説明

歯牙白色化用非水系ゲル組成物及び歯牙美白用セット

(A)比誘電率(25℃)が17.0〜43.0、且つ蒸気圧(25℃)が0〜7000kPaである歯牙白色化成分、
(B)歯牙白色化成分に溶解し、且つ塩化カルシウム水溶液により析出する物質、及び
(C)ゲル化剤
を含有し、実質的に水及び過酸化物を含まない歯牙白色化用非水系ゲル組成物。本発明によれば、歯牙白色化成分が歯のエナメル質表層に浸透し、エナメル質の屈折率、反射率等の光学特性を変化させて見かけ上エナメル質を白く見えるようにすることができ、且つ水の存在下で可逆的に元の歯の色に戻すことができる。しかも、可逆的な白色化効果の持続性を大幅に向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯を元の色よりも白くし、且つ白色化効果を持続させるための組成物に関する。更に詳述すると、歯牙白色化成分を歯のエナメル質に浸透させてエナメル質中の水分と置換させることで、漂白等の化学反応を伴わずにエナメル質部分の光学特性(屈折率、反射率など)を変化させて、見かけ上歯を白くし、且つこの白色化効果の持続性を向上させた歯牙白色化用非水系ゲル組成物及び歯牙美白用セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯を白くするための技術は、(i)歯に付着した着色物質を取り除き、元の歯の白さを取り戻す技術と、(ii)歯を元の色より更に白くする技術に大別される。(i)の方法としては、歯磨剤、歯ブラシを用い、歯磨剤に含まれる研磨成分でブラッシングすることによる物理的な除去方法や、ポリエチレングリコ−ル、ポリビニルピロリドン等の可溶化剤、酵素、キレート剤等による着色物の分解等の化学的な方法が用いられ、(ii)の方法としては、欧米で多用される過酸化物を使った漂白や、歯のマニキュア剤などに代表される隠蔽剤の塗布、あるいはラミネートベニア等の歯科材料が使われてきた。
【0003】
近年、口腔衛生意識と審美願望の向上を受けて、歯の美白に対するニーズは、(i)の「清掃」から(ii)の「白色化」に移行しつつある。しかしながら、過酸化物での漂白は、歯肉の炎症、退縮のおそれがあり、専門知識のない消費者が勝手に使用することは非常に危険である。一方、マニキュア等の塗布剤は、出来上がりが不自然な色調となるうえに、飲食等により剥離するため持続性に欠ける。また、ラミネートベニアによる方法は、歯科医しか行うことができず、しかも健全な歯の表面を削る必要があり、患者が結果に対して不満足であっても、術後元の歯に戻すことができなかった。
【0004】
以上のことから、「白色化」の分野において、審美性が良く、且つ簡便で安全性が高い、つまり過酸化物を用いない、また、容易に元の色に戻すことができる歯牙白色化技術の開発が望まれてきた。
【0005】
なお、従来の可逆的な白色化技術としては、シェラック、酢酸ビニル樹脂やアクリル系樹脂の皮膜形成能を活用したマニキュア等の塗布剤が提案されているが(特許文献1〜5:特開平04−82821号、特開平05−58844号、特開平09−100215号、特開平09−202718号、特開平09−151123号公報)、満足のいく色調が得られておらず、持続性にも課題があるのが実状である。
【0006】
また、本発明者は以前に、漂白等の化学反応を伴わない白色化方法として、エナメル質部分の光学特性を変化させて一時的に見かけ上歯を白くする方法を提案した(特許文献6:国際公開第03/030851号パンフレット)。この方法は、数分の処置で歯が白くなったことを実感できる一方で、その白色化効果の持続時間が短い場合があることに課題があった。
【特許文献1】特開平04−82821号公報
【特許文献2】特開平05−58844号公報
【特許文献3】特開平09−100215号公報
【特許文献4】特開平09−202718号公報
【特許文献5】特開平09−151123号公報
【特許文献6】国際公開第03/030851号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、過酸化物を用いることなくエナメル質部分の光学特性を変化させて見かけ上歯を白く見せることができ、且つ水の存在下で可逆性のある歯の白色化方法において、歯牙白色化効果の持続性が大幅に向上した歯牙白色化用非水系ゲル組成物及び歯牙美白用セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、歯牙の白色化方法として、歯牙白色化成分が歯のエナメル質に浸透してエナメル質中の水分と置換し、漂白等の化学反応を伴わずにエナメル質部分の光学特性(屈折率、反射率など)を変化させて、見かけ上歯を白くする方法につき鋭意検討を行った結果、歯牙白色化成分に溶解し、且つ塩化カルシウム水溶液により析出する物質(以下、白色化持続性向上成分又は(B)成分と記載する)、例えば炭素数14〜22の高級脂肪酸やアクリル酸共重合体が、エナメル質に浸透した歯牙白色化成分のエナメル質からの溶出を抑制することを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、
(A)比誘電率(25℃)が17.0〜43.0であり、且つ蒸気圧(25℃)が0〜7000kPaである歯牙白色化成分、
(B)歯牙白色化成分に溶解し、且つ塩化カルシウム水溶液により析出する物質、及び
(C)ゲル化剤
を含有し、実質的に水及び過酸化物を含まない歯牙白色化用非水系ゲル組成物を提供する。
【0010】
この場合、上記(A)成分としては、歯牙白色化成分(A)が、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、平均分子量190〜630のポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、また(B)成分としては、炭素数14〜22である高級脂肪酸、アクリル酸共重合体の中から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、上記歯牙白色化成分を、歯のエナメル質表層から内部に浸透、滞留させることで、過酸化物を用いることなく、エナメル質部分の光学特性を変化させて見かけ上歯を元の色よりも白く見せることができ、且つ水の存在下で可逆性のある歯の白色化技術を提供することができる。更には、白色化効果の持続性を向上させることもできる。ここで、エナメル質部分の光学特性の変化とは、屈折率又は反射率の変化であり得る。
【0012】
また、本発明は、上記歯牙白色化用非水系ゲル組成物と、この歯牙白色化用非水系ゲル組成物を保持すると共に、この歯牙白色化用非水系ゲル組成物を保持した状態で、歯に着脱可能に装着される適用用具を備えたことを特徴とする歯牙美白用セットを提供する。この場合、適用用具としては、水不溶性の素材で作製されたテープ、シート、フィルム、マウストレー、マウスピース、スポンジ、印象材、パック材、歯列に成型した歯のカバーが挙げられる。
