説明

水和剤としてのウスベニアオイ(commonmallow)の抽出物の新規使用、及びそれを含有する化粧用組成物

【課題】皮膚の保湿の状態を回復、維持又は強化するための新規皮膚保湿剤を提供する。
【解決手段】皮膚の保湿の状態を回復、維持又は強化するための作用剤、皮膚の乾燥の徴候の出現に対する予防又は遅延効果を得るための作用剤、及びドライスキンのリファッティングを促進して、表皮の表層に含まれる水分の蒸発に対して皮膚−バリア効果を改善するための作用剤から選択されるスキンケアのための化粧剤として、ウスベニアオイの抽出物を含む化粧用組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、皮膚の保湿の状態を回復、維持又は強化するためのウスベニアオイの抽出物の新規使用、それを含有する化粧用組成物に、また前記組成物を用いる美容ケアの方法にも関する。
【0002】
皮膚保湿の維持は、化粧品業界における重要な問題であり、化粧品業界は、どんな種類の化粧用組成物中でも使用できる保湿化粧剤を、また、これらの活性剤が、特に水の蒸発を制限するよう、又は表皮における水の輸送を改善するよう作用し得る新規標的も探し求めている。
【0003】
アクアポリン(AQP)は、水及び溶液中のグリセロール及び尿素などの小分子の拡散を促進するチャネルを形成する膜貫通タンパク質のファミリーである。
【0004】
今日までに、ヒトにおいて13種のこのファミリーのタンパク質が同定されている(AQP0〜AQP12と番号づけられている)。それらは、身体中に広く分布しており、最も具体的には、異なるコンパートメント間の水の相当な移動の部位である臓器、例えば、腎臓(水の再吸収)又は皮膚(経皮的水分喪失)中に分布している。
【0005】
アクアグリセロポリンとして知られる特定のアクアポリン、例えば、AQP3及びAQP9はまた、グリセロール、尿素、プリン及びピリミジンなどの小さい溶質に対する透過性も示し、これらはまた、組織の水和レベルの維持において重要な役割を果たしている。
【0006】
ヒト表皮角化細胞の細胞膜で示されたAQP−3は、すべての生存表皮中に分布している(R Sougratら、JID2003、118:678〜685頁)。
【0007】
AQP9は、より最近、これらの同じ上皮細胞においてであるが、ヒト上皮の上層(表層)においてより局在的に示された(JM Verbavatzら、Expression of aquaporin 9 and 10 in human keratinocytes during defferentiation、5th International Conference on Aquaporins、日本、奈良、2007年、7月)。
【0008】
脱水に最も曝されるものである皮膚の最外層における、AQP9のこの局在性のために、AQP9は、皮膚の表面保湿を改善するための選択の生物学的標的となっている。
【0009】
FR2801504には、アジュガ・ツルケスタニカ(Ajuga turkestanica)の抽出物が、AQP3の発現を刺激する作用剤として、また保湿剤としてのその化粧品的使用が開示されている。
【0010】
国際公開第2007/007255号パンフレットには、皮膚においてアクアポリンAQP3及びAQP9の発現を刺激する種々の作用剤が、またそれらの化粧品的使用も開示されている。
【0011】
本発明の発明者らは、ここで、ヒト表皮角化細胞におけるAQP9の発現は、ウスベニアオイの抽出物によって強力に刺激されることを発見した。
【0012】
ウスベニアオイ(マルバ・シルベストリス(Malva sylvestris))は、ワイルドマロウ又はウッドマロウとしても知られる、アオイ科の二年生の草本性植物である。化粧品におけるこの植物の抽出物の使用は、公知である。
【0013】
FR2814070には、植物種マルバ・シルベストリスの葉の水性抽出物を調製する方法及び化粧用組成物中のアンチエイジング化粧剤としての前記抽出物の使用が開示されている。
【0014】
したがって、表皮細胞におけるAQP9の発現の刺激による、マロウ(マルバ・シルベストリス)の抽出物の保湿特性を開示する文書はない。
【0015】
この特性のために、このような抽出物の使用は、皮膚の保湿を維持又は促進すると考えられるケアを実施するために、化粧用組成物において特に有利となる。
【0016】
[発明が解決しようとする課題]
本発明の主目的は、特に、皮膚の保湿の状態を回復、維持又は強化するための新規皮膚保湿剤を提供することである。
