説明

水中油型皮膚外用剤

【課題】曳糸性の経時安定性に優れ、肌へのなじみやのび広がり性がよく、乾き際のべたつきがない水中油型皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】(a)ポリアクリル酸またはその金属塩 0.01〜3.0質量%と、(b)アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.01〜1.0質量%と、(c)平均分子量1000以上50000以下のポリエチレングリコール 1.0〜10.0質量%を配合する。またさらに、サクシノグルカン、ポリアクリルアミド、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムのような水溶性高分子を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型皮膚外用剤に関し、更に詳しくは、曳糸性があり、べたつかない水中油型皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアクリル酸またはその金属塩は、少量の配合においても曳糸性を有し、みずみずしい使用感で肌にハリ感を与える皮膚外用剤が得られることは公知の技術である。また適度な曳糸性を有すると、肌上で伸ばす際に独特のコク感やリッチ感を得ることも可能である。しかしながら、この化合物は肌へのなじみが悪く、乾き際にべたつくために使用感が悪く、また曳糸性の経時安定性が悪いという欠点がある。
例えば、曳糸性のある外用剤としては特許文献1に記載された、ポリアクリル酸を配合し、曳糸性のある基剤を用いた整髪料がある。この整髪料はロウが必須成分であり界面活性剤で乳化しているため皮膚外用剤に応用しようとすると、べたつくものである。
更にポリアクリル酸ナトリウムを配合した皮膚外用剤としては、特許文献2に記載された水中油型エマルションがある。この水中油型エマルションは乳化剤として実質的に界面活性剤を含まず、べたつきがなく、伸びが軽い使用性が得られることを特徴としている。しかしながらポリアクリル酸ナトリウムと指定された乳化助剤による水中油型エマルションでは、十分な曳糸性やみずみずしさが得られにくく、また十分な曳糸性が得られた場合でもその安定性において問題が生じていた。
他にもその曳糸性や粘着性を利用して歯磨や貼付剤、義歯固定剤に配合されることも公知の技術である。
【0003】
またヒアルロン酸、サクシノグリカン、ポリアクリルアミド、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、高重合度ポリエチレングリコール(分子量数十万〜数百万)などの水溶性高分子の配合によっても曳糸性は得られるが、多量の配合が必要であり、なじみが悪く乾き際にべたつくという欠点があった。
【0004】
【特許文献1】特開平10−45546号公報
【特許文献2】特開平6−165932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、曳糸性のある皮膚外用剤を得ようとすると、従来はべたつきが生じて使用性が悪くなることは避けられず、曳糸性と、みずみずしさやべたつきのなさ等の使用性を共に満足できる皮膚外用剤は得られていなかった。
そこで本発明は、曳糸性の経時安定性に優れ、肌へのなじみがよく、みずみずしく、べたつかない水中油型皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の(a)〜(c)成分を含み、曳糸性を有することを特徴とする水中油型皮膚外用剤である。
(a)ポリアクリル酸またはその金属塩 0.01〜3.0質量%
(b)アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.01〜1.0質量%
(c)平均分子量1000以上50000以下のポリエチレングリコール 1.0〜10.0質量%
【0007】
本発明における水中油型皮膚外用剤は、30cm/min.の速度における曳糸長が20mm以上200mm以下であることが好ましい。
【0008】
本発明においては、アルキル変性カルボキシビニルポリマーと油分とを配合することにより、ポリアクリル酸類を配合した際にもなじみが良く、乾き際にべたつかない水中油型皮膚外用剤とすることができる。また、ポリエチレングリコールを適量配合することにより曳糸性の経時安定性を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水中油型皮膚外用剤は、曳糸性の経時安定性に優れ、肌へのなじみやのび広がり性がよく、肌にハリ感を与えると共に、乾き際のべたつきがないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の最良の実施の形態について説明する。
((a)ポリアクリル酸またはその金属塩)
本発明においては、ポリアクリル酸またはその金属塩を配合することで、手に取る際や皮膚に塗布した時に曳糸性が付与される。金属塩としては、ナトリウム塩が好ましい。
ポリアクリル酸またはその金属塩としては、例えば、アクアリックL−YS、アクアリックL−HL(日本触媒社製)、ジュリマーAC−10NP、ジュリマーAC−10P、アロンビスS、アロンビスSS(日本純薬社製)等が挙げられる。
【0011】
ポリアクリル酸またはその金属塩の配合量は、0.01〜3.0質量%であり、好ましくは0.03〜2.0質量%であり、より好ましくは0.03〜1.0質量%である。ポリアクリル酸またはその金属塩の配合量が少なすぎると曳糸性が不十分となり、配合量が多すぎると、塗布時のなじみが悪くなり、べたつきも生じる。
【0012】
((b)アルキル変性カルボキシビニルポリマー)
本発明で用いられるアルキル変性カルボキシビニルポリマーとしては、下記一般式(1)で表される分子量が50万〜300万のアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体がより好ましいが、特に限定されるものではない。
【0013】
【化1】

【0014】
(但し、一般式(1)中R1は水素原子または炭素数10〜30のアルキル基、n、n’、m及びm’はn+n’+m+m’=40〜100となるような任意の数を示し、lは分子量が所定範囲となるような任意の数を示す。)
