説明

気道分泌過多を治療するための組成物および方法

本発明は、一般に、肺疾患の治療の分野に関する。より具体的には、本発明は、上皮成長因子受容体(EGFR)シグナル伝達経路阻害剤とインターロイキン−13(IL−13)シグナル伝達経路阻害剤との組み合わせ投与による気道分泌過多の治療、およびその組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NHLBIに授与されたPO1 HL29594の下、政府の支援により行われた。政府は、本発明における特定の権利を有する。
【0002】
本発明は、一般に、気道疾患を治療するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
気道分泌過多は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、および喘息を含む、気道疾患の1つの特徴である。分泌過多に罹患している個体では、粘液が気道に貯留し、気道閉塞の原因となる可能性がある。気道上皮を裏打ちしている気道粘膜下腺および杯細胞は、水、炭水化物、タンパク質、および脂質から成る粘着性の粘弾性ゲルである、粘液を分泌する。健康な個体では、粘液は、吸入した外来粒子および感染病原体に対する一次防御となる。粘液は、これらの粒子および病原体を捕捉し、これらの除去を容易にする一方、組織が乾燥するのも防止する。多くの杯細胞および末梢気道を含有し、咳により一掃できない小気道は、粘液貯留および粘液による漸次閉塞に対し特に脆弱である。気道分泌過多は、COPD、嚢胞性線維症、および喘息を含む幾つかの気道疾患のほか、ウイルス性気管支炎および細気管支炎を含む幾つかの呼吸器感染症と関連しているため、相当数の個体が気道分泌過多に罹患している。米国では、約1420万人がCOPDと診断されている。嚢胞性線維症は、30,000人のアメリカ人を冒し、喘息は1700万人のアメリカ人を冒している。
【0004】
気道分泌過多に罹患した個体に対する従来の治療には、全身性または吸入コルチコステロイド、抗コリン剤、抗生物質療法、気管支拡張剤(例えば、メチルキサンチン)、強力なβ2アドレナリン作動性刺激特性を有する交感神経様作用薬、「粘液溶解」剤(例えば、水、高張食塩水)のエアロゾル輸送、および去痰薬(例えば、グアイフェネシン)の経口投与の使用などが挙げられる。嚢胞性線維症に関して具体的には、より最近のアプローチは、粘液が容易に気道から除去されるように、DNAに富む粘液または喀痰の粘性を低下させるDNAseを投与することである(Shakら、Proc.Natl.Acad.、87:9188〜9192頁、1990年;Hubbardら、N.Engl.J.Med.、326:812頁、1991年)。薬物療法とは別に、軽打法、振動法、および排痰法から成る胸部理学療法も、気道から粘液を除去するのに使用される。最後の手段として、重症肺疾患を有する者には肺移植が1つの選択肢になりえる。上述した薬物療法の多くは、重大な副作用を有する。例えば、吸入コルチコステロイドは、鵞口瘡(口腔のイースト菌感染症)、咳、または嗄声の原因となりえ、全身性コルチコステロイドは、性的発達の遅延、月経周期の変化、体重増加、および血糖値の増加(糖尿病)など、より重度の副作用を有する。メチルキサンチンの副作用には、重度の悪心、振戦、筋攣縮、発作、および不整脈などが挙げられる。
【0005】
上皮宿主を制御しリモデリングするウイルス誘発性のEGFR依存性経路およびIL−13依存性経路のスキームは、例えば、図28に示されている。受容体二量化および受容体チロシンキナーゼリン酸化を伴うEGFR活性化は、3つの経路の活性化をもたらす:(1)Ral動員と、これに続くStat1およびStat3活性化をもたらすc−Src活性化、(2)Shc/Grb2動員と、これに続くERK1/2のMEK1/2活性化をもたらすSos、Ras、およびc−Raf活性化、ならびに(3)Gab1動員と、これに続くホスファチジルイノシトール−3,4,5−ホスフェート(Pl−3,4,5−P3)生成をもたらすPI3K活性化、PDK1/2活性化、次いでプロアポトーシス因子(例えば、Bad)を不活化するAktの活性化。IL−13シグナル伝達もまた、繊毛細胞の杯細胞への分化転換を促す遺伝子(CLCAおよびMUC)のアップレギュレーションにそれぞれが寄与する、ERK1/2およびPI3KならびにStat6を活性化することができる。IL−13シグナル伝達は、繊毛細胞の杯細胞への分化転換を促す遺伝子(CLCAおよびMUC)のアップレギュレーションにそれぞれが寄与する、ERK1/2およびStat6へのIRS1/2依存性カスケードを活性化する。生理学的条件下では、これらの経路は、(Stat1のIFN依存性活性化と共に)ウイルス感染からの防御をもたらすことができるが、感受性の高い遺伝的バックグラウンドで持続的活性化がある場合、同じ経路が、繊毛細胞過形成および杯細胞化生をもたらしうる。特異的阻害剤、例えば、EGFRおよびIL−13受容体ブロッカーの合理的使用により、正常な上皮構造を十分に回復することができる。
【0006】
上皮成長因子受容体(EGFR)系のこのリガンドによる活性化は、ラットにおける気道上皮細胞でのムチンの合成および杯細胞化生をもたらすことが示されている(Takeyamaら、Proc.Natl.Acad.Sci.、96:3081〜3086頁、1999年)。さらに、EGFR発現は、健康な個体の気道においては希薄であるが、喘息の個体では受容体が発現されることが示されている(BurgelおよびNadelら、Thorax、59:992〜996頁、2004年)。気道上皮におけるEGFR発現を刺激する因子または経路は、腫瘍壊死因子−α(TNFα)経路である(Takeyamaら、Proc.Natl.Acad.Sci.、96:3081〜3086頁、1999年)。Nadelら、米国特許第6,270,747号明細書は、EGFRアンタゴニストの投与による分泌過多の治療を開示している。
【0007】
インターロイキン−13(IL−13)シグナル伝達経路は、気道リモデリングおよび分泌過多に関連する。IL−13のデコイ受容体(sIL−13Rα2−Fc)は、マウスにおけるアレルゲン誘発性杯細胞形成を阻害することが見い出された(Wills−Karpら、Science、282:2258〜2261頁)。IL−13は、生理学的条件下で培養された、およびインビボの気道上皮細胞でのムチン遺伝子発現を直接誘導することが示されている(Laoukiliら、J.Clin.Invest.、108:1817〜1824頁、2001年;Kondoら、Am J.Respir.Cell Mol.Biol.、27:536〜541頁、2002年)。IL−13は、EGFRに結合して活性化させるTGFαの、ヒト呼吸上皮細胞膜からの放出を刺激することも報告されている(Boothら、Am J.Respir.Cell Mol.Biol.、25:739〜743頁、2001年)。IL−13のラット肺への気道内注入は、杯細胞化生を引き起こし、IL−13がIL−8産生を誘導する複雑なメカニズムを介してムチン産生を増加させ、好中球動員をもたらす(Shimら、Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.、280:L134〜L140、2001年)。
【発明の開示】
【0008】
[発明の概要]
本発明の様々な態様の1つは、気道分泌過多治療の改善の提供である。気道分泌過多の病因は、EGFRおよびIL−13シグナル伝達経路を含み、両方とも杯細胞形成に関与する。故に、EGFRおよびIL−13シグナル伝達経路の両方を阻害することで、気道上皮はより完全に元の構造に近づくことができる。
【0009】
したがって、簡単には、本発明は、個体における気道分泌過多の治療方法であって、EGFRシグナル伝達経路阻害剤およびIL−13シグナル伝達経路阻害剤の投与を含む方法を対象とする。
【0010】
本発明はまた、EGFRシグナル伝達経路阻害剤およびIL−13シグナル伝達経路阻害剤および製薬的に許容される担体を含む、気道分泌過多の治療のための組成物をも対象とする。
【0011】
他の目的および特徴は、一部は明白であり、一部を以下に指摘する。
【0012】
[発明の詳細な説明]
免疫シグナルは、検査を受けないでいる場合、慢性気道疾患特有の上皮表現型をもたらしうる。特に、慢性喘息/気管支炎の疾患表現型をもたらす、持続性の杯細胞化生は、繊毛上皮細胞のEGFR依存的生存および繊毛細胞の杯細胞へのIL−13依存的分化転換に依拠する(例えば、実施例1および2参照)。この異常は、EGFRおよびIL−13シグナル伝達経路におけるシグナル伝達段階の標的阻害により補正することができる。EGFR阻害剤による治療は、繊毛細胞が、プログラム細胞死へ進むことを可能にする一方、IL−13遮断は、繊毛細胞の杯細胞への移行を妨げる(例えば、実施例2および3参照)。故に、本明細書に記載の通り、EGFRおよびIL−13シグナル伝達経路の両方を遮断することにより、気道上皮を元の構造に回復させることができる(例えば、実施例4参照)。
【0013】
本発明の1局面は、したがって、EGFRおよびIL−13シグナル伝達経路を標的にすることによる上皮過形成および化生の治療、予防薬または治療薬である。本発明の別の局面は、本明細書に記載された上皮過形成および化生の治療に有用な、EGFRおよびIL−13シグナル伝達経路を標的にする組成物である。このような治療は、例えば、慢性喘息および/または気管支炎に対し、全体または一部を防御する予防薬として使用することができる。組成物および治療は、例えば、喘息、気管支炎、細気管支炎、および/または、EGFR活性化、IL−13発現、および杯細胞化生の同様のパターンを特徴とする関連する炎症性および感染性障害に伴う、上皮構造の変化を改善するのに治療的に使用することもできる。組成物および治療は、同様に、粘液分泌過多を特徴とする気道疾患または状態を治療するのに使用することができる。
【0014】
EGFRおよびIL−13シグナル伝達の阻害剤による治療の必要性を示す疾患状態、ならびにEGFRおよびIL−13シグナル伝達の阻害剤による治療に適した疾患状態には、例えば、分泌過多状態を誘発するまたは原因となる、慢性閉塞性肺疾患、鼻汁過分泌疾患(例えば、鼻アレルギー)、炎症性疾患(例えば、喘息、気管支拡張症、および肺線維症)、および慢性閉塞性肺疾患(例えば、慢性気管支炎)、ならびに嚢胞性線維症、呼吸管の家族性非嚢胞性線維症粘液濃縮(familial non-cystic fibrosis mucus inspissation)、カルタジュナー症候群、アルファ−1−アンチトリプシン欠乏症を含む遺伝子疾患、および上気道または下気道感染症(例えば、ウイルス性細気管支炎または鼻炎)などが挙げられる。
【0015】
治療の必要性の決定は、典型的には、粘液過剰生産と一致する病歴および理学的検査(例えば、粘液を産する咳)、粘液過剰生産を伴う疾患または状態を示す気道の放射線試験もしくは他の撮像試験、または気道の閉塞および/または過敏性のエビデンスを示す肺機能検査により評価されるであろう。
【0016】
本発明の1局面において、方法は、EGFRシグナル伝達阻害剤およびIL−13シグナル伝達阻害剤の投与により、上皮組織のEGFRおよびIL−13シグナル伝達レベルを低下させることを含む。投与量は、少なくとも繊毛細胞の増加を防ぎ、繊毛細胞の杯細胞への分化転換も防ぐのに十分なものである。1つの代表的試験では、ウイルス感染後12、14、17、および20日目の、IL−13を遮断するデコイ受容体による処置は、ウイルス誘発性杯細胞化生を防ぐのに有効であったのに対し、感染後10〜21日目からの、EGFRシグナル伝達の選択的阻害剤による毎日の処置は、合計上皮細胞の結果的な減少とは不釣り合いな、繊毛細胞の用量依存的消失を引き起こした(例えば、実施例4参照)。これらの結果は、EGFRおよびIL−13シグナル伝達の阻害剤による処置が、EGFR活性化、IL−13発現、および杯細胞化生を特徴とする炎症性疾患の場合の上皮構造を補正することができることを実証している。
【0017】
シグナル伝達阻害剤
EGFRまたはIL−13シグナル伝達経路阻害剤は、繊毛細胞および杯細胞化生それぞれの増加を結果的に促進する生物学的カスケードに関与するいずれかの因子または成分を、直接または間接的に標的にすることができる。
【0018】
EGFRシグナル伝達阻害剤には、EGF、EGFR、EGFRリガンド(例えば、アンフィレグリン、HB−BGF、およびTGF−α)、EGFR発現刺激因子、EGFR成分(例えば、hev−1およびhev−2)、およびEGFRシグナル伝達下流成分を標的にする阻害剤などが挙げられる。例えば、EGFRシグナル伝達阻害剤は、EGFR活性化(例えば、受容体二量化または受容体チロシンキナーゼリン酸化)を標的にすることができ、または活性化により誘発される以下のような1以上の経路を標的にすることができる:(i)Ral動員、c−Src活性化、ならびにこれに続くStat1およびStat3活性化、(ii)Shc/Grb2動員、Sos、Ras、およびc−Raf活性化、ならびにこれに続くERK1/2のMEK1/2活性化、または(iii)Gab1動員、PI3K活性化、これに続くホスファチジルイノシトール−3,4,5−ホスフェート(Pl−3,4,5−P3)生成、PDK1/2活性化および次いでプロアポトーシス因子を不活化するAktの活性化(例えば、図8、9、10、および11参照)。
