説明

気密シール組立体及びこれを含む電子デバイス

【課題】ステータを腐食環境から保護するシール組立体を含む電子デバイスを提供する。
【解決手段】本明細書で開示されるのは、ロータ(30)と、ステータ(40)と、少なくとも1つの継手及びモノシリック・セラミックセパレータ(110)を有するシール組立体(100)と、を備えるモータ20を含むシステム(10)である。シール組立体(100)の各継手は化学結合継手であり、モノシリック・セラミックセパレータ(110)が、モータ(20)のロータ(30)とステータ(40)の間のギャップ(50)に配置され、シール組立体(100)がロータ(30)とステータ(40)を気密分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してロータ及びステータを備える電子デバイスに関し、具体的には、ステータを腐食環境から保護するシール組立体を含む電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
モータなどの産業用電子デバイスは、多くの場合、固定部分すなわちステータと、回転する部分すなわちロータとを含む。通常、ロータ及びステータは、相反する磁界を生成し、これにより機械的仕事を行うのに使用するロータの回転運動を生じるよう構成される。石油・ガス産業では、ロータ及びステータ組立体は、冷却剤としても機能できるプロセスガスで動作することができる。プロセスガスは通常、約10バール〜約200バールの圧力の天然ガスである。残念ながら、天然ガスは、高度の汚染物質を有する可能性がある。これらの汚染物質は、硫化水素(H2S)、水、CO2、石油などの腐食剤を含むことができる。特に過酷な条件では、水とH2Sの組合せは、いわゆる湿潤サワーガス又はより高濃度では酸性ガスなど、より腐食性のガスを生じる。上記の汚染物質を包含するプロセスガス環境の存在は、ステータ組立体の脆弱な部品に大きな危険をもたらす。
【0003】
通常、ギャップは、ロータ組立体からステータ組立体を分離する。ステータとロータ組立体との間の磁界強度を最大にするために、このギャップはできる限り最小に作られると共に、ロータシャフトとステータとの間の機械的クリアランス要件に適合するようにする。現在のステータは、封入されるか或いは非封入にされる。封入されたステータの場合、ステータ封入は、ロータ組立体のプロセス環境からステータ部品を保護する。
【0004】
ステータ・エンカプスレータは一般に、作動中の大きな圧力差、大きな温度勾配及び機械的振動に耐える必要がある。過酷な動作環境では、ステータとロータシャフトの間のギャップ内に位置付けられたエンカプスレータのセクションは、腐食性プロセスガスの漏出を最小限にすべきであり、過酷なプロセスガス環境において耐腐食性を有する必要があり、エンカプスレータの他のセクションに容易に接合可能であり、機械における全体の電気的損失を低減するよう渦電流損失を最小限にすべきである。
【0005】
従って、ステータ封入における組み付けに適合する低損失材料及びプロセスを提供する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7337526号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の一実施形態は、モータを備えるシステムである。モータは、ロータと、ステータと、少なくとも1つの継手及びモノシリック・セラミックセパレータを有するシール組立体とを含む。シール組立体の各継手は化学結合継手であり、モノシリック・セラミックセパレータは、ロータとステータの間のギャップに配置され、該シール組立体がロータとステータとを気密分離する。
【0008】
本発明の別の実施形態はモータである。モータは、ロータと、ステータと、ロータとステータの間のギャップに配置されたモノシリック・セラミックセパレータを含む気密シール組立体と、を備える。本発明で用いるモノシリック・セラミックセパレータは、ステータから気密分離され、少なくとも1つのセクション継手により接合された複数のセラミックセクションを含む。モノシリック・セラミックセパレータのセクション継手の各々は、本質的に化学結合継手である。
【0009】
本発明の更に別の実施形態はモータである。モータは、ロータと、ステータと、モノシリック・セラミックセパレータ及び末端領域を含む気密シール組立体と、を備え、モノシリック・セラミックセパレータ及び末端領域がアダプタフランジにより気密接合される。アダプタフランジは、化学結合継手によりモノシリック・セラミックセパレータ及び末端領域に気密接合される。
【0010】
