説明

歪み補正量取得装置及び方法

【課題】小規模な装置構成で容易に且つ高精度に、撮像装置の歪み補正量を取得する。
【解決手段】レーザ発光器4と、該レーザ発光器4から出力されるレーザ光を偏向し、角度を変えて撮像装置1に入射させる光偏向器5を用いる。画像処理装置6は、光偏向器5によって角度を変えて撮像装置1にレーザ光を入射して得られる該レーザ光の実際の結像位置と、撮像装置1に歪みがないと仮定して、該撮像装置1に角度を変えてレーザ光を入射したときに得られる該レーザ光の理想結像位置との差分(歪み変化量)を算出し、該歪み変化量から当該撮像装置1の歪み補正量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置で撮像された画像の歪みを補正するキャリブレーションのための歪み補正量取得装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に撮像装置で撮像された画像は、元々のレンズのディストーションによって歪んでいるのに加えて、製造誤差(組み付け、レンズのチルト、光軸ずれ等)によって撮像装置毎に異なる歪みが生じている。例えば、複数の位置に設置された撮像装置(ステレオカメラ)から画像を取得し、その像位置の差(視差)を用いて物体の距離や位置を測定するような場合、サブピクセル精度の視差を得るためには、撮像装置一つ一つの製造誤差による歪みまで補正する必要がある。
【0003】
従来、撮像装置で撮像された画像の歪みを補正する方法としては、格子模様の2次元チャートを撮像装置で撮像し、歪みのない理想状態の撮像装置でのチャート画像と実際の撮像装置で撮像したチャート画像とから歪み補正量を求め、該歪み補正量をもとに実際に撮像した画像を補正する方法が一般的である(例えば、特許文献1等)。
【0004】
しかしながら、チャートを用いる方法は、高精度に歪み補正量を計測するためには、チャートと撮像装置の位置合わせを精度よく行う必要があり、また、撮像装置の画角が大きくなるとチャートサイズも大きくする必要があり、作業環境が大掛かりになると云う問題があった。さらに、出荷前に高精度に歪み補正量を取得できたとしても、経時変化等によるレンズの屈折率変化、組み付け位置変化が起こる可能性が高く、出荷時から新たな歪みが発生してしまうことは避けられない。そこで、出荷後も随時、歪み補正量を取得する必要があるが、チャートを利用する方法は作業環境が大掛かりになるため、利用者の利便性が大きく損なわれてしまうことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、格子模様の2次元チャートを使用することなく、小規模な装置構成で容易に且つ高精度に、撮像装置の歪み補正量を取得することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、広がりのない光を出力する発光器と、前記発光器から出力される光を偏向し、角度で変えて撮像装置に入射させる光偏向器を用い、前記光偏向器によって角度を変えて前記撮像装置に光を入射して得られる該光の実際の結像位置と、前記撮像装置に歪みがないと仮定して、該撮像装置に前記角度を変えて光を入射したときに得られる該光の理想結像位置との差分(歪み変化量)を算出し、該歪み変化量から当該撮像装置の歪み補正量を求めることを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発光器と光偏向器を用いることで、撮像装置の歪み補正量が小規模な装置構成で容易に、高精度に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態の全体的構成図である。
【図2】レーザ光の結像位置と理想結像位置の様子を示す図である。
【図3】光偏向器の構成・動作を説明する図である。
【図4】光偏向器のレーザ光の偏向角と印加電圧の温度変化の様子を示す図である。
【図5】画像処理装置の第1の実施形態の機能ブロック図である。
【図6】画像処理装置の第2の実施形態の機能ブロック図である。
【図7】画像処理装置の第3の実施形態の機能ブロック図である。
【図8】光偏向器が撮像装置の基準面に対してX軸方向に傾いて設置された時の結像位置変化を示す図である。
【図9】光偏向器が撮像装置の基準面に対してY軸方向に傾いて設置された時の結像位置変化を示す図である。
【図10】画像処理装置の第4の実施形態の機能ブロック図である。
