説明

水中で動作するタービン用の羽根

キャビティを画定する繊維強化プラスチックの外側シェルを備えた、水中で使用される羽根。キャビティの実質的部分は、樹脂が充填され、該樹脂が、該シェルの内壁に接着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で動作するタービン用の羽根、例えば、潮流又は川の流れによって駆動される装置に関する。該羽根は、水平軸を中心に回転するように配置されるタービン用に特別に設計されている。しかしながら、該羽根は、どの方向での使用にも適している。
【背景技術】
【0002】
水中で水平軸を中心に回転するように配置されるタービンでは、羽根は、通常は中空である。しかしながら、これは、該羽根が水平軸を中心に回転するときにその深さが変化するという点で問題である。羽根の先端部では、1回転で、該羽根の直径に等しい深さの変動が起こる。これにより、羽根が著しい静圧の変動を受け、この変動により、中空の羽根では、膨張力と圧縮力とが繰り返されるため、潜在的に重大な周期的な応力の問題が生じる。
【発明の概要】
【0003】
この問題を解決する1つの試みが、国際公開第2004/029448号に開示されている。
【0004】
これは、軽量材、例えば、発泡プラスチックを空洞部に充填する可能性について言及しているが、周期的な荷重により、充填材が外側シェルから分離して空隙が形成されることを認めている。国際公開第2004/029448号は、羽根に液体を充填することを優先して、このアプローチを否定している。このため、この液体の圧力を、液体の羽根の内外への移動を可能にすることによって、又は圧力補償装置、例えば、ダイヤフラム又はピストンを設けることによって変動できるようにして、内部の圧力と外部の圧力とを等しくする。
【0005】
液体が充填された装置では、使用中に生じる遠心力により、羽根の先端部の圧力が上昇する。これにベントが設けられている場合は、羽根の内部空間が、密封されず、汚損することがある。他方、内部空間が密封される場合は、先端部における応力が損傷を与え得る。また、遠心力によって生じる内部圧力の変動は、予測不可能であり、内部構造を損傷し得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従って、水中で使用される羽根であって、キャビティを画定する繊維強化プラスチックの外側シェルを備え、該キャビティの実質的部分が樹脂で充填され、該樹脂が該シェルの内壁に接着している、前記羽根を提供する。
【0007】
樹脂を使用すると、製造が簡単な羽根となり、周期的な圧力荷重に容易に耐えることができ、かつ該羽根の外側シェルとの良好な接着が得られる。該樹脂はまた、中立浮力を有し、重過ぎないように設計することができる。従って、装着及び保守が容易である。充填材が固体であるため、遠心力による内部圧力の変動が起きず、羽根を密封することができる。また、固体充填羽根は、より強固であるため、海洋生物が衝突したときの耐衝撃性がより高い。
【0008】
樹脂は、非充填樹脂でも良い。しかしながら、好ましくは、樹脂は充填樹脂である。充填材の使用には、2つの潜在的な利点がある。第1に、充填材は、樹脂の量を減少させるため、羽根のコストが低減される。第2に、充填材が、低密度又は中空である場合は、羽根の浮力を高めることができる。
【0009】
キャビティは、1つの区画の密度が隣接する区画の密度と異なるいくつかの区画に分割することができる。水の流れに対して開口した区画が存在しても良い。
【0010】
充填樹脂は、好ましくは500kg/m3〜2000kg/m3の密度を有し、より好ましくは600kg/m3〜1200kg/m3の範囲である。
【0011】
充填樹脂に使用される樹脂は、様々な樹脂、例えば、ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール、ポリウレタン、及びポリプロピレンから選択される。好ましい樹脂は、エポキシである。
【0012】
樹脂は、適切な硬化剤、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、無水物、ジシアンジアミド、イミダゾール、又は三フッ化ホウ素錯塩で硬化させることができる。好ましい硬化剤は、芳香族アミンである。芳香族アミンを調製して、好ましい反応速度を有する充填樹脂を得ることができる。この充填樹脂は、周囲温度で十分に硬化するが、硬化プロセス中に過剰な熱量を発生せず、従って、シェルを損傷させ得る制御不能の発熱として一般に知られている熱暴走の可能性のない充填樹脂である。