【0015】
アルキル変性カルボキシビニルポリマーの具体例としては、例えば、ペミュレン(Pemulen)TR−1、ペミュレンTR−2及びカーボポール(Carbopol)1342(BF Goodrich社製)等が挙げられる。
【0016】
アルキル変性カルボキシビニルポリマーの配合量は、0.01〜1.0質量%であり、好ましくは0.03〜0.5質量%であり、より好ましく0.03〜0.3質量%である。アルキル変性カルボキシビニルポリマーの配合量が少なすぎると、乳化安定性に欠ける。配合量が多すぎると、肌へのなじみが悪くなり、べたつきを生じるようになる。本発明の水中油型皮膚外用剤は、実質的にこのアルキル変性カルボキシビニルポリマーで乳化することにより、べたつきのない皮膚外用剤とすることができるが、界面活性剤による乳化が併用されていても良い。
【0017】
((c)平均分子量1000以上50000以下のポリエチレングリコール)
本発明で用いられるポリエチレングリコールとしては、平均分子量1000以上50000以下のものであり、好ましくは、平均分子量1000以上20000以下のものである。ポリエチレングリコールの平均分子量が小さすぎると、曳糸性の経時安定性を向上させることができず、平均分子量が大きすぎると、肌へのなじみが悪くなり、べたつきを生じるようになる。
【0018】
平均分子量1000以上50000以下のポリエチレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール11000、ポリエチレングリコール20000(東邦化学社製、日本油脂社製)等が挙げられる。
【0019】
平均分子量1000以上50000以下のポリエチレングリコールの配合量は、1.0〜10.0質量%であり、好ましくは1.0〜5.0質量%である。平均分子量1000以上50000以下のポリエチレングリコールの配合量が少なすぎると、曳糸性の経時安定性を向上させることができず、配合量が多すぎると、肌へのなじみが悪くなり、べたつきを生じるようになる。
【0020】
(その他)
本発明においては、上記必須成分以外に、(d)成分として、上記(a)成分および(b)成分以外の増粘性の水溶性高分子を含ませることにより、曳糸性の経時安定性が更に良くなる。
水溶性高分子としては、例えば、アラビアゴム、トラガカント、ガラクタン、キャロブガム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、寒天、クインスシード(マルメロ)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物系高分子、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子等がある。
【0021】
また、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子等、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子等もある。
【0022】
更に、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系水溶性高分子、PEG−240/デシルテトラデセス−20/ヘキサメチレンジイソシアネート共重合体、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー等がある。
【0023】
(d)成分としての水溶性高分子としては、このうち特に、サクシノグルカン、ポリアクリルアミド、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムから選ばれる一種または二種以上が好ましい。
【0024】
(d)成分の配合量は、0.01〜3.0質量%であり、好ましくは0.03〜2.0質量%であり、より好ましく0.03〜1.0質量%である。
【0025】
本発明においては、(e)成分として、親水性非イオン性界面活性剤または親水性アニオン性界面活性剤を含んでも良い。親水性非イオン性界面活性剤または親水性アニオン性界面活性剤を配合することで、乳化安定性はより高められる。
かかる親水性非イオン性界面活性剤または親水性アニオン性界面活性剤としては、次のようなものがある。
【0026】
本発明で用いられる親水性非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等がある。
【0027】
本発明で用いられる親水性アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルグルタミン酸塩、アシルタウリン塩、アシルアルキルタウリン塩、高級アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルサルコシン酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、リン酸エステル塩、スルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等がある。
【0028】
本発明で用いられる油相成分としては、通常の化粧料用乳化組成物に用いられる油剤を配合することができる。かかる油剤としては、天然動・植物油、合成油のいずれも使用でき、具体的には、流動パラフィン、スクワラン等の液状、ペースト状もしくは固形状の炭化水素、ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、グリセライド、又はシリコーン系油剤等がある。
【0029】
液体油脂としては、例えば、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボガド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、卵黄油、牛脚油、肝油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、トリイソパルミチン酸グリセリン等がある。
