説明

毛髪再生方法

【課題】
毛髪再生を促進する因子およびその因子を効率的にスクリーニングするための方法を提供すること。
【解決手段】
本発明は、プロテインキナーゼC(PKC)を活性化する因子が、毛髪再生を促進する活性を有することを見出し、さらに、PKCの高発現させるトランスジェニックマウスを提供することによって、このような毛髪再生を促進する活性を容易にスクリーニングすることができることを見出したことによって、上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪を再生する方法に関する。より特定すると、本発明は、毛髪を再生する方法、組成物、およびそれをスクリーニングする方法およびそれに使用される動物などに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、表皮、真皮、脱脂腺、体毛などの付属器官から構成される。体毛などの付属機関を有する人工皮膚は未だ確立されておらず、臨床医学面から完全な皮膚の再構成・再生技術が望まれている。また、脱毛症に対する治療法の開発は社会的にも高い要請がある。
【0003】
毛髪が抜け落ちたりして、禿げたりすることにより、毛髪再生を待望する人口は、増加の一途である。禿げの原因は、種々研究されているが、決定的な原因は判明していない。
【0004】
また、毛髪を再生する技術の開発が盛んに行われている。
【0005】
しかし、これまでの技術は、毛髪の再生を真に実現するものではなく、むしろ、養毛といった印象に近い技術しか開発されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
毛髪再生を促進する因子およびその因子を効率的にスクリーニングするための方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プロテインキナーゼC(PKC)を活性化する因子が、毛髪再生を促進する活性を有することを見出し、さらに、PKCの高発現させるトランスジェニックマウスを提供することによって、このような毛髪再生を促進する活性を容易にスクリーニングすることができることを見出したことによって、上記課題を解決した。
【0008】
従って、本発明は、以下を提供する。
(1)プロテインキナーゼC(PKC)の活性化因子を含む、毛髪再生のための組成物。
(2)上記活性化因子は、少なくともPKCηを活性化する能力を有する、項目1に記載の組成物。
(3)上記活性化因子は、PKCηに対して他のPKCよりも優先的に活性化する能力を有する、項目1に記載の組成物。
(4)上記活性化因子は、PKCの中でPKCηに対して特異的に活性化する能力を有する、項目1に記載の組成物。
(5)上記活性化因子は、オカダ酸、コレステロール硫酸、ホルボールエステル化合物、サピムトキシンD(sapimtoxin D)、メゼレイン(mezerein)、インドラクタムV(indolactam V)、レジニフェラトキシン(resiniferatoxin)、ビストラテンA(bistratene A)、ブリオスタチン1(bryostatin 1)、ホスファチジルセリン(phosphatidylserine)、ホスファリジルイノシトール(phosphatidylinositol)、ホスファチルイノシトール4,5−ビスホスフェート(phosphatidylinositol 4,5−bisphosphate)、ホスファチジルイノシトール3,4,5−トリホスフェート(phosphatidylinositol 3,4,5−trisphosphate)、ホスファチジルグリセロール(phoshatidylglycerol)、カルジオリピン(cardiolipin)、ホスファチジン酸(phoshatidic acid)、スルファチド(sulfatides)、およびアラキドン酸からなる群より選択される、項目1に記載の組成物。
(6)上記活性化因子は、12−O−テトラデカノイルホルボール−13−酢酸(12−O−tetradecanoylphorbol−13−acetate(TPA))、ホルボール12,13−二酢酸(phorbol 12,13−diacetate)、ホルボール12,13−二酪酸(phorbol 12,13−dibutyrate)、ホルボール12,13−ジデカノエート(phorbol 12,13−didecanoate)、およびホルボール12−ミリステート12−酢酸4−o−メチルエーテル(phorbol 12−myristate 12−acetate 4−o−methyl ether)からなる群より選択されるホルボールエステル化合物を含む、項目1に記載の組成物。
(7)上記活性化因子は、TPAを含む、項目1に記載の組成物。
(8)上記活性化因子は、上記PKCを間接的に活性化する、項目1に記載の組成物。
(9)上記活性化因子は、毛根が存在するかまたは存在し得る部位を特異的に活性化する、項目1に記載の組成物。
(10)上記活性化因子を、毛根が存在するかまたは存在し得る部位に特異的に送達する因子をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(11)上記送達因子は、溶媒および核酸ベクターからなる群より選択される、項目10に記載の組成物。
(12)上記送達因子は、溶媒であり、上記溶媒は、アセトン、エタノールおよびポリプレングリコールからなる群より選択される、項目10に記載の組成物。
(13)上記送達因子は、核酸ベクターであり、上記核酸ベクターは、プラスミド、ウイルスベクターおよびウイルスエンベロープからなる群より選択される、項目10に記載の組成物。
(14)上記活性化因子は、核酸形態で提供される、項目1に記載の組成物。
(15)上記活性化因子は、PKCをコードする核酸またはPKCタンパク質である、項目1に記載の組成物。
(16)上記PKCは、PKCηを含む、項目15に記載の組成物。
(17)上記PKCはタンパク質であり、上記タンパク質は、配列番号2に示す配列またはその改変体を含む、項目15に記載の組成物。
(18)上記タンパク質は、以下:
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;または
(f)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
である、項目17に記載の組成物。
(19)上記PKCは核酸であり、上記核酸は、配列番号1に示す配列またはその改変体を含む、項目15に記載の組成物。
(20)上記核酸は、以下:
(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
である、項目19に記載の組成物。
(21)上記活性化因子は、核酸形態で提供され、上記核酸形態の活性化因子は、ベクターとともに提供される、項目1に記載の組成物。
(22)上記ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、ウイルスエンベロープ、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよびプラスミドベクターからなる群より選択される、項目21に記載の組成物。
(23)さらなる薬効成分を含む、項目1に記載の組成物。
(24)上記さらなる薬効成分は、表皮角化層の除去効果を有する成分を含む、項目23に記載の組成物。
(25)上記表皮角化層の除去効果を有する成分は、グリコール酸、フェノール、トリクロロ酢酸、乳酸およびアルミニウム微小結晶からなる群より選択される、項目24に記載の組成物。
(26)項目1に記載の組成物と、表皮角化層を除去するための手段を備える、毛髪再生のためのキット。
(27)上記表皮角化層を除去するための手段は、グリコール酸、フェノール、トリクロロ酢酸、乳酸およびアルミニウム微小結晶からなる群より選択される成分であるかまたはレーザー発生手段および粘着テープからなる群より選択される、項目26に記載のキット。
(28)上記組成物は、アデノウイルスベクターとともにPKCηをコードする核酸分子を含み、上記表皮角化層を除去するための手段は、粘着テープを含む、項目27に記載のキット。
(29)上記PKCηは、
(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
である、項目28に記載のキット。
(30)上記PKCηは、配列番号1に示す塩基配列からなる、項目28に記載のキット。
(31)毛髪再生を促進する方法であって、
A)PKCを活性化する工程、
を包含する、方法。
(32)上記活性化工程は、少なくともPKCηを活性化することを包含する、項目31に記載の方法。
(33)上記活性化工程は、他のPKCよりも優先的にPKCηを活性化することを包含する、項目31に記載の方法。
(34)上記活性化工程は、PKCの中でPKCηを特異的に活性化することを包含する、項目31に記載の方法。
(35)上記活性化は、オカダ酸、コレステロール硫酸、ホルボールエステル化合物、サピムトキシンD(sapimtoxin D)、メゼレイン(mezerein)、インドラクタムV(indolactam V)、レジニフェラトキシン(resiniferatoxin)、ビストラテンA(bistratene A)、ブリオスタチン1(bryostatin 1)、ホスファチジルセリン(phosphatidylserine)、ホスファリジルイノシトール(phosphatidylinositol)、ホスファチルイノシトール4,5−ビスホスフェート(phosphatidylinositol 4,5−bisphosphate)、ホスファチジルイノシトール3,4,5−トリホスフェート(phosphatidylinositol 3,4,5−trisphosphate)、ホスファチジルグリセロール(phoshatidylglycerol)、カルジオリピン(cardiolipin)、ホスファチジン酸(phoshatidic acid)、スルファチド(sulfatides)、およびアラキドン酸からなる群より選択される因子により達成される、項目31に記載の方法。
(36)上記活性化因子は、12−O−テトラデカノイルホルボール−13−酢酸(12−O−tetradecanoylphorbol−13−acetate(TPA))、ホルボール12,13−二酢酸(phorbol 12,13−diacetate)、ホルボール12,13−二酪酸(phorbol 12,13−dibutyrate)、ホルボール12,13−ジデカノエート(phorbol 12,13−didecanoate)、およびホルボール12−ミリステート12−酢酸4−o−メチルエーテル(phorbol 12−myristate 12−acetate 4−o−methyl ether)からなる群より選択されるホルボールエステル化合物を含む、項目31に記載の方法。
(37)上記活性化因子は、TPAを含む、項目31に記載の方法。
(38)上記活性化は、PKC経路の上流または下流の任意の因子について、上記PKCを活性化するように調節することを包含する、項目31に記載の方法。
(39)上記活性化は、毛根が存在するかまたは存在し得る部位の特異的な活性化である、項目31に記載の方法。
(40)上記活性化は、毛根が存在するかまたは存在し得る部位において特異的に行われる、項目31に記載の方法。
(41)上記送達因子は、溶媒および核酸ベクターからなる群より選択される、項目40に記載の方法。
(42)上記送達因子は、溶媒であり、上記溶媒は、アセトン、エタノールおよびポリプレングリコールからなる群より選択される、項目40に記載の方法。
(43)上記送達因子は、核酸ベクターであり、上記核酸ベクターは、プラスミド、ウイルスベクターおよびウイルスエンベロープからなる群より選択される、項目40に記載の方法。
(44)上記活性化は、遺伝子発現の調節によって行われる、項目31に記載の方法。
(45)上記活性化因子は、PKCをコードする核酸またはPKCタンパク質である、項目31に記載の方法。
(46)上記PKCは、PKCηを含む、項目45に記載の方法。
(47)上記PKCはタンパク質であり、上記タンパク質は、配列番号2に示す配列またはその改変体を含む、項目45に記載の方法。
(48)上記タンパク質は、以下:
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;または
(f)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
である、項目45に記載の方法。
(49)上記PKCは核酸であり、上記核酸は、配列番号1に示す配列またはその改変体を含む、項目45に記載の方法。
(50)上記核酸は、以下:
(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
である、請項目45に記載の方法。
(51)上記活性化因子は、核酸形態で提供され、上記核酸形態の活性化因子は、ベクターとともに提供される、項目31に記載の方法。
(52)上記ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、ウイルスエンベロープ、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、プラスミドベクターからなる群より選択される、項目51に記載の方法。
(53)さらなる薬効成分を投与する工程を包含する、項目31に記載の方法。
(54)上記さらなる薬効成分は、表皮角化層の除去効果を有する成分を含む、項目53に記載の方法。
(55)上記表皮角化層の除去効果を有する成分は、グリコール酸、フェノール、トリクロロ酢酸、乳酸、アルミニウム微小結晶、レーザー、粘着テープからなる群より選択される、項目54に記載の方法。
(56)表皮角化層を除去する工程をさらに包含する、項目31に記載の方法。
(57)上記表皮角化層の除去は、グリコール酸、フェノール、トリクロロ酢酸、乳酸およびアルミニウム微小結晶からなる群より選択される成分であるかまたはレーザー発生手段および粘着テープからなる群より選択される手段により達成される、項目56に記載の方法。
(58)上記PKCの活性化は、アデノウイルスベクターとともにPKCηをコードする核酸分子を提供することによって達成され、上記表皮角化層の除去は、粘着テープにより達成される、項目56に記載の方法。
(59)上記PKCηは、
(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
である、項目56に記載の方法。
(60)上記PKCηは、配列番号1に示す塩基配列からなる、項目56に記載の方法。
(61)PKCηを発現する、トランスジェニック生物。
(62)外因性PKCηをコードする核酸を含む、項目61に記載のトランスジェニック生物。
(63)上記PKCηをコードする核酸は、
(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含む、
項目62に記載のトランスジェニック生物。
(64)上記PKCηをコードする核酸は、毛根が存在するかまたは存在し得る部位への発現を促進するプロモーターに作動可能に連結される、項目62に記載のトランスジェニック生物。
(65)上記プロモーターは、インボルクリンプロモーター、ケラチン1プロモーター、およびケラチン10プロモーターからなる群より選択される、項目64に記載のトランスジェニック生物。
(66)上記プロモーターは、配列番号3、4または5に示す配列またはその配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列もしくは1以上の置換、付加または欠失を含む配列を含み、配列番号3と実質的に同等のプロモーター活性を有する、項目64に記載のトランスジェニック生物。
(67)上記生物は、哺乳動物である、項目61に記載のトランスジェニック生物。
(68)上記生物は、毛髪またはそれに類似の毛を生やすことができる、項目61に記載のトランスジェニック生物。
(69)上記生物は、霊長類またはげっ歯類を含む、項目61に記載のトランスジェニック生物。
(70)上記生物は、マウスである、項目61に記載のトランスジェニック生物。
(71)毛髪再生活性を有する因子をスクリーニングするための方法であって、
A)PKCが高発現された、トランスジェニック生物を提供する工程;
B)上記トランスジェニック生物に候補因子を提供する工程;
C)上記トランスジェニック生物を毛髪再生が確認されるに十分な期間飼育する工程;
D)上記飼育工程の後、上記トランスジェニック生物の毛髪が再生されたかどうかを判定し、再生が確認された候補因子を選択する工程;
E)上記候補因子を、通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物に提供する工程;
F)上記通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物を毛髪再生が確認されるに十分な期間飼育する工程;
G)上記飼育工程の後、上記通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物の毛髪が再生されたかどうかを判定し、再生が確認された候補因子を、毛髪再生活性があると同定する工程、
を包含する、方法。
(72)毛髪再生活性を有する因子をスクリーニングするための方法であって、
A)候補因子をPKCアッセイにより、PKCの活性を確認し、PKC活性を有する候補因子を選択する工程;
B)上記候補因子を、通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物に提供する工程;
C)上記通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物を毛髪再生が確認されるに十分な期間飼育する工程;
D)上記飼育工程の後、上記通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物の毛髪が再生されたかどうかを判定し、再生が確認された候補因子を、毛髪再生活性があると同定する工程、
を包含する、方法。
(73)上記PKCアッセイは、試験管内において、精製PKCタンパク質の存在下、基質タンパク質およびペプチド(ミエリンベーシックプロテイン、PKC変異偽基質、ヒストンH1)へのγ-32P-ATP由来のリン酸基の取り込みをシンチレーションカウンター或いはオートラジオグラフィにより測定することで、実施される、項目72に記載の方法。
(74)毛髪再生活性を有する因子をスクリーニングするためのシステムであって、
A)PKCが高発現された、トランスジェニック生物;および
B)通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物;
を備える、システム。
(75)毛髪再生活性を有する因子をスクリーニングするためのシステムであって、
A)PKCのアッセイキット;および
B)通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物;
を備える、システム。
(76)PKCの発現を調節する物質をスクリーニングするための方法であって、
A)PKCをコードする核酸分子を細胞に導入する工程;
B)上記細胞のうち、上記PKCを発現する細胞を選択する工程;
C)上記選択された細胞に、候補因子を暴露し、上記候補因子が上記細胞に影響を与えるに十分な時間インキュベーションする工程;
D)上記インキュベーション後の上記PKCの発現量を測定する工程;
E)上記測定されたPKCの発現量を変動させる候補因子を、PKCの調節活性があると同定する工程、
を包含する、方法。
(77)上記PKCは、PKCηである、項目76に記載の方法。
(78)上記PKCは、
(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
である、項目76に記載の方法。
(79)上記核酸分子は、ウイルスベクターとともに細胞に導入される、項目76に記載の方法。
(80)上記ウイルスベクターは、アデノウイルスを含む、項目79に記載の方法。
(81)上記細胞は、生体内の一部を構成する、項目76に記載の方法。
(82)上記細胞は、表皮角化層が除去された皮膚細胞である、項目76に記載の方法。
(83)上記PKCの発現は、マーカーを用いて確認される、項目76に記載の方法。
(84)上記PKCの発現は、PKCの活性をアッセイすることにより確認される、項目76に記載の方法。
(85)上記PKCの発現は、mRNAレベルである、項目76に記載の方法。
(86)上記PKCの発現は、タンパク質レベルである、項目76に記載の方法。
(87)上記変動は、減少であり、上記PKCの調節活性は、PKCの抑制活性である、項目76に記載の方法。
(88)上記変動は、増加であり、上記PKCの調節活性は、PKCの活性化活性である、項目76に記載の方法。
(89)PKCの発現を調節する物質をスクリーニングするためのシステムであって、
A)PKCをコードする核酸分子が導入された細胞;および
B)PKCの発現量を測定するための手段;
を備え、上記測定されたPKCの発現量を変動させる候補因子が、PKCの調節活性があると同定される、
システム。
(90)さらに、候補因子を上記細胞に暴露する手段を備える、項目89に記載のシステム。
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、毛髪を再生することが可能となった。本発明はまた、毛髪再生を促進する因子を容易にスクリーニングする方法を提供する。本発明はさらに、PKC特にPKCηを容易にスクリーニングすることができる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により記載する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0012】