【0019】
別の例として、TNFα(気道上皮のEGFR発現刺激因子)阻害剤は、EGFRシグナル伝達経路の阻害に使用することができる。同様に、該阻害剤は、TNFαの下流成分を標的にし、EGFRシグナル伝達を阻害することができる。EGFRは、リガンド依存性およびリガンド非依存性メカニズムを介して活性化することができ、それぞれ自己リン酸化またはトランスリン酸化のいずれかをもたらす。EGFRシグナル伝達のリガンド非依存性活性化因子には、酸化ストレス(例えば、Takeyamaら、Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.、280:L165〜L172、2001年)、紫外線および浸透ストレス、エンドセリン−1によるG−タンパク質結合受容体の刺激、リゾホスファチジン酸およびトロンビン、m1ムスカリン性アセチルコリン受容体、ならびにヒト成長ホルモンなどが挙げられる。
【0020】
IL−13シグナル伝達阻害剤には、例えば、IL−4Rα、IL−13Rα1、IL−4Rαリガンド、IL−13Rα1リガンド、およびIL−13下流シグナル伝達成分を標的にする阻害剤などが挙げられる。(例えば、図4参照)。例として、IL−13シグナル伝達は、IL−4/IL−13受容体を標的にして阻害することができる。あるいは、IL−4/IL−13受容体発現を刺激する因子または経路(例えば、IL−13)は、IL−13シグナル伝達経路阻害剤の1つの標的である。IL−13経路の他の活性化因子には、IL−4およびIL−9などが挙げられる。別の例として、IL−13シグナル伝達阻害剤は、(i)IRS1/2動員、Grb2/Sos活性化、Ras/c−Raf活性化、およびこれに続くERK1/2およびPI3K活性化、および/または(ii)Stat6活性化を標的にすることができ、これらはそれぞれ、繊毛細胞の杯細胞への分化転換を促す遺伝子(例えば、CLCAおよびMUC)のアップレギュレーションに寄与する(例えば、図4参照)。また、IL−13シグナル伝達阻害剤は、IRS1/2動員、PI3K活性化、これに続くホスファチジルイノシトール−3,4,5−ホスフェート(Pl−3,4,5−P3)生成、PDK1/2の活性化および次ぐプロアポトーシス因子を不活化するAktの活性化を標的にすることができる(例えば、図8、9、10および11参照)。
【0021】
EGFRおよびIL−13アゴニストもまた、それぞれのシグナル伝達経路を阻害するのに使用することができる。EGFRおよびIL−13アゴニストは、それぞれEGFRおよびIL−13シグナル伝達経路に関与する受容体との相互作用を模倣する分子である。これらは、シグナル分子の類似体もしくは断片、または受容体のリガンド結合部位エピトープに対する免疫ペプチド、または受容体相互作用部分に結合する特定の免疫ペプチドに対する抗イディオタイプ免疫ペプチドでありうる。アンタゴニストは、受容体結合について競合するが、受容体または結合分子を活性化する能力を欠くタンパク質の形態でありうる(例えば、免疫ペプチド)。抗IL−13シグナル伝達アゴニストの1つの例には、IL−13作用を特異的に遮断するデコイ受容体として作用する、組換え可溶性IL−13受容体α2 Fc融合タンパク質、sIL−13Rα2−Fcなどが挙げられる(例えば、実施例4参照)。
【0022】
EGFRおよびIL−13シグナル伝達阻害剤には、一般に、免疫ペプチド、競合的または不可逆的アンタゴニストとして作用する小分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および低分子干渉RNAなどが挙げられる。
【0023】
免疫ペプチド阻害剤
EGFRおよびIL−13シグナル伝達の免疫ペプチド阻害剤には、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および抗体断片などが挙げられる。こうした抗体は、当業者に既知のいずれか適切な方法により作製することができる。市販の抗体もまた、使用することができる。
【0024】
ポリクローナル抗体は、ウマ、ウシ、様々な家禽、ウサギ、マウス、またはラットなどの様々な温血動物から、当業者により容易に生成することができる。簡単には、抗原は、動物を免疫するのに、腹腔内、筋肉内、眼内、または皮下注入を介して、フロインド完全または不完全アジュバントなどのアジュバントと共に利用する。幾つかの追加免疫後、血清試料を収集し、所望の標的に対する反応性をテストする。特に好ましいポリクローナル抗血清は、これらのアッセイの1つにおいて、バックグラウンドより少なくとも3倍大きいシグナルをもたらすであろう。動物の力価が、反応性の点でいったんプラトーに達すると、より多量の抗血清が、週ごとに動物を出血させる、または失血させることにより、容易に得ることができる。
【0025】
モノクローナル抗体(MAb)技術は、EGFRおよび/またはIL−13シグナル伝達経路を干渉することができるMAbを得るのに使用することができる。EGFアンタゴニストとして機能するであろう抗体の例には、中和抗EGFRモノクローナル抗体C225(Kawamotoら(1983年)Proc.Nat’l.Acad.Sci.(USA)80:1337〜1341頁;Petitら(1997年)J.Path.151:1523〜153、ImClone Systems New York、N.Y.により作製)および抗EGFRモノクローナル抗体EMD55900(Mab 425とも呼ばれる)(Merck、ダルムシュタット、ドイツ)などが挙げられる。簡単には、ハイブリドーマは、抗原で免疫したマウス由来の脾臓細胞を用いて作製する。免疫した各マウスの脾臓細胞は、例えば、Galfre,G.およびMilstein,C.、Methods Enzymol.、73:3〜46頁(1981年)のポリエチレングリコール融合法を用いて、マウス骨髄腫Sp 2/0細胞と融合させる。ハイブリドーマの増殖、HAT培地での選択、抗原に対するクローンのクローニングおよびスクリーニングは、標準方法を用いて行う(Galfre,G.およびMilstein,C.、Methods Enzymol.、73:3〜46頁(1981年))。Galfre,G.およびMilstein,C.、Methods Enzymol.、73:3〜46頁(1981年)により記載の通り、HAT選択されたクローンをマウスに注入して腹水で多量のMAbを産生させ、タンパク質Aカラムクロマトグラフィー(BioRad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州)を用いて精製することができる。MAbは、その(a)特異性、(b)高結合親和性、(c)アイソタイプ、および(d)安定性に基いて選択する。MAbは、ウェスタンブロッティング法(Korenら、Biochim.Biophys.Acta 876:91〜100頁(1986年))および酵素免疫測定法(ELISA)(Korenら、Biochim.Biophys.Acta 876:91〜100頁(1986年))を含む、様々な標準方法のいずれかを用いてスクリーニングする、または特異性を試験することができる。これらのモノクローナル抗体は、通常、少なくとも約1mMのK、より一般的には少なくとも約300μMのK、典型的には少なくとも約10μMのK、より典型的には少なくとも約30μMのK、好ましくは少なくとも約10μMのK、およびより好ましくは少なくとも約3μMのKまたはこれより良いKで結合するであろう。
【0026】
機能的抗体断片、例えば、Fab、F(ab’)、Fc、および一本鎖Fv(scFv)断片を作製および使用することが望ましい場合がある。これらの断片は、一般に、抗原分子のある特定の部位に対する抗体の特異性に関与する、相補性決定領域として知られる一続きのアミノ酸配列を含有する超可変領域を含むであろう。パパインによるタンパク質分解切断は、ジスルフィド結合を介して隣接する重鎖のアミノ末端部分に結合したインタクトな軽鎖を含有するFab断片と呼ばれる、2つの別個の抗原結合断片を生成する。典型的なIgG分子の、パパインによるタンパク質分解切断は、F(ab’)断片を生成する(Handbook of Experimental Immunology.Vol 1:Immunochemistry、Weir,D.M.、編、Blackwell Scientific Publications、Oxford(1986年))。また、組換えDNA法も、scFv抗体として知られる一本鎖抗原結合ポリペプチドである組換え免疫グロブリンペプチドの生成および選択を可能にする(Lowmanら(1991年)Biochemistry、30、10832〜10838頁;Clacksonら(1991年)Nature 352、624〜628頁;およびCwirlaら(1990年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87、6378〜6382頁)。
【0027】
免疫ペプチド阻害剤は、例えば、注入あたり約0.05mgから約2.5mgの量で投与することができる。別の例として、免疫ペプチド阻害剤は、注入あたり約0.1mgから約1mgの濃度で注入することができる。好ましくは、免疫ペプチド阻害剤は、注入あたり約0.3mgから約0.5mgの濃度で注入する。
【0028】
小分子阻害剤
EGFRシグナル伝達の小分子阻害剤には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤などが挙げられる。多くのこうしたEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、当技術分野で既知であり、PD153035、EKB−569、およびAG1478(4−(3−クロロアニリノ)−6;7−ジメトキシキナゾリン);非フェノールチルホスチン類似体EGFR阻害剤RG−14620;EGFR受容体キナーゼ阻害剤チルホスチン23(RG−50810)、チルホスチン25(RG−50875)、チルホスチン46、チルホスチン47(RG−50864;AG−213)、チルホスチン51(BIOMOL Research Laboratories、プリマスミーティング、PA;BioSource International、カマリロ、CA);BIBX1522(Boehringer Ingelheim,Inc.、インゲルハイム、ドイツ);CGP59326B(Novartis Corporation、バーゼル、スイス);4−アミノキナゾリンEGFR阻害剤(米国特許第5,760,041号に記載);ニトリルおよびモロノニトリル化合物を含む、ナフタレン、インダンまたはベンゾキサジンであってもよい置換スチレン化合物(米国特許第5,217,999号に記載);米国特許第5,773,476号に記載の阻害剤;3個のジスルフィド架橋を有する39−アミノ酸プロテアーゼ阻害剤である、ジャガイモ(potato)カルボキシペプチダーゼ阻害剤(PCI)、(Blanco−Aparicioら(1988年)J Biol Chem 273(20):12370〜12377頁);ボンベシンアンタゴニストRC−3095(Szepeshaziら(1997年)Proc atl Acad Sci USA 94:10913〜10918頁);CGP 59326、CGP 60261およびCGP 62706、およびピラゾロピリミジンなどのピリドピリミジン、ピリミドピリミジン、ピロロピリミジン(StrawnおよびShawver(1998年)Exp.−Opin.Invest.Drugs 7(4)、553〜573頁);4−(フェニルアミノ)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(Traxierら(1996年)J.Med.Chem 39:2285〜2292頁);クルクミン(Korutlaら(1994年)Biochim Biophys Acta 1224:597〜600頁);(Laxmin arayana(1995年)、Carcinogen 16:1741〜1745頁)などが挙げられる。
【0029】
EGFRシグナル伝達の小分子阻害剤には、Gタンパク質脱共役剤スラミンナトリウム(BIOMOL Research Laboratories、プリマスミーティング、PA;BioSource International、カマリロ、CA)も含まれる。
【0030】
