説明

水噴射圧縮機

【課題】
圧縮機が長時間停止しても、次に稼動するまでの間に水交換を行うなどの手間をかけずにセパレータ及び圧縮機並びに配管内で黴菌が繁殖するのを防止する。
【解決手段】
セパレータ3内の水を圧縮機1内部に噴射し、圧縮空気と共にセパレータ内に吐出し、分離する水噴射圧縮機において、セパレータ3に保有された水を水供給配管20と空冷水クーラ4とを介して圧縮機1に噴射する水噴射配管22と、水供給配管20と空冷水クーラ4との間に設けたポンプ29と、圧縮空気と圧縮機1に噴射した水とをセパレータ3に吐出する吐出配管15と、セパレータ3から水を分離した圧縮空気を吐出する吐出空気配管16と、を備え、圧縮機1の停止後、予め設定した時間経過した場合、圧縮機1を容量制御しながら稼動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセパレータ(水タンク)内の水を圧縮機内部に噴射し、圧縮空気と共にセパレータ内に吐出し、分離する水噴射圧縮機に関し、特に循環水の劣化を防ぎ水質の安全管理を行うと共に省エネを図るのに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、循環水の不純物濃度を低減して水を補給することなく長時間連続運転するため、圧縮空気を水タンクに供給し、水タンクを出た圧縮空気を冷却して分離した水分を圧縮機内に供給し、余剰循環水を水タンクから排出することが知られ、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−45948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では圧縮機が稼動している間は常に圧縮空気中から凝縮した水が補給されるのと、圧縮機内で高圧高温となるため、黴菌(ばいきん)の繁殖は抑えられる。しかし、圧縮機を停止した時間が長くなると、セパレータおよび配管内の水は大気温度に近くなり、空気中の黴菌がセパレータや配管中に残留する水の中で繁殖する恐れがある。
【0005】
特に、春から秋にかけて大気温度が30℃前後の環境は黴菌の繁殖に適しているため、停止時間が長い場合に黴菌の繁殖を抑えるためには頻繁な水の交換と、さらに装置及び配管の洗浄を行う必要がある。
【0006】
本発明の目的は、圧縮機が長時間停止しても、次に稼動するまでの間に水交換などの手間をかけずにセパレータ及び圧縮機並びに配管内で黴菌が繁殖するのを防止することにある。さらに、水質管理を行うのにできるだけ省エネ化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、セパレータ内の水を圧縮機内部に噴射し、圧縮空気と共に水を前記セパレータ内に吐出し、分離する水噴射圧縮機において、前記セパレータに保有された水を水供給配管とポンプと水クーラとを介して圧縮機に噴射する水噴射配管と、圧縮空気と前記圧縮機に噴射した水とを前記セパレータに吐出する吐出配管と、前記セパレータから水を分離した圧縮空気を吐出する吐出空気配管と、を備え、前記圧縮機の停止後、予め設定した時間経過した場合、前記圧縮機を容量制御しながら稼動させる、ものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、予め設定した時間経過しても圧縮機が起動されない場合、圧縮機を容量制御して稼動させるので、圧縮機並びに配管内で黴菌が繁殖するのを防止すると共に、省電力化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は一実施の形態のシステム構成を示し、水噴射圧縮機1は容積形圧縮機であり、スクリュー圧縮機を例に説明する。
【0010】
セパレータ3の水はセパレータの内圧により水供給配管20から供給され、空冷水クーラ4で冷却された後、水噴射配管22から圧縮機1のロータ作動室へ供給される。軸受に水潤滑軸受を採用した場合、停止状態からの起動時にはセパレータ内に圧力がないため、水供給配管20と空冷水クーラ4との間に設けたポンプ29で昇圧して圧縮機1の軸受へ水を供給する。
【0011】
圧縮機1は吸入フィルタを備えた吸入口14から吸入した空気を圧縮し、圧縮過程で噴射された水と一緒に吐出口から吐出配管15を通ってセパレータ3へ吐出する。セパレータ3では圧縮空気と水とが分離され、水はセパレータ3の下部に貯留された後、再び水供給配管20から圧縮機1へ供給される。
【0012】