なお、上記歯の白色化方法の実施に、上記適用用具を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、歯牙白色化成分が歯のエナメル質表層に浸透し、エナメル質の屈折率、反射率等の光学特性を変化させて見かけ上エナメル質を白く見えるようにすることができ、且つ水の存在下で可逆的に元の歯の色に戻すことができる。しかも、可逆的な白色化効果の持続性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の歯牙白色化用非水系ゲル組成物の(A)成分は、歯牙白色化成分であり、本発明に用いられる歯牙白色化成分は、比誘電率(25℃)が17.0〜43.0、且つ蒸気圧(25℃)が0〜7000kPaであり、好ましくは比誘電率(25℃)が30.0〜43.0、且つ蒸気圧が0〜700kPaである。比誘電率が17.0未満の場合には、水との相溶性が悪くエナメル質への浸透性が低下し、十分な白色化効果を得ることができない場合がある。比誘電率が43.0を超える場合には、エナメル質中の水分と置換してもエナメル質部分の光学特性に変化を与えるには不十分な場合がある。また、蒸気圧が7000kPa超の場合には、歯牙へのゲル適用時に歯牙白色化成分が揮発してしまい、十分な白色化効果が得られない場合がある。なお、蒸気圧の下限は特に制限されないが、通常0kPa以上である。
【0015】
上記歯牙白色化成分としては、例えば、イソプロパノール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、平均分子量190〜630のポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ブタノール、グリセリン等が挙げられ、好ましくは1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、平均分子量190〜630のポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールであり、更に好ましくは平均分子量190〜630のポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンである。
【0016】
なお、平均分子量は化粧品原料基準(第2版注解)記載の平均分子量を示し、ポリエチレングリコール200(平均分子量190〜210)、ポリエチレングリコール300(平均分子量280〜320)、ポリエチレングリコール400(平均分子量380〜420)及びポリエチレングリコール600(平均分子量570〜630)が該当する。商品によっては、例えばポリエチレングリコール#200等のように、ポリエチレングリコールと数値の間に#がつく場合がある。
【0017】
本発明の歯牙白色化用非水系ゲル組成物は、歯牙に適用する際の操作性の改良等を目的に歯牙白色化成分以外の液体成分(エタノール等)を0〜20質量%配合することができる。本発明に用いられる歯牙白色化成分は、(歯牙白色化成分/その他エタノール等の液体成分)の比を質量比として(60/40)〜(100/0)で用いることが好ましく、更に好ましくは(75/25)〜(100/0)である。質量比が(60/40)未満では十分な歯牙白色化効果が得られない場合が生じる。
【0018】
本発明の歯牙白色化用非水系ゲル組成物は、上記歯牙白色化成分を含むものであるが、この場合、歯牙白色化成分の配合量は、歯牙白色化用非水系ゲル組成物から歯牙白色化成分が溶出すれば特に制限されないが、好ましくは組成物全体の50.0〜99.5%(質量百分率、以下同じ)、特に60.0〜99.0%である。
【0019】
本発明の組成物において、(B)成分は、歯牙白色化成分(A)に溶解し、且つ塩化カルシウム水溶液により析出する物質(白色化持続性向上成分)である。
【0020】
ここで、本発明中で述べる“歯牙白色化成分に溶解する”とは、37℃の歯牙白色化成分100gに0.1g以上溶解する物質を指す。一方、“塩化カルシウム水溶液により析出する”とは、37℃の1mmol/L塩化カルシウム水溶液100gに0.1g未満しか溶解しない物質を指す。また、(B)成分は常温常圧で固体のものだけでなく液体でも良い。液体の場合の“歯牙白色化成分に溶解する”とは、上記と同様の操作を行った時に相分離が見られないことである。一方、“塩化カルシウム水溶液により析出する”とは沈殿が生成する、又は白濁することである。なお、塩化カルシウム水溶液に対する(B)成分の溶解性評価に用いた塩化カルシウム水溶液の濃度は、唾液中のカルシウムイオン濃度に近い濃度である1mmol/L塩化カルシウム水溶液に設定した。
【0021】
(B)成分の溶解性評価法は、歯牙白色化成分(A)100gに(B)成分0.1gを添加し、37℃で16時間撹拌後、更に37℃で24時間静置した時の(B)成分の溶け残りの有無を目視で判定するものである。同様の方法で1mmol/L塩化カルシウム水溶液100gへ(B)成分0.1gを添加した時の溶解性も評価できる。
【0022】
本発明の(B)成分は、歯のエナメル質に浸透した歯牙白色化成分の歯牙からの溶出を抑制することで、歯牙白色化効果の持続性を向上させている。また、歯牙への適用時に歯牙に接している面以外のゲル表面では、唾液との接触で(B)成分が析出し、歯牙白色化用非水系ゲル組成物が口腔全体へ溶け出すことを抑制する役割も果している。
【0023】
上記(B)成分としては、炭素数が14〜22である高級脂肪酸及び/又はアクリル酸共重合体が好ましい。この場合、高級脂肪酸としては、歯牙白色化成分に溶解し、且つ塩化カルシウム水溶液により析出する、炭素数14〜22の直鎖、分岐又は環状構造を有するものが好適であり、任意の炭素にヒドロキシル基を有するヒドロキシ高級脂肪酸も含まれる。これら高級脂肪酸の中から選ばれる2種以上が、エステル又はラクトン結合した物質を用いることも可能である。アクリル酸共重合体は、アクリル酸だけでなくメタクリル酸を包含し、そのカルボキシル基は酸型、アルキルエステル型、アンモニウムアルキルエステル型、アミド型であり得る。これら白色化持続性向上成分は1種又は2種以上を併用して用いることも可能である。
【0024】
更に詳述すると、本発明に用いられる高級脂肪酸は、歯牙白色化成分に溶解し、且つ塩化カルシウム水溶液により析出する必要があり、直鎖、分岐又は環状構造を有するものが含まれる。高級脂肪酸の炭素数は好ましくは14〜22であり、更に好ましくは15〜18である。不飽和結合の数、種類及び幾何異性体は特に制限されないが、二重結合を0〜3個有するものが好ましい。分岐鎖についても特に制限されないが、炭素が1つ分岐したものが好ましい。環状構造を有する場合には、三環式構造が好ましく、更に好ましくは下記式(1)の構造を有するものである。高級脂肪酸にはヒドロキシ高級脂肪酸も含まれる。ヒドロキシル基の結合位置、数は特に制限されないが0〜3個有するものが好ましい。
【0025】
【化1】

【0026】