IL−13シグナル伝達の小分子阻害剤には、PD98059(MEK1/2を→ERK1/2に標的化する)およびLY294002(P13Kを→AKTに標的化する)などの下流シグナル伝達を標的にするものなどが挙げられる。
【0031】
小分子阻害剤は、1回の投与につき被験者の体重1kgあたり約0.1μgから約100mgの量で投与することができる。当業者は、用量レベルが、以下でより詳しく考察するように、特定化合物、症状の重症度および被験者の副作用に対する感受性の関数として変化しうることを容易に理解するであろう。
【0032】
アンチセンス阻害剤
アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドは、相補的mRNAにハイブリダイズし、タンパク質発現を減少させることにより高度に選択的および特異的に遺伝子発現を阻害する。
【0033】
アンチセンスオリゴヌクレオチドEGFRシグナル伝達阻害剤およびこの作製方法には、例えば、Kronmillerら(1991年)Dev Biol.147(2)、485〜8頁;Huら(1992年)Int J Dev Biol.36(4)、505〜16頁;RoyおよびHarris(1994年)Molecular Endocrinology 8、1175〜1181頁;Casamassimiら(2000年)Ann−Oncol 11(3)、319〜325頁;Normannoら(1996年)Cancer Detection and Prevention 20(5);Heら(2000年)World J Gastroentero 6(5)、747〜749;Riedelら、Int J Oncol(2002年)21、11〜16頁;Zengら(2002年)J Exp Ther Oncol 2(3)、174〜186頁;Dengら(2003年)Di Yi Jun Yi Da Xue Xue Bao 23(9)、877〜81頁;Liら(2002年)Clin Cancer Res 8、3570〜3578頁に記載されたものなどが挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドEGFRシグナル伝達阻害剤には、上記方法に類似した方法で作製されたものも含まれる。EGFRアンチセンス遺伝子療法の安全性および有効性は、Zengら(2002年)J Exp Ther Oncol 2(3)、174〜186頁に記載されている。
【0034】
アンチセンスオリゴヌクレオチドIL−13シグナル伝達阻害剤およびこの作製方法には、例えば、Mousaviら(2004年)Iran.Biomed.J.8(4)185〜191頁に記載のものなどが挙げられる。
【0035】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約10μg/日から約3mg/日の濃度で静注により投与されうる。例えば、投与用量は、約30μg/日から約300μg/日であってよい。別の例として、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約100μg/日で投与されうる。アンチセンスオリゴの投与は、単回の事象としてまたは治療の時間経過にわたり行ってもよい。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、毎日、毎週、隔週、または毎月注入することができる。治療の時間経過は、約1週間から約1年またはこれを超えてよい。1つの例では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1カ月間毎日注入する。別の例では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約10週間毎週注入する。さらなる例では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、48週間6週ごとに注入する。
【0036】
RNA干渉
EGFRおよびIL−13シグナル伝達経路は、EGF、EGFR、IL−13、IL−4Rα、IL−13Rα1など、これらの経路の成分に特異的な低分子干渉RNA(siRNA)の治療有効量を患者に投与することでRNA干渉によりダウンレギュレートすることができる。siRNAは、Ambion(Austin、TX)などの供給元から市販されている。siRNAは、上皮の過形成および化生および/または分泌過多領域の、またはこの領域付近の組織細胞にsiRNAを輸送するのに適した手段により被験者に投与することができる。例えば、siRNAは、遺伝子銃、エレクトロポレーション、または静注など他の適切な非経口もしくは経腸投与経路により投与することができる。
【0037】
RNA干渉は、二本鎖RNA(dsRNA)が、その相補的配列を有する遺伝子の発現を特異的に抑制するプロセスである。該遺伝子の抑制は、対応するタンパク質の産生を阻害する。導入の際、長鎖dsRNAは、一般にRNA干渉(RNAi)経路と呼ばれる細胞経路に侵入する。先ず、dsRNAは、ダイサーと呼ばれるRNase III様酵素により20〜25ヌクレオチド(nt)低分子干渉RNA(siRNA)にプロセシングされる(開始工程)。次いで、siRNAは集合して、RNA誘導サイレンシング複合体(RNA-induced silencing complex)(RISC)として知られるエンドリボヌクレアーゼ含有複合体を構築し、該プロセスにおいて巻き戻される。siRNA鎖は、続いてRISCを相補的RNA分子に導き、相同の(cognate)RNAを切断および破壊する(エフェクター工程)。相同RNAの切断は、siRNA鎖が結合した領域の中央付近で起こる。siRNAは、標的mRNAに標的化している、約17ヌクレオチドから約29ヌクレオチド長、好ましくは約19から約25ヌクレオチド長の短い二本鎖RNAを含むことが好ましい。
【0038】
一例として、siRNAの有効量は、標的mRNAのRNAi媒介分解を引き起こすのに十分な量、または被験者においてEGFRもしくはIL−13シグナル伝達経路を阻害するのに十分な量でありうる。当業者は、その被験者に投与すべき本発明のsiRNA有効量を、被験者のサイズおよび体重;血管新生または疾患浸透の程度;被験者の年齢、健康および性別;投与経路;ならびに投与が局所性かまたは全身性か、などの要素を考慮して容易に決定することができる。一般に、siRNA有効量には、上皮過形成および化生部位、またはこの部位付近で、約1ナノモル(nM)から約100nM、好ましくは約2nMから約50nM、より好ましくは約2.5nMから約10nMの細胞内濃度などがある。より多い、またはより少ない量のsiRNAを投与することができると考えられる。
【0039】
siRNAは、いずれかのmRNA標的配列の、いずれかの約19〜25の一続きの隣接ヌクレオチドに標的化することができる。ヒトゲノムデータベース(BLAST)の検索を行って、選択siRNA配列が、他の遺伝子転写物を標的にしないことを確実にすることができる。siRNAの標的配列の選択方法は、例えば、Elbashirら((2001年)Nature 411、494〜498頁)に提供されている。従って、本siRNAのセンス鎖は、EGF、EGFR、IL−13、IL−4Rα、またはIL−13Rα1の標的mRNAにおける約19から約25ヌクレオチドのいずれかの隣接する一続きと同一のヌクレオチド配列を含む。一般に、標的mRNA上の標的配列は、標的mRNAに対応する所与のcDNA配列から選択することができ、好ましくは開始コドンから50から100nt下流(すなわち、3’方向)から始まる。しかし、標的配列は、5’もしくは3’非翻訳領域、または開始コドン付近の領域に位置していてもよい。
【0040】
処置の用量および時間経過
本明細書に記載の治療に使用する場合、治療有効量の本発明の化合物は、化合物のみの形態で、または、そのような形態が存在する場合は、製薬的に許容される塩の形態で、および製薬的に許容される賦形剤と共にもしくは製薬的に許容される賦形剤なしで用いることができる。例えば、本発明の化合物は、いずれかの薬物療法に適用できる妥当なベネフィット/リスク比で、EGFRシグナル伝達およびIL−13シグナル伝達を阻害する、またはEGFRおよびIL−13シグナル伝達カスケードから生じる産物の形成を減少させるのに十分な量で投与することができる。各種阻害剤に特有の用量は、上記により十分に記載している。しかし、本発明の化合物および組成物の合計1日用量は、担当医師により健全な医学的判断の範囲内で決定されることは理解されるであろう。
【0041】
任意の特定患者に特有の治療的に有効な投与レベルは、治療している障害および障害の重症度;使用する特定化合物の活性;使用する特定組成物;患者の年齢、体重、一般的健康、性別および食習慣;投与時間;投与経路;使用する特定化合物の排泄率;処置期間;使用する特定化合物と組み合わせてまたは同時に使用する薬剤など医術ではよく知られる要素を含む、様々な要素に依拠するであろう。例えば、化合物の投与を、所望の治療効果を得るのに必要なレベルより低いレベルで開始し、所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加することは、当技術分野の技術の十分に範囲内である。所望であれば、有効1日用量は、投与目的のため複数回投与に分割することができる。したがって、単回投与組成物は、1日用量を構成するような量またはこの約数を含有してよい。
【0042】
EGFRおよびIL−13シグナル伝達阻害剤の投与は、単回投与としてまたは治療の時間経過にわたり行ってもよい。例えば、阻害剤は、毎日、毎週、隔週、または毎月投与することができる。急性状態の治療では、治療の時間経過は、通常、少なくとも数日となろう。特定の状態においては、治療を数日から数週間延長することもありうる。例えば、治療は、1週間、2週間、または3週間にわたり延長することができよう。より慢性状態では、治療は、数週間から数カ月または1年もしくはこれを超えて延長することができよう。
【0043】
本明細書に示した方法により、EGFR活性化、IL−13発現、および杯細胞化生を特徴とする炎症性疾患の予防的および治療的処置は、EGFRおよびIL−13シグナル伝達の、これらの経路の阻害剤の投与を介した遮断、減少、またはダウンレギュレーションを通じて達成することができる。
【0044】
治療的投与
EGFRおよびIL−13シグナル伝達阻害剤は、外因性物質としてまたは内因性物質として治療的に使用することができる。外因性薬剤は、生体外で生成されるまたは製造され、生体に投与されるものである。内因性薬剤は、生体内へまたは生体内の他の器官へ輸送するための一種の装置(生物学的または他の)により、生体内で生成されるまたは製造されるものである。
【0045】
外因性治療
EGFRおよびIL−13シグナル伝達阻害剤の安定なおよび有効な量は、例えば、望ましくない副作用を最少化しつつ、患者において所望の治療効果をもたらすような量である。用法は、治療している状態の正確な性質、状態の重症度、患者の年齢および一般的身体状態などといった要素に基づき、熟練医師により決定されるであろう。
【0046】
本発明の組成物は、1以上のEGFRおよびIL−13シグナル伝達阻害剤、ならびに前記化合物のための製薬的に許容されるビヒクルを含むであろう。様々な種類のビヒクルが使用できる。ビヒクルは、本来、水性であってよい。化合物は、懸濁液、粘性もしくは半粘性ゲルまたは他の種類の固形もしくは半固形組成物など、他の種類の組成物に容易に組み込むこともできる。懸濁液は、水に比較的不溶である薬剤が好ましい可能性がある。本発明の組成物は、緩衝液、防腐剤、共溶媒および増粘剤(viscosity building agent)など、様々な他の成分も含んでもよい。
【0047】
EGFRおよびIL−13シグナル伝達阻害剤は、当業者に既知の処方方法により、様々な種類の医薬組成物に含有させることができる。選択する特定の種類の処方は、使用するEGFRおよびIL−13シグナル伝達阻害剤、投与頻度、および治療する部位など、様々な要因に依拠するであろう。例えば、薬剤は、溶液、懸濁液、および、組織洗浄液など関係組織への局所適用、または関係組織への注入に適した他の投与形態に含めることができる。保存条件下でのpH変動を防止するために、適切な緩衝系(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムまたはホウ酸ナトリウム)を添加することができる。
【0048】
このように、使用中の微生物汚染を防止するのに、防腐剤が一般に必要とされる。適切な防腐剤の例には、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、ポリクオタニウム−1、または当業者に既知の他の薬剤などが挙げられる。このような防腐剤は、典型的には組成物の総重量(wt.%)に対して、約0.001から約1.0重量パーセントのレベルで使用する。
【0049】