【0013】
充填材は、鉱物、例えば、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、シリカ、又は固体ガラス球とすることができる。充填材は、繊維充填材、例えば、チョップドガラス、ミルドガラス、チョップド熱可塑性繊維、又はチョップド炭素繊維とすることができる。充填材は、中空充填材、例えば、中空ガラス微小球、中空アルミノ-ケイ酸塩微小球、中空フェノール微小球、又はガラスエポキシ、炭素エポキシ、もしくは熱可塑性樹脂から形成さる微小球とすることができる。充填材は、上記充填材の任意の組合せとすることができる。
【0014】
充填材は、典型的には、充填樹脂の0〜60容量%の範囲で存在する。
【0015】
樹脂は、流動性を高め、かつ硬化前に充填材が沈降又は表面に浮上しないように、0〜10重量%(典型的には、1重量%)のチキソトロープを含み得る。好ましいチキソトロープは、コロイド状シリカ(Cabosil M5(商標))である。
【0016】
樹脂はまた、材料の湿潤性、流動性、又は脱泡性を高めるために添加剤も含み得る。
【0017】
シェルの繊維強化プラスチックは、好ましくは、ガラス繊維又は炭素繊維を含む。該プラスチックは、熱硬化性材料、例えば、エポキシ、ポリエステル、もしくはビニルエステルとしても良いし、又は熱硬化性プラスチック、例えば、ポリプロピレンとしても良い。現在の優先傾向は、シェルをエポキシにすることである。なぜなら、エポキシは、注型樹脂に使用されるエポキシに対して良好な親和性を有し、また、水中での長期の浸漬に対する優れた耐性も有するためである。
【0018】
回転羽根の中心領域は、該回転羽根にかかる様々な力を受ける。回転羽根は、水の流れの作用による荷重を受けると撓む。回転羽根の一方の面は、引張荷重を受け、他方の面は、圧縮荷重を受ける。シェルは、これらの大荷重に耐えるように設計されている。また、これらの大荷重に関連して、せん断荷重がかかる回転羽根の中心に対する比較的小さいが重要な荷重も存在する。回転羽根は、樹脂にこの荷重がかかるように設計することができ、該樹脂が良好な耐荷力を有するときに、このような羽根を設計することが可能である。逆に、せん断荷重が、注型樹脂の耐せん断力を超えていて、構造的せん断ウェブ部材を、注型樹脂内に配置できると判断することもできる。
【0019】
注型樹脂に対する他の荷重は、水圧による圧縮である。この荷重は、タービンの深さによって決まり、かつ羽根の回転半径及び長さによって異なる。該樹脂は、高い圧縮強さ及び圧縮率を有するため、この荷重に十分に適応し、回転によって生じる周期的な圧縮荷重下での撓みが非常に小さく、従って、大荷重がかかるシェルは、非常に小さい水圧荷重を受けるだけである。
【0020】
本発明はまた、水中で使用される羽根を形成する方法であって:
それぞれ半部分がキャビティを画定する、繊維強化プラスチックの2つのシェル半部分を形成する工程;
各キャビティの実質的部分に樹脂を充填し、該樹脂を、該シェル半部分の壁に接着させる工程;
該樹脂の露出表面に接着剤を塗布する工程;及び
該2つの半部分を互いに接着する工程、を含む、前記方法も包含する。
【0021】
好ましくは、該方法は、シェルの縁の下のレベルまでキャビティ内に樹脂を提供して、接着用の間隙を画定する工程をさらに含む。
【0022】
好ましくは、該方法は、シェルの2つの半部分の中に隔壁を挿入していくつかの別区画を形成して、該区画に異なる密度の樹脂を充填する工程をさらに含む。
【0023】
好ましくは、該方法は、樹脂が充填される前に1つのシェル半部分の長さに沿ってせん断ウェブを挿入する工程;剥離剤塗料が被覆されたダミーせん断ウェブを反対側のシェル半部分に挿入する工程;及び樹脂が硬化した後でダミーせん断ウェブを除去する工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】水中発電機用の羽根を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に従った羽根の例を、羽根の平面図である添付の図面を参照して以下に説明する。