【0030】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、牛脂、羊脂、豚脂、馬脂、硬化油、硬化ヒマシ油、モクロウ、シアバター等がある。ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌケロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、カポックロウ、サトウキビロウ、ホホバロウ、セラックロウ等がある。
【0031】
エステル油としては、例えば、オクタン酸セチル等のオクタン酸エステル、ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル、パルミチン酸オクチル等のパルミチン酸エステル、ステアリン酸イソセチル等のステアリン酸エステル、イソステアリン酸イソプロピル等のイソステアリン酸エステル、イソパルミチン酸オクチル等のイソパルミチン酸エステル、オレイン酸イソデシル等のオレイン酸エステル、アジピン酸ジイソプロピル等のアジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエチル等のセバシン酸ジエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等のリンゴ酸ジエステル等がある。
【0032】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、プリスタン、パラフィン、イソパラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等がある。シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン等がある。
【0033】
これらの油分の配合量は、乳化組成物中、0.5〜20.0重量%がよく、好ましくは使用性の面から1.0〜10.0重量%がよい。油分量が多すぎると、安定性の面で問題や油っぽさを生じてくる。油分量がゼロか、あるいは少なすぎると、みずみずしさやべたつきのなさが損なわれる。
【0034】
本発明で用いられる水相成分としては、本発明の効果を損なわない量的及び質的範囲内で、化粧料用乳化組成物に通常用いる各種水溶性成分を目的に応じて配合することができる。低級アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等がある。
【0035】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、トレハロース、へキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、D−マンニット、ソルビトール、ポリオキシエチレンメチルグルセース、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンメチルグルセース、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体ジメチルエーテル、水アメ、ブドウ糖、果糖、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アデノシンリン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、ピロリドンカルボン酸塩、グルコサミン、シクロデキストリン、水溶性コラーゲン等がある。
【0036】
本発明の水中油型皮膚外用剤においては、上記成分のほか、粉末、油溶性紫外線吸収剤、水溶性紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、中和剤、pH調整剤、酸化防止剤、抗菌剤、各種薬剤、各種抽出液等を配合することができる。
【0037】
油溶性紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、[4−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−3−メチルブチル]−3,4,5−トリメトキシケイ皮酸エステル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤等がある。
【0038】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジパラメトキシケイ皮酸グリセリルオクチル、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタン等がある。
【0039】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム塩、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等がある。
【0040】
中和剤としては、例えば、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、アミノ酸類等がある。
【0041】
pH調整剤としては、例えば、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、dl−リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸等がある。酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩等がある。抗菌剤としては、安息香酸、サリチル酸、イオウ、石炭酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、フェノキシエタノール、パラベン類、エチルヘキサンジオール等がある。
【0042】