本発明に用いられる高級脂肪酸は併用することも可能である。また、高級脂肪酸の中から選ばれる2種以上が、エステル又はラクトン結合したものも好適に用いられる。三環式構造を有する高級脂肪酸と、その他の高級脂肪酸が結合した場合の(三環式以外の高級脂肪酸/三環式高級脂肪酸)の結合比は特に制限されないが、質量比として(10/90)〜(90/10)が好ましく、更に好ましくは(30/70)〜(70/30)である。そのような成分としてシェラックが挙げられる。
【0027】
日本シェラック工業(株)のカタログ及び「科学と工業Vol.51」p356〜361によれば、シェラックはラックカイガラ虫が分泌する樹脂であって、その成分はヒドロキシカルボン酸がエステル又はラクトン結合により縮合したものと考えられている。シェラック樹脂を加水分解して構造解析した結果によると、シェラック樹脂分の約40%は、9,10,16−トリヒドロキシパルミチン酸、約40%がシェロール酸及びその誘導体である。
【0028】
これらの高級脂肪酸を例示すると、ミリスチン酸、7−ヒドロキシミリスチン酸、シェロール酸、9,10,16−トリヒドロキシパルミチン酸、パルミトレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、シェラックが挙げられ、中でもシェロール酸、9,10,16−トリヒドロキシパルミチン酸、パルミトレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シェラックが好ましく、更に好ましくはシェロール酸、イソステアリン酸、シェラックである。
【0029】
本発明に用いられるアクリル酸共重合体は、アクリル酸又はメタクリル酸の酸型、アミド型、アルキルエステル型、アンモニウムアルキルエステル型のモノマーが2種以上共重合したものである。ここでアルキルは炭素数1〜4のものが好ましい。例えば、アクリル酸t−Bu/アクリル酸エチル/メタクリル酸共重合体、アクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体、アクリル酸/アクリル酸アミド/アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体、アクリル酸オクチルアミド/アクリル酸エステル共重合体が挙げられ、特にアクリル酸t−Bu/アクリル酸エチル/メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体、アクリル酸/アクリル酸アミド/アクリル酸エチル共重合体、アクリル酸オクチルアミド/アクリル酸エステル共重合体が好適に用いられる。重量平均分子量(ゲルろ過法により測定、溶媒THF、標準物質ポリスチレン)は特に制限されないが、好ましくは5万〜200万であり、更に好ましくは10万〜100万である。
【0030】
本発明の歯牙白色化用非水系ゲル組成物は、歯牙白色化用非水系ゲル組成物を歯の表面に保持することにより、歯牙白色化成分がエナメル質の内部に浸透して、エナメル質結晶中の水分と置換し、エナメル質部分の光学特性(屈折率、反射率など)を変化させることで、見かけ上エナメル質が白濁して白く見えるものである。従って、化学反応を伴わない、安全性の高いものである。また、処置後、数時間で唾液等によりエナメル質内部に浸透していた歯牙白色化成分が再び徐々に水に置換されることで、元の歯の色に戻る可逆的な白色化方法であるが、歯牙白色化成分に溶解した高級脂肪酸、アクリル酸共重合体等の白色化持続性向上成分が、唾液に接触して析出し、歯牙白色化成分の溶出を阻害して元の歯の色に戻ることを抑制している。
【0031】
本発明に用いられる白色化持続性向上成分の配合量は特に制限されないが、好ましくは組成物全体の0.1〜10%であり、特に0.1〜5%である。配合量が0.1%未満の場合には、歯牙白色化成分のエナメル質からの溶出を十分に抑制することができず、白色化持続性向上効果を発揮できない場合がある。配合量が10%を超える場合には、歯牙への適用と同時にエナメル質表面で白色化持続性向上成分が多量に析出してしまい、歯牙白色化成分の浸透を阻害し、十分な白色化効果を示さない場合がある。
【0032】
本発明の歯牙白色化用非水系ゲル組成物は、上記歯牙白色化成分及び白色化持続性向上成分に加え、更にその有効性を最大限に引き出すために、歯牙への塗布性や粘着性を高め、唾液混入による歯牙白色化用非水系ゲル組成物の希釈を防ぎ、且つ歯牙白色化用非水系ゲル組成物の口腔全体への溶け出しを防ぐゲル化剤をその形態に応じて配合する。
【0033】
本発明に用いられるゲル化剤は特に制限されないが、アクリル酸のホモポリマーであるポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩が好適に用いられ、更に好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩であり、これらの中から選ばれる1種又は2種以上を配合し得る。
【0034】
本発明に用いられるポリアクリル酸は特に制限されないが、以下の条件A〜Cのうち少なくとも一つに該当する粘度(25℃)を有するものが好ましく、更に好ましくは条件A又はBに該当するものである。
条件A:10%水溶液をBH型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.7使用、回転数20rpm、測定時間90秒)を用いて測定した時に50000〜110000mPa・sであるもの。この条件に該当する製品としては、粘度が70000〜110000mPa・sであるジュリマーAC−10SH(日本純薬(株)製)等が挙げられる。
条件B:20%水溶液をBM型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.4使用、回転数12rpm、測定時間90秒)を用いて測定した時に10000〜50000mPa・sであるもの。この条件に該当する製品としては、粘度が20000〜40000mPa・sであるジュリマーAC−10H(日本純薬(株)製)等が挙げられる。
条件C:40%水溶液をBM型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.3使用、回転数30rpm、測定時間90秒)を用いて測定した時に1000〜4000mPa・sであるもの。この条件に該当する製品としては、粘度が1000〜2000mPa・sであるジュリマーAC−10L(日本純薬(株)製)等が挙げられる。
【0035】
本発明に用いられるカルボキシビニルポリマーは特に制限されないが、水酸化ナトリウムで中和した0.2%水溶液の粘度(25℃)が、BH型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.3〜7、回転数20rpm、測定時間2分)で測定した時に2000〜100000mPa・sであるものが好ましい。これらに該当する製品としてカーボポール934,940,941(B.F.Goodrich社製)、ハイビスワコー103,104,105,204,304(和光純薬工業(株)製)、ジュンロンPW110,111(日本純薬(株)製)等が挙げられる。
