説明

気相反応装置

【課題】モリブデンを含む金属酸化物触媒を用いて反応を起こさせる気相反応装置での、モリブデン酸化物の付着を効率的に抑制する。
【解決手段】モリブデンを含む金属酸化物触媒を用いて反応を起こさせる気相反応装置に用いられる冷却コイルであって、金属酸化物触媒から遊離したモリブデン化合物が接触する上記冷却コイル表面の、水溶液系における酸化反応の標準電極電位が−0.2V以上、2.8V以下である材料で構成された気相反応装置用冷却コイルを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気相反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ニトリルの製造方法として、プロピレンなどのオレフィンやプロパンなどのパラフィン等をアンモ酸化法によりアンモニア及び酸素と反応させてアクリロニトリルなどの不飽和ニトリルを得る方法が知られており、この反応に用いる触媒としては、モリブデンを含む金属酸化物触媒が用いられている。しかし、上記金属酸化物触媒中のモリブデンは、非特許文献1に記載のように、アンモ酸化法で副生成する水が反応器中で増加することにより、モリブデン水酸化物等のモリブデン化合物として遊離しやすくなり、それが気相反応装置内の冷却パイプなどの部位を腐食させて、三酸化モリブデンの結晶が大量に析出する場合があった。
【0003】
この析出によって、上記金属酸化物触媒が触媒活性を失って無駄に消費されてしまうだけでなく、析出した三酸化モリブデンの結晶が冷却用パイプを覆って熱伝導率を低下させたり、配管を塞いで圧力損失を上昇させ、さらには基材そのものを腐食させたりするといった弊害が起こるので、析出を抑制する方法が検討されている。
【0004】
特許文献1には、反応ガス中に粉体を導入して、この粉体により熱交換器に付着した付着物を除去する方法が記載されている。また、特許文献2には、反応器上部の触媒希薄層部に間接熱交換器を設置することによって、触媒活性の低下や粒度分布の変化を抑制する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−301040号公報
【特許文献2】特開平11−349545号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Buiten,J.catal. 10 188−199(1968)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、粉体によって酸化モリブデンだけではなく装置まで摩耗してしまい、また、下流において粉体を分離、除去するために多大な手間がかかるため、現実的ではなかった。さらに、特許文献2の方法では、付着量の削減が十分ではなく、間接熱交換器を別な冷却媒体で冷却する必要があり、効率が悪かった。
【0008】
そこでこの発明は、モリブデンを含んだ酸化物触媒を用いて気相酸化を行う気相反応装置の、上記金属酸化物触媒から遊離したモリブデン化合物が接触する接触面への、モリブデン酸化物の付着を効率的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、モリブデンを含む金属酸化物触媒を用いて反応を起こさせる気相反応装置の、上記金属酸化物触媒から遊離したモリブデン化合物が接触する接触面を、水溶液系における酸化反応の標準電極電位が−0.2V以上、2.8V以下である材料で構成させることにより、上記の課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0010】
気相反応装置のモリブデン化合物が接触する接触面を、標準電極電位が所定の値である物質で覆う、又は構成することで、触媒から遊離して析出したモリブデン酸化物の結晶が大量に表面に付着することを抑制して、触媒の消費量を抑えたり、配管の閉塞を防いだり、冷却を行う装置の接触面の熱伝導率の低下を抑えたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】気相反応装置の概略図
【図2】実施例1で用いる装置の概略図
【図3(a)】実施例1におけるSUS304母材のSEM写真
【図3(b)】実施例1におけるアンモニア水洗浄後のテストピースのSEM写真
【図4(a)】比較例1におけるSS−400母材のSEM写真
【図4(b)】比較例1におけるアンモニア水洗浄後のテストピースのSEM写真
【図5(a)】比較例2におけるSTBA23母材のSEM写真