【図11】撮像装置に受光素子を設置した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係る全体構成図である。図1において、1は撮像装置であり、被写体の光学像を結像させるレンズ2と該光学像を撮像して電気信号(画像データ)に変換する撮像素子3を備えている。撮像素子3はCCDやCMOSセンサなどである。4はレーザ光を出力するレーザ発光器(発光器)、5はレーザ発光器4から出力されたレーザ光を偏向する光偏向器であり、レーザ発光器4と光偏向器5とは一体的に構成されている。光偏向器5は、レーザ発光器4から出力されたレーザ光の角度を電圧をかけることで偏向させる。6は撮像装置1から出力された画像データを処理する画像処理装置である。7は画像処理装置から出力される画像信号やその他の情報を表示する表示装置である。
【0011】
撮像装置1の歪み補正量を取得する場合、歪みを補正したい撮像装置1のレンズ2と光偏向器5とを対向して配置する。配置の仕方は、レーザ発光器4と一体構成の光偏向器5を、撮像装置1の前方に設置しても、あるいはミラーなどを用いることによって他の場所に設置しても構わない。但し、撮像装置1の基準面に対してレーザ光が垂直に入射するときに光軸に一致している必要がある。
【0012】
撮像装置1のレンズ2と光偏向器5とを対向して配置した後、レーザ発光器4を駆動し、光偏向器5に電圧を印加して、レーザ発光器4から出力されたレーザ光を偏向させて撮像装置1へ入射させる。撮像装置1に入射したレーザ光はレンズ2で結像され、スポット光が撮像素子3で受光される。この撮像素子3で受光されたスポット光が電気信号(スポット画像データ)に変換されて、画像処理装置6に送られる。同時に、光偏向器5の印加電圧情報が画像処理装置6に送られる。
【0013】
図1において、紙面に平行な方向をX方向、紙面に垂直な方向をY方向とする。撮像装置1に入射するレーザ光がX方向に振れるように、光偏向器5の印加電圧を変化させると、撮像素子3上のスポット光の位置(スポット位置)はX方向に変化する。また、撮像装置1に入射するレーザ光がY方向に振れるように、光偏向器5の印加電圧を変化させると、撮像素子3上のスポット位置はY方向に変化する。すなわち、光偏向器5の印加電圧に応じて、撮像素子3上のスポット位置はXおよびY方向に変化し、二次元のスポット画像データを得ることができる。
【0014】
画像処理装置6は、撮像装置1から出力されるスポット画像データと光偏向器5の印加電圧情報を基に、撮像装置1の歪み補正量を計算する。以下に、その概要を説明する。
【0015】
図2は、光偏向器5によってレーザ光を偏向させたときの、撮像装置1の結像面(撮像素子3の受光面)上のスポット位置を模式的に示したものである。レンズ2が歪みのない理想状態の場合、レーザ光の結像位置は、レーザ光が撮像装置1に入射する角度のみに依存する。この理想状態でのスポット位置(理想結像位置)を白丸で示す。しかし、レンズ2には元々製造誤差による歪みがあり、また、経時変化やその他の原因によって、新たな歪みが発生する。そのため、実際の結像位置(スポット位置)は、白丸の理想結像位置からずれた位置となる。この実際の結像位置を黒丸で示す。
【0016】
画像処理装置6は、光偏向器5の印加電圧情報から理想結像位置を算出する。すなわち、光偏向器5の印加電圧情報から撮像装置1へのレーザ光の入射角度が計算でき、該入射角度から理想結像位置(座標)が算出される。また、画像処理装置6は、撮像装置1から出力されるスポット画像データから実際の結像位置(座標)を算出する。そして、理想結像位置(座標)と実際の結像位置(座標)との差分から、撮像装置1の歪み補正量を計算し、保持しておく。
【0017】
通常の使用環境では、撮像装置1から画像処理装置6へは、被写体の画像データが送られてくる。この画像データには歪みが発生している。画像処理装置6は、撮像装置1から送られてきた画像データに対して、あらかじめ保持しておいた歪み補正量を用いて歪み補正処理を行う。この歪み補正された画像データ(被写体画像)が表示装置7に送られて表示される。
【0018】
以上のように、レーザ発光器と偏向器を用いることで、歪み補正対象の撮像装置について、極めて小規模な装置構成で且つ容易に、高精度に歪み補正量を取得することができる。したがって、通常の使用環境において、当該撮像装置で撮像された画像データの歪みを高精度に補正することができる。
【0019】