以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0013】
(定義)
本明細書において「毛髪」または「毛」とは、哺乳類の皮膚のとくに体表の大部分にわたって生じて,一般に毛衣を形成する糸状の角質器をいう。とくに哺乳動物の皮膚にある角質化した構造のものをいう。毛髪は、幹と毛根とから成り、毛根は毛嚢に包まれて真皮内に深く存在し、栄養および毛幹の成長をつかさどる。毛髪の発毛および脱毛は、図7に示されるような周期を繰り返すとされる。ここでは、毛は、成長期(anagen)、退縮期(catagen)および休止期(telogen)の3期を繰り返し断続的に成長する。本発明は、脱毛期にある状態を処置することにより、休止期にとどまる毛包を成長期へと誘導し、発毛を促進することができるという点で画期的な発明であるといえる。
【0014】
本明細書において「毛根」とは、毛髪で毛嚢中にある部分をいう。毛髪の伸長を司るとされる。
【0015】
本明細書において「プロテインキナーゼC(PKC)」とは、Ca2+/リン脂質依存性プロテインキナーゼ(Ca2+−activated and phospholipid−dependent protein kinase)とも呼ばれる、プロテインキナーゼの一種であり、ATPのγ−リン酸基をタンパク質に存在するある特定のセリンまたはトレオニンの水酸基に転移させる反応を触媒する酵素をいう(EC2.7.1.37)。ジアシルグリセロールにより活性化されて,細胞内の種々の機能タンパク質および酵素などをリン酸化するといわれている。その結果、基質タンパク質の活性が変化し、細胞外からの刺激に対する生理応答が発現される。この酵素の活性発現にはCa2+およびホスファチジルセリンなどのリン脂質が必要であることが多い。ジアシルグリセロールは、一般にPKCのCa2+に対する親和性を上昇させるといわれている。ジアシルグリセロールと類似した構造をもつ発癌プロモーターのホルボールエステルは、PKCを活性化して細胞を癌化させたり、他の活性を発現させたりすると考えられているが、発毛との関連は知られていなかった。PKCは、一般的に、分子量約80,000の単一ポリペプチドであり、α、βI、βII、γ、δ、ε、ζ、ηなどのアイソザイムが存在する。δ、ε、ζ、ηのアイソザイムグループにはCa2+との結合部位がなく、Ca2+非感受性のCキナーゼ(nPKC)ともよばれている。本明細書では、好ましくは、PKCは、nPKCが使用され、より好ましくは、PKCηが使用される。
【0016】
PKCのシグナル伝達系において、レセプター型チロシンキナーゼからのシグナルで作動するMAPKカスケードをPKCα、β1、δ、ε、ζ、η(サブタイプに関しては後述)が活性化すること、アポトーシス誘導時にPKCδが活性化すること、およびアポトーシス抑制においてPKCζの活性化が重要であることなどが報告されている。以上か ら、PKCは細胞の増殖、分化、癌化およびアポトーシスに関係する細胞内機構に深く関与していることは明らかである。しかしながら、現在までにPKCが関与する細胞内シグナル伝達機構を分子レベルで明らかにした例は少なく、発毛との関連が全く報告されていない。
【0017】
本明細書において「PKC」は、上記のようなPKC活性を有する限り、どのようなものでも用いることができる。
【0018】
PKCがタンパク質である場合、そのタンパク質は、
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;または
(f)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチドであり得る。
【0019】
PKCが核酸の場合、その核酸は、
(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり得る。
【0020】
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーおよびその改変体をいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得るものを包含する。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。本発明の組成物において使用される場合は、「タンパク質」は、その組成物が使用されるべき宿主において適合性のあるタンパク質であることが好ましいが、その宿主において適合するように処置され得る限り、どのようなタンパク質を用いてもよい。あるタンパク質が宿主に適合性があるかどうか、または宿主において適合するように処置され得るかどうかは、そのタンパク質をその宿主に移植して、必要に応じて免疫拒絶反応などの副反応を抑制することによりその宿主に定着するかどうかを観察することによって、判定することができる。代表的には、上述の適合性があるようなタンパク質としては、その宿主に由来するタンパク質を挙げることができるがそれに限定されない。
【0021】
本明細書において「単離された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
【0022】
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
【0023】
本発明において使用される生体分子は、生体から採取され得るほか、当業者に公知の方法によっ化学的に合成され得る。例えば、タンパク質であれば、自動固相ペプチド合成機を用いた合成方法は、以下により記載される:Stewart,J.M.et al.(1984).Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Co.;Grant,G.A.(1992).Synthetic Peptides:A User’s Guide,W.H.Freeman;Bodanszky,M.(1993).Principles of Peptide Synthesis,Springer−Verlag;Bodanszky,M.et al.(1994).The Practice of Peptide Synthesis,Springer−Verlag;Fields,G.B.(1997).Phase Peptide Synthesis,Academic Press;Pennington,M.W.et al.(1994).Peptide Synthesis Protocols,Humana Press;Fields,G.B.(1997).Solid−Phase Peptide Synthesis,Academic Press。その他の分子もまた、当該分野において周知の技術を用いて合成することができる。
【0024】
本明細書において生体分子(例えば、bFGFなどをコードする核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、比較可能な配列を有する場合、2以上の配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの配列の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の配列が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの配列を直接比較する場合、その配列間で配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、生体分子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて同一性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、同一性と類似性とは同じ数値を示す。本発明では、このように同一性が高いものまたは類似性が高いものもまた、有用であり得る。
【0025】
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
【0026】
本明細書において、「アミノ酸」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。
【0027】
用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。
【0028】
本明細書において「アミノ酸改変体」とは、天然のアミノ酸ではないが、天然のアミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸改変体としては、例えば、フェニルアラニンのベンジル側鎖(パラ位、メタ位、オルト位など)にアルキル基、ハロ基、ニトロ基などが結合したもの、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。本発明では、アミノ酸改変体は、非天然アミノ酸およびアミノ酸模倣物を包含することがあることが理解される。
【0029】
本明細書において「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。
【0030】
本明細書において、「対応する」アミノ酸または核酸とは、それぞれあるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、あるいは有することが予測されるアミノ酸または核酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、あるポリヌクレオチドのアンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。本発明のペプチドの場合、ヒトの細胞増殖因子における特定の配列が使用されるが、他の種の動物の細胞増殖因子における特定の配列において、本発明のペプチドに対応する部分が「対応するアミノ酸」に相当することが理解される。
【0031】
本明細書において、「対応する」遺伝子とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。例えば、マウスPTENに対応する遺伝子は、ヒトPTENである。
【0032】
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本発明では、生体分子としてポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどが使用される場合、所望の目的(例えば、細胞誘引効果など)が達成される限り、このようなフラグメントもまた、全長のものと同様に使用され得ることが理解される。
【0033】
本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。
【0034】
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子がアンチセンス分子である場合、その生物学的活性は、対象となる核酸分子への結合、それによる発現抑制などを包含する。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。
【0035】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」を含む。「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体などが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。
【0036】
本明細書において「ヌクレオチド」は、糖部分がリン酸エステルになっているヌクレオシドをいい、DNA、RNAなどを含み、天然のものでも非天然のものでもよい。ここで、ヌクレオシドは、塩基と糖とがN−グリコシド結合をした化合物をいう。「ヌクレオチド誘導体」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。DNAは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAを含む。
【0037】
本明細書において、「対応する」遺伝子とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、PTEN遺伝子、またはヒトアディポネクチン遺伝子においてプロモーター活性を有する領域に対応する領域は、他の動物(マウス、ラット、ブタ、ウシなど)においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子、またはプロモーター領域は、本明細書の開示に基づけば、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、PKCη、ヒトインボルクリンプロモーター)の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばマウス、ラット)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
【0038】
本明細書において、「対応する」アミノ酸または核酸とは、それぞれあるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、あるいは有することが予測されるアミノ酸または核酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、あるポリヌクレオチドのアンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。本発明において使用されるプロモーターの場合、プロモーターにおける特定の配列が使用されるが、他の種の動物のプロモーターにおける特定の配列において、本発明のヌクレオチド配列に対応する部分が「対応するヌクレオチド」に相当することが理解される。
【0039】
本明細書において「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。このような改変体もまた、所望の目的を達成することができる限り、本発明の細胞増殖因子として使用することができる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子およびβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種においてもとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
【0040】
本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。
【0041】
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
【0042】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、血管新生、細胞再生など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
【0043】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB BiochemicaLNomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。
【0044】
その文字コードは以下のとおりである。
アミノ酸
3文字記号 1文字記号 意味
Ala A アラニン
Cys C システイン
Asp D アスパラギン酸
Glu E グルタミン酸
Phe F フェニルアラニン
Gly G グリシン
His H ヒスチジン
Ile I イソロイシン
Lys K リジン
Leu L ロイシン
Met M メチオニン
Asn N アスパラギン
Pro P プロリン
Gln Q グルタミン
Arg R アルギニン
Ser S セリン
Thr T トレオニン
Val V バリン
Trp W トリプトファン
Tyr Y チロシン
Asx アスパラギンまたはアスパラギン酸
Glx グルタミンまたはグルタミン酸
Xaa 不明または他のアミノ酸。
【0045】
塩基
記号 意味
a アデニン
g グアニン
c シトシン
t チミン
u ウラシル
r グアニンまたはアデニンプリン
y チミン/ウラシルまたはシトシンピリミジン
m アデニンまたはシトシンアミノ基
k グアニンまたはチミン/ウラシルケト基
s グアニンまたはシトシン
w アデニンまたはチミン/ウラシル
b グアニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル
d アデニンまたはグアニンまたはチミン/ウラシル
h アデニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル
v アデニンまたはグアニンまたはシトシン
n アデニンまたはグアニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル、不明、または他の塩基。
【0046】
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0047】
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬物が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬物の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSOまたはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬物もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
【0048】
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
【0049】
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015M ナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
【0050】
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015M ナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
【0051】
約20ntまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1M NaClにおける融解温度の適切な概算は、
Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)
によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、Developmental Biology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
【0052】
本発明のPKC、インボルクリンプロモーターなどの配列は、配列番号1、3に示す核酸配列の一部を含むPCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを用いてcDNAライブラリーから容易に分離される。本明細書において使用される改変体(PTEN,アディポネクチンプロモーター配列など)は、本質的に1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO);1mM EDTA;42℃の温度で 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に2×SSC(600mM NaCl;60mM クエン酸ナトリウム);50℃の0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、さらに好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO4);15%ホルムアミド;1mM EDTA; 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に50℃の1×SSC(300mM NaCl;30mM クエン酸ナトリウム);1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、最も好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);200mM リン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に65℃の0.5×SSC(150mM NaCl;15mM クエン酸ナトリウム);0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下で配列番号1、3、9、10などに示す配列の1つまたはその一部とハイブリダイズし得る。
【0053】
