歯科用X線撮影装置
【課題】 この発明は、少なくとも基準断層面に歯列弓が外れた場合でも、焦点の合ったぼけの少ない画像を容易に提供できるようにすることを目的とする。
【解決手段】 この発明の歯科用X線撮影装置は、被検者OにX線を照射するX線照射部110と、入射するX線に応じたデジタル量の電気信号を一定のフレームレートで出力するX線検出部120と、前記X線照射部110と前記X線検出部120の対を、被検者Oを挟んで互いに対向させた状態で被検者の周りを移動させる旋回アーム3と、前記旋回アーム3が前記X線照射部110及び前記X線検出部120を被検者Oの周りを移動させることに伴って前記検出部120が出力するトモシンセシス用撮影画像信号をフレームデータとして順次記憶する記憶手段22と、前記記憶手段22に記憶されたフレームデータに基づいて画像再構成演算してパノラマ画像を得る画像処理手段20と、を備える。
【解決手段】 この発明の歯科用X線撮影装置は、被検者OにX線を照射するX線照射部110と、入射するX線に応じたデジタル量の電気信号を一定のフレームレートで出力するX線検出部120と、前記X線照射部110と前記X線検出部120の対を、被検者Oを挟んで互いに対向させた状態で被検者の周りを移動させる旋回アーム3と、前記旋回アーム3が前記X線照射部110及び前記X線検出部120を被検者Oの周りを移動させることに伴って前記検出部120が出力するトモシンセシス用撮影画像信号をフレームデータとして順次記憶する記憶手段22と、前記記憶手段22に記憶されたフレームデータに基づいて画像再構成演算してパノラマ画像を得る画像処理手段20と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検者の特定部位を撮影する歯科用X線撮影装置に係り、例えば、歯列弓などのパノラマ画像を撮影するX線パノラマCT装置や頭頸部X線CT装置に関し、特に、1回の断層撮影で任意裁断高さの断層像を再構成するトモシンセシスを行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線断層画像の撮影方法としてトモシンセシスが知られている。トモシンセシスでは、X線源から被検者に対して複数の異なる角度でX線を曝射し、前記被検者を透過したX線をX線検出器により検出し、複数の撮影画像(トモシンセシス用撮影画像)を撮影する。そして、これら複数のトモシンセシス用撮影画像を再構成して任意の断層位置(裁断高さ)における断層画像(再構成断層画像)を得る。
【0003】
従来、歯科用のパノラマX線撮影装置は、撮像空間に機械的に設定される軌道に沿った断層面(基準断層面という)を有し、この基準断層面に焦点が合うようになっている。このため、歯列弓が基準断層面に沿って位置したときには、再構成される画像はぼけることはない。しかし、歯列弓が基準断層面からずれている場合は、画像がぼけてしまう。したがって、不鮮明な部分を精度良く見たい場合は、ぼけた部分が鮮明に見えるように被検者の位置決めをやり直してデータの再収集を行うか、ぼけた部分の口内撮影を施して、より鮮明な画像を得ていた。
【0004】
そのような問題の解決を意図した従来技術の例として、特許文献1のように、画像を高速(例えば300FPS)に収集できる検出器を使用して、その検出データをすべてコンピュータに取り込み、トモシンセシス法を用いて、断層面をソフト的に自在に変えることができるX線パノラマ撮像装置が開発されている。この装置の場合、予め、検出器の検出面(X線の入射面)に平行な複数の断層面の距離の情報(ゲイン)を、事前計測によりファントムを用いて求める。撮像時には、X線管及び検出器の対を被検者の顎部の周囲に回転させながらデータ収集を行う。このときの回転中心の位置は、歯列に対して接近したり離れたりする。収集されたデータは、上述の距離の情報を用いたトモシンセシス法をソフトウエア処理することで、ボケの少ない画像が作成される。この特許文献1には、前記顎顔面に関心領域を指定するステップ、歯列弓を頬側から舌側に向かって正視する方向に関する歯列弓正視情報を基に前記関心領域の指定により前記関心領域を正視したX線パノラマ画像を画像処理手段により生成するステップ、前記関心領域を正視したX線CT画像を表示手段に表示するステップ、を備えたX線パノラマ画像の表示方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−136163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載のパノラマ撮像装置の場合、トモシンセシス法の対象となる複数の断層面が検出器の検出面に平行であると仮定し、パノラマ画像を作成している。画像がデジタル化されてからは、少なくとも基準断層面に歯列が正確に位置決めされた時に、前歯の中心だけは縦横の両方向に共に歪のない画像は作ることは可能ではある。しかし、この位置決めの条件から外れた場合、必ず画像に歪が発生する。また、歯列が基準断層面に沿って位置していない場合、再構成されたパノラマ画像には横方向のぼけも生じる。
【0007】
この発明は、上述の従来の状況に鑑みてなされたもので、少なくとも基準断層面に歯列弓が外れた場合でも、焦点の合ったぼけの少ない画像を容易に提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の歯科用X線撮影装置は、被検者にX線を照射するX線照射部と、入射するX線に応じたデジタル量の電気信号を一定のフレームレートで出力するX線検出部と、前記X線照射部と前記X線検出部の対を、被検者を挟んで互いに対向させた状態で被検者の周りを移動させる旋回手段と、前記旋回手段が前記X線照射部及び前記X線検出部を被検者の周りを移動させることに伴って前記検出部が出力するトモシンセシス用断層画像信号をフレームデータとして順次記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されたフレームデータに基づいて画像再構成演算してパノラマ画像を得る画像処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記画像処理手段は、基準断面を挟んで奥行き方向に複数のパノラマ画像を再構成するように構成すればよい。
【0010】
さらに、前記画像処理手段は、基準断面を奥行き方向にスライドさせて焦点を調整するように構成できる。
【0011】
前記画像処理手段は、前記パノラマ画像のデータから、前記所望断層面のパノラマ画像のうちの指定された部分領域の位置に応じた最適焦点の部分断面像を生成するように構成できる。
【0012】
前記画像処理手段は、フィルタ逆投影法(FBP法)を用いてトモシンセシス用断層画像を再構成することができる。
【0013】
前記画像処理手段は、シフト加算法を用いてトモシンセシス用断層画像を再構成するシフト加算処理部と、前記画像処理手段は、フィルタ逆投影法(FBP法)を用いてトモシンセシス用断層画像を再構成するFBP処理部と、を有し、シフト加算画像又はFBP画像を表示部に表示させるように構成できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、断層面の画像を得るためにトモシンセシス法(tomosynthesis)を用いているので、インプラント体周りにアーチファクトが発生しなくなり、骨の付き具合が分かる。また、シフト加算法とFBP法による再構成を切り替えることで診断に好適な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明による歯科用頭頸部X線CT撮影装置の基本構成を説明するブロック図である。
【図2】この発明による座位タイプの歯科用頭頸部X線CT撮影装置の正面図である。
【図3】この発明による座位タイプの歯科用頭頸部X線CT撮影装置の側面図である。
【図4】この発明による座位タイプの歯科用頭頸部X線CT撮影装置の上面図である。
【図5】この発明によるX線パノラマ画像・CT画像表示装置の画像処理部を説明するための機能ブロック図である。
【図6】この発明によるX線パノラマ画像・X線CT画像表示装置の他の実施形態を説明するためのブロック図である。
【図7】パノラマ撮影の軌道図を示す図である。
【図8】この発明によるパノラマ撮影の状態を示す模式図である。
【図9】この発明による表示画面の一例を示す模式図である。
【図10】この発明による表示画面の一例を示す模式図である。
【図11】この発明の画像処理動作を示すフローチャートである。
【図12】この発明のFBP法の処理動作を示すフローチャートである。
【図13】この発明の画像処理動作を示すフローチャートである。
【図14】この発明の画像処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、被検者(患者)の歯顎領域の歯科用パノラマ撮影装置又は頭頸部領域を撮影する歯科用X線撮影装置のトモシンセシス撮影のする場合の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0017】
図1は、歯科用X線撮影装置としての歯科用頭頸部X線CT撮影装置の基本構成を説明するブロック図である。この装置を用いて、歯科用パノラマX線撮影又は頭頸部X線CT撮影が行える。歯科用頭頸部X線CT撮影装置は、X線撮影装置本体1と、X線パノラマCT画像表示装置2を備え、通信ケーブル等によってデータを送受信する構成になっている。
【0018】
X線撮影装置本体1は、被検者(患者)にX線を照射するX線照射部110と、被検者Oを透過したX線を検出するX線検出部120と、X線照射部110及びX線検出部120を対向して有する旋回アーム3とを備える。
【0019】
パノラマ撮影機能は、X線照射部110及びX線検出部120が歯列弓の形状に沿った所定の軌跡を描くように、旋回アームを水平移動及び水平旋回させながら断層撮影を行う。
【0020】
X線撮影装置本体1は、X線照射部110とX線検出部120とを対向させて支持した旋回アーム3と、被検者Oの顎顔面を保持する被検者保持手段(頭部固定部)4と、旋回アーム3を駆動する駆動ユニット部160と、撮影装置本体制御部170とを備えている。撮影装置本体制御部170には操作パネル71aが付加されている。
【0021】
X線照射部110は、X線を照射するX線管等からなるX線発生器112と、X線ビームBの広がりを規制するスリット等からなるコリメータ111とで構成されており、X線検出部120は、2次元的に広がったCCDセンサやX線間接変換方式(FPD:フラットパネルディテクタ)センサ等からなるX線検出器121を設けたカセット122で構成されている。カセット122はX線検出部120に対して着脱自在であるが、X線検出器121は、カセット122を介さずにX線検出部120に固定的に設けてもよい。なお、本実施形態はトモシンセシス法を採用しているため、X線検出器121は、その横(幅)方向にも複数のX線検出素子を有する。このX線検出器121は、例えば、300fpsのフレームレート(1フレームは、例えば、64×1500画素)で入射X線を、当該X線の量に応じたデジタル電気量の画像データとして収集することができる。以下、この収集データを「フレームデータ」という。
【0022】
駆動ユニット部160は、CT撮影時に旋回アーム3の旋回軸3cを対象撮影領域(画像再構成範囲)の中心に一致させたり、パノラマX線CT撮影時に、旋回軸を歯列弓に沿って回転移動させたりするために、旋回軸をXY方向(水平方向)に移動するXYテーブルを備えた旋回軸位置設定手段161を備えている。この旋回軸位置設定手段161は、旋回アーム3の旋回軸3cを水平移動させるX軸モータ、Y軸モータと、旋回アーム3を回転させるXYテーブルに設けられた旋回軸回転手段162の旋回用モータとを備えている。まず、旋回軸3cは、被検者Oの正中線に一致するように設定される。
【0023】
更に、X線撮影装置本体1は、旋回アーム3を水平方向に直進移動するための旋回アーム位置設定手段31を備える。旋回アーム位置設定手段31で旋回アーム3を直進移動することによって、X線照射部110と被検者Oとの距離、X線検出部120と被検者Oとの距離を変更して、撮影対象の画像エリア(画像再構成範囲)を拡大し、X線検出部120を被検者Oに大幅に近接させた状態で、一度の撮影における撮影領域を増大できるようになっている。
【0024】
撮影時には、X線照射部110及びX線検出部120の対は、被検者Oの口腔部を挟んで互いに対峙するように位置し、その対毎、一体に口腔部の周りを回転するように駆動される。ただし、この回転は単純な円を画く回転ではない。つまり、X線発生器112及びX線検出器121の対は、その対の回転中心RCが、図7に示す如く、略馬蹄形の歯列の内側で円弧を2つ繋いだような山形状の一定の軌道を画くように回転駆動される。この一定の軌道は、口腔部の標準的な形状及びサイズの歯列に沿った断層面(以下、3D基準断層面)にX線焦点を合わせ且つその3D基準断層面を追従するように予め設計された軌道である。この3D基準断層面SSにX線焦点を追従させる際、X線照射部110及びX線検出部120は3D基準断層面からみたときに必ずしも同一の角速度で回転するわけではない。つまり、この回転は、「歯列に沿った移動」とも呼ぶことができる回転であって、角速度を適宜に変えながら回転している。
【0025】
撮影装置本体制御部170は、駆動ユニット部160を制御する制御プログラムを含んだ各種制御プログラムを実行するCPU171と、X線照射部110を制御するX線発生部制御手段172と、X線検出部120を制御するX線検出部制御手段173とを備えている。操作パネル71aは、小型液晶パネルや複数の操作釦で構成されている。操作釦のほか、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力手段を用いることもできる。また、操作パネル71aが液晶モニタ等のディスプレイからなる表示手段を備えるようにしてもよい。
【0026】
例えば、操作パネル71aに設けた表示手段に、X線撮影装置本体1の操作に必要な文字や画像等の情報を表示するように構成してもよい。また、X線パノラマ画像やX線CT画像を表示するX線CT画像表示装置2と接続して、X線CT画像表示装置2の表示手段26に表示される表示内容が表示手段にも表示されるようにしてもよく、表示手段26に表示される文字や画像の上でマウス等によるポインタ操作などを通してX線撮影装置本体1に各種の指令ができるようにしてもよい。
