説明

欠陥解析方法、欠陥解析装置

【課題】半導体デバイスに発生した欠陥の要因を効果的に解析できる欠陥解析方法及び欠陥解析装置を提供する。
【解決手段】一態様に係る欠陥解析方法は、半導体デバイスの欠陥検査で得られた欠陥の位置及び大きさと、光学検査で得られた欠陥を含む領域の反射光の波形を取得するステップと、半導体デバイスを製造する複数の工程と、工程毎の処理内容を含む工程情報を取得するステップと、欠陥の位置及び大きさと、工程情報に基づいて、半導体デバイスのプロセスシミュレーションを行うステップと、シミュレーション結果に対して光学シミュレーションを行い、反射光の波形を生成するステップと、取得した反射光の波形と、生成した反射光の波形との類似度を算出するステップと、算出された類似度が、予め登録された閾値を超えているか否かを判定するステップと、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に関する実施形態は、半導体デバイスの欠陥解析方法及び欠陥解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの歩留まりの向上には、検査装置により半導体デバイスの異常を早期に検出し、該異常の原因を解析した後に該当する製造装置にフィードバックすることが重要である。このため、半導体デバイスの製造工程では、数工程から数十工程ごとに半導体デバイスの特定箇所における膜厚、寸法、形状等を検査し、欠陥があった場合、該欠陥を製造ラインにフィードバックしている。なお、半導体デバイスの歩留まりに関係するものとして、製造ラインで発生する異物の程度(大きさ及び数)を予測し、該製造ラインにおける半導体デバイスの歩留まりを推定するものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−222118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように検査工程は、数工程〜数十工程毎に実施されるため、検査工程で、半導体デバイスの欠陥(例えば、異物)を検出して、その位置、大きさ及び形状等を取得することはできるものの、どの製造工程で欠陥もしくは欠陥の原因となる要因が発生したかどうかまでを非破壊で特定することは困難である。また、製造ラインで発生する異物の程度(大きさ及び数)を予測する方法では、歩留まりを予め推測することはできるものの、欠陥の原因を特定することができない場合は、半導体デバイスの歩留まりを改善することはできない。
【0005】
本発明の実施形態は、かかる従来の問題を解消するためになされたもので、半導体デバイスに発生した欠陥の要因を効果的にかつ非破壊で、解析できる欠陥解析方法及び欠陥解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る欠陥解析方法は、半導体デバイスの欠陥検査で得られた欠陥の位置及び大きさと、光学検査で得られた欠陥を含む領域の反射光の波形を取得するステップと、半導体デバイスを製造する複数の工程と、工程毎の処理内容を含む工程情報を取得するステップと、欠陥の位置及び大きさと、工程情報に基づいて、半導体デバイスのプロセスシミュレーションを行うステップと、シミュレーション結果に対して光学シミュレーションを行い、反射光の波形を生成するステップと、取得した反射光の波形と、生成した反射光の波形との類似度を算出するステップと、算出された類似度が、予め登録された閾値を超えているか否かを判定するステップと、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る欠陥解析システムの構成図である。
【図2】エリプソメトリの概略図である。
【図3】第1の実施形態に係る欠陥解析装置の構成図である。
【図4】第1の実施形態に係る欠陥解析装置の機能図である。
【図5】工程フローDBに記憶されている工程フロー図である。
【図6】検査装置により検出された欠陥の概略図である。
【図7A】プロセスシミュレーションの説明図である。
【図7B】プロセスシミュレーションの説明図である。
【図7C】プロセスシミュレーションの説明図である。
【図7D】プロセスシミュレーションの説明図である。
【図7E】プロセスシミュレーションの説明図である。
【図8】シミュレーションパタンを例示した図である。
【図9A】検出された欠陥の一例を示した図である。
【図9B】検出された欠陥の一例を示した図である。