圧縮空気は、セパレータ3で分離された後、上部の吐出空気配管16を通ってアフタークーラ5で冷却された後、ドレンセパレータ19で凝縮したドレンを除去して場内ライン18へ吐出される。
【0013】
水噴射圧縮機1が夜,休日など比較的長く停止する場合、図2に示すように停止時間が予め設定した停止時間toff23を過ぎると水質管理のために自動で水噴射圧縮機1を稼動し、設定時間ton24 だけ運転する。その後、水噴射圧縮機が再起動されるまで休止と稼動を繰り返す。圧縮機の稼動,停止について図1により更に説明する。
【0014】
水噴射圧縮機1には全体のユニットを運転制御する制御盤9を備えており、水噴射圧縮機1の駆動モータ2,冷却ファン用モータ6およびポンプ29のモータを駆動させる。また、始動時の昇圧用ポンプ29のバイパス配管用電磁弁45、空冷水クーラ4を通して給水用の水を冷却する配管と、冷却をさせず水温を高温に保持するための配管とを切替える三方電磁弁21を駆動させる。
【0015】
また、吸入口14に設けた大気温度(吸入温度)検出用センサ13,セパレータの水温度検出用センサ11,吐出温度検出用センサ12により、各部温度を検出する。更に、タイマー10により圧縮機の稼動時間,停止時間を検出している。制御盤9には図3に示すように検出した大気(吸入)温度に応じて稼動時間と、停止時間を設定したデータを記憶した記憶装置を有する。
【0016】
次に図4より水噴射圧縮機の動作手順を説明する。
【0017】
日常は通常の運転を行うために圧縮機が起動31される。そして、1日の稼動時間が終了した場合、圧縮機が停止32される。その後、圧縮機はタイマーにより停止時間toを検出33した後、記憶される。さらに大気温度(吸入温度)Ta、セパレータの水温Twを検出34し、同様に記憶する。そこで、検出した大気温度Ta、または水温Twをもとに記憶装置内のデータから大気温度Taに対する、または水温Twに対する圧縮機の休止時間toff、と稼動時間ton とを設定35する。以後はタイマーで経過時間t1を検出36し、休止時間を算出37して休止時間が設定時間を超えた場合38、水噴射圧縮機を稼動39する。
【0018】
休止時間が設定時間を超えていない場合は大気(吸入)温度,水温の検出34以降のループを繰り返す。圧縮機が稼動した時は、稼動した時間t2を検出40し記憶する。次に経過時間t3を検出41し、運転時間を算出47する。そこで、算出した運転時間を設定した運転時間ton と比較42し、運転時間が設定時間ton を超えた場合は圧縮機を停止43する。
【0019】
以後、圧縮機に通常の起動スイッチが押されたかどうかを判別44した後、通常の起動スイッチが押された場合は通常の連続運転31を行う。もし、通常の起動スイッチが押されていない場合は、水質管理のための稼動,停止を繰り返す。
【0020】
また、圧縮機が停止された後、水質管理のための圧縮機を稼動する際、水の殺菌効果を増すために吐出空気温度を通常の運転より上げて運転することが良い。すなわち、給水するための水を通常は図1に示す空冷水クーラ4で冷却して給水しているが、例えば三方電磁弁21を切替えて、水クーラを通さず、直接水噴射圧縮機へ給水する。このことで、水の温度も上昇し高温となるため、水の殺菌効果は増大する。さらに、吐出空気温度(吐出における水温も近い温度となる。)を85℃以上として、この温度での稼動時間を15分以上とすると、水の殺菌効果が確実となる。
【0021】
なお、吐出空気温度が設定温度に達した後は過度に高温とならないように、三方電磁弁21を作動させて、水クーラの通過とバイパスとを制御して吐出空気温度(水温度)を設定温度に調節するか、空冷水クーラ4の冷却ファン7を駆動するモータ6の回転数を制御して風量を変化させることで水の冷却を調節することが望ましい。
【0022】
図6は、水の冷却を水冷水クーラで行ったものであり、セパレータ3の水はセパレータの内圧により水供給配管20から供給され、水冷水クーラ27で冷却された後、水噴射配管22を通って圧縮機1のロータ作動室へ供給される。
【0023】
軸受に水潤滑軸受を採用した場合、停止状態からの起動時にはセパレータ内に圧力がないため、水供給配管20と水冷水クーラ27との間に設けたポンプ29で昇圧して圧縮機の軸受へ水を供給する。圧縮機1は吸入フィルタを備えた吸入口14から吸入した空気を圧縮し、圧縮過程で噴射された水と一緒に吐出口から吐出配管15を通ってセパレータ3へ吐出する。セパレータ3では圧縮空気と水とが分離され、水はセパレータ3の下部に貯留された後、再び水供給配管20から圧縮機へ供給される。