【0027】
X線撮影装置本体1は、操作パネル71a、あるいはX線CT画像表示装置2からの指令に従って、歯列弓のパノラマ撮影を実行する。また、各種指令や座標データ等をX線CT画像表示装置2から受け取る一方、撮影した画像データをX線CT画像表示装置2に送る。また、被撮影領域(撮影対象領域)rrの底辺は、X線照射部110から照射されるコーンビームの下縁の線が基準となる。
【0028】
X線撮影装置本体1と接続されるX線CT画像表示装置2は、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーションで構成されており、表示装置本体20には、例えば、液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示手段26や、キーボード、マウス等で構成された操作手段25が付加されている。表示手段26にCT画像等が表示される。また、表示手段26に表示された文字や画像の上でのマウスでのポインタ操作等を通じて各種指令を与えることができる。表示手段26はタッチパネルで構成することもできるので、この場合、表示手段26は操作手段25を兼ねる。
【0029】
操作手段25は、デンタル切り出し領域である関心領域や基準断層面を指定する手段として機能する。画像表示装置本体20は、各種プログラムを実行する制御装置(CPU)21と、ハードディスク等で構成され、各種撮影データや画像等を記憶する記憶手段22と、画像再構成を行う画像生成手段23とを備えている。ここに、制御装置(CPU)21、記憶手段22、画像生成手段23は画像処理手段を形成する。記憶手段22には、後述する歯列弓正視情報等も記憶される。制御装置(CPU21)は、記憶手段22に格納されたプログラムにより、各種動作を制御し、プログラムに従い、画像生成手段23の機能を果たすように動作する。
【0030】
記憶手段22には、パノラマ撮影から得たパノラマ撮影データ、トモシンセシス(tomosynthesis)用断層画像を再構成して任意の断層位置における断層画像(再構成断層画像)などを記憶することができる。
【0031】
ここに表示手段26は、文字や記号を含む画像を表示する。表示手段26は関心領域指定手段として、歯列弓を表したパノラマ画像を表示し、そのパノラマ画像上でデンタル切り出し領域である関心領域の指定操作を受ける一方、断層画像(再構成断層画像)からデンタル切り出し領域である関心領域の部分断面CT画像(デンタル画像)等を表示する。
【0032】
図2は、座位タイプの歯科用頭頸部X線CT撮影装置のより具体的な正面図、図3は、側面図、図4は、上面図である。
【0033】
座位タイプのX線撮影装置本体1は、左右両側に支柱6が立設されている。支柱6は、床面に設置されたベース5に支持されている。支柱6の上部に、支持フレーム7が支持されており、支持フレーム7の中央部70内に回転駆動ユニット160が設けられている。
【0034】
回転駆動ユニット160の下部には、旋回アーム3が旋回可能に支持されており、旋回アーム3の両側にX線検出部120及びX線照射部110が設けられている。X線撮影装置本体1は、被検者Oを座位状態にするための椅子部40を備える。さらに、X線撮影装置本体1は、椅子部40を上下動するための電動式アクチュエータ40aが設けられている。電動式アクチュエータ40aの動作で椅子部40を上下動して、被検者Oの個体差に応じて撮影対象領域の高さに位置決めする。
【0035】
X線撮影装置本体1は、椅子部40の下部に横方向に延びるフレーム40bが設けられ、このフレーム40bは、上下方向に伸縮自在な電動アクチュエータ40cが取り付けられている。X線撮影装置本体1は、電動アクチュエータ40cの上部に、頭部支持ユニット71を有する。頭部支持ユニット71は、被検者が椅子部40から出入りしやすいように、水平方向に旋回可能で、基準位置に位置決めロック可能となっている。頭部支持ユニット71は、被検者の頭部を固定するための頭部固定部4、被検者Oがグリップするための一対のハンドル71bを備える。
【0036】
頭部固定部4は、撮影に際して被検者Oの頭部を安定的に固定するために、被検者Oの顎を乗せるためのチンレスト4aと、側頭部または外耳口を固定するための左右対称に開閉する側頭部押さえまたはイヤーロッド4bと、前頭部を支持するための前頭部押さえ(図示せず)とで、構成する3点固定方式を基本として、更に後頭部を前頭部に対してベルトを用いて固定するようになっている。
【0037】
さらに、X線撮影装置本体1は、旋回アーム3の底面と頭部固定部4の上部とが干渉しないように干渉防止機構41を備える。干渉防止機構41は、頭部支持ユニット71に設けられた反射型のビームセンサー41aを備える。さらに、干渉防止機構41は、支柱6の所定の高さ位置に反射板41bを備える。反射板41bは、ビームセンサー41aに対向する位置に設けられており、ビームセンサー41aから照射されるビームが反射板41bで反射され、ビームセンサー41aが検知することで電動アクチュエータ40a、40cの上昇を停止するようになっている。これにより、被検者Oの頭部が旋回アーム3に干渉せず安全に構成されている。
【0038】
また、支持フレーム7には、動作表示手段42d及びポジションビーム手段42cが設けられている。動作表示手段42dは、稼働中の装置がどのような操作を行っているか表示する。ポジションビーム手段42cは、選択されたモードの撮影対象領域(画像再構成範囲)がどの範囲かを被検者Oに弱いレーザービームを照射し、その範囲内に被検者Oを位置決めするように電動アクチュエータ40a、40cを操作できるようになっている。
【0039】
さらに、支持フレーム7は、被検者Oの正中位置を確認するための正中用レーザービーム42aを備える。また、旋回アーム3の両側に位置付け用レーザービーム42bが設けられている。位置付け用レーザービーム42bは、X線焦点111aと予め設定された2次元X線検出器121の入力面121aの基準位置121bとを結ぶ直線上を一本の線状に指向するようになっている。さらに、X線焦点111aと2次元X線検出器121の入力面121aに予め設定された基準位置121bとを結ぶ水平な直線に対して直交し、且つ、旋回軸3cの中心を通る垂直の軸線を指向するようになっている。これにより、位置付け用レーザービーム42bは、被検者Oの対象撮影領域(画像再構成範囲)の中心位置を指示し、設定を容易にできるようになっている。
【0040】
回転駆動ユニット160には、旋回軸位置設定手段161及び旋回軸回転手段162を備え、中空式で減速機を使用せずに負荷をモータに直結して駆動するダイレクトドライブ方式で高精度の位置決め機能を有するモータを備える。モータの回転駆動によって旋回軸3cが回転するようになっている。
【0041】
また、旋回軸位置設定手段161は、Y方向に移動するYテーブルと、Yテーブル上でX方向に移動するXテーブルとを備える。
【0042】
旋回アーム3は旋回アーム位置設定手段31を備える。旋回アーム位置設定手段31は、旋回可能な旋回テーブル、旋回テーブルの上を直動可能なスライドテーブルを備える。旋回アーム3の底面には干渉防止センサ(図示せず)が設けられており、旋回アーム3の底面と頭部固定部4の上部とが干渉しないようになっている。頭部固定部4の上部が干渉防止センサに当たると、電動アクチュエータ40a、40cの上昇を停止するようになっている。
【0043】
図4の二点鎖線で示す範囲は、旋回アーム3の旋回軸3cの中心位置がXY方向に水平に移動可能な範囲を移動したときの最大回転半径の例を示している。
【0044】
X線撮影装置本体1は、X線照射部2から照射されるX線を絞るコリメータ(マスク)111を備える。
【0045】
図2に示おいては、記憶手段22は、外部の記憶装置を記載しているが、装置本体20内にも記憶装置を備えている。この発明では、内部の記憶装置と外部の記憶装置で記憶手段22を構成しているが、これに限らず、上記した各種データを格納できるものであればよい。
【0046】
X線照射部110において、X線照射部110の前方に設けられたコリメータ111は、形状を異ならせた複数のスリットを形成したマスクで構成されており、スリットのいずれかを選択し、選択したスリットによってX線発生器112から照射されたX線ビームNBの広がりを制限する仕組みになっている。パノラマ撮影では、パノラマ用開口が選択され、その形状に対応したX線細隙ビームが、X線検出部120のX線検出器121に向かって照射される。そして、その状態で旋回アーム3を旋回させ、X線細隙ビームによって顎顔面を走査しつつ、X線検出器121の検出面に投影された透過画像をパノラマ撮影データとして蓄積することにより、パノラマ撮影が実行される。
【0047】
図5に、このX線パノラマCT撮像装置の制御及び処理のためのブロック図を示す。同図に示す如く、X線撮影装置本体1からのデータは通信ラインを介してX線CT画像表示装置2に与えられる。
【0048】
X線CT画像表示装置2は、例えば、大量の画像データを扱うため、大容量の画像データを格納可能な、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーションで構成される。つまり、X線画像表示装置本体20は、その主要な構成要素して、内部バス28を介して相互に通信可能に接続されたインターフェース27、24、記憶部22、制御装置21、画像生成手段23を備える。制御装置21は、CPU21aとOS等の制御プログラムが格納されたROM21bを備える。記憶部22は、バッファメモリ22a、画像メモリ22b、フレームメモリ22cを備える。制御装置21には、インターフェース24を介し操作手段25、表示手段26が接続されている。
【0049】
インターフェース27は、X線撮影装置本体1に接続されており、制御装置21とX線照射部110、X線検出部120との間で交わされる制御情報や収集データの通信を媒介する。また、これにより、制御装置21はX線撮影装置本体1で撮影したパノラマ画像を例えばDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格により外部のサーバに送出できるようになっている。
【0050】
バッファメモリ22aは、インターフェース27を介して受信した、X線検出部120からのデジタル量のフレームデータを一時的に記憶する。
【0051】
また、画像生成手段23は、制御装置21の制御下に置かれ、装置側が提供する所定の3D基準断層面のパノラマ画像の作成及びそのパノラマ画像の後利用のための処理を操作者との間でインターラクティブに実行する機能を有する。この機能を実現するためのプログラムは、ROM21bに予め格納されている。このため、このROM21bは、この発明に係るプログラムを格納する記録媒体として機能する。なお、このプログラムは予めROM21bに格納しておいてもよいが、場合によっては、外部システムから通信回線や持ち運び可能なメモリを介して、図示しないRAMなどの記録媒体にインストールするようにしてもよい。
【0052】
上述した3D基準断層面SSは、本実施形態では、装置側で予め用意されているものであり、撮像前、または保守点検時などにキャリブレーションできるようになっている。なお、3D基準断層面SSは、複数の断層面から選択するようにしてもよい。かかる選択動作によって、3D基準断層面の位置を、歯列の奥行き(前後)方向の一定範囲で変更できる。
【0053】
画像生成手段23により処理される又は処理途中のフレームデータ及び画像データは画像メモリ22bに読出し書込み可能に格納される。画像メモリ22bには、例えばハードディスクなどの大容量の記録媒体(不揮発性且つ読出し書込み可能)が使用される。また、フレームメモリ22cは、再構成されたパノラマ画像データ、後処理されるパノラマ画像データなどを表示するために使用される。フレームメモリ22cに記憶される画像データは、インターフェース24を介して表示手段26に与えられ、表示手段26の画面に表示される。
【0054】
制御装置21のCPU21aは、ROM21bに予め格納されている制御及び処理の全体を担うプログラムに沿って、装置の構成要素の全体の動作を制御する。かかるプログラムは、操作者からそれぞれに制御項目についてインターラクティブに操作情報を受け付けるように設定されている。このため、CPU21aは、後述するように、フレームデータの収集(スキャン)などを実行可能に構成されている。
【0055】
このため、被検者Oは、図2および図3に示すように、座位の姿勢でチンレスト4aの位置に顎を置いて、ヘッドレストに額を押し当てる。これにより、患者の頭部(顎部)の位置が旋回アーム3の回転空間のほぼ中央部で固定される。この状態で、旋回アーム3が被検者Oの頭部の周りをXY面に沿って回転する。図2、図3は、座位の場合を例示したが、図示しないが立位の装置の場合も当然有り得ることは勿論である。
【0056】
この回転の間に、X線照射部110から所定周期でパルス状のX線が曝射される。このX線は、撮影位置に位置する被検者Oの顎部(歯列部分)を透過してX線検出部120に入射する。X線検出部120は、前述したように、非常に高速のフレームレート(例えば、300fps)で入射X線を検出し、対応する電気量の2次元のデジタルデータ(例えば64×1500画素)をフレーム単位で順次出力する。このフレームデータは、通信ラインを介して、X線CT画像表示装置2のインターフェース27を介してバッファメモリ22aに一時的に保管される。この一時保管されたフレームデータは、その後、画像メモリ22bに転送されて保管される。
【0057】
このため、画像生成手段23は、画像メモリ22bに保管されたフレームデータを用いて3D基準断層面SSに撮像焦点を当てた断層像をパノラマ画像(基準パノラマ画像)として再構成(作成)する。つまり、この基準パノラマ画像は、「3D基準断層面SSに沿って歯列が存在していると仮定したときのパノラマ画像」であると定義される。また、この画像生成手段23は、この基準パノラマ画像を用いて3次元(3D)画像を作成するなどの処理を行う。基準パノラマ画像が実際の歯列弓とずれている場合には、前後に基準面をずらして修正基準面画像を得る。修正基準面画像は、3D基準画像からフレームデータ又は基準パノラマ画像のデータを用いて歯列を最適焦点化した表面画像である。つまり、この前後にユーザーが操作手段25を用いてずらした修正基準面画像は、ボケが少なく、かつ、歯列の実在位置及びその実際のサイズを精度良く表現した最適焦点画像である。