【図10A】光学シミュレーションの結果を示した図である。
【図10B】光学シミュレーションの結果を示した図である。
【図11】第1の実施形態に係る欠陥解析システムの動作の一例を示したフローチャートである。
【図12】入力画面の一例を示した図である。
【図13】入力画面の一例を示した図である。
【図14】入力画面の一例を示した図である。
【図15】入力画面の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る欠陥解析システムの構成の一例を示した図である。第1の実施形態に係る欠陥解析システムは、欠陥解析装置1、複数の製造装置2a、2b、2c…(以下、製造装置2と称する)、複数の検査装置3a、3b、3c…(以下、検査装置3と称する)、および工程管理装置4、及びこれらを接続するLAN(Local Area Network)等のネットワーク5を具備する。ネットワーク5は、有線又は無線のどちらでもよい。
【0009】
工程管理装置4は、製造装置2、検査装置3等と互いに情報(データ)を送受信して、半導体デバイスの製造工程を管理する。具体的には、予め登録された機種毎に異なる半導体デバイスの製造工程(以下、工程フローと称する)に基づいて、半導体基板(以下、ウェハと称する)の処理及び検査を行うように製造装置2及び検査装置3へ指示する。通信の方式としては、例えば、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials institute)で規定されるSECS(SEMI Equipment Communications Standard)やGEM300(Generic Equipment Model for 300mm wafer)を使用できる。
【0010】
製造装置2は、ウェハを処理して半導体デバイスを製造する製造装置である。製造装置2としては、例えば、インプラント装置、洗浄装置、コーター、露光装置(ステッパー)、デベロッパー、PVD(Physical Vapor Deposition)装置、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置、CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置、ダイシング装置、ボンディング装置等がある。
【0011】
製造装置2は、処理したウェハの処理条件(例えば、ウェハ処理時におけるチャンバのガス圧、ガス流量、ヒータ温度等)をLotID(以下、LIDと称する)、WaferID(以下、WIDと称する)、投入日時(タイムスタンプ)、担当者ID、機種名、工程番号等と共に工程管理装置4へ送信する。
【0012】
検査装置3は、ウェハ上に形成される半導体デバイスを検査する装置である。検査装置3としては、例えば、欠陥検出装置、波形計測装置、膜厚測定装置等がある。欠陥検出装置は、ウェハ上に形成される半導体デバイスの欠陥を検出する。欠陥検出装置は、ウェハ上の所定の位置に形成された半導体デバイスを撮像し、この撮像した画像を良品の半導体デバイスのサンプル画像と比較して欠陥を検出する。
【0013】
波形計測装置は、欠陥検査装置により検出された欠陥を含む領域における電子線もしくはエリプソメトリによる反射波及び干渉波の波形(スペクトラム)を取得する。図2は、エリプソメトリの概略図である。図2に示すように、エリプソメトリは、通常、光源(ライトソース)101、偏光板(ポラライザ)102、検光子(アナライザ)103、三稜鏡(プリズム)104、検出器(ディテクタ)105等を備えている。なお、光源(ライトソース)101には、射出される光を平行光にするコリメータレンズを内蔵しているものとする。また、偏光板102の偏光振動面と検光子103の偏光振動面とは、90°ずれた状態、即ち直交した状態で配置されている。
【0014】
光源101から射出された入射光L1は、偏光板102により直線偏光となって、測定対象物106に照射される。測定対象物106の表面もしくは表面を含む領域で反射された反射光L2のうちの特定偏光成分が検光子103を透過する。検光子103を透過した光は、三稜鏡104で波長帯域ごとに分光され検出器105で検出されて波形(スペクトラム)として認識される。
【0015】
膜厚測定装置は、定期的に実施されるQC(Quality Control)において使用され、PVD装置やCVDにより堆積される膜の厚さやエッチング装置のエッチングレートを測定する。