EGFRおよびIL−13シグナル伝達阻害剤の幾つかは、水への溶解度が限られる場合があるため、組成物中に界面活性剤または他の適切な共溶媒を必要とする場合がある。このような共溶媒には、ポリエトキシレート化ヒマシ油、ポリソルベート20、60および80;プルロニック(登録商標)F−68、F−84およびP−103(BASF Corp.、パーシッパニー、N.J.USA);シクロデキストリン;または当業者に既知の他の薬剤などが挙げられる。このような共溶媒は、典型的には約0.01から約2wt.%のレベルで用いられる。
【0050】
生理学的にバランスの取れた灌注液(irrigating solution)は、EGFRおよびIL−13シグナル伝達阻害剤の医薬ビヒクルとして使用することができる。本明細書において用いられる、「生理学的にバランスの取れた灌注液」という用語は、侵襲的または非侵襲的医療処置の間、組織の物理的構造および機能を維持するのに適した溶液を意味する。この種の溶液は、典型的には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、および/または塩化物などの電解質;デキストロースなどのエネルギー源;ならびに生理学的レベルでまたはこれに近いレベルで溶液のpHを維持する緩衝液を含有するであろう。この種の様々な溶液が知られている(例えば、乳酸化リンゲル液)。BSS(登録商標)滅菌灌注液およびBSS Plus(登録商標)滅菌眼内灌注液(Alcon Laboratories,Inc.、Fort Worth、Tex.、USA)は、生理学的にバランスの取れた眼内灌注液の例である。
【0051】
単純な水溶液の粘性を超える粘性は、活性化合物の組織吸収を増加させ、製剤の調剤の変動を減少させ、製剤の懸濁液または乳剤の成分の物理的分離を減少させ、および/またはその他眼科用製剤を改善するために望ましい場合がある。このような増粘剤には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたは当業者に既知の他の増粘剤などが挙げられる。こうした薬剤は、典型的には約0.01から約2wt.%のレベルで使用される。
【0052】
本発明の組成物は、複数回投与の形態で封入することができる。
【0053】
内因性治療
治療産物を産生についての遺伝子治療の原則を、EGFRおよびIL−13シグナル伝達阻害の輸送に適用することができる。臨床の場合は、治療用のEGFRおよびIL−13シグナル伝達阻害剤のための遺伝子輸送系は、当分野にて既知の幾つかの方法のいずれかにより患者(またはヒト以外の動物)へ導入することができる。例えば、EGFRおよびIL−13アンチセンス核酸シグナル伝達阻害剤は、非病原性ウイルス変異体(例えば、複製欠損マウスレトロウイルスベクターおよびアデノ関連ウイルスベクター)、脂質小胞(例えば、リポソーム、リポフェクチン、およびサイトフェクチン)、炭水化物および/または治療タンパク質もしくは物質をコードするヌクレオチド配列のその他の化学コンジュゲートでありうる輸送ビヒクル(ベクターと呼ばれる)を介して導入することができる。別の例として、ベクターは、物理的取り込み(例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、および空気式「遺伝子銃」)、化学的取り込み、または細胞受容体(例えば、受容体ベースのエンドサイトーシス)媒介取り込みにより生体細胞へ導入することができる。核酸配列は、細胞内へ一度取り込まれると、細胞(エピソーム)環境または核(細胞核)環境内で治療物質を産生できるようになる。エピソームは、通常、限られた期間に所望の産物を産生するのに対し、細胞核に組み込まれた核酸配列は、永久も含め長期間治療産物を産生することができる。
【0054】
遺伝子治療コンストラクトの医薬製剤は、本質的に、許容可能な希釈剤中の遺伝子輸送系から構成することができ、または遺伝子輸送ビヒクルが組み込まれた持続放出マトリックスを含んでもよい。あるいは、例えば、レトロウイルスベクターなどの完全な遺伝子輸送系が、組換え細胞からインタクトに生成され得る場合、医薬製剤は、遺伝子輸送系を生成する1以上の細胞を含み得る。
【0055】
遺伝子治療法は、輸送部位ごとに記載することもできる。遺伝子を輸送する基本的方法には、エクスビボ遺伝子導入、インビボ遺伝子導入、およびインビトロ遺伝子導入などが挙げられる。エクスビボ遺伝子導入では、細胞を患者から採取し、細胞培養で増殖させる。DNAを細胞にトランスフェクトし、トランスフェクト細胞の数を増やし、次いで患者に再移植する。インビトロ遺伝子導入では、形質転換細胞は、組織培養細胞などの培養増殖細胞であり、特定の患者由来の特定の細胞ではない。これらの「実験室細胞」をトランスフェクトし、トランスフェクト細胞は、患者へ移植するためまたは他の使用のために選択し増殖させる。インビボでは、遺伝子導入は、細胞が患者内にある場合、患者の細胞へのDNAの導入を含む。インビボでは、遺伝子導入は、内皮特異的プロモーターを含有する遺伝子治療ベクターを用いて、患者の眼の内皮細胞へDNAを特異的に導入することも含む。上述の3つの幅広いカテゴリーは全て、インビボ、エクスビボ、およびインビトロで遺伝子導入を実現するのに使用することができる。
【0056】
遺伝子治療はまた、タンパク質をコードする天然遺伝子を遮断する遺伝子配列により細胞が形質転換されている場合に、そのタンパク質またはポリペプチドを産生すること、すなわち、内因性遺伝子活性化技術も考えられる。
【0057】
本発明を詳細に記載したことにより、添付の特許請求の範囲に記載した本発明の範囲を逸脱することなく、修正および改変が可能であることは明らかであろう。さらに、本開示の実施例は全て、非限定的な例として提供することと理解されたい。
【実施例】
【0058】
以下の非限定的な実施例は、本発明をさらに説明するために提供する。続く実施例で開示する方法は、本発明の実践において十分に機能すると本発明者が見出したアプローチを代表すること、従って本発明の実践様式の例を成すと見なすことができることを、当業者には理解されたい。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示された特定の実施形態において、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの変更を成すことができ、なおも同様の、もしくは類似の結果を得ることができることを理解するはずである。
【0059】
以下の実施例で使用される方法
以下に記載の実施例で使用する特定の方法は、実施例自体の中に含まれるが、さらなる技術も用いられ、すぐ下に記載している。
【0060】
増殖マーカー。BrdU免疫染色では、マウスに、安楽死の48時間前、24時間前および4時間前にBrdU(100mg/kg)を腹腔内投与した。BrdUは、抗BrdU染色キット(Zymed Laboratories,Inc.、サンフランシスコ、CA)により、メーカーのプロトコルに従って検出した。Ki67免疫染色は、抗原アンマスキング溶液(Vector Laboratories)を用いた熱誘導抗原回復(heat-induced antigen retrieval)の前処置以外は、EGFR免疫染色と同じプロトコルを用いて抗Ki67 Ab(Novocastra Laboratories Ltd、ニューキャッスル、UK)により行った。PCNA染色は、ABC法(Vector Laboratories)を用いたビオチニル化抗マウスPCNA Ab(DAKO Corporation、カーピンテリア、CA)により行った。
【0061】
気道上皮細胞の培養および処置。マウス気管上皮細胞(mTEC)の初代気液界面培養を、先に報告されているようにに樹立した(Youら(2002年)Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.283:L1315〜1321頁)。ヒト気道上皮細胞培養は、移植を受けているCOPD患者の肺外植片から、および肺疾患を伴わない肺移植ドナーから収集した気管気管支標本から同じ培養条件を用いて樹立した。全ての場合において、上下コンパートメントにおいて10μg/mlインスリン、10μg/mlトランスフェリン、0.1μg/mlコレラ毒素、25ng/ml EGF(Bectin Dickinson、ベッドフォード、MA)、30μg/mlウシ下垂体エキス、および5% FBSを補充した基礎培地(30mM HEPES、4mM L−グルタミン、3.5mM NHCO3、0.01%ファンギゾン、およびペニシリン/ストレプトマイシンを伴うDMEM/Ham’s F−12)にて細胞を増殖させた。細胞の膜貫通電気抵抗が>1000オーム・cmになった後、膜をPBSで洗浄し、下部コンパートメントの培地を2% NuSerum(BD BioSciences、サンディエゴ、CA)を補足した基礎培地に変更して、気液界面状態を樹立した。EGFR刺激では、細胞を基礎培地で24時間インキュベートし、次いで、上部および/または下部コンパートメントに添加したEGF含有基礎培地(1〜100ng/ml、Upstate Biotechnology、レイクプラシド、NY)において、10分間37℃でインキュベートした。EGFRシグナル伝達阻害剤またはビヒクル対照(0.1% DMSO)は、長期実験では下部コンパートメントに毎日、または短期実験では上下コンパートメントに1.5から6時間添加した。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤PD153035、MEK1/2阻害剤PD98059、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤AG1478、およびPI3K阻害剤LY294002は、Calbiochem(ラホーヤ、CA)製、ならびにz−Val−Ala−Aspフルオロメチルケトン(z−VAD−fmk)は、Enzyme Systems Products(リバーモア、CA)製であった。Preprotech(ロッキーヒル、NJ)製の組換えヒトまたはマウスIL−13を、気液界面状態の24時間前に、上下コンパートメントに添加し、下部コンパートメントにおいては実験の間中維持した。
【0062】
免疫組織化学法。培養細胞を4℃でPBSにより2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドにおいて10分間、25℃で固定し、PBSで洗浄し、TUNEL反応については、エタノール:酢酸(2:1、vol/vol)で5分間、−20℃で透過処理し、または免疫染色については、0.2%トリトン−Xで5分間、25℃で透過処理した。次いで透過処理細胞を、PBSで洗浄し、TUNEL反応(Intergen、パーチェス、NY)にかけるか、または2%魚ゲルにより1時間、25℃にて遮断し、ウサギ抗活性カスパーゼ 3(BD Biosciences、サンディエゴ、CA)、ウサギ抗−EGFR(Santa Cruz Biotechnology、サンタクルス、CA)、ウサギ抗−p−EGFR(Cell Signaling Technology,Inc.、ビバリー、MA)、マウス抗−β−チューブリン−IVもしくはウサギ抗−β−チューブリン(Sigma、セントルイス、MO)抗体と共に一晩、4℃でインキュベートした。一次抗体結合は、ヤギ抗マウスまたはロバ抗ウサギFITCまたはCY3二次抗体により検出した。細胞を、4μg/ml Hoechst 33258(Molecular Probes、ユージーン、OR)で対比染色して核形態をチェックし、次いで上述の通り撮像した。
【0063】
フローサイトメトリー法。マウス気管上皮細胞を上述の通りに培養し、0.25%トリプシンおよび0.1% EDTAを含有する細胞解離溶液(Sigma、セントルイス、MO)を用いてトランスウェル培養から除去した。細胞を、0.2% BSA含有HBSSで洗浄し、5μg/ml JC−1(Molecular Probes、ユージーン、OR)と共に15分間、25℃でインキュベートした。ミトコンドリア膜脱分極を有する細胞を、FACSCaliburフローサイトメーターおよびCellQuestソフトウェア(Beckton Dickinson、マウンテンビュー、CA)を用いて、緑色蛍光(FL1)の低発光から高発光へのシフトにより検出した。
【0064】
電子顕微鏡法。透過電子顕微鏡法(TEM)のために、膜上の細胞を、先に報告されているようにに調製した(Youら(2004年)Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.286:L650〜657頁)。簡単には、試料を、2.5%グルタルアルデヒドで固定し、1.25%四酸化オスミウムで染色した。細胞を、2.0%タンニン酸で対比染色し、切片作成のためブロックし、ツァイス902モデル顕微鏡で撮像した。
【0065】