【0058】
とくに、修正基準面画像は、被検者個々によって異なることが殆どであるという事実を考慮した画像である。実際問題として、個々の被検者の歯列は3D基準断層面SSに沿っていることは無く、3D基準断層面SSから部分的に又は全体的にずれていたりする。
【0059】
X線照射部110から照射されたX線は被検者Oの口腔部を透過して、Z軸方向に一定の長さを有する縦長のX線検出部120により検出される。X線照射部110とX線検出部120との間の距離は一定に保持され、かつ、回転中心からX線照射部110及びX線検出部120に至る距離も一定に保持される。その一方で、3D基準断層面SSに焦点を合わせたスキャンを行うため、1回のスキャン(データ収集)の間に、回転中心RCの位置の軌道は、馬蹄形状に湾曲している歯列に対して、一例として前述のように山形状に変化するように設計されている。
【0060】
従来のパノラマ画像は、実際の歯列のずれを考慮しないで作成されている。このため、従来のパノラマ画像から定量的な構造解析は非常に困難であり、被検者毎の様々な形状や位置にある歯列に関わらず、高精度に撮像できるパノラマ撮像装置が望まれていた。
【0061】
本実施例では、断層面の画像を得るためにトモシンセシス法(tomosynthesis)を用いている。トモシンセシス法では、X線照射部110から被検者Oに対して複数の異なる角度でX線を曝射し、前記被検者を透過した前記X線をX線検出部120により検出し、複数の撮影画像(トモシンセシス用撮影画像)を撮影する。そして、これら複数のトモシンセシス用撮影画像を再構成して任意の断層位置における撮影画像(再構成断層画像)を得る。
【0062】
複数のトモシンセシス断層画像データの再構成法としては、シフト加算法と、フィルタ逆投影法(FBP法、FBP:Filtered Back Projection)とが存在する。シフト加算法とFBP法は、再構成の原理が異なるため、断層方向の解像度及びコントラストが異なる。このため、それぞれの再構成法には、以下のような利点がある。
【0063】
まず、シフト加算法の利点につき説明する。シフト加算法を用いると、金属アーチファクトが発生しないので、インプラント体への骨の付き具合が診断し易くなる。また、インレーやクラウンの近くのカリエスなども診断し易くなる。さらに、再構成計算が速く、撮影後、速やかに画像を表示して、診断することが出来る。また、ノイズが少なく、正中部分や顎関節部分など線量が少し足りなくなる部分でも診断がし易くなる。
【0064】
FBP法の利点について、説明する。FBP法を用いると、高いコントラスト画像を作成することができ、根尖、根管、歯根膜などの診断がし易くなる。さらに、パノラマ画像からデンタル画像を切り出すとき、主に臼歯部で、歯の重なりを無くすことができ、カリエスなどの診断がし易くなる。また、奥行方向のパノラマ画像を複数枚作成して、ボリュームデータを作成することにより、歯列横断画像を作成することができる。
【0065】
このように、シフト加算法とFBP法はそれぞれの利点を有し、いずれの再構成法が絶対的に優れているともいえない。従って、それぞれの要求を満たした再構成法を用いればよいが、歯科用パノラマX線装置のトモシンセシス撮影法においては、シフト加算法が一般的に用いられている。
【0066】
本実施例では、断層面の画像を得るためにトモシンセシス法(tomosynthesis)を用いている。再構成法としてのシフト加算法は、スキャンによって一定レートで収集されるフレームデータ(画素データ)のうち、3次元3D基準断層面のXY面に投影される軌跡の各位置について定まる複数のフレームデータを、例えば、その位置に応じた量だけ互いにシフトさせて相互加算する処理を用いられる。
【0067】
再構成法としてのFBP法は、一群のフレームデータ(画像データ)を個別に、所定の第1の重み付け処理を行ない、次に、第1の重み付け処理後の各画像データに対して、所定のコンボリューション処理を施す。次に、コンボリューション処理後の各投影データに対して、所定の第2の重み付け処理を行なう。次に、第2の重み付け処理した後の画像データを個別に、所定の逆投影(バックプロジェクション:BP)処理をして、BP像(3次元ボリュームデータ)を生成する。
【0068】
本実施例で言う「最適焦点」とは、「焦点が一番合っている、焦点ボケが少ない」という意味であり、注目する部位がそれ以外の部位よりも解像度が良い、又は、画像の全体の解像度がより高いことを言う。
【0069】
基準パノラマ画像が作成されると、そのデータは画像メモリ22bに保管されるともに、表示手段26に適宜な態様で表示される。このうち、表示態様などについて、操作手段25から与えるユーザーの意思が反映される。
【0070】
本実施形態では、奥行き方向パノラマ画像を複数枚作成している。すなわち、図8に示すように、3D基準断面の軌跡に沿って前後にD方向、例えば27mmの断層情報により、複数のパノラマ画像が画像メモリ22bに格納される。
【0071】
表示手段26の表示画面26aには、3D基準断面の軌跡に沿ったパノラマ画像が表示される。ユーザーは表示された表示画面26aの切り出し用パノラマ画像表示部261の画像を見て焦点が合っていないと判断すると、基準面を修正するために、スライスポジション276を左右にスライドさせることにより奥行きの調整が行われる。前述したように、複数の奥行き方向のパノラマ画像が画像メモリ22bに格納されているので、スライスポジション276に従ってパノラマ画像が順次変更され、焦点が一番合っている時点で、修正基準面を設定する。
【0072】
このように、Dの断層情報により、歯列の個人差や位置付けのずれにも柔軟に対応できる。
【0073】
図9及び図10に示すように、焦点が一番合った状態のパノラマ画像が表示画面26aに表示される。そして、保存ボタン273がクリックされると、このパノラマ画像をDICMデータとして画像メモリ22b等に格納する。図9はデンタル切り出しの動作の画面、図10は画像保存の画面である。画像保存画面においては、撮影モードを示すフレーム275、画像編集を示すフレーム277、基準面の奥行き方向を変更させるスライスポジション276が設けられている。
【0074】
ところで、本実施形態では、対象物の所望断面のパノラマ画像のデータから、その画像の複数の部分領域のそれぞれの最適焦点の部分断面画像(デンタル画像)を生成する。このため、図9に示すように、所望断面のパノラマ画像から所望の部分領域(デンタル)を指定してデンタル切り出しが行えるように構成している。
【0075】
切り出し用パノラマ画像表示部261に部分領域(関心領域)であるデンタル切り出し画像枠263が表示される。この画像枠263をデンタル画像を所望する領域に移動させる。すなわち、画像枠263内をドラッグしながら動かすことで表示枠263を移動させることができる。画像枠263に表示されている画像が切り出しデンタル画像表示部264に表示される。デンタル切り出し画像枠263に表示されている画像は、切り出し位置の基準となるものであるため、切り出しデンタル画像表示部264で編集した状態はこの画面上では反映されない。
【0076】
画像表示枠263をドロップすることで、その位置の画像を切り出し、デンタル画像表示部264に再表示するように構成されている。その際に、切り出しデンタル画像表示部264で編集した状態をすべて初期状態に戻される。
【0077】
また、デンタル切り出し画像枠263内に十字のカーソルを表示し、そのカーソルをドラッグしながら回転させることで、切り出しデンタル画像表示部264に表示された画像も枠の中心を軸に回転させて表示するように構成される。
【0078】
本実施形態では、デンタル切り出し画像枠263の大きさは、長辺4cm、短辺3cmである。
【0079】
上下左右回転角度変更ボタン・角度リセットボタン265は、切り出したデンタル画像の角度を変更並びにリセットするものである。上下左右のボタンをクリックすることで、切り出したデンタル画像の角度を調整する。クリック毎に変更された回転角度の画像を再作成し、切り出しデンタル画像表示部264に表示させる。リセットボタンをクリックすることで初回表示の上下左右回転の状態に戻される。奥行き調整ボタン、奥行きリセットボタン262は、切り出したデンタル画像の奥行き方向の調整並びにリセットするものである。
【0080】
テンプレート表示部268には、登録用のテンプレートが表示される。テンプレート表示部268の中の枠を選択していた状態で画像右クリックにより、右クリックメニューで削除が表示される。デンタル切り出し画像枠263を選択している状態では、右クリックメニューの表示は行わないように構成されている。
【0081】
切り出し位置変更ボタン266は、デンタル切り出し位置を変更するもので、移動の幅は選択しているテンプレートによって変更する。移動順序は、右上8番、左上8番、右下8番、左下8番の順序である。
【0082】
奥行き調整ボタン262は、断層位置の奥行きを調整するもので、上下のボタンをクリックすることで前後に調整される。クリック毎に変更された回転角度の画像が切り出しデンタル画像表示部264に表示される。リセットボタンをクリックすることで初回表示の断層位置に戻される。
【0083】
デンタル画像切り替えボタン267は、テンプレート上の1つの枠に登録されている画像を切り替える。
【0084】
切り替えられた際には、デンタル切り出し画像枠263の枠の角度をその画像に対応した状態で再表示する。また、新規画像作成時は無効とされる。
【0085】
テンプレート選択ボタン269は、10枚法、14枚法、個別の3パターンからユーザーが希望するテンプレートを選択する。選択したテンプレートがテンプレート表示部268に表示される。
【0086】
歯番変更ボタン270は、登録歯番の変更を行うものである。画像処理部271は、現在表示中のデンタル画像に画像処理を変える場合にそれぞれのアイコンをクリックする。画像処理は、切り出したデンタル画像個別に保持される。保存ボタン272は、現在テンプレートに等位録されている画像を画像メモリ22bや外部の記憶装置に保存する。10枚法、14枚法の場合は、テンプレート上に表示された画像をアルバムに登録する。個別の場合には、アルバム登録は行わない。
【0087】
閉じるボタン273は、このボタンをクリックすることで、デンタル切り出しモードを終了する。終了時1枚でもテンプレートへの登録を行っていた際には、画像を破棄するかどうかの確認メッセージを表示する。はいを選択した場合はすべてを破棄し、いいえを選択した場合はデンタル切り出し画面に戻るように構成されている。
【0088】
(画像処理)
図11のフローチャートを参照して、制御装置21及び画像生成手段23により実行される処理を説明する。この処理には、上述したように、スキャンによりデータ収集、プレ処理としての基準パノラマ画像の再構成、及び基準パノラマ画像を用いた各種態様に応じた表示などが含まれる。
【0089】
(データ収集及び基準パノラマ画像の再構成)
まず、制御装置21は、被検者Oの位置決めなど撮影の準備が済むと、操作手段25を介して与えられる操作者の指示に応答し、データ収集のためのスキャンを指令する(ステップS1)。これにより、旋回アーム3及びX線照射部110が予め設定されている制御シーケンスに沿って駆動するように指令される。このため、X線照射部110及びX線検出部120の対を被検者Oの顎部の周囲に回転させながら、その回転動作の間に、X線照射部110からパルス状又は連続波のX線を所定周期で又は連続的に曝射させる。このとき、X線照射部110及びX線検出部120の対は、3D基準断層面SS(図7参照)を焦点化するように予め設定されている駆動条件に基づいて回転駆動される。この結果、X線検出部110から曝射されたX線は被検者Oを透過してX線検出部120により検出される。したがって、前述したように、X線検出器121から例えば300fpsのレートでX線透過量を反映したデジタル量のフレームデータ(画素データ)が出力される。このフレームデータはバッファメモリ22aに一時保管される。
【0090】
このスキャンの指令が済むと、処理の指示は画像生成手段23に渡される。画像生成手段23は、3D基準断層面SSの空間位置に対応したトモシンセシス法に基づき、シフト換算法またはFBP法により、図8に示すように、3D基準断層面SSを中心として、前後Dの奥行き方向にパノラマ画像を複数枚作成して、その再構成した画像の各画素値を記憶する(ステップS2)。なお、この再構成処理において、前歯部の中心で縦横の拡大率の比が同じになるように係数を掛ける処理も実行される。
【0091】
画像生成手段23は次いで、この基準パノラマ画像を表示手段26の表示画面26aに表示させる(ステップS3)。この基準パノラマ画像の例を図9、図10に模式的に示す。
【0092】
(最適焦点の断面位置の特定)
これに対して、前後に基準面をずらして修正基準面画像を得る処理を行うと判断した場合(ステップS4、YES)、ステップS5において、基準パノラマ画像が実際の歯列弓とずれている場合には、前後に基準面をずらして修正基準面画像を得る。
【0093】
画像生成手段23は、その前後に移動させた基準画像を表示手段26に表示させ、操作者の参照に供する。
【0094】
この後、画像生成手段23は、その修正基準面画像を他の態様で観察する機会を操作者に与える。つまり、画像生成手段23は、操作者から操作情報に基づいて、その修正基準面画像を他の態様で表示するか否かを判断する。
【0095】
その一例として、画像生成手段23は、修正基準面画像(3次元パノラマ画像)のデンタル切り出し画像(部分領域)を観察するか否かを判断する(ステップS6)。このステップS6の判断がYESになると、画像生成手段23は操作者の操作情報に基づいて修正基準画面像にデンタル切り出し用枠を設定するか否か判断する(ステップS7)。次いで、このステップS7の判断がYESになると、画像生成手段23は操作者の操作情報に基づいて設定された部分領域の部分画像を切り出し(ステップS8)、その部分画像を例えば拡大して表示する(ステップS9)。この部分画像は、例えば、図9に示すように、切り出しデンタル画像表示部264に表示される。
