シンチレータ3から照射される電磁波の輝度に起因する欠陥画素などの放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素の位置情報も登録されている。そのため、本実施形態における欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行えば、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素も補正することが可能となる。
【0104】
[欠陥画素補正処理]
次に、本実施形態に係るコンソール58が行う欠陥画素補正処理について説明する。
ここで、コンソール58の記憶手段59等には、予め、放射線画像撮影装置1を識別するためのカセッテIDと、欠陥画素マップ作成装置101により作成された欠陥画素マップのうち当該放射線画像撮影装置1用の欠陥画素マップとが対応付けて記憶されていることとする。
【0105】
なお、コンソール58の記憶手段59等に予め記憶されている欠陥画素マップは、前述の欠陥画素マップ作成方法で作成した欠陥画素マップであってもよいし、前述の欠陥画素マップ作成方法で作成した欠陥画素マップとその他のマップとを論理和合成して作成した欠陥画素マップであってもよい。ここで、その他のマップとしては、例えば、放射線が照射されない状態で放射線画像撮影装置1において生成された画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録されたマップ等が挙げられる。
【0106】
まず、放射線画像撮影装置1から送信された、当該放射線画像撮影装置1により生成された放射線画像の画像データを受信すると、コンソール58の制御部58bは、記憶手段59等に記憶されている欠陥画素マップの中から、当該放射線画像撮影装置1のカセッテIDに対応する欠陥画素マップを取得する。
【0107】
次いで、制御部58bは、当該取得した欠陥画素マップに基づいて、当該受信した放射線画像の画像データに対して欠陥画素補正処理を行う。
具体的には、制御部58bは、例えば、当該取得した欠陥画素マップを参照して欠陥画素を特定し、当該特定した欠陥画素の周囲にある正常画素の画像データを当該受信した放射線画像の画像データから抽出する。そして、当該抽出した画像データを用いて、単純平均補間や重み付け平均補間などの手法により補間を行って補正画像データを算出する。そして、当該受信した放射線画像の画像データに含まれる当該特定した欠陥画素の画像データを、当該算出した補正画像データで置換する。
このようにして、放射線画像撮影システム100が備えるコンソール58により欠陥画素補正処理が行われる。
【0108】
以上説明した本実施形態に係る欠陥画素マップ作成方法および欠陥画素マップ作成システム100によれば、放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の線質を変更し、放射線画像撮影装置1が、欠陥画素マップの作成のためのマップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質毎に生成し、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、欠陥画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを作成するように構成されている。
【0109】
すなわち、本実施形態において作成される欠陥画素マップは、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更して作成された欠陥画素マップであるので、異常な放射線検出素子7に起因する欠陥画素の位置情報に加えて、筐体2内に混入している異物(具体的には、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物)に起因する欠陥画素や、シンチレータ3から照射される電磁波の輝度に起因する欠陥画素などの放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素の位置情報も登録されている。したがって、当該欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行えば、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素も補正できるので、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行う場合よりも適切な画質の放射線画像を取得することが可能となる。
【0110】
また、以上説明した本実施形態に係る欠陥画素マップ作成方法および欠陥画素マップ作成システムによれば、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データそれぞれについて、当該マップ作成用画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録された線質別マップを作成し、当該作成された各線質別マップを論理和合成して欠陥画素マップを作成するように構成されている。
【0111】
すなわち、本実施形態において作成される欠陥画素マップは、放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の線質を変更し、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質毎に欠陥画素を判定し、そして、少なくとも何れか1つの線質において欠陥画素と判定された画素の位置情報が登録された欠陥画素マップである。したがって、当該欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行えば、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素を的確に補正することが可能となる。
【0112】
また、以上説明した本実施形態に係るコンソール58によれば、本実施形態において作成された欠陥画素マップを記憶し、当該記憶している欠陥画素マップに基づいて、放射線画像撮影装置1により生成された放射線画像の画像データに対して欠陥画素補正処理を行うように構成されている。
【0113】
すなわち、コンソール58は、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更して作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行うので、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素も補正することが可能となる。したがって、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行う場合よりも適切な画質の放射線画像を取得することが可能となる。
【0114】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨から逸脱しない限り、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0115】
例えば、上記実施形態では、コンソール58が欠陥画素補正処理を行うように構成したが、これに限定されることはなく、放射線画像撮影装置1が欠陥画素補正処理を行うように構成することも可能である。
この場合、放射線画像撮影装置1の記憶手段40が、欠陥画素マップ作成システム100が備える欠陥画素マップ作成装置101により作成された欠陥画素マップを記憶する記憶手段として記憶し、放射線画像撮影装置1の制御手段22が、記憶手段40に記憶されている欠陥画素マップに基づいて、読み出し回路17により出力された画像データに対して欠陥画素補正処理を行う欠陥画素補正処理として機能する。
【0116】
また、例えば、上記実施形態では、欠陥画素マップを作成する際、放射線発生装置52の管電圧を変化させることによって、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更するように構成したが、これに限定されることはなく、例えば、放射線発生装置52と、放射線画像撮影装置1の放射線入射面Rとの間に所定のフィルターを配置して、当該フィルターにより放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更するように構成することも可能である。
【0117】
また、例えば、上記実施形態では、欠陥画素マップを作成する際、放射線発生装置52の管電圧として第1検査用電圧と第2検査用電圧との2つの電圧値を設定するように構成したが、これに限定されることはなく、欠陥画素マップを作成する際に放射線発生装置52の管電圧として複数の電圧値が設定されるのであれば、設定される電圧値の個数は任意である。
【0118】
また、欠陥画素マップ作成時に設定する放射線発生装置52の管電圧は、放射線画像撮影装置1毎に変更してもよい。
具体的には、例えば、第2検査用電圧として第1検査用電圧よりも小さい電圧値を設定する。そして、第1検査用電圧に対応する線質別マップと、第2検査用電圧に対応する線質別マップとを比較し、第2検査用電圧に対応する線質別マップに登録されている欠陥画素の位置情報の個数の方が多い放射線画像撮影装置1の場合は、放射線発生装置52の管電圧をさらに小さくすれば欠陥画素の個数が増える可能性が高いと判断し、放射線発生装置52の管電圧として第2検査用電圧よりも小さい電圧を設定して、当該第2検査用電圧よりも小さい電圧に対応する線質別マップを作成し、当該第2検査用電圧よりも小さい電圧に対応する線質別マップと、第1検査用電圧に対応する線質別マップと、第2検査用電圧に対応する線質別マップとを論理和合成することによって欠陥画素マップを作成する。一方、第1検査用電圧に対応する線質別マップに登録されている欠陥画素の位置情報の個数の方が多い放射線画像撮影装置1の場合は、放射線発生装置52の管電圧をさらに大きくすれば欠陥画素の個数が増える可能性が高いと判断し、放射線発生装置52の管電圧として第1検査用電圧よりも大きい電圧を設定して、当該第1検査用電圧よりも大きい電圧に対応する線質別マップを作成し、当該第1検査用電圧よりも大きい電圧に対応する線質別マップと、第1検査用電圧に対応する線質別マップと、第2検査用電圧に対応する線質別マップとを論理和合成することによって欠陥画素マップを作成するように構成することも可能である。
【0119】
また、例えば、上記実施形態では、放射線画像撮影装置1がマップ作成用画像データを作成する度に、当該作成したマップ作成用画像データに基づいて線質別マップを作成するように構成したが、これに限定されることはなく、例えば、放射線画像撮影装置1が当該放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データを作成した後に、各マップ作成用画像データに基づいて各線質別マップを作成するように構成することも可能である。
【0120】
また、例えば、上記実施形態では、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類の線質別マップを作成し、当該作成した各線質別マップを論理和合成して欠陥画素マップを作成するように構成したが、これに限定されることはなく、例えば、線質別マップを作成せずに欠陥画素マップを作成するように構成することも可能である。具体的には、例えば、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データそれぞれについて、当該マップ作成用画像データから欠陥画素を判定し、当該判定した欠陥画素の位置情報を欠陥画素マップに順次登録することによって、欠陥画素マップを作成するように構成することも可能である。
【0121】
また、例えば、上記実施形態では、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類の線質別マップを作成し、当該作成した各線質別マップを論理和合成して欠陥画素マップを作成するように構成したが、これに限定されることはなく、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、欠陥画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを作成できるのであれば、例えば、作成した複数種類の線質別マップのうち、登録されている欠陥画素の位置情報の個数が最も多い線質別マップを欠陥画素マップとして選択するように構成することも可能である。
【0122】
また、例えば、欠陥画素マップを、欠陥画素マップ作成システム100だけでなく、放射線画像撮影システム50でも作成できるように構成することも可能である。
具体的には、コンソール58に欠陥画素マップ作成装置101と同等の欠陥画素マップ作成機能を備え、放射線画像撮影システム50で運用されている放射線画像撮影装置1をキャリブレーション等する際に、コンソール58の制御部58bが、欠陥画素マップを作成して、当該作成した欠陥画素マップでコンソール58の記憶手段59等に記憶されている欠陥画素マップを更新するように構成することも可能である。