統計分析。マウス組織の組織化学についての値を、要因実験デザインのため一元配置の分散分析(ANOVA)を用いて分析した。一元配置分析で有意性が得られた場合、シェッフェのF検定を用いてANOVA後平均比較を行った。
【0066】
実施例1:繊毛上皮細胞でのEGFR持続活性化
通常のヒトパラミクソウイルス(例えば、呼吸器合胞体ウイルスまたはメタ肺炎ウイルス)は、一般にマウスでの複製が不十分であるため、マウス気道上皮におけるEGFR挙動は、マウスパラインフルエンザウイルス(センダイウイルス;SeV)を接種したマウスで評価した。このモデル系において、接種により、細気管支粘膜において高効率で複製が起こり、結果的に免疫応答遺伝子発現、免疫細胞浸潤、および上皮損傷が誘導される(Walterら(2001年)J.Exp.Med.193、339〜352頁)。この宿主反応により、接種後10〜12日までにSeVは完全に除去される(Walterら(2002年)J.Clin.Invest.110:165〜175頁;Tynerら(2005年)Nat.Med.11:1180〜1187頁)。幾つかのマウス株では、損傷の後に、上皮修復および正常な気道構造の回復が起こるが、C57BL/6Jマウスでは、接種後約21日目に出現する長期的な(恐らく永久の)杯細胞化生が続いて起こりうる(Walterら(2002年)J.Clin.Invest.110、165〜175頁)。
【0067】
C57BL/6JおよびBalb/cJマウスは、The Jackson Laboratory(バーハーバー、メイン州)から入手し、先に報告されているように、7週齢で、研究用の無菌条件下で維持しモニターした(Walterら(2001年);Walterら(2002年);Tynerら(2006年)J.Clin.Invest.116:309〜321頁)。SeV(フシミ株(Fushimi Strain)52)を、孵化鶏卵で増殖させ、回収してウイルス原液とし、5000 EID50(50%発育鶏卵感染用量)(50% egg infectious dose)は2×10 PFU(プラーク形成単位)に相当した。この接種材料または同量のUV不活化SeVを、ケタミン/キシラジン麻酔下で30μl PBSにて鼻腔内輸送した。これらの条件下でウイルス組織レベルは、感染後3〜5日目で最大となり、ウイルス除去は12日目までに完了する(Walterら(2001年);Walterら(2002年);Tynerら(2006年)J.Clin.Invest.116:309〜321頁)。センチネルマウス(sentinel mice)および実験対照マウスは、接種マウスと同様に処理し、11種の齧歯類病原菌(SeVを含む)への曝露の血清学的または組織学的証拠は示されなかった。EGFR遮断については、マウスを、EKB−569(Lee Greenberger、Wyeth Ayerst Pharmaseuticals、パールリバー、NYから入手;pH2.0の水中20mg/kgを経管栄養により投与)またはビヒクル対照を感染後10〜21日目から毎日投与して処置した。IL−13遮断については、マウスに、感染後12、14、17、および20日目に、Fcに融合した可溶性マウスIL−13Rα2(sIL 実施例2:EGFR阻害は、上皮をリモデリングする13Rα2−Fcの側面を低下させる;Deborah Donaldson、Wyeth Ayerstから入手;PBS中200μg/マウス)または対照Fcを皮下注射した(Donaldson(1998年)J.Immunol.161、2317頁)。
【0068】
全肺分析については、マウス肺の左葉を、ホスファターゼ阻害剤カクテル(Sigma)含有RIPA緩衝液Page 16(PBS中1% NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS)においてホモジナイズした。気管組織およびmTECを、20mM Tris−HCl、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1%トリトン−X 100、1.0μg/mlロイペプチン、10μg/mlアプロチニン、0.2mMフッ化フェニルメチルスルホニル、1mMオルトバナジウム酸ナトリウム、0.1mMフッ化ナトリウム、2.5mMピロリン酸ナトリウム、および1mM β-グリセロリン酸を含有する細胞溶解緩衝液中で収集した。細胞溶解物を遠心分離で除去し、上清タンパク質を4〜15%勾配SDS−PAGEで単離し、PVDF膜(Millipore、ベッドフォード、MA)に移した。膜を、EGFR、ホスホ−EGFR、ホスホ−ERK1/2、活性化カスパーゼ3、ホスホ−Stat6(Cell Signaling Technology、ビバリー、MA)、ホスホ−Akt(BD Bioscience、サンディエゴ、CA)、カスパーゼ9(Stressgen、サンディエゴ、CA)、およびβ−アクチン(Chemicon、テメキュラ、CA)に対する抗体に対しブロットした。一次抗体結合は、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートした化学発光を強化した二次抗体(Amersham Pharmacia Biotech、バッキンガムシャー、UK)により検出した。
【0069】
マウス肺を、25cm HO圧における4%パラホルムアルデヒドの気管内注入により固定した。4℃で一晩固定した後、組織をパラフィンに包埋し、ヘマトキシリン/エオシンまたは免疫染色のため3μm厚の切片に切断した。
【0070】
ヒト組織については、喘息被験者(グルココルチコイド治療有りおよび無し)および健康な対照被験者を募集し、特徴付け、先に報告されているように気管支内生検を行った(Walter(2001年);Sampathら(1999年)J.Clin.Invest.103:1353〜1361頁;Taguchi(1998年)J.Exp.Med.187、1927〜1940頁)。簡単には、喘息被験者については、被験者を吸入プロピオン酸フルチカゾン(1760μg/d)により30日間処置した後、次いで6週間または最大呼気流量が25%減少し1秒の努力呼気肺活量が15%減少するまでフルチカゾンを中止した後、気管支内生検を行った。全被験者において、過去3カ月間の呼吸器感染症の既往歴はなかった。気管支内生検をPBSで洗浄し、10%中性緩衝ホルマリンと共に18時間、25℃でインキュベートした後、上述のように組織化学試験を行った。さらに、肺切除または移植を受けているCOPD患者由来の肺組織試料を入手し、上述のように処理した。
【0071】
免疫染色では、組織切片を脱パラフィン化し、等級付アルコール(graded alcohol)中で再水和し、疎水性フィルム(ImmEdge PEN、Vector laboratories、バーリンガム、CA)で囲んだ。抗原回収については、切片を、PBS中40μg/mlの最終濃度のプロテイナーゼK(Sigma、セントルイス、MO)により5分間消化し、次いで蒸留水中3%過酸化水素中で10分間処理して内因性ペルオキシダーゼ活性を消光した。非特異的結合を、0.2% Tween 20(TBST)を含むトリス緩衝生理食塩水(pH8)中3% BSAおよび2%ヤギ血清により、1時間おいて遮断した。一次抗体を、ブロッキング緩衝液中に、ヒトおよびマウス組織切片について、それぞれ0.05または0.1μg/mlの最終濃度に希釈し、一晩4℃にてインキュベートした。マウスEGFRの対応する配列と同一のアミノ酸残基1005−1016に対するウサギ抗ヒトEGFR抗体SC−03(Santa Cruz Biotechnology(サンタクルス、CA)製)を用いて、EGFRを検出した。リン酸化Tyr845に対するウサギ抗ホスホ−EGFR(Tyr845)抗体#2231(Cell Signaling Technology Inc.(ビバリー、MA)製)を用いてリン酸化EGFR(p−EGFR)を検出した。この抗体については、最終濃度0.16および0.32μg/mlを、ヒトおよびマウス組織にそれぞれ使用した。繊毛細胞、クララ細胞、および杯細胞を、マウス抗β−チューブリン−IV mAb(Sigma)、ヤギ抗クララ細胞分泌タンパク質(CCSP)抗体(Santa Cruz Biotechnology)、およびマウス抗ヒトMUC5AC mAb 45M1(Lab Vision Corp.、フレモント、CA)をそれぞれ用いて同定した。特異性を検証するため、10倍過剰なペプチド抗原または非免疫ウサギIgG(Santa Cruz)を前吸収させた一次抗体と共に切片をインキュベートした。一次抗体結合後、切片をTBSTで洗浄し、次いでビオチニル化ヤギ抗ウサギIgG(2μg/ml)と共にインキュベートした。シグナルを、メーカーのプロトコル(Vector Laboratories)に従って、Elite ABC法および3,3’−ジアミノベンジジンクロモゲンにより増幅した。切片を、ヘマトキシリンで対比染色し、脱水し、Cytoseal 60(Stephens Scientific、リバーデール、NJ)でマウントした。免疫蛍光は、以下のことを除き、光学顕微鏡法の免疫染色と同様にして行った:組織をTissue−Tek OCT(Sakura Finetek、トーランス、CA)において凍結し、切片を2%ロバ血清(Jackson ImmunoResearch Labs、ウェストグローブ、PA)で遮断し、25℃で30分間CY−3コンジュゲート抗体またはFITCコンジュゲート抗体(Jackson ImmunoResearch Labs)を用いて一次抗体結合を検出し、切片をHoechst色素33432(Molecular Probes、ユージーン、OR)で対比染色したこと。切片を、デジタル顕微鏡写真システム(Optronix CCD CameraおよびMAgnafire v2ソフトウェア)にインターフェイスした光学または免疫蛍光顕微鏡(オリンパスモデルBX−51)で撮像した。先に報告されているように(Walterら(2001年);Walterら(2002年);Sampathら(1999年))、パブリックドメインNIH画像プログラム(米国立衛生研究所で開発され、インターネット上のrsb.info.nih.gov/nih−imageで入手可能)を用いマッキントッシュコンピュータで行った分析により、レポーターを、基底膜1mmあたりの肺気道の繊毛細胞を計数して定量化した。共焦点顕微鏡法を、LSM−510ソフトウェアを備えたツァイスレーザースキャニングシステム(ツァイス、ソーンウッド、NY)を用いて実施した。
【0072】
ウェスタンブロット分析結果は、抗EGFRおよび抗ホスホ−EGFR抗体が、気道組織試料の受容体を特異的に認識することを示した(データ示さず)。抗EGFR抗体による気道組織の免疫染色結果は、EGFR発現は、主に繊毛上皮細胞の頂端膜に局在化するが、他の細胞種(例えば、基底細胞および気道平滑筋細胞)も弱く免疫染色されることを示した(図1)。SeV感染マウス対SeV−UVを接種した対照マウス間の、抗EGFR免疫染色のパターンまたはレベルに有意差は観察されなかった。反対に、ホスホ−EGFRに対する免疫染色(リン酸化Tyr845を認識する抗ホスホ−EGFR抗体を用いる)は、活性化したEGFRのレベルは、未接種またはSeV−UV接種対照マウスと比べて、SeV接種後約21日目に持続的に増加したことを示した。EGFR発現パターンと同様に、ホスホ−EGFRも、主に繊毛上皮細胞の頂端表面に局在化したが、この場合、頂端細胞染色には、この同じ繊毛細胞集団における対応する核染色が伴った(図1)。他の細胞種(例えば、基底細胞)も、核および細胞質の部位で弱く免疫染色された。これらの所見は、活性化EGFRの核転座に関する報告と一致する(Linら(2001)Nature Cell Biol.3:802〜808頁)。免疫染色のこのパターンは、EGFR一次抗体が、主に非リン酸化受容体を認識することを示した。両抗体において、免疫染色は、対応する抗原による前吸収により完全に消失した。さらに、正常なウサギIgGを、アイソタイプ陰性対照として使用し、これはバックグラウンドを超える有意なシグナルを示さなかった。レーザー走査型共焦点顕微鏡により検出された二重標識および免疫蛍光結果から、マウス気道において、EGFRが繊毛上皮細胞に対するマーカー(すなわち、β−チューブリン)と共局在化するが、クララ細胞に対するマーカー(すなわち、CCSP)または杯細胞に対するマーカー(すなわち、MUCA5AC)とでは共局在化しないことが示された(図2)。これは、主に繊毛上皮細胞にEGFR発現が局在化したことと一致する。
【0073】
マウスで見られたEGFR免疫染色のパターンは、ヒト被験者のものと類似していた。特に、正常および喘息被験者においても、EGFR発現は繊毛上皮細胞の頂端細胞膜に局在化し、ホスホ−EGFRは同様に杯細胞化生を示す喘息被験者において増加した(図29)。ホスホ−EGFR発現は、同様に繊毛上皮細胞の頂端部分に局在化しており、その発現には同じ繊毛細胞における対応する核染色が伴った。正常および喘息被験者の双方において、基底細胞にも弱くはあるがさらなるホスホ−EGFR免疫染色が現れた。