【0096】
この後、画像生成手段23はかかる一連の処理を終了するか否かを操作情報から判断し(ステップS10)、この判断がYESの場合は処理を終了する。これに対し、NOの場合は処理をステップS6に戻して上述した処理を繰り返す。
【0097】
以上のように、本実施形態によれば、パノラマ撮像空間を3次元的に把握することで、投影方向が3次元的に表現できる。従って、パノラマ画像の焦点が合っている限りは、3次元表現された画像に歪が生じず、正確なパノラマ撮影画像を構築することができる。このことにより、パノラマ画像をより、位置決めの良否に関わらず安定に表示でき、かつパノラマ画像全体で鮮明な画像を作るようなこともできる。
【0098】
本実施例では、断層面の画像を得るためにトモシンセシス法(tomosynthesis)を用いている。再構成法としてはシフト加算法またはFBP法を用いている。前述したように、シフト加算法とFBP法は、再構成の原理が異なるため、断層方向の解像度及びコントラストが異なる。このため、診断に用いる目的において、それぞれ適した再構成法がある。まず、断層面の画像を得るためにトモシンセシス法(tomosynthesis)を用いることにより、シフト加算法、FBP法のどちらを用いても好適な例につき説明する。
【0099】
CT撮影を行うとインプラント体周りにアーチファクトが発生し、骨の付き具合が分かりづらいという難点がある。そこで、トモシンセシス法によるCT撮影を行い、所望するデンタル領域をCT撮影の投影データの一部を用いてシフト加算法またはFBP法でインプラント体部分の断層画像を作成することにより、インプラント体周りにアーチファクトが発生しなくなり、骨の付き具合が分かる。
【0100】
次に、FBP法によるパノラマ再構成形成の一例を図12のフローチャートに従い説明する。
【0101】
まず、ディフェクト登録データを読み込み、ディフェクトテーブルを作成する(ステップS21)。そして、選択された軌道データを読み込む(ステップS22)。
【0102】
次に、白黒反転用ルックアップテーブルを作成する(ステップS23)。続いて、濃度補正用画像を読み込み、濃度補正データを作成する(ステップS24)。
【0103】
そして、パノラマ撮影を行い(ステップS25)、パノラマ投影画像を読み込む(ステップS26)。投影画像を読み込み、投影画像に対して、ディフェクト補正、濃度橋正、白黒反転を行う(ステップS27)。
【0104】
続いて、計算時聞を短縮するため、各軌道において、X線検出器121に入射するX線が透過するボクセルの範囲を指定する歯列方向計算範囲テーブルを作成する(ステップS28)。
【0105】
その後、後述するステップS39での各断層の歯列位置補正を行うために使用するテーブルを作成する。すなわち、各軌道においてX線検出器121の中心に入射するX線が透過するボクセルを指定するテーブルと高さの比を決めるためのテーブルを作成する(ステップS29)。
【0106】
次に、再構成領域を占める各ボクセル頂点の実際の位置座標を算出する(ステップS30)。
【0107】
軌道データ(アーム角度と懸垂軸位置)と処理後の投影データを読み込む(ステップS31)。上記投影データに畳み込み積分をする(ステップS32)。
【0108】
計算を簡単化するため、X線源が原点、X線検出器121の中心位置がy軸上+y方向になるよう回転移動と並行移動をする(ステップS33)。
【0109】
そして、各ボクセルを透過するX線が入射する検出器ピクセルを算出する(ステップS34)。各検出器ピクセルのボクセルに対する寄与と画素値の積を算出してボクセルに返し再構成計算、FBP法、和をとっていく(ステップS34)。軌道データが終了するか否か判断し(ステップS35)、終了していない場合にはステップS31に戻り、前述の動作を繰り返す。
【0110】
一方、各ボクセルをX線が透過した回数(n)は軌道によって異なるので、その回数を計算過程で算出しておき、最終結果をnで分割する(ステップS36、S37)。
【0111】
再構成計算をした後の画像は、内側の断層の歯列が左右上下方向に拡大・縮小されているので、それを補正する(ステップS39)。その後、表示手段26に再構成画像を表示させる。
【0112】
上記したように、シフト加算法を用いると、金属アーチファクトが発生しないので、インプラント体への骨の付き具合が診断し易くなる。また、インレーやクラウンの近くのカリエスなども診断し易くなる。さらに、再構成計算が速く、撮影後、速やかに画像を表示して、診断することが出来る。また、ノイズが少なく、正中部分や顎関節部分など線量が少し足りなくなる部分でも診断がし易くなる。一方、FBP法を用いると、高いコントラスト画像を作成することができ、根尖、根管、歯根膜などの診断がし易くなる。さらに、パノラマ画像からデンタル画像を切り出すとき、主に臼歯部で、歯の重なりを無くすことができ、カリエスなどの診断がし易くなる。
【0113】
上記事情に鑑み、トモシンセシス撮影時に、ユーザーがシフト加算法またはFBP法のどちらで再構成を行うか選択できるようにした実施形態を図6に示す。画像処理部20aは、トモシンセシス用撮影画像のデータに所定の処理を行って表示手段26に出力する。画像処理手段20aは、第1メモリ22dと、第2メモリ22eと、シフト加算処理部23aと、第3メモリ22fと、FBP処理部23bと、表示制御部23cとを有する。
【0114】
第1メモリ22dは、トモシンセシス撮影で得られたトモシンセシス用撮影画像のデータを記憶する。シフト加算処理部23aは、トモシンセシス用撮影画像のデータをシフト加算法により再構成し、シフト加算画像のデータを出力する。第2メモリ22eは、シフト加算処理部23aから出力されたシフト加算画像のデータを記憶する。FBP処理部23bは、トモシンセシス用撮影画像のデータをFBP法により再構成し、FBP画像のデータを出力する。第3メモリ22fは、FBP処理部23bから出力されたFBP画像のデータを記憶する。表示制御部23cは、第2メモリ22eに記憶されているシフト加算画像のデータ及び第3メモリ22fに記憶されているFBP画像のデータを処理して、シフト加算画像又はFBP画像の表示制御を行う。
【0115】
次に、本実施形態を用いてトモシンセシス撮影を行う方法について説明する。図13には、当該方法のフローチャートが示されている。
【0116】
ステップS51において、ユーザーから入力部22に対してトモシンセシス撮影の要求があるかどうかを判定する。トモシンセシス撮影の要求がない場合(S51:No)、撮影制御部は、ステップS51の処理を継続する。トモシンセシス撮影の要求があった場合(S51:Yes)、ステップS52において、撮影制御部は、トモシンセシス撮影を開始する。旋回アーム3を作動させて、被検者Oを挟んでX線照射部110とX線検出部120とを回転させながら、X線照射部110からX線を出力させ、被検者Oを透過したX線をX線検出部120で検出し、X線画像情報(トモシンセシス用撮影画像のデータ)に変換する。
【0117】
トモシンセシス撮影が終了すると、ステップS3において、制御装置20の画像処理手段20aは、事前に設定された表示設定に応じて、シフト加算画像又はFBP画像の少なくとも1つを表示手段26に表示させる。
【0118】
図14には、本実施形態において、画像処理部20aにおける処理のフローチャートが示されている。なお、本実施形態において、表示設定としては、表示画像種類、表示形式、表示倍率、表示対象領域及び画像補正処理がある。これらの表示設定は、トモシンセシス撮影前に選択しておき、トモシンセシス撮影中又はトモシンセシス撮影後に変更することもできる。
【0119】
ステップS61において、画像処理手段20aは、表示画像種類を特定する。表示画像種類は、表示手段26の画面に表示される画像を示し、この表示画像種類としては、シフト加算画像又はFBP画像のうち少なくとも1つが選択される。すなわち、シフト加算画像又はFBP画像のうちいずれか1つ又は全てが選択される。具体的な処理としては、表示画像種類の設定に応じた画像を表示制御部23cに出力する。すなわち、シフト加算画像が選択されている場合、シフト加算処理部23aは、第1メモリ22dからトモシンセシス用撮影画像のデータを読み出し、これを再構成してシフト加算画像のデータを得る。シフト加算画像のデータは、第2メモリ22eに一時的に記憶した後、表示制御部23cに出力する。FBP画像が選択されている場合、FBP処理部23bは、第1メモリ22dからトモシンセシス用撮影画像のデータを読み出し、これを再構成してFBP画像のデータを得る。FBP画像のデータは、第3メモリ22fに一時的に記憶した後、表示制御部23cに出力する。
【0120】
ステップS62において、画像処理部20aは、表示形式を特定する。表示形式としては、並列画像表示及び枠表示が選択可能である。並列画像表示は、2つの画像を並列に表示する表示形式である。2つの画像を並列に表示する並列画像表示の場合、いずれの画像を表示するか及びその位置を選択可能である。
【0121】
ステップS63において、表示制御部62は、表示倍率を特定する。表示倍率は、各画像のどの範囲を画像表示領域に表示させるか、すなわち、表示手段26の画面上における各画像の表示倍率を示す。表示手段26の画像表示領域に表示する各画像の縦横の長さ(ドット)を規定することで表示倍率を規定する。
【0122】
ステップS64において、表示制御部23cは、表示対象領域を特定する。表示対象領域は、例えば、各画像の全領域のうちいずれの領域を表示するかを設定する。表示対象領域は、表示対象領域に含まれる各画素の座標又は特定の画素(例えば、表示対象領域の四隅の画素)の座標により規定される。
【0123】
ステップS65において、表示制御部23cは、画像補正処理を行う。画像補正処理には、ゲイン調整(感度補正)、オフセット調整(階調補正)、エッジ強調(周波数強調)、反転(濃淡の逆転)等の処理がある。表示制御部23cに複数の画像のデータが入力されている場合、表示制御部23cは、画像毎に画像補正処理を行う。例えば、単純X線画像にはゲイン調整を行い、FBP画像には、エッジ強調を行うことも可能である。
【0124】
ステップS66において、表示制御部62は、ステップS61〜S65の処理の結果生成された画像(画像表示領域)を示す信号(画像信号Si)を表示手段26に出力する。この画像信号を受信した表示手段26は、画像信号iに応じた画像を表示する。
【0125】
以上のように、本実施形態では、シフト加算画像又は及びFBP画像を表示することができる。これにより、ユーザーは、シフト加算画像又はFBP画像の両方を見ることができるため、効率良く診断を行うことができる。
【0126】
上記実施形態では、単純X線画像、シフト加算画像及びFBP画像の3つの画像を表示可能な構成を示したが、これに限らず、いずれか2つのみを表示可能な構成にも適用可能である。また、上記3つの画像以外の画像を表示する構成に適用してもよい。
【0127】
上記実施形態では、3つのメモリ(第1メモリ22d、第2メモリ22e及び第3メモリ22f)を示したが、別々のメモリである必要はなく、1つのメモリにおける別々のメモリ領域であってもよい。
【0128】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記した実施形態は歯科用X線撮影装置を用いてパノラマ撮影をトモシンセシス法で行う例を示しているが、これ以外に全顎を対象とする頭頸部領域のCT画像、3D画像、セファロ画像撮影にもトモシンセシス法を用いることもできる。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0129】
1 X線撮影装置本体
2 X線CT画像表示装置
3 旋回アーム
110 X線照射部
120 X線検出部
20 画像表示装置本体
21 CPU
22 記憶手段
25 操作手段
26 表示手段
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検者の特定部位を撮影する歯科用X線撮影装置に係り、例えば、歯列弓などのパノラマ画像を撮影するX線パノラマCT装置や頭頸部X線CT装置に関し、特に、1回の断層撮影で任意裁断高さの断層像を再構成するトモシンセシスを行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線断層画像の撮影方法としてトモシンセシスが知られている。トモシンセシスでは、X線源から被検者に対して複数の異なる角度でX線を曝射し、前記被検者を透過したX線をX線検出器により検出し、複数の撮影画像(トモシンセシス用撮影画像)を撮影する。そして、これら複数のトモシンセシス用撮影画像を再構成して任意の断層位置(裁断高さ)における断層画像(再構成断層画像)を得る。
【0003】
従来、歯科用のパノラマX線撮影装置は、撮像空間に機械的に設定される軌道に沿った断層面(基準断層面という)を有し、この基準断層面に焦点が合うようになっている。このため、歯列弓が基準断層面に沿って位置したときには、再構成される画像はぼけることはない。しかし、歯列弓が基準断層面からずれている場合は、画像がぼけてしまう。したがって、不鮮明な部分を精度良く見たい場合は、ぼけた部分が鮮明に見えるように被検者の位置決めをやり直してデータの再収集を行うか、ぼけた部分の口内撮影を施して、より鮮明な画像を得ていた。
【0004】