この場合、放射線画像撮影システム50が、欠陥画素マップ作成システムとして機能し、コンソール58が、欠陥画素マップ作成装置として機能し、コンソール58の制御部58bが、欠陥画素マップ作成手段として機能する。
【0123】
また、例えば、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類の線質別マップに基づいて、筐体2内に混入している異物を検出するように構成することも可能である。
具体的には、例えば、第1検査用電圧に対応する線質別マップに登録されている欠陥画素の位置や個数と、第2検査用電圧に対応する線質別マップに登録されている欠陥画素の位置や個数とが異なる場合、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に異物が混入している可能性が高い。したがって、このような場合、例えば、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bが、筐体2内に異物が混入していると判定して、その旨を欠陥画素マップ作成装置101の表示部101aに表示等して報知するように構成することも可能である。これにより、センサパネルSPの放射線入射面R側の面を拭く等して筐体2内に混入している異物を除くことができるので、筐体2内に混入している異物が除かれた放射線画像撮影装置1を出荷することが可能となる。なお、放射線画像撮影装置1の筐体2内に混入している異物を除いた場合、再度、当該放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射して、当該放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類の線質別マップを作成し、当該作成した線質別マップに基づき欠陥画素マップを作成することが好ましい。
【符号の説明】
【0124】
1 放射線画像撮影装置
17 読み出し回路
22 制御手段(生成手段、欠陥画素補正手段)
40 記憶手段
52 放射線発生装置
58 コンソール
58b 制御部(欠陥画素補正手段)
59 記憶手段
100 欠陥画素マップ作成システム
101 欠陥画素マップ作成装置
101b 制御部(欠陥画素マップ作成手段)
SP センサパネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥画素マップ作成方法、欠陥画素マップ作成システム、コンソールおよび放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病気診断等を目的として、X線画像に代表される放射線を用いて撮影された放射線画像が広く用いられている。こうした医療用の放射線画像は、従来からスクリーンフィルムを用いて撮影されていたが、放射線画像のデジタル化を図るために輝尽性蛍光体シートを用いたCR(Computed Radiography)装置が開発され、最近では、照射された放射線を、二次元状に配置された放射線検出素子で検出して、デジタル画像データとして取得する放射線画像撮影装置が開発されている。
【0003】
このような放射線画像撮影装置としては、照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0004】
このタイプの放射線画像撮影装置は、通常、複数の放射線検出素子が二次元状に配列されたセンサパネルを備えており、FPD(Flat Panel Detector)として知られている。従来は、センサパネルが支持台に一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、センサパネルを筐体内に収納して持ち運びできるようにした可搬型の放射線画像撮影装置が開発されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
FPD型の放射線画像撮影装置では、センサパネル上に放射線検出素子を積層して製造する際に放射線検出素子中に不純物が混入する等して、恒常的に或いは一定の確率で異常な画像データを出力する画素(以下「欠陥画素」という。)が生じる場合がある。
【0006】
このような欠陥画素が存在すると、その部分に画像の欠損が生じ、高精細な画像を得ることができない。
そのため、通常、放射線画像撮影装置により撮影された放射線画像を表示等する前に、欠陥画素の近傍の正常画素の画素値を単純平均する単純平均補間や、センサパネルの特性等に従って重み付け平均する重み付け平均補間などの手法により欠陥画素の画素値を補間する等の欠陥画素補正処理が行われている。
【0007】
欠陥画素補正処理を行うためには、欠陥画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを予め作成しておく必要がある。欠陥画素でない画素が誤って欠陥画素と判定されたり、欠陥画素である画素なのに欠陥画素と判定されなかったりして、欠陥画素の判定が正確に行われないと、正確な欠陥画素マップが作成されず、欠陥画素の補正を的確に行うことができなくなってしまう。欠陥画素の補正が的確に行われないと、放射線画像の画質が低下してしまうので、このような放射線画像を用いて診断を行った場合、病変部を見落としたり、正常な部分を病変部と見誤ったりして誤診が生じる等の不都合が生じてしまう虞がある。
そこで、欠陥画素の判定を正確に行うために、放射線の照射量を変更し、それぞれの照射量での撮影にて得られる撮影画像を用いて欠陥画素位置情報の抽出を行うことが可能な画像処理装置が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開平7−246199号公報
【特許文献3】特開2001−427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、欠陥画素の中には、放射線の照射量を変更しても位置情報を抽出できないものがある。このような欠陥画素としては、例えば、センサパネルを筐体内に収納する際等に筐体内に混入した異物の影響で生じる欠陥画素が挙げられる。
【0010】
例えば、放射線画像撮影装置に照射された放射線が透過できない異物が筐体内に混入しており、当該異物が邪魔になって当該異物の下方にあるシンチレータ(直接型の放射線画像撮影装置の場合は検出素子)に十分な線量の放射線が入射しない場合、当該異物の位置に対応する画素は欠陥画素になる。
一方、筐体内に異物が混入していたとしても、放射線画像撮影装置に照射された放射線が当該異物を透過可能であり、当該異物の下方にあるシンチレータに十分な線量の放射線が入射する場合、当該異物の位置に対応する画素は欠陥画素にならない。
【0011】
言い換えれば、筐体内に混入している異物に対する放射線の透過率が変化すると、その異物の位置に対応する画素は欠陥画素になったり欠陥画素にならなかったりする。
なお、異物に対する放射線の透過率は、放射線の線質に応じて変化する。そして、放射線画像撮影装置に照射される放射線の線質は、撮影部位等に応じて変更される撮影条件、具体的には放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する放射線発生装置の管電圧により変化する。また、放射線画像撮影装置に照射される放射線の線質は、被写体の有無や被写体の体型などによっても変化する。
【0012】
筐体内に混入している異物に起因する欠陥画素が発生しても、その欠陥画素の位置情報が登録されている欠陥画素マップを用いれば、その欠陥画素を補正することは可能である。
しかしながら、従来の欠陥画素マップは、放射線画像撮影装置に照射される放射線の線質を変更して作成されたものではなく、線質を変更せずに線質を一定にして作成されたものである。そのため、管電圧の変更や被写体の有無などによって、欠陥画素マップ作成時の放射線の線質と実際の撮影時(被写体撮影時)の放射線の線質とが異なり、異物の位置に対応する画素のうち、欠陥画素マップ作成時には欠陥画素と判定されなかった画素が実際の撮影時には欠陥画素になる場合や、欠陥画素マップ作成時には欠陥画素と判定された画素が実際の撮影時には欠陥画素にならない場合がある。したがって、放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素は、線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行っても補正できない場合があり、このような場合、適切な画質の放射線画像を取得できない可能性が高くなる。
【0013】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素を補正できる欠陥画素マップを作成可能な欠陥画素マップ作成方法、放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素を補正できる欠陥画素マップを作成可能な欠陥画素マップ作成システム、当該欠陥画素マップを用いて放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素を補正可能なコンソールおよび放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の問題を解決するために、本発明の欠陥画素マップ作成方法は、
放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに含まれる欠陥画素を補正する際に使用する欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成方法において、
前記放射線画像撮影装置に対して照射する放射線の線質を変更する変更ステップと、
前記放射線画像撮影装置が、前記欠陥画素マップの作成のためのマップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質毎に生成する生成ステップと、
前記放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、前記欠陥画素の位置情報が登録された前記欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成ステップと、
を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の欠陥画素マップ作成システムは、
放射線画像撮影を行う放射線画像撮影装置と、前記放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する放射線発生装置と、前記放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに含まれる欠陥画素を補正する際に使用する欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成装置と、を備える欠陥画素マップ作成システムにおいて、
前記放射線発生装置は、前記放射線画像撮影装置に対して照射する放射線の線質を変更可能であり、
前記放射線画像撮影装置は、前記欠陥画素マップの作成のためのマップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質毎に生成する生成手段を備え、
前記欠陥画素マップ作成装置は、前記放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、前記欠陥画素の位置情報が登録された前記欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成手段を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のコンソールは、
前記放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに対して所定の画像処理を行うコンソールにおいて、
本発明の欠陥画素マップ作成システムが備える欠陥画素マップ作成装置により作成された欠陥画素マップを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている欠陥画素マップに基づいて、前記放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに対して欠陥画素補正処理を行う欠陥画素補正手段と、
を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の放射線画像撮影装置は、
二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備えるセンサパネルと、
前記放射線検出素子から電荷を読み出し、前記放射線検出素子ごとに前記電荷を電気信号に変換し画像データとして出力する読み出し回路と、
