説明

水切り構造及び入隅用水切り構造。

【課題】 軸柱が無い部分においても縦目地4を防水することができるとともに、目地仕上材の下地とすることもできる水切り構造1及び入隅用水切り構造2を提供することを目的とする。
【解決手段】 水切り構造1は、矩形板状のサイディング材31の裏面に枠材32が固定されてなる外壁パネル3間の縦目地4から建物内部に水が侵入することを防ぐ水切り構造1において、一方の側端側に波打状の湾曲部11が設けられた矩形平板状の板部材10と、一端が板部材10の屋内側面に固定されるとともに、他端が湾曲部11から板部材10の側端方向に突出する突出片12と、を備え、相互に隣接する2枚の外壁パネル3のうち、一方の外壁パネル3の枠部材32を湾曲部11と突出片12とで挟み込むことにより、板部材10を縦目地4の屋内側に建物の梁5の屋外側を覆うように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物外壁の縦目地に設置される水切り構造及び入隅用水切り構造に関し、特に、建物の胴差部などの梁が配置される部分の縦目地から風雨が侵入することを防止する水切り構造、及び入隅用水切り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の外壁パネル間の水平目地や縦目地から風雨等が建物内部に侵入することを防ぐために、これらの目地には乾式または湿式の様々な防水構造が用いられている。このうち乾式の縦目地の防水構造としては、例えば図10に示すように、外壁パネル100間の縦目地101の背後に、樹脂又は金属からなる防水材103を備えたものが提案されている。この防水材103は、軸柱104に固定される硬質のベース部105と、このベース部105から外壁パネル100方向に突出する軟質のシール片106と、を備えており、シール片106が外壁パネル100の裏面部107に押圧され、潰れ状に変形して、同裏面部107に水密的に当接することにより、風雨等が縦目地101を通って建物内部に侵入することを防いでいる(例えば特許文献1)。そして、このような防水材103を設置した後の縦目地101にシーリング材やシールジョイント等の目地仕上材を嵌め込んで、外壁パネル100間の縦目地101を仕上げている。
【特許文献1】特開2000−1968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述のような防水材103は、建物の軸柱104に固定されるものであり、建物の階間の胴差部などの軸柱104が無い箇所には適用することができない。また、建物の胴差部には、シーリング材などの目地仕上材の下地がなく、目地仕上材を縦目地101に嵌め込んだ場合にも、十分な防水性を確保することが困難であった。特に建物の胴差部に配置される梁は、主にH形鋼で形成されており、H形鋼を構成する上下のフランジの間に空間を有するので、この空間に風雨が侵入する虞があった。
【0004】
そこで、本発明は、軸柱が無い部分においても縦目地を防水することができるとともに、目地仕上材の下地とすることもできる水切り構造及び入隅用水切り構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の水切り構造は、矩形板状のサイディング材の裏面の周縁に枠材が固定されてなる外壁パネルが建物の梁の屋外側に並べて設置されることによって形成される縦目地から建物内部に水が侵入することを防ぐ水切り構造において、一方の側端に屋外方向に湾曲する波打状の湾曲部が設けられた矩形平板状の板部材と、一端側が該板部材の屋内側面に固定されるとともに、他端側が前記湾曲部から突出して当該他端側と前記湾曲部との間に間隙を形成する突出片と、を備え、相互に隣接する2枚の外壁パネルのうち、一方の外壁パネルの枠材のうち前記サイディング材の側縁に設けられた縦枠材を前記湾曲部と前記突出片とで挟み込むことにより、前記板部材を前記縦目地の屋内側に前記建物の梁の屋外側を覆うように配置することを特徴としている。
【0006】