本発明のこれらの及びその他の特徴、態様並びに利点は、図面全体を通して同じ参照符号が同様の部分を表す添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むと、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るロータ及びステータ組立体を有する電動モータを備えるシステムの断面図。
【図2】ロータに対するステータの様々な相対位置を表す断面図。
【図3】本発明の一実施形態における末端領域を有するモノシリック・セラミックセパレータの概略図。
【図4】本発明の種々の実施形態におけるモノシリック・セラミックセパレータに対する金属フランジの様々な継手の概略図。
【図5】本発明の一実施形態における金属フランジとモノシリック・セラミックセパレータとの間のろう付け継手の概略断面図。
【図6】本発明の一実施形態における金属フランジとモノシリック・セラミックセパレータとの間のろう付け継手の概略断面図。
【図7】本発明の一実施形態におけるモノシリック・セラミックセパレータの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、システムのモータにおいてロータのプロセスガスからステータ用の保護気密シール組立体を含み、並びに気密シール組立体を製造するための関連材料、構造及び方法を含む。
【0013】
以下の明細書及びこれに続く特許請求の範囲において、単数形態は、前後関係から明らかに別の意味を示さない限り複数形態も含む。
【0014】
本発明の種々の実施形態は、電動モータ内のシール組立体の使用を記載している。シール組立体は、ロータとステートの間のギャップ内に配置されたモノシリック・セラミックセパレータと、少なくとも1つの継手とを備え、シール組立体がロータとステータとを気密分離するようにする。シール組立体の各継手は、シール組立体の部品を共に接合するのに用いるか、或いは、モータの残りの部分にシール組立体を接合するのに用いるかに関わらず、化学結合継手である。本明細書で用いる「化学結合継手」は、化学又は金属結合を適用する継手(2つの部品を共にろう付けすることにより、或いは部品を継手において溶融及び固化することで接合することにより形成される継手など)であり、本質的に機械シールがない。本質的に「機械シールがない」とは、シール組立体の各継手が、Oリング又はガスケットなどの機械的シール部品がないことを意味する。従って、シール組立体の化学結合継手は、超高真空用途で一般的に使用されるポリマー又は金属Oリングもしくはシールを使用しない。
【0015】
本明細書全体を通じて使用される用語「気密」とは、1×10-8std cm3/secよりも少ない割合にまでヘリウムガス漏出を制限できることを意味する。シール組立体の長寿命期間中にこの低い数字にまで漏出を制限することは、当該技術分野で現在十分には活用されていない。更に、シール組立体を利用する現在の用途のほとんどは、シール用にOリングを使用している。現在知られているOリングは通常、高い温度及び圧力が含まれ、腐食性ガスが存在する可能性がある過酷な環境で劣化することが知られている、有機材料などの材料を含むことができる。劣化によるか、又は材料の固有特性の何れかにより、Oリング又は金属シールは、長い時間期間にわたり特定のガス及び化学種を透過する傾向がある。例えば、多くの有機材料は、これらの環境において長期の使用にわたって劣化し脆弱になる可能性があり、従って、シール全体でガス漏出を生じる可能性がある。本発明は、シールのための有機又は金属材料からなるOリング又はガスケットを使用せずにこの欠陥に対処する。
【0016】
材料及び設計の選択によって、モノシリック・セラミックセパレータはまた、渦電流及び電気損失を最小にするように作製され、従って、実質的にモータ性能に悪影響を与えることはない。また、使用されるセラミック材料の化学的不活性によって、ロータが曝されるH2Sのような過酷な化学的環境からステータが保護される。セラミックエンカプスレータセクションを接合部品と共に用いることができることにより、本発明に記載された実施形態をより大型の電動モータに適用することが可能になる。従って、本発明の実施形態は、大型の電気機械内で非磁気障壁の使用を可能にし、該障壁は実質的な電気損失には寄与しない。
【0017】
ここで図面を参照すると、図1は、ロータ組立体(本明細書では「ロータ」とも呼ばれる)30及びステータ組立体(本明細書では「ステータ」とも呼ばれる)40を備えるモータ20を含む例示的なシステム10を示している。ロータ30は、軸受34(磁気軸受など)によりこの実施例において支持されるロータシャフト32と、ステータ組立体40と整列し且つ磁気連通して配置された、マグネット・エンクロージャ38を有する永久磁石36とを含む。例示的な実施形態ではステータ組立体40は、ロータ組立体30を囲み、ステータコア42と、巻線44を通って電流が流れたときに磁界を定めるよう配列されたステータ巻線44とを含む。ギャップ50は、真空、エアギャップ又はプロセスガスを含む流体とすることができる。