図3は、光偏向器5の概略構成を示す図である。図3において、51が電気光学効果を有する材料を用いたプリズム型光偏向素子(薄膜光導波路)である。レーザ光は矢印aのように該光偏向素子51に入射し、矢印bのように該光偏向素子51から出射する。この光偏向素子51の表裏面間に電圧を印加すると、電圧の大きさに応じて、出射光は矢印c−dの方向に偏向する。このような光偏向素子51を二つ組み合わせることで、撮像装置1に入射するレーザ光を二次元に偏向させることができる。
【0020】
このように、電気光学効果を利用した光ビーム偏向器の場合、偏向角度が印加電圧に比例し、予め温度による電気光学定数の変化値を測定しておけば、温度が変化しても撮像装置に対する入射角度を精度よく偏向させることができる。
【0021】
電気光学効果とは光が透過する物質に電場をかけると屈折率が変化する現象のことである。電場の強さに比例して屈折率が変化する効果は、ポッケルス効果と呼ばれ、屈折率変化量は式(1)で与えられる。
Δn=1/2×n×rij×V/d ・・・(1)
ここで、nは屈折率、rijは電気光学定数(ポッケルス定数)、Vは印加電圧、dは電圧を印加する電極の間隔である。また、偏向角度Δθは式(2)によって表すことができる。
Δθ=Δn×L/D ・・・(2)
ここで、Lはプリズム長、Dはプリズム幅である(図3)。
【0022】
そして、例えは非特許文献1に記述されているように、温度によって電気光学定数はほぼ線形に変化することが古くから知られている。つまり、図4に示したように、偏向角は印加電圧に比例し、その比例定数rijは温度によって変化するが、変化量は一定である(傾きが変わるだけ)。したがって、予め温度による比例定数変化を測定しておけば、温度変化があっても偏向角度を正確に制御することが可能である。
【0023】
なお、光偏向器5は、歪み補正対象の撮像装置1に様々な角度から光を入射させ、その角度が測定できる構成であれば、必ずしも、上述の電気光学効果を利用した光ビーム偏向器である必要はない。また、撮像装置1には広がりのない光を入射させればよく、発光器も、レーザ発光器である必要はない。
【0024】
画像処理装置6は、CPU,RAMやROMなどのメモリ、入出力インタフェース等を備えたコンピュータ(マイクロコンピュータ等)であるが、以下に説明する機能を実現可能な専用のハードウエアを構成してもよい。
【0025】
図5は、画像処理装置6の第1の実施形態に係る機能ブロック図である。本画像処理装置6は、歪み補正量算出部110、歪み補正量格納部120、歪み補正処理部130を有する。歪み補正量算出部110と歪み補正処理部130の機能は、CPUがプログラムを実行することで実現しても、あるいはハードロジックで実現しても、あるいはハードロジックで実現しても、いずれでもよい。これは、以降の他の実施形態でも同様である。歪み補正量格納部120は、不揮発性メモリであれば、何でもよい。
【0026】
撮像装置1の歪み補正量を取得する場合、先に述べたように、レーザ発光器4と光偏向器5を用いて、撮像装置1にレーザ光を角度を変えて入射させてスポット画像データを取得する。
【0027】
歪み補正量算出部110は、撮像装置1から出力されるスポット画像データを入力すると共に、光偏向器5の印加電圧情報を入力する。そして、光偏向器5の印加電圧情報から、撮像装置1へのレーザ光の入射角度を算出し(式(1),(2)などで)、該入射角度から、撮像素子3の受光面上のレーザ光の理想結像位置を算出する。先に述べたように、レンズが歪みのない理想状態の場合、レーザ光の結像位置は、レーザ光が撮像位置1に入射する角度のみに依存する。したがって、理想結像位置は、レーザ光の入射角度から一義的に求まる。
【0028】
また、歪み補正量算出部110は、撮像装置1からのスポット画像データから、撮像素子3の受光面上のレーザ光の実際の結像位置を算出する。レーザ光のスポット像の位置算出は、撮像素子3の画素サイズに対して結像スポット径が大きい場合には、一般的に知られている重心法などを利用し、画素サイズに対して結像スポット径が小さい場合には、例えば特許文献2に記載されている手法を用いればよい。
【0029】
そして、歪み補正量算出部110は、理想結像位置と実際の結像位置との差分(歪み変化量)を計算し、撮像装置1の歪み補正量を求める。歪み補正量の算出には、従来から知られている手法を用いればよい(例えば、特許文献1など)。歪み補正量算出部110は、求まった歪み補正量を歪み補正量格納部(不揮発性メモリ)120に格納する。
【0030】
ここで、歪み補正量は、全画素の補正前と後の変換先の情報(座標)を持つルックアップテーブル(LUT)でもよいし、歪み補正量を多項式等で表わしてもよい。LUTは後述の歪み補正処理が簡単であるが、記憶容量が膨大になる。一方、歪み補正量を多項式で表わす場合は、歪み補正係数を格納すればよいため、記憶容量が少なくてすむ利点がある。