本発明の欠陥画素マップ作成システムが備える欠陥画素マップ作成装置により作成された欠陥画素マップを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている欠陥画素マップに基づいて、前記読み出し回路により出力された画像データに対して欠陥画素補正処理を行う欠陥画素補正手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の欠陥画素マップ作成方法および欠陥画素マップ作成システムにおいて作成される欠陥画素マップは、放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質を変更して作成された欠陥画素マップであるので、筐体内に混入している異物に起因する欠陥画素等の放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素の位置情報も登録されている。したがって、当該欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行えば、放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素も補正できるので、放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行う場合よりも適切な画質の放射線画像を取得することが可能となる。
【0019】
また、本発明のコンソールおよび放射線画像撮影装置によれば、放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質を変更して作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行うので、放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素も補正することが可能となる。したがって、放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行う場合よりも適切な画質の放射線画像を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置を示す外観斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図4】図3の基板上の小領域に形成された放射線検出素子やTFTなどの構成を示す拡大図である。
【図5】図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【図6】COFやプリント基板などが取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】本実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【図9】本実施形態に係る欠陥画素マップ作成システムの全体構成を示す図である。
【図10】本実施形態に係る欠陥画素マップ作成方法について説明するためのフローチャートである。
【図11】図11(A)は放射線発生装置の管電圧が所定の第1検査用電圧である場合の欠陥画素について説明するための図であり、図11(B)は放射線発生装置の管電圧が所定の第2検査用電圧である場合の欠陥画素について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明を適用可能な実施形態はこれに限定されるものではなく、また、本発明は図示例に限定されるものでもない。
【0022】
[放射線画像撮影装置]
まず、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の構成について説明する。
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して照射し、放射線検出素子で電気信号である画像データに変換する、いわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレータ等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
また、放射線画像撮影装置が可搬型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、支持台等と一体的に形成された固定型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0023】
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の外観斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。
放射線画像撮影装置1は、いわゆるフラットパネルディテクタ(以下「FPD」という。)を可搬型に構成したカセッテ型FPDであり、放射線画像撮影に用いられ、放射線を検出して当該放射線の線量に応じた画像データを生成して取得するものである。
放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレータ3や基板4などで構成されるセンサパネルSPが収納されて構成されている。
【0024】
筐体2は、少なくとも放射線の照射を受ける側の面R(以下「放射線入射面R」という。)が放射線を透過するカーボン板やプラスチックなどの材料で形成されている。
なお、図1や図2では、筐体2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわゆる弁当箱型である場合が示されているが、これに限定されることはなく、例えば、筐体2を一体的に角筒状に形成した、いわゆるモノコック型とすることも可能である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態においては、筐体2の側面部分に、電源スイッチ36や、LED等で構成されたインジケータ37や、バッテリ41(後述する図7参照)の交換等のために開閉可能とされた蓋部材38などが配置されている。また、本実施形態においては、蓋部材38の側面部に、画像データを、後述する欠陥画素マップ作成装置101やコンソール58などの外部装置に無線で転送するための通信手段であるアンテナ装置39が埋め込まれている。なお、画像データを外部装置に有線方式で転送するように構成することも可能であり、その場合は、例えば、通信手段として、ケーブル等を差し込むなどして接続するための接続端子等が放射線画像撮影装置1の側面部等に設けられる。
【0026】
図2に示すように、筐体2の内部には、センサパネルSPが収納されている。センサパネルSPは、基板4とこれに積層されるシンチレータ3とを備えており、基板4やシンチレータ3の放射線入射面R側には、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。
また、基板4の下方側には図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたプリント基板33や緩衝部材34などが取り付けられている。
【0027】
シンチレータ3は、基板4の検出部P(後述)に貼り合わされている。本実施形態において、シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
具体的には、本実施形態において、シンチレータ3は、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の各種高分子材料により形成された支持膜の上に、例えば気相成長法により蛍光体を成長させて形成されたものであり、蛍光体の柱状結晶からなっている。気相成長法としては、蒸着法やスパッタ法などが好ましく用いられる。
【0028】
本実施形態において、基板4は、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6とにより区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0029】
このように、走査線5と信号線6とで区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域がセンサパネルSPの検出部Pとされている。
【0030】
本実施形態においては、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。
各放射線検出素子7は、図3や図3の拡大図である図4に示すように、スイッチ素子である薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下「TFT」という。)8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0031】
そして、TFT8は、走査駆動手段15(後述)から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を当該放射線検出素子7から信号線6に放出させるように構成されている。
また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内で発生した電荷を当該放射線検出素子7内に保持して蓄積させるように構成されている。
【0032】
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図5に示す断面図を用いて簡単に説明する。図5は、図4におけるY−Y線に沿う断面図である。
【0033】
図5に示すように、基板4の面4a上には、AlやCrなどからなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
【0034】
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
【0035】
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上にゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCrなどが積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCrやMoなどからなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。なお、補助電極72は必ずしも設けられなくてもよい。
【0036】
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
【0037】
そして、放射線画像撮影時に、放射線画像撮影装置1に対して照射された放射線が筐体2の放射線入射面Rから入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が図中上方から照射されると、電磁波は放射線検出素子7のi層76に到達して、i層76内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、シンチレータ3から照射された電磁波を電荷(電子正孔対)に変換するようになっている。
【0038】
また、p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。本実施形態においては、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態においては、放射線検出素子7として、上記のようにp層77、i層76、n層75の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
【0039】
放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7にバイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78、バイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
【0040】
図3や図4に示すように、本実施形態では、列状に配置された複数の放射線検出素子7にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、図3に示すように、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0041】
また、本実施形態において、各走査線5や各信号線6やバイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、IC12a等のチップが組み込まれたCOF(Chip On Film)12が、異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)などの異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0042】
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側でプリント基板33に接続されている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサパネルSPの基板4部分が形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0043】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。