【0016】
検査装置3は、ウェハ上に形成される半導体デバイスの検査結果、すなわち、欠陥検査装置で検出された欠陥の位置、寸法、膜厚測定装置で測定された膜厚やエッチングレート、及び、波形計測装置で計測された波形、波形の取得条件等の情報(入射波長、入射角、偏向角等)を、それぞれLID、WID、測定日時(タイムスタンプ)、担当者ID、機種名、工程番号等の情報と共に欠陥解析装置1へ送信する。
【0017】
なお、エッチングレートは、所望の膜を堆積したエッチングレート計測用のウェハを使用して測定される。即ち、ウェハ上に堆積された膜の初期膜厚Tinと、エッチング後の残膜厚Tafを膜厚測定装置で測定し、この初期膜厚Tinと残膜厚Tafとの差の絶対値を、エッチング時間(例えば、60s)で除算してエッチングレートを算出する。算出されたエッチングレートは、上述のように欠陥解析装置1へ送信される。
【0018】
また、上記説明では、欠陥の検査と波形の取得を別々の検査装置3で行っているが、欠陥の検査と波形の取得を同一の検査装置3で行ってもよい。また、今後の説明では、検査装置3で取得した波形を「実波形」と称し、後述する光学シミュレーションで取得した波形と区別する。
【0019】
欠陥解析装置1は、半導体デバイスの形状、プロセス及び光学シミュレータである。欠陥解析装置1は、検査装置3から送信される検査結果、及び、工程管理装置4から送信される工程フローを受信し、検査装置3で検出された欠陥を解析する。具体的には、検査装置3から送信される検査結果、及び、工程管理装置4から送信される工程フローに基づいて欠陥の生成過程をシミュレーションし、該欠陥の原因となった製造工程を特定する。
【0020】
なお、上記工程フローをデフォルトとして予め欠陥解析装置1に記憶させておき、この記憶した工程フローを使用するようにしてもよい。この場合、欠陥解析装置1に記憶されている膜厚、エッチレート等を必要に応じて製造装置2から取得した膜厚、エッチレート等と置き換えることになる。
【0021】
図3は、欠陥解析装置1の構成の一例を示した図である。欠陥解析装置1は、コンピュータ本体10と、コンピュータ本体10に接続されたモニタ20およびキーボードやマウス等の入力デバイス30とを具備する。
【0022】
コンピュータ本体10は、CPU11、ROM12、RAM13、HDD14、ユーザI/F15及びI/F16を具備する。CPU(Central Processing Unit)11は、欠陥解析装置1全体を制御する。ROM(Read Only Memory)12は、CPU11の動作コードを格納する。RAM(Random Access Memory)13は、CPU11の動作時に使用される作業領域である。HDD(Hard Disk Drive)14は、シミュレーション用のプログラムや検査装置3での半導体デバイスの検査結果等が記憶される。ユーザI/F15は、入力デバイス30からの入力情報を受け付けるインターフェースである。I/F16は、製造装置2、検査装置3及び工程管理装置4とデータの送受信を行うためのインターフェースである。
【0023】
図4は、第1の実施形態に係る欠陥解析装置1の機能の一例を示した図である。
欠陥解析装置1は、検査結果DB201、工程フローDB202、物理モデルDB203、プロセスシミュレーション結果DB204、光学シミュレーション結果DB205、受信部206、変換部207、送信部208、取得部209、プロセスシミュレーション部210、光学シミュレーション部211、類似度算出部212、判定部213及び表示部214を具備する。なお、図4に示した機能は、CPU11が、RAM13を作業領域として、HDD14に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0024】
検査結果DB201には、検査装置3から送信される半導体デバイスの検査結果、具体的には、検査装置3において検出された欠陥の位置、寸法、QCでの膜厚、エッチングレート、及び実波形等がLID、WID及び工程番号と共に記憶されている。また、工程フローDB202には、工程管理装置4から送信される工程フローがLIDと共に記憶されている。なお、検査結果及び工程フローは、変換部207において欠陥解析装置1で処理可能なフォーマットに変換された後、検査結果DB201及び工程フローDB202へ記憶される。
【0025】