【0018】
適切に通電されると、ステータ組立体40は、ロータシャフト32の浮遊及び半径方向配置を可能にするよう、ロータ組立体30を引き付けるのに効果的である。図示のシステム10は更に、ステータ組立体40の封入部60を含む。ステータ封入部60は、腐食性プロセスガス環境からステータ40を保護する。1つの例示的な実施形態ではステータ・エンカプスレータ60は、68などの種々の界接面で接合される、62、64及び66などの複数のセクションから形成される。
【0019】
図1は、ステータ及びロータ構成の一実施形態を描いているが、ステータ及びロータの代替の配列は、例えば図2に描かれている。一実施形態ではロータ30は、ステータ40の周りに位置付けられ、構成80に描かれたステータの磁界内で回転し、ステータ40及びロータ30は、構成90に描かれるように軸方向に位置付けることができる。
【0020】
本発明の一実施形態ではステータ・エンカプスレータ60は、シール組立体100を含む。シール組立体100は、ステータ・エンカプスレータセクション62及び64(図1)を含む。図3は、モノシリック・セラミックセパレータ110を含むシール組立体100を別個に描いている。本発明で用いるシール組立体100は、未処理油、高塩水材料、H2Sを含む過酷な環境ガス、酸性ガス又はウェルガスなどのプロセスガスを有する環境に対して実質的に不活性である。モノシリック・セラミックセパレータ110は、ギャップ50内でロータ30とステータ40との間に配置されたセラミック部品である。用語「モノシリック」が使用されるが、これは、必ずしもセラミックセパレータが本質的に単一部品からなることを示すものではなく、本明細書では、この用語は、セパレータで使用される材料を有機ベースの複合材料と区別するために用いる。本明細書で用いる用語「モノシリック・セラミックセパレータ」とは、1以上の要素から作られた実質的に区別化されない剛体の全体構造を意味する。非限定的な実施例において、モノシリック・セラミックセパレータ110は、化学結合継手を本質的に含むセクション継手により、2以上のセラミックセクション(112及び114)を共に気密接合することによって調製される。セパレータ110を形成するのに使用されるセラミック材料の密度は、セラミック自体が気密性があるように選択される。一実施形態ではモノシリック・セラミックセパレータ110のセラミックセクションは、実質的に稠密であり、理論密度の約98%を超える密度値を有する。しかしながら、当業者であれば、多くのセラミックは、かなり低い密度(例えば、理論密度の約90%)で気密性にすることができ、従って、幾つかの実施形態では、セラミックセクションの密度は、理論密度の少なくとも約90%である。
【0021】
本発明の実施形態は、2以上のセラミックセクションを気密接合する能力を提供し、従って、厳しいプロセス環境で腐食により大きな損失を生じることなく、大型で高速の電動モータにおいてもステータ40をプロセスガスからシールする製造方法を提供する。一実施形態ではモノシリック・セラミックセパレータ110は、更に、内側又は外側表面(図示せず)上に配置されたコーティングを有することができる。コーティングは、モノシリック・セラミック管体の性能及び寿命を高めるために、腐食性又は浸食性に耐える材料、金属、セラミック又は複合材などの材料を含むことができる。
【0022】
モノシリック・セラミックセパレータ110の異なる幾何学的形式は、本発明の範囲内にあるが、一実施形態では、モノシリック・セラミックセパレータ110は円筒型形態である。モノシリック・セラミックセパレータ110の材料及びセクション接合設計は、ロータ及びステータの磁界中での渦電流及び/又は他の電気損失を最小にし、従って、モータ20の性能に悪影響を及ぼすことがないように選択される。また、使用される材料の化学的不活性は、ステータの曝される厳しい環境からステータを保護する。例えば、約10mm厚みのアルミニウム材料を用いて構成されたモノシリック・セラミックセパレータ110を使用することにより生じる電気的損失は、モータ20の作動中は無視できる。
【0023】
一実施形態ではロータ30及びステータ40組立体(図1)を気密分離する。別の例示的な実施形態ではモノシリック・セラミックセパレータ110は、ステータから機械的に分離される。本明細書で用いる用語「機械的に分離される」とは、ステータ40がモノシリック・セラミックセパレータ110を直接的に支持せず、従って、ステータ部品の機械的振動の大半が、モノシリック・セラミックセパレータ110伝達されないことを意味する。一実施形態ではモノシリック・セラミックセパレータ110は、シール組立体100の他の領域から支持部を探し出すことができる。任意選択的に、耐振動及び耐摩耗性プラスチックブロックは、モノシリック・セラミックセパレータ110とステータ40との間に位置付けられ、組み立て中の初期位置合わせを助けるようにすることができる。