本明細書において、「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195−197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよび in situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明において使用されるアディポネクチンには、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
【0054】
本明細書において配列(アミノ酸または核酸など)の「同一性」、「相同性」および「類似性」のパーセンテージは、比較ウィンドウで最適な状態に整列された配列2つを比較することによって求められる。ここで、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の比較ウィンドウ内の部分には、2つの配列の最適なアライメントについての基準配列(他の配列に付加が含まれていればギャップが生じることもあるが、ここでの基準配列は付加も欠失もないものとする)と比較したときに、付加または欠失(すなわちギャップ)が含まれる場合がある。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基がどちらの配列にも認められる位置の数を求めることによって、マッチ位置の数を求め、マッチ位置の数を比較ウィンドウ内の総位置数で割り、得られた結果に100を掛けて同一性のパーセンテージを算出する。検索において使用される場合、相同性については、従来技術において周知のさまざまな配列比較アルゴリズムおよびプログラムの中から、適当なものを用いて評価する。このようなアルゴリズムおよびプログラムとしては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTAおよびCLUSTALW(Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(8):2444−2448、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Res.22(2):4673−4680、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383−402、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272)があげられるが、何らこれに限定されるものではない。特に好ましい実施形態では、従来技術において周知のBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)(たとえば、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272、Altschul et al.,1997,Nuc.Acids Res.25:3389−3402を参照のこと)を用いてタンパク質および核酸配列の相同性を評価する。特に、5つの専用BLASTプログラムを用いて以下の作業を実施することによって比較または検索が達成され得る。
【0055】
(1) BLASTPおよびBLAST3でアミノ酸のクエリー配列をタンパク質配列データベースと比較;
(2) BLASTNでヌクレオチドのクエリー配列をヌクレオチド配列データベースと比較;
(3) BLASTXでヌクレオチドのクエリー配列(両方の鎖)を6つの読み枠で変換した概念的翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較;
(4) TBLASTNでタンパク質のクエリー配列を6つの読み枠(両方の鎖)すべてで変換したヌクレオチド配列データベースと比較;
(5) TBLASTXでヌクレオチドのクエリ配列を6つの読み枠で変換したものを、6つの読み枠で変換したヌクレオチド配列データベースと比較。
【0056】
BLASTプログラムは、アミノ酸のクエリ配列または核酸のクエリ配列と、好ましくはタンパク質配列データベースまたは核酸配列データベースから得られた被検配列との間で、「ハイスコアセグメント対」と呼ばれる類似のセグメントを特定することによって相同配列を同定するものである。ハイスコアセグメント対は、多くのものが従来技術において周知のスコアリングマトリックスによって同定(すなわち整列化)されると好ましい。好ましくは、スコアリングマトリックスとしてBLOSUM62マトリックス(Gonnet et al.,1992,Science 256:1443−1445、Henikoff and Henikoff,1993,Proteins 17:49−61)を使用する。このマトリックスほど好ましいものではないが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用できる(たとえば、Schwartz and Dayhoff,eds.,1978,Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure,Washington: National Biomedical Research Foundationを参照のこと)。BLASTプログラムは、同定されたすべてのハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価し、好ましくはユーザー固有の相同率などのユーザーが独自に定める有意性の閾値レベルを満たすセグメントを選択する。統計的な有意性を求めるKarlinの式を用いてハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価すると好ましい(Karlin and Altschul,1990,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2267−2268参照のこと)。
【0057】
本明細書において「PKCの活性化」とは、プロテインキナーゼCが有するキナーゼ活性を上昇させることをいう。本明細書では、試験管内において、サンプル、ならびに精製PKCタンパク質の存在下、基質タンパク質(例えば、ミエリン塩基性タンパク質(ウシ由来)(Myelin Basic Protein from bovine brain (Sigma社、製品番号M1891、ヒストン タイプIII−S (Histon from calf thymus Type III−S、suitable for substrate for protein kinase C、Sigma社、H4524)およびペプチド(ミエリン塩基性タンパク質(例えば、Myelin basic Protein fragment 104−118Sigma社、製品番号M8184、蛋白配列GKGRGLSLSRFSWGA=配列番号6)、PKC変異偽基質(例えば、([Ser25]−Protein Kinase C fragment 19−31、Sigma社、P1835、蛋白配列RFARKGSLRQKNV=配列番号7)へのγ−32P−ATP由来のリン酸基の取り込みをシンチレーションカウンターあるいはオートラジオグラフィにより測定することにより、PKCの活性化を判定することができる。
【0058】
本明細書において、PKCηに対して他のPKCよりも「優先的に活性化する」とは、PKCの活性化因子について言及されるとき、PKCのうち、アイソマーであるPKCηへの活性化能が、他のアイソマーよりも有意に高いことをいう。
【0059】
本明細書において、PKCの中でPKCηに対して「特異的に活性化する」とは、PKCηは活性化するが、他のPKCアイソマーは有意に活性化しないことをいう。
【0060】
本明細書においてPKC「活性化因子」とは、PKCを活性化する任意の因子をいう。
【0061】
本明細書において「因子」としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、エネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において用いられる因子としては、たとえば、PKCη遺伝子をコードする核酸配列またはその相補配列に対して、ハイブリダイズするに十分な同一性を有する核酸配列を含む核酸分子;PKCη遺伝子をコードする核酸配列またはその相補配列に対して、核酸合成するに十分な同一性を有する核酸配列を含む核酸分子;PKCη遺伝子をコードする核酸配列またはその相補配列のうち、少なくとも15の連続する塩基配列または識別を可能とするに十分な配列を有する核酸分子;PTEN遺伝子をコードする核酸配列またはその相補配列と、少なくとも70%相同であることを特徴とする核酸分子;PKCη遺伝子をコードする核酸配列またはその相補配列と1または数個の置換、付加または欠失を有する点を除き同一の配列を含むことを特徴とする核酸分子;PKCη遺伝子産物に対して特異的に相互作用する抗体(例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体);などを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0062】
本明細書において、PKCの活性化因子としては、例えば、活性化因子は、オカダ酸、コレステロール硫酸、ホルボールエステル化合物、サピムトキシンD(sapimtoxin D)、メゼレイン(mezerein)、インドラクタムV(indolactam V)、レジニフェラトキシン(resiniferatoxin)、ビストラテンA(bistratene A)、ブリオスタチン1(bryostatin 1)、ホスファチジルセリン(phosphatidylserine)、ホスファリジルイノシトール(phosphatidylinositol)、ホスファチルイノシトール4,5−ビスホスフェート(phosphatidylinositol 4,5−bisphosphate)、ホスファチジルイノシトール3,4,5−トリホスフェート(phosphatidylinositol 3,4,5−trisphosphate)、ホスファチジルグリセロール(phoshatidylglycerol)、カルジオリピン(cardiolipin)、ホスファチジン酸(phoshatidic acid)、スルファチド(sulfatides)、およびアラキドン酸などを上げることができるがそれらに限定されない。
【0063】
本明細書において「ホルボールエステル化合物」とは、ジテルペン核を骨格に持ち、特に12位または13位にエステル結合により高級脂肪酸等の側鎖を有する脂溶性化合物をいい、例えば、12−O−テトラデカノイルホルボール−13−酢酸(12−O−tetradecanoylphorbol−13−acetate(TPA)=PMA(Phorbol 12−Myristate 13−acetate)ともいう)、ホルボール12,13−二酢酸(phorbol 12,13−diacetate)、ホルボール12,13−二酪酸(phorbol 12,13−dibutyrate)、ホルボール12,13−ジデカノエート(phorbol 12,13−didecanoate)、およびホルボール12−ミリステート12−酢酸4−o−メチルエーテル(phorbol 12−myristate 12−acetate 4−o−methyl ether)などが例示される。好ましくは、本発明のホルボールエステルとしては、TPAを使用することができるがそれに限定されない。
【0064】
【化1】

【0065】
TPAは、概して、1〜100nMの範囲でプロテインキナーゼC(PKC)のグループA(α, βI, βII, γ)、グループB(δ, ε, η, θ)を特異的に活性化する。TPAなどのホルボールエステルは、天然のPKCリガンド/アクティベーターであるジアシルグリセロールに擬態することによりPKCに影響を及ぼすとされている。TPAは、マウスにおける刺激性のある強力な発ガン促進物質(プロモーター)であるとされている(Newton,A.C.(1995)J.Biol.Chem.270,28495;Chiloeches,A.et al.(1999)J.Biol.Chem.274,19762;Acs,P.et al.(1997)J.Biol.Chem.272,22148;4.Blumberg,P.M.(1980)CRCCrit.Rev.Toxicol.8,153;および5.Jacobson,K.et al.(1975)CancerRes.35,2991)。TPAは、Promegaなどから市販されている。
【0066】
本明細書においてPKCの活性化因子は、PKCを直接活性化するものでもよいが、PKCのシグナル伝達機構の上流または下流にある因子を調節するなどして「間接的に」活性化するものであってもよい。
【0067】
本明細書において「毛根が存在するかまたは存在し得る部位を特異的に活性化する」とは、毛根が存在するかまたは存在し得る部位の活性化を促進するが、他の部位の活性化は促進しないことをいう。
【0068】
本明細書において「毛根が存在するかまたは存在し得る部位」とは、正常検体において毛根が存在する部位をいう。
【0069】
本明細書において「毛根が存在するかまたは存在し得る部位に特異的に送達する因子」とは、本発明の活性化因子を、毛根が存在するかまたは存在し得る部位に、特異的に送達する能力を有する任意の因子をいう。このような特異的送達因子は、どのような因子でもよいが、例えば、特定の溶媒(例えば、アセトン、エタノールおよびポリプレングリコール)または核酸ベクター(プラスミド、ウイルスベクターおよびウイルスエンベロープ)などであり得る。そのような特異的送達因子を同定する方法としては、例えば、本発明の活性化因子と候補となる因子とを組み合わせ、その組み合わせ物を被検体に投与し、毛根が存在するかまたは存在し得る部位に本発明の活性化因子が送達されるかどうかおよび他の部位に送達されないかどうかを判定し、本発明の活性化因子が、毛根が存在するかまたは存在し得る部位に送達されるが、毛根が存在するかおよび存在し得る部位以外には送達されない因子を選択することによって同定される。
【0070】
本発明の活性化因子は、PKCを活性化することができる限りどのような形態で投与されてもよく、「核酸」の形態または「タンパク質」の形態で投与されてもよい。
【0071】
本発明の活性化因子が核酸形態で提供される場合、核酸形態の活性化因子は、ベクターと共に提供されることが好ましい。
【0072】
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」または「組み換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などの宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能なものが例示される。ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチプルクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)に記載されている。
【0073】
本明細書において「発現ベクター」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬物耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
【0074】
本発明において用いられ得る動物細胞に対する「組み換えベクター」としては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107[特開平3−229(Invitrogen)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAMo、pAMoA[J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)]、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus)(MSCV)に基づいたレトロウイルス型発現ベクター、pEF−BOS、pEGFPなどが例示される。
【0075】
本明細書において「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。
【0076】
本明細書において「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、通常RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。したがって、本明細書においてある遺伝子のプロモーターの働きを有する部分を「プロモーター部分」という。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流または最終エキソン下流の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモーター領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。
【0077】
本明細書において、「毛根が存在するかまたは存在し得る部位への発現を促進するプロモーター」とは、毛根が存在するかまたは存在し得る部位への、本発明の活性化因子の発現を促進することができる限り、どのようなものでも使用することができることが理解される。そのようなプロモーターとしては、例えば、インボルクリンプロモーター(配列番号3)、ケラチン1プロモーター(配列番号4)、およびケラチン10プロモーター(配列番号5)などを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0078】
本明細書において「インボルクリンプロモーター(Involucrin promoter)」とは、配列番号3に示す配列またはその配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列もしくは1以上の置換、付加または欠失を含む配列を含み、配列番号3と実質的に同等のプロモーター活性を有するものをいう。インボルクリンに関しては、J Invest Dermatol. 2004 Jul;123(1):13−22などに概説されるように、その調節機構は周知であり、任意のプロモーター領域を本発明において使用することができることが理解される。
【0079】
本明細書において「ケラチン1プロモーター」とは、配列番号4に示す配列またはその配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列もしくは1以上の置換、付加または欠失を含む配列を含み、配列番号4と実質的に同等のプロモーター活性を有するものをいう。
【0080】
本明細書において「ケラチン10プロモーター」とは、配列番号5に示す配列またはその配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列もしくは1以上の置換、付加または欠失を含む配列を含み、配列番号5と実質的に同等のプロモーター活性を有するものをいう。
【0081】
本明細書において「エンハンサー」とは、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられる配列をいう。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
【0082】
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
【0083】
本明細書において「上流」という用語は、特定の基準点からポリヌクレオチドの5’末端に向かう位置を示す。
【0084】
本明細書において「下流」という用語は、特定の基準点からポリヌクレオチドの3’末端に向かう位置を示す。
【0085】
本明細書において「塩基対の」および「Watson & Crick塩基対の」という表現は、本明細書では同義に用いられ、二重らせん状のDNAにおいて見られるものと同様に、アデニン残基が2つの水素結合によってチミン残基またはウラシル残基と結合し、3つの水素結合によってシトシン残基とグアニン残基とが結合するという配列の正体に基づいて互いに水素結合可能なヌクレオチドを示す(Stryer,L.,Biochemistry,4th edition,1995を参照)。
【0086】
本明細書において「相補的」または「相補体」という用語は、本明細書では、相補領域全体がそのまま別の特定のポリヌクレオチドとWatson & Crick塩基対を形成することのできるポリヌクレオチドの配列を示す。本発明の目的で、第1のポリヌクレオチドの各塩基がその相補塩基と対になっている場合に、この第1のポリヌクレオチドは第2のポリヌクレオチドと相補であるとみなす。相補塩基は一般に、AとT(あるいはAとU)、またはCとGである。本願明細書では、「相補」という語を「相補ポリヌクレオチド」、「相補核酸」および「相補ヌクレオチド配列」の同義語として使用する。これらの用語は、その配列のみに基づいてポリヌクレオチドの対に適用されるものであり、2つのポリヌクレオチドが事実上結合状態にある特定のセットに適用されるものではない。
【0087】
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。 そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。本発明において使用されるベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、ウイルスエンベロープ、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよびプラスミドベクターなどを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0088】