【図5(b)】比較例2におけるアンモニア水洗浄後のテストピースのSEM写真
【図6】実施例3で用いる熱交換器の概略図
【図7】実施例5及び6と比較例5における総括伝熱係数の変化を示すグラフ
【図8(a)】実施例2におけるSUS304を溶射した表面への酸化モリブデン付着状況を示す拡大写真
【図8(b)】比較例3におけるSTBA23製の表面への酸化モリブデンの付着状況を示す拡大写真
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、モリブデンを含む金属酸化物触媒を用いて反応を起こさせる気相反応装置の、上記金属酸化物触媒から遊離したモリブデン化合物が接触する接触面を所定の材料としたものである。
【0013】
上記のモリブデンを含む金属酸化物触媒を用いて行う反応としては、例えば、アンモ酸化法によってプロピレンとアンモニアからアクリロニトリルを製造する反応や、プロピレンの気相酸化によるアクリル酸の製造などが挙げられる。
【0014】
上記のモリブデンを含有する金属酸化物触媒としては、上記の反応について触媒能を有せばよく、例えば、上記のアクリロニトリルを製造する反応であると、Mo−Bi系触媒が挙げられ、具体的には、MoBiMeII・MeIII・MeI・X・Oからなる触媒が挙げられる。ここで、MeIIはCo、Ni等のII価金属、MeIIIはFe、Cr等のIII価金属、MeIはNa、K等のI価金属を示す。
【0015】
上記の気相反応装置では、微細粒子とした上記の金属酸化物触媒を流動床として、気相の反応物質に接触させて反応を行うのが一般的である。上記のアンモ酸化法によりアクリロニトリルを製造する気相反応装置の例を図1に示す。気相反応装置の本体11に、下方の空気導入管12から空気aを導入して、吹き出し口13から吹き出させることで触媒14を浮遊させる。この環境に、原料導入管15から上記の反応物質としてプロピレンとアンモニアとの混合気体bを導入して、これらを空気中の酸素により酸化させて、1当量のアクリロニトリルと、3当量の水を得る。ただし、この反応に適切な温度に保つために、冷媒dを通した冷却コイル16で本体11内部の上記の混合気体を冷却しつつ上記の反応を行う。
【0016】
上記の気相反応装置での反応で生成したアクリロニトリルは、サイクロン19で触媒を分離され、未反応のアンモニアや副生したアクリル酸等の不純物を含んだ反応ガスcとして製品排出管17から抜き出される。この反応ガスcを熱交換器18で冷却した後、アンモニアの吸収分離、アクリロニトリルの精製系へ送られる。
【0017】
この発明にかかる、上記の所定の材料からなる接触面としては、例えば、上記の冷却コイル16及び熱交換器18といった冷却を行うことにより析出しやすい部位の表面や、配管の出入り口や配管の太さが変化する箇所等といった気体の流れが変化する部位の内部表面が挙げられる。これらの接触面には、反応で生成した水によって水酸化物として触媒から遊離したモリブデン化合物が、基材を腐食させると共にモリブデン酸化物の結晶が付着成長しやすいため、それらを出来る限り抑制する必要があるためである。なお、この発明における気相反応装置とは上記気相反応装置の本体11内部だけでなく、上記気相反応装置の本体11と繋がっており、上記の遊離したモリブデン化合物が接触する、本体11外の配管や熱交換器18なども含むものである。
【0018】
この発明で用いる上記材料とは、水溶液系における酸化反応の標準電極電位が−0.2V以上である材料である。上記の接触面が、例えば、2価イオンへの酸化反応の標準電極電位が−0.44Vである鉄などの、酸化されたイオンへの酸化反応の標準電極電位が−0.2V未満である材料であると、その材料が酸化して腐食されるとともに、遊離したモリブデン水酸化物からモリブデン酸化物が析出することで、その接触面がモリブデン酸化物によって覆われてしまう。これに対して、酸化反応の標準電極電位が−0.2V以上である材料からなると、上記接触面は腐食されにくくなり、結果として上記接触面へのモリブデン酸化物の析出を抑制することが出来る。なお、この−0.2Vとは、モリブデンの3価イオンへの酸化反応の標準電極電位である。さらに、酸化反応の標準電極電位が0.1V以上である材料であると、腐食される電極反応速度がさらに低下し、モリブデン酸化物の析出がより一層抑制されるので、より好ましい。一方、上記材料の標準電極電位は高いほど好ましいが、標準電極電位が2.8Vを超える電極反応を起こす材料はほとんど無く、現実的ではない。
【0019】