【0036】
カルボキシビニルポリマーは必要により塩基性物質で中和するが、その中和度でゲル性状を調整できる。中和に使用する物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基やトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどを用いることができる。
【0037】
本発明に用いられるヒドロキシプロピルセルロースは特に制限されないが、2%水溶液の粘度(20℃)が単一円筒形回転粘度計((株)トキメック製TVB−20L型、ローターNo.L、M2又はM4を使用、回転数60rpm、測定時間4分)で測定した時に6〜4000mPa・sであるものが好ましく、例えば、HPC−L、HPC−M、HPC−H(いずれも日本曹達(株)製)が挙げられ、さらに好ましくは150〜4000mPa・sであり、HPC−M、HPC−Hが挙げられる。
【0038】
本発明に用いられるカルボキシメチルセルロース及びその塩は特に制限されないが、1%水溶液の粘度(25℃)が、BL型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.1〜4、回転速度60rpm、測定時間2分)で測定した時、10〜4000mPa・sであり、且つ化粧品原料基準注解第一版に記載の非水滴定法により測定した時のエーテル化度が0.6〜1.5であるものが好ましく、例えば、品番1120、1150、1190、1220、1270、1310、1390(いずれもダイセル化学工業(株)製)が挙げられる。更に好ましくは粘度が10〜300mPa・sであり、且つエーテル化度0.6〜1.0であり、例えば、品番1120、1150、1220、1270が挙げられる。
【0039】
上記ゲル化剤の配合量は、特に併用する用具がテープ、シート、フィルムや歯列カバーの場合には、歯牙白色化用非水系ゲル組成物の固定力だけで歯牙に付着、固定する必要があるため、組成物全体の0.1〜15%が好適であり、特に0.5〜12%が望ましい。配合量が0.1%未満の場合には、粘着力が発揮されなかったり、唾液の混入による白色化効果の低減、ゲルの溶け出しによる口中の粘つき等の違和感につながる場合がある。配合量が15%を超える場合には、ゲル化剤が十分に溶けきらずに製剤が不均一になるだけでなく、歯牙白色化成分の溶出を阻害する場合がある。
【0040】
本発明の歯牙白色化用非水系ゲル組成物の固さは以下の方法で測定した値である。円筒状の容器(直径36mm、深さ18mm)の最上部までゲルを充填し、進入速度20mm/分でプランジャー(直径20mm)を深さ10mmまでゲルに進入させた時の最大応力をレオメーター(サン科学製、SUN RHEO METER CR−200D)によって測定した。なお、測定温度は25℃である。本発明の歯牙白色化用非水系ゲル組成物の固さは特に制限されないが、併用する用具に応じて0.001〜10kgに調整することが好ましく、更に好ましくは0.005〜1kgである。固さが0.001kg未満の歯牙白色化用非水系ゲル組成物は、テープ、シート、フィルムや歯列カバーと併用しても歯牙上に歯牙白色化用非水系ゲル組成物を付着・固定させることができず、またマウスピースを用いても、口中全体へゲルが溶出し、使用感が悪くなる場合がある。一方、10kgを超える固さの場合には、歯牙白色化成分が十分に溶出せず、白色化効果が発揮されない場合がある。
【0041】
本発明の歯牙白色化用非水系ゲル組成物には、更に必要に応じて適宜、他の成分を配合することできる。
【0042】
例えば、溶解、乳化、分散などの目的で、界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤や両性イオン界面活性剤の1種又は2種以上を組成物全体の0.05〜5%、更に好ましくはその配合効果の点から0.05〜3%を配合することができる。
【0043】
この場合、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウムなどのN−アシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウムなどのN−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルPOE硫酸ナトリウム、ラウリルPOE酢酸ナトリウム、ラウリルPOEリン酸ナトリウム、ステアリルPOEリン酸ナトリウム等が用いられる。
【0044】
ノニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリル、ラウリン酸デカグリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミドなどの脂肪酸エタノ−ルアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が用いられる。
【0045】
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が用いられる。
【0046】
更に、本発明においては、有効成分として、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素、スーパーオキサイドディスムターゼなどの酵素、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどの水溶性ポリリン酸塩、アラントイン、ジヒドロコレスタノール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン酸、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸、ビサボロール、イソプロピルメチルフェノール、塩化ナトリウム、トリクロサン、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、アスコルビン酸及びその塩類、トコフェロール、オウゴン、オオバク、ローズマリー、チョウジ、タイムなどの生薬抽出物等の有効成分の1種又は2種以上を配合し得る。
【0047】
本発明の歯牙白色化用非水系ゲル組成物には、更に、アネトール、カルボン、ペパーミント油、スペアミント油などの香料、安息香酸及びそのナトリウム塩、パラベン類などの防腐剤、赤色3号、赤色104号、黄色4号、青色1号、緑色3号、雲母チタン、弁柄などの色素又は着色剤、サッカリン及びそのナトリウム塩、ステビオサイド、グリチルリチン、アスパルテームなどの甘味剤等を配合し得る。
【0048】
歯牙白色化用非水系ゲル組成物のpHは、口腔内及び人体に安全性上問題ない範囲であれば、特に限定されるものではないが、望ましくは歯牙白色化用非水系ゲル組成物を精製水で10倍希釈した時の水相のpHが4.0〜10.0であり、更に望ましくは5.5〜9.0である。pH4.0未満の場合には適用時間によっては脱灰の懸念があり、pH10.0を超える場合には味が悪くなる懸念がある。pH調整剤として、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等を配合し得る。