図7は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1のセンサパネルSPの等価回路図である。
【0044】
各放射線検出素子7の一方の電極(第2電極78)にはそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78それぞれにバイアス電圧(本実施形態では逆バイアス電圧)を印加する。
また、バイアス電源14は、制御手段22(後述)に接続されており、制御手段22によって、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるように構成されている。
【0045】
また、各放射線検出素子7の他方の電極(第1電極74)はそれぞれTFT8のソース電極8s(図7中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図7中ではGと表記されている。)は、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる走査線5の各ラインL1〜Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図7中ではDと表記されている。)は、各信号線6にそれぞれ接続されている。
【0046】
本実施形態において、走査駆動手段15は、配線15cを介してゲートドライバ15bにオン電圧やオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。
ゲートドライバ15bは、走査線5の各ラインL1〜Lxを介してTFT8のゲート電極8gに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えて、各TFT8のオン状態とオフ状態とを制御する。
【0047】
また、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。
読み出しIC16は、増幅回路18や相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling)回路19からなる読み出し回路17、アナログマルチプレクサ21、A/D変換器20等で構成されている。
【0048】
例えば、放射線画像撮影で被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線が照射され、シンチレータ3で放射線が他の波長の電磁波に変換されて、その直下の放射線検出素子7に照射される。そして、放射線検出素子7で照射された放射線の線量(電磁波の光量)に応じて電荷が発生する。
【0049】
各放射線検出素子7からの電荷の読み出し処理においては、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxを介してゲート電極8gにオン電圧が印加されたTFT8がオン状態となり、放射線検出素子7から信号線6に電荷が放出される。
そして、放射線検出素子7から放出された電荷量に応じて読み出し回路17の増幅回路18から電圧値が出力され、それを読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19で相関二重サンプリングしてアナログ値の画像データがアナログマルチプレクサ21に出力される。アナログマルチプレクサ21から順次出力された画像データは、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データに変換され、記憶手段40に出力されて順次保存される。
すなわち、読み出し回路17は、放射線検出素子7から電荷を読み出し、放射線検出素子7ごとに当該電荷を電気信号に変換し画像データとして出力する。
【0050】
制御手段22は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)などによって構成されている。
なお、ROMやRAMは、制御手段22ではなく、制御手段22に接続された記憶手段40に備えられていてもよい。また、制御手段22は、専用の制御回路で構成されていてもよい。
【0051】
本実施形態において、制御手段22には、アンテナ装置39と、不揮発性の記憶手段40と、放射線画像撮影装置1の各機能部に電力を供給するバッテリ41と、が接続されている。バッテリ41には、クレードル55(後述する図8参照)等の充電装置からバッテリ41に電力を供給してバッテリ41を充電する際の接続端子42が取り付けられている。
また、制御手段22には、図7では図示を省略するが、電源スイッチ36やインジケータ37などが接続されている。
【0052】
制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作等を制御する。
具体的には、例えば、制御手段22は、バイアス電源14を制御して各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を制御したり、走査駆動手段15を制御して信号読み出し用の電圧を印加する走査線5を切り替えたり、或いは、読み出し回路17(具体的には、増幅回路18や相関二重サンプリング回路19)等を制御して各放射線検出素子7からの画像データの読み出しを行う等の各種の処理を実行するように構成されている。
【0053】
[放射線画像撮影システム]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の構成について説明する。
放射線画像撮影システム50は、例えば、病院や医院内で行われる放射線画像撮影を想定したシステムであり、放射線画像として医療用の診断画像を撮影するシステムとして採用することができるが、必ずしもこれに限定されない。
【0054】
図8は、放射線画像撮影システム50の全体構成を示す図である。
放射線画像撮影システム50は、図8に示すように、放射線を照射して患者の一部である被写体(患者の撮影対象部位)の撮影を行う撮影室R1と、撮影室R1に隣接し放射線技師等の操作者が被写体に照射する放射線の制御等の種々の操作を行う前室R2と、それらの外部とに配置される。
【0055】
撮影室R1には、例えば、放射線画像撮影装置1を装填可能なブッキー装置51と、被写体に照射する放射線を発生させるX線管球を備えた放射線源(図示省略)を備える放射線発生装置52と、無線アンテナ53を備え放射線画像撮影装置1とコンソール58等の外部装置との間の通信を中継する基地局54とが設けられている。
【0056】
なお、図8では、可搬型の放射線画像撮影装置1を、ブッキー装置51のカセッテ保持部51aに装填した状態で用いる場合と、ブッキー装置51に装填されない単独の状態で用いる場合、具体的には臥位撮影用のブッキー装置51Bの上面側に配置してその放射線入射面R上に被写体である患者の手等を載置して用いる場合等とが示されているが、放射線画像撮影装置1はブッキー装置51や支持台などと一体的に形成されたものであってもよい。
ここで、可搬型の放射線画像撮影装置1をブッキー装置51に装填されない単独の状態で用いる場合、臥位撮影用のブッキー装置51Bの上面側に配置してその放射線入射面R上に被写体である患者の手等を載置して用いる他に、例えば撮影室R1内に設けられたベッド等の上面側に配置してその放射線入射面R上に被写体である患者の手等を載置したり、或いは、例えばベッドの上に横臥した患者の腰や足などとベッドとの間に差し込んだりして用いることも可能である。
【0057】
また、図8では、放射線画像撮影装置1と基地局54とを無線接続し、放射線画像撮影装置1と外部装置との間の通信を、基地局54を介して無線方式で行うことができるように構成した場合が示されているが、放射線画像撮影装置1と基地局54とをLAN(Local Area Network)ケーブル等で有線接続し、放射線画像撮影装置1と外部装置との間の通信を、基地局54を介して有線方式で行うことができるように構成することも可能である。
また、図8では、ブッキー装置51と基地局54とを有線接続し、ブッキー装置51に装填されている放射線画像撮影装置1と外部装置との間の通信を、基地局54を介して有線方式で行うことができるように構成した場合が示されているが、これに限定されることはなく、ブッキー装置51と基地局54とは有線接続されていなくてもよい。
【0058】
また、図8では、撮影室R1内に、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bとが1個ずつ設けられている場合が示されているが、撮影室R1内に設けられるブッキー装置51の個数や種類は特に限定されない。
また、図8では、撮影室R1内に、放射線発生装置52として、ブッキー装置51に対応付けられた放射線発生装置52Aと、ポータブルの放射線発生装置52Bとが1個ずつ設けられている場合が示されているが、撮影室R1内に設けられる放射線発生装置52の個数や種類は特に限定されない。
【0059】
また、図8に示すように、本実施形態において、撮影室R1には、放射線画像撮影装置1が挿入されると、放射線画像撮影装置1から当該放射線画像撮影装置1を識別するためのカセッテIDを読み取り、基地局54を介してコンソール58に通知するクレードル55が備えられている。なお、このクレードル55で放射線画像撮影装置1の充電等を行うように構成することも可能である。
【0060】
[放射線発生装置]
撮影室R1には、放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する放射線発生装置52が設けられている。
そして、本実施形態においては、撮影室R1に隣接する前室R2に、放射線発生装置52の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が放射線発生装置52に対して放射線の照射開始等を指示する際に操作するための操作スイッチ56が設けられている。
【0061】
また、放射線発生装置52は、放射線技師等の操作者が操作卓57を操作して或いは手動で、放射線画像撮影装置1に対して放射線が適切に照射されるように放射線照射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように絞りを調整したり、適切な線量や適切な線質の放射線が照射されるように放射線源を調整したりすることができるように構成されている。
【0062】
[コンソール]
コンソール58は、図8に示すように、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)などからなる表示部58aと、コンソール58の各機能部の動作等を制御する制御部58bと、HDD(Hard Disk Drive)等からなる記憶手段59と、LANケーブル等によって基地局54と接続され放射線画像撮影装置1等の他の装置との間で通信を行うための通信部(図示省略)と、キーボードやマウスなどからなる入力部(図示省略)とを備えて構成されるコンピュータである。
【0063】
なお、図8では、コンソール58が撮影室R1や前室R2の外側に設けられている場合が示されているが、コンソール58は、例えば前室R2に設けられていてもよい。
また、図8では、コンソール58に記憶手段59が接続されている場合が示されているが、記憶手段59はコンソール58に内蔵されていてもよい。
【0064】
コンソール58の制御部58bは、通信部が基地局54を介して、放射線画像撮影装置1により生成された放射線画像の画像データを当該放射線画像撮影装置1から受信すると、当該画像データに伸長処理、オフセット補正処理、ゲイン補正処理、欠陥画素補正処理等の所定の画像処理を施して、診断用の画像データを作成する。
そして、コンソール58の制御部58bは、操作者により操作された入力部等からの指示に従って、当該診断用の画像データに基づく放射線画像を表示部58aに表示したり、当該診断用の画像データを通信部等から出力してイメージャやデータ管理サーバなどの他の装置(図示省略)に送信したりする。
【0065】
なお、本実施形態では、オフセット補正処理やゲイン補正処理などを、コンソール58が行うように構成したが、これに限定されることはなく、例えば、放射線画像撮影装置1がオフセット補正処理やゲイン補正処理などを行うように構成することも可能である。
【0066】
ここで、本実施形態において、記憶手段59は、欠陥画素マップ作成装置101(後述)により作成された欠陥画素マップを記憶している。
欠陥画素マップは、センサパネルSP上に二次元状に配列された複数の放射線検出素子7に対応する各画素のうちの欠陥画素の画素位置を示すマップであり、コンソール58の制御部58bが放射線画像撮影装置1により生成された放射線画像の画像データに含まれる欠陥画素を補正する際に使用する。
すなわち、コンソール58の制御部58bは、記憶手段59に記憶されている欠陥画素マップに基づいて、放射線画像撮影装置1により生成された放射線画像の画像データに対して欠陥画素補正処理を行う欠陥画素補正手段として機能する。