そのような問題の解決を意図した従来技術の例として、特許文献1のように、画像を高速(例えば300FPS)に収集できる検出器を使用して、その検出データをすべてコンピュータに取り込み、トモシンセシス法を用いて、断層面をソフト的に自在に変えることができるX線パノラマ撮像装置が開発されている。この装置の場合、予め、検出器の検出面(X線の入射面)に平行な複数の断層面の距離の情報(ゲイン)を、事前計測によりファントムを用いて求める。撮像時には、X線管及び検出器の対を被検者の顎部の周囲に回転させながらデータ収集を行う。このときの回転中心の位置は、歯列に対して接近したり離れたりする。収集されたデータは、上述の距離の情報を用いたトモシンセシス法をソフトウエア処理することで、ボケの少ない画像が作成される。この特許文献1には、前記顎顔面に関心領域を指定するステップ、歯列弓を頬側から舌側に向かって正視する方向に関する歯列弓正視情報を基に前記関心領域の指定により前記関心領域を正視したX線パノラマ画像を画像処理手段により生成するステップ、前記関心領域を正視したX線CT画像を表示手段に表示するステップ、を備えたX線パノラマ画像の表示方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−136163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載のパノラマ撮像装置の場合、トモシンセシス法の対象となる複数の断層面が検出器の検出面に平行であると仮定し、パノラマ画像を作成している。画像がデジタル化されてからは、少なくとも基準断層面に歯列が正確に位置決めされた時に、前歯の中心だけは縦横の両方向に共に歪のない画像は作ることは可能ではある。しかし、この位置決めの条件から外れた場合、必ず画像に歪が発生する。また、歯列が基準断層面に沿って位置していない場合、再構成されたパノラマ画像には横方向のぼけも生じる。
【0007】
この発明は、上述の従来の状況に鑑みてなされたもので、少なくとも基準断層面に歯列弓が外れた場合でも、焦点の合ったぼけの少ない画像を容易に提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の歯科用X線撮影装置は、被検者にX線を照射するX線照射部と、入射するX線に応じたデジタル量の電気信号を一定のフレームレートで出力するX線検出部と、前記X線照射部と前記X線検出部の対を、被検者を挟んで互いに対向させた状態で被検者の周りを移動させる旋回手段と、前記旋回手段が前記X線照射部及び前記X線検出部を被検者の周りを移動させることに伴って前記検出部が出力するトモシンセシス用断層画像信号をフレームデータとして順次記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されたフレームデータに基づいて画像再構成演算してパノラマ画像を得る画像処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記画像処理手段は、基準断面を挟んで奥行き方向に複数のパノラマ画像を再構成するように構成すればよい。
【0010】
さらに、前記画像処理手段は、基準断面を奥行き方向にスライドさせて焦点を調整するように構成できる。
【0011】
前記画像処理手段は、前記パノラマ画像のデータから、前記所望断層面のパノラマ画像のうちの指定された部分領域の位置に応じた最適焦点の部分断面像を生成するように構成できる。
【0012】
前記画像処理手段は、フィルタ逆投影法(FBP法)を用いてトモシンセシス用断層画像を再構成することができる。
【0013】
前記画像処理手段は、シフト加算法を用いてトモシンセシス用断層画像を再構成するシフト加算処理部と、前記画像処理手段は、フィルタ逆投影法(FBP法)を用いてトモシンセシス用断層画像を再構成するFBP処理部と、を有し、シフト加算画像又はFBP画像を表示部に表示させるように構成できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、断層面の画像を得るためにトモシンセシス法(tomosynthesis)を用いているので、インプラント体周りにアーチファクトが発生しなくなり、骨の付き具合が分かる。また、シフト加算法とFBP法による再構成を切り替えることで診断に好適な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明による歯科用頭頸部X線CT撮影装置の基本構成を説明するブロック図である。
【図2】この発明による座位タイプの歯科用頭頸部X線CT撮影装置の正面図である。
【図3】この発明による座位タイプの歯科用頭頸部X線CT撮影装置の側面図である。
【図4】この発明による座位タイプの歯科用頭頸部X線CT撮影装置の上面図である。
【図5】この発明によるX線パノラマ画像・CT画像表示装置の画像処理部を説明するための機能ブロック図である。
【図6】この発明によるX線パノラマ画像・X線CT画像表示装置の他の実施形態を説明するためのブロック図である。
【図7】パノラマ撮影の軌道図を示す図である。
【図8】この発明によるパノラマ撮影の状態を示す模式図である。
【図9】この発明による表示画面の一例を示す模式図である。
【図10】この発明による表示画面の一例を示す模式図である。
【図11】この発明の画像処理動作を示すフローチャートである。
【図12】この発明のFBP法の処理動作を示すフローチャートである。
【図13】この発明の画像処理動作を示すフローチャートである。
【図14】この発明の画像処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、被検者(患者)の歯顎領域の歯科用パノラマ撮影装置又は頭頸部領域を撮影する歯科用X線撮影装置のトモシンセシス撮影のする場合の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0017】
図1は、歯科用X線撮影装置としての歯科用頭頸部X線CT撮影装置の基本構成を説明するブロック図である。この装置を用いて、歯科用パノラマX線撮影又は頭頸部X線CT撮影が行える。歯科用頭頸部X線CT撮影装置は、X線撮影装置本体1と、X線パノラマCT画像表示装置2を備え、通信ケーブル等によってデータを送受信する構成になっている。
【0018】
X線撮影装置本体1は、被検者(患者)にX線を照射するX線照射部110と、被検者Oを透過したX線を検出するX線検出部120と、X線照射部110及びX線検出部120を対向して有する旋回アーム3とを備える。
【0019】
パノラマ撮影機能は、X線照射部110及びX線検出部120が歯列弓の形状に沿った所定の軌跡を描くように、旋回アームを水平移動及び水平旋回させながら断層撮影を行う。
【0020】
X線撮影装置本体1は、X線照射部110とX線検出部120とを対向させて支持した旋回アーム3と、被検者Oの顎顔面を保持する被検者保持手段(頭部固定部)4と、旋回アーム3を駆動する駆動ユニット部160と、撮影装置本体制御部170とを備えている。撮影装置本体制御部170には操作パネル71aが付加されている。
【0021】
X線照射部110は、X線を照射するX線管等からなるX線発生器112と、X線ビームBの広がりを規制するスリット等からなるコリメータ111とで構成されており、X線検出部120は、2次元的に広がったCCDセンサやX線間接変換方式(FPD:フラットパネルディテクタ)センサ等からなるX線検出器121を設けたカセット122で構成されている。カセット122はX線検出部120に対して着脱自在であるが、X線検出器121は、カセット122を介さずにX線検出部120に固定的に設けてもよい。なお、本実施形態はトモシンセシス法を採用しているため、X線検出器121は、その横(幅)方向にも複数のX線検出素子を有する。このX線検出器121は、例えば、300fpsのフレームレート(1フレームは、例えば、64×1500画素)で入射X線を、当該X線の量に応じたデジタル電気量の画像データとして収集することができる。以下、この収集データを「フレームデータ」という。
【0022】
駆動ユニット部160は、CT撮影時に旋回アーム3の旋回軸3cを対象撮影領域(画像再構成範囲)の中心に一致させたり、パノラマX線CT撮影時に、旋回軸を歯列弓に沿って回転移動させたりするために、旋回軸をXY方向(水平方向)に移動するXYテーブルを備えた旋回軸位置設定手段161を備えている。この旋回軸位置設定手段161は、旋回アーム3の旋回軸3cを水平移動させるX軸モータ、Y軸モータと、旋回アーム3を回転させるXYテーブルに設けられた旋回軸回転手段162の旋回用モータとを備えている。まず、旋回軸3cは、被検者Oの正中線に一致するように設定される。
【0023】
更に、X線撮影装置本体1は、旋回アーム3を水平方向に直進移動するための旋回アーム位置設定手段31を備える。旋回アーム位置設定手段31で旋回アーム3を直進移動することによって、X線照射部110と被検者Oとの距離、X線検出部120と被検者Oとの距離を変更して、撮影対象の画像エリア(画像再構成範囲)を拡大し、X線検出部120を被検者Oに大幅に近接させた状態で、一度の撮影における撮影領域を増大できるようになっている。
【0024】
撮影時には、X線照射部110及びX線検出部120の対は、被検者Oの口腔部を挟んで互いに対峙するように位置し、その対毎、一体に口腔部の周りを回転するように駆動される。ただし、この回転は単純な円を画く回転ではない。つまり、X線発生器112及びX線検出器121の対は、その対の回転中心RCが、図7に示す如く、略馬蹄形の歯列の内側で円弧を2つ繋いだような山形状の一定の軌道を画くように回転駆動される。この一定の軌道は、口腔部の標準的な形状及びサイズの歯列に沿った断層面(以下、3D基準断層面)にX線焦点を合わせ且つその3D基準断層面を追従するように予め設計された軌道である。この3D基準断層面SSにX線焦点を追従させる際、X線照射部110及びX線検出部120は3D基準断層面からみたときに必ずしも同一の角速度で回転するわけではない。つまり、この回転は、「歯列に沿った移動」とも呼ぶことができる回転であって、角速度を適宜に変えながら回転している。
【0025】
撮影装置本体制御部170は、駆動ユニット部160を制御する制御プログラムを含んだ各種制御プログラムを実行するCPU171と、X線照射部110を制御するX線発生部制御手段172と、X線検出部120を制御するX線検出部制御手段173とを備えている。操作パネル71aは、小型液晶パネルや複数の操作釦で構成されている。操作釦のほか、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力手段を用いることもできる。また、操作パネル71aが液晶モニタ等のディスプレイからなる表示手段を備えるようにしてもよい。
【0026】
例えば、操作パネル71aに設けた表示手段に、X線撮影装置本体1の操作に必要な文字や画像等の情報を表示するように構成してもよい。また、X線パノラマ画像やX線CT画像を表示するX線CT画像表示装置2と接続して、X線CT画像表示装置2の表示手段26に表示される表示内容が表示手段にも表示されるようにしてもよく、表示手段26に表示される文字や画像の上でマウス等によるポインタ操作などを通してX線撮影装置本体1に各種の指令ができるようにしてもよい。
【0027】
X線撮影装置本体1は、操作パネル71a、あるいはX線CT画像表示装置2からの指令に従って、歯列弓のパノラマ撮影を実行する。また、各種指令や座標データ等をX線CT画像表示装置2から受け取る一方、撮影した画像データをX線CT画像表示装置2に送る。また、被撮影領域(撮影対象領域)rrの底辺は、X線照射部110から照射されるコーンビームの下縁の線が基準となる。
【0028】
X線撮影装置本体1と接続されるX線CT画像表示装置2は、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーションで構成されており、表示装置本体20には、例えば、液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示手段26や、キーボード、マウス等で構成された操作手段25が付加されている。表示手段26にCT画像等が表示される。また、表示手段26に表示された文字や画像の上でのマウスでのポインタ操作等を通じて各種指令を与えることができる。表示手段26はタッチパネルで構成することもできるので、この場合、表示手段26は操作手段25を兼ねる。
【0029】
操作手段25は、デンタル切り出し領域である関心領域や基準断層面を指定する手段として機能する。画像表示装置本体20は、各種プログラムを実行する制御装置(CPU)21と、ハードディスク等で構成され、各種撮影データや画像等を記憶する記憶手段22と、画像再構成を行う画像生成手段23とを備えている。ここに、制御装置(CPU)21、記憶手段22、画像生成手段23は画像処理手段を形成する。記憶手段22には、後述する歯列弓正視情報等も記憶される。制御装置(CPU21)は、記憶手段22に格納されたプログラムにより、各種動作を制御し、プログラムに従い、画像生成手段23の機能を果たすように動作する。
【0030】
記憶手段22には、パノラマ撮影から得たパノラマ撮影データ、トモシンセシス(tomosynthesis)用断層画像を再構成して任意の断層位置における断層画像(再構成断層画像)などを記憶することができる。
【0031】
ここに表示手段26は、文字や記号を含む画像を表示する。表示手段26は関心領域指定手段として、歯列弓を表したパノラマ画像を表示し、そのパノラマ画像上でデンタル切り出し領域である関心領域の指定操作を受ける一方、断層画像(再構成断層画像)からデンタル切り出し領域である関心領域の部分断面CT画像(デンタル画像)等を表示する。
【0032】
図2は、座位タイプの歯科用頭頸部X線CT撮影装置のより具体的な正面図、図3は、側面図、図4は、上面図である。
【0033】
座位タイプのX線撮影装置本体1は、左右両側に支柱6が立設されている。支柱6は、床面に設置されたベース5に支持されている。支柱6の上部に、支持フレーム7が支持されており、支持フレーム7の中央部70内に回転駆動ユニット160が設けられている。
【0034】
回転駆動ユニット160の下部には、旋回アーム3が旋回可能に支持されており、旋回アーム3の両側にX線検出部120及びX線照射部110が設けられている。X線撮影装置本体1は、被検者Oを座位状態にするための椅子部40を備える。さらに、X線撮影装置本体1は、椅子部40を上下動するための電動式アクチュエータ40aが設けられている。電動式アクチュエータ40aの動作で椅子部40を上下動して、被検者Oの個体差に応じて撮影対象領域の高さに位置決めする。
【0035】