【0049】
なお、本発明者は既に国際公開第03/030851号パンフレットにおいて、歯牙白色化用組成物中の液成分の屈折率がアッベ屈折率(Na−D線、20℃)で測定した時、その屈折率が1.35〜1.50であり、白色化成分/水の比が質量比として(30/70)以上であることが好ましいことを開示しているが、本発明に用いられる歯牙白色化用非水系ゲル組成物は、実質的に水を含まないものであって、非水系ゲルに水を加えたり、唾液等によって組成物が希釈された場合には、白色化効果が大幅に低減する。
【0050】
本発明の歯牙白色化用非水系ゲル組成物は、実質的に水を含まないものであるが、歯牙白色化用非水系ゲル組成物のpH調整、原料等の吸湿による水分の持ち込み、歯牙白色化用非水系ゲル組成物自体の吸湿等によって水分を微量含有する場合がある。これらの理由を考慮した上で、ここで述べる「実質的に水を含まない」とは、組成物中の水分量が組成物全体の5%以下、好ましくは3%以下である。
【0051】
本発明の歯牙白色化用非水系ゲル組成物は、液状、ペースト状、ゲル状、泡状の剤型として調製し、歯への保持・固定専用の適用用具と併せて適用されることで更に効果が高まる。
【0052】
このように、上記歯牙白色化用非水系ゲル組成物は、歯牙への保持・固定専用の適用用具と併せて適用することが好ましいが、本発明の歯牙白色化用非水系ゲル組成物と併用して使用される歯牙への保持・固定専用の適用用具は、歯牙白色化用非水系ゲル組成物の歯牙への確実な適用、固定を補助すると共に、使用中の歯牙白色化用非水系ゲル組成物の歯肉、舌及び口腔粘膜への溶出を抑え、不快な使用感や唾液の誘発を防ぎ、更に唾液の侵入や咬合、咀嚼、その他物理的な刺激による歯牙白色化用非水系ゲル組成物の希釈や歯牙からの離脱を防ぐ目的で使用される。用具の素材及び形状については、上記目的を達成できるものであれば特に限定されないが、水不溶性の素材で作られたテープ、シート、フィルム、マウストレー、マウスピース、スポンジ、印象材、パック材、歯列に成型した歯のカバーが好適に用いられる。他には、歯列に成型した歯牙接触面に多数の突起物を有するチューイングブラシが挙げられる。
【0053】
上記適用用具の厚みは、口腔着用時に違和感のない0.01〜5mmが好ましく、特にテープ、シート、フィルムについては、0.01〜2mmが望ましい。
【0054】
上記用具の素材については、口腔適用時のフィット感に優れ、唾液の発生を抑えることで製剤の長時間適用を可能にするポリエチレン、発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン、パルプ、綿、絹、紙、金属箔等の1種又は2種以上を用いるのが好ましく、特にポリエチレン、発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨンが良い。更に、口腔粘膜及び舌と接する側の材質に親水性、吸水性の高い素材、例えばレーヨン、パルプ、綿、絹、紙等を使った織布又は不織布を用いることによって唾液を吸収・保持できるため、使用感に優れており好ましい。この場合、歯牙白色化用非水系ゲル組成物を保持する側に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン等の水不透過性フィルムを組み合わせることで、歯牙白色化用非水系ゲル組成物の適用用具への吸着、浸透を防ぐこともできる。
【0055】
一方、シリコーンゴム、天然ゴム等の可塑性樹脂及び酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂からなるマウストレー、マウスピース、チューイングブラシは、変形の自由度が高く、使用者の歯列、歯型にフィットさせやすいため、密着性、固定性に優れており、より長時間の歯牙白色化用非水系ゲル組成物の歯牙への適用を目的とする場合に適している。
【0056】
更に、粘度が低く歯牙への粘着性の弱い歯牙白色化用非水系ゲル組成物を併用する場合には、歯牙白色化用非水系ゲル組成物を含浸させたスポンジや、レーヨン、綿、パルプ等の吸水性樹脂を歯のカバー、マウストレー等の内側に敷き詰め、これを咬み続けることで、適量の歯牙白色化用非水系ゲル組成物を歯牙に適用することもできる。
【0057】
なお、適用回数、時間等は適宜選定されるが、通常、1日1〜6回、特に1〜3回で、1回1〜120分、特に1〜60分であるが、就寝中に適用することも可能である。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、各例中の%はいずれも質量%である。また、以下の実施例で用いられている歯牙白色化成分は全て比誘電率(25℃)が17.0〜43.0であり、且つ蒸気圧(25℃)が0〜7000kPaであった。t−Buはtert−ブチル基を示す。
<比誘電率測定法>
25℃にてLCRメーター(HEWLETT PACKARD社製HP4284A,液体測定電極HP16452A)を用いて測定した。サンプル量は100mL、測定周波数100kHz、印加電圧1Vで行った。
<蒸気圧測定法>
気液平衡自動測定装置((株)東洋高圧製、VLEオートラボ)を用いて測定した。測定サンプルをセルに80mL入れ、一定温度(25℃)下で蒸気圧を測定した。
【0059】
<白色化持続性向上成分(B)の溶解性評価法>
歯牙白色化成分(A)100gに(B)成分0.1gを添加し、37℃で16時間撹拌後、更に37℃で24時間静置した時の(B)成分の溶け残りの有無を目視で判定した。
同様の方法で1mmol/L塩化カルシウム水溶液100gへ(B)成分0.1gを添加した時の溶解性を判定した。結果は表1及び2の通りであった。
溶解性の評価基準 ○:溶解性0.1g以上(溶け残りなし)
×:溶解性0.1g未満(溶け残りあり)
総合評価基準 ○:歯牙白色化成分(A)100gに0.1g以上溶解し、且つ1
mmol/L塩化カルシウム水溶液に0.1g未満しか溶解し
ない物質
×:上記以外の物質
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
〔実施例1〜11、比較例1〜6〕
<歯牙白色化用非水系ゲル組成物の調製>
香料を除く全原料を秤量した後、8.0kPaまで減圧し、約80℃で混合した。所定時間経過後、20〜40℃で香料を加え、減圧下で混合して製剤を調製した。なお、pHは精製水で10倍(w/w)希釈した時の25℃におけるpHが4.0〜10.0になるように水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いて調整した。
<歯牙白色化効果の持続性評価法>