各種薬剤としては、例えば、ビタミンA油、レチノール、パルミチン酸レチノール、イノシット、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸dl−α−トコフェロール、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸リン酸ナトリウム、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類、アルギニン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、メチオニン、セリン、ロイシン、トリプトファン、アラニン、グリシン、トリメチルグリシン等のアミノ酸類、アラントイン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、アズレン等の抗炎症剤、アルコキシサリチル酸、トラネキサム酸、リノール酸、アスコルビン酸グルコシド、エチルビタミンC、アルブチン等の美白剤、酸化亜鉛、タンニン酸等の収斂剤、L−メントール、カンフル等の清涼剤やイオウ、塩化リゾチーム、γ−オリザノール等がある。
【0043】
各種の抽出液としては、例えば、ドクダミエキス、オウバクエキス、オウゴンエキス、オウレンエキス、メリロートエキス、オドリコソウエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、ユキノシタエキス、クララエキス、ウイキョウエキス、バラエキス、ジオウエキス、レモンエキス、ウコンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、スギナエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、キイチゴエキス、メリッサエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、モモエキス、桃葉エキス、クワエキス、ヤグルマギクエキス、ショウキョウエキス、ユズエキス、ユズ種子エキス、ハマメリス抽出液、シルク抽出液等がある。
【0044】
また、上記中の水溶性薬剤は遊離の状態で使用されるほか、造塩可能なものは酸または塩基の型で、またカルボン酸基を有するものはそのエステルの形で使用することもできる。さらに、本発明の水中油型皮膚外用剤には、必要に応じて適当な香料、色素、顔料等を乳化安定性を損なわない範囲で添加できる。
【0045】
本発明の水中油型皮膚外用剤の好ましい粘度は、調製直後の粘度として3000〜50000mPa・sであり、より好ましくは、5000〜30000mPa・sである。また本発明の水中油型皮膚外用剤は、30cm/min.の速度における曳糸長が20mm以上200mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、20mm以上100mm以下である。ここで、30cm/min.の速度における曳糸長とは、30℃に調整し平坦に整えた試料の表面に、直径約1cmの丸型円盤を均一に軽く接触させ、30cm/min.の速度で試料を垂直に降下させた時に糸を曳く様子を観察し、接触時から糸が切れるまでの長さを測定したものである。
【0046】
本発明の水中油型皮膚外用剤の形態、すなわち剤形としては、各種のものが特段の制限なく採用でき、具体的には、美容液、乳液、クリーム、日中用乳液、化粧下地、リキッドファンデーション、アイライナー、マスカラ、ヘアジェル等の液状、乳液状ないしクリーム状の製品が挙げられ、特に美容液が好ましい。
【実施例】
【0047】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法について説明する。
【0048】
(1)効果の評価試験
20名の専門パネルによる実使用性試験を行った。試験項目は、みずみずしさ、肌へのなじみ、べたつきのなさ、曳糸性の経時安定性である。
このうち、使用性項目であるみずみずしさ、肌へのなじみ、べたつきのなさについてはそれぞれの評価項目について、下記の評価点基準に基づいて評価した。次いで、各人がつけた評価点を合計し、下記評価基準に基づいて評価した。
【0049】
(評価点基準)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
【0050】
(評価基準)
◎:合計点が80点以上である。
○:合計点が60点以上80点未満である。
△:合計点が40点以上60点未満である。
×:合計点が40点未満である。
【0051】
また、曳糸性の経時安定性については、調整直後の試料の曳糸長(A)と50℃恒温槽に1ヶ月間保管した試料の曳糸長(B)を測定し、下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:(B)/(A)=0.8以上
○:(B)/(A)=0.6以上0.8未満
△:(B)/(A)=0.4以上0.6未満
×:(B)/(A)=0.4未満
なお調整直後から曳糸長が20mm未満の場合も×と評価した。
【0052】
粘度および曳糸長については、次の方法で測定した。
(粘度測定方法)
VDA型粘度計(芝浦システム株式会社 DIGITAL VISMETRON VDA)を用いて、ローターNo.3またはNo.4を使用し、回転数12rpm、1分間の条件で測定した。
(曳糸長測定方法)
30℃に調整し平坦に整えた試料の表面に、直径約1cmの丸型円盤を均一に軽く接触させ、30cm/min.の速度で試料を垂直に降下させた時に糸を曳く様子を観察し、糸が切れたときの長さを測定した。
【0053】
実施例1〜9、比較例1〜7
下記表1、表2に示す組成の美容液を常法により調製した。ただしポリアクリル酸またはその金属塩によって得られる曳糸長は、ホモジナイザーなどの物理的シェアにより容易に短くなる。そのため他成分の溶解や乳化終了後に添加並びに溶解し、更にホモジナイザーにより攪拌することで好ましい曳糸長に調整した。また、みずみずしさ、肌へのなじみ、べたつきのなさ、曳糸性の経時安定性を上記の方法で評価し、pH、粘度、曳糸長を測定した。その結果を表1、表2に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
※1:アロンビスS(日本純薬社製)
※2:ペミュレンTR−2(Goodrich社製)
【0057】
以下に、本発明の水中油型皮膚外用剤の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0058】
処方例1 美容液
ポリアクリル酸ナトリウム 0.3 質量%
(C10−C30)アクリル酸・メタクリル酸コポリマー 0.1
ポリエチレングリコール1500 3.0