【0067】
センサパネルSPは、複数の放射線検出素子7を備えており、これら放射線検出素子7の中には製造当初から出力が異常を示すものが含まれている。放射線検出素子7の出力異常としては、放射線の照射にもかかわらず全く電荷を出力しないもの、放射線の線量変化にかかわらず一定の出力しか行わないもの、一定線量の放射線の入射に対して毎回出力が異なり法則性を示さないもの等が挙げられる。
このような出力異常を示す異常な放射線検出素子7が存在すると、当該放射線検出素子7に対応する画素部分に画像の欠損が生じ、適切な画質の放射線画像を取得できなくなってしまう。そのため、異常な放射線検出素子7に起因する欠陥画素は補正する必要がある。
【0068】
また、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に金属片やシンチレータ片などの異物が混入していると、当該異物が邪魔になって、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶のうち当該異物の下方にある蛍光体の柱状結晶に十分な線量の放射線が入射しなくなる場合がある。このような場合、当該異物の下方にある蛍光体の柱状結晶の直下の放射線検出素子7は、当該放射線検出素子7が正常であっても、放射線の照射にもかかわらず全く電荷を出力しなかったり、放射線の線量変化にかかわらず一定の出力しか行わなかったりして、前述した出力異常の場合と同様の出力を示す場合がある。
そのため、筐体2内に混入している異物、具体的にはセンサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物に起因する欠陥画素も補正する必要がある。
【0069】
また、シンチレータ3は、複数の蛍光体の柱状結晶からなっており、これら蛍光体の柱状結晶それぞれにおいて、放射線画像撮影装置1に対して照射された放射線を電磁波に変換して照射するように構成されている。適切な画質の放射線画像を取得するには、蛍光体の柱状結晶から照射される電磁波の輝度が所定の許容範囲内に収まる必要があるが、これら蛍光体の柱状結晶から照射される電磁波の輝度には製造当初からばらつきがあり、これら蛍光体の柱状結晶のうち何れかから上限値を上回る輝度の電磁波や下限値を下回る輝度の電磁波が照射される場合がある。また、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に異物としてシンチレータ片が混入していると、当該シンチレータ片から照射される電磁波の輝度の影響で、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶のうち当該シンチレータ片の近傍にある蛍光体の柱状結晶から許容範囲外の輝度の電磁波が照射される場合がある。
シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶の中にこのような許容範囲外の輝度の電磁波を照射する蛍光体の柱状結晶が存在すると、当該蛍光体の柱状結晶に対応する画素部分に画像の白とびや黒つぶれが生じ、適切な画質の放射線画像を取得できなくなってしまう。そのため、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶から照射される電磁波の輝度に起因する欠陥画素も補正する必要がある。
【0070】
なお、本実施形態では、欠陥画素マップに欠陥画素の位置情報(位置座標)のみを登録することとして説明するが、欠陥画素マップは、欠陥画素の位置情報と正常画素の位置情報との双方が登録されたマップであってもよい。
【0071】
[欠陥画素マップ作成システム]
次に、本実施形態に係る欠陥画素マップ作成システム100の構成について説明する。
欠陥画素マップ作成システム100は、例えば、放射線画像撮影装置1の出荷前に行う出荷検査時に、放射線照射を伴う検査を実施することで欠陥画素を判定して欠陥画素マップを作成するシステムである。
【0072】
図9は、欠陥画素マップ作成システム100の全体構成を示す図である。
欠陥画素マップ作成システム100は、図9に示すように、製造された放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射して当該放射線画像撮影装置1の検査を行う検査室R3と、検査室R3に隣接し検査者等の操作者が放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の制御等の種々の操作を行う操作室R4と、それらの外部とに配置される。
【0073】
具体的には、欠陥画素マップ作成システム100は、図9に示すように、放射線画像撮影を行う放射線画像撮影装置1、放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する放射線発生装置52、放射線画像撮影装置1により生成された放射線画像の画像データに含まれる欠陥画素を補正する際に使用する欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成装置101等を備えて構成される。
【0074】
検査室R3には、例えば、放射線画像撮影装置1を装填可能なブッキー装置51と、放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線を発生させるX線管球を備えた放射線源(図示省略)を備える放射線発生装置52と、ブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1と欠陥画素マップ作成装置101等の外部装置との間の通信を中継する中継器103とが設けられている。
【0075】
なお、図9では、可搬型の放射線画像撮影装置1を、ブッキー装置51のカセッテ保持部51aに装填した状態で検査する場合が示されているが、これに限定されることはなく、例えば、放射線画像撮影装置1をブッキー装置51に装填されない単独の状態で検査するように構成することも可能である。
【0076】
また、図9では、ブッキー装置51と中継器103とを有線接続し、ブッキー装置51に装填されている放射線画像撮影装置1と外部装置との間の通信を、中継器103を介して有線方式で行うことができるように構成した場合が示されているが、これに限定されることはなく、ブッキー装置51と中継器103とは有線接続されていなくてもよい。
このようにブッキー装置51と中継器103とが有線接続されていない場合は、例えば、中継器103に無線アンテナを備えて、放射線画像撮影装置1と中継器103とを無線接続し、放射線画像撮影装置1と外部装置との間の通信を、中継器103を介して無線方式で行うことができるように構成することも可能であるし、放射線画像撮影装置1と中継器103とをLANケーブル等で有線接続し、放射線画像撮影装置1と外部装置との間の通信を、中継器103を介して有線方式で行うことができるように構成することも可能である。
【0077】
また、図9では、検査室R3内に、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aが1個設けられている場合が示されているが、検査室R3内に設けられるブッキー装置51の個数や種類は特に限定されない。
また、図9では、検査室R3内に、放射線発生装置52として、ブッキー装置51に対応付けられた放射線発生装置52Aが1個設けられている場合が示されているが、検査室R3内に設けられる放射線発生装置52の個数や種類は特に限定されない。
【0078】
なお、欠陥画素マップ作成システム100が備える放射線発生装置52、操作卓57および操作スイッチ56の構成は、前述した放射線画像撮影システム50が備える放射線発生装置52、操作卓57および操作スイッチ56の構成とそれぞれ同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0079】
[欠陥画素マップ作成装置]
欠陥画素マップ作成装置101は、図9に示すように、CRTやLCDなどからなる表示部101aと、欠陥画素マップ作成装置101の各機能部の動作等を制御する制御部101bと、HDD等からなる記憶手段102と、LANケーブル等によって中継器103と接続され放射線画像撮影装置1等の他の装置との間で通信を行うための通信部(図示省略)と、キーボードやマウスなどからなる入力部(図示省略)とを備えて構成されるコンピュータである。
【0080】
なお、図9では、欠陥画素マップ作成装置101が検査室R3や操作室R4の外側に設けられている場合が示されているが、欠陥画素マップ作成装置101は、例えば操作室R4に設けられていてもよい。
また、図9では、欠陥画素マップ作成装置101に記憶手段102が接続されている場合が示されているが、記憶手段102は欠陥画素マップ作成装置101に内蔵されていてもよい。
【0081】
欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bは、通信部が中継器103を介して、放射線画像撮影装置1により生成されたマップ作成用画像データを当該放射線画像撮影装置1から受信すると、当該マップ作成用画像データに基づいて欠陥画素を判定し、当該欠陥画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを作成する。
そして、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bは、操作者により操作された入力部等からの指示に従って、当該欠陥画素マップに基づくマップ画像を表示部58aに表示したり、当該欠陥画素マップを記憶手段102に記憶したり、当該欠陥画素マップを通信部等から出力してデータ管理サーバなどの他の装置(図示省略)に送信したりする。
【0082】
ここで、「マップ作成用画像データ」は、欠陥画素マップの作成のために生成された放射線画像の画像データである。当該放射線画像は、被写体を介さない状態で、放射線発生装置52の管電圧を切り替えながら撮影される。
すなわち、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、マップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質毎に生成する生成手段として機能する。
【0083】
そして、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bは、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データそれぞれについて、当該マップ作成用画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録された線質別マップを作成し、当該作成した各線質別マップを論理和合成して欠陥画素マップを作成する。
すなわち、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bは、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、欠陥画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成手段として機能する。
【0084】
[欠陥画素マップ作成方法]
次に、本実施形態に係る欠陥画素マップ作成方法について、図10のフローチャートを参照して説明する。
【0085】
まず、検査者等の操作者が操作室R4内の操作卓57を操作して或いは手動で、検査室R3内の放射線発生装置52の管電圧として所定の第1検査用電圧を設定し、当該放射線発生装置52から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する(ステップS1)。
【0086】
なお、本実施形態では、検査者等の操作者が操作卓57を操作して或いは手動で、放射線発生装置52(具体的には、放射線源)の管電圧を設定するように構成したが、これに限定されることはない。例えば、欠陥画素マップ作成装置101と操作卓57とを有線接続(或いは、無線接続であってもよい)し、検査者等の操作者が欠陥画素マップ作成装置101の入力部等を操作して、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bに操作卓57を介して放射線発生装置52の管電圧を設定する制御を行うよう指示する構成とすることも可能であるし、また、欠陥画素マップ作成装置101と放射線発生装置52とを直接接続し、検査者等の操作者が欠陥画素マップ作成装置101の入力部等を操作して、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bに放射線発生装置52の管電圧を設定する制御を行うよう指示する構成とすることも可能である。
【0087】