【0017】
本発明の別の主目的は、このような保湿剤を含む化粧用組成物を提供することである。
【0018】
本発明の主目的はまた、特に、皮膚の保湿の状態を回復、維持又は強化するための、前記化粧用組成物を用いる美容ケアの方法を提供することでもある。
【0019】
最後に、本発明の主目的は、工業的規模及び化粧品規模で使用できる単純な溶液を提供することである。
【0020】
[発明の説明]
したがって、第1の態様によれば、本発明は、皮膚の保湿の状態を回復、維持又は強化するための保湿剤としての、ウスベニアオイ(マルバ・シルベストリス)の抽出物の化粧用組成物中での使用に関する。したがって、本発明はまた、皮膚の保湿の状態を回復、維持又は強化するための保湿剤としての、ウスベニアオイ(マルバ・シルベストリス)の抽出物の使用を対象とする。
【0021】
本発明の抽出物は、ウスベニアオイ(マルバ・シルベストリス)の葉の抽出物、より詳細には、前記植物の葉を、極性溶媒又は極性溶媒の混合物で処理することによって得られた抽出物であることが好ましい。
【0022】
本発明によれば、用語「極性溶媒」とは、溶媒が、4以上である極性指数値P’を有することを意味する。極性指数は、分子の極性性質をおおむね示す(溶解度、及び状態の変化の)熱力学的な大きさに基づいて算出された大きさである。溶媒の極性指数については、L.R.Snyderによる論文(J.Chromatogr.、92(1974年)、223〜230頁)が参照され、これは参照によって本特許出願に含まれる。
【0023】
極性溶媒、又は混合物を形成する極性溶媒は、水、C〜Cアルコール、特にエタノール又はブタノール、或いはグリコール、特にグリセロール、ブチレングリコール又はプロピレングリコールから選択される。
【0024】
ウスベニアオイの好ましい抽出物は、より詳細には、水、又は水及びエタノールの混合物などの水性−アルコール性混合物を用いて得られる。
【0025】
本発明の特定の実施形態によれば、ウスベニアオイの抽出物は、水性抽出物、例えば、Silab社によって、「ビタクチル クレール(Vitactyl Clair)(登録商標)」の商標で販売されている製品である。
【0026】
本発明によれば、これまでに定義されるようなウスベニアオイの抽出物は、化粧用組成物中に活性剤として、局所適用の間に所望の効果を得るのに有効である量で存在する。
【0027】
用語「有効量」とは、所望の効果、この場合には、皮膚を保湿することに対する効果を得ることを可能にするウスベニアオイの抽出物の量を意味する。
【0028】
本発明の別の態様によれば、本発明者らによって実施された試験によって、ウスベニアオイの抽出物によって生じる保湿効果は、前記抽出物が少なくとも1種のトリテルペンサポニンと組み合わされた場合に大幅に改善され得るということが示された。
【0029】
具体的には、AQP9の発現に対する特に重要な相乗効果は、ウスベニアオイの抽出物及び少なくとも1種のトリテルペンサポニンの組み合わせで処理された表皮細胞において観察される。
【0030】
トリテルペンサポニンは、どちらでもよいが、トリテルペンサポノシドとしても知られる、糖及び主鎖が6個のイソプレン単位、すなわち、30個の炭素原子から形成されるトリテルペン基から形成される化合物である。これらの化合物は、ラポンティクム・カルタモイデス(Rhaponticum carthamoides)、アラリア・マンジュリカ(Aralia mandshurica)、バコパ・モンニエラ(Bacopa monniera)、ブリオニア・アルバ(Bryonia alba)、エゾウコギ(Eleutherococcus senticosus)、オタネニンジン(Panax ginseng)、アマチャヅル(Gynostemma pentaphyllum)、コドノプシス・ピロスラ(Codonopsis pilosula)、イボツヅラフジ(Tinospora cordifolia)、アシュワガンダ(Withania somnifera)、ハマビシ(Tribulus terrestris)、ヤマノイモ属(Dioscorea)、スミラックス・エクセルサ(Smilax excelsa)、シチヨウイッシカ(Paris polyphylla)、ハナミズキ(Cornus florida)、ユッカ(Yucca)、スミラックス・アリストロチアエホリア(Smilax aristolochiaefolia)、アスパラガス(Asparagus