X線撮影装置本体1は、椅子部40の下部に横方向に延びるフレーム40bが設けられ、このフレーム40bは、上下方向に伸縮自在な電動アクチュエータ40cが取り付けられている。X線撮影装置本体1は、電動アクチュエータ40cの上部に、頭部支持ユニット71を有する。頭部支持ユニット71は、被検者が椅子部40から出入りしやすいように、水平方向に旋回可能で、基準位置に位置決めロック可能となっている。頭部支持ユニット71は、被検者の頭部を固定するための頭部固定部4、被検者Oがグリップするための一対のハンドル71bを備える。
【0036】
頭部固定部4は、撮影に際して被検者Oの頭部を安定的に固定するために、被検者Oの顎を乗せるためのチンレスト4aと、側頭部または外耳口を固定するための左右対称に開閉する側頭部押さえまたはイヤーロッド4bと、前頭部を支持するための前頭部押さえ(図示せず)とで、構成する3点固定方式を基本として、更に後頭部を前頭部に対してベルトを用いて固定するようになっている。
【0037】
さらに、X線撮影装置本体1は、旋回アーム3の底面と頭部固定部4の上部とが干渉しないように干渉防止機構41を備える。干渉防止機構41は、頭部支持ユニット71に設けられた反射型のビームセンサー41aを備える。さらに、干渉防止機構41は、支柱6の所定の高さ位置に反射板41bを備える。反射板41bは、ビームセンサー41aに対向する位置に設けられており、ビームセンサー41aから照射されるビームが反射板41bで反射され、ビームセンサー41aが検知することで電動アクチュエータ40a、40cの上昇を停止するようになっている。これにより、被検者Oの頭部が旋回アーム3に干渉せず安全に構成されている。
【0038】
また、支持フレーム7には、動作表示手段42d及びポジションビーム手段42cが設けられている。動作表示手段42dは、稼働中の装置がどのような操作を行っているか表示する。ポジションビーム手段42cは、選択されたモードの撮影対象領域(画像再構成範囲)がどの範囲かを被検者Oに弱いレーザービームを照射し、その範囲内に被検者Oを位置決めするように電動アクチュエータ40a、40cを操作できるようになっている。
【0039】
さらに、支持フレーム7は、被検者Oの正中位置を確認するための正中用レーザービーム42aを備える。また、旋回アーム3の両側に位置付け用レーザービーム42bが設けられている。位置付け用レーザービーム42bは、X線焦点111aと予め設定された2次元X線検出器121の入力面121aの基準位置121bとを結ぶ直線上を一本の線状に指向するようになっている。さらに、X線焦点111aと2次元X線検出器121の入力面121aに予め設定された基準位置121bとを結ぶ水平な直線に対して直交し、且つ、旋回軸3cの中心を通る垂直の軸線を指向するようになっている。これにより、位置付け用レーザービーム42bは、被検者Oの対象撮影領域(画像再構成範囲)の中心位置を指示し、設定を容易にできるようになっている。
【0040】
回転駆動ユニット160には、旋回軸位置設定手段161及び旋回軸回転手段162を備え、中空式で減速機を使用せずに負荷をモータに直結して駆動するダイレクトドライブ方式で高精度の位置決め機能を有するモータを備える。モータの回転駆動によって旋回軸3cが回転するようになっている。
【0041】
また、旋回軸位置設定手段161は、Y方向に移動するYテーブルと、Yテーブル上でX方向に移動するXテーブルとを備える。
【0042】
旋回アーム3は旋回アーム位置設定手段31を備える。旋回アーム位置設定手段31は、旋回可能な旋回テーブル、旋回テーブルの上を直動可能なスライドテーブルを備える。旋回アーム3の底面には干渉防止センサ(図示せず)が設けられており、旋回アーム3の底面と頭部固定部4の上部とが干渉しないようになっている。頭部固定部4の上部が干渉防止センサに当たると、電動アクチュエータ40a、40cの上昇を停止するようになっている。
【0043】
図4の二点鎖線で示す範囲は、旋回アーム3の旋回軸3cの中心位置がXY方向に水平に移動可能な範囲を移動したときの最大回転半径の例を示している。
【0044】
X線撮影装置本体1は、X線照射部2から照射されるX線を絞るコリメータ(マスク)111を備える。
【0045】
図2に示おいては、記憶手段22は、外部の記憶装置を記載しているが、装置本体20内にも記憶装置を備えている。この発明では、内部の記憶装置と外部の記憶装置で記憶手段22を構成しているが、これに限らず、上記した各種データを格納できるものであればよい。
【0046】
X線照射部110において、X線照射部110の前方に設けられたコリメータ111は、形状を異ならせた複数のスリットを形成したマスクで構成されており、スリットのいずれかを選択し、選択したスリットによってX線発生器112から照射されたX線ビームNBの広がりを制限する仕組みになっている。パノラマ撮影では、パノラマ用開口が選択され、その形状に対応したX線細隙ビームが、X線検出部120のX線検出器121に向かって照射される。そして、その状態で旋回アーム3を旋回させ、X線細隙ビームによって顎顔面を走査しつつ、X線検出器121の検出面に投影された透過画像をパノラマ撮影データとして蓄積することにより、パノラマ撮影が実行される。
【0047】
図5に、このX線パノラマCT撮像装置の制御及び処理のためのブロック図を示す。同図に示す如く、X線撮影装置本体1からのデータは通信ラインを介してX線CT画像表示装置2に与えられる。
【0048】
X線CT画像表示装置2は、例えば、大量の画像データを扱うため、大容量の画像データを格納可能な、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーションで構成される。つまり、X線画像表示装置本体20は、その主要な構成要素して、内部バス28を介して相互に通信可能に接続されたインターフェース27、24、記憶部22、制御装置21、画像生成手段23を備える。制御装置21は、CPU21aとOS等の制御プログラムが格納されたROM21bを備える。記憶部22は、バッファメモリ22a、画像メモリ22b、フレームメモリ22cを備える。制御装置21には、インターフェース24を介し操作手段25、表示手段26が接続されている。
【0049】
インターフェース27は、X線撮影装置本体1に接続されており、制御装置21とX線照射部110、X線検出部120との間で交わされる制御情報や収集データの通信を媒介する。また、これにより、制御装置21はX線撮影装置本体1で撮影したパノラマ画像を例えばDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格により外部のサーバに送出できるようになっている。
【0050】
バッファメモリ22aは、インターフェース27を介して受信した、X線検出部120からのデジタル量のフレームデータを一時的に記憶する。
【0051】
また、画像生成手段23は、制御装置21の制御下に置かれ、装置側が提供する所定の3D基準断層面のパノラマ画像の作成及びそのパノラマ画像の後利用のための処理を操作者との間でインターラクティブに実行する機能を有する。この機能を実現するためのプログラムは、ROM21bに予め格納されている。このため、このROM21bは、この発明に係るプログラムを格納する記録媒体として機能する。なお、このプログラムは予めROM21bに格納しておいてもよいが、場合によっては、外部システムから通信回線や持ち運び可能なメモリを介して、図示しないRAMなどの記録媒体にインストールするようにしてもよい。
【0052】
上述した3D基準断層面SSは、本実施形態では、装置側で予め用意されているものであり、撮像前、または保守点検時などにキャリブレーションできるようになっている。なお、3D基準断層面SSは、複数の断層面から選択するようにしてもよい。かかる選択動作によって、3D基準断層面の位置を、歯列の奥行き(前後)方向の一定範囲で変更できる。
【0053】
画像生成手段23により処理される又は処理途中のフレームデータ及び画像データは画像メモリ22bに読出し書込み可能に格納される。画像メモリ22bには、例えばハードディスクなどの大容量の記録媒体(不揮発性且つ読出し書込み可能)が使用される。また、フレームメモリ22cは、再構成されたパノラマ画像データ、後処理されるパノラマ画像データなどを表示するために使用される。フレームメモリ22cに記憶される画像データは、インターフェース24を介して表示手段26に与えられ、表示手段26の画面に表示される。
【0054】
制御装置21のCPU21aは、ROM21bに予め格納されている制御及び処理の全体を担うプログラムに沿って、装置の構成要素の全体の動作を制御する。かかるプログラムは、操作者からそれぞれに制御項目についてインターラクティブに操作情報を受け付けるように設定されている。このため、CPU21aは、後述するように、フレームデータの収集(スキャン)などを実行可能に構成されている。
【0055】
このため、被検者Oは、図2および図3に示すように、座位の姿勢でチンレスト4aの位置に顎を置いて、ヘッドレストに額を押し当てる。これにより、患者の頭部(顎部)の位置が旋回アーム3の回転空間のほぼ中央部で固定される。この状態で、旋回アーム3が被検者Oの頭部の周りをXY面に沿って回転する。図2、図3は、座位の場合を例示したが、図示しないが立位の装置の場合も当然有り得ることは勿論である。
【0056】
この回転の間に、X線照射部110から所定周期でパルス状のX線が曝射される。このX線は、撮影位置に位置する被検者Oの顎部(歯列部分)を透過してX線検出部120に入射する。X線検出部120は、前述したように、非常に高速のフレームレート(例えば、300fps)で入射X線を検出し、対応する電気量の2次元のデジタルデータ(例えば64×1500画素)をフレーム単位で順次出力する。このフレームデータは、通信ラインを介して、X線CT画像表示装置2のインターフェース27を介してバッファメモリ22aに一時的に保管される。この一時保管されたフレームデータは、その後、画像メモリ22bに転送されて保管される。
【0057】
このため、画像生成手段23は、画像メモリ22bに保管されたフレームデータを用いて3D基準断層面SSに撮像焦点を当てた断層像をパノラマ画像(基準パノラマ画像)として再構成(作成)する。つまり、この基準パノラマ画像は、「3D基準断層面SSに沿って歯列が存在していると仮定したときのパノラマ画像」であると定義される。また、この画像生成手段23は、この基準パノラマ画像を用いて3次元(3D)画像を作成するなどの処理を行う。基準パノラマ画像が実際の歯列弓とずれている場合には、前後に基準面をずらして修正基準面画像を得る。修正基準面画像は、3D基準画像からフレームデータ又は基準パノラマ画像のデータを用いて歯列を最適焦点化した表面画像である。つまり、この前後にユーザーが操作手段25を用いてずらした修正基準面画像は、ボケが少なく、かつ、歯列の実在位置及びその実際のサイズを精度良く表現した最適焦点画像である。
【0058】
とくに、修正基準面画像は、被検者個々によって異なることが殆どであるという事実を考慮した画像である。実際問題として、個々の被検者の歯列は3D基準断層面SSに沿っていることは無く、3D基準断層面SSから部分的に又は全体的にずれていたりする。
【0059】
X線照射部110から照射されたX線は被検者Oの口腔部を透過して、Z軸方向に一定の長さを有する縦長のX線検出部120により検出される。X線照射部110とX線検出部120との間の距離は一定に保持され、かつ、回転中心からX線照射部110及びX線検出部120に至る距離も一定に保持される。その一方で、3D基準断層面SSに焦点を合わせたスキャンを行うため、1回のスキャン(データ収集)の間に、回転中心RCの位置の軌道は、馬蹄形状に湾曲している歯列に対して、一例として前述のように山形状に変化するように設計されている。
【0060】
従来のパノラマ画像は、実際の歯列のずれを考慮しないで作成されている。このため、従来のパノラマ画像から定量的な構造解析は非常に困難であり、被検者毎の様々な形状や位置にある歯列に関わらず、高精度に撮像できるパノラマ撮像装置が望まれていた。
【0061】
本実施例では、断層面の画像を得るためにトモシンセシス法(tomosynthesis)を用いている。トモシンセシス法では、X線照射部110から被検者Oに対して複数の異なる角度でX線を曝射し、前記被検者を透過した前記X線をX線検出部120により検出し、複数の撮影画像(トモシンセシス用撮影画像)を撮影する。そして、これら複数のトモシンセシス用撮影画像を再構成して任意の断層位置における撮影画像(再構成断層画像)を得る。
【0062】
複数のトモシンセシス断層画像データの再構成法としては、シフト加算法と、フィルタ逆投影法(FBP法、FBP:Filtered Back Projection)とが存在する。シフト加算法とFBP法は、再構成の原理が異なるため、断層方向の解像度及びコントラストが異なる。このため、それぞれの再構成法には、以下のような利点がある。
【0063】
まず、シフト加算法の利点につき説明する。シフト加算法を用いると、金属アーチファクトが発生しないので、インプラント体への骨の付き具合が診断し易くなる。また、インレーやクラウンの近くのカリエスなども診断し易くなる。さらに、再構成計算が速く、撮影後、速やかに画像を表示して、診断することが出来る。また、ノイズが少なく、正中部分や顎関節部分など線量が少し足りなくなる部分でも診断がし易くなる。
【0064】
FBP法の利点について、説明する。FBP法を用いると、高いコントラスト画像を作成することができ、根尖、根管、歯根膜などの診断がし易くなる。さらに、パノラマ画像からデンタル画像を切り出すとき、主に臼歯部で、歯の重なりを無くすことができ、カリエスなどの診断がし易くなる。また、奥行方向のパノラマ画像を複数枚作成して、ボリュームデータを作成することにより、歯列横断画像を作成することができる。
【0065】
このように、シフト加算法とFBP法はそれぞれの利点を有し、いずれの再構成法が絶対的に優れているともいえない。従って、それぞれの要求を満たした再構成法を用いればよいが、歯科用パノラマX線装置のトモシンセシス撮影法においては、シフト加算法が一般的に用いられている。
【0066】