【0024】
図3に示すモノシリック・セラミックセパレータ110は、2つの表面を含む。第1の表面116は、ステータ40に近接し、第2の表面118は、ロータ30に近接している。ステータからの直接支持がない場合、モノシリック・セラミックセパレータ110の機械的完全性を維持し且つ有効寿命を延ばすための1つの方策は、圧力補償システム70(図1)を取り付けて、モノシリック・セラミックセパレータ110の第1の表面116に作用する圧力と、第2の表面118に作用する圧力との差違を最小限にすることである。圧力補償システム70は、ダイアフラム、ベローズ、容積交換システムその他のタイプの圧力バランサとすることができる。圧力補償器70は、油圧流体の送出によりステータ・エンカプスレータ上に加わる圧力のバランシングを助ける。油圧流体は、圧力を移送することができる媒体であり、空気、水、プロセスガス、オイル、ポリマーを始めとするガス又は液体から構成することができる。
【0025】
圧力補償システムの1つの実施例は、油圧流体を保持する大型ベローズであり、油圧流体72の所要量を配置し、第1の表面116(図3)に作用する圧力と、第2の表面118に作用する圧力との差違を制御することができる。油圧流体72は、モータの構成に応じて、第1の表面116又は第2の表面118においてモノシリック・セラミックセパレータ110と接触することができる。例えば、ガス雰囲気でのモータ20の作動中、ロータ30の近傍にプロセスガスが存在することができる。一実施形態ではプロセスガスは、モノシリック・セラミックセパレータ110の表面118に圧力を加えることができ、該圧力は、対向する表面116近くに配置される油圧流体72によりバランス調整される。例示的な実施形態ではオイルは、モノシリック・セラミックセパレータ110の表面116において油圧流体として配置される。
【0026】
モノシリック・セラミックセパレータ110は、ガラス及び結晶性又は非晶質酸化物、窒化物及び炭化物を始めとするセラミック材料を含むことができる。モノシリック・セラミックセパレータの材料の非限定的な実施例には、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、ムライト、窒化チタン、ルチル、アナターゼ、炭化ホウ素、窒化ホウ素、酸化ベリリウム、シリカ、シリカ系ガラス又はこれらの材料の組合せが含まれる。
【0027】
上記段落で検討したように、モノシリック・セラミックセパレータ110は、特定の実施形態では例えば、セクション112及び114など、複数のセラミックセクション間のセクション継手(継手120など)を含むことができる。一実施形態ではセラミックセクション間のセクション継手120の少なくとも1つは、拡散接合を含む。拡散接合は、その原理機構が界接面にわたる原子の相互拡散である接合プロセスである。拡散接合は、セラミック面又は金属セラミック面間の拡散によって形成することができる。或いは、セクション継手120は、セラミックセクション間で「ガラス原料」として当該技術分野で公知の材料など、ガラス材料を用いてガラスシールを得ることによって形成することができる。ガラス材料又はガラス原料は、セクション112及び114を接合することにより、セラミックセクションとの化学的適合性並びにモノシリック・セラミックセパレータ110の製造容易性のために選択される。使用できるガラス材料の非限定的な実施例には、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化ビスマス、酸化鉛、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム又はこれらの材料を含む組合せが含まれる。
【0028】
別の実施形態では、セラミックセクション112及び114間のセクション継手120の少なくとも1つは、ろう付け継手であり、従って、継手120はろう付け材料122を含む。ろう付け材料は、金、銅、銀、白金、パラジウム、ニッケル、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ベリリウム又はこれらの合金など、1種以上の材料を含むことができる。電気的に影響を受けるゾーンにおける継手120内に金属部分を構成するろう付け材料122は、性能に悪影響を与えないよう十分に薄くなるように配置される。幾つかの実施形態ではセクション112及び114のそれぞれの接合表面124及び126は、金属コーティングを含み、セクション112及び114へのろう付け材料の濡れ性を向上させ、これにより継手の改善を可能にする。一実施形態では金属コーティング128は、セラミックに結合することができる、モリブデン、マンガン又はモリブデン-マンガン金属化層を含むことができる。金属化層は更に、ニッケル層でメッキすることができる。112及び114などのセラミックセクションを接合するために異なる方法も想定することができるが、一実施形態では異なるセラミックセクションを接合するためにろう付け法が利用される。