officinalis)、ヘデラ・ヘリックス(Hedera helix)、トリゴネラフェヌグ・ラエクム(Trigonellafenug raecum)、ツボクサ(Centella asiatica)、ダイズ(Glycine max)(soja)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、ヤエナリ(Phaseolus aureus)、ライマメ(Phaseolus lunatus)、ソラマメ(Vicia faba)、レンズマメ(Lens culinaris)、シサー・アリータム(Cicer arietum)、アズキ(Vigna angularis)、ケツルアズキ(Vigna mungo)、オキシトロピス・オクロセファラ(Oxytropis ochrocephala)、オキシトロピス・グラブラ(Oxytropis glabra)、エンドウ(Pisum sativum)、ソフォラ・ファベッセンス(Sophora favescens)、アスパララス・メンブラナセウス(Asparalus membranaceus)、クロタラリア・アルビダ(Crotalaria albida)、ピーナッツ(Arachis hypogea)、ガレガソウ(Galega officinalis)、ヤマフジ(Wistaria brachybotrys)、シロツメクサ(Trifolium repens)、或いはウマゴヤシ属の植物、特に、メディカゴ・アルファルファ(Medicago alfalfa)及びアルファルファ(Medicago sativa)(alfalfa)など、多数の植物種において極めて多様な構造で、極めて頻繁に見られる。
【0031】
これらのトリテルペンサポニンは、特に、栄養物質に富んだ組織、例えば、根、塊茎、葉、花及び種子において見られる。
【0032】
栄養物質に富んだこれらの組織は、前記トリテルペンサポニンを含有する植物抽出物を調製することを目的とした、含有する前記トリテルペンサポニンの抽出過程と、場合により、続いて、これらの化合物を精製及び単離するためのステップを実施するために最適な植物材料を構成する。
【0033】
したがって、本発明の第2の主題は、皮膚の保湿の状態を回復、維持又は強化するための保湿剤としての、ウスベニアオイ(マルバ・シルベストリス)の抽出物及び少なくとも1種のトリテルペンサポニン又はそれを含有する植物抽出物の組み合わせの、化粧用組成物における使用に関する。
【0034】
マロウ抽出物の組み合わせは、先に定義されるとおりであることが好ましい。
【0035】
好ましいトリテルペンサポニンとして、植物種ツボクサ中に存在するもの、特に、式(I):
【化1】


のアシアチコシド(asiaticoside)、
式(II)
【化2】


のマデカソサイド(madecassoside)がある。
【0036】
したがって、本発明によれば、第1の好ましい組み合わせは、トリテルペンサポニンが、単離された形の、又はそれを含有する植物抽出物の形のアシアチコシド、マデカソサイド、又はそれらの混合物である組み合わせである。
【0037】
より特に好ましい組み合わせは、先に定義されるマロウの抽出物及び少なくとも1種のトリテルペンサポニンを含有するツボクサの抽出物の組み合わせである。
【0038】
本発明のこの実施形態によれば、ツボクサの抽出物は、前記植物の葉を、極性溶媒又は極性溶媒の混合物で処理することによって得られ、極性溶媒又は極性溶媒の混合物は、ウスベニアオイの抽出物を製造するために使用されたものと同一であってもよい。
【0039】
次いで、極性溶媒又は混合物を形成する極性溶媒は、有利には、水、C〜Cアルコール、特にエタノール又はブタノール、或いはグリコール、特にグリセロール、ブチレングリコール又はプロピレングリコールから選択される。
【0040】
第3の態様によれば、本発明は、活性剤として、ウスベニアオイ(マルバ・シルベストリス)の抽出物及び少なくとも1種のトリテルペンサポニン又はそれを含有する抽出物の組み合わせを含むことを特徴とする化粧用組成物に関する。
【0041】
好ましい実施形態によれば、化粧用組成物は、活性剤として、マルバ・シルベストリス葉の抽出物及びツボクサ葉の抽出物の組み合わせを含み、各抽出物は、先に記載されるとおりであり、より詳細には、極性溶媒又は極性溶媒の混合物を用いて得られる。
【0042】