【0024】
圧縮空気は、セパレータ3で分離された後、上部の吐出空気配管16を通ってアフタークーラ28で冷却された後、ドレンセパレータ19で凝縮したドレンを除去した後、場内ライン18へ吐出される。
【0025】
水噴射圧縮機1が夜または休日など比較的長く停止する場合、図2に示すように停止時間が予め設定した停止時間toff23を過ぎると水質管理のために自動で水噴射圧縮機1を稼動し設定時間ton24 だけ運転する。その後、水噴射圧縮機が再起動されるまで休止と稼動を繰り返す。
【0026】
圧縮機の稼動,停止について図6により更に説明する。水噴射圧縮機には全体のユニットを運転制御する制御盤9を備えており、水噴射圧縮機の駆動モータ2およびポンプ29のモータを駆動させる。また、始動時の昇圧用ポンプ29のバイパス配管用電磁弁45,給水用の水を水冷水クーラ27を通して冷却する配管と、冷却をさせず直接圧縮機1へ供給する水噴射配管22へ切替える三方電磁弁21とを駆動させる。
【0027】
また、吸入口14に設けた大気(吸入)温度検出用センサ13,セパレータの水温度検出用センサ11,吐出温度検出用センサ12により各部温度を検出する。更に、タイマー10により圧縮機の稼動時間,停止時間を検出している。
【0028】
さらに、制御盤9には図3に示すように検出した吸入温度に応じて稼動時間と、停止時間を設定したデータを記憶した記憶装置を有する。次に図4より水噴射圧縮機の動作手順を説明する。
【0029】
日常は通常の運転を行うために圧縮機が起動31される。次に1日の稼動時間が終了してラインが停止する場合、圧縮機が停止32される。その後、圧縮機はタイマーにより停止時間toを記憶33し、さらに大気温度(吸入空気温度)Ta、セパレータの水温をTwを検出し、記憶する。そこで、検出した大気温度Ta、または水温をもとに記憶装置内のデータから大気温度Taに対するまたは水温Twに対する圧縮機の休止時間toff、と稼動時間ton とを設定する。以後はタイマーで経過時間を検出し、休止時間が設定時間を超えた場合、水噴射圧縮機1を稼動する。
【0030】
さらに、稼動時の時間を検出しておき、以後経過時間を定期的に検出し、稼動時間が設定時間ton を越えたら、圧縮機を停止させる。そのとき、圧縮機に通常の起動スイッチが押されたかどうかを判別した後、通常の起動スイッチが押された場合は通常の連続運転31を行う。もし、通常の起動スイッチが押されていない場合は、水質管理のための稼動,停止を繰り返す。なお、吐出空気温度の調節は、水冷水クーラ27の冷却水量を電磁弁46で調整して制御する。
【0031】
圧縮機は吐出温度が高温となっても支障ないようにケーシング,ロータ,軸受及び軸封装置は設定吐出温度で使用可能な耐熱性を有する。また、ロータ間,ロータ・ケーシング間および軸受の内外輪間のクリアランスは設定した吐出温度で稼動する際、損傷を起こさない値を確保する。また、配管及びセパレータ,パッキン類,電磁弁や温度検出センサも設定した吐出温度で稼動させても支障ないように耐熱性を確保する。
【0032】
以上、水噴射圧縮機の停止後、予め設定した時間すなわち、黴菌の繁殖が活発になり始める時間を経過しても圧縮機が起動されない場合には周期的に圧縮機を稼動し、停止させるので、セパレータ,水配管,圧縮機内に水が長時間滞留することがなく、さらに水温が高くなるのでセパレータ内の水または装置内で黴菌が繁殖するのを防止できる。
【0033】
また、大気温度またはセパレータの水温を検出し、大気温度または水温に応じて、水噴射圧縮機を稼動する時間及び間隔を設定するので、夏の黴菌が繁殖しやすい時期においても、確実に黴菌の繁殖を防止できる。
【0034】
さらに、冬など大気温度が低く、黴菌の繁殖が活発でない時期には水噴射圧縮機を稼動する間隔を伸ばすことで、水質管理に要する圧縮機の駆動エネルギーを節約できる。
【0035】
さらに、水噴射圧縮機の水質管理を目的として稼動させる際、圧縮機の吐出空気温度を通常の稼動時の設定温度よりも高くすることで、水温も吐出温度に近くなるため、更に水の殺菌効果を増すことができる。なお、水質管理のために水噴射圧縮機を稼動させる際の吐出空気温度を85℃以上として15分以上稼動することで水の殺菌効果を確実にすることができる。
【0036】
さらに、水噴射圧縮機の圧縮機,セパレータ,配管を高温の設定吐出空気温度で運転可能な耐熱構造とし、またクリアランスを適正に設定することで、軸受,ロータ,ケーシングなどの主要部品が熱膨張または変質を起こし、変形,接触などの損傷ならびに、圧縮性能低下,漏洩などの機能低下の発生を防止できる。