予め色差(L*0、a*0、b*0)を測定したヒト抜去歯の上に、表3,4に示す組成のゲル組成物1.0gを塗布したポリウレタンフィルム(20mm×20mm×厚さ50μm、シーダム(株)製、商品グレード;DUS2124−CDB)をのせ、37℃で1時間恒温槽中に静置後、ポリウレタンフィルムを剥がし、ゲルをティッシュで拭き取って軽く水洗した後、人工唾液中に移した。人工唾液中に3時間浸漬後、色差(L*1、a*1、b*1)を測定して下記式より△Eを求め、歯牙白色化効果の持続性として評価した。色差は分光測色計(ミノルタ(株)製、CM−2022)を用いて測定した。結果は表3,4の通りであった。
△E=((L*1−L*0)2+(a*1−a*0)2+(b*1−b*0)21/2
評価基準 ◎:△E≧4.0
○:3.0≦△E<4.0
×:△E<3.0
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
上記の実験によって、比誘電率(25℃)が17.0〜43.0、且つ蒸気圧(25℃)が0〜7000kPaの歯牙白色化成分、及び歯牙白色化成分に溶解し、且つ塩化カルシウム水溶液により析出する物質、特に炭素数14〜22の高級脂肪酸、アクリル酸共重合体を含有した非水系ゲル組成物が、可逆的な白色化効果の持続性を大幅に向上させることを見出した。
【0066】
〔実施例12〕
下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物1の調製は、前述の実施例1〜11及び比較例1〜6と同様に行った。予め上顎前歯1番の色差を測定しておき、下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物1が2.0g塗布された、上顎前歯左3番から右3番の唇面を覆える発泡ポリエチレン製シート(積水化学工業(株)製、ボラーラXL−IF08008、15mm×60mm×厚さ800μm)を上顎前歯の唇面に貼付した。1時間経過後、シートを剥がしゲルをティッシュで拭き取ってそのまま3時間安静にした。3時間後、再度、上顎前歯1番の色差を測定し、前述と同様の式により歯牙白色化効果の持続性を評価した。その結果、歯牙白色化効果の持続性は○であった。
(歯牙白色化用非水系ゲル組成物1)
ポリエチレングリコール#300 93.0
(平均分子量280〜320、比誘電率32.0、蒸気圧0kPa)
リノール酸 1.0
ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製、商品名HPC−H) 6.0
計 100.0%
【0067】
〔実施例13〕
下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物2の調製は、前述の実施例1〜11及び比較例1〜6と同様に行った。下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物2が2.0g塗布された、上顎前歯左3番から右3番の唇面を覆えるポリウレタンフィルム(シーダム(株)製DUS2124−CDB、15mm×60mm×厚さ50μm)を上顎前歯の唇面に貼付した。実施例12と同様の方法により歯牙白色化効果の持続性を評価した結果、歯牙白色化効果の持続性は○であった。
(歯牙白色化用非水系ゲル組成物2)
プロピレングリコール(比誘電率32.0、蒸気圧1kPa) 50.0
ジプロピレングリコール(比誘電率26.2、蒸気圧0kPa) 36.9
シェラック 7.0
(日本シェラック工業(株)製、商品名:乾燥透明白ラック)
アクリル酸オクチルアミド/アクリル酸エステル共重合体 1.0
(日本NSC製、商品名AMPHOMER V−42)
ヒドロキシプロピルセルロース 5.0
(日本曹達(株)製、商品名HPC−H)
サッカリン 0.1
計 100.0%
【0068】
〔実施例14〕
下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物3の調製は、前述の実施例1〜11及び比較例1〜6と同様に行った。下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物3が0.2g塗布された、歯1本ずつの形をしたポリエチレン製フィルム(東レ(株)製、軟質ポリエチレン、10mm×15mm×厚さ25μm)を上顎前歯1番に貼付した。実施例12と同様の方法により歯牙白色化効果の持続性を評価した結果、歯牙白色化効果の持続性は◎であった。
(歯牙白色化用非水系ゲル組成物3)
ポリエチレングリコール#400 67.29
(平均分子量380〜420、比誘電率32.0、蒸気圧0kPa)
グリセリン(比誘電率42.5、蒸気圧3kPa) 25.0
シェラック 1.0
(日本シェラック工業(株)製、商品名:乾燥透明白ラック)
ヒドロキシプロピルセルロース 5.0
(日本曹達(株)製、商品名HPC−H)
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5
(ダイセル化学工業(株)製、品番1290)
水酸化ナトリウム 0.01
香料 1.2
計 100.0%
【0069】
〔実施例15〕
下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物4の調製は、前述の実施例1〜11及び比較例1〜6と同様に行った。下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物4を1.0g筆で上顎前歯左3番から右3番の歯の唇面に塗布後、上からポリプロピレン製フィルム(東レ(株)製、軟質ポリプロピレン、15mm×60mm×厚さ100μm)を貼付した。実施例12と同様の方法により歯牙白色化効果の持続性を評価した結果、歯牙白色化効果の持続性は○であった。
(歯牙白色化用非水系ゲル組成物4)
ジエチレングリコール(比誘電率33.0、蒸気圧11kPa) 90.85
メントール 1.0
ポリアクリル酸(日本純薬(株)製、商品名:Ac−10H) 8.0
水酸化ナトリウム 0.05
イソステアリン酸 0.1
計 100.0%
【0070】
〔実施例16〕
下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物5の調製は、前述の実施例1〜11及び比較例1〜6と同様に行った。エチレンビニルアセテート樹脂製のマウスピース(デンタルコンセプト社製、商品名ナイトガード)をお湯で温めて軟化させ、噛んで各自の歯型にフィットしたマウスピースを作製した。この歯型にフィットするように作製したマウスピースに下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物5を1.0g充填し装着した。実施例12と同様の方法により歯牙白色化効果の持続性を評価した結果、歯牙白色化効果の持続性は○であった。
(歯牙白色化用非水系ゲル組成物5)
イソプロパノール(比誘電率19.9、蒸気圧5819kPa) 70.0
エタノール(比誘電率24.6、蒸気圧7948kPa) 24.8
メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体 0.1