本発明の特定の一実施形態によれば、化粧用組成物は、0.0001%〜1%、好ましくは、0.01重量%〜0.1重量%のマルバ・シルベストリスの乾燥抽出物、及び0.0001重量%〜0.5重量%の乾燥抽出物、好ましくは0.01重量%〜0.1重量%のツボクサの乾燥抽出物を含む。
【0043】
本発明の化粧用組成物中の、それぞれ、マルバ・シルベストリス(A)及びツボクサ(B)の乾燥抽出物の重量比A/Bは、1/10〜500/1の間、好ましくは1/5〜50/1の間、より詳細には、好ましくは1/2〜20/1の間である。
【0044】
本発明の一実施形態変形によれば、保湿剤は、ベクターに、好ましくは単層リポソーム又は多重膜リポソームに少なくとも部分的に被包されてもよい。
【0045】
このようなベクター中に活性剤を含有することによって、前記保湿剤が、角質層を通って拡散して、表皮のより深い層に達し、この結果、その場所でその保湿作用を発揮することが容易になる。
【0046】
このように被包された保湿剤は、水性ゲルの種類の化粧用組成物中に含めることによって安定化でき、或いは水中油型エマルジョンの種類の化粧用組成物の場合にはアルギン酸塩を用いて安定化できると有利となり得る。
【0047】
本発明の化粧用組成物はまた、グリコール、特に、グリセロール、又は天然ポリオール、天然又は合成セラミド、尿素、ヒアルロン酸、或いはアジュガ・ツルケスタニカの抽出物、バンダ・セルレア(Vanda coerulea)の抽出物、レチノイン酸又はD−キシロースなどの保湿特性を有する1種又は複数のその他の分子又は植物抽出物を含んでなってもよい。
【0048】
したがって、AQP9の発現の刺激とは異なる機序による皮膚保湿効果を同様に有するこれらの分子又は抽出物は、本発明の活性剤のものを補完する役割を果たし得る。
【0049】
本発明に従って組成物中で使用することもできるその他の化粧剤の中で、より詳細には、以下を挙げることができる:
−皮膚の表面での落屑を調節する表皮カリクレインを刺激する作用剤、特に、ノパルサボテンの抽出物、
−角質層の水分バリア効果及び皮膚の滑らかさにおいて必須の役割を果たす表皮脂質の合成を刺激する作用剤、特に、ヒマワリ(Helianthus annuus L.)の種子の又はヘチマ(Luffa cylindrica)の抽出物、
−ケラチノサイトの最終分化又はトランスグルタミナーゼを刺激し、角質細胞及び皮膚バリアの形成を強化する作用剤、特にβ−エクジソン又はカルシウム誘導体、例えば、グルコン酸カルシウム又はピロリドンカルボン酸カルシウム、或いは表皮再生を刺激する活性剤、特にコムギ胚芽油、
−密着結合の形成を促進し、ひいては、細胞間の水分喪失を制限する作用剤、特に、スウィートチェストナット(Castanea sativa)又は三七サポニンの抽出物、
−眼の下のたるみ及びくまに対する化粧剤、特に、アスコルビルグルコシド又はヘスペレチン、
−表皮グリコサミノグリカン(GAG)合成を刺激する作用剤、例えば、D−キシロース又はキシロース誘導体、特にC−グリコシド、例えば、C−β−D−キシロピラノシド−n−プロパン−2−オン、C−β−D−(3,4,5−トリアセトキシ)キシロピラノシド−n−プロパン−2−オン又はC−β−D−キシロピラノシド−2−ヒドロキシ−プロパン−2−オン及びそれらの誘導体。
【0050】
化粧用組成物はまた、少なくとも1種の活性剤のほか、前記組成物を調製するのに有用である少なくとも1種の化粧品上許容される賦形剤を含む。
【0051】
本組成物は、特に、保湿剤として用いられる植物抽出物(複数可)を溶解又は分散するために用いられる溶媒、又は溶媒の混合物を含み得る。この溶媒又はこの溶媒の混合物は、抽出に用いられたものと同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0052】
本発明の化粧用組成物は、美容液、ローション、エマルジョン、クリーム、ヒドロゲル、好ましくは、マスク、或いはスティック又はパッチの形であり得る。
【0053】
最後に、第4の態様によれば、本発明の主題は、皮膚の保湿の状態を回復、維持又は強化するために、及び/又は皮膚の乾燥の徴候の出現に対する予防若しくは遅延効果を得るために、活性剤として、ウスベニアオイの抽出物又は前記抽出物と少なくとも1種のトリテルペンサポニン又はそれを含有する植物抽出物の組み合わせを含む化粧用組成物の、顔面及び身体の皮膚の少なくとも1箇所の関連領域への適用を含むことを特徴とする美容ケアの方法である。
【0054】
特定の一実施形態によれば、表皮におけるAQP9の発現の刺激は、グリセロールの拡散を改善し、これによって脂肪酸の、皮膚の表面の角質細胞間脂質の必須成分であるモノ−、ジ−、トリグリセリドへのエステル化が可能になる。