【0029】
気密シール組立体100(図3)は、更に、モノシリック・セラミックセパレータ110に気密接合された末端領域130を含む。末端領域130は、セラミック材料、金属材料又はサーメットを含むことができる。1つの特定の実施形態では末端領域は、合金625を含む。一実施形態では末端領域130の少なくとも1つは、アダプタフランジ140を介してモノシリック・セラミックセパレータ110に気密接合される。例示的な実施形態ではアダプタフランジ140は、金属又は合金から作られる。特定の実施形態ではアダプタフランジ140は、
金、ニッケル、チタン、銀、銅、白金、パラジウム、ニオビウム、タンタル、モリブデン合金625、ジルコニウム、コバルト、クロム、ステンレス鋼又はこれらの材料の組合せなどの要素を含むことができる。例示的な実施形態では、アダプタフランジ140は、ニッケル基超合金を含む。幾つかの実施形態ではアダプタフランジはニオビウムを含む。一実施形態ではアダプタフランジ140は、ニオビウム基合金から作られ、更に別の実施形態では、アダプタフランジ140は、市販の純ニオブから作られる。
【0030】
アダプタフランジは、様々な手段によりモノシリック・セラミックセパレータ110又は末端領域130に気密接合することができる。一実施形態ではアダプタフランジ140は、化学結合されたフランジ継手を通して接合面142にてモノシリック・セラミックセパレータ110に接合される。別の実施形態ではフランジ継手は、本質的にろう付け接合150であり、図6において詳細に描かれ、以下で更に詳細に検討する。モノシリック・セラミックセパレータ110をアダプタフランジ140に気密接合できることにより、大きな末端領域130とは関係なく、モノシリック・セラミックセパレータ110を組み立て中にモータ20内に位置付けることが可能になる。その結果、アダプタフランジ140は、大きな末端領域130に続いて接合され、既知の接合方法を用いて気密シールを形成することができる。
【0031】
図4は、モノシリック・セラミックセパレータ110と金属アダプタフランジ140との間に、サンドイッチ継手(162)、キャップ継手(164)、突き合わせ継手(166)及び重ね継手(168)など、多くの可能な継手の一部を概略的に表している。1つの例示的な実施形態ではモノシリック・セラミックセパレータ110は、サンドイッチ継手(162)を通じて金属アダプタフランジ140に接合される。別の例示的な実施形態では、モノシリック・セラミックセパレータ110は、突き合わせ継手(166)を通じて金属アダプタフランジ140に接合される。別の実施形態では、使用される継手は、これらの継手の2種以上の組合せである。
【0032】
アダプタフランジ140は、末端領域130をモノシリック・セラミックセパレータ110に気密接合するのに適合性がある何らかの形状及びサイズを有することができる。一実施形態ではアダプタフランジは円筒形状を有する。別の例示的な実施形態では、アダプタフランジ140は、同種又は異種の金属又は合金を含む2以上のセクションの組合せを備える。例えば、一実施形態ではアダプタフランジ140は、図5において概略断面図で表され且つ図4に示すようなろう付け継手(例えば、突き合わせ継手(166))を通じてモノシリック・セラミックセパレータ110に接合される2つの同心円筒体の組合せを有する。内側141及び外側143セクションの組合せは、プロセスガスに対する耐腐食性、更にモノシリック・セラミックセパレータ110に適合する制御された熱膨張率を達成するのを助ける。本発明の実施例において、内側セクション141は、セラミック管に対する気密継手を提供し、システムの動作により課せられる機械的負荷を保持し、プロセスガスに曝される間の腐食耐性がある。アダプタフランジ140の内側セクション141として使用することができる材料の1つの実施例は、合金625である。外側セクション143は、ろう付けプロセス中に内側セクション141の熱膨張を抑制するのを助ける。外側セクション143用の材料は、高温で低い熱膨張係数と高い弾性係数とを有するように選択することができ、これにより、連結アダプタフランジ140は、アダプタフランジ140の有効熱膨張係数が、モノシリック・セラミックセパレータ110の熱膨張係数と適合するように作製することができる。モリブデンは、本発明の実施例において外側セクション143の材料として使用されている。外側セクション143は、拡散接合、イナーシャ溶接又はろう付けなど、様々な結合技術により内側円筒体に接合することができる。或いは、外側セクション143は、クラッディング、メッキ、堆積、鋳造、機械的連結又は溶射などの様々な方法を用いて内側セクション141の表面上に直接形成することができる。