オクタン酸セチル 1.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 2.0
スクワラン 2.0
テトラオクタン酸ペンタエリスリット 1.0
ポリアクリルアミド 0.1
(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー 0.1
ステアロイルメチルタウリンナトリウム 0.1
エタノール 5.0
グリセリン 6.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
PEG/PPG−17/4ジメチルエーテル 5.0
トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 2.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
酢酸トコフェロール 0.2
キサンタンガム 0.1
シリカ 2.0
ポリエチレン末 1.0
メタリン酸ナトリウム 適量
水酸化カリウム 適量
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
黄酸化鉄 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残余
【0059】
(製造方法)
水相を調製後、油相を水相に徐々に添加し、ホモジナイザーによる乳化後にポリアクリル酸ナトリウムの溶解を行った。
【0060】
処方例2 美容液
ポリアクリル酸ナトリウム 0.1 質量%
(C10−C30)アクリル酸・メタクリル酸コポリマー 0.1
ポリエチレングリコール1000 2.0
ポリエチレングリコール20000 1.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 2.0
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 0.5
エタノール 5.0
グリセリン 2.0
PEG/PPG−14/7ジメチルエーテル 10.0
ヒアルロン酸ナトリウム 0.3
エチルビタミンC 2.0
サリチル酸 0.5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.01
ニコチン酸アミド 3.0
メタリン酸ナトリウム 適量
水酸化カリウム 適量
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残余
【0061】
(製造方法)
水相を調製後、油相を水相に徐々に添加し、ホモジナイザーによる乳化後にポリアクリル酸ナトリウムの溶解を行った。
【0062】
処方例3 乳液
ポリアクリル酸ナトリウム 0.8 質量%
(C10−C30)アクリル酸・メタクリル酸コポリマー 0.3
ポリエチレングリコール11000 4.0
トリエチルヘキサン酸グリセリル 5.0
キサンタンガム 0.3
(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー 0.8
ポリオキシエチレン硬化ひまし油 1.0
ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル 0.3
ジプロピレングリコール 10.0
マルチトール 2.0
ソルビトール 4.0
キシリトール 0.5
メタリン酸ナトリウム 適量
水酸化カリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
精製水 残余
【0063】
(製造方法)
水相を調製後、油相を水相に徐々に添加し、ホモジナイザーによる乳化後にポリアクリル酸ナトリウムの溶解を行った。
【0064】
処方例4 クリーム
ポリアクリル酸ナトリウム 0.1 質量%
(C10−C30)アクリル酸・メタクリル酸コポリマー 0.1
ポリエチレングリコール6000 2.0
寒天 1.0
水添ポリイソブテン 2.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 5.0
イソノナン酸トリデシル 1.0
バチルアルコール 2.0
ワセリン 1.0
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー 1.5
POE(30)ベヘニルエーテル 3.0
モノオレイン酸ソルビタン 0.5
ミリスチン酸ミリスチル 1.5
1,3−ブチレングリコール 3.0
グリセリン 2.0
エチルビタミンC 0.5
アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム 0.5
水酸化カリウム 適量
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
メチルパラベン 適量
香料 適量
精製水 残余
【0065】
(製造方法)
水相を調製後加熱し、加熱した油相を水相に徐々に添加し、ホモジナイザーによる乳化後にポリアクリル酸ナトリウムの溶解を行った。
【0066】
処方例5 日中用乳液
ポリアクリル酸ナトリウム 0.05 質量%
(C10−C30)アクリル酸・メタクリル酸コポリマー 0.4
ポリエチレングリコール1000 5.0
ミリスチン酸ミリスチル 3.0
2−エチルヘキサン酸−2−エチルヘキシル 2.0
ジメチコン 2.0
ワセリン 0.5
ベヘニルアルコール 2.0
カルボキシビニルポリマー 0.5
イソステアリン酸PEG(40)グリセリル 1.2
ステアリン酸ソルビタン 0.3
ステアリン酸 0.5
ジグリセリン 10.0
1,3−ブチレングリコール 1.0
エリスリトール 2.0
パラメトキシケイ皮酸オクチル 6.0
ジパラメトキシケイ皮酸グリセリルオクチル 2.0
4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン 1.0
4−メトキシサリチル酸カリウム塩 2.0
水酸化ナトリウム 適量
メチパラベン 適量
香料 適量
精製水 残余
【0067】
(製造方法)
水相を調製後、油相を水相に徐々に添加し、ホモジナイザーによる乳化後にポリアクリル酸ナトリウムの溶解を行った。
【0068】
処方例6 化粧下地
ポリアクリル酸ナトリウム 0.2 質量%