放射線発生装置52から放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されると、当該放射線画像撮影装置1の制御手段22は、当該放射線画像撮影装置1の各機能部を制御し、読み出し回路17により各放射線検出素子7から画像データを読み出すことによって、第1検査用電圧に対応するマップ作成用画像データを生成する(ステップS2;生成ステップ)。そして、当該生成したマップ作成用画像データを、中継器103を介して欠陥画素マップ作成装置101に対して送信する。
【0088】
放射線画像撮影装置1から送信されたマップ作成用画像データを受信すると、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bは、当該受信したマップ作成用画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録された線質別マップを作成する(ステップS3;線質別マップ作成ステップ(欠陥画素マップ作成ステップ))。
【0089】
具体的には、本実施形態において、制御部101bは、例えば、当該受信したマップ作成用画像データに基づいて、各放射線検出素子7からの画像データの平均値(μ)と標準偏差(σ)とを算出する。そして、欠陥画素判定のための上限の閾値をμ+5σ、下限の閾値をμ−5σとする設定を行い、各放射線検出素子7からの画像データの中から、値が上限の閾値(μ+5σ)を上回る画像データと、値が下限の閾値(μ−5σ)を下回る画像データとを判別する。そして、センサパネルSP上に二次元状に配列された複数の放射線検出素子7に対応する各画素のうち、値が上限の閾値(μ+5σ)を上回る画像データ又は値が下限の閾値(μ−5σ)を下回る画像データを出力した放射線検出素子7に対応する画素を欠陥画素と判定する。
なお、標準偏差(σ)の係数は「5」に限ることはなく任意であり、また、標準偏差(σ)の係数を任意に設定入力可能としてもよい。
また、上限の閾値や下限の閾値そのものを任意に設定入力可能としてもよい。
【0090】
次いで、検査者等の操作者が操作室R4内の操作卓57を操作して或いは手動で、検査室R3内の放射線発生装置52の管電圧として所定の第2検査用電圧を設定することにより、放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の線質を変更し(ステップS4;変更ステップ)、当該放射線発生装置52から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する(ステップS5)。
【0091】
放射線発生装置52から放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されると、当該放射線画像撮影装置1の制御手段22は、当該放射線画像撮影装置1の各機能部を制御し、読み出し回路17により各放射線検出素子7から画像データを読み出すことによって、第2検査用電圧に対応するマップ作成用画像データを生成する(ステップS6;生成ステップ)。そして、当該生成したマップ作成用画像データを、中継器103を介して欠陥画素マップ作成装置101に対して送信する。
【0092】
放射線画像撮影装置1から送信されたマップ作成用画像データを受信すると、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bは、当該受信したマップ作成用画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録された線質別マップを作成する(ステップS7;線質別マップ作成ステップ(欠陥画素マップ作成ステップ))。
なお、ステップS3やステップS7で作成した線質別マップに基づくマップ画像を、欠陥画素マップ作成装置101の表示部58aに表示するように構成することも可能である。
【0093】
次いで、制御部101bは、ステップS3で作成した線質別マップと、ステップS7で作成した線質別マップとを論理和合成して、欠陥画素マップを作成する(ステップS8;合成ステップ(欠陥画素マップ作成ステップ))。
このようにして、欠陥画素マップ作成システム100が備える欠陥画素マップ作成装置101により欠陥画素マップが作成される。
【0094】
本実施形態において、欠陥画素マップは、第1検査用電圧に対応する線質別マップと第2検査用電圧に対応する線質別マップとを論理和合成して作成されたものである。そのため、当該欠陥画素マップにおいては、放射線発生装置52の管電圧が第1検査用電圧である場合と第2検査用電圧である場合との双方で欠陥画素となった画素の位置情報と、放射線発生装置52の管電圧が第1検査用電圧である場合と第2検査用電圧である場合との何れか一方で欠陥画素となった画素の位置情報とが、欠陥画素の位置情報として登録されている。
【0095】
前述したように、異常な放射線検出素子7に対応する画素の他に、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物の位置に対応する画素も欠陥画素になり得る。
センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物の位置に対応する画素が欠陥画素になるのは、放射線画像撮影装置1に照射された放射線の当該異物に対する透過率が低く、当該異物が邪魔になって、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶のうち当該異物の下方にある蛍光体の柱状結晶に十分な線量の放射線が入射しなくなる場合である。したがって、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に異物が混入していたとしても、放射線画像撮影装置1に照射された放射線の当該異物に対する透過率が高く、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶のうち当該異物の下方にある蛍光体の柱状結晶に十分な線量の放射線が入射する場合は、当該異物の位置に対応する画素は欠陥画素にならない。
【0096】
すなわち、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質が変化して、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物に対する当該放射線の透過率が変化すると、当該異物の位置に対応する画素が欠陥画素になったり欠陥画素にならなかったりする場合がある。
【0097】
ここで、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線質は、撮影部位等に応じて変更される撮影条件、具体的には放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する放射線発生装置52の管電圧により変化する。また、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線質は、被写体の有無や被写体の体型などによっても変化する。
したがって、例えば、放射線発生装置52の管電圧を変更すると、欠陥画素であった画素が欠陥画素でなくなったり、欠陥画素でなかった画素が欠陥画素になったりする場合がある。
また、例えば、被写体が細い人から太い人に入れ替わると、欠陥画素であった画素が欠陥画素でなくなったり、欠陥画素でなかった画素が欠陥画素になったりする場合がある。
【0098】
また、1つの異物においても、当該1つの異物のうち或る部分とその他の部分とで材質等が異なり、放射線の透過率が或る部分とその他の部分とで異なる場合、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質が変化すると、欠陥画素の範囲が拡大したり縮小したりする場合がある。
【0099】
具体的には、図11に示すように、例えば、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に、内側部分と外側部分とで材質が異なる異物Mが混入しているとする。そして、当該内側部分には、管電圧が80kVに設定された放射線発生装置52から照射される放射線も、管電圧が50kVに設定された放射線発生装置52から照射される放射線も透過せず、当該外側部分には、管電圧が80kVに設定された放射線発生装置52から照射される放射線は十分に透過するが、管電圧が50kVに設定された放射線発生装置52から照射される放射線は透過しないとする。
この場合、被写体を介さない状態で放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射すると、放射線発生装置52の管電圧が80kVに設定されている場合には、例えば、図11(A)に示すように、異物Mの位置に対応する画素のうち内側部分(一点鎖線で囲まれた部分)の位置に対応する画素のみが欠陥画素になる。一方、放射線発生装置52の管電圧が50kVに設定されている場合には、例えば、図11(B)に示すように、異物Mの内側部分の位置に対応する画素に加えて、異物Mの外側部分(二点鎖線で囲まれた部分のうち一点鎖線で囲まれた部分以外の部分)の位置に対応する画素も欠陥画素になり、管電圧が80kVの場合と比較して、欠陥画素の範囲が拡大する。
なお、図11(A),(B)においては、水玉パターンで塗り潰した画素が欠陥画素を示す。
【0100】
このようなセンサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物に起因する欠陥画素が発生しても、その欠陥画素の位置情報が登録されている欠陥画素マップを用いれば、その欠陥画素を補正することは可能である。
しかしながら、従来の欠陥画素マップは、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線質を変更して作成されたものではなく、線質を変更せずに線質を一定にして作成されたものである。そのため、管電圧の変更や被写体の有無などによって、欠陥画素マップ作成時の放射線の線質と実際の撮影時(被写体撮影時)の放射線の線質とが異なり、異物の位置に対応する画素のうち、欠陥画素マップ作成時には欠陥画素でなかった画素が実際の撮影時には欠陥画素になる場合や、欠陥画素マップ作成時には欠陥画素であった画素が実際の撮影時には欠陥画素にならない場合がある。したがって、放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素は、線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行っても補正できない場合があり、このような場合、適切な画質の放射線画像を取得できない可能性が高くなる。
【0101】
また、前述したように、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶のうち、許容範囲外の輝度の電磁波を照射する蛍光体の柱状結晶の位置に対応する画素も欠陥画素になる。
シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶から照射される電磁波の輝度は、放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線質によって変化する。したがって、放射線発生装置52の管電圧を変更すると、輝度が許容範囲外から許容範囲内に移行して欠陥画素であった画素が欠陥画素でなくなったり、輝度が許容範囲内から許容範囲外に移行して欠陥画素でなかった画素が欠陥画素になったりする場合がある。また、被写体が細い人から太い人に入れ替わると、輝度が許容範囲外から許容範囲内に移行して欠陥画素であった画素が欠陥画素でなくなったり、輝度が許容範囲内から許容範囲外に移行して欠陥画素でなかった画素が欠陥画素になったりする場合がある。
【0102】
このように、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶から照射される電磁波の輝度に起因する欠陥画素も、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物に起因する欠陥画素と同様、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する。
そのため、シンチレータ3を構成する蛍光体の柱状結晶から照射される電磁波の輝度に起因する欠陥画素も、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行っても補正できない場合がある。
【0103】