請求項2に記載の入隅用水切り構造は、矩形板状のサイディング材の裏面側の周縁に枠材が固定されてなる外壁パネルを直角に配置された梁の屋外側に直角に並べて配置した入隅部の縦目地から建物内部に水が侵入することを防ぐ入隅用水切り構造において、一方の側端に屋外方向に湾曲する波打状の湾曲部が設けられると共に、中間部で直角に折曲された矩形の折曲板部材と、一端側が該折曲板部材の屋内側面に固定されるとともに、他端側が前記湾曲部から突出して当該側と前記湾曲部との間に間隙を形成する突出片と、を備え、前記入隅部の両側に配置された2枚の外壁パネルのうち、一方の外壁パネルの枠材のうち前記サイディング材の側縁に設けられた縦枠材を前記湾曲部と前記突出片とで挟み込むことにより、前記折曲板部材を前記入隅部に沿って前記入隅部の縦目地の屋内側に前記建物の梁の屋外側を覆うように配置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の水切り構造によると、相互に隣接する2枚の外壁パネルのうち、一方の外壁パネルの枠部材の縦枠材を湾曲部と突出片とで挟み込むことにより、板部材を縦目地の屋内側に前記建物の梁の屋外側を覆うように配置するので、縦目地の屋内側に軸柱が無い部分においても極めて簡単に施工することができる。また、梁の屋外側を板部材で覆うことにより、縦目地から侵入した風雨が梁を構成するフランジ間の空間に入り込むことを防ぐことができる。
【0008】
特に、板部材の側端に設けられる湾曲部と、板部材の側端方向に突出する突出片とにより縦枠材を挟み込む構成であるので、外壁パネルの側方から施工することができ、外壁パネルの上下方向の中間に梁が設けられている場合や既に上部の外壁が設置されている場合のように、外壁パネルの上方から施工することができないような場合にもこの水切り構造を適用することができる。
【0009】
また、このように軸柱が無い部分においても縦目地の屋内側に板部材が設置されるので、例えば縦目地にシーリング剤を注入するような場合にもその下地材として用いることができ、簡単にシーリング剤を施工することができる。
【0010】
請求項2に記載の入隅用水切り構造によると、中間部で直角に折曲された折曲板部材を入隅部に沿って、この入隅部の縦目地の屋内側に建物の梁の屋外側に配置するので、入隅部の縦目地において前述の請求項1と同様に、軸柱が無い部分においても極めて簡単に施工することができ、また、入隅部の縦目地から侵入した風雨が梁を構成するフランジ間の空間に入り込むことを防ぐことができる。さらに、外壁パネルの上方から施工することができないような場合にもこの入隅用水切り構造を用いることができる。さらにまた、縦目地にシーリング剤を注入するような場合にもその下地材として用いることができ、簡単に施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、この発明における水切り構造1、入隅用水切り構造2の最良の実施形態について説明する。これら水切り構造1及び入隅用水切り構造2は、住宅等の建物の外壁パネル3間の縦目地4から建物内部に風雨が侵入することを防ぐものであって、図1及び図2に示すように、建物の階間に設けられる胴差部aや、建物の屋根と外壁の間に設けられる切軒下部b、切妻部c、破風部d等のように外壁パネル3の屋内側に水平な梁5が外壁パネル3に沿って配置されている箇所の外壁パネル3と梁5との間に配置されるものである。
【0012】
水切り構造1は、図1に示すように相互に隣接する2枚の外壁パネル3が同一平面上に並設される箇所であって、且つ、外壁パネル3の屋内側にH形鋼で形成された梁5の側部が配置される箇所の外壁パネル3間の縦目地4に配置されるものであって、この外壁パネル3の互いに相対する側端により形成される縦目地4と、その屋内側に配設されるH形鋼で形成された梁5の側部とを隔てることにより、縦目地4から風雨が建物内部に侵入することを防止する役割を果たすものである。
【0013】
水切り構造1は、図3に示すように、矩形の金属板の一方の側端側が波打つように形成された湾曲部11を形成する板部材10と、この板部材10の屋内側面に一端が例えば図示しないが溶接固定や螺子固定によって固定されて、他端がこの板部材10の湾曲部11から側方に突出する突出片12とを備えている。この板部材10の上下方向の長さは、建物の梁5として用いられるH形鋼の上下のフランジ51の間の幅よりもやや大きく形成されている。