なお、この発明において記載している標準電極電位とは、電極反応に関与する物質の活量が1であるときの、標準水素電極電位に対する値であり、実際の上記接触面の状態における電極電位とは必ずしも一致するものではない。しかし、実際の上記接触面の状態は一定ではなく、その状況における電極反応の正確な電極電位を測定することは困難である。一方で、実際の電極電位と標準電極電位との差は、例えば還元体Rdと酸化体Oxとの下記式(1)の電極反応を例にとると、下記式(2)のネルンスト式の右辺第二項による値となる。
【0020】
Rd = Ox + ne (1)
【0021】
Δφ=Δφ+(RT/nF)ln(cOx/cRd) (2)
【0022】
ここで、nは価数、Δφは電極電位、Δφは標準電極電位、Rは気体定数で8.31J・K−1mol−1、Tは絶対温度、Fはファラデー定数で9.65×10C・mol−1、cOx及びcRdはそれぞれ酸化体Ox及び還元体Rdの活量である。このような定数と変数からなる上記式(2)の右辺第二項の寄与は、上記材料やモリブデンの標準電極電位同士を比較した値の差に比べて比較的小さく、標準電極電位同士の比較によって上記材料を規定しても、この発明の効果が実現できる。
【0023】
上記の条件を満たす材料としては、例えば、モリブデン、銅、銀等の金属や、チタン、アルミニウム、クロム、ニッケル等の金属表面に生成する不動態酸化物、INCONEL(登録商標、「インコネル」と呼称する。)等のニッケル−クロム−モリブデン−鉄を含む合金、INCOLOY(登録商標、「インコロイ」と呼称する。)等のアルミニウム−クロム−鉄を含む合金、HASTELLOY(登録商標、「ハステロイ」と呼称する。)等のニッケル−モリブデン−タングステンを含む合金、MONEL(登録商標、「モネル」と呼称する。)等のニッケル−銅を含む合金、Stellite(登録商標)などのコバルト−クロム−タングステンを含む合金、SUS304等のニッケル−クロム−鉄からなるステンレス合金、サーメット、クロムカーバイド、酸化チタンなどが挙げられ、これらを単独、または複合して用いる。
【0024】
上記の気相反応装置の接触面を、上記材料からなるようにする方法としては、例えば、上記の所定の材料を上記接触面に溶射したり、メッキしたりすることで表面に上記材料の層を生成させる方法がある。この場合、上記の電極電位の条件を満たす上記材料である不動態を形成する金属材料を溶射又はメッキしてその金属材料の層を形成させた後に、表面に不動態を形成させて上記材料で覆うようにしてもよい。なお、溶射とは、上記材料を溶融状態又は半溶融状態にして、上記接触面に衝突させることで表面に上記材料の被膜を形成させることをいう。
【0025】
また、別の方法として、上記材料からなる部品を上記接触面に嵌めたり、上記材料を接着させたりすることで、上記接触面を覆ってしまう方法がある。特に、表面への上記溶射などが難しい配管の奥などに対して、長い筒型の部品を嵌めて配管の奥まで表面を覆うといった方法は有効である。
【0026】
さらに、新たに上記気相反応装置を製造する場合には、上記接触面を有する部位を予め上記材料を基材として用いて製造してもよい。その場合、表面を加工する手間を省き、上記接触面全体に効果を及ぼすことができる。
【0027】
この発明により上記接触面を上記の所定の材料で覆った上記気相反応装置は、上記気相反応装置中の酸化モリブデンが付着しやすい箇所を上記材料で覆うことにより、モリブデンを含む金属酸化物触媒を用いた際の酸化モリブデンの付着量を抑制することができるので、触媒の消費量を抑え、部位の被覆による冷却効果の低下や基材の腐食を抑えることができ、アクリロニトリル等のアンモ酸化法による製造プラントをより効率よく運用することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例によりこの発明をより具体的に説明する。
【0029】
[テストピースによる腐食の観測]
(実施例1)
図2に示す装置を用いて、三酸化モリブデン(MoO)の付着による腐食の状況を観測した。まず、電気ヒータ21で500℃に加熱した触媒セル22に、和光純薬工業(株)製のMoOを詰め、触媒セル22の出口22aを気体が通過可能でMoO粒子が通過不可能であるように塞いだ。出口22aには、外気によって冷却される直径2mmのSUS304(標準電極電位:0.8V)製であるテストピース25を取り付けた。この触媒セル22に、Airフィード23から1000ml/hの流量で空気を導入し、水フィード24から0.54ml/hの流量で液体の水を導入して気化させ、出口22aから遊離したモリブデン化合物を霧散させる作業を23時間に亘って行った。