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)が挙げられる。
【0089】
本明細書において「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞などが例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。本発明において用いられる細胞は、形質転換体であってもよい。
【0090】
本明細書において、レトロウイルスの感染方法は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology 前出(特にUnits 9.9−9.14)などに記載されるように、当該分野において周知であり、例えば、トリプシナイズして胚性幹細胞を単一細胞懸濁物(single−cell suspension)にした後、ウイルス産生細胞(virus−producing cells)(パッケージング細胞株=packaging cell lines)の培養上清と一緒に 1−2時間共培養(co−culture)することにより、十分量の感染細胞を得ることができる。
【0091】
本明細書において使用されるゲノムまたは遺伝子座などを除去する方法において用いられる、Cre酵素の一過的発現、染色体上でのDNAマッピングなどは、細胞工学別冊実験プロトコールシリーズ「FISH実験プロトコール ヒト・ゲノム解析から染色体・遺伝子診断まで」松原謙一、吉川 寛 監修 秀潤社(東京)などに記載されるように、当該分野において周知である。
【0092】
本明細書において「生体内」または「インビボ」(in vivo)とは、生体の内部をいう。特定の文脈において、「生体内」は、目的とする組織または器官が配置されるべき位置をいう。スクリーニングを行う場合、インビボでのスクリーニングを行うことができる。
【0093】
本明細書において「インビトロ」(in vitro)とは、種々の研究目的のために生体の一部分が「生体外に」(例えば、試験管内に)摘出または遊離されている状態をいう。インビボと対照をなす用語である。スクリーニングを行う場合、インビトロでのスクリーニングを行うことができる。
【0094】
本明細書において「薬効成分」とは、薬理学的作用を有する任意の成分をいう。そのような成分としては、例えば、ビタミン、発毛に必要な栄養分(タンパク質(アミノ酸)、亜鉛、銅、鉄等の無機塩類)、表皮角化層の除去効果を有する成分を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0095】
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバントなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0096】
本明細書において「表皮角化層の除去効果を有する成分」とは、表皮角化層の除去効果を有する成分であれば、どのような成分を用いてもよく、例えば、グリコール酸、フェノール、トリクロロ酢酸、乳酸およびアルミニウム微小結晶などを挙げることができる。
【0097】
このような除去効果を達成するには、表皮角化層を除去するための手段を用いてもよい。そのような手段は、上記成分のほか、物理的手段(例えば、レーザー発生手段および粘着テープなど)を用いてもよい。
【0098】
本明細書において「トランスジェニック生物」とは、少なくとも1つの遺伝子が、もとの生物と比べて改変された生物をいう。トランスジェニックマウスを作製するための一般的な技術は、国際公開WO0l/13150(Ludwig Inst.Cancer Res.)に記載されている。米国特許第4,873,19l号(Wagner et a1.)は、哺乳動物接合体へのDNAのマイクロインジェクションによって得られた、外因性DNAを有する哺乳動物を教示している。 このほかにもまた、トランスジェニック生物を作り出すための様々な方法は、例えば、M.Markkulaら、Rev.Reprod.,1,97−106(1996);R.T.WallらJ.Dairy Sci.,80,2213−2224(1997);J.C.Dalton、ら、Adv.Exp.Med.Biol.,411,419−428(1997);およびH.Lubonら、Transfus.Med.Rev.,10,131−143(1996)などが挙げられるがそれらに限定されない。これらの文献の各々は、本明細書において参考として援用される。そのような中、最近10年間ほどで、遺伝子機能の解析を目的として、胚性幹(ES)細胞の相同組換えを介したトランスジェニック(ノックアウト、ノックインを含む)動物の解析が重要な手段となってきている。
【0099】
高等生物では、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子を用いる陽性選択およびHSVのチミジンキナーゼ遺伝子またはジフテリア毒素遺伝子を用いる陰性選択により組換え体の効率的な選別が行われている。PCRまたはサザンブロット法により相同組換え体の選択が行われる。すなわち、標的遺伝子の一部を陽性選択用のネオマイシン耐性遺伝子等で置換し、その末端に陰性選択用のHSVTK遺伝子等を連結したターゲティングベクターを作成し、エレクトロポレーションによりES細胞に導入し、G418およびガンシクロビルの存在下で選択して、生じたコロニーを単離し、さらにPCRまたはサザンブロットにより相同組換え体を選択する。
【0100】
このように、内在する標的遺伝子を置換または破壊して、機能が喪失したかまたは変更された変異を有するトランスジェニック(標的遺伝子組換え)マウスを作製する方法は、標的とした遺伝子だけに変異が導入されるので、その遺伝子機能の解析に有用である。本発明を使用すれば、さらにメチル化により転移効率が上がることから、遺伝子の解析効率が飛躍的に上昇する。
【0101】
所望の相同組換え体を選択した後、得られた組換えES細胞を胚盤注入法または集合キメラ法により正常な胚と混合してES細胞と宿主胚とのキメラマウスを作製する。胚盤注入法では、ES細胞を胚盤胞にガラスピペットで注入する。集合キメラ法では、ES細胞の塊と透明帯を除去した8細胞期の胚とを接着させる。ES細胞を導入した胚盤胞を偽妊娠させた代理母の子宮に移植してキメラマウスを得る。ES細胞は、全能性を有するので、生体内では、生殖細胞を含め、あらゆる種類の細胞に分化することができる。ES細胞由来の生殖細胞を有するキメラマウスと正常マウスを交配させるとES細胞の染色体をヘテロに有するマウスが得られ、このマウス同士を交配するとES細胞の改変染色体をホモに有するトランスジェニックマウスが得られる。得られたキメラマウスから改変染色体をホモに有するトランスジェニックマウスを得るには、雄性キメラマウスと雌性野生型マウスとを交配して、F1世代のヘテロ接合体マウスを産出させ、生まれた雄性および雌性のヘテロ接合体マウスを交配して、F2世代のホモ接合体マウスを選択する。F1およびF2の各世代において所望の遺伝子変異が導入されているか否かは、組換えES細胞のアッセイと同様に、サザンブロッティング、PCR、塩基配列の解読など当該分野において慣用される方法を用いて分析され得る。
【0102】
他の方法として、Creレコンビナーゼの細胞種特異的発現とCre−loxPの部位特異的組み換えを併用する技術が注目されている。Cre−loxPを用いるトランスジェニックマウスは、標的遺伝子の発現を阻害しない位置にネオマイシン耐性遺伝子を導入し、後に削除するエキソンをはさむようにしてloxP配列を挿入したターゲティングベクターをES細胞に導入し、その後相同組換え体を単離する。この単離したクローンからキメラマウスを得、遺伝子改変マウスが作製される。次に、大腸菌のP1ファージ由来の部位特異的組換え酵素Creを組織特異的に発現するトランスジェニックマウスとこのマウスを交配させると、Creを発現する組織中でのみ遺伝子が破壊される(ここでは、Creは、loxP配列(34bp)を特異的に認識して、2つのloxP配列にはさまれた配列で組換えを起こさせ、これが破壊される)。臓器特異的なプロモータに連結したCre遺伝子を有するトランスジェニックマウスと交配させるか、またはCre遺伝子を有するウイルスベクターを使用して、成体でCreを発現させることができる。特定の遺伝子を解析する方法としてジーントラップ(遺伝子トラップ)法が注目されている。ジーントラップ法では、プロモータを有しないレポーター遺伝子が細胞に導入され、その遺伝子が偶発的にゲノム上に挿入されると、レポーター遺伝子が発現することを利用して、新規な遺伝子を単離(トラップ)される。ジーントラップ法は、マウス初期胚操作法,胚性幹細胞培養法,相同組換えによる遺伝子ターゲティング法に基づく、効率的な挿入変異と未知遺伝子同定のための方法である(Stanford WL.,et al.,Nature Genetics 2:756−768(2001))。ジーントラップ法では、遺伝子の導入ならびに挿入変異体の選択およびその表現型解析が比較的に容易である。
【0103】
ジーントラップ法では、例えば、スプライシング/アクセプター配列とポリA付加シグナルとの間にlacZとneoとの融合遺伝子であるβ−geoを連結したジーントラップベクターをES細胞に導入し、G418で選択すると、ES細胞で発現している遺伝子を偶然にトラップしたクローンだけが選択される。
【0104】
このようにして得られたクローンからキメラ胚を作製すると、トラップした遺伝子の発現パターンにより、さまざまなX−galの染色パターンを示す。このようにして、ジーントラップ法では、未知の遺伝子が単離され、その遺伝子発現パターンが解析され、またその遺伝子が破壊される。
【0105】
本発明においては、所望のトランスジェニック生物をプレスクリーニングし得る。プレスクリーニングの方法としては、例えばジーントラップ法を用いることができる(Zambrowicz et a1.;Nature,392:608・611(1998);Gossler et al.;Science,244:463−465(1989);Ska11nes,WC.e七al・;Genes Dev.6:903・918(1992);Friedrich,G.etaL;Genes Dev.5:1513−1523(1991))。
【0106】
本発明で用いられる生物および細胞は、毛髪を発生することができる限り、どの生物を用いてもよい。好ましくは、本発明において使用される生物または細胞は、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)由来のものが用いられる。1つの実施形態では、げっ歯類(例えば、マウス、ラットなど)、偶蹄類(例えば、ブタなど)または霊長類(例えば、チンパンジー、ニホンザル、ヒトなど)由来の細胞、特にヒト由来の細胞が用いられるがそれに限定されない。本発明において用いられる細胞は、幹細胞であってもよく体細胞であってもよい。また、そのような細胞は、付着細胞、浮遊細胞、組織形成細胞およびそれらの混合物などであり得る。
【0107】
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物、細胞または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の因子(例えば、抗体)、ポリペプチドまたは核酸分子を使用することができる。スクリーニングは、インビトロ、インビボなど実在物質を用いた系を使用してもよく、インシリコ(コンピュ−タを用いた系)の系を用いて生成されたライブラリーを用いてもよい。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られた化合物もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。また本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物、診断剤、治療薬などが提供されることも企図される。
【0108】
本明細書においてPKCのアッセイは、サンプル、ならびに精製PKCタンパク質の存在下、基質タンパク質(ミエリン塩基性タンパク質(ウシ由来)(Myelin Basic Protein from bovine brain =Sigma社、製品番号M1891、ヒストン タイプIII−S (Histon from calf thymus Type III−S、suitable for substrate for protein kinase C、Sigma社、H4524)およびペプチド(ミエリン塩基性タンパク質フラグメント(例えば、Myelin basic Protein fragment 104−118 Sigma社、製品番号M8184、アミノ酸配列GKGRGLSLSRFSWGA=配列番号6)、PKC変異偽基質(例えば、([Ser25]−Protein Kinase C fragment 19−31、Sigma社、P1835、アミノ酸配列RFARKGSLRQKNV=配列番号7)へのγ-32P-ATP由来のリン酸基の取り込みをシンチレーションカウンターあるいはオートラジオグラフィにより測定すること(上記とほぼ同様の記載になります)により実施することができる。
【0109】
好ましい実施形態において、本発明の因子は、標識されているかまたは標識と結合し得るものであることが有利であり得る。本明細書において「標識」とは、その対象の検出を容易にするために用いられる物質をいう。標識としては、例えば、蛍光、リン光、化学発光、放射能、酵素基質反応および抗原抗体反応などの技法を用いるものを挙げることができるがそれらに限定されない。そのように標識がされている場合、本発明の因子によって測定することができる種々の状態を直接および/または容易に測定することができる。そのような標識は、識別可能に標識される限り、どのような標識でもよく、例えば、蛍光標識、化学発光標識、放射能標識などが挙げられるがそれらに限定されない。あるいは、その因子が抗体などの免疫反応を利用して相互作用する場合、ビオチン−ストレプトアビジンのような免疫反応においてよく利用される系を用いてもよい。
【0110】
本明細書において「候補薬物」とは、スクリーニングにおいて用いられる場合、そのスクリーニングが対象とする目的に関して候補となる薬物をいう。そのような薬物は、どのような因子であってもよい。候補薬物としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアル・ケミストリーで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子を上げることができるがそれらに限定されない。候補薬物は、その候補が化合物である場合、候補化合物とも言う。このような候補薬物の集合をライブラリーとも言う。
【0111】
本明細書において「化合物種」とは、ある化合物の集合において、特定の目的とする活性を有するなど、所望の性質を有する1種の化合物についていう。例えば、活性を調節する化合物の集合において、化合物が特定される場合、そのような化合物は、化合物種と称され得る。本明細書では、単に化合物とも称される。
【0112】
従って、本明細書において「ライブラリー」とは、スクリーニングをするための化合物などの一定の集合をいう。ライブラリーは、同様の性質を有する化合物の集合であっても、ランダムな化合物の集合であってもよい。好ましくは、同様の性質を有すると予測される化合物の集合が使用されるが、それに限定されない。本発明で使用する化合物ライブラリーは、例えば、コンビナトリアル・ケミストリー技術、醗酵方法、植物および細胞抽出手順などが挙げられるがこれらに限定されない、いずれかの手段により、作製することができるかまたは入手することができる。コンビナトリアルライブラリを作成する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、E.R.Felder,Chimia 1994,48,512−541;Gallopら、J.Med.Chem.1994,37,1233−1251;R.A.Houghten,Trends Genet.1993,9,235−239;Houghtenら、Nature 1991,354,84−86;Lamら、Nature 1991,354,82−84;Carellら、Chem.Biol.1995,3,171−183;Maddenら、Perspectives in Drug Discovery and Design2,269−282;Cwirlaら、Biochemistry 1990,87,6378−6382;Brennerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1992,89,5381−5383;Gordonら、J.Med.Chem.1994,37,1385−1401;Leblら、Biopolymers 1995,37 177−198;およびそれらで引用された参考文献を参照のこと。これらの参考文献は、その全体を、本明細書中で参考として援用する。
【0113】
本明細書において「調節」とは、核内受容体について言及するとき、その生物学的活性が変更されることをいう。
【0114】
本明細書において「阻害」とは、核内受容体について言及するとき、その生物学的活性が低減または消失することをいう。
【0115】
本明細書において「促進」とは、核内受容体について言及するとき、その生物学的活性が増加または無い状態から有る状態が生じることをいう。
【0116】
本明細書において「生物学的試験」とは、実際の生体反応を用いてある化合物がある活性を有するかどうかを判定することをいう。生物学的試験は、インビトロおよびインビボでの試験を包含する。したがって、生物学的試験は、インシリコとは対立する概念である。
【0117】
本明細書において「評価」とは、スクリーニングにおいて用いられるとき、ある指標(例えば、医薬としての活性)に関して、候補化合物がそのような指標の要件を満たすかどうか決定することをいう。そのような評価は、当該分野において公知の方法を用いて行うことができ、インシリコ(コンピュータを用いる)かまたはウェット(実際の生物学的アッセイを行う)によって行うことができる。
【0118】
本発明のスクリーニング技術において、スクリーニングのヒットは、遺伝子技術を用いたアッセイなどによって確認することができる。
【0119】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど遺伝子産物の「発現」とは、その遺伝子(通常は、DNA形態)などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一形態であり得る。別の実施形態では、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシング(例えば、リーダー配列切除)を受けたものであり得る。
【0120】
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、生物の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(例えば、罹患部位などの特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。そのような特異的発現は、抗原提示細胞の特性を利用して実現することができる。従って、肥満疾患の医薬のスクリーニングは、特定の指標の特異的発現を確認することによっても行うことができる。
【0121】
本明細書においてある細胞において「のみ」発現するとは、その細胞においてのみある遺伝子が発現し、他の種の細胞においては実質的に発現しないことをいう。従って、ある細胞においてのみ発現することは、その細胞において特異的に発現することを包含する。この場合、脂肪細胞において活性であり、かつ他の細胞における非特異的発現がほとんどない。
【0122】
本明細書において「活性」とは、核酸、タンパク質などの遺伝子または遺伝子産物について言及されるとき、その遺伝子または遺伝子産物が本来発揮しようとする機能についての活性をいう。そのような活性としては、例えば、PKCについていえば、キナーゼ活性下流のタンパク質の活性調節、リン酸化、放射標識した基質の放射能の取り込みなどを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0123】
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、必要に応じてマイクロタイタープレートを用いる、ELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
【0124】
本明細書において「発現量」とは、対象となる細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノ−ザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
【0125】