【0026】
好ましい樹脂混合物は、低粘度の反応性希釈剤修飾エポキシ樹脂であり、低発熱性の室温硬化性芳香族アミン硬化剤で硬化される。この樹脂混合物は、添加されると混合物の密度を700kg/m3にする量のガラス微小球を有し得る。
【0027】
充填樹脂に使用できるガラス微小球は、通常は、直径が15〜20マイクロンであり、密度が0.125〜0.6g/ccである。これらのガラス微小球は、通常は、最終硬化樹脂混合物に必要な密度によって0〜60%の含有率で使用される。
【0028】
典型的には、このようなガラス微小球充填エポキシ樹脂は、充填材の種類及び含有率によって2MPa〜60MPaのせん断強さを有するが、密度が600kg/m3の典型的なガラス微小球含有充填樹脂は、3〜8MPaのせん断強さを有するであろう。
【0029】
このようなガラス微小球充填エポキシ樹脂の圧縮特性は、充填材の種類及び含有率によって12MPa〜120MPaであるが、密度が600kg/m3の典型的なガラス微小球含有充填樹脂は、20MPaの圧縮強さを有するであろう。
【0030】
このようなガラス微小球充填エポキシ樹脂の引張特性は、充填材の種類及び含有率によって13MPa〜70MPaであるが、密度が500kg/m3の典型的なガラス微小球含有充填樹脂は、28MPaの引張強さを有するであろう。
【0031】
図面に記載の羽根は、1、2、及び3で示されているいくつかの区画から構成されている。羽根の全長は、約8mである。注型樹脂を使用して羽根全体を充填することができるが、羽根の異なる領域に異なる材料を使用することが望ましい場合もある。例えば、周期的な圧力荷重が低い羽根の根元部(領域3)では、該根元部は、自由に水が出入りしても良い(すなわち、水が出入りするための開口を備えた中空)。羽根の中心区画となる領域2は、比較的高密度、例えば、600kg/m3の注型樹脂を充填することができる。周期荷重が最も大きい領域1は、密度が1000kg/m3の注型樹脂混合物を充填することができる。
【0032】
羽根を製造する方法をここで説明する。
【0033】
1つの可能な製造方法では、2つのシェル部品を互いに結合して、空洞部に充填樹脂を充填する。これは、小さめの羽根では適切であろうが、大きめの羽根ではより困難である。
【0034】
しかしながら、好ましくは、以下の技術を使用する。
【0035】
それぞれが羽根のシェルの2つの半部分の一方の構造を有する2つの型を用意する。次いで、これらの型のそれぞれの表面にゲルコートを塗布してから、構造繊維をツールのキャビティ内に配置する。次いで、真空バッグをかけて、型繊維材料に、2つのシェルを形成するために硬化される熱硬化性樹脂を注入する。羽根の長さに沿って延びるせん断ウェブ4が使用される場合は、該せん断ウェブ4を半部分の一方に合わせて接着し、ダミーせん断ウェブを、上側半部分に合わせる。ダミーせん断ウェブは、羽根の第2の部品に最終的に挿入される実際のせん断ウェブの部分と同じ形状及びサイズであるが、除去できるように剥離剤塗料が被覆されている。
【0036】
隔壁5が使用される場合は、これらの隔壁を2つの部品の中に取り付ける。次いで、適切な充填樹脂を、上記のように適切な分割区画に注入して、樹脂を硬化させる。樹脂は、硬化すると収縮する。しかしながら、キャビティは、幅の広い浅い空間であるため、シェルの壁から引き離されることはない。理想的には、樹脂が、シェル半部分の上縁のすぐ下の位置まで後退する。そうならない場合は、樹脂を、機械加工によって除去しても良い。
【0037】
次いで、ダミーせん断ウェブ(存在する場合)を、一方の型から除去する。接着剤をローターの両方の半部分にわたって塗布して、区画を合わせて閉じる。接着剤が、樹脂の全表面にわたって塗布されているため、接着面積が大きく、非常に強い結合となる。また、接着剤は、樹脂のレベルがシェル半部分の縁の僅かに下に位置することにより形成された間隙を容易に満たす。従って、このプロセスは、強い結合を実現することができ、接着剤が、間隙を満たすことにより、樹脂のあらゆる製造公差を補償することができる。次いで、該接着剤を硬化させ、完成した羽根を型から取り外す。必要に応じて、前縁板を羽根に取り付けても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で使用される羽根であって、キャビティを画定する繊維強化プラスチックの外側シェルを備え、該キャビティの実質的部分が樹脂で充填され、該樹脂が、該シェルの内壁に接着している、前記羽根。