(Rohm GmbH社製、商品名オイドラギットS100)
カルボキシビニルポリマー(BFGoodrich社製、商品名CVP980)5.0
水酸化ナトリウム 0.1
計 100.0%
【0071】
〔実施例17〕
下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物6の調製は、前述の実施例1〜11及び比較例1〜6と同様に行った。下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物6を0.5g含浸させたレーヨン製不織布シート(レーヨン100%、スパンレース、目付40g/m2、オーミケンシ(株)製、商品名ピロス)10mm×40mmをそのまま上顎前歯に貼付して適用した。実施例12と同様の方法により歯牙白色化効果の持続性を評価した結果、歯牙白色化効果の持続性は○であった。
(歯牙白色化用非水系ゲル組成物6)
プロピレングリコール(比誘電率32.0、蒸気圧1kPa) 74.99
1,3−ブチレングリコール(比誘電率33.5、蒸気圧108kPa) 21.0
パルミトレイン酸 3.0
カルボキシビニルポリマー 1.0
(日本純薬(株)製、商品名ジュンロンPW110)
水酸化カリウム 0.01
計 100.0%
【0072】
〔実施例18〕
下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物7の調製は、前述の実施例1〜11及び比較例1〜6と同様に行った。ポリエチレンフィルム(低密度ポリエチレン、厚さ10μm、東ソー(株)製、商品グレード;212)と、ポリプロピレン/レーヨン不織布(ポリプロピレン/レーヨン=3/7、スパンレース、目付40g/m2、シンワ(株)製、商品グレード;7140−6)を熱融着させて30mm×60mm×厚さ0.5mmの2層不織布シートを作製した。この2層不織布シートのポリプロピレン/レーヨン不織布面に下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物7を2g塗布したものを、上顎前歯左3番から右3番に貼付して適用した。シートは歯の舌面へ折り返して使用した。実施例12と同様の方法により歯牙白色化効果の持続性を評価した結果、歯牙白色化効果の持続性は○であった。
(歯牙白色化用非水系ゲル組成物7)
ポリエチレングリコール#600 78.99
(平均分子量570〜630、比誘電率33.0、蒸気圧0kPa)
プロピレングリコール(比誘電率32.0、蒸気圧1kPa) 10.0
リノレン酸 5.0
ヒドロキシプロピルセルロース 6.0
(日本曹達(株)製、商品名HPC−H)
2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン 0.01
計 100.0%
【0073】
〔実施例19〕
下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物8の調製は、前述の実施例1〜11及び比較例1〜6と同様に行った。下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物8(2.0g)を粘着層とするポリエステル製テープ(10mm×40mm×厚さ0.05mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品グレードS)をそのまま上顎前歯に貼付して適用した。実施例12と同様の方法により歯牙白色化効果の持続性を評価した結果、歯牙白色化効果の持続性は○であった。
(歯牙白色化用非水系ゲル組成物8)
ジプロピレングリコール(比誘電率26.2、蒸気圧0kPa) 87.8
アクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体 1.0
(Rohm GmbH社製、商品名オイドラギットL100)
ヒドロキシプロピルセルロース 8.0
(日本曹達(株)社製、商品名HPC−H)
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.2
計 100.0%
【0074】
〔実施例20〕
下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物9の調製は、前述の実施例1〜11及び比較例1〜6と同様に行った。加熱したポリエチレンフィルム(低密度ポリエチレン、厚さ10μm、東ソー(株)製、商品グレード;212)を、ポリプロピレン不織布(ポリプロピレン100%、スパンボンド、目付40g/m2、表面エンボス加工、出光石油化学(株)製、商品グレード;出光RN2040)とレーヨン/ポリプロピレン不織布(レーヨン/ポリプロピレン=70/30、スパンレース、目付40g/m2、シンワ(株)製、商品グレード;7140−6)で挟んで熱融着させて厚さ0.5mmの3層不織布シートを作製し、石膏で作った歯型を用いてポリプロピレン不織布側が歯牙白色化用非水系ゲル組成物と接する面になるように加熱加圧成型して歯型カバーを作製した。この歯型カバーに下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物9を0.5g充填し、歯牙にはめ込んで適用した。実施例12と同様の方法により歯牙白色化効果の持続性を評価した結果、歯牙白色化効果の持続性は◎であった。
(歯牙白色化用非水系ゲル組成物9)
エチレングリコール(比誘電率37.7、蒸気圧59kPa) 90.85
シェラック 1.0
ヒドロキシプロピルセルロース 6.0
(日本曹達(株)製、商品名HPC−M)
トリポリリン酸ナトリウム 1.0
塩化セチルピリジニウム 0.05
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
計 100.0%
【0075】
〔実施例21〕
下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物10の調製は、前述の実施例1〜11及び比較例1〜6と同様に行った。下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物10を0.2g含浸させたスポンジ(10mm×40mm×厚さ1mm、倉敷紡績(株)製、商品グレード:ソフトフォーム271S)を、上顎前歯に貼付して適用した。実施例12と同様の方法により歯牙白色化効果の持続性を評価した結果、歯牙白色化効果の持続性は◎であった。
(歯牙白色化用非水系ゲル組成物10)
ポリエチレングリコール#400 55.9
(平均分子量380〜420、比誘電率32.0、蒸気圧0kPa)
グリセリン(比誘電率42.5、蒸気圧3kPa) 40.0
メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体(Rohm GmbH社製、商品名オイドラギットRSPO) 1.0
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0