【0074】
実施例2:繊毛上皮細胞におけるEGFRシグナル伝達の機能的役割
繊毛上皮細胞での持続性EGFRシグナル伝達の機能的役割を明確にするため、肺切片を、繊毛上皮細胞、クララ細胞、および杯細胞に対するマーカーで免疫染色した。組織の調製および免疫染色は、上述のように行った。
【0075】
気道上皮で見られる細胞種の定量分析から、Sev−UVを接種した対照マウスと比べて、Sev感染マウスでは、接種後21日目に繊毛および杯細胞が増加すると同時にクララ細胞が減少した(ただし12日目まではそうでなかった)ことが示された(図3〜4)。次に、観察された上皮構造のこれらの変化にEGFRシグナル伝達が関与しているどうかを判定した。マウスに感染後10日目から21日目まで毎日、不可逆EGFR阻害剤EKB−569を経口投与して処置すると、感染後21日目にマウス肺全体でAkt活性化の完全阻害が達成され(図30)、これは、EGFR生存促進(pro-survival)シグナル伝達がこれらの条件下で効果的に遮断されたことを示している。これらの試験では、インビトロで気道上皮細胞におけるEGFRシグナル伝達を選択的に阻害する新たな不可逆EGFR阻害剤(EKB−569)を使用した(図30)。インビボでの遮断を実現するため、(ウイルス除去または上皮修復を妨害しないように)接種後10日目から21日目(リモデリング反応が発生)まで、EKB−569を毎日経口投与した。これらの処置条件下、EKB−569は、インビボでもEGFRシグナル伝達を遮断した(図30)。
【0076】
EGFR阻害剤による処置は、上皮リモデリングの3つの側面全てを修正するのに役立つことも観察された。具体的には、繊毛細胞増加およびクララ細胞減少の完全な遮断、ならびに杯細胞化生の部分的だが有意な阻害が観察された(図6)。EKB−569処置は、気道上皮細胞の合計数に影響せず(サイトケラチン染色細胞は、接種後21日目のビヒクル処置後に基底膜mmあたり133±3、薬剤処置後で137±5であった)、他の上皮細胞(例えば、基底およびクララ細胞)集団における代償性変化と矛盾しなかった。同じ繊毛細胞集団におけるEGFRとβ−チューブリン発現の共局在化を示す免疫組織化学データに基づき、EGFR遮断が、繊毛細胞過形成に影響する可能性があることは予想された。しかし、クララ細胞または杯細胞のいずれかにおいて活性化EGFR発現が相対的に欠如することからは、EGFRシグナル中断がこれらの細胞種のレベルに与える影響は予想できなかった。
【0077】
慢性上皮リモデリングにおけるEGFRの役割の根底にあるメカニズムをより理解するため、さらなる実験をデザインした。上皮過形成は、増殖が増加するか、または細胞死が減少した結果のどちらかでありえた。このため、上皮リモデリングが起こっているマウスにおける増殖の増加の証拠を探した。先に述べた通り、一過性の上皮増殖(BrdU標識によりマークされている)が感染後5〜12日の間に見られる(図5Aおよび6;(Lookら(2001年)Am.J.Pathol.159、2055〜2069頁))。Ki−67およびPCNA増殖マーカーにおいても同じパターンの免疫染色が見られた(データ示さず)。この増殖反応により、ウイルス複製を受けて、直接的な細胞変性作用および免疫媒介細胞死を被った宿主細胞の置換が可能になると考えられる(Tyner,J.W.ら(2006年)J.Clin.Invest.116:309〜321頁)。驚くことではないが、この修復段階には、上皮細胞(一般に基底細胞)および上皮下(恐らく免疫)細胞におけるEGFR活性化が伴う(図5B)。しかし、接種後21日目までには、細胞増殖は未接種対照マウスと変わりがなかったため、持続的増殖反応の証拠はもはや見られなかった(図3Aおよび3B)。さらに、この置換段階(基底細胞コンパートメントでのBrdU取り込みおよびEGFR活性化によりマークされる)は、長期上皮リモデリングを発生しないマウス(Balbc/J)株においても同じであった(図5A〜5C、6、および7)。故に、この一過性の増殖反応は、遺伝的感受性の強い(C57BL6J)マウスでのみ見られた、続く長期リモデリングを説明することができなかった。さらに、持続的な上皮増殖反応がないということは、繊毛細胞過形成が、上皮細胞のこのサブ集団における細胞死の抑制に基づく、EGFR依存性の細胞生存の選択的な増加を反映している可能性があることを示唆している。
【0078】
実施例3:培養下のEGFRシグナル伝達および繊毛細胞生存
EGFRが、必要な生存シグナルを繊毛上皮細胞に提供するのかどうかを判定するために、マクロファージクリアランス(macrophage clearance)がアポトーシス細胞の検出を不明瞭にせず、シグナル伝達事象がより明確になるような条件で、組織培養においてEGFR遮断を分析した。初期実験は、インビボで見られるのと同じように、培養下においてEGFRが繊毛上皮細胞に局在化するかどうかの判定を目的とした。マウス気管から回収した気道上皮細胞の気液界面培養物を用いて上皮系をインビトロで再構成した。この系では、繊毛(β−チューブリン陽性)細胞は、全細胞集団の45±1%に相当し、これは、正常なマウス気道と類似のレベル(上気道では36%)であり、また先に報告されているマウス気管標本値と類似のレベルであった(Packら(1980年)Cell Tissue Res.208、65〜84頁)。インビボでの場合と同様、培養下の繊毛上皮細胞は、頂端細胞膜に沿ってEGFRおよびホスホ−EGFRの構成的発現を示し、ホスホ−EGFRは、リガンドによる活性化後、この部位および核部位で見られた(図5、データ示さず)。他の研究者は、EGFRが培養気道上皮細胞の側底細胞膜にも局在化しうることを報告している(Vermeerら(2003年)Nature 422、322〜326頁)が、いずれの違いも、培養条件、異なる抗体による認識に影響する受容体不均一性、または頂端局在と側底局在の比率に関係する受容体の存在比に起因しうる(Kuwadaら(1998年)Am.J.Physiol.Cel Physiol.275、C1419〜C1428頁)。
【0079】
次に、選択的阻害剤による処理により、繊毛上皮細胞の成長および生存におけるEGFRシグナル伝達の役割を明確にした。阻害剤の特異性を検証する初期実験では、先ず完全培地から取り出し、次いでEGFR依存性シグナルを最大にするためEGFで刺激した培養物を使用した。これらの条件下、PD153035によるEGFRチロシンキナーゼ阻害は、全ての下流シグナルを遮断し、一方、LY294002によるPI3K阻害は、Aktのリン酸化を遮断し、PD98059によるMEK1/2阻害は、ERK1/2のリン酸化を遮断することが見出された(図5および6)。次いで、繊毛細胞生存に対するこれらのEGFRシグナルの効果を判定した。PD153035による処理により、繊毛細胞が用量依存的に消失することが確認され、この消失は結果的な全上皮細胞の減少とは不釣り合いであった(図6および7)。同様の結果が、別のEGFR特異的阻害剤AG1478で得られた(データ示さず)。次に、EGFR活性化が幾つかの下流シグナル伝達経路を誘発することを認識しつつ、マウス気管上皮細胞(mTEC)培養物をPI3K阻害剤およびMEK1/2阻害剤で処理したところ、LY294002による処理のみが、同様の繊毛上皮細胞の消失をもたらすことが見出された(図11)。この培養系は、高密度では有意な細胞増殖を示さないことから、繊毛上皮細胞の消失は、細胞生存の減少が原因であった可能性が高いようである。
【0080】
次に、EGFRシグナル伝達の遮断が、アポトーシスレベルに調和した変化をもたらすかどうかをテストした。繊毛上皮細胞の消失と並行して、カスパーゼ3およびTUNEL陽性細胞の急速な活性化(6時間以内)が、細胞消失と同じパターンで、すなわち、MEK1/2ではなくEGFRまたはPI3Kシグナル伝達が遮断された場合と同じパターンで観察された(図8)。この状況において、TUNEL陽性細胞は、アポトーシスが進行中であった。なぜなら、この過程は、カスパーゼ阻害剤z−VAD−fmkによる処理で遮断され(図9)、カスパーゼ3およびカスパーゼ9切断/活性化(図10)ならびにミトコンドリア膜電位の消失(図11)を伴っていたためである。したがって、これらの結果は、EGFRシグナル伝達経路が、ミトコンドリア機能不全およびその結果のプログラム細胞死を阻害する下流因子への選択的PI3Kシグナル伝達を介して繊毛細胞アポトーシスに対する防御を行うことを明確に表している。これらの所見は、EGFR、および他の環境下で細胞死を阻止するERK1/2への他の受容体シグナルに関する報告(Tynerら(2005年)Nat.Med.11:1180〜1187頁;Monickら(2005年)J.Biol.Chem.280:2147〜2158頁;Rouxら(2004年)Micobiol.Mol.Biol.Rev.68:320〜344頁)とは幾分対照をなしている。
【0081】
実施例4:インビトロおよびインビボでのEGFRシグナル伝達および杯細胞化生
上述の通り、繊毛細胞に対するEGFRシグナル伝達の作用は、インビボでの杯細胞化生に対するEGFR遮断の影響を容易に説明するものではなかった。繊毛細胞での選択的EGFR発現およびその結果の生存機能は、繊毛細胞過形成の阻害を説明するものの、杯細胞化生の遮断を直接説明するものではない。こうして、EGFRが、杯細胞生存に対する同様の機能効果を依然として有しうるかどうかが問題となった。この可能性をテストするため、ウイルス感染後の杯細胞化生のIL−13依存性を明確にした付随試験を利用した(未発表所見、EY KimおよびMJ Holtzman)。したがって、このエフェクター経路は、アレルゲン曝露後のムチン産生に関する試験で確立されたものと重複する(Grunigら(1998年)Science 282、2261〜2263頁;Wills−Karpら(1998年)Science 282、2258〜2261頁)。さらに、モルモットおよびヒト(Laoukiliら(2001年)J.Clin.Invest.108:1817〜1824頁;Kondoら(2002年)Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.27:536〜541頁;Athertonら(2003年)Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.285:L730〜L739頁)、ならびにマウス(未発表所見、JD MortonおよびMJ Holtzman)から培養した気道上皮細胞において、IL−13による処理により、杯細胞形成を刺激できることが認められた。培養マウス気管上皮細胞をIL−13にて処理し、これに続く杯細胞の発生を、MUC5AC発現によりマークした(Nakanishiら(2001年)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98、5175〜51809頁;Zhouら(2001年)Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.25、486〜491頁)。TUNEL反応の手続きは、ムチン含量を減少させるようなので、カスパーゼ3活性により細胞死を追跡した。繊毛細胞とは対照的に、杯細胞は、EGFR阻害に応じた細胞死亡率の増加を示さないことが分かった(図12)。MUC5AC陰性集団に対するMUC5AC陽性集団における活性カスパーゼ3細胞レベルの定量化において、杯細胞ではEGFR遮断の有無にかかわらずアポトーシスレベルが類似していたのに対し、非杯細胞(すなわち、繊毛上皮細胞)ではこれらの処理条件下で有意なカスパーゼ陽性染色を示すことが示された(図5C)。さらに、非杯細胞死のレベルは、IL−13処理の有無にかかわらず類似しており、これは、繊毛細胞における細胞死経路が、杯細胞形成に際しIL−13依存性の作用に影響されないことを示している。
【0082】
EGFR遮断が、インビトロでの杯細胞生存に影響しなかったことから、インビボでの杯細胞化生に対するEGFR遮断の強力な影響は、繊毛細胞過形成のEGFR遮断の下流でありうることが推論された。この可能性は、次に、IL−13処置が、繊毛細胞および杯細胞の特性を一時的に共有する細胞の発生をもたらすことが見出された際に、支持されるようになった。このように、mTEC培養物の電子顕微鏡観察により、IL−13影響下において繊毛が保存され、粘液顆粒が徐々に発生している繊毛−杯細胞のサブセットの証拠が得られた(図18)。これらの移行細胞は、IL−13処置開始後早期(1〜2日)に最も顕著であったのに対し、繊毛のない成熟杯細胞は、処置後後期(5日)に最も多かった。これらの条件下の繊毛−杯細胞の形態学的特徴は、アレルゲン曝露マウスの気道において電子顕微鏡により見出された粘液顆粒含有繊毛細胞と類似するようである(Hayashiら(2004年)Virchows Arch.444:66〜73頁)。