【0014】
このような水切り構造1が固定される外壁パネル3は、図4に示すように、矩形板状のサイディング材31の屋内側面の周縁に、断面コ字状の枠材32の縦枠材32aが外壁パネル3の上下端側及び側端側を開口するように固定されてなるものである。また、外壁パネル3の屋内側に外壁パネル3に沿って水平に設置される梁5は、図4に示すように上下一対のフランジ51をウェブ52により連結したH形鋼により形成されるものであって、図2に示すように、建物の階間に設けられる胴差部aや、建物の屋根と外壁の間に設けられる切軒下部b、切妻部c、破風部d等に設けられている。
【0015】
水切り構造1を隣接する2枚の外壁パネル3間の縦目地4に固定する際には、図5(A)に示すように、一方側の外壁パネル3を図示しない建物の躯体に固定した後で、板部材10の湾曲部11と突出片12とで一方側の外壁パネル3の枠材32の縦枠材32aを挟み込むようにして固定し、水切り構造1を固定する。その後、図5(b)に示すように、他方側の外壁パネル3を建物の躯体に固定する。
【0016】
このように、水切り構造1は外壁パネルの側方から施工するものであるので、例えば図2の破風部dに示すように、梁5の設置位置が外壁パネル3の上下方向の中間部に位置する場合や窓Wの上側に設置される手組外壁パネル3aのように上側の外壁パネル3を建物の躯体に固定した後に施工する場合のように、水切り構造1の施工位置の上側に外壁パネル3が既に施工されており、水切り構造1を上側から挿し込むことができないような場合でも、水切り構造1を施工することができる。
【0017】
以上のようにして水切り構造1を設置すると、互いに隣接する2枚の外壁パネル3と、この外壁パネル3の屋内側に配置される梁5との間に水切り構造1を配置することができ、縦目地4から屋内に風雨が侵入することを防ぐことができる。そしてこのとき水切り構造1を構成する板部材10は図6に示すように、梁5の屋外側を覆うように設置されるので、梁5の上下一対のフランジ51の間に風雨が侵入することを防ぐことができる。
【0018】
次に、図1、図7から図9を参照しつつ入隅用水切り構造2について説明する。入隅用水切り構造2は、図1に示すように、建物の入隅部に沿って外壁パネル3同士が直角に配置される外壁の入隅部の縦目地4に配置されるものであって、この入隅部の縦目地4と、その屋内側に配置されるH形鋼で形成された梁5の側部と、を隔てることにより、縦目地4を通って梁5の上下のフランジ間の空間に風雨などが侵入することを防止する役割を果たすものである。
【0019】
この入隅用水切り構造2は、図7及び図8に示すように、一方の側端側に波打状の湾曲部20を形成した矩形の金属板をその中間部を折り曲げて形成した折曲板部材21と、この折曲板部材21の屋内側面に、一端が例えば溶接固定や螺子固定などにより固定され、他端が湾曲部20から側端方向に突出する突出片22と、を備えてなるものである。この折曲板部材21の上下方向の長さも図3に示す水切り構造1の板部材10と同様に、建物の梁5として用いられるH形鋼の上下のフランジ51間の幅よりもやや大きく構成されており、建物の梁5を覆ったときに、フランジ51間の空間に風雨が侵入することを防ぐことができるように形成されている。
【0020】
そして、入隅用水切り構造2を建物の入隅部における2枚の外壁パネル3間の縦目地4に固定する際には、一方の外壁パネル3を図示しない建物の躯体に固定した後、この一方の外壁パネル3の側端側から枠材32の縦枠材32aを湾曲部20と突出片22とで挟み込むようにして、折曲板部材21が入隅部に沿うように入隅用水切り構造2を設置する。その後他方の外壁パネル3を図示しない建物躯体に固定する。
【0021】
以上のように入隅用水切り構造2は、外壁パネル3の側方から、挟み込むだけで簡単に外壁パネル3に固定することができるので、極めて簡単に施工することができる。また、梁5の側面を覆うように配置されるので、梁5のフランジ51間の空間に風雨が入り込むことを効果的に防ぐことができる。さらに、縦目地4にシーリング剤を注入するような場合にもこの入隅用水切り構造2の折曲板部材21を下地材とすることができるので容易に施工することができる。