【0055】
したがって、前記美容ケアの方法はまた、ドライスキンのリファッティングを促進して、表皮の表層に含有される水分の蒸発に対して皮膚のバリア効果を改善することを対象とする。
【0056】
本発明のその他の目的、特徴及び利点は、本発明の実施態様のいくつかの実施例が参照されている以下の説明的な記載から明らかとなるが、それらは単に例示として示されるものであって、決して本発明の範囲を制限するものではない。実施例では、特に断りのない限り、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧であり、量又はパーセンテージは重量ベースで示されている。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】細胞核及びAQP9の発現の検出を可能にする免疫標識との関連で、以下の段落5に記載される方法に従って分析される画像である。
【図2】以下に記載される方法に従って測定された、細胞あたりのAQP9の発現を示す図である。
【実施例】
【0058】
材料及び方法
本研究は、乳房の手術による残部又は腹部手術から単離された正常ヒト角化細胞(NHK)で実施する。NHKを、その表皮を単離するためにサーモリシンで処理されたヒト皮膚のサンプルから単離する。
【0059】
1.細胞培養
ヒト皮膚のサンプルから単離されたNHKを、T75フラスコにおいて、完全KSFM培地(Invitrogen Gibco、17005−034)中、37℃及び5% COで、サブコンフルエンスまで培養し、次いで、トリプシン処理し、P1で、クリオチューブ(cryotube)中、−196℃で凍結する。
【0060】
解凍した後、NHKを、T75フラスコにおいて、完全KSFM培地で継代1によって培養する。プレコンフルエンス段階で、NHKを、トリプシンで処理し、Lab−Tek II 8−ウェル培養システム(Nalge Nunc International)において、ウェルあたり細胞20000個の割合で播種する。処理条件あたり4ウェル。
【0061】
2.処理
24時間培養した後、細胞を、試験する種々の活性剤で処理する。
【0062】
試験する活性剤:
Silab社、Franceからビタクチル クレール(登録商標)の名称で販売されているマルバ・シルベストリス葉の抽出物。この抽出物は、2.1w/w%の固体を含有する水溶液の形である。
【0063】
粉末の形のツボクサ葉の抽出物(INCI:ツボクサ葉抽出物)(ツボクサヘテロシド(Centella asiatica heterosides)、Bayer HealthCare)。抽出物のトリテルペンサポニン(アシアチコシド及びマデカソサイド)含量は、70重量%を超える。
【0064】
処理溶液の調製:
50mgのツボクサの粉末抽出物を、500μLのDMSO(保存溶液、100mg/ml)に溶解する。次いで、100μLの保存溶液を、10mlのKSFM(1mg/mL溶液)で希釈する。
【0065】
別個に、ウスベニアオイの抽出物の市販の溶液(ビタクチル クレール(登録商標))を、KSFM培地で希釈して、以下の、それぞれ、処理溶液1mlあたり105μgの乾燥抽出物及び210μgの乾燥抽出物に相当する0.5v/v%及び1v/v%の出発市販溶液の処理溶液を得る。
【0066】
処理:
抽出物溶液の濃度は、乾燥抽出物の重量/mlのKSFM培地として表されている:
−対照(KSFM培地)
−DMSO対照(KSFM培地+DMSO 1/1000)
−マルバ・シルベストリスの抽出物105μg/ml(0.5%)
−マルバ・シルベストリスの抽出物210μg/ml(1%)
−ツボクサの抽出物11μg/ml
−ツボクサの抽出物33μg/ml
−M.シルベトリスの抽出物105μg/ml+ツボクサの抽出物11μg/ml
−M.シルベトリスの抽出物105μg/ml+ツボクサの抽出物33μg/ml
−M.シルベトリスの抽出物210μg/ml+ツボクサの抽出物11μg/ml
−M.シルベトリスの抽出物210μg/ml+ツボクサの抽出物33μg/ml
【0067】
細胞を、約50%のコンフルエンスで48時間処理する。処理後、細胞は、コンフルエンス段階に達している。
【0068】
3.免疫標識