【0031】
なお、歪み補正量算出部110において、歪み変化量の算出に必要な理想結像位置は、出荷前等に工場などで予め算出して、画像処理装置6内の所望メモリに保持しておくことでもよい。その後、撮像装置1の歪み補正量を必要とした場合、レーザ発光器4と光偏向器5を用いて、撮像装置1にレーザ光を角度を変えて入射させてスポット画像データを取得する。歪み補正量算出部110では、該スポット画像データから実際の結像位置を算出し、あらかじめ保持してある理想結像位置とこの実際の結像位置との差分を計算して歪み変化量を求める。この場合には、歪み補正量算出部110では、光偏向器5の印加電圧を一々必要としない利点がある。
【0032】
通常の使用環境では、撮像装置1は被写体を撮像して、該被写体の画像データを取得する。この画像データには歪みが発生している。
【0033】
歪み補正処理部130は、撮像装置1で撮像された被写体の画像データを入力する。また、歪み補正量格納部120から歪み補正量を取り込む。そして、画像データをその歪み補正量に応じて補正して、歪み補正された画像データを出力する。LUTの場合は、LUTから変換先の情報(座標)を取得することで、簡単に歪み補正された画像データを出力することができる。多項式等を用いる場合は、多項式に歪み補正係数を代入して変換先の座標を計算し、歪み補正を実施することとなる。
【0034】
図6は、画像処理装置6の第2の実施形態に係る機能ブロック部である。撮像装置1の歪み補正量は、レンズの製造誤差や経時変化などに加え、温度が変化しても変わってくる。本実施形態では、この温度変化にも対処できるようにする。
【0035】
本画像処理装置6は、第1の実施形態と同様に、歪み補正量算出部210、歪み補正量格納部220、歪み補正量処理部230を有しているが、歪み補正量算出部210には、スポット画像データ、光偏向器5の印加電圧情報に加えて、温度情報が入力され、歪み補正処理部230にも、画像データに加えて温度情報が入力される。このため、撮像装置1は温度センサを備えているとする。
【0036】
撮像装置1の歪み補正量を取得する場合、先に述べたように、レーザ発光器4と光偏向器5を用い、撮像装置1にレーザ光を角度を変えて入射させてスポット画像データを取得するが、撮像装置1の周囲温度をいろいろ変更して、各温度毎のスポット画像データを取得するようにする。
【0037】
ここで、撮像装置1に入射するレーザ光の角度は、温度によって変化する。しかし、先に述べたように、電気光学効果を利用した光偏向器の場合、偏向角度が印加電圧に比例し、その比例定数(電気光学定数)は温度によって変化するが、変化量は一定である。したがって、予め温度による比例定数変化を測定しておけば、温度変化があっても、撮像装置1に入射するレーザ光の角度を正確に制御することができる。すなわち、温度によって印加電圧を変えるだけで、レーザ光の角度を正確に制御できる。なお、測定した温度対比例定数は、あらかじめ画像処理装置6に保持しておく。
【0038】
歪み補正量算出部210は、撮像装置1から出力されるスポット画像データ、光偏向器5の印加電圧情報、及び、その時の測定温度情報を入力する。そして、温度情報から対応する比例定数を取得して、光偏向器5の印加電圧情報と該比例定数をもとに、撮像装置1へのレーザ光の入射角度を算出し、該入射角度から、撮像素子3の受光面上のレーザ光の理想結像位置を算出する。また、スポット画像データから、撮像素子3の受光面上のレーザ光の実際の結像位置を算出する。引き続いて、この算出した理想結像位置と実際の結像位置との差分(歪み変化量)を計算し、歪み補正量を求める。
【0039】
歪み補正量算出部210では、上記の処理を各測定温度ごとに繰り返し行う。そして、各測定温度毎に、求まった歪み補正量を歪み補正量格納部220に格納する。すなわち、歪み補正量格納部220には、撮像装置1の歪み補正量がそれぞれ温度情報を付されて格納される。
【0040】
なお、本実施形態においても、理想結像位置の情報は、出荷前等に工場などで予め算出して、画像処理装置6内の所望メモリに保持しておくことでもよい。
【0041】
通常の使用環境では、撮像装置1は被写体を撮像して、該被写体の画像データを取得する。また、その時の温度を温度センサで検出する。歪み補正処理部230は、撮像装置1から被写体の画像データとその時の温度情報を入力する。そして、歪み補正量格納部220から該入力温度情報に最も近い測定温度に対応する歪み補正量を取り込み、入力された画像データを当該歪み補正量に応じて補正して、歪み補正された画像データを出力する。