【0083】
気道上皮培養物は、本来であれば繊毛細胞を産生する環境においてIL−13処理を利用して杯細胞形成を促す条件下で確立されたため、これらの繊毛−杯細胞は、繊毛細胞から杯細胞表現型へ分化転換するようIL−13により再命令されているように見えた。同様の分化転換がインビボでも発生する可能性は、SeV接種後に杯細胞化生を示すマウスから採取した切片において確認された。共焦点顕微鏡法により、繊毛または杯細胞の大半が、それぞれβ−チューブリンまたはMUC5ACを発現したのに対し、β−チューブリンおよびMUC5ACの両方を発現する上皮細胞のサブ集団があることが示された(図19)。同様に、共焦点画像はまた、一般に、繊毛細胞はEGFRを発現するが杯細胞は発現しないこと、しかし、EGFRおよびMUC5ACの両方を発現する細胞のさらなるサブ集団があることを示した(図20)。いずれの場合にも、z軸に沿った複数の共焦点セクションおよび三次元再構成を用いて単一細胞内の共局在化を確認した。MUC5ACおよびβ−チューブリンおよび/またはMUC5ACおよびEGFRを発現するサブ集団は、移行中であるようであった。なぜなら、これらサブ集団は、成熟杯細胞に観察されたような、特徴的な形態および粘膜上皮層のルーメン表面の位置に到達しない場合が多かったためである。さらに、完全に分化した杯細胞では局在化がより頂端部位であったのに対し、これらの移行細胞では、粘液顆粒は、細胞のより基底のコンパートメントに局在化する場合が多かった。この形態学的挙動も、これらの繊毛−杯細胞が、杯細胞前駆体に相当することを示唆する。アレルゲン誘導杯細胞化生に関する先の報告通り、CCSPおよびMUC5ACの共発現を伴う上皮細胞のサブ集団も、繊毛−杯細胞の検出(図23)に匹敵するレベルで検出された(図21)。
【0084】
次の目的は、インビトロで観察されたように、IL−13が、繊毛細胞の杯細胞への形成をインビボでも促進するかどうかを確証することであった。これらの実験においては、マウスに輸送された場合にIL−13作用を特異的に遮断するデコイ受容体として作用する、組換え可溶性IL−13受容体α2 Fc融合タンパク質(sIL−13Rα2−Fcと命名)を利用した(Grunigら(1998年)Science 282、2261〜2263頁;Wills−Karpら(1998年)Science 282、2258〜2261頁)。治療条件は、EGFR遮断に使用したものに類似するように選択したため、処置は、ウイルス接種後12日から21日に延長した。このタイムフレームは、杯細胞化生の発生と呼応したIL−13、mCLCA3、およびMUC5AC遺伝子発現の誘導とも合致する(図22)。これらの条件下、本発明者は、sIL−13Rα2−Fc処置が、ウイルス誘導杯細胞化生の防止にきわめて有効であることを見出した(図23)。しかし、EGFR遮断とは幾分対照的に、sIL−13Rα2処置により、繊毛細胞過形成レベルのさらなる増加(杯細胞への進展の遮断と一致)およびクララ細胞レベルの無変化(杯細胞形成が、少なくとも一部は、クララ細胞集団ではなく繊毛細胞に由来する可能性と一致)も引き起こされた。他の細胞源(例えば、クララ細胞または基底細胞)も、この状況で杯細胞化生に寄与しうる可能性を完全に除外することはできないが、IL−13遮断後の繊毛細胞増加が杯細胞減少とほぼ一致することは、繊毛細胞集団の分化転換が、これらの条件下で杯細胞化生の重要な経路であることを示唆する。実際、ムチン遺伝子のクララ細胞発現に関する過去および現在の証拠と合わせると、本結果は、上皮細胞分化のさらなる可塑性の証拠を明瞭に提供する可能性がある。
【0085】
最後の2組の実験では、所見をマウスからヒト被験者試験へと再び拡大した。最初の組の実験では、気道において著しく増加した杯細胞レベルを示し、肺移植時に分析用に十分な肺組織が得られる、COPD患者由来の気道組織を分析した。マウスモデルに関する免疫蛍光法および共焦点顕微鏡法と同じ免疫染色プロトコルを適用すると、COPD患者由来の肺外植片切片も、気道上皮細胞サブセットにおいてβ−チューブリン−MUC5AC共発現の証拠を示すことが見出された(図25)。ヒト(またはマウス)気道におけるβ−チューブリンの管腔染色は、検出されなかった。これは、繊毛が、エンドソームの脱落(shedding)ではなく分解(degradation)により加工されうるという提案と一致する。先に報告されているように(Boersら(1999年)Am.J.Respir.Crit.Care Med.159)、上皮細胞サブセットにおいてCCSP−MUC5AC共発現も見出された。2組目の実験では、マウス試験に使用した戦略を再び適用し、ヒト気道上皮細胞の挙動を、IL−13を含むまたは含まない気液界面培養条件で分析した。この場合、COPD患者から培養した気道上皮細胞は、IL−13の影響下でβ−チューブリンおよびMUC5ACを共発現する細胞サブセットの発生をもたらした。先に報告されているように、β−チューブリンは、繊毛細胞の基底小体内に局在化するため(Youら(2004年)Am.J.Physiol.Lung Cell.Mol.Physiol.286:L650〜657頁)、粘液顆粒に見られるMUC5ACとのより緊密な共局在化が生じる。本来健康な肺移植ドナーから培養した気道上皮細胞において、IL−13処理の初日でさえIL−13に応答して、同じパターンの繊毛細胞および杯細胞マーカーのIL−13誘導性共発現が見られた(図27)。マウスおよびヒト組織試験とも同様に、複数の共焦点画像をz軸に沿って調べ、三次元再構成を行うと、単一細胞内での繊毛細胞および杯細胞マーカーの共局在化が証明された。このように、ヒト被験者で経験したEGFR活性化と同様に、マウスモデルで見られた杯細胞化生の下流メカニズム、すなわち、IL−13に誘導された繊毛細胞から杯細胞への分化転換に対応するものが分泌過多ヒト疾患に存するようであることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1A、1B、1C、1D、1E、および1Fは、SeVまたは当量のUV不活化SeV(SeV−UV)接種後21日目に採取し、次いでEGFRおよびホスホ−EGFR(p−EGFR)ならびに50倍の抗原過剰による競合について免疫染色した、C57BL/6Jマウス由来気道切片の代表的な顕微鏡写真である。バー=20μm。方法は、実施例1にさらに記載している。
【0087】
【図2】図2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G、2H、および2Iは、SeV接種後21日目にマウスから採取し、次いでEGFR、β−チューブリン、CCSP、およびMUC5AC単独および組み合わせについて免疫蛍光染色した、気道切片の代表的な顕微鏡写真である。一次抗EGFR Ab結合を抗CY3 Ab(赤色蛍光)により検出し、他は抗FITC Ab(緑色蛍光)により検出した。バー=20μm。方法は、実施例1にさらに記載している。
【0088】
【図3】図3A、3B、3C、および3Dは、SeVまたはSeV−UV接種後21日目に採取し、次いでβ−チューブリン−IV(緑色蛍光)およびCCSP(赤色蛍光)についてヘマトキシリン/エオシン染色、免疫蛍光染色し、ならびにMUC5ACについて免疫染色した、気道切片の代表的な顕微鏡写真である。非免疫IgGによる免疫染色では、バックグラウンドを超えるシグナルは得られなかった(データ示さず)。バー=20μm。方法は、実施例2にさらに記載している。
【0089】
【図4】図4A、および4Bは、図3の条件に加えて、Sev接種後未処理条件の12日目、およびSev接種後10〜21日目の間EKB−569により処理した条件の12日目についての、対応する定量データを示す棒グラフである。値は平均±SEMを表し、SeV−UV対照との有意差は()で示されている。方法は、実施例2にさらに記載している。
【0090】
【図5A】図5Aは、SeV接種後示した日にC57BL/6JおよびBalb/cJマウスから採取し、次いでBrdU(図5A)について免疫染色した、気道切片の代表的な顕微鏡写真である。バー=20μm。方法は、実施例2および3にさらに記載している。
【図5B】図5Bは、SeV接種後示した日にC57BL/6JおよびBalb/cJマウスから採取し、次いでホスホ−EGFR(図5B)について免疫染色した、気道切片の代表的な顕微鏡写真である。バー=20μm。方法は、実施例2および3にさらに記載している。
【図5C】図5Cは、SeV接種後示した日にC57BL/6JおよびBalb/cJマウスから採取し、次いでMUC5AC(図5C)について免疫染色した、気道切片の代表的な顕微鏡写真である。バー=20μm。方法は、実施例2および3にさらに記載している。
【0091】
【図6】図6は、図5Aの条件に対応する定量データを示す棒グラフである。値は平均±SEMを表し、0日目との有意差は()で示されている。方法は、実施例2および3にさらに記載している。
【0092】
【図7】図7は、SeVまたはSeV−UV接種後21日目にBalb/cJマウスから採取し、次いでβ−チューブリン、CCSP、およびMUC5ACについて免疫染色した、気道切片についての対応する定量的形態計測を示す棒グラフである。値は平均±SEMを表し、SeV−UV対照との有意差は()で示されている。バー=20μm。方法は、実施例2および3にさらに記載している。
【0093】
【図8】図8A、8B、および8Cは、気液界面条件下に10日間置いた後、EGFRについて免疫染色した(上)、または二重免疫蛍光した後β−チューブリンおよびEGFRまたはp−EGFRについて共焦点顕微鏡法を行った気道上皮細胞(mTEC)培養物の代表的な顕微鏡写真である。方法は、実施例2にさらに記載している。
【0094】
【図9】図9は、基礎培地に1日間置き、次いで阻害剤を併用してまたは併用せずにEGF(1または10ng/ml)により10分間処理したmTEC培養物のウェスタンブロット分析の画像である。各阻害剤は最大有効濃度にて下部チャンバーおよび上部チャンバーに添加してそれぞれ6時間および2.5時間おき、その後両チャンバーにEGFを添加した。各条件については、抗EGFR、p−EGFR、ホスホ−Akt(p−Akt)、またはホスホ−ERK1/2(p−ERK1/2)Abを含む細胞溶解物、および増強化学発光による検出とした。方法は、実施例2にさらに記載している。
【0095】
【図10】図10A、10B、10C、および10Dは、ビヒクルまたはPD153035(0.3μM)で7日間、37℃にて処理し、次いでβ−チューブリンおよびHoechst33432について免疫蛍光染色したmTEC培養物の代表的な顕微鏡写真である。バー=20μm。方法は、実施例2にさらに記載している。
【0096】
【図11】図11は、示した用量で7日間、PD153035、LY294002、およびPD98059による処理を行ったおよび行わなかった、β−チューブリン染色細胞の定量分析(全Hoechst染色細胞に対する割合(%)として表示)を示す一連の棒グラフである。有意差は()で示されている。方法は、実施例2にさらに記載している。
【0097】
【図12】図12A、12B、12C、12D、12E、12F、12G、および12Hは、ビヒクル、PD153035(0.3μM)、LY294002(50μM)、およびPD98059(50μM)で3日間、37℃にて処理し、次いで活性カスパーゼ3(Act−C−3)の切断断片またはTUNEL反応について免疫蛍光染色したmTEC培養物の代表的な顕微鏡写真である。バー=20μm。方法は、実施例3にさらに記載している。
【0098】
【図13】図13Aおよび13Bは、図12の処理条件に加え、PD15305プラスzVAD−fmk(100μM)を用いた、活性カスパーゼ3染色細胞についての図12の定量分析(全Hoechst染色細胞の割合(%)として表示)を示す棒グラフである。値は平均±SEMを表し、ビヒクル単独との有意差は()で示されている。方法は、実施例3にさらに記載している。
【0099】
【図14】図14は、図12の処理条件を用いた、mTEC培養物からの細胞溶解物における活性カスパーゼ3(Act−C−3)および活性カスパーゼ9(Act−C−9)の免疫ブロット分析の画像である。抗カスパーゼ9抗体は、活性カスパーゼ9(Act−C−9)の前駆細胞(C−9)および切断断片を認識する。方法は、実施例3にさらに記載している。
【0100】
【図15】図15は、図12の処理条件を用いた、mTEC培養物のJC−1染色のフローサイトメトリー分析を示す棒グラフである。値は、FL2からFL1へのシフトにより検出された、減少したミトコンドリア膜電位(ΔΨm)を有する細胞の割合(%)を表す。値は平均±SEMを表し、ビヒクル単独との有意差は()で示されている。方法は、実施例3にさらに記載している。
【0101】