本明細書において、改変体分子の設計は、変異前のタンパク質またはポリペプチド分子(例えば、野生型分子(例えば、PKC))のアミノ酸配列および立体構造を解析することによって、各アミノ酸がどのような特性(例えば、触媒活性、他の分子との相互作用など)を担うかを予測し、所望の特性の改変(例えば、触媒活性の向上、タンパク質の安定性の向上など)をもたらすために適切なアミノ酸変異を算出することにより行われる。設計の方法は、好ましくはコンピューターを用いて行われる。このような設計方法で用いられるコンピュータープログラムの例としては、本明細書において言及されるように、以下が挙げられる:構造を解析するプログラムとして、X線回折データの処理プログラムであるDENZO(マックサイエンス);位相を決定するための処理プログラムとして、PHASES(Univ.of Pennsylvania、PA、USA);初期位相の改良のためのプログラムとして、プログラムDM(CCP4パッケージ、SERC);3次元グラフィックスを得るためのプログラムとしてプログラムO(Uppsala Universitet、Uppsala、スウェーデン);立体構造精密化プログラムとして、XPLOR(Yale University、CT、USA);そして、変異導入モデリングのためのプログラムとして、Swiss−PDBViewer(前出)。
【0126】
本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物(例えば、インヒビター、活性化剤など)が提供されることも企図される。
【0127】
本発明では、コンピュータモデリングを行うためのコンピュータープログラムもまた、フラグメントまたは化学物質を選択するプロセスにおいて使用され得る。このようなプログラムとしては、以下が挙げられる。
【0128】
1.GRID(P.J.Goodford,「A Computational Procedure for Determining Energetically Favorable Binding Sites on Biologically Important Macromolecules」,J.Med.Chem.,28,849−857頁(1985))。GRIDは、Oxford University,Oxford,UKから入手可能である。
【0129】
2.MCSS(A.Mirankerら,「Functionality Maps of Binding Sites:A Multiple Copy Simultaneous Search Method」 Proteins:Structure,Function and Genetics,11,29−34頁(1991))。MCSSは、Molecular Simulations,San Diego,CAから入手可能である。
【0130】
3.AUTODOCK(D.S.Goodsellら,「Automated Docking of Substrates to Proteins by Simulated Annealing」,Proteins:Structure,Function,and Genetics,8,195−202頁(1990))。AUTODOCKは、Scripps Research Institute,La Jolla,CAから入手可能である。
【0131】
4.DOCK(I.D.Kuntzら,「A Geometric Approach to Macromolecule−Ligand Interactions」,J.Mol.Biol.,161,269−288頁(1982))。DOCKは、University of California,San Francisco,CAから入手可能である。
【0132】
一旦、適切な候補薬物(化合物種)が選択されると、それらは、単一化合物またはPKCとの複合体にアセンブリすることができる。構築に先だって、PKCまたはその調節薬物の構造座標に関連してコンピューター画面上に表示される3次元イメージ上で、互いのフラグメントの関連性の視覚的検査が行われ得る。これに続き、QuantaまたはSybyl[Tripos Associates,St.Louis,MO]のようなソフトウェアを用いるマニュアルでのモデル構築が行われる。
【0133】
個々の化学物質を連結させる際に使用され得る有用なプログラムは、以下を含む。
【0134】
1.CAVEAT(P.A.Bartlettら、「CAVEAT:A Program to Facilitate the Structure−Derived Design of Biologically Active Molecules」(Molecular Recognition in Chemical and Biological Problems,Special Pub.,Royal Chem.Soc.,78,182−196頁(1989));G,LauriおよびP.A.Bartlett,「CAVEAT:a Program to Facilitate the Design of Organic Molecules」,J.Comput.Aided Mol.Des.,8,51−66頁(1994))。CAVEATは、University of California,Berkeley,CAから入手可能である。
【0135】
2.ISIS(MDL Information Systems,San Leandro,CA)のような3Dデータベースシステム。この分野は、Y.C.Martin,「3D Database Searching in Drug Design」,J.Med.Chem.,35,2145−2154頁(1992)において概説される。
【0136】
3.HOOK(M.B.Eisenら,「HOOK:A Program for Finding Novel Molecular Architectures that Satisfy the Chemical and Steric Requirements of a Macromolecule Binding Site」,Proteins:Struct.,Funct.,Genet.,19,199−221頁(1994))。HOOKは、Molecular Simulations,San Diego,CAから入手可能である。
【0137】
上記のように一度に1つの化学物質を段階的様式でPKCのインヒビターなどとして構築することを進める代わりに、阻害性または他のPKCの結合化合物は、空の結合部位を使用し、または必要に応じていくつかの既知のインヒビターの部分を含めるなどにより、グローバルでまたはデノボで設計され得る。多くの新規リガンド設計方法としては、例えば、以下を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0138】
1.LUDI(H.−J.Bohm,「The Computer Program LUDI:A New Method for the De Novo Design of Enzyme Inhibitors」,J.Comp.Aid.Molec.Design,6 61−78頁(1992))。LUDIは、Molecular Simulations Incorporated,San Diego,CAから入手可能である。
【0139】
2.LEGEND(Y.Nishibataら,Tetrahedron,47,8985頁(1991))。LEGENDは、Molecular Simulations Incorporated,San Diego,CAから入手可能である。
【0140】
3.LeapFrog(Tripos Associates,St.Louis,MOから入手可能である)。
【0141】
4.SPROUT(V.Gilletら,「SPROUT:A Program for Structure Generation」,J.Comput.Aided Mol.Design,7,127−153頁(1993))。SPROUTは、University of Leeds,UKから入手可能である。
【0142】
他の分子モデリング技術もまた、本発明に従って使用され得る[例えば、N.C.Cohenら,「Molecular Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry」,J.Med.Chem.,33,883−894頁(1990)を参照のこと;M.A.NaviaおよびM.A.Murcko,「The Use of Structural Information in Drug Design」,Current Opinions in Structural Biology,2,202−210頁(1992)もまた参照のこと;L.M.Balbesら,「A Perspective of Modern Methods in Computer−Aided Drug Design」,(Reviews in Computational Chemistry,vol.5,K.B.LipkowitzおよびD.B.Boyd編,VCH,New York,337−380頁(1994));W.C.Guida,「Software For Structure−Based Drug Design」,Curr.Opin.Struct.Biology.,4,777−781頁(1994)]。
【0143】
一旦上記の方法により化合物が設計されるかまたは選択されると、その物質がPKCに結合し得る効率が、計算による評価により試験され、そして最適化され得る。例えば、有効なPKCインヒビターは、好ましくは、その結合状態と遊離状態との間に相対的に小さなエネルギー差(すなわち、結合の小さな変形エネルギー)を示さなければならない。従って、最も効率的なPKCインヒビターは、好ましくは、約10kcal/モル以下(より好ましくは、7kcal/モル以下)結合の変形エネルギーを用いて設計されるべきである。PKCインヒビターは、全結合エネルギーにおいて類似する2つ以上のコンフォメーションで結合ポケットと相互作用し得る。これらの場合、結合の変形エネルギーは、遊離物質のエネルギーとインヒビターがタンパク質に結合するとき観察されるこれらのコンフォメーションの平均エネルギーとの間の差であると考えられる。
【0144】
PKCに結合するとして設計または選択される物質は、その結合状態において、好ましくは、標的酵素および周囲の水分子との静電的斥力相互作用がないように、計算によりさらに最適化され得る。このような非相補的静電的相互作用は、電荷−電荷斥力相互作用、双極子−双極子斥力相互作用および電荷−双極子斥力相互作用を含む。
【0145】
特定のコンピューターソフトウェアは、化合物変形エネルギーおよび静電的相互作用を評価する分野において入手可能である。このような使用のために設計されたプログラムの例として、以下が挙げられる:Gaussian 94,revision C(M.J.Frisch,Gaussian,Inc.,Pittsburgh,PA 1995);AMBER,version 4.1(P.A.Kollman,University of California at San Francisco,1995);QUANTA/CHARMM(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA 1995);Insight II/Discover,(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA 1995);DelPhi(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA 1995);およびAMSOL(Quantum Chemistry Program Exchange,Indiana University)。これらのプログラムは、例えば、Silicon Graphicsワークステーション(例えば、「IMPACT」グラフィクスを備えるIndigo)を用いて実行され得る。他のハードウェアシステムおよびソフトウェアパッケージもまた、当業者に公知である。
【0146】
本発明により可能な別のアプローチは、PKCに全体または部分的に結合し得る化学物質または化合物についての低分子データベースの計算的なスクリーニングである。このスクリーニングにおいて、結合部位へのこのような物質の適合の質は、形状的相補性または見積もられた相互作用エネルギーのいずれかにより判定され得る[E.C.Mengら,J.Comp.Chem.,16,505−524頁(1992)]。
【0147】
本明細書において「毛髪再生が確認されるに十分な期間」飼育するとは、本発明が対象とする生物について、毛髪再生を確認するのに十分な量または長さの毛髪が成長するのに十分な期間をいい、生物によって変動するが、当業者は、その生物に適切な期間を理解することができる。そのような期間としては、例えば、マウスであれば、少なくとも1日〜5週間、ラットであれば、少なくとも1日〜5週間、サルであれば、少なくとも数日〜数ヶ月、ヒトであれば、1週間〜数ヶ月などであり得るが、それらに限定されない。
【0148】
本明細書において「候補因子が該細胞に影響を与えるに十分な時間」とは、対象となる細胞について、候補因子が該細胞に影響を与えるに十分な時間をいい、細胞によって変動するが、当業者は、その細胞に適切な期間を理解することができる。そのような期間としては、例えば、通常の細胞であれば、例えば、少なくとも30分〜24時間などを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0149】
(医薬)
本発明の活性化因子が医薬として使用される場合、そのような組成物は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。
【0150】
本明細書において使用されるキャリアは、薬学的に受容可能であることが好ましく、そのようなキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、本発明のペプチド、またはその改変体もしくは誘導体を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
【0151】
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0152】
さらなる例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
【0153】
以下に本発明の医薬組成物の一般的な調製法を示す。なお、動物薬組成物、医薬部外品、水産薬組成物、食品組成物および化粧品組成物等についても公知の調製法により製造することができる。
【0154】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドなどは、薬学的に受容可能なキャリアと配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、座剤等の固形製剤、またはシロップ剤、注射剤、懸濁剤、溶液剤、スプレー剤等の液状製剤として経口または非経口的に投与することができる。薬学的に受容可能なキャリアとしては、上述のように、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、崩壊阻害剤、吸収促進剤、吸着剤、保湿剤、溶解補助剤、安定化剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が挙げられる。また、必要に応じ、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることができる。また、本発明の組成物には本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドなど以外の物質を配合することも可能である。非経口の投与経路としては、静脈内注射、筋肉内注射、経鼻、直腸、膣および経皮等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0155】
固形製剤における賦形剤としては、例えば、グルコース、ラクトース、スクロース、D−マンニトール、結晶セルロース、デンプン、炭酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、塩化ナトリウム、カオリンおよび尿素等が挙げられる。
【0156】
固形製剤における滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ホウ酸末、コロイド状ケイ酸、タルクおよびポリエチレングリコール等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0157】
固形製剤における結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、白糖、D−マンニトール、結晶セルロース、デキストリン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン溶液、ゼラチン溶液、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、およびシェラック等が挙げられる。
【0158】
固形製剤における崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カンテン末、ラミナラン末、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、ステアリン酸モノグリセリド、ラクトースおよび繊維素グリコール酸カルシウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0159】
固形製剤における崩壊阻害剤の好適な例としては、水素添加油、白糖、ステアリン、カカオ脂および硬化油等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0160】
固形製剤における吸収促進剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩基類およびラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0161】
固形製剤における吸着剤としては、例えば、デンプン、ラクトース、カオリン、ベントナイトおよびコロイド状ケイ酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0162】
固形製剤における保湿剤としては、例えば、グリセリン、デンプン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0163】
固形製剤における溶解補助剤としては、例えば、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0164】
固形製剤における安定化剤としては、例えば、ヒト血清アルブミン、ラクトース等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0165】
固形製剤として錠剤、丸剤等を調製する際には、必要により胃溶性または腸溶性物質(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)のフィルムで被覆していてもよい。錠剤には、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーテイング錠あるいは二重錠、多層錠が含まれる。カプセル剤にはハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。座剤の形態に成形する際には、上記に列挙した添加物以外に、例えば、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、半合成グリセライド等を添加することができるがそれらに限定されない。
【0166】
液状製剤における溶剤の好適な例としては、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油およびトウモロコシ油等が挙げられる。
【0167】
液状製剤における溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0168】
液状製剤における懸濁化剤の好適な例としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0169】
液状製剤における等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0170】
液状製剤における緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩等の緩衝液等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0171】
液状製剤における無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムおよび塩酸プロカイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0172】
液状製剤における防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0173】
液状製剤における抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロールおよびシステイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0174】