【0042】
本実施形態によれば、撮像装置のレンズの製造誤差や経時変化などに加えて、温度変化によるひずみも補正される。
【0043】
なお、歪み補正処理部230では、入力された温度情報に最も近い上下2つの測定温度に対応する歪み補正量について、線型補間演算等を行い、その演算結果を用いて画像データを補正することでもよい。
【0044】
図7は、画像処理装置6の第3の実施形態に係る機能ブロック図である。これは、歪み補正量算出部310を歪み変化量算出部311と歪み変化量補正処理部312に分けたものである。以下では、特に歪み変化量補正処理部312について説明する。歪み変化量算出部311では、これまでと同様に、理想結像位置と実際の結像位置都の差分(歪み変化量)を計算する。
【0045】
図1において、撮像装置1の基準面と光偏向器5の光出射面が平行で、入射角ゼロのときに光偏向器5のレーザ光が撮像装置1の基準面に対して垂直である場合には、歪み変化量算出部310で求まった歪み変化量=歪み補正量と見做すことができる。しかし、光偏向器5のレーザ光が撮像装置1の基準面に対して垂直でない場合には、歪み変化量算出部310で求まった歪み変化量は、そのまま撮像装置1の歪み補正量とはならない。すなわち、撮像装置1の基準面と光偏向器5の光出射面が相対的に傾いていると、レーザ光の結像位置は変化する。その結果、歪み変化量算出部310で求まった歪み変化量には、撮像装置1の本来の歪みと傾き分が加わることになる。
【0046】
歪み変化量補正処理部312は、歪み変化量算出部310で求まった歪み変化量について、撮像装置1と光偏向器5の傾き分だけ差し引いて、撮像装置1の本来の歪み補正量を求め、該歪み補正量を歪み補正量格納部120に格納する。撮像装置1の基準面と光偏向器5の出射面の傾きは、レーザオートコリメータなどで測定しておけばよい。この傾きが分かれば、傾き分の結像位置ずれ量を計算することができる。
【0047】
図8は、光偏向器5が撮像装置1に対してX軸方向に傾いて設置された時の結像位置の変化を示した図である。また、図9は、光偏向器5が撮像装置1に対してY軸方向に傾いて設置された時の結像位置の変化を示した図である。図8、図9において、右側の結像位置変化は、入射角度ゼロの時に光軸と一致している設置位置ずれのない状態の時の結像位置を始点、設置位置ずれのある場合の結像位置を終点としている。
【0048】
図8、図9から分かるように、キャリブレーションデータ測定時(レーザスポット画像データ取得時)、撮像装置1と光偏向器5の設置位置がずれた場合、結像位置は理想状態と比較すると変化するが、そのずれは直線的に変化する。レーザ光の初期位置がX軸方向、Y軸方向の両方にずれた場合にも直線的に変化する。したがって、撮像装置1の基準面と光偏向器5の出射面の傾きから、傾き分の結像位置ずれ量を計算でき、このずれ量を歪み変化量から差し引くことで、撮像装置1自体の歪み補正量を正確に得ることができる。
【0049】
図10は、画像処理装置6の第4の実施形態に係る機能ブロック図である。また、図11は本実施形態に関連して用いられる撮像装置の構成例を示したものである。
【0050】
図10において、410は撮像装置1に入射するレーザ光の振れ角が正常かどうか判断する光ビーム偏向判断部で、これ以外の構成は先の図5と同様である。なお、光ビーム偏向判断部410は、図6や図7の構成に追加することでもよい。
【0051】
図1で説明したように、光偏向器5によって撮像装置1に入射するレーザ光の角度を変更してスポット画像データ(キャリブレーション画像データ)を取得する場合、レーザ光の結像位置は撮像装置1への入射角度に依存する。そのため、光偏向器5からのレーザ光の偏向角度(カメラへの入射角度)を高精度に制御および把握する必要がある。特に、本発明では、レーザ光の結像位置の理想結像位置からのずれ量から歪み補正量を計算するため、偏向角の高い再現精度が求められる。
【0052】
そこで、本実施形態では、図11に示したように、撮像装置1のレンズ2の両端に一対の受光素子11,12を設けて、光偏向器5から撮像装置1に入射するレーザ光を受光素子11,12で受光させる。図10の光ビーム偏向判断部410は、受光素子11,12のレーザ光検出信号を入力して、撮像装置1に入射するレーザ光のふれ角が正常かどうか判断する。例えば、受光素子11,12が両方とも検出信号を出力していれば、レーザ光のふれ角は正常として、受光素子11,12のいずれか一方あるいは両方とも検出信号を出力していなければ、レーザ光のふれ角は異常と判断する。レーザ光のふれ角が異常と判断した場合、画像処理装置6は、それを表示装置7に表示したり、あるいは特定音などを出力するなどして使用者に警告する。