【0033】
上記で検討したように、図6は、モノシリック・セラミックセパレータ110の接合面142とアダプタフランジ140との間のろう付け継手150を表している。一実施形態ではろう付け継手150は、構成144において図示するようにろう付け材料152を含む。ろう付け継手150の特定の設計において、アダプタフランジ上にAsら成る金属化層(図示せず)が施工される。別の実施形態ではろう付け継手150は、ろう付け材料152、154と、構成146において図示するように金属中間層156とを含む。特定の状況では、金属中間層は、セラミックセクションに存在する機械的歪みに対応するのを助けることができる。ろう付け材料152、154は、同一の材料又は異なる材料とすることができる。一般に、ろう付け継手150及びろう付け材料152、154は、厳しい環境で動作することができる材料により設計される。ろう付け材料152、154は、金、銅、銀、白金、パラジウム、ニッケル、チタン、バナジウム、ジルコニウム、ベリリウムなどの元素又はこれらの材料の合金を含むことができる。金属中間層156は、金、銀、動、ニッケル、鉛、チタン、ニオビウム、白金、タンタル、クロム又はこれらの材料の合金を含むことができる。金属中間層は、フィルム又は粉体を含む様々な形態でろう付け継手150に導入することができる。1つの例示的な実施形態では金属粉体をろう付け材料152管に導入し、高温平衡加圧して金属中間層156を形成する。
【0034】
ろう付け継手150の別の要件は、モノシリック・セラミックセパレータ110の剛性に対応するようコンプライアントであることである。このコンプライアント性は、アダプタフランジ140及びろう付け継手150の適切な設計を通じて達成することができる。従って、一実施形態ではアダプタフランジ140は、ベローズ継手などのコンプライアントな形状を有する。更に、アダプタフランジ140は、何らかの所要の負荷容量を有し、モノシリック・セラミックセパレータ110及び末端領域130の様々な熱膨張に対処する能力を有するように設計することができる。特定の実施形態ではろう付け継手150は、ステータ40の組み立て前にモノシリック・セラミックセパレータ110上に形成され、他の幾つかの実施形態では、ろう付け継手150は、ステータ40の組み立て中に形成することができる。
【0035】
モノシリック・セラミックセパレータ110の接合面142におけるモノシリック・セラミックセパレータ110とアダプタフランジ140との間のろう付け継手150は更に、アダプタフランジ140との接合を促進させる金属化層158を含むことができる。この金属化層158は、モリブデン、モリブデン−マンガン、ニッケル、タングステン、クロム、チタン、銅、ホウ素、ニオビウム、合金625又はこれらの材料の組合せを含むことができる。一実施形態では金属化層は更に、モノシリック・セラミックセパレータ110との接合適合性を強化する湿潤層を含む。この湿潤層の非限定的な実施例は、ニッケルを含む層である。
【0036】
アダプタフランジ140は、直接継手、溶接継手、拡散接合、ろう付け継手、焼結接合、鋳造接合又はこれらの継手の組合せなど、種々の継手から選択された科学的結合末端領域継手170によって末端領域130に気密接合することができる。アダプタフランジが直接継手により末端領域に接合される一実施形態ではアダプタフランジは、焼結、熱間等静圧圧縮成形(HIP)、フレーム溶射、或いは末端領域にアダプタ材料を直接堆積することによって、末端領域に直接接合される。一実施形態では継手170は溶接継手を含む。
【0037】