48時間処理した後、KSFMを吸引する。細胞を、PBS(PBS錠剤、Invitrogen Gibco)ですすぎ、次いで、ホルマリン(緩衝中性10%ホルマリン溶液、Sigma)を用いてスライド上に10分間固定した。PBSですすいだ後、培養チャンバーを、0.1%トライトン溶液(Triton X−100)で10分間満たし、次いで、PBSで2回すすいだ。
【0069】
最初のステップによって、まず、細胞を、PBS/1%BSA(BSA、Sigma)の溶液を用い、室温で30分間覆う。次いで、PBS/BSA溶液を、スライドから除去する。
【0070】
次いで、第2のステップによって、細胞を、100倍希釈した一次抗AQP9抗体溶液(ヤギポリクローナルsc−14989)で室温で60分間覆う。スライドを、PBS溶液ですすぐ。
【0071】
最後に、第3のステップによって、細胞を、200倍希釈した二次抗ヤギ抗体溶液(Alexa Fluor 546、ウサギ抗ヤギIgG、Molecular Probes)で覆う。細胞核を、二次抗体溶液中、20000倍希釈のSytoxグリーン(Molecular Probes)で染色する。スライドを、光の不在下、室温で60分間インキュベートし、次いで、PBSですすぐ。
【0072】
4.封入
スライド培養チャンバーを取り外し、数滴の封入溶媒(Fluorescent Mounting Medium、DAKO)を細胞上におき、次いで、24×60mmスライドで覆う。
【0073】
このスライドを4℃、暗所で保存する。
【0074】
5.共焦点顕微鏡による写真の獲得
LaserSharp 2000ソフトウェア(BioRad)を用いて共焦点顕微鏡(Zeiss Axioplan顕微鏡及びBioRadクリプトン−アルゴンレーザー)によって写真を撮る。
【0075】
各条件につき、同一の獲得パラメータ(増幅率、虹彩)に従って、×20対物レンズを用い、赤色蛍光(AQP9発現)で、及び緑色蛍光(細胞核)で4枚の写真を撮る。次いで、画像を組み合わせて合成画像を形成する。
【0076】
6.画像解析
Leica QWin画像解析ソフトウェアを用いて写真を分析する。プログラムは、細胞数に対するAQP9発現を定量するよう作成する。
【0077】
分析を、数ステップで実施する:
ステップ1:分析される画像(図1)を開く
元の写真を組み合わせることから得られた画像は、赤でのAQP9(1)の標識及び緑での細胞核(2)標識を示す。
【0078】
ステップ2:AQP9標識の検出
画像分析ソフトウェアによって、AQP9の標識についての陽性ピクセルを検出する。測定は、検出される赤色ピクセルの数で実施され、これは各細胞中に存在するAQP9の量に対応する。
【0079】
−ステップ3:細胞核の検出
ソフトウェアによって、細胞核に対応する緑色ピクセルを検出する。測定は、対象物の数で実施される。
【0080】
−ステップ4:測定領域の決定
測定領域は、添付の図1に示される全顕微鏡視野によって形成される。
【0081】
−ステップ5:結果の提示
−AQP9標識によって表される領域
−細胞核の数=細胞数
−測定される領域
【0082】
7.統計分析
統計分析は、以下のパラメータの平均、標準偏差及び信頼区間(α=0.05)の算出からなる:
−細胞あたりのAQP9の発現(AQP9の領域/細胞数)
−細胞増殖を代表する視野あたりの細胞数
【0083】
[実施例1]
マルバ・シルベストリスの抽出物の活性
以下の表Iには、各試験溶液を用いた処理の結果が開示されている。この表は、図2におけるヒストグラムの形で再生されている。
【0084】
AQP9の発現を、細胞あたりの発現されたAQP9の領域として表されるよう正規化し、細胞数は、観察されているサンプル中の核の数を計数することによって求める。
【表1】

【0085】
結論
マルバ・シルベストリスの抽出物は、表皮細胞におけるAQP9の抑制を大幅に刺激する。マルバ・シルベストリス及びツボクサの抽出物の組み合わせは、AQP9の発現に関して相乗作用を有する。
【0086】
[実施例2]
ウスベニアオイ葉の抽出物を含む保湿液
ウスベニアオイ(マルバ・シルベストリス)葉の抽出物は、2.1w/w%の乾燥抽出物を含有する水溶液(ビタクチル クレール(登録商標)、Silab)である。
【0087】
パーセンテージは、最終組成物の重量に対して重量ベースで示されている。

マルバ・シルベストリスの抽出物の水溶液 1.0
フェノキシエタノール 0.9
アクリレート/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマー
(Pemulen TR−1) 0.5