(C10−C30)アクリル酸・メタクリル酸コポリマー 0.3
ポリエチレングリコール1500 4.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 5.0
ベヘニルアルコール 0.5
バチルアルコール 0.3
イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 0.3
ジプロピレングリコール 5.0
1,3−ブチレングリコール 3.0
酢酸トコフェロール 0.1
酸化チタン・ベンガラ被覆雲母 0.3
雲母チタン 0.3
多孔性球状セルロース末 0.5
メタリン酸ナトリウム 適量
水酸化カリウム 適量
メチパラベン 適量
香料 適量
精製水 残余
【0069】
(製造方法)
水相を調製後、油相を水相に徐々に添加し、ホモジナイザーを用いて撹拌した。
【0070】
処方例7 リキッドファンデーション
ポリアクリル酸ナトリウム 0.3 質量%
(C10−C30)アクリル酸・メタクリル酸コポリマー 0.3
ポリエチレングリコール20000 3.0
ジメチルポリシロキサン 6.0
ベヘニルアルコール 0.3
バチルアルコール 0.7
1,3−ブチレングリコール 3.0
イソステアリン酸 1.4
ステアリン酸 1.0
ベヘニン酸 0.7
エチルヘキサン酸セチル 2.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 2.0
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 0.5
黄酸化鉄被覆雲母チタン 2.0
酸化チタン 4.0
タルク 0.5
カオリン 3.0
合成金雲母 0.1
架橋型シリコーン末 0.3
無水ケイ酸 5.0
酢酸トコフェロール 0.1
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適量
パラメトキシ桂皮酸2―エチルへキシル 1.0
ベンガラ 適量
黄酸化鉄 適量
黒酸化鉄 適量
トリエタノールアミン 適量
メチパラベン 適量
香料 適量
精製水 残余
【0071】
(製造方法)
水相を調製後、油相を水相に徐々に添加し、ホモジナイザーによる乳化後にポリアクリル酸ナトリウムの溶解を行った。
【0072】
処方例8 マスカラ
ポリアクリル酸ナトリウム 1.0 質量%
(C10−C30)アクリル酸・メタクリル酸コポリマー 0.2
ポリエチレングリコール11000 1.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 2.0
キサンタンガム 1.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
ポリオキシエチレン硬化ひまし油 0.2
エタノール 10.0
グリセリン 1.0
無水ケイ酸 1.0
ベンガラ被覆雲母チタン(パール剤) 8.0
黒酸化鉄 1.0
メタリン酸ナトリウム 適量
水酸化ナトリウム 適量
パラオキシ安息香酸エステル 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残量
【0073】
(製造方法)
水相を調製後、油相を水相に徐々に添加し、ホモジナイザーによる乳化後にポリアクリル酸ナトリウムの溶解を行った。
【0074】
処方例9 ヘアジェル
ポリアクリル酸ナトリウム 0.5 質量%
(C10−C30)アクリル酸・メタクリル酸コポリマー 0.5
ポリエチレングリコール1500 5.0
流動パラフィン 1.0
ジメチルポリシロキサン 1.0
高重合メチルポリシロキサン 4.0
ヒドロキシプロピルセルロース 0.4
エチルセルロース 0.3
ポリビニルピロリドン 0.5
脂肪酸ポリオキシエチレングリセリル 0.2
1,3−ブチレングリコール 5.0
エタノール 20.0
エデト酸ナトリウム 適量
2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール 適量
メチルパラベン 適量
香料 適量
精製水 残量
【0075】
(製造方法)
水相を調製後、油相を水相に徐々に添加し、ホモジナイザーによる乳化後にポリアクリル酸ナトリウムの溶解を行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)〜(c)成分を含み、曳糸性を有することを特徴とする水中油型皮膚外用剤。
(a)ポリアクリル酸またはその金属塩 0.01〜3.0質量%
(b)アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.01〜1.0質量%
(c)平均分子量1000以上50000以下のポリエチレングリコール 1.0〜10.0質量%
【請求項2】
更に、(d)成分として、上記(a)成分および(b)成分以外の水溶性高分子を含むことを特徴とする請求項1に記載の水中油型皮膚外用剤。
【請求項3】
30cm/min.の速度における曳糸長が20mm以上200mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水中油型皮膚外用剤。
【請求項4】
前記(d)成分が、サクシノグルカン、ポリアクリルアミド、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムから選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の水中油型皮膚外用剤。
【請求項5】
更に、(e)成分として、親水性非イオン性界面活性剤または親水性アニオン性界面活性剤の一種または二種以上を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の水中油型皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−286757(P2009−286757A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143428(P2008−143428)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】