【0022】
また、入隅用水切り構造2も水切り構造1と同様に、外壁パネルの側方から施工するものであるので、入隅用水切り構造2の施工位置の上側に既に外壁パネル3が施工されており、入隅用水切り構造2を上側から挿し込むことができないような場合でも、入隅用水切り構造2を施工することができる。
【0023】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る水切り構造1及び入隅用水切り構造2は、建物の胴差部等における縦目地からの風雨の侵入を防ぐ部材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】水切り構造及び入隅用水切り構造を建物に設置する一例を示す省略断面図。
【図2】水切り構造を設置する建物の全体構成を説明する簡略正面図。
【図3】水切り構造の外観構成を説明する斜視図。
【図4】水切り構造を2枚の外壁パネル間の縦目地に設置した状態を示す斜視図。
【図5】水切り構造を外壁パネル間の縦目地に設置する工程を説明する簡略断面図。
【図6】水切り構造の設置位置の梁との関係を説明する断面図。
【図7】入隅用水切り構造の外観構成を説明する斜視図。
【図8】入隅用水切り構造を建物の入隅部に設置した状態を説明する斜視図。
【図9】入隅用水切り構造を建物の入隅部に設置する工程を説明する簡略断面図。
【図10】従来の縦目地の防水構造を説明する図。
【符号の説明】
【0026】
1 水切り構造
2 入隅用水切り構造
3 外壁パネル
4 縦目地
5 梁
10 板部材
11 湾曲部
12 突出片
20 湾曲部
21 折曲板部材
22 突出片
31 サイディング材
32 枠材
32a 縦枠材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形板状のサイディング材の裏面の周縁に枠材が固定されてなる外壁パネルが建物の梁の屋外側に並べて設置されることによって形成される縦目地から建物内部に水が侵入することを防ぐ水切り構造において、
一方の側端に屋外方向に湾曲する波打状の湾曲部が設けられた矩形平板状の板部材と、
一端側が該板部材の屋内側面に固定されるとともに、他端側が前記湾曲部から突出して当該他端側と前記湾曲部との間に間隙を形成する突出片と、を備え、
相互に隣接する2枚の外壁パネルのうち、一方の外壁パネルの枠材のうち前記サイディング材の側縁に設けられた縦枠材を前記湾曲部と前記突出片とで挟み込むことにより、前記板部材を前記縦目地の屋内側に前記建物の梁の屋外側を覆うように配置することを特徴とする水切り構造。
【請求項2】
矩形板状のサイディング材の裏面側の周縁に枠材が固定されてなる外壁パネルを直角に配置された梁の屋外側に直角に並べて配置した入隅部の縦目地から建物内部に水が侵入することを防ぐ入隅用水切り構造において、
一方の側端に屋外方向に湾曲する波打状の湾曲部が設けられると共に、中間部で直角に折曲された矩形の折曲板部材と、
一端側が該折曲板部材の屋内側面に固定されるとともに、他端側が前記湾曲部から突出して当該側と前記湾曲部との間に間隙を形成する突出片と、を備え、
前記入隅部の両側に配置された2枚の外壁パネルのうち、一方の外壁パネルの枠材のうち前記サイディング材の側縁に設けられた縦枠材を前記湾曲部と前記突出片とで挟み込むことにより、前記折曲板部材を前記入隅部に沿って前記入隅部の縦目地の屋内側に前記建物の梁の屋外側を覆うように配置することを特徴とする入隅用水切り構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−47998(P2010−47998A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213812(P2008−213812)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】