【0037】
さらに、図7に示す容量制御機構により容量制御を行い、圧縮機を稼動させることで、水の保全を行う際の省エネ化を図ることが可能である。例えば、圧縮機の吸入口に設けたサクションアンローダ48を絞ることで、吸入空気を減少させることができ、圧縮機の運転動力を低減できる。
【0038】
また、圧縮機を駆動するモータ2をインバータ49により回転を落として駆動することで更に圧縮機の運転動力を低減できる。
【0039】
さらに、図8より逆浸透膜精製水製造装置50を設けて、殺菌のために圧縮機を運転すると共にセパレータ内の水を廃棄し、逆浸透膜精製水製造装置50で製造した水を補給することで、圧縮機の運転時間を節約でき、省エネ効果が得られる。
【0040】
さらに、図9に示す水供給配管20に紫外線殺菌装置55を設けて、水を紫外線で殺菌することにより、同様に圧縮機の運転時間を節約でき省エネ効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による一実施の形態を示すブロック図。
【図2】一実施の形態の停止及び稼動時間と吐出空気温度の関係を示すグラフ。
【図3】一実施の形態の大気温度と停止及び稼動時間の関係を示す図。
【図4】一実施の形態の運転動作を示すフローチャート。
【図5】停止及び稼動時間と吐出空気温度の関係を示すグラフ。
【図6】他の実施形態のシステム構成を示すブロック図。
【図7】更に他の実施形態のシステム構成を示すブロック図。
【図8】他の水質管理の形態を示すブロック図。
【図9】更に他の水質管理形態を示すブロック図。
【符号の説明】
【0042】
1 圧縮機
2 圧縮機駆動モータ
3 セパレータ
4 空冷水クーラ
7 冷却ファン
9 制御盤
11 水温度検出用センサ
12 吐出温度検出用センサ
13 大気温度検出用センサ
15 吐出配管
16 吐出空気配管
20 水供給配管
21 三方電磁弁
22 水噴射配管
27 水冷水クーラ
29 ポンプ
46 水量調節用電磁弁
48 サクションアンローダ
49 インバータ
50 逆浸透膜精製水製造装置
51 給水配管
52 補給水配管
53 排水管(1)
54 排水用配管
55 紫外線殺菌装置
56 電源
57 紫外線発光ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータ内の水を圧縮機内部に噴射し、圧縮空気と共に水を前記セパレータ内に吐出し、分離する水噴射圧縮機において、
前記セパレータに保有された水を水供給配管とポンプと水クーラとを介して圧縮機に噴射する水噴射配管と、
圧縮空気と前記圧縮機に噴射した水とを前記セパレータに吐出する吐出配管と、
前記セパレータから水を分離した圧縮空気を吐出する吐出空気配管と、
を備え、前記圧縮機の停止後、予め設定した時間経過した場合、前記圧縮機を容量制御しながら稼動させることを特徴とする水噴射圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、吸入口に設けたサクションアンローダ(絞り機構)を設け、吸入空気量を可変することを特徴とする水噴射圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、圧縮機の駆動モータを可変速駆動するインバータを備えたことを特徴とする水噴射圧縮機。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記セパレータのタンク下部に、排水用配管と、逆浸透膜フィルタ水精製装置と、前記セパレータに給水可能な補給水配管と、を設け、前記圧縮機の停止後、予め設定した時間経過した場合、前記セパレータ内の水を排出し、精製水を入れることを特徴とする水噴射圧縮機。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、水供給配管に紫外線殺菌装置を設けたことを特徴とする水噴射圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−248763(P2008−248763A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90131(P2007−90131)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】