図5は、工程フローDB202に記憶されている工程フローの一例を示した図である。工程フローには、半導体デバイスの製造工程が時系列に並べられ、各工程の工程番号、工程名及び処理内容が対応付けられた状態で記述されている。また、各工程フローには、LID及び機種名が記述されている。このため、工程フローから、LID及び機種名に対応するロットの工程及び各工程における内容がわかる。例えば、図5に示す例では、工程1は、犠牲酸化膜形成を行い、その膜厚は9〜11nmであることがわかる。
【0026】
物理モデルDB203には、エッチング、デポ(膜堆積)、リソフラフィー工程をシミュレーションする形状シミュレーション、酸化や不純物の拡散工程をシミュレーションするプロセスシミュレーション、及び、エリプソメトリ等による波形を取得するための光学シミュレーションに必要な種々の物理モデルが記憶されている。なお、以下の説明では、プロセスシミュレーションには、形状シミュレーションを含むものとする。
【0027】
半導体デバイスのプロセスシミュレーションで用いられるモデルには、例えば、モンテカルロ法がある。モンテカルロ法は、インプラント工程における不純物(ドーパント)の注入をシミュレーションする物理モデルである。
【0028】
半導体デバイスのプロセスシミュレーションで用いられる物理モデルは、一般的に、有限体積法や有限差分法により解かれる。有限体積法では、解析対象を複数のメッシュ(要素)に細分割し、この細分割したメッシュごとに質量保存則、運動量保存則およびエネルギ保存則を満たすように過渡解析を行い、有限差分法では、質量保存則、運動量保存則およびエネルギ保存則を与える微分方程式の微分を差分商で近似することにより該微分方程式を解いている。
【0029】
また、光学シミュレーションを行うために、物理モデルDB203には、半導体デバイスで使用される各材質の反射率や透過率等の物理係数及び光の干渉を計算する計算式等が記憶されている。
【0030】
なお、上記物理モデルを取り入れた半導体デバイスのプロセスシミュレータは、Synopsys社、Silvaco社などにより商品化されている。第1の実施形態に係る欠陥解析装置1として、これら商品化されたプロセスシミュレータを用いることができる。
【0031】
プロセスシミュレーション結果DB204には、後述するプロセスシミュレーション部210におけるプロセスシミュレーションの結果(形状及び材質等の情報)が記憶されている。
【0032】
光学シミュレーション結果DB205には、後述する光学シミュレーション部211における光学シミュレーションの結果(波形の情報)が記憶されている。
【0033】
受信部206は、検査装置3から送信される検査結果、及び、工程管理装置4から送信される工程フローを受信する。
【0034】
変換部207は、受信部206で受信した検査装置3から送信される検査結果、及び、工程管理装置4から送信される工程フローを欠陥解析装置1で処理可能なフォーマットに変換した後、検査結果DB201及び工程フローDB202へそれぞれ記憶する。
【0035】
送信部208は、検査結果DB201に検査結果と共に記憶されているLIDを、工程管理装置4に送信する。工程管理装置4では、欠陥解析装置1から送信されるLIDを受信すると、受信したLIDに対応する工程フローを欠陥解析装置1へ送信する。
【0036】
取得部209は、検査結果DB201から検査結果を取得する。また、取得した検査結果と同じLIDの工程フローを工程フローDB202から取得する。
【0037】
プロセスシミュレーション部210は、取得部209より取得された検査結果及び工程フローに基づいて、欠陥の生成過程をシミュレーションし、該欠陥の原因となった製造工程を特定する。
【0038】
図6は、検査装置3(欠陥検査装置)により検出された欠陥Pの概略図である。この第1の実施形態では、図5に示した工程フローの工程15(欠陥検査2)において、欠陥P(異物)が検出されたものとする。以下、図6を参照して、プロセスシミュレーション部210の動作について説明する。
【0039】
(プロセスシミュレーション)