ステアレス−2(Brij72フレーク) 1.2
ステアレス−21(Brij721P) 1.1
イソノナン酸イソノニル 7.4
ステアリルアルコール 0.3
95%セチルアルコール 0.3
ジメチコン100CS 0.3
粉末EDTA四ナトリウム 0.2
酢酸トコフェリル 0.2
水酸化ナトリウム <0.1
香料 <0.1
精製水 適量100
【0088】
この組成物は、水中油型エマルジョンであり、これは、所望の保湿効果を得るために顔面の皮膚に毎日適用することができる。
【0089】
[実施例3]
ウスベニアオイの抽出物を含む保湿クリーム
マロウ抽出物溶液は、実施例2において用いたものと同一である。
【0090】
ツボクサの抽出物は、粉末の形であり、ツボクサヘテロシドの名称で販売されている。この粉末を、実施例の組成物中に用いられるよう、最低3w/w%に水に溶解する。
【0091】
パーセンテージは、最終組成物の重量に対して重量ベースで示されている。

ツボクサの抽出物 0.1
マルバ・シルベストリスの抽出物の水溶液1.2w/w% 1.0
フェノキシエタノール 0.7
アクリレート/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマー 0.3
アンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/vp共重合体
(Aristoflex AVC) 0.4
ステアレス−2 1.0
ステアレス−21 0.9
イソノナン酸イソノニル 6.2
ステアリルアルコール 0.5
95%セチルアルコール 0.5
グリセリルトリカプレート/カプリレート(Glyceryl tricaprate/caprylate) 2.2
粉末EDTA四ナトリウム 0.2
酢酸トコフェリル 0.2
香料 0.2
水酸化ナトリウム <0.1
精製水 適量100
【0092】
この組成物は、水中油型エマルジョンであり、これは、所望の保湿効果を得るために顔面の皮膚に毎日適用される。
【0093】
[実施例4]
保湿剤として、ウスベニアオイの抽出物及びツボクサの抽出物の組み合わせを含む美容液
マロウの抽出物及びツボクサの抽出物の溶液は、実施例2と一致している。
【0094】

マルバ・シルベストリスの抽出物の水溶液1.2w/w% 1.0
ツボクサの抽出物 0.1
植物グリセロール 5.0
EDTA二ナトリウム二水和物 0.1
フェノキシエタノール 0.5
スクレロチウムゴム(アミゲル(Amigel)) 1.0
アクリレート/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマー 0.2
アルミニウムデンプンオクテニルスクシネート
(ドライフロプラス(Dry Flo Plus)) 2.0
1,3−ブチレングリコール 3.0
ポリソルベート20(トウィーン(Tween)20) 1.0
酢酸トコフェリル 0.2
水酸化ナトリウム <0.1
香料 <0.1
精製水 適量100
【0095】
この組成物は、所望の保湿効果を得るために顔面の皮膚に毎日適用できる水溶液である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の保湿の状態を回復、維持又は強化するための作用剤、皮膚の乾燥の徴候の出現に対する予防又は遅延効果を得るための作用剤、及びドライスキンのリファッティングを促進して、表皮の表層に含まれる水分の蒸発に対して皮膚−バリア効果を改善するための作用剤から選択されるスキンケアのための化粧剤であって、ウスベニアオイ(マルバ・シルベストリス)の抽出物を含むことを特徴とする化粧剤。
【請求項2】
前記抽出物が、ウスベニアオイの葉の抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧剤。
【請求項3】
前記抽出物が、前記植物の葉を極性溶媒又は極性溶媒の混合物で処理することによって得られることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧剤。
【請求項4】
前記極性溶媒、又は混合物を形成する前記極性溶媒が、水、C〜Cアルコール、特にエタノール又はブタノール、或いはグリコール、特にグリセロール、ブチレングリコール又はプロピレングリコールから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の化粧剤。
【請求項5】