本実施例では、断層面の画像を得るためにトモシンセシス法(tomosynthesis)を用いている。再構成法としてのシフト加算法は、スキャンによって一定レートで収集されるフレームデータ(画素データ)のうち、3次元3D基準断層面のXY面に投影される軌跡の各位置について定まる複数のフレームデータを、例えば、その位置に応じた量だけ互いにシフトさせて相互加算する処理を用いられる。
【0067】
再構成法としてのFBP法は、一群のフレームデータ(画像データ)を個別に、所定の第1の重み付け処理を行ない、次に、第1の重み付け処理後の各画像データに対して、所定のコンボリューション処理を施す。次に、コンボリューション処理後の各投影データに対して、所定の第2の重み付け処理を行なう。次に、第2の重み付け処理した後の画像データを個別に、所定の逆投影(バックプロジェクション:BP)処理をして、BP像(3次元ボリュームデータ)を生成する。
【0068】
本実施例で言う「最適焦点」とは、「焦点が一番合っている、焦点ボケが少ない」という意味であり、注目する部位がそれ以外の部位よりも解像度が良い、又は、画像の全体の解像度がより高いことを言う。
【0069】
基準パノラマ画像が作成されると、そのデータは画像メモリ22bに保管されるともに、表示手段26に適宜な態様で表示される。このうち、表示態様などについて、操作手段25から与えるユーザーの意思が反映される。
【0070】
本実施形態では、奥行き方向パノラマ画像を複数枚作成している。すなわち、図8に示すように、3D基準断面の軌跡に沿って前後にD方向、例えば27mmの断層情報により、複数のパノラマ画像が画像メモリ22bに格納される。
【0071】
表示手段26の表示画面26aには、3D基準断面の軌跡に沿ったパノラマ画像が表示される。ユーザーは表示された表示画面26aの切り出し用パノラマ画像表示部261の画像を見て焦点が合っていないと判断すると、基準面を修正するために、スライスポジション276を左右にスライドさせることにより奥行きの調整が行われる。前述したように、複数の奥行き方向のパノラマ画像が画像メモリ22bに格納されているので、スライスポジション276に従ってパノラマ画像が順次変更され、焦点が一番合っている時点で、修正基準面を設定する。
【0072】
このように、Dの断層情報により、歯列の個人差や位置付けのずれにも柔軟に対応できる。
【0073】
図9及び図10に示すように、焦点が一番合った状態のパノラマ画像が表示画面26aに表示される。そして、保存ボタン273がクリックされると、このパノラマ画像をDICMデータとして画像メモリ22b等に格納する。図9はデンタル切り出しの動作の画面、図10は画像保存の画面である。画像保存画面においては、撮影モードを示すフレーム275、画像編集を示すフレーム277、基準面の奥行き方向を変更させるスライスポジション276が設けられている。
【0074】
ところで、本実施形態では、対象物の所望断面のパノラマ画像のデータから、その画像の複数の部分領域のそれぞれの最適焦点の部分断面画像(デンタル画像)を生成する。このため、図9に示すように、所望断面のパノラマ画像から所望の部分領域(デンタル)を指定してデンタル切り出しが行えるように構成している。
【0075】
切り出し用パノラマ画像表示部261に部分領域(関心領域)であるデンタル切り出し画像枠263が表示される。この画像枠263をデンタル画像を所望する領域に移動させる。すなわち、画像枠263内をドラッグしながら動かすことで表示枠263を移動させることができる。画像枠263に表示されている画像が切り出しデンタル画像表示部264に表示される。デンタル切り出し画像枠263に表示されている画像は、切り出し位置の基準となるものであるため、切り出しデンタル画像表示部264で編集した状態はこの画面上では反映されない。
【0076】
画像表示枠263をドロップすることで、その位置の画像を切り出し、デンタル画像表示部264に再表示するように構成されている。その際に、切り出しデンタル画像表示部264で編集した状態をすべて初期状態に戻される。
【0077】
また、デンタル切り出し画像枠263内に十字のカーソルを表示し、そのカーソルをドラッグしながら回転させることで、切り出しデンタル画像表示部264に表示された画像も枠の中心を軸に回転させて表示するように構成される。
【0078】
本実施形態では、デンタル切り出し画像枠263の大きさは、長辺4cm、短辺3cmである。
【0079】
上下左右回転角度変更ボタン・角度リセットボタン265は、切り出したデンタル画像の角度を変更並びにリセットするものである。上下左右のボタンをクリックすることで、切り出したデンタル画像の角度を調整する。クリック毎に変更された回転角度の画像を再作成し、切り出しデンタル画像表示部264に表示させる。リセットボタンをクリックすることで初回表示の上下左右回転の状態に戻される。奥行き調整ボタン、奥行きリセットボタン262は、切り出したデンタル画像の奥行き方向の調整並びにリセットするものである。
【0080】
テンプレート表示部268には、登録用のテンプレートが表示される。テンプレート表示部268の中の枠を選択していた状態で画像右クリックにより、右クリックメニューで削除が表示される。デンタル切り出し画像枠263を選択している状態では、右クリックメニューの表示は行わないように構成されている。
【0081】
切り出し位置変更ボタン266は、デンタル切り出し位置を変更するもので、移動の幅は選択しているテンプレートによって変更する。移動順序は、右上8番、左上8番、右下8番、左下8番の順序である。
【0082】
奥行き調整ボタン262は、断層位置の奥行きを調整するもので、上下のボタンをクリックすることで前後に調整される。クリック毎に変更された回転角度の画像が切り出しデンタル画像表示部264に表示される。リセットボタンをクリックすることで初回表示の断層位置に戻される。
【0083】
デンタル画像切り替えボタン267は、テンプレート上の1つの枠に登録されている画像を切り替える。
【0084】
切り替えられた際には、デンタル切り出し画像枠263の枠の角度をその画像に対応した状態で再表示する。また、新規画像作成時は無効とされる。
【0085】
テンプレート選択ボタン269は、10枚法、14枚法、個別の3パターンからユーザーが希望するテンプレートを選択する。選択したテンプレートがテンプレート表示部268に表示される。
【0086】
歯番変更ボタン270は、登録歯番の変更を行うものである。画像処理部271は、現在表示中のデンタル画像に画像処理を変える場合にそれぞれのアイコンをクリックする。画像処理は、切り出したデンタル画像個別に保持される。保存ボタン272は、現在テンプレートに等位録されている画像を画像メモリ22bや外部の記憶装置に保存する。10枚法、14枚法の場合は、テンプレート上に表示された画像をアルバムに登録する。個別の場合には、アルバム登録は行わない。
【0087】
閉じるボタン273は、このボタンをクリックすることで、デンタル切り出しモードを終了する。終了時1枚でもテンプレートへの登録を行っていた際には、画像を破棄するかどうかの確認メッセージを表示する。はいを選択した場合はすべてを破棄し、いいえを選択した場合はデンタル切り出し画面に戻るように構成されている。
【0088】
(画像処理)
図11のフローチャートを参照して、制御装置21及び画像生成手段23により実行される処理を説明する。この処理には、上述したように、スキャンによりデータ収集、プレ処理としての基準パノラマ画像の再構成、及び基準パノラマ画像を用いた各種態様に応じた表示などが含まれる。
【0089】
(データ収集及び基準パノラマ画像の再構成)
まず、制御装置21は、被検者Oの位置決めなど撮影の準備が済むと、操作手段25を介して与えられる操作者の指示に応答し、データ収集のためのスキャンを指令する(ステップS1)。これにより、旋回アーム3及びX線照射部110が予め設定されている制御シーケンスに沿って駆動するように指令される。このため、X線照射部110及びX線検出部120の対を被検者Oの顎部の周囲に回転させながら、その回転動作の間に、X線照射部110からパルス状又は連続波のX線を所定周期で又は連続的に曝射させる。このとき、X線照射部110及びX線検出部120の対は、3D基準断層面SS(図7参照)を焦点化するように予め設定されている駆動条件に基づいて回転駆動される。この結果、X線検出部110から曝射されたX線は被検者Oを透過してX線検出部120により検出される。したがって、前述したように、X線検出器121から例えば300fpsのレートでX線透過量を反映したデジタル量のフレームデータ(画素データ)が出力される。このフレームデータはバッファメモリ22aに一時保管される。
【0090】
このスキャンの指令が済むと、処理の指示は画像生成手段23に渡される。画像生成手段23は、3D基準断層面SSの空間位置に対応したトモシンセシス法に基づき、シフト換算法またはFBP法により、図8に示すように、3D基準断層面SSを中心として、前後Dの奥行き方向にパノラマ画像を複数枚作成して、その再構成した画像の各画素値を記憶する(ステップS2)。なお、この再構成処理において、前歯部の中心で縦横の拡大率の比が同じになるように係数を掛ける処理も実行される。
【0091】
画像生成手段23は次いで、この基準パノラマ画像を表示手段26の表示画面26aに表示させる(ステップS3)。この基準パノラマ画像の例を図9、図10に模式的に示す。
【0092】
(最適焦点の断面位置の特定)
これに対して、前後に基準面をずらして修正基準面画像を得る処理を行うと判断した場合(ステップS4、YES)、ステップS5において、基準パノラマ画像が実際の歯列弓とずれている場合には、前後に基準面をずらして修正基準面画像を得る。
【0093】
画像生成手段23は、その前後に移動させた基準画像を表示手段26に表示させ、操作者の参照に供する。
【0094】
この後、画像生成手段23は、その修正基準面画像を他の態様で観察する機会を操作者に与える。つまり、画像生成手段23は、操作者から操作情報に基づいて、その修正基準面画像を他の態様で表示するか否かを判断する。
【0095】
その一例として、画像生成手段23は、修正基準面画像(3次元パノラマ画像)のデンタル切り出し画像(部分領域)を観察するか否かを判断する(ステップS6)。このステップS6の判断がYESになると、画像生成手段23は操作者の操作情報に基づいて修正基準画面像にデンタル切り出し用枠を設定するか否か判断する(ステップS7)。次いで、このステップS7の判断がYESになると、画像生成手段23は操作者の操作情報に基づいて設定された部分領域の部分画像を切り出し(ステップS8)、その部分画像を例えば拡大して表示する(ステップS9)。この部分画像は、例えば、図9に示すように、切り出しデンタル画像表示部264に表示される。
【0096】
この後、画像生成手段23はかかる一連の処理を終了するか否かを操作情報から判断し(ステップS10)、この判断がYESの場合は処理を終了する。これに対し、NOの場合は処理をステップS6に戻して上述した処理を繰り返す。
【0097】
以上のように、本実施形態によれば、パノラマ撮像空間を3次元的に把握することで、投影方向が3次元的に表現できる。従って、パノラマ画像の焦点が合っている限りは、3次元表現された画像に歪が生じず、正確なパノラマ撮影画像を構築することができる。このことにより、パノラマ画像をより、位置決めの良否に関わらず安定に表示でき、かつパノラマ画像全体で鮮明な画像を作るようなこともできる。
【0098】
本実施例では、断層面の画像を得るためにトモシンセシス法(tomosynthesis)を用いている。再構成法としてはシフト加算法またはFBP法を用いている。前述したように、シフト加算法とFBP法は、再構成の原理が異なるため、断層方向の解像度及びコントラストが異なる。このため、診断に用いる目的において、それぞれ適した再構成法がある。まず、断層面の画像を得るためにトモシンセシス法(tomosynthesis)を用いることにより、シフト加算法、FBP法のどちらを用いても好適な例につき説明する。
【0099】
CT撮影を行うとインプラント体周りにアーチファクトが発生し、骨の付き具合が分かりづらいという難点がある。そこで、トモシンセシス法によるCT撮影を行い、所望するデンタル領域をCT撮影の投影データの一部を用いてシフト加算法またはFBP法でインプラント体部分の断層画像を作成することにより、インプラント体周りにアーチファクトが発生しなくなり、骨の付き具合が分かる。
【0100】
次に、FBP法によるパノラマ再構成形成の一例を図12のフローチャートに従い説明する。
【0101】
まず、ディフェクト登録データを読み込み、ディフェクトテーブルを作成する(ステップS21)。そして、選択された軌道データを読み込む(ステップS22)。
【0102】
次に、白黒反転用ルックアップテーブルを作成する(ステップS23)。続いて、濃度補正用画像を読み込み、濃度補正データを作成する(ステップS24)。
【0103】
そして、パノラマ撮影を行い(ステップS25)、パノラマ投影画像を読み込む(ステップS26)。投影画像を読み込み、投影画像に対して、ディフェクト補正、濃度橋正、白黒反転を行う(ステップS27)。
【0104】
続いて、計算時聞を短縮するため、各軌道において、X線検出器121に入射するX線が透過するボクセルの範囲を指定する歯列方向計算範囲テーブルを作成する(ステップS28)。
【0105】
その後、後述するステップS39での各断層の歯列位置補正を行うために使用するテーブルを作成する。すなわち、各軌道においてX線検出器121の中心に入射するX線が透過するボクセルを指定するテーブルと高さの比を決めるためのテーブルを作成する(ステップS29)。
【0106】
次に、再構成領域を占める各ボクセル頂点の実際の位置座標を算出する(ステップS30)。
【0107】
軌道データ(アーム角度と懸垂軸位置)と処理後の投影データを読み込む(ステップS31)。上記投影データに畳み込み積分をする(ステップS32)。
【0108】
計算を簡単化するため、X線源が原点、X線検出器121の中心位置がy軸上+y方向になるよう回転移動と並行移動をする(ステップS33)。
【0109】