プロセスシミュレーション部210は、取得部209取得された検査結果から、図6に示す欠陥Pの位置が0.1μm(x座標)、大きさ(直径)が30nmであることを認識する。次に、プロセスシミュレーション部210は、取得した工程フローにおける成膜及びエッチング工程の膜厚及びエッチングレートを、検査装置3から送信されるQCでの膜厚及びエッチングレートに置き換えてシミュレーション用の工程フローを生成する。これにより、実際に堆積された膜厚を用いてシミュレーションを行うことが可能となり、シミュレーション精度が向上する。なお、上記置き換えに利用する膜厚及びエッチングレートのデータは、同一機種について測定されたデータで、かつ、時間的に最も近いデータを用いるようにする。時間については、データと共に送信されて来るタイムスタンプから認識することができる。
【0040】
プロセスシミュレーション部210は、認識した欠陥の位置と大きさ、及び、生成したシミュレーション用の工程フローに基づいて、欠陥の生成過程をシミュレーションする。この際、プロセスシミュレーション部210は、検査工程を除いた各工程において、認識した欠陥の位置と対応する位置(x座標で0.1μmの位置)に欠陥の元となる核を仮想的に発生させて欠陥の生成過程をシミュレーションする。
【0041】
図7A〜図7Eは、核を仮想的に生成させる工程を示した図である。図7A〜図7Eは、それぞれ工程1(犠牲酸化膜形成)、工程3(窒化膜堆積)、工程5(ポリシリコン堆積)、工程8(レジスト塗布)、工程12(異方性エッチング)において核を生成した場合を示している。
【0042】
プロセスシミュレーション部210は、工程1、工程3、工程5、工程8、工程12において、図7A〜図7Eに示す認識した欠陥の位置と対応する位置A〜Eに欠陥の元となる核を仮想的に発生させた後、それぞれにおける欠陥の生成過程をシミュレーションする。なお、各工程において発生させる核の材質としては種々のものが設定可能であるが、通常は、このような核は、膜の堆積工程において発生することが多いことから、この第1の実施形態では、酸化シリコン、窒化シリコン、ポリシリコンの三種類を取り扱うものとするが、上記材質(SiO、Si、Poly−Si)以外を材質とする核を発生させてもよいのはもちろんである。
【0043】
図8は、プロセスシミュレーション部210によるシミュレーションパタンを例示した図である。図8は、縦方向に核を発生させる工程を工程フロー順に並べ、横方向に各工程において発生させる核の材質を酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(Si)、ポリシリコン(Poly−Si)の順に並べている。
【0044】
上述したように、図5に示す工程フローの工程15(欠陥検査2)において、欠陥(異物)が検出された場合、工程1、工程3、工程5、工程7、工程12において、それぞれ酸化シリコン、窒化シリコン、ポリシリコンを材質とする核を発生させる必要がある。このため、プロセスシミュレーション部210は、図8に示すように、上記5つの工程において、それぞれ3種類の材質の核を発生させる15通りのシミュレーションを行い、この15通りのシミュレーション結果をプロセスシミュレーション結果DB204へ記憶する。
【0045】
なお、発生させる核の大きさ及び形状は、検出された欠陥の形状及び大きさに基づいて決定される。図9A,図9Bは、検出された欠陥の一例を示した図である。図9Aには、欠陥の形状に幾何学的特徴がある場合、図9Bには、欠陥の形状に幾何学的特徴がない場合を示している。図9Aに示すように、検出された欠陥の形状に幾何学的特徴がある場合、プロセスシミュレーション部210は、取得した欠陥の位置に対応する位置に、欠陥と同一の形状となるように膜(酸化シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン)を堆積させる。
【0046】
また、図9Bに示すように、検出された欠陥の形状に幾何学的特徴がない場合、形状シミュレーション部211は、取得した欠陥の位置に対応する位置に、検出された欠陥よりも小さな矩形(2次元でシミュレーションする場合)又は立方体(3次元でシミュレーションする場合)の核を発生させた後、材質選択性の等方的な堆積(デポジション)を行う。なお、核の大きさは、検査装置3で検出された欠陥の大きさよりも小さいものとし、かつ、欠陥が検出された工程より前の工程となるに従い核の大きさを小さくする。
【0047】
なお、図9Bに示すように、検出された欠陥の形状に幾何学的特徴がない場合には、酸化シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン以外の材質Aを核として発生させた後、材質選択性の等方的な堆積(デポジション)を行い、その後、材質Aを酸化シリコン、窒化シリコン又はポリシリコンで置き換えるようにしてもよい。このような手順でシミュレーションを行うことにより、シミュレーション手順をより簡易とすることができる。