モノシリック・セラミックセパレータ110とアダプタフランジ140との間のフランジ継手150、並びに末端領域130とアダプタフランジ140との間の末端領域130継手170は、図7に示すように保護コーティング180及び190をそれぞれ施工することによって更に保護することができる。保護コーティング180及び190は、浸食及び腐食などによる劣化から継手150及び170を保護することができる。劣化の1つの実施例は、異種材料の継手にて通常形成される電解腐食である。保護コーティング180及び190は、継手150及び170それぞれの外側表面182及び192又は内側表面184及び194上に配置することができる。一実施形態では保護コーティング180及び190は、継手150及び170それぞれの外側表面182及び192並びに内側表面184及び194の両方に配置される。一実施形態では保護コーティング180は、アダプタフランジ、金属化層158、ろう付け層152、154及び存在する金属中間層156の接合端部の表面と、モノシリック・セラミックセパレータ110の接合端部142の表面を覆う。別の実施形態ではモノシリック・セラミックセパレータの接合面142上に配置される金属化層158は、モノシリック・セラミックセパレータ110の表面にわたって延び、別個の保護コーティング180は、ろう付け継手150表面の残りの部分を覆う。
【0038】
保護コーティング180及び190は、単一層又は複数層から作ることができ、金属、セラミック、ガラス、ポリマー又はこれらの材料の組合せなどの材料を含むことができる。保護コーティング180及び190は、機能に応じて、同じ材料であってもよく、又は異なる材料から作ることもできる。保護コーティングの組成は、継手150又は170の回りに存在する組成物の何れか又は両方に一致するよう選択される。一実施形態では保護コーティング180の少なくとも1つの層は、高融点金属を含む。高融点金属の実施例には、ニオビウム、タンタル、ジルコニウムが含まれる。別の実施形態では保護コーティング180は、炭化タングステン又は炭化ケイ素などの高融点材料を含む。別の実施形態では保護コーティング180は、Co、Cr又はAlなどの種々の元素の組合せを含む。1以上の実施形態では保護コーティング190は金属又はセラミックを含む。例示的な実施形態では保護コーティングは金属の酸化物を含む。
【0039】
保護コーティング180及び190は、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、溶射、ゾルゲル堆積、電子ビーム蒸着、電気メッキ、イオンメッキ又はこれらの組合せを始めとするコーティング法により継手150及び170それぞれの表面182、184、192及び194に施工することができる。1つの特定の実施形態では保護コーティング180又は190の少なくとも1つは、継手150及び170領域に存在する元素の酸化により形成される。
【0040】
上記の実施形態で説明されたロータ30、ステータ40及びシール組立体100を有するモータ20を備えるシステム10は、厳しく有害な環境が存在する場所を含む、様々な用途で使用することができる。これらのシステムの用途には、幾つか挙げると、石油及びガス産業、海洋事業が含まれる。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明による実施形態を例示しており、従って、請求項を限定するものとみなすべきではない。
【0042】
長さ約3フィート、外径1フィート及び厚みが約10mmの2つの円筒セクション112及び114(図3)を、アルミナ材料を用いて理論密度の約99%まで作製した。2つのセクション112及び114は、ろう付けセクション継手を用いて共に気密接合され、モノシリック・セラミックセパレータ110を形成した。共に接合されるセラミック端部は、湿潤層としてニッケルを用いてモリブデン−マンガン層でコーティングし、ろう付けで接合した。セラミックセクション112及び114の他の自由端部もまた、湿潤層としてニッケルを用いてモリブデン−マンガン層で金属化した。ニオブからなるアダプタフランジ140は、金ろうを用いて金属化端部の両方にて接合した。モノシリック・セラミックセパレータ110は、アダプタフランジ140と共に、モータ20のロータ30とステータ40(図1)間に組み立てた。合金625から作られた末端領域130は、金ろうを用いてアダプタフランジ140に気密接合され、気密シール組立体100を形成した。更に、シール組立体100の継手150及び170の内側及び外側表面は、基本的には何らかの種類の腐食又は浸食から継手150及び170を保護するために、酸化物を容易に形成できる金属でコーティングすることができる。ロータ30は、例えば、H2S約60体積%、CO230体積%、残部がH2O、N2及び炭化水素からなる環境において動作することができる。ロータを囲む環境は、モノシリック・セラミックセパレータ110の表面118に圧力を加え、オイルタンク70から引き出され、モノシリック・セラミックセパレータ110の反対の表面116上に配置されるオイル72により平衡にされる。
【0043】
本発明の特定の特徴のみを本明細書で例示し説明してきたが、当業者であれば、多くの変更形態及び変形が想起されるであろう。従って、本発明の真の精神の範囲内にあるこのような変更形態及び変更全ては、添付の請求項によって保護されるものとする点を理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(20)を備えるシステム(10)であって、該モータが、