前記抽出物が、水、又は水及びエタノールの混合物などの水性−アルコール性混合物を用いて得られることを特徴とする、請求項3に記載の化粧剤。
【請求項6】
前記化粧用組成物が、少なくとも1種のトリテルペンサポニン又はトリテルペンサポニンを含有する植物抽出物も含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化粧剤。
【請求項7】
トリテルペンサポニンが、アシアチコシド、マデカソサイド、それらの混合物又はアシアチコシド、マデカソサイド、それらの混合物を含有する植物抽出物であることを特徴とする、請求項6に記載の化粧剤。
【請求項8】
前記植物抽出物が、極性溶媒又は極性溶媒の混合物を用いて処理することによって得られたツボクサの葉の抽出物であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の化粧剤。
【請求項9】
少なくとも1種のトリテルペンサポニン又はトリテルペンサポニンを含有する植物抽出物と組み合わせて、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化粧剤を含むことを特徴とする化粧用組成物。
【請求項10】
ウスベニアオイの抽出物が、請求項2〜5のいずれか一項に記載のものであり、トリテルペンサポニン又はトリテルペンサポニンを含有する抽出物が、請求項7又は8に記載のものであることを特徴とする、請求項9に記載の化粧用組成物。
【請求項11】
ウスベニアオイの抽出物及びツボクサの抽出物の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項9又は10に記載の化粧用組成物。
【請求項12】
0.001重量%〜5重量%、好ましくは0.5重量%〜1重量%のウスベニアオイの抽出物及び0.0001重量%〜0.1重量%のツボクサの抽出物を含むことを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ウスベニアオイの抽出物及びツボクサの抽出物の乾燥抽出物の重量比が、1/10から500/1の間、好ましくは1/5から50/1の間、より詳細には、好ましくは1/2から20/1の間であることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか一項に記載の化粧用組成物。
【請求項14】
前記組み合わせが、単層リポソーム又は多重膜リポソームに少なくとも部分的に被包されていることを特徴とする、請求項9〜13のいずれか一項に記載の化粧用組成物。
【請求項15】
グリコール、特にグリセロール、又は天然ポリオール、天然又は合成セラミド、尿素、ヒアルロン酸、アジュガ・ツルケスタニカの抽出物、バンダ・セルレアの抽出物又はレチノイン酸などの保湿特性を有する1種又は複数の分子又は植物抽出物も含むことを特徴とする、請求項9〜14のいずれか一項に記載の化粧用組成物。
【請求項16】
有利には、ノパルサボテンの抽出物、ヒマワリの種子の又はヘチマの抽出物、β−エクジソン又はグルコン酸カルシウム又はピロリドンカルボン酸カルシウムなどのカルシウム誘導体、或いはコムギ胚芽油、スウィートチェストナットの抽出物又は三七サポニン、アスコルビルグルコシド又はヘスペレチン、D−キシロース又はキシロース誘導体、特にC−グリコシド、例えば、C−β−D−キシロピラノシド−n−プロパン−2−オン、C−β−D−(3,4,5−トリアセトキシ)キシロピラノシド−n−プロパン−2−オン又はC−β−D−キシロピラノシド−2−ヒドロキシ−プロパン−2−オン及びそれらの誘導体から選択される1種又は複数のその他の化粧剤を含むことを特徴とする、請求項9〜15のいずれか一項に記載の化粧用組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の化粧品上許容される賦形剤を含み、特に、美容液、ローション、エマルジョン、クリーム、ヒドロゲル、好ましくはマスク、或いはスティック又はパッチの形であることを特徴とする、請求項9〜16のいずれか一項に記載の化粧用組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−31005(P2010−31005A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−164006(P2009−164006)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】