そして、各ボクセルを透過するX線が入射する検出器ピクセルを算出する(ステップS34)。各検出器ピクセルのボクセルに対する寄与と画素値の積を算出してボクセルに返し再構成計算、FBP法、和をとっていく(ステップS34)。軌道データが終了するか否か判断し(ステップS35)、終了していない場合にはステップS31に戻り、前述の動作を繰り返す。
【0110】
一方、各ボクセルをX線が透過した回数(n)は軌道によって異なるので、その回数を計算過程で算出しておき、最終結果をnで分割する(ステップS36、S37)。
【0111】
再構成計算をした後の画像は、内側の断層の歯列が左右上下方向に拡大・縮小されているので、それを補正する(ステップS39)。その後、表示手段26に再構成画像を表示させる。
【0112】
上記したように、シフト加算法を用いると、金属アーチファクトが発生しないので、インプラント体への骨の付き具合が診断し易くなる。また、インレーやクラウンの近くのカリエスなども診断し易くなる。さらに、再構成計算が速く、撮影後、速やかに画像を表示して、診断することが出来る。また、ノイズが少なく、正中部分や顎関節部分など線量が少し足りなくなる部分でも診断がし易くなる。一方、FBP法を用いると、高いコントラスト画像を作成することができ、根尖、根管、歯根膜などの診断がし易くなる。さらに、パノラマ画像からデンタル画像を切り出すとき、主に臼歯部で、歯の重なりを無くすことができ、カリエスなどの診断がし易くなる。
【0113】
上記事情に鑑み、トモシンセシス撮影時に、ユーザーがシフト加算法またはFBP法のどちらで再構成を行うか選択できるようにした実施形態を図6に示す。画像処理部20aは、トモシンセシス用撮影画像のデータに所定の処理を行って表示手段26に出力する。画像処理手段20aは、第1メモリ22dと、第2メモリ22eと、シフト加算処理部23aと、第3メモリ22fと、FBP処理部23bと、表示制御部23cとを有する。
【0114】
第1メモリ22dは、トモシンセシス撮影で得られたトモシンセシス用撮影画像のデータを記憶する。シフト加算処理部23aは、トモシンセシス用撮影画像のデータをシフト加算法により再構成し、シフト加算画像のデータを出力する。第2メモリ22eは、シフト加算処理部23aから出力されたシフト加算画像のデータを記憶する。FBP処理部23bは、トモシンセシス用撮影画像のデータをFBP法により再構成し、FBP画像のデータを出力する。第3メモリ22fは、FBP処理部23bから出力されたFBP画像のデータを記憶する。表示制御部23cは、第2メモリ22eに記憶されているシフト加算画像のデータ及び第3メモリ22fに記憶されているFBP画像のデータを処理して、シフト加算画像又はFBP画像の表示制御を行う。
【0115】
次に、本実施形態を用いてトモシンセシス撮影を行う方法について説明する。図13には、当該方法のフローチャートが示されている。
【0116】
ステップS51において、ユーザーから入力部22に対してトモシンセシス撮影の要求があるかどうかを判定する。トモシンセシス撮影の要求がない場合(S51:No)、撮影制御部は、ステップS51の処理を継続する。トモシンセシス撮影の要求があった場合(S51:Yes)、ステップS52において、撮影制御部は、トモシンセシス撮影を開始する。旋回アーム3を作動させて、被検者Oを挟んでX線照射部110とX線検出部120とを回転させながら、X線照射部110からX線を出力させ、被検者Oを透過したX線をX線検出部120で検出し、X線画像情報(トモシンセシス用撮影画像のデータ)に変換する。
【0117】
トモシンセシス撮影が終了すると、ステップS3において、制御装置20の画像処理手段20aは、事前に設定された表示設定に応じて、シフト加算画像又はFBP画像の少なくとも1つを表示手段26に表示させる。
【0118】
図14には、本実施形態において、画像処理部20aにおける処理のフローチャートが示されている。なお、本実施形態において、表示設定としては、表示画像種類、表示形式、表示倍率、表示対象領域及び画像補正処理がある。これらの表示設定は、トモシンセシス撮影前に選択しておき、トモシンセシス撮影中又はトモシンセシス撮影後に変更することもできる。
【0119】
ステップS61において、画像処理手段20aは、表示画像種類を特定する。表示画像種類は、表示手段26の画面に表示される画像を示し、この表示画像種類としては、シフト加算画像又はFBP画像のうち少なくとも1つが選択される。すなわち、シフト加算画像又はFBP画像のうちいずれか1つ又は全てが選択される。具体的な処理としては、表示画像種類の設定に応じた画像を表示制御部23cに出力する。すなわち、シフト加算画像が選択されている場合、シフト加算処理部23aは、第1メモリ22dからトモシンセシス用撮影画像のデータを読み出し、これを再構成してシフト加算画像のデータを得る。シフト加算画像のデータは、第2メモリ22eに一時的に記憶した後、表示制御部23cに出力する。FBP画像が選択されている場合、FBP処理部23bは、第1メモリ22dからトモシンセシス用撮影画像のデータを読み出し、これを再構成してFBP画像のデータを得る。FBP画像のデータは、第3メモリ22fに一時的に記憶した後、表示制御部23cに出力する。
【0120】
ステップS62において、画像処理部20aは、表示形式を特定する。表示形式としては、並列画像表示及び枠表示が選択可能である。並列画像表示は、2つの画像を並列に表示する表示形式である。2つの画像を並列に表示する並列画像表示の場合、いずれの画像を表示するか及びその位置を選択可能である。
【0121】
ステップS63において、表示制御部62は、表示倍率を特定する。表示倍率は、各画像のどの範囲を画像表示領域に表示させるか、すなわち、表示手段26の画面上における各画像の表示倍率を示す。表示手段26の画像表示領域に表示する各画像の縦横の長さ(ドット)を規定することで表示倍率を規定する。
【0122】
ステップS64において、表示制御部23cは、表示対象領域を特定する。表示対象領域は、例えば、各画像の全領域のうちいずれの領域を表示するかを設定する。表示対象領域は、表示対象領域に含まれる各画素の座標又は特定の画素(例えば、表示対象領域の四隅の画素)の座標により規定される。
【0123】
ステップS65において、表示制御部23cは、画像補正処理を行う。画像補正処理には、ゲイン調整(感度補正)、オフセット調整(階調補正)、エッジ強調(周波数強調)、反転(濃淡の逆転)等の処理がある。表示制御部23cに複数の画像のデータが入力されている場合、表示制御部23cは、画像毎に画像補正処理を行う。例えば、単純X線画像にはゲイン調整を行い、FBP画像には、エッジ強調を行うことも可能である。
【0124】
ステップS66において、表示制御部62は、ステップS61〜S65の処理の結果生成された画像(画像表示領域)を示す信号(画像信号Si)を表示手段26に出力する。この画像信号を受信した表示手段26は、画像信号iに応じた画像を表示する。
【0125】
以上のように、本実施形態では、シフト加算画像又は及びFBP画像を表示することができる。これにより、ユーザーは、シフト加算画像又はFBP画像の両方を見ることができるため、効率良く診断を行うことができる。
【0126】
上記実施形態では、単純X線画像、シフト加算画像及びFBP画像の3つの画像を表示可能な構成を示したが、これに限らず、いずれか2つのみを表示可能な構成にも適用可能である。また、上記3つの画像以外の画像を表示する構成に適用してもよい。
【0127】
上記実施形態では、3つのメモリ(第1メモリ22d、第2メモリ22e及び第3メモリ22f)を示したが、別々のメモリである必要はなく、1つのメモリにおける別々のメモリ領域であってもよい。
【0128】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記した実施形態は歯科用X線撮影装置を用いてパノラマ撮影をトモシンセシス法で行う例を示しているが、これ以外に全顎を対象とする頭頸部領域のCT画像、3D画像、セファロ画像撮影にもトモシンセシス法を用いることもできる。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0129】
1 X線撮影装置本体
2 X線CT画像表示装置
3 旋回アーム
110 X線照射部
120 X線検出部
20 画像表示装置本体
21 CPU
22 記憶手段
25 操作手段
26 表示手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者にX線を照射するX線照射部と、
入射するX線に応じたデジタル量の電気信号を一定のフレームレートで出力するX線検出部と、
前記X線照射部と前記X線検出部の対を、被検者を挟んで互いに対向させた状態で被検者の周りを移動させる旋回手段と、
前記旋回手段が前記X線照射部及び前記X線検出部を被検者の周りを移動させることに伴って前記検出部が出力するトモシンセシス用断層画像信号をフレームデータとして順次記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたフレームデータに基づいて画像再構成演算してパノラマ画像を得る画像処理手段と、を備えることを特徴とする歯科用X線撮影装置。
【請求項2】
前記歯科用X線撮影装置は、歯科用パノラマX線撮影装置又は歯科用頭頸部X線CT撮影装置であることを特徴とする歯科用X線撮影装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、基準断面を挟んで奥行き方向に複数のパノラマ画像を再構成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歯科用X線撮影装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、基準断面を奥行き方向にスライドさせて焦点を調整することを特徴とする請求項3に記載の歯科用X線撮影装置。
【請求項5】
前記画像処理手段は、前記パノラマ画像のデータから、前記所望断層面のパノラマ画像のうちの指定された部分領域の位置に応じた最適焦点の部分断面像を生成することを特徴とする請求項4に記載の歯科用X線撮影装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は、フィルタ逆投影法(FBP法)を用いてトモシンセシス用断層画像を再構成することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の歯科用X線撮影装置。
【請求項7】
前記画像処理手段は、シフト加算法を用いてトモシンセシス用断層画像を再構成するシフト加算処理部と、前記画像処理手段は、フィルタ逆投影法(FBP法)を用いてトモシンセシス用断層画像を再構成するFBP処理部と、を有し、シフト加算画像又はFBP画像を表示部に表示させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の歯科用X線撮影装置。
【請求項1】
被検者にX線を照射するX線照射部と、
入射するX線に応じたデジタル量の電気信号を一定のフレームレートで出力するX線検出部と、
前記X線照射部と前記X線検出部の対を、被検者を挟んで互いに対向させた状態で被検者の周りを移動させる旋回手段と、
前記旋回手段が前記X線照射部及び前記X線検出部を被検者の周りを移動させることに伴って前記検出部が出力するトモシンセシス用断層画像信号をフレームデータとして順次記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたフレームデータに基づいて画像再構成演算してパノラマ画像を得る画像処理手段と、を備えることを特徴とする歯科用X線撮影装置。
【請求項2】
前記歯科用X線撮影装置は、歯科用パノラマX線撮影装置又は歯科用頭頸部X線CT撮影装置であることを特徴とする歯科用X線撮影装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、基準断面を挟んで奥行き方向に複数のパノラマ画像を再構成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歯科用X線撮影装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、基準断面を奥行き方向にスライドさせて焦点を調整することを特徴とする請求項3に記載の歯科用X線撮影装置。
【請求項5】
前記画像処理手段は、前記パノラマ画像のデータから、前記所望断層面のパノラマ画像のうちの指定された部分領域の位置に応じた最適焦点の部分断面像を生成することを特徴とする請求項4に記載の歯科用X線撮影装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は、フィルタ逆投影法(FBP法)を用いてトモシンセシス用断層画像を再構成することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の歯科用X線撮影装置。
【請求項7】
前記画像処理手段は、シフト加算法を用いてトモシンセシス用断層画像を再構成するシフト加算処理部と、前記画像処理手段は、フィルタ逆投影法(FBP法)を用いてトモシンセシス用断層画像を再構成するFBP処理部と、を有し、シフト加算画像又はFBP画像を表示部に表示させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の歯科用X線撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−85667(P2013−85667A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228372(P2011−228372)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000117054)朝日レントゲン工業株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000117054)朝日レントゲン工業株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
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