ロータ(30)と、
ステータ(40)と、
シール組立体(100)と
を備えており、上記シール組立体が、各々が化学結合継手である少なくとも1つの継手(120)と、前記ロータ(30)とステータ(40)の間のギャップ(50)に配置されたモノシリック・セラミックセパレータ(110)とを含み、前記シール組立体が前記ロータ(30)とステータ(40)を気密分離する、システム(10)。
【請求項2】
前記モノシリック・セラミックセパレータ(110)が、前記ステータ(40)から機械的に分離される、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記セパレータ(110)が、前記ステータ(40)に近接した第1の表面(116)と、前記ロータ(30)に近接した第2の表面(118)とを含み、前記システム(10)が更に、前記第1の表面(116)に作用する圧力と、前記第2の表面(118)に作用する圧力との間の差異を制御するよう配置された圧力保障システム(70)を備える、
請求項1記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記モノシリック・セラミックセパレータ(110)が、少なくとも1つのセクション継手(120)により接合された複数のセラミックセクション(112、114)を含み、前記セクション継手(120)が化学結合継手である、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記セラミックセクション(112、114)の少なくとも1つが更に、接合面(124、126)上に配置された金属コーティング(128)を含む、請求項4記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記シール組立体(100)が更に末端領域(130)を含み、該末端領域(130)が、アダプタフランジ(140)により前記モノシリック・セラミックセパレータ(110)に接合される、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記アダプタフランジ(140)及び前記モノシリック・セラミックセパレータ(110)が、フランジ継手にて接合され、前記システム(10)が更に、前記フランジ継手を覆って配置されたコーティングを含む、請求項6記載のシステム(10)。
【請求項8】
ロータ(30)と、
ステータ(40)と、
モノシリック・セラミックセパレータ(110)及び末端領域(130)を含む気密シール組立体(100)と、
を備えるモータ(20)であって、
前記モノシリック・セラミックセパレータ(110)が、前記ロータ(30)とステータ(40)の間のギャップ(50)に配置され、突き合わせ継手(164)を通じてアダプタフランジ(140)により前記末端領域(130)に気密接合される、
モータ(20)。
【請求項9】
ロータ(30)と、
ステータ(40)と、
前記ロータ(30)とステータ(40)の間のギャップ(50)に配置されたモノシリック・セラミックセパレータ(110)を含む気密シール組立体(100)と
を備えるモータ(20)であって、
前記モノシリック・セラミックセパレータ(110)が、前記ステータ(40)から機械的に分離され、少なくとも1つのセクション継手(120)により接合された複数のセラミックセクション(112、114)を含み、前記セクション継手(120)の各々が化学結合継手である、
モータ(20)。
【請求項10】
ロータ(30)と、
ステータ(40)と、
モノシリック・セラミックセパレータ(110)及び末端領域(130)を含む気密シール組立体(100)と、
を備えるモータ(20)であって、上記モノシリック・セラミックセパレータ(110)が、前記ロータ(30)とステータ(40)の間のギャップ(50)に配置され、アダプタフランジ(140)により前記末端領域(130)に気密接合され、前記アダプタフランジ(140)が、化学結合継手により前記モノシリック・セラミックセパレータ(110)及び末端領域(130)に接合される、モータ(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−10545(P2011−10545A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143371(P2010−143371)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】