【0030】
このテストピース25を取り出し、アンモニア水で洗浄して酸化モリブデンを除去した後に、表面をSEM(日本電子(株)製:JSM−6340F型)で観察した。洗浄後の写真を図3(b)に示し、比較対象として腐食させていないSUS304母材の表面の写真を図3(a)に示す。洗浄により酸化モリブデンを除去した後でも基材の剥がれ等の腐食の痕跡は見られず、元のSUS304母材と大きな差異は生じなかった。
【0031】
(比較例1)
実施例1において、テストピース25としてSS−400(標準電極電位:−0.4V)製のものを用いて、それ以外は実施例1と同様の作業を行った。洗浄後の写真を図4(b)に示し、比較対象としてSS−400母材の表面の写真を図4(a)に示す。元々は平坦な表面の母材が、表面が剥がれ、基材にまで腐食が進んでいることがわかった。
【0032】
(比較例2)
実施例1において、テストピース25としてSTBA23(標準電極電位:−0.4V)製のものを用いて、それ以外は実施例1と同様の作業を行った。洗浄後の写真を図5(b)に示し、比較対象としてSTBA23母材の表面の写真を図5(a)に示す。表面全体が腐食して薄片状に剥がれていることが分かる。
【0033】
(実施例2)
テストピース25としてSTBA23にSUS304を溶射したものを用いて、実施例1と同様にモリブデン化合物を霧散させる作業を行った。テストピース25の写真を図8(a)に示す。表面にモリブデン結晶の付着が観察されたが、後述するSUS304溶射の無い場合(比較例3)に比べて極めてわずかなものであった。
【0034】
(比較例3)
実施例2において、テストピース25としてSUS304を溶射しないSTBA23を用いて、それ以外は実施例2と同様の作業を行った。そのテストピース25の写真を図8(b)に示す。表面に多量のモリブデン結晶の付着が観察された。
【0035】
[熱交換器の差圧の測定]
(実施例3)
図6に記載の、STBA23製であるチューブ31(内径30mm、長さ1m)の周囲を環状に覆い冷媒eが通過する冷媒流路32を設けた熱交換器の入り口に、SUS304製のインサート33(内径29mm、長さ100mm)を嵌め込んだ。このインサートから、図1に記載のアクリロニトリルの気相反応装置において、モリブデンとビスマスの酸化物触媒で反応させたプロピレンの気相アンモ酸化ガスを流速110Nm/hで流す運転を3ヶ月行った。この運転前と運転後とにこの熱交換器の差圧を測定したところ、運転前は3kPaであった差圧は、運転後でも5kPaにとどまり、後述の比較例4に比べて十分に抑制することができた。
【0036】
(実施例4)
実施例3のチューブ31に、インサート33を嵌め込まずに、入り口からSUS304材を溶射することによって、入り口から30〜50mm程度の長さまでの内部をSUS304で覆い、実施例3と同様に気相アンモ酸化ガスを流す運転を3ヶ月行ったところ、運転後の差圧は10kPaとなり、実施例3の場合よりも上昇幅は大きくなったが、後述の比較例4に比べると十分に抑制できた。
【0037】
(比較例4)
実施例3のチューブ31に、インサート33を嵌め込まず、溶射も行わずに、実施例3と同様に気相アンモ酸化ガスを流す運転を3ヶ月行ったところ、運転後の差圧は42kPaとなり、大幅に増加した。
【0038】
[冷却パイプの熱伝導率の測定]
(実施例5)
図1に記載の気相反応装置において、呼び径1/2BのSTPA23製(標準電極電位:−0.4V)である冷却コイル16(伝熱面積:0.33m)の表面に、SUS304を溶射した。この冷却コイル16の内部には、冷却媒体としてゲージ圧が3kg/cmの水蒸気を流通させた。本体11は、内径25cm、内容量0.8mのSUS304製容器であり、その内部に触媒14としてMoBi系触媒(触媒組成、Mo:Bi:Fe:Ce:Cr:Ni:Mg:Co:K:Rb:O:SO2=12:0.5:2:0.5:0.4:4:1.5:1:0.07:0.06:X:42)を84kg導入した。次いでこの本体11に、原料導入管15よりプロピレンを流量7.8kg/hで、アンモニアを流量3.5kg/hで導入し、空気導入管12から空気を流量54kg/hで導入して、440℃の温度環境でアンモ酸化反応を行った。この作業を3ヶ月間(約2000時間)に亘って連続して行い、その間の冷却コイル16の総括伝熱係数Uの変化を、測定した値から下記式(3)により算出した。なお、式中、Cpは流通させた水蒸気の定圧比熱(kcal/kg・℃)、Wは蒸気流量(kg/hr)、Toutは冷却コイル16の出口における水蒸気温度(℃)、Tinは冷却コイル16の入口における水蒸気温度(℃)、TRは反応装置内温度(℃)を示し、Aは冷却コイルの伝熱面積(m)を示す。