これに対し、本実施形態において作成される欠陥画素マップは、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更して作成された欠陥画素マップである。具体的には、本実施形態においては、放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の線質を変更し、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質毎に欠陥画素を判定し、そして、少なくとも何れか1つの線質において欠陥画素と判定された画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを作成するように構成されている。したがって、当該欠陥画素マップには、異常な放射線検出素子7に起因する欠陥画素の位置情報だけでなく、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物に起因する欠陥画素や、シンチレータ3から照射される電磁波の輝度に起因する欠陥画素などの放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素の位置情報も登録されている。そのため、本実施形態における欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行えば、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素も補正することが可能となる。
【0104】
[欠陥画素補正処理]
次に、本実施形態に係るコンソール58が行う欠陥画素補正処理について説明する。
ここで、コンソール58の記憶手段59等には、予め、放射線画像撮影装置1を識別するためのカセッテIDと、欠陥画素マップ作成装置101により作成された欠陥画素マップのうち当該放射線画像撮影装置1用の欠陥画素マップとが対応付けて記憶されていることとする。
【0105】
なお、コンソール58の記憶手段59等に予め記憶されている欠陥画素マップは、前述の欠陥画素マップ作成方法で作成した欠陥画素マップであってもよいし、前述の欠陥画素マップ作成方法で作成した欠陥画素マップとその他のマップとを論理和合成して作成した欠陥画素マップであってもよい。ここで、その他のマップとしては、例えば、放射線が照射されない状態で放射線画像撮影装置1において生成された画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録されたマップ等が挙げられる。
【0106】
まず、放射線画像撮影装置1から送信された、当該放射線画像撮影装置1により生成された放射線画像の画像データを受信すると、コンソール58の制御部58bは、記憶手段59等に記憶されている欠陥画素マップの中から、当該放射線画像撮影装置1のカセッテIDに対応する欠陥画素マップを取得する。
【0107】
次いで、制御部58bは、当該取得した欠陥画素マップに基づいて、当該受信した放射線画像の画像データに対して欠陥画素補正処理を行う。
具体的には、制御部58bは、例えば、当該取得した欠陥画素マップを参照して欠陥画素を特定し、当該特定した欠陥画素の周囲にある正常画素の画像データを当該受信した放射線画像の画像データから抽出する。そして、当該抽出した画像データを用いて、単純平均補間や重み付け平均補間などの手法により補間を行って補正画像データを算出する。そして、当該受信した放射線画像の画像データに含まれる当該特定した欠陥画素の画像データを、当該算出した補正画像データで置換する。
このようにして、放射線画像撮影システム100が備えるコンソール58により欠陥画素補正処理が行われる。
【0108】
以上説明した本実施形態に係る欠陥画素マップ作成方法および欠陥画素マップ作成システム100によれば、放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の線質を変更し、放射線画像撮影装置1が、欠陥画素マップの作成のためのマップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質毎に生成し、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、欠陥画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを作成するように構成されている。
【0109】
すなわち、本実施形態において作成される欠陥画素マップは、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更して作成された欠陥画素マップであるので、異常な放射線検出素子7に起因する欠陥画素の位置情報に加えて、筐体2内に混入している異物(具体的には、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に混入している異物)に起因する欠陥画素や、シンチレータ3から照射される電磁波の輝度に起因する欠陥画素などの放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素の位置情報も登録されている。したがって、当該欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行えば、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素も補正できるので、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行う場合よりも適切な画質の放射線画像を取得することが可能となる。
【0110】
また、以上説明した本実施形態に係る欠陥画素マップ作成方法および欠陥画素マップ作成システムによれば、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データそれぞれについて、当該マップ作成用画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録された線質別マップを作成し、当該作成された各線質別マップを論理和合成して欠陥画素マップを作成するように構成されている。
【0111】
すなわち、本実施形態において作成される欠陥画素マップは、放射線画像撮影装置1に対して照射する放射線の線質を変更し、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質毎に欠陥画素を判定し、そして、少なくとも何れか1つの線質において欠陥画素と判定された画素の位置情報が登録された欠陥画素マップである。したがって、当該欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行えば、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素を的確に補正することが可能となる。
【0112】
また、以上説明した本実施形態に係るコンソール58によれば、本実施形態において作成された欠陥画素マップを記憶し、当該記憶している欠陥画素マップに基づいて、放射線画像撮影装置1により生成された放射線画像の画像データに対して欠陥画素補正処理を行うように構成されている。
【0113】
すなわち、コンソール58は、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更して作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行うので、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質の違いにより発生する欠陥画素も補正することが可能となる。したがって、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更せずに作成された欠陥画素マップを用いて欠陥画素補正処理を行う場合よりも適切な画質の放射線画像を取得することが可能となる。
【0114】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨から逸脱しない限り、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0115】
例えば、上記実施形態では、コンソール58が欠陥画素補正処理を行うように構成したが、これに限定されることはなく、放射線画像撮影装置1が欠陥画素補正処理を行うように構成することも可能である。
この場合、放射線画像撮影装置1の記憶手段40が、欠陥画素マップ作成システム100が備える欠陥画素マップ作成装置101により作成された欠陥画素マップを記憶する記憶手段として記憶し、放射線画像撮影装置1の制御手段22が、記憶手段40に記憶されている欠陥画素マップに基づいて、読み出し回路17により出力された画像データに対して欠陥画素補正処理を行う欠陥画素補正処理として機能する。
【0116】
また、例えば、上記実施形態では、欠陥画素マップを作成する際、放射線発生装置52の管電圧を変化させることによって、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更するように構成したが、これに限定されることはなく、例えば、放射線発生装置52と、放射線画像撮影装置1の放射線入射面Rとの間に所定のフィルターを配置して、当該フィルターにより放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質を変更するように構成することも可能である。
【0117】
また、例えば、上記実施形態では、欠陥画素マップを作成する際、放射線発生装置52の管電圧として第1検査用電圧と第2検査用電圧との2つの電圧値を設定するように構成したが、これに限定されることはなく、欠陥画素マップを作成する際に放射線発生装置52の管電圧として複数の電圧値が設定されるのであれば、設定される電圧値の個数は任意である。
【0118】
また、欠陥画素マップ作成時に設定する放射線発生装置52の管電圧は、放射線画像撮影装置1毎に変更してもよい。
具体的には、例えば、第2検査用電圧として第1検査用電圧よりも小さい電圧値を設定する。そして、第1検査用電圧に対応する線質別マップと、第2検査用電圧に対応する線質別マップとを比較し、第2検査用電圧に対応する線質別マップに登録されている欠陥画素の位置情報の個数の方が多い放射線画像撮影装置1の場合は、放射線発生装置52の管電圧をさらに小さくすれば欠陥画素の個数が増える可能性が高いと判断し、放射線発生装置52の管電圧として第2検査用電圧よりも小さい電圧を設定して、当該第2検査用電圧よりも小さい電圧に対応する線質別マップを作成し、当該第2検査用電圧よりも小さい電圧に対応する線質別マップと、第1検査用電圧に対応する線質別マップと、第2検査用電圧に対応する線質別マップとを論理和合成することによって欠陥画素マップを作成する。一方、第1検査用電圧に対応する線質別マップに登録されている欠陥画素の位置情報の個数の方が多い放射線画像撮影装置1の場合は、放射線発生装置52の管電圧をさらに大きくすれば欠陥画素の個数が増える可能性が高いと判断し、放射線発生装置52の管電圧として第1検査用電圧よりも大きい電圧を設定して、当該第1検査用電圧よりも大きい電圧に対応する線質別マップを作成し、当該第1検査用電圧よりも大きい電圧に対応する線質別マップと、第1検査用電圧に対応する線質別マップと、第2検査用電圧に対応する線質別マップとを論理和合成することによって欠陥画素マップを作成するように構成することも可能である。
【0119】
また、例えば、上記実施形態では、放射線画像撮影装置1がマップ作成用画像データを作成する度に、当該作成したマップ作成用画像データに基づいて線質別マップを作成するように構成したが、これに限定されることはなく、例えば、放射線画像撮影装置1が当該放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データを作成した後に、各マップ作成用画像データに基づいて各線質別マップを作成するように構成することも可能である。
【0120】
また、例えば、上記実施形態では、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類の線質別マップを作成し、当該作成した各線質別マップを論理和合成して欠陥画素マップを作成するように構成したが、これに限定されることはなく、例えば、線質別マップを作成せずに欠陥画素マップを作成するように構成することも可能である。具体的には、例えば、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データそれぞれについて、当該マップ作成用画像データから欠陥画素を判定し、当該判定した欠陥画素の位置情報を欠陥画素マップに順次登録することによって、欠陥画素マップを作成するように構成することも可能である。
【0121】
また、例えば、上記実施形態では、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類の線質別マップを作成し、当該作成した各線質別マップを論理和合成して欠陥画素マップを作成するように構成したが、これに限定されることはなく、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、欠陥画素の位置情報が登録された欠陥画素マップを作成できるのであれば、例えば、作成した複数種類の線質別マップのうち、登録されている欠陥画素の位置情報の個数が最も多い線質別マップを欠陥画素マップとして選択するように構成することも可能である。
【0122】
また、例えば、欠陥画素マップを、欠陥画素マップ作成システム100だけでなく、放射線画像撮影システム50でも作成できるように構成することも可能である。