(日本曹達(株)製、商品名HPC−H)
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5
(ダイセル化学工業(株)製、品番1150)
香料 0.5
サッカリンナトリウム 0.1
計 100.0%
【0076】
〔実施例22〕
下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物11の調製は、前述の実施例1〜11及び比較例1〜6と同様に行った。使用時に下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物11を上顎前歯に塗布し、その上から水不溶性アクリル製パック材を上塗して被膜を作って適用した。実施例12と同様の方法により歯牙白色化効果の持続性を評価した結果、歯牙白色化効果の持続性は○であった。
(歯牙白色化用非水系ゲル組成物11)
ポリエチレングリコール#300 56.26
(平均分子量280〜320、比誘電率32.0、蒸気圧0kPa)
エタノール(比誘電率24.6、蒸気圧7948kPa) 34.0
イソステアリン酸 2.0
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0
ポリアクリル酸 4.0
(日本精化製、商品名AQUPEC HV−501)
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0
(日本曹達(株)製、商品名HPC−L)
香料 0.5
水酸化ナトリウム 0.04
サッカリンナトリウム 0.2
計 100.0%
<水不溶性アクリル製パック材>
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体
(Rohm Pharma製、Eudragit EPO) 10.0
ステアリン酸 1.0
エタノール 89.0
計 100.0%
【0077】
〔実施例23〕
下記歯牙白色化用非水系ゲル組成物12の調製は、前述の実施例1〜11及び比較例1〜6と同様に行った。カップの中でアルギン酸印象剤と水を所定量、手早く混ぜ、印象用トレーに移し歯に装着して所定時間静置し歯型を作製した。印象用トレーから歯型を取り出し、内側にゲル組成物12を0.5g充填し、歯牙にはめ込んで適用した。実施例12と同様の方法により歯牙白色化効果の持続性を評価した結果、歯牙白色化効果の持続性は○であった。
(歯牙白色化用非水系ゲル組成物12)
プロピレングリコール(比誘電率32.0、蒸気圧1kPa) 43.5
イソプロピルアルコール(比誘電率19.9、蒸気圧5819kPa) 24.99
エタノール(比誘電率24.6、蒸気圧7948kPa) 24.0
アクリル酸/アクリル酸アミド/アクリル酸エチル共重合体 1.0
(BASF社製、商品名ウルトラホールドストロング)
ラウリル硫酸ナトリウム 3.0
ミリスチン酸ジエタノールアミド 1.0
カルボキシビニルポリマー(BFGoodrich社製、商品名CVP980)1.0
香料 1.0
水酸化ナトリウム 0.01
ステビオサイド 0.5
計 100.0%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)比誘電率(25℃)が17.0〜43.0であり、且つ蒸気圧(25℃)が0〜7000kPaである歯牙白色化成分、
(B)歯牙白色化成分に溶解し、且つ塩化カルシウム水溶液により析出する物質、及び
(C)ゲル化剤
を含有し、実質的に水及び過酸化物を含まない歯牙白色化用非水系ゲル組成物。
【請求項2】
歯牙白色化成分(A)が、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、平均分子量190〜630のポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の歯牙白色化用非水系ゲル組成物。
【請求項3】
歯牙白色化成分に溶解し、且つ塩化カルシウム水溶液により析出する物質(B)が、炭素数14〜22である高級脂肪酸、及び/又はアクリル酸共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の歯牙白色化用非水系ゲル組成物。
【請求項4】
物質(B)が、ミリスチン酸、7−ヒドロキシミリスチン酸、シェロール酸、9,10,16−トリヒドロキシパルミチン酸、パルミトレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、シェラック、アクリル酸tert−ブチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸共重合体、アクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体、アクリル酸/アクリル酸アミド/アクリル酸エチル共重合体、アクリル酸オクチルアミド/アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体から選ばれる1種又は2種以上である請求項3記載の歯牙白色化用非水系ゲル組成物。
【請求項5】
ゲル化剤(C)が、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩から選ばれる1種又は2種以上である請求項1乃至4のいずれか1項記載の歯牙白色化用非水系ゲル組成物。
【請求項6】
歯牙白色化成分(A)の配合量が組成物全体の50.0〜99.5質量%であり、物質(B)の配合量が組成物全体の0.1〜10質量%であり、ゲル化剤(C)の配合量が組成物全体の0.1〜15質量%である請求項1乃至5のいずれか1項記載の歯牙白色化用非水系ゲル組成物。
【請求項7】
更に、界面活性剤を組成物全体の0.05〜5質量%配合した請求項1乃至6のいずれか1項記載の歯牙白色化用非水系ゲル組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載の歯牙白色化用非水系ゲル組成物と、この歯牙白色化用非水系ゲル組成物を保持すると共に、この歯牙白色化用非水系ゲル組成物を保持した状態で歯に着脱可能に装着される適用用具とを備えたことを特徴とする歯牙美白用セット。
【請求項9】
適用用具が、水不溶性の素材で作製されたテープ、シート、フィルム、マウストレー、マウスピース、スポンジ、印象材、パック材、又は歯列に成型した歯のカバーである請求項8記載の歯牙美白用セット。

【国際公開番号】WO2005/063182
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516641(P2005−516641)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019344
【国際出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】