注射剤として調製する際には、液剤および懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であることが好ましい。通常、これらは、細菌保留フィルター等を用いるろ過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化する。さらにこれらの処理後、凍結乾燥等の方法により固形物とし、使用直前に無菌水または無菌の注射用希釈剤(塩酸リドカイン水溶液、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノールまたはこれらの混合溶液等)を添加してもよい。
【0175】
さらに、必要ならば、医薬組成物は、着色料、保存剤、香料、矯味矯臭剤、甘味料等、ならびに他の薬物を含んでいてもよい。
【0176】
本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第14版、その追補またはその最新版、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する糖鎖組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
【0177】
本発明の組成物の投与すべき量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0178】
本明細書において「患者」とは、本発明の処置が適用される生物をいい、「被検体」または「被験体」ともいわれる。患者は好ましくは、ヒトであり得る。
【0179】
本発明は、患者への有効量の本発明の組成物の投与による処置、阻害および予防の方法を提供する。好ましい局面において、本発明の組成物は実質的に精製されたものであり得る(例えば、その効果を制限するかまたは望ましくない副作用を生じる物質が実質的に存在しない状態が挙げられる)。
【0180】
別の実施形態において、化合物または組成物は、小胞、特に、リポソーム中に封入された状態で送達され得る(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−BeresteinおよびFidler(編),Liss,New York,353〜365頁(1989);Lopez−Berestein,同書317〜327頁を参照のこと;広く同書を参照のこと)。
【0181】
さらに別の実施形態において、化合物または組成物は、制御された徐放系中で送達され得る。
【0182】
本明細書中、「投与する」とは、本発明の医薬などまたはそれを含む医薬組成物を、単独で、または他の治療剤と組み合わせて処置が意図される宿主に与えることを意味する。組み合わせは、例えば、混合物として同時に、別々であるが同時にもしくは並行して;または逐次的にかのいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬物が、治療混合物としてともに投与される提示を含み、そして組み合わせた薬物が、別々であるが同時に(例えば、同じ個体へ別々の粘膜を通じての場合)投与される手順もまた含む。「組み合わせ」投与は、第1に与えられ、続いて第2に与えられる化合物または薬物のうちの1つを別々に投与することをさらに含む。
【0183】
本発明における医薬の投与は、どのような手法を用いて行ってもよいが、好ましくは、針無し注射を用いることが有利である。患者に過度の負担を与えることなく投与を行えるからである。
【0184】
ここで本発明における針無注射器とは、注射針を用いずに、ガス圧または弾性部材の弾力によりピストンを移動させて薬液を皮膚に噴射し、薬物成分を皮下、より好ましくは皮下の細胞内に投与する医療機器を意味する。
【0185】
具体的には例えば、シマジェットTM (島津製作所製)、メディ・ジェクター ビジョン(Medi−Jector Vision)TM、(Elite medical社製)、ペンジェット(PenJet)TM(PenJet社製)などが市販されている。
【0186】
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0187】
1つの局面において、本発明は、PKCの活性化因子を含む、毛髪再生のための組成物を提供する。本発明は、PKC、特にPKCηを活性化することにより、毛髪再生を最初から活性化することができたということを発見したことに基づく。毛根すらない場合でさえ、本発明により、毛髪を再生できたことで、本発明は、従来にないような医薬を提供する。
【0188】
従って、他の局面では、本発明は、毛髪再生を促進する方法であって、PKCを活性化する工程を包含する、方法を提供する。
【0189】
PKCは、種々の生理活性を調節することが知られており、特に、発癌との関係も示唆されていることから、発毛に関連するPKCのみが活性化されることが好ましい。本発明では、PKCηと発毛との関係が特に見出されていることから、本発明の活性化因子は、PKCηに対して他のPKCよりも優先的に活性化する能力を有することが好ましく、より好ましくは、PKCの中でPKCηに対して特異的に活性化する能力を有することが有利である。
【0190】
本発明において使用され得る活性化因子としては、例えば、オカダ酸、コレステロール硫酸、ホルボールエステル化合物(例えば、12−O−テトラデカノイルホルボール−13−酢酸(12−O−tetradecanoylphorbol−13−acetate(TPA))、ホルボール12,13−二酢酸(phorbol 12,13−diacetate)、ホルボール12,13−二酪酸(phorbol 12,13−dibutyrate)、ホルボール12,13−ジデカノエート(phorbol 12,13−didecanoate)、およびホルボール12−ミリステート12−酢酸4−o−メチルエーテル(phorbol 12−myristate 12−acetate 4−o−methyl ether)など)、サピムトキシンD(sapimtoxin D)、メゼレイン(mezerein)、インドラクタムV(indolactam V)、レジニフェラトキシン(resiniferatoxin)、ビストラテンA(bistratene A)、ブリオスタチン1(bryostatin 1)、ホスファチジルセリン(phosphatidylserine)、ホスファリジルイノシトール(phosphatidylinositol)、ホスファチルイノシトール4,5−ビスホスフェート(phosphatidylinositol 4,5−bisphosphate)、ホスファチジルイノシトール3,4,5−トリホスフェート(phosphatidylinositol 3,4,5−trisphosphate)、ホスファチジルグリセロール(phoshatidylglycerol)、カルジオリピン(cardiolipin)、ホスファチジン酸(phoshatidic acid)、スルファチド(sulfatides)、およびアラキドン酸などを挙げることができる。本発明では、使用される活性化因子は、TPAが好ましいがそれに限定されない。TPAは発がん促進性が知られていることから、発がん促進性を発揮しない濃度未満または発がん性物質(例えば、ベンゾピレン,3‐メチルコラントレンなど多核芳香族炭化水素,アセトアミドフルオレンなどの芳香族アミン,o‐アミノアゾトルエンなどの各種アゾ化合物,ブチルヒドロキシブチルニトロソアミンをはじめとするニトロソアミン系化合物,また天然に存在する発がん物質としてアフラトキシンなどのカビ代謝物)の非存在下または存在下であっても組み合わせで存在するときに発がんを促進しない濃度で使用することが好ましい。そのような濃度、組み合わせは、種、個体などによって変動するが、当業者は、本明細書の記載に基づき、そのような濃度、組み合わせなどを容易に理解し、適宜選択することができる。
【0191】
本発明において使用される活性化因子の具体例としては、例えば、その上流または下流の因子(例えば、ホスホイノシチド依存性キナーゼ1(Phosphoinositide−dependent kinase 1=PDK1)、FYN、PKCμなど)を活性化または抑制することによって、所期の目的(PKCの活性化、および毛髪の再生)を達成することができる物質を用いてもよい。
【0192】
好ましい実施形態では、本発明において使用される活性化因子は、毛根が存在するかまたは存在し得る部位を特異的に活性化する。このためには、本発明の活性化因子は、毛根が存在するかまたは存在し得る部位に特異的に送達する因子によって送達され得る。このような送達因子としては、例えば、溶媒(例えば、アセトン、エタノールおよびポリプレングリコール)および核酸ベクター(例えば、プラスミド、ウイルスベクターおよびウイルスエンベロープ)などを挙げることができる。このような核酸ベクターは、毛根が存在するかまたは存在し得る部位における遺伝子発現を特異的に促進するプロモーターを含んでいてもよい。あるいは、毛根が存在するかまたは存在し得る部位の細胞に特異的なマーカーと特異的に相互作用するような因子と、本発明の活性化因子とを結合体を形成させてもよい。
【0193】
本発明の1つの実施形態において、本発明の活性化因子は、核酸形態またはタンパク質形態で提供される。このような活性化因子の一例としては、PKCをコードする核酸またはPKCタンパク質を挙げることができるがそれに限定されない。
【0194】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の活性化因子は、PKCηであり得る。このようなPKCηとしては、タンパク質形態である場合、配列番号2に示すアミノ酸配列またはその改変体であり得る。そのような改変体は、本発明の目的を達成する限り任意の改変体を用いることができることが理解される。好ましくは、本発明のPKCタンパク質は、(a)配列番号2に示すアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;(c)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;(d)配列番号2に示すアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;または(f)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、であり得る。より好ましくは、上記PKCは、配列番号2に示すアミノ酸配列またはその1または数個の置換、付加もしくは欠失を有する改変体であり得る。
【0195】
別の実施形態では、本発明において使用されるPKCは核酸であり、該核酸は、配列番号1に示す配列またはその改変体を含む。そのような改変体は、本発明の目的を達成する限り任意の改変体を用いることができることが理解される。好ましくは、本発明のPKC核酸は、(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、であり得る。核酸形態で本発明の活性化因子が提供される場合、この核酸形態の活性化因子は、ベクターとともに提供されることが好ましい。細胞への導入が容易になるからであるが、これに限定されず、Naked DNAの形態でも導入され得る。
【0196】
本発明の好ましい実施形態では、使用されるベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、ウイルスエンベロープ、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよびプラスミドベクターなどであり得る。
【0197】
別の好ましい実施形態では、本発明は、さらなる薬効成分を使用することができる。このような薬効成分は、所望の効果を有するものであれば、どのようなものでもよい。好ましくは、本発明の発毛効果を阻害しない成分が使用され得る。そのような成分としては、例えば、表皮角化層の除去効果を有する成分を挙げることができるがそれに限定されない。そのような成分としては、例えば、グリコール酸、フェノール、トリクロロ酢酸、乳酸およびアルミニウム微小結晶ならびにそれらに混合物を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0198】
あるいは、表皮核化層を除去するには、物理的手段を用いてもよい。そのような手段としては、例えば、レーザー発生手段および粘着テープなどを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0199】
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、試薬、表皮角化層を除去する手段、細胞、タンパク質、核酸など)が提供されるユニットをいう。混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。
【0200】
物理的手段を利用する場合、本発明は、キットとして提供され得る。そのようなキットは、好ましくは、処置方法を記載した指示書が備えられ得る。本明細書において「指示書」は、本発明を使用する方法または診断する方法などを医師、被検体など投与を行う人、診断する人(被検体本人であり得る)に対して記載したものである。指示書は、診断薬などがキットとして提供される場合、その使用方法を指示するために添付され得る。この指示書は、本発明の診断薬、医薬などを投与する手順を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インタ−ネットで提供されるホームページ(ウェブサイト)、電子メ−ル、SMS、PDF文書など)のような形態でも提供され得る。
【0201】
理論に束縛されることを望まないが、本発明のように、表皮角化層を除去することにより、アデノウイルスなどのベクターが細胞に導入されやすくなることが本明細書において示されており、従って、効率よい活性化因子の送達のために、このような除去手段または成分を備えることが有利であることが理解される。
【0202】
1つの実施形態において、本発明のキットは、組成物としては、アデノウイルスベクターとともにPKCηをコードする核酸分子を含み、表皮角化層を除去するための手段として、粘着テープを含むことが有利である。このような粘着テープは市販のものを利用することができる。
【0203】
本発明のキットの好ましい実施形態では、このPKCηは、(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、であり得る。より好ましくは、使用されるPKCηは、配列番号1に示す塩基配列からなる。
【0204】
(トランスジェニック生物)
別の局面において、本発明は、PKCηを発現する、トランスジェニック生物を提供する。ここで、好ましくは、本発明のトランスジェニック生物は、外因性PKCηをコードする核酸を含む。
【0205】
1つの実施形態において、このPKCηをコードする核酸は、(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、を含み得る。
【0206】
1つの実施形態において、本発明において使用されるPKCηをコードする核酸は、毛根が存在するかまたは存在し得る部位への発現を促進するプロモーターに作動可能に連結されることが好ましい。このようなプロモーターにより、PKCη自体が試験されるべき毛根が存在するかまたは存在し得る部位に特異的に発現されるからである。
【0207】
具体的な実施形態において、本発明において使用されるプロモーターは、インボルクリンプロモーター、ケラチン1プロモーター、およびケラチン10プロモーターを使用することができるがそれらに限定されない。
【0208】
1つの実施形態では、本発明において使用されるインボルクリンプロモーターは、配列番号3に示す配列またはその配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列もしくは1以上の置換、付加または欠失を含む配列を含み、配列番号3と実質的に同等のプロモーター活性を有する。理論に束縛されることを望まないが、このようなインボルクリンプロモーターは、毛根が存在するかまたは存在し得る部位における遺伝子発現の誘導を特異的に促進することが知られており、従って、本発明のモデル系としてのトランスジェニック生物の作成に適切であると考えられる。
【0209】
1つの実施形態において、本発明のトランスジェニック生物は、哺乳動物であり得る。好ましくは、この生物は、毛髪またはそれに類似の毛を生やすことができる生物である。そのような生物としては、例えば、任意の哺乳動物、特に、陸上に存在する生物などを挙げることができる生物(例えば、げっ歯類、霊長類、偶蹄類、奇蹄類、ウサギ類など)を挙げることができるがそれらに限定されない。好ましくは、この生物は、霊長類またはげっ歯類を含み得る。より好ましくは、この生物は、マウスであり得る。
【0210】
(毛髪再生物質のスクリーニング法)
別の局面において、本発明は、毛髪再生活性を有する因子をスクリーニングするための方法を提供する。この方法は、A)PKCが高発現された、トランスジェニック生物を提供する工程;B)該トランスジェニック生物に候補因子を提供する工程;C)該トランスジェニック生物を毛髪再生が確認されるに十分な期間飼育する工程;D)該飼育工程の後、該トランスジェニック生物の毛髪が再生されたかどうかを判定し、再生が確認された候補因子を選択する工程;E)該候補因子を、通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物に提供する工程;F)該通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物を毛髪再生が確認されるに十分な期間飼育する工程;およびG)該飼育工程の後、該通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物の毛髪が再生されたかどうかを判定し、再生が確認された候補因子を、毛髪再生活性があると同定する工程、を包含する。
【0211】
ここで、トランスジェニック生物の提供は、本明細書において上記され、下記実施例において具体的に示されるように当該分野において任意の公知の方法を用いることができる。生物への候補因子の提供は、当該分野において公知の任意の方法を用いることができる。生物の飼育および毛髪再生の確認もまた、当該分野において公知の任意の方法を用いることができる。毛髪再生は、例えば、肉眼による観察をすることができる。
【0212】
別の局面において、本発明は、毛髪再生活性を有する因子をスクリーニングするための別の方法を提供する。この方法は、A)候補因子をPKCアッセイにより、PKCの活性を確認し、PKC活性を有する候補因子を選択する工程;B)該候補因子を、通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物に提供する工程;C)該通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物を毛髪再生が確認されるに十分な期間飼育する工程;D)該飼育工程の後、該通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物の毛髪が再生されたかどうかを判定し、再生が確認された候補因子を、毛髪再生活性があると同定する工程を包含する。生物への候補因子の提供は、当該分野において公知の任意の方法を用いることができる。生物の飼育および毛髪再生の確認もまた、当該分野において公知の任意の方法を用いることができる。毛髪再生は、例えば、肉眼による観察をすることができる。
【0213】
ここで、PKCアッセイは、本明細書において例示されるように、当該分野において公知の任意の方法を用いて実施することができる。PKC(特に、PKCη)と毛髪再生活性との関係が本発明によって明らかになったことによって、毛髪再生を促進する化合物のスクリーニングが飛躍的に効率化された。
【0214】
好ましい実施形態では、PKCアッセイは、試験管内において、精製PKCタンパク質の存在下、基質タンパク質およびペプチド(ミエリンベーシックプロテイン、PKC変異偽基質、ヒストンH1)へのγ−32P−ATP由来のリン酸基の取り込みをシンチレーションカウンターあるいはオートラジオグラフィにより測定することで、実施される。このようなアッセイ系は、自前で作製してもよいが、市販のキット(例えば、Invitrogenから市販される)を利用してもよい。
【0215】
別の局面において、本発明は、毛髪再生活性を有する因子をスクリーニングするためのシステムを提供する。このシステムは、A)PKCが高発現された、トランスジェニック生物;およびB)通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物;を備える。
【0216】
他の局面において、本発明は、毛髪再生活性を有する因子をスクリーニングするための別のシステムを提供する。このシステムは、A)PKCのアッセイキット;およびB)通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物を備える、システム。
【0217】
このようなシステムでは、上記スクリーニング方法において詳述したように、その実施には、当該分野において公知の任意の方法を利用することができることが理解される。また、本発明のシステムを製造する方法もまた、当該分野において公知の任意の方法を利用する。
【0218】
(PKCの発現調節物質のスクリーニング)