具体的には、コンソール58に欠陥画素マップ作成装置101と同等の欠陥画素マップ作成機能を備え、放射線画像撮影システム50で運用されている放射線画像撮影装置1をキャリブレーション等する際に、コンソール58の制御部58bが、欠陥画素マップを作成して、当該作成した欠陥画素マップでコンソール58の記憶手段59等に記憶されている欠陥画素マップを更新するように構成することも可能である。
この場合、放射線画像撮影システム50が、欠陥画素マップ作成システムとして機能し、コンソール58が、欠陥画素マップ作成装置として機能し、コンソール58の制御部58bが、欠陥画素マップ作成手段として機能する。
【0123】
また、例えば、放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類の線質別マップに基づいて、筐体2内に混入している異物を検出するように構成することも可能である。
具体的には、例えば、第1検査用電圧に対応する線質別マップに登録されている欠陥画素の位置や個数と、第2検査用電圧に対応する線質別マップに登録されている欠陥画素の位置や個数とが異なる場合、センサパネルSPと筐体2の放射線入射面Rとの間に異物が混入している可能性が高い。したがって、このような場合、例えば、欠陥画素マップ作成装置101の制御部101bが、筐体2内に異物が混入していると判定して、その旨を欠陥画素マップ作成装置101の表示部101aに表示等して報知するように構成することも可能である。これにより、センサパネルSPの放射線入射面R側の面を拭く等して筐体2内に混入している異物を除くことができるので、筐体2内に混入している異物が除かれた放射線画像撮影装置1を出荷することが可能となる。なお、放射線画像撮影装置1の筐体2内に混入している異物を除いた場合、再度、当該放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射して、当該放射線画像撮影装置1に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類の線質別マップを作成し、当該作成した線質別マップに基づき欠陥画素マップを作成することが好ましい。
【符号の説明】
【0124】
1 放射線画像撮影装置
17 読み出し回路
22 制御手段(生成手段、欠陥画素補正手段)
40 記憶手段
52 放射線発生装置
58 コンソール
58b 制御部(欠陥画素補正手段)
59 記憶手段
100 欠陥画素マップ作成システム
101 欠陥画素マップ作成装置
101b 制御部(欠陥画素マップ作成手段)
SP センサパネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに含まれる欠陥画素を補正する際に使用する欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成方法において、
前記放射線画像撮影装置に対して照射する放射線の線質を変更する変更ステップと、
前記放射線画像撮影装置が、前記欠陥画素マップの作成のためのマップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質毎に生成する生成ステップと、
前記放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、前記欠陥画素の位置情報が登録された前記欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成ステップと、
を有することを特徴とする欠陥画素マップ作成方法。
【請求項2】
前記欠陥画素マップ作成ステップは、
前記複数種類のマップ作成用画像データそれぞれについて、当該マップ作成用画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録された線質別マップを作成する線質別マップ作成ステップと、
前記線質別マップ作成ステップで作成された各線質別マップを論理和合成して前記欠陥画素マップを作成する合成ステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の欠陥画素マップ作成方法。
【請求項3】
放射線画像撮影を行う放射線画像撮影装置と、前記放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する放射線発生装置と、前記放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに含まれる欠陥画素を補正する際に使用する欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成装置と、を備える欠陥画素マップ作成システムにおいて、
前記放射線発生装置は、前記放射線画像撮影装置に対して照射する放射線の線質を変更可能であり、
前記放射線画像撮影装置は、前記欠陥画素マップの作成のためのマップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質毎に生成する生成手段を備え、
前記欠陥画素マップ作成装置は、前記放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、前記欠陥画素の位置情報が登録された前記欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成手段を備えることを特徴とする欠陥画素マップ作成システム。
【請求項4】
前記欠陥画素マップ作成手段は、
前記複数種類のマップ作成用画像データそれぞれについて、当該マップ作成用画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録された線質別マップを作成し、
当該作成した各線質別マップを論理和合成して前記欠陥画素マップを作成することを特徴とする請求項3に記載の欠陥画素マップ作成システム。
【請求項5】
前記放射線発生装置の管電圧を変化させることによって、前記放射線の線質を変更することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の欠陥画素マップ作成システム。
【請求項6】
前記放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに対して所定の画像処理を行うコンソールにおいて、
請求項3から請求項5の何れか一項に記載の欠陥画素マップ作成システムが備える欠陥画素マップ作成装置により作成された欠陥画素マップを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている欠陥画素マップに基づいて、前記放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに対して欠陥画素補正処理を行う欠陥画素補正手段と、
を備えることを特徴とするコンソール。
【請求項7】
二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備えるセンサパネルと、
前記放射線検出素子から電荷を読み出し、前記放射線検出素子ごとに前記電荷を電気信号に変換し画像データとして出力する読み出し回路と、
請求項3から請求項5の何れか一項に記載の欠陥画素マップ作成システムが備える欠陥画素マップ作成装置により作成された欠陥画素マップを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている欠陥画素マップに基づいて、前記読み出し回路により出力された画像データに対して欠陥画素補正処理を行う欠陥画素補正手段と、
を備えることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項1】
放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに含まれる欠陥画素を補正する際に使用する欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成方法において、
前記放射線画像撮影装置に対して照射する放射線の線質を変更する変更ステップと、
前記放射線画像撮影装置が、前記欠陥画素マップの作成のためのマップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質毎に生成する生成ステップと、
前記放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、前記欠陥画素の位置情報が登録された前記欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成ステップと、
を有することを特徴とする欠陥画素マップ作成方法。
【請求項2】
前記欠陥画素マップ作成ステップは、
前記複数種類のマップ作成用画像データそれぞれについて、当該マップ作成用画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録された線質別マップを作成する線質別マップ作成ステップと、
前記線質別マップ作成ステップで作成された各線質別マップを論理和合成して前記欠陥画素マップを作成する合成ステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の欠陥画素マップ作成方法。
【請求項3】
放射線画像撮影を行う放射線画像撮影装置と、前記放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する放射線発生装置と、前記放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに含まれる欠陥画素を補正する際に使用する欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成装置と、を備える欠陥画素マップ作成システムにおいて、
前記放射線発生装置は、前記放射線画像撮影装置に対して照射する放射線の線質を変更可能であり、
前記放射線画像撮影装置は、前記欠陥画素マップの作成のためのマップ作成用画像データを、当該放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質毎に生成する生成手段を備え、
前記欠陥画素マップ作成装置は、前記放射線画像撮影装置に対して照射される放射線の線質に応じた複数種類のマップ作成用画像データに基づいて、前記欠陥画素の位置情報が登録された前記欠陥画素マップを作成する欠陥画素マップ作成手段を備えることを特徴とする欠陥画素マップ作成システム。
【請求項4】
前記欠陥画素マップ作成手段は、
前記複数種類のマップ作成用画像データそれぞれについて、当該マップ作成用画像データに含まれる欠陥画素の位置情報が登録された線質別マップを作成し、
当該作成した各線質別マップを論理和合成して前記欠陥画素マップを作成することを特徴とする請求項3に記載の欠陥画素マップ作成システム。
【請求項5】
前記放射線発生装置の管電圧を変化させることによって、前記放射線の線質を変更することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の欠陥画素マップ作成システム。
【請求項6】
前記放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに対して所定の画像処理を行うコンソールにおいて、
請求項3から請求項5の何れか一項に記載の欠陥画素マップ作成システムが備える欠陥画素マップ作成装置により作成された欠陥画素マップを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている欠陥画素マップに基づいて、前記放射線画像撮影装置により生成された放射線画像の画像データに対して欠陥画素補正処理を行う欠陥画素補正手段と、
を備えることを特徴とするコンソール。
【請求項7】
二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備えるセンサパネルと、
前記放射線検出素子から電荷を読み出し、前記放射線検出素子ごとに前記電荷を電気信号に変換し画像データとして出力する読み出し回路と、
請求項3から請求項5の何れか一項に記載の欠陥画素マップ作成システムが備える欠陥画素マップ作成装置により作成された欠陥画素マップを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている欠陥画素マップに基づいて、前記読み出し回路により出力された画像データに対して欠陥画素補正処理を行う欠陥画素補正手段と、
を備えることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−134781(P2012−134781A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285322(P2010−285322)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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