【0048】
(光学シミュレーション)
光学シミュレーション部211は、各膜種の反射率(n)・屈折率(k)およびエリプソメトリの光学系(入射波長、入射角、偏向角等)を入力値として、プロセスシミュレーション部210により生成された各シミュレーションパタンの光学特性をシミュレーションして波形を取得する。光学シミュレーション部211は、取得部209で取得された検査装置3における波形の取得条件と同一の条件で、プロセスシミュレーション部210によりシミュレーションされてプロセスシミュレーション結果DB204に記憶されている各シミュレーション結果についてシミュレーションを行い、各シミュレーション結果に対応する波形を生成して、光学シミュレーション結果DB205へ記憶する。
【0049】
図10A,10Bは、光学シミュレーション部211でのシミュレーションにより得られたシミュレーション結果を示した図である。図10A,10Bは、それぞれ規格化フーリエ係数(normalized Fourier coefficient)のαとβの波形を示している。なお、α及びβは、それぞれ以下の(1)式、(2)式で表わされる。
【0050】
α=(cos2P-cos2Ψ)/(1-cos2Pcos2Ψ)・・・(1)
β=(sin2ΨcosΔsin2P)/(1-cos2Pcos2Ψ)・・・(2)
ここで、Δ、Ψ、Pは、それぞれ以下の意味で使用している。
Δ:入射光(図2のL1)に対する反射光(図2のL2)の位相差
Ψ:入射光(図2のL1)に対する反射光(図2のL2)の振幅比
P:偏光子(図2の102)の入射光(図2のL1)に対する角度
【0051】
プロセスシミュレーション部210によりシミュレーションされた15通りのシミュレーション結果のそれぞれに対して、光学シミュレーションを行うので、得られる光学シミュレーションの結果も15通りとなる(図10A,10Bに示すようにαとβについてそれぞれ15通りのシミュレーション結果が得られる)。
【0052】
類似度算出部212は、光学シミュレーション部211でシミュレーションを行ったLIDの実波形を検査結果DB201から取得する。判定部213は、光学シミュレーション結果DB205に記憶されている波形と、実波形との類似度を算出する。この類似度の算出は、種々の手法、例えば、実測波形をリファレンスとして、シミュレーションで得られた各反射波の波形の差分の2乗和が最小になる条件を選択する方法や、実測波形およびシミュレーション波形をフーリエ変換してスペクトルを比較する方法等を用いることができる。
【0053】
判定部213は、類似度算出部212で算出された類似度のうち、予め記憶されている閾値を超えるものが欠陥の原因であると判定する。
【0054】
表示部214は、判定部213により欠陥の原因であると判定された光学シミュレーション結果及び該波形に対応するプロセスシミュレーション結果を、光学シミュレーション結果DB205及びプロセスシミュレーション結果DB204からそれぞれ取得してモニタ20に表示する。
【0055】
(欠陥解析システムの動作)
図11は、欠陥解析システムの動作の一例を示したフローチャートである。以下、図11を参照して、欠陥解析システムの動作について説明するが、検査装置3の動作(ステップS101〜S108)と欠陥解析装置1の動作(ステップS201〜S210)に分けて説明する。
【0056】
初めに、検査装置3の動作を説明する。
(ステップS101)
検査装置3は、定期的に行われるQCで取得される膜厚、エッチングレート等の情報を欠陥解析装置1へ送信する。
【0057】
(ステップS102、S103)
検査装置3は、ウェハ上に形成される半導体デバイスの検査を行い、ウェハ上に形成される半導体デバイスの欠陥を検出すると、欠陥の位置、寸法等の情報を抽出して欠陥解析装置1へ送信する。
【0058】
(ステップS104〜107)
欠陥が検出された場合、検査装置3は、欠陥を含む領域の波形(スペクトラム)を取得しているかどうかを判定する。波形を既に取得している場合は、該波形(実波形)を欠陥解析装置1へ送信する。また、波形を取得していない場合は、該波形(実波形)を取得して欠陥解析装置1へ送信する。
【0059】
次に、欠陥解析装置1の動作を説明する。
(ステップS201)
取得部209は、検査装置3から送信される検査結果に対応する工程フローを工程フローDB202から取得する。