別の局面において、本発明は、PKCの発現を調節する物質をスクリーニングするための方法を提供する。この方法は、A)PKCをコードする核酸分子を細胞に導入する工程;B)該細胞のうち、該PKCを発現する細胞を選択する工程;C)該選択された細胞に、候補因子を暴露し、該候補因子が該細胞に影響を与えるに十分な時間インキュベーションする工程;D)該インキュベーション後の該PKCの発現量を測定する工程;およびE)該測定されたPKCの発現量を変動させる候補因子を、PKCの調節活性があると同定する工程を包含する。ここで、PKCをコードする核酸分子の細胞への導入は、当該分野において公知の任意の手法(例えば、アデノウイルスのようなイルスベクターを利用する)を利用して実施することができる。
【0219】
1つの実施形態において、本発明において使用されるPKCは、PKCηであり得、そのような例としては、(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0220】
1つの実施形態では、本発明のスクリーニング方法では、細胞は、生体内の一部として提供され、インビボの実験を行うことができる。
【0221】
1つの実施形態では、この細胞は、表皮角化層が除去された皮膚細胞であり得る。
【0222】
本発明のスクリーニング方法では、PKCの発現は、マーカーを用いて確認される。マーカーとは、ある細胞などに特異的に存在する物質をいう。そのようなマーカーは、好ましくは、標識される。本明細書において「標識」とは、その対象の検出を容易にするために用いられる物質をいう。標識としては、例えば、蛍光、リン光、化学発光、放射能、酵素基質反応および抗原抗体反応などの技法を用いるものを挙げることができるがそれらに限定されない。そのように標識がされている場合、本発明の因子によって測定することができる種々の状態を直接および/または容易に測定することができる。そのような標識は、識別可能に標識される限り、どのような標識でもよく、例えば、蛍光標識、化学発光標識、放射能標識などが挙げられるがそれらに限定されない。あるいは、その因子が抗体などの免疫反応を利用して相互作用する場合、ビオチン−ストレプトアビジンのような免疫反応においてよく利用される系を用いてもよい。
【0223】
本発明のスクリーニング方法の1つの実施形態では、PKCの発現は、PKCの活性を測定することによって確認することができる。このような活性の確認は、PKCの生理活性(例えば、キナーゼ活性など)を測定する任意のアッセイを用いて行うことができる。従って、この場合、PKCの確認は、タンパク質レベルで行われる。この場合、特異的な抗体を用いて免疫アッセイ(例えば、イムノブロット、ウェスタンブロットなど)により確認することもできる。
【0224】
本発明のスクリーニング方法の1つの実施形態では、PKCの発現は、mRNAレベルを測定することによって確認できる。この場合、例えば、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、必要に応じてマイクロタイタープレートを用いる、ELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
【0225】
本明細書において「発現量」とは、対象となる細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノ−ザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
【0226】
1つの実施形態において、PKCの発現量の変動が減少である場合、PKCの調節活性は、PKCの抑制活性であると同定され、PKCの発現量の変動が増加である場合、PKCの調節活性は、PKCの活性化活性であると同定される。ここで、PKCの活性化活性を有する因子は、毛髪の再生活性があると推定され得る。
【0227】
別の局面において、本発明は、PKCの発現を調節する物質をスクリーニングするためのシステムを提供する。このシステムは、A)PKCをコードする核酸分子が導入された細胞;およびB)PKCの発現量を測定するための手段を備え、該測定されたPKCの発現量を変動させる候補因子が、PKCの調節活性があると同定される。ここで、このシステムは、候補因子を前記細胞に暴露する手段をさらに備える。
【0228】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0229】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0230】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。以下の実施例において用いられる試薬などは、例外を除き、Sigma(St.Louis,USA)、和光純薬(大阪、日本)、などから市販されるものを用いた。動物は、トランスジェニックマウスは東京大学医科学研究所との共同研究により、本明細書において記載される手順に基づき作製した。野生型マウスは日本クレア(東京、日本)から入手した。動物の取り扱いは、昭和大学において規定される規準を遵守して行った。本発明で用いる発現ベクターの作製方法を具体例を挙げて説明する。なお、このような例で用いられる出発プラスミド、プロモーター等の構成要素を同等のもので置き換えて実施することは当業者にとって容易である。
【0231】
(実施例1:トランスジェニックマウスにおける毛髪再生効果)
(方法および材料)
1. 試薬
12-o-テトラデカノイルホルボール13酢酸(TPA)
2. トランスジェニックマウス
ヒトインボルクリン(human involucrin)プロモーター(配列番号3)下流にマウスプロテインキナーゼC η(protein kinase C (eta): PKCη)cDNA(配列番号1)を挿入したDNAをC3H/HeNマウス受精卵に注入し構築した。本発明者らは、このマウスがPKCηを表皮を含む上皮細胞分化層に高発現していることを確認した。
【0232】
3.発毛実験方法
マウス毛包は生後45日〜95日に休止期を迎えることから、7週齢の野生型C3H/HeNマウスおよびPKCηトランスジェニックマウス(Tgη)マウスの背部体毛をバリカンにより除毛し、1週間後にホルボールエステル(TPAなど)10nmoleをアセトン200μlに溶解し、マウス背部5〜6cmに塗布した。
【0233】
4.組織染色
TPA処理後2日目および7日目のマウス皮膚を10%ホルマリンにより固定、パラフィン包埋し、常法によりH&E染色した。
【0234】
(ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色)
細胞におけるHE染色は、以下のように行った。その手順は以下のとおりである。必要に応じて脱パラフィン(例えば、純エタノールにて)、水洗を行い、オムニのヘマトキシリンでサンプルを10分浸した。その後流水水洗し、アンモニア水で色出しを30秒間行った。その後、流水水洗を5分行い、塩酸エオジン10倍希釈液で2分間染色し、脱水し、透徹し、封入して、染色を確認することができる。
【0235】
(結果)
まず、PKCηを高発現するトランスジェニックマウスにおける毛髪再生の効果を確認した。
【0236】
上記のように実験を行ったところ、Tgηマウスは、TPA処理後2〜3日で脱毛が生じ始め、6日後に完全に脱毛した(図1A、7日目)。しかし9〜10日後から皮膚内での毛の再増殖を示す皮膚の黒化が認められ、10〜12日後(図1A,13日目)に発毛が認められた。毛の成長はさらに続き、16〜18日後に均等な長さに生えそろい、そのまま維持された(図1AおよびB、21日目)。発生した体毛はその後も脱毛することなく均等な長さを保った。一方、正常マウスおよびアセトン処理した対象群のTgηマウスではこれらの所見は認められず、全く発毛は認められなかった(図1および2)。
次に皮膚組織像を検討した。休止期の毛包は正常マウス、Tgηマウス共に成長期の1/2〜1/3の長さで先端は真皮層に存在したが、TPA処理後2日目でTgηマウスのみ毛の胚芽細胞に細胞分裂が認められ、一部の上皮細胞索が真皮内に延長していた。TPA処置後7日目にはほとんどの毛球が深く脂肪織内に到達していた。また毛球部には多量のメラニン色素が観察され、成長期毛包に認められる所見が確認された(図3および4)。
【0237】
従って、トランスジェニックマウスを用いた場合、毛髪再生を促進することが確認された。
【0238】
(実施例2:野生型マウスを用いた毛髪再生実験)
本実施例では、実施例1におけるトランスジェニックマウスに代えて、野生型マウスにおける効果を確認した。
【0239】
(材料および方法)
1. 試薬
12-o-テトラデカノイルホルボール13酢酸(TPA)
2.マウス
C3H/HeN,雌、7週齢
3.ホルボールエステル処理
バリカンによりマウス背部体毛を除去し、除毛の3日後にホルボールエステル12−o−tetradecanoylphorbol 13−acetate: TPA 0、1、5、10、20、30nmoleをそれぞれアセトン200μlに溶解し、マウス背部5〜6cmに塗布した(1日目)。
【0240】
発毛試験などは、実施例1に準じて行った。
【0241】
(結果)
TPA10、20、30nmoleを処理したマウスは、処理後2〜3日で表皮の剥離が生じ始め、その程度はTPAの濃度に依存していた。特にTPAを30n mole処理したマウスは、激しい表皮の剥離、落せつが生じていた(図5、4日目)。20および30n moleのTPA処理をしたマウスは、10日後から皮膚内での毛の再増殖を示す皮膚の黒化が認められ、12〜13日後(図5、14日目)に不均等に発毛が認められた。毛の成長はさらに続き(図5、17日目)、20日後に除毛前の元の長さに生えそろった。発生した体毛はその後も脱毛することなく均等な長さを保った。
【0242】
一方、5nmole以下のTPAによっては、全く発毛は認められず、10n moleではごく一部分に発毛が見られた。正常マウスのTPAによる発毛誘導が一様でないのは、TPAを完全に一様に塗布するのが困難なことによると考えられる。
【0243】
このように、トランスジェニックマウスで確認された効果は、野生型マウスでも濃度を上げれば効果を有することが確認された。従って、実施例1のようなトランスジェニックマウスにおけるスクリーニングは、一次スクリーニングとして使用することができることが実証された。
【0244】
(実施例3:PKCηアデノウイルスベクターを用いた発毛誘導実験)
次に、PKCの活性化因子として、PKCそのものを、外因的に生物に導入した場合の、発毛誘導実験を行った。
【0245】
(材料および方法)
1.試薬
野生型マウスPKCηアデノウイルスベクター
β−ガラクトシダーゼ(β−galactosidase=Lac−Z) アデノウイルスベクター
2.マウス
C3H/HeN, 雌、9週齢
3.アデノウイルスの表皮への導入方法
毛包が休止期である、9週齢の野生型C3H/HeNマウスの背部体毛をバリカンにより除毛する。ネンブタール(25mg/kg体重)を処置し、マウスに麻酔を施した後、除毛した皮膚にセロハンテープを貼り付けては剥がすという操作(tape stripping)を10〜15回を繰り返し、表皮角化層を除去する。これはバリアである角化層を除去しアデノウイルスベクターを表皮内に到達せしめるためである。
【0246】
1.5mlマイクロチューブの蓋(直径8mm)を瞬間接着剤を用いて角層を除去した部位に接着させ、25ゲージ注射針を装着した注射筒を使用して3.0×10プラーク形成単位(plaque forming unit=PFU),容量200μlのアデノウイルスベクターをその中に注入に3時間そのまま放置し、ウイルスを表皮内に導入した。
【0247】
(結果)
野生型PKCηアデノウイルスを導入したマウスの背部皮膚は、導入2日後に表皮のわずかに剥離や紅化が生じた(図6、3日目)。それに対して、対照として用いたLacZ導入マウスの皮膚にはほとんど変化が見られなかった(マイクロチューブの蓋との接着面だった部位の角層が接着剤のために剥がれた状態になっている)。PKCηアデノウイルスを導入後9日前後で皮膚の黒化が観察され、11〜12日で発毛が認められた(図6、13日目)。その後、毛は成長し16日後に元の長さにまで生えそろった(図6、17日目).
なお、ウイルス導入後2日後(3日目)に TPA(1n mole)をウイルス導入部位に塗布したが、未処理群と大きな違いは見いだされなかった。
【0248】
このように、実際にPKCの活性化因子を核酸として導入した場合でも、発毛が促進されることが明らかになった。
【0249】
(実施例4:毛髪再生活性を有する因子のスクリーニング:一次スクリーニング)
実施例1および2に示されるようなインビボでの実験の前に、PKCの活性を有する物質についてインビトロスクリーニングを行う。
【0250】
その具体的なプロトコールは以下の通りである。
【0251】
組み換えPKCη蛋白質を反応液(20mM トリス緩衝液(pH7.5)、5mM MgSO、1mM EGTA,100μM ATP、0.2mg/ml ミエリン塩基性タンパク質(以上の試薬はSigma社(St. Louis、米国)より入手)、1μCi[γ−32P]ATP(30Ci/ m mole、Amersham Biosciences,(Piscataway,米国))に加え、さらに活性化物質を加えて全量を50μlとして30℃、10分間反応させる。反応は50μlの75mMリン酸を添加することで停止させる。 反応液をP81フィルター(Whatman, Brentford、英国)に吸着させ、75mMリン酸で洗浄後、フィルター上のテェレンコフ光をシンチレーションカウンターにて測定した。
【0252】
(実施例5:2次スクリーニング)
実施例4においてヒットした物質について、さらに、二次スクリーニングを行う。この二次スクリーニングは、実施例1または2において使用した生物を利用した実験系を使用することができる。
【0253】
ここでは、オカダ酸、コレステロール硫酸、ホルボールエステル化合物、サピムトキシンD(sapimtoxin D)、メゼレイン(mezerein)、インドラクタムV(indolactam V)、レジニフェラトキシン(resiniferatoxin)、ビストラテンA(bistratene A)、ブリオスタチン1(bryostatin 1)、ホスファチジルセリン(phosphatidylserine)、ホスファリジルイノシトール(phosphatidylinositol)、ホスファチルイノシトール4,5−ビスホスフェート(phosphatidylinositol 4,5−bisphosphate)、ホスファチジルイノシトール3,4,5−トリホスフェート(phosphatidylinositol 3,4,5−trisphosphate)、ホスファチジルグリセロール(phoshatidylglycerol)、カルジオリピン(cardiolipin)、ホスファチジン酸(phoshatidic acid)、スルファチド(sulfatides)、およびアラキドン酸を候補物質として実験する。
【0254】
これらの物質について、発毛を促進するかどうか、実施例1に記載されるような確認方法を用いて確認することができる。
【0255】
(実施例6:1次スクリーニング:トランスジェニックマウスを利用した例)
次に、実施例1において作製したトランスジェニックマウスを用いて、種々の物質について、発毛促進を行うかどうかを確認する。手順は、実施例1に準じて行う。
【0256】
その結果、得られたヒットを、実施例2に準じて、野生型マウスでも発毛を促進するかどうかを確認する。
【0257】
(実施例7:ヒトにおける確認)
実施例4または6で実際にマウスに発毛を促進させることが判明した物質のうち、毒性が見られなかったものについて、ヒト被検体(健常人または毛が薄い被検体、毛髪本数が5万本以下のヒト被検体とする。)に投与して肥満に対する効果を観察する。ここでは、発毛本数の他、PKCの活性または発現などを指標として臨床試験を行う。これにより、実施例4または6でリード化合物として同定された化合物が、実際に発毛に効果があるかどうかを判定することができる。
【0258】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0259】
本発明により、発毛促進に関連する組成物、システム、キットなどを販売する産業においてより適切な処置を行うための情報を提供することができ、従って、医薬および医療に関連する種々の産業において有用性が認められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0260】
【図1A】図1Aは、PKCηを高発現するトランスジェニックマウスにおける毛髪再生の効果を確認した図(写真)である。PKCηトランスジェニックマウスにおける毛髪再生の誘導を1日目、7日目、13日目、および21日目に観察した結果である。Normalは野生型マウスを示し、Tgηはトランスジェニックマウスを示す。TPA treatmentは、TPAを塗布した場所を示す。トランスジェニックマウスのほうが感度が高いことが分かる。
【図1B】図1Bは、PKCηを高発現するトランスジェニックマウスにおける毛髪再生の効果を確認した図(写真)である。PKCηトランスジェニックマウスにおける毛髪再生の誘導を1日目および21日目を特に取り出して比較してある。TPA treatmentは、TPAを塗布した場所を示す。
【図2】図2は、PKCηを高発現するトランスジェニックマウスにおける毛髪再生の効果を確認した図(写真)である。6日目と21日目とを比較してある。トランスジェニックマウスにアセトンを塗布した結果であり、アセトンによる毛髪再生誘導は見られなかった。
【図3】図3は、野生型マウスにおけるH&E染色の断片図である。野生型マウスにおいてトランスジェニックマウスで効果があったレベルのTPAを塗布したところ、毛髪の再生は見られなかった。
【図4】図4は、PKCηトランスジェニックマウスにおいてTPA塗布を行ったの値のH&E染色の断片図である。1日目と8日目とを比較したものである。毛包が伸長する様子が分かる。
【図5】図5は、野生型マウスにおける、毛髪再生の例を示す。実施例1よりも高い濃度でTPA処置を行ったところ、毛髪の再生が確認された。従って、トランスジェニックマウスにおけるリード化合物は、野生型でも毛髪再生に用いることができることがわかる。実施例2において示される実験の結果である。
【図6】PKCηをコードする核酸を有するアデノウイルスベクターにより野生型マウスを形質導入したときの、毛髪再生の誘導を示す図である。実施例3において示される実験の結果である。
【図7】図7は、毛周期に関する説明を示した図である。
【配列表フリーテキスト】
【0261】
(配列表の説明)
配列番号1は、PKCη(マウス)の核酸配列である。
【0262】
配列番号2は、PKCη(マウス)のアミノ酸配列である。
【0263】
配列番号3は、インボルクリンプロモーターの核酸配列である。
【0264】
配列番号4は、ケラチン1プロモーターの核酸配列である。
【0265】
配列番号5は、ケラチン10プロモーターの核酸配列である。
【0266】
配列番号6は、Myelin basic Protein fragment 104−118のアミノ酸配列GKGRGLSLSRFSWGAである。
【0267】
配列番号7は、[Ser25]−Protein Kinase C fragment 19−31のアミノ酸配列RFARKGSLRQKNVである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテインキナーゼC(PKC)の活性化因子を含む、毛髪再生のための組成物。
【請求項2】