【請求項2】
前記キャビティが、1つの区画の密度が隣接する区画の密度と異なるいくつかの区画に分割されている、請求項1記載の羽根。
【請求項3】
前記キャビティの少なくとも1つの区画が、水に対して開口している、請求項2記載の羽根。
【請求項4】
前記樹脂が、500kg/m3〜2000kg/m3の密度を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の羽根。
【請求項5】
前記樹脂が、600kg/m3〜1200kg/m3の密度を有する、請求項14記載の羽根。
【請求項6】
前記樹脂が、様々な熱硬化性樹脂、例えば、ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール、ポリウレタン、及びポリプロピレンから選択される、請求項1〜5のいずれか1項記載の羽根。
【請求項7】
前記樹脂が充填樹脂である、請求項1〜6のいずれか1項記載の羽根。
【請求項8】
充填材が、鉱物、例えば、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、シリカ、もしくは固体ガラス球;繊維充填材、例えば、チョップドガラス、もしくはミルドガラス、チョップド熱可塑性繊維、又はチョップド炭素繊維;或いは中空充填材、例えば、中空ガラス微小球、中空アルミノ-ケイ酸塩微小球、中空フェノール微小球、又はガラスエポキシ、炭素エポキシ、もしくは熱可塑性樹脂から形成される微小球から選択される、請求項7記載の羽根。
【請求項9】
前記充填材が、前記充填樹脂の0〜60容量%の範囲で存在する、請求項1〜8のいずれか1項記載の羽根。
【請求項10】
前記樹脂が、0〜10重量%のチキソトロープを含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の羽根。
【請求項11】
前記羽根の長さに沿って延びるせん断ウェブが、前記樹脂内に埋め込まれている、請求項1〜10のいずれか1項記載の羽根。
【請求項12】
水中で使用される羽根を形成する方法であって:
それぞれ半部分がキャビティを画定する、繊維強化プラスチックの2つのシェル半部分を形成する工程;
該各キャビティの実質的部分に樹脂を充填して、該樹脂を、該シェルの壁に接着させる工程;
該樹脂の露出表面に接着剤を塗布する工程;及び
該2つの部品を互いに接着する工程を含む、前記方法。
【請求項13】
前記樹脂を、前記シェルの縁の下のレベルまでキャビティ内に提供して、接着用の間隙を画定する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記シェルの2つの半部分の中に隔壁を挿入していくつかの別区画を形成して、該区画に異なる密度の樹脂を充填する、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
樹脂が充填される前に1つのシェル半部分の長さに沿ってせん断ウェブを挿入する工程;
剥離剤塗料が被覆されたダミーせん断ウェブを反対側のシェル半部分に挿入する工程;及び
該樹脂が硬化した後で該ダミーせん断ウェブを除去する工程をさらに含む、請求項12〜14のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−518213(P2013−518213A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550513(P2012−550513)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000112
【国際公開番号】WO2011/092474
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(511088438)ブレード ダイナミクス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】