【0060】
(ステップS202、S203)
プロセスシミュレーション部210は、取得した工程フローにおける成膜及びエッチング工程のレシピの膜厚及びエッチングレートを、検査装置3から送信される膜厚及びエッチングレートに置き換えてシミュレーション用の工程フローを生成する。次に、プロセスシミュレーション部210は、認識した欠陥の位置と大きさに基づいて、欠陥生成の工程を追加したシミュレーション用の工程フローを複数生成する。
【0061】
(ステップS205)
プロセスシミュレーション部210は、生成した複数のシミュレーション用の工程フローのそれぞれについて欠陥生成のシミュレーションを行う。
【0062】
(ステップS206、S207)
光学シミュレーション部211は、プロセスシミュレーション部210により生成された各シミュレーション結果の光学特性をシミュレーションした波形を生成し、光学シミュレーション結果DB205へ記憶する。
【0063】
(ステップS208、S209)
類似度算出部212は、光学シミュレーション部211でシミュレーションを行った波形を、実波形と比較して、各シミュレーション結果について類似度を算出する。判定部213は、算出された類似度のうち、予め記憶されている閾値を超えるものを欠陥の原因であると判定する。
【0064】
表示部214は、判定部213により欠陥の原因であると判定された光学シミュレーション結果及び該波形に対応するプロセスシミュレーション結果を、光学シミュレーション結果DB205及びプロセスシミュレーション結果DB204からそれぞれ取得してモニタ20に表示する。
【0065】
以上のように、第1の実施形態に係る欠陥解析装置1では、半導体デバイスの欠陥の位置、大きさ及び工程フローに基づいて、生成条件の異なる複数の欠陥生成の過程をシミュレーションするプロセスシミュレーションを行う。次に、このプロセスシミュレーション結果に対してさらに光学シミュレーションを行い、波形を生成した後、生成した波形を、実際の欠陥の波形と比較して類似度を算出し、類似度が予め記憶されている閾値を超えるものを欠陥の原因であると判定している。
【0066】
このため、検査工程が数工程〜数十工程毎にある場合においても、どの製造工程で欠陥もしくは欠陥の原因となる要因が発生したかを効果的に特定することができる。
【0067】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、入力デバイス30を使用して、ユーザが工程フローを適宜変更できるように構成してもよい。図12〜図15は、モニタ20に表示される工程フロー変更のための入力画面の一例を示した図である。
【0068】
図12は、工程フローにしたがって、シミュレーション用の工程フローを入力する画面の一例である。図12に示した例では、左側の欄に各工程フローの名称、及び内容を工程順に入力することで工程フローを作成できる。
【0069】
図13は、図12で作成した各工程の詳細条件を入力する画面の一例である。図13の右側上の点線枠内は、図5の工程5(ポリシリコン堆積)の条件詳細をあらわしている。また、画面左の点線枠内は、所望の位置に所望直径を持つ欠陥を発生させるためのシミュレーションコードを示している。図13の例では、#if直後に書かれている変数(@〜@)の値が「1」であれば欠陥生成を実行する。
【0070】
図14は、図13に示した各工程のパラメータ(膜厚、エッチレート、プロセス時間等)を入力する画面の一例である。
【0071】
図15は、欠陥の位置、大きさ及び材質を入力する画面の一例である。図15に示す例では、0.1μmの位置(X0)に、直径(Dsize)が0.03μmの欠陥が発生した場合の入力例を示している。また、図15では、欠陥の材質として、酸化シリコン(Oxide)、窒化シリコン(Nitride)、ポリシリコン(Poly−Si)を指定した。なお、パラメータN0010〜N0050は、それぞれ「0」または「1」の値をとり、値が「1」の場合は、その工程で点線枠内に示した欠陥を生成させる。
【0072】
以上のようにユーザがプロセスシミュレーションの種々のパラメータを指定できるようにすることで、欠陥生成の様々なケースをシミュレーションすることができ、欠陥もしくは欠陥の原因となる要因の特定にユーザの経験を取り込むことできる。この結果、より効果的に欠陥もしくは欠陥の原因となる要因を特定できることが期待できる。