前記活性化因子は、少なくともPKCηを活性化する能力を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性化因子は、PKCηに対して他のPKCよりも優先的に活性化する能力を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記活性化因子は、PKCの中でPKCηに対して特異的に活性化する能力を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記活性化因子は、オカダ酸、コレステロール硫酸、ホルボールエステル化合物、サピムトキシンD(sapimtoxin D)、メゼレイン(mezerein)、インドラクタムV(indolactam V)、レジニフェラトキシン(resiniferatoxin)、ビストラテンA(bistratene A)、ブリオスタチン1(bryostatin 1)、ホスファチジルセリン(phosphatidylserine)、ホスファリジルイノシトール(phosphatidylinositol)、ホスファチルイノシトール4,5−ビスホスフェート(phosphatidylinositol 4,5−bisphosphate)、ホスファチジルイノシトール3,4,5−トリホスフェート(phosphatidylinositol 3,4,5−trisphosphate)、ホスファチジルグリセロール(phoshatidylglycerol)、カルジオリピン(cardiolipin)、ホスファチジン酸(phoshatidic acid)、スルファチド(sulfatides)、およびアラキドン酸からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記活性化因子は、12−O−テトラデカノイルホルボール−13−酢酸(12−O−tetradecanoylphorbol−13−acetate(TPA))、ホルボール12,13−二酢酸(phorbol 12,13−diacetate)、ホルボール12,13−二酪酸(phorbol 12,13−dibutyrate)、ホルボール12,13−ジデカノエート(phorbol 12,13−didecanoate)、およびホルボール12−ミリステート12−酢酸4−o−メチルエーテル(phorbol 12−myristate 12−acetate 4−o−methyl ether)からなる群より選択されるホルボールエステル化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記活性化因子は、TPAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記活性化因子は、前記PKCを間接的に活性化する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記活性化因子は、毛根が存在するかまたは存在し得る部位を特異的に活性化する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記活性化因子を、毛根が存在するかまたは存在し得る部位に特異的に送達する因子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記送達因子は、溶媒および核酸ベクターからなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記送達因子は、溶媒であり、該溶媒は、アセトン、エタノールおよびポリプレングリコールからなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記送達因子は、核酸ベクターであり、該核酸ベクターは、プラスミド、ウイルスベクターおよびウイルスエンベロープからなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記活性化因子は、核酸形態で提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記活性化因子は、PKCをコードする核酸またはPKCタンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記PKCは、PKCηを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記PKCはタンパク質であり、該タンパク質は、配列番号2に示す配列またはその改変体を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記タンパク質は、以下:
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;または
(f)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記PKCは核酸であり、該核酸は、配列番号1に示す配列またはその改変体を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
前記核酸は、以下:
(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記活性化因子は、核酸形態で提供され、該核酸形態の活性化因子は、ベクターとともに提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、ウイルスエンベロープ、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよびプラスミドベクターからなる群より選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
さらなる薬効成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記さらなる薬効成分は、表皮角化層の除去効果を有する成分を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記表皮角化層の除去効果を有する成分は、グリコール酸、フェノール、トリクロロ酢酸、乳酸およびアルミニウム微小結晶からなる群より選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
請求項1に記載の組成物と、表皮角化層を除去するための手段を備える、毛髪再生のためのキット。
【請求項27】
前記表皮角化層を除去するための手段は、グリコール酸、フェノール、トリクロロ酢酸、乳酸およびアルミニウム微小結晶からなる群より選択される成分であるかまたはレーザー発生手段および粘着テープからなる群より選択される、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記組成物は、アデノウイルスベクターとともにPKCηをコードする核酸分子を含み、前記表皮角化層を除去するための手段は、粘着テープを含む、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記PKCηは、
(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
である、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
前記PKCηは、配列番号1に示す塩基配列からなる、請求項28に記載のキット。
【請求項31】
毛髪再生を促進する方法であって、
A)PKCを活性化する工程、
を包含する、方法。
【請求項32】
前記活性化工程は、少なくともPKCηを活性化することを包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記活性化工程は、他のPKCよりも優先的にPKCηを活性化することを包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記活性化工程は、PKCの中でPKCηを特異的に活性化することを包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記活性化は、オカダ酸、コレステロール硫酸、ホルボールエステル化合物、サピムトキシンD(sapimtoxin D)、メゼレイン(mezerein)、インドラクタムV(indolactam V)、レジニフェラトキシン(resiniferatoxin)、ビストラテンA(bistratene A)、ブリオスタチン1(bryostatin 1)、ホスファチジルセリン(phosphatidylserine)、ホスファリジルイノシトール(phosphatidylinositol)、ホスファチルイノシトール4,5−ビスホスフェート(phosphatidylinositol 4,5−bisphosphate)、ホスファチジルイノシトール3,4,5−トリホスフェート(phosphatidylinositol 3,4,5−trisphosphate)、ホスファチジルグリセロール(phoshatidylglycerol)、カルジオリピン(cardiolipin)、ホスファチジン酸(phoshatidic acid)、スルファチド(sulfatides)、およびアラキドン酸からなる群より選択される因子により達成される、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記活性化因子は、12−O−テトラデカノイルホルボール−13−酢酸(12−O−tetradecanoylphorbol−13−acetate(TPA))、ホルボール12,13−二酢酸(phorbol 12,13−diacetate)、ホルボール12,13−二酪酸(phorbol 12,13−dibutyrate)、ホルボール12,13−ジデカノエート(phorbol 12,13−didecanoate)、およびホルボール12−ミリステート12−酢酸4−o−メチルエーテル(phorbol 12−myristate 12−acetate 4−o−methyl ether)からなる群より選択されるホルボールエステル化合物を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記活性化因子は、TPAを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記活性化は、PKC経路の上流または下流の任意の因子について、前記PKCを活性化するように調節することを包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記活性化は、毛根が存在するかまたは存在し得る部位の特異的な活性化である、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記活性化は、毛根が存在するかまたは存在し得る部位において特異的に行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記送達因子は、溶媒および核酸ベクターからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記送達因子は、溶媒であり、該溶媒は、アセトン、エタノールおよびポリプレングリコールからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記送達因子は、核酸ベクターであり、該核酸ベクターは、プラスミド、ウイルスベクターおよびウイルスエンベロープからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記活性化は、遺伝子発現の調節によって行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記活性化因子は、PKCをコードする核酸またはPKCタンパク質である、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
前記PKCは、PKCηを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記PKCはタンパク質であり、該タンパク質は、配列番号2に示す配列またはその改変体を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記タンパク質は、以下:
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2に示すアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;または
(f)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記PKCは核酸であり、該核酸は、配列番号1に示す配列またはその改変体を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記核酸は、以下:
(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
である、請請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記活性化因子は、核酸形態で提供され、該核酸形態の活性化因子は、ベクターとともに提供される、請求項31に記載の方法。
【請求項52】
前記ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、ウイルスエンベロープ、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、プラスミドベクターからなる群より選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
さらなる薬効成分を投与する工程を包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項54】
前記さらなる薬効成分は、表皮角化層の除去効果を有する成分を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記表皮角化層の除去効果を有する成分は、グリコール酸、フェノール、トリクロロ酢酸、乳酸、アルミニウム微小結晶、レーザー、粘着テープからなる群より選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
表皮角化層を除去する工程をさらに包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項57】
前記表皮角化層の除去は、グリコール酸、フェノール、トリクロロ酢酸、乳酸およびアルミニウム微小結晶からなる群より選択される成分であるかまたはレーザー発生手段および粘着テープからなる群より選択される手段により達成される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記PKCの活性化は、アデノウイルスベクターとともにPKCηをコードする核酸分子を提供することによって達成され、前記表皮角化層の除去は、粘着テープにより達成される、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記PKCηは、
(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
である、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記PKCηは、配列番号1に示す塩基配列からなる、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
PKCηを発現する、トランスジェニック生物。
【請求項62】
外因性PKCηをコードする核酸を含む、請求項61に記載のトランスジェニック生物。
【請求項63】
前記PKCηをコードする核酸は、
(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含む、
請求項62に記載のトランスジェニック生物。
【請求項64】
前記PKCηをコードする核酸は、毛根が存在するかまたは存在し得る部位への発現を促進するプロモーターに作動可能に連結される、請求項62に記載のトランスジェニック生物。
【請求項65】
前記プロモーターは、インボルクリンプロモーター、ケラチン1プロモーター、およびケラチン10プロモーターからなる群より選択される、請求項64に記載のトランスジェニック生物。
【請求項66】
前記プロモーターは、配列番号3、4または5に示す配列またはその配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列もしくは1以上の置換、付加または欠失を含む配列を含み、配列番号3と実質的に同等のプロモーター活性を有する、請求項64に記載のトランスジェニック生物。
【請求項67】
前記生物は、哺乳動物である、請求項61に記載のトランスジェニック生物。
【請求項68】
前記生物は、毛髪またはそれに類似の毛を生やすことができる、請求項61に記載のトランスジェニック生物。
【請求項69】
前記生物は、霊長類またはげっ歯類を含む、請求項61に記載のトランスジェニック生物。
【請求項70】
前記生物は、マウスである、請求項61に記載のトランスジェニック生物。
【請求項71】
毛髪再生活性を有する因子をスクリーニングするための方法であって、
A)PKCが高発現された、トランスジェニック生物を提供する工程;
B)該トランスジェニック生物に候補因子を提供する工程;
C)該トランスジェニック生物を毛髪再生が確認されるに十分な期間飼育する工程;
D)該飼育工程の後、該トランスジェニック生物の毛髪が再生されたかどうかを判定し、再生が確認された候補因子を選択する工程;
E)該候補因子を、通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物に提供する工程;
F)該通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物を毛髪再生が確認されるに十分な期間飼育する工程;
G)該飼育工程の後、該通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物の毛髪が再生されたかどうかを判定し、再生が確認された候補因子を、毛髪再生活性があると同定する工程、
を包含する、方法。
【請求項72】
毛髪再生活性を有する因子をスクリーニングするための方法であって、
A)候補因子をPKCアッセイにより、PKCの活性を確認し、PKC活性を有する候補因子を選択する工程;
B)該候補因子を、通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物に提供する工程;
C)該通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物を毛髪再生が確認されるに十分な期間飼育する工程;
D)該飼育工程の後、該通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物の毛髪が再生されたかどうかを判定し、再生が確認された候補因子を、毛髪再生活性があると同定する工程、
を包含する、方法。
【請求項73】
前記PKCアッセイは、試験管内において、精製PKCタンパク質の存在下、基質タンパク質およびペプチド(ミエリンベーシックプロテイン、PKC変異偽基質、ヒストンH1)へのγ−32P−ATP由来のリン酸基の取り込みをシンチレーションカウンター或いはオートラジオグラフィにより測定することで、実施される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
毛髪再生活性を有する因子をスクリーニングするためのシステムであって、
A)PKCが高発現された、トランスジェニック生物;および
B)通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物;
を備える、システム。
【請求項75】
毛髪再生活性を有する因子をスクリーニングするためのシステムであって、
A)PKCのアッセイキット;および
B)通常の生物または毛髪が欠如もしくは減少した生物;
を備える、システム。
【請求項76】
PKCの発現を調節する物質をスクリーニングするための方法であって、
A)PKCをコードする核酸分子を細胞に導入する工程;
B)該細胞のうち、該PKCを発現する細胞を選択する工程;
C)該選択された細胞に、候補因子を暴露し、該候補因子が該細胞に影響を与えるに十分な時間インキュベーションする工程;
D)該インキュベーション後の該PKCの発現量を測定する工程;
E)該測定されたPKCの発現量を変動させる候補因子を、PKCの調節活性があると同定する工程、
を包含する、方法。
【請求項77】
前記PKCは、PKCηである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記PKCは、
(a)配列番号1に示す塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示す塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
である、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記核酸分子は、ウイルスベクターとともに細胞に導入される、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記ウイルスベクターは、アデノウイルスを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記細胞は、生体内の一部を構成する、請求項76に記載の方法。
【請求項82】
前記細胞は、表皮角化層が除去された皮膚細胞である、請求項76に記載の方法。
【請求項83】
前記PKCの発現は、マーカーを用いて確認される、請求項76に記載の方法。
【請求項84】
前記PKCの発現は、PKCの活性をアッセイすることにより確認される、請求項76に記載の方法。
【請求項85】
前記PKCの発現は、mRNAレベルである、請求項76に記載の方法。
【請求項86】
前記PKCの発現は、タンパク質レベルである、請求項76に記載の方法。
【請求項87】
前記変動は、減少であり、前記PKCの調節活性は、PKCの抑制活性である、請求項76に記載の方法。
【請求項88】
前記変動は、増加であり、前記PKCの調節活性は、PKCの活性化活性である、請求項76に記載の方法。
【請求項89】
PKCの発現を調節する物質をスクリーニングするためのシステムであって、
A)PKCをコードする核酸分子が導入された細胞;および
B)PKCの発現量を測定するための手段;
を備え、該測定されたPKCの発現量を変動させる候補因子が、PKCの調節活性があると同定される、
システム。
【請求項90】
さらに、候補因子を前記細胞に暴露する手段を備える、請求項89に記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−76967(P2006−76967A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264736(P2004−264736)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年3月13日 昭和大学共同研究促進会議主催の「昭和大学共同研究 平成15年度 研究成果発表会」において文書をもって発表
【出願人】(503368498)株式会社バイオマスター (11)
【出願人】(592019213)学校法人昭和大学 (23)
【Fターム(参考)】