【図16】図16は、IL−13(100ng/ml、5日間)により処理し、または処理せず、およびその後PD153035(0.3μM、3日間)により処理し、または処理せず、MUC5AC(赤)および活性カスパーゼ3(緑)について免疫蛍光染色し、ならびにHoechst色素(青)で対比染色した、mTEC培養物の代表的な顕微鏡写真である。方法は、実施例4にさらに記載している。
【0102】
【図17】図17Aおよび17Bは、図16に対応する定量データを示す棒グラフである。値は、活性カスパーゼ3陽性杯細胞(MUC5AC活性カスパーゼ3/MUC5AC細胞)および杯細胞以外の陽性細胞(全TUNEL染色細胞/全Hoechst染色細胞)の割合(%)についての平均±SEMを表す。ビヒクル対照との有意差は()で示されている。方法は、実施例4にさらに記載している。
【0103】
【図18A】図18Aは、未処理の(図18A)培養mTECの代表的な透過電子顕微鏡写真である。方法は、実施例4にさらに記載している。
【図18B】図18Bは、IL−13(100ng/ml、37℃で2日間)による処理後の(図18B〜18D)培養mTECの代表的な透過電子顕微鏡写真である。初期繊毛−杯細胞は、少量の粘液顆粒も含有する細胞表面に見られる繊毛により同定した(図18B)。方法は、実施例4にさらに記載している。
【図18C】図18Cは、IL−13(100ng/ml、37℃で2日間)による処理後の(図18B〜18D)培養mTECの代表的な透過電子顕微鏡写真である。後期繊毛−杯細胞は、細胞質中に多数の粘液顆粒を示す(図18C)。方法は、実施例4にさらに記載している。
【図18D】図18Dは、IL−13(100ng/ml、37℃で2日間)による処理後の(図18B〜18D)培養mTECの代表的な透過電子顕微鏡写真である。成熟杯細胞は、繊毛がなく特徴的な粘液顆粒を含有する(図18D)。方法は、実施例4にさらに記載している。
【0104】
【図19】図19A、19B、および19Cは、SeV接種後21日目にマウスから採取し、β−チューブリン(緑)およびMUC5AC(赤)について共焦点免疫顕微鏡法を行った、気道切片の代表的な顕微鏡写真である。矢印は、β−チューブリンが染色された繊毛細胞(c)、MUC5ACが染色された杯細胞(g)、ならびにβ−チューブリンおよびMUC5AC両方が染色された細胞(cg)を示す。方法は、実施例4にさらに記載している。
【0105】
【図20】図20A、20B、および20Cは、図19の通りに採取したが、p−EGFR(赤)およびMUC5AC(緑)について免疫染色した、気道切片の代表的な顕微鏡写真である。矢印は、p−EGFRが染色された繊毛細胞(c)、MUC5ACが染色された杯細胞(g)、ならびにp−EGFRおよびMUC5AC両方(cg)が染色された細胞を示す。方法は、実施例4にさらに記載している。
【0106】
【図21】図21A、21B、および21Cは、図19の通りに採取したが、CCSP(緑)およびMUC5AC(赤)について免疫染色した、気道切片の代表的な顕微鏡写真である。矢印は、CCSP(cc)またはCCSPおよびMUC5AC両方(ccg)が染色された細胞を示す。方法は、実施例4にさらに記載している。
【0107】
【図22】図22は、CCSPまたはβ−チューブリンについても免疫染色したMUC5AC発現細胞の定量分析を示す棒グラフである。値は平均±SEMを表し、対応するSeV−UV対照との有意差は()で示されている。方法は、実施例4にさらに記載している。
【0108】
【図23】図23A、23B、および23Cは、SeV接種後の示した期間における、GAPDH対照レベルに対して補正した、肺IL−13(図23A)、mCLCA3(図23B)、およびMUC5AC(図23C)mRNAレベルについてのリアルタイムPCR結果を示す棒グラフである。値は平均±SEMを表し、対応するSeV−UV対照との有意差は()で示されている。方法は、実施例4にさらに記載している。
【0109】
【図24】図24は、SeVに感染させ、接種後12、14、17、および20日目からsIL−13受容体アンタゴニスト(sIL−13Rα2−Fc)または対照IgGにより処置したマウスの気道における、β−チューブリン(繊毛細胞)、CCSP(クララ細胞)、およびMUC5AC(杯細胞)免疫染色の定量分析を示す棒グラフである。バー=20μm。対応するIgG処置との有意差は()で示されている。方法は、実施例4にさらに記載している。
【0110】
【図25】図25A、25B、および25Cは、COPD患者から採取し、β−チューブリン、MUC5AC、もしくはCCSPについて免疫染色して免疫蛍光顕微鏡で観察した(図25A)、またはβ−チューブリンおよびMUC5AC、もしくはCCSPおよびMUC5ACについて免疫染色してレーザー共焦点走査型顕微鏡で観察した(それぞれ、図25Bおよび25C)肺切片からの代表的な顕微鏡写真である。矢印および囲みは、MUC5ACを発現する杯細胞(g)、CCSPを発現するクララ細胞(cc)、β−チューブリンおよびMUC5ACを共発現する繊毛−杯細胞(cig)、またはCCSPを共発現する杯細胞(ccg)を示す。
【0111】
【図26】図26A、26B、および26Cは、COPD患者から培養し、IL−13(100ng/ml)で5日間インキュベートし、次いでγ−チューブリン(赤)(図26A)、MUC5AC(緑)(図26B)、ならびにγ−チューブリンおよびMUC5AC両方(図26C)について免疫染色した、ヒト上気道上皮細胞(hLAEC)の代表的な顕微鏡写真である。矢印は、γ−チューブリンおよびMUC5ACについて免疫染色された細胞を示す。
【0112】
【図27】図27A、27B、27C、および27Dは、対照(非COPD)被験者から培養し、IL−13で1日間インキュベートし、図26の通りに免疫染色し、次いでレーザー共焦点走査型顕微鏡でx−y軸(図27A)およびz軸(図27B〜27D)において観察した、hLAECの代表的な顕微鏡写真である。矢印は、γ−チューブリンおよびMUC5AC両方について免疫染色された細胞を示す。
【0113】
【図28】図28は、上皮宿主反応およびリモデリングを制御する、ウイルス誘導性EGFRおよびIL−13依存性経路の仕組みを示す概略図である。
【図29】図29A、29B、29C、および29Dは、健康な対照および喘息被験者から採取した気管支内生検切片からの代表的な顕微鏡写真である。切片は、図1および図2と同じ方法を用いて、EGFRおよびホスホ−EGFRについて免疫染色した。バー=20μm。方法は、実施例2にさらに記載している。
【図30】図30Aおよび30Bは、インビトロ(図30A)およびインビボ(図30B)でのEKB−569処置の効果を示すウェスタンブロット分析の画像である。図30Aは、気液界面条件下で培養し、EKB−569(1μM、37℃で10分間)の存在下または非存在下、EGF(100ng/ml)と共にもしくは無しで、またはIL−13(100ng/ml)と共にもしくは無しでインキュベートし、示した抗体でブロットしたヒト気管気管支上皮細胞(hTEC)の細胞溶解物のウェスタンブロット画像である。図30Bは、SeVまたはSeV−UVを接種し、接種後10〜21日目にEKB−569で処置したまたは処置しなかった、C57BL/6Jマウスからの肺溶解物のウェスタンブロット画像である。ブロッティングは示した抗体を用いて行った。方法は、実施例1および2にさらに記載している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGFRシグナル伝達経路阻害剤、IL−13シグナル伝達経路阻害剤、および製薬的に許容される担体を含む、気道分泌過多の治療のための組成物。
【請求項2】
EGFRシグナル伝達経路阻害剤が、免疫ペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
IL−13シグナル伝達経路阻害剤が、免疫ペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
免疫ペプチドが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または抗体断片である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
免疫ペプチドが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または抗体断片である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
抗EGFRシグナル伝達免疫ペプチドが、C225またはEMD55900である、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
抗IL−13シグナル伝達免疫ペプチドが、sIL−13Rα2−Fcである、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
EGFRシグナル伝達経路阻害剤が、EGFまたはEGFRの発現を減少させるアンチセンス核酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
IL−13シグナル伝達経路阻害剤が、IL−13、1L−13R、またはIL−4Rの発現を減少させるアンチセンス核酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
EGFRシグナル伝達経路阻害剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
チロシンキナーゼ阻害剤が、PD153035、EKB−569、4−(3−クロロアニリノ)−6;7−ジメトキシキナゾリン、RG−14620;チルホスチン23、チルホスチン25、チルホスチン46、チルホスチン47、またはチルホスチン51である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
EGFRシグナル伝達経路阻害剤またはIL−13シグナル伝達経路阻害剤が、PI3K特異的阻害剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
PI3K阻害剤が、LY294002である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
IL−13シグナル伝達経路阻害剤が、PD98059またはLY294002である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
個体における気道分泌過多の治療方法であって、EGFRシグナル伝達経路阻害剤およびIL−13シグナル伝達経路阻害剤の投与を含む方法。
【請求項16】
EGFRシグナル伝達経路阻害剤およびIL−13シグナル伝達経路阻害剤が同時に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
EGFRシグナル伝達経路阻害剤およびIL−13シグナル伝達経路阻害剤が、請求項1に記載の組成物として同時に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの阻害剤が、(i)約0.05mgから約2.5mg;(ii)約0.1mgから約1mg;または(iii)約0.3mgから約0.5mgの量にて投与される免疫ペプチドである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの阻害剤が、(i)約10μg/日から約3mg/日;(ii)約30μg/日から約300μg/日;または(iii)約100μg/日の量にて投与されるアンチセンス阻害剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの阻害剤が、1回の投与につき1kgあたり約0.1μgから約100mgの量にて投与されるチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
阻害剤が、注入、吸入、経口、リポソーム、またはレトロウイルスベクターにより投与される、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2009−511586(P2009−511586A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535614(P2008−535614)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/039476
【国際公開番号】WO2007/047235
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(597025806)ワシントン・ユニバーシティ (26)
【氏名又は名称原語表記】Washington University School of Medicine
【Fターム(参考)】