【0073】
また、ある検査工程(任意の検査工程)において欠陥が検出された場合、該欠陥は、前回の検査から今回の検査までの間に生成された可能性が高い。そこで、取得部209における工程フローの取得は、欠陥が検出された工程から前回検査工程までの部分だけを取得するようにしてもよい。このように構成すれば、プロセスシミュレーション部210及び光学シミュレーション部211におけるシミュレーション処理の負荷を低減することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…欠陥解析装置、2…製造装置、3…検査装置、4…工程管理装置、5…ネットワーク、10…コンピュータ本体、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…HDD、15…ユーザI/F、16…I/F、20…モニタ、30…入力デバイス、101…光源(ライトソース)、102…偏光板(ポラライザ)、103…検光子(アナライザ)、104…三稜鏡(プリズム)、105…検出器(ディテクタ)、106…測定対象物、201…検査結果DB、202…工程フローDB、203…物理モデルDB、204…プロセスシミュレーション結果DB、205…光学シミュレーション結果DB、206…受信部、207…変換部、208…送信部、209…取得部、210…プロセスシミュレーション部、211…光学シミュレーション部、212…類似度算出部、213…判定部、214…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスの欠陥検査で得られた欠陥の位置及び大きさと、光学検査で得られた前記欠陥を含む領域の反射光の波形を取得するステップと、
前記半導体デバイスを製造する複数の工程と、前記工程毎の処理内容を含む工程情報を取得するステップと、
前記欠陥の位置及び大きさと、前記工程情報に基づいて、前記半導体デバイスのプロセスシミュレーションを行うステップと、
前記シミュレーション結果に対して光学シミュレーションを行い、反射光の波形を生成するステップと、
前記取得した反射光の波形と、前記生成した反射光の波形との類似度を算出するステップと、
前記算出された類似度が、予め登録された閾値を超えているか否かを判定するステップと、
を具備することを特徴とする欠陥解析方法。
【請求項2】
前記半導体デバイスの膜厚又はエッチングレートの少なくとも一方を取得するステップと、
前記工程情報に含まれる処理内容の膜厚又はエッチングレートの少なくとも一方を、前記取得した膜厚又はエッチングレートに置き換えるステップと、
を更に具備することを特徴とする請求項1記載の欠陥解析方法。
【請求項3】
前記プロセスシミュレーションは、前記複数の工程の少なくとも一以上の工程において、前記欠陥の要因となる核を形成して行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の欠陥解析方法。
【請求項4】
前記核は、前記半導体デバイスを製造する際に使用される材質で形成することを特徴とする請求項3記載の欠陥解析方法。
【請求項5】
半導体デバイスの欠陥検査で得られた欠陥の位置及び大きさと、光学検査で得られた前記欠陥を含む領域の反射光の波形を取得する第1の取得部と、
前記半導体デバイスを製造する複数の工程と、前記工程毎の処理内容を含む工程情報を取得する第2の取得部と、
前記欠陥の位置及び大きさと、前記工程情報に基づいて、前記半導体デバイスのプロセスシミュレーションを行う第1のシミュレーション部と、
前記第1のシミュレーション部でのシミュレーション結果に対して光学シミュレーションを行い、反射光の波形を生成する第2のシミュレーション部と、
前記第1の取得部で取得した反射光の波形と、前記第2のシミュレーション部で生成した反射光の波形との類似度を算出する類似度算出部と、
前記類似度算出部で算出された類似度が、予め登録された閾値を超えているか否かを判定する判定部と、
を具備することを特徴とする欠陥解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−44061(P2012−44061A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185373(P2010−185373)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】