【0039】
【数1】

【0040】
その結果を図7に示す。1ヶ月(約700時間)経過まではわずかに減少しているが、その後は総括伝熱係数の減少はほとんどみられず、ほぼ一定の状態で推移した。
【0041】
(実施例6)
実施例5の冷却コイル16の代わりに、SUS304製である冷却コイル(伝熱面積:同じ)を用いて、それ以外は実施例5と同様の作業を行った。その総括伝熱係数の変化を図7に示す。実施例5とほぼ同様に、1ヶ月経過後は総括伝熱係数の減少はほとんど見られなかった。
【0042】
(比較例5)
実施例5におけるSUS304の溶射を行わず、STPA23(標準電極電位:−0.4V)製の冷却コイル16をそのまま使用して、実施例5と同様の作業を行った。その総括伝熱係数の変化を図7に示す。総括伝熱係数の減少は1ヶ月経過後も続き、3ヶ月で約半分にまで低下してしまった。
【符号の説明】
【0043】
11 (気相反応装置の)本体
12 空気導入管
13 吹き出し口
14 触媒
15 原料導入管
16 冷却コイル
17 製品排出管
18 熱交換器
19 サイクロン
21 電気ヒータ
22 触媒セル
22a (触媒セル)出口
23 Airフィード
24 水フィード
25 テストピース
31 チューブ
32 冷媒流路
33 インサート
a 空気
b 混合気体
c 反応ガス
d 冷媒
e 冷媒(熱交換器用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデンを含む金属酸化物触媒を用いて反応を起こさせる気相反応装置に用いられる冷却コイルであって、
上記金属酸化物触媒から遊離したモリブデン化合物が接触する上記冷却コイル表面の、水溶液系における酸化反応の標準電極電位が−0.2V以上、2.8V以下である材料で構成された気相反応装置用冷却コイル。
【請求項2】
上記の材料を溶射若しくはメッキすることにより、上記冷却コイル表面を覆った、請求項1に記載の気相反応装置用冷却コイル。
【請求項3】
上記溶射若しくはメッキが行われる上記冷却コイル表面が、水溶液系における酸化反応の標準電極電位が−0.2V未満である第2の材料からなる、請求項2に記載の気相反応装置用冷却コイル。
【請求項4】
上記材料が、ニッケル及び/又はクロムを含有する、請求項1乃至3のいずれかに記載の気相反応装置用冷却コイル。
【請求項5】
上記気相反応が、アクリロニトリルの生成反応である、請求項1乃至4のいずれかに記載の気相反応装置用冷却コイル。
【請求項6】
モリブデンを含む金属酸化物触媒を用いて反応を起こさせる気相反応装置に用いられる、上記金属酸化物触媒から遊離したモリブデン化合物が接触する冷却コイル表面を、水溶液系における酸化反応の標準電極電位が−0.2V以上、2.8V以下である材料で構成することにより、モリブデン化合物の付着を抑制する方法。
【請求項7】
上記の材料を溶射若しくはメッキすることにより、上記冷却コイル表面を覆った、請求項6に記載のモリブデン化合物の付着を抑制する方法。
【請求項8】
上記溶射若しくはメッキが行われる上記冷却コイル表面が、水溶液系における酸化反応の標準電極電位が−0.2V未満である第2の材料からなる、請求項7に記載のモリブデン化合物の付着を抑制する方法。
【請求項9】
上記材料が、ニッケル及び/又はクロムを含有する、請求項6乃至8のいずれかに記載のモリブデン化合物の付着を抑制する方法。
【請求項10】
上記気相反応が、アクリロニトリルの生成反応である、請求項6乃至9のいずれかに記載のモリブデン化合物の付着を抑制する方法。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【公開番号】特開2011−126890(P2011−126890A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7605(P2011−7605)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【分割の表示】特願2005−63649(P2005−63649)の分割
【原出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】