【0053】
なお、受光素子11,12の設置位置が温度によって変化しないように、該受光素子11,12を撮像装置1の基線長方向に設置し、熱による膨張は基線方向に動くように設計するなどの工夫をすればよい。また、例えば、受光素子11,12を複数領域に分割した構造とすれば、レーザ光の結像位置によって撮像装置1に対する光ビーム偏向器の傾き量なども測定することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 撮像装置
2 レンズ
3 撮像素子
4 レーザ発光器
5 光偏向器
6 画像処理装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2003−254748号
【特許文献2】特開2002−202221号
【非特許文献】
【0056】
【非特許文献1】論文‘J.D.Zook,Appl.Phys.Letters,volumell Number5,1 September 1967’

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置の歪み補正量を取得する歪み補正量取得装置であって、
広がりのない光を出力する発光器と、
前記発光器から出力される光を偏向し、角度を変えて撮像装置に入射させる光偏向器と、
前記光偏向器によって角度を変えて前記撮像装置に光を入射して得られる該光の実際の結像位置と、前記撮像装置に歪みがないと仮定して、該撮像装置に前記角度を変えて光を入射したときに得られる該光の理想結像位置との差分(以下、歪み変化量)を算出し、該歪み変化量から当該撮像装置の歪み補正量を求める歪み補正量算出部と、
を有することを特徴とする歪み補正量取得装置。
【請求項2】
前記発光器はレーザ発光器であり、前記光偏向器は、前記レーザ発光器が出力するレーザ光を電気光学効果を利用して偏向することを特徴とする請求項1記載の歪み補正量取得装置。
【請求項3】
前記歪み補正量算出部は、前記光偏向器の印加電圧から前記撮像装置へのレーザ光の入射角度を算出し、該入射角度から理想結像位置を算出することを特徴とする請求項2記載の歪み補正量取得装置。
【請求項4】
前記撮像装置の周囲温度を変化させて、前記光偏向器によって角度を変えて前記撮像装置に光を入射して、該光の実際の結像位置を複数取得し、
前記歪み補正量算出部は、前記撮像装置の周囲温度毎に、前記実際の結像位置と前記理想結像位置との差分を算出して歪み補正量を求めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の歪み補正量取得装置。
【請求項5】
前記歪み補正量算出部は、前記撮像装置と前記光偏向器の相対的傾きによって発生する結像位置ずれを算出し、前記歪み変化量から該結像位置ずれ分を差し引いて歪み補正量を求めることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の歪み補正量取得装置。
【請求項6】
前記撮像装置はレンズの両端に、前記光偏向器によって所定角度偏向された光を受光する受光素子を有すると共に、
前記受光素子の光検出信号によって光偏向状態を判断する光偏向判断部を更に有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の歪み補正量取得装置。
【請求項7】
撮像装置の歪み補正量を取得する歪み補正量取得方法であって、
広がりのない光を出力する発光器と、前記発光器から出力される光を偏向し、角度で変えて撮像装置に入射させる光偏向器を用い、
前記光偏向器によって角度を変えて前記撮像装置に光を入射して得られる該光の実際の結像位置と、前記撮像装置に歪みがないと仮定して、該撮像装置に前記角度を変えて光を入射したときに得られる該光の理想結像位置との差分(以下、歪み変化量)を算出し、該歪み変化量から当該撮像装置の歪み補正量を求めることを特徴とする歪み補正量取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−66014(P2013−66014